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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20231030BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 621A
G09G3/20 622D
G09G3/20 623R
G09G3/20 624B
G09G3/20 642A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019182968
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021060449
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】法邑 茂夫
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0155387(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0357964(US,A1)
【文献】特開2008-309910(JP,A)
【文献】特開2006-146158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
行列状に配置された複数の画素と、
前記複数の画素における互いに異なる第1画素行及び第2画素行を含む画素行ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込む画素行を選択するための複数のゲート信号線と、
前記複数のゲート信号線にゲート信号を供給するゲートドライバと、
前記複数の画素における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込むための複数のデータ信号線と、
前記複数のデータ信号線に前記データ電圧を供給するデータドライバと、
前記複数のデータ信号線のうち1以上のデータ信号線ごとに時分割で前記データドライバからの前記データ電圧を供給するデータセレクタ回路と、
前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する制御部とを備え、
前記複数の画素の各々は、
第1電極及び第2電極を有する発光素子と、
電圧を保持するための容量素子と、
前記発光素子の第1電極と接続され、前記容量素子に保持された電圧に応じた電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタとを有し、
前記容量素子は、前記第1電極と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続され、
前記制御部は、前記第1画素行の画素に前記データ電圧を書き込む書き込み動作を行う期間の後に、前記第2画素行の画素の前記発光素子の前記第1電極の電位を初期化する初期化動作を行うように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御し、
前記第1画素行の書き込み動作は、前記複数のデータ信号線のそれぞれに当該データ信号線に応じた前記データ電圧が供給された後、かつ、前記データセレクタ回路が前記複数のデータ信号線と前記データドライバとを非導通とするオフ状態に切り替わった後で行われ、
前記第2画素行の前記初期化動作は、前記第1画素行における前記期間の後であって、かつ、前記データセレクタ回路が前記オフ状態を維持する際に行われる
表示装置。
【請求項2】
前記複数の画素の各々は、データ信号線と前記駆動トランジスタの前記ゲート電極との間に接続される書込みトランジスタを有し、
前記複数の画素は、前記第1画素行及び前記第2画素行と異なる第3画素行であって、前記第1画素行の書き込み動作の後に書き込み動作が行われる第3画素行を有し、
前記制御部は、前記第2画素行における前記初期化動作において、当該第2画素行の画素の前記書込みトランジスタがオンした後、前記第3画素行における前記書き込み動作の開始前に前記第2画素行の前記書込みトランジスタがオフするタイミングで前記第2画素行における前記初期化動作を開始するように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1画素行における前記書き込み動作を行う前記期間の直後に、前記第2画素行における前記初期化動作を開始させるように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
行列状に配置された複数の画素と、
前記複数の画素における互いに異なる第1画素行及び第2画素行を含む画素行ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込む画素行を選択するための複数のゲート信号線と、
前記複数のゲート信号線にゲート信号を供給するゲートドライバと、
前記複数の画素における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込むための複数のデータ信号線と、
前記複数のデータ信号線に前記データ電圧を供給するデータドライバと、
前記複数のデータ信号線のうち1以上のデータ信号線ごとに時分割で前記データドライバからの前記データ電圧を供給するデータセレクタ回路と、
前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する制御部とを備え、
前記複数の画素の各々は、
第1電極及び第2電極を有する発光素子と、
電圧を保持するための容量素子と、
前記発光素子の第1電極と接続され、前記容量素子に保持された電圧に応じた電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、
前記データ信号線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続される書込みトランジスタと、
参照電圧が印加される参照電源線と、
前記参照電源線と、前記書込みトランジスタ及び前記駆動トランジスタのゲート電極の間とに接続される参照トランジスタとを有し、
前記容量素子は、前記第1電極と前記駆動トランジスタの前記ゲート電極との間に接続され、
前記制御部は、前記第1画素行の画素に前記データ電圧を書き込む書き込み動作を行う第1期間に、前記第2画素行の画素の前記発光素子の前記第1電極の電位を初期化する初期化動作を行い、かつ、前記初期化動作の開始時点には前記参照トランジスタがオンしているように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御し、
前記第1画素行の書き込み動作は、前記複数のデータ信号線のそれぞれに当該データ信号線に応じた前記データ電圧が供給された後、かつ、前記データセレクタ回路が前記複数のデータ信号線と前記データドライバとを非導通とするオフ状態に切り替わった後で行われる
表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1期間の終了時点に前記第2画素行の画素の前記参照トランジスタをオフするように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する
請求項4に記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1電極の電位が初期化電位になる時点に前記参照トランジスタをオフするように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する
請求項4に記載の表示装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1期間の終了時点である第1時点、及び、前記第1電極の電位が初期化電位になる第2時点のうち、早い方の時点において、前記参照トランジスタをオフするように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する
請求項4に記載の表示装置。
【請求項8】
前記発光素子は、有機EL素子である
請求項1~7のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いる表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL素子などの発光素子を用いた表示装置が開発されている。このような表示装置は、行列状に配置された複数の画素を有し、複数の画素の各々は、有機EL素子と、表示装置に入力される映像信号に応じた電流を有機EL素子に供給する駆動トランジスタとを有する。表示装置の使用に伴って、駆動トランジスタは劣化し、閾値電圧がシフトする。このような駆動トランジスタの閾値電圧シフトが発生すると、映像信号に対応する電流を有機EL素子に供給できない。このため、有機EL素子を映像信号に対応する輝度で発光させることができない。このような問題を解決するために、閾値電圧を補償する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/033496号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された表示装置において、輝度ムラが生じる場合がある。
【0005】
