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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20231030BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K1/42 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022070599
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2020192725の分割
【原出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022090042
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】P 2020011822
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪野 泰利
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特許第7074374(JP,B2)
【文献】特開2019-007549(JP,A)
【文献】特開2017-089864(JP,A)
【文献】特開2016-151310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00- 1/54
31/00-31/05
39/00-51/02
F25B 31/00-31/02
39/00-41/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室および弁口が設けられた弁本体と、前記弁口に対向するように配置された弁体と、を有する電動弁であって、
前記弁口は、
第1周面と、
前記第1周面よりも前記弁室から離れて配置され、前記弁室から離れるにしたがって径が大きくなる第1テーパー面と、
前記第1テーパー面よりも前記弁室から離れて配置され、前記第1周面より大径の第2周面と、
前記第2周面よりも前記弁室から離れて配置され、軸方向と直交する環状平面と、
前記環状平面よりも前記弁室から離れて配置され、前記弁室から離れるにしたがって径が大きくなる第2テーパー面と、を有し、
前記第1周面の径をD1とし、前記第2周面の径をD2とし、前記環状平面の外径をD3としたとき、以下の式(A)を満たすことを特徴とする電動弁。
(D3-D2)>(D2-D1) ・・・ (A)
【請求項2】
前記第2周面の軸方向の長さが前記第1周面の軸方向の長さより長い、請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記第1周面の軸方向の長さをL1とし、前記第2周面の軸方向の長さをL2としたとき、以下の式(1)を満たす、請求項1又は請求項2に記載の電動弁。
2≦L2/L1≦133.3 ・・・ (1)
【請求項4】
前記第1周面の径をD1としたとき、以下の式(2)を満たす、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電動弁。
0.4≦L2/D1≦25 ・・・ (2)
【請求項5】
前記第1周面の径をD1とし、前記第2周面の径をD2としたとき、以下の式(3)を満たす、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の電動弁。
1.01≦D2/D1≦1.55 ・・・ (3)
【請求項6】
前記第1テーパー面のテーパー角度をθ1とし、第2テーパー面のテーパー角度をθ2としたとき、以下の式(4)、(5)を満たす、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の電動弁。
60度≦θ1≦120度 ・・・ (4)
40度≦θ2≦150度 ・・・ (5)
【請求項7】
前記第2周面が、前記弁室側から離れるにしたがって段々と径が大きくなる複数の周面部分を有している、請求項1~請求項4および請求項6のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項8】
前記弁本体に取り付けられた円筒状のキャンと、
前記キャンに収容されたマグネットローターと、
前記キャンが内側にはめ込まれた筒状のステーターと、を有する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ヒートポンプ式冷暖房システム等において冷媒の流量調整に用いられる流量調整弁などの電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電動弁の一例である流量調整弁が特許文献1に開示されている。特許文献1の流量調整弁は、弁本体に弁室および弁口が設けられている。そして、弁口の口径が、弁室から離れるにしたがって3段階以上で順次大きくされている。