(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】コンクリートの測定方法、及び、コンクリートの評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/06 20180101AFI20231030BHJP
G01N 23/09 20180101ALI20231030BHJP
G01T 1/17 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
G01N23/06
G01N23/09
G01T1/17 A
(21)【出願番号】P 2016159109
(22)【出願日】2016-08-15
【審査請求日】2019-07-18
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神代 泰道
(72)【発明者】
【氏名】酒井 正樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 理紗
【合議体】
【審判長】樋口 宗彦
【審判官】石井 哲
【審判官】渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-4747(JP,A)
【文献】特開2007-285959(JP,A)
【文献】特開平7-198629(JP,A)
【文献】特開昭50-16595(JP,A)
【文献】特開2000-121529(JP,A)
【文献】特開2011-85481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0046289(US,A1)
【文献】特開2009-121930(JP,A)
【文献】特開平5-281123(JP,A)
【文献】M.C.da Rocha,Moisture profile measurements of concrete samples in vertical water flow by gamma ray transmission method,Radiation Physics and Chemistry,2001年,Vol.61,pp.567-569
【文献】山路昭雄,直ダクト付きγ線遮蔽用コンクリート壁に組み込む補償遮蔽体の設計手法および線量率分布の測定と解析,日本原子力学会誌,1987年,Vol.29 No.6,pp.555-563
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00- 23/2276
G01N 33/28
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実際のコンクリートの物性値を面での原位置(ただし、削孔を除く。)にて
、密封ラジオアイソトープ(放射性同位元素:RI)を利用した非破壊測定器を用いて、外壁面で形成される隅角部を利用した隅角法、配管用のスリーブ孔を利用したスリーブ法、内壁面側から外壁面に放射線を透過させる透過法のいずれかで、直接的に非破壊で測定するコンクリートの測定方法であって、
硬化した前記コンクリートに放射線を照射する工程と、
前記コンクリートを透過してきた前記放射線を検出する工程と、
前記放射線の検出結果(但し、音響エネルギー及び温度の検出結果を除く。)に基づいて、前記コンクリートの前記物性値を求める工程と、
を有し、
前記放射線の検出数と前記物性値の大きさとの対応関係が予め定められており、前記対応関係を用いて前記物性値を求める
ことを特徴とするコンクリートの測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコンクリートの測定方法であって、
前記放射線はガンマ線であり、
前記物性値は単位容積質量である、
ことを特徴とするコンクリートの測定方法。
【請求項3】
実際のコンクリートの物性値を面での原位置(ただし、削孔を除く。)にて
、密封ラジオアイソトープ(放射性同位元素:RI)を利用した非破壊測定器を用いて、外壁面で形成される隅角部を利用した隅角法、配管用のスリーブ孔を利用したスリーブ法、内壁面側から外壁面に放射線を透過させる透過法のいずれかで、直接的に非破壊で測定するコンクリートの測定方法であって、
硬化した前記コンクリートに放射線を照射する工程と、
前記コンクリートを透過してきた前記放射線を検出する工程と、
前記放射線の検出結果に基づいて、前記コンクリートの前記物性値を求める工程と、
を有し、
前記放射線の検出数と前記物性値の大きさとの対応関係が予め定められており、前記対応関係を用いて前記物性値を求めるコンクリートの測定方法であって、
前記放射線は中性子線であり、
前記物性値は含水量である、
ことを特徴とするコンクリートの測定方法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のコンクリートの測定方法であって、