そこで、本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、発光素子を用いる表示装置において、輝度ムラを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示装置は、行列状に配置された複数の画素と、前記複数の画素における互いに異なる第1画素行及び第2画素行を含む画素行ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込む画素行を選択するための複数のゲート信号線と、前記複数のゲート信号線にゲート信号を供給するゲートドライバと、前記複数の画素における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込むための複数のデータ信号線と、前記複数のデータ信号線に前記データ電圧を供給するデータドライバと、前記複数のデータ信号線のうち1以上のデータ信号線ごとに時分割で前記データドライバからの前記データ電圧を供給するデータセレクタ回路と、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する制御部とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極及び第2電極を有する発光素子と、電圧を保持するための容量素子と、前記発光素子の第1電極と接続され、前記容量素子に保持された電圧に応じた電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタとを有し、前記制御部は、前記第1画素行の画素に前記データ電圧を書き込む書き込み動作を行う期間の後に、前記第2画素行の画素の前記発光素子の前記第1電極の電位を初期化する初期化動作を行うように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本開示の一態様に係る表示装置は、行列状に配置された複数の画素と、前記複数の画素における互いに異なる第1画素行及び第2画素行を含む画素行ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込む画素行を選択するための複数のゲート信号線と、前記複数のゲート信号線にゲート信号を供給するゲートドライバと、前記複数の画素における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込むための複数のデータ信号線と、前記複数のデータ信号線に前記データ電圧を供給するデータドライバと、前記複数のデータ信号線のうち1以上のデータ信号線ごとに時分割で前記データドライバからの前記データ電圧を供給するデータセレクタ回路と、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する制御部とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極及び第2電極を有する発光素子と、電圧を保持するための容量素子と、前記発光素子の第1電極と接続され、前記容量素子に保持された電圧に応じた電流を前記発光素子に供給する駆動トランジスタと、参照電圧が印加される参照電源線と、前記参照電源線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続される参照トランジスタと、当該画素に接続されたデータ信号線と前記駆動トランジスタのゲート電極との間に接続される書込みトランジスタとを有し、前記制御部は、前記第1画素行の画素に前記データ電圧を書き込む書き込み動作を行う第1期間に、前記第2画素行の画素の前記発光素子の前記第1電極の電位を初期化する初期化動作を行い、かつ、前記初期化動作の開始時点には前記参照トランジスタがオンしているように、前記ゲートドライバ及び前記データドライバを制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様に係る表示装置によれば、発光素子を用いる表示装置において、輝度ムラを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る表示装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、図1の破線領域を拡大して示す図である。
図3図3は、実施の形態1に係る画素の構成の一例を示す回路図である。
図4図4は、比較例に係る表示部において生じる輝度ムラの一例を示す概略図である。
図5図5は、比較例に係る画素の駆動タイミングの一例を示す図である。
図6A図6Aは、比較例に係る表示装置の時点t=taにおいて書込み動作を行う画素が含まれる行、及び、初期化動作を行う画素が含まれる行の表示部における位置を示す概略図である。
図6B図6Bは、比較例に係る表示装置の時点t=tbにおいて書込み動作を行う画素が含まれる行、及び、初期化動作を行う画素が含まれる行の表示部における位置を示す概略図である。
図6C図6Cは、比較例に係る表示装置の時点t=tcにおいて書込み動作を行う画素が含まれる行、及び、初期化動作を行う画素が含まれる行の表示部における位置を示す概略図である。
図6D図6Dは、比較例に係る表示装置の時点t=tdにおいて書込み動作を行う画素が含まれる行の表示部における位置を示す概略図である。
図7図7は、比較例に係る表示部において生じる輝度ムラの他の一例を示す概略図である。
図8図8は、比較例に係る画素の駆動タイミングの他の一例を示す図である。
図9A図9Aは、比較例に係る表示装置の時点t=teにおいて書込み動作を行う画素が含まれる行、及び、初期化動作を行う画素が含まれる行の表示部における位置を示す概略図である。
図9B図9Bは、比較例の表示装置の時点t=tfにおいて書込み動作を行う画素が含まれる行、及び、初期化動作を行う画素が含まれる行の表示部における位置を示す概略図である。
図9C図9Cは、比較例の表示装置の時点t=tgにおいて書込み動作を行う画素が含まれる行、及び、初期化動作を行う画素が含まれる行の表示部における位置を示す概略図である。
図10図10は、実施の形態1に係る画素の駆動タイミングの一例を示す図である。
図11図11は、実施の形態2に係る画素の駆動タイミングの一例を示す図である。
図12図12は、その他の実施の形態に係る薄型ディスプレイ装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
本開示の実施の形態の説明に先立ち、本開示の基礎となった知見について説明する。
【0011】
表示装置には、複数の画素における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧(データ信号)を書き込むための複数のデータ信号線が設けられる。複数のデータ信号線は、画像データに対応したデータ信号を供給するためのデータドライバに接続され、当該データ信号が印加される。このような表示装置において、ドライバの出力負荷を低減するために、2以上のデータ信号線の各々とデータドライバとの接続を排他的に切り替えるデータセレクタ回路(例えば、後述する図1に示すデータセレクタ回路120)が設けられることがある。データセレクタ回路から出力されるデータ信号は、時分割で2以上のデータ信号線の各々に出力される。つまり、データドライバからのデータ信号は、時分割で各画素列(各画素)に入力される。
【0012】
本願発明者は、このようなデータセレクタ回路を有する表示装置において、特許文献1に開示された閾値電圧を補償する閾値補償動作が行われる場合、輝度ムラが発生することを見出した。具体的には、閾値補償動作の前に行われる、画素が有する有機EL素子の第1電極(例えば、アノード)の電位を初期化する初期化動作に起因して、輝度ムラが発生することを見出した。
【0013】
そこで、本開示は、データセレクタ回路を有する表示装置において、上述したような輝度ムラを低減することを目的とする。なお、輝度ムラの詳細は、後述する。
【0014】
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示における一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示における独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0015】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0016】
また、本明細書において、数値、および、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0017】
(実施の形態1)
[1-1.表示装置の構成]
本実施の形態に係る表示装置の構成について、図1図3を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る表示装置1の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図2は、図1の破線領域Rを拡大して示す図である。
【0018】
図1に示すように、表示装置1は、表示パネル10と、制御部20と、電源30とを備える。また、表示パネル10は、表示部11と、ゲートドライバ12と、データドライバ13とを有する。
【0019】
表示部11は、行列状に配置された複数の画素110と、データセレクタ回路120とを有する。当該行列の各行には同じ行に配置される複数の画素110に共通に接続される制御信号線が設けられ、当該行列の各列には同じ列に配置される複数の画素110に共通に接続されるデータ信号線が設けられる。
【0020】
図2に示すように、データセレクタ回路120は、選択した第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2のいずれかにデータドライバ13からのデータ信号を排他的に供給する機能を有する。データセレクタ回路120は、画素列ごとに配置されたセレクタである選択トランジスタTS1及びTS2を有する。データセレクタ回路120は、選択トランジスタTS1及びTS2が制御されることにより、データドライバ13からのデータ信号を、第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2のいずれかに排他的に供給する。具体的には、第1セレクタ制御線SEL1により選択トランジスタTS1が制御され、第2セレクタ制御線SEL2により選択トランジスタTS2が制御される。第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2は、データ信号線の一例である。
