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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】エレベータ安全システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20231030BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20231030BHJP
   B66B 3/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 R
B66B3/00 U
B66B3/02 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019135756
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2020015626
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】18186068.5
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
【住所又は居所原語表記】One Carrier Place,Farmington,Connecticut,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヘルケル
(72)【発明者】
【氏名】ディルク ハー.テグツマイヤー
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-539738(JP,A)
【文献】特表2002-538061(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055434(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/036663(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第103079981(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 3/00
B66B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータシステム(2)を監視するように構成されているエレベータ安全システム(1)であって、
前記エレベータシステム(2)及び前記エレベータ安全システム(1)における少なくとも1つの構成要素を監視し、前記少なくとも1つの監視された構成要素の現在の状態を表す信号を提供するように構成されている少なくとも1つの安全ノード(12)と、
評価部(19)であって、
前記信号を前記少なくとも1つの安全ノード(12)から受信するとともに、
前記エレベータシステム(2)または前記エレベータ安全システム(1)の安全状態を前記受信した信号の組み合わせから判定するように、構成されている評価部(19)と、
を備え
前記評価部(19)は、安全状態を、受信した信号のそれぞれの組み合わせに割り当てるように構成されている多次元仮想マトリクスを含む、エレベータ安全システム(1)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの監視された構成要素は、前記各々の安全ノード(12)自体を含む、請求項1に記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項3】
各信号は、検出された故障を識別する少なくとも1つの要素を含む、請求項1または2に記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項4】
各信号は、検出された故障の重大度を示す少なくとも1つの要素を含む、請求項1~のいずれかに記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの要素は、数値を含む、請求項またはに記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項6】
前記安全状態は、前記受信した信号に含まれる前記数値の関数である、請求項に記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項7】
前記安全状態は、前記受信した信号に含まれる前記数値の合計、加重和、または多項式の組み合わせである、請求項に記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの安全ノード(12)及び前記評価部(19)は、前記少なくとも1つの安全ノード(12)と前記評価部(19)との間に信号を伝送するように構成されている通信リンク(16)によって、特に、CANバス等のシリアルフィールドバスによって、相互に接続される、請求項1~のいずれかに記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項9】
