(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】音波発生装置、熱音響機関及び熱処理炉
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2023001387
(22)【出願日】2023-01-06
【審査請求日】2023-02-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000157072
【氏名又は名称】関東冶金工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154357
【氏名又は名称】山▲崎▼ 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 愼一
(72)【発明者】
【氏名】神田 輝一
(72)【発明者】
【氏名】大下 浩
(72)【発明者】
【氏名】小山 亮
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-044730(JP,A)
【文献】特開2005-351223(JP,A)
【文献】特開2020-183849(JP,A)
【文献】国際公開第2019/102564(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/163419(WO,A1)
【文献】特開2017-166721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
F03G 7/00
H04R 23/00
C21D 1/00 ~ 11/00
F27B 1/00 ~ 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の熱音響用配管に設けられる蓄熱器と、
前記熱音響用配管の流路方向において前記蓄熱器の第1端部に連結される高温側熱交換器と、
前記熱音響用配管の前記流路方向において前記第1端部とは反対側の前記蓄熱器の第2端部に連結される低温側熱交換器と、
前記高温側熱交換器から延出するように設けられる固体伝熱部材であって、前記熱音響用配管の外部に位置する熱源の取付部に取り付けられる固体伝熱部材と
を備え
、
前記固体伝熱部材は、前記熱源内の流体の前記熱源の外部への漏れを防ぐように前記熱源の前記取付部に配置される伝熱仕切部材と接するように設けられる、
音波発生装置。
【請求項2】
前記熱源の前記取付部には、前記熱源の内外を連通する貫通孔が設けられ、
前記伝熱仕切部材は、前記貫通孔に取り付けられる、
請求項1に記載の音波発生装置。
【請求項3】
前記固体伝熱部材は、棒状部材であり、
前記伝熱仕切部材は、一端が閉じられた管部材である、
請求項
1に記載の音波発生装置。
【請求項4】
前記固体伝熱部材は、グラファイト製又は炭化ケイ素製である、
請求項
1から3
のいずれか一項に記載の音波発生装置。
【請求項5】
請求項1に記載の音波発生装置を備えている第1変換部と、
前記第1変換部の前記熱音響用配管に接続配管を介して接続され、前記第1変換部で生成された音波からエネルギーを発生させる第2変換部と
を備える熱音響機関。
【請求項6】
前記第2変換部は、前記第1変換部で生成された音波から電気エネルギー又は熱エネルギーを発生させるように構成されている、
請求項5に記載の熱音響機関。
【請求項7】
請求項5に記載の熱音響機関を備えた熱処理炉。
【請求項8】
被熱処理物を加熱する加熱部と、該加熱部において加熱された前記被熱処理物を冷却する冷却部とを備え、
前記伝熱仕切部材は、前記加熱部に設けられ、
前記第2変換部は、前記冷却部に供給される冷熱エネルギーを発生させるように構成されている、
請求項7に記載の熱処理炉。
【請求項9】
被熱処理物を加熱する加熱部と、該加熱部において加熱された前記被熱処理物を冷却する冷却部と、少なくとも前記加熱部への供給用のガスを生成するガス供給装置とを備え、
前記伝熱仕切部材は、前記加熱部に設けられ、
前記第2変換部は、前記ガス供給装置の変成装置で生成された変成ガスを冷却する冷熱エネルギーを発生させるように構成されている、
