(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20231030BHJP
F16D 25/0638 20060101ALI20231030BHJP
B60K 23/08 20060101ALI20231030BHJP
B60K 17/344 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
F16H57/04 P
F16D25/0638
B60K23/08 C
B60K17/344 B
(21)【出願番号】P 2019211719
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】嶋本 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】檀上 弥輝
(72)【発明者】
【氏名】山中 駿平
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-234078(JP,A)
【文献】特開2016-003658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/04
F16D 25/0638
B60K 23/08
B60K 17/344
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の主駆動輪および左右の副駆動輪を備えた車両に搭載される動力伝達装置であって、
前記主駆動輪に動力を伝達する第1伝達軸と、
前記副駆動輪に動力を伝達する第2伝達軸と、
前記第1伝達軸と前記第2伝達軸との間で動力を伝達する伝達機構と、
前記第1伝達軸の動力を前記伝達機構に伝達/遮断するために係合/解放されるクラッチと、を含み、
前記クラッチの少なくとも一部は、前記クラッチに対して前記クラッチの回転軸線方向の一方側に設けられる壁部と、前記クラッチに対して前記一方側と反対側の他方側から前記クラッチの下側に回り込んで前記壁部に接続されるオイルセパレータとに囲まれており、
前記オイルセパレータに対して前記他方側に配置されるソレノイドバルブをさらに含む
、動力伝達装置。
【請求項2】
前記オイルセパレータは、前記壁部と一体に形成される突き当てリブと、前記突き当てリブに近づくほど下側に位置するように傾斜したセパレータ本体とを突き合わせることにより形成される、請求項
1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
左右の主駆動輪および左右の副駆動輪を備えた車両に搭載される動力伝達装置であって、
前記主駆動輪に動力を伝達する第1伝達軸と、
前記副駆動輪に動力を伝達する第2伝達軸と、
前記第1伝達軸と前記第2伝達軸との間で動力を伝達する伝達機構と、
前記第1伝達軸の動力を前記伝達機構に伝達/遮断するために係合/解放されるクラッチと、を含み、
前記クラッチの少なくとも一部は、前記クラッチに対して前記クラッチの回転軸線方向の一方側に設けられる壁部と、前記クラッチに対して前記一方側と反対側の他方側から前記クラッチの下側に回り込んで前記壁部に接続されるオイルセパレータとに囲まれており、
前記オイルセパレータは、前記壁部と一体に形成される突き当てリブと、前記突き当てリブに近づくほど下側に位置するように傾斜したセパレータ本体とを突き合わせることにより形成される、動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されて、駆動源の動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行用の駆動源としてエンジンを搭載した車両では、そのエンジンの動力が変速機を介して駆動輪に伝達される。エンジンの搭載方式には、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きと横向きになる横置きとがある。FF(Front-engine Front-wheel-drive:フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトが採用された車両では、たとえば、エンジンコンパートメントの前後方向のサイズの縮小による車室長の拡大のため、エンジンが横置きで搭載されることが多い。一方、FR(Front-engine Rear-wheel-drive:フロントエンジン・リヤドライブ)レイアウトが採用された車両では、駆動輪である後輪への動力の伝達のしやすさなどから、エンジンが縦置きで搭載されることがある。
【0003】
エンジンが縦置きで搭載される車両用の変速機として、縦置き用のCVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)が既に提供されている。縦置き用のCVTは、入力軸が車体の前後方向に対して縦向きとなるように配置される。プロペラシャフトに動力を出力する出力軸は、入力軸に対して後側に離間し、入力軸と出力軸との間には、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに無端状のベルトが巻き掛けられた構成の無段変速機構が配置される。入力軸には、エンジンの動力がトルクコンバータを介して入力される。入力軸に入力される動力は、無段変速機構により変速されて、出力軸に伝達される。出力軸からプロペラシャフトに出力される動力は、デファレンシャルギヤにより左右のドライブシャフトに分配されて、左右の後輪に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる構成のCVTは、出力軸にトランスファを結合して、トランスファにより出力軸の動力が左右の前輪に伝達されるようにすれば、4WD(four-wheel drive:4輪駆動)仕様とすることができる。また、出力軸からの動力の伝達/遮断を切り替えるクラッチ(湿式クラッチ)を設ければ、左右の後輪による2輪駆動状態と左右の前輪および後輪による4輪駆動状態との切り替えが可能となる。
【0006】
ところが、本願発明者らが製品の開発を進めていくと、無段変速機構やトランスファを収容するケース内の底部に溜まるオイルにクラッチが浸かる場合があることが判った。クラッチがオイルに浸かると、オイルがクラッチの回転の抵抗となり、エネルギ損失の増大による燃費の悪化を招く。また、オイルがクラッチの回転により撹拌され、オイルが泡立つことにより、油圧を発生するオイルポンプにエア噛みが発生するおそれがある。
【0007】
本発明の目的は、クラッチがオイルに浸かることを抑制できる、動力伝達装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る動力伝達装置は、左右の主駆動輪および左右の副駆動輪を備えた車両に搭載される動力伝達装置であって、主駆動輪に動力を伝達する第1伝達軸と、副駆動輪に動力を伝達する第2伝達軸と、第1伝達軸と第2伝達軸との間で動力を伝達する伝達機構と、第1伝達軸の動力を伝達機構に伝達/遮断するために係合/解放されるクラッチと、を含み、クラッチの少なくとも一部は、クラッチに対してクラッチの回転軸線方向の一方側に設けられる壁部と、クラッチに対して一方側と反対側の他方側からクラッチの下側に回り込んで壁部に接続されるオイルセパレータとに囲まれている。
【0009】
この構成によれば、クラッチの解放時には、第1伝達軸から主駆動輪に動力が伝達されるが、第1伝達軸から伝達機構に動力が伝達されないので、第2伝達軸に動力が伝達されず、副駆動輪には動力が伝達されない。このとき、車両は、左右の主駆動輪による2輪駆動状態となる。一方、クラッチの係合時には、第1伝達軸から主駆動輪に動力が伝達されるとともに、第1伝達軸から伝達機構に動力が伝達されるので、その動力が第2伝達軸に伝達され、第2伝達軸から副駆動輪に動力が伝達される。このとき、車両は、左右の主駆動輪および副駆動輪による4輪駆動状態となる。
【0010】
