IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】複合材構造及び複合材構造製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/405 20060101AFI20231030BHJP
   B29C 70/72 20060101ALI20231030BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20231030BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20231030BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01R13/405
B29C70/72
B32B7/025
B32B27/18 J
B32B5/28 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020116362
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014162
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2021-09-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小迫 照和
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-163941(JP,A)
【文献】特開昭61-151283(JP,A)
【文献】特開平05-193047(JP,A)
【文献】特開平11-123765(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0097011(US,A1)
【文献】特開昭60-222247(JP,A)
【文献】実開昭58-164289(JP,U)
【文献】特開2022-014163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
H01R 4/64
H01R 13/40-13/533
H01R 31/08
B29C 70/72
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部と、
導電性材料で形成されて一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電樹脂部に埋設された導電体と、
絶縁性材料で形成され、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設された絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下であり、
前記絶縁体は、前記導電樹脂部の表面と面一に一部が露出するように形成されており、
前記導電体は、前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分から更に露出した部分が前記接続部となっていることを特徴とする複合材構造。
【請求項2】
導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部と、
導電性材料で形成されて一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電樹脂部に埋設された導電体と、
絶縁性材料で形成され、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設された絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下であり、
前記導電体は、前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の表面と面一に更に露出した部分が前記接続部となっていることを特徴とする複合材構造。
【請求項3】
導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部と、
導電性材料で形成されて一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電樹脂部に埋設された導電体と、
絶縁性材料で形成され、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設された絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下であり、
前記導電樹脂部が、第1平面、及び当該第1平面から1段下がった第2平面、を有する階段形状の部分を備えており、
前記絶縁体は、前記導電樹脂部において前記第2平面から一部が露出するように形成されており、
前記導電体は、前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分から更に露出した部分が前記接続部となっていることを特徴とする複合材構造。
【請求項4】
導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部と、
導電性材料で形成されて一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電樹脂部に埋設された導電体と、
絶縁性材料で形成され、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設された絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下であり、
前記導電樹脂部が、表面に筒状の窪みが設けられたものであり、
前記導電体が、前記窪みの底をなすように一部が前記接続部として露出した状態で前記導電樹脂部に埋設されており、
前記絶縁体が、前記窪みの深さ方向について、当該窪みの内周面の少なくとも底側において一部が露出した状態で前記導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在するように前記導電樹脂部に埋設されていることを特徴とする複合材構造。
【請求項5】
導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部と、
導電性材料で形成されて一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電樹脂部に埋設された導電体と、
絶縁性材料で形成され、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設された絶縁体と、
を備え、
前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下であり、
前記導電体は、前記導電樹脂部に全体が埋設された第1導電体、及び、前記導電樹脂部の内部で前記第1導電体に接合されるとともに一部が前記接続部となった第2導電体、を備えていることを特徴とする複合材構造。
【請求項6】
前記第2導電体が電極であることを特徴とする請求項に記載の複合材構造。
【請求項7】
前記第1導電体には、被覆電線の一端が前記導電樹脂部の内部で接合され、
前記被覆電線は、被覆の一部を前記導電樹脂部の内部に残した状態で他端側が前記導電樹脂部から突出し、当該他端側で芯線の一部が露出しており、
前記第2導電体が、前記被覆電線の前記芯線であって、前記他端側における露出芯線が前記接続部となっており、
前記絶縁体が、前記被覆電線の被覆であることを特徴とする請求項に記載の複合材構造。
【請求項8】
前記第1導電体には、コネクタが有するコネクタ端子における他端子接続側とは反対側が前記導電樹脂部の内部で接合され、
前記コネクタは、コネクタハウジングの一部を前記導電樹脂部の内部に残した状態で他コネクタとの接続側が前記導電樹脂部から突出し、当該接続側で前記コネクタ端子における前記他端子接続側がコネクタハウジングから露出しており、
前記第2導電体が、前記コネクタ端子であって、前記他端子接続側が前記接続部となっており、
前記絶縁体が、前記コネクタハウジングであることを特徴とする請求項に記載の複合材構造。
【請求項9】
前記絶縁体は、前記導電樹脂部の表面から一部が突出しており、
前記導電体は、前記絶縁体において前記導電樹脂部から突出した部分から露出した部分が前記接続部となっていることを特徴とする請求項に記載の複合材構造。
【請求項10】
前記導電体は、前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分から突出した部分が前記接続部となっていることを特徴とする請求項に記載の複合材構造。
【請求項11】
導電性材料で形成された導電体の少なくとも一部を絶縁性材料で覆う第1工程と、
前記絶縁性材料で覆われた前記導電体及び導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂を用い、一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電体が埋設される導電樹脂部、及び、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設される絶縁体、を形成する第2工程と、
を備え、
前記導電体が、第1導電体、及び当該第1導電体に接合される第2導電体、を備えたものであり、