これにより、冷媒が弁口を通過する際に生じる騒音を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-89864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動弁が用いられるシステムによっては、さらなる騒音の低減が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、冷媒が弁口を流れる際に生じる騒音を効果的に低減できる電動弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁は、弁室および弁口が設けられた弁本体と、前記弁口に対向するように配置された弁体と、を有する電動弁であって、前記弁口は、第1周面と、前記第1周面よりも前記弁室から離れて配置され、前記弁室から離れるにしたがって径が大きくなる第1テーパー面と、前記第1テーパー面よりも前記弁室から離れて配置され、前記第1周面より大径の第2周面と、前記第2周面よりも前記弁室から離れて配置され、前記軸方向と直交する環状平面と、前記環状平面よりも前記弁室から離れて配置され、前記弁室から離れるにしたがって径が大きくなる第2テーパー面と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明において、前記第2周面の軸方向の長さが前記第1周面の軸方向の長さより長いことが好ましい。
【0008】
本発明において、前記第1周面の軸方向の長さをL1とし、前記第2周面の軸方向の長さをL2としたとき、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
2≦L2/L1≦133.3 ・・・ (1)
【0009】
本発明において、前記第1周面の径をD1としたとき、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
0.4≦L2/D1≦25 ・・・ (2)
【0010】
本発明において、前記第1周面の径をD1とし、前記第2周面の径をD2としたとき、以下の式(3)を満たすことが好ましい。
1.01≦D2/D1≦1.55 ・・・ (3)
【0011】
本発明において、前記第1テーパー面のテーパー角度をθ1とし、第2テーパー面のテーパー角度をθ2としたとき、以下の式(4)、(5)を満たすことが好ましい。
60度≦θ1≦120度 ・・・ (4)
40度≦θ2≦150度 ・・・ (5)
【0012】
本発明において、前記第2周面が、前記弁室側から離れるにしたがって段々と径が大きくなる複数の周面部分を有していてもよい。
【0013】
動弁は、弁室および弁口が設けられた弁本体と、前記弁口に対向するように前記弁室に配置された弁体と、を有する電動弁であって、前記弁口は、前記弁室側から軸方向に順に接続された、第1周面と、前記弁室から離れるにしたがって径が大きくなる第1テーパー面と、を有し、かつ、前記弁室側から前記軸方向に順に接続された、前記第1テーパー面より前記弁室から離れて配置され、前記第1周面より大径の第2周面と、前記軸方向と直交する環状平面と、前記弁室から離れるにしたがって径が大きくなる第2テーパー面と、を有していることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記第1テーパー面と前記第2周面とが接続されていてもよい。
【0015】
本発明において、前記第1テーパー面と前記第2周面との間に、(a)前記第1周面より大径でかつ前記第2周面より小径の1つの中間周面が配置されていてもよく、または、(b)前記第1周面より大径でかつ前記第2周面より小径であり、前記弁室から離れるにしたがって段階的に径が大きくなる複数の中間周面が配置されていてもよい。
【0016】
本発明において、前記第1周面の軸方向の長さをL1とし、前記第1テーパー面と前記環状平面との間の長さをL2としたとき、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
2≦L2/L1≦133.3 ・・・ (1)
【0017】
本発明において、前記第1周面の径をD1としたとき、以下の式(2)を満たすことが好ましい。
0.4≦L2/D1≦25 ・・・ (2)
【0018】
本発明において、前記弁本体に取り付けられた円筒状のキャンと、前記キャンに収容されたマグネットローターと、前記キャンが内側にはめ込まれた筒状のステーターと、を有していてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、冷媒が弁口を流れる際に生じる騒音を効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係る流量調整弁の構成を示す断面図である。
図2図1の流量調整弁の弁座部材およびその近傍を示す拡大断面図である。
図3図1の流量調整弁の弁座部材の断面図である。
図4図3の弁座部材の変形例の構成を示す断面図である。
図5図3の弁座部材の他の変形例の構成を示す断面図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る流量調整弁の構成を示す断面図である。
図7図6の流量調整弁の弁座部材およびその近傍を示す拡大断面図である。
図8図6の流量調整弁の弁座部材の断面図である。
図9図8の弁座部材の変形例の構成を示す断面図である。
図10図8の弁座部材の他の変形例の構成を示す断面図である。
図11】比D2/D1と評価値Eとの関係を示すグラフである。
図12】第1テーパー面のテーパー角度θ1と評価値Eとの関係を示すグラフである。
図13】第2テーパー面のテーパー角度θ2と評価値Eとの関係を示すグラフである。
図14】第2周面の長さL2と評価値Eとの関係を示すグラフである。
図15】第1周面の長さL1と評価値Eとの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る流量調整弁について、図1図5を参照して説明する。
【0022】
