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特許7374593インクジェット印刷機における欠陥印刷ノズルを補償する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】インクジェット印刷機における欠陥印刷ノズルを補償する方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
B41J2/01 205
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019026561
(22)【出願日】2019-02-18
(65)【公開番号】P2019142222
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】10 2018 202 467.7
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アクセル ハウク
(72)【発明者】
【氏名】マーティン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】イリアス トラハナス
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144549(JP,A)
【文献】特開2005-096443(JP,A)
【文献】特開2006-076086(JP,A)
【文献】特開2015-174394(JP,A)
【文献】特開2015-054453(JP,A)
【文献】特開2011-126208(JP,A)
【文献】特開2016-094004(JP,A)
【文献】特開2012-045831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0032438(US,A1)
【文献】特開2006-205718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷機(7)における欠陥印刷ノズル(11)を計算機(6、19)によって補償する方法であって、欠陥印刷ノズル(11)を、隣り合う複数の印刷ノズル(13)のインク液滴体積を増大させることによって補償し、所定の印刷ノズルの印刷点の実際位置を算出し、それぞれの印刷ノズルに対し、印刷ノズルの故障を補償するため、それぞれ隣り合う印刷ノズル(13)の必要なインク液滴体積を、それぞれ隣り合う前記印刷ノズルの前記印刷点の前記実際位置に依存して計算する、方法において、
それぞれ隣り合う前記印刷ノズル(13)の増大されたインク液滴体積に加えて、それぞれ1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の減少されたインク液滴体積を計算し、それぞれの前記印刷ノズルの印刷点に依存して、所定の印刷ノズルのインク液滴体積を計算し、
前記隣り合う印刷ノズル(13)は、前記欠陥印刷ノズル(11)と隣り合う印刷ノズルであり、
前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)は、前記欠陥印刷ノズル(11)との間に前記隣り合う印刷ノズル(13)を挟んで隣り合う印刷ノズルであり、
最初に、前記隣り合う印刷ノズル(13)もしくは前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の最適な印刷点に基づき、前記増大されたインク液滴体積および前記減少されたインク液滴体積に対する値を計算し、
次に、前記隣り合う印刷ノズル(13)もしくは前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の実際の印刷点と前記最適な印刷点との相違(Δx)と、前記隣り合う印刷ノズル(13)もしくは前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の標準補償の強さ(KF std )または標準ダイリューションの強さ(DF std )と適用される補償の強さまたはダイリューションの強さとの相違(ΔKF、ΔDF)と、を算出し、
次に、算出した前記相違(Δx、ΔKF、ΔDF)を使用することにより、前記増大されたインク液滴体積および前記減少されたインク液滴体積に対する実際値を計算することにより、
