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▶ 株式会社 伊藤園の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】可食フィルム
(51)【国際特許分類】
   A23L 5/00 20160101AFI20231030BHJP
   A23L 29/262 20160101ALI20231030BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20231030BHJP
【FI】
A23L5/00 B
A23L29/262
A23L29/256
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019130398
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021013335
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】591014972
【氏名又は名称】株式会社 伊藤園
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100201606
【弁理士】
【氏名又は名称】田岡 洋
(72)【発明者】
【氏名】椎名 香奈子
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 崇紀
(72)【発明者】
【氏名】原田 真祐子
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0100640(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0111275(US,A1)
【文献】特表2008-512119(JP,A)
【文献】特開2012-249585(JP,A)
【文献】特開平10-215792(JP,A)
【文献】特開2003-259805(JP,A)
【文献】特開2008-278813(JP,A)
【文献】特開昭56-160959(JP,A)
【文献】特開平08-112076(JP,A)
【文献】特開平08-112073(JP,A)
【文献】特開2012-165712(JP,A)
【文献】特開2005-289867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有色植物(香料を除く)、無機物および基材を含有する可食フィルムであって、
前記無機物はカルシウムを含み、前記可食フィルムに対し前記カルシウムを0.75~6質量%含有することを特徴とする可食フィルム。
【請求項2】
前記有色植物を10~80質量%含むことを特徴とする請求項1に記載の可食フィルム。
【請求項3】
グリセリンを3.0~40質量%含むことを特徴とする請求項1または2に記載の可食フィルム。
【請求項4】
前記有色植物が、カロテノイド、クロロフィルおよびタンニンの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の可食フィルム。
【請求項5】
有色植物(香料を除く)、無機物および基材を含有する可食フィルムの耐光性向上方法であって、
無機物としてカルシウムの前記可食フィルムに対する含有量を、0.75~6.0質量%に調整する
ことを特徴とする可食フィルムの耐光性向上方法。
【請求項6】
有色植物(香料を除く)、無機物および基材を含有する可食フィルムの抜き加工性向上方法であって、
無機物としてカルシウムの前記可食フィルムに対する含有量を、0.75~6.0質量%に調整し、
前記可食フィルムにさらにグリセリンを含有させ、前記グリセリンの前記可食フィルムに対する含有量を3.0~40質量%に調整する
ことを特徴とする可食フィルムの抜き加工性向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有色植物を含有し、耐光性に優れた可食フィルムに関するものである。また、本発明は、可食フィルムの耐光性向上方法および抜き加工性向上方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、菓子・氷菓等の食品や飲料などに装飾を付すこと等を目的として、フィルム状またはシート状の食品(本明細書において「可食フィルム」と総称することがある。)が提供されている。かかる可食フィルムは、澱粉、寒天、セルロース等の基材に食用色素等を配合し、装飾性を付与している。
【0003】