クラッチに対するクラッチの回転軸線方向の一方側には、壁部が設けられている。また、クラッチに対して壁部と反対側には、オイルセパレータが設けられている。オイルセパレータは、クラッチの下側に回り込み、クラッチの位置を一方側に越えて、壁部に接続されている。これにより、クラッチの少なくとも一部は、壁部とオイルセパレータとに囲まれる。言い換えれば、クラッチの少なくとも下部は、壁部とオイルセパレータとによって形成されるクラッチ室に配置される。
【0011】
動力伝達装置の外殻をなすケース内の底部には、各部に供給される作動油または潤滑油となるオイルが溜まる。クラッチの少なくとも一部が壁部とオイルセパレータとに囲まれることにより、クラッチをケース内の底部に溜まるオイルから隔離することができ、クラッチがオイルに浸かること(浴油)を抑制できる。その結果、クラッチの浴油による種々の問題を回避することができる。すなわち、オイルがクラッチの回転の抵抗となることを抑制でき、エネルギ損失の増大による燃費の悪化を招く。また、ケース内の底部に溜まるオイルが泡立つことを抑制でき、油圧を発生するオイルポンプにエア噛みが発生することを抑制できる。
【0012】
オイルセパレータに対する他方側、つまりクラッチと反対側に、ソレノイドバルブが配置される構成では、ソレノイドバルブとクラッチとの間にオイルセパレータが介在されることにより、ソレノイドバルブに接続されるハーネスがクラッチと接触することを抑制できるという効果も奏する。
【0013】
オイルセパレータは、壁部と一体に形成される突き当てリブと、突き当てリブに近づくほど下側に位置するように傾斜したセパレータ本体とを突き合わせることにより形成されていてもよい。
【0014】
この構成では、突き当てリブとセパレータ本体との突き合わせ部分には、隙間が必然的に生じるので、壁部とオイルセパレータとに囲まれるスペース、つまりクラッチ室にオイルが入っても、その隙間からオイルを排出することができる。そのため、クラッチ室にオイルが溜まることを抑制でき、クラッチがオイルに浸かることを一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クラッチがオイルに浸かること(浴油)を抑制でき、その浴油による種々の問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る変速ユニットの構成を示す断面図である。
【
図2】変速ユニットの後端部(トランスファを含む部分)を
図1よりも拡大して示す断面図である。
【
図3】第3トランスミッションケース内の構成を示す斜視図である。
【
図4】CVTおよびトランスファの構成を図解的に示すスケルトン図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
<変速ユニット>
図1は、本発明の一実施形態に係る変速ユニット1の構成を示す断面図である。なお、
図1以降の断面図では、断面を表すハッチングの付与が省略されている。
【0019】
変速ユニット1は、車両に搭載されて、走行用の駆動源としてのエンジン2(E/G)2が発生する動力を変速するユニットである。車両は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)ベースのパートタイム4WD(four-wheel-drive:4輪駆動)車である。
【0020】
エンジン2は、たとえば、3気筒4ストロークエンジンであり、クランクシャフトが車体の前後方向に対して縦向きになる縦置きで搭載される。エンジン2の気筒数は、3気筒に限らず、4気筒以上であってもよいし、2気筒以下であってもよい。また、エンジン2のストローク数は、4ストロークに限らず、2ストロークであってもよい。
【0021】
変速ユニット1は、外殻をなすユニットケース3内に、トルクコンバータ4、CVT(Continuously Variable Transmission:無段変速機)5およびトランスファ6を備えている。
【0022】
<ユニットケース>
ユニットケース3は、トルクコンバータ4およびCVT5を収容するトランスミッションケースと、トランスファ6を収容するトランスファケースとを含む。トランスミッションケースは、第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13の3分割で構成されている。トランスファケースは、第1トランスファケース14および第2トランスファケース15の2分割で構成されている。第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12、第3トランスミッションケース13、第1トランスファケース14および第2トランスファケース15は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される。
【0023】
第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、前側(エンジン2側)からこの順に並べられている。第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12とがボルト16で締結され、第2トランスミッションケース12と第3トランスミッションケース13とがボルト17で締結されることにより、第1トランスミッションケース11、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13は、一体化されている。
【0024】
第1トランスファケース14および第2トランスファケース15は、前側からこの順に並べられている。第1トランスファケース14と第2トランスファケース15とは、ボルト18で締結されることにより一体化されている。そして、第1トランスファケース14がボルト19で第3トランスミッションケース13に締結されることにより、トランスミッションケースおよびトランスファケースは、一体化されている。
【0025】
<トルクコンバータ>
トルクコンバータ4は、第1トランスミッションケース11内に収容されている。トルクコンバータ4は、フロントカバー21、ポンプインペラ22、タービンハブ23、タービンランナ24、ロックアップ機構25およびステータ26を備えている。
【0026】
フロントカバー21は、車両(車体)の前後方向に延びる回転軸線を中心に略円板状に延び、その外周端部がエンジン2側と反対側(後述する無段変速機構42側)である後側に屈曲した形状をなしている。フロントカバー21の中心部は、前側に膨出している。この膨出した部分には、エンジン2のクランクシャフトが相対回転不能に結合される。
【0027】
ポンプインペラ22は、フロントカバー21の後側に配置されている。ポンプインペラ22の外周端部は、フロントカバー21の外周端部に接続され、回転軸線を中心にフロントカバー21と一体回転可能に設けられている。ポンプインペラ22の内面には、複数のブレード27が放射状に並べて配置されている。
【0028】
タービンハブ23は、フロントカバー21とポンプインペラ22との間に配置されている。
【0029】
タービンランナ24は、タービンハブ23に固定されている。タービンランナ24のポンプインペラ22との対向面には、複数のブレード28が放射状に並べて配置されている。
【0030】
ロックアップ機構25は、ロックアップピストン31およびダンパ機構32を備えている。
【0031】
ロックアップピストン31は、略円環板状をなし、その内周端部がタービンハブ23に外嵌されて、フロントカバー21とタービンランナ24との間に位置している。ロックアップピストン31に対してタービンランナ24側の係合側油室33の油圧がフロントカバー21側の解放側油室34の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がフロントカバー21側に移動する。そして、ロックアップピストン31がフロントカバー21に押し付けられると、ポンプインペラ22とタービンランナ24とが直結(ロックアップオン)される。逆に、解放側油室34の油圧が係合側油室33の油圧よりも高いと、その差圧により、ロックアップピストン31がタービンランナ24側に移動する。ロックアップピストン31がフロントカバー21から離間した状態では、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結が解除(ロックアップオフ)される。