図1は、本発明の第1実施形態に係る流量調整弁の構成を示す断面図(軸線に沿う断面図)である。図2は、図1の流量調整弁の弁座部材およびその近傍を示す拡大断面図である。図1図2において、弁体および連結機構は、断面ではなく正面方向から見た形状である。図3は、図1の流量調整弁の弁座部材の断面図である。図4は、図3の弁座部材の第1変形例の構成を示す断面図である。図5は、図3の弁座部材の第2変形例の構成を示す断面図である。なお、以下の説明において、「上下」は各図における位置関係を示すものであり、各構成部材の絶対的な位置関係を示すものではない。
【0023】
本実施形態の流量調整弁1は、例えば、ヒートポンプ式冷暖房システム等において流体としての冷媒の流量を調整するのに用いられる電動弁である。
【0024】
図1図3に示すように、流量調整弁1は、弁本体10と、弁体40と、キャン50と、ガイドステム60と、弁軸70と、連結機構78と、マグネットローター80と、ステーター90と、を有している。
【0025】
弁本体10は、弁座部材11と、ケース部材18と、を有している。
【0026】
弁座部材11は、例えば、ステンレスなどの金属材を切削加工することにより作製されている。弁座部材11は、円板状に形成された底壁部12と、底壁部12の上面12aから上方に延びる円筒状の周壁部13と、底壁部12の下面12bから下方に延びる円筒部14とを一体的に有している。
【0027】
弁座部材11は、周壁部13が円筒状のケース部材18の下端部に挿入された状態で、ろう付けによりケース部材18と接合されている。弁座部材11とケース部材18とは弁室15を形成する。ケース部材18には、軸線Lと直交する方向に貫通して弁室15に接続された第1導管6が接合されている。なお、周壁部13は、第1導管6から後述する弁口30に流入する冷媒の流れを軸方向に沿うように整流して騒音を低減する効果を奏する。
【0028】
底壁部12の上面12aには、弁座16が設けられている。弁座16は、径方向内方を向き、弁室15から離れるにしたがって径が小さくなる円すい状のテーパー面である。
【0029】
底壁部12の下面12bには、円筒部14を囲むように円形の環状溝17が設けられている。環状溝17の内縁側の周面は円筒部14の外周面となる。環状溝17に第2導管7の上端部が差し込まれることにより、円筒部14が第2導管7の上端部に挿入される。そして、底壁部12と第2導管7とはろう付けにより接合される。
【0030】
底壁部12および円筒部14を貫通するように冷媒流路である弁口30が設けられている。弁口30は、直線的に延びる断面円形状の空間である。弁口30の弁室15側の開口は弁座16に囲われている。弁口30の軸は、軸線Lに一致する。
【0031】
弁口30は、弁室15側から軸線L方向に順に接続された、第1周面31と、第1テーパー面32と、第2周面33と、環状平面34と、第2テーパー面35と、を有している。
【0032】
第1周面31は、径方向内方を向く円筒状の周面である。一例として、第1周面31の径D1は1.6mmであり、軸線L方向の長さL1は0.3mmである。第1周面31は、弁座16の下端に接続されている。
【0033】
第1テーパー面32は、径方向内方を向き、弁室15から離れるにしたがって径が大きくなる円すい状のテーパー面である。一例として、第1テーパー面32のテーパー角度θ1は80度である。テーパー角度とは、頂角ともいい、一つの軸断面における円すいの二つの母線のなす角度である。
【0034】
第2周面33は、径方向内方を向く円筒状の周面である。第2周面33の径D2は、第1周面31の径D1より大きい。また、第2周面33の軸線L方向の長さL2は、第1周面31の軸線L方向の長さL1より長い。一例として、第2周面33の径D2は1.9mmであり、長さL2は4.6mmである。
【0035】
環状平面34は、軸線L方向と直交する円形環状の平面である。環状平面34の内径は第2周面33の径D2と等しい。環状平面34の外径D3は第2周面33の径D2より大きい。一例として、環状平面の外径D3は4.0mmである。
【0036】
第2テーパー面35は、径方向内方を向き、弁室15から離れるにしたがって径が大きくなる円すい状のテーパー面である。一例として、第2テーパー面35のテーパー角度θ2は60度であり、第2テーパー面35における軸線L方向の長さL3は0.9mmである。本実施形態において、第2テーパー面35の下端は、円筒部14の下端となる。
【0037】
なお、弁口30については、次のように言い換えることができる。すなわち、弁口30は、弁室15側から軸線L方向に順に接続された、第1周面31と、第1テーパー面32と、を有し、かつ、弁室15側から軸線L方向に順に接続された、第2周面33と、環状平面34と、第2テーパー面35と、を有している。そして、第1テーパー面32と第2周面33とが接続されている。
【0038】
弁口30は、以下の式(1)~(6)を満たす。
2≦L2/L1≦133.3 ・・・ (1)
0.4≦L2/D1≦25 ・・・ (2)
1.01≦D2/D1≦1.55 ・・・ (3)
60度≦θ1≦120度 ・・・ (4)
40度≦θ2≦150度 ・・・ (5)
0.2mm<L1<0.8mm ・・・ (6)
【0039】
本発明に係る流量調整弁は、上記式(1)~(6)の全てを満たすことが好ましいが、上記式(1)~(6)のうちの1つまたは2以上の複数の式を満たすものであってもよい。
【0040】
弁体40は、全体的に円柱状に形成されている。弁体40は、上方から下方に向かって軸線L方向に順に接続された胴部41と着座部42と先端部43とを有している。