前記コンクリートは、隅角部を有し、
前記隅角部をなす一方の面から他方の面へ前記放射線を透過させる、
ことを特徴とするコンクリートの測定方法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載のコンクリートの測定方法であって、
前記コンクリートは、幅厚部を有し、
前記幅厚部の一方の側から、他方の側へ前記放射線を透過させる
ことを特徴とするコンクリートの測定方法。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかのコンクリート測定方法により得られた前記物性値から前記コンクリートの前記放射線に対する遮蔽性能を非破壊で評価する、
ことを特徴とするコンクリートの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの測定方法、及び、コンクリートの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物などの硬化したコンクリートの物性値(例えば、単位容積質量や含水量)を測定する場合、コンクリートの打ち込みと同時に、当該コンクリートを用いた試験体を別途作製して、その試験体を用いて間接的な測定を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実際のコンクリートと管理用の試験体とでは、温度履歴や乾燥程度などの条件が異なるため、測定結果が必ずしも一致しないおそれがあった。また、実際のコンクリートの物性値を原位置にて直接的に測定できれば、コンクリートの締固めの状況や打継ぎ部の影響などばらつきの考慮や、経年にわたるコンクリートの物性値の変化を捉えることが可能となる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その主な目的は、硬化したコンクリートを直接非破壊測定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明のコンクリートの測定方法は、実際のコンクリートの物性値を面での原位置(ただし、削孔を除く。)にて、密封ラジオアイソトープ(放射性同位元素:RI)を利用した非破壊測定器を用いて、外壁面で形成される隅角部を利用した隅角法、配管用のスリーブ孔を利用したスリーブ法、内壁面側から外壁面に放射線を透過させる透過法のいずれかで、直接的に非破壊で測定するコンクリートの測定方法であって、硬化した前記コンクリートに放射線を照射する工程と、前記コンクリートを透過してきた前記放射線を検出する工程と、前記放射線の検出結果(但し、音響エネルギー及び温度の検出結果を除く。)に基づいて、前記コンクリートの前記物性値を求める工程と、を有し、前記放射線の検出数と前記物性値の大きさとの対応関係が予め定められており、前記対応関係を用いて前記物性値を求めることを特徴とする。
このようなコンクリートの測定方法によれば、硬化したコンクリートを直接非破壊測定することができる。また、物性値の大きさを簡易に算出することができる。
【0007】
かかるコンクリートの測定方法であって、前記放射線はガンマ線であり、前記物性値は単位容積質量であってもよい。
このようなコンクリートの測定方法によれば、硬化したコンクリートの単位容積質量を非破壊測定することができる。
【0008】
また、本発明のコンクリートの測定方法は、実際のコンクリートの物性値を面での原位置(ただし、削孔を除く。)にて、密封ラジオアイソトープ(放射性同位元素:RI)を利用した非破壊測定器を用いて、外壁面で形成される隅角部を利用した隅角法、配管用のスリーブ孔を利用したスリーブ法、内壁面側から外壁面に放射線を透過させる透過法のいずれかで、直接的に非破壊で測定するコンクリートの測定方法であって、硬化した前記コンクリートに放射線を照射する工程と、前記コンクリートを透過してきた前記放射線を検出する工程と、前記放射線の検出結果に基づいて、前記コンクリートの前記物性値を求める工程と、を有し、前記放射線の検出数と前記物性値の大きさとの対応関係が予め定められており、前記対応関係を用いて前記物性値を求めるコンクリートの測定方法であって、前記放射線は中性子線であり、前記物性値は含水量である、ことを特徴とする。
このようなコンクリートの測定方法によれば、硬化したコンクリートの含水量を非破壊測定することができる。
【0010】
かかるコンクリートの測定方法であって、前記コンクリートは、隅角部を有し、前記隅角部をなす一方の面から他方の面へ前記放射線を透過させてもよい。
このようなコンクリートの測定方法によれば、隅角部を利用してコンクリートを測定することができる。
【0012】
かかるコンクリートの測定方法であって、前記コンクリートは、前記コンクリートは、幅厚部を有し、前記幅厚部の一方の側から、他方の側へ前記放射線を透過させてもよい。
このようなコンクリートの測定方法によれば、コンクリートの測定位置の制約を受けにくい。