【0032】
ダンパ機構32は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との直結時にエンジン2からの振動を減衰するための機構である。
【0033】
ステータ26は、ポンプインペラ22とタービンランナ24との間に配置されている。
【0034】
ロックアップオフの状態において、エンジントルクによりポンプインペラ22が回転すると、ポンプインペラ22からタービンランナ24に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ24のブレード28で受けられて、タービンランナ24が回転する。このとき、トルクコンバータ4の増幅作用が生じ、タービンランナ24には、エンジントルクよりも大きなトルクが発生する。
【0035】
<CVT>
CVT5は、第2トランスミッションケース12および第3トランスミッションケース13内に収容されている。CVT5は、入力軸41、無段変速機構42、出力軸43およびリバース伝達機構44を備えている。変速ユニット1は、エンジン2の後側に、CVT5の入力軸41が車両の前後方向に延びる縦向きとなる縦置きで配置されている。
【0036】
入力軸41は、中空軸に形成されて、トルクコンバータ4の回転軸線上を延びている。入力軸41の前端部は、トルクコンバータ4内に挿入されて、タービンハブ23とスプライン嵌合している。
【0037】
なお、以下の説明において、入力軸41の軸線が延びる方向を「軸線方向」という。また、軸線方向と直交する方向、つまり入力軸41の径方向を「軸径方向」という。
【0038】
入力軸41の後端部は、第2トランスミッションケース12内に配置された機械式のオイルポンプ45に回転可能に支持されている。具体的には、オイルポンプ45は、ポンプケース46と、ポンプケース46に後側から接合されるポンプカバー47と、ポンプケース46内のスペースに配置されるポンプギヤ48と、ポンプギヤ48に相対回転不能に結合されるポンプ軸49とを備えている。ポンプカバー47は、第2トランスミッションケース12に固定され、ポンプケース46内のスペースを後側から閉鎖している。ポンプケース46の前端部には、後側に略円柱状に凹んだ凹部51が形成されている。入力軸41の後端部は、凹部51内に挿入されて、入力軸41の周面と凹部51の内周面との間に介在されるラジアルベアリング52を介してポンプケース46に回転可能に支持されている。
【0039】
また、入力軸41の後側の端面と凹部51の底面との間には、スラストベアリング53が介在されている。これにより、入力軸41の回転時におけるメカニカルロスが低減される。
【0040】
ポンプ軸49は、ポンプケース46およびポンプカバー47を貫通して設けられている。ポンプ軸49は、ポンプケース46から前側に延び、入力軸41にその内周面との間に隙間を空けて挿通されている。ポンプ軸49の前端部は、トルクコンバータ4のフロントカバー21に達し、そのフロントカバー21の中心部に相対回転不能に接続されている。これにより、エンジン2の動力によりフロントカバー21が回転すると、フロントカバー21と一体にポンプ軸49およびポンプギヤ48が回転し、オイルポンプ45から油圧が発生する。
【0041】
無段変速機構42は、プライマリ軸54、セカンダリ軸55、プライマリプーリ56、セカンダリプーリ57およびベルト58を備えている。
【0042】
プライマリ軸54は、第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12との間において、入力軸41に対して車両の後側から見て右下方に離間した位置で、入力軸41と平行に延び、その軸心まわりに回転可能に設けられている。
【0043】
セカンダリ軸55は、第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12との間において、入力軸41の軸心に対して車両の後側から見て左上方に離間した位置で入力軸41と平行に延び、その軸心まわりに回転可能に設けられている。
【0044】
プライマリプーリ56は、プライマリ軸54に固定されたプライマリ固定シーブ61と、プライマリ固定シーブ61にベルト58を挟んで対向配置され、プライマリ軸54に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたプライマリ可動シーブ62とを備えている。プライマリ可動シーブ62は、プライマリ固定シーブ61に対して前側に配置されている。プライマリ可動シーブ62に対してプライマリ固定シーブ61側と反対側、つまり前側には、シリンダ63が設けられ、プライマリ可動シーブ62とシリンダ63との間には、油圧室(ピストン室)64が形成されている。
【0045】
セカンダリプーリ57は、セカンダリ軸55に固定されたセカンダリ固定シーブ65と、セカンダリ固定シーブ65にベルト58を挟んで対向配置され、セカンダリ軸55に軸線方向に移動可能かつ相対回転不能に支持されたセカンダリ可動シーブ66とを備えている。セカンダリ可動シーブ66は、セカンダリ固定シーブ65に対して後側に配置されている。セカンダリ可動シーブ66に対してセカンダリ固定シーブ65と反対側、つまり後側には、ピストン67が設けられ、セカンダリ可動シーブ66とピストン67との間には、油圧室68が形成されている。
【0046】
ベルト58は、無端状に形成され、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間に挟まれた状態でプライマリプーリ56に巻き掛けられるとともに、セカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間に挟まれた状態でセカンダリプーリ57に巻き掛けられている。
【0047】
無段変速機構42では、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各油圧室64,68に供給される油圧が制御されて、プライマリプーリ56およびセカンダリプーリ57の各溝幅が変更されることにより、ベルト変速比(プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比)が一定の変速比範囲内で連続的に無段階で変更される。
【0048】
具体的には、ベルト変速比が小さくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が上げられる。これにより、プライマリプーリ56のプライマリ可動シーブ62がプライマリ固定シーブ61側に移動し、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔(溝幅)が小さくなる。これに伴い、プライマリプーリ56に対するベルト58の巻き掛け径が大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔(溝幅)が大きくなる。その結果、ベルト変速比が小さくなる。
【0049】
ベルト変速比が大きくされるときには、プライマリプーリ56の油圧室64に供給される油圧が下げられる。これにより、ベルト58に対するセカンダリプーリ57の推力がベルト58に対するプライマリプーリ56の推力よりも大きくなり、セカンダリプーリ57のセカンダリ固定シーブ65とセカンダリ可動シーブ66との間隔が小さくなるとともに、プライマリ固定シーブ61とプライマリ可動シーブ62との間隔が大きくなる。その結果、ベルト変速比が大きくなる。
【0050】
セカンダリプーリ57の油圧室68には、バイアススプリング69が設けられている。バイアススプリング69は、一端がセカンダリ可動シーブ66に弾性的に当接し、他端がピストン67に弾性的に当接している。バイアススプリング69の弾性力により、セカンダリ可動シーブ66およびピストン67が互いに離間する方向に付勢されている。セカンダリ可動シーブ66には、油圧室68内の油圧およびバイアススプリング69による付勢力が付与され、ベルト58には、それに応じた挟圧が付与される。
【0051】