請求項7に記載の熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱の入力に基づき音波を発生させる音波発生装置、この音波発生装置を備えた熱音響機関、及び、この熱音響機関を備えた熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の工場、発電所等において各種機械から排出される排熱を利用する構成が種々提案されていて、これらは省エネルギー化の観点から更なる発展が期待されている。例えば、特許文献1は、工業炉の炉設備の排気管に配置された高温側熱交換器、蓄熱器及び低温側熱交換器が順に接続された原動機が出力ループ配管に配置された第1変換部と、接続配管を介して第1変換部で生成された音波が伝達される第2変換部とを備えた、熱音響機関を開示する。第1変換部は、排気管の排熱から熱音響自励振動による音波を発生させる構成を有し、第2変換部は、接続配管から音波を入力して音波の振動から電力を発生させたり、冷熱を発生させたりするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、工場等において、各種機械の排熱を有効に取り出すために、例えば排ガスそのものを排気管から外部に取り出すことは、排ガスの漏れの可能性などの点で改善の余地がある。一方で、上記特許文献1においては、排気管から排熱を取り出す構成については何ら記載されていない。
【0005】
本開示の目的は、熱音響機関に関して、熱源からガスを直接取り出すことなく、熱源の熱を取り出して、音波を発生させることを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1態様は、
環状の熱音響用配管に設けられる蓄熱器と、
前記熱音響用配管の流路方向において前記蓄熱器の第1端部に連結される高温側熱交換器と、
前記熱音響用配管の前記流路方向において前記第1端部とは反対側の前記蓄熱器の第2端部に連結される低温側熱交換器と、
前記高温側熱交換器から延出するように設けられる固体伝熱部材であって、前記熱音響用配管の外部に位置する熱源の取付部に取り付けられる固体伝熱部材と
を備えた、音波発生装置
を提供する。
【0007】
好ましくは、前記固体伝熱部材は、前記熱源と前記固体伝熱部材との間に介在するように前記熱源の前記取付部に配置される伝熱仕切部材と接するように設けられる。
【0008】
例えば、前記固体伝熱部材は、棒状部材であるとよく、また前記伝熱仕切部材は、一端が閉じられた管部材であるとよい。
【0009】
例えば、前記固体伝熱部材は、グラファイト製又は炭化ケイ素製であるとよい。
【0010】
本開示の第2態様は、
前述の音波発生装置を備えている第1変換部と、
前記第1変換部の前記熱音響用配管に接続配管を介して接続され、前記第1変換部で生成された音波からエネルギーを発生させる第2変換部と
を備える熱音響機関
を提供する。
【0011】
好ましくは、前記第2変換部は、前記第1変換部で生成された音波から電気エネルギー又は熱エネルギーを発生させるように構成されている。
【0012】
本開示の第3態様は、
前述の熱音響機関を備えた熱処理炉
を提供する。
【0013】
好ましくは、前述の熱処理炉は、被熱処理物を加熱する加熱部と、該加熱部において加熱された前記被熱処理物を冷却する冷却部とを備える。この場合、前記伝熱仕切部材は、前記加熱部に設けられ、前記第2変換部は、前記冷却部に供給される冷熱エネルギーを発生させるように構成されているとよい。
【0014】
また、好ましくは、前述の熱処理炉は、被熱処理物を加熱する加熱部と、該加熱部において加熱された前記被熱処理物を冷却する冷却部と、少なくとも前記加熱部への供給用のガスを生成するガス供給装置とを備える。この場合、前記伝熱仕切部材は、前記加熱部に設けられ、前記第2変換部は、前記ガス供給装置の変成装置で生成された変成ガスを冷却する冷熱エネルギーを発生させるように構成されているとよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示の上記第1から第3態様によれば、上記構成を備えるので、熱音響機関に関して、熱源からガスを直接取り出すことなく、熱源の熱を取り出して、音波を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示に係る基本構成例の音波発生装置と、その音波発生装置を備える基本構成例の熱音響機関を説明するための概念図である。
【
図2】
図2は、
図1の熱音響機関の一例を説明するための概念図である。
【
図3】
図3は、
図2の熱音響機関の第1変換部の構成が適用された、第1実施形態に係る熱処理炉の概略構成図である。
【
図4】
図4は、
図3の熱処理炉に設けられた熱音響機関及びその周囲の拡大図である。
【
図5】
図5は、
図2の熱音響機関の第1変換部の構成が適用された、第2実施形態に係る熱処理炉の概略構成図である。
【
図6】
図6は、
図5の熱処理炉に設けられた熱音響機関及びその周囲の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