【0021】
例えば、第1セレクタ制御線SEL1及び書込み信号線WS1に入力される信号が高レベルとなると、画素110a1(画素)にデータ信号に対応する電圧が保持される。また、例えば、第2セレクタ制御線SEL2及び書込み信号線WS1に入力される信号が高レベルとなると、画素110b1にデータ信号に対応する電圧が保持される。このように、同じ行に配置される複数の画素110のうち少なくとも2以上の画素110において、時分割でデータ信号に対応する電圧を保持する動作が行われる。
【0022】
なお、図2では、データセレクタ回路120は、2本のデータ信号線を排他的に切り替える例について説明したが、3本以上のデータ信号線から選択された1本以上のデータ信号線にデータ信号を供給する機能を有していてもよい。
【0023】
第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2はそれぞれ、1以上の画素110を含む画素列に属する各画素110へ接続され、データ信号を供給する機能を有する。第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2はそれぞれ、有機EL素子(図3の有機EL素子111)に供給する電流に対応するデータ信号(電圧)が印加される。また、第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2はそれぞれ、データセレクタ回路120に接続される。
【0024】
第3信号線SIG3は、データセレクタ回路120とデータドライバ13とを接続する。
【0025】
なお、画素110a1及び画素110b1を含む画素行は、第1画素行の一例であり、画素110a2及び画素110b2を含む画素行は、第3画素行の一例である。また、画素110ax及び画素110bxを含む画素行は、第2画素行の一例であり、画素110ax+1及び画素110bx+1を含む画素行は、第4画素行の一例である。
【0026】
第3画素行は、第1画素行の次に書込み動作が行われる画素行であり、例えば、第1画素行の1つ下側に位置する画素行である。第2画素行は、第1画素行において書込み動作を行うときに初期化動作を行う画素行であり、例えば、第1画素行より複数画素行下側に位置する画素行である。第4画素行は、第3画素行において書込み動作を行うときに初期化動作を行う画素行であり、例えば、第3画素行により複数画素行下側に位置する画素行である。第4画素行は、例えば、第3画素行の1つ下側に位置する画素行である。
【0027】
図1を再び参照して、制御部20は、表示パネル10を制御する回路であり、外部から映像信号を受信し、当該映像信号で表される画像が表示部11において表示されるように、ゲートドライバ12、及び、データドライバ13を制御する。また、制御部20は、データセレクタ回路120が選択した第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2のいずれかにデータドライバ13からのデータ信号が供給されるように、セレクタ制御線SELを介してデータセレクタ回路120に動作を制御するための制御信号を供給する。
【0028】
電源30は、表示装置1の動作用の電源を、表示装置1の各部に供給する。電源30は、例えば、表示部11、ゲートドライバ12、データドライバ13、制御部20へ動作用の電力を供給する。電源30は、例えば、初期化電圧、参照電圧、正電源電圧、負電源電圧を表示部11へ供給する。
【0029】
ゲートドライバ12は、制御信号線を介して、画素110に対し、画素110の動作を制御するための制御信号を供給する。ゲートドライバ12は、走査線駆動回路として機能する。なお、制御信号線は、書込み信号線WS、初期化信号線INI、及び、参照信号線REFを含む。書込み信号線WSは、ゲート信号線の一例である。
【0030】
データドライバ13は、データ信号線を介して、画素110に対し、発光輝度に対応するデータ信号を供給する。データ信号は、画素110の表示階調に基づく電圧信号である。データドライバ13は、各データ信号線へデータセレクタ回路120を介して時分割でデータ信号を出力することにより、発光画素の有する回路素子を駆動する。データドライバ13は、信号線駆動回路として機能する。データ信号線は、第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2を含む。
【0031】
次に、複数の画素110について、図3を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る画素110の構成の一例を示す回路図である。つまり、図3は、画素110を構成する画素回路の一例を示す回路図である。
【0032】
図3に示すように、複数の画素110は、データ信号に対応する輝度で有機EL素子111を発光させる回路であり、複数の画素110の各々は、有機EL素子111と、容量素子112と、駆動トランジスタTDとを有する。複数の画素110の各々は、さらに、参照トランジスタTREFと、書込みトランジスタTWSと、初期化トランジスタTINIとを有する。複数の画素110の各々には、ゲートドライバ12から出力される各制御信号を供給する参照信号線REF、書込み信号線WS及び初期化信号線INIが接続される。また、複数の画素110の各々には、データドライバ13から出力されるデータ信号を供給するデータ信号線SIG(例えば、第1信号線SIG1、又は、第2信号線SIG2)が接続される。
【0033】
有機EL素子111は、第1電極及び第2電極を有する発光素子である。図3に示す例では、第1電極及び第2電極は、それぞれ有機EL素子111のアノード及びカソードである。有機EL素子111の第2電極は、カソード電源線VCATHに接続される。カソード電源線VCATHには、電源30から負電源電圧が供給される。有機EL素子111は、発光素子の一例である。
【0034】
容量素子112は、電圧を保持するための素子であり、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間に接続される。
【0035】
駆動トランジスタTDは、有機EL素子111の第1電極と接続され、容量素子112に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子111に供給する薄膜トランジスタである。駆動トランジスタTDのソース電極sが有機EL素子111の第1電極(アノード)に接続され、ドレイン電極dがアノード電源線VCCに接続される。アノード電源線VCCには、電源30から正電源電圧が供給される。
【0036】
初期化トランジスタTINIは、有機EL素子111の第1電極の電位を初期化するための薄膜トランジスタである。初期化トランジスタTINIのドレイン電極及びソース電極の一方に初期化電源線VINIが接続され、他方に有機EL素子111の第1電極が接続される。初期化トランジスタTINIのゲート電極には、初期化信号線INIが接続される。初期化トランジスタTINIは、初期化信号線INIに供給される電圧に従ってオン状態となり、有機EL素子111の第1電極の電位を初期化電圧にする。初期化トランジスタTINIは、初期化信号線INIに供給される電圧に従ってオン状態となり、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位を初期化電圧にするとも言える。初期化電源線VINIには、有機EL素子111の第1電極の電位を初期化するための初期化電圧が電源30から供給される。
【0037】
参照トランジスタTREFは、容量素子112に参照電圧を印加するための薄膜トランジスタである。参照トランジスタTREFのドレイン電極及びソース電極の一方に参照電源線VREFが接続され、他方に駆動トランジスタTDのゲート電極gが接続される。参照トランジスタTREFのゲート電極には、参照信号線REFが接続される。参照トランジスタTREFは、参照信号線REFに供給される電圧に従ってオン状態となり、駆動トランジスタTDのゲート電極gを参照電圧にする。参照電源線VREFには、電源30から参照電圧が供給される。
【0038】
書込みトランジスタTWSは、容量素子112にデータ信号に対応する電圧を印加するための薄膜トランジスタである。書込みトランジスタTWSのドレイン電極及びソース電極の一方にデータ信号線SIGが接続され、他方に駆動トランジスタTDのゲート電極gが接続される。書込みトランジスタTWSのゲート電極には、書込み信号線WSが接続される。書込みトランジスタTWSは、例えば、書き込み電圧に従ってオン状態となり、データ信号に対応する電圧を容量素子112に保持させる。書込み信号線WSに入力される信号は、ゲート信号の一例である。
【0039】
[1-2.輝度ムラ発生の説明]
上述したような表示装置1を用いて、有機EL素子111の第1電極の電位を初期化する初期化動作を行う場合に、輝度ムラが発生することについて図面を参照しながら説明する。図4は、比較例に係る表示部11aにおいて生じる輝度ムラの一例を示す概略図である。図4において、ドットハッチングの密度は、表示部11aが表示する画像の明るさを示す。ドットハッチングの密度が低いほど、画像が明るいことを意味する。なお、比較例に係る表示装置の構成は、表示装置1と同様であり、セレクタ回路を有する。
【0040】
図4に示すように、表示装置の表示部11aにおいては、下方に他の領域より輝度が高い領域11a1が発生する。このような輝度ムラが発生する原因の一つについて、図5を参照しながら説明する。図5は、比較例に係る画素110の駆動タイミングの一例を示す図である。図5には、各種信号の波形に加えて、初期化動作が行われている画素110における駆動トランジスタTDのゲート電極g及びソース電極sの電位の波形が示されている。また、図5中のドットハッチング部分は、電位がフローティング状態であることを示す。また、図5の横軸は、時間を示しており、縦軸は信号のレベルを示している。