前記第2工程は、前記絶縁体を、当該絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下となり、前記第1導電体の全体が前記導電樹脂部に埋設され、前記第2導電体が前記導電樹脂部の内部で前記第1導電体に接合されるとともに一部が前記接続部となるように形成する工程であることを特徴とする複合材構造製造方法。
【請求項12】
前記第1工程が、前記導電体における前記接続部を含む被覆部分を前記絶縁性材料で覆う工程であり、
前記第2工程が、
前記接続部を含んで前記導電体が全体的に非露出状態となった露出前構造を形成する露出前工程と、
前記露出前構造から、前記導電体の前記接続部を覆っている部分を除去して前記接続部を露出させることで前記導電樹脂部及び前記絶縁体を形成する露出工程と、
を備えていることを特徴とする請求項11に記載の複合材構造製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部に導電体を埋設した複合材構造、及びそのような複合材構造を得るための複合材構造製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車体のマルチマテリアル化に伴い、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、CFRTP(Carbon Fiber Reinforced Thermo Plastics)等というように、炭素繊維等で強化された強化樹脂が車体構造に使われ始めている(例えば、特許文献1参照)。このような強化樹脂を車体構造に利用する場合、アースポイントの確保が課題となるが、その解決手段の一つとして、例えば次のような構造が考えられる。即ち、強化樹脂で形成された樹脂部に導電体を埋設し、この導電体から樹脂外部へとアースポインとして電気的な接続部を露出させる等といった複合材構造が考えられる。特許文献1に記載の技術では、アースポイントの確保を目的としたものではないが、強化樹脂で形成された樹脂部に埋設された導電体に上記のような接続部を設ける複合材構造が例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-183885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に例示されている複合材構造では、導電体が埋設された樹脂部自体が、炭素繊維等といった導電性繊維を含有する導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部となっている。その結果、接続部として露出した導電体と導電樹脂部が接する、例えば接続部の根本部分等の個所において、異種金属の接触と同等の接触状態が生じることとなる。そして、このような箇所に水等の液体が付着した際には、異種金属の接触に由来するガルバニック腐食が発生する恐れがある。
【0005】
従って、本発明は、上記のような問題に着目し、導電樹脂部に埋設した導電体の一部を接続部として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができる複合材構造を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような複合材構造を得るための複合材構造製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための複合材構造は、導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂で形成された導電樹脂部と、導電性材料で形成されて一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電樹脂部に埋設された導電体と、絶縁性材料で形成され、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設された絶縁体と、を備え、前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下であり、前記絶縁体は、前記導電樹脂部の表面と面一に一部が露出するように形成されており、前記導電体は、前記絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分から更に露出した部分が前記接続部となっていることを特徴とする。
【0007】
また、上記課題を解決するための複合材構造製造方法は、導電性材料で形成された導電体の少なくとも一部を絶縁性材料で覆う第1工程と、前記絶縁性材料で覆われた前記導電体及び導電性繊維を母材に含有させた導電性強化樹脂を用い、一部が他部品との電気的な接続部として前記導電性強化樹脂から露出した状態で前記導電体が埋設される導電樹脂部、及び、前記導電体の前記接続部を前記導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と前記導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が前記導電樹脂部に埋設される絶縁体、を形成する第2工程と、を備え、前記導電体は、第1導電体、及び当該第1導電体に接合される第2導電体、を備え、前記第2工程は、前記絶縁体を、当該絶縁体において前記導電樹脂部から露出した部分の形状を規定する寸法のうちの最長寸法が、前記導電樹脂部の形状を規定する寸法のうちの最長寸法以下となり、前記第1導電体の全体が前記導電樹脂部に埋設され、前記第2導電体が前記導電樹脂部の内部で前記第1導電体に接合されるとともに一部が前記接続部となるように形成する工程であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述の複合材構造及び複合材構造製造方法によれば、導電体の一部が露出された接続部と導電樹脂部を形成する導電性強化樹脂との接触が、当該導電性強化樹脂と導電体との間に介在した状態で少なくとも一部が導電樹脂部に埋設された絶縁体によって回避される。この接触回避により、例えば接続部の根本部分等の個所における異種金属の接触と同等の接触状態が回避されることとなり、その結果ガルバニック腐食の発生が抑制されることとなる。このように、上述の複合材構造及び複合材構造製造方法によれば、導電樹脂部に埋設した導電体の一部を接続部として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図2図1に示されている複合材構造における内部構成を示す模式図である。
図3】第2実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図4】第3実施形態の複合材構造を示す模式的な断面図である。
図5】第1実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な斜視図である。
図6】第1実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な斜視図である。
図7】第4実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図8】第5実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図9】第6実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図10】第7実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図11】第8実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図12】第8実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な断面図である。
図13】第8実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な断面図である。
図14】第9実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図15】第10実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図16図15に示されている複合材構造における内部構成を示す、図15中のV101-V101線に沿った模式的な断面図である。
図17】第10実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な断面図である。
図18】第10実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な断面図である。
図19】第11実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図20図19に示されている複合材構造における内部構成を示す、図19中のV111-V111線に沿った模式的な断面図である。
図21】第11実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な斜視図である。
図22】第11実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な断面図である。
図23】第12実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図24図23に示されている複合材構造における内部構成を示す、図23中のV121-V121線に沿った模式的な断面図である。
図25】第13実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。
