(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】熱発電装置
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
H02N11/00 A
(21)【出願番号】P 2019119040
(22)【出願日】2019-06-26
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390039929
【氏名又は名称】三桜工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114270
【氏名又は名称】黒川 朋也
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】梅 ▲ヒョウ▼
(72)【発明者】
【氏名】後藤 直哉
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135157(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038988(WO,A1)
【文献】特開2017-152694(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102006039024(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層及び熱電変換層の積層体を含む少なくとも1つの熱利用発電素子と、当該熱利用発電素子を収容する第1の筐体とを有する第1の熱発電モジュールと、
電解質層及び熱電変換層の積層体を含む少なくとも1つの熱利用発電素子と、当該熱利用発電素子を収容する第2の筐体とを有する第2の熱発電モジュールと、
前記第1及び第2の熱発電モジュールを電気的に接続する導電部材と、
を備え、
前記第1の熱発電モジュールが前記第2の熱発電モジュールから離隔して
おり、
前記第1の筐体の外面と前記第2の筐体の外面とによって画成される流路を熱流体が流れるように構成されており、
前記流路を流れる前記熱流体の方向が、前記第1及び第2の熱発電モジュールにおける前記積層体の積層方向と直交する方向である、熱発電装置。
【請求項2】
前記流路は、前記熱発電モジュールの主面に沿う方向に延在している、請求項
1に記載の熱発電装置。
【請求項3】
前記流路は、前記熱発電モジュールの側面に沿う方向に延在している、請求項
1に記載の熱発電装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の熱発電モジュールが電気的に直列に接続されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱発電装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の熱発電モジュールが電気的に並列に接続されている、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱発電装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の熱発電モジュールが複数の前記熱利用発電素子をそれぞれ有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱発電装置。
【請求項7】
複数の前記熱利用発電素子が電気的に直列の状態となるように積層されている、請求項
6に記載の熱発電装置。
【請求項8】
隣接する前記熱利用発電素子の間に、電子伝導層を含む、請求項
7に記載の熱発電装置。
【請求項9】
複数の前記熱利用発電素子が電気的に並列の状態となるように積層されている、請求項
6に記載の熱発電装置。
【請求項10】
隣接する前記熱利用発電素子の間に、前記導電部材と電気的に接続されている集電極と、絶縁層とを含む、請求項
9に記載の熱発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する素子として、電解質と、熱励起電子及び正孔を生成する熱電変換材料とを組み合わせた熱利用発電素子が知られている(特許文献1参照)。上記熱利用発電素子を用いた発電システムによれば、システムに温度差を与えなくても、システム全体を高温にするだけで発電できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らの検討によると、特許文献1に記載の素子を用いた発電システムの高出力化を実現するには、発電システムへの熱供給が律速になるという課題をクリアする必要がある。すなわち、発電システムが高電圧及び/又は大電流の電気を発電するポテンシャルを有していても、発電システムが備える熱利用発電素子に対して熱ができるだけ偏りなく供給されなければ、そのポテンシャルを十分に発揮できない。
