(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】レチノイドの副作用に対する感受性の決定方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20231030BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20231030BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
C12Q1/68 100Z
C12Q1/02
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2019130064
(22)【出願日】2019-07-12
【審査請求日】2022-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】天野 聡
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭子
(72)【発明者】
【氏名】出田 立郎
(72)【発明者】
【氏名】長▲崎▼ 正朗
(72)【発明者】
【氏名】峯岸 直子
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/044852(WO,A1)
【文献】ALZOUBI, Karem H. et al.,The effect of genetic polymorphisms of RARA gene on the adverse effects profile of isotretinoin-trea,Int. J. Clin. Pharmacol. Ther.,2013年,Vol. 51,pp. 631-640
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00- 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
rs66904991、rs192883707、rs75365663、rs3215895、rs12522083、rs151088833、rs117922874、rs62129325、rs7735423、rs180936202、rs12609658、rs5803510、rs35219727、rs76086616、rs74712856、rs10190756、rs182712478、rs583641、rs11264256、及びrs8112254からなる群から選ばれる、少なくとも1の遺伝子多型を検出する工程、
検出された遺伝子多型
の種類又は数に応じて、レチノイドの
皮膚外用における副作用に対する感受性を決定する工程
を含む、レチノイドの副作用に対する感受性の
非診断的決定方法。
【請求項2】
前記遺伝子多型が、
rs66904991、rs192883707、rs75365663、rs3215895、rs12522083、rs117922874、rs12609658、及びrs10190756からなる群から選ばれる、少なくとも1の遺伝子多型である、請求項1に記載の決定方法。
【請求項3】
前記遺伝子多型が、GPC5、
RBMS3、WDR7、
BACE2、CAPSL、GPR1、SLC1A6、及びCASP10からなる群から選択される少なくとも1の遺伝子に関与する遺伝子多型である、請求項1に記載の決定方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法により決定されたレチノイドの
皮膚外用における副作用に対する感受性に基づく
副作用に対する感受性に応じた化粧料の使用法の提供方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法により決定されたレチノイドの
皮膚外用における副作用に対する感受性に基づいて化粧料を選択することを特徴とする、化粧料の提供方法。
【請求項6】
候補薬剤を適用する工程、
適用された
培養細胞において、下記の:GPC5、
RBMS3、WDR7、
BACE2、CAPSL、GPR1、SLC1A6、及びCASP10からなる群から選ばれる少なくとも1の遺伝子の発現変化を決定する工程、
前記発現変化に基づき、候補薬剤のレチノイド感受性についての作用を決定する工程
を含む、レチノイド感受性に対する作用について候補薬剤をスクリーニングする方法。
【請求項7】
候補薬剤を適用する工程、
適用された
培養細胞において、下記の:GPC5、
RBMS3、WDR7、
BACE2、CAPSL、GPR1、SLC1A6、及びCASP10からなる群から選ばれる少なくとも1の遺伝子から翻訳された機能タンパク質の作用変化を決定する工程、
前記機能タンパク質の作用変化に基づき、候補薬剤のレチノイド感受性についての作用を決定する工程
を含む、レチノイド感受性に対する作用について候補薬剤をスクリーニングする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子多型、特にSNPの解析により遺伝要素に基づいて対象のレチノイドの副作用に対する感受性を決定する方法に関する。決定された対象のレチノイドの副作用に対する感受性に基づいて、感受性を緩和する方法の開発、美容の指導サービス、化粧料の選択が可能になる。
【背景技術】
【0002】
天然ビタミンAの一つであるレチノールは、人体中に天然に存在する内因性物質であり、レチナールやレチノイン酸への変換を経て、成長、生殖、視覚、感染予防など幅広い生理機能に関与する。ビタミンAとしての作用を発揮する化合物として、レチノールの他に、レチナールやレチノイン酸、さらにはそれらの誘導体が知られており、これらを総称してレチノイドと呼ばれる。レチノイドの皮膚への作用として、角層剥離作用によるターンオーバーの促進、ケラチノサイトの増殖促進及び分化誘導による表皮肥厚、真皮線維芽細胞におけるコラーゲンやエラスチンなどの弾性線維の産生亢進、皮脂腺機能抑制による皮脂分泌低下、並びにメラニン顆粒の排出による色素沈着の改善が知られている。したがって、レチノイドは、抗シワ作用、美白作用、抗シミ作用などを目的して化粧料や医薬品に配合されている。
【0003】
その一方で、レチノイドは皮膚に対する刺激性を有しており、その副作用として、発赤、表皮過形成、浮腫、水疱、紅斑、熱傷、かゆみ、熱傷感受性、表皮剥離などが生じることがある。こうした副作用は、特に高濃度のレチノイドや、生理活性の強いレチノイド、例えばトレチノイン等が配合された皮膚外用剤を用いた際に生じることが多い。その一方で、レチノイドの副作用に対する感受性は、使用する対象に応じて大きく異なっている。(非特許文献1:J Drugs in Dermatology (2011), vol. 10, Issue 5, page 483-489)
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J Drugs in Dermatology (2011), vol. 10, Issue 5, page 483-489