図26図25に示されている複合材構造における内部構成を示す、図25中のV131-V131線に沿った模式的な断面図である。
図27】第1実施形態の複合材構造を得るための複合材構造製造方法の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、複合材構造及び複合材構造製造方法の一実施形態について説明する。まず、複合材構造の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図であり、図2は、図1に示されている複合材構造における内部構成を示す模式図である。図2には、図1に示されている複合材構造1の模式的な分解斜視図と、図1中のV1-V1線に沿った模式的な断面図と、が並べられて示されている。
【0012】
本実施係形態の複合材構造1は、導電樹脂部11に導電体12を埋設し、その導電体12の一部を、他部品との電気的な接続部12b-1として露出させた構造となっている。この複合材構造1は、導電樹脂部11と、導電体12と、絶縁体13と、を備えている。
【0013】
導電樹脂部11は、図2に示すように、導電性繊維11aを樹脂の母材11bに含有させた導電性強化樹脂で形成された部位である。本実施形態では、導電樹脂部11の形状の模式的な一例として扁平な直方体が例示されているが、形状はこれに限るものではなく、実際の用途に応じて任意の形状を採用し得るものである。
【0014】
導電性繊維11aとしては、例えば炭素繊維等の導電性を有する強化繊維が一例として挙げられる。強化繊維としては、この他に、アルミニウム繊維、銅繊維、ステンレス繊維等も一例として挙げられる。
【0015】
母材11bとしては、絶縁性の樹脂と、導電性の樹脂と、の何れでも採用可能である。絶縁性の樹脂としては、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、ビニルエステル、シアネートエステル、ポリイミド等といった熱硬化性樹脂が一例として挙げられる。また、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン等といった熱可塑性樹脂も絶縁性の樹脂の一例として挙げられる。導電性の樹脂は、上述のような絶縁性の樹脂に次のような添加剤を混入することで導電性を付与したものである。導電性付与のための添加剤としては、ポリチオフェン、オリゴチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン等といった導電性高分子が一例として挙げられる。また、カーボン系、金属系、金属酸化物系、金属被覆系、金属酸化物被覆系等の導電性フィラーも添加剤の一例として挙げられる。
【0016】
また、本実施形態では、図2に示されているように、導電性繊維11aを母材11bに含有させるに当たり、導電性繊維11aで形成された導電繊維シート11a-1の積層物に溶融状態の母材11bを含浸させる手法が採られている。ただし、導電性繊維11aを母材11bに含有させる手法はこれに限るものではなく、例えば導電性繊維11aを細切れにした繊維片を溶融状態の母材11bに混錬させることとしてもよい。
【0017】
導電体12は、導電性材料で形成されて一部が他部品との電気的な接続部12b-1として露出した状態で導電樹脂部11に埋設された部位である。本実施形態では、この導電体12は、導電樹脂部11に全体が埋設される第1導電体12a、及び、導電樹脂部11の内部で第1導電体12aに接合されるとともに一部が接続部12b-1となった第2導電体12b、を備えている。そして、この第2導電体12bが、後述するように電線等の他部品が接続される電極となっている。
【0018】
この導電体12における第1導電体12a及び第2導電体12bの形状について、本実施形態では、模式的な一例として長方形平板が例示されている。しかしながら、これらの形状は長方形平板に限るものではなく各々任意の形状を採り得るものである。本実施形態では、導電樹脂部11に埋設される第1導電体12aが導電樹脂部11の形状に沿って長方形平板となった様子が、図1の斜視図や図2の分解斜視図に示されている。他方、図2の断面図では、第1導電体12aが導電樹脂部11の内部でも、導電樹脂部11の形状に依らず任意の形状を採り得るということが、波型の第1導電体12aによって模式的に示されている。また、一部が他部品との接続部12b-1となる第2導電体12bについては、電線等の他部品が接続可能な任意の形状を採り得るものである。
【0019】
第1導電体12aの材料としては、炭素繊維や、一般的に導電部品の材料として利用される次のような金属材料が挙げられる。即ち、アルミニウム、銅、金、その他の金属、及びそれらの合金等が、金属材料の一例として挙げられる。また、第1導電体12aの形状としては、上述のように任意の形状であってよく、板状、箔状、金属繊維で編まれたシート状、金属線で粗く編まれたメッシュ状、線状、棒状、管状等といった形状が一例として挙げられる。
【0020】
電極となった第2導電体12bの材料としては、アルミニウム、銅、金、その他の金属、及びそれらの合金等といった金属材料が一例として挙げられる。第2導電体12bの形状としては、本実施形態では、図1及び図2に示されているように長方形平板の形状が採用されている。ただし、第2導電体の形状は上述したようにこれに限るものではなく、電線等の他部品が接続可能な形状であれば、例えばメガネ端子状等といった他の形状であってもよい。
【0021】
本実施形態では、このような第1導電体12a及び第2導電体12bが、導電樹脂部11の内部で、互いの端部同士が面接触した状態で接合されて導電体12が形成されている。接合工法としては、溶融接合、固相接合、ロウ付け、接着、加締めやリベット止めやボルト締め等の機械的接合といった一般的な接合工法が採用可能である。
【0022】
絶縁体13は、絶縁性材料で形成され、導電体12の接続部12b-1を、導電樹脂部11をなす導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と導電体12との間に介在した状態で一部が導電樹脂部11に埋設された部位である。本実施形態では、絶縁体13の形状の模式的な一例として直方体が例示されている。この形状は、長方形平板の第2導電体12bに合わせた形状の例である。しかしながら、絶縁体13の形状は、これに限るものではなく、導電樹脂部11をなす導電性強化樹脂と導電体12との間に介在可能な形状であれば任意の形状を採り得るものである。
【0023】
この絶縁体13を形成する絶縁性材料としては、絶縁性を確保できる材料であればよく、例えば、樹脂、ゴム、エラストマー、セラミックス等が一例として挙げられる。形成方法としては、樹脂、ゴム、エラストマーで絶縁体13を形成する場合には、射出成形、押出し成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形、圧縮成形、注型成形、発泡成形、ホットメルトモールディング、ポッティング等が採用可能である。セラミックスで絶縁体13を形成する場合には、機械加工等が採用可能である。このように形成された絶縁体13に、導電体12の第2導電体12bを圧入する等といった手法により、導電体12に絶縁体13が取り付けられることとなる。この他、樹脂、ゴム、エラストマーで絶縁体13を形成する場合に、導電体12の第2導電体12bの表面にこれらの材料をコーティングすることで、絶縁体13の形成と導電体12への取付けを同時に行うこととしてもよい。
【0024】
本実施形態では、以上に説明した導電樹脂部11と、導電体12と、絶縁体13と、が次のように組み合わされて複合材構造1が構成されている。まず、絶縁体13は、直方体に形成された導電樹脂部11の表面である一端面から一部が突出している。そして、導電体12は、絶縁体13において導電樹脂部11から突出した部分から更に突出して露出した第2導電体12bの一部分が接続部12b-1となっている。
【0025】
尚、絶縁体13については、本実施形態とは異なり、導電樹脂部11の一端面から突出させず、この一端面と面一の露出面を有するように構成されることとしてもよい。この場合、導電体12の接続部12b-1は、導電樹脂部11の一端面と面一となった絶縁体13の露出面から突出することとなる。
【0026】
次に、複合材構造の第2実施形態について図3を参照して説明する。
【0027】
図3は、第2実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。尚、図3では、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0028】
本実施形態の複合材構造2では、導電体22が、上述の第1実施形態の導電体12のように2部品を接合したものではなく1部品となっている。本実施形態では、導電樹脂部11の内部に埋設された長方形平板の導電体22が、そのまま導電樹脂部11の外部へと延出し、一部が絶縁体13から突出した状態で露出して接続部22b-1となっている。本実施形態では、導電体22が、他部品との接続部22b-1を有する電極として使用可能な程度の厚みと強度を備えたものとなっており、第1実施形態のように別途に電極を設けることなく、導電体22の一部がそのまま電極として利用されている。
【0029】
次に、複合材構造の第3実施形態について図4を参照して説明する。
【0030】
図4は、第3実施形態の複合材構造を示す模式的な断面図である。尚、図4でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0031】