前記エレベータ安全システム(1)の前記各々の安全状態に対応する応答を割り当てるように構成されている制御部(17)をさらに備える、請求項1~のいずれかに記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項10】
前記制御部(17)は、前記評価部(19)と統合される、請求項に記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項11】
前記制御部(17)は、通信リンク(16)を介して、特に、CANバス等のシリアルフィールドバスによって、評価部(19)に接続される、請求項10に記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項12】
前記制御部(17)によって割り当てられた前記応答は、
前記現在の安全状態及び前記現在の信号のうち少なくとも一つを記録することと、
前記エレベータシステム(2)を通常動作モードで動作させることと、
前記エレベータシステム(2)の全ての動作を即座に停止させることと、
前記エレベータシステム(2)のエレベータかご(6)を最も近い乗場(8)に移動させ、前記エレベータかご(6)が前記最も近い乗場(8)に達した後に、前記エレベータシステム(2)の全てのさらなる動作を停止させることと、
前記エレベータシステム(2)のエレベータかご(6)を現在の運転の次のターゲット乗場(8)に移動させ、前記エレベータかご(6)が前記ターゲット乗場(8)に達した後に、前記エレベータシステム(2)の全てのさらなる動作を停止させることと、
アラームメッセージを発行することと、
メンテナンスメッセージを発行することと、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項11のいずれに記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの安全ノード(12)は、
前記エレベータシステム(2)及び前記エレベータ安全システム(1)のうち少なくとも一つの構成要素における電圧を検出するように構成されている電圧検出器(36)と、
前記少なくとも1つの安全ノード(12)に入力された信号内の信号ノイズを検出するように構成されている、信号ノイズ検出器(38)と、
前記エレベータシステム(2)及び前記エレベータ安全システム(1)のうち少なくとも一つの構成要素の接地故障を検出するように構成されている接地故障検出器(40)と、
エレベータかご(6)の位置を検出するように構成されている位置センサ(25)と、
前記エレベータかご(6)の速度または加速度を検出するように構成されている速度センサまたは加速度センサ(28)と、
前記エレベータシステム(2)のドア(10,11)の現在の状態を検出するように構成されている、特に、前記ドア(10,11)が適切に閉じたかどうかを検出するように構成されているドアセンサ(42)と、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~12のいずれかに記載のエレベータ安全システム(1)。
【請求項14】
複数の乗場(8)の間を昇降路(4)に沿って移動するように構成されている少なくとも1つのエレベータかご(6)と、請求項1~13のいずれかに記載のエレベータ安全システム(1)と、を備えるエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ安全システムと、係るエレベータ安全システムを備えるエレベータシステムとに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、複数の乗場の間で昇降路に沿って進む少なくとも1つのエレベータかごを備える。エレベータシステムは、通常、さらに、エレベータシステムの動作を監視し、異常が検出された場合、エレベータかごのいずれかのさらなる移動を停止させるように構成されているエレベータ安全システムを備える。
【0003】
複数の異なる故障は、エレベータシステムにおいて発生し得る。これらの異常は、具体的に、エレベータシステムを即座に停止することが必要である重大な安全性の問題を生じさせる異常と、少なくともしばらくの間、エレベータシステムを動作させることを継続することを可能にし得る重大性が少ない異常とを含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、必要なときに、エレベータかごのさらなる動作を停止させるが、また、重大性が少ない異常が検出された場合、エレベータシステムが動作することを継続することを可能にするように構成されているエレベータ安全システムを提供することに利点をもたらすであろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の例示的実施形態に従って、エレベータシステムを監視するように構成されているエレベータ安全システムは、少なくとも1つの安全ノード及び評価部を備える。少なくとも1つの安全ノードは、エレベータシステムの及び/またはエレベータ安全システムの少なくとも1つの構成要素を監視し、少なくとも1つの監視された構成要素の現在の状態を表す信号を提供するように構成されている。評価部は、信号を少なくとも1つの安全ノードから受信し、エレベータシステムの及び/またはエレベータ安全システムの安全状態を受信信号の組み合わせから判定するように構成されている。
