(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】電波強度測定方法および電波強度測定プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/54 20230101AFI20231030BHJP
H04W 16/14 20090101ALI20231030BHJP
H04W 72/0446 20230101ALI20231030BHJP
H04W 88/02 20090101ALI20231030BHJP
H04B 17/318 20150101ALI20231030BHJP
【FI】
H04W72/54 110
H04W16/14
H04W72/0446
H04W88/02 151
H04B17/318
(21)【出願番号】P 2019154044
(22)【出願日】2019-08-26
【審査請求日】2022-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】大田 恭平
(72)【発明者】
【氏名】中込 哲也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和隆
(72)【発明者】
【氏名】山口 亮一
【審査官】三枝 保裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-041175(JP,A)
【文献】特開平11-150749(JP,A)
【文献】特開2016-192708(JP,A)
【文献】特開2015-023565(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
H04B 17/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PHS方式のキャリアセンスによって
、PHS方式の受信信号強度
と、PHS方式と使用周波数帯域が重複する少なくとも1つの他の通信方式の受信信号強度とを
PHS端末によって測定する際に、
前記PHS端末は、PHS方式の
1スロット
の時間を等分して、他の通信方式の信号長の最小幅よりも短くなるように時間間隔
を設定した測定時点の全てについて
、少なくとも1回は測定が行われるようにキャリアセンスの3点測定を行う位置を移動させて複数のフレームに対して測定を行う、
ことを特徴とする電波強度測定方法。
【請求項2】
前記時間間隔が、PHS方式の1スロット分の625μsを12等分した時間幅である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電波強度測定方法。
【請求項3】
前記3点測定を行う前記位置の配置に関する測定点パターンとして、
PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、
各スロットの前縁部を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、
前記各スロットの前記前縁部から625/12×3 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、
前記各スロットの前記前縁部から625/12×6 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、および、
前記各スロットの前記前縁部から625/12×9 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターンが設定される、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の電波強度測定方法。
【請求項4】
PHS方式のキャリアセンス機能を制御するプログラムであり、
PHS方式のキャリアセンスによって、PHS方式の受信信号強度と、PHS方式と使用周波数帯域が重複する少なくとも1つの他の通信方式の受信信号強度とを測定する際に
、
PHS方式の
1スロット
の時間を等分して、他の通信方式の信号長の最小幅よりも短くなるように時間間隔
を設定した測定時点の全てについて
、少なくとも1回は測定が行われるようにキャリアセンスの3点測定を行う位置を移動させて複数のフレームに対して測定を行うように制御する、
ことを特徴とする電波強度測定プログラム。
【請求項5】
前記時間間隔が、PHS方式の1スロット分の625μsを12等分した時間幅である、
ことを特徴とする請求項4に記載の電波強度測定プログラム。
【請求項6】
前記3点測定を行う前記位置の配置に関する測定点パターンとして、
PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、
各スロットの前縁部を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、
前記各スロットの前記前縁部から625/12×3 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、
前記各スロットの前記前縁部から625/12×6 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、および、
前記各スロットの前記前縁部から625/12×9 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターンが規定されている、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の電波強度測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PHS方式のキャリアセンス機能を利用して電波強度を測定する方法および電波強度を測定するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PHS(Personal Handy-phone System の略)の周波数帯域として1884.5MHzから1915.7MHzまでが割り当てられており、そのうち1893.5MHzから1906.1MHzまでは公衆用PHSと自営用PHSとの共用帯域である(特許文献1参照)。この共用帯域では、さらに、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications の略)やsXGP(shared eXtended Global Platform の略)が利用可能となっている。