本実施形態の複合材構造3では、絶縁体33が、導電体12における第2導電体12bの一部だけでなく、第2導電体12bとの接合部を含む第1導電体12aの全てを覆うように形成されている。つまり、本実施形態では、導電体12における導電樹脂部11への埋設部分の全てが、導電樹脂部11をなす導電性強化樹脂に接触しないように絶縁体33によって絶縁されている。これにより、導電体12における導電樹脂部11への埋設部分について、単なるシャーシグラウンドではなく、電気的な回路パターンとして利用することも可能となる。この場合には、回路パターンとしての導電体12に接続される各種電気/電子部品も導電樹脂部11に埋設されることとしてもよい。
【0032】
次に、ここまでに説明した第1~第3実施形態における導電体12,22の接続部12b-1,22b-1に対する他部品の接続例について2例を説明する。尚、この接続例は、第1~第3実施形態の相互間で共通の例であるので、第1実施形態の複合材構造1を代表例として挙げて説明を行う。
【0033】
図5は、第1実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な斜視図である。
【0034】
第1の接続例では、複合材構造1における導電体12の接続部12b-1に接続用の貫通孔12b-2が設けられる。そして、この貫通孔12b-2を貫通するボルトB1と、当該ボルトB1に螺合するナットN1と、によって他部品が接続部12b-1に締結接続されることとなる。この例での他部品の一例としては、例えば金属板で形成されたバスバや、端部にボルトB1とナットN1で締結可能なメガネ端子等の接続部品が取り付けられた電線等が挙げられる。
【0035】
また、この第1の接続例の変形例として、例えば貫通孔12b-2に替えてボルトB1が螺合可能なネジ穴を設けることや、接続部12b-1にナットN1を溶接固定すること等が一例として挙げられる。更に、貫通孔12b-2に通したネジ部を突出させた状態で接続部12b-1にボルトB1を溶接固定すること等も一例として挙げられる。
【0036】
図6は、第1実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な斜視図である。
【0037】
第2の接続例では、複合材構造1における導電体12の接続部12b-1に、他部品として端子付き電線W1の一端側の露出芯線W11がはんだ付け固定される。端子付き電線W1の他端側には、電気/電子機器に接続するためのメガネ端子W12が圧着されている。
【0038】
この第2の接続例の変形例として、例えば端子付き電線W1に替えて、例えばコネクタのコネクタ端子の一端をはんだ付け固定すること等が一例として挙げられる。また、接続部12b-1への接続方法として、はんだ付け固定に替えて超音波接合や加締め接合等を採用すること等も一例として挙げられる。
【0039】
以上に説明した第1~第3実施形態の複合材構造1,2,3によれば次のような効果を奏することができる。即ち、上述の複合材構造1,2,3によれば、導電体12,22の一部が露出された接続部12b-1,22b-1と導電樹脂部11を形成する導電性強化樹脂との接触が絶縁体13によって回避される。絶縁体13は、導電性強化樹脂と導電体12,22との間に介在した状態で少なくとも一部が導電樹脂部11に埋設された部位である。そして、この絶縁体13の介在により接続部12b-1,22b-1と導電性強化樹脂との接触が回避される。
【0040】
ここで、第1~第3実施形態と異なり、仮に絶縁体13が無かったとすると、接続部12b-1,22b-1の根本部分が導電性強化樹脂に接触した状態で露出することとなる。接続部12b-1,22b-1と導電性強化樹脂との接触は、異種金属の接触と同等の接触状態となることから、上記の根元部分に水等が付着するとガルバニック腐食が生じる恐れがある。
【0041】
これに対し、第1~第3実施形態では、絶縁体13によって接続部12b-1,22b-1の根本部分における異種金属の接触と同等の接触状態が回避されることとなり、その結果ガルバニック腐食の発生が抑制されることとなる。このように、第1~第3実施形態の複合材構造1,2,3によれば、導電樹脂部11に埋設した導電体12,22の一部を接続部12b-1,22b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0042】
ここで、第1~第3実施形態では、絶縁体13の一部を導電樹脂部11の表面から突出させ、その突出部分から導電体12,22の接続部12b-1,22b-2を露出させている。この構成によれば、接続部12b-1,22b-2と導電性強化樹脂との接触回避の確度が高められるのでガルバニック腐食を一層抑制することができる。
【0043】
また、第1~第3実施形態では、導電体12,22は、絶縁体13において導電樹脂部11から露出した部分から突出した部分が接続部12b-1,22b-1となっている。この構成によれば、接続部12b-1,22b-1が絶縁体13から突出しているので、この接続部12b-1,22b-1に対する電線等の取付け作業等を良好な作業性の下で行うことができる。
【0044】
また、第1~第3実施形態のうち第1及び第3実施形態では、導電体12が、導電樹脂部11に全体が埋設された第1導電体12a、及び、第1導電体12aに接合されるとともに一部が接続部12b-1となった第2導電体12b、を備えている。この構成によれば、導電体12が、導電樹脂部11に全体が埋設されて例えばシャーシグラウンド等として利用可能な第1導電体12aと、一部が接続部12b-1となった第2導電体12bと、に分割される。このように分割されていることから、導電体12の各部を利用目的に適した導電性材料で形成することができる。
【0045】
また、第1~第3実施形態では、第2導電体12bが電極となっている。この構成によれば、例えば図5及び図6に例示されている接続例等を採用して他部品である電線等を容易に接続することができるので好適である。
【0046】
次に、複合材構造の第4実施形態について図7を参照して説明する。
【0047】
図7は、第4実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。尚、図7でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0048】
本実施形態の複合材構造4では、導電体42において第1導電体12aに接合されて一部が露出する第2導電体42bに、導電樹脂部11の内部で絶縁体13に密着するように突起部42cが設けられている。突起部42cは、帯板状の第2導電体42bの中途を横切って直方体の形状に設けられており、長手方向に沿う一側面が絶縁体13に密着している。
【0049】
以上に説明した第4実施形態の複合材構造4でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部11に埋設した導電体42の一部を接続部12b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0050】
更に、本実施形態によれば、導電体42に導電樹脂部11の内部で絶縁体13に密着するように突起部42cが設けられていることで、導電体42と絶縁体13との密着性を強固なものとすることができる。また、接続部12b-1に加わる、導電体42を絶縁体13から引く抜く方向の外力に対して突起部42cが抜け止めとして機能することから、このような外力に対する複合材構造4の強度を向上させることもできる。
【0051】
この第4実施形態に対する変形例としては、まず、導電体42における突起部42cの形状を、直方体から、直方体以外の多角形柱や円柱等の形状とする例が挙げられる。他の変形例として、導電体42と絶縁体13との密着性を強固にし、抜け止めにもなる構成として、上述の外力に対する交差方向に突没する凸や凹を外力の方向に交互に並べた凹凸形状を導電体42における絶縁体13への埋設部分に設ける例も挙げられる。更に、導電体42における絶縁体13への埋設部分に貫通孔を設け、その貫通孔の内側にも絶縁体13をなす絶縁性材料を充填する例等も挙げられる。
【0052】
次に、複合材構造の第5実施形態について図8を参照して説明する。
【0053】
図8は、第5実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。尚、図8でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0054】
本実施形態の複合材構造5では、絶縁体53における接続部12b-1とは反対側の端部表面に、周方向について全周に亘る突起部53aが1つ設けられている。
【0055】
以上に説明した第5実施形態の複合材構造5でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部11に埋設した導電体12の一部を接続部12b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0056】
更に、本実施形態によれば、絶縁体53の表面に突起部53aが設けられていることで、導電樹脂部11と絶縁体13との密着性を高めて複合材構造5を高強度化することができる。
【0057】
この第5実施形態に対する変形例としては、絶縁体53における突起部53aの形成位置を例えば絶縁体53の中央等といった端部以外の位置とする例や、突起部53aの形成数を複数とする例等が挙げられる。また、突起部53aを、絶縁体53の周方向について全周に亘って設けるのではなく周方向の一部に設ける例や、周方向に断続的に設ける例等も挙げられる。
【0058】
次に、複合材構造の第6実施形態について図9を参照して説明する。
【0059】