それぞれ隣り合う前記印刷ノズル(13)もしくは前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の前記増大されたインク液滴体積および前記減少されたインク液滴体積の計算を前記計算機(6、19)によって行う、ことを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記相違の前記算出を、インクジェット検査台上での測定によって、またはシミュレーションによって行う、ことを特徴とする、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記相違を特性曲線の形態で表し、使用時に前記計算機(6、19)により、補間によって計算する、ことを特徴とする、
請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
それぞれ隣り合う前記印刷ノズル(13)もしくは前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の前記増大されたインク液滴体積および前記減少されたインク液滴体積の、前記計算機(6、19)による計算に対し、隣り合う前記印刷ノズル(13)もしくは前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の実際の印刷点間の相互作用を考慮する、ことを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
それぞれ隣り合う前記印刷ノズル(13)もしくは前記1つおいて隣り合う印刷ノズル(14)の前記増大されたインク液滴体積および前記減少されたインク液滴体積の、前記計算機(6、19)による前記計算を、さらに離れて隣り合う印刷ノズルの印刷点に対しても行い、前記印刷点にも基づいて行う、ことを特徴とする、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が取り扱っているのは、インクジェット印刷機における欠陥印刷ノズルを補償する方法である。
【0002】
本発明の技術分野は、デジタル印刷である。
【背景技術】
【0003】
一般にインクジェット印刷機は、1つまたは複数の印刷ヘッドを有し、各印刷ヘッドは複数の印刷ノズルを有する。インクジェット印刷機では、印刷のため、ノズルが使用され、インクが吐出される。印刷機は、個別ノズルが特別に配置されたノズルプレートを有する。「ミッシングノズル」とも称される個々の印刷ノズルの故障時には、個別色分解において、専用に設けられたノズルによって描画できない領域が発生する。したがって、「白すじ」として現れ得る色のない個所が発生する。多色印刷の場合、この個所では、対応する色が欠落し、色値が歪められる。個別ノズルの噴出経過は、理想的には経過せず、多かれ少なかれここからずれ得ることにも注意すべきであり、さらに噴出される点の大きさも考慮すべきである。過度に大きくずれて印刷する印刷ノズルは、そのあらかじめ設定された点に印刷を行わないために「白すじ」を生じさせ、またノズルが誤って印刷した点における、いわゆる「黒すじ」において顕著になるインクの転写も生じさせ得る。通例、過度に大きくずれて、すなわち誤った位置に噴出する印刷ノズルは遮断され、「ミッシングノズル」として補償される。したがって誤動作するノズルは、これが印刷結果に影響する場合、印刷されるすべての文書の印刷品質に打撃を与える。個別ノズルの故障する原因はさまざまであり、故障は一時的な場合も持続的な場合もあり得る。
【0004】
特にベタ面における印刷画像への影響を低減するため、従来技術からは、補償のための複数のアプローチが公知である。
【0005】
故障した印刷ノズルを補償するための公知の一アプローチは、故障した印刷ノズルを、同じ個所のそれぞれ別に利用される印刷色のノズルによって置き換えることである。これについての例は、独国特許出願公開第102014219965号明細書(DE 10 2014 219 965 A1)に開示されている。ここでは、欠落した印刷色に可能な限りに近いまだ利用可能なインクを所期のように制御して重ねて印刷することが試みられる。これにより、印刷ノズルまたは印刷ヘッドを冗長に設ける必要はなく、また隣り合う印刷ノズルの故障も問題にならなくなる。しかしながらこの補償方法の大きな欠点は、これが多色印刷だけにしか使用できないことである。さらに、必要な色の組み合わせを算出するため、印刷機の計算機による多大な計算および制御が要求される。さらに(残った色の依然として印刷可能な色空間と、欠落した色との色距離に応じて)得られる印刷結果は、目標値からかなり大きくずれてしまうことがある。
【0006】