【0041】
胴部41は円柱状に形成されている。着座部42の外周面は、径方向外方を向き、弁口30側(下方)に向かうにしたがって径が小さくなる円すい状のテーパー面である。本実施形態では、先端部43が、流量特性としてイコールパーセント特性に近似した特性を得るための形状を有している。先端部43は、複数段(ここでは5段)の円すい状のテーパー面部43A~43E(符号43B、43C、43Dは不図示)を有している。テーパー面部43A~43Eは、楕円面を疑似するように先端に近づくにしたがってテーパー角度が段階的に大きくされている。本明細書では、テーパー面部43A~43Eのテーパー角度の半分の角度(すなわち、テーパー面部の母線と弁体40の軸に平行な線との交差角(ただし交差角は劣角))を傾斜角という。この傾斜角のことを、円すい母線角ともいう。最も着座部42に近い最上段のテーパー面部43Aの傾斜角θaは、通常、3°<θa<15°(ここでは5°)に設定される。最も着座部42から遠い最下段のテーパー面部43Eは先の尖った円すい面となっている。なお、先端部43は、流量特性としてリニア特性を得るための形状を採用してもよい。
【0042】
弁体40は、先端部43が弁口30と軸線L方向に対向しかつ弁体40の軸が軸線Lと一致するように弁室15に配置されている。弁体40は、弁座16に対して進退するように軸線L方向に移動される。着座部42は、弁座16に接した際に弁口30を閉じる。弁体40は、弁座16からの距離(リフト量)に応じて弁口30を流れる冷媒の流量を変化させる。
【0043】
キャン50は、上端が塞がれた円筒状に形成されている。キャン50の下端は弁本体10のケース部材18の上端に溶接等により固着されている。
【0044】
ガイドステム60は、円筒状のガイド部61と、ガイド部61の上端に連接され、雌ねじ部65が設けられた弁軸支持部62と、を有している。ガイド部61は、鍔状円板63を介してケース部材18の上端に溶接等により固着されている。ガイドステム60は、ケース部材18の内側とキャン50の内側とにまたがるように配置されている。
【0045】
弁軸70は、円柱状に形成されている。弁軸70の外周面には、ガイドステム60の雌ねじ部65に螺合する雄ねじ部75が設けられている。弁軸70の下端は、円筒状の連結機構78を介して、弁体40と連結されている。連結機構78は、ガイド部61の内側に軸線L方向に摺動可能に配置されている。
【0046】
マグネットローター80は、キャン50の内径より若干小さい外径を有する円筒状の周壁部81と、周壁部81の上端を塞ぐ天井部82と、を一体的に有している。マグネットローター80はキャンの内側に回転可能に収容されている。天井部82には、弁軸70の上端部71が取り付けられている。弁軸70は、マグネットローター80とともに回転する。
【0047】
ステーター90は、略円筒状に形成されている。ステーター90の内側に、キャン50がはめ込まれる。ステーター90は、マグネットローター80を一方向および他方向に回転させる磁界を生じる。ステーター90は、マグネットローター80とともにステッピングモーターを構成する。
【0048】
流量調整弁1において、弁座部材11(底壁部12、周壁部13、円筒部14、弁座16、環状溝17)、ケース部材18、弁口30、弁体40、キャン50、ガイドステム60、弁軸70、マグネットローター80、ステーター90は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。弁口30の環状平面34は、その法線方向が軸線L方向に一致する。
【0049】
流量調整弁1において、マグネットローター80が一方向に回転するように、ステーター90に通電すると、マグネットローター80とともに弁軸70が回転する。ガイドステム60の雌ねじ部65と弁軸70の雄ねじ部75とのねじ送り作用により、弁軸70およびマグネットローター80が下方に移動して、弁体40が弁座16に接する(閉弁状態)。
【0050】
または、流量調整弁1において、マグネットローター80が他方向に回転するように、ステーター90に通電すると、マグネットローター80とともに弁軸70が回転する。ガイドステム60の雌ねじ部65と弁軸70の雄ねじ部75とのねじ送り作用により、弁軸70およびマグネットローター80が上方に移動して、弁体40が弁座16から離れる(開弁状態)。
【0051】
以上より、本実施形態の流量調整弁1によれば、弁座部材11に設けられた弁口30が、弁室15側から順に接続された、第1周面31と、弁室15から離れるにしたがって径が大きくなる第1テーパー面32と、第1周面31より大径の第2周面33と、軸線L方向と直交する環状平面34と、弁室15から離れるにしたがって径が大きくなる第2テーパー面35と、を有する。このようにしたことから、冷媒が弁口30を流れる際に生じる騒音を効果的に低減できる。
【0052】
第2周面33の端部に環状平面34を介して第2テーパー面35を接続する構成では、弁口30における第2周面33の端部より先の部分が環状平面34と第2テーパー面35とによって第2周面33に対して拡径されている。この構成を前者構成という。一方、第2周面33の端部に直接的に第2テーパー面35を接続する構成では、弁口30における第2周面33の端部より先の部分が第2テーパー面35のみによって第2周面33に対して拡径されている。この構成を後者構成という。そのため、同一のテーパー角度θ2で前者構成と後者構成とで同じサイズに拡径する場合、前者構成の方が後者構成より第2テーパー面35の軸線L方向の長さを短くすることができる。そして、前者構成では第2テーパー面35の軸線L方向の長さが短い分、第2周面33の軸線L方向の長さを長くすることができる。そのため、前者構成を有する本実施形態の流量調整弁1は、弁口30においてどちらの向きに冷媒が流れても、第2周面33で冷媒の流速を低下させることができ、騒音を効果的に低減できる。
