(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/25 20060101AFI20231030BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G01B11/00 H
(21)【出願番号】P 2021563417
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2019128940
(87)【国際公開番号】W WO2020220707
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】201910363567.8
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】何再興
(72)【発明者】
【氏名】趙▲シン▼▲ユェ▼
(72)【発明者】
【氏名】李沛隆
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107607060(CN,A)
【文献】特開2018-151172(JP,A)
【文献】特開2018-146476(JP,A)
【文献】特表2014-522981(JP,A)
【文献】米国特許第05135309(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/25
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:測定対象(5)を測定台(3)に置き、プロジェクタ(2)及びカメラ(6)のレンズをいずれも測定対象(5)に向けて設置し、プロジェクタ(2)及びカメラ(6)をいずれもコンピュータ(1)に接続し、第1回折格子周期
p
1
を設定し、コンピュータ(1)に入力して理想的な位相情報を生成し、さらにグレースケール符号化の方法を採用し、コンピュータ(1)で符号化して第1正弦波格子の縞模様を得、Nステップ位相シフト法に基づいて、第1正弦波格子の縞模様を位相シフトして、N枚の最初の位相が異なるデジタル位相シフトパターンを得、N枚のデジタル位相シフトパターンにおける同一位置のパターン画素点のグレースケール値に基づいて、前記位置のパターン画素点の理想的な位相値を得る;
工程2:デジタル位相シフトパターンをプロジェクタ(2)に入力して格子投影を生成し、格子投影の点光源配列がデジタル位相シフトパターンのパターン画素点配列の大きさと一致し、さらに格子投影の点光源がデジタル位相シフトパターンのパターン画素点と一つ一つ対応し、格子投影の各点光源が対応するパターン画素点の理想的な位相値と一つ一つ対応し;格子投影を測定対象(5)表面及びその周囲の測定台(3)に投射し、カメラ(6)が、格子投影が投射された後の測定対象(5)表面の画像を撮像し;N枚のデジタル位相シフトパターンは、順番にカメラ(6)の撮像によりN枚の画像を得、さらにNステップ位相シフト法を利用して、画像中の各画像画素点の位相値を求める;
工程3:画像中の各画像画素点に対して、求めた位相値と、格子投影における各点光源の理想的な位相値との誤差関係式
E(y
k
)を構築し、
誤差関係式は、単一の画像画素点の求めた位相値に基づいて、これと格子投影における各点光源の理想的な位相値との差の平方値E(y
k
)を求めたものであり、具体的な公式は以下の通りであり、
【数1】
式中、E(y
k
)は差の平方値であり、y
k
は点光源のy軸座標値であり、φ(m,n)は画像画素点(m,n)の求めた位相値であり、φ
t
(y
k
)は点光源のy軸座標値y
k
に基づいて唯一確定した理想的な位相値であり;p
1
は第1回折格子周期である;
すべての点光源座標を走査し、最も小さな差の平方値を前記画像画素点の最小誤差値とし、さらに下式に基づいて、最小誤差値が誤差閾値を超えているかどうかを判断し、
【数2】
式中、Δφ(m,n)は画像画素点(m,n)の最小誤差値であり、π/p
1
は誤差閾値である;
画像画素点の最小誤差値が誤差閾値より大きい場合、工程4に進み;すべての画像画素点の最小誤差値がいずれも誤差閾値以下である場合、誤差関係式の逆数を求め、前記画像画素点の第1信頼度サブ関数
P
1
(y
k
)を得て工程5に進む;
第1信頼度サブ関数P
1
(y
k
)は、下式に基づいて差の平方値E(y
k
)に対して逆数を求めたものであり、
【数3】
式中、εはゼロ除去パラメータである;
工程4:回折格子周期がより小さな
第2回折格子周期p
2
である正弦波格子の縞模様を採用して、新しい第1正弦波格子の縞模様とし、再度工程1から工程2を行って新しく位相値を求め、さらに工程3の方法に基づいて、新しく求めた位相値を判断する;
工程5:
回折格子周期がより小さな第2回折格子周期
p
2
を設定し、コンピュータ(1)に入力して第2正弦波格子の縞模様を生成し、工程1から工程3を繰り返し、同様の方式で
下式に基づいて各画像画素点の第2信頼度サブ関数P
2(y
k)を求め、
【数4】
式中、p
2
は第2回折格子周期である;
同一の画像画素点の第1信頼度サブ関数P
1(y
k)及び第2信頼度サブ関数P
2(y
k)を互いに乗じて、
下式に基づいて前記画像画素点の信頼度関数P
U(y
k)を得、
【数5】
信頼度関数を求めることにより、格子投影における前記画像画素点の像点源追跡マッピング座標を得;このうち、第2回折格子周期
p
2
及び第1回折格子周期
p
1
の関係について、第2回折格子周期
p
2
が第1回折格子周期
p
1
より小さく、2つの回折格子周期がいずれも正の整数で互いに素であり、さらに2つの回折格子周期を乗じた積は点光源のy軸座標値の最大値より大きい;
工程6:格子投影における各点光源の位置が、デジタル位相シフトパターンにおける同一位置の画像画素点の理想的な位相値と一つ一つ対応するため、格子投影における各画像画素点の像点源追跡マッピング座標に基づいて、画像中の各画像画素点の求めた位相値を理想的な位相値に置換し、求めた位相値の誤差校正を完了する;
を含むことを特徴とする、物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法。
【請求項2】
前記工程5で信頼度関数を求めるのが、具体的に、
すべての点光源のy軸座標値を走査することにより、信頼度関数P
U(y
k)の最大値を求め;信頼度関数P
U(y