故障した印刷ノズルを補償する別のアプローチでは、冗長性によって個別ノズルの故障を補償できるようにするため、同じ色の二重のノズルユニットが設けられる。このような方式の例は、米国特許出願公開第2006/0256157号明細書(US 20060256157 A1)および米国特許出願公開第2006/0268034号明細書(US 20060268034 A1)から公知である。これは、確かに効果的であるが、対応してコストもかかり、付加的な設置スペースが必要であり、二重のユニットの複雑な制御のような別の問題を伴う。
【0007】
別の公知のアプローチは、別の複数の系からの印刷ノズルを介して補償を行うことである。すなわち、複数の位置決め可能な印刷ヘッドが、画像の印刷に利用される。印刷ノズルが故障すると、故障したノズルを可能な限りに良好に置き換えるため、印刷ヘッドが新たに位置決めされる。米国特許出願公開第2012/0075373号明細書(US 20120075373 A1)および米国特許第7607752号明細書(US 7607752 B2)には、このアプローチを実現する方法が開示されている。ここでも、実際上、同じ色の印刷ヘッドの冗長性が必要であり、これにより、すでに述べた問題を伴っている。
【0008】
しかしながら本発明も取り組んでいる最も重要な公知のアプローチでは、同じ色の隣り合う印刷ノズルおよび同じインクジェットユニットによって欠陥を補うことが規定される。すなわち、いずれの個別ノズルが問題になっているかを確定した後、個別の故障したインクジェット印刷ノズルを補償するため、隣り合うノズルを駆動制御し、これにより、これらのノズルの点サイズを拡大し、これにより、故障したノズルの個所が一緒に覆われるようにする。これにより、隣り合うノズルが、故障したノズルの画像を一緒に書き込む。このようにして、欠陥のある個別ノズルによって発生する「白すじ」を阻止することができる。米国特許出願公開第2006/0125850号明細書(US 20060125850 A1)には、この原理にしたがって動作する方法および印刷機が記載されている。しかしながらこの方法は、印刷画像に作用を及ぼし、特に、直に隣り合う複数のノズルが故障した場合には問題が生じる。2倍または複数倍の間隔を上回る補償は、不十分にしかできない。
【0009】
このアプローチの別の実施は、欧州特許第1157840号明細書(EP 1157840 B1)から公知である。ここでは、欠陥印刷ノズルに関連している画像値は、欠陥のない印刷ノズルに関連しておりかつ欠陥のある印刷ノズルの直ぐ横にありかつ欠陥印刷ノズルと同じ色を有する1つまたは複数の画像値に再分配される。しかしながらここでも、直に隣り合う複数のノズルが故障した場合には問題が生じる。
【0010】
基本的に発生する問題であって、このアプローチにおいて特に目につく問題は、個々の印刷ノズルの印刷点の実際にずれる位置である。ここで印刷点とは、インク液滴によって形成される色の付いた円のことである。印刷ノズルの印刷点の、その円の中心点において測定した位置は、実際のところ、隣り合う印刷ノズルの印刷点とつねに同じ距離にない。これらの位置は、製造に起因して、または部分的な詰まりにより、印刷方向に対して横方向にまたは縦方向にも多かれ少なかれずれている。これにより、隣り合う印刷ノズルのインク液滴体積を増大させることによって、故障した印刷ノズルを補償するアプローチにおいて、隣り合う印刷ノズルの1つまたは2つの印刷点のうちの1つが、故障した印刷ノズルから遠ざかるようにずれている場合、補償したのにもかかわらず、比較的わずかであったとしても「白すじ」が生じ得ることになる。これに対し、印刷点が、故障した印刷ノズルに向かってずれている場合、過補償になる。この場合には、対応する「ダークライン」が発生する。この問題を取り除くためには、すべての印刷ノズルの印刷点の実際位置を考慮しなければならないことになる。
【0011】
このために、従来技術からは、独国特許出願公開第102016203917号明細書(DE 10 2016 203 917 A1)が公知であり、そこでは、直に隣り合う補償ノズルのインク液滴体が、その印刷位置に依存して計算される。しかしながらこのアプローチの欠点は、直に隣り合う印刷ノズルしか考慮されないことである。しかしながら時間の経過と共に、最適な「ミッシングノズル」補償に対し、直に隣り合う印刷ノズルだけが、補償の強さ(補償強度)としても知られている、増大されたインク吐出量を供給しなければならないことだけではなく、さらに遠くに離れて隣り合う別の印刷ノズルも、過補償を回避するため、ダイリューション(希釈化)とも称される、対応して少量のインクを吐出すべきであることが公知になっている。