また、入力軸41には、軸線方向の中央部に、入力軸ギヤ81が一体に形成されている。これに対応して、プライマリ軸54には、入力軸ギヤ81と噛合するプライマリ入力ギヤ82が相対回転可能に支持されている。これらの互いに噛合する入力軸ギヤ81およびプライマリ入力ギヤ82とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転を許容/禁止する前進クラッチ83が設けられている。前進クラッチ83の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0052】
前進クラッチ83は、クラッチドラム84、クラッチハブ85およびクラッチピストン86を備えている。クラッチドラム84は、内周端がプライマリ軸54に固定され、プライマリ軸54から軸径方向に延び、外周端部がプライマリ入力ギヤ82側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ85は、プライマリ入力ギヤ82と一体に形成され、プライマリ入力ギヤ82から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム84の外周端部に対して軸径方向の内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン86は、クラッチドラム84とクラッチハブ85との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン86は、クラッチドラム84に液密的に当接しており、クラッチドラム84とクラッチピストン86との間には、クラッチピストン86に作用する油圧が供給される油圧室87が形成されている。また、クラッチピストン86は、リターンスプリング88により、後側に弾性的に付勢されている。
【0053】
クラッチドラム84の外周端部とクラッチハブ85とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム84に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ85に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室87に供給される油圧により、クラッチピストン86が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、前進クラッチ83が係合する。前進クラッチ83の係合により、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が禁止され、プライマリ入力ギヤ82が回転すると、プライマリ軸54がプライマリ入力ギヤ82と一体に回転する。前進クラッチ83の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング88の付勢力により、クラッチピストン86が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、前進クラッチ83が解放される。前進クラッチ83の解放により、プライマリ軸54に対するプライマリ入力ギヤ82の回転が許容され、プライマリ入力ギヤ82が回転しても、その回転がプライマリ軸54に伝達されない。
【0054】
セカンダリ軸55には、セカンダリ入力ギヤ91が相対回転可能に支持されている。セカンダリ入力ギヤ91は、軸線方向において、入力軸ギヤ81とオイルポンプ45との間に配置されている。また、セカンダリ入力ギヤ91とオイルポンプ45との間のスペースを利用して、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転を許容/禁止する後進クラッチ92が設けられている。後進クラッチ92の一部は、オイルポンプ45と軸径方向に重なっている(軸線方向に見て重なっている)。
【0055】
後進クラッチ92は、クラッチドラム93、クラッチハブ94およびクラッチピストン95を備えている。クラッチドラム93は、内周端がセカンダリ軸55に固定され、セカンダリ軸55から軸径方向に延び、外周端部がセカンダリ入力ギヤ91側、つまり前側に屈曲して延びている。クラッチハブ94は、セカンダリ入力ギヤ91と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91から後側に延出する円筒状をなし、クラッチドラム93の外周端部に対して軸径方向内側から間隔を空けて対向している。クラッチピストン95は、クラッチドラム93とクラッチハブ94との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン95は、クラッチドラム93に液密的に当接しており、クラッチドラム93とクラッチピストン95との間には、クラッチピストン95に作用する油圧が供給される油圧室96が形成されている。また、クラッチピストン95は、リターンスプリング97により、後側に弾性的に付勢されている。
【0056】
クラッチドラム93の外周端部とクラッチハブ94とに軸径方向に挟まれる空間において、クラッチドラム93に保持されるクラッチプレートとクラッチハブ94に保持されるクラッチディスクとが軸線方向に交互に並んでいる。油圧室96に供給される油圧により、クラッチピストン95が前側に移動してクラッチプレートを後側から押圧すると、クラッチプレートとクラッチディスクとが圧接し、後進クラッチ92が係合する。後進クラッチ92の係合により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が禁止され、セカンダリ入力ギヤ91が回転すると、セカンダリ軸55がセカンダリ入力ギヤ91と一体に回転する。後進クラッチ92の係合状態から油圧が開放されると、リターンスプリング97の付勢力により、クラッチピストン95が後側に移動し、クラッチディスクとクラッチプレートとの圧接が解除されて、後進クラッチ92が解放される。後進クラッチ92の解放により、セカンダリ軸55に対するセカンダリ入力ギヤ91の回転が許容され、セカンダリ入力ギヤ91が回転しても、その回転がセカンダリ軸55に伝達されない。
【0057】
出力軸43は、入力軸41に対して後側に間隔を空けて、入力軸41と同一軸線上に配置されている。言い換えれば、入力軸41と出力軸43とは、軸線方向に間隔を空けてそれぞれ前後に、車両の前後方向に沿った縦向きに延びる共通の軸線を有するように配置されている。出力軸43には、出力軸ギヤ101が一体に形成されている。これに対応して、セカンダリ軸55には、出力軸ギヤ101と噛合するセカンダリ出力ギヤ102が相対回転不能に支持されている。
【0058】
リバース伝達機構44は、入力軸41の動力(回転)をセカンダリ入力ギヤ91に伝達する機構である。リバース伝達機構44には、リバースアイドラ軸103、第1リバースギヤ104および第2リバースギヤ105が含まれる。リバースアイドラ軸103は、軸線方向に延び、第1トランスミッションケース11と第2トランスミッションケース12とに跨がって、第1トランスミッションケース11および第2トランスミッションケース12に回転可能に支持されている。第1リバースギヤ104は、リバースアイドラ軸103と一体に形成されて、入力軸ギヤ81と噛合している。第2リバースギヤ105は、第1リバースギヤ104の後側において、リバースアイドラ軸103と一体に形成され、セカンダリ入力ギヤ91と噛合している。
【0059】
<トランスファ>
図2は、変速ユニット1の後端部、つまりトランスファ6を含む部分を
図1よりも拡大して示す断面図である。以下、
図1に加えて、
図2を適宜に参照しつつ、トランスファ6の構成について説明する。
【0060】
トランスファ6は、出力軸43の動力(回転)を車両の前輪に伝達する機構である。トランスファ6には、伝達軸111、第1スプロケット112、第2スプロケット113、チェーン114および4WDクラッチ115が含まれる。
【0061】