【0041】
図5に示す「Sig」は、制御部20からデータセレクタ回路120に供給されるデータ信号(制御信号)の波形を示している。図5に示す「SEL1」は、第1セレクタ制御線SEL1に供給される信号の波形を示しており、「SEL2」は、第2セレクタ制御線SEL2に供給される信号の波形を示している。図5に示す「SIG1」は、データセレクタ回路120を介して第1信号線SIG1に供給されるデータ信号の波形を示しており、「SIG2」は、データセレクタ回路120を介して第2信号線SIG2に供給されるデータ信号の波形を示している。図5に示す「WS1」は、書込み信号線WS1に供給される信号の波形を示しており、「WS2」は、書込み信号線WS2に供給される信号の波形を示している。
【0042】
また、図5に示す「INIx」は、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1)において書き込み動作が行われているときに、初期化動作が行われる画素110(例えば、図2に示す画素110ax)の初期化信号線INIに供給される信号の波形を示している。図5に示す「Sx」及び「Gx」は、初期化動作が行われている画素110における駆動トランジスタTDのソース電極s及びゲート電極gの電位の波形を示している。なお、以下では、初期化動作が行われる画素を他の画素とも記載する。
【0043】
また、図5に示す「INIx+1」は、書込み信号線WS2に接続された画素110(例えば、画素110a2)において書き込み動作が行われているときに、他の画素110(例えば、画素110ax+1)の初期化信号線INIに供給される信号の波形を示している。図5に示す「Sx+1」及び「Gx+1」は、初期化動作が行われている画素110における駆動トランジスタTDのソース電極及びゲート電極gの電位の波形を示している。
【0044】
図5に示すように、まず時点T0において、第1セレクタ制御線SEL1に入力される信号が高レベルとなり、データセレクタ回路120を介して、第1信号線SIG1とデータドライバ13とが導通状態となる。これにより、第1信号線SIG1にデータドライバ13からのデータ信号が出力される。ここでのデータ信号は、第1信号線SIG1に応じた電圧信号である。そして、時点T1において、第1セレクタ制御線SEL1に入力される信号が低レベルとなり、第1信号線SIG1の電位がフローティング状態となる。なお、時点T0から時点T1までの期間において、第2信号線SIG2とデータドライバ13とは、非導通状態である。
【0045】
次に、時点T2において、第2セレクタ制御線SEL2に入力される信号が高レベルとなり、データセレクタ回路120を介して、第2信号線SIG2とデータドライバ13とが導通状態となる。これにより、第2信号線SIG2にデータドライバ13からのデータ信号が出力される。ここでのデータ信号は、第2信号線SIG2に応じた電圧信号である。そして、時点T3において、第2セレクタ制御線SEL2に入力される信号が低レベルとなり、第2信号線SIG2の電位がフローティング状態となる。
【0046】
次に、時点T4において、書込み信号線WS1に入力される信号が高レベルとなり、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1及び110b1)の容量素子112にデータ信号に対応する電圧を保持する書込み動作が開始される。つまり、第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2の両方がフローティング状態であるときに、書込み動作が行われる。
【0047】
また、時点T4において、さらに、書込み信号線WS1とは異なる書込み信号線WSに接続された画素110の初期化動作を行うために、当該画素110が接続されている初期化信号線INIに入力される初期化信号が高レベルとなる。例えば、図2に示す書込み信号線WSxに接続された画素110ax及び110bxを含む複数の画素110のそれぞれにおいて、初期化信号線INIに入力される初期化信号が高レベルとなる。これにより、初期化トランジスタTINIのドレイン電極とソース電極との間が導通状態となる。したがって、有機EL素子111の第1電極、駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子112の当該ソース電極sに接続された電極の電位が初期化される(図5の破線枠を参照)。例えば、有機EL素子111の第1電極(アノード)などに、-3V程度の初期化電圧が印加される。
【0048】
ここで、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間には、上述のとおり容量素子112が存在するため、ソース電極sの電位に伴ってゲート電極gの電位は変動し得る。特に、初期化動作を行う画素110(例えば、画素110ax)が所定の明るさ以上で発光していた場合、初期化動作時に駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子112の当該ソース電極sに接続された電極の電位の変動が大きくなるため、ゲート電極gの電位の変動が顕著となる。具体的には、ソース電極sの電位の低下に伴って、ゲート電極gの電位も低下する(図5の破線枠を参照)。
【0049】
初期化動作を行う画素110axにおいて、ゲート電極gの電位が所定以上低下すると、画素110axの書込みトランジスタTWSがオンしてしまう。これにより、フローティング状態にあるデータ信号線から初期化動作を行う画素110に電位が供給されるので、本来書込み動作を行う画素110に供給される電位が下がってしまう。図2を例に説明すると、書込み動作を行う画素110a1と初期化動作を行う画素110axとは第1信号線SIG1により電気的に接続されている。そのため、画素110axの書込みトランジスタTWSがオンすると、画素110a1に対応したデータ信号を保持する第1信号線SIG1から、当該画素110axに電位が供給されてしまう。また、第1信号線SIG1は、フローティング状態であり電源30からのデータ信号の供給が行われないので、電位が低下する(図5に示す一点鎖線枠を参照)。また、書込み動作を行う画素110b1においても同様に、供給されるデータ信号の電位が低下する。
【0050】
次に、時点T5において、書込み信号線WS1に入力される信号が低レベルとなり、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1及び110b1)の書込み動作が終了する。このとき、上記の理由により、本来より電圧が低いデータ信号が書込みを行う画素110a1に書き込まれるので、当該画素110a1における表示は、本来の明るさより暗くなる。なお、時点T4から時点T5までの期間は、書き込み動作を行う期間の一例である。
【0051】
上述のような書込み動作が画素行ごとに順次行われる。例えば、図5に示す時点T6から時点T11までは、書込み信号線WS2に接続された複数の画素110(例えば、画素110a2及び110b2を含む複数の画素110)における各種信号のタイミングチャートを示す。時点T6から時点T11までにおける書込み動作及び初期化動作の動作タイミングは、時点T0から時点T5までにおける書込み動作及び初期化動作の動作タイミングとそれぞれ同じであり、説明を省略する。
【0052】
また、図示しないが、初期化動作を行う画素110ax等において、例えば、時点T4以降のタイミングであり、かつ、初期化信号線INIxに高レベルの信号が入力されているタイミングで、参照信号線REFに入力される参照信号が高レベルとなり、駆動トランジスタTDのゲート電極gに接続された電極に参照電圧が印加される。これにより、駆動トランジスタTDのゲート電極gには、1V程度の参照電圧が印加され、ソース電極sには、-3V程度の初期化電圧が印加された状態となる。つまり、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間、及び、容量素子112には、約4Vの電圧が印加された状態となる。ここで、駆動トランジスタTDとして、閾値電圧が4V未満であるものを用いる。この場合、駆動トランジスタTDのドレイン電極dとソース電極sとの間に、容量素子112に保持される電圧に応じた電流が流れる。このとき、有機EL素子111のアノードには、初期化トランジスタTINIを介して-3V程度の初期化電圧が印加されており、カソードには、カソード電源線VCATHによって+1.5V程度のカソード電圧(負電源電圧)が印加されている。つまり、有機EL素子111には逆バイアスが印加されている状態となるため、有機EL素子111は発光しない。駆動トランジスタTDに流れる電流は、容量素子112に流れ込み、閾値補償動作において用いられる。
【0053】
図6A図6Dは、それぞれ、時点t=ta~tdにおいて書込み動作が行われる画素110が含まれる行、及び、他の画素110が含まれる行の表示部11aにおける位置を示す概略図である。図6A図6Dにおいて、書込み動作が行われる画素110が含まれる画素行を行R1a~R1dで示し、他の画素110が含まれる画素行を行R2a~R2cで示している。
【0054】
図6A図6Cに示すように、時点t=tcまでは、画素110に書込み動作が行われる際に、他の画素110(行R2a~R2c)において、初期化動作が行われる。ここで、時点t=tcまでに書込み動作が行われる画素110に供給されるデータ信号は、当該画素110における書き込み動作と並行して他の画素110における初期化動作が行われるので、本来のデータ信号の電位より低くなる(図5に示す一点鎖線枠を参照)。このため、時点t=tcまでは、有機EL素子111の輝度は、データドライバ13が出力したデータ信号に対応する輝度より低くなる。なお、本来の電位は、データドライバ13から供給されたデータ信号の電位であり、当該画素110に対応した電位である。
