(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/642 20060101AFI20231030BHJP
H01R 13/42 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01R13/642
H01R13/42 F
(21)【出願番号】P 2020071705
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】今村 政紀
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 哲広
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-162888(JP,A)
【文献】特開2018-190625(JP,A)
【文献】特開平8-17511(JP,A)
【文献】特開2003-115348(JP,A)
【文献】特開2001-110500(JP,A)
【文献】特開平7-326418(JP,A)
【文献】特開2021-51980(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子が挿入される端子保持部を有するハウジングと、前記端子保持部に取り付けられるホルダと、を備えたコネクタであって、
前記端子保持部は、複数の端子収容室と、前記端子の挿入方向に延びて形成されて前記端子を係止するランスと、を備え、
前記ホルダは、前記端子保持部に外挿される筒状のホルダ本体と、前記端子の挿入方向と反対方向に前記複数の端子収容室それぞれに進入される複数のスライド部材と、を有し、
前記複数のスライド部材のそれぞれが、前記ホルダ本体にヒンジを介して連結されるとともに、前記ホルダ本体に対して個別にスライド可能に設けられ、
前記ランスが前記端子を係止した係止状態である際に、前記スライド部材のスライドが許容されて、前記スライド部材が前記ランスに重なって前記ランスの撓みを規制し、
前記ランスが撓んだ非係止状態である際に、前記スライド部材が前記ランスに当接することで、前記スライド部材のスライドが規制されることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記スライド部材が前記ランスの撓みを規制した位置で、前記スライド部材が、前記ホルダ本体に係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記端子保持部に外挿される筒状のパッキンを備え、
前記ホルダ本体は、前記パッキンの前記挿入方向側に位置して、前記パッキンの前記挿入方向側への移動を規制することを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の端子収容室を有するコネクタハウジングと、各端子収容室に収容される雌型端子金具と、コネクタハウジングに取り付けられて、端子収容室に収容された雌型端子金具を固定するフロント部材と、を備えたコネクタが提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示された従来のコネクタにあって、雌型端子金具が端子収容室に収容される際には、雌型端子金具の前端が端子収容室の後端に近付けられて、前方に挿入される。
【0003】
端子収容室は、上壁と下壁との間において前後方向に連続する空間から構成されている。この端子収容室には、基端が上壁に連続し、前方に向けて延びて形成されて、端子を係止する片持ち梁状の可撓係止片が設けられている。
【0004】
フロント部材は、コネクタハウジングの仮係止位置と、本係止位置と、にスライド可能に設けられている。また、フロント部材には、後方に向けて延びて形成されてランスを拘束する拘束片が設けられている。
【0005】
