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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】道路用の床版およびその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
E01D19/12
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019080084
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020176463
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】横関 耕一
(72)【発明者】
【氏名】冨永 知徳
(72)【発明者】
【氏名】瀬谷 和彦
(72)【発明者】
【氏名】柳 悦孝
(72)【発明者】
【氏名】藤川 敬人
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-049407(JP,A)
【文献】特開2007-327255(JP,A)
【文献】特開2002-155507(JP,A)
【文献】特開2015-020593(JP,A)
【文献】実開昭51-101024(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路用の床版であって、
前記道路の幅方向に架設される複数の横梁部材と、
前記複数の横梁部材の上面に接合されることによって前記道路の延長方向について前記複数の横梁部材の変形挙動が連続的になるように前記複数の横梁部材を互いに連結し、かつ路面を形成する鋼板と
を備え、
前記複数の横梁部材は、互いに離間して配置され、
前記複数の横梁部材と前記鋼板とは締結部材を用いて接合される床版。
【請求項2】
前記複数の横梁部材は、前記道路の幅方向に沿って拡大または縮小する間隔で配置される、請求項1に記載の床版。
【請求項3】
前記複数の横梁部材は角形鋼管を含む、請求項1または請求項2に記載の床版。
【請求項4】
前記複数の横梁部材はH形鋼を含む、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の床版。
【請求項5】
前記複数の横梁部材は断面形状が互いに異なる部材を含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の床版。
【請求項6】
前記締結部材はボルトである、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の床版。
【請求項7】
前記鋼板は、前記道路の延長方向の第1の区間で前記複数の横梁部材の上面に接合される第1の鋼板と、前記道路の延長方向の第2の区間で前記複数の横梁部材の上面に接合される第2の鋼板とを含み、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との境目は前記複数の横梁部材のいずれかの上面に位置する、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の床版。
【請求項8】
前記道路の延長方向に架設され、前記複数の横梁部材の下面に接合される縦梁部材をさらに備える、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の床版。
【請求項9】
前記鋼板によって支持される舗装材を更に備え、
前記舗装材の上面は、前記締結部材の上面よりも上に形成される、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の床版。
【請求項10】
道路用の床版の施工方法であって、
複数の横梁部材を、前記複数の横梁部材が互いに離間して配置されるように前記道路の幅方向に架設する工程と、
路面を形成する鋼板を前記複数の横梁部材の上面に締結部材を用いて接合することによって前記道路の延長方向について前記複数の横梁部材の変形挙動が連続的になるように前記複数の横梁部材を互いに連結する工程と
を含む床版の施工方法。
【請求項11】
前記複数の横梁部材の上面に前記鋼板を接合する工程は、前記複数の横梁部材を前記道路の幅方向に架設する工程の前に実施される、請求項10に記載の床版の施工方法。
【請求項12】
前記複数の横梁部材の上面に前記鋼板を接合する工程の前、または前記複数の横梁部材を前記道路の幅方向に架設する工程の前に、前記鋼板によって支持される舗装材を新たな路面として施工する工程が実施される、請求項11に記載の床版の施工方法。
【請求項13】
前記複数の横梁部材の上面に前記鋼板を接合する工程の前に、前記鋼板によって支持される舗装材を新たな路面として施工する工程が実施される、請求項12に記載の床版の施工方法。