k)の最大値は像点源追跡マッピング関係が示す点光源のy軸座標値であり、つまり格子投影における前記画像画素点の像点源追跡マッピング座標であることを特徴とする、請求項1に記載の物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法。
【請求項3】
前記各工程において、測定対象(5)、測定台(3)、プロジェクタ(2)及びカメラ(6)の位置がいずれも保持して変わらず、コンピュータ(1)に入力する回折格子周期のみが変化することを特徴とする、請求項1に記載の物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法。
【請求項4】
前記Nステップ位相シフト法が具体的に4ステップ位相シフト法を採用し、減法/差分演算により各画像画素点の位相値を求めることを特徴とする、請求項1に記載の物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法。
【請求項5】
前記工程3.1)において点光源のy軸座標値y
kに基づいて唯一確定した理想的な位相値は、以下の方法により確定され、つまり格子投影の座標系(x,y)を構築し、格子投影における各点光源の位置を確定し、つまり点光源配列における左上角に位置する1つ目の点光源の位置を座標系の原点とし、正弦波格子の特性に基づいて、理想的な位相情報が変化する方向に沿ってy軸を設け、x軸の方向はy軸に垂直であり;格子投影における各点光源位置の座標により、デジタル位相シフトパターンにおける同一位置のパターン画素点の理想的な位相値を確定することができ、理想的な位相値はx軸方向に沿って変化せず、すなわち理想的な位相はx軸座標と関係ないため、点光源のy軸座標値を確定して唯一の理想的な位相値を確定することができることを特徴とする、請求項1に記載の物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は能動的な光学3次元形状測定分野に関し、主に物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
位相シフト法による形状測定技術は速度が速く、精度が高く、非接触式であるなどの利点を有し、例えばリバースエンジニアリング、欠陥検出、目標識別などの工業分野に幅広く応用されている。位相シフト法による形状測定の原理に基づくと、高さ情報は位相情報により特徴付けられ、位相情報は光度中で符号化され、これにより投影-反射の方式でカメラに捕捉される。カメラ及びプロジェクタにはいずれも誤差が存在し、これに加えて光線伝播過程において環境外乱が存在するため、カメラが捕捉した光度情報を復号した位相情報には誤差の存在が避けられない。既存の位相誤差補償方法は、主に受動的な誤差補償、能動的な誤差補償及び逆方向誤差補償の3種を含む。
【0003】
受動的な誤差補償方法は、予め較正した誤差分布情報を利用し、後続の測定中に撮像した画像に存在する位相誤差を補償する。ルックアップテーブル法及びその改良は、典型的な受動的な誤差補償であり、該方法はプロジェクタに入力するグレースケール及びカメラが捕捉したグレースケールの間の差を比較することにより、位相誤差を較正する。しかしながら、位相誤差を較正する過程は複雑で、時間がかかり、効率が比較的低い。さらに予め較正する誤差情報の補償が難しいとき、誤差を変えるため、方法のロバスト性は比較的劣る。
【0004】
能動的な誤差補償方法は、回折格子の投影に対して補償を行い、これによりカメラが捕捉する撮像画像に存在する誤差を補償する。回折格子の投影に対する補償量を確定するため、該方法は特定の誤差モデルに基づく。誤差モデルは特定の誤差分布形式に限定されるため、該方法は精度的に限定性を有し、方法のロバスト性は比較的劣る。
【0005】
逆方向誤差補償方法は、位相誤差補償方法の効率を顕著に高める。該方法の基本的な構想は、撮像画像中に大きさが同じ、方向が反対の誤差が生じる2組の格子投影を構成することにより、位相誤差を2組の撮像画像中で相殺させることである。しかしながら、実験、研究により、受動的な誤差補償及び能動的な誤差補償と比較して、該方法の精度は比較的低いことが明らかにされている。
【0006】
上記既存の誤差補償方法に存在する問題を防止し、位相誤差の校正の精度及び効率を高めるため、本発明は位相シフト法による形状測定の像点源追跡に基づく誤差校正方法を示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記問題に対して、本発明は物体回折格子イメージの位相シフト法による位相測定の像点源追跡を用いた誤差校正方法を示している。既存の位相誤差補償方法と異なり、本方法は光路方向に逆らい、像点源追跡マッピング関係を利用し、コンピュータ中で符号化した、既知の、誤差の無い理想的な位相情報を、外乱を受けた撮像画像を利用して得られた、誤差を有する求めた位相情報を校正するのに直接用いることができ、位相シフト法による形状測定の精度を高める。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が採用する技術案は以下の工程を含む。
工程1:測定対象を測定台に置き、プロジェクタ及びカメラのレンズをいずれも測定対象に向けて設置し、プロジェクタ及びカメラをいずれもコンピュータに接続する。第1回折格子周期を設定し、コンピュータに入力して理想的な位相情報を生成し、さらにグレースケール符号化の方法を採用し、コンピュータで符号化して第1正弦波格子の縞模様を得る。Nステップ位相シフト法に基づいて、正弦波格子の縞模様を位相シフトして、N枚の最初の位相が異なるデジタル位相シフトパターンを得、N枚のデジタル位相シフトパターンにおける同一位置のパターン画素点のグレースケール値に基づいて、該位置のパターン画素点の理想的な位相値を得る。
【0009】
すべてのパターン画素点の理想的な位相値の集合を、理想的な位相情報と称する。前記理想的な位相情報について、パターン画素配列の1つの方向で、理想的な位相は線形変化を示し、線形変化の速度は選択した回折格子周期と関係する。パターン画素配列の別の方向で、理想的な位相は変化しない。理想的な位相情報は、コンピュータに記録され、後続の誤差校正に事前情報を提供する。
【0010】
