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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】遮断器異常検出システム
(51)【国際特許分類】
   H01H 9/54 20060101AFI20231030BHJP
   H02B 3/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01H9/54 J
H02B3/00 M
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021010031
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022113975
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】浅香 貴俊
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-126033(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0146945(US,A1)
【文献】中国実用新案第210016275(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 9/54
H01H 33/59
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧を検出するように設けられた入力電圧検出器を含み、トリップ指令にもとづいて遮断器の接点を開放させるように動作する遮断器操作回路に制御電源を供給するコンデンサ引外し装置と、
前記入力電圧検出器によって検出された前記入力電圧にもとづいて、前記コンデンサ引外し装置に関する異常を検出する異常判定回路と、
を備え、
前記異常判定回路では、第1しきい値および前記第1しきい値よりも低い値を有する第2しきい値があらかじめ設定され、
前記異常判定回路は、前記入力電圧が前記第1しきい値よりも低い値を有する場合に、前記コンデンサ引外し装置の入力側に異常が存する旨のアラームを発報し、
前記入力電圧が第2しきい値よりも低い値を有する場合には、前記遮断器の上位の系統に設けられた上位遮断器にトリップ指令を送信する遮断器異常検出システム。
【請求項2】
前記異常判定回路は、
前記入力電圧を所定の周期で収集し、
異なる時刻で収集した前記入力電圧の差分が、あらかじめ設定された第3しきい値以上の場合に前記コンデンサ引外し装置の劣化が始まっている旨のアラームを発報する請求項1記載の遮断器異常検出システム。
【請求項3】
出力電圧を検出するように設けられた出力電圧検出器を含み、トリップ指令にもとづいて遮断器の接点を開放させるように動作する遮断器操作回路に制御電源を供給するコンデンサ引外し装置と、
前記出力電圧検出器によって検出された前記出力電圧にもとづいて、前記コンデンサ引外し装置に関する異常を検出する異常判定回路と、
を備え、
前記異常判定回路では、第4しきい値および前記第4しきい値よりも低い値を有する第5しきい値があらかじめ設定され、
前記異常判定回路は、前記出力電圧が前記第4しきい値よりも低い値を有する場合に、前記コンデンサ引外し装置の出力側に異常が存する旨のアラームを発報し、
前記出力電圧が第5しきい値よりも低い値を有する場合には、前記遮断器の上位の系統に設けられた上位遮断器にトリップ指令を送信する遮断器異常検出システム。
【請求項4】
入力電圧を検出するように設けられた入力電圧検出器と、出力電圧を検出するように設けられた出力電圧検出器と、を含み、トリップ指令にもとづいて遮断器の接点を開放させるように動作する遮断器操作回路に制御電源を供給するコンデンサ引外し装置と、
前記入力電圧検出器によって検出された前記入力電圧および前記出力電圧検出器によって検出された前記出力電圧にもとづいて、前記コンデンサ引外し装置に関する異常を検出する異常判定回路と、
を備え、
前記異常判定回路では、前記入力電圧に関する第6しきい値および出力電圧に関する第7しきい値があらかじめ設定され、
前記異常判定回路は、前記入力電圧が前記第6しきい値よりも低い値を有する場合に、前記コンデンサ引外し装置の入力側に異常が存する旨のアラームを発報し、