また、可食フィルムに色彩を付すにあたり、風味を向上させるため、有色の食用植物を用いたものも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-249585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる可食フィルムは、例えば、飲食品の装飾として配置された状態等において照明等の光照射条件下に置かれることがある。このような光照射条件下においては、色素が退色し可食フィルムの色がくすんでしまうという問題がある。特に、可食フィルムに色彩を付すにあたり有色の植物を用いる場合は退色の問題が顕著に生じ得る。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、耐光性に優れた可食フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく検討したところ、有色植物および基材を含有する可食フィルムにおいて、二価金属イオンを含む無機物を所定量含有させることにより、耐光性が向上することを見出し、本発明が完成されるに至った。具体的には、本発明は以下のとおりである。
【0008】
〔1〕 有色植物、無機物および基材を含有する可食フィルムであって、
前記無機物は二価の金属イオンを含み、前記可食フィルムに対し前記二価金属イオンを0.75~6質量%含有することを特徴とする可食フィルム。
〔2〕 前記有色植物を10~80質量%含むことを特徴とする〔1〕に記載の可食フィルム。
〔3〕 グリセリンを3.0~40質量%含むことを特徴とする〔1〕〔2〕に記載の可食フィルム。
〔4〕 前記有色植物が、カロテノイド、クロロフィルおよびタンニンの少なくとも1つを含むことを特徴とする〔1〕~〔3〕に記載の可食フィルム。
〔5〕 前記二価の金属イオンが、カルシウムまたはバリウムであることを特徴とする〔1〕~〔4〕に記載の可食フィルム。
〔6〕 有色植物、無機物および基材を含有する可食フィルムの耐光性向上方法であって、
無機物として二価の金属イオンの前記可食フィルムに対する含有量を、0.75~6.0質量%に調整する
ことを特徴とする可食フィルムの耐光性向上方法。
〔7〕 有色植物、無機物および基材を含有する可食フィルムの抜き加工性向上方法であって、
無機物として二価の金属イオンの前記可食フィルムに対する含有量を、0.75~6.0質量%に調整し、
前記可食フィルムにさらにグリセリンを含有させ、前記グリセリンの前記可食フィルムに対する含有量を3.0~40質量%に調整する
ことを特徴とする可食フィルムの抜き加工性向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐光性に優れた可食フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態に係る可食フィルムは、有色植物、無機物および基材を含有するものであり、上記無機物として二価の金属イオンを所定量含有するものである。
【0011】
本実施形態においては、有色植物を含有させることで、当該植物に由来する優れた風味を可食フィルムに付与するとともに、色彩をも付与して装飾性に優れたものとなる。このような有色植物を含有する可食フィルムにおいては耐光性に劣るという課題が生じ得るが、本実施形態においては、無機物として二価の金属イオンを所定量含有することで、耐光性に優れたものとすることができ、光照射を長時間受ける条件下においても飲食品への装飾性に優れたものとなる。
【0012】
(1)有色植物
本実施形態で用いる有色植物としては、食用であって装飾に適した色彩を有するものであれば特に限定されない。
有色植物は、カロテノイド、クロロフィルおよびタンニンの少なくとも1つを含むことが好ましい。これらを有する有色植物は、装飾に適した色彩を有していることが多く、本実施形態において特に好適に用いることができる。なお、カロテノイド、クロロフィル、タンニン等を含む有色植物を用いると光照射による退色の懸念が生じ得るが、本実施形態においてはかかる退色が抑制されたものとなる。
【0013】
本実施形態においては、有色植物として、例えば、野菜、果実、穀類、茶類、豆類・種実類、いも類等だけでなく、藻類、きのこ類等も例示することができる。
本実施形態において用い得る植物体(野菜、果実、穀類、茶類、豆類・種実類、いも類、藻類、きのこ類等)は、本実施形態の効果が発揮される限りにおいて特に限定されないが、以下のものを例示することができる。
【0014】
野菜の種類としては、トマト、ナス、カボチャ、ピーマン、ゴーヤ、ナーベラ、トウガン、オクラ、エダマメ、サヤエンドウ、サヤインゲン、ソラマメ、トウガラシ、トウモロコシ、キュウリ等の果菜類、ニンジン、ゴボウ、タマネギ、タケノコ、レンコン、カブ、ダイコン、ジャガイモ、サツマイモ、ムラサキイモ、サトイモ、ラッキョウ、ニンニク、ショウガ等の根菜類、モロヘイヤ、アスパラガス、セロリ、ケール、ヨモギ、チンゲンサイ、ホウレンソウ、コマツナ、キャベツ、レタス、ハクサイ、ブロッコリー、カリフラワー、ミツバ、パセリ、ネギ、シュンギク、ニラ等の葉茎類等が挙げられる。
果実の種類としては、リンゴ、イチゴ、キウイフルーツ、ブドウ、モモ、パイナップル、グアバ、バナナ、マンゴー、アセロラ、プルーン、ブルーベリー、ハスカップ、パパイヤ、パッションフルーツ、ウメ、ナシ、アンズ、ライチ、メロン、西洋ナシ、スモモ類、柑橘類果実類(オレンジ、温州ミカン、レモン、グレープフルーツ、ライム、マンダリン、ユズ、シークワーサー、タンジェリン、テンプルオレンジ、タンジェロ、カラマンシー等)等が挙げられる。