まず、本開示に係る基本構成例の音波発生装置10と、その音波発生装置10を備える基本構成例の熱音響機関12を
図1に基づき説明する。熱音響機関12は、音波発生装置10を備えている第1変換部14と、第1変換部14の熱音響用配管16に接続配管18を介して接続された第2変換部20とを備えている。
【0019】
第1変換部14は音波発生装置10を備え、熱音響用配管16とコア部22とを備える。熱音響用配管16は、環状つまりループ状の配管である。接続配管18の一端は熱音響用配管16に連通し、接続配管18の他端には第2変換部20が設けられている。熱音響用配管16及び接続配管18は互いに連通し、所定の作動気体(ここではヘリウム(He))が所定圧力下で封入されている。なお、作動気体は、ヘリウムに限定されず、種々の気体で有り得、例えばヘリウム、窒素、アルゴン及び空気のうちの1つの気体又はそれらのうちの2つ以上を含む混合気体であってもよい。また、第2変換部20が接続配管18に連通する配管(例えば後述する環状配管82)を有するとき、その配管にも、熱音響用配管16及び接続配管18内と同じく、所定の作動気体が所定圧力下で封入される。
【0020】
第1変換部14つまり音波発生装置10は、前述のように、環状の熱音響用配管16と、コア部22とを備えている。コア部22は、原動機と称される場合もあり、蓄熱器24と、高温側熱交換器26と、低温側熱交換器28とを備えている。蓄熱器24と、高温側熱交換器26と、低温側熱交換器28とは、高温側熱交換器26と低温側熱交換器28とで蓄熱器24を挟むように熱音響用配管16に設けられる。高温側熱交換器26は、熱音響用配管16の流路方向FA1において蓄熱器24の一端(第1端部)に連結される。高温側熱交換器26は、蓄熱器24の第1端部を相対的に加熱するように構成されている。低温側熱交換器28は、熱音響用配管16の流路方向FA1において第1端部とは反対側の蓄熱器24の他端(第2端部)に連結される。低温側熱交換器28は、蓄熱器24の第2端部を相対的に冷却するように構成されている。
【0021】
蓄熱器24は、例えばハニカムのような細かい流路が設けられた構造体であり、セラミック又は金属から作製され得、ここではステンレス鋼製ハニカム状構造体を有しているが、その他の構成を有してもよい。蓄熱器24は、熱音響用配管16の流路方向FA1に直交する断面において複数の流路つまり孔を有して構成され、例えば、その複数の孔の各々は、1mm未満のサイズ、例えば1mm未満の内径を有するとよい。高温側熱交換器26及び低温側熱交換器28は、それぞれ高い熱伝導率を有するとよく、それぞれ金属製であり得、例えば銅製である。高温側熱交換器26及び低温側熱交換器28は、それぞれ、蓄熱器24と同様に細かい流路を備え、熱音響用配管16に封入された作動気体を自励振動させるために蓄熱器24の複数の流路の両端部間に温度勾配が生じるように作動気体との間で熱交換を行う熱交換器を構成している。
【0022】
高温側熱交換器26から固体伝熱部材30が延出するように、固体伝熱部材30は設けられている。固体伝熱部材30は耐熱性に優れ、また、高い熱伝導率を有するとよい。例えば、固体伝熱部材30は1000℃以上の耐熱温度を有するとよく、150W/mK前後の熱伝導率又はそれ以上の熱伝導率を有するとよい。固体伝熱部材30は、そのような特性を有する材料から又はそのような特性を有する材料を有して構成されるとよい。固体伝熱部材30はここでは、グラファイト製の棒状部材であるが、他の材料、例えば炭化ケイ素(SiC)製であってもよく、また棒状以外の形状を有してもよい。固体伝熱部材30は、熱音響用配管16の外部に位置する熱源32に設けられた取付部34に取り付けられる。
【0023】
図1に示すように、熱源32の取付部34に伝熱仕切部材36が配置されている。この伝熱仕切部材36は、熱源32の温度などに応じて選定された材料で作製され得、例えば鉄製であり、より具体的にはステンレス鋼製であり得、伝熱に優れるとよい。伝熱仕切部材36は、それ以外の材料製であってもよく、例えばニッケル基合金製であってもよく、具体的にはインコネル(登録商標)を有して構成されてもよい。伝熱仕切部材36は、熱音響用配管16の外部に位置する熱源32と、固体伝熱部材30との間に介在するように熱源32に配置される。そして、伝熱仕切部材36に接するように、固体伝熱部材30は設けられる。例えば、固体伝熱部材30は、機械的接続手段により、伝熱仕切部材36に着脱可能に接続されて、これにより伝熱仕切部材36に接してもよい。具体的には、固体伝熱部材30は雌ねじ部又は雄ねじ部を有し、伝熱仕切部材36の対応する雄ねじ部又は雌ねじ部に着脱自在に螺合されてもよい。これにより、高温側熱交換器26は、伝熱仕切部材36及び固体伝熱部材30を介して熱源32からの熱を受け取り、常温を超えた所定温度域(第1所定温度域)にまで加熱され得る。なお、伝熱仕切部材36が設けられずに、熱源32の取付部34に、固体伝熱部材30が接するように設けられ、例えば固体伝熱部材30が直接取り付けられてもよい。例えば、取付部34に固体伝熱部材30が機械的接続手段により着脱自在に取り付けられてもよく、具体的には、取付部34が雌ねじ孔であるとき、固体伝熱部材30に雄ねじ部が設けられて、螺合されてもよい。