【文献】網羅的遺伝子多型解析(SNP)日薬理誌(2005)、125, 148-152頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レチノイドの抗シワ作用、美白作用、及び抗シミ作用は、美容及び医療上極めて有用であるため、予めレチノイドの副作用に対する感受性を決定することは有用である。したがって、レチノイドの副作用に対する感受性を決定する方法の開発が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、レチノイドの副作用に対する感受性を決定することを目的として、被験者に対して遺伝子多型、特にSNP解析を行った。その結果、レチノイドの副作用に対する感受性に関わる264種の遺伝子多型、特にSNPを同定し、本発明に至った。
【0007】
そこで、本発明は以下の発明:
rs11264256、rs12129712、rs79393875、rs77098893、rs117172861、rs189364622、rs142413201、rs16836262、rs10190756、rs143833788、rs367757001、rs146490521、rs149747233、rs142834469、rs35219727、rs180936202、rs192883707、rs74384211、chr3:145318006:T:C、rs150321408、rs188646953、、rs6451234、rs12153578、rs12522083、rs2504905、rs6924827、rs75473584、rs1874404、rs75979900、rs74756212、chr7:57761277:GA:G、rs376694855、rs190896232、chr7:62622355:ATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATT:A、rs141378112、rs148217145、rs118097902、rs144455233、rs80110077、rs77590716、rs182345837、rs182712478、rs148109217、rs114276193、rs76234757、rs150594929、rs583641、rs568982、rs151336244、rs74341477、rs74712856、rs76086616、rs72213476、rs199680407、rs140189230、chr12:13295924:ACTT:A、rs5803510、rs117870315、rs139534747、rs112399579、rs72641020、rs72641025、rs139806172、rs72641051、rs72641054、rs146458360、rs17267348、rs17188613、rs72641063、chr13:93364715:AAC:A、rs16947848、rs1933192、rs17267362、rs17267369、rs1933191、rs117349244、rs56865501、rs141950809、rs72641088、rs67937794、rs66904991、rs66498781、rs57888578、rs60005783、rs11838810、rs11838825、rs11839660、rs11840951、rs72641100、rs67037212、rs78226726、rs34407653、rs57660170、rs7994061、rs78510371、rs17267439、rs11291152、rs7325627、rs9589649、rs9523866、rs71815886、rs1932194、rs17188760、rs4924269、rs57779669、rs11631905、rs146603798、rs76981822、rs34365165、rs1862450、rs56124193、rs142249518、rs75365663、rs12609658、rs76798890、rs12610503、rs10417947、rs113242419、rs10423303、rs8112254、rs186658317、chr20:25335351:G:A、chr20:25362934:T:C、chr20:25699935:T:G、rs2837971、rs9981747、rs73366468、rs3215895、rs61084367、rs59874887、rs58795078、rs77353301、rs72751553、rs72751555、rs114562381、rs4667864、rs12692666、rs10207946、chr2:167027058:A:G、rs117922874、rs200162964、chr3:176034566:A:G、rs2303137、rs1010600、rs7381111、rs10077384、rs142644927、rs147831886、rs4484457、rs147835552、rs7735423、rs1820005、rs12332211、rs4362916、rs4386714、rs6881783、rs199982719、rs17155553、rs7731680、rs6596535、rs6596536、rs10058377、rs17155559、rs7734977、rs7701241、rs10479259、rs10062431、rs73195737、rs59531312、rs10054393、rs189936937、chr8:64870523:AT:A、rs56290508、rs56354846、rs16919204、rs71471143、rs72837632、rs2175925、rs148267634、rs12772593、rs11595562、rs72260862、rs71940964、rs11596080、rs7923098、rs11816602、rs17105050、rs34638006、rs10887463、rs10887464、rs7093187、rs7075763、rs7086187、rs11201523、rs883802、rs142939963、rs10887465、rs7074418、rs200756077、chr10:87020520:A:AG、chr10:87020524:AAAATG:A、rs12359344、rs11201526、rs11201527、rs11201528、rs34168904、rs35164626、rs7098463、rs11492856、rs7092376、rs12763173、rs12764075、rs11511546、rs28766011、rs11201537、rs36071582、rs2882516、rs10509517、rs12769551、rs11368758、rs7910468、rs12775803、rs66483968、rs11201552、rs11201553、rs7920425、chr10:87112822:GA:G、rs71471155、rs9663303、rs72840999、rs72841000、rs11025696、rs11025697、rs11517566、rs12789625、rs151088833、rs11025698、rs11025699、rs35230659、rs34391252、rs150667993、rs75905889、rs193002524、chr11:21747092:GTGTTTGTGTGTT:G、rs35565978、rs61556663、rs74030727、rs11073552、rs148027820、rs142595348、rs144638318、rs147470668、rs3851135、rs62129325、rs144365368、rs3988408、rs11437257、rs141791163、rs10008137、rs7832052、rs7845083、chr11:95462296:C:CAT、及びrs9978357からなる群から選ばれる、少なくとも1の遺伝子多型を検出する工程、