前記出力電圧が第7しきい値よりも低い値を有する場合には、前記コンデンサ引外し装置の出力側に異常が存する旨のアラームを発報する遮断器異常検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、遮断器用コンデンサ引外し装置の異常を検出する遮断器異常検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
工場などの電力系統では、各種装置の主回路に流れる負荷電流や故障電流、短絡電流等を遮断するために遮断器が用いられる。遮断器には、直流電源装置からの制御電源を供給する場合のほか、直流電源装置を設けずに、交流電源により制御電源を供給する場合もあり、これらの組み合わせによる場合もある(特許文献1を参照)。直流電源装置を設けずに交流電源を制御電源とする場合には、コンデンサ引外し装置により、交流電圧を簡易的に直流電圧に変換して制御電源とし、遮断器に設けられた遮断器操作回路によって、遮断器の接点を開放させる。
【0003】
遮断器を用いて運転および停止を制御する装置の場合には、遮断器の故障や劣化を生じた場合には、装置を適時に運転開始できなかったり、停止できなかったりするおそれがある。たとえば、コンデンサ引外し装置自体に故障や劣化等を生じた場合には、遮断器操作回路に制御電源を供給することができないため、遮断器による主回路への電力供給を遮断できずに、さらに上位の電源を遮断する必要が生じ、工場の操業に大きな影響を及ぼすおそれがある。
【0004】
コンデンサ引外し装置の故障や劣化を事前に把握して、安全に遮断器の動作を確保し、工場の操業を安定して継続することが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-165409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の実施形態は、コンデンサ引外し装置の故障や劣化等の異常を事前に検出することができる遮断器異常検出システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る遮断器異常検出システムは、入力電圧を検出するように設けられた入力電圧検出器を含み、トリップ指令にもとづいて遮断器の接点を開放させるように動作する遮断器操作回路に制御電源を供給するコンデンサ引外し装置と、前記入力電圧検出器によって検出された前記入力電圧にもとづいて、前記コンデンサ引外し装置に関する異常を検出する異常判定回路と、を備える。前記異常判定回路では、第1しきい値および前記第1しきい値よりも低い値を有する第2しきい値があらかじめ設定される。前記異常判定回路は、前記入力電圧が前記第1しきい値よりも低い値を有する場合に、前記コンデンサ引外し装置の入力側に異常が存する旨のアラームを発報し、前記入力電圧が第2しきい値よりも低い値を有する場合には、前記遮断器の上位の系統に設けられた上位遮断器にトリップ指令を送信する。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態では、コンデンサ引外し装置の故障や劣化等の異常を事前に検出することができる遮断器異常検出システムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態の遮断器異常検出システムを例示する模式的なブロック図である。
図2】実施形態の遮断器異常検出システムの一部を例示する模式的なブロック図である。
図3】実施形態の遮断器異常検出システムの動作を説明するためのフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0011】
図1は、実施形態の遮断器異常検出システムを例示する模式的なブロック図である。
図1に示すように、遮断器異常検出システムは、コンデンサ引外し装置51と、異常判定回路44と、を備える。
【0012】
コンデンサ引外し装置51は、遮断器1に設けられた遮断器操作回路11に接続されており、遮断器操作回路11に制御電源を供給する。コンデンサ引外し装置51は、異常判定回路44に接続されている。異常判定回路44は、コンデンサ引外し装置51に供給される交流の入力電圧vinおよびコンデンサ引外し装置51が制御電源として出力する直流電圧である出力電圧Voutを入力して、これらの電圧値の異常の有無を判定する。
【0013】
遮断器1は、交流電源100と負荷3との間に設けられている。この例では、遮断器1と負荷3との間に変圧器2が設けられている。遮断器1の接点が接続されることによって、負荷3に交流電源100から電力が供給される。遮断器1の接点が開放されることによって、負荷3への電力供給が遮断される。
