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特許7374580有機材料精製組成物及びそれを利用した有機材料の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】有機材料精製組成物及びそれを利用した有機材料の精製方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/00 20230101AFI20231030BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20231030BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20231030BHJP
   C07D 403/14 20060101ALI20231030BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20231030BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20231030BHJP
【FI】
H10K71/00
H05B33/14 A
H05B33/10
C07D403/14
H10K85/60
H10K85/00
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2018185569
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2019065007
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2017-0126168
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】518347680
【氏名又は名称】韓商電美世設備有限公司
【氏名又は名称原語表記】DMS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】6th floor, 120, Heungdeokjungang-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】李 明 基
(72)【発明者】
【氏名】文 ▲玄▼ 授
(72)【発明者】
【氏名】李 鍾 源
(72)【発明者】
【氏名】姜 宣 宇
(72)【発明者】
【氏名】朴 庸 碩
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0004456(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0136633(KR,A)
【文献】国際公開第2012/099466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 403/14
H10K 50/10
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正イオンと負イオンが結合されたイオン性液体と、
有機溶媒と、を含む有機材料精製用の組成物であって、
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはアセトンであり、
前記有機溶媒の重量は、
前記イオン性液体の重量に対して1.0倍以上5.0倍以下であり、これに伴い、前記組成物の25℃での粘度が15mPa・sec以下である有機材料精製組成物。
【請求項2】
前記イオン性液体は、
下記化学式1-1乃至1-8のうちいずれか一つで表される正イオンを含む請求項1に記載の有機材料精製組成物。
前記化学式1-1乃至化学式1-7において、R乃至Rはそれぞれ独立して、水素原子、または、置換または非置換の炭素数2以上20以下のアルキル基であり、
乃至Rのうちいずれか一つが、炭素数12以上の直鎖を有する。
【請求項3】
前記イオン性液体の正イオンは、
1,3-ジアルキルイミダゾリウムである請求項1に記載の有機材料精製組成物。
【請求項4】
前記イオン性液体は、
Cl、Br、NO 、BF 、PF 、AlCl 、AlCl CHCOO、CFCOO、CHSO (CFSO、(CFCFSO COO、(CFSO)(CFCO)N、C10、CNO 、CNO 、C10NO 、CFSO 、CFSO 、CSO 、CSO 、CNO 、CNO、(CFSO、及びCHCH(OH)CO からなる群から選択される少なくとも一つの負イオンを含む請求項1に記載の有機材料精製組成物。
【請求項5】
前記イオン性液体の負イオンは、パーフルオロアルキル基と、スルホニル基またはスルフィド基とを含む請求項1に記載の有機材料精製組成物。
【請求項6】
正イオンと負イオンが結合されたイオン性液体と、
有機溶媒と、を含む有機材料精製用の混合組成物であって、
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、またはアセトンであり、
前記有機溶媒の重量は、前記イオン性液体の重量に対して1.0倍以上5.0倍以下であり、これに伴い、前記混合組成物は25℃で15cP(mPa・sec)以下の粘度を有し、
前記イオン性液体は、下記化学式2で表される化合物である混合組成物。
[化学式2]
【請求項7】
精製しようとする有機材料を用意するステップと、
前記有機材料をイオン性液体及び有機溶媒の混合溶液に混合するステップと、
前記有機材料が混合された前記混合溶液を攪拌した後、溶解しなかった部分を除去することにより前記有機材料を精製するステップと、
前記精製された有機材料を前記混合溶液から分離するステップと、を含み、
前記有機溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールまたはアセトンであり、
前記有機溶媒の重量は、
前記イオン性液体の重量に対して1.0倍以上5.0倍以下であり、これに伴い、前記混合溶液の25℃での粘度が15mPa・sec以下である有機材料の精製方法。
【請求項8】