【0015】
穀類の種類としては、コメ、オオムギ、コムギ、ハトムギ、ソバ、ライムギ、ヒエ、キビ等が挙げられる。
茶類、緑茶(抹茶等を含む)、紅茶、烏龍茶等のチャノキ;ローズヒップ、ペパーミント、レモングラス、シナモン、ローズマリー、ラベンダー等のハーブなどが挙げられる。
豆類・種実類の種類としては、コーヒー、カカオ、アズキ、ダイズ、ヒヨコマメ、リョクトウ、レンズマメ、アーモンド、カシューナッツ、クリ、ココナッツ、ゴマ、ピスタチオ、ピーナッツ、ひまわり種等が挙げられる。
いも類の種類としては、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモ、キクイモ等が挙げられる。
藻類の種類としては、アオサ、アオノリ、コンブ、ヒジキ、ワカメ等が挙げられる。
きのこ類の種類としては、エノキタケ、キクラゲ、シイタケ、ブナシメジ、ホンシメジ、ナメコ、エリンギ、ヒラタケ、マイタケ、マッシュルーム、マツタケ等が挙げられる。
【0016】
上記の有色植物(野菜、果実、穀類、茶類、豆類・種実類、いも類、藻類、きのこ類等)は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
上記の中でも、色彩および風味の観点から、ニンジン、トマト、ケール、ピーマン、ヨモギ等の緑黄色野菜、ブドウ等の果実類、抹茶などの茶類が特に好ましい。
【0017】
有色植物は、可食フィルムに配合するにあたり、搾汁、破砕、磨砕、粉砕等の処理を行ったのちに配合することができ、これらの処理の前後において適宜乾燥、焙煎等に付してもよい。得られる有色植物の形態としても、汁液、ピューレ、ペースト、粉体等様々な形態をとることができる。
【0018】
上記の有色植物の可食フィルムへの配合量は、例えば、10~80質量%とすることができ、さらに20~60質量%とすることができ、さらにまた20~50質量%とすることができる。かかる範囲であれば、有色植物の色彩が効果的に付与され、さらに耐光性および型抜き適性などの強度がより一層優れた可食フィルムが得られるとともに、その他の成分(無機物,基材等)の配合量を十分に確保することができる。
なお、本明細書において、可食フィルム中の配合量および配合成分どうしの配合比は、特に断りがない限り、水分を除いた乾燥質量で表すものとする。例えば、上記有色植物が、汁液、ピューレ、ペースト等の水溶液または水懸濁液で添加される場合は、配合量(質量%)は可食フィルム(乾燥質量)に対する有色植物(乾燥固形分量)で表される。
【0019】
(2)無機物
本実施形態で用いる無機物は二価の金属イオンを含む。二価の金属イオンは、有色植物からの色彩について耐光性向上効果を付与する。また、二価の金属イオンは、ナトリウムやカリウム等の1価金属イオン、3価鉄等の3価金属イオンと異なり、色や味に影響しづらく、さらに二価金属イオンは可食フィルムに強度向上や抜き加工性の向上といった効果をも付与するため、これらの観点からも本実施形態に好適に利用することができる。
【0020】
上記二価の金属イオンは、カルシウム、バリウム、マグネシウムが好ましく、カルシウム、バリウムがより好ましく、カルシウムが特に好ましい。これらは可食フィルムの味や色に影響しづらく好適である。
上記二価金属イオンを含む食品素材としては、例えば、海藻カルシウム、卵殻カルシウム、貝殻カルシウム、塩化カルシウム、食塩等が挙げられ、風味に影響を及ぼしにくいことから海藻カルシウム、卵殻カルシウム、貝殻カルシウムが好ましい。さらにアレルギーの観点から海藻カルシウム、貝殻カルシウムが特に好ましい。
【0021】
上記無機物は、可食フィルムに対する二価金属イオン含有量として、0.75~6.0質量%含有することが好ましい。二価金属イオン含有量がかかる範囲であると、可食フィルムの耐光性向上効果がより優れたものとなる。
耐光性向上効果をより優れたものとする観点からは、可食フィルムに対する二価金属イオン含有量が0.9~4.5質量%であることがより好ましく、1.5~4.5質量%であることが特に好ましい。
なお、2価鉄については、可食フィルムの臭味に影響してしまう場合があることから、可食フィルムにおける含有量として0.05質量%以下であることがより好ましく、0.03質量%以下であることが特に好ましい。
【0022】
(3)基材
本実施形態で用いる基材としては、可食フィルムに一般的に用いられるものであれば特に制限されない。具体的には、寒天、ゼラチン、セルロース、プルラン、アルギン酸、ペクチン、グアガム、コンニャク、キサンタンガムなどの多糖類等が例示される。これらの中でも、可食フィルムの強度を望ましい範囲に調整しやすく、また可食フィルムの形状を保持しやすいこと等から、寒天、ゼラチン、セルロース、プルランが特に好ましく、寒天およびセルロースがさらに好ましい。
【0023】