【請求項14】
道路用の床版であって、
前記道路の幅方向に架設される複数の横梁部材と、
前記複数の横梁部材の上面のそれぞれに締結部材を用いて接合されることによって前記複数の横梁部材を互いに連結し、かつ路面を形成する鋼板と
を備え、
前記複数の横梁部材は、互いに離間して配置される床版。
【請求項15】
道路用の床版であって、
前記道路の幅方向に架設される複数の横梁部材と、
前記複数の横梁部材の上面に接合されることによって前記複数の横梁部材を互いに連結し、かつ路面を形成する鋼板と
を備え、
前記複数の横梁部材は、互いに離間して配置され、
前記複数の横梁部材と前記鋼板とは締結部材を用いて接合され、
前記複数の横梁部材の連結は、前記鋼板を介して行われている床版。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路用の床版およびその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路工事では、工事中の迂回路や建設機械の通路として仮設橋を建設する場合がある。仮設構造物では、恒久的な構造物に比べて耐久性は要求されないが、耐震性は同様に要求される。また、仮設構造物では、設置および撤去が容易であることも求められる。このような要求に対し、仮設橋の上部構造を軽量化することによって、設置および撤去を容易にするとともに、下部構造にかかる地震荷重を低減することができる。上部構造の中でも、床版は死荷重を負担する割合が大きいため、構造の改善が種々検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、道路の延長方向(橋軸方向)に延びる複数の角形鋼管を平行に配列し、角形鋼管の側面に設けた開口部に棒状部材を挿通してせん断キーを構成するとともに、角形鋼管と棒状部材との交差部分にコンクリートなどの経時硬化性材料を充填する技術が記載されている。これによって、溶接を使用せずに複数の角形鋼管を接合して床版を構成することができ、設置時の施工性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-285823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、角形鋼管の内部にコンクリートなどの経時硬化性材料を充填するため、撤去時の施工性は必ずしも高いとはいえない。さらに、迂回路には車両の走行性も求められる。すなわち車両荷重に対して床版が変形した後にも、路面に顕著な凹凸がなく、走行が妨げられないことが求められる。変形後の路面が連続的であることは舗装の劣化も抑制できる。従来の技術ではこうした施工性や走行性の要求に対する解決方法が十分に提供されていない。
【0006】
そこで、本発明は、設置および撤去の施工性を向上させ、かつ車両の走行性を確保できる道路用の床版およびその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、道路用の床であって、道路の幅方向に架設される複数の横梁部材と、複数の横梁部材の上面に接合されることによって複数の横梁部材を互いに連結し、かつ路面を形成する鋼板とを備える床版が提供される。
【0008】
上記の床版において、複数の横梁部材は、互いに離間して配置されてもよい。また、この場合において、複数の横梁部材は、道路の幅方向に沿って拡大または縮小する間隔で配置されてもよい。
【0009】
上記の床版において、複数の横梁部材は角形鋼管を含んでもよく、H形鋼を含んでもよく、また断面形状が互いに異なる部材を含んでもよい。
【0010】
上記の床版において、複数の横梁部材の上面と鋼板とは締結手段を用いて接合されていても良い。
【0011】
上記の床版において、鋼板は、道路の延長方向の第1の区間で複数の横梁部材の上面に接合される第1の鋼板と、道路の延長方向の第2の区間で複数の横梁部材の上面に接合される第2の鋼板とを含み、第1の鋼板と第2の鋼板との境目は複数の横梁部材のいずれかの上面に位置してもよい。
【0012】
上記の床版は、道路の延長方向に架設され、複数の横梁部材の下面に接合される縦梁部材をさらに備えてもよい。
【0013】
本発明の別の観点によれば、道路用の床版の施工方法であって、複数の横梁部材を道路の幅方向に架設する工程と、複数の横梁部材の上面に鋼板を接合することによって複数の横梁部材を互いに連結する工程とを含み、路面を舗装する場合には鋼板によって支持される舗装材を施工する工程も含む床版の施工方法が提供される。
【0014】
上記の床版の施工方法において、複数の横梁部材の上面に鋼板を接合する工程は、複数の横梁部材を架設する工程の前に実施されてもよい。また、鋼板によって支持される舗装材を施工する工程は、前記鋼板または前記鋼板と横梁部材を接合した組立体を道路として使用する位置に設置する工程の前に実施されても良い。
【発明の効果】
【0015】