【0055】
一方、時点t=tcより後の時点では、画素110に書込み動作が行われる際に、他の画素110を含む画素行がブランキング期間に入ってしまうため、初期化動作が行われない。このように、時点t=tcより後の時点では、書込み動作時に他の画素110の駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位を低下させる要因がないため、他の画素110に電位が供給されない。したがって、時点t=tcより後の時点で書込み動作が行われる画素110に供給されるデータ信号は、本来のデータ信号の電位となる。このため、時点t=tcより後の時点では、有機EL素子111の輝度は、データドライバ13が出力したデータ信号に対応する輝度となる。
【0056】
以上のような現象が発生することで、図4に示すように、表示部11aの下方に他の領域より輝度が高い領域11a1が発生する。
【0057】
また、比較例に係る表示部11aにおいて生じる輝度ムラの他の一例について、図7及び図8を参照しながら説明する。図7は、比較例に係る表示部11aにおいて生じる輝度ムラの他の一例を示す概略図である。
【0058】
図7に示すように、表示装置の表示部11aにおいては、黒表示を行う領域11a2の上方に他の領域より輝度が高い領域11a3が発生する。黒表示は、所定値以下の輝度の表示を意味する。このような輝度ムラが発生する原因の一つについて、図8を参照しながら説明する。図8は、比較例に係る画素の駆動タイミングの一例を示す図である。図8には、各種信号の波形に加えて、初期化動作が行われている画素110における駆動トランジスタTDのゲート電極g及びソース電極sの電位の波形が示されている。なお、図8は、他の画素110が黒表示を行っていた画素110である場合について説明する。また、時点T20から時点T31までにおける動作は、図5示す時点T0から時点T11までのそれぞれと同様であり、説明を省略する。
【0059】
図8に示すように、時点T24において、書込み信号線WS1に入力される信号が高レベルとなり、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1及び110b1)の容量素子112にデータ信号に対応する電圧を保持する書込み動作が開始される。
【0060】
また、時点T24において、さらに、書込み信号線WS1とは異なる書込み信号線に接続された画素110の初期化動作を行うために、当該画素110が接続されている初期化信号線INIに入力される初期化信号が高レベルとなる。例えば、図2に示す書込み信号線WSxに接続された画素110ax及び110bxを含む複数の画素110の各々において、初期化信号線INIに入力される初期化信号が高レベルとなる。これにより、初期化トランジスタTINIのドレイン電極とソース電極との間が導通状態となる。したがって、有機EL素子111の第1電極、駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子112の当該ソース電極sに接続された電極の電位が初期化される(図8の破線枠を参照)。
【0061】
ここで、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間には、上述のとおり容量素子112が存在するため、ソース電極sの電位に伴ってゲート電極gの電位は変動し得る。しかしながら、他の画素110が黒表示を行っていた画素110である場合、駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子112の当該ソース電極sに接続された電極の電位がもともと低いので、初期化動作が行われても駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子112の当該ソース電極sに接続された電極の電位の変動が小さい。当該変動は、例えば、他の画素110が明るい表示を行っている場合より小さい。そのため、ソース電極sの電位に伴う駆動トランジスタTDのゲート電極gの電圧変動が小さい(図8の破線枠を参照)。
【0062】
この場合、他の画素110において、ゲート電極gの電位の低下が小さいので、書込みトランジスタTWSはオンしない。これにより、書込み動作が行われる画素110には、データドライバ13から出力されたデータ信号が供給される。言い換えると、書込み動作が行われる画素110には、電位が低下していないデータ信号が供給される。よって、書込み動作が行われる画素110の有機EL素子111の輝度は、データドライバ13が出力したデータ信号に対応する輝度となる。このように、他の画素110が黒表示を行っていた場合、書込み動作が行われる画素110は、本来の輝度の表示を行うことができる。
【0063】
しかしながら、他の画素110が明るい表示を行っていた場合、図5図6Dを用いて説明したように、初期化動作時に当該画素110の書込みトランジスタTWSがオンしてしまう。これにより、書込み動作が行われる画素110は、本来より低い輝度の表示となる。ここでの明るいとは、例えば、初期化動作時に画素110の書込みトランジスタTWSがオンしてしまうような駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子112の当該ソース電極sに接続された電極の電位に対応する明るさである。
【0064】
上述のように、他の画素110の明るさ(具体的には、有機EL素子111の第1電極の電位)に応じて、書込み動作が行われる画素110に供給されるデータ信号の電位が変化し得る。そして、データ信号の電位の変化の違いが、書込み動作が行われる画素110の明るさの違い、つまり輝度ムラとなって表れる。
【0065】
図9A図9Cは、それぞれ、比較例に係る表示装置の時点t=te~tgにおいて書込み動作が行われる画素110が含まれる行、及び、他の画素110が含まれる行の表示部11aにおける位置を示す概略図である。図9A図9Cにおいて、書込み動作が行われる画素110が含まれる画素行を行R1e~R1gで示し、他の画素110が含まれる画素行を行R2e~R2gで示している。
【0066】
図9A及び図9Cに示すように、時点t=te及びtgでは、画素110に書込み動作が行われる際に、他の画素110(行R2e及びR2g)において、初期化動作が行われる。他の画素110は、黒表示を行っていた画素110ではないので、書込み動作が行われる画素110に供給されるデータ信号の電位は、本来の電位より低くなる。本来の電位とは、データドライバ13から供給されたデータ信号の電位を意味する。
【0067】
一方、時点t=tfでは、画素110に書込み動作が行われる際に、他の画素110(行R2f)が黒表示を行っていた画素110であるため、書込み動作が行われる画素110に供給されるデータ信号の電位は、本来の電位となる。そのため、画素110(行R1fの一部)の有機EL素子111の輝度は、画素110(行R1e及び行R1g)の有機EL素子111の輝度より明るくなる。
【0068】
以上のような現象が発生することで、図7に示すように、表示部11aの黒表示を行う領域11a2の上方に他の領域より輝度が高い領域11a3が発生する。
【0069】
[1-3.輝度ムラを抑制するための制御]
そこで、本実施の形態に係る表示装置1は、上述したような輝度ムラを低減することを目的とする。図10は、本実施の形態に係る画素110の駆動タイミングの一例を示す図である。なお、図10に示す時点T40から時点T43までの動作については、図5に示す時点T0から時点T3までのそれぞれと同様であり説明を省略する。
【0070】
図10に示すように、時点T44において、書込み信号線WS1に入力される信号が高レベルとなり、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1及び110b1)の容量素子112にデータ信号に対応する電圧を保持する書込み動作が開始される。これは、図5に示す時点T4における動作と同様である。
【0071】
本実施の形態では、時点T44において、他の画素110の初期化信号線INIに入力される初期化信号が低レベルのままである。つまり、本実施の形態に係る表示装置1では、書込み動作と初期化動作とが並行して行われない。
【0072】
次に、時点T45において、書込み信号線WS1に入力される信号が低レベルとなり、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1及び110b1)の書込み動作が終了する。これにより、他の画素110にデータ信号の電位が供給されないので、書込み動作が行われる画素110には、本来のデータ信号が供給される。
【0073】
本実施の形態では、時点T45において、さらに、書込み信号線WS1とは異なる書込み信号線に接続された画素110(他の画素110)の初期化動作を行うために、当該画素110が接続されている初期化信号線INIに入力される初期化信号が高レベルとなる。例えば、図2に示す書込み信号線WSxに接続された画素110ax及び110bxを含む複数の画素110の各々において、初期化信号線INIに入力される初期化信号が高レベルとなる。これにより、初期化トランジスタTINIのドレイン電極とソース電極との間が導通状態となる。したがって、有機EL素子111の第1電極、駆動トランジスタTDのソース電極s及び容量素子112の当該ソース電極sに接続された電極の電位が初期化される(図10の破線枠を参照)。例えば、有機EL素子111の第1電極(アノード)などに、-3V程度の初期化電圧が印加される。
【0074】
