(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】非線形電場位置システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20231030BHJP
A61B 5/287 20210101ALI20231030BHJP
【FI】
A61B5/367 100
A61B5/287
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019146045
(22)【出願日】2019-08-08
【審査請求日】2022-06-16
(32)【優先日】2018-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-021218(JP,A)
【文献】特表2013-526334(JP,A)
【文献】特開2010-082446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
いずれも患者の器官内に挿入されるように構成された較正ツール及び調査ツールと通信するように構成されたインターフェースであって、前記較正ツールが、マッピング電極と、位置測定システムのセンサと、を備え、前記調査ツールが、マッピング電極を含むが前記位置測定システムのセンサは含まない、インターフェースと、
プロセッサであって、
(i)較正段階において、
前記位置測定システムを使用して前記
器官内の異なる位置で前記較正ツールを追跡し、
各較正データポイントが前記マッピング電極を使用して得られた信号値と、前記位置測定システムによる前記センサの対応する位置測定値と、を含む、1組の較正データポイントを前記それぞれの異なる位置において生成し、
(ii)前記較正段階に続く調査段階において、
前記調査ツールの前記マッピング電極を使用して、位置における前記信号値を測定し、
前記較正データポイントのサブセットを用いて、(a)前記調査ツールの前記マッピング電極を使用して得られた前記信号値と、(b)前記位置の座標と、の間のそれぞれの非線形関係式を導出し、前記非
線形関係式を解くことによって前記位置の座標を決定するように構成された、プロセッサと、を含
み、
前記非線形関係式を解くことが、以下の(i)~(iii)である1組の三次方程式を解くことを含み、
(i) V(x;ω
x
)=a
1x
x+a
2x
x
2
+a
3x
x
3
、
(ii) V(y;ω
y
)=a
1y
y+a
2y
y
2
+a
3y
y
3
、
(iii)V(z;ω
z
)=a
1z
z+a
2z
z
2
+a
3z
z
3
、
ここで、a
1x
、a
2x
、a
3x
、a
1y
、a
2y
、a
3y
、a
1z
、a
2z
、及び、a
3z
は、位置(x、y、z)と1組の変調電気信号値{V(x;ω
y
)、V(y;ω
y
)、V(z;ω
z
)}を結びつける未知の係数である、システム。
【請求項2】
前記位置測定システムが、カテーテルに基づく磁気位置追跡システムを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記信号値が、電圧及びインピーダンスのうちの1つを含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、電気解剖学的マッピング、特に心臓内電気解剖学的マッピングに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓内電気解剖学的測定から正確な心臓電気解剖学的マップを導出するための様々な技術が提案されている。例えば、米国特許出願公開第2013/0006084号は、物体の位置を決定するための、例えば、患者の心腔内の1つ以上のカテーテルの位置を追跡するための方法及びシステムについて記載している。このシステムは、様々な方法を使用してローカルフィールドマップを生成することができる。ローカルフィールドモデル又はグローバルフィールドマップのいずれかを生成する1つの例示的な方法として、追跡システムの必要な精度に適合した解像度の3Dグリッドを生成し、次いで、測定値に補間技術を適用することがある。例えば、グリッド解像度は0.2mmとすることができる。キュービック補間などの補間アルゴリズムを使用して、グリッド上に測定値を補間することができる。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2014/0187905号は、体内の医療装置の位置を決定するためのシステム及び方法について記載している。このシステムは、デバイス上に配置された第1のタイプの位置センサ及び第2のタイプの位置センサからの位置信号を受信する電子制御ユニットを含んでいる。このユニットは、センサの推定位置に応じて第1のタイプの位置センサを接続するスプラインを計算し、スプラインに沿った第2のタイプのセンサのスプライン位置を推定する。このユニットは、スプライン位置間のマップを生成し、第2のタイプのセンサの推定された位置及び2つのマップの合成マップに応じて、第1のタイプのセンサの実際の位置を決定する。
【0004】