【0006】
本発明の例示的実施形態は、また、複数の乗場間の昇降路に沿って移動するように構成されている少なくとも1つのエレベータかごと、本発明の例示的実施形態によるエレベータ安全システムとを備えるエレベータシステムを含む。
【0007】
本発明の例示的実施形態に従ったエレベータ安全システムは、少なくとも1つの安全ノードによって提供される安全信号の組み合わせに基づいて、エレベータシステムの及び/またはエレベータ安全システムの安全状態を確実に判定することを可能にする。
【0008】
エレベータ安全システムの評価部は、受信した信号によって示された、エレベータかごを即座に停止させることが必要である重大な故障及び/または安全性の問題と、少なくともしばらくの間、例えば、現在の運転を終了させ、及び/またはエレベータかごを最も近い乗場に移動させて、外部支援なしで、乗客がエレベータかごから出ることを可能にするために、エレベータシステムを動作させることを継続することを可能にする重大性が少ない故障及び/または安全性の問題との違いを区別することが可能である。
【0009】
評価部は、具体的に、受信信号を個別に評価するだけではなく、異なる故障のそれぞれに対する関係及び相互関係を考慮するようにも構成されている。これは、エレベータ安全システムが複数の故障及び/または安全性の問題が報告された状況に適切に応答することを可能にし、それぞれの故障または安全性の問題自体は重大ではないが、故障及び/または安全性の問題の組み合わせは、危険な状況をもたらし得る。
【0010】
したがって、本発明の実施形態に従ったエレベータは、必要なときに、エレベータかごのいずれかのさらなる移動を停止させることが可能であるが、また、エレベータシステムによってもたらされる不必要なサービス中断を避けるために、重大性が少ない故障及び/または安全性の問題が検出された場合、エレベータシステムが動作することを継続することを可能にする。
【0011】
いくつかの選択的特徴は以下に記載される。これらの特徴は、単独でまたは他の特徴のいずれかと組み合わせて、特定の実施形態で実現され得る。
【0012】
少なくとも1つの安全ノードによって監視される少なくとも1つの構成要素は、各々の安全ノード自体を含み得る。したがって、エレベータ安全システムは、エレベータシステムの安全性を損なう場合がある、その複数の安全ノードの問題/その複数の安全ノードの1つにおける問題を検出することが可能である。
【0013】
安全システムが少なくとも2つの安全ノードを備える場合、安全ノードは、安全システムの信頼性をさらに向上させるために、相互に監視するように構成され得る。
【0014】
評価部は、安全状態を受信信号のすべての組み合わせに割り当てるために、仮想多次元マトリクスを使用し得る。係る仮想多次元マトリクスは、受信信号と、エレベータシステムの及び/またはエレベータ安全システムの関連付けられた安全状態との間の一義的な関係を定義することを可能にする。
【0015】
評価部が検出された故障及び/または安全性の問題に適切に応答するように検出された故障を認識することを可能にするために、少なくとも1つの安全ノードから評価部に送信された各信号は、検出された故障及び/または安全性の問題を識別する少なくとも1つの要素を含み得る。
【0016】
評価部がエレベータシステム及び/またはエレベータ安全システムの現在の安全状態を容易に判断可能にするために、少なくとも1つの安全ノードから評価部に送信された各信号は、検出された故障及び/または安全性の問題の重大性を示す少なくとも1つの要素を含み得る。具体的に、検出された故障及び/または安全性の問題の重大性を示す少なくとも1つの要素は、数値を含み得る。
【0017】
エレベータシステム及び/またはエレベータ安全システムの安全状態は、受信信号に含まれる数値の関数、具体的には、多次元関数であり得る。安全状態は、具体的に、受信信号に含まれる数値の合計、加重和、または多項式の組み合わせであり得る。係る多次元関数を使用することは、エレベータシステムの及び/またはエレベータ安全システムの安全状態を容易に判定することを可能にする。
【0018】
少なくとも1つの安全ノードから評価部に信号を伝送することを可能にするために、少なくとも1つの安全ノード及び評価部は、少なくとも1つの安全ノードと評価部との間に信号を伝送するように構成されている通信リンクによって(具体的には、シリアルフィールドバス(CANバス等)によって)相互に接続され得る。シリアルフィールドバス(CANバス等)は、低コストで複数の安全ノードと評価部との間で信号の確実な伝送を可能にする。
【0019】
エレベータ安全システムはさらに、エレベータ安全システムが検出された安全状態に適切に応答することを可能にするために、各々の安全状態に対応する応答を割り当てるように構成されている制御部を備える。