【0024】
一方、低温側熱交換器28は、入熱無しに保たれることができ、又は水などの冷却液体を用いた冷却設備を有することができる。これにより、低温側熱交換器28は、高温側熱交換器26よりも低い所定温度域(第2所定温度域)の温度を有するようにされる。
【0025】
したがって、蓄熱器24の両端では温度差が生じ、蓄熱器24では作動流体の流通方向FA1に温度勾配が形成される。よって、第1変換部14の熱音響用配管16では、内部に存在する作動気体の加熱による膨張と、冷却による収縮が行われ、熱音響自励振動が生じ、それにより音波が発生する。このように、音波発生装置10を備えた第1変換部14において、蓄熱器24を備えたコア部22では、入力された熱から音波への変換が行われる。
【0026】
第1変換部14で生成された音波は、熱音響用配管16に接続された接続配管18に伝わり、第2変換部20に伝達される。熱音響用配管16に接続配管18が接続することで、接続配管18と熱音響用配管16とにより略T字状部17が形成されている。接続配管18が滑らかにつながる熱音響用配管16の流路部16A側に蓄熱器24の低温側熱交換器28が向き、接続配管18と熱音響用配管16との略T字状部17に突き当たるように延びる熱音響用配管16の流路部16B側に蓄熱器24の高温側熱交換器26が向くようにコア部22は熱音響用配管16に配置されている。そして、ここでは、低温側熱交換器28に相対的に近く、かつ、高温側熱交換器26から相対的に遠い箇所に、接続配管18の一端が接続されている。接続配管18の他端には第2変換部20が設けられている。第2変換部20は、第1変換部14で生成された音波からエネルギーを発生させるように構成されていて、より具体的には、第1変換部14で生成された音波から電気エネルギー又は熱エネルギーを発生させるように構成されるとよい。第2変換部20が、電気エネルギーを発生するとき、熱音響機関12は熱音響発電機を構成する。このとき、第2変換部20は、発電機として構成され、例えば音波の振動流をコイルの起電力に変換するリニア型発電機、又は、音波の振動流を一方向の回転力に変換する衝動タービン型発電機の構成を備えることができる。
【0027】
なお、熱源32は、例えば、工場、発電所等の各種機械の加熱部又は、その排ガス、排水などの高温流体が流れる配管などである。熱源32が熱処理炉の加熱部、特に加熱室である場合の熱音響機関12の一例を
図2に基づいて説明する。
【0028】
図2に示す熱音響機関12の一例である熱音響機関12Aは、高温側熱交換器26から延出する固体伝熱部材30の先端が、熱源32である熱処理炉40の加熱室42の取付部34に設けられた貫通孔44に配置された伝熱仕切部材36に接するように設けられていること以外、
図1に示す熱音響機関12と同じ構成を備える。熱音響機関12Aでは、固体伝熱部材30は、棒状部材であり、熱処理炉40の加熱室42の外壁46及び外壁46の内側の断熱壁48に設けられた貫通孔44に配置された、伝熱仕切部材36の一例である管部材50に差し込まれている。管部材50は一端が閉じられていて、その閉じられた端部(閉端部)50Aが加熱室42内の炉内空間Sに露出するように、貫通孔44を閉じるように設けられる。貫通孔44と管部材50との間に、加熱室42の内外をつなぐ隙間等がないように、管部材50は貫通孔44に取り付けられるとよい。したがって、熱処理炉40の加熱室42内から高温の炉内雰囲気ガスなどが外部に漏れることなく、その炉内雰囲気ガス等の熱が管部材50及び固体伝熱部材30を介して、第1変換部14の高温側熱交換器26に伝達される。よって、
図1に基づいて熱音響機関12において既に説明したように、第1変換部14で熱の入力を受けて、熱音響自励振動により音波を発生させることができる。なお、取付部34に設けられるのは貫通孔44に限定されず、凹部等であってもよく、管部材50は、加熱室42内に露出しないように設けられてもよい。これは、加熱室42の炉内温度、伝熱仕切部材36又は管部材50の材料特性などに応じて設計されるとよい。これは、取付部34に固体伝熱部材30が直接取り付けられる場合にも、同様である。