【0053】
また、冷媒が第2導管7から第1導管6へ流れる場合、第2周面33と環状平面34との間の角部で冷媒中の気泡を砕いて微細化するので、騒音を効果的に低減できる。このとき、第2テーパー面35は、径方向外方から内方に向かう流れを作り、冷媒中の気泡を集めるとともに上記角部を冷媒が通過する速度を高めて、気泡の微細化を促進している。
【0054】
上述した実施形態では、弁座部材11は、第2周面33が軸線L方向全体にわたって同一の径D2となる構成であったが、本発明はこの構成に限定されない。弁座部材11に代えて、例えば、複数の周面部分を有する第2周面33Aを有する第1変形例の弁座部材11A(図4)、または、複数の周面部分を有する第2周面33Bを有する第2変形例の弁座部材11B(図5)を採用した構成であってもよい。図4図5において、上述した弁座部材11と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。第1実施形態の変形例について、以下に説明する。
【0055】
(第1実施形態の第1変形例)
図4に示す弁座部材11Aは、底壁部12および円筒部14を貫通するように冷媒流路である弁口30Aが設けられている。弁口30Aは、弁室15側から順に接続された、第1周面31と、第1テーパー面32と、第2周面33Aと、環状平面34と、第2テーパー面35と、を有している。
【0056】
第2周面33Aは、弁室15側から軸線L方向に順に接続された、第1周面部分33A1と、中間テーパー面33A2と、第2周面部分33A3と、を有している。
【0057】
第1周面部分33A1は、径方向内方を向く円筒状の周面である。第1周面部分33A1の径D21は、第1周面31の径D1より大きい。第1周面部分33A1は、第1テーパー面32の下端に接続されている。中間テーパー面33A2は、径方向内方を向き、弁室15から離れるにしたがって径が大きくなる円すい状のテーパー面である。第2周面部分33A3は、径方向内方を向く円筒状の周面である。第2周面部分33A3の径D22は、第1周面部分33A1の径D21より大きい。第2周面部分33A3は、環状平面34に接続されている。第2周面33Aの軸線L方向の長さL2(すなわち、第1周面部分33A1の軸線L方向の長さL21、中間テーパー面33A2の軸線L方向の長さL22および第2周面部分33A3の軸線L方向の長さL23の合計)は、第1周面31の軸線L方向の長さL1より長い。また、第1周面部分33A1の軸線L方向の長さL21は、第2周面部分33A3の軸線L方向の長さL23より長い。
【0058】
(第1実施形態の第2変形例)
図5に示す弁座部材11Bは、底壁部12および円筒部14を貫通するように冷媒流路である弁口30Bが設けられている。弁口30Bは、弁室15側から順に接続された、第1周面31と、第1テーパー面32と、第2周面33Bと、環状平面34と、第2テーパー面35と、を有している。
【0059】
第2周面33Bは、弁室15側から軸線L方向に順に接続された、第1周面部分33B1と、中間テーパー面33B2と、第2周面部分33B3と、を有している。
【0060】
第1周面部分33B1は、径方向内方を向く円筒状の周面である。第1周面部分33B1の径D21は、第1周面31の径D1より大きい。第1周面部分33B1は、第1テーパー面32の下端に接続されている。中間テーパー面33B2は、径方向内方を向き、弁室15から離れるにしたがって径が大きくなる円すい状のテーパー面である。第2周面部分33B3は、径方向内方を向く円筒状の周面である。第2周面部分33B3の径D22は、第1周面部分33B1の径D21より大きい。第2周面部分33B3は、環状平面34に接続されている。第2周面33Bの軸線L方向の長さL2(すなわち、第1周面部分33B1の軸線L方向の長さL21、中間テーパー面33B2の軸線L方向の長さL22および第2周面部分33B3の軸線L方向の長さL23の合計)は、第1周面31の軸線L方向の長さL1より長い。また、第1周面部分33B1の軸線L方向の長さL21と、第2周面部分33B3の軸線L方向の長さL23と、は略同一である。
【0061】
第1実施形態の各変形例において、長さL2は、第1テーパー面32と環状平面34との間の長さでもある。弁口30Aおよび弁口30Bについても、上記式(1)~(6)のうちの1つまたは2以上の複数の式を満たすことが好ましい。各変形例も、上述した第1実施形態の流量調整弁1と同様の作用効果を奏する。
【0062】
なお、第1変形例の第2周面33Aおよび第2変形例の第2周面33Bは、弁室15から離れるにしたがって段階的に径が大きくなる3つ以上の周面部分を有していてもよい。
【0063】
第1変形例の弁口30Aについては、次のように言い換えることができる。すなわち、弁口30Aは、弁室15側から軸線L方向に順に接続された、第1周面31と、第1テーパー面32と、を有し、かつ、弁室15側から軸線L方向に順に接続された、第2周面部分33A3(第2周面)と、環状平面34と、第2テーパー面35と、を有している。そして、第1テーパー面32と第2周面部分33A3との間に、第1周面部分33A1(1つの中間周面)が配置されている(なお、1つの中間周面に代えて、弁室15から離れるにしたがって段階的に径が大きくなる複数の中間周面が配置されていてもよい。中間周面は、第1周面31より大径でかつ第2周面部分33A3より小径である。)。第1テーパー面32と第2周面部分33A3とが、第1周面部分33A1および中間テーパー面33A2を介して接続されている。第2変形例の弁口30Bについても、上記と同様に言い換えることができる。