このような従来のコネクタは、フロント部材がコネクタハウジングの仮係止位置にある際に、雌型端子金具が端子収容室に挿入され、適正位置で雌型端子金具はランスによって係止される。また、フロント部材が仮係止位置からさらにスライドされ、フロント部材がコネクタハウジングの本係止位置にある際に、拘束片がランスに重なって、ランスを拘束することで、端子は二重係止状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のコネクタにあって、フロント部材がコネクタハウジングの仮係止位置にある際において、雌型端子金具のうち何れかが、適正位置の手前の中途挿入位置にある場合には、ランスは撓んだままの状態となり、ランスが干渉することで、フロント部材は仮係止位置から本係止位置へスライドされない。この場合、作業者は、フロント部材の仮係止位置から本係止位置へのスライドが規制されることで、雌型端子金具のうち何れかが中途挿入位置にあることを検知するものの、どの雌型端子金具が中途挿入位置にあるかまでは容易に把握できなかった。このため、作業者は、フロント部材の仮係止位置から本係止位置へのスライドが規制された場合、全ての雌型端子金具の挿入位置を見直す必要があり、組み立て作業性が悪かった。
【0008】
本発明は、組み立て作業性の向上を図ったコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、端子が挿入される端子保持部を有するハウジングと、前記端子保持部に取り付けられるホルダと、を備えたコネクタであって、前記端子保持部は、複数の端子収容室と、前記端子の挿入方向に延びて形成されて前記端子を係止するランスと、を備え、前記ホルダは、前記端子保持部に外挿される筒状のホルダ本体と、前記端子の挿入方向と反対方向に前記複数の端子収容室それぞれに進入される複数のスライド部材と、を有し、前記複数のスライド部材のそれぞれが、前記ホルダ本体にヒンジを介して連結されるとともに、前記ホルダ本体に対して個別にスライド可能に設けられ、前記ランスが前記端子を係止した係止状態である際に、前記スライド部材のスライドが許容されて、前記スライド部材が前記ランスに重なって前記ランスの撓みを規制し、前記ランスが撓んだ非係止状態である際に、前記スライド部材が前記ランスに当接することで、前記スライド部材のスライドが規制されることを特徴とするコネクタである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記スライド部材が前記ランスの撓みを規制した位置で、前記スライド部材が、前記ホルダ本体に係合するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記端子保持部に外挿される筒状のパッキンを備え、前記ホルダ本体は、前記パッキンの前記挿入方向側に位置して、前記パッキンの前記挿入方向側への移動を規制することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、複数のスライド部材のそれぞれが、ホルダ本体にヒンジを介して連結されるとともに、ホルダ本体に対して個別にスライド可能に設けられ、ランスが端子を係止した係止状態である際に、スライド部材のスライドが許容されて、スライド部材がランスに重なってランスの撓みを規制し、ランスが撓んだ非係止状態である際に、スライド部材がランスに当接することで、スライド部材のスライドが規制される。即ち、端子が端子収容室の中途挿入位置にある際に、スライド部材のスライドが規制されることで、作業者は、端子が中途挿入位置にあることを検知する。さらに、複数のスライド部材が、ホルダ本体に対して個別にスライド可能に構成されていることにより、どの端子が、中途挿入位置にあるのかを容易に識別できるから、組み立て作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】前記コネクタを構成するハウジングを示す断面図である。
【
図3A】前記コネクタを構成するホルダを示す斜視図である。
【
図3B】前記ホルダの要部を拡大して示す図である。
【
図4】前記スライド部材が突出位置にある状態を示す断面図である。
【
図5】前記スライド部材が押し込み位置にあって、前記スライド部材がホルダ本体に係合した状態を示す断面図である。
【
図6】前記コネクタの組み立て手順を説明するための図であり、前記ホルダを構成するスライド部材が突出位置にある際のコネクタを示す斜視図である。
【
図7】
図6の後工程を示す図であり、前記端子が挿入された状態を示す断面図である。
【
図8】
図7の後工程を示す図であり、前記スライド部材の一つが押し込み位置にある際のコネクタを示す斜視図である。
【
図9】
図8に示されたコネクタを示す正面図である。
【
図11】
図8中のII-II線に沿う断面図である。
【
図12】前記コネクタの完成状態を示す斜視図である。
【