上記の構成によれば、道路の幅方向に架設される複数の横梁部材を、横梁部材の上面に接合される鋼板を用いて互いに連結するため、例えば溶接や経時硬化性材料の充填などの工程が必要とされず、従って設置および撤去の施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版を用いた仮設橋の部分切開斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版を用いたトンネル内の仮設構造物の断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と鋼板との接合構造のバリエーションを示す断面図である。
図10】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と鋼板との接合構造のバリエーションを示す断面図である。
図11】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と鋼板との接合構造のバリエーションを示す断面図である。
図12】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と鋼板との接合構造のバリエーションを示す断面図である。
図13】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における鋼板の接続部分の平面図である。
図14】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における鋼板の接続部分の平面図である。
図15】本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版を、道路の湾曲部分に配置した例を示す図である。
図16】本発明の第2の実施形態に係る道路用の床版を用いた仮設橋の部分切開斜視図である。
図17A】本発明の第2の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と縦梁部材との接合構造の例を示す図である。
図17B図17AのB-B線の断面図である。
図17C図17AのC-C線の断面図である。
図18A図17A図17Cに示した接合構造においてアクセスホールの位置を変更した例を示す図である。
図18B図18AのB-B線の断面図である。
図18C図18AのC-C線の断面図である。
図19】本発明の実施形態に係る道路用の床版の構造的な利点について説明するための図である。
図20】本発明の実施形態に係る道路用の床版の構造的な利点について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版を用いた仮設橋の部分切開斜視図である。図示された例において、仮設橋1は、床版10と、主桁20とを含む。床版10は、道路の幅方向(橋幅方向、図中のy方向)に架設される複数の横梁部材11と、複数の横梁部材11の上面に接合されることによって複数の横梁部材11を互いに連結し、かつ路面を形成する鋼板12とを含む。なお、本明細書において、鋼板12が路面を形成する、とは、道路を走行する車両等の荷重を支持する面が鋼板12によって形成されることを意味する。具体的には、鋼板12の上面に直接車両を走行させても良いし、鋼板12の上面に舗装材等を敷設し、その上に車両を走行させても良い。
【0019】
図示された例において、横梁部材11は角形鋼管である。複数の横梁部材11は道路の延長方向(橋軸方向、図中のx方向)に配列される。なお、本明細書において、角形鋼管は、例えば冷間成形によって加工され、正方形または長方形の角が丸められた断面形状の鋼管を含む。それぞれの横梁部材11は、主桁20によって道路の幅方向について3点で支持されている。主桁20は、図示された例ではH形断面であり、上フランジ部分にそれぞれの横梁部材11が載置される。
【0020】
鋼板12は、複数の横梁部材11の上面に接合される。複数の横梁部材11に共通の鋼板12を接合することによって、複数の横梁部材11を互いに連結し、道路の延長方向について複数の横梁部材11の変形挙動を連続的にすることができる。鋼板12の上に舗装材(図示せず)が施工される場合は、舗装材は鋼板12を介して横梁部材11によって支持される。路面が鋼板12の上に形成されるため、道路の延長方向に配列されるそれぞれの横梁部材11の間は密着していなくてもよく、複数の横梁部材11は互いに離間して配置されてもよい。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版を用いたトンネル内の仮設構造物の断面図である。図示された例において、トンネル2は、床版10と、覆工体30と、隔壁40とを含む。床版10の構成は上記で図1を参照して説明した例と同様であるが、それぞれの横梁部材11は、覆工体30に取り付けられるブラケット31と、隔壁40の上面とによって、トンネル幅方向について4点で支持されている。このように、本実施形態に係る道路用の床版10について、それぞれの横梁部材11を支持する支持体は限定されず、またそれぞれの横梁部材11の支持点の数も限定されない。