前記デジタル位相シフトパターンは、物理的構成の形式で、パターン画素配列からなる。パターン画素配列の1つのパターン画素は、1つのグレースケール値に対応する。N枚のデジタル位相シフトパターンについて、パターン画素配列において同一位置に位置するパターン画素は、N個のグレースケール値に対応し、上記N個のグレースケール値は1つの理想的な位相を共同で符号化し、すべてのパターン画素点の理想的な位相値の集合を理想的な位相情報と称する。
【0011】
前記パターン画素配列は、形状的に矩形配列を示し、プロジェクタの結像面における点光源配列の寸法、分布と一致する。すなわちデジタル位相シフトパターンにおけるパターン画素点はプロジェクタの結像面における点光源と一つ一つ対応し、これにより1つのパターン画素のグレースケール値がプロジェクタ結像面における同一位置に位置する1つの点光源の明度を制御することを保証する。プロジェクタ結像面におけるすべての点光源の色度が格子投影を共同で構成し、N枚のデジタル位相シフトパターンと互いに対応するN枚の格子投影は、理想的な位相情報を共同で符号化する。
【0012】
工程2:デジタル位相シフトパターンをプロジェクタに入力して格子投影を生成し、格子投影の点光源配列はデジタル位相シフトパターンのパターン画素点配列の大きさと一致する。さらに格子投影の点光源はデジタル位相シフトパターンのパターン画素点と一つ一つ対応し、格子投影の各点光源は対応するパターン画素点の理想的な位相値と一つ一つ対応する。
【0013】
格子投影を測定対象表面及びその周囲の測定台に投射すると、格子投影は測定対象表面及び測定台表面に同時に投射される。測定対象表面に投射された格子投影は、高さ情報を求めるのに用いられ、測定台表面に投射された格子投影は、求めた位相誤差を評価するのに用いられる。カメラは、格子投影が投射された後の測定対象表面の画像を撮像する。N枚のデジタル位相シフトパターンは、順番にカメラの撮像によりN枚の画像を得、さらにNステップ位相シフト法を利用して、画像中の各画像画素点の位相値を求める。
【0014】
前記求めた位相誤差は、カメラが捕捉する格子投影の反射光を利用し、Nステップ位相シフト法を組み合わせて求めた位相情報と、格子投影中に符号化する理想的な位相情報との間の差を指す。プロジェクタ及びカメラは非線形であり、さらに環境の外乱を考慮するため、格子投影を測定対象表面及び測定台表面に投影して、カメラの結像面に反射させるこの過程において、反射光中のグレースケール値及び格子投影中のグレースケール値を比較し、差が存在するのは避けられない。従って、反射光中のグレースケール値を利用して位相情報を復号すると、食い違いが存在するのは避けられず、そのため誤差が存在する。
【0015】
工程3:画像中の各画像画素点に対して、求めた位相値と、格子投影における各点光源の理想的な位相値との誤差関係式を構築し、さらに誤差が最小誤差値であるとき、誤差閾値を超えているかどうかを判断する。画像画素点の最小誤差値が誤差閾値より大きい場合、工程4に進む。すべての画像画素点の最小誤差値がいずれも誤差閾値以下である場合、誤差関係式の逆数を求め、該画像画素点の第1信頼度サブ関数を得て工程5に進む。
【0016】
工程4:回折格子周期がより小さな正弦波格子の縞模様を採用して、新しい第1正弦波格子の縞模様とし、再度工程1から工程2を行って新しく位相値を求める。さらに工程3の方法に基づいて、新しく求めた位相値を判断する。前記調整後の新しい回折格子周期は可能な限り大きな整数であり、これはπと最も大きな求めた位相誤差の絶対値との商を超えない。
【0017】
工程5:第2回折格子周期を設定し、コンピュータ(1)に入力して第2正弦波格子の縞模様を生成する。工程1から工程3を繰り返し、各画像画素点の第2信頼度サブ関数P2(yk)を求める。同一の画像画素点の第1信頼度サブ関数P1(yk)及び第2信頼度サブ関数P2(yk)を互いに乗じて、該画像画素点の信頼度関数PU(yk)を得、信頼度関数を求めることにより、格子投影における該画像画素点の像点源追跡マッピング座標を得る。
第2回折格子周期及び第1回折格子周期の関係について、第2回折格子周期は第1回折格子周期より小さい。2つの回折格子周期はいずれも正の整数で互いに素であり、さらに2つの回折格子周期を乗じた積は、点光源のy軸座標値の最大値より大きい。
【0018】
工程6:格子投影における各点光源の位置は、デジタル位相シフトパターンにおける同一位置のパターン画素点の理想的な位相値と一つ一つ対応するため、格子投影における画像画素点の像点源追跡マッピング座標に基づいて、画像中の各画像画素点の求めた位相値を理想的な位相値に置換し、求めた位相値の誤差校正を完了する。
【0019】
いずれか1つの画像画素について、これを照らす点光源の位置はすでに像点源追跡マッピング関係により示されている。本来該点光源で符号化すべきである誤差のない理想的な位相はすでにコンピュータ中に記録され、既知であるため、誤差を有する求めた位相情報を既知の、点光源中で符号化する理想的な位相情報に置換することにより、求めた位相情報に対して位相誤差の校正を実現することができ、さらには位相シフト法による形状測定の精度を高める。
【0020】
前記工程3)は、具体的に以下の通りである。
3.1)単一の画像画素点の求めた位相値に基づいて、これと格子投影における各点光源の理想的な位相値との差の平方値E(yk)を求めて誤差関係式とする。具体的な公式は以下の通りである。
【0021】
【0022】
式中、E(yk)は差の平方値であり、ykは点光源のy軸座標値であり、φ(m,n)は画像画素点(m,n)の求めた位相値であり、φt(yk)は点光源のy軸座標値ykに基づいて唯一確定した理想的な位相値である。
前記誤差閾値は、回折格子周期と関係し、誤差閾値は回折格子周期と反比例である。点光源のy軸座標値ykの取り得る値の範囲は、理想的な位相情報の変化方向におけるすべての点光源の座標位置が構成する集合である。
【0023】
上記点光源のy軸座標値ykに基づいて唯一確定した理想的な位相値は、以下の方法により確定される。格子投影の座標系(x,y)を構築し、格子投影における各点光源の位置を確定する。つまり点光源配列における左上角に位置する1つ目の点光源の位置を座標系の原点とし、正弦波格子の特性に基づいて、理想的な位相情報が変化する方向に沿ってy軸を設け、x軸の方向はy軸に垂直である。格子投影における点光源は、デジタル位相シフトパターンのパターン画素点の数量と同じであり、位置は一つ一つ対応する。格子投影における各点光源位置の座標により、デジタル位相パターンにおける同一位置のパターン画素点の理想的な位相値を確定することができる。理想的な位相値はx軸方向に沿って変化せず、すなわち理想的な位相はx軸座標と関係ないため、点光源のy軸座標値を確定して唯一の理想的な位相値を確定することができる。