【0064】
(第2実施形態)
以下、本発明の第2施形態に係る流量調整弁について、図6図10を参照して説明する。
【0065】
図6は、本発明の第2実施形態に係る流量調整弁の構成を示す断面図(軸線に沿う断面図)である。図7は、図6の流量調整弁の弁座部材およびその近傍を示す拡大断面図である。図6図7において、弁体および連結機構は、断面ではなく正面方向から見た形状である。図8は、図6の流量調整弁の弁座部材の断面図である。図9は、図8の弁座部材の第1変形例の構成を示す断面図である。図10は、図8の弁座部材の第2変形例の構成を示す断面図である。
【0066】
本実施形態の流量調整弁2は、上述した第1実施形態の流量調整弁1にさらに円筒状の整流部材20を追加した構成を有する。以下の説明において、第1実施形態の流量調整弁1と同一(略同一含む)構成を有する構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図6図8に示すように、流量調整弁1は、弁本体10と、整流部材20と、弁体40と、キャン50と、ガイドステム60と、弁軸70と、連結機構78と、マグネットローター80と、ステーター90と、を有している。
【0068】
整流部材20は、円筒状の本体部21と、本体部21の下端を塞ぐ円板部22と、本体部21の上端に径方向外方に突出して設けられた円環板状のフランジ部23と、を一体的に有している。本体部21の内径は、弁座部材11の円筒部14の外径側に隙間なく挿入される寸法である。本体部21の外径は、第2導管7の内径より小さい。円板部22には、複数の冷媒流通孔22aが設けられている。
【0069】
整流部材20の本体部21は、内側に弁座部材11の円筒部14が挿入され、円板部22は、円筒部14と間隔をあけて軸線L方向に対向するように配置される。すなわち、整流部材20は、円筒部14に被せられている。フランジ部23は、環状溝17に挿入されており、環状溝17に挿入された第2導管7と弁座部材11との間に挟まれている。本体部21の内周面は、第2テーパー面35に実質的に接続された、第2周面33より大径の第3周面となる。
【0070】
第2実施形態の流量調整弁2も、上述した第1実施形態の流量調整弁1と同様の作用効果を奏する。
【0071】
図9図10には、整流部材20が被せられた弁座部材11の変形例の構成を示している。図9は、図4に示す弁座部材11Aに整流部材20を被せた構成を示す。図10は、図5に示す弁座部材11Bに整流部材20を被せた構成を示す。
【0072】
上記に本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【0073】
本発明者は、以下に示す本発明の実施例および比較例を用いて、本発明の作用効果について検証した。
【0074】
(検証1)
検証1において、本発明者は、弁口の環状平面が騒音に与える効果について検証した。
【0075】
本発明者は、以下に示す実施例1および比較例1の構成を有する電動弁を作製した。実施例1は環状平面を有している。比較例1は環状平面を有していない。
【0076】
(実施例1)
実施例1は、上述した第1実施形態の電動弁(流量調整弁1)であって、以下の構成を有する弁口30を備える。
第1周面の径D1=1.6mm
第2周面の径D2=1.9mm
環状平面の外径D3=4.0mm
円筒部の外径D4=5.4mm
第2導管の内径D5=6.35mm
第1周面の長さL1=0.3mm
第2周面の長さL2=4.6mm
第2テーパー面の長さL3=0.9mm
第1テーパー面のテーパー角度θ1=80度
第2テーパー面のテーパー角度θ2=60度
【0077】
(比較例1)
比較例1は、実施例1において環状平面を省略した以外は、実施例1と同一の構成を有する。すなわち、比較例1は、実施例1においてD2=D3=1.9mmとした構成を有する。
【0078】
本発明者は、実施例1および比較例1において、所定量の冷媒が流れるように弁口の開度を設定した。実施例1および比較例1から15~30cm程度離れた箇所でかつ最も騒音が大きい箇所に騒音計を設置した。実施例1および比較例1において、第1導管側と第2導管側の差圧を所定の圧力として、第1方向(第1導管→弁室→弁口→第2導管)および第2方向(第2導管→弁口→弁室→第1導管)に冷媒を流して騒音を計測した。計測した比較例1の騒音(騒音計測値)を基準値としたときの実施例1の騒音(言い換えれば、比較例1の騒音から実施例1の騒音を差し引いた値)を表1に示す。負の値は、電動弁が生じる騒音が比較例1より低いことを示す。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示すように、比較例1の騒音を基準値としたときの実施例1の騒音は、冷媒が第1方向に流れる場合に-1.5dBとなり、冷媒が第2方向に流れる場合に-2.1dBとなった。実施例1では、いずれの場合も騒音計測値が比較例1より低くなった。
【0081】