【0005】
本発明の一側面は、熱供給が律速になることを十分に防止でき、高出力化を実現するのに有用な熱発電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る熱発電装置は、第1の熱発電モジュールと、第2の熱発電モジュールと、第1及び第2の熱発電モジュールを電気的に接続する導電部材とを備え、第1の熱発電モジュールが第2の熱発電モジュールから離隔している。第1の熱発電モジュールは、電解質層及び熱電変換層を含む少なくとも1つの熱利用発電素子と、当該熱利用発電素子を収容する第1の筐体とを有する。第2の熱発電モジュールは、電解質層及び熱電変換層を含む少なくとも1つの熱利用発電素子と、当該熱利用発電素子を収容する第2の筐体とを有する。
【0007】
第1の熱発電モジュールが第2の熱発電モジュールから離隔していることで、例えば、第1の筐体の外面と第2の筐体の外面とによって流路が画成される。この流路に熱流体(例えば、高温のガス又は液体)を流すことで、第1及び第2の熱発電モジュールに対して効率的に熱を供給することができる。この流路は、熱発電モジュールの主面に沿う方向に延在していてもよいし、熱発電モジュールの側面に沿う方向に延在していてもよい。
【0008】
第1及び第2の熱発電モジュールは、電気的に直列に接続されてもよいし、電気的に並列に接続されていてもよい。複数の熱発電モジュールを直列に接続することで、熱発電装置の起電力を大きくできる。他方、複数の熱発電モジュールを並列に接続することで、熱発電装置の出力電流を大きくできる。
【0009】
起電力及び/又は出力電流を大きくする観点から、第1及び第2の熱発電モジュールは複数の熱利用発電素子をそれぞれ有してもよい。複数の熱利用発電素子は、電気的に直列の状態となるように積層されていてもよいし、電気的に並列の状態となるように積層されていてもよい。複数の熱利用発電素子の電気的な接続状態が直列である場合、起電力をより一層の大きくする観点から、隣接する熱利用発電素子の間に、電子伝導層を設けてもよい。複数の熱利用発電素子の電気的な接続状態が並列である場合、隣接する熱利用発電素子の間に、上記導電部材と電気的に接続されている集電極と、絶縁層と、を設ければよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一側面によれば、熱供給が律速になることを十分に防止でき、高出力化を実現するのに有用な熱発電装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は本発明に係る熱発電装置の第一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は第一実施形態に係る熱発電装置の変形例を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は本発明に係る熱発電装置の第二実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4は
図3に示す熱発電装置が備える熱発電モジュールを模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は第二実施形態に係る熱発電装置の変形例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0013】
<第一実施形態>
図1は本実施形態に熱発電装置を模式的に示す断面図である。この図に示された熱発電装置50は、3つの熱発電モジュール10A,10B,10Cを備え、これらが外部集電体12(導電部材)によって電気的に並列に接続されている。熱発電モジュール10Aは、2つの熱発電モジュール10B,10Cの間に配置されており、熱発電モジュール10B,10Cから離隔している。外部集電体12も熱発電モジュール10A,10B,10Cから離隔している。以下、熱発電モジュール10Aの構成について説明する。なお、本実施形態において、熱発電モジュール10B,10Cの構成は熱発電モジュール10Aと同じであるから、これらの説明は省略する。
【0014】