【0029】
なお、熱音響機関12Aにおいて、第2変換部20が電気エネルギーを発生するとき、その電気エネルギーは、熱処理炉40の各種モータの作動及び/又は加熱部のヒータの作動に用いられることができる。より好ましくは、この電気エネルギーは、熱処理炉40の制御装置の電源、又は、非常用電源に用いられ得る。
【0030】
次に、
図2に示す熱音響機関12Aの第1変換部14の構成が適用された、本開示の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。まず、第1実施形態について
図3及び
図4に基づいて説明する。
【0031】
図3に、第1実施形態に係る熱処理炉40Aの概略構成図を示し、
図4に、
図3の熱処理炉40Aに設けられた熱音響機関12B及びその周囲の拡大図を示す。熱処理炉40Aは、所謂連続熱処理炉であり、熱処理炉40Aに搬入された被処理物Wに対して、加熱手段の一例であるヒータ52により所定の温度に設定された高温下の窒素ガスなどの中性ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガス中で光輝処理、調質処理、焼入/焼戻処理、ろう付け、焼結などの熱処理が行われる。熱処理炉40Aに中性ガス又は不活性ガスからなる雰囲気ガスを供給するガス供給装置の図示及び説明は省略する。
【0032】
熱処理炉40Aは、上流側から下流側に向けて、乾燥炉54、入口真空置換室56、前室58、予熱室60、加熱室62、徐冷室64、急速冷却室66、冷却室68、後室70、出口真空置換室72が順に配置されている。乾燥炉54には駆動装置で駆動される無端環状の搬送ベルト73aが設けられ、入口真空置換室56には搬送ローラ73bが設けられ、前室58から後室70にかけては駆動装置で駆動される無端環状の搬送ベルト74が設けられていて、出口真空置換室72にも搬送ローラ75が設けられている。これらにより、被熱処理物Wは、乾燥炉54から順に出口真空置換室72まで搬送される。なお、乾燥炉54の搬送ベルト73aは搬送ローラとされてもよい。また、乾燥炉54は乾燥室と称されてもよい。
【0033】
乾燥炉54は被熱処理物Wの表面等に付着した水分等を除くように1つ又は複数のヒータ52を備える。入口真空置換室56には、真空ポンプ及び可動隔壁などが設けられ、炉外と炉内とを仕切る構成を備え、具体的には大気から中性ガス又は不活性ガスへの置換が行われる。出口真空置換室72には、炉内に大気つまり酸素が侵入しないように炉内と炉外を仕切る構成を備え、例えば入口真空置換室56と同じ構成を備える。前室58、予熱室60及び加熱室62はそれぞれ上記加熱室42つまり加熱部Hを構成し、それぞれ、1つ又は複数のヒータ52が設けられている。徐冷室64は加熱機能も冷却機能も有さず、加熱室62と急速冷却室66との間に位置している。急速冷却室66及び冷却室68は、冷却部Cを構成し、冷却手段として水冷ジャケット76を備えている。水冷ジャケット76の冷却液は、例えば水であり、循環冷却される構成を備えているが、流水を用いてもよい。急速冷却室66は、更に、冷却手段として冷却熱交換器78を備えている。冷却熱交換器78はここではフィンチューブ型熱交換器として構成されていて、急速冷却室66内に主に位置する。
【0034】
なお、予熱室60には、二次燃焼室80が設けられている。二次燃焼室80は、予熱室60が被熱処理物Wの油分、バインダーなどを除去する脱バインダー室として機能するとき、揮発したバインダーを燃焼処理させるように1つ又は複数のヒータ52を備える。
【0035】
上記構成の熱処理炉40Aにおいて、熱音響機関12Bが設けられている。熱音響機関12Bでは、高温側熱交換器26から延出する固体伝熱部材30の先端は、熱源32である熱処理炉40Aの加熱室62の取付部34である貫通孔44に配置された伝熱仕切部材36に接するように設けられている。更に、熱音響機関12Bは、第2変換部20が環状配管82及び、その環状配管82に配置された蓄熱器84と高温側熱交換器86と低温側熱交換器88とを備えるコア部90を備え、そのコア部90の低温側熱交換器88が急速冷却室66の冷却熱交換器78の冷却用に機能するという特徴を有する。これら以外、熱音響機関12Bは、熱音響機関12、12Aと実質的に同じ構成を備える。以下では、熱音響機関12Bにおけるこれらの特徴的な構成を中心に説明する。
【0036】