ここで、比較例と同様に、初期化動作が行われる画素110において、書込みトランジスタTWSがオンしてしまいデータ信号線が保持するデータ信号の電位が低下する(図10の一点鎖線枠を参照)。しかしながら、データ信号線SIGの電位が低下するタイミングにおいて、すでに書込み動作が行われる画素110における書込み動作が終了している(書込み動作が行われる画素110の書込みトランジスタTWSがオフである)ので、電位が低下したデータ信号が当該画素110に供給されることがない。よって、書込み動作が行われる画素110の有機EL素子111は、データドライバ13が出力したデータ信号に対応する輝度となる。つまり、当該画素110の有機EL素子111は、本来の輝度の明るさの表示を行うことができる。
【0075】
上述のように、本実施の形態に係る表示装置1は、初期化動作を開始するタイミングを変更するだけで、回路構成を変更することなく、輝度ムラを低減することができる。
【0076】
初期化信号線INIに入力される初期化信号を高レベルとするタイミング、つまり初期化トランジスタTINIをオンするタイミングは、書込み動作が行われる画素110の書込みトランジスタTWSがオフするタイミング(時点T45)より後であればよい。つまり、他の画素110(例えば、図2に示す画素110ax等)の初期化動作は、書込み動作が行われる画素110(例えば、図2に示す画素110a1等)の書込み動作が終了した後に行われればよい。初期化トランジスタTINIをオンするタイミングは、書込みトランジスタTWSがオフするタイミングの直後であってもよい。つまり、初期化動作は、書き込み動作を行う期間(例えば、図10に示す時点T44から時点T45までの期間)の直後に開始されてもよい。なお、直後は、書込み動作が行われる画素110の書込みトランジスタTWSがオフした瞬間であってもよいし、オフした瞬間から多少の遅延を有していてもよい。
【0077】
また、初期化トランジスタTINIをオンするタイミングは、書込みトランジスタTWSがオフするタイミングから所定期間経過後のタイミングであってもよい。
【0078】
所定期間は、書込み信号線WS2に入力される信号が高レベルとなり、書込み信号線WS2に接続された画素110の書込み動作が開始される前に、他の画素110の書込みトランジスタTWSがオフする電位まで上昇するのに要する時間に基づいて決定されてもよい。ここでの他の画素110は、書込み信号線WS2に接続された画素110(第3画素行の画素110)の前に書込み動作が行われた画素110(第1画素行の画素110)において、書込み動作が行われた後に初期化動作が行われた画素110(第2画素行の画素110)である。他の画素110は、初期化動作を行うことで、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位が低下するので、当該他の画素110の書込みトランジスタTWSはオンするが、時間経過とともに当該ゲート電極gの電位は上昇する。そして、当該ゲート電極gの電位が書込みトランジスタTWSがオフする電位まで上昇すると、当該書込みトランジスタTWSはオフする。
【0079】
そのため、他の画素110における初期化動作の開始から当該他の画素110の書込みトランジスタTWSがオフするまでの期間を第3期間とし、第1画素行の画素110の書込み動作が終了してから第2画素行の画素110にデータ信号が供給されるまでの期間を第4期間とすると、所定期間は、第4期間から第3期間を差し引いた期間以下であるとよい。第3期間は、例えば、時点T45から時点T48までの期間である。なお、第4期間は、例えば、第1画素行の画素110の書込み動作が終了してから第2画素行の画素110の画素110の書き込み動作が開始されるまでの期間(例えば、時点T45から時点T50までの期間)であってもよい。
【0080】
このように、所定期間は、他の画素110において書込みトランジスタTWSがオンしている期間が、当該他の画素110以外の画素110のいずれの書込み期間とも重ならないように決定されるとよい。
【0081】
また、所定期間は、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間の容量(例えば、容量素子112の容量)などに応じて決定されてもよい。
【0082】
また、図10では図示を省略しているが、書込みトランジスタTWSがオンしている期間において、参照トランジスタTREFはオフ状態である。そのため、駆動トランジスタTDは、書込み動作時においてオンしない。よって、表示装置1であれば、アノード電源線VCCから初期化電源線VINIまでを流れる貫通電流を発生させずに、輝度ムラを低減することができる。
【0083】
上述のような書込み動作が画素行ごとに順次行われる。例えば、図10に示す時点T46から時点T51までは、書込み信号線WS2に接続された複数の画素110(例えば、画素110a2及び110b2を含む複数の画素110)における動作タイミングを示す。時点T46から時点T51までにおける書込み動作及び初期化動作の動作タイミングは、時点T40から時点T45までにおける書込み動作及び初期化動作の動作タイミングと同じであり、説明を省略する。
【0084】
制御部20は、上記のようなタイミングで書込み動作及び初期化動作が行われるように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御する。
【0085】
[1-4.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る表示装置1は、行列状に配置された複数の画素110と、複数の画素110における互いに異なる第1画素行及び第2画素行を含む画素行ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込む画素行を選択するための複数の書込み信号線WS(ゲート信号線の一例)と、複数の書込み信号線WSにゲート信号を供給するゲートドライバ12と、複数の画素110における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込むための複数のデータ信号線SIGと、複数のデータ信号線SIGにデータ電圧を供給するデータドライバ13と、複数のデータ信号線SIGのうち1以上のデータ信号線SIGごとに時分割でデータドライバ13からのデータ電圧を供給するデータセレクタ回路120と、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御する制御部20とを備える。複数の画素110の各々は、第1電極及び第2電極を有する有機EL素子111(発光素子の一例)と、電圧を保持するための容量素子112と、有機EL素子111の第1電極と接続され、容量素子112に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子111に供給する駆動トランジスタTDとを有する。そして、制御部20は、第1画素行の画素110にデータ電圧を書き込む書き込み動作を行う期間の後に、第2画素行の画素110の有機EL素子111の第1電極の電位を初期化する初期化動作を行うように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御する。
【0086】
これにより、第1画素行の画素110に書込み動作を行っている期間に、第2画素行の画素110の書込みトランジスタTWSがオンすることを抑制することができる。つまり、第1画素行の画素110に書込み動作を行っている期間に、第2画素行の画素110にデータ信号の電位が供給されることを抑制することができる。よって、表示装置1は、輝度ムラを低減することができる。
【0087】
例えば、表示装置1は、データセレクタ回路120を備える表示装置であり、データ電圧の書込み時に複数のデータ信号線SIGの各々がフローティング状態となる。このような表示装置1において、画素110の書込み動作の後に他の画素110の初期化動作を行うことで、書込み動作時にデータ電圧の電位が他の画素110に起因して低下することを抑制することができるので、輝度ムラを低減することができる。
【0088】
また、複数の画素110の各々は、データ信号線SIGと駆動トランジスタTDのゲート電極gとの間に接続される書込みトランジスタTWSを有する。複数の画素110は、第1画素行及び第2画素行と異なる第3画素行であって、第1画素行の書き込み動作の後に書き込み動作が行われる第3画素行を有する。そして、制御部20は、第2画素行における初期化動作を行うことで当該第2画素行の画素110の書込みトランジスタTWSがオンした後、第3画素行における書き込み動作の開始前に当該書込みトランジスタTWSがオフするタイミングで第2画素行における初期化動作を開始するように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御する。
【0089】
これにより、第3画素行の画素110にデータ信号を供給する時点で第2画素行の画素110の駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位が、書込みトランジスタTWSがオフする電位に上昇する。つまり、第3画素行の画素110にデータ信号を供給する時点で第2画素行の画素110の書込みトランジスタTWSはオフ状態であるので、第2画素行の画素110により第3画素行の画素110に供給されるデータ信号の電位は低下しにくい。よって、表示装置1は、さらに輝度ムラを低減することができる。
【0090】
また、制御部20は、第1画素行における書き込み動作を行う期間の直後に、第2画素行における初期化動作を開始させるように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御する。
【0091】
これにより、第2画素行の画素110の初期化動作を開始してから第3画素行の画素110にデータ信号を供給するまでの期間が長くなる。つまり、第2画素行の画素110の駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位が、当該画素110の書込みトランジスタTWSがオフする電位まで上昇しやすくなるので、第3画素行の画素110に供給されるデータ信号の電位が第2画素行の画素110により低下することを抑制することができる。よって、表示装置1は、さらに輝度ムラを低減することができる。