図14】本実施形態の作用効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を
図1~14に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコネクタを示す斜視図である。
【0015】
本実施形態のコネクタ1は、
図1、7に示すように、電線11と、請求項における端子としての雌型の端子金具2(以下では雌端子2と記す、
図7参照)と、該雌端子2が挿入される端子保持部31を有するハウジング3と、端子保持部31に取り付けられるパッキン5(
図7参照)およびホルダ6と、を備える。本実施形態では、雌端子2が挿入される方向を「前方(X1方向)」と記し、これとは反対方位を「後方(X2方向)」と記し、X方向に略直交する2方向をそれぞれY方向及びZ方向とする。Y方向のうち、Y方向のうち一方を「上方」と記し、Y方向のうち他方を「下方」と記す場合がある。
【0016】
雌端子2は、
図7に示すように、導電性の金属から構成され、(不図示の)雄型のタブ端子に電気接触される電気接触部21と、電線11に接続される電線接続部22と、を有して構成されている。電気接触部21は、X方向を軸とする四角筒状に形成されている。この電気接触部21の後端縁には、端子保持部31の後述するランス35に係止される端子係止部20が設けられている。このような雌端子2は、端子収容室30の後端に、電気接触部21の前端を近付けて挿入される。また、雌端子2が端子収容室30の適正位置まで到達した際に、端子保持部31のランス35が端子係止部20を係止するように構成されている。
【0017】
ハウジング3は、例えば絶縁性の樹脂から構成されている。このハウジング3は、
図2に示すように、6個(複数)の端子収容室30を有する端子保持部31と、該端子保持部31を囲む筒状に形成されて、(不図示の)相手ハウジングを受け入れるフード部36と、(不図示の)相手ハウジングとの嵌合状態を維持するためのロックアーム部4と、を一体に備える。
【0018】
端子保持部31は、
図2に示すように、上下方向に対向する一対の壁部32、33と、一対の壁部32、33間を仕切る仕切り壁34と、を備え、一対の壁部32、33の間を仕切り壁34によってZ方向に仕切られて形成された6個の端子収容室30を有して構成されている。各端子収容室30はX方向に延在形成され、6個の端子収容室30はZ方向に並んで設けられている。
【0019】
図2に示すように、一対の壁部32、33のうち、上方の壁部32には、雌端子2を係止するランス35が設けられている。ランス35は、端子収容室30毎に設けられ、自然状態で、各端子収容室30の前方(X1方向)に進むにしたがって斜め下方に向けて延びて形成されている。ランス35は、雌端子2が端子収容室30に挿入されると、雌端子2がランス35に当接してランス35が一次的に撓み、さらに挿入が進んで、雌端子2が適正位置まで到達した際に、ランス35が復元して、雌端子2の端子係止部20を係止するようになっている。
【0020】
また、ランス35は、
図10に示すように、雌端子2の端子係止部20を係止した状態(係止状態)で、ホルダ6の後述するスライド部材7が、ランス35と上方の壁部32の間にある進入空間Sに進入することで、ランス35の撓みが規制されるように構成されている。所謂雌端子2の二重係止状態となる。
図10に示すように、雌端子2の二重係止状態では、ランス35の係止、及びスライド部材7の後述する進入部72によるランス35の撓み規制により、コネクタ1における雌端子2の保持力が向上して、電線11が後方(X2方向)に引っ張られても抜け難くなっている。
【0021】
フード部36は、
図1に示すように、端子保持部31に連続するフード周壁36Aから構成されている。フード部36は、フード周壁36Aの一部が切り欠かれて、後述するロックアーム部4を露出させている。
【0022】
ロックアーム部4は、
図1に示すように、上方の壁部32に連続して前方に向けて延びる一対のロックアーム41、41と、一対のロックアーム41、41の前方側に連続して後方に向けて延びる一対の連結アーム42、42と、一対の連結アーム42、42の後端部に設けられた操作部43と、を備える。このようなロックアーム部4は、ハウジング3と(不図示の)相手ハウジングとが嵌合した際に、ロックアーム41の(不図示の)ロックが相手ハウジングの(不図示の)被ロックに係合するように構成されている。また、ロックアーム41のロックと相手ハウジングの被ロックとの係合は、操作部43を押下することで、連結アーム42を介してロックアーム41を撓ませることで解除されるようになっている。