【0022】
上記で説明したような本実施形態に係る床版10を施工する場合、例えば、まず現場で複数の横梁部材11を主桁20(図1の例)、またはブラケット31および隔壁40(図2の例)上に架設する工程が実施され、次に、架設された複数の横梁部材11の上面に鋼板12を接合することによって複数の横梁部材11を互いに連結する工程が実施されことによって、図1の例における仮設橋1、または図2の例におけるトンネル2内の仮設構造物が構築される。鋼板12によって支持される舗装材を施工する工程があってもよい。舗装材は、現場で架設された複数の横梁部材11に鋼板12を接合する工程の前に、鋼板12に施工されていてもよい。
【0023】
他の例として、例えば工場などで複数の横梁部材11の上面(または、架設後に上面になる面)に鋼板12を接合する工程を先に実施し、その後に現場で複数の横梁部材11および鋼板12からなる組立体を架設する工程が実施されてもよい。鋼板12の上面(または、設置後に上面になる面)に舗装材を施工する工程は、工場などで複数の横梁部材11の上面に鋼板12を接合する工程の前に実施されてもよい。この場合、架設された複数の横梁部材11の上面に舗装材が予め施工された鋼板12が接合される。あるいは、工場などで複数の横梁部材11の上面に鋼板12を接合する工程の後に、鋼板12の上面に舗装材を施工してもよい。
【0024】
あるいは、複数の横梁部材11の上面に舗装材が予め施工された鋼板12を接合し、その後に複数の横梁部材11、鋼板12および舗装材からなる組立体を架設する工程が実施されてもよい。このように、複数の横梁部材11と鋼板12との接合や、鋼板12の上面への舗装材の施工を予め行うことによって、例えば運搬や保管に支障がない大きさの組立体(パネル)を工場などで予め製造して施工現場に搬入し、施工現場での工程を簡略化することができる。
【0025】
図3図8は、本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材のバリエーションを示す図である。図3は、図1のIII-III線矢視図である(主桁20の図示は省略している)。図3の例において、横梁部材11は断面が角丸正方形の角形鋼管である。図示していないが、断面が角丸長方形の角形鋼管を横梁部材に用いてもよい。図4の例において、横梁部材11AはH形鋼であり、上面になる上フランジ部分111Aで鋼板12に接合される。図5の例において、横梁部材11Bはハット形鋼である。図6の例において、横梁部材11Cは溝形鋼である。なお、溝形鋼の横梁部材11Cは、図示された例のように溝形の側面111Cが鋼板12に接合されるように配置されてもよいし、あるいは溝形の底面112Cが鋼板12に接合されるように配置されてもよい。このように、鋼板12を介して路面を形成することが可能である限りにおいて横梁部材の断面形状は限定されず、例えば各種の形鋼材を横梁部材に用いることができる。
【0026】
一方、図7の例では、角形鋼管の横梁部材11とH形鋼の横梁部材11Aとが道路の延長方向について交互に配置される。また、図8の例では、高さの異なる2種類のH形鋼の横梁部材11A1,11A2が道路の延長方向について交互に配置される。横梁部材11A1,11A2は、それぞれ上面になる上フランジ部分111A1,111A2で鋼板12に接合される。主桁20(図1の例)、またはブラケット31および隔壁40(図2の例)による横梁部材11A1,11A2の支持のために、高さが小さい横梁部材11A2の下面になる下フランジ部分112A2には、スペーサー13が介挿される。例えば図7および図8に示された例のように、横梁部材には断面形状が互いに異なる部材が含まれてもよい。
【0027】
図9図12は、本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と鋼板との接合構造のバリエーションを示す断面図である。図9の例では、横梁部材11の上面から突出するスタッドボルト114Aが鋼板12に形成された貫通孔に挿通され、ナット115をスタッドボルト114Aに螺合させることによって横梁部材11に鋼板12が接合される。図10の例では、横梁部材11の上面および鋼板12のそれぞれに貫通孔が形成され、これらの貫通孔に挿通されるボルト114Bにナット115を螺合させることによって横梁部材11に鋼板12が接合される。図11の例では、鋼板12に形成された貫通孔に、タッピングボルト114Cを挿通し、横梁部材11の上面に形成されたねじ孔に螺合させることによって横梁部材11に鋼板12が接合される。このように、横梁部材11と鋼板12との接合には、例えば鋼板12に形成された貫通孔に挿通される各種の締結部材を用いることができる。他の締結手段の例として、例えば貫通孔に挿通されるピンを用いてもよい。また、貫通孔に挿通される締結手段以外にも、例えばスナップフィットのような凹凸の組み合わせによる機械式接合によって横梁部材11と鋼板12とを接合してもよい。