冷媒が第1方向に流れる場合、比較例1では、冷媒が第2周面から第2テーパー面に至ると冷媒流路の径が連続的に広がり、冷媒圧力が低下するとともに冷媒の流速が上昇する。これにより、比較例1では、キャビテーションが発生しやすくなり、騒音を低減できなかったものと考えられる。一方、実施例1では、冷媒が第2周面から環状平面に至ると冷媒流路の径が段階的に広がり、環状平面と第2テーパー面との間の角部(環状平面と第2テーパー面との接続箇所)において冷媒に小さな乱流(渦)が生じて、冷媒の流速が低下する。これにより、実施例1では、キャビテーションの発生が抑えられて、騒音を低減できたものと考えられる。
【0082】
冷媒が第2方向に流れる場合、比較例1では、冷媒が第2テーパー面に沿って流れて冷媒流路の中心にスムーズに集まり、冷媒の流速が上昇する。これにより、比較例1では、キャビテーションが発生しやすくなり、騒音を低減できなかったものと考えられる。また、比較例1では、冷媒に含まれる小さな気泡が冷媒流路の中心にスムーズに集まると互いに結合して大きな泡に成長し、破裂時に騒音を生じてしまう。一方、実施例1では、冷媒が第2テーパー面に沿って流れて環状平面に当たると、冷媒の流速が低下するとともに、冷媒に含まれる小さな気泡が破裂する。これにより、実施例1では、キャビテーションの発生および気泡の成長が抑えられて、騒音を低減できたものと考えられる。
【0083】
(検証2)
検証2において、本発明者は、騒音を効果的に低減できる第1周面の径D1と第2周面の径D2との比D2/D1の範囲について検証した。
【0084】
本発明者は、上述した実施例1において第2周面の径D2を1.60mm~2.60mmまで段階的に変えた電動弁を作製した(径D2以外は実施例1と同じ構成)。そして、本発明者は、検証1と同様に騒音計を設置して、第1導管側と第2導管側の差圧を所定の圧力として冷媒を流して騒音を計測した。騒音を計測し、騒音計測値から基準値を差し引いた値を評価値E[dB]とした。基準値は55dBとした(参考:騒音に係る環境基準(環境省 平成24年3月30日環告54、「専らおよび主に住居の用に供される地域の昼間の基準値:55dB以下))。冷媒の流れ方向は第1方向である。結果を表2および図11に示す。
【0085】
【表2】
【0086】
表2および図11に示すように、比D2/D1が1.01~1.55の範囲内のとき、評価値Eが負の値となり、騒音計測値が基準値より低くなった。特に、比D2/D1が1.13~1.38の範囲内のとき、騒音計測値が基準値より1.8dB以上低くなった。一方、比D2/D1が1.00または比D2/D1が1.63であると、評価値Eが0以上の値となり、騒音計測値が基準値以上となった。この結果から、比D2/D1が1.01~1.55の範囲内であることが好ましく、比D2/D1が1.13~1.38の範囲内であることがより好ましいことがわかる。
【0087】
(検証3)
検証3において、本発明者は、騒音を効果的に低減できる第1テーパー面のテーパー角度θ1の範囲について検証した。
【0088】
本発明者は、上述した実施例1において第1テーパー面のテーパー角度θ1を50~130度まで段階的に変え、第1周面の径D1と第2周面の径D2との比(D2/D1)を1.01、1.19および1.15に変えた電動弁を作製した(テーパー角度θ1および径D2以外は実施例1と同じ構成)。そして、本発明者は、検証2と同様にして、騒音を計測し、騒音計測値から基準値を差し引いた値を評価値E[dB]とした。冷媒の流れ方向は第1方向である。結果を表3および図12に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
表3および図12に示すように、テーパー角度θ1が60~120度の範囲内のとき、比D2/D1がいずれの値でも評価値Eが負の値となり、騒音計測値が基準値より低くなった。特に、テーパー角度θ1が70~100度の範囲内のとき、騒音計測値が基準値より大幅に(概ね0.7dB以上)低くなった。一方、テーパー角度θ1が50度またはテーパー角度θ1が130度であると、比D2/D1がいずれの値でも評価値Eが0以上の値となり、騒音計測値が基準値以上となった。テーパー角度θ1が50度以下であると、冷媒の流速が上昇してキャビテーションが発生しやすくなる。テーパー角度θ1が130度以上であると、冷媒の乱れが大きくなる。そのため、騒音を低減できなかったものと考えられる。この結果から、テーパー角度θ1が60~120度の範囲内であることが好ましく、テーパー角度θ1が70~100度の範囲内であることがより好ましいことがわかる。
【0091】
(検証4)
検証4において、本発明者は、騒音を効果的に低減できる第2テーパー面のテーパー角度θ2の範囲について検証した。
【0092】
本発明者は、上述した実施例1において第2テーパー面のテーパー角度θ2を30~160度まで段階的に変え、第1周面の径D1と第2周面の径D2との比(D2/D1)を1.01、1.19および1.15に変えた電動弁を作製した(テーパー角度θ2および径D2以外は実施例1と同じ構成。ただし、テーパー角度θ2が150度および160度のとき、第2テーパー面の長さL3は0.17mmおよび0.11mmとした。)。そして、本発明者は、検証2と同様にして、騒音を計測し、騒音計測値から基準値を差し引いた値を評価値E[dB]とした。冷媒の流れ方向は第1方向である。結果を表4および図13に示す。
【0093】
【表4】
【0094】