【0003】
また、共用帯域における無線通信システムの電波(キャリア)を検知する従来の技術として、キャリアセンス機能を備えたデジタルコードレス基地局およびデジタルコードレス子機から構成されるTDMA方式狭帯域デジタルコードレス電話システムにおいて、デジタルコードレス基地局およびデジタルコードレス子機は、あらかじめ定めた測定回数に相当するフレーム数からなる連続する測定フレームごとに、使用しようとする周波数に該当するスロットの前縁部、中央部および後縁部に関する測定時点をそれぞれ前縁部キャリア測定ポイント、中央部キャリア測定ポイントおよび後縁部キャリア測定ポイントとして、それぞれの測定時点における受信信号強度を測定する際に、前縁部キャリア測定ポイントと後縁部キャリア測定ポイントとでは、全ての測定フレームに亘り、時間軸上の固定した時点において、受信信号強度を測定回数分測定し、一方、中央部キャリア測定ポイントでは、測定回数分の測定フレームごとに、あらかじめ定めた時間間隔ずつ時間軸上をシフトさせた測定時点に移動させ、移動させた該測定時点を中央部キャリア測定ポイントとして、受信信号強度を測定するものがある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-13038号公報
【文献】特許第6410333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、公衆用や自営用のPHSに加えてDECTやsXGPといった複数の通信方式を共存させて無線通信を行う場合、使用周波数帯が相互に重複する複数の通信方式が周囲に存在していると電波干渉を引き起こして通信に支障が生じるため、それぞれの通信方式で使用するために電波同士が干渉しないように調整が必要である。しかしながら、電波のレベル測定に用いられるスペクトラムアナライザは、高価であり、また、大きく、このため、電波のレベル測定に費用および手間がかかり、汎用性に欠けるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の電波検知技術では、従来のPHSシステムとの同期を維持しつつ他のシステムの信号検出を行うため、中央部1点のみをシフトさせて電波検知を行っている。このため、他のシステムの信号検出を行うには十分な測定回数が必要となり、検出までに時間を要してしまうという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、複数の無線通信方式毎の電波レベルを簡易に測定することが可能な電波強度測定方法および電波強度測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、PHS方式のキャリアセンスによって、PHS方式の受信信号強度と、PHS方式と使用周波数帯域が重複する少なくとも1つの他の通信方式の受信信号強度とをPHS端末によって測定する際に、前記PHS端末は、PHS方式の1スロットの時間を等分して、他の通信方式の信号長の最小幅よりも短くなるように時間間隔を設定した測定時点の全てについて、少なくとも1回は測定が行われるようにキャリアセンスの3点測定を行う位置を移動させて複数のフレームに対して測定を行う、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電波強度測定方法において、前記時間間隔が、PHS方式の1スロット分の625μsを12等分した時間幅である、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の電波強度測定方法において、前記3点測定を行う前記位置の配置に関する測定点パターンとして、PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、各スロットの前縁部を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、前記各スロットの前記前縁部から625/12×3 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、前記各スロットの前記前縁部から625/12×6 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、および、前記各スロットの前記前縁部から625/12×9 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターンが設定される、ことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、PHS方式のキャリアセンス機能を制御するプログラムであり、PHS方式のキャリアセンスによって、PHS方式の受信信号強度と、PHS方式と使用周波数帯域が重複する少なくとも1つの他の通信方式の受信信号強度とを測定する際に、PHS方式の1スロットの時間を等分して、他の通信方式の信号長の最小幅よりも短くなるように時間間隔を設定した測定時点の全てについて、少なくとも1回は測定が行われるようにキャリアセンスの3点測定を行う位置を移動させて複数のフレームに対して測定を行うように制御する、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電波強度測定プログラムにおいて、前記時間間隔が、PHS方式の1スロット分の625μsを12等分した時間幅である、ことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の電波強度測定プログラムにおいて、前記3点測定を行う前記位置の配置に関する測定点パターンとして、PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、各スロットの前縁部を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、前記各スロットの前記前縁部から625/12×3 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、前記各スロットの前記前縁部から625/12×6 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターン、および、前記各スロットの前記前縁部から625/12×9 μs 経過時点を第1測定点として625/12μsピッチの前記3点測定を行う測定点パターンが規定されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1や請求項4に記載の発明によれば、PHS方式のキャリアセンス機能を利用して、自営用PHS方式の信号に加えて例えばDECT方式やsXGP方式の信号を検出して、検出された信号の強度に基づいて自営用PHS電波に加えてDECT電波やsXGP電波のレベル測定を行うことが可能となる。