熱発電モジュール10Aは、2つの熱利用発電素子5a,5bと、電子伝導層6と、一対の集電極8a,8bと、これらを収容する筐体9とを有する。平面視における熱発電モジュール10Aの形状は、例えば矩形状等の多角形状であり、円形状又は楕円形状であってもよい。2つの熱利用発電素子5a,5bは、電気的に直列の状態となるように積層されている。熱利用発電素子5a,5bは、外部から供給される熱によって熱励起電子及び正孔を生成する。熱利用発電素子5a,5bによる熱励起電子及び正孔の生成は、例えば25℃以上300℃以下で生じる。十分な数の熱励起電子及び正孔を生成する観点から、熱利用発電素子5a,5bは、例えば50℃以上に加熱されてもよい。熱利用発電素子5a,5bの劣化等を良好に防止する観点から、熱利用発電素子5a,5bの加熱温度の上限は、例えば、200℃である。なお、十分な数の熱励起電子が生成される温度は、例えば熱利用発電素子5a,5bの熱励起電子密度が1015/cm3以上となる温度である。
【0015】
熱利用発電素子5aは、電解質層1と、電子熱励起層2aと、電子輸送層2bとをこの順序で備える積層構造を有する。電子熱励起層2aと電子輸送層2bによって熱電変換層2が構成されている。なお、本実施形態において、熱利用発電素子5bの構成は、熱利用発電素子5aと同じであるから、その説明は省略する。
【0016】
電解質層1は、上記の温度条件において、電荷輸送イオン対が内部を移動できる固体電解質を含む層である。電解質層1内を上記電荷輸送イオン対が移動することによって、電解質層1に電流が流れる。「電荷輸送イオン対」は、互いに価数が異なる安定な一対のイオンである。一方のイオンが酸化又は還元されると他方のイオンとなり、電子と正孔とを移動できる。電解質層1内の電荷輸送イオン対の酸化還元電位は、電子熱励起層2aに含まれる熱電変換材料の価電子帯電位よりも負である。このため、電子熱励起層2aと電解質層1との界面では、電荷輸送イオン対のうち、酸化されやすいイオンが酸化され、他方のイオンとなる。なお、電解質層1は、電荷輸送イオン対以外のイオンを含んでもよい。電解質層1は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、ゾルゲル法、又はスピンコート法によって形成できる。電解質層1の厚さは、例えば0.1μm以上100μm以下である。
【0017】
電解質層1に含まれる固体電解質は、例えば、上記温度にて物理的及び化学的に安定である物質であり、多価イオンを含む。固体電解質は、例えば、ナトリウムイオン伝導体、銅イオン伝導体、鉄イオン伝導体、リチウムイオン伝導体、銀イオン伝導体、水素イオン伝導体、ストロンチウムイオン伝導体、アルミニウムイオン伝導体、フッ素イオン伝導体、塩素イオン伝導体、酸化物イオン伝導体等である。固体電解質は、例えば、分子量60万以下のポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体でもよい。固体電解質がPEGである場合、例えば銅イオン、鉄イオン等の多価イオン源が電解質層1に含まれてもよい。寿命向上等の観点から、アルカリ金属イオンが電解質層1に含まれてもよい。PEGの分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによりポリスチレン換算で測定される重量平均分子量に相当する。電解質層1は、固体電解質以外の材料を含んでもよい。例えば、電解質層1は、固体電解質を結合させるバインダ、固体電解質の成形を補助する焼結助剤などを含んでもよい。
【0018】
電子熱励起層2aは、熱励起電子及び正孔を生成する層であり、電解質層1に接する。電子熱励起層2aは、熱電変換材料を含む。熱電変換材料は、高温環境下にて励起電子が増加する材料であり、例えば、金属半導体(Si,Ge)、テルル化合物半導体、シリコンゲルマニウム(Si-Ge)化合物半導体、シリサイド化合物半導体、スクッテルダイト化合物半導体、クラスレート化合物半導体、ホイスラー化合物半導体、ハーフホイスラー化合物半導体、金属酸化物半導体、有機半導体等の半導体材料である。比較的低温にて十分な熱励起電子を生成する観点から、熱電変換材料は、ゲルマニウム(Ge)でもよい。電子熱励起層2aは、複数の熱電変換材料を含んでもよい。電子熱励起層2aは、熱電変換材料以外の材料を含んでもよい。例えば、電子熱励起層2aは、熱電変換材料を結合させるバインダ、熱電変換材料の成形を補助する焼結助剤などを含んでもよい。電子熱励起層2aは、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、放電プラズマ焼結法、圧縮成形法、スパッタリング法、真空蒸着法、科学気相成長法(CVD法)、スピンコート法等によって形成される。電子熱励起層2aの厚さは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。