さらに、隣り合う印刷ノズルのインク吐出量を増大させることによる補償の際に、別の隣り合う印刷ノズルの印刷位置および振幅、すなわち印刷強さも考慮されないことは不利であると判明している。というのはこれによって網点形成された印刷画像において障害が発生するためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の課題は、従来技術から公知の方法の欠点を克服する、欠陥印刷ノズルを補償する方法を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この課題は、インクジェット印刷機における故障した印刷ノズルを計算機によって補償する方法であって、故障した印刷ノズルを、隣り合う複数の印刷ノズルのインク液滴体積を増大させることによって補償し、すべての印刷ノズルの印刷点の実際位置を算出し、それぞれの印刷ノズルに対し、それらの故障を補償するため、それぞれ隣り合う印刷ノズルの必要なインク液滴体積を、それぞれ隣り合う印刷ノズルの印刷点の実際位置に依存して計算する、方法において、それぞれ隣り合う印刷ノズルの増大されたインク液滴体積に加えて、それぞれ1つおいて隣り合う印刷ノズルの減少されたインク液滴体積を計算し、それぞれの印刷ノズルの印刷点に依存して、全体のインク液滴体積を計算する、ことを特徴とする方法によって解決される。本発明による方法の核心は、必要なインク液滴体積の計算について、隣り合う印刷ノズルの実際の印刷点を考慮するのに加え、さらに離れて隣り合う印刷ノズル、すなわち1つおいて隣り合う印刷ノズルに対しても同じことを行うことである。この印刷ノズルは、直に隣り合う印刷ノズルの増大されたインク吐出量を部分的に補償し、これによって過補償を回避するため、減少されたインク液滴体積で印刷を行う。これに対しても、すなわち1つおいて隣り合う印刷ノズルに対して、それらのそれぞれ実際の印刷点に依存して、減少されたインク液滴体積を計算する。これにより、補償によってより良好な結果が得られる。というのは、該当する印刷ノズルの計算されかつ変更されたインク液滴体積は、実際の状況に正確に適合されるからである。
【0014】
本発明の有利な、したがって好適な発展形態は、対応する従属請求項ならびに以下の説明および対応する図面から明らかになる。
【0015】
本発明による方法の有利な一発展形態では、最初に、隣り合う印刷ノズルもしくは1つおいて隣り合う印刷ノズルの最適な印刷点に基づき、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積に対する値を計算し、次に、これらの値に基づき、隣り合う印刷ノズルもしくは1つおいて隣り合う印刷ノズルの実際の印刷点に対する、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積の依存度を算出し、次に、算出した依存度を使用することにより、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積に対する実際値を計算することにより、それぞれ隣り合う印刷ノズルもしくは1つおいて隣り合う印刷ノズルの増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積の計算を計算機によって行う。該当する隣り合う印刷ノズルのそれぞれ増大されたインク液滴体積および低減されたインク液滴体積に対する値を計算するため、またその際に計算のためにすべての印刷ノズルの実際の印刷点をそれぞれを取り入れるため、当然のことながらまず一度、増大されたインク液滴体積もしくは低減されたインク液滴体積に対する標準値を計算しなければならない。これは、実際にはじめから既知である、該当する印刷ノズルのそれぞれ最適な印刷位置に基づいて、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積に対する値を計算することによって行われる。次に、これらの値により、それぞれの実際の印刷位置に対する、増大されたインク液滴体積もしくは減少されたインク液滴体積の依存度を算出することができる。このような依存度は、例えば、増大されたインク液滴体積で印刷すべきである直に隣り合う印刷ノズルの実際の点が、故障した印刷ノズルの近くにある場合、増大されるインク液滴体積は、実際の印刷点が、さらに離れてそれぞれ1つおいて隣り合う別の印刷ノズルにあるときよりも、少なくなるはずである、という事実に関連する。この場合にはこの依存度を用いて、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積に対する実際値を計算することができる。