前記イオン性液体は、
下記化学式1-1乃至1-8のうちのいずれか一つで表される正イオンを含む請求項7に記載の有機材料の精製方法。
前記化学式1-1乃至化学式1-7において、R乃至Rはそれぞれ独立して水素原子、置換または非置換の炭素数2以上20以下のアルキル基であり、
乃至Rのうちいずれか一つが、炭素数12以上の直鎖を有する。
【請求項9】
前記イオン性液体は、
Cl、Br、NO 、BF 、PF 、AlCl 、AlCl CHCOO、CFCOO、CHSO (CFSO、(CFCFSO COO、(CFSO)(CFCO)N、C10、CNO 、CNO 、C10NO 、CFSO 、CFSO 、CSO 、CSO 、CNO 、CNO、(CFSO、及びCHCH(OH)CO からなる群から選択される少なくとも一つの負イオンを含む請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【請求項10】
前記混合溶液に前記有機材料の粉末が加えられて攪拌が行われ、前記除去の操作はフィルタを用いて行われる、請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【請求項11】
前記イオン性液体及び有機溶媒の混合溶液は、
前記イオン性液体16重量%以上50重量%以下と、
残量の前記有機溶媒と、を含む請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【請求項12】
前記有機材料は、有機発光素子の発光層に含まれる導電性有機材料である請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【請求項13】
前記有機材料は、第1極性を有する第1有機材料と、
前記第1極性とは異なる第2極性を有する第2有機材料と、を含む請求項12に記載の有機材料の精製方法。
【請求項14】
前記精製するステップにおいて、
前記第1有機材料は前記混合溶液に溶解され、
前記第2有機材料は前記混合溶液に溶解されない請求項13に記載の有機材料の精製方法。
【請求項15】
前記分離するステップにおいて、
前記第2有機材料がフィルタを通じて分離される請求項14に記載の有機材料の精製方法。
【請求項16】
前記有機材料及び前記混合溶液を混合するステップ、及び前記精製するステップは、
常温で行われる請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【請求項17】
前記精製された有機材料を分離するステップの後に、
前記分離された有機材料を洗浄及び乾燥するステップを更に含む請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【請求項18】
前記精製された有機材料を分離するステップの後に、
前記有機材料が分離された前記混合溶液から前記イオン性液体を精製してリサイクルするステップを更に含む請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【請求項19】
前記有機材料及び前記混合溶液を混合するステップの前に、
前記有機溶媒と前記イオン性液体を混合してから攪拌して前記混合溶液を製造するステップを更に含む請求項7に記載の有機材料の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機材料精製組成物及びそれを利用した有機材料の精製方法に関し、より詳しくは、有機発光素子に使用される有機材料を精製し得る有機材料精製組成物及びそれを利用した有機材料の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
映像表示装置として、有機発光表示素子(Organic Light Emitting Display)の開発が活発に行われている。有機発光表示装置は液晶表示装置などとは異なって、第1電極及び第2電極から注入された正孔及び電子を発光層で再結合させることで、発光層に含まれる有機化合物である発光材料を発光させて表示を実現する、いわゆる自発光型の表示装置である。
【0003】
有機発光素子としては、例えば、第1電極、第1電極の上に配置された正孔注入層、正孔注入層の上に配置された正孔輸送層、正孔輸送層の上に配置された発光層、発光層の上に配置された電子輸送層、電子輸送層のう上に配置された電子注入層、及び電子注入層の上に配置された第2電極で構成された有機発光素子が知られている。有機発光素子の各層に使用される導電性有機材料は、不純物が含まれていれば有機発光素子の性能に深刻な影響を与えるため、99%以上の高純度に精製する過程が必要である。一方、最近では、有機発光素子の各層に含まれる有機材料を回収して更に精製する工程が開発されている傾向にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、常温条件で有機材料の精製に利用し得る有機材料精製組成物を提供することである。
【0005】
本発明の他の目的は、イオン性液体を含んでも、常温で粘度の低い有機材料精製組成物を提供することである。
【0006】
本発明のまた他の目的は、工程時間とコストが減少され、高い純度で有機材料を精製し得る有機材料の精製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物は、正イオン(陽イオン; cation)と負イオン(陰イオン; anion)が結合されたイオン性液体(イオン液体; ionic liquid)、及び有機溶媒を含む。前記有機溶媒は、アルコールまたはケトンである。
【0008】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、またはブタノールであってもよい。前記ケトンは、アセトンであってもよい。
【0009】
前記イオン性液体は、下記化学式1-1乃至1-7のうちいずれか一つで表される正イオンを含んでもよい。
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
前記化学式1-1乃至化学式1-7において、R1乃至R4は、それぞれ独立して置換または非置換の炭素数2以上20以下のアルキル基である。