【0020】
制御部は、評価部と統合され得る。制御部が評価部と通信することを可能にするために、制御部はまた、通信リンクによって、具体的には、シリアルフィールドバス(CANバス等)によって、評価部と接続され得る。
【0021】
制御部によって割り当てられたエレベータ安全システムの応答は、現在の安全状態及び/または現在の信号を記録することと、重大性が少ない故障及び/または安全性の問題が検出されているにすぎない、エレベータシステムを通常動作モードで動作させることと、を含み得る。
【0022】
エレベータ安全システムの応答は、さらに、エレベータ動作をある時間内に制限すること(例えば、エレベータシステムが所定数の時間、日数、または週間の期間だけ動作することを継続することを可能にすること)、及び/または昇降路内のあるエリアへのエレベータかごの移動を制限することと、を含み得る。エレベータ安全システムの応答は、また、検出された故障及び/または安全性の問題が改善されるまで、エレベータかごの最大許容可能速度を制限することを含み得る。これらの応答は、組み合わせられ得る。すなわち、エレベータシステムが制限された時間周期だけ減速して及び/または昇降路の限定エリア内で動作することが可能になり得る。
【0023】
より重大な故障及び/または安全性の問題が検出されている場合、制御部によって割り当てられた応答は、エレベータシステムのエレベータかごを現在の運転の次のターゲット乗場に移動させることと、エレベータかごが当該ターゲット乗場に達した後に、エレベータシステムのいずれかのさらなる動作を停止させることとを含み得る。随意に、エレベータかごの最大許容可能速度は減速し得る。
【0024】
より重大な故障及び/または安全性の問題が検出されている場合、制御部によって割り当てられた応答は、エレベータシステムのエレベータかごを最も近い乗場に移動させることと、エレベータかごが当該最も近い乗場に達した後に、エレベータシステムのいずれかのさらなる動作を停止させることとを含み得る。随意に、エレベータかごの最大許容可能速度は減速し得る。
【0025】
非常に重大な故障及び/または安全性の問題が検出されている場合、制御部によって割り当てられた応答は、エレベータシステムのいずれかのさらなる動作を即座に停止させることと、エレベータかご内に閉じ込められた乗客を自由にするために、機械工がエレベータシステムに訪れることを要求するアラームメッセージを発行することとを含み得る。エレベータシステムの動作は、エレベータかごの速度をゼロになるまで徐々に減速させることによって、または緊急停止を生じさせるための安全チェーンを遮断させることによって停止させ得る。
【0026】
故障及び/または安全性の問題が検出されているいずれかの場合、エレベータシステム及び/またはエレベータ安全システムを確認し、全ての検出された故障及び/または安全性の問題を改善するために、エレベータシステムに訪れることを要求するメンテナンスメッセージが発行され得る。
【0027】
少なくとも1つの安全ノードは、安全ノード自体に関連する故障を検出するように構成されている少なくとも1つの検出器を含み得る。当該少なくとも1つの検出器は、具体的に、エレベータシステムの及び/またはエレベータ安全システムの構成要素における電圧を検出するように構成されている少なくとも1つの電圧検出器と、少なくとも1つの安全ノードに入力された信号内の信号ノイズを検出するように構成されている信号ノイズ検出器と、エレベータシステムの及び/またはエレベータ安全システムの構成要素の接地故障を検出するように構成されている接地故障検出器とを含み得る。
【0028】
少なくとも1つの安全ノードは、少なくとも1つの安全ノード以外のエレベータシステムの構成要素の故障を検出するための少なくとも1つの検出器を採用し得る。当該少なくとも1つの検出器は、少なくとも1つの安全ノードと接続または一体的に形成され得る。当該構成要素及び/または検出器は、具体的に、エレベータかごの位置を検出するように構成されている少なくとも1つの位置センサと、エレベータかごの速度を検出するように構成されている速度センサと、エレベータかごの加速度を検出するように構成されている加速度センサと、エレベータシステムのドア(乗場ドアまたはエレベータかごドア等)の現在の状態を検出するように構成されているドアセンサとを含み得る。ドアセンサは、具体的に、ドア検出器によって監視される少なくとも1つのドアが適切に閉じたかどうかを検出するように構成され得る。
【0029】
以下では、本発明の例示的実施形態は添付図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の例示的実施形態による、エレベータ安全システムを備えるエレベータシステムを概略的に示す図である。
図2】本発明の例示的実施形態による、エレベータ安全システムの安全ノードを概略的に示す図である。
図3】エレベータシステムの現在の安全状態を判定するために使用される多次元仮想マトリクスの2次元の抜粋の第1の例を示す図である。