【0028】
一方、図12の例では、横梁部材11の上面に貫通孔が形成され、鋼板12には皿孔が形成され、これらの貫通孔および皿孔に挿通される皿型ボルト114Dにナット115を螺合させることによって横梁部材11に鋼板12が接合される。この場合、皿型ボルト114Dが鋼板12の上面から突出しないため、例えば舗装材113が無い、もしくは厚みが小さい場合であっても、路面を平坦に保つことができる。上記の図9図11の例では鋼板12の上面からスタッドボルト114A、ボルト114Bまたはタッピングボルト114Cの頭部が突出するが、舗装材113の厚みが突出高さより大きい場合には路面は平坦に保たれる。なお、角形鋼管の横梁部材11の内部にナット115が配置される図10および図12の例では、施工に横梁部材11の内部を自走するナット締結装置を利用してもよい。
【0029】
図13および図14は、本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版における鋼板の接続部分の平面図である。図13に示された例において、道路の延長方向の第1の区間S1で複数の横梁部材11の上面に接合される鋼板12Aと、第1の区間S1に隣接する道路の延長方向の第2の区間S2で複数の横梁部材11の上面に接合される鋼板12Bとの境目は、これらの鋼板12A,12Bが接合される複数の横梁部材11のいずれかの上面に位置する。すなわち、図示された例では、いずれかの横梁部材11の上面が、鋼板12A,12Bの両方に接合される。このように鋼板12A,12Bを配置することによって、第1の区間S1と第2の区間S2との間で複数の横梁部材11の変形挙動を連続的にすることができる。図14に示された例では、鋼板12Aと鋼板12Bとの境目が横梁部材11の上面に位置するように配置するのに加えて、道路の幅方向に隣接する鋼板12の間で、道路の延長方向の鋼板12の境目が位置する横梁部材11が異なるように、すなわち、道路の延長方向の鋼板12の境目が千鳥配置になるように配置することによって、道路の延長方向についての床版10の剛性を向上させている。
【0030】
図15は、本発明の第1の実施形態に係る道路用の床版を、道路の湾曲部分に配置した例を示す図である。上述のように、本実施形態では道路の延長方向に配列される複数の横梁部材11が必ずしも互いに略密着していなくてよい。従って、図示された例のような道路の湾曲部分では、複数の横梁部材11を道路の幅方向に沿って拡大または縮小する間隔で配置することによって、横梁部材11が配列される方向(道路の延長方向)を湾曲させることができる。
【0031】
図16は、本発明の第2の実施形態に係る道路用の床版を用いた仮設橋の部分切開斜視図である。図示された例において、仮設橋1Aは、床版10Aと、主桁20とを含む。床版10Aは、上記の第1の実施形態と同様の複数の横梁部材11および鋼板12に加えて、縦梁部材14を含む。縦梁部材14は、道路の延長方向(橋軸方向、図中のx方向)に架設され、複数の横梁部材11の下面に接合される。
【0032】
図示された例において、縦梁部材14はH形鋼であり、上フランジ部分でそれぞれの横梁部材11に接合される。上述のように、複数の横梁部材11は上面に共通の鋼板12が接合されることによって互いに連結され、道路の延長方向について変形挙動が連続的になるが、下面にも共通の縦梁部材14を接合することによって、このような作用を強化することができる。図示された例において縦梁部材14および主桁20はいずれもH形鋼であるが、主桁20が床版10を支持する機能を有するのに対して、縦梁部材14は上記のように複数の横梁部材11を互いに連結する機能を有するため、例えば主桁20よりも小さい断面のH形鋼を用いることができる。
【0033】
図17A図17Cは、本発明の第2の実施形態に係る道路用の床版における横梁部材と縦梁部材との接合構造の例を示す図である。図17Aは接合構造の平面図であり、図17Bおよび図17Cはそれぞれ図17AのB-B線およびC-C線の断面図である。図示された例では、横梁部材11の下面と縦梁部材14とが、横梁部材11の下面に形成される貫通孔116および縦梁部材14の上面(上フランジ部分)に形成される貫通孔141にそれぞれ挿通される締結手段であるボルト142およびナット143を用いて接合される。なお、例えばタッピングボルトなどの他の締結手段が用いられてもよい。図示された例において、ボルト142を締結するためにレンチなどの工具を挿入するアクセスホール117は、横梁部材11の上面で貫通孔116に対向する位置に形成される。
【0034】