さらに、請求項1や請求項4に記載の発明によれば、特別の装置を用いることなく、また、PHS端末のハードウェアを変更することなく、PHS端末がもともと備えているキャリアセンス機能をソフトウェアによって制御することのみにより、自営用PHS方式の信号に加えて例えばDECT方式やsXGP方式の信号の検出を行うことが可能となる。このため、複数の無線通信方式毎の電波レベルを簡易に測定することが可能となる。
【0015】
請求項1や請求項4に記載の発明によれば、特に、所定の時間間隔で設定される測定時点の全てが少なくとも1回は測定されるため、検出対象として想定される通信方式の信号の信号長に応じて測定時点相互の時間間隔が設定されることにより、種々の通信方式の信号を確実に検出することが可能となる。このため、PHS端末1台だけで、同一周波数帯を使用している周囲の自営用PHS方式の信号に加えて例えばDECT方式やsXGP方式の信号を検出してこれら方式の電波のレベル測定を行うことが可能であり、電波干渉の回避にかかる手間と費用とを大幅に低減させることが可能となる。
【0016】
請求項1や請求項4に記載の発明によれば、また、PHS方式のスロットに対して所定の時間間隔で設定した測定時点の全てについて測定が行われるので、通信のスロットの送信タイミングと測定のタイミングとが非同期であっても電波レベルを測定することが可能となる。つまり、従来のPHSシステムとの同期を維持する必要がない。このため、電波レベルを簡易に測定することが可能となる。請求項1や請求項4に記載の発明によれば、加えて、3つの測定時点の全てを同時に移動させながら測定するので、(3点測定を行う位置が重複しないようにした場合に特に)短時間で測定を行うことが可能となる。具体的には例えば、中央部1点のみをシフトさせる特許文献2の技術と比べ、全ての範囲に対して検出を行い且つ同一の測定間隔であれば、短時間で測定を行うことが可能となる。
【0017】
請求項2や請求項5に記載の発明によれば、通信で使用する信号の信号長が625/12μs以上である通信方式の信号を、具体的には例えばDECT方式やsXGP方式の信号を確実に検出することが可能となる。
【0018】
請求項3や請求項6に記載の発明によれば、所定の時間間隔で設定される測定時点の全てを少なくとも1回は測定するための測定点パターンが適切に設定されるため、種々の通信方式の信号を検出するための処理を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】自営用PHS方式、DECT方式、およびsXGP方式それぞれのフレームの構成を説明する模式図である。
【
図2】PHS方式のキャリアセンスにおける、スロットに対して適用される3点測定を説明する模式図である。
【
図3】この発明の実施の形態1における測定点パターンを示すとともに測定の結果得られる所定の時間間隔の測定データのイメージを説明する模式図である。
【
図4】この発明の実施の形態1における、測定回毎に適用される測定点パターンを説明する図である。
【
図5】この発明の実施の形態3における測定点パターンを示すとともに測定の結果得られる所定の時間間隔の測定データのイメージを説明する模式図である。
【
図6】この発明の実施の形態4における測定点パターンを示すとともに測定の結果得られる所定の時間間隔の測定データのイメージを説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0021】
(実施の形態1)
この電波強度測定方法は、PHS端末に備えられているキャリアセンス機能を利用して、自営用PHS電波、ならびに、この実施の形態ではDECT電波およびsXGP電波のレベル測定(受信信号強度の測定)が行われる。この実施の形態では、電波強度測定プログラムがPHS端末内に格納され、この電波強度測定プログラムが実行されることによって電波強度測定方法が実施される。なお、電波強度測定プログラムは、例えば、機能コードとパスワードとがPHS端末へと入力されることによって起動するように装備される。すなわち、本発明は、PHS端末を、スペクトラムアナライザとして機能させることを可能とする。
【0022】
PHS端末は、自営用PHS方式による無線通信機能を備えるPHS子機またはPHS基地局であり、自営用/事業所用のPHS電話機として機能する。PHS端末としてPHS子機が用いられる場合は、本発明が適用されることにより、PHS子機は、持ち運びが容易で携帯可能な、スペクトラムアナライザとして機能する機器となる。なお、PHS端末は、キャリアセンス機能を制御するためのプログラムとしての電波強度測定プログラムを格納したり、キャリアセンスによって測定される受信信号強度を保存したりする記憶部を備える。
【0023】
PHS端末は、使用しようとする無線リソースが他の無線装置によって使用されている場合には同一周波数での通信を行わないようにして電波干渉を回避するため、キャリアセンス(搬送波検知)機能、すなわち、通信で使用しようとするスロットにおける受信電力(受信信号強度)を測定して他の無線装置が使用中であるか否かを確認する機能を備える。キャリアセンスは、使用予定のスロット毎、周波数チャネル毎に行われる。
【0024】
図1は、自営用PHS方式、DECT方式、およびsXGP方式それぞれのフレームの構成を説明する模式図である。自営用PHS方式は、ch251~ch255ならびにch1~ch37の全42チャネルを有し、1893.5~1906.1MHzの周波数帯域を使用する。自営用PHS方式は、5ms周期の1フレームが、上り(送信)の4スロットと下り(受信)の4スロットとの計8スロットで構成され、1スロットの信号長は5ms/8=625μsである。