図4】エレベータシステムの現在の安全状態を判定するために使用される多次元仮想マトリクスの2次元の抜粋の第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、エレベータ安全システム1を備えるエレベータシステム2を概略的に示す。
【0032】
エレベータシステム2は、異なる階上に位置する複数の乗場8の間に延在する昇降路4内に移動可能に吊るされたエレベータかご6を備える。
【0033】
エレベータかご6は、引張部材3によって、移動可能に吊るされる。引張部材3(例えば、ロープまたはベルト)は駆動部5に接続され、駆動部5は、複数の乗場8の間で昇降路4の高さに沿ってエレベータかご6を移動させるために、引張部材3を駆動するように構成されている。
【0034】
各乗場8はエレベータ乗場ドア(昇降路ドア)10が提供され、エレベータかご6はエレベータかごドア11が提供され、エレベータかごドア11は、エレベータかご6が各々の乗場8に位置付けられるとき、乗客29が乗場8とエレベータかご6の内部との間で移動することを可能にする。
【0035】
図1に示されるエレベータシステム2の例示的実施形態は、エレベータかご6を吊るすための1:1のロープを採用している。しかしながら、当業者は、ロープの種類が本発明に不可欠ではないことと、ロープの異なる種類(例えば、2:1のロープ)が同様に使用され得ることとを容易に理解する。エレベータシステム2は、さらに、エレベータかご6に対して同時に反対方向に移動するカウンターウェイト(図示されない)を含み得る。代替として、エレベータシステム2は、それが図1に示されるように、カウンターウェイトがないエレベータシステム2であり得る。駆動部5は、当技術分野で使用される駆動の任意の形態(例えば、摩擦駆動、油圧式駆動、または線形駆動)であり得る。エレベータシステム2はマシンルームを有し得る、または、マシンルームがないエレベータシステムであり得る。エレベータシステム2は、それが図1に示されるように、引張部材3を使用し得る、または、エレベータシステム2は、引張部材3がないエレベータシステムであり得る。
【0036】
駆動部5は、異なる乗場8の間で昇降路4に沿ってエレベータかご6を移動させるために、エレベータ制御部13によって制御される。
【0037】
エレベータ制御部13への入力は、乗場ドア10の近くの各乗場8上で提供される乗場制御パネル7a(目的地コールパネルを含み得る)を介して、及び/またはエレベータかご6の内側に提供されるかご動作パネル7bを介して提供され得る。
【0038】
乗場制御パネル7a及びかご動作パネル7bは、具体的には、電気バス(例えば、CANバス等のフィールドバス)によって、または無線データ接続によって、図1に示されない電線路によってエレベータ制御部13に接続され得る。
【0039】
エレベータかご6の現在位置を判定するために、エレベータシステム2は、少なくとも1つの位置センサ25が提供され、位置センサ25は、昇降路4内のエレベータかご6の現在の位置(高さ)を判定するように構成されている。位置センサ25は、また、エレベータかご6の移動速度を判定することが可能であり得る。代替として、速度及び/または加速度センサ28は、エレベータかご6に提供され得る。
【0040】
位置センサ25は、エレベータかご6の検出位置をエレベータ制御部13に伝送するように構成されている信号線23を介して、または無線接続(図示されない)を介して、エレベータ制御部13と接続される。
【0041】
安全回路24は、エレベータシステム2の安全性を監視するように構成されている。通信リンク16は、安全回路24を複数の安全ノード12と接続する。通信リンク16は、安全ノード12と安全回路24との間に信号を確実に伝送するのに適している、例えば、CANバス等のフィールドバス、または電線路または無線データ接続等の任意の他の通信手段を含み得る。
【0042】
エレベータシステム2の安全性に関連のある安全性の問題を生じさせる故障が安全ノード12の少なくとも1つによって検出された場合、各々の安全ノード12は、安全回路24に通信リンク16を介して、検出された安全性の問題を示す信号を送信する。
【0043】
図2は、本発明の例示的実施形態による、エレベータ安全システム1の安全ノード12の拡大概略図を示す。
【0044】
安全ノード12は、エレベータシステム2の及び/またはエレベータ安全システム1の構成要素における電圧を検出するように構成されている電圧検出器36を備える。これは、具体的に、安全ノード12自体に供給される電圧を含み得る。
【0045】
図2に示される例示的実施形態では、安全ノード12は、さらに、安全ノード12によって受信された信号内のノイズを検出するように構成されている信号ノイズ検出器38と、エレベータシステム2の及び/またはエレベータ安全システム1の少なくとも1つの構成要素の接地故障を検出するように構成されている接地故障検出器40とを備える。監視された構成要素は、具体的には、安全ノード12自体を含み得る。
【0046】
図に明示的に示されない他の実施形態では、安全ノード12は、加えてまたは代替として、エレベータシステム2の他の安全性に関連する構成要素を検出するように構成されている他のセンサを備え得る。