伝達軸111は、出力軸43に対して軸径方向に間隔を空けた位置で、出力軸43と平行をなして、第1トランスファケース14と第2トランスファケース15とに跨がって延びている。伝達軸111の後端部には、ボールベアリング116の内輪が圧入により固定されている。また、伝達軸111には、ボールベアリング116から前側に間隔を空けた位置に、ボールベアリング117の内輪が圧入により固定されている。そして、ボールベアリング116の外輪が第2トランスファケース15に固定的に保持され、ボールベアリング117の外輪が第1トランスファケース14に固定的に保持されることにより、伝達軸111は、第1トランスファケース14および第2トランスファケース15に回転可能に支持されている。
【0062】
第1スプロケット112は、第1トランスファケース14および第2トランスファケース15に回転可能に支持されて、出力軸43に相対回転可能に外嵌されている。具体的には、第1スプロケット112は、出力軸43の周囲を取り囲む略円環板状のスプロケット部121と、スプロケット部121の内周部から前側に延出する前側延出部122と、スプロケット部121の内周部から後側に延出する後側延出部123とを一体に有している。スプロケット部121の外周部には、複数の歯が周方向に等間隔で形成されている。前側延出部122には、ボールベアリング124の内輪が圧入により外嵌されている。また、後側延出部123には、ボールベアリング125の内輪が圧入により外嵌されている。そして、ボールベアリング124の外輪が第1トランスファケース14に固定的に保持され、ボールベアリング125の外輪が第2トランスファケース15に固定的に保持されている。これにより、第1スプロケット112は、出力軸43に相対回転可能に外嵌された状態で、ボールベアリング124,125を介して、第1トランスファケース14および第2トランスファケース15に回転可能に支持されている。
【0063】
第2スプロケット113は、ボールベアリング116,117の間において、伝達軸111と一体に、伝達軸111から軸径方向に張り出す略円環板状に形成されている。第2スプロケット113の外周部には、複数の歯が周方向に等間隔で形成されている。
【0064】
チェーン114は、無端状に形成され、第1スプロケット112のスプロケット部121および第2スプロケット113に巻き掛けられている。
【0065】
4WDクラッチ115は、第1スプロケット112の前側に設けられている。4WDクラッチ115は、クラッチドラム131、クラッチハブ132、クラッチピストン133およびキャンセラ134を備えている。
【0066】
出力軸43には、出力軸ギヤ101と第1スプロケット112との間に、略円筒状の筒状部材135が外嵌されて固定されている。筒状部材135と第1スプロケット112との間には、間隔が空けられている。筒状部材135の軸線方向の中央部であって、セカンダリ軸55の後端部と軸径方向に対向する位置には、軸径方向に張り出す鍔状の接続部136が筒状部材135と一体に形成されている。
【0067】
クラッチドラム131は、出力軸43の軸線を中心に回転対称に形成され、軸線方向に見て、筒状部材135の接続部136の全周を取り囲む略円環形状をなしている。クラッチドラム131の内周端は、接続部136に固定されている。クラッチドラム131は、内周端から軸線方向と交差する方向に延び、セカンダリ軸55を後側に越え、セカンダリ軸55に対して軸線方向に後側から対向する位置で後側に屈曲して、その位置から軸線方向に延びている。言い換えれば、クラッチドラム131は、接続部136から後側に向けて拡径する拡径部137と、拡径部137の後端(外周端)から軸線方向の後側に延びる略円筒状の円筒状部138とを一体に有しており、拡径部137の前端部は、セカンダリ軸55の後端部に対して軸径方向に対向し、円筒状部138は、セカンダリ軸55に対して軸線方向に後側から対向している。また、クラッチドラム131の軸線方向に延びる部分、つまり円筒状部138は、第1スプロケット112の前側延出部122と軸径方向に対向している。円筒状部138の内周面には、複数のクラッチプレート139が軸線方向に間隔を空けて並べて保持されている。
【0068】
第1スプロケット112と筒状部材135との間には、支持部材141が設けられている。支持部材141は、出力軸43を取り囲む略円筒状の外嵌部142と、外嵌部142の前端部から軸径方向に延出する鍔状(円環板状)の鍔状部143とを一体的に有している。外嵌部142は、第1スプロケット112の前側延出部122と出力軸43との間に進入し、第1スプロケット112の前側延出部122は、外嵌部142およびクラッチドラム131の円筒状部138と軸径方向に対向している。外嵌部142の外周面は、第1スプロケット112の前側延出部122の内周面とスプライン嵌合により相対回転不能に結合されている。外嵌部142の内周面は、出力軸43の周面と密着しておらず、出力軸43の外周面と外嵌部142の内周面との間には、微小な隙間が生じている。これにより、支持部材141は、第1スプロケット112との間で相対的な回転が不能であり、かつ、出力軸43との間で相対的な回転が可能である。筒状部材135と支持部材141との間には、それらの相対回転時のメカニカルロスを低減するため、スラストベアリング144が介在されている。
【0069】
クラッチハブ132は、出力軸43の軸線を中心に回転対称に形成され、軸線方向に見て、支持部材141の鍔状部143の全周を取り囲む略円環形状をなしている。クラッチハブ132の内周端は、鍔状部143に固定されている。クラッチハブ132は、鍔状部143から軸径方向の外側に延び、クラッチドラム131の円筒状部138に対して軸径方向の内側に間隔を空けた位置で後側に屈曲して、その位置から軸線方向に延びている。言い換えれば、クラッチハブ132は、鍔状部143から周囲に延出する略円環板状の円環板状部151と、円環板状部151の外周端から軸線方向の後側に延びる略円筒状の円筒状部152とを一体に有しており、円筒状部152は、クラッチドラム131の円筒状部138に対して軸径方向の内側に配置されて、その円筒状部138とともに二重円筒状をなしている。円筒状部152の外周面には、複数のクラッチディスク153が軸線方向に間隔を空けて並べて保持されている。クラッチプレート139とクラッチディスク153とは、軸線方向に交互に並べられている。
【0070】
クラッチピストン133は、クラッチドラム131とクラッチハブ132との間に、軸線方向に移動可能に設けられている。クラッチピストン133は、筒状部材135から屈曲を繰り返しつつクラッチプレート139に向けて延びている。クラッチピストン133の途中部分には、シール部材154が設けられており、クラッチピストン133の位置にかかわらず、シール部材154がクラッチドラム131に液密的に当接する。これにより、クラッチドラム131とクラッチピストン133との間には、クラッチピストン133に作用する油圧が供給される油圧室155が形成されている。
【0071】
キャンセラ134は、クラッチハブ132とクラッチピストン133との間に設けられている。キャンセラ134は、略円環板状に形成されている。キャンセラ134の内周端は、筒状部材135に固定されている。キャンセラ134の外周端には、シール部材156が設けられており、このシール部材156は、クラッチピストン133の位置にかかわらず、クラッチピストン133に当接する。クラッチピストン133とキャンセラ134との間には、リターンスプリング157が介在されている。このリターンスプリング157の付勢力(弾性力)により、クラッチピストン133とキャンセラ134とは、互いに離間する方向に弾性的に付勢されている。
【0072】
クラッチピストン133は、油圧室155に供給される油圧により、クラッチプレート139側に移動し、クラッチプレート139を押圧する。この押圧により、クラッチプレート139とクラッチディスク153とが圧接し、4WDクラッチ115が係合する。4WDクラッチ115の係合により、クラッチドラム131とクラッチハブ132との相対回転が阻止されて、支持部材141が出力軸43および筒状部材135と一体に回転し、支持部材141と一体に第1スプロケット112が回転する。第1スプロケット112の回転(動力)は、チェーン114を介して第2スプロケット113に伝達され、第2スプロケット113を第1スプロケット112と同方向に回転させる。そして、第2スプロケット113と一体に、伝達軸111が回転する。