【0014】
遮断器操作回路11は、コンデンサ引外し装置51から制御電源の供給を受けて動作する。遮断器操作回路11は、監視盤4に設けられた制御装置によって制御される。制御装置は、たとえばプログラマブルロジックコントローラ等によって構成されている。監視盤4の制御装置は、操作指令入力部41および操作/トリップ指令生成部42を含んでいる。操作指令入力部41は、手動スイッチ等による操作指令およびトリップ指令を受け付ける。操作/トリップ指令生成部42は、操作指令入力部41の出力に応じて、遮断器操作回路11のための操作指令およびトリップ指令を生成し、遮断器操作回路11に供給する。
【0015】
操作/トリップ指令生成部42によって操作指令が生成された場合には、遮断器操作回路11は、遮断器1の接点を閉じるように動作する。操作/トリップ指令生成部42によってトリップ指令が生成された場合には、遮断器操作回路11は、遮断器1の接点を開放するように動作する。たとえば、遮断器操作回路11は、トリップ指令の供給を受けたときには、コンデンサ引外し装置51から供給される制御電源によって、遮断器1の接点の開放のためのトリップコイル(図示せず)を駆動して、遮断器1の接点を開放する。
【0016】
操作/トリップ指令生成部42は、図示しないが、遮断器1に流れる電流を監視しており、遮断器1に流れる電流が所定の値に達したときにトリップ指令を生成する。遮断器操作回路11は、生成されたトリップ指令にしたがって、遮断器1の接点を開放し、過大な電流から負荷3を含む主回路を保護する。
【0017】
図2は、実施形態の遮断器異常検出システムの一部を例示する模式的なブロック図である。
図2には、コンデンサ引外し装置51の構成が簡素化されて示されている。
図2に示すように、実施形態の遮断器異常検出システムのコンデンサ引外し装置51は、入力電圧検出器511および出力電圧検出器512を含んでいる。コンデンサ引外し装置51は、交流電源102に接続されて、遮断器1のための制御電源(図では、遮断器制御電源と表記)に変換して出力する変換回路5を含んでいる。変換回路5は、直流側にコンデンサを含んでおり、交流電源が遮断された場合であっても、一定の期間、制御電源を出力することができる。
【0018】
入力電圧検出器511は、変換回路5の入力に接続され、出力電圧検出器512は、変換回路5の出力に接続されている。入力電圧検出器511は、変換回路5に入力される入力電圧vinを検出して、異常判定回路44に供給する。出力電圧検出器512は、変換回路5から出力される出力電圧Voutを検出して、異常判定回路44に供給する。
【0019】
図1に戻って説明を続ける。
異常判定回路44は、監視盤4の制御装置を介して、監視盤4の外部に設けられたプロセス監視装置(HMI)に接続されている。また、異常判定回路44は、遮断器1の上位の交流系統に設けられた上位遮断器に接続されている。
【0020】
異常判定回路44は、コンデンサ引外し装置51の入力電圧vinおよび出力電圧Voutの検出値にもとづいて、異常処理を実行する。異常処理は、入力電圧vinおよび出力電圧Voutの検出値に応じて、複数の段階に設定されている。異常判定回路44は、異常の程度が軽いと判定した場合には、HMIにアラームを発報し、HMIによりアラームが表示される。アラームは、モニタへのテキスト表示に限らず、音声出力させたり、動画を再生させたりしてもよい。
【0021】
異常判定回路44は、異常の程度が重度であると判定した場合には、アラーム発報とともに、上位遮断器のためのトリップ指令を生成し、生成したトリップ指令を上位遮断器に送信して、上位遮断器を開放させる。
【0022】
図3は、実施形態の遮断器異常検出システムの動作を説明するためのフローチャートの例である。
図3に示すように、操作/トリップ指令生成部42が遮断器1に対する投入指令(操作指令)を生成すると、異常判定回路44は、異常判定動作を開始する。
【0023】
ステップS1において、入力電圧検出器511は、コンデンサ引外し装置51の入力電圧vinを計測する。異常判定回路44は、計測された入力電圧vinのデータを入力電圧検出器511から受信する。なお、入力電圧vinの計測および送信のタイミングは、たとえば監視盤4に設けられた制御装置を含む制御ネットワークによって設定された一定の周期とされる。また、後述する各ステップにおける処理も設定された周期とされる。