米国特許第6,939,309号は、心室内に配置されるマッピングカテーテル、及び心室内に電場を印加するように作動される能動電極部位について記載している。血液体積及び壁運動によって電場が変調され、これが好ましいカテーテル上の受動電極部位によって検出される。受動電極からは幾何学的測定値だけでなく、電気生理学的測定血も取得され、固有の心臓活動のマップを表示するために使用される。三次スプラインフィット及び楕円体の最良フィットを含む形状を作り出すための様々な技術が可能である。
【0005】
例えば、米国特許第5,697,377号は、カテーテル位置マッピングのためのシステム及び方法、並びに関連する手技について記載している。3つの実質的に直交する交流信号が、患者の心臓などの、マッピング対象の領域に実質的に向けられて、患者を通じて印加される。カテーテルは、少なくとも測定電極を備え、この測定電極は、心臓手術のために患者の心臓壁に接して、又は冠状静脈若しくは動脈内で、様々な位置に配置される。カテーテル先端部と、基準電極、好ましくは患者の表面電極との間で電圧が検知され、この電圧信号は、直交して印加された3つの電流信号に対応する成分を有する。3つの成分をx信号、y信号、及びz信号として分離するために3つの処理チャンネルが使用され、これらの信号から、体内のカテーテル先端部の三次元位置を判定するために計算が行われる。別個に、又はマッピング中に実行することができる、容易な較正手順が、システムを較正し、それぞれのx、y、及びz感知信号と次元位置との間の相関を与えるために用いられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、構成段階において、(a)マッピング電極と、(b)位置測定システムのセンサと、を含む較正ツールを患者の臓器内に配置することを含む方法を提供する。構成ツールは、位置測定システムを使用して臓器内の異なる位置で追跡される。それぞれの異なる位置において、各較正データポイントがマッピング電極を使用して得られた信号値と、位置測定システムによるセンサの対応する位置測定値と、を含む1組の較正データポイントが生成される。本方法は、構成段階に続く調査段階において、マッピング電極を有するが位置測定システムのセンサは有さない調査ツールを、患者の臓器内の位置に配置することを更に含む。調査ツールのマッピング電極を使用して、位置における信号値が測定される。較正データポイントのサブセットを用いて、(a)調査ツールのマッピング電極を使用して得られた信号値と、(b)その位置の座標と、の間のそれぞれの非線形関係式を導出し、この非直線関係式を解くことによって位置の座標が決定される。
【0007】
いくつかの実施形態では、本方法は、1組の三次方程式を解くことを含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、カテーテルに基づいた磁気位置追跡システムを使用して体内の位置を測定することを含む。
【0009】
一実施形態では、本方法は、電圧及びインピーダンスのうちの1つを測定することを含む。
【0010】
更に、本発明の一実施形態によれば、インターフェースとプロセッサとを含むシステムが提供される。インターフェースは、いずれも患者の臓器に挿入されるように構成された、較正ツール及び調査ツールと通信するように構成されている。較正ツールは、マッピング電極と位置測定システムのセンサとを含み、調査ツールは、マッピング電極を含むが、位置測定システムのセンサは含まない。プロセッサは、較正段階において、位置測定システムを使用して臓器内の異なる位置で較正ツールを追跡し、それぞれの異なる位置において、各較正データポイントがマッピング電極を使用して得られた信号値と、位置測定システムによるセンサの対応する位置測定値と、を含む1組の較正データポイントを生成するように構成されている。プロセッサは、較正段階に続く調査段階において、調査ツールのマッピング電極を使用して、位置における信号値を測定し、較正データポイントのサブセットを使用して、(a)調査ツールのマッピング電極を使用して得られた信号値と、(b)その位置の座標と、の間のそれぞれの非線形関係式を導出し、この非直線関係式を解くことによってこの位置の座標を決定するように更に構成されている。
【0011】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく電気解剖学的マッピングのためのシステムの概略的な絵図である。
【
図2】本発明の一実施形態による、信号値と対応する位置との間の非線形三次関係式の概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図2に示される非線形関係式を使用してカテーテルに基づく位置追跡を行うための方法を概略的に示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
概論