図9は、第6実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。尚、図9でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0060】
本実施形態の複合材構造6では、導電樹脂部11に埋設された第1導電体12aには、被覆電線64における芯線の一端が導電樹脂部11の内部で接合されている。ここでの接合方法としては、はんだ付け、超音波接合、及び加締め接合等が一例として挙げられる。この被覆電線64は、被覆の一部を導電樹脂部11の内部に残した状態で他端側が導電樹脂部11から突出し、当該他端側で芯線の一部が露出している。この露出芯線には、他部品として、電気/電子機器との接続のためのメガネ端子64aが圧着接続されている。
【0061】
このような被覆電線64を備える複合材構造6では、第1導電体12aとともに導電体62を構成する第2導電体62bが、被覆電線64の芯線となっている。また、被覆電線64の他端側における露出芯線が他部品たるメガネ端子64aとの接続部62b-1となっている。そして、被覆電線64の被覆が、導電体62の接続部62b-1を導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と導電体62との間に介在した状態で一部が導電樹脂部11に埋設された絶縁体63となっている。
【0062】
以上に説明した第6実施形態の複合材構造6でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部11に埋設した導電体62の一部を接続部62b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0063】
更に、本実施形態では、絶縁体63が、芯線が第2導電体62bとなった被覆電線64の被覆であるので、被覆電線64を用意するだけで別途に絶縁体を形成する必要がなく、部品点数を減らすことができ好適である。また、導電樹脂部11と絶縁体63の境界寸法が、被覆電線64の太さ寸法程度に抑えられるので、絶縁体63を導電樹脂部11に埋設したことによる複合材構造6の強度低下を抑えることもでき、この点においても好適である。
【0064】
この第6実施形態に対する変形例としては、第1導電体12aに接合される被覆電線64を必要とされる電流容量に応じて複数本の被覆電線に分割し、各被覆電線を細線化する例等が挙げられる。これら複数本の被覆電線は、横並びに一列に並ぶ一次元配列で配置されて各端部が第1導電体12aに接合される。この変形例では、1本の被覆電線が細線化されることから、その分、導電樹脂部11を薄型化することできる。また、これら複数本の被覆電線に替えて、フラットケーブルを用いることで導電樹脂部11を一層薄型化する例等も挙げられる。
【0065】
次に、複合材構造の第7実施形態について図10を参照して説明する。
【0066】
図10は、第7実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。尚、図10でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0067】
本実施形態の複合材構造7では、導電樹脂部11に埋設された第1導電体12aには、コネクタ74が有する3本のコネクタ端子における他端子接続側とは反対側に当たる共通端部72b-2が導電樹脂部11の内部で接合されている。コネクタ74は、コネクタハウジングの一部を導電樹脂部11の内部に残した状態で他コネクタとの接続側が導電樹脂部11から突出し、当該接続側でコネクタ端子における他端子接続側がコネクタハウジングから露出している。
【0068】
このようなコネクタ74を備える複合材構造7では、第1導電体12aとともに導電体72を構成する第2導電体72bが、共通端部72b-2で電気的に連結された3本のコネクタ端子となっている。また、これら3本のコネクタ端子の他端子接続側が、他部品たる他端子との接続部72b-1となっている。そして、コネクタ74のコネクタハウジングが、導電体72の接続部72b-1を導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と導電体72との間に介在した状態で一部が導電樹脂部11に埋設された絶縁体73となっている。
【0069】
以上に説明した第7実施形態の複合材構造7でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部11に埋設した導電体72の一部を接続部72b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0070】
更に、本実施形態では、絶縁体73が、コネクタ端子が第2導電体72bとなったコネクタ74におけるコネクタハウジングであるので、コネクタ74を用意するだけで別途に絶縁体を形成する必要がなく、部品点数を減らすことができ好適である。また、他部品としての他端子との接続構造を元々有するコネクタ端子が第2導電体72bとして採用されるので、他部品の接続や取外しが容易であり、この点においても好適である。
【0071】
この第7実施形態に対する変形例としては、第1導電体12aに接合されるコネクタ端子の端子数を1本や、3本以外の複数本とする例が挙げられる。また、複数本のコネクタ端子を共通端部72b-2でまとめることなく、個別に第1導電体12aに接合する例等も挙げられる。更には、第1導電体12aが複数の導電体に分割されており、それら複数の導電体それぞれにコネクタ端子が独立に接続されることとしてもよい。
【0072】
次に、複合材構造の第8実施形態について図11を参照して説明する。
【0073】
図11は、第8実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。尚、図11でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0074】
本実施形態の複合材構造8では、導電樹脂部81が、第1平面81a、当該第1平面81aから1段下がった第2平面81b、及び両者を繋ぐ立面81c、を有する階段形状の部分を備えている。絶縁体83は、導電樹脂部81において第2平面81bから立面81cにかけて一部が露出するように、導電樹脂部81と同様の階段形状に形成されて導電樹脂部81に埋設されている。そして、第1導電体12aとともに導電体82を構成する第2導電体82bにおいて、絶縁体83において導電樹脂部81の第2平面81bから露出した部分から更に露出した部分が接続部82b-1となっている。
【0075】
ここで、本実施形態では、絶縁体83は、導電樹脂部81の第2平面81bと面一に一部が露出するように形成されている。そして、導電体82を構成する第2導電体82bにおいて、絶縁体83において導電樹脂部81の第2平面81bから露出した部分の表面と面一に更に露出した部分が接続部82b-1となっている。つまり、本実施形態では、導電樹脂部81の第2平面81b、絶縁体83における第2平面81bからの露出面、及び接続部82b-1の表面、が互いに面一となっている。
【0076】
次に、ここまでに説明した第8実施形態における導電体82の接続部82b-1に対する他部品の接続例について2例を説明する。
【0077】
図12は、第8実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な断面図である。
【0078】
第1の接続例では、複合材構造8において第1導電体12aとともに導電体82を構成する第2導電体82bの接続部82b-1を含む部分に、接続用の貫通孔8aが設けられる。この貫通孔8aは、接続部82b-1、その下層の絶縁体83、更に下層の導電繊維シート11a-1を含む導電樹脂部81、を貫通して設けられる。そして、この貫通孔8aを貫通するボルトB8と、当該ボルトB8に螺合するナットN8と、当該ナットN8と導電樹脂部81の間に介在させる絶縁ワッシャWS8と、によって他部品が接続部82b-1に締結接続されることとなる。この例での他部品の一例としては、例えば金属板で形成されたバスバや、端部にボルトB8、ナットN8、絶縁ワッシャWS8で締結可能なメガネ端子等の接続部品が取り付けられた電線等が挙げられる。
【0079】
また、この第1の接続例の変形例として、例えば貫通孔8aに替えてボルトB8が螺合可能なネジ穴を設けることや、接続部82b-1に他部品を着脱可能な端子形状を有するコネクタ端子を電極として設けること等が一例として挙げられる。
【0080】
図13は、第8実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な断面図である。
【0081】
第2の接続例では、複合材構造8において第1導電体12aとともに導電体82を構成する第2導電体82bの接続部82b-1に、他部品として端子付き電線W8の一端側の露出芯線W81がはんだ付け固定される。端子付き電線W8の他端側には、電気/電子機器に接続するためのメガネ端子W82が圧着されている。
【0082】
この第2の接続例の変形例として、例えば端子付き電線W8に替えて、例えばコネクタのコネクタ端子の一端をはんだ付け固定すること等が一例として挙げられる。また、接続部82b-1への接続方法として、はんだ付け固定に替えて超音波接合や加締め接合等を採用すること等も一例として挙げられる。
【0083】
以上に説明した第8実施形態の複合材構造7でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部81に埋設した導電体82の一部を接続部82b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0084】