【0014】
前記イオン性液体は、炭素数12以上の直鎖を有するアルキル基が置換された正イオンを含んでもよい。
【0015】
前記イオン性液体は、Cl-、Br-、NO3 -、BF4 -、PF6 -、AlCl4 -、Al2Cl7 -、AcO-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3 -、CF3SO3 -、(CF3SO22-、(CF3SO23-、(CF3CF2SO22-、C49SO3 -、C37COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、C410-、C26NO42 -、C26NO62 -、C410NO42 -、CF3SO2 -、CF3SO3 -、C49SO2 -、C49SO3 -、C46NO42 -、C36NO3-、(CF3SO22-、及びCH3CH(OH)CO2 -からなる群から選択される少なくとも一つの負イオンを含む。
【0016】
前記有機溶媒の重量は、前記イオン性液体の重量に対して1.0倍以上5.0倍以下であってもよい。
【0017】
前記有機材料精製組成物は、有機発光素子の発光層に含まれる有機材料を精製するものであってもよい。
【0018】
本発明の一実施例による混合組成物は、正イオンと負イオンが結合されたイオン性液体、及び有機溶媒を含む。前記有機溶媒は、アルコールまたはケトンである。前記アルコールの重量は、前記イオン性液体の重量に対して1.0倍以上5.0倍以下である。
【0019】
本発明の一実施例による混合組成物は、16重量%以上50重量%以下の前記イオン性液体、及び、残量の前記有機溶媒を含むものであってもよい。
【0020】
前記混合組成物は、常温(具体的には25℃)で15cP(mPa・sec)以下の粘度を有してもよい。
【0021】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、精製しようとする有機材料を用意するステップと、前記有機材料をイオン性液体及び有機溶媒の混合溶液に混合するステップと、前記有機材料が混合された前記混合溶液を攪拌して前記有機材料を精製するステップと、前記精製された有機材料を分離するステップと、を含む。前記有機溶媒は、アルコールまたはケトンである。
【0022】
前記有機材料は、有機発光素子の発光層に含まれる導電性有機材料であってもよい。
【0023】
前記有機材料は、第1極性を有する第1有機材料と、前記第1極性とは異なる第2極性を有する第2有機材料とを含んでもよい。
【0024】
前記精製するステップにおいて、前記第1有機材料は前記混合溶液に溶解され、前記第2有機材料は前記混合溶液に溶解されないものであってもよい。
【0025】
前記分離するステップにおいて、前記第2有機材料がフィルタを介して分離されてもよい。
【0026】
前記有機材料及び前記混合溶液を混合するステップ及び前記精製するステップは、常温(例えば20~30℃)で行われてもよい。
【0027】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、前記精製された有機材料を分離するステップの後、前記分離された有機材料を洗浄及び乾燥するステップを更に含んでもよい。
【0028】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、前記精製された有機材料を分離するステップの後、前記有機材料が分離された前記混合溶液から前記イオン性液体を精製してリサイクルするステップを更に含んでもよい。
【0029】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、前記有機材料及び前記混合溶液を混合するステップの前に、前記有機溶媒と前記イオン性液体を混合してから攪拌して前記混合溶液を製造するステップを更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物によると、常温条件でも、有機材料精製組成物の粘度が低く、有機材料の精製が行われうる。
【0031】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法によると、工程時間とコストが減少され、高い純度で有機材料を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例による有機材料の精製方法に使用される有機材料精製装置を概略的に示すブロック図である。
図2】本発明の一実施例による有機材料の精製方法を順次に示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施例による有機材料の精製方法を順次に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上述した本発明の目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付した図面及び下記好ましい実施例を通じて容易に理解できるはずである。しかし、本発明はここで説明される実施例に限らず、他の形態に具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は開示された内容が徹底で完全なものになるように、そして通常の技術者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。
【0034】