検出された遺伝子多型に基づき、レチノイドの副作用に対する感受性を決定する工程
を含む、レチノイドの副作用に対する感受性の決定方法に関する。
【0008】
さらに本発明は、レチノイドの副作用に対する感受性の決定方法により決定された感受性に基づき、化粧料、医薬品、及び美容法を提供する方法にも関する。
【0009】
さらに本発明は、以下の:
候補薬剤を適用する工程、
適用された細胞において、下記の:ABHD12、AC005009.1,GRM3、AC005037.3,ORC2、AC067959.1,AC011752.1、AC068490.2、AC073218.2-AC012593.1、AC091487.1-RP11-181F12.1、ACSS1-VSX1、BACE2、BACE2-FAM3B、CABP5、CAPSL、CASP10、CD28,CD28-KRT18P39、CTD-2019O4.1-ANO5、CTD-2021J15.1-ACTG1P13、CTD-3194G12.1,CTB-75G16.3-CTD-3194G12.1、CTLA4、DLEU1、DPCD、FAM214B,STOML2、FBXW4、GABBR2、GPC5、GPC5,GPC5-AS1、GPC5-AS1,GPC5、GPC5-LINC00363、KCNN3、KIAA1467-EMP1、KRT18P39,AC125238.1,NPM1P33,KRT18P39-NPM1P33、LINC00364-BCRP9、MRPL50P1-AC009414.1、NIF3L1,ORC2,NIF3L1-ORC2,.、PTH2R、RBMS3、RFX3、RNU6-1060P-RP11-439H9.1、RNU6-446P,MRC2、RNU6-474P-CTLA4、RNU7-157P-MIR3147、RP11-125M16.1-PHACTR1、RP11-1324A7.2,ZNF716-RP11-1324A7.2、RP11-196D18.5-snoU2_19、RP11-196I18.4-RP11-417L14.1,.、RP11-347L18.1-RP11-300M24.1、RP1-135L22.1-RP11-204E9.1、RP11-368M16.7-RP11-548K12.6、RP11-373D7.1,snoU2_19-RP11-373D7.1、RP11-373D7.1-PHKG1P1、RP11-377D9.3、RP11-385J1.2,KCNMB2、RP11-500M10.1-AC091320.2、RP11-533K11.1-RP11-500M10.1、RP11-548K12.6,RP11-548K12.8,RP11-548K12.5,RP11-548K12.7、RP11-556I14.2、RP11-556I14.2,RP11-556I14.1、RP11-622L21.1-GM2AP1、RP11-702B10.1-ETS1、RP11-79C6.1,RP11-79C6.1-CAPSL、RPL4P5-RP11-366I21.1、SLC1A6、SLC5A11,TNRC6A-SLC5A11、SPRED1-FAM98B、WDR7-OT1,WDR7、ZNF337-VN1R108P、AC010127.3、ACOT12、ACOT12,ACOT12、AL592063.1-RP11-323I1.1、CTD-2147F2.1,CTD-2147F2.2、CTD-2147F2.1-RNA5SP401、CTD-2147F2.2,CTD-2147F2.1、GPR1、KCNH7-RPL7P61、MSANTD3-TMEFF1,TMEFF1、MURC,MSANTD3-TMEFF1,TMEFF1、NELL1、NELL1-CTD-2019O4.1、NUDT12-RP11-138J23.1、PERP-KIAA1244、PLA2G4C、RP11-181F12.1-RP11-475D12.1、RP11-32K4.1、RP11-696F10.1-RP11-119D18.1、RP11-78E6.1-RP11-71G7.1、RP11-79C6.1,IL7R-RP11-79C6.1、RTTN-SOCS6、SQSTM1P1-LINC00448、ZNF385B-SNORA43、ANKRD44、GPRIN3-RP11-115D19.1、TUSC3-PPM1AP1、RP11-644L4.1-FAM76B、及びBACE2からなる群から選ばれる少なくとも1の遺伝子の発現変化を決定する工程、又は遺伝子から翻訳された機能タンパク質の作用変化を評価する工程、及び
前記発現変化又は機能変化に基づき、候補薬剤のレチノイド感受性の制御を決定する工程
を含む、候補薬剤のスクリーニング方法にも関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、レチノイドの副作用に対する感受性を決定することが可能となり、決定された感受性に基づいて、化粧料及び医薬品、並びに美容法及び治療法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、共変量を年齢と会場とした解析において、レチノイド感受性との関連する遺伝子多型を評価した、ゲノムワイド関連解析{Genome-Wide Association Study(GWAS)}の結果を示したマンハッタンプロット図である。
【
図2】
図2は、共変量を年齢とした解析において、レチノイド感受性との関連する遺伝子多型を評価した、ゲノムワイド関連解析{Genome-Wide Association Study(GWAS)}の結果を示したマンハッタンプロット図である。
【
図3】
図3は、GPC5、WDR7、CAPSL、GPR1、SLC1A、及びCASP10を選択したインジェニュイティパスウェイ解析を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、レチノイドの副作用に対する感受性と関連のある遺伝子多型を検出する工程、及び検出された遺伝子多型に基づき、レチノイドの副作用に対する感受性を決定する工程を含む、レチノイドの副作用に対する感受性の決定方法に関する。ここで、レチノイドの副作用に対する感受性と関連のある遺伝子多型としては、以下の:rs11264256、rs12129712、rs79393875、rs77098893、rs117172861、rs189364622、rs142413201、rs16836262、rs10190756、rs143833788、rs367757001、rs146490521、rs149747233、rs142834469、rs35219727、rs180936202、rs192883707、rs74384211、chr3:145318006:T:C、rs150321408、rs188646953、、rs6451234、rs12153578、rs12522083、rs2504905、rs6924827、rs75473584、rs1874404、rs75979900、rs74756212、chr7:57761277:GA:G、rs376694855、rs190896232、chr7:62622355:ATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATATT:A、rs141378112、rs