【0024】
ステップS2において、異常判定回路44は、計測された入力電圧vinのデータとあらかじめ設定されたしきい値VSを比較する。異常判定回路44は、入力電圧vinのデータがしきい値VS以上の場合には、処理を次のステップS3に遷移させる。異常判定回路44は、入力電圧vinのデータがしきい値VSよりも小さい場合には、処理をステップS6に遷移させる。ステップS6では、異常判定回路44は、コンデンサ引外し装置51に関する異常を検出したものと判定する。ステップS6以降の異常判定の処理については、後述する。
【0025】
なお、ステップS2における判定においては、入力電圧vinの誤検出や誤動作等を回避するため、入力電圧vinのデータがしきい値VSよりも小さいことを所定の期間、たとえば、計測周期の数周期分継続した場合に、ステップS6に遷移させることが好ましい。この例では、所定の期間を計測するためにタイマTを設けている。
【0026】
ステップS3において、出力電圧検出器512は、コンデンサ引外し装置51の出力電圧Voutを計測する。異常判定回路44は、計測された出力電圧Voutのデータを出力電圧検出器512から受信する。
【0027】
ステップS4において、異常判定回路44は、計測された出力電圧Voutのデータとあらかじめ設定されたしきい値VCを比較する。異常判定回路44は、出力電圧Voutのデータがしきい値VC以上の場合には、処理を次のステップS5に遷移させる。異常判定回路44は、出力電圧Voutのデータがしきい値VCよりも小さい場合には、処理をステップS6に遷移させる。
【0028】
なお、ステップS4における判定においても、ステップS2の場合と同様に、出力電圧Voutのデータがしきい値VCよりも小さいことを所定の期間、たとえば、計測周期の数周期分継続したことをタイマTで計測し、ステップS6に遷移させることが好ましい。
【0029】
ステップS5において、異常判定回路44は、コンデンサ引外し装置51に関して、正常であると判定する。異常判定回路44は、正常である旨の判定結果をHMI等に出力してもよい。その後、異常と判定されるか、遮断器のトリップ指令が出力されるまで、上述の処理を繰り返す。
【0030】
ステップS6において異常判定回路44がコンデンサ引外し装置51に関して異常であると判定した場合の処理について説明する。
ステップS6では、異常判定回路44は、入力電圧vinについて、第2のしきい値VS2を有している。第2のしきい値VS2は、たとえばしきい値VSよりも小さい値に設定されている。計測した入力電圧vinのデータが第2のしきい値VS2よりも小さいときには、異常判定回路44は、処理をステップS7に遷移させ、ステップS7では、遮断器1の上位の遮断器に対するトリップ指令を生成する。なお、異常判定回路44は、上位遮断器をトリップする旨のアラームを発報することが好ましい。
【0031】
ステップS6では、入力電圧vinのデータが、第2のしきい値VS2以上である場合には、異常判定回路44は、処理をステップS8に遷移させ、アラームを発報する。この場合のアラームは、遮断器1を含む他の系統を上位遮断器で遮断するには至らないが、早急な点検等を要する旨を表示することが好ましい。
【0032】
ステップS6において、入力電圧vinのデータをしきい値と比較する場合に限らず、異なる時刻に取得されたデータの差をあらかじめ設定された第3のしきい値と比較するようにしてもよい。異なる時刻におけるデータは、たとえば、現在取得されたデータの直前の周期で取得されたデータとすることができる。また、入力電圧vinのしきい値を、入力電圧vinの正常範囲よりも大きい値に設定することによって、コンデンサ引外し装置の入力側の開放状態を異常状態として検出することもできる。
【0033】
上述では、入力電圧の異常検出の際に、複数段階のしきい値設定する場合について説明したが、出力電圧の異常時に複数段階のしきい値との比較をするようにしてもよい。
【0034】
上述では、入力電圧vinの異常判定を実行した後に、出力電圧Voutの異常判定を行うものである。この場合には、コンデンサ引外し装置51を含む遮断器のシステムを設置し、調整し、稼働させる場合等に、コンデンサ引外し装置51の交流側を間違った接続先に接続した場合に、稼働前に不具合を検出できる等のメリットがある。入力電圧vinの異常判定後に出力電圧Voutの異常判定を実行する場合に限らず、出力電圧Voutの異常判定後に入力電圧の異常判定を実行するようにしてもよい。また、入力電圧vinおよび出力電圧Voutの異常判定を順次実行する場合に限らず、入力電圧vinおよび出力電圧Voutのそれぞれを併行して異常判定するようにしてもよい。入力電圧vinおよび出力電圧Voutを併行して異常判定する場合には、入力電圧vinおよび出力電圧Voutのいずれにおける異常であるかを区別することができる。