【0019】
電子輸送層2bは、電子熱励起層2aにて生成された熱励起電子を外部へ輸送する層であり、積層方向において電子熱励起層2aを介して電解質層1の反対側に位置する。電子輸送層2bは、電子輸送材料を含む。電子輸送材料は、その伝導帯電位が熱電変換材料の伝導帯電位と同じかそれよりも正である材料である。電子輸送材料の伝導帯電位と、熱電変換材料の伝導帯電位との差は、例えば0.01V以上0.1V以下である。電子輸送材料は、例えば半導体材料、電子輸送性有機物等である。電子輸送層2bは、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、放電プラズマ焼結法、圧縮成形法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、スピンコート法等によって形成される。電子輸送層2bの厚さは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。
【0020】
電子輸送材料に用いられる半導体材料は、例えば、電子熱励起層2aに含まれる半導体材料と同一である。電子輸送性有機物は、例えば、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、π電子共役化合物等である。電子輸送層2bは、複数の電子輸送材料を含んでもよい。電子輸送層2bは、電子輸送材料以外の材料を含んでもよい。例えば、電子輸送層2bは、電子輸送材料を結合させるバインダ、電子輸送材料の成形を補助する焼結助剤などを含んでもよい。電子輸送性の観点から、半導体材料はn型Siでもよい。n型Siを含む電子輸送層2bは、例えばシリコン層にリン等をドーピングすることによって形成される。
【0021】
電子伝導層6は、熱発電モジュール10A内を移動する電子を所定の方向のみに伝導させるための層である。電子伝導層6は、電子伝導性を示し、且つ、イオン伝導性を示さない層である。よって電子伝導層6は、イオン伝導防止層とも言える。電子伝導層6は、熱利用発電素子5aの電子輸送層2bと熱利用発電素子5bの電解質層1に挟まれている。熱利用発電素子5a,5bは電子伝導層6を介して互いに直列に接続される。
【0022】
電子伝導層6は、例えばスキージ法、スクリーン印刷法、放電プラズマ焼結法、圧縮成形法、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法、スピンコート法、メッキ法等によって形成される。電解質層1が有機電解質層である場合、電子伝導層6は、例えば、熱利用発電素子5aの電子輸送層2bの表面に設ければよい。他方、電解質層1が無機電解質層である場合、電子伝導層6は、例えば、熱利用発電素子5bの電解質層1の表面に設ければよい。電子伝導層6の厚さは、例えば、0.1μm以上100μm以下である。
【0023】
電子伝導層6の仕事関数は、電子輸送層2bの仕事関数より大きい。換言すれば、電子伝導層6のバンドギャップは、電子輸送層2bのバンドギャップより大きい。電子伝導層6の仕事関数もしくはバンドギャップと、電子輸送層2bのバンドギャップとの差は、例えば0.1eV以上である。また、電子伝導層6の価電子帯電位は、電解質層1内のイオンの還元電位よりも正でもよい。この場合、電子伝導層6と電解質層1との界面にて、上記イオンの酸化反応が発生しにくい。例えば、電解質層1が有機電解質層である場合、電子伝導層6は、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、電子伝導ポリマー材料等を含む。また、例えば電解質層1が無機電解質層である場合、電子伝導層6は、Pt(白金)、Au(金)、Ag(銀)、アルミニウム合金(例えば、ジュラルミン、Si-Al合金)、電子伝導ポリマー材料等を含む。電子伝導ポリマー材料は、例えばPEDOT/PSSである。なお、電子伝導層6の伝導帯電位は、電子輸送層2bの伝導帯電位よりも負でもよい。この場合、電子輸送層2bから電子伝導層6へ電子が移動しやすくなる。
【0024】