【0047】
安全ノード12は、各々、エレベータシステム2の乗場ドア10またはエレベータかごドア11の開いている状態を検出するように構成されているドアセンサ42を備える、またはドアセンサ42と接続される。ドアセンサ42は、具体的に、当該ドア10,11が適切に閉じているか否かを検出するように構成され得る。
【0048】
再度図1を参照すると、安全回路24は、検出された故障(複数可)/安全性の問題(複数可)の重大性を判定するように及びエレベータシステム2を適切に応答させるように構成されている。
【0049】
エレベータ安全システム1の安全性及びエレベータシステム2の安全性は、少なくとも1つの安全ノード12の及び/また通信リンク16の故障によって損なわれ得る。したがって、安全ノード12は、乗場ドア10またはエレベータかごドア11等のエレベータシステム2の各々の関連構成要素を監視するだけではなく、加えて、エレベータ安全システム1自体の機能を監視するようにも構成されている。安全ノード12のそれぞれは、具体的に、それ自体を監視するように及びエレベータ安全システム1の安全性を損なう場合がある何らかの安全性の問題及び/または(潜在的な)故障を安全回路24に報告するように構成され得る。
【0050】
安全回路24は評価部19を備え、評価部19は、安全ノード12によって送信された信号を受信するように、及び安全ノード12から受信された信号に基づいて、エレベータシステム2(特に、エレベータ安全システム1)の現在の安全状態を判定するように構成されている。安全回路24はさらに制御部17を備え、制御部17は、エレベータシステム2が、評価部19によって判定された現在の安全状態に適切に応答させるように構成されている。
【0051】
制御部17によってトリガされた当該応答は、検出された故障を注意及び/または記憶することと、エレベータシステム2が、信号で送信された故障が重大ではないものと見なされた場合、通常どおりに動作することを継続することを可能にすることとを含み得る。
【0052】
より重大な故障が検出されている場合、エレベータシステム2は、現在の運転を終了すること(すなわち、エレベータかご6を現在の運転の所望のターゲート乗場8に移動させること)が可能になり得るが、エレベータシステム2のいずれかのさらなる動作は、当該ターゲット乗場8に達した後に停止し、乗客29がエレベータかご6から出ることを可能にするために、対応する乗場ドア10及びエレベータかごドア11が開く。
【0053】
さらにより重大な故障が検出されている場合、エレベータかご6は、最も近い乗場8(すなわち、エレベータかごの現在位置に最も近くの乗場8)にだけ移動することが可能になり得る。たとえエレベータかご6が、現在、2つの乗場8の間に位置付けられ、乗客29がドア10,11を介してエレベータかご6から出ることが不可能である場合でさえも、非常に重大な故障が検出されている場合、エレベータかご6の移動は、即座に停止し得、その結果、乗客29をエレベータかご6から救出することが必要となる。
【0054】
制御部17によってトリガされた応答は、さらに、通信回路18がエレベータ制御部13内に提供される、またはエレベータ制御部13と接続されることを含み得、エレベータ制御部13は、アラームメッセージを外部サーバ22に送信するために、エレベータ制御13及び/または安全回路24と、外部サーバ22との間のデータ接続20を確立する。外部サーバ22は、例えば、リモートサービスセンター21内で、エレベータシステム2から空間的に分離されるように提供され得る。外部サーバ22は、複数のエレベータシステム2、具体的には、様々な場所に位置するエレベータシステム2と接続されるように構成され得る。
【0055】
エレベータシステム2と外部サーバ22との間のデータ接続20は、インターネット30を介して、具体的には、仮想プライベートネットワーク(VPN)を介して、及び/またはインターネット内の仮想クラウド32を介して確立し得る。データ接続20は、ISDNまたはDSL等の従来の電話回線またはデジタル回線を含み得る。データ接続20は、さらに、WLAN、GMS、UMTS、LTE、Bluetooth(登録商標)等を含む無線通信システムを含み得る。
【0056】
外部サーバ22は、報告された故障を記録し得、及び/または、エレベータかご6内に閉じ込められた乗客29を自由にし、エレベータシステム2を確認し、及び/または報告された故障を修復するために、機械工27をエレベータシステム2に派遣させ得る。
【0057】
重大性が少ない安全性の問題を個別に生じさせるものと見なされる2つの故障が同時に発生したときに、かなり重大な安全性の問題をもたらし得ることから、評価部19は、エレベータシステム2の現在の安全状態を判定するために、それぞれの安全信号自体を考慮するだけではない。その代わりに、評価部19は、異なる故障の相互関係を同様に考慮するように構成されている。
【0058】