上記の基材の可食フィルムへの配合量は、例えば、10~75質量%とすることができ、さらに13~73質量%とすることができ、さらにまた15~70質量%とすることができる。かかる範囲であれば、可食フィルムの強度や加工性がより優れたものとなり、またその他の成分(有色植物、無機物等)の配合量を十分に確保することができ可食フィルムの色彩や耐光性についても優れたものとすることが容易となる。
【0024】
本実施形態に係る可食フィルムにおいて、上記有色植物および上記基材の配合比は、有色植物:基材=10:90~80:20であることが好ましく、20:80~60:40であることが特に好ましい。配合比を上記範囲とすることで、可食フィルムの強度や加工性を優れたものとすることが容易となり、また可食フィルムの色彩や風味についても優れたものとすることが容易となる。
【0025】
本実施形態に係る可食フィルムにおいて、グリセリンの配合量が2~40質量%であることが好ましく、更に3~30質量%であることが好ましく、特に5~25質量%であることが好ましい。配合比を上記範囲とすることで、可食フィルムの耐光性を大きく損なうことなく、抜き加工の精度を高める強度への調整が容易になるため、より趣向性に富んだ形状の製品を提供することが容易になる。
【0026】
(4)その他の成分等
本実施形態に係る可食フィルムは、溶媒/分散媒として、通常は水を用いる。使用し得る水としては、飲食用に適しており、かつ上述した二価金属イオンの要件を満たすことができるものであれば、硬水、軟水の種類は問わず、予め脱気処理された脱気水を用いてもよい。
【0027】
本実施形態に係る可食フィルムは、前述した原料の他、本実施形態の効果を損なわない範囲において、アミノ酸、ビタミン類、甘味付与剤、香料、酸味料、機能性成分等を含有してもよい。
アミノ酸類としては、アラニン、グルタミン、グルタミン酸、ロイシン、イソロイシン、テアニンなどが挙げられる。
ビタミン類としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンD、ビタミンKおよびビタミンB群等が挙げられる。
甘味付与剤としては、例えば、ショ糖、果糖、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖等の糖類;砂糖、グラニュー糖、異性化糖、キシリトール、パラチノース、エリスリトール等の甘味料;アスパルテーム、アセスルファムカリウム、ネオテーム、ステビア抽出物、サッカリン、スクラロース等の高甘味度甘味料;ソルビトール等の糖アルコールなどが挙げられ、さらにシュガーレスバルク甘味料、バルク砂糖甘味料等を含んでいてもよい。
香料としては、例えば、柑橘その他果実から抽出した香料、植物の種実、根茎、木皮、葉等またはこれらの抽出物、乳または乳製品から得られる香料、合成香料等が挙げられる。
酸味料としては、例えば、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸等が挙げられる。
機能性成分としては、例えば、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、グルコサミン、ヒアルロン酸、プラセンタ、牡蠣エキス、キトサン、プロポリス、ローヤルゼリー、トコフェロール、ポリフェノール、カフェイン、サポニン、梅エキス、アロエ、霊芝、アガリクス等が挙げられる。
これらの添加物は、1種を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0028】
また、本実施形態の可食フィルムは、その他、各種エステル類、乳化剤、保存料、調味料、着色料(色素)、油、pH調整剤、品質安定剤等を含有してもよい。
【0029】
本実施形態に係る可食フィルムのpHは、特に制限されるものではないが、例えば、5.5~8.5とすることができ、6.0~8.0とすることができ、6.5~7.5とすることができる。
【0030】
(5)可食フィルム
本実施形態に係る可食フィルムは、上述した成分を含有させる以外は、従来公知の方法により製造することができる。例えば、基材を水に溶解・分散させ、有色植物および無機物と、必要に応じて他の成分とを混合し、成形することにより、本実施形態に係る可食フィルムを製造することができる。
上記成形においては、シート状に成形した後、型抜き加工を行ってもよく、流動性の高い状態(例えば溶液・懸濁液の状態や高温状態等)で型に流し込んだのち流動性を下げて(例えば乾燥や冷却等)して成型してもよい。
また、フィルムの表面の性状は、鏡面か凹凸があってもかまわない。
【0031】
本実施形態の可食フィルムをシート状に成形する場合は、成型後の厚みが30μm~300μmであることが好ましく、50~300μmであることがより好ましく、60~100μmであることが特に好ましい。かかる範囲であれば、型抜き加工や成形後の形状保持がより容易となる。
【0032】
以上述べた実施形態に係る可食フィルムによれば、有色植物、無機物および基材を含有し、かつ無機物として二価金属イオンを所定量するため、光照射条件下においても耐光性に優れたものとなる。
【0033】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例