更に、本実施形態では、導電樹脂部81の階段形状における1段下がった第2平面81bといったアクセスし易い部分で絶縁体83が露出し、導電体82の接続部82b-1は、その露出部分から更に露出するように設けられている。そして、このような位置に接続部82b-1が設けられることで、接続部82b-1に対する例えば電線等の取付け作業等を良好な作業性の下で行うことができる。
【0085】
また、本実施形態では、絶縁体83は、導電樹脂部81における第2平面81bや立面81cといった表面と面一に一部が露出するように形成されている。そして、導電体82は、絶縁体83において第2平面81bから露出した部分から更に露出した部分が接続部82b-1となっている。この構成によれば、導電樹脂部81の表面から絶縁体83が突出せずに面一となっているので、その分、複合材構造8の小型化を図ることができる。
【0086】
また、本実施形態では、導電体82は、絶縁体83において導電樹脂部81の第2平面81bから露出した部分の表面と面一に更に露出した部分が接続部82b-1となっている。この構成によれば、接続部82b-1が絶縁体83の表面から突出せずに面一となっているので、その分、複合材構造8の小型化を図ることができる。また、接続部82b-1と表面が面一となった絶縁体83が接続部82b-1を全体的に支えることとなるので、外力に対する接続部82b-1の機械的強度を向上させることができる。更には、その機械的強度の向上を見込んで導電体82における接続部82b-1の厚みを薄くすることや、電気的特性には優れるが機械的強度がやや劣る導電性材料を導電体82における接続部82b-1の形成材料として採用することも可能となる。
【0087】
次に、複合材構造の第9実施形態について図14を参照して説明する。
【0088】
図14は、第9実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図である。尚、図14でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0089】
本実施形態の複合材構造9では、まず、導電樹脂部91が、第8実施形態と同様に第1平面91a、第2平面91b、及び立面91c、を有する階段形状の部分を備えている。そして、第2平面91bから立面91cに掛けて一部が露出するようにコネクタ94が導電樹脂部91に埋設されている。コネクタ94が有する4本のコネクタ端子における他端子接続側とは反対側に当たる共通端部92b-2が導電樹脂部91の内部で第1導電体12aに接合されている。コネクタ94は、コネクタハウジングの一部を導電樹脂部91の内部に残した状態で他コネクタとの接続側が導電樹脂部91から露出し、当該接続側でコネクタ端子における他端子接続側がコネクタハウジングから露出している。
【0090】
このようなコネクタ94を備える複合材構造9では、第1導電体12aとともに導電体92を構成する第2導電体92bが、共通端部92b-2で電気的に連結された4本のコネクタ端子となっている。また、これら4本のコネクタ端子の他端子接続側が、他部品たる他端子との接続部92b-1となっている。そして、コネクタ94のコネクタハウジングが、導電体92の接続部92b-1を導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と導電体92との間に介在した状態で一部が導電樹脂部91に埋設された絶縁体93となっている。
【0091】
以上に説明した第9実施形態の複合材構造9でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部91に埋設した導電体92の一部を接続部92b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0092】
また、上述の第7実施形態と同様に、本実施形態でも、絶縁体93が、コネクタ94におけるコネクタハウジングとなっているので、部品点数を減らすことができ好適である。また、コネクタ端子が第2導電体92bとして採用されているので、他部品の接続や取外しが容易であり、この点において好適であることも、第7実施形態と同様である。尚、第9実施形態に対する変形例として、上述の第7実施形態と同様に、第1導電体12aに接合されるコネクタ端子の端子数を1本や、4本以外の複数本とする例が挙げられる。また、複数本のコネクタ端子を共通端部92b-2でまとめることなく、個別に第1導電体12aに接合する例等も挙げられる。更には、第1導電体12aが複数の導電体に分割されており、それら複数の導電体それぞれにコネクタ端子が独立に接続されることとしてもよい。
【0093】
次に、複合材構造の第10実施形態について図15及び図16を参照して説明する。
【0094】
図15は、第10実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図であり、図16は、図15に示されている複合材構造における内部構成を示す、図15中のV101-V101線に沿った模式的な断面図である。尚、図15及び図16でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0095】
本実施形態の複合材構造100では、扁平な直方体に形成された導電樹脂部101の広域な表面101aに四角筒状の窪み101bが設けられている。導電樹脂部101は、上述の第1実施形態と同様に、導電性繊維11aで形成された導電繊維シート11a-1の積層物に溶融状態の母材11bを含浸させた導電性強化樹脂で形成されている。窪み101bは、導電繊維シート11a-1の一部を貫通して形成されている。尚、窪み101bの形状は四角筒状に限るものではなく、筒状であれば四角以外の多角形筒状であっても円筒状であってもよい。
【0096】
複合材構造100における導電体102は、第1導電体102aと、第2導電体102bと、を備えている。第1導電体102aは、導電繊維シート11a-1の積層物の間に挟まれるようにして導電樹脂部101に全体が埋設される。第2導電体102bは、四角形板状に形成され、第1導電体102aの中央寄りに載置されて接合され、一部が導電樹脂部101における窪み101bの底で接続部102b-1として露出している。このように、導電体102は、窪み101bの底をなすように第2導電体102bの一部が接続部102b-1として露出した状態で導電樹脂部101に埋設されている。尚、この導電体102における第2導電体102bの形状は、四角形板状に限るものではない。第2導電体102bの形状は、第2導電体102bの一部が絶縁樹脂部101の窪み101bの底を構成可能であれば、その具体的な形状を問うものではなく、例えば円板状等の他形状であってもよい。また、導電体102の変形例として、第2導電体102bを除外し、第1導電体102aの一部を第2導電体102bの代替として窪み101bの底で露出させるようにしてもよい。
【0097】
そして、複合材構造100における絶縁体103は、窪み101bの深さ方向D101について、当該窪み101bの内周面の底側において一部が露出した状態で、導電性強化樹脂と第2導電体102bとの間に介在するように導電樹脂部101に埋設されている。絶縁体103は、第2導電体102bの外周部を全周に亘って覆うように導電性強化樹脂と第2導電体102bとの間に介在し、その介在によって第2導電体102bの接続部102b-1が導電性強化樹脂に接触しないようにしている。尚、絶縁体103は、窪み101bの内周面の底側において一部が露出したものに限らず、例えば窪み101bの内周面の全周面で露出、即ち、絶縁体103の内周面が窪み101b自体を構成することとしてもよい。
【0098】
次に、ここまでに説明した第10実施形態における導電体102の接続部102b-1に対する他部品の接続例について2例を説明する。
【0099】
図17は、第10実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な断面図である。
【0100】
第1の接続例では、複合材構造100において導電体102を構成する第2導電体102bの接続部102b-1を含む部分に、接続用の貫通孔100aが設けられる。この貫通孔100aは、接続部102b-1、その下層の第1導電体102a、更に下層の導電繊維シート11a-1を含む導電樹脂部101、を貫通して設けられる。そして、この貫通孔100aを貫通するボルトB10と、当該ボルトB10に螺合するナットN10と、当該ナットN10と導電樹脂部101の間に介在させる絶縁ワッシャWS10と、によって他部品が接続部102b-1に締結接続されることとなる。この例での他部品の一例としては、例えば金属板で形成されたバスバや、端部にボルトB10、ナットN10、絶縁ワッシャWS10で締結可能なメガネ端子等の接続部品が取り付けられた電線等が挙げられる。
【0101】
また、この第1の接続例の変形例として、例えば貫通孔100aに替えてボルトB10が螺合可能なネジ穴を設けることや、接続部102b-1に他部品を着脱可能な端子形状を有するコネクタ端子を電極として設けること等が一例として挙げられる。
【0102】
図18は、第10実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な断面図である。
【0103】
第2の接続例では、複合材構造100において第1導電体102aとともに導電体102を構成する第2導電体102bの接続部102b-1に、他部品として端子付き電線W10の一端側の露出芯線W101がはんだ付け固定される。端子付き電線W10の他端側には、電気/電子機器に接続するためのメガネ端子W102が圧着されている。
【0104】