図4に示すように、熱音響機関12Bは、音波発生装置10を備える第1変換部14と、第1変換部14に接続配管18を介して接続する第2変換部20とを備える。第2変換部20は、前述のように、環状配管82及び、蓄熱器84と高温側熱交換器86と低温側熱交換器88とを備えるコア部90を備える。蓄熱器84と高温側熱交換器86と低温側熱交換器88とを備えるコア部90は、環状つまりループ状の環状配管82に設けられている。蓄熱器84は上記蓄熱器24と同じ構成を備えていて、例えばハニカムのような細かい流路が設けられた構造体であり、セラミック又は金属から作製され得、ここではステンレス鋼製ハニカム状構造体を有しているが、その他の構成を有してもよい。蓄熱器84は、環状配管82の流路方向FA2に直交する断面において複数の流路つまり孔を有して構成され、例えば、その複数の孔の各々は、1mm未満のサイズ、例えば1mm未満の内径を有するとよい。高温側熱交換器86は、上記高温側熱交換器26と同じ構成を備え、蓄熱器84と同様に細かい流路を備え、高い熱伝導率を有するとよく、金属製であり得、例えば銅製である。高温側熱交換器86は、環状配管82の流路方向FA2において蓄熱器84の一端(第1端部)に連結される。高温側熱交換器86は、蓄熱器84の第1端部を所定温度に保つ、ここでは常温に保つように構成されている。低温側熱交換器88は、上記低温側熱交換器28と同じ構成を備え、蓄熱器84と同様に細かい流路を備え、高い熱伝導率を有するとよく、金属製であり得、例えば銅製である。低温側熱交換器88は、環状配管82の流路方向FA2において第1端部とは反対側の蓄熱器84の他端(第2端部)に連結される。
【0037】
第1変換部14のコア部22の高温側熱交換器26から延出する固体伝熱部材30の先端は、熱処理炉40Aの加熱室62の貫通孔44に配置された伝熱仕切部材36に接するように設けられている。貫通孔44は、熱処理炉40Aの加熱室62の取付部34に、加熱室62の外壁46及び断熱壁48を貫通するように形成され、加熱室62の内外を連通する。貫通孔44には、伝熱仕切部材36の一例である管部材50が隙間がないように取り付けられている。管部材50の閉端部50Aは、加熱室62内に露出するように設けられ、炉内雰囲気ガスの熱を固体伝熱部材30に伝達することができる。
【0038】
一方、熱音響機関12Bにおいて、第2変換部20は、冷却部C、ここでは、急速冷却室66の冷却熱交換器78に供給される冷熱エネルギーを発生させるように構成されている。前述のように、第2変換部20は、環状配管82及び、蓄熱器84と高温側熱交換器86と低温側熱交換器88とを備えるコア部90を備える。そして、そのコア部90の低温側熱交換器88が急速冷却室66の冷却熱交換器78に、伝熱部の一例である冷却装置88Aを介して接続する。冷却装置88Aは、冷却液が流れるホース88Bを備えて構成されている。そのホース88B内において冷却液がより積極的に循環するようにポンプが設けられてもよい。冷却装置88Aは、そのホース88B内の冷却液が、低温側熱交換器88と熱交換可能であるとともに、冷却熱交換器78とも熱交換可能であるように構成されている。
【0039】
第2変換部20の環状配管82において、接続配管18が接続することで、接続配管18と環状配管82とにより略T字状部83が形成されている。接続配管18が滑らかにつながる環状配管82の流路部82A側に蓄熱器84の高温側熱交換器86が向き、接続配管18と環状配管82との略T字状部83に突き当たるように延びる環状配管82の流路部82B側に蓄熱器84の低温側熱交換器88が向くようにコア部90は環状配管82に配置されている。したがって、第2変換部20の低温側熱交換器88は第2変換部20の高温側熱交換器86よりも低い温度を有することができる。そして、この低温側熱交換器88は、冷却装置88Aを介して冷却熱交換器78に伝熱可能である。
【0040】
また、第1変換部14のコア部22の低温側熱交換器28及び第2変換部20のコア部90の高温側熱交換器86を概ね同じ所定温度、例えば常温に維持するように、低温側熱交換器28及び高温側熱交換器86のそれぞれは、水冷ジャケット76の冷却液で冷却するように構成されている。ただし、
図4では、図示を簡単にするため、低温側熱交換器28の水冷ジャケット76と、高温側熱交換器86の水冷ジャケット76と、急速冷却室66の水冷ジャケット76とを別々に記載しているが、一体のものである。なお、低温側熱交換器28の水冷ジャケット76と、高温側熱交換器86の水冷ジャケット76と、急速冷却室66の水冷ジャケット76とは独立した構成を備えてもよい。また、低温側熱交換器28及び高温側熱交換器86の少なくともいずれか一方は冷却手段を有さないで構成される場合もある。
【0041】