【0024】
3.2)すべての点光源座標を走査し、最も小さな差の平方値を該画像画素点の最小誤差値とし、さらに下式に基づいて、最小誤差値が誤差閾値を超えているかどうかを判断する。
【0025】
【0026】
式中、Δφ(m,n)は、画像画素点(m,n)の最小誤差値であり、π/pは誤差閾値であり、pは正弦波格子の縞模様の回折格子周期である。
【0027】
3.3)3.1)で得た差の平方値に対し、逆数を求めて該画像画素点の第1信頼度サブ関数P1(yk)を得る。
【0028】
【0029】
式中、εは無限小であり、通常10のマイナス16乗オーダーの1つの実数であり;pは第1正弦波格子の縞模様の周期である。
【0030】
前記工程5で信頼度関数を求めるのは具体的に以下の通りである。
すべての点光源のy軸座標値を走査することにより、信頼度関数PU(yk)の最大値を求める。信頼度関数PU(yk)の最大値は像点源追跡マッピング関係が示す点光源のy軸座標値であり、つまり格子投影における該画像画素点の像点源追跡マッピング座標である。
【0031】
前記像点源追跡は、撮像画像中に位置し、格子投影により測定対象表面及び測定台表面に投射された反射光が照らす1つの画像画素/像点について、光路方向に逆らい、プロジェクタの結像面中の対応する、上記像点を照らす点光源を探すことを指す。すべての画像画素、及びこれを照らす点光源の間の対応関係の集合は、像点源追跡マッピング関係を構成する。得られた像点源追跡マッピング関係を利用し、求めた位相情報に対して位相誤差の校正を行う。
【0032】
前記各工程において、測定対象、測定台、プロジェクタ及びカメラの位置はいずれも保持して変わらず、入力する正弦波格子の縞模様のみが変化する。すなわちプロジェクタに入力するデジタル位相シフトパターンが異なる以外、位相シフト法による形状測定システムにおけるその他のいずれの設備も変更せずに設置する。特に位相シフト法による形状測定システムにおけるすべての設備の位置を変更せず、これにより像点源追跡マッピング関係がすべての工程を一度実行する中で変わらないことを保証する。
【0033】
前記Nステップ位相シフト法は具体的に4ステップ位相シフト法を採用し、減算/差分演算により、各画像画素点の位相値を求める。
【0034】
前記差分は、画像画素配列のいずれか1つの特定位置に位置する画像画素について、2枚の異なる撮像画像中の対応するグレースケール値を差し引く過程を指す。N枚の撮像画像における2枚の異なる撮像画像に対して差分を行うことにより、全体的な照射成分の各画像画素のグレースケール値に対する影響を除去し、直接的な照射成分の各画像画素のグレースケール値に対する影響を残し、像点源追跡マッピング関係により求める正確性及びロバスト性を高める。
【0035】
前記直接的な照射成分は、撮像画像中に位置するある画像画素について、該画像画素を照らし、プロジェクタの結像面に位置する1つの点光源が、該画像画素に対応するグレースケール値に寄与することを指す。前記全体的な照射成分は、撮像画像中に位置するある画像画素について、該画像画素に対応するグレースケール値に寄与する直接的な照射成分の点光源以外に、プロジェクタ結像面のその他の位置に位置する点光源が、該画像画素に対応するグレースケール値に寄与することを指す。
【0036】
本発明は位相シフト法による形状測定におけるデジタル設備の離散特性を利用し、誤差を有する求めた位相情報から、精確な像点源追跡マッピング関係を直接計算する。像点源追跡マッピング関係を得ると、いずれか1つの画像画素について、これを照らす点光源の位置がすでに像点源追跡マッピング関係により示されている。本来該点光源で符号化すべきである誤差の無い理想的な位相は、すでにコンピュータ中に記録され、既知であるため、誤差を有する求めた位相情報を、既知の、点光源中で符号化する理想的な位相情報に置換することにより、求めた位相情報に対して位相誤差の校正を実現することができ、さらには位相シフト法による形状測定の精度を高める。
【0037】
点光源が投射した光線は伝播過程で発散性を有するため、全体的な照射成分の外乱を除去し、直接的な照射成分を残す。Nステップ位相シフト法で求めた位相情報を利用して、像点源追跡マッピング関係の計算に入力し、像点源追跡マッピング関係の計算の正確性及びロバスト性を保証する。
【発明の効果】
【0038】
既存の位相誤差補償方法と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
1、本発明は、より高い精度を有する。従来の位相誤差補償方法は、精確でない、直接的又は間接的な誤差モデルに基づき、位相誤差を予め推定する。これにより測定結果から推定した測定誤差を差し引き、求めた位相情報の誤差補償を行う。誤差モデル及び推定した位相誤差が精確でないため、従来の位相誤差補償方法にはシステム誤差が存在する。しかしながら、本発明で示す方法は、像点源追跡マッピング関係を画期的に利用し、誤差の無い理想的な位相情報を直接利用し、位相誤差を校正することを可能にする。従って、本発明で示す方法は、当然より高い精度を有するはずである。
【0039】
2、本発明は、より高い効率を有する。従来の位相誤差補償方法は、位相誤差を予め推定する。煩雑な操作を行う必要があり、顕著に効率が低下する。しかしながら、本発明で示す方法は、光路方向に逆らい、像点源追跡マッピング関係を利用し、校正に用いる理想的な位相情報を直接得る。時間及び労力を費やすどのような位相誤差の推定過程も行う必要はないため、本発明で示す方法は、当然より高い効率を有するはずである。
【0040】
3、本発明は、より高いロバスト性を有する。本発明で示す方法はどのような固定の誤差モデルにも基づかず、すなわち位相誤差がどの形式で分布しているかに関わらず、本発明で示す方法はいずれも位相誤差の校正を実現することができる。しかしながら、従来の位相誤差補償方法は、特定形式の位相誤差、例えばガンマ非線形性誤差などにのみ作用するため、本発明で示す方法は、当然より高いロバスト性を有するはずである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明における改良した位相シフト法による形状測定システムの概要図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明が像点源追跡を利用して位相誤差の校正を実現する原理図であり、