【0073】
4WDクラッチ115の係合状態から油圧室155の油圧が解放されると、リターンスプリング157の付勢力により、クラッチピストン133がキャンセラ134から離間する方向に移動し、クラッチピストン133によるクラッチプレート139の押圧が解除される。その結果、クラッチプレート139とクラッチディスク153との圧接が解除されて、4WDクラッチ115が解放される。4WDクラッチ115の解放により、クラッチドラム131とクラッチハブ132との相対回転が許容される。そのため、出力軸43および筒状部材135が回転しても、その回転は、支持部材141および第1スプロケット112に伝達されず、それゆえ、第1スプロケット112からチェーン114および第2スプロケット113を介して伝達軸111にも伝達されない。
【0074】
プライマリ軸54と出力軸43および4WDクラッチ115との間には、アダプタ161およびアダプタケース162が設けられている。アダプタ161およびアダプタケース162は、たとえば、アルミ合金製であり、ダイカスト法によって鋳造される鋳物である。アダプタケース162は、第1油路形成部163および第2油路形成部164を有している。
【0075】
アダプタ161は、出力軸43とプライマリ軸54との間を軸径方向に延びている。アダプタ161の上端部は、後側に突出しており、その突出した部分には、前側に略円柱状に凹んだ凹部166が形成されている。出力軸43の前端部は、凹部166内に挿入されている。出力軸43の周面と凹部166の内周面との間には、ラジアルベアリング167が介在されている。出力軸43の前端部は、ラジアルベアリング167を介して、アダプタ161に回転可能に支持されている。また、出力軸43には、出力軸ギヤ101が形成されている部分と凹部166内に挿入される部分との間に、軸径方向に沿った円環状の段差面168が形成されている。段差面168とアダプタ161との間には、スラストベアリング169が介在されている。
【0076】
アダプタ161には、後側に略円柱状に凹んだ凹部171が形成されている。プライマリ軸54の後端部は、凹部171に挿入されている。プライマリ軸54の周面と凹部171の内周面との間には、ボールベアリング172が介在されている。プライマリ軸54の後端部は、ボールベアリング172を介して、アダプタ161に回転可能に支持されている。
【0077】
アダプタ161の下端部には、前側からボルト173が挿通される。そして、そのボルト173により、アダプタ161は、第3トランスミッションケース13に取り付けられている。
【0078】
アダプタケース162の第1油路形成部163は、アダプタ161の下側を軸線方向に延び、その後端部が軸径方向に延びている。第1油路形成部163の前面174は、第2トランスミッションケース12の後面175に当接している。第1油路形成部163には、第1油路176、第2油路177および第3油路178が形成されている。第1油路176は、軸線方向に延びる油路であり、前面174で開口している(開放されている)。第2油路177は、第1油路形成部163の後端部で軸径方向に延びている。第2油路177は、第1油路形成部163の下面で開口しているが、その開口は、ボルト179がねじ込まれることにより閉鎖されている。第1油路176の後端は、第2油路177の途中部分に接続されており、第1油路176と第2油路177とは、連通している。第3油路178は、第1油路形成部163の後端部の上端部で軸線方向に延びる油路である。第3油路178の前端は、第2油路177の上端部に接続されており、第2油路と177と第3油路178とは、連通している。
【0079】
アダプタケース162の第2油路形成部164は、第1油路形成部163の上側に間隔を空けて設けられ、軸径方向に延びている。筒状部材135の前端部は、略円筒状の接続部材181に相対回転可能に挿通されている。接続部材181には、軸径方向に延びる固定部182が形成されており、接続部材181は、その固定部182に挿通されるボルト183により、第3トランスミッションケース13に固定されている。第2油路形成部164の上面184は、接続部材181の周面に当接している。第2油路形成部164には、第4油路185および第5油路186が形成されている。第4油路185は、軸径方向に延びる油路であり、第2油路形成部164の上面184で開口している(開放されている)。第5油路186は、第2油路形成部164の下端部で軸線方向に延びる油路である。第4油路185の下端は、第5油路186に接続されており、第4油路185と第5油路186とは、連通している。
【0080】
第1油路形成部163と第2油路形成部164とは、板状の連結部187により連結されている。第1油路形成部163、第2油路形成部164および連結部187の各後面に跨がって、バルブボディ取付面188が平面として形成されている。第3油路178および第5油路186は、バルブボディ取付面188で開口している(開放されている)。
【0081】
なお、アダプタケース162は、ボルト189により、第3トランスミッションケース13に取り付けられている。
【0082】
<油供給構造>
第2トランスミッションケース12の底部には、バルブボディ191が設けられている。バルブボディ191には、変速ユニット1の各部へのオイルの供給を制御するための各種のバルブを含む油圧回路が形成されている。また、第2トランスミッションケース12の底部には、ストレーナ192が設けられている。ストレーナ192は、バルブボディ191と横並びで配置される本体部193と、本体部193から延出し、その先端部がバルブボディ191の下側に配置される管部194とを備えている。また、第2トランスミッションケース12には、オイルパン195が下側から複数のボルト196で固定されている。ストレーナ192の管部194の先端部は、オイルパン195の中央部に位置しており、その先端部の下面は、オイルパン195内に貯留されるオイルを吸い込むためのオイル吸込口197として開口している。
【0083】
オイルポンプ45のポンプギヤ48の回転により吸引力が発生し、その吸引力により、オイルパン195に貯留されているオイルがオイル吸込口197から管部194内に吸い込まれる。管部194内に吸い込まれたオイルは、管部194内を本体部193に向けて流れ、本体部193内に設けられた濾過材を通過する。オイルが濾過材を通過することにより、オイル中に含まれる異物が濾過材に捕獲されて、オイル中から異物が除去される。濾過材を通過したオイルは、バルブボディ191に供給される。そして、バルブボディ191から無段変速機構42などのオイルの供給を必要とする各部に作動油または潤滑油としてオイルが供給される。
【0084】
バルブボディ191に形成された油圧回路には、オイルポンプ45の作用によりバルブボディ191に供給されるオイルの油圧(ライン圧)をクラッチモジュレータ圧に調圧して出力するクラッチモジュレータバルブが含まれる。第2トランスミッションケース12には、クラッチモジュレータバルブから出力されるクラッチモジュレータ圧のオイルが流通するクラッチモジュレータ圧油路198が形成されている。
【0085】
第2トランスミッションケース12におけるアダプタ161の第1油路形成部163との合わせ面、つまり第1油路形成部163の前面174が当接する後面175には、接続口199が形成されており、クラッチモジュレータ圧油路198は、その接続口199に接続されている。また、接続口199には、第1油路形成部163の前面174に形成されている第1油路176の開口が接続される。これにより、クラッチモジュレータ圧油路198は、接続口199を介して、第1油路176と連通している。そのため、バルブボディ191からクラッチモジュレータ圧油路198に供給されるクラッチモジュレータ圧のオイルは、クラッチモジュレータ圧油路198から接続口199を介して第1油路176に供給され、第1油路176から第2油路177および第3油路178へと流れる。
【0086】