【0092】
また、発光素子は、有機EL素子111である。
【0093】
これにより、有機EL素子111を備える表示装置1において、輝度ムラを低減することができる。
【0094】
(実施の形態2)
以下、本実施の形態に係る表示装置について、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係る表示装置は、初期化動作が行われる画素110において、参照トランジスタTREFがオンされるタイミングに特徴を有する。
【0095】
なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付し、説明を省略又は簡略化する場合がある。本実施の形態に係る表示装置の構成は、実施の形態1に係る表示装置1と同様であり、説明を省略する。
【0096】
[2-1.輝度ムラを抑制するための制御]
図11は、本実施の形態に係る画素110の駆動タイミングの一例を示す図である。図11に示す「REFx」は、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、画素110a1)において書き込み動作が行われているときに、初期化動作が行われる画素110(例えば、画素110ax)の参照信号線REFに供給される信号の波形を示している。また、図11に示す「REFx+1」は、書込み信号線WS2に接続された画素110(例えば、画素110a2)において書き込み動作が行われているときに、初期化動作が行われる画素110(例えば、画素110ax+1)の参照信号線REFに供給される信号の波形を示している。
【0097】
図11に示すように、時点T60において、第1セレクタ制御線SEL1に入力される信号が高レベルとなり、データセレクタ回路120を介して、第1信号線SIG1とデータドライバ13が導通状態となる。これは、図10に示す時点T40における動作と同様である。
【0098】
また、本実施の形態では、時点T60において、さらに、初期化動作が行われる画素110の参照信号線REFに入力される信号が高レベルとなっており、参照トランジスタTREFは、オン状態となっている。つまり、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位は、参照電源線VREFから供給される参照電圧となっている。参照信号線REFに入力される信号が高レベルとなるタイミングは、例えば、データドライバ13が、書込み動作が行われる画素110と接続されたデータ信号線にデータ信号を出力する前であってもよい。
【0099】
時点T61から時点T63までにおける動作は、図10に示す時点T41から時点T43までのそれぞれと同様であり、説明を省略する。なお、参照トランジスタTREFは、時点T41から時点T43までの間も継続してオン状態となっている。つまり、参照トランジスタTREFは、データドライバ13から第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2にデータ信号が出力されているときにはオン状態である。データセレクタ回路120が第1信号線SIG1及び第2信号線SIG2のいずれかとデータドライバ13とを通電状態としているときに、参照トランジスタTREFは、オン状態であるとも言える。
【0100】
次に、時点T64において、書込み信号線WS1に入力される信号が高レベルとなり、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1及び110b1)の容量素子112にデータ信号に対応する電圧を保持する書込み動作が開始される。また、時点T64において、さらに、書込み信号線WS1とは異なる書込み信号線に接続された画素110の初期化動作を行うために、当該画素が接続されている初期化信号線INIに入力される初期化信号を高レベルとする。つまり、書込み動作と初期化動作とが並行して行われる。
【0101】
ここで、初期化動作が行われる画素110axの駆動トランジスタTDのソース電極sの電位は低下するが、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位は、参照電圧が供給されているので、変動しない。つまり、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位は、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位の変動に関わらず一定である。言い換えると、初期化動作の前後において、駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位は、一定である。
【0102】
次に、時点T65において、書込み信号線WS1に入力される信号が低レベルとなり、書込み信号線WS1に接続された画素110(例えば、図2に示す画素110a1及び110b1)の書込み動作が終了する。このとき、参照トランジスタTREFは、オンのままである。なお、時点T64から時点T65までの期間は、第1期間の一例である。
【0103】
次に、時点T66において、参照信号線REFに入力される信号が低レベルとなり、参照トランジスタTREFはオフ状態となる。なお、参照信号線REFに入力される信号が低レベルとなるタイミング、つまり参照トランジスタTREFをオフするタイミングは、書込み動作が行われる画素110の書込みトランジスタTWSがオフするタイミング以降であればよい。つまり、参照信号線REFに入力される信号が低レベルとなるタイミングは、書込み動作が行われる画素110の書込み動作が終了した後に行われればよい。参照信号線REFに入力される信号が低レベルとなるタイミングは、書込みトランジスタTWSがオフするタイミングの直後であってもよいし、書込みトランジスタTWSがオフするタイミングから所定期間経過後のタイミングであってもよい。
【0104】
これにより、初期化動作が行われているときに駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位を一定に保つことができるので、駆動トランジスタTDのゲート電極gとソース電極sとの間の容量によらずに輝度ムラを低減することができる。
【0105】
なお、画素110axの参照トランジスタTREFをオンする期間は、初期化信号線INIxに入力される初期化信号が高レベルになる時点から、書込み信号線WS1に入力される信号が低レベルとなる時点までを含む期間であってもよい。当該期間は、例えば、図11に示す時点T64から時点T65までを含む期間である。また、画素110axの参照トランジスタTREFをオンする期間は、初期化信号線INIxに入力される初期化信号が高レベルになる時点から、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位Sxが初期化電源線VINIから供給される初期化電圧になる時点を含む期間であってもよい。当該期間は、例えば、図11に示す時点T64から電位Sxが一定となる時点(時点T64と時点T65との間の時点)までを含む期間である。
【0106】
画素110axの参照トランジスタTREFをオンする期間は、画素110a1で書き込み動作を行う期間(第1期間)、又は、画素110axで初期化動作が実質的に完了するまでの期間を含む期間であるとも言える。初期化動作が実質的に完了するとは、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位Sxが初期化電圧となり、初期化トランジスタTINIがオンしていても電位Sxが変化しなくなることを意味する。
【0107】
このことから、画素110axの参照トランジスタTREFをオンするタイミングは、初期化信号線INIxに入力される初期化信号が高レベルになる時点(例えば、時点T64)又は当該時点より前であるとよい。また、画素110axの参照トランジスタTREFをオフするタイミングは、書込み信号線WS1に入力される信号が低レベルとなる第1時点、又は、駆動トランジスタTDのソース電極sの電位Sxが初期化電圧になる第2時点であるとよい。なお、画素110axの参照トランジスタTREFをオフするタイミングは、第1時点及び第2時点のうち、早い方の時点であってもよい。図11の例では、画素110axの参照トランジスタTREFをオフするタイミングは、第2時点(時点T64と時点T65との間の時点)であるとよい。制御部20は、例えば、例えば、ソース電極sの電位Sxを計測するセンサから電位Sxを取得することで、当該電位Sxが初期化電圧になったか否かを判定してもよいし、初期化信号線INIxに入力される初期化信号が高レベルになる時点から所定期間経過したか否かにより電位Sxが初期化電圧になったか否かを判定してもよい。
【0108】
なお、時点T64から時点T65までを含む期間は、第2期間の一例である。図11の例では、第1期間と第2期間とは、等しい期間である。なお、第2期間は、初期化動作の開始時点から第1期間の終了時点までを含む期間であれば、第1期間と等しい期間であることに限定されない。
【0109】
上述のような書込み動作が画素行ごとに順次行われる。例えば、図11に示す時点T67から時点T73までは、書込み信号線WS2に接続された複数の画素110(例えば、画素110a2及び110b2を含む複数の画素110)における動作タイミングを示す。時点T67から時点T73までにおける書込み動作及び初期化動作の動作タイミングは、時点T60から時点T66における書込み動作及び初期化動作の動作タイミングとそれぞれ同じであり、説明を省略する。
【0110】
なお、参照信号線REFに入力される信号が高レベルとなる期間、つまり参照トランジスタTREFがオンしている期間は、図11の例に限定されない。参照信号線REFに入力される信号が高レベルとなる期間は、少なくとも書込み動作が行われている期間(例えば、書込み信号線WSに入力される信号が高レベルである期間)を含む期間であればよい。