評価は、例えば、多次元仮想マトリクスに基づいて行われ得、マトリクス座標(「行」及び「列」)は、故障を示す異なる信号を表し、座標によってアドレス指定されるマトリクスの項目は、安全信号によって表される現在の安全状態に対するエレベータ安全システム1の安全レベル及び/または応答を表す。
【0059】
多次元仮想マトリクスの2次元の抜粋34の例は、各々、図3及び図4に示される。
【0060】
図3は、安全ノード12の入力信号の過度のノイズ(信号A1)を検出することと、安全ノード12において不足電圧(信号A2)(すなわち、所定の制限値を下回る電圧)を検出することとに関連する状況を示す。過度のノイズ及び/または不足電圧は、エレベータ安全システム1の同じ安全ノード12または2つの異なる安全ノード12において検出され得る。
【0061】
図3及び図4では、「+」は各々の故障を示す信号が存在することを示し、「-」は各々の故障を示す信号が存在しないことを示す。
【0062】
RA1、RA2、RA3、RA4は、安全信号の各々の組み合わせに関連付けられた安全レベルを表す。エレベータシステム2の特定の応答は、安全レベルRA1、RA2、RA3、RA4のそれぞれに関連付けられる。
【0063】
2つの信号A1、A2が存在しない場合((A1,A2)=(-,-))、エレベータシステム2は、不足電圧も過度のノイズも検出されることがなく、通常の動作(安全レベルRA1)で継続する。
【0064】
過度のノイズが安全ノード12の入力信号に検出され(A1=+)、しかし、不足電圧が安全ノードにおいて検出されない(A2=-)場合、エレベータシステム2の安全レベルは「RA2」に設定される。結果として、過度のノイズの検出は記録及び/または報告されるが、エレベータシステム2は、通常の動作を継続することが可能である。
【0065】
過度のノイズが既定の時間周期よりも長い時間に検出された場合、機械工27がエレベータシステム2に訪れて、エレベータシステム2(特に、その配線)を確認することを要求する報告は、サービスセンター21に送信され得る。
【0066】
不足電圧が安全ノード12で検出された場合、すなわち、不足電圧が、安全ノード12に供給された電圧が第1の制限値を下回ったことが検出されたが、過度のノイズが安全ノード12の入力信号で検出されない場合、不足電圧の発生が記録及び/または報告されるが、エレベータシステム2は通常の動作を継続することが可能である。
【0067】
検出電圧が第2の制限値(第1の制限よりも低い)を下回る場合、エレベータシステム2は、現在の運転を終了することが可能になり得るが、電圧が第1の制限値または第2の制限値を上回る値に戻るように上がるまで、エレベータかご6が所望のターゲット乗場8に達した後に、エレベータシステム2の動作は一時停止し得る。加えてまたは代替として、検出された不足電圧を報告するメンテナンスメッセージは、サービスセンター21に送信され得る。
【0068】
したがって、過度のノイズ及び不足電圧が、個別に発生するときに重大な安全性の問題をもたらさないため、当該信号(A1,A2)の1つだけが受信されたとき、エレベータシステム2の通常動作は継続する。
【0069】
しかしながら、過度のノイズ及び不足電圧が同時に検出された場合(A1=「+」及びA2=「+」)、ノイズ及び不足電圧が同じ安全ノード12において検出されたかどうかを検出する。
【0070】
過度のノイズ及び不足電圧が異なる安全ノード(例えば、エレベータかご6に取り付けられた第1の安全ノード12、及び昇降路4の底部(具体的は、ピット26内)において配置された第2の安全ノード12)から報告された場合、これは、重大な安全性の問題と見なされなく、エレベータ安全システム1は、個別の故障のそれぞれに関して上記に説明された応答(RA2,RA3)の組み合わせによって継続する(RA41)。
【0071】
しかしながら、過度のノイズ及び不足電圧が同じ安全ノード12から報告された場合、安全レベルはRA42に設定される。この場合、エレベータシステム2は、現在の運転を終了すること(すなわち、エレベータかご6を所望のターゲート乗場8に移動させ、エレベータかごドア11及び各々の乗場ドア10を開けること)が可能になり得るが、エレベータかご6は、不足電圧及び過度のノイズが検出される限り、当該ターゲット乗場8から離れるように移動することが可能にならない。加えて、故障を示すメンテナンスメッセージがサービスセンター21に送信され得、当該メンテナンスメッセージは、機械工27がエレベータシステム2に訪れて、エレベータシステム2を確認することを要求する。
【0072】
第2の例は、多次元仮想マトリクスの別の抜粋34を示す図4によって例示される。
【0073】
当該第2の例では、信号B1の存在は第1の安全ノード12で検出された接地故障を示し、信号B2の存在は第2の安全ノード12において検出された接地故障検出を示す。
【0074】
接地故障が検出されない場合((B1,B2)=(-,-))、安全性の問題がなく、エレベータシステム2は通常どおりに動作する(RB1)。
【0075】
単一の接地故障の発生は、危険な状況をもたらさない。したがって、単一の接地故障だけが検出された場合((B1,B2)=(+,-)または(B1,B2)=(-,+))、メッセージはサービスセンター21に送信されるが、エレベータシステム2は、通常どおりに動作することを継続する(RB2,RB3)。