【0016】
本発明による方法の別の有利な一発展形態では、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積の、実際の印刷点に対する依存度の算出を、インクジェット検査台上での測定によって、またはシミュレーションによって行う。増大されたインク液滴体積もしくは減少されたインク液滴体積の、実際の印刷位置に対する依存度の算出には、当然のことながら暗黙的に実際の印刷位置の測定も含まれる。これは、インクジェット検査台上で実際に測定されるかまたはシミュレーションによって算出することも可能である。
【0017】
本発明による方法の別の有利な一発展形態では、それぞれ隣り合う印刷ノズルもしくは1つおいて隣り合う印刷ノズルの増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積の、計算機による計算を、付加的または代替的に、それぞれの印刷ノズルの印刷強さに対する、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積の依存度を算出および使用することによって行う。別の点は、実際の印刷点に対する、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積の依存度を算出するだけでなく、それぞれの印刷強さ、すなわちそれぞれの印刷ノズルの振幅に対する依存度も同様に算出することにある。この依存度は、実際の印刷点に対する依存度を使用するのに加えてまたはこれとは代替的に使用可能である。この付加的な使用により、改善された結果が得られるが、本発明による方法のコストも増大する。
【0018】
本発明による方法の別の有利な一発展形態では、増大されたインク液滴体積および低減されたインク液滴体積の、隣り合う印刷ノズルもしくは1つおいて隣り合う印刷ノズルの実際の印刷点に対する依存度を特性曲線の形態で表し、使用時に補間によって計算する。実際の印刷点に対する、インク液滴体積の依存度が一定でなく、これが、対応する位置のずれに依存する場合、これは、特性曲線を介して表すことが可能である。この場合に特性曲線の欠落している値は、使用時には相応に、補間によって計算しなければならない。
【0019】
本発明による方法の別の有利な一発展形態では、それぞれ隣り合う印刷ノズルもしくは1つおいて隣り合う印刷ノズルの増大されたインク液滴体積および低減されたインク液滴体積の、計算機による計算に対し、隣り合う印刷ノズルもしくは1つおいて隣り合う印刷ノズルの実際の印刷点間の相互作用を考慮する。付加的には、変化したすべてのインク液滴体積の計算に対し、すなわち直に隣り合うインク液滴体積の計算に対しても、1つおいて隣り合うインク液滴体積の計算に対しても、場合によってはさらに離れて隣り合うインク液滴体積の計算に対しても、すべての実際の印刷点に依存して、上記の印刷ノズルを計算する。すなわち、例えば左側で直に隣り合うインク液滴体積の計算には、もしくは故障した印刷ノズルに対して左側で直に隣り合う対応する印刷ノズルの計算には、それそのものの実際の印刷点だけが含まれるのではなく、問題となる別の複数の隣り合う印刷ノズルの実際の印刷点もわずかに含まれる。この正確な調整により、例えば、インクジェット印刷機によって形成しようとしているすでに網目形成された印刷画像における障害を最小化することができる。
【0020】
本発明による方法の別の有利な一発展形態では、増大されたインク液滴体積および減少されたインク液滴体積の、計算機による計算を、さらに離れて隣り合う印刷ノズルの印刷点および/または印刷強さに対しても行い、印刷点および/または印刷強さにも基づいて行う。それぞれ隣り合う印刷ノズルおよびそれぞれ1つおいて隣り合う印刷ノズルという概念は、直に隣り合う2つの印刷ノズルおよびそれぞれ1つおいて隣り合う2つの印刷ノズルだけを意味すると解釈してはならず、これによって印刷ノズルからなるグループを意味することも可能である。したがって、例えば、それぞれ直に隣り合う複数の印刷ノズル、例えばはじめの3つが、増大されたインク液滴体積で印刷するのに対し、これらに直に続き、1つおいて隣り合う、例えば同様に3つの印刷ノズルからなる別のグループが、対応して低減されたインク液滴体積で印刷することが可能である。対応する方式に組み込まれる隣り合う印刷ノズルが多ければ多いほど、すなわち同程度に増大されたインク塗布の直に隣り合う印刷ノズル、同程度に低減された塗布の1つおいて隣り合う印刷ノズルが多ければ多いほど、本発明による補償方法はそれだけ正確になる。しかしながらこれに伴う欠点は、本発明による方法に対する、対応する計算コストも相応に増大することである。