図2(b)は、従来の位相誤差補償方法で位相誤差補償を実現する原理図である。
【
図3】
図3(a)は、2枚の隣接するデジタル位相シフトパターン間の変化関係の概要図であり、
図3(b)は、本発明の1つの実施例において、必要な異なるデジタル位相シフトパターンに基づいて、異なる格子投影を投射する時間図である。
【
図4】
図4は、本発明が位相シフト法による形状測定において位相誤差の校正を実現するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本発明で示す方法において、像点源追跡マッピング関係を計算するフローチャートである。
【
図6】
図6は、点光源のラッピング座標を求めるのに本発明を応用した1つの実施例である。
【
図7】
図7は、点光源座標を求めるのに本発明を応用した1つの実施例である。
【
図8】
図8(a)は、本発明で示す方法を利用した校正前、後の位相分布であり;
図8(b)は、本発明で示す方法を利用した校正前、後のグレースケール値の分布である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図及び実例を組み合わせて、本発明についてさらに記載する。具体的な実施形態は、主に位相シフト法に基づく形状測定の精度を高めるのに用いられる。
【0043】
図1に示すように、前記位相シフト法を構成する光測定システムはコンピュータ1、プロジェクタ2、カメラ6及び測定台3を含み、コンピュータ1はプロジェクタ2及びカメラ6とそれぞれつながる。測定対象5を測定台表面に置き、測定台表面は平板4である。プロジェクタ2及びカメラ7のレンズはいずれも測定対象5に向けて設置され、プロジェクタ2が測定対象5表面及び測定台3に投影することができることを保証し、カメラ6が測定対象5表面からのすべての反射光を受けることができることを保証する。
【0044】
測定台表面に平板4を設けるのは、位相基準情報を得るためである。いずれか1つの撮像画像の平板を反映する部分において、理想的な位相情報の変化の特徴に基づき、最大のグレースケール勾配方向に沿って、画像画素に対応する理想的な位相情報は線形変化するべきである。従って、撮像画像の平板を反映する部分に位置する画像画素について、最大のグレースケール勾配方向に沿って、該方向の各画像画素に対応する求めた位相部分を直線に当てはめ、当てはめた結果が求めた位相基準情報である。求めた位相情報及び位相基準情報の差を計算すると、位相誤差を求めることができる。
【0045】
本発明の具体的な工程は以下の通りである。
工程1:最初の回折格子周期を選択し、これは理想的な位相情報を生成するのに用いられる。さらに理想的な位相情報をN枚のデジタル位相シフトパターン中に符号化する。
【0046】
コンピュータ1は、理想的な位相情報をグレースケール値の形式でN枚のデジタル位相シフトパターン中に符号化する。その後、コンピュータ1はN枚のデジタル位相シフトパターンをプロジェクタ2に入力し、さらにプロジェクタ2を制御して、これと対応するN枚の格子投影を生成し、さらにN枚の格子投影を平板4及び測定対象5表面に投射する。前記平板4は、測定台3の表面である。カメラ6は、平板4及び測定対象5表面における格子投影の放射光を撮像画像中に捕捉する。さらに撮像画像を利用して、反射光中で符号化した位相情報を復号し、位相情報を求める。
【0047】
プロジェクタ2及びカメラ6はいずれもガンマ非線形性を有し、電子ノイズが存在し、これに加えて反射光の伝播過程で環境外乱を受けるのを避けられない。撮像画像中の位相情報を符号化したグレースケール値は、外乱を受けるのを避けられないため、撮像画像から復号した位相情報には誤差が存在する。位相情報から深さ情報をマッピングするとき、誤差でひずんだ位相は最終的に測定誤差を相応して引き起こす。位相シフト法による形状測定の原理に基づくと、位相情報の精度は最終的な測定精度を直接決定するため、示した発明は位相誤差を校正することを目的とし、これにより位相シフト法による形状測定の最終的な測定精度を高める。
【0048】
図4に示すように、第1正弦波格子の縞模様の第1回折格子周期をpと設定すると、理想的な位相情報φ
tは以下のように表すことができる。
【0049】
【0050】
式中、(x,y)はパターン画素配列のパターン画素点の座標であり、φ
t(x,y)はパターン画素点の座標(x,y)部分の符号化した理想的な位相値である。
図1に示すように、理想的な位相情報が変化する方向はy軸であり、y軸方向に沿って変化し、x軸方向は変化せず、すなわち理想的な位相はx軸座標と関係しない。従って、φ
t(x,y)はφ
t(y)と簡略化することができる。説明する必要があることは、パターン画素配列がプロジェクタの結像面における点光源配列の寸法、分布と一致するため、(x,y)は点光源配列の点光源の座標を表すのに用いることもできることである。
【0051】
説明する必要があることは、理想的な位相情報はy軸座標のみと関係し、x軸座標と関係しないことである。後に像点源追跡マッピング関係に基づき、y軸座標のみを確定すると、位相誤差の校正に用いる理想的な位相情報を確定することができ、x軸座標を知る必要はない。
【0052】
理想的な位相情報はN枚のデジタル位相シフトパターン中に符号化され、このうち、n枚目のデジタル位相シフトパターンIn
tは以下のように表すことができる。
【0053】
【0054】
式中、In
t(x,y)はn枚目のデジタル位相シフトパターンの(x,y)部分に位置するパターン画素のグレースケール値であり、aは平均グレースケールの設定値であり、bはグレースケールの変化幅の設定値であり、Nは位相シフト法の位相シフト回数である。
【0055】
前記デジタル位相シフトパターンのパターン画素のグレースケール値は、対応する理想的な位相を三角関数に代入することにより得られる。理想的な位相の線形変化の方向に沿って、グレースケール値は正弦波変化を表し、正弦波変化の周期は選択した回折格子周期である。別の方向に沿って、グレースケール値は変化しない。N枚のデジタル位相シフトパターンにおいて、任意の2枚の隣接するデジタル位相シフトパターンは、グレースケール値の正弦波変化方向に沿って、同じ変位を有する。
【0056】