148217145、rs118097902、rs144455233、rs80110077、rs77590716、rs182345837、rs182712478、rs148109217、rs114276193、rs76234757、rs150594929、rs583641、rs568982、rs151336244、rs74341477、rs74712856、rs76086616、rs72213476、rs199680407、rs140189230、chr12:13295924:ACTT:A、rs5803510、rs117870315、rs139534747、rs112399579、rs72641020、rs72641025、rs139806172、rs72641051、rs72641054、rs146458360、rs17267348、rs17188613、rs72641063、chr13:93364715:AAC:A、rs16947848、rs1933192、rs17267362、rs17267369、rs1933191、rs117349244、rs56865501、rs141950809、rs72641088、rs67937794、rs66904991、rs66498781、rs57888578、rs60005783、rs11838810、rs11838825、rs11839660、rs11840951、rs72641100、rs67037212、rs78226726、rs34407653、rs57660170、rs7994061、rs78510371、rs17267439、rs11291152、rs7325627、rs9589649、rs9523866、rs71815886、rs1932194、rs17188760、rs4924269、rs57779669、rs11631905、rs146603798、rs76981822、rs34365165、rs1862450、rs56124193、rs142249518、rs75365663、rs12609658、rs76798890、rs12610503、rs10417947、rs113242419、rs10423303、rs8112254、rs186658317、chr20:25335351:G:A、chr20:25362934:T:C、chr20:25699935:T:G、rs2837971、rs9981747、rs73366468、rs3215895、rs61084367、rs59874887、rs58795078、rs77353301、rs72751553、rs72751555、rs114562381、rs4667864、rs12692666、rs10207946、chr2:167027058:A:G、rs117922874、rs200162964、chr3:176034566:A:G、rs2303137、rs1010600、rs7381111、rs10077384、rs142644927、rs147831886、rs4484457、rs147835552、rs7735423、rs1820005、rs12332211、rs4362916、rs4386714、rs6881783、rs199982719、rs17155553、rs7731680、rs6596535、rs6596536、rs10058377、rs17155559、rs7734977、rs7701241、rs10479259、rs10062431、rs73195737、rs59531312、rs10054393、rs189936937、chr8:64870523:AT:A、rs56290508、rs56354846、rs16919204、rs71471143、rs72837632、rs2175925、rs148267634、rs12772593、rs11595562、rs72260862、rs71940964、rs11596080、rs7923098、rs11816602、rs17105050、rs34638006、rs10887463、rs10887464、rs7093187、rs7075763、rs7086187、rs11201523、rs883802、rs142939963、rs10887465、rs7074418、rs200756077、chr10:87020520:A:AG、chr10:87020524:AAAATG:A、rs12359344、rs11201526、rs11201527、rs11201528、rs34168904、rs35164626、rs7098463、rs11492856、rs7092376、rs12763173、rs12764075、rs11511546、rs28766011、rs11201537、rs36071582、rs2882516、rs10509517、rs12769551、rs11368758、rs7910468、rs12775803、rs66483968、rs11201552、rs11201553、rs7920425、chr10:87112822:GA:G、rs71471155、rs9663303、rs72840999、rs72841000、rs11025696、rs11025697、rs11517566、rs12789625、rs151088833、rs11025698、rs11025699、rs35230659、rs34391252、rs150667993、rs75905889、rs193002524、chr11:21747092:GTGTTTGTGTGTT:G、rs35565978、rs61556663、rs74030727、rs11073552、rs148027820、rs142595348、rs144638318、rs147470668、rs3851135、rs62129325、rs144365368、rs3988408、rs11437257、rs141791163、rs10008137、rs7832052、rs7845083、chr11:95462296:C:CAT、及びrs9978357
からなる群から選ばれる、少なくとも一つの遺伝子多型が用いられる。
【0013】
本発明において、レチノイドとは、レチノール、レチナール、及びレチノイン酸などのビタミンA、並びにその誘導体をいう。誘導体は、ビタミンA活性を有していれば任意の誘導体であってよく、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、レチニールエステルなどが挙げられる。レチノイン酸には、オールトランスレチノイン酸(トレチノイン)、9-シスレチノイン酸、13-シスレチノイン酸などの立体異性体が知られており、特にトレチノインが高い効力を有することが知られている。
【0014】
レチノイドの副作用としては、催奇性、炎症誘発、角層剥離、炎症誘導性色素沈着などが挙げられる。本発明では、これらの副作用のうち、特に皮膚外用剤として使用された場合の副作用、すなわち炎症誘発、角層剥離、炎症誘導性色素沈着に関する。皮膚において誘発される炎症の結果として、落屑、紅斑、発赤、皮膚炎が生じうる。
【0015】