体内組織は一般的には導電性であり、体内での位置と共に身体内部の電場を通常は非線形的に変化させる。この確立された観察にもかかわらず、カテーテルに基づく位置追跡システム、及び電気的位置信号(以下、「信号値」とも称する)の取得に基づく方法は、電場の近似的な記述を、体内位置に局所的に線形依存したものとして用いる場合がある。線形化は、線形化較正モデルを用いる目的など、様々な理由で行うことができる。局所的な線形性の仮定から生じる不正確性を補正するために、電気信号に基づく位置追跡システムでは、局所的較正方法、並びに補間及び外挿などの他の計算量を用いる場合がある。
【0014】
以下に述べる本発明の実施形態は、電気信号値に基づいて、患者の臓器内の位置を非線形的に決定する方法を提供する。位置を決定するために、プロセッサは、位置の3つの座標変数と調査カテーテルなどの調査ツールがその位置で測定する信号値とを結びつける1組の非線形方程式を導出する。次いで、プロセッサは、以下に述べるようにして非線形方程式(以下、「非線形関係式」とも呼ぶ)を解いて位置を決定する。
【0015】
開示される非線形位置追跡方法を用いることができる電気信号に基づく位置追跡システムの例としては、
(I)電気信号値が、カテーテルのマッピング電極と表面電極との間で測定されるインピーダンスである、Carto(登録商標)3(Biosent-Webster製)、及び
(II)電気信号値が、マッピング電極によって測定される電圧である、Carto(登録商標)4(Biosense Webster製)がある。
【0016】
以下で例として用いる一実施形態では、導出される非線形方程式の組は三次式であり、較正に基づいてプロセッサが計算する9つの係数(すなわち、未知数)を含んでいる。
【0017】
この計算のために、較正段階において、(i)マッピング電極と、(ii)位置測定システムのセンサと、を含む較正用カテーテルなどの較正ツールが、医師によって臓器内に挿入される。位置測定システムは、臓器内の異なる位置で較正ツールを追跡する。プロセッサは、それぞれの異なる位置において、マッピング電極を使用して得られた信号値(以下、「較正信号」とも呼ぶ)と、磁気位置検出又は医療用イメージングなどの位置測定システムによるセンサの対応する位置測定値とをそれぞれが含む1組の較正データポイントを生成する。いくつかの実施形態では、プロセッサは、1組以上の以前に取得された較正データポイントを保存する。
【0018】
後の追跡セッションにおいて(例えば、調査目的の侵襲的手技、又は段階において)、プロセッサは、較正データポイントのサブセットに基づいて非線形関係式を導出して解くことによって、例えば心室内の検査カテーテルの遠位端の位置を推定する。プロセッサは、(i)調査ツールのマッピング電極を使用して得られた信号値と、(ii)その位置の座標と、の間のそれぞれの非線形関係式を導出することにより、更に、以下に述べるようにこの非直線関係式を解くことによってその位置の座標を決定する。
【0019】
開示される臓器内の位置の非線形的な導出法及び解法は、線形的な仮定に起因して本来それほど正確でない可能性がある線形関係式を導出して解くことよりも優れている。したがって、開示される非線形的較正技術は、電気信号に基づく位置追跡システムと共に使用するための、直接的で、それほど複雑でない位置追跡アプローチを提供するものである。したがって、非線形的較正は、侵襲性プローブのより正確な位置を得る一方で、カテーテル手技を単純化し、その継続時間を短くすることが可能である。
【0020】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、カテーテルに基づく電子解剖学的マッピングのためのシステム21の概略的な絵図である。
図1は、患者25の心臓23の電気解剖学的マッピングを実施するために電気解剖学的調査カテーテル29を使用している医師27を示している。挿入
図30に見られるように、カテーテル29は、その遠位端に5本のアーム20を備えており、いくつかのマッピング電極22が各アーム20に取り付けられている。各アーム20は機械的に可撓性であってよい。この種の調査カテーテルの例として、Pentary(登録商標)カテーテル(Biosense Webster(Irvine California))がある。
【0021】
6個の表面電極が患者の皮膚に取り付けられており、これらを以下、パッチ60、62、64、66、68、及び70、又はまとめてパッチ60Pと呼ぶ。調査のための電気解剖学的マッピング手技の間に、パッチ60Pのペア間に変調電圧が印加される。マッピング電極22は、得られた信号値を心臓23内の電圧の形態で測定する。測定された電圧は、心臓23内のマッピング電極22のそれぞれの位置を示している。プロセッサ28は、電気的インターフェース35を介して各マッピング電極22から測定された信号値を受信し、この信号を使用して心臓内の各マッピング電極22の位置を計算する。手技の間及び/又は後で、プロセッサ28は、ディスプレイ26上に電気解剖学的マップ31を表示することができる。
【0022】
いくつかの実施形態では、カテーテルに基づくシステム21は、磁気位置測定(図示せず)などの別のより正確なシステムを使用して較正される。較正段階の間、較正カテーテル(図示せず)は、医師によって患者25の心臓23の心室に挿入される。較正カテーテルは、マッピング電極及び磁気位置センサを有する。マッピング電極は、パッチ60Pによって誘導される電圧(すなわち電圧の形態の較正信号)を測定する。これと並行して、外部磁場発生器からの磁場に応じて、磁気センサからの磁気位置信号がプロセッサ28で受信される。測定された磁気位置信号に基づいて、プロセッサ28は、心臓内の較正カテーテルの位置を計算する。