(x,y)部分に位置するパターン画素について、該パターン画素に対応する理想的な位相φ
t(x,y)は、I
1
t(x,y)、I
2
t(x,y)、…、I
N
t(x,y)の全部でN個のグレースケール値により共同で符号化され、このうちNは整数であり、さらにN≧3である。Nは位相情報を符号化するのに用いられるデジタル位相シフトパターンの総枚数である。
図3(a)に示すように、隣接する2枚のデジタル位相シフトパターンは、y軸に沿って位相シフト量(pn/N)を有する。このほか、デジタル位相シフトパターンのグレースケール値はy軸に沿って変化し、同時にx軸方向に沿って同じグレースケール値を有する。さらにy軸方向に沿って、デジタル位相シフトパターンのグレースケール値が変化する周期はp個の画素である。
【0057】
N枚のデジタル位相シフトパターンを順番にプロジェクタ2に入力し、N枚の格子投影を生成する。N枚の格子投影を順番に測定対象5表面及び測定台3表面に投射し、測定対象5表面及び測定台3表面に投射された格子投影の反射光を、カメラ6を利用してN枚の撮像画像中に順番に捕捉する。n枚目の撮像画像は下式で表すことができる。
【0058】
【0059】
式中、(m,n)は画像画素配列の画像画素点の座標であり、In(m,n)は(m,n)部分に位置する画像画素が捕捉したn枚目の格子投影における反射光のグレースケール値であり、A(m,n)及びB(m,n)はそれぞれ該画素点部分のグレースケール値の定数成分値及び変化成分係数であり、φ(m,n)は該画像画素部分のグレースケール値の位相値である。
【0060】
図1に示すように、カメラ6の結像面における左上角の1つ目の画素点がある位置を原点として画像座標系(m,n)を構築し、m軸及びn軸はそれぞれ結像面の2本の垂直辺に平行し、これにより画像中の各画像画素点の座標位置を確定する。カメラで撮像して得られた画像は画像画素配列からなり、画像画素配列中の1つの画像画素は1つのグレースケール値に対応する。N枚の撮像パターンについて、画像画素配列中の同一位置に位置する画像画素はN個のグレースケール値に対応し、上記N個のグレースケール値を利用し、Nステップ位相シフト法を組み合わせて、1つの位相を求めることができる。すべての画像画素に対応する求めた位相の集合は、求めた位相情報と呼ばれる。
【0061】
前記画像画素配列は形状的に矩形配列を示し、カメラの結像面における撮像素子配列の寸法、分布と一致し、すなわち撮像画像中の画像画素は、カメラの結像面における撮像素子と一つ一つ対応する。撮像素子は反射光を受けて、光度をグレースケール値に変え、画像画素配列中の同一位置に位置する画像画素中に保存する。
【0062】
Nステップ位相シフト法を利用し、捕捉したN枚の撮像画像から、位相情報を求める。下式に示す通りである。
【0063】
【0064】
式中、φ(m,n)は、画像画素点(m,n)のI1(x,y)、I2(x,y)、…、IN(x,y)の全部でN個のグレースケール値を計算して求めた位相である。上の式のアークタンジェントarctanの値域の性質から、上の式で求めた位相の値は0から2πの間に制限されることがわかる。
【0065】
本発明の実施例の好適として、N=4を採用する。このとき、上の式は以下のように書き換えることができる。
【0066】
【0067】
上の式に基づくと、(m,n)部分に位置する画像画素について、位相を計算して求めるとき、上の式の分子及び分母のいずれにも減法/差分演算が存在することがわかる。この演算は全体的な照射成分のグレースケール値に対する寄与を除去することができ、同時に直接的な照射成分のグレースケール値に対する寄与を残し、後続の像点源追跡マッピング関係を計算する正確性及びロバスト性を高める。このほか、どのようなN≧3についても、Nステップ位相シフト法で位相情報を計算して求めるとき、いずれも似た形式の減法/差分演算を含むことを導き出すことができる。
【0068】
本発明は誤差を有する求めた位相情報を利用して入力し、精確な像点源追跡マッピング関係を得、これにより位相誤差の校正を実現し、位相シフト法による形状測定の精度を高める。その原理は次の通りである。いずれか1つの画像画素について、Nステップ位相シフト法を利用して求めた位相は、連続した実数体中に分布し、さらに像点源追跡マッピング関係に示され、該画像画素を照らし、プロジェクタの結像面に位置する点光源の座標は、離散した正の整数域に分布する。従って、求めた位相情報を利用して像点源追跡マッピング関係を計算する本質は、連続域から離散域までのマッピング関係を探すことである。連続域から離散域までは「一対複数」の関係であるため、連続域に位置する求めた位相について、この中に存在し、一定範囲内に位置する誤差は、許容することができ、像点源追跡マッピング関係を求める精度に影響を及ぼさない。
【0069】
(m,n)部分に位置する画像画素について、該画像画素を照らす点光源の位置、すなわち点光源のy軸座標値ykを仮定しても構わず、さらに該画像画素部分のアンラッピングし、求めた位相の仮定量と、理想的な位相の仮定量との間の差の平方値を計算する。前記アンラッピングし、求めた位相の仮定量は、考慮したある画像画素に対応し、決められたある回折格子周期下で求めた位相を、2πと縞模様の周期回数の仮定量との積に加えることにより得られる。前記縞模様の周期回数の仮定量は、点光源位置の仮定量及び決められた回折格子周期の商以下の最大整数を計算し、さらに該最大整数から1を減らして得られる。前記理想的な位相の仮定量は、点光源位置の仮定量が示す位置部分の点光源が符号化すべき理想的な位相である。
【0070】
差の平方値E(yk)の計算公式は下式に示す通りである。
【0071】
【0072】
式中、[y
k/p]は(y
k/p)以下の最大の整数である。
図1に示すように、y
kの取り得る値の範囲はy軸方向に沿ったすべての可能性のある点光源位置の座標であり、すなわち1以上、s以下である。sは、プロジェクタ結像面のy軸方向に沿った点光源の最大座標である。式中、(φ(m,n)+2π([y
k/p]-1))はアンラッピングし、求めた位相の仮定量であり、このうち、([y
k/p]-1)は縞模様の周期回数の仮定量であり;φ
t(y
k)はy
kに基づいて唯一確定した理想的な位相値である。
【0073】
ykが(m,n)部分に位置する画像画素を照らす点光源部分を走査するとき、E(yk)は以下のように表すことができる。
【0074】
【0075】