この第2の接続例の変形例として、例えば端子付き電線W10に替えて、例えばコネクタのコネクタ端子の一端をはんだ付け固定すること等が一例として挙げられる。また、接続部102b-1への接続方法として、はんだ付け固定に替えて超音波接合や加締め接合等を採用すること等も一例として挙げられる。
【0105】
以上に説明した第10実施形態の複合材構造100でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部101に埋設した導電体102の一部を接続部102b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0106】
更に、本実施形態では、導電樹脂部101における窪み101bの内周面において一部が露出する絶縁体103が、窪み101bの底で露出した接続部102b-1の周縁部分を支えることとなる。この絶縁体103による周縁支持により、外力に対する接続部102b-1の機械的強度を向上させることができる。更には、その機械的強度の向上を見込んで導電体102における接続部102b-1の厚みを薄くすることや、電気的特性には優れるが機械的強度がやや劣る導電性材料を導電体102における接続部102b-1の形成材料として採用することも可能となる。
【0107】
次に、複合材構造の第11実施形態について図19及び図20を参照して説明する。
【0108】
図19は、第11実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図であり、図20は、図19に示されている複合材構造における内部構成を示す、図19中のV111-V111線に沿った模式的な断面図である。尚、図19及び図20でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0109】
本実施形態の複合材構造110では、扁平な直方体に形成された導電樹脂部111の広域な表面111aの略中央から直方体状の絶縁体113が突出して露出している。そして、この絶縁体113の一端面から導電体112における四角形板状の接続部112b-1が突出して露出している。導電樹脂部111は、上述の第1実施形態と同様に、導電性繊維11aで形成された導電繊維シート11a-1の積層物に溶融状態の母材11bを含浸させた導電性強化樹脂で形成されている。
【0110】
複合材構造110における導電体112は、第1導電体112aと、第2導電体112bと、を備えている。第1導電体112aは、導電繊維シート11a-1の積層物の間に挟まれるようにして導電樹脂部111に全体が埋設される。第2導電体112bは、長方形板状の金属板を、断面がL字状となるように曲げられた形状を有しており、L字の横棒に当たる部分が、第1導電体112aの中央寄りに載置されて接合されている。そして、この第2導電体112bにおけるL字の縦棒に当たる部分が絶縁体113を貫通し、その一部が四角形板状の接続部112b-1として絶縁体113の一端面から突出して露出している。尚、この導電体112における第2導電体112bの形状は、断面がL字状となる形状に限るものではない。第2導電体112bの形状は、第1導電体112aに載置されて接合され、第2導電体112bの一部が絶縁体113を貫通して突出可能な形状であれば、その具体的な形状を問うものではなく、例えば断面がZ字状やT字状やC字状となる形状等であってもよい。
【0111】
そして、絶縁体113は、第2導電体112bに上記のように貫通された状態で、一部が導電樹脂部111から突出して露出した状態で、導電性強化樹脂と第2導電体112bとの間に介在するように導電樹脂部111に埋設されている。
【0112】
次に、ここまでに説明した第11実施形態における導電体112の接続部112b-1に対する他部品の接続例について2例を説明する。
【0113】
図21は、第11実施形態の導電体の接続部に対する第1の接続例を示す模式的な斜視図である。
【0114】
第1の接続例では、複合材構造110において導電体112を構成する第2導電体112bの接続部112b-1を貫通して接続用の貫通孔112b-2が設けられる。そして、この貫通孔112b-2を貫通するボルトB11と、当該ボルトB11に螺合するナットN11と、によって他部品が接続部112b-1に締結接続されることとなる。この例での他部品の一例としては、例えば金属板で形成されたバスバや、端部にボルトB11及びナットN11で締結可能なメガネ端子等の接続部品が取り付けられた電線等が挙げられる。
【0115】
また、この第1の接続例の変形例として、例えば貫通孔112b-2に替えてボルトB11が螺合可能なネジ穴を設けることや、接続部112b-1に他部品を着脱可能な端子形状を有するコネクタ端子を電極として設けること等が一例として挙げられる。
【0116】
図22は、第11実施形態の導電体の接続部に対する第2の接続例を示す模式的な断面図である。
【0117】
第2の接続例では、複合材構造110において第1導電体112aとともに導電体112を構成する第2導電体112bの接続部112b-1に、他部品として端子付き電線W11の一端側の露出芯線W111がはんだ付け固定される。端子付き電線W11の他端側には、電気/電子機器に接続するためのメガネ端子W112が圧着されている。
【0118】
この第2の接続例の変形例として、例えば端子付き電線W11に替えて、例えばコネクタのコネクタ端子の一端をはんだ付け固定すること等が一例として挙げられる。また、接続部112b-1への接続方法として、はんだ付け固定に替えて超音波接合や加締め接合等を採用すること等も一例として挙げられる。
【0119】
以上に説明した第11実施形態の複合材構造110でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部111に埋設した導電体112の一部を接続部112b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0120】
また、本実施形態では、絶縁体113の一部を導電樹脂部111の表面から突出させ、その突出部分から導電体112の接続部112b-1を露出させている。この構成によれば、接続部112b-1と導電性強化樹脂との接触回避の確度が高められているのでガルバニック腐食を一層抑制することができる。
【0121】
また、本実施形態では、導電体112は、絶縁体113において導電樹脂部111から露出した部分から突出した部分が接続部112b-1となっている。この構成によれば、接続部112b-1が絶縁体113から突出しているので、この接続部112b-1に対する電線等の取付け作業等を良好な作業性の下で行うことができる。
【0122】
次に、複合材構造の第12実施形態について図23及び図24を参照して説明する。
【0123】
図23は、第12実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図であり、図24は、図23に示されている複合材構造における内部構成を示す、図23中のV121-V121線に沿った模式的な断面図である。尚、図23及び図24でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0124】
本実施形態の複合材構造120では、扁平な直方体に形成された導電樹脂部121の広域な表面121aの略中央から被覆電線124が突出して露出している。導電樹脂部121は、上述の第1実施形態と同様に、導電性繊維11aで形成された導電繊維シート11a-1の積層物に溶融状態の母材11bを含浸させた導電性強化樹脂で形成されている。そして、この導電樹脂部121に埋設された第1導電体122aに、被覆電線124における芯線の一端が導電樹脂部121の内部で接合されている。ここでの接合方法としては、はんだ付け、超音波接合、及び加締め接合等が一例として挙げられる。この被覆電線124は、被覆の一部を導電樹脂部121の内部に残した状態で他端側が導電樹脂部121から突出し、当該他端側で芯線の一部が露出している。この露出芯線には、他部品として、電気/電子機器との接続のためのメガネ端子124aが圧着接続されている。
【0125】
このような被覆電線124を備える複合材構造120では、第1導電体122aとともに導電体122を構成する第2導電体122bが、被覆電線124の芯線となっている。また、被覆電線124の他端側における露出芯線が他部品たるメガネ端子124aとの接続部122b-1となっている。そして、被覆電線124の被覆が、導電体122の接続部122b-1を導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と導電体122との間に介在した状態で一部が導電樹脂部121に埋設された絶縁体123となっている。
【0126】
以上に説明した第12実施形態の複合材構造120でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部121に埋設した導電体122の一部を接続部122b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0127】
更に、本実施形態では、絶縁体123が、芯線が第2導電体122bとなった被覆電線124の被覆であるので、被覆電線124を用意するだけで別途に絶縁体を形成する必要がなく、部品点数を減らすことができ好適である。また、導電樹脂部121と絶縁体123の境界寸法が、被覆電線124の太さ寸法程度に抑えられるので、絶縁体123を導電樹脂部121に埋設したことによる複合材構造120の強度低下を抑えることもでき、この点においても好適である。
【0128】