【0023】
外部磁場を用いた位置追跡の方法は、様々な医療用途において、例えば、Biosense Websterにより製造される、カテーテルに基づくCARTO(商標)磁気位置追跡システムにおいて実施されており、その開示内容をいずれも参照により本明細書に援用するところの米国特許第5,391,199号、同第6,690,963号、同第6,484,118号、同第6,239,724号、同第6,618,612号及び同第6,332,089号、同第7,756,576号、同第7,869,865号、同第7,848,787号、同第7,848,789号、並びに国際公開第96/05768号、並びに米国特許出願公開第2002/0065455(A1)号、同第2003/0120150(A1)号及び同第2004/0068178(A1)号に詳細に記載されている。
【0024】
磁気的に較正することができる電気信号に基づいた位置システムの例としては、Carto(登録商標)4(Biosense Webster製)がある。Carto(登録商標)4システムに含まれる技術は、例えば、2018年4月30日出願の発明の名称が「Improved Active Voltage Location(AVL)Resolution」である、本特許出願の譲受人に譲渡され、またその開示内容を参照によって本明細書に援用するところの米国特許出願第15/966,514号に記載されている。
【0025】
上述したように、本発明のいくつかの実施形態では、プロセッサ28は、カテーテル29によって信号が測定された位置の調査信号値とそれぞれの座標との間の三次関係式のような非線形関係式を導出して解くように構成されている。非線形関係式を導出して解くことにより、プロセッサ28は、以下に述べるように電気信号から心臓23内の精査カテーテル29の正確な位置を正確に推定する。
【0026】
図1に示される例示的な図は、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。本発明の実施形態は、測定された体内の電気信号を利用するあらゆる位置検知方法に適用することができる。電気信号に基づいた位置追跡システムの別の方法の例として、ACL(Active Current Location)として知られる電圧の代わりに電流を使用するものがある。ACL法は、電極32によって注入された電流を使用してマッピング電極と多数の体表面電極との間のインピーダンス(電極32を使用して電圧を感知する代わりに)を測定するものである。測定されたインピーダンスに基づいて、システムは、体内のマッピング電極の位置を追跡する。ACL方法の詳細については、その開示内容を参照により本明細書に援用するところの米国特許第8,456,182号に記載されている。ACL法は、例えば、CARTO(登録商標)3システム(Biosense Webster製)に用いられている。
【0027】
多電極Lasso(登録商標)Catheter(Biosense Webster製)などの他の種類の検知及び/又は治療用カテーテルを、本発明の実施形態を使用しながら同様に使用してもよい。同様に、多電極バスケットカテーテルは、開示される位置追跡技術を使用することで利することができる。アブレーションに使用されるもののような他の種類の電極を電極22と同様に使用して、位置信号を取得することもできる。したがって、電気信号を収集するために使用されるアブレーション電極は、使用可能なマッピング電極と見なされる。
【0028】
プロセッサ28は、通常、本明細書に述べられる機能を実行するようにプログラムされたソフトウェアを有する汎用コンピュータを含む。このソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができるか、又はこれに代えるか又はこれに加えて、磁気メモリ、光学メモリ又は電子メモリなどの、非一過性の有形媒体上に提供かつ/又は保存することができる。
【0029】
非線形電場位置システム
図2は、本発明の一実施形態による、信号値と対応する位置との間の非線形関係式50の概略図である。非線形三次関係式50は、特定の位置45において調査カテーテル29により測定された信号値55{V(x
0)、V(y
0)、V(z
0)}と、位置45の座標(x
0、y
0、z
0)とを結びつける、式1により与えられる1組の三次方程式を導出して解くことによりプロセッサ28によって得られる。
【0030】
【0031】