各図面を説明しながら、類似した参照符号を類似した構成要素に対して使用している。添付した図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示している。第1、第2などの用語は多用な構成要素を説明するのに使用されるが、前記構成要素は前記用語に限らない。前記用語は一つの構造要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しないようにしつつ、第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に、第2構成要素も第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0035】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は明細書の上に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上」にあるとする場合、これは他の部分の「直上」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下」にあるとする場合、これは他の部分の「直下」にある場合だけでなく、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0036】
以下では、本発明の一実施例による混合組成物について説明する。
【0037】
本発明の一実施例による混合組成物は、有機材料を精製する組成物である。混合組成物は、有機発光素子に含まれる有機材料を精製する組成物であってもよい。混合組成物が精製する有機材料は、有機発光素子の正極と負極との間に配置される複数の有機層のうちいずれか一つに含まれるものであってもよい。より詳しくは、混合組成物は、有機発光素子の発光層に含まれる有機材料を精製する組成物であってもよい。以下では、説明の便宜上、本発明の一実施例による混合組成物のことを有機材料精製組成物と称する。
【0038】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物は、イオン性液体及び有機溶媒を含む。
【0039】
本明細書において、イオン性液体はイオンのみからなる液体を意味する。イオン性液体は、より大きい体積を有する正イオンと、より小さい体積を有する負イオから形成されている溶融塩(molten salt)であってもよい。
【0040】
イオン性液体は、アンモニウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム、ホスホニウム、及びスルホニウムからなる群から選択される少なくとも一つの正イオンを含んでもよい。
【0041】
イオン性液体に含まれる正イオンは、下記化学式1-1乃至1-7で表される。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
前記化学式1-1乃至1-7において、R1乃至R4は、それぞれ独立して水素原子、置換または非置換の炭素数2以上20以下のアルキル基であってもよい。R1乃至R4は、それぞれ独立して直鎖または側鎖を有するアルキル基であってもよい。好ましくは、R1乃至R4のうちいずれか一つが、炭素数12以上の直鎖を有するアルキル基であってもよい。R1乃至R4のうちいずれか一つが、炭素数12以上の直鎖を有すれば、イオン性液体は、低い温度でも粘度が低い液体状態であり得る。
【0046】
イオン性液体は、Cl-、Br-、NO3 -、BF4 -、PF6 -、AlCl4 -、Al2Cl7 -、AcO-、CH3COO-、CF3COO-、CH3SO3 -、CF3SO3 -、(CF3SO22-、(CF3SO23-、(CF3CF2SO22-、C49SO3 -、C37COO-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、C410-、C26NO42 -、C26NO62 -、C410NO42 -、CF3SO2 -、CF3SO3 -、C49SO2 -、C49SO3 -、C46NO42 -、C36NO3-、(CF3SO22-、及びCH3CH(OH)CO2 -からなる群から選択される少なくとも一つの負イオンを含む。
【0047】
イオン性液体は、精製対象の有機材料の特性に応じて、多様な正イオンと負イオンの組み合わせで形成されてもよい。詳しくは、本発明の一実施例による有機材料精製組成物において、イオン性液体はイミダゾリウムの正イオンを含んでもよい。イオン性液体は、ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(TFSI)の負イオンを含んでもよい。より詳しくは、イオン性液体は、下記化学式2で表されるものであってもよい。
【0048】
[化学式2]
【0049】
イオン性液体は、相対的に大きい体積の正イオンと相対的に小さい体積の負イオンが結合した構造を有し、低い融点を有し、蒸気圧が低いため、広い温度範囲で安定した液体で存在し得る。イオン性液体は、熱的安定性及びイオン伝送性が高く、親水性及び疎水性の有機物、無機物、及び高分子物質に対する溶解度が高いため、有機材料を溶解する物資として利用され得る。また、イオン性液体は揮発性が低く、難燃性を有し、爆発性も低いため、一般有機溶媒に比べ環境に優しい物質である。
【0050】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物において、イオン性液体は、有機材料を精製するための主要溶解物質である。より詳しくは、互いに異なる極性を有する複数の有機材料を含む有機材料混合物に対し、イオン性液体は複数の有機材料間の溶解度の差を介して有機材料それぞれを分離し精製するものであってもよい。
【0051】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物において、有機溶媒は、有機材料精製組成物の粘度を調節し得る。本発明の一実施例による有機材料精製組成物において、有機溶媒は混合組成物の溶媒であってもよい。
【0052】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物において、有機溶媒は、イオン性液体の重量より大きいか同じ重量を有する。本発明の一実施例による有機材料精製組成物において、有機溶媒の重量は、イオン性液体の重量対比1.0以上、約5.0以下であってもよい。有機材料精製組成物は、約16重量%以上約50重量%以下のイオン性液体と、残量の有機溶媒を含むものであってもよい。つまり、本発明の一実施例による有機材料組成物は、イオン性液体と、イオン性液体の重量より大きいか同じ重量を有する有機溶媒からなるものであってもよい。