この第12実施形態に対する変形例としては、第1導電体122aに接合される被覆電線124を必要とされる電流容量に応じて複数本の被覆電線に分割し、各被覆電線を細線化する例等が挙げられる。これら複数本の被覆電線は、横並びに一列に並ぶ一次元配列で配置されて各端部が第1導電体122aに接合される。この変形例では、1本の被覆電線が細線化されることから、その分、導電樹脂部121を薄型化することできる。また、これら複数本の被覆電線に替えて、フラットケーブルを用いることで導電樹脂部121を一層薄型化する例等も挙げられる。
【0129】
次に、複合材構造の第13実施形態について図25及び図26を参照して説明する。
【0130】
図25は、第13実施形態の複合材構造を示す模式的な斜視図であり、図26は、図25に示されている複合材構造における内部構成を示す、図25中のV131-V131線に沿った模式的な断面図である。尚、図25及び図26でも、図1及び図2に示されている第1実施形態における構成要素と同等な構成要素には図1及び図2と同じ符号が付されており、以下では、これら同等な構成要素についての重複説明を割愛する。
【0131】
本実施形態の複合材構造130では、扁平な直方体に形成された導電樹脂部131の広域な表面131aの略中央からコネクタ134が突出して露出している。導電樹脂部131は、上述の第1実施形態と同様に、導電性繊維11aで形成された導電繊維シート11a-1の積層物に溶融状態の母材11bを含浸させた導電性強化樹脂で形成されている。そして、導電樹脂部131に埋設された第1導電体132aに、コネクタ134が有する4本のコネクタ端子における他端子接続側とは反対側に当たる共通端部132b-2が導電樹脂部131の内部で接合されている。コネクタ134は、コネクタハウジングの一部を導電樹脂部131の内部に残した状態で他コネクタとの接続側が導電樹脂部131から突出し、当該接続側でコネクタ端子における他端子接続側がコネクタハウジングから露出している。
【0132】
このようなコネクタ134を備える複合材構造130では、第1導電体132aとともに導電体132を構成する第2導電体132bが、共通端部132b-2で電気的に連結された4本のコネクタ端子となっている。また、これら4本のコネクタ端子の他端子接続側が、他部品たる他端子との接続部132b-1となっている。そして、コネクタ134のコネクタハウジングが、導電体132の接続部132b-1を導電性強化樹脂に接触させないように当該導電性強化樹脂と導電体132との間に介在した状態で一部が導電樹脂部131に埋設された絶縁体133となっている。
【0133】
以上に説明した第13実施形態の複合材構造130でも、上述の第1実施形態等と同様に、導電樹脂部131に埋設した導電体132の一部を接続部132b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生を抑制することができることは言うまでもない。
【0134】
更に、本実施形態では、絶縁体133が、コネクタ端子が第2導電体132bとなったコネクタ134におけるコネクタハウジングであるので、コネクタ134を用意するだけで別途に絶縁体を形成する必要がなく、部品点数を減らすことができ好適である。また、他部品としての他端子との接続構造を元々有するコネクタ端子が第2導電体132bとして採用されるので、他部品の接続や取外しが容易であり、この点においても好適である。
【0135】
この第13実施形態に対する変形例としては、第1導電体132aに接合されるコネクタ端子の端子数を1本や、4本以外の複数本とする例が挙げられる。また、複数本のコネクタ端子を共通端部132b-2でまとめることなく、個別に第1導電体132aに接合する例等も挙げられる。更には、第1導電体132aが複数の導電体に分割されており、それら複数の導電体それぞれにコネクタ端子が独立に接続されることとしてもよい。
【0136】
次に、複合材構造製造方法の一実施形態として、第1~第13実施形態の複合材構造1,・・・,130を得るための複合材構造製造方法について説明する。尚、この複合材構造製造方法は、基本的には第1~第13実施形態の相互間でほぼ同等であるため、以下では、第1実施形態の複合材構造1を得るための複合材構造製造方法を代表例として挙げて説明を行う。
【0137】
図27は、第1実施形態の複合材構造を得るための複合材構造製造方法の流れを示す模式図である。
【0138】
この図27に示されている複合材構造製造方法は、第1工程S11と、第2工程S12と、を備えている。
【0139】
第1工程S11は、第1導電体12aに第2導電体12bが接合された導電体12の一部を、絶縁体13の形成材料としての絶縁性材料Z1で覆う工程である。本実施形態では、第1工程S11が、第2導電体12bにおける接続部12b-1を含む被覆部分12b-3を絶縁性材料Z1で覆う工程となっている。
【0140】
続く第2工程S12は、一部が絶縁性材料Z1で覆われた導電体12、及び、導電繊維シート11a-1を母材11bに含有させた導電性強化樹脂Z2を用い、接続部12b-1を露出させつつ導電樹脂部11及び絶縁体13を形成する工程である。この第2工程S12は、露出前工程S121と露出工程S122とを備えている。
【0141】
露出前工程S121は、接続部12b-1を含んで導電体12が全体的に非露出状態となった露出前構造1aを形成する工程である。この露出前構造1aでは、導電体12における接続部12b-1を含む一部については絶縁性材料Z1及び導電性強化樹脂Z2の両方で覆われ、その他の部分については導電性強化樹脂Z2で覆われる。この露出前工程S121は、更に、シート配置工程S121a、母材含浸工程S121b、及び加工/研磨/洗浄工程S121c、を備えている。
【0142】
シート配置工程S121aは、一部が絶縁性材料Z1で覆われた導電体12を、相互間に挟むように複数枚の導電繊維シート11a-1を積層する工程である。このとき、絶縁性材料Z1において接続部12b-1を覆う部分以外の部分にも重ねられるように導電繊維シート11a-1が積層される。続く母材含浸工程S121bは、複数枚の導電繊維シート11a-1に溶融状態の母材11bを含浸、硬化させることで導電体12と絶縁体13の一部を導電性強化樹脂Z2で覆う工程である。その後の加工/研磨/洗浄工程S121cは、母材含浸工程S121bで形成された導電性強化樹脂Z2の硬化物を、所望の形状の導電樹脂部11に加工/研磨し、研磨紛の洗浄を行う工程である。この加工/研磨/洗浄工程S121cを経て露出前構造1aが完成する。
【0143】
露出前工程S121に続く露出工程S122は、露出前構造1aから、導電体12の接続部12b-1を覆っている絶縁性材料Z1を除去して接続部12b-1を露出させる工程である。この露出工程S122を経て絶縁体13が完成し、複合材構造1が得られることとなる。
【0144】
以上に説明した実施形態の複合材構造製造方法によれば、上述したように、導電樹脂部11に埋設した導電体12の一部を接続部12b-1として露出させつつガルバニック腐食の発生が抑制された複合材構造1を得ることができる。
【0145】
また、本実施形態では、導電体12の接続部12b-1が、露出工程S122で露出されるまで第1工程S11で被覆される絶縁性材料Z1によって保護されることとなる。この保護により、例えば加工/研磨/洗浄工程S121cの際といった製造中のガルバニック腐食についても抑制することができる。
【0146】
尚、以上に説明した実施形態は複合材構造及び複合材構造製造方法の代表的な形態を示したに過ぎず、複合材構造及び複合材構造製造方法は、これに限定されるものではなく種々変形して実施することができる。
【0147】
例えば、上述の実施形態では、複合材構造について、全体的な外観や内部構造について各種形状等が図示された複合材構造1,・・・,130が例示されている。しかしながら、複合材構造はこれに限るものではなく、使用態様に応じて外観や内部構造は適宜に設定し得るものである。
【符号の説明】
【0148】
1,2,3,4,5,6,7,8,9,100,110,120,130 複合材構造
1a 露出前構造
11,81,91,101,111,121,131 導電樹脂部
11a 導電性繊維
11a-1 導電繊維シート
11b 母材
12,22,42,62,72,82,92,102,112,122,132 導電体
12a,102a,112a,122a,132a 第1導電体
12b,42b,62b,72b,82b,92b,102b,112b,122b,132b 第2導電体
12b-1,62b-1,72b-1,92b-1,102b-1,112b-1,122b-1,132b-1 接続部
12b-2,8a,100a 貫通孔
12b-3 被覆部分
13,33,53,63,73,83,93,103,113,123,133 絶縁体
42c,53a 突起部
64,124 被覆電線
64a,124a メガネ端子
72b-2,92b-2,132b-2 共通端部
74,94,134 コネクタ
81a,91a 第1平面
81b,91b 第2平面
81c,91c 立面
101a,111a,121a,131a 表面
101b 窪み
B1,B8,B10,B11 ボルト
N1,N8,N10,N11 ナット
W1,W8,W10,W11 端子付き電線
W11,W81,W101,W111 露出芯線
W12,W82,W102,W112 メガネ端子
WS8,WS10 絶縁ワッシャ
D101 深さ方向
Z1 絶縁性材料
Z2 導電性強化樹脂
S11 第1工程
S12 第2工程
S121 露出前工程
S122 露出工程
S122a シート配置工程
S122b 母材含浸工程
S122c 加工/研磨/洗浄工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27