【0111】
[2-2.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る表示装置1は、行列状に配置された複数の画素110と、複数の画素110における互いに異なる第1画素行及び第2画素行を含む画素行ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込む画素行を選択するための複数の書込み信号線WS(ゲート信号線の一例)と、複数の書込み信号線WSにゲート信号を供給するゲートドライバ12と、複数の画素110における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込むための複数のデータ信号線SIGと、複数のデータ信号線SIGにデータ電圧を供給するデータドライバ13と、複数のデータ信号線SIGのうち1以上のデータ信号線SIGごとに時分割でデータドライバ13からのデータ電圧を供給するデータセレクタ回路120と、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御する制御部20とを備える。複数の画素110の各々は、第1電極及び第2電極を有する有機EL素子111(発光素子の一例)と、電圧を保持するための容量素子112と、有機EL素子111の第1電極と接続され、容量素子112に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子に供給する駆動トランジスタTDと、参照電圧が印加される参照電源線VREFと、参照電源線VREFと駆動トランジスタTDのゲート電極gとの間に接続される参照トランジスタTREFと、当該画素110に接続されたデータ信号線SIGと駆動トランジスタTDのゲート電極gとの間に接続される書込みトランジスタTWSとを有する。そして、制御部20は、第1画素行の画素110にデータ電圧を書き込む書き込み動作を行う第1期間に、第2画素行の画素110の有機EL素子111の第1電極の電位を初期化する初期化動作を行い、かつ、初期化動作の開始時点には参照トランジスタTREFがオンしているように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御する。
【0112】
これにより、第2画素行の画素110の駆動トランジスタTDのゲート電極gの電位が一定に保たれるので、第1画素行の画素110に書込み動作を行っている期間に、第2画素行の画素110の初期化動作が行われても、当該画素110の書込みトランジスタTWSがオンしない。つまり、第1画素行の画素110に書込み動作が行っている期間において、第2画素行の画素110の書込みトランジスタTWSはオフ状態であるので、第2画素行の画素110により第1画素行の画素110に供給されるデータ信号の電位は低下しにくい。よって、表示装置1は、さらに輝度ムラを低減することができる。
【0113】
なお、第1期間に、第2画素行の画素110の有機EL素子111の第1電極の電位を初期化する初期化動作を行うとは、初期化動作を行う期間の少なくとも一部が第1期間と重なっていればよい。
【0114】
また、制御部20は、第1期間の終了時点に参照トランジスタTREFをオフするように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御してもよい。
【0115】
これにより、アノード電源線VCCから初期化電源線VINIまでを流れる貫通電流が、書込み動作の後も継続して流れることを抑制することができる。
【0116】
また、制御部20は、第1電極の電位が初期化電位になる時点に参照トランジスタTREFをオフするように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御してもよい。
【0117】
これにより、アノード電源線VCCから初期化電源線VINIまでを流れる貫通電流が、初期化動作が実質的に完了した後も継続して流れることを抑制することができる。
【0118】
また、制御部20は、第1期間の終了時点である第1時点、及び、第1電極の電位が初期化電位になる第2時点のうち、早い方の時点において、参照トランジスタTREFをオフするように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御してもよい。
【0119】
これにより、アノード電源線VCCから初期化電源線VINIまでを流れる貫通電流をさらに抑制することができる。
【0120】
(その他の実施の形態)
以上、本開示に係る表示装置について、実施の形態に基づいて説明してきたが、本開示に係る表示装置は、上記実施の形態に限定されるものではない。実施の形態における任意の構成要素を組み合わせて実現される別の実施の形態や、実施の形態に対して本開示の主旨を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例や、本実施の形態に係る表示装置を内蔵した各種機器も本開示に含まれる。
【0121】
例えば、本開示に係る表示装置1は、例えば、図12に示すような薄型ディスプレイ装置200として実現されてもよい。図12は、薄型ディスプレイ装置200の外観図である。このような薄型ディスプレイ装置200は、初期化動作を行う場合に、従来よりも輝度ムラを低減することができる。
【0122】
また、上記実施の形態では、表示装置1が有する発光素子は、有機EL素子111である例について説明したが、これに限定されない。発光素子は、他の自発光型の発光素子であってもよい。発光素子は、例えば、QLED(Quantum-dot Light Emitting Diode:量子ドット発光ダイオード)を用いた発光素子であってもよい。
【0123】
また、本開示の一態様は、上述した表示装置1を駆動する駆動方法として実現されてもよい。表示装置1は、行列状に配置された複数の画素110と、複数の画素110における互いに異なる第1画素行及び第2画素行を含む画素行ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込む画素行を選択するための複数の書込み信号線WS(ゲート信号線の一例)と、複数の書込み信号線WSにゲート信号を供給するゲートドライバ12と、複数の画素110における画素列ごとに配置され、画像データに対応したデータ電圧を書き込むための複数のデータ信号線SIGと、複数のデータ信号線SIGにデータ電圧を供給するデータドライバ13と、複数のデータ信号線SIGのうち1以上のデータ信号線SIGごとに時分割でデータドライバ13からのデータ電圧を供給するデータセレクタ回路120とを備える。
【0124】
例えば、複数の画素110の各々は、第1電極及び第2電極を有する有機EL素子111と、電圧を保持するための容量素子112と、有機EL素子111の第1電極と接続され、容量素子112に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子111に供給する駆動トランジスタTDとを有する。そして、表示装置1の駆動方法は、第1画素行の画素110にデータ電圧を書き込む書き込み動作を行う期間の後に、第2画素行の画素110の有機EL素子111の第1電極の電位を初期化する初期化動作を行うように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御するステップを含む。
【0125】
また、例えば、複数の画素110の各々は、第1電極及び第2電極を有する有機EL素子111と、電圧を保持するための容量素子112と、有機EL素子111の第1電極と接続され、容量素子112に保持された電圧に応じた電流を有機EL素子に供給する駆動トランジスタTDと、参照電圧が印加される参照電源線VREFと、参照電源線VREFと駆動トランジスタTDのゲート電極gとの間に接続される参照トランジスタTREFと、当該画素110に接続されたデータ信号線SIGと駆動トランジスタTDのゲート電極gとの間に接続される書込みトランジスタTWSとを有する。そして、表示装置1の駆動方法は、第1画素行の画素110にデータ電圧を書き込む書き込み動作を行う第1期間に、第2画素行の画素110の有機EL素子111の第1電極の電位を初期化する初期化動作を行い、かつ、初期化動作の開始時点及び第1期間の終了時点を含む第2期間にわたって参照トランジスタTREFをオンするように、ゲートドライバ12及びデータドライバ13を制御するステップを含む。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本開示は、例えば、有機EL素子を用いたフラットパネルディスプレイに有用である。
【符号の説明】
【0127】
1 表示装置
10 表示パネル
11、11a 表示部
11a1、11a2、11a3 領域
12 ゲートドライバ
13 データドライバ
20 制御部
30 電源
110、110a1、110a2、110ax、100ax+1、110b1、110b2、100bx、100bx+1 画素
111 有機EL素子(発光素子)
112 容量素子
120 データセレクタ回路
200 薄型ディスプレイ装置
d ドレイン電極
g ゲート電極
INI、INIx、INIx+1 初期化信号線
s ソース電極
SEL セレクタ制御線
SEL1 第1セレクタ制御線
SEL2 第2セレクタ制御線
SIG データ信号線
SIG1 第1信号線
SIG2 第2信号線
SIG3 第3信号線
REF 参照信号線
R1a~R1g、R2a~R2c、R2e~R2g 行
TD 駆動トランジスタ
TINI 初期化トランジスタ
TS1、TS2 選択トランジスタ
TREF 参照トランジスタ
TWS 書込みトランジスタ
VCATH カソード電源線
VCC アノード電源線
VINI 初期化電源線
VREF 参照電源線
WS、WS1、WS2、WSx、WSx+1 書込み信号線(ゲート信号線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12