式中、yは画像画素点(m,n)部分に対応する点光源のy軸座標値であり、Δφ(m,n)は(m,n)部分の画像画素に対応する求めた位相が理想的な位相から逸脱した誤差である。上の式から、求めた位相に誤差が存在せず、すなわちΔφ(m,n)=0の場合、E(yk)は最小値を有し、すなわちE(yk)=0であることがわかる。該現象は、E(yk)に対して極値を求める方式により、像点源追跡を実現することができることを明らかにしている。Δφ(m,n)≠0の状況について、E(yk)に対して極値を求める方式により、像点源追跡を実現することができるようにするため、以下の条件を満たす必要がある。
【0076】
【0077】
式中、minはすべての可能性のあるykの取り得る値に対して、求めたE(yk)の極小値である。上の式を成立させるため、Δφ(m,n)は一定条件を満たす必要がある。該条件を導き出すため、上の式は以下と同等である。
【0078】
【0079】
上の式を求めると、Δφ(m,n)が以下の条件を満たす必要があることがわかる。
【0080】
【0081】
上の式が求めた像点源追跡マッピング関係を示すとき、位相誤差が満たす必要がある条件を求め、さらに該条件は回折格子周期pと関係する。上の式から、比較的小さな回折格子周期pは比較的広い誤差制限条件を提供することができることがわかる。従って、本発明の実施例において、比較的小さな回折格子周期を選択するべきであり、これにより比較的広い誤差制限条件を提供する。
【0082】
本発明の好ましい実施例として、E(yk)の逆数を求めてP(yk)を得る。さらにP(yk)の極大値を求める方式により、素点を格子投影の座標系にマッピングしたラッピング座標値を得、像点源追跡を実現する。
【0083】
【0084】
式中、y*はラッピング座標値であり、「ゼロ除算エラー」が出現するのを防止するため、εは無限小であり、通常10の-16乗オーダーの1つの実数である。pは第1正弦波格子の縞模様の周期である。
【0085】
【0086】
は点光源のy座標値を求める極大値演算である。
図6(c)に示すように、y
kが(m,n)部分に位置する画像画素を照らす点光源部分を走査するとき、P(y
k)は極大値を有する。
【0087】
説明する必要があることとして、求めた位相φ(m,n)の値域は0から2πの間にラッピングされるため、E(y
k)の極小値は周期特性を示し、さらにE(y
k)に極小値が出現する周期はpであり、
図6(c)に示す通りである。従って、E(y
k)の極値を求める方式のみにより、複数の極値を得ることができる。これらの極値は像点源追跡の最終的な結果を直接得ることはできないが、これらの極値には像点源追跡マッピング関係が示す点光源の座標が存在し、さらにすべての極値のpに対する余数を求めた結果は同じである。これらの極値のpに対する余数を求めた結果を、点光源のラッピング座標と呼び、さらに余数が0に等しいとき、点光源のラッピング座標がpであると定義する。従って、点光源のラッピング座標の取り得る値の範囲は1からpである。
【0088】
図6に示すのは、点光源のラッピング座標を求める1つの実例である。
図6(a)に示すのは、プロジェクタ結像面の1枚の格子投影であり;
図6(a)に示す格子投影は、測定台表面に投射され、反射光がカメラにより
図6(b)に示す1枚の撮像画像中に捕捉される。
図6(a)の(x
0,y
0)部分に位置する1つの点光源は、プロジェクタにより測定台表面に投射され、さらにカメラにおける(m
0,n
0)部分に位置する画像画素に反射され、
図6(b)に示す通りである。該画像画素部分の求めた画素、及び回折格子周期p=19を利用して、信頼度サブ関数P(y
k)を構成する。y
kがすべての可能性のある取り得る値の範囲を走査するとき、
図6(c)が示すのはP(y
k)の変化特性であり、
図6(c)の曲線の縦座標は0から1の間にスケーリングされる。
図6(c)において、P(y
k)はy
kが388、407、426などに等しいとき、極大値が出現し、その極大値が繰り返し出現する周期は回折格子周期に等しく、すなわち19である。前述するように、上記極大値点を回折格子周期で割ると、点光源のラッピング座標がy
*=8であることがわかる。
【0089】
図5に示すように、画像画素を照らす点光源の座標を最終的に得るため、本発明の実施例において、2つの異なる回折格子周期を選択することにより、2つの異なる信頼度サブ関数を構成する方式を実現する。従って、像点源追跡マッピング関係を求めるため、本実施例において全部で2N枚のデジタル位相シフトパターンを生成する必要があり、2N枚の格子投影を投射する。
図3(b)に示すのは、上記2N枚の格子投影を投射する時間図である。
図3(b)に示すように、1つ目の回折格子周期について、順番に全部でN枚の格子投影を投射する必要があり、隣接する2枚の格子投影はy軸に沿って等距離の位相シフトが生じる。その後、2つ目の回折格子周期について、同様の方式で他のN枚の格子投影を順番に投射する。
【0090】
前記のように、回折格子周期の選択は、十分に誤差制限条件を高めることができることを根拠とする。比較的小さな回折格子周期はより広い誤差制限条件を提供することができるため、1つ目の位相誤差の選択は、最初の回折格子周期(30画素)を選定し、求めた位相誤差を評価し、回折格子周期を調整/縮小する選抜-評価-調整の方式により得られる。評価し、求めた位相誤差が選定した回折格子周期より大きく、提供された誤差制限条件を満たす場合、その時の選定した回折格子周期が1つ目の回折格子周期である。そうでない場合、正の整数域で回折格子周期を縮小し、求めた位相誤差を再び評価し、選定した回折格子周期が十分に誤差制限条件を提供することができるまで行う。2つ目の回折格子周期について、選択するとき、1つ目の回折格子周期より小さくし、すなわち2つ目の回折格子周期は1つ目の回折格子周期よりさらに広い誤差制限条件を提供することができる。その理由は、求めた位相誤差の大きさが回折格子周期の選択と関係せず;誤差閾値は回折格子周期と反比例であり、1つ目の回折格子周期と比較して、2つ目の回折格子周期はより小さいため、より大きな誤差閾値を提供することができる。従って、本実施例において、2つ目の回折格子周期について、選抜-評価-調整の方式で選択を行う必要はない。
【0091】