【0053】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物において、有機溶媒はアルコールまたはケトンである。ケトンは、アセトンであってもよい。アルコールは、炭素数1以上20以下のアルキル鎖を含んでもよい。アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、及びブタノールからなる群から選択される少なくとも一つを含んでもよい。プロパノールは、n-プロパノールまたはイソプロパノールであってもよい。好ましくは、アルコールはエタノールであってもよい。
【0054】
本発明の一実施例による有機材料精製組成物では、アルコールまたはケトンなどの有機溶媒が含まれて、有機材料精製組成物の粘度が低い。本発明の一実施例による有機材料精製組成物では、常温で高い粘度を有するイオン性液体を含むが、常温で粘度が低い有機溶媒が含まれて、有機材料精製組成物の粘度が約15cP以下である。
【0055】
本明細書において、常温とは、具体的には、約20℃以上約25℃以下の温度を意味する。本発明の一実施例による有機材料精製組成物では、約16重量%以上約50重量%以下のイオン性液体と、残量の有機溶媒を含むことで、上温で約15cP以下の低い粘度を有する。有機材料精製組成物において、イオン性液体が50重量%を超えて含有される場合、常温で有機材料精製組成物の粘度が高くなって有機材料の精製が行われない恐れがあり、精製工程の後、粘度が高いイオン性液体をリサイクルできない恐れがある。有機材料精製組成物において、イオン性液体が16重量%未満に含有される場合、有機材料の精製効率が減少して十分な精製が行われない恐れがある。
【0056】
以下では、本発明の一実施例による有機材料の精製方法について説明する。
【0057】
図1は、本発明の一実施例による有機材料の精製方法に使用される有機材料精製装置10を概略的に示すブロック図である。図2は、本発明の一実施例による有機材料の精製方法を順次に示す断面図である。図3は、本発明の一実施例による有機材料の精製方法を順次に示す断面図である。以下では、図1乃至図3を参照して、本発明の一実施例による有機材料の精製方法について説明する。
【0058】
図1乃至図2を参照すると、本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、有機材料を用意するステップS100と、有機材料をイオン性液体及び有機溶媒混合溶液に混合するステップS200と、有機材料が混合された前記混合溶液を攪拌して有機材料を精製するステップS300と、精製された有機材料を分離するステップS400と、を含む。図3を参照すると、本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、有機材料及び前記混合溶液を混合するステップS200の前に、有機溶媒とイオン性液体を混合して混合溶液を製造するステップS110を更に含んでもよい。図3を参照すると、本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、精製された有機材料を分離するステップS400の後に、有機材料を洗浄及び乾燥するステップS510と、有機材料が分離されたイオン性液体を精製してリサイクルするステップS520と、を更に含んでもよい。
【0059】
本発明の精製方法において、精製対象の有機材料は伝導性有機材料であってもよい。有機材料は、有機発光素子の有機層に含まれる非晶質有機物質であってもよい。有機発光素子は、アノードとカソードの間に配置された複数の有機層を含み、本発明の一実施例による有機材料の精製方法を通じて、複数の有機層のうちの少なくともいずれか一つの層に含まれる有機材料を精製するものであってもよい。詳しくは、複数の有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含んでもよく、有機材料は発光層に含まれる物質であってもよい。有機材料は、発光層に含まれるホスト物質とドーパント物質が混合された混合物であってもよい。
【0060】
有機材料は、極性が互いに異なる複数の物質が混合された混合物であってもよい。有機材料は、第1極性を有する第1有機材料と、第1極性とは異なる第2極性を有する第2有機材料とを含んでもよい。第1極性は第2極性より大きい値を有する。第1極性は第2極性より約2.0D(debye)以上大きい値を有しうる。第1有機材料は第2有機材料に比べ極性が大きいドーパント物質であり、第2有機材料は相対的に極性が小さいホスト物質でありうる。
【0061】
有機材料を用意するステップS100は、有機発光素子の製造に使用された有機材料のうち、有機発光素子に蒸着されなかった物質を回収するステップを含んでもよい。有機材料供給槽300は、有機発光素子の形成に使用される蒸着装置であってもよい。
【0062】
有機発光素子の形成工程において、蒸着工程を通じて、有機物質を基板の上に順次に積層して、複数の有機層を形成する。この際、基板の上に蒸着される有機材料以外に、蒸着装置の内部に付着する有機材料が存在するが、有機材料を用意するステップS100では、蒸着装置の内部に付着した有機材料を回収するステップを含んでもよい。詳しくは、有機材料を用意するステップS100は、有機発光素子の発光層を蒸着するステップにおいて、有機発光素子に蒸着されずに蒸着装置の内面に付着しているホスト物質及びドーパント物質の混合物を回収するステップであってもよい。有機材料を用意するステップS100は、後の精製ステップのために、回収された有機材料を粉砕するステップを含んでもよい。
【0063】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、溶媒供給槽110からアルコールまたはケトンなどの有機溶媒が供給され、イオン性液体供給槽120からイオン性液体が供給されて、混合溶液を製造するステップS110を含んでもよい。
【0064】