上記した構成によれば、熱処理炉40Aの熱音響機関12Bにおいて、第1変換部14で加熱室62からの熱つまり熱エネルギー(
図3の矢印A1参照)を受けて、音波を生じさせ、その音波を用いて第2変換部20のコア部90で冷熱エネルギーを生じさせ、コア部90の低温側熱交換器88と熱交換可能である冷却熱交換器78をその冷熱エネルギー(
図3の矢印A2参照)で冷却することができる。したがって、熱処理炉40Aは、熱音響機関12Bで加熱室62の熱ここでは特に排熱を有効に取り出し、第1変換部14で熱音響自励振動により音波を発生させ、その音波を第2変換部20で冷熱エネルギーに変換し、その冷熱エネルギーで冷熱交換機78の冷却を可能にする。よって、熱音響機関12Bを備えた熱処理炉40Aは省エネルギー化に極めて優れる。
【0042】
次に、第2実施形態について
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5に、第2実施形態に係る熱処理炉40Bの概略構成図を示し、
図6に、
図5の熱処理炉40Bに設けられた熱音響機関12C及びその周囲の拡大図を示す。熱処理炉40Bは、所謂連続熱処理炉であり、熱処理炉40Bに搬入された被処理物Wに対して、ヒータ52により所定の温度に設定された高温下の還元性の雰囲気ガス中で光輝処理、調質処理、焼入/焼戻処理、ろう付け等の熱処理が行われる。熱処理炉40Bはガス供給装置92を備える。ガス供給装置92は、少なくとも熱処理炉40Bの加熱部Hつまり加熱室100への供給用のガスを生成するように構成されている。ガス供給装置92は、都市ガス、メタン(CH
4)、プロパン(C
3H
8)、ブタン(C
4H
10)、等の流量調整された炭化水素ガスと空気とを混合した混合ガスを、ガス変成装置92Aで発熱性化学反応を生じさせて燃焼させ、さらに燃焼により生じた高温の変成ガスを冷却装置94で冷却及び脱湿させ、発熱型変成ガスであるDXガスとして熱処理炉40Bの炉内に供給する(
図5の矢印A3及び
図6の矢印A4参照)。ここでは、
図5及び
図6に示すように、変成ガスは、後述する冷却室104に供給されて、その冷却室104及び徐冷室102を介して加熱室100に供給されるが、変成ガスの炉内への供給経路はこれに限定されない。
【0043】
熱処理炉40Bは、上流側から下流側に向けて、前室96、予熱室98、加熱室100、徐冷室102、冷却室104及び後室106が順に配置されている。前室96、予熱室98、加熱室100、徐冷室102、冷却室104及び後室106は、それぞれ、前室58、予熱室60、加熱室62、徐冷室64、冷却室68及び後室70に相当し、上記構成を備える。予熱室98は、上記予熱室60の構成に加えて、ガス変成装置92Aが配置され、ガス変成装置92Aは所謂変成バーナであるので、このガス変成装置92Aからの熱で加熱が行われる。予熱室98には、ヒータ52と、このガス変成装置92Aが配置されるが、予熱室98のヒータ52は省略可能であり、また、ガス変成装置92Aは予熱室98以外の箇所に配置されてもよい。ガス変成装置92Aは、変成装置の一例であり、独立した変成装置つまり変成炉とされてもよい。前室96から後室106にかけては駆動装置で駆動される無端環状の搬送ベルト108が設けられていて、搬送ベルト108により被熱処理物Wは搬送される。
【0044】
上記構成の熱処理炉40Bにおいて、熱音響機関12Cが設けられている。熱音響機関12Cは、第1実施形態の熱処理炉40Aの熱音響機関12Bと比べて、第2変換部20の低温側熱交換器88の冷熱エネルギーが上記冷却装置94で用いられ、よってガス供給装置92のガス変成装置92Aで発生させた変成ガスの露点を下げることが行われることに特徴を有する。これ以外、熱音響機関12Cは、熱音響機関12Bと実質的に同じ構成を備える。以下では、熱音響機関12Cにおけるこの特徴的な構成を中心に説明する。
【0045】
図6に示すように、熱音響機関12Cは、音波発生装置10の構成を備える第1変換部14と、第1変換部14に接続配管18を介して接続する第2変換部20とを備える。なお、第1変換部14のコア部22の低温側熱交換器28及び第2変換部20のコア部90の高温側熱交換器86のそれぞれは、ここでは冷却手段を有さない。しかし、第1実施形態の熱音響機関12Bのように、熱音響機関12Cにおいて、第1変換部14のコア部22の低温側熱交換器28及び第2変換部20のコア部90の高温側熱交換器86を概ね同じ所定温度、例えば常温に維持するように、低温側熱交換器28及び高温側熱交換器86のそれぞれは、ガス供給装置92の水冷ジャケット76の冷却液で、又はその水冷ジャケット76から独立した冷却手段で冷却するように構成されてもよい。