表4および図13に示すように、テーパー角度θ2が40~150度の範囲内のとき、比D2/D1がいずれの値でも評価値Eが負の値となり、騒音計測値が基準値より低くなった。特に、テーパー角度θ2が60~100度の範囲内のとき、騒音計測値が基準値より0.7dB以上低くなった。一方、テーパー角度θ2が30度またはテーパー角度θ2が160度であると、比D2/D1がいずれの値でも評価値Eが正の値となり、騒音計測値が基準値より大きくなった。テーパー角度θ2が30度以下であると、冷媒の流速が上昇してキャビテーションが発生しやすくなる。テーパー角度θ2が160度以上であると、冷媒の乱れが大きくなる。そのため、騒音を低減できなかったものと考えられる。この結果から、テーパー角度θ2が40~150度の範囲内であることが好ましく、テーパー角度θ2が60~100度の範囲内であることがより好ましいことがわかる。
【0095】
(検証5)
検証5において、本発明者は、騒音を効果的に低減できる第1テーパー面の長さL1と第2テーパー面の長さL2との比L2/L1の範囲について検証した。
【0096】
本発明者は、上述した実施例1において第2テーパー面の長さL2を0.3~80.0mmまで段階的に変えた電動弁を作製した(長さL2以外は実施例1と同じ構成)。そして、本発明者は、検証2と同様にして、騒音を計測し、騒音計測値から基準値を差し引いた値を評価値E[dB]とした。冷媒の流れ方向は第1方向である。結果を表5および図14に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
表5および図14に示すように、比L2/L1が2.0~133.3(長さL2が0.6~40.0mm)の範囲内のとき、評価値Eが負の値となり、騒音計測値が基準値より低くなった。特に、比L2/L1が10.0~30.0(長さL2が3.0~9.0mm)の範囲内のとき、騒音計測値が基準値より0.7dB以上低くなった。一方、比L2/L1が1.0(長さL2が0.3mm)または比L2/L1が160.0以上(長さL2が48.0mm以上)であると、評価値Eが0以上の値となり、騒音計測値が基準値以上となった。長さL2が長さL1と同程度に短いと、冷媒圧力が比較的短い間隔で段階的に低下して、キャビテーションの発生を効果的に抑えることができない。長さL2が長すぎると、環状平面において冷媒の流れが比較的安定した状態から急激に変化して、環状平面で生じる渦が大きくなる。そのため、騒音を低減できなかったものと考えられる。この結果から、比L2/L1が2.0~133.3の範囲内であることが好ましく、比L2/L1が10.0~30.0の範囲内であることがより好ましいことがわかる。また、比L2/D1が0.4~25.0(長さL2が0.6~40.0mm)の範囲内であることが好ましく、比L2/D1が1.9~5.6(長さL2が3.0~9.0mm)の範囲内であることがより好ましいこともわかる。
【0099】
(検証6)
検証6において、本発明者は、騒音を効果的に低減できる第1テーパー面の長さL1の範囲について検証した。
【0100】
本発明者は、上述した実施例1において第2周面、環状平面および第2テーパー面を省略し、第1テーパー面の長さL1を0.1~1.0mmまで段階的に変化させた電動弁を作製した(径D1、径D2(第1テーパー面の最大径)、外径D4、内径D5、角度θ1は実施例1と同じ構成)。そして、本発明者は、検証1と同様にして、騒音を計測し、騒音計測値から基準値を差し引いた値を評価値E[dB]とした。なお、検証6においては、第2周面、環状平面および第2テーパー面を省略したため騒音低減効果が減少していることから、基準値を65dBとしている。冷媒の流れ方向は第1方向である。結果を表6および図15に示す。
【0101】
【表6】
【0102】
表6および図15に示すように、長さL1が0.2~0.8mmの範囲内のとき、評価値Eが負の値となり、騒音計測値が基準値より低くなった。特に、長さL1が0.3~0.6mmの範囲内のとき、騒音計測値が基準値より0.5dB以上低くなった。一方、長さL1が0.1mmまたは長さL1が0.9mm以上であると、評価値Eが正の値となり、騒音計測値が基準値より大きくなった。この結果から、長さL1が0.2~0.8mmの範囲内であることが好ましく、長さL1が0.3~0.6mmの範囲内であることがより好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0103】
1…流量調整弁、6…第1導管、7…第2導管、10…弁本体、11、11A、11B…弁座部材、12…底壁部、12a…上面、12b…下面、13…周壁部、14…円筒部、15…弁室、16…弁座、17…環状溝、18…ケース部材、20…整流部材、21…本体部、22…円板部、22a…冷媒流通孔、23…フランジ部、30、30A、30B…弁口、31…第1周面、32…第1テーパー面、33、33A、33B…第2周面、33A1、33B1…第1周面部分、33A2、33B2…中間テーパー面、33A3、33B3…第2周面部分、34…環状平面、35…第2テーパー面、40…弁体、50…キャン、60…ガイドステム、61…ガイド部、62…弁軸支持部、63…鍔状円板、65…雌ねじ部、70…弁軸、71…上端部、75…雄ねじ部、78…連結機構、80…マグネットローター、81…周壁部、82…天井部、90…ステーター、L…軸線、D1…第1周面の径、D2…第2周面の径、D3…環状平面の外径、L1…第1周面の軸線方向の長さ、L2…第2周面の軸線方向の長さ、L21…第1周面部分の軸線方向の長さ、L22…中間テーパー面の軸線方向の長さ、L23…第2周面部分の軸線方向の長さ、L3…第2テーパー面の軸線方向の長さ、θ1…第1テーパー面のテーパー角度、θ2…第2テーパー面のテーパー角度

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15