【0025】
DECT方式は、自営用PHS方式の周波数帯域(1893.5~1906.1MHz)において、中心周波数が1895.616MHzであるF1チャネル(1894.752~1896.480MHz)、中心周波数が1897.344MHzであるF2チャネル(1896.480~1898.208MHz)、中心周波数が1899.072MHzであるF3チャネル(1898.208~1899.936MHz)、中心周波数が1900.800MHzであるF4チャネル(1899.936~1901.664MHz)、中心周波数が1902.528MHzであるF5チャネル(1901.664~1903.392MHz)、および中心周波数が1904.256MHzであるF6チャネル(1903.392~1905.120MHz)の6波を使用する。DECT方式は、10ms周期の1フレームが、上り(送信)の12スロットと下り(受信)の12スロットとの計24スロットで構成され、1スロットの信号長は10ms/24≒416.7μsである。
【0026】
sXGP方式(5MHz幅)は、自営用PHS方式の周波数帯域(1893.5~1906.1MHz)において、中心周波数が1899.1MHzである#1の1波を使用する。sXGP方式は、10ms周期の1フレームが、上り(送信)の4サブフレーム、下り(受信)の4サブフレーム、および2つのスペシャルサブフレーム(下りから上りへの切り替えを行うサブフレーム)の計10サブフレームで構成され、1サブフレームは10ms/10=1msである。sXGP方式では、さらに、1サブフレームが14シンボルで構成され、1シンボルの信号長はガード期間を除くと66.7μsである。
【0027】
自営用PHS方式は、ch251~ch255ならびにch1~ch37の全42チャネルのうち、制御信号の送信用としてch12,ch18,ch35,およびch37の4チャネルを使用し、通話用として前記4チャネルを除いた38チャネルを使用する。PHS方式では、通話チャネルにおいて送信する情報は通信パケットであり、1スロットあたりに送信する電波(搬送波)の送信時間(信号長)は一定である。
【0028】
DECT方式は、制御信号の送信用として固有のチャネルをもたず、制御信号および通話信号ともに同一のチャネル(F1~F6の6チャネル)を使用する。このため、DECT方式は、制御用のダミーベアラ(ビーコンとも呼ばれる;通信がないときに定期的に送信される信号)とトラフィックベアラ(通信があるときに送信される信号)とを有し、ダミーベアラの最短の信号長は83.3μsであり、トラフィックベアラの信号長は368.1μsである。
【0029】
PHS方式のキャリアセンス(PHS端末に備えられているキャリアセンス)では、PHS方式の1スロットに対して(言い換えると、625μsの時間幅の間に)キャリアセンス測定点を3箇所(3点)設定することが可能である。したがって、例えば、1スロットの前縁部、中央部、および後縁部の3箇所を測定点として設定した場合には、測定点同士の時間間隔は625μs/2=312.5μsになる。
【0030】
一方、DECT方式の制御信号(具体的にはダミーベアラ)の最短の信号長は83.3μsであり、sXGP方式の制御信号の信号長(ガード期間を除く)は66.7μsである。したがって、PHS方式のキャリアセンスの測定点同士の時間間隔を312.5μsにした場合には、キャリアセンスの測定点の合い間にDECT方式やsXGP方式の制御信号の伝送が完了し、DECT方式やsXGP方式の制御信号を捕捉/検出することができない。つまり、DECT電波やsXGP電波のレベルを測定するためには、DECT方式とsXGP方式とにおける信号長の最小幅である66.7μs以下の時間間隔でサンプリングを行う必要がある。
【0031】
また、通信方式それぞれのフレームは伝送/送出のタイミングが同期しているわけではなく、各々随時に送受信が行われるため、検出対象の信号がいつ伝送されるのかは分からない。このため、PHS方式の1スロットに対して3点だけ設定するキャリアセンスの測定点同士の時間間隔を短くするだけでは、各通信方式の制御信号を確実に捕捉/検出することができるとは言えない。
【0032】
ここで、PHS方式のキャリアセンスでは、PHS方式の1スロットに対して(言い換えると、625μsの時間幅の間に)1回分のキャリアセンス測定の一纏まり/一組の測定点として設定できるのは3箇所(3点)であり、1つのスロットに対して1回分のキャリアセンス測定の一連の測定点として4箇所(4点)以上を設定して連続して測定することはできず、また、1つのスロットに対して1回分のキャリアセンス測定の一連の測定として3箇所(3点)の測定を繰り返して連続して測定することはできない。つまり、PHS方式のキャリアセンスでは、1スロットに対して4点以上の測定点について連続してサンプリングすることはできない。
【0033】
一方で、PHS方式のキャリアセンスでは、PHS方式の1フレームに対して、1回分のキャリアセンス測定の一纏まり/一連の処理として4スロット分の測定が行われる。また、PHS端末のキャリアセンス機能については、キャリアセンス測定として受信信号強度を測定する時点(言い換えると、PHS方式のスロットに対してキャリアセンス測定を行う測定点の時間位置)を、キャリアセンスの制御用のプログラムによって自在に設定することができる。さらに、PHS端末のキャリアセンス機能については、キャリアセンス測定を行うフレーム数を、キャリアセンスの制御用のプログラムによって自在に設定することができる。
【0034】
そこで、この実施の形態に係る電波強度測定方法は、PHS方式のキャリアセンスによって受信信号強度を測定する際に、PHS方式のスロットに対して所定の時間間隔で設定した測定時点の全てについて少なくとも1回は測定が行われるようにキャリアセンスの3点測定を行う位置を移動させて複数のフレームに対して測定を行うようにしている。
【0035】
また、この実施の形態に係る電波強度測定プログラムは、PHS方式のキャリアセンス機能を制御するプログラムであり、PHS方式のスロットに対して所定の時間間隔で設定した測定時点の全てについて少なくとも1回は測定が行われるようにキャリアセンスの3点測定を行う位置を移動させて複数のフレームに対して測定を行うように制御する、ようにしている。