一方、図17A図17Cに示された例において、横梁部材11と鋼板12とは、横梁部材11の上面から突出するスタッドボルト114Aを鋼板12に形成された貫通孔に挿通し、ナット115をスタッドボルト114Aに螺合させることによって接合される。図17Aに示されるように、横梁部材11の上面において、スタッドボルト114Aは、アクセスホール117とは異なる位置から突出する。従って、スタッドボルト114Aに対応した位置に形成される鋼板12の貫通孔はアクセスホール117には重複しない。このため、図示された例において、横梁部材11に鋼板12が接合された後は、アクセスホール117が鋼板12によって塞がれる形になり、連続した路面が形成されるのに加えて、アクセスホール117を形成したことによって生じる横梁部材11の断面欠損部分を補強することができる。
【0035】
図18A図18Cは、図17A図17Cに示した接合構造においてアクセスホールの位置を変更した例を示す図である。図示された例では、アクセスホール117が、横梁部材11の上面で貫通孔116に対向しない位置に形成される。これによって、上述のように鋼板12によって横梁部材11の断面欠損部分が補強されるのに加えて、横梁部材11において貫通孔116およびアクセスホール117の両方が形成される断面が発生するのを避けることができ、貫通孔116およびアクセスホール117の形成による横梁部材11の断面欠損自体を最小限に抑えることができる。鋼板12による補強で断面欠損が問題にならない程度である場合、アクセスホール117の位置は例えばボルト142を締結するためのレンチなどの工具の形状に応じて決定されてもよい。
【0036】
以上で説明したような本発明の実施形態、およびその変形例によれば、道路用の床版の全体が鋼部材で形成されるため、例えばコンクリート床版を用いる場合に比べて同程度の剛性を確保しつつ床版を軽量化することができる。また、横梁部材や鋼板といった単位部材が軽量であるため、架設時の施工性が高い。単位部材の種類が少ないため、部材の製造や管理を効率化することができる。加えて、単位部材間で溶接や経時硬化性材料の充填などの工程を必要としないため、撤去時の施工性も高い。
【0037】
図19および図20は、本発明の実施形態に係る道路用の床版の構造的な利点について説明するための図である。図19は、鋼板を設置せず、道路の延長方向に配列した角形鋼管の横梁部材91を所定の本数ごとに溶接などによって互いに接合してパネル92にした参考例を示す図であり、図20は本発明の実施形態において鋼板12を接合することによって横梁部材11を互いに連結した例を示す図である。
【0038】
図19に示す参考例の場合、互いに接合されてパネル92を構成する横梁部材91の間では変形挙動が連続的になるが、パネル92同士の間の境目では、互いに接合されていない横梁部材91の間での変形挙動が連続的にならない。つまり、パネル92同士の間の境目に位置する横梁部材91の間でたわみ変形量に差が生じた場合、床版上面の形状が不連続になる。このような不連続部が生じることによって、例えば床版上面に施工される舗装材に割れが生じたり、道路の走行性が低下したりする可能性がある。
【0039】
一方、図20に示す本発明の実施形態の場合、複数の横梁部材11の上面に共通の鋼板12が接合されることから、それぞれの横梁部材11の間でたわみ変形量に差が生じたとしても、隣接する横梁部材11の間で変形挙動は連続的になる。上述のように、鋼板12の接続部分でも、鋼板12同士の境目を横梁部材11の上面に位置させることによって、複数の横梁部材11の変形挙動を連続的にすることができる。横梁部材11の変形挙動が連続的であれば、床版上面に施工される舗装材が変形に追従することが可能であるため、舗装材の割れや道路の走行性の低下を防ぐことができる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内において、各種の変形例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0041】
1…仮設橋、1A…仮設橋、2…トンネル、10,10A…床版、11,11A,11A1,11A2,11B,11C…横梁部材、12,12A,12B…鋼板、13…スペーサー、14…縦梁部材、20…主桁、30…覆工体、31…ブラケット、40…隔壁、111A,111A1,111A2…上フランジ部分、111C…側面、112A2…下フランジ部分、112C…底面、113…舗装材、114A…スタッドボルト、114B…ボルト、114C…タッピングボルト、114D…皿型ボルト、115…ナット、116…貫通孔、117…アクセスホール、141…貫通孔、142…ボルト、143…ナット。
図1
図2
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図17A
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図18B
図18C
図19
図20