【0021】
本発明それ自体および本発明の構成的または機能的に有利な発展形態を、以下、少なくとも1つの好適の実施例に基づき、対応する図面を参照して詳しく説明する。図面において、互いに対応する要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】枚葉紙インクジェット印刷機のシステムを略示する図である。
図2】図案化されて描画されたミッシングノズル欠陥を有する例示的な枚葉紙を示す図である。
図3】画像検出システムを備えた印刷機システムの例を示す図である。
図4】インク液滴体積の位置および計算の例を示す図である。
図5】本発明による方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適な一実施例の適用領域は、インクジェット印刷機7である。図1にはこのような印刷機7の基本的な構造の例が示されており、印刷機7は、印刷ヘッド5によって印刷が行われる印刷機構4へ印刷基体2を供給するフィーダ1からデリバリ3までによって構成されている。この例において印刷機は、制御計算機6によって制御される枚葉紙インクジェット印刷機7である。この印刷機7の動作時には、すでに説明したように、印刷機構4の印刷ヘッド5において個々の印刷ノズルが故障することがある。この場合、結果的に「白すじ」9もしくは多色印刷の場合には歪んだ色値が発生する。印刷画像8におけるこのような「白すじ」9の例は、図2に示されている。
【0024】
図3に、使用される印刷機システム15の例が示されている。印刷機システム15は、印刷機7それ自体の他、少なくとも1つの画像センサと印刷機7に組み込まれている少なくとも1つのカメラ16とを有する画像検出システム17から成る。少なくとも1つのカメラ16は、印刷機7によって形成された印刷画像8を撮影し、評価のため、計算機6、19にデータを送信する。この計算機6、19は、例えば1つまたは複数の特殊化された画像処理計算機19である専用の別個の計算機であってよく、または印刷機7の制御計算機6と同じであってもよい。さらに全過程は、作業フローシステム18によって制御される。作業フローシステム18は、ユーザ20をサポートする。すなわち状況に応じて、例えば、印刷ジョブの作業員または印刷機7それ自体における印刷工をサポートする。
【0025】
図5に、好適な一変形実施例における、本発明による方法の流れが略示されている。ここで提案される方法では、補償に関与する印刷ノズルの補償の強さ13およびダイリューション14の強さが、計算機6、19により、それらの印刷位置もしくは印刷点および/または振幅に依存して選択される。
【0026】
最初に、欠陥ノズルの検出の枠内で、所定の印刷ノズルテストパターン21のような制御要素の印刷および評価を介して、印刷ノズルの印刷位置、振幅および分散などのような、印刷ノズルの噴出特性が測定される。次に、このテストパターン21は、画像検出システム17によって検出されてデジタル化される。印刷して検出した印刷ノズルテストパターン22に基づき、欠陥のあるノズル11の遮断が決定され、さらにこれにより、説明した補償方法を適用するのに必要なすべてのデータが既知になる。
【0027】
第2ステップでは、標準補償の強さKFstdおよび標準ダイリューションの強さDFstdが算出される。すでに説明したように、直に隣り合うノズル13が増大(補償の強さ、補償が強化)されるのに対し、1つおいて隣り合うノズル14は減少(ダイリューション)される。このことは、例示的に、図4において模式的な概略図10の形態で示されている。ここでは、印刷ノズル4が遮断される。というのはこの印刷ノズルが「不良の噴出装置」であり、すなわち大きくはずれた印刷点を有するからである。この場合にこの欠陥印刷ノズル11の補償は、印刷ノズル3および5を介してKF>1で行われ、かつノズル2、6を介してDF<1のダイリューションで行われる。印刷ノズル5も同様に、ずれた印刷点12を有する印刷ノズルであるが、まだ印刷に使用することができ、そのため、このノズルはアクティブのままである。
【0028】
KFstdおよびDFstdの算出は、隣り合う印刷ノズル13、14の網点面積率、補償の強さ(KF3=KF5)およびダイリューションの強さ(DF2=DF6)を変化させ、人為的に遮断したノズルを用いて特別な印刷ノズルテストパターン21を印刷することによって行われる。これらのパラメタに対する最適な範囲もしくは最適な値の算出は、印刷画像8を視覚的に判定することによって行われ、しかも補償された欠陥印刷ノズル11が、印刷画像8において視覚的にもはや識別できないような形態で行われる。このようにして算出される値は、平均すれば、平均的な正しい印刷点23に対応する。