【0036】
この実施の形態では、PHS方式の1スロットを12等分する。PHS方式の1スロットは625μsであるので、1スロットを12等分すると時間幅は625μs/12≒52.0833μsになる。そして、この52.0833μsは、DECT方式とsXGP方式とにおける信号長の最小幅である66.7μsよりも短い。
【0037】
PHS方式の1スロットに対して1回分のキャリアセンス測定の一纏まりの測定として3箇所について行われる測定のことを「3点測定」と呼び、この3点測定によって得られる一纏まり/一組の3つの測定点のことを「測定点セット」と呼ぶ(
図2参照)。この実施の形態では、3点測定における測定間隔が625μs/12≒52.0833μsであり、したがって、測定点セットにおける測定点同士の時間間隔が625μs/12≒52.0833μsである。
【0038】
図2に示すように、1組の測定点セットを構成する、時系列において最初の測定点のことを「第1測定点」と呼び、次の測定点のことを「第2測定点」と呼び、さらに、最後の測定点のことを「第3測定点」と呼ぶ。
【0039】
なお、PHS方式のキャリアセンスでは、PHS方式の1フレームに対して1回分のキャリアセンス測定の一纏まり/一連の処理として4スロット分の測定を行うことが可能であるので、1回分のキャリアセンス測定の一纏まり/一連の処理として3点測定が4回行われて4組の測定点セットが得られる。
【0040】
この実施の形態では、
図3に示すように、下記の4つの測定点パターンA~Dが設定される。各測定点パターンは、1回分のキャリアセンス測定の一纏まり/一連の処理として4スロット分の測定が行われることによって得られる4組の測定点セットによって構成される。言い換えると、各測定点パターンは、1回のキャリアセンス測定の一纏まり/一連の処理として4つのスロットのそれぞれに対して3点測定が行われる(つまり、3点測定が4回行われる)ことによって得られる12個の測定点の分布を表す。
【0041】
<測定点パターンA>
PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)を第1測定点として、625μs/12≒52.0833μsピッチの3点測定が行われる。
<測定点パターンB>
PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)から、625/12×3 μs 経過時点を第1測定点として、625μs/12≒52.0833μsピッチの3点測定が行われる。
<測定点パターンC>
PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)から、625/12×6 μs 経過時点を第1測定点として、625μs/12≒52.0833μsピッチの3点測定が行われる。
<測定点パターンD>
PHS方式の1フレームのうちの4つのスロットのそれぞれに対し、各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)から、625/12×9 μs 経過時点を第1測定点として、625μs/12≒52.0833μsピッチの3点測定が行われる。
【0042】
上記の測定点パターンA~Dのそれぞれは、この実施の形態では、PHS方式の1フレームを構成する8スロットのうち、前半の4つのスロットに対して適用され、また、後半の4つのスロットに対して適用される。
【0043】
そして、測定点パターンA~Dが適用されることによって得られる全ての測定時点毎の測定結果から、疑似的な、625μs/12≒52.0833μsピッチのサンプリングデータが得られる。
【0044】
625μs/12≒52.0833μsピッチのサンプリングによれば、信号長が625μsであるPHS方式のスロットの信号に加え、信号長が83.3μsであるDECT方式のダミーベアラや、信号長(ガード期間を除く)が66.7μsであるsXGP方式のシンボルの信号も確実に検出される。
【0045】
上記のように、PHS方式の1スロットを12等分して測定時点を設定した上で、キャリアセンスの3点測定を行う位置が相互に重複しないようにシフトさせて設定される4つの測定点パターンA~Dを適用することにより、PHS方式の4スロットに相当する2500μsの時間幅について、625μs/12≒52.0833μsピッチのサンプリングデータが得られる。したがって、PHS方式の4スロットのそれぞれに対して4つの測定点パターンA~Dそれぞれを適用する処理を4回繰り返すことにより、16スロット分に相当する10msの時間幅の全体について、625μs/12≒52.0833μsピッチのサンプリングデータが得られる。すなわち、DECT方式の1フレーム分の時間幅(10ms)やsXGP方式の1フレーム分の時間幅(10ms)の全体について、625μs/12≒52.0833μsピッチのサンプリングデータが得られる。
【0046】
具体的には例えば、
図4に示すように、PHS方式のキャリアセンスの測定回毎に、下記の処理が行われる。
測定1回目)1番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンAを適用
測定2回目)2番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンAを適用
測定3回目)3番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンBを適用
測定4回目)4番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンBを適用
測定5回目)5番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンCを適用
測定6回目)6番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンCを適用
測定7回目)7番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンDを適用
測定8回目)8番目フレームの前半4スロットに対して測定点パターンDを適用