【0076】
しかしながら、2つの接地故障が同時に検出された場合((B1,B2)=(+,+))、評価部19は、2つの接地故障が同じ安全ノード12(RB41,RB42)で検出されたどうかを確認する。
【0077】
検出された接地故障が異なる安全ノード12(例えば、エレベータかご6に搭載された第1の安全ノード12、及び昇降路2内に位置する第2の安全ノード12)が原因である場合、これは、重大な安全性の問題と見なされない。したがって、サービスセンター21は、検出された接地故障について知らされるが、エレベータシステム2の通常動作は継続する(RB41)。
【0078】
しかしながら、検出された2つの接地故障が同じ安全ノード12が原因である場合、この接地故障の組み合わせは、潜在的な危険な状況をもたらす安全センサ入力の回避をもたらし得る。したがって、この場合(RB42)、エレベータ安全システム1は、エレベータシステム2がエレベータかご6をターゲット乗場8に移動させる、その現在の運転を終了することを待機しない。代わりに、エレベータかご6は、最も近い乗場8(すなわち、エレベータかご6の現在位置に最も近くの乗場8)に移動させ、そこで停止する。加えて、検出された問題を解決するために、エレベータシステム2に訪問する機械工27を派遣させるために、サービスセンター21に知らされる。
【0079】
明らかに、図3及び図4を参照して説明された故障は単なる例であり、当業者は、複数の安全ノード12によって同様に提供される信号を評価する説明された原理及び方法は、同様に、他の故障、問題、及び/または安全性の問題に適用され得ることを理解するであろう。
【0080】
上記に説明された例示的実施形態では、安全ノード12によって提供される信号は、具体的に、各々の安全ノード12の状態を示し、各々の安全ノード12自体の内部の問題及び/または故障を報告する。
【0081】
さらなる実施形態では、安全ノード12によって送信された信号は、また、乗場ドア10もしくはエレベータかごドア11が適切に閉じないこと及び/またはエレベータシステム2の位置センサ25もしくは他のセンサの故障等のエレベータシステム2の他の構成要素の問題及び/または故障を示し得る。
【0082】
さらに、前述では、評価部19によって受信された信号の評価は、仮想多次元マトリクスを採用する例に関して説明されている。
【0083】
しかしながら、これは、数個のオプションのうちの1つだけのものであり、評価部19によって受信された信号を評価する異なる方法は、係る仮想多次元マトリクスに代えて又は加えて採用され得る。
【0084】
例えば、安全ノード12の1つによって送信された各信号は、所定の数値を含み得る、または所定の数値に関連付けられ得る。評価部19は、受信信号に含まれる数値から、エレベータシステム2の現在の安全レベルを数値的に計算し得る。
【0085】
エレベータシステム2の安全レベルは、例えば、受信信号に含まれる数値の合計、加重和、もしくは多項式の組み合わせ、または任意の他の多次元数値関数であり得る。
【0086】
安全回路24、評価部19、及び/または制御部17は、プログラマブルコンピュータ(具体的には、マイクロプロセッサ)として提供され得、所望の機能を提供するための適切なプログラム(ソフトウェア)を起動する。代替として、または加えて、安全回路24、評価部19、及び/または制御部17は、所望の機能を提供するように構成されている適切な電子ハードウェア(具体的には、特定用途向け集積回路(ASIC))を含み得る。
【0087】
本発明が例示的実施形態を参照して説明されているが、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更がされ得、同等のものがその要素の代わりになり得ることを当業者によって理解されるだろう。加えて、本発明の本質的範囲から逸脱することなく、本発明の教示に特定の状況または物質を採用するために多くの修正を行い得る。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されないが、本発明は、「特許請求の範囲」の範囲内にある全ての実施形態を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0088】
1…エレベータ安全システム
2…エレベータシステム
3…引張部材
4…昇降路
5…駆動部
6…エレベータかご
7a…乗場制御パネル
7b…かご動作パネル
8…乗場
10…昇降路ドア
11…エレベータかごドア
12…安全ノード
13…エレベータ制御部
16…通信リンク
17…制御部
18…通信回路
19…評価部
20…データ接続
21…サービスセンター
22…外部サーバ
23…信号線
24…安全回路
25…位置センサ
26…ピット
27…機械工
28…速度及び/または加速度センサ
29…乗客
30…インターネット
32…仮想クラウド
34…多次元仮想マトリクスの抜粋
36…電圧検出器
38…信号ノイズ検出器
40…接地故障検出器
42…ドアセンサ
図1
図2
図3
図4