【0013】
また、上記の何れかのコンクリート測定方法により得られた前記物性値から前記コンクリートの前記放射線に対する遮蔽性能を非破壊で評価することが望ましい。
このようなコンクリートの評価方法によれば、放射線に対する遮蔽性能を直接非破壊で評価することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硬化したコンクリートを直接非破壊測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態で使用する測定装置10の構成を示す概略説明図である。
【
図2】
図2A及び
図2Bは測定装置10の測定原理の概略説明図である。
図2Aは密度の測定についての説明図であり、
図2Bは水分量の測定についての説明図である。
【
図6】コンクリート(試験体)の使用材料を示す図である。
【
図7】コンクリート(試験体)の調合条件を示す図である。
【
図8】
図8Aは単位容積質量の測定結果を示す図であり、
図8Bは含水量の測定結果を示す図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、測定装置10によるコンクリートの単位容積質量の測定値(計数率比)と単位容積質量の対応関係を示す図である。
図9Aは隅角法の測定結果を示す図であり、
図9Bはスリーブ法の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
===実施形態===
<<測定装置について>>
図1は、本実施形態で使用する測定装置10の構成を示す概略説明図である。
【0017】
本実施形態では、測定装置10を用いてコンクリートの単位容積質量(以下、密度ともいう)及び含水量(以下、水分量ともいう)を測定する。測定装置10は、密封ラジオアイソトープ(放射性同位元素:RI)を利用した非破壊測定器であり、道路、ダム、堤防工事などの土工事に用いられている装置(土質を測定する装置)である。
測定装置10は、本体20と線源棒30を備えている。
【0018】
本体20は、測定装置10の装置本体であり、放射線検出部21と処理部22を有している。
【0019】
放射線検出部21は、線源棒30の放射線源32(後述)が照射した放射線のうち測定対象物を透過してきた放射線を検出して計数(カウント)する部位である。本実施形態の放射線検出部21は、ガンマ線(γ線)を検出するガンマ線検出部21aと、中性子線を検出する中性子線検出部21bを有している。
【0020】
処理部22は、放射線検出部12の検出結果に基づいて各種データ処理などの演算を行う。例えば、放射線検出部12で検出された放射線量(カウント値)と、線源棒30の放射線源32で発生した放射線との差分(減衰量)を算出する。そして、この減衰量と、標準物質の放射線減衰量との比(計数率比)を算出する。
【0021】
また、本体20は、測定結果及び各種のデータを記憶する記憶部(不図示)を有しており、当該記憶部には、測定結果(計数率比)と密度の大きさとの対応関係を示す関係式(較正曲線:
図9A、
図9B参照)が予め記憶されている。処理部22は、上記関係式を用いて測定結果から密度を算出する。このように関係式を用いることにより、密度の大きさを簡易に算出することができる。なお、自然界にも放射線が存在するため、自然界の放射線測定量(バックグラウンド)をカウントし、算出した減衰量から差し引いて補正を行っている。
【0022】
水分量の場合についても同様に、測定結果(計数率比)と水分量の大きさとの対応関係を示す関係式が記憶部に記憶されており、処理部22はその関係式を用いて水分量を算出する。
【0023】
また、本体20は、処理部22の演算結果を出力する出力部(不図示)を備えている。出力部としては、ディスプレイなどの表示機構やプリンターなどの印刷機構が設けられている。
【0024】
線源棒30は、棒形状の細長い部材(筒体)であり、本体20と脱着可能に設けられている。また、線源棒30の先端部には60Co(コバルト60)、及び、252Cf(カリホルニウム252)を密封した放射線源32が設けられている。コバルト60はガンマ線の線源であり、カリホルニウム252は中性子線の線源である。
【0025】
<<測定原理について>>
図2A及び
図2Bは測定装置10の測定原理の概略説明図である。
図2Aは密度の測定についての説明図であり、
図2Bは水分量の測定についての説明図である。
図2A、
図2Bでは、線源棒30を土中に差し込み、土の密度、水分量を測定する場合について示している。
【0026】
(密度の測定)
コバルト60からはガンマ線が放出される。ガンマ線が物質中を通過する際、原子の軌道電子との相互作用により、エネルギーの一部を軌道電子に与え、自らは小さなエネルギーになって進行方向を変える。測定対象物を構成する原子の電子軌道の総数は、陽子と同数であることから密度(単位容積質量)と概ね比例する。例えば、