集電極8aは、熱発電モジュール10Aの正極であり、積層方向において熱発電モジュール10Aの一端に位置する。集電極8bは、熱発電モジュール10Aの負極であり、積層方向において熱発電モジュール10Aの他端に位置する。集電極8a,8bのそれぞれは、例えば単層構造もしくは積層構造を有する導電板である。導電板は、例えば、金属板、合金板、及びそれらの複合板である。熱発電モジュール10Aの性能を良好に発揮する観点から、集電極8a,8bの少なくとも一方は、高熱伝導性を示してもよい。例えば、集電極8a,8bの少なくとも一方の熱伝導率は、10W/m・K以上でもよい。熱発電モジュール10Aのでは温度差は不要であるため、集電極8a,8bの両方が高熱伝導性を示すことが望ましい。
【0025】
筐体9は、熱利用発電素子5a,5b等を収容している。筐体9は、例えば、優れた伝熱性及び絶縁性を有する材質からなる。筐体9の伝熱性が高いことで、外部から熱利用発電素子5a,5bに熱が効率的に供給される。筐体9の材質として、例えば、Siを含む樹脂(Si伝熱樹脂)、セラミックス、高熱伝導性ガラスが挙げられる。筐体9の絶縁性を維持しつつ、より優れた伝熱性を達成するため、絶縁性を有する材料と、この材料の内部に埋設された伝熱性を有する材料(例えば、金属)とによって筐体9を構成してもよい。
【0026】
上述のとおり、熱発電モジュール10Aは、2つの熱発電モジュール10B,10Cの間に配置されており、熱発電モジュール10B,10Cから離隔している。熱発電モジュール10A,10B,10Cが互い離隔して配置されていることで、隣接する熱発電モジュールの間に流路P1,P2を形成することができる。流路P1は、熱発電モジュール10Aの筐体9の外面9aと熱発電モジュール10Bの筐体9の外面9bとによって画成されている。流路P2は、熱発電モジュール10Aの筐体9の外面9aと熱発電モジュール10Cの筐体9の外面9cとによって画成されている。また、熱発電モジュール10A,10B,10Cと外部集電体12の間にも流路P3が形成されている。流路P1,P2は、熱発電モジュール10A,10B,10Cの主面F1に沿う方向に延在している。他方、流路P3は、熱発電モジュール10A,10B,10Cの側面F2に沿う方向に延在している。
【0027】
流路P1,P2,P3に熱流体(例えば、高温のガス又は液体)を流すことで、熱発電モジュール10A,10B,10Cに対して効率的に熱を供給することができる。熱発電装置50は、熱流体が流れるシステム(例えば、熱交換器、ピートポンプ又は冷却パイプ)に適用することで、高電圧及び/又は大電流の電気を効率的に発電できる。熱発電モジュール10Aは、熱供給が律速となりにくいため、比較的規模が大きいものであってもよい。本実施形態に係る熱発電モジュール10Aの発電出力は、例えば、1000kWh以上であってもよく、10~1000kWh又は0.1~10kWhであってもよい。
【0028】
以上、第一実施形態の熱発電装置50について詳細に説明したが、熱発電装置50の構成を以下のように変更してもよい。例えば、各熱発電モジュールが含む熱利用発電素子の数は2つに限定されず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、熱発電モジュールの数も3つに限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、複数の熱発電モジュールの電気的な接続は、並列に限定されず、直列であってもよいし(
図2参照)、並列と直列とを組み合わせてもよい。また、熱発電装置50は、筐体9が収容されるケースを備えてもよい。
【0029】
<第二実施形態>
図3は本実施形態に熱発電装置を模式的に示す断面図である。この図に示される熱発電装置60は、3つの熱発電モジュール20A,20B,20Cを備え、これらが外部集電体12によって電気的に並列に接続されている。熱発電モジュール20Aは、2つの熱発電モジュール20B,20Cの間に配置されており、熱発電モジュール20B,20Cから離隔している。以下、熱発電モジュール20Aの構成について説明する。なお、本実施形態において、熱発電モジュール20B,20Cの構成は熱発電モジュール20Aと同じであるから、これらの説明は省略する。また、熱発電装置60における熱発電装置50との相違点について主に説明する。
【0030】
図4は、熱発電モジュール20Aの構成を模式的に示す断面図である。
図4に示されるように、熱発電モジュール20Aは、3つの熱利用発電素子15a,15b,15cと、2つの絶縁層16a,16bと、三対の集電極17a,17bと、一対の外電極18a,18bと、これらを収容する筐体19とを有する。3つの熱利用発電素子15a,15b,15cは、電気的に並列の状態となるように積層されている。
【0031】