レチノイドの副作用に対する感受性は、任意に分類することができる。例えば、感受性有りの群と無しの群といったように2つ以上、場合によっては高、低、無の3つの群、さらに高、中、低、無の4つの群、又はそれ以上の群、例えば5群に分類することができる。感受性は、検出される遺伝子多型の種類及び数に応じて決定することができる。一例として、4群に分類する場合、264種類の遺伝子多型のうち、ある一定数以上の遺伝子多型が検出された場合に感受性が高いと判定することができ、ある一定数の遺伝子多型が検出されない場合に感受性が低いと判定することができる。例えば、3以上、場合により5以上、さらには10以上の遺伝子多型が検出された場合に感受性が高いと判定することが出来る。また、264種の遺伝子多型のうち、GPC5、WDR7、CAPSL、GPR1、SLC1A6、及びCASP10からなる群から選択される遺伝子に関与する遺伝子多型は、レチノイドの副作用に対する感受性への影響が大きいと考えられる。GPC5、WDR7、CAPSL、GPR1、SLC1A6、及びCASP10は、ロジスティック回帰分析により、レチノイドの副作用に対する感受性への影響が大きい遺伝子として挙げられている。また、これらの遺伝子についてインジェニュイティパスウェイ解析(IPA)を行ったところ、GPC5、WDR7、SLC1A6、CASP10、及びNTRK1が、皮膚感覚障害への関与が示唆されたことから、レチノイドの副作用に対する感受性にも寄与すると考えられる。また、これらの遺伝子はヒト皮膚で発現されることも確認されている。
【0016】
GPC5遺伝子に関与する遺伝子多型として、rs9589649、rs9523866、rs71815886、rs1932194、rs17188760、rs112399579、rs72641020、rs72641025、rs139806172、rs72641051、rs72641054、rs146458360、rs17267348、rs17188613、rs72641063、chr13:93364715:AAC:A、rs16947848、rs1933192、rs17267362、rs17267369、rs1933191、rs117349244、rs56865501、rs141950809、rs72641088、rs67937794、rs66904991、rs66498781、rs57888578、rs60005783、rs11838810、rs11838825、rs11839660、rs11840951、rs72641100、rs67037212、rs78226726、rs34407653、rs57660170、rs7994061、rs78510371、rs17267439、rs11291152、rs7325627が挙げられる。WDR7遺伝子に関与する遺伝子多型として、rs75365663が挙げられる。CAPSL遺伝子に関与する遺伝子多型として、rs12522083、rs1010600、rs7381111、rs10077384、rs142644927、rs147831886、rs4484457が挙げられる。GPR1遺伝子に関与する遺伝子多型として、rs117922874が挙げられる。SLC1A6遺伝子に関与するSNPとしてrs12609658、rs76798890、rs12610503、rs10417947、rs113242419、rs10423303が挙げられる。CASP10遺伝子に関与する遺伝子多型として、rs10190756が挙げられる。
【0017】
したがって、これらの遺伝子に関与する遺伝子多型が1つ以上、好ましくは3以上、さらに好ましくは5以上検出された場合、レチノイドの副作用に対する感受性が高いと判定することができる。レチノイドの副作用に関する感受性は、医師以外のものによって決定することができ、例えばエステティシャン、美容部員、カウンセラーなどの非医療従事者や、臨床検査技師などの医療従事者も決定することができる。本発明の方法は、レチノイドの副作用に対する感受性の決定のための分析方法、非診断的方法又は診断補助方法ということもできる。
【0018】
本発明において、遺伝子多型、特にSNPは、rs番号(Reference SNP ID number)で表示されている。各rs番号に対応するSNPの詳細情報(染色体上の位置や変異)については、米国国立生物工学情報センター(NCBI)により管理されており、NCBIのホームページ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)において参照可能である。また、新規に見いだされ、まだrs番号が付与されていないものについては、「染色体の番号:その位置:汎用型の塩基:多型の塩基」により表されている。一例として「chr3:145318006:T:C」などと表記することができる。
【0019】
遺伝子多型の検出は、公知である任意の方法で行われてよい。本発明において、遺伝子多型は、特に一塩基多型(SNP)を指すが、複数塩基から構成される遺伝子多型であってもよい。一例として、被験者の生体試料、例えば唾液、血液、粘膜、組織片、毛髪等から、定法に基づき、被験者の核酸を精製し、精製された核酸において遺伝子多型が検出される。したがって、本発明のレチノイドの副作用に対する感受性の決定方法には、試料調製工程、核酸精製工程がさらに含まれていてもよい。遺伝子多型検出工程では、精製された核酸において遺伝子多型の検出を可能にする手法であれば、任意の方法を用いることができる。対象となる遺伝子多型の位置周辺の配列決定を行って、遺伝子多型検出することもできるし、PCR法をベースとした手法、DNAプローブを用いた手法、質量分析を用いた手法を用いて検出することもできる。PCRをベースとした手法として、SNPタイピング法、TaqMan PCR法、一塩基伸長法、Pyrosequencing法、Exonuclease Cycling Assay法などが挙げられる。DNAプローブを用いた手法としては、Invader法などが挙げられる(非特許文献2:網羅的遺伝子多型解析(SNP)日薬理誌、125, 148-152, 2005)。遺伝子多型は、連鎖不平衡にある別の遺伝子多型を伴うことがある。目的とする遺伝子多型と連鎖不平衡にある遺伝子多型を検出することで、目的とする遺伝子多型を検出することができる。したがって、本発明において、遺伝子多型の検出とは、目的とする遺伝子多型を直接検出することに限定されず、連鎖不平衡にある遺伝子多型を検出することで、目的とする遺伝子多型を検出することも含まれるものとする。
【0020】
また、既に配列決定がされた個人の塩基配列、又は当該塩基配列から決定された個人の遺伝子多型のリストに基づき、レチノイドの副作用に対する感受性に関与する遺伝子多型の存在を検出することもできる。この場合、既に決定された塩基配列のデータ内で、遺伝子多型の存在する位置の配列を調べることで、遺伝子多型の存在を検出でき、また、個人の遺伝子多型のリストに、レチノイドの副作用に対する感受性に関与する遺伝子多型が存在するか否かを決定することができる。したがって、この場合の遺伝子多型の検出は、遺伝子多型情報が記憶されたコンピュータに、塩基配列データや個人の遺伝子多型リストを入力することで行われてもよい。本発明において、DNA情報とは、個人の全DNA情報であってもよいし、個人の遺伝子多型リストであってもよい。より好ましい態様では、入力は、端末からインターネットを介して入力され、サーバー上で遺伝子多型が検出され、検出結果を、インターネットを介して当該端末に出力することができる。
【0021】
本発明により、レチノイドの副作用に対する感受性を検出される対象は、任意の人種であってよい。より好ましくは、対象となる人種は、黄色人種(モンゴロイド)である。
【0022】