図2Aのように、地中に放射線源32(ここではガンマ線源)を配置したとき、土の密度が大きいほど地表に到達するガンマ線が少なくなる。
【0027】
これにより、
図2Aに示すように、地表面の放射線検出部21のガンマ線検出部21aに到達するガンマ線を計数(カウント)することによって密度(土の密度)を測定することができる。
【0028】
(水分量の測定)
カリホルニウム252からは、速中性子と呼ばれるエネルギーの大きい中性子が放出される。速中性子が物質中の原子核と衝突すると、次第にその運動エネルギーを失い、熱中性子と呼ばれるエネルギーの低い中性子に変換される。水素原子の減速能(速中性子を熱中性子に変換させる能力)は、他の原子と比べて非常に高いので、物質中に水素原子が多く存在するほど、速中性子は水素原子との衝突を繰り返すことによってエネルギーを失う。よって、
図2Bのように、地中に放射線源32(ここでは中性子線源)を配置したとき、土を透過して中性子線検出部21bに到達する熱中性子を計数(カウント)することによって水分量を測定することができる。
【0029】
このように、測定装置10を用いて、土の密度や水分量を測定することができる。本実施形態では、この測定装置10を、硬化したコンクリートの密度(単位容積質量)、及び、水分量(含水量)の測定に適用している。
【0030】
<<測定方法について>>
図2A、
図2Bに示したように、測定装置10で土質を測定する際には、線源棒30を土中に差し込んでいる。しかしながら、硬化したコンクリートの場合、
図2A、
図2Bのように線源棒30を差し込めない。
【0031】
そこで、本実施形態では、硬化したコンクリートを直接測定するため、以下の3つの測定方法(隅角法、スリーブ法、透過法)を検討した。
【0032】
<隅角法>
図3A及び
図3Bは隅角法の概略説明図である。
図3Aは斜視図、
図3Bは
図3Aを上から見た図である。測定対象物は、コンクリート壁1であり、当該コンクリート壁1は、外壁面1Aと外壁面1Bで形成される隅角部を有している。また、外壁面1Aとその内側の内壁面1C、及び、外壁面1Bとその内側の内壁面1Dで、コンクリート壁1の幅厚部が形成されている。
【0033】
隅角法は、隅角部をなす一方の面(図では外壁面1A)に線源棒30を押し当て、他方の面(図では外壁面1B)に本体20を押し当て、コンクリート壁1の隅角部に斜めに放射線を透過させる方法である。つまり、線源棒30の放射線源32から外壁面1Aに放射線を照射し、外壁面1Bに透過してきた放射線を本体20の放射線検出部21で検出する。そして、その検出結果に基づいて処理部22が密度や水分量を算出する。これにより、隅角部を用いてコンクリート壁1の密度や水分量を測定することができる。なお、線源棒30は本体20に固定されているので、放射線源32と放射線検出部21(ガンマ線検出部21a又は中性子線検出部21b)との間の距離(放射距離)は常に一定になる。
【0034】
<スリーブ法>
図4A及び
図4Bはスリーブ法の概略説明図である。
図4Aは斜視図、
図4Bは
図4Aを上から見た図である。
図4A、
図4Bのコンクリート壁1には外壁面1B(所定面に相当)から内壁面1Dに貫通する配管用のスリーブ孔1a(孔部に相当)が設けられている。
【0035】
スリーブ法は、コンクリート壁1の外壁面1Bに設けられたスリーブ孔1a中に線源棒30を差し込み、本体20(放射線検出部21)を外壁面1Bに押し当て、スリーブ孔1aの内部から、外壁面1Bに放射線を透過させる方法である。これにより、スリーブ孔1aを用いてコンクリート壁1の密度や水分量を測定することができる。なお、この場合も、線源棒30は本体20に固定されているので、放射線源32と、放射線検出部21(ガンマ線検出部21a又は中性子線検出部21b)と間の距離(放射距離)は常に一定になる。
【0036】
【0037】
透過法は、線源棒30をコンクリート壁1の幅厚部の一方(図では内壁面1D)に押し当て、本体20(放射線検出部21)を幅厚部の他方(図では外壁面1B)に押し当て、内壁面1D側から外壁面1B側に放射線を透過させる方法である。この透過法では、隅角法やスリーブ法と比べて、測定位置の制約を受けにくい。なお、この測定方法の場合、図に示すように、線源棒30を本体20から取り外すことになる。このため、放射線源32と、放射線検出部21(ガンマ線検出部21a又は中性子線検出部21b)との距離(放射距離)が一定になるように調整する必要がある。
【0038】
上記の測定方法により、コンクリート壁1の密度及び水分量を測定装置10で測定することが可能である。つまり、測定装置10の放射線源32からコンクリート壁1に放射線を照射し、コンクリート壁1を透過してきた放射線を放射線検出部21で検出し、その検出結果に基づいて、処理部22でコンクリート壁1の物性値(密度、水分量)を求めることができる。これにより、コンクリート壁1を直接非破壊で測定することができる。
【0039】