【0029】
次のステップでは、感度24の算出が行われ、すなわち、視覚的にはもはや視認できない補償13について、係数KFおよびKFならびにDFおよびDFの、印刷ノズルの印刷点23ΔX~ΔXに対する依存度axyが算出される。この算出は、インクジェット検査台においてまたはシミュレーションを介して行うことが可能である。ここで挙げた図4の例において、印刷ノズル4の補償13のため、感度14は次のようになる。すなわち、
22=ΔDF/ΔX23=ΔDF/ΔX25=ΔDF/ΔX
26=ΔDF/ΔX32=ΔKF/ΔX33=ΔKF/ΔX
34=ΔKF/ΔX36=ΔKF/ΔX52=ΔKF/ΔX
53=ΔKF/ΔX54=ΔKF/ΔX56=ΔKF/ΔX
62=ΔDF/ΔX63=ΔDF/ΔX65=ΔDF/ΔX
66=ΔDF/ΔX
である。
【0030】
次に、最後の方法ステップにおいて、欠陥印刷ノズル11の補償を行う。印刷ノズル2~6の印刷位置を測定することによって既知になった印刷ノズル位置もしくは印刷点の目標位置からのそれらのずれにより、印刷ノズル4を遮断した後、補償係数KFおよびKFならびにダイリューション係数DFおよびDFを計算して、使用することができる。これらの係数は、関与する印刷ノズルの印刷位置に対応しており、もはや標準の係数には対応しない。
DF=DFstd+a22×ΔX+a23×ΔX+a25×ΔX+a26×ΔX
KF=KFstd+a32×ΔX+a33×ΔX+a35×ΔX+a36×ΔX
… 等々。
【0031】
本発明による方法の利点は、遮断されたすべての欠陥印刷ノズル11が正しく補償され、「白すじ」9が残ることがなく、「ダークライン」がもはや生じないことにある。このことは、補償の際に依存度を算出するために計算コストもしくは所要メモリが増大するというような、場合によっては生じ得る欠点を埋め合わせて余りあるものである。
【0032】
別の有利な一変形実施例において、印刷ノズル2~6の振幅A(強さ)に対する依存度KF3,5およびDF2,6の算出ならびにこれらの組み合わせも同様に行うことができ、欠陥印刷ノズル11の補償の際に考慮することができる。
【0033】
別の解決のアプローチは、濃度補償と同様に、印刷点および/または振幅および/または分散を考慮して実行されるシグマ・デルタ方式を繰り返して適用することである。
【0034】
別の有利な変形実施例に含まれるのは、以下である。すなわち、
・本発明による方法は、所定の仮定によって簡略化することができる。例えば、対称性を仮定するかまたはDF=u×KFを前提とすることによる。ただしuは、1次係数である。
・本発明による方法は、さらに別の隣り合うノズル、例えば図4の例における1および7ならびに別の隣り合う印刷ノズル対に拡張することができる。
・感度14が一定ではなく、印刷点のずれに依存する場合、感度は、特性曲線を介して表すことができ、使用時に補間を介して計算することができる。
・これまで説明した方式では、ずれの間の相互作用はまだ考慮されていない。これが存在する場合、これは、例えばDoEのようなより複雑な方法を介して算出しなければならない。
・モデル形成を介して、位置依存の係数を算出する。
・不良に噴出する、実際の欠陥印刷ノズル11を遮断せず、「白すじ」9に隣り合う印刷ノズル13、14に対する、ならびにダイリューションに対する補償係数KFを、本発明による方法と同様に求める。この場合には当然のことながら、不良に噴出する実際の欠陥印刷ノズル11の影響を一緒に考慮しなければならない。
【符号の説明】
【0035】
1 フィーダ
2 印刷基体
3 排紙装置
4 インクジェット印刷機構
5 インクジェット印刷ヘッド
6 計算機
7 インクジェット印刷機
8 全体印刷画像
9 白すじ
10 模式的な概略図
11 遮断された欠陥印刷ノズル
12 アクティブな、ずれて印刷する印刷ノズル
13 増大されたインク吐出量を有する、隣り合う印刷ノズル(補償)
14 減少されたインク吐出量を有する、隣り合う印刷ノズル(ダイリューション)
15 印刷機システム
16 カメラ
17 画像検出システム
18 作業フローシステム
19 画像処理計算機
20 ユーザ/印刷工
21 印刷ノズルテストパターン
22 印刷されかつ検出された印刷ノズルテストパターン
23 正しい印刷点
24 算出した感度
図1
図2
図3
図4
図5