【0035】
実施形態の遮断器異常検出システムの効果について説明する。
実施形態の遮断器異常検出システムでは、コンデンサ引外し装置51の入力電圧vinおよび出力電圧Voutを計測することができる。遮断器異常検出システムは、異常判定回路44を備えているので、計測された入力電圧vinおよび出力電圧Voutにもとづいて、コンデンサ引外し装置51に関する異常を検出することができる。
【0036】
実施形態の遮断器異常検出システムでは、入力電圧vinおよび出力電圧Voutをそれぞれ計測し、順次あるいは併行して異常判定することができる。順次異常判定する場合には、入力電圧vinから判定を開始すると、コンデンサ引外し装置51に異常がある場合には、出力電圧Voutの判定を行うことなく、迅速に良否を判定することができる。入力電圧vinの異常判定から出力電圧Voutの異常判定を順次判定することによって、入力側で正常であっても、出力側で異常を生じるモードでの不具合を検出することができる。
【0037】
入力電圧vinおよび出力電圧Voutをそれぞれ併行して異常判定する場合には、コンデンサ引外し装置51の変換回路5の異常のほか、交流電源102や交流電源102との接続等の不具合であるか、コンデンサ引外し装置51と遮断器1との接続に関する不具合も区別して検出することが可能になる。
【0038】
実施形態の遮断器異常検出システムでは、異常判定回路44が入力電圧vinまたは出力電圧Voutについて、異常検出のためのしきい値を複数設けている。そのため、軽度の異常と重度の異常とを、区別して処理を設定することができるので、主回路が短絡する等の遮断器1で保護すべき状況において、突然遮断器1の開放ができずに上位遮断器で遮断すべきでない装置にまで、影響を及ぼすことを回避することができる。
【0039】
軽度の異常では、入力電圧vinおよび出力電圧Voutの異常検出しきい値をそれぞれ設けた場合には、点検時にどこに不具合の原因があるかをあらかじめ把握することが可能になり、装置の操業復帰の期間を短縮することができる。
【0040】
軽度の異常検出においては、異なる時刻におけるデータの差をしきい値と比較することもでき、その場合は、コンデンサ引外し装置51の劣化の進行状況を合わせて把握することも可能になり、故障発生前の事前の処置が可能になるとのメリットも生じる。
【0041】
近年では、工場の操業度を挙げて、生産性を向上させたいとの要求が強い。一方、遮断器のコンデンサ引外し装置は、回路や構造が比較的簡素なため、特定の保護回路を設ける等される必要性が低いとの事情がある。しかしながら、コンデンサ引外し装置には、劣化し得る電気部品であるコンデンサが用いられ、また、遮断器が用いられる工場内の設置環境は、劣悪なことも少なくなく、コンデンサ引外し装置自体の不具合に限らず、遮断器や監視盤等との配線による接続に劣化異常等を生じることも懸念される。実施形態の遮断器異常検出システムでは、上述したように、不具合の箇所を特定するのに資する情報をアラーム等の形式で出力することができる。また、遮断器異常検出システムでは、入力電圧vinあるいは出力電圧Voutの変化の傾向も取得することができるので、どのタイミングで部品や配線等の交換をすべきか等の判断に寄与する情報を収集することにも資する。
【0042】
上述のことから、実施形態の遮断器異常検出システムを導入することによって、工場の操業時間を十分に確保し、遮断器異常検出システムによって不具合が検出された場合であっても、操業再開までの期間を短縮することが可能になり、工場の生産性を向上させることに貢献することができる。
【0043】
以上説明した実施形態によれば、コンデンサ引外し装置の故障や劣化等の異常を事前に検出することができる遮断器異常検出システムを実現することができる。
【0044】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 遮断器、2 変圧器、3 負荷、4 監視盤、11 遮断器操作回路、44 異常判定回路、51 コンデンサ引外し装置、511 入力電圧検出器、512 出力電圧検出器
図1
図2
図3