さらに、算出した密度、水分量から、コンクリート壁1の放射線(ガンマ線、中性子線)に対する遮蔽性能を評価することもできる。例えば、コンクリート壁1の密度が大きいほどガンマ線に対する遮蔽性能が大きくなる。また、コンクリート壁1の水分量が大きいほど中性子線に対する遮蔽性能が大きくなる。これにより、コンクリート壁1の遮蔽性能を直接非破壊で評価することができる。
【0040】
<<実験>>
上記の3種類の測定方法(隅角法、スリーブ法、透過法)のコンクリート測定への適用について、試験体を用いた実験を行った。
【0041】
<試験体>
図6は、コンクリート(試験体)の使用材料を示す図であり、
図7は、コンクリート(試験体)の調合条件を示す図である。
【0042】
図7に示すように、コンクリートの目標単位容積質量(kg/m
3)が異なる4種類の試験体を作製した。具体的には、目標単位容積質量が、3800(調合No.1)、3400(調合No.2)、3000(調合No.3)、2400(調合No.4)の試験体を作製した。なお、試験体の形状は600(mm)×600(mm)×400(mm)の直方体であり、また、試験体には側面を貫通するφ42mm×600mmのスリーブ孔を形成した。材齢は7日、28日、91日で評価した。
【0043】
<測定項目>
各試験体の密度(単位容積質量)と水分量(含水量)を、測定装置10を用いて、前述した3種類の測定方法(隅角法、スリーブ法、透過法)にて測定した。また、密度の実測値としてロードセルを用いて密度を測定した。
【0044】
<結果>
図8Aは単位容積質量の測定結果を示す図である。
図8Bは含水量の測定結果を示す図である。含水量は、調合上の単位水量と比較するため、
図6に示した骨材の吸水率より、骨材中に含有されている水分量を計算して差し引いた値を示した。なお、調合条件、材齢の違いに関わらず測定に対するばらつきがほとんど同等であったため、
図8A、
図8Bでは、一例として材齢91日の調合No.4の試験体の測定結果を示した。図の横軸は測定回数である。
【0045】
単位容積質量については、隅角法、スリーブ法の測定結果はほぼ同等であり、透過法はそれらよりやや低くなった。5回の測定によるばらつきは小さく、コンクリートに対して単位容積質量の測定が可能であると考えられる。
【0046】
含水量については、透過法でのばらつきがやや大きいが、いずれもコンクリートの調合上の単位水量を概ね捉えることができている。
【0047】
また、
図9A及び
図9Bは、測定装置10によるコンクリートの単位容積質量の測定値(計数率比)と単位容積質量の対応関係を示す図である。
図9Aは隅角法の測定結果を示す図であり、
図9Bはスリーブ法の測定結果を示す図である。図では、土質材料で用いられている較正曲線(測定装置10に記憶された較正曲線)を破線で示している。なお、較正曲線とは、測定装置10の測定値(計数率比)と単位容積質量の対応関係を示す関係式である。
【0048】
図に示すように、隅角法およびスリーブ法の何れの場合も、単位容積質量が2300kg/cm3)を超える領域において、土質材料の較正曲線(破線)を連続的に補完する形で成立することが確認された。
【0049】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0050】
<測定装置について>
前述の実施形態では、測定装置10は測定対象物の密度と水分量の両方を測定可能であったがこれには限られない。例えば、密度のみを測定可能な測定装置であってもよいし、水分量のみを測定可能な測定装置であってもよい。
【0051】
<測定項目について>
前述の実施形態では、測定装置10を用いてコンクリートの密度と水分量を測定していたが、密度又は水分量の一方を測定してもよい。
【0052】
<測定対象について>
前述の実施形態では、コンクリート壁1を測定していたがこれには限らない。例えば、スリーブ法や透過法で測定する場合は、隅角部が無くてもよい。
【0053】
<放射線源について>
前述の実施形態では、ガンマ線の放射線源としてコバルト60を用い、中性子線の放射線源としてカリホルニウム252を用いていたが、これ以外の材料を用いてもよい。
【0054】
<放射距離について>
前述の実施形態では、隅角法及びスリーブ法を行う際に、線源棒30を本体20に固定していた(放射距離が一定であった)が、これには限られず、線源棒30を本体20から外して、放射距離を調整して測定を行ってもよい。
【0055】
<較正曲線について>
前述の実施形態では、較正曲線を
図9に限定していたが、別途、測定値(計数率比)と単位容積質量の対応関係が得られれば、これに限らない。
【符号の説明】
【0056】
1 コンクリート壁
1a スリーブ孔
1A 外壁面
1B 外壁面
1C 内壁面
1D 内壁面
10 測定装置
20 本体
21 放射線検出部
21a ガンマ線検出部
21b 中性子線検出部
22 処理部
30 線源棒
32 放射線源