単一の遺伝子多型を検出することで、レチノイドの副作用に対する感受性を決定することもできるが、より優れた感度を達成する観点では、複数の遺伝子多型を検出して、感受性を決定することが好ましい。複数の遺伝子多型の検出に基づき、感受性を決定するためには、一例として、その遺伝子多型が、当該感受性にポジティブ又はネガティブの作用を与えるかを明らかにし、その存在に応じてポイントを付することで、遺伝子多型スコアを算出することにより行われる。遺伝子多型スコアと感受性との関連を予め決定しておくことで、遺伝子多型スコアから、感受性を決定することができる。
【0023】
本発明のレチノイドの副作用に対する感受性の決定方法により感受性が決定された場合、感受性についての情報に基づき、カウンセリングを行うことができる。したがって、本発明の一態様は、カウンセリング方法にも関する。こうしたカウンセリングにおいて、使用する化粧料や医薬品についてアドバイスを提供することができる。一例として、レチノイドの副作用に対する感受性が高いと判定された対象には、レチノイド含有の化粧料の使用の注意喚起を行うことができる。またそのような対象には、注意喚起とともに又は注意喚起とは別に、レチノイドが含まれていないか、又は低減された化粧料を提供することができる。レチノイドの副作用に対する感受性が低いと判定された対象には、レチノイドを含有する化粧料を提供することができる。レチノイドの含量および使用量は、レチノイドの感受性に応じて変更して提供することができる。別の態様では、レチノイドの副作用に対する感受性が高いと判定された対象に、レチノイド感受性を緩和する方法や、感受性を緩和するための美容の指導サービス、感受性を緩和するための化粧料を選択する方法を提供することができる。感受性を緩和するために、レチノイドの刺激緩和剤を多く含む化粧料又は医薬品を提供することもできる。したがって、本発明は、レチノイドの副作用に対する感受性の決定方法により感受性を決定し、感受性に基づいて適切な化粧料又は医薬品を選択して提供することを含む、美容又は治療方法に関する。
【0024】
本発明における遺伝子多型を検出するための手法として、少なくとも1の遺伝子多型、またはその連鎖不平衡にある遺伝子多型を検出するための核酸試薬、核酸抽出試薬及び精製試薬を使用しうる。また、検出された遺伝子多型と感受性との関係を説明する使用説明書を含んでもよい。このような核酸試薬として、一例としては、遺伝子多型を選択的に増幅可能なプライマー、DNAポリメラーゼ、dNTP、そして場合により増幅緩衝液を含む。遺伝子多型を増幅可能なプライマーは、各遺伝子多型に対して、任意に設計することができる。
【0025】
核酸試薬として、核酸プローブを使用することもでき、プローブ検出試薬を使用することができる。かかる核酸プローブは、未固定のプローブを用いてもよいし、DNAチップ上に固定されたものを用いて、複数の遺伝子多型を同時に検出することができる。このような核酸プローブは、特定の遺伝子多型を検出可能なように標識されていてもよい。
【0026】
本発明で特定されたレチノイドの副作用に対する感受性に関わる遺伝子多型が存在する遺伝子も特定できる。このような遺伝子として、ABHD12、AC005009.1,GRM3、AC005037.3,ORC2、AC067959.1,AC011752.1、AC068490.2、AC073218.2-AC012593.1、AC091487.1-RP11-181F12.1、ACSS1-VSX1、BACE2、BACE2-FAM3B、CABP5、CAPSL、CASP10、CD28,CD28-KRT18P39、CTD-2019O4.1-ANO5、CTD-2021J15.1-ACTG1P13、CTD-3194G12.1,CTB-75G16.3-CTD-3194G12.1、CTLA4、DLEU1、DPCD、FAM214B,STOML2、FBXW4、GABBR2、GPC5、GPC5,GPC5-AS1、GPC5-AS1,GPC5、GPC5-LINC00363、KCNN3、KIAA1467-EMP1、KRT18P39,AC125238.1,NPM1P33,KRT18P39-NPM1P33、LINC00364-BCRP9、MRPL50P1-AC009414.1、NIF3L1,ORC2,NIF3L1-ORC2,.、PTH2R、RBMS3、RFX3、RNU6-1060P-RP11-439H9.1、RNU6-446P,MRC2、RNU6-474P-CTLA4、RNU7-157P-MIR3147、RP11-125M16.1-PHACTR1、RP11-1324A7.2,ZNF716-RP11-1324A7.2、RP11-196D18.5-snoU2_19、RP11-196I18.4-RP11-417L14.1,.、RP11-347L18.1-RP11-300M24.1、RP1-135L22.1-RP11-204E9.1、RP11-368M16.7-RP11-548K12.6、RP11-373D7.1,snoU2_19-RP11-373D7.1、RP11-373D7.1-PHKG1P1、RP11-377D9.3、RP11-385J1.2,KCNMB2、RP11-500M10.1-AC091320.2、RP11-533K11.1-RP11-500M10.1、RP11-548K12.6,RP11-548K12.8,RP11-548K12.5,RP11-548K12.7、RP11-556I14.2、RP11-556I14.2,RP11-556I14.1、RP11-622L21.1-GM2AP1、RP11-702B10.1-ETS1、RP11-79C6.1,RP11-79C6.1-CAPSL、RPL4P5-RP11-366I21.1、SLC1A6、SLC5A11,TNRC6A-SLC5A11、SPRED1-FAM98B、WDR7-OT1,WDR7、ZNF337-VN1R108P、AC010127.3、ACOT12、ACOT12,ACOT12、AL592063.1-RP11-323I1.1、CTD-2147F2.1,CTD-2147F2.2、CTD-2147F2.1-RNA5SP401、CTD-2147F2.2,CTD-2147F2.1、GPR1、KCNH7-RPL7P61、MSANTD3-TMEFF1,TMEFF1、MURC,MSANTD3-TMEFF1,TMEFF1、NELL1、NELL1-CTD-2019O4.1、NUDT12-RP11-138J23.1、PERP-KIAA1244、PLA2G4C、RP11-181F12.1-RP11-475D12.1、RP11-32K4.1、RP11-696F10.1-RP11-119D18.1、RP11-78E6.1-RP11-71G7.1、RP11-79C6.1,IL7R-RP11-79C6.1、RTTN-SOCS6、SQSTM1P1-LINC00448、ZNF385B-SNORA43、ANKRD44、GPRIN3-RP11-115D19.1、TUSC3-PPM1AP1、RP11-644L4.1-FAM76B、及びBACE2からなる群から選ばれる少なくとも1の遺伝子が挙げられる。なかでも、ロジスティック回帰分析及び/又はインジェニュイティパスウェイ解析(IPA)の結果から、レチノイドの副作用に対する感受性への影響が大きい遺伝子としてGPC5、WDR7、CAPSL、GPR1、SLC1A6、CASP10、及びNTRK1からなる群から選択される遺伝子が挙げられる。これらの遺伝子は、レチノイドの副作用に対する感受性に関わる遺伝子であることから、候補薬剤の適用後におけるこれらの遺伝子の発現変化を指標とすることで、レチノイド感受性に対して作用できる薬剤のスクリーニングに用いることができる。また、遺伝子から翻訳された機能タンパク質の作用変化を評価し、その変化を調整する候補薬剤のスクリーニングも可能である。レチノイド感受性に対する作用としては、レチノイド感受性の緩和作用、又はその逆のレチノイド感受性の増加作用が挙げられる。上述の遺伝子発現を変動させることができるとスクリーニングされた候補薬剤が、レチノイド感受性の緩和作用、又はその逆のレチノイド感受性の増加作用のどちらを有するかについては、遺伝子の種類及びそのメカニズムに応じて決定することができるし、さらに2次スクリーニングを行うことで容易に決定することもできる。また、機能タンパク質の作用変化がレチノイド感受性の緩和作用、又はその逆のレチノイド感受性の増加作用を示し、その作用の変化をコントロールできるものが、候補薬剤となる。2次スクリーニングとしては、一例として、被験者においてレチノイド含有化粧品との併用することにより決定することができる。