【0034】
以下、製造例・試験例等を示すことにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の製造例・試験例等に何ら限定されるものではない。
【0035】
実施例1:抹茶含有可食フィルムの製造
寒天(伊那食品工業社製,かんてんクック)5.3質量部を水90.9質量部に加熱溶解し、海藻カルシウム(太陽化学社製,カルシウム量30質量%)0.3質量部、抹茶粉末3.5質量部を混合して、可食フィルム用調合液を調製した。得られた調合液を、乾燥時に厚さが100μmとなるようにアルミシート上に流し、その後乾燥して、抹茶含有可食フィルムを製造した(試料2)。
【0036】
さらに、抹茶および海藻カルシウムの配合量、ならびに基材の種類および配合量を変更し、抹茶含有可食フィルムを製造した(試料1,3~21)。なお、試料8および9においては、基材として寒天に替えてセルロース(旭化成社製)を用いた。
【0037】
〔試験例1〕耐光性試験
得られた抹茶含有可食フィルムについて、人工気象器(日本医化器械製作所社製,LH-350SP)内に設置し、5℃25%RHの条件下において、光源に25kW蛍光灯を用いて放射照度10000ルクスの光を12時間照射した。
光照射の前後において、可食シートの色調を、分光測色計(ミノルタ社製,CM-2600d)を用いて測定し、色差を算出した。
結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示されるとおり、基材として寒天・セルロースいずれを用いた場合であっても、カルシウムを所定量配合した試料は、耐光性が向上していた。
【0040】
実施例2:ニンジン含有可食フィルムの製造
寒天(伊那食品工業社製,かんてんクック)4.4質量部を水58.3質量部に加熱溶解し、海藻カルシウム(太陽化学社製,カルシウム量30質量%)0.3質量部、ニンジンジュース(固形分11.9質量%)37.0質量部(乾燥固形分4.4質量部)を混合して、可食フィルム用調合液を調製した。得られた調合液を、乾燥時に厚さが100μmとなるようにアルミシート上に流し、その後乾燥して、ニンジン含有可食フィルムを製造した(試料23)。
【0041】
さらに、ニンジン、寒天、海藻カルシウムの配合量を変更し、ニンジン含有可食フィルムを製造した(試料22,24~28)。
【0042】
得られたニンジン含有可食フィルムについて、実施例1と同様にして、耐光性試験を行った。ただし、耐光性試験においては、光照射時間を7日間に変更した。
結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2に示されるとおり、ニンジン含有可食フィルムにおいても、抹茶含有可食フィルムと同様の結果が得られた。
【0045】
実施例3:グリセリン含有可食フィルムの製造
セルロース(旭化成社製)6.7質量部を水90.8質量部に溶解し、海藻カルシウム(太陽化学社製)0.3質量部、抹茶粉末1.7質量部、グリセリン(健栄製薬社製)0.5質量部を混合して、可食フィルム用調合液を調製した。得られた調合液を、乾燥時に厚さ100μmとなるようにプラスチックフィルム上に流し、その後乾燥して、可食フィルムを製造した(試料30)。
さらに、抹茶および海藻カルシウムの配合量、ならびに基材の種類および配合量を変更し、抹茶含有可食フィルムを製造した(試料29,31~36)。
【0046】
得られた抹茶含有可食フィルムについて、実施例1と同様に耐光性試験を行った。さらに、可食フィルムの性状(硬さ,しなやかさ,割れ,べたつき等)についても評価した。
結果を表3に示す。
【0047】
〔試験例2〕抜き加工試験
得られた抹茶含有可食フィルム(厚さ100μm)に対し、星や三日月状の抜き型(最大内径10mm)をフィルム面に垂直に押圧し、抜き加工を行った。打ち抜かれた可食フィルムの形状を観察し、以下の基準にて評価した。結果を表3に示す。
◎:正確に抜き加工でき、製品品質が優れている
○:端部に小さい欠け、クラック、バリなどが生じるが、製品品質に影響ない
×:目視で確認できる欠けが発生する、割れるなど製品品質を満たさない
【0048】
【表3】
【0049】
表3に示されるとおり、グリセリンを配合した可食フィルムにおいても、カルシウムを所定量配合した試料は、耐光性が向上していた。また、カルシウムを所定量配合した試料は、抜き加工適正および性状にも優れていた。
【0050】
実施例4:グリセリン含有可食フィルムの製造
グリセリンの配合量を変更した以外は試料32と同様にして、抹茶含有可食フィルムを製造した(試料37~44)。
得られた抹茶含有可食フィルムについて、実施例3と同様にして耐光性、抜き加工適正および性状を評価した。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】
【0052】
表4に示されるとおり、グリセリンの配合量を調整した試料は、いずれも耐光性に優れたものであり、さらに抜き加工適正および性状にも優れていた。