アダプタケース162のバルブボディ取付面188には、バルブボディ191よりも小型の小型バルブボディ201が複数のボルト202で取り付けられる。小型バルブボディ201は、4WDクラッチ115の制御に専用のバルブボディとして設けられており、小型バルブボディ201には、4WDクラッチ115に供給される油圧を制御するための油圧回路が形成されている。この油圧回路には、たとえば、リニアソレノイドバルブ203が含まれる。リニアソレノイドバルブ203は、バルブボディ191の内外に跨がって配置されている。すなわち、リニアソレノイドバルブ203のバルブ部分204は、小型バルブボディ201内に配置され、コイルおよびプランジャを含むソレノイド部分205は、小型バルブボディ201外に配置されている。体格の大きいソレノイド部分205が小型バルブボディ201外に配置されることにより、小型バルブボディ201の小型化を図ることができる。
【0087】
小型バルブボディ201は、アダプタケース162のバルブボディ取付面188に沿って延び、そのバルブボディ取付面188との対向面となる前面は、バルブボディ取付面188に当接している。その前面には、油圧回路内にオイルを取り入れるための入口と、油圧回路からオイルを送り出すための出口とがそれぞれ開口として形成されている。小型バルブボディ201の入口および出口は、それぞれバルブボディ取付面188における第3油路178の開口および第5油路186の開口と接続されている。これにより、第3油路178を流れるクラッチモジュレータ圧のオイルは、小型バルブボディ201の入口から小型バルブボディ201内の油圧回路に供給される。リニアソレノイドバルブ203への通電が制御されることにより、小型バルブボディ201の入口から油圧回路に供給されるクラッチモジュレータ圧のオイルは、クラッチモジュレータ圧のまま、または、クラッチモジュレータ圧から減圧されて、小型バルブボディ201の出口から第5油路186に送り出される。第5油路186に送り出されるオイルは、第5油路186から第4油路185に流入する。
【0088】
出力軸43と筒状部材135との間には、出力軸43の外周面を浅く掘り下げることにより、クラッチ圧供給油路211が形成されている。クラッチ圧供給油路211は、軸線方向に延び、第2油路形成部164の上面184に対して軸径方向に対向する位置と4WDクラッチ115の油圧室155に対して軸径方向に対向する位置とに跨がっている。そして、筒状部材135には、第2油路形成部164の上面184に形成された第4油路185の開口と軸径方向に対向する位置に、連通溝218が全周にわたって形成されるとともに、その連通溝218とクラッチ圧供給油路211とを連通させる第1連通路212が形成されている。また、筒状部材135には、4WDクラッチ115の油圧室155とクラッチ圧供給油路211とを連通させる第2連通路213が形成されている。また、接続部材181には、第4油路185と連通溝218とを連通させる接続孔219が形成されている。そのため、第5油路186から第4油路185に流入するオイルは、第4油路185から接続孔219、連通溝218および第1連通路212を介してクラッチ圧供給油路211に流れ込み、クラッチ圧供給油路211を第2連通路213に向けて流れて、第2連通路213を介して4WDクラッチ115の油圧室155に流れ込む。これにより、小型バルブボディ201の油圧回路(リニアソレノイドバルブ203)でクラッチモジュレータ圧を調圧して得られる油圧(クラッチ圧)が4WDクラッチ115の油圧室155に供給される。
【0089】
また、出力軸43には、その軸心上を延びる軸心油路214が形成されている。軸心油路214には、バルブボディ191から潤滑油としてのオイルが供給される。出力軸43にはさらに、複数の分配油路215,216が形成されている。分配油路215,216は、各一端が軸心油路214に接続されて、軸心油路214と連通している。分配油路215,216の各他端は、出力軸43の外周面で開口している。筒状部材135には、分配油路215と連通する潤滑油路217が形成されている。これにより、軸心油路214を流れるオイルは、分配油路215および潤滑油路217を介して、4WDクラッチ115に潤滑油として供給される。また、軸心油路214を流れるオイルは、分配油路215を介して、出力軸43の周囲に潤滑油として供給される。
【0090】
小型バルブボディ201は、アダプタケース162と4WDクラッチ115との間のスペースに配置されている。小型バルブボディ201の一部、とくにリニアソレノイドバルブ203が配置されている部分は、4WDクラッチ115と軸線方向に重なっている(軸径方向に見て重なっている)。小型バルブボディ201の一部を4WDクラッチ115と軸線方向に重ならせる(オーバラップさせる)ことにより、変速ユニット1の軸線方向の小型化が図られている。
【0091】
変速ユニット1では、リニアソレノイドバルブ203のソレノイド部分205が小型バルブボディ201外に配置されているので、ソレノイド部分205に備えられているコイルなどの酸化が懸念される。この懸念を払拭すべく、少なくとも静止時に、ユニットケース3内の底部に溜まるオイルの液面がソレノイド部分205よりも上側に位置し、ソレノイド部分205がオイルに浸漬されるように、十分な量のオイルがユニットケース3内に封入されている。また、変速ユニット1は、軸線方向が後側ほど下側に位置するように傾斜した状態で車両に搭載されることがある。そのため、4WDクラッチ115のクラッチプレート139およびクラッチディスク153の一部がオイルに浸かるおそれがある。クラッチプレート139およびクラッチディスク153がオイルに浸かると、オイルがクラッチプレート139およびクラッチディスク153の回転の抵抗となり、エネルギ損失の増大による燃費の悪化を招く。また、オイルがクラッチプレート139およびクラッチディスク153の回転により撹拌され、オイルが泡立つことにより、オイルポンプ45にエア噛みが発生するおそれがある。
【0092】
図3は、第3トランスミッションケース13内の構成を示す斜視図である。
【0093】
4WDクラッチ115と小型バルブボディ201との間には、
図2に示されるように、4WDクラッチ115の下部を覆うように、オイルセパレータ221が設定されている。オイルセパレータ221は、セパレータ本体222と突き当てリブ223とを突き合わせることにより形成される。セパレータ本体222は、
図3に示されるように、第3トランスミッションケース13に複数のボルト225で固定されており、後側ほど下側に位置するように傾斜して設けられ、軸線方向に見た形状が略半円形状をなしている。突き当てリブ223は、
図2に示されるように、第1トランスファケース14と一体に形成され、第1トランスファケース14の内面から突出する板状に形成されている。突き当てリブ223は、セパレータ本体222の円弧状の下端に沿うように湾曲している。
【0094】
この構成により、4WDクラッチ115の下部は、第1トランスファケース14とオイルセパレータ221とに囲まれる。言い換えれば、4WDクラッチ115の下部は、第1トランスファケース14とオイルセパレータ221とに形成されるクラッチ室226に配置される。そのため、ユニットケース3内の底部に溜まるオイルから4WDクラッチ115が隔離される。
【0095】
オイルセパレータ221が設定されていることにより、リニアソレノイドバルブ203は、オイルセパレータ221に対して4WDクラッチ115側と反対側に配置され、4WDクラッチ115とリニアソレノイドバルブ203との間に、オイルセパレータ221が介在されることになる。
【0096】
<動力伝達経路>
図4は、CVT5およびトランスファ6の構成を図解的に示すスケルトン図である。
【0097】
車両の前進時には、前進クラッチ83が係合されて、後進クラッチ92が解放される。エンジン2からトルクコンバータ4を介して入力軸41に入力される動力は、前進クラッチ83の係合により、入力軸ギヤ81からプライマリ入力ギヤ82を介してプライマリ軸54に伝達される。一方、入力軸41に入力される動力が入力軸ギヤ81からセカンダリ入力ギヤ91に伝達されて、セカンダリ入力ギヤ91が回転しても、後進クラッチ92の解放により、セカンダリ入力ギヤ91がセカンダリ軸55(セカンダリ軸55)に対して空転し、セカンダリ軸55に動力が伝達されない。