【0047】
次に、PHS方式のキャリアセンスのスロット移動制御により、キャリアセンス測定の対象とするフレーム中のスロットの位置を4スロット分後ろにシフトさせた上で、下記の処理が行われる。
測定9回目)9番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンAを適用
測定10回目)10番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンAを適用
測定11回目)11番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンBを適用
測定12回目)12番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンBを適用
測定13回目)13番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンCを適用
測定14回目)14番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンCを適用
測定15回目)15番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンDを適用
測定16回目)16番目フレームの後半4スロットに対して測定点パターンDを適用
【0048】
DECT方式の1フレーム分の時間幅(10ms)やsXGP方式の1フレーム分の時間幅(10ms)の全体についてサンプリングデータを得るためには、PHS方式の2フレーム分のサンプリングデータが必要になる。
図4において、奇数番目のフレームのことを「疑似第1フレーム」と呼び、偶数番目のフレームのことを「疑似第2フレーム」と呼ぶ。つまり、疑似第1フレームの前半4スロットに対して測定点パターンA~Dの全てが適用されるとともに疑似第1フレームの後半4スロットに対して測定点パターンA~Dの全てが適用され、さらに、疑似第2フレームの前半4スロットに対して測定点パターンA~Dの全てが適用されるとともに疑似第2フレームの後半4スロットに対して測定点パターンA~Dの全てが適用されることにより、DECT方式の1フレーム分の時間幅(10ms)やsXGP方式の1フレーム分の時間幅(10ms)の全体についてサンプリングデータが得られる。
【0049】
上記の16回の測定を行うことによって1チャネル分の周波数帯域についての電波(信号)の検出が行われる。自営用PHSは全42チャネルであるので、上記の16回の測定を42チャネル分繰り返すことにより、自営用PHSの周波数帯域の全範囲についての測定が行われ、また、周波数帯域が重複しているDECT方式の周波数帯域の全範囲およびsXGP方式の周波数帯域の全範囲についての測定が行われる。
【0050】
PHS方式のキャリアセンスの1回の測定にかかる時間は5ms(即ち、PHS方式の1フレーム分の時間幅)であるので、連続する16個のフレームに対して測定を行うための、上記の16回の測定にかかる時間は5ms×16=80msである。1チャネルあたりの測定時間が80msであるので、80ms×42=3.36sで、自営用PHSの全42チャネル分の測定が完了する。
【0051】
上記の処理により、自営用PHSの全42チャネルそれぞれについての、16回の測定の結果としての、受信信号強度が得られる。この受信信号強度の利用の仕方は、例えば、チャネル毎(言い換えると、当該のチャネルに対応する周波数帯毎)に、測定された受信信号強度のうちの最大値が抽出され、該最大値に基づいて、当該のチャネルに対応する周波数帯が使用中であるか否かが判定される。
【0052】
上記の処理を実行するため、この実施の形態に係る電波強度測定プログラムでは、PHS方式のキャリアセンスを制御するプログラムとして下記の内容が設定される。
〈1〉キャリアセンスの3点測定を行う測定点同士の時間間隔が625μs/12≒52.0833μsに設定される。
〈2〉キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、開始位置として、1フレーム分の全8スロットのうちの前半4スロットに設定される。
〈3〉3点測定の第1測定点の位置が、1回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、3回目、5回目、および7回目の測定の際にそれぞれ625/12×3 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈4〉9回目の測定の前にスロット移動制御によって4スロット分シフトする(これにより、キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、1フレーム分の全8スロットのうちの後半4スロットに変更される)。
〈5〉3点測定の第1測定点の位置が、9回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、11回目、13回目、および15回目の測定の際にそれぞれ625/12×3 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈6〉1チャネルあたりの測定回数が16回に設定される。
【0053】
なお、測定点パターンA~Dが適用される順序は任意であり、あくまで一例として挙げると、測定点パターンB→測定点パターンD→測定点パターンA→測定点パターンCの順に適用されるようにしてもよい。この場合は、例えば、測定回毎の第1測定点の位置が電波強度測定プログラム内に規定されるようにしてもよい。
【0054】
この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、PHS方式のキャリアセンス機能を利用して、自営用PHS方式の信号に加えて例えばDECT方式やsXGP方式の信号を検出して、検出された信号の強度に基づいて自営用PHS電波に加えてDECT電波やsXGP電波のレベル測定を行うことが可能となる。さらに、特別の装置を用いることなく、また、PHS端末のハードウェアを変更することなく、PHS端末がもともと備えているキャリアセンス機能をソフトウェアによって制御することのみにより、自営用PHS方式の信号に加えて例えばDECT方式やsXGP方式の信号の検出を行うことが可能となる。このため、複数の無線通信方式毎の電波レベルを簡易に測定することが可能となる。