【0027】
さらに好ましい態様では、本発明において使用されうる遺伝子多型は、以下の:rs77353301、rs72751553、rs72751555、rs114562381、rs4667864、rs12692666、rs10207946、chr2:167027058:A:G、rs117922874、rs192883707、rs200162964、chr3:176034566:A:G、rs2303137、rs12153578、rs12522083、rs1010600、rs7381111、rs10077384、rs142644927、rs147831886、rs4484457、rs147835552、rs7735423、rs1820005、rs12332211、rs4362916、rs4386714、rs6881783、rs199982719、rs17155553、rs7731680、rs6596535、rs6596536、rs10058377、rs17155559、rs7734977、rs7701241、rs10479259、rs10062431、rs73195737、rs59531312、rs10054393、rs189936937、rs118097902、chr8:64870523:AT:A、rs150594929、rs56290508、rs56354846、rs16919204、rs151336244、rs71471143、rs72837632、rs2175925、rs148267634、rs12772593、rs11595562、rs72260862、rs71940964、rs11596080、rs7923098、rs11816602、rs17105050、rs34638006、rs10887463、rs10887464、rs7093187、rs7075763、rs7086187、rs11201523、rs883802、rs142939963、rs10887465、rs7074418、rs200756077、chr10:87020520:A:AG、chr10:87020524:AAAATG:A、rs12359344、rs11201526、rs11201527、rs11201528、rs34168904、rs35164626、rs7098463、rs11492856、rs7092376、rs12763173、rs12764075、rs11511546、rs28766011、rs11201537、rs36071582、rs2882516、rs10509517、rs12769551、rs11368758、rs7910468、rs12775803、rs66483968、rs11201552、rs11201553、rs7920425、chr10:87112822:GA:G、rs71471155、rs9663303、rs72840999、rs72841000、rs11025696、rs11025697、rs11517566、rs12789625、rs151088833、rs11025698、rs11025699、rs35230659、rs34391252、rs150667993、rs75905889、rs193002524、chr11:21747092:GTGTTTGTGTGTT:G、rs35565978、rs139534747、rs9589649、rs9523866、rs71815886、rs1932194、rs17188760、rs61556663、rs74030727、rs11073552、rs148027820、rs142595348、rs144638318、rs147470668、rs75365663、rs3851135、rs62129325、rs144365368、chr20:25699935:T:G、及びrs3988408からなる群から選ばれうる。
【0028】
さらに別の態様では、本発明において使用されうる遺伝子多型は、rs16836262、rs142413201、rs10190756、rs150321408、rs6924827、chr7:57761277:GA:G、rs74756212、rs75979900、rs76234757、rs199680407、chr12:13295924:ACTT:A、rs9523866、rs9589649、rs1932194、rs71815886、rs17188760、rs142249518、rs75365663、rs12609658、rs76798890、rs10417947、rs113242419、及びrs10423303からなる群から選ばれうる。
【0029】
スクリーニング方法の一例として、
候補薬剤を含む溶液を適用する工程;
適用された細胞において遺伝子の発現変化を決定する工程;及び
前記発現変化に基づき、候補薬剤のレチノイド感受性に対する作用を決定する工程
を含む、候補薬剤のスクリーニング方法に関する。
【0030】
また、スクリーニング方法の他の例として、
候補薬剤を含む溶液を適用する工程;
適用された細胞において機能タンパクの作用への影響を評価する工程;及び
機能タンパク質の作用変化に基づき、候補薬剤のレチノイド感受性に対する作用を決定する工程
を含む、候補薬剤のスクリーニング方法に関する。
【0031】
さらに、スクリーニング方法のさらなる例として、
候補薬剤を含む溶液を適用する工程;
適用された細胞において遺伝子の発現を決定する工程;
適用された細胞において、機能タンパク質の作用への影響を評価する工程;及び
前記発現変化及び機能タンパク質の作用変化に基づき、候補薬剤のレチノイド感受性に対する作用を決定する工程
を含む、候補薬剤のスクリーニング方法に関する。
【0032】
候補薬剤を含む溶液の適用工程は、培養細胞に対して適用されてもよいし、皮膚に対して適用されてもよい。遺伝子の発現は、個別の遺伝子に対して、RT-PCRなどの手法により、遺伝子発現量を測定してもよいし、アレイを用いて遺伝子発現の変化を特定してもよい。対照として、候補薬剤を含まない溶液などを用いた場合の遺伝子発現、又は機能タンパク質の作用を測定し、候補薬剤を含む溶液を適用された細胞において、遺伝子発現やタンパク質の作用とを比較することにより、発現変化や作用変化を決定することができる。対照の測定値は予め実験を行うことで予め決定されていてもよいし、同時に行われていてもよい。
【0033】