【0046】
第1変換部14のコア部22の高温側熱交換器26から延出する固体伝熱部材30の先端は、熱処理炉40Bの加熱室100の貫通孔44に配置された伝熱仕切部材36に接するように設けられている。貫通孔44は、加熱部Hである加熱室100の取付部34に設けられ、加熱室100の外壁46及び断熱壁48を貫通するように形成され、加熱部Hである加熱室100の内外を連通する。貫通孔44には、伝熱仕切部材36の一例である管部材50が隙間がないように取り付けられている。管部材50の閉端部50Aは、加熱室100内に露出するように設けられ、炉内雰囲気ガスの熱を固体伝熱部材30に伝達することができる。
【0047】
一方、熱音響機関12Cにおいて、第2変換部20は、変成装置であるガス変成装置92Aで生成された変成ガス、ここではDXガスを冷却する冷熱エネルギーを発生させるように構成されている。前述のように、第2変換部20は、環状配管82及び、蓄熱器84と高温側熱交換器86と低温側熱交換器88とを備えるコア部90を備える。そして、そのコア部90の低温側熱交換器88が冷却装置94に伝熱可能に接続されている。冷却装置94は、変成ガスが通る通路を区画形成し、その通路を通る変成ガスと熱交換を可能にするように熱交換器の構成を有する。これにより、冷却装置94の変成ガスが通る通路には低温側熱交換器88から冷熱エネルギーが伝達される。
【0048】
上記した構成によれば、熱処理炉40Bの熱音響機関12Cにおいて、第1変換部14で加熱室100からの熱つまり熱エネルギー(
図5の矢印A5参照)を受けて、音波を生じさせ、その音波を用いて第2変換部20のコア部90で冷熱エネルギーを生じさせ、コア部90の低温側熱交換器88と熱交換可能である冷却装置94をその冷熱エネルギー(
図5の矢印A6参照)で冷却することができる。したがって、熱処理炉40Bは、熱音響機関12Cで加熱室100の熱ここでは特に排熱を有効に取り出し、第1変換部14で熱音響自励振動により音波を発生させ、その音波を第2変換部20で冷熱エネルギーに変換し、その冷熱エネルギーで冷却装置94の冷却を可能にする。よって、熱音響機関12Cを備えた熱処理炉40Bは省エネルギー化に極めて優れる。
【0049】
以上、本開示に係る基本構成例、実施形態及びその変形例について説明したが、本開示はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0050】
例えば、上記熱音響機関12B、12Cでは、第2変換部20を冷熱エネルギーを発生させるように構成した。しかし、第2変換部20を第1変換部14の高温側熱交換器26の温度を超える温度を有する熱エネルギーを発生させるように構成してもよい。この熱エネルギーを用いて上記加熱部H、例えば加熱室42、62、100などの加熱を更に行ってもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、熱音響用配管16に設けられるコア部22の数は1つであったが、複数であってもよい。また、加熱室42、62、100の熱つまり排熱だけでなく、前室58、96、予熱室60、98、二次燃焼室80などの熱も第1変換部14のコア部に入力されてもよい。また、第2変換部20のコア部90の数も、1つでも複数でもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 音波発生装置
12、12A、12B、12C 熱音響機関
14 第1変換部
16 熱音響用配管
18 接続配管
20 第2変換部
22 コア部
24 蓄熱器
26 高温側熱交換器
28 低温側熱交換器
30 固体伝熱部材
34 取付部
36 伝熱仕切部材
40、40A、40B 熱処理炉
44 貫通孔
50 管部材
78 冷却熱交換器
82 環状配管
84 蓄熱器
86 高温側熱交換器
88 低温側熱交換器
90 コア部
94 冷却装置
【要約】
【課題】熱音響機関に関して、熱源からガスを直接取り出すことなく、熱源の熱を取り出して、音波を発生させることを可能にする構成を提供する。
【解決手段】本開示の音波発生装置10は、環状の熱音響用配管16に設けられる蓄熱器24と、前記熱音響用配管の流路方向において前記蓄熱器の第1端部に連結される高温側熱交換器26と、前記熱音響用配管の前記流路方向において前記第1端部とは反対側の前記蓄熱器の第2端部に連結される低温側熱交換器28と、前記高温側熱交換器から延出するように設けられる固体伝熱部材30であって、前記熱音響用配管の外部に位置する熱源32の取付部34に取り付けられる固体伝熱部材30とを備える。
【選択図】
図1