熱利用発電素子15a,15b,15cは、上述の熱利用発電素子5aと同様、電解質層1と、電子熱励起層2aと、電子輸送層2bとをこの順序で備える積層構造を有する。熱利用発電素子15a,15b,15cは、積層方向において一対の集電極17a,17bによってそれぞれ挟まれている。三つの集電極17aは外電極18aと電気的に接続されており、三つの集電極17bは外電極18bと電気的に接続されている。
【0032】
絶縁層16aは、熱利用発電素子15a,15bの短絡を防止するものである。絶縁層16bは、熱利用発電素子15b,15cの短絡を防止するものである。絶縁層16aは、例えば耐熱性を示す有機絶縁物もしくは無機絶縁物を含む。有機絶縁物は、例えば耐熱性プラスチックである。無機絶縁物は、例えばアルミナ等のセラミックスである。熱発電モジュール20Aの性能を良好に発揮する観点から、絶縁層16a,16bは、高熱伝導性を示してもよい。例えば、絶縁層16a,16bの熱伝導率は、10W/m・K以上でもよい。もしくは、絶縁層16a,16bは、優れた伝熱性を示す部材又は粒子を含んでもよい。この部材又は粒子が絶縁材料に埋め込まれている限り、部材又は粒子は導電性を有するものであってもよい。
【0033】
上述のとおり、熱発電モジュール20Aは、2つの熱発電モジュール20B,20Cの間に配置されており、熱発電モジュール20B,20Cから離隔している。熱発電モジュール20A,20B,20Cが互い離隔して配置されていることで、隣接する熱発電モジュールの間に流路P11,P12を形成することができる。流路P12は、熱発電モジュール20Aの筐体19の外面19aと熱発電モジュール20Bの筐体19の外面19bとによって画成されている。流路P12は、熱発電モジュール20Aの筐体19の外面19aと熱発電モジュール20Cの筐体19の外面19cとによって画成されている。流路P11,P12は、熱発電モジュール20A,20B,20Cの側面F2に沿う方向に延在している。
【0034】
流路P11,P12に熱流体(例えば、高温のガス又は液体)を流すことで、熱発電モジュール20A,20B,20Cに対して効率的に熱を供給することができる。熱発電装置60は、熱流体が流れるシステム(例えば、熱交換器、ピートポンプ又は冷却パイプ)に適用することで、高電圧及び/又は大電流の電気を効率的に発電できる。本実施形態に係る熱発電モジュール20Aは、熱供給が律速となりにくいため、比較的規模が大きいものであってもよい。熱発電モジュール20Aの発電出力は、例えば、1000kWh以上であってもよく、10~1000kWh又は0.1~10kWhであってもよい。
【0035】
以上、第二実施形態の熱発電装置60について詳細に説明したが、熱発電装置60の構成を以下のように変更してもよい。例えば、各熱発電モジュールが含む熱利用発電素子の数は3つに限定されず、1つ又は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、熱発電モジュールの数も3つに限定されず、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。複数の熱発電モジュールの電気的な接続は、並列に限定されず、直列であってもよいし(
図5参照)、並列と直列とを組み合わせてもよい。例えば、熱源に温度むらがある場合であっても各熱発電モジュールの性能を十分に発揮させるためには、
図5に示すように、熱発電モジュール20Aと同様の構成(複数の熱利用発電素子が並列接続された構成)を有する複数の熱発電モジュールを直列に接続すればよい。また、熱発電装置60は、筐体19が収容されるケースを備えてもよい。
【0036】
上記実施形態においては、流路P11,P12が熱発電モジュール20A,20B,20Cの側面F2に沿う方向に延在している態様を例示したが、流路P11,P12が熱発電モジュール20A,20B,20Cの主面F1に沿う方向に延在している態様としてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1…電解質層、2…熱電変換層、2a…電子熱励起層、2b…電子輸送層、5a,5b,15a,15b,15c…熱利用発電素子、6…電子伝導層、8a,8b,17a,17b…集電極、18a,18b…外電極、9,19…筐体、9a,9b,9c…外面、10A,10B,10C,20A,20B,20C…熱発電モジュール、12…外部集電体(導電部材)、16a,16b…絶縁層、50,60…熱発電装置、F1…主面、F2…側面、P1,P2,P3,P11,P12…流路