【0023】
パッキン5は、
図2に示すように、端子保持部31に外挿可能な筒状に形成されている。このパッキン5は、端子保持部31のX方向の中間部に位置するパッキン装着部37に装着されるようになっている。
【0024】
ホルダ6は、
図3(A)(B)に示すように、ホルダ本体61と、該ホルダ本体61にヒンジ62を介して連結される6個(複数)のスライド部材7と、を備える。各スライド部材7は、ホルダ本体61から前方(X1方向)に突出した突出位置(
図3(A)(B)に示す)と、突出位置よりも後方(X2方向)の押し込み位置と、にスライド可能に設けられている。ヒンジ62は変形可能に設けられ、自然状態で、各スライド部材7を突出位置に位置付ける。
【0025】
ホルダ本体61は、
図3A、3B、4に示すように、端子保持部31に外挿される筒状の外挿部63と、外挿部63の内部空間をZ方向に区画する区画壁64と、スライド部材7の後述する係合突起73に係合される被係合部65(
図4に示す)と、を備える。
【0026】
外挿部63は、端子保持部31に外挿された状態で、(不図示の)係合手段によって、端子保持部31に係合するようになっている。また、
図2に示すように、外挿部63の後端を含む部分には、保持部66が設けられている。保持部66を構成する周壁66Aは、他の部分より厚くなるように形成されている。保持部66は、外挿部63が端子保持部31に外挿された状態で、保持部66の後端面6aとパッキン5の前端面5aとが、全周に亘って対向配置されるように構成されている。このような外挿部63により、パッキン5が前方へ抜ける(脱落する)ことが防止される。
【0027】
区画壁64は、
図2に示すように、外挿部63の前端部のみに設けられているとともに、端子保持部31の仕切り壁34の前方側に設けられている。この区画壁64により、外挿部63の内部空間は、各端子収容室30に対応するように区画される。
【0028】
被係合部65は、
図5に示すように、スライド部材7が押し込み位置にある際に、スライド部材7の後述する係合突起73に係合して、スライド部材7が押し込み位置で保持されるように構成されている。被係合部65は、
図4、5に示すように、後方(X2方向)に向かうにしたがってZ方向に傾斜するホルダ傾斜面6Aと、該ホルダ傾斜面6Aより後方側に位置して、前後方向(X方向)に直交するホルダ直交面6Bと、を有している。被係合部65に係合突起73が係合される際には、スライド部材7が突出位置から押し込み位置にスライドされるに伴って、ホルダ傾斜面6Aに係合突起73の後述するスライド傾斜面73Aが当接し、ホルダ傾斜面6Aにスライド傾斜面73Aが摺動されて、ホルダ直交面6Bの後方側(X2方向)にスライド直交面73Bが対向されることで、被係合部65に係合突起73が係合される。
【0029】
各スライド部材7は、
図3Bに示すように、各端子収容室30の前方側の開口に対向する前壁71と、前壁71に連続して、端子収容室30の進入空間Sに進入する板状の進入部72と、ホルダ本体61の被係合部65に係合する係合突起73と、を備える。前壁71には、(不図示の)雄型のタブ端子が挿通される挿通孔71aが形成されている。進入部72は、後方(X2方向)に延びて形成されて、スライド部材7が押し込み位置にある際に、端子収容室30の進入空間Sに進入し、ランス35に重なって、ランス35の撓みを規制する。係合突起73は、前壁71のZ方向の外側面それぞれに設けられている。係合突起73は、前方(X1方向)に向かうにしたがってZ方向に傾斜するスライド傾斜面73Aと、該スライド傾斜面73Aより前方側に位置して、前後方向(X方向)に直交するスライド直交面73Bと、を有している。
【0030】
次に、コネクタの組み立て手順を、
図6~14を参照して説明する。
【0031】
まず、予め、電線11の被覆部11Bに、環状の防水栓11Cを外挿しておき、雌端子2の電線接続部22に電線11の芯線11Aと被覆部11Bを加締めにより接続する。次に、端子保持部31にパッキン5を外挿して、パッキン5を端子保持部31のパッキン装着部37に装着する。
【0032】
次に、