【0098】
プライマリ軸54に伝達される動力は、プライマリプーリ56とセカンダリプーリ57とのプーリ比に応じたベルト変速比で変速されて、セカンダリ軸55に伝達される。そして、セカンダリ軸55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力軸ギヤ101を介して出力軸43に伝達される。
【0099】
車両の後進時には、前進クラッチ83が解放されて、後進クラッチ92が係合される。エンジン2からトルクコンバータ4を介して入力軸41に入力される動力は、後進クラッチ92の係合により、入力軸ギヤ81からリバース伝達機構44およびセカンダリ入力ギヤ91を介してセカンダリ軸55に伝達される。このとき、セカンダリ軸55は、車両の前進時と逆方向に回転する。一方、入力軸41に入力される動力が入力軸ギヤ81からプライマリ入力ギヤ82に伝達されて、プライマリ入力ギヤ82が回転しても、前進クラッチ83の解放により、プライマリ入力ギヤ82がプライマリ軸54(プライマリ軸54)に対して空転し、プライマリ軸54に動力が伝達されない。
【0100】
セカンダリ軸55に伝達される動力は、セカンダリ出力ギヤ102から出力軸ギヤ101を介して出力軸43に伝達される。
【0101】
変速ユニット1が搭載された車両では、左右の後輪による2輪駆動状態と、左右の前輪および後輪による4輪駆動状態とに切り替えることができる。
【0102】
4WDクラッチ115が解放された状態では、前述したように、出力軸43の動力(回転)は、第1スプロケット112に伝達されず、伝達軸111に伝達されない。一方、出力軸43の動力は、プロペラシャフトに伝達されて、プロペラシャフトからリヤデファレンシャルギヤおよびドライブシャフトを介して左右の後輪に伝達される。これにより、左右の後輪が駆動輪となって、車両が2輪駆動状態で走行する。
【0103】
一方、4WDクラッチ115が係合された状態では、前述したように、出力軸43の動力が第1スプロケット112に伝達されて、第1スプロケット112が回転する。第1スプロケット112の回転(動力)は、チェーン114を介して第2スプロケット113に伝達される。これにより、第2スプロケット113が第1スプロケット112と同方向に回転し、第2スプロケット113と一体に伝達軸111が回転する。伝達軸111の回転は、フロントデファレンシャルギヤおよびドライブシャフトを介して左右の前輪に伝達される。その一方で、出力軸43の動力は、プロペラシャフトに伝達されて、プロペラシャフトからリヤデファレンシャルギヤおよびドライブシャフトを介して左右の後輪に伝達される。これにより、左右の前輪および後輪の全輪が駆動輪となって、車両が4輪駆動状態で走行する。
【0104】
<作用効果>
以上のように、4WDクラッチ115の解放時には、出力軸43から後輪に動力が伝達されるが、出力軸43から第1スプロケット112に動力が伝達されないので、伝達軸111に動力が伝達されず、前輪には動力が伝達されない。このとき、車両は、左右の後輪による2輪駆動状態となる。一方、4WDクラッチ115の係合時には、出力軸43から後輪に動力が伝達されるとともに、出力軸43から第1スプロケット112に動力が伝達されるので、その動力がチェーン114および第2スプロケット113を介して伝達軸111に伝達され、伝達軸111から前輪に動力が伝達される。このとき、車両は、左右の後輪および前輪による4輪駆動状態となる。
【0105】
4WDクラッチ115に対する4WDクラッチ115の回転軸線方向の一方側には、第1トランスファケース14が設けられている。また、4WDクラッチ115に対して第1トランスファケース14と反対側には、オイルセパレータ221が設けられている。オイルセパレータ221は、4WDクラッチ115の下側に回り込み、4WDクラッチ115の位置を一方側に越えて、第1トランスファケース14に接続されている。これにより、4WDクラッチ115の少なくとも一部は、第1トランスファケース14とオイルセパレータ221とに囲まれる。言い換えれば、4WDクラッチ115の少なくとも下部は、第1トランスファケース14とオイルセパレータ221とによって形成されるクラッチ室に配置される。
【0106】
変速ユニット1の外殻をなすユニットケース3内の底部には、各部に供給される作動油または潤滑油となるオイルが溜まる。4WDクラッチ115の少なくとも一部が第1トランスファケース14とオイルセパレータ221とに囲まれることにより、4WDクラッチ115をユニットケース3内の底部に溜まるオイルから隔離することができ、4WDクラッチ115がオイルに浸かること(浴油)を抑制できる。その結果、4WDクラッチ115の浴油による種々の問題を回避することができる。すなわち、オイルが4WDクラッチ115の回転の抵抗となることを抑制でき、エネルギ損失の増大による燃費の悪化を招く。また、ユニットケース3の底部に溜まるオイルが泡立つことを抑制でき、オイルポンプ45にエア噛みが発生することを抑制できる。
【0107】
また、リニアソレノイドバルブ203と4WDクラッチ115との間にオイルセパレータ221が介在されるので、リニアソレノイドバルブ203に接続されるハーネス227(
図2参照)が4WDクラッチ115と接触することを抑制できるという効果も奏する。
【0108】
オイルセパレータ221は、第1トランスファケース14と一体に形成される突き当てリブ223と、突き当てリブ223に近づくほど下側に位置するように傾斜したセパレータ本体222とを突き合わせることにより形成されている。セパレータ本体222と突き当てリブ223との突き合わせ部分には、隙間が必然的に生じるので、第1トランスファケース14とオイルセパレータ221とに囲まれるスペース、つまりクラッチ室にオイルが入っても、その隙間からオイルを排出することができる。そのため、クラッチ室にオイルが溜まることを抑制でき、4WDクラッチ115がオイルに浸かることを一層抑制することができる。
【0109】
<変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0110】
たとえば、前述の実施形態では、小型バルブボディ201にリニアソレノイドバルブ203が備えられて、小型バルブボディ201に供給されるクラッチモジュレータ圧がリニアソレノイドバルブ203によりクラッチ圧に調圧されるとした。小型バルブボディ201は、その構成に限定されず、クラッチモジュレータ圧とリニアソレノイドバルブ203で調圧された油圧とを選択的に出力するシフトバルブが追加された構成であってもよい。また、小型バルブボディ201には、バルブボディ191から出力されるライン圧が供給されてもよい。この場合、小型バルブボディ201には、リニアソレノイドバルブ203でライン圧を調圧する構成が採用されてもよいし、ライン圧を調圧するモジュレータバルブがさらに追加されて、モジュレータバルブで調圧された油圧がリニアソレノイドバルブ203に入力される構成が採用されてもよい。
【0111】
また、前述の実施形態では、本発明に係る動力伝達装置の一例として、FRベースの4WD車に搭載される変速ユニット1を取り上げたが、本発明は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)ベースのパートタイム4WD車に搭載される動力伝達装置に適用することもできる。また、本発明は、RR(リヤエンジン・リヤドライブ)ベースのパートタイム4WD車に搭載される動力伝達装置に適用されてもよい。
【0112】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0113】
1:変速ユニット(動力伝達装置)
43:出力軸(第1伝達軸)
111:伝達軸(第2伝達軸)
112:第1スプロケット(伝達機構)
113:第2スプロケット(伝達機構)
114:チェーン(伝達機構)
115:4WDクラッチ(クラッチ)
203:リニアソレノイドバルブ
221:オイルセパレータ
222:セパレータ本体
223:突き当てリブ