【0055】
この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、特に、所定の時間間隔で設定される測定時点の全てが少なくとも1回は測定されるため、検出対象として想定される通信方式の信号の信号長に応じて測定時点相互の時間間隔が設定されることにより、種々の通信方式の信号を確実に検出することが可能となる。このため、PHS端末1台だけで、同一周波数帯を使用している周囲の自営用PHS方式の信号に加えて例えばDECT方式やsXGP方式の信号を検出してこれら方式の電波のレベル測定を行うことが可能であり、電波干渉の回避にかかる手間と費用とを大幅に低減させることが可能となる。
【0056】
この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、また、PHS方式のスロットに対して所定の時間間隔で設定した測定時点の全てについて測定が行われるので、通信のスロットの送信タイミングと測定のタイミングとが非同期であっても電波レベルを測定することが可能となる。つまり、従来のPHSシステムとの同期を維持する必要がない。このため、電波レベルを簡易に測定することが可能となる。この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、加えて、3つの測定時点の全てを同時に移動させながら測定するので、短時間で測定を行うことが可能となる。具体的には例えば、中央部1点のみをシフトさせるような従来の技術と比べ、全ての範囲に対して検出を行い且つ同一の測定間隔であれば、短時間で測定を行うことが可能となる。
【0057】
また、この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、通信で使用する信号の信号長が625/12μs以上である通信方式の信号を、具体的には例えばDECT方式やsXGP方式の信号を確実に検出することが可能となる。
【0058】
加えて、この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、所定の時間間隔で設定される測定時点の全てを少なくとも1回は測定するための測定点パターンが適切に設定されるため、種々の通信方式の信号を検出するための処理を適切に行うことが可能となる。
【0059】
(実施の形態2)
実施の形態1では、PHS方式に加えて検出の対象とする信号の通信方式がDECT方式およびsXGP方式であるようにしているが、検出対象として想定する信号の通信方式は、DECT方式とsXGP方式とのうちの一方でもよく、また、他の通信方式でもよい。そして、検出対象の通信方式における最短の信号長以下になるように、測定時点相互の時間間隔が調整される。
【0060】
具体的には例えば、PHS方式に加えて検出対象として想定する信号の通信方式がDECT方式のみである場合には、DECT方式における最短の信号長は83.3μs(ダミーベアラ)であるので、PHS方式の1スロットを9等分すると時間幅は625μs/9≒69.4444μsになり、83.3μsよりも短くなる。
【0061】
この場合、PHS方式の1スロットを9等分して測定時点を設定した上で、キャリアセンスの3点測定(測定点同士の時間間隔が625μs/9≒69.4444μsである)を行う位置が相互に重複しないようにシフトさせて設定される3つの測定点パターンを適用することにより、PHS方式の4スロットに相当する2500μsの時間幅について、625μs/9≒69.4444μsピッチのサンプリングデータが得られる。
【0062】
したがって、PHS方式の4スロットのそれぞれに対して3つの測定点パターンそれぞれを適用する処理を4回繰り返す(つまり、12回の測定を行う)ことにより、16スロット分に相当する10msの時間幅の全体について、625μs/9≒69.4444μsピッチのサンプリングデータが得られる。すなわち、DECT方式の1フレーム分の時間幅(10ms)の全体について、625μs/9≒69.4444μsピッチのサンプリングデータが得られる。
【0063】
上記の場合、電波強度測定プログラムでは、PHS方式のキャリアセンスを制御するプログラムとして下記の内容が設定される。
〈1〉キャリアセンスの3点測定を行う測定点同士の時間間隔が625μs/9≒69.4444μsに設定される。
〈2〉キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、開始位置として、1フレーム分の全8スロットのうちの前半4スロットに設定される。
〈3〉3点測定の第1測定点の位置が、1回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、3回目および5回目の測定の際にそれぞれ625/9×3 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈4〉7回目の測定の前にスロット移動制御によって4スロット分シフトする(これにより、キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、1フレーム分の全8スロットのうちの後半4スロットに変更される)。
〈5〉3点測定の第1測定点の位置が、7回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、9回目および11回目の測定の際にそれぞれ625/9×3 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈6〉1チャネルあたりの測定回数が12回に設定される。
【0064】
この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、特に、通信で使用する信号の信号長が625/9μs以上である通信方式の信号を、具体的には例えばDECT方式の信号を確実に検出することが可能となる。
【0065】
(実施の形態3)
実施の形態1では、測定点パターン毎の3点測定を行う位置(即ち、第1~第3測定点の位置)が重複しないように各測定点パターンが設定されているが、測定点パターン毎の3点測定を行う位置が重複するようにしてもよい。