図6に示すように、端子保持部31の前端部に外挿部63を外挿し、(不図示の)係合手段で、外挿部63を端子保持部31に係合させて、ホルダ本体61を端子保持部31に装着する。この際、全てのスライド部材7が突出位置に位置付けられる。
【0033】
続いて、
図7に示すように、端子保持部31の各端子収容室30の後端に、雌端子2の前端を近付けて挿入する。挿入が進んで、雌端子2の前端がランス35に当接してランス35を撓ませる。さらに挿入が進んで、雌端子2が端子収容室30の適正位置に到達した際に、ランス35が自然状態に復元して、雌端子2の端子係止部20を係止する。こうして、端子収容室30の適正位置に雌端子2を収容する。
【0034】
この作業を繰り返して、全ての雌端子2を端子収容室30の適正位置に収容することになる。ここでは、
図8、9に示すように、一つの雌端子2のみを端子収容室30に収容した状態だけを示しており、雌端子2を端子収容室30の適正位置に収容した後、該端子収容室30に対応するスライド部材7A(7)を突出位置から押し込み位置までスライドさせる。
【0035】
スライド部材7Aは、
図10、11に示すように、押し込み位置で、スライド部材7Aの進入部72が、端子収容室30の進入空間Sに後方(X2方向)に進入し、ランス35に重なって、ランス35の撓みを規制する。これと略同時に、スライド部材7の係合突起73は、ホルダ本体61の被係合部65に係合する(
図5、参照)。これにより、スライド部材7が押し込み位置で保持される。この作業を繰り返して、
図12、13に示すように、全てのスライド部材7を押し込み位置に位置付ける。このように、全てのスライド部材7が押し込み位置に位置付けられることにより、作業者は、全ての雌端子2が端子収容室30の適正位置にあることを把握する。このようにして、コネクタ1は組み立てられる。
【0036】
ここで、例えば、雌端子2が端子収容室30の(適正位置の手前の)中途挿入位置にある場合には、ランス35が雌端子2に当接して撓んだままの状態(非係止状態)となる。この場合において、
図14に示すように、スライド部材7は突出位置から押し込まれても、進入部72の後端面72aがランス35の自由端35aに当接することで、スライド部材7は突出位置から押し込み位置にスライドされない。即ち、ランス35が撓んだ非係止状態である際に、スライド部材7のスライドが規制される。
【0037】
このようにスライド部材7が突出位置にあることで、作業者は目視によって、複数の雌端子2の中から中途挿入位置にある雌端子2を識別することができる。作業者は、中途挿入位置にある雌端子2を識別することができるから、中途挿入位置にある雌端子2を適正位置まで挿入することで、コネクタ1を完成させることできる。これにより、従来技術の如く、全ての雌端子2の挿入位置を見直す必要がなくなることにより、組み立て作業性の向上が図られる。
【0038】
上述した実施形態によれば、雌端子2(端子)が端子収容室30の中途挿入位置にある際に、スライド部材7のスライドが規制されることで、作業者は、雌端子2が中途挿入位置にあることを検知する。さらに、複数のスライド部材7が、ホルダ本体61に対して個別にスライド可能に構成されていることにより、どの雌端子2が、中途挿入位置にあるのかを容易に識別できるから、組み立て作業性の向上を図ることができる。
【0039】
また、スライド部材7がランス35の撓みを規制した位置(押し込み位置)で、スライド部材7が、ホルダ本体61に係合するように構成されている。これによれば、スライド部材7が押し込み位置にある状態が継続されるから、どの雌端子2が適正位置にあるのかを容易に識別できる。
【0040】
また、端子保持部31に外挿される筒状のパッキン5を備え、ホルダ本体61は、パッキン5の挿入方向側(X1方向)に位置して、パッキン5の挿入方向側への移動を規制する。これによれば、パッキン5の端子保持部31からの脱落が防止される。これにより、端子保持部31にパッキン5を装着し、ホルダ6を装着した状態で、パッキン5が装着されたハウジング3を運搬等で取り扱う場合にも、パッキン5が脱落することが防止されることで、利便性の向上が図られる。
【0041】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1 コネクタ
2 雌端子(端子)
3 ハウジング
5 パッキン
6 ホルダ
7 複数のスライド部材
30 複数の端子収容室
31 端子保持部
35 ランス
61 ホルダ本体
62 ヒンジ