混合溶液は、上述したイオン性液体及び有機溶媒が混合された有機材料精製組成物であってもよい。混合溶液を製造するステップS110では、イオン性液体と有機溶媒を同じチャンバーまたは容器に入れ、所定時間攪拌して混合溶液を製造するものであってもよい。混合溶液を製造するステップS110は、常温(例えば20~25℃、特には25℃)の条件で行われてもよい。混合溶液を製造するステップS110は、マグネチックスターラーや、回転羽根式または超音波式の攪拌器(Stirrer)などにより、イオン性液体と有機溶媒を同じチャンバーまたは容器に入れて約5分間攪拌し、イオン性液体と有機溶媒が均一に混合されるステップを含んでもよい。
【0065】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法では、有機材料供給槽300から未精製の有機材料が供給され、混合溶供給槽130から、先に製造された混合溶液が供給されて、有機材料と混合溶液が混合される(S200)。有機材料及び混合溶液は、混合槽200で混合された後、攪拌槽420に移動し、攪拌により、混合溶液に混合された有機材料が精製される(S300)。攪拌槽420では攪拌器などの攪拌手段410を利用して、有機材料及び混合溶液を均一に混合させることができる。
【0066】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法では、混合ステップS200及び攪拌ステップS300を経ることで、混合溶液に溶解された有機材料が精製される。本発明では、精製対象物質の有機材料が、極性が互いに異なる複数の物質が混合された混合物であってもよい。詳しくは、本発明では有機材料が第1極性を有する第1有機材料と、第1極性に比べて小さい第2極性を有する、第2有機材料をと含んでもよく、混合ステップS200及び攪拌ステップS300では、相対的に極性が大きい第1有機材料のみが混合溶液に溶解される。混合溶液に溶解されていない第2有機材料は、後で行われる分離ステップS400で、フィルタなどを通じて分離されてもよい。
【0067】
混合ステップS200及び攪拌ステップS300は、連続的に行われる工程ステップであってもよい。混合ステップS200及び攪拌ステップS300は、常温(特には25℃)で行われてもよい。混合ステップS200及び攪拌ステップS300は、連続工程により、混合槽200で混合された溶液を、攪拌槽420にて攪拌手段410によって約30分間攪拌することで行われてもよい。
【0068】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法では、攪拌槽420にて混合及び攪拌を通じて有機材料が精製された後、精製された有機材料を含む混合溶液が分離槽500に移動し、混合溶液から、精製された有機材料が分離される(S400)。
【0069】
分離槽500では、加圧フィルタなどを通じて、イオン性液体及び有機溶媒の混合溶液と、精製された有機材料が分離される。精製された有機材料とは、極性の異なる第1有機材料及び第2有機材料に対して、混合溶液に溶解されていない第2有機材料を意味する。相対的に極性が大きい第1有機材料は、混合溶液に溶解されて加圧フィルタを通過し、相対的に極性が小さい第2有機材料は加圧フィルタによってろ過されて分離され、フィルタから回収されうる。分離ステップS400は約10分間行われうる。
【0070】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、分離槽500から分離された有機材料を洗浄し乾燥するステップS510を更に含んでもよい。
【0071】
分離槽500から分離された有機材料は、洗浄槽610に移送されて洗浄される。
【0072】
洗浄槽610では、分離された有機材料に一部含まれた、イオン性液体及び有機溶媒などといった、混合溶液とは異なる他の不純物を洗浄して除去する。洗浄ステップでは、洗浄液投入槽630から供給された洗浄液を通じて洗浄される。洗浄ステップでは、洗浄液に有機材料を混合し、約1分間超音波処理した後、約5分間攪拌する工程で行われうる。洗浄液はアルコールまたはケトンを含んでもよく、より詳しくは、エタノールまたはアセトンを含んでもよい。洗浄液は、洗浄ステップの後、洗浄液精製槽620に回収されてから精製され、洗浄液投入槽630に再移送されてリサイクルされてもよい。
【0073】
洗浄された有機材料は、乾燥槽640に移動されて乾燥される。乾燥槽640に移動された有機材料は、大気圧下で1次乾燥されてから、真空下で2次乾燥されてもよい。乾燥ステップは約100℃で行われるが、1次乾燥ステップは約30分間、2次乾燥ステップは約60分間行われてもよい。有機材料は、乾燥されることで最終精製された有機材料800となる。
【0074】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法は、分離槽500にてフィルタを通過したイオン性液体及び有機溶媒の混合溶液から、イオン性液体を分離してリサイクルするS520を更に含んでもよい。
【0075】
分離槽500のフィルタを通過した混合溶液は、イオン性液体精製槽700に移動し、イオン性液体を精製する工程を行ってもよい。詳しくは、有機材料のうち、分離槽500にてフィルタによってろ過されていない第2有機材料を分離し、混合溶液に含まれた有機溶媒を蒸発させることで、イオン性液体を精製してもよい。精製されたイオン性液体は、イオン性液体供給槽120に再循環され、有機材料の精製に再度利用されてもよい。
【0076】
イオン性液体は、その構造的特性により、極性が互いに異なる物質の溶解度を調節することができるため、極性が互いに異なる複数の物質を含む有機材料についての精製方法に、イオン性液体が使用されてもよい。但し、イオン性液体は、常温で高い粘度を有するため、高い工程温度が要求される。また、粘度が高いイオン性液体に精製対象物質の有機材料が高い濃度で混合される際、イオン性液体-有機材料混合液の粘度が過度に高くなって攪拌が行われず、それによって有機材料がイオン性液体に溶解されなくなることで、有機材料の精製が行われない恐れがある。
【0077】
また、イオン性液体を単独に使用した有機材料精製方法では、極性が互いに異なる複数の物質がイオン性液体に全て溶解された後、温度または圧力などを変化させて再結晶させる方式によるが、この場合、温度または圧力の変化が要求されるため、工程時間が長くなり、工程条件の変更のために追加的な処理が要求されるため、精製工程にて発生するコストが増える恐れがある。