【0066】
具体的には例えば、上記の実施の形態2のようにPHS方式に加えて検出対象として想定する信号の通信方式がDECT方式のみである場合には、DECT方式における最短の信号長は83.3μs(ダミーベアラ)であるので、PHS方式の1スロットを8等分すると時間幅は625μs/8=78.125μsになり、83.3μsよりも短くなる。
【0067】
この場合、PHS方式の1スロットを8等分して測定時点を設定した上で、キャリアセンスの3点測定(測定点同士の時間間隔が78.125μsである)を行う位置が
図5に示すように設定される3つの測定点パターンX、Y、Zが適用されるようにしてもよい。この場合、測定点パターンZの第3測定点と測定点パターンXの第1測定点とが相互に重複するものの、重複して測定された受信信号強度のうちの最大値を測定結果とすればよい。
図5に示す例では、PHS方式の4スロットに相当する2500μsの時間幅について、78.125μsピッチのサンプリングデータが得られる。
【0068】
したがって、PHS方式の4スロットのそれぞれに対して3つの測定点パターンX、Y、Zそれぞれを適用する処理を4回繰り返す(つまり、12回の測定を行う)ことにより、16スロット分に相当する10msの時間幅の全体について、78.125μsピッチのサンプリングデータが得られる。すなわち、DECT方式の1フレーム分の時間幅(10ms)の全体について、78.125μsピッチのサンプリングデータが得られる。
【0069】
図5に示す例の場合、電波強度測定プログラムでは、PHS方式のキャリアセンスを制御するプログラムとして下記の内容が設定される。
〈1〉キャリアセンスの3点測定を行う測定点同士の時間間隔が625μs/8=78.125μsに設定される。
〈2〉キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、開始位置として、1フレーム分の全8スロットのうちの前半4スロットに設定される。
〈3〉3点測定の第1測定点の位置が、1回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、3回目および5回目の測定の際にそれぞれ625/8×3 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈4〉7回目の測定の前にスロット移動制御によって4スロット分シフトする(これにより、キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、1フレーム分の全8スロットのうちの後半4スロットに変更される)。
〈5〉3点測定の第1測定点の位置が、7回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、9回目および11回目の測定の際にそれぞれ625/8×3 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈6〉1チャネルあたりの測定回数が12回に設定される。
【0070】
この実施の形態に係る電波強度測定方法や電波強度測定プログラムによれば、特に、通信で使用する信号の信号長が625/8μs以上である通信方式の信号を、具体的には例えばDECT方式の信号を確実に検出することが可能となる。
【0071】
(実施の形態4)
実施の形態1では、PHS方式の1スロットを等分して測定時点を設定した上で、測定点パターンそれぞれの3点測定を行う位置(即ち、第1~第3測定点の位置)が、相互に隣り合う測定時点に設定されているが、3点測定を行う位置が相互に離れた測定時点に設定されてもよい。
【0072】
具体的には例えば、PHS方式の1スロットを12等分して測定時点を設定した上で、キャリアセンスの3点測定を行う位置が
図6に示すように設定される4つの測定点パターンA~Dが適用されるようにしてもよい。
図6に示す例では、キャリアセンスの3点測定を行う測定点同士の時間間隔が、625μs/12×4≒208.3333μsに設定されている。
図6に示す例でも、PHS方式の4スロットのそれぞれに対して4つの測定点パターンA~Dそれぞれを適用する処理を4回繰り返すことにより、16スロット分に相当する10msの時間幅の全体について、625μs/12≒52.0833μsピッチのサンプリングデータが得られる。
【0073】
図6に示す例の場合、電波強度測定プログラムでは、PHS方式のキャリアセンスを制御するプログラムとして下記の内容が設定される。
〈1〉キャリアセンスの3点測定を行う測定点同士の時間間隔が625μs/12×4≒208.3333μsに設定される。
〈2〉キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、開始位置として、1フレーム分の全8スロットのうちの前半4スロットに設定される。
〈3〉3点測定の第1測定点の位置が、1回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、3回目、5回目、および7回目の測定の際にそれぞれ625/12 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈4〉9回目の測定の前にスロット移動制御によって4スロット分シフトする(これにより、キャリアセンス測定の対象とする4スロットの位置が、1フレーム分の全8スロットのうちの後半4スロットに変更される)。
〈5〉3点測定の第1測定点の位置が、9回目の測定で各スロットの前縁部(スロットの先頭の時点)に設定され、11回目、13回目、および15回目の測定の際にそれぞれ625/12 μs ずつ移動した測定時点に設定される。
〈6〉1チャネルあたりの測定回数が16回に設定される。
【0074】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、自営用/事業所用のPHS電話機として機能するPHS端末が用いられるようにしているが、本発明に係る電波強度測定方法が適用されたり本発明に係る電波強度測定プログラムが搭載されたりする機器は、PHS方式のキャリアセンス機能を備えていればよく(言い換えると、PHS方式のキャリアセンスを実行できればよく)、PHS電話機としては機能しないものであってもよい。