機能タンパク質の作用の変化は、それぞれの機能を定量的に評価する評価系に基づき、変化を特定してもよい。機能タンパク質が、酵素である場合、酵素活性の変化を測定することで、機能タンパク質の作用の変化を評価することができる。その場合、例えば、酵素の特異基質を用いて分解活性を指標として、候補薬剤のレチノイド感受性を評価することができる。機能タンパク質が他の物質(特にタンパク質)に作用して細胞機能に影響する場合には、他の物質との相互作用を指標として機能タンパク質の作用変化を評価することができる。機能タンパク質が、局在を変えることで機能を発揮する場合もあり、局在の変化を指標として、機能タンパク質の作用変化を評価することもできる。その場合例えば、核やゴルジ体などの所定の細胞小器官、細胞膜、細胞質内、又は細胞外などの局在位置に応じて、機能タンパク質の作用変化を評価でき、それにより候補薬剤のレチノイド感受性を評価することができる。また、他のタンパク質との相互作用や、局在変化の帰結として、生じる細胞増殖や細胞内イオン濃度の変化などの表現型の変化を指標とすることができる。
【0034】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【0035】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例】
【0036】
試験1
312名の被験者に対し、普段のスキンケアのお手入れに加えて、レチノール配合クリームを、4週間にわたって全顔に1日2回(朝夜)塗布した。4週間の連用塗布後、外観写真を撮影し、問診を行うとともに、皮膚所見を判定した。
【0037】
試験2
252名の被験者に対し、普段のスキンケアのお手入れに加えて、レチノール配合美容液を、4週間にわたって、目及び口の周辺に1日2回(朝夜)塗布した。4週間の連用塗布後、外観写真を撮影し、問診を行うとともに、皮膚所見を判定した。
【0038】
試験3
149名の被験者に対し、普段のスキンケアのお手入れに加えて、レチノール配合美容液を、2週間にわたって、目及び頬の周辺に1日2回(朝夜)塗布した。2週間の連用塗布後、外観写真を撮影し、問診を行うとともに、皮膚所見を判定した。
【0039】
試験4
88名の被験者に対し、普段のスキンケアのお手入れに加えて、レチノール配合美容液を被験試料とし、被験試料からレチノールのみを抜去した製剤を対照試料として、それぞれ左顔面及び右顔面に分けて3カ月にわたり1日2回適用を行った後に、外観写真を撮影し、問診を行うとともに、皮膚所見を判定した。
【0040】
試験5
79名の被験者に対し、普段のスキンケアのお手入れに加えて、レチノール配合美容液を被験試料とし、被験試料からレチノールのみを抜去した製剤を対照試料として、それぞれ左顔面及び右顔面に分けて9週間にわたり1日2回(朝夜)塗布した後に、外観写真を撮影し、問診を行うとともに、皮膚所見を判定した。
【0041】
試験6
15名の被験者は、普段のスキンケアのお手入れに加えて、レチノール配合美容液をクリニックの医師の指導のもと使用した結果、皮膚トラブルが観察された方で、トラブル発生後に問診を行うとともに、皮膚所見を判定した。
【0042】
レチノール感受性の判定
試験1~6で得られた結果に基づき、被験者をレチノール感受性の反応群と健常群に分類した。具体的に、健常群は、レチノール試料の投与に対しトラブルが全く見られなかった被験者の群に関する。反応群は、副作用が明らかに認められ、レチノールに対する皮膚トラブルを経験した被験者の群に関する。反応群についてはさらに、強反応群、中反応群、弱反応群に分類した。弱反応群は、最大4日間にわたる弱い感覚刺激を呈する群として分類した。中反応群は、感覚刺激を呈しかつ皮膚所見を示す群、又は5日以上にわたり感覚刺激を呈する群として分類した。強反応群は、腫脹を伴う群、又は強い感覚刺激を呈しレチノールの使用を中止した群として分類した。
【0043】
被験者から、唾液を採取し、DNAを精製して、SNPアレイ解析に供した。SNPアレイ解析として、ジャポニカアレイ(株式会社東芝)を用いてジェノタイピングした。ジェノタイピング結果についてインピュテーションを行い、網羅的に被験者の遺伝子多型の結果を取得した。
【0044】
試験1及び2、並びに試験6の15の結果をもとに、年齢を考慮したロジスティック回帰による関連解析を行った(分析1)。具体的に、レチノール感受性の中反応群及び強反応群の検体についての遺伝子多型の結果をもとに、ToMMoコホートを追加し、共変量として年齢を付加して、Logistic Regrationを実施し、マンハッタンプロット図(
図1)とともにp値<10
-5となる遺伝子多型として、下記の表に列挙される遺伝子多型が特定された。
【0045】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0046】
試験1~5、並びに試験6の15検体の結果をもとに、年齢と試験会場を考慮したロジスティック回帰による関連解析を行った(分析2)。具体的に、レチノール感受性の中反応群及び強反応群の検体について、遺伝子多型の結果をもとに、ToMMoコホートを追加し、共変量として年齢及び会場(試験1と2と追加15検体のグループと、試験3のグループの2群、ToMMoコホートは試験1及び2側に追加)を付加して、Logistic Regrationを実施し、マンハッタンプロット図(
図2)とp値<10
-5となる遺伝子多型として、下記の表に列挙される遺伝子多型が特定された。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0047】
試験1~5、並びに試験6の15の結果をもとに、年齢と試験会場を考慮したロジスティック回帰による関連解析を行った(分析3)。具体的に、レチノール感受性の中反応群及び強反応群の検体について、の遺伝子多型の結果をもとに、ToMMoコホートを追加し、共変量として年齢、濃度(高濃度107名、中濃度359名、不明:1名)を付加して、Logistic Regrationを実施し、p値<10
-5となる遺伝子多型として、下記の表に列挙される遺伝子多型が特定された。
【表3】
【0048】
IPA解析
ロジスティック回帰分析の分析1でレチノイド感受性に影響が高い可能性のある遺伝子としてGPC5、WDR7、CAPSL、GPR1を選択し、分析2でレチノイド感受性に影響が高い可能性のある遺伝子としてGPC5、WDR7、SLC1A、CASP10を選択した。これらのうちGPR1はレチノイン酸レセプター結合性タンパク質に結合することが知られており、レチノイド感受性に影響があることが強く示唆された。さらにこれらの遺伝子がこれまでの知見と照らし合わせて、直接的あるいは間接的に皮膚感受性に影響があることが知られていることを調査することを目的に、QIAGEN社の提供するナレッジデータベースを用いて、遺伝子間の機能のパスウェイを文献レベルの知見から総合的に解析することを可能とするIngenuity Pathway Analysis (IPA)を用いて解析を行った。IPAによる解析により、CASP10、GPC5、WDR7、及びSLC1A6が間接的に複数の因子を介して皮膚感受性に影響を及ぼす可能性が示唆され、さらにその途中にNTRK1遺伝子が関与する可能性がわかった(
図3)。NTRK1はNeurotrophic Receptor Tyrosine Kinase 1の遺伝子であり、同遺伝子産物は細胞分化に関与し、感覚神経のサブタイプの決定に関与することが知られ、その欠損は先天性無痛無汗症(Congenital insensitivity to pain with anhidrosis :CIPA)を引き起こすことが知られている。