【0078】
本発明の一実施例による有機材料の精製方法では、有機材料を精製するための精製組成物として、イオン性液体にアルコールまたはケトンなどの有機溶媒が混合された混合組成物を利用する。それによって、生成用組成物の粘度が低くなり、常温範囲でも有機材料の精製が行われることができる。また、精製用組成物の粘度が低く、高い濃度の精製対象の有機材料が混合されても有機材料が溶解されうるため、有機材料の精製が行われうる。本発明の一実施例による有機材料の精製方法では、精製用組成物の粘度が低いため分離ステップで高い圧力のフィルタが要求されず、簡単なフィルタで有機材料を分離することができる。本発明の一実施例による有機材料の精製方法では、精製用組成物の粘度が低いため、分離ステップの後でイオン性液体及び有機溶媒の混合溶液の回収が容易であって、イオン性液体をリサイクルすることができる。
【0079】
また、イオン性液体を単独に使用した有機材料精製方法とは異なって、イオン性液体に有機溶媒が混合された混合組成物を使用した精製方法では、極性が互いに異なる両物質の溶解度の差を利用して、相対的に極性が大きい物質は溶解させ、極性が小さい物質は溶解させない方法を通じて有機材料の精製が行われる。このような精製方式を通じて、本発明の一実施例による有機材料の精製方法では、有機材料を精製するステップで、温度や圧力の変化が要求されず、工程時間及び工程コストを減らすことができる。
【0080】
以下では、本発明の一実施例による有機材料精製組成物及びその精製方法について、実施例を通じて詳しく説明する。
【0081】
(有機材料精製用組成物の製造及び特性の評価)
本発明の実施例1乃至3による有機材料精製用組成物と、比較例1による有機材料精製用組成物を下記表1のように製造し、実施例1乃至3と比較例1の粘度を測定して示した。表1において、成分の含量を示す単位はmgであり、粘度を示す単位はcP(mPa・s)である。粘度は25℃での測定値を示す。測定は、16mLのサンプルを用意し、NIPPON S.T. JOHNSON SALES CO., LTD.のブルックフィールド粘度計「LVT」に、「ブルックフィールド UL(低粘度)アダプター」及び循環水ジャケットを取り付けて行った。
【0082】
【表1】
【0083】
表1において、イオン性液体としては下記化学式2で表される化合物を利用し、アルコールとしてはエタノールを利用した。
【0084】
[化学式2]
【0085】
表1を参照すると、比較例1のようにイオン性液体のみを含む有機材料精製用組成物では、イオン性液体の特性上、常温で非常に高い粘度を有することが分かる。しかし、本発明ではイオン性液体とアルコールの混合物を有機材料精製用組成物として利用することで、粘度が低い精製用組成物を提供することができる。より詳しくは、表1を参照すると、実施例1乃至3の有機材料精製用組成物では、イオン性液体より大きいかまたは同じ重量のアルコールを含むことで、15cP以下の低い粘度を有することができる。
【0086】
(有機材料精製用組成物の実施例1-有機材料精製用組成物の精製能力の評価)
本発明の有機材料の精製方法により、有機材料に対する精製を行った後、精製回収率及び精製済み材料の純度などを評価した。
【0087】
実験例において、イオン性液体としては前記化学式2で表される化合物を利用し、溶媒としてはエタノールを利用した。精製対象物質としては、下記化学式3で表される化合物(ホスト材料)、及び化学式4で表される化合物(ドーパント材料)が混合された物質を使用した。
【0088】
[化学式3]
【0089】
[化学式4]
【0090】
有機材料の精製は、下記表2に記載の含量を有するイオン性液体-アルコール混合組成物に対して、表2に記載の工程条件により行われた。詳しくは、イオン性液体-アルコール混合組成物に精製対象の有機材料を混合して所定時間攪拌し、加圧フィルタにより混合組成物に溶解されない有機材料を、ろ過して取り除いた後、洗浄及び乾燥を行うことで最終精製化合物を回収した。混合、攪拌、フィルタ、及び洗浄のステップは25℃で行われた。ろ過のための分離フィルタとしては、0.5μmの空隙を有するフィルタが使用された。洗浄は、エタノールを洗浄液にして行われた。乾燥は、100℃の条件にて大気圧下で30分間乾燥した後、真空下で60分間、さらに乾燥することで行った。
【0091】
表2において、時間は、有機材料とイオン性液体-アルコール混合組成物を混合した後、攪拌した時間を示す。表2において、精製回収率は、精製前の有機材料の重量に対する、精製後の有機材料の重量の比を示す。表2において、材料の純度は、精製工程の後、回収した最終精製化合物のうちの、化学式3で表される有機材料の濃度を測定した値である。表2において、有機材料、イオン性液体、及びアルコールの含量を示す単位はmgで、時間を示す単位は分で、精製回収率及び材料の純度を示す単位は%である。
【0092】
【表2】
【0093】
表2の結果を参照すると、本発明の実験例による有機材料の精製方法では、低温条件でも高い純度で有機材料を分離し得ることが分かる。より詳しくは、本発明の実験例による有機材料精製方法では、粘度が低いイオン性液体-アルコール混合組成物を利用し、極性の異なる両物質の溶解度の差を利用して分離及び精製を行って、常温(25℃)条件でも90分以下の短い攪拌時間内で、極性の異なる両物質を分離することができる。特に、表2の実験例10乃至実験例17の結果を参照すると、イオン性液体に比べ精製対象の有機材料が高い濃度で混合されても、高い精製回収率で高純度の材料を精製し得ることが分かる。
【0094】
本発明の実験例による有機材料の精製方法では、有機材料を精製するための精製組成物として、イオン性液体にアルコールが混合された混合組成物を利用した。詳しくは、イオン性液体の重量に対するアルコールの重量比が1:1乃至1:5になるように混合された混合組成物を通じて有機材料の精製を行った。それによって、精製用組成物の粘度が低くなり、常温範囲で有機材料の精製が行われ得ることが分かる。また、乾燥ステップを除いた工程全般にわたって、温度などの工程条件を変更しなくてもよく、工程時間も90分以内に短縮され得ることが分かる。