本発明の好ましい実施例として、求めた位相誤差は平板4により評価される。具体的に、求めた位相誤差は撮像画像における最大のグレースケール勾配方向に沿って評価される。平板について述べると、該方向で符号化した理想的な位相情報は線形であるべきであるため、該方向の各画像画素に対応する求めた位相部分を直線に当てはめ、当てはめた結果が位相基準情報である。求めた位相情報及び位相基準情報の差を計算し、位相誤差を求めることができる。
【0092】
図6(c)に示すように、P(y
k)の周期性により、1つの回折格子周期のみを利用して信頼度サブ関数を構成し、点光源のラッピング座標のみを得ることができる。画像画素を照らす点光源の位置を最終的に得るため、上記周期性を打破する必要がある。本発明の好ましい実施例として、2つの互いに素の回折格子周期を選択することにより、2つの異なる信頼度サブ関数を構成し、さらにその積を計算する方式により、像点源追跡マッピング関係を求めることを実現する。
【0093】
上記2つの信頼度サブ関数の積を計算する理由は以下の通りである。2つの互いに素の回折格子周期をそれぞれp1及びp2と仮定すると、この構造の2つの信頼度サブ関数P1(yk)、P2(yk)に極大値が出現する周期をそれぞれp1及びp2としても構わない。2つの信頼度サブ関数の積について、その極大値が出現する周期はp1p2に変わる。p1p2がykの取り得る値の範囲の最大値より大きい場合、ykがすべての可能性のある取り得る値を走査するとき、P1(yk)及びP2(yk)の積に1つのみ最大値が出現する。これに基づいて、P1(yk)及びP2(yk)の積を信頼度関数PU(yk)と定義する。下式に示す通りである。
PU(yk)=P1(yk)×P2(yk)
【0094】
本発明の好ましい実施例として、式中、第1回折格子周期p1及び第2回折格子周期p2について、p1p2はykの取り得る値の範囲の最大値より大きく;p1、p2はいずれも正の整数であり、互いに素数であるという条件を満たす必要がある。上記の条件を満たすとき、上の式に最大値が出現する位置が、画像画素を照らす点光源座標であることを以下に証明する。
【0095】
PU(yk)がyk=ym部分に最大値を有すると仮定すると、このときP1(yk)及びP2(yk)はいずれもyk=ym部分に極大値を有し;さらに画像画素を照らす点光源座標をy0と仮定しても構わない。信頼度サブ関数P1(yk)、P2(yk)の性質に基づくと、y0=ym+k1p1=ym+k2p2が成立し、すなわちk1p1=k2p2であり、このうちk1、k2はいずれも整数である。「p1p2がykの取り得る値の範囲の最大値より大きく;p1、p2がいずれも正の整数、かつ互いに素である」という条件を満たすとき、すなわち「y<p1p2、p1、p2はいずれも正の整数かつ互いに素数」であり、k1=k2=0である。これによりy0=ymを得ることができる。ykがすべての可能性のある取り得る値を走査するとき、信頼度関数PU(yk)に極大値が出現する位置は、画像画素を照らす点光源座標に対応する。従って、PU(yk)に対して最大値を求める方式により、像点源追跡の最終的な結果を得ることができ、さらに該最大値は像点源追跡マッピング関係が示す点光源の座標であり、これを像点源追跡マッピング座標と呼ぶ。
【0096】
図7に示すのは、像点源追跡マッピング座標を求める1つの実例である。
図6(a)に示す(m
0,n
0)部分に位置する1つの画像画素について、1つ目の回折格子周期p
1=30、2つ目の回折格子周期p
2=19をそれぞれ利用して、2つの信頼度サブ関数P
1(y
k)、P
2(y
k)、及び信頼度関数P
U(y
k)を構成する。
図7(a)に示すのは、信頼度サブ関数P
1(y
k)、P
2(y
k)の変化特性である。
図7(a)に示すように、P
1(y
k)、P
2(y
k)はいずれもy
k=407のとき極大値が出現する。
図7(b)に示すのは信頼度関数P
U(y
k)の変化特性であり、P
U(y
k)はy
k=407のとき最大値が出現する。従って、
図6(a)に示す(m
0,n
0)部分に位置する1つの画像画素について、その像点源追跡マッピング座標は407である。
【0097】
図2(a)に示すのは、本発明が位相誤差の校正を実現する原理図である。像点源追跡マッピング関係を得ると、いずれか1つの画像画素について、これを照らす点光源の位置は像点源追跡マッピング関係によりすでに示されている。本来該点光源で符号化すべきである誤差の無い理想的な位相はすでにコンピュータ中に記録され、既知であるため、誤差を有する求めた位相情報を既知の、点光源中で符号化する理想的な位相情報に置換することにより、求めた位相情報に対して、位相誤差の校正を実現することができ、さらには位相シフト法による形状測定の精度を高める。
【0098】
図2(b)に示すのは、従来の位相誤差補償方法により、位相誤差補償を実現する原理図である。
図2(a)で本発明が示す方法を、従来の位相誤差補償方法と比較し、さらには本発明で示す方法の有益な効果を分析する。
【0099】
図2(a)、2(b)、
図8(a)、8(b)に示すように、本発明の方法は従来の方法に対して、以下の通りである。
1、従来の位相誤差補償方法は、精確でない、直接的又は間接的な誤差モデルに基づき、位相誤差を予め推定する。これにより測定結果から推定した測定誤差を差し引き、求めた位相情報の誤差補償を行う。誤差モデル及び推定した位相誤差が精確でないため、従来の位相誤差補償方法にはシステム誤差が存在する。しかしながら、本発明で示す方法は、像点源追跡マッピング関係を画期的に利用し、誤差の無い理想的な位相情報を直接利用し、位相誤差を校正することを可能にする。従って、本発明で示す方法はより高い精度を有する。
【0100】
2、従来の位相誤差補償方法は、位相誤差を予め推定する。煩雑な操作を行う必要があり、顕著に効率が低下する。しかしながら、本発明で示す方法は、光路方向に逆らい、像点源追跡マッピング関係を利用する。時間及び労力を費やすどのような位相誤差の推定過程も行う必要はないため、本発明で示す方法はより高い効率を有する。
【0101】
3、本発明で示す方法はどのような固定の誤差モデルにも基づかず、すなわち位相誤差がどのような形式で分布するのに関わらず、本発明で示す方法はいずれも位相誤差の校正を実現することができる。しかしながら、従来の位相誤差補償方法は、特定の形式の位相誤差、例えばガンマ非線形性誤差などにのみ作用するため、本発明で示す方法は、より高いロバスト性を有する。
【0102】
1 コンピュータ
2 プロジェクタ
3 測定台
4 平板
5 測定対象
6 カメラ