【0095】
(有機材料精製用組成物の実施例2-有機材料精製用組成物の精製能力の評価)
本発明の有機材用の精製方法を介し、有機材料に対する精製を行った後、精製回収率及び精製済み材料の純度などを評価した。
【0096】
実験例において、イオン性液体としては前記化学式2で表される化合物を利用し、溶媒としてはエタノールまたはアセトンを利用した。精製対象物質は、ホスト材料のGRH46とドーパント材料のGD976が混合された物質を使用した。
【0097】
有機材料の精製は、下記表3に記載の含量を有するイオン性液体-有機溶媒混合組成物に対して、表3に記載の工程条件を介して行われた。詳しくは、イオン性液体-有機溶媒混合組成物に精製対象の有機材料を混合して所定時間攪拌し、加圧フィルタを通じて、混合組成物に溶解されない有機材料を分離した後、洗浄及び乾燥して最終精製化合物を回収した。混合、攪拌、フィルタ、及び洗浄ステップは25℃で行われた。分離フィルタとしては、0.5μmの空隙を有するフィルタが使用された。洗浄は、エタノールまたはアセトンを洗浄液にして行われた。乾燥は、100℃の条件で大気圧下にて30分間乾燥した後、真空下で60分間乾燥した。
【0098】
表3において、時間は有機材料とイオン性液体-有機溶媒混合組成物を混合した後、攪拌した時間を示す。表3において、温度はイオン性液体-有機溶媒混合組成物を混合及び攪拌する際の工程温度を示す。表3において、精製回収率は、精製前の有機材料の重量に対する精製後の有機材料の重量の比として示す。表3において、材料の純度は、精製工程の後、回収した最終精製化合物のうちの、ホスト材料の濃度を測定した値である。
【0099】
表3において、有機材料、イオン性液体、及び有機溶媒の含量を示す単位はmgで、時間を示す単位は分で、温度を示す単位は℃で、精製回収率及び材料の純度を示す単位は%である。
【0100】
【表3】
【0101】
表3の結果を参照すると、本発明の実験例による有機材料の精製方法では、低温条件でも高い純度で有機材料を分離し得ることが分かる。より詳しくは、本発明の実験例による有機材料精製方法では、粘度が低いイオン性液体-有機溶媒混合組成物を利用し、極性の異なる両物質の溶解度の差を利用して分離及び精製を行うことで、常温(25℃)条件でも360分以下の短い攪拌時間内に、極性の異なる両物質を分離することができる。比較実験例1及び2の結果を参照すると、有機溶媒が混合されずにイオン液体のみで精製する際、実験例の水準にまで精製対象物質を分離及び精製するためには、24時間以上の長い工程時間が要求されるか、または100℃以上の高い温度が要求されることが示された。
【0102】
また、表3の実験例25乃至実験例31の結果を参照すると、特定のホスト材料及びドーパント材料を分離する工程において、有機溶媒としてエタノールではなくアセトンを使用した際も、エタノールを使用した際に比べ、類似するか、より高い精製回収率を示すことが分かる。
【0103】
本発明の実験例による有機材料の精製方法では、有機材料を精製するための精製組成物として、イオン性液体にエタノールまたはアセトンなどの有機溶媒が混合された混合組成物を利用した。それによって、精製用組成物の粘度が低くなり、常温範囲で有機材料の精製が行われ得ることが分かる。また、乾燥ステップを除いた工程全般にわたって、温度などの工程条件を変更しなくてもよく、工程時間も90分以内に短縮され得ることが分かる。
【0104】
これまで本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する特許請求の範囲に記載された本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載されている内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【0105】
好ましい一実施形態においては、次のとおりである。
【0106】
表示パネルの有機発光層のパターンを形成するにあたり、蒸着チャンバーの内壁面やマスクなどに付着した導電性材料などの有機材料を回収して、再度利用すべきである。
そのために、付着していた有機材料を集めてから精製して高純度の有機材料を回収する工程が必要となる。
この精製は、効率よく低コストで行えるのが望ましい。
【0107】
そこで、下記A~Bのとおりとし、特には、下記B1~B3のとおりとする。
【0108】
A 化学式1-1~1-7から任意に選択される陽イオンと、適当な陰イオンとからなるイオン性液体を用いる。
この際、陽イオン及び陰イオンの選択により、イオン性液体の極性を適当な値に設定する。そして、イオン性液体の極性に基づく溶解性の違いにより、精製前の有機材料から、目的とする材料と、不純物または第2の有機材料を分離することができる。
【0109】
B イオン性液体に、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、iso-ブタノール、tert-ブタノール及びアセトンから任意に選択される有機溶媒を加える。
【0110】
B1 得られた混合溶液の25℃での粘度が15mPa・sec以下となるように、例えば、イオン性液体の1~5倍の重量の有機溶媒を加えるか、または、イオン性液体と有機溶媒との混合溶液中のイオン性液体の含量が、16~50重量%となるようにする。
【0111】
B2 上記のイオン性液体と、上記の有機溶媒との混合溶液に、未精製の有機材料の粉末を加えて、攪拌する。そして、溶解しなかった部分を、ろ過により除去する。
このろ過のためには、例えば、ガラス繊維やセラミック繊維からなるフィルタを用いることができる。
【0112】
B3 この混合・攪拌及びろ過の操作は、全て、常温(例えば15~30℃または20~30℃、特には20~25℃)で行う。
【符号の説明】
【0113】
S100:有機材料を用意するステップ
S200:混合ステップ
S300:攪拌及び精製するステップ
S400:有機材料を分離するステップ
図1
図2
図3