理解されるように、式1は、位置(x、y、z)を1組の変調電気信号値、例えば電圧{V(x;ωx)、V(y;ωy)、V(z;ωz)}に結びつける9個の未知の係数aijを含んでいる。例えば、{V(x;ωx)、V(y;ωy)、V(z;ωz)}は、カテーテル29が上述のCarto(登録商標)4システムによって追跡されている間にカテーテル29のマッピング電極22により測定される電圧である。係数aijを見つけるために、プロセッサは、3つのデータポイントのサブセットを使用し、ここで、各データポイントは、磁気的に測定された位置46(x’,y’,z’)において測定される較正電圧49{V(x’)、V(y’)、V(z’)}を含む。上記に述べたように、かかるサブセットは、較正中に較正ツールで測定されたデータポイントセットから選択される。プロセッサ28は、これら3つのデータポイントを式1に代入して得られた非同次行列式を解いて、係数aijからなる固有解を抽出する。
【0032】
導出された式1に{V(x0)、V(y0)、V(z0)}を代入する(すなわち、導出された係数aijに代入する)ことにより、プロセッサ28は、{V(x0)、V(y0)、V(z0)}の座標のそれぞれについて1つずつ、3つの三次多項式を与える。プロセッサ28は、物理解を有するこれらの三次方程式を解くことで、心臓内の調査カテーテル29の位置を得る。
【0033】
位置追跡を行うための上記の非線形法は、複数のマッピング電極にも適用可能である。一実施形態では、電極のうちの1つ(通常、複数のマッピング電極が規定する平均位置に近いもの)の特定の位置の周囲のマッピング電極のすべての位置が、1組の係数aijを用いて計算される。一実施形態では、新しい式1の組を導出することなく複数の位置を見つけるうえで非線形関係式50が有効であるような空間の広がりは、例えば、式1を用いて導出された位置を、磁気的に測定され、式1を解く際には用いられない位置と比較することによって経験的に評価される。
【0034】
任意の実施形態において、複数のマッピング電極22の相対位置は、例えば、マッピング電極22間の幾何学的に既知の電極内距離Dij:
【0035】
【数2】
(式中、(u
i,v
i,w
i)及び(u
j,v
j,w
j)は、特定の数Mの複数の電極からのそれぞれのマッピング電極22i及び22jの空間座標である)を用いることによって、カテーテルの既知の幾何学的形状に基づいて更に改善される。充分な電気的位置信号を測定することにより、式2を解くうえで充分なデータポイントに代入することができる。
【0036】
上記に述べた非線形関係式50の導出工程のいくつかにおいて、必要とされるよりも多くのデータポイントが利用できる場合があるが、当業者は、例えば精度を最大化するために、最も適したものを選択する。
【0037】
最後に、線形関係式と比較した場合の非線形関係式の利点を説明するため、局所線形関係式47(すなわち、式1の1組の線形部分の解)も
図2に示す。理解されるように、関係式47は、極めて局所化された線形化関係を確立している。更に、電場の非線形性質は、表面50にわたる他の局所的線形関係式48を得るために複数の計算を必要とする(広範囲の非線形関係式50内に埋め込まれた小さい局所的線形パッチ48として見られる)。この比較は、開示される非線形技術が、広範囲に正確かつそれほど複雑でない位置追跡スキームを与える様子を示すものである。
【0038】
図3は、本発明の一実施形態による、
図2に示される非線形関係式を用いたカテーテルに基づく位置追跡の方法を概略的に示したフローチャートである。このプロセスは、1組の較正データポイントが生成される較正段階71と、データポイントのサブセットに基づいて非線形関係式が導出され、位置追跡について解かれる追跡段階77とに大きく分けられる。
【0039】
較正段階71は、較正カテーテル配置工程66において、心室内に較正カテーテルを配置することで開始する。次に、システムは、データポイント取得工程68において、例えばマッピング電極と表面電極60Pとの間のインピーダンスを測定することによってその位置における信号値を測定する。これと並行して、追跡システムは、同じデータポイント取得工程68において、例えば磁気位置センサを使用して位置を測定する。
【0040】
電気的に測定された較正信号値及び対応する磁気的に測定された位置は、データポイント記憶工程70においてプロセッサ28により保存される。較正カテーテルは、較正カテーテル再配置工程72において、別のデータポイントを取得するために心室内で再配置される。較正段階71は、保存されたデータポイントの組が充分であると決定された時点で終了する。
【0041】
追跡段階77は、調査カテーテル配置工程74において、心室内の所定の位置に調査カテーテル29を配置することで開始する。次に、追跡システムは、信号値測定工程76において、その位置におけるマッピング電極22と表面電極60Pとの間の信号値、例えばインピーダンスを測定する。
【0042】
次に、非線形関係式導出工程78において、プロセッサ28は、上記に述べたように、工程76で測定された信号値とその位置の座標とを結びつける非線形関係式を計算する。
【0043】
最後に、プロセッサ28は、導出された非線形関係式を解くことによってマッピング電極22の位置を決定する。次いで、プロセスは、調査カテーテルを別の場所に移動させ、工程76~80を繰り返すことによって続行することができる。
【0044】
図3に示す例示的なフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。代替的な実施形態では、位置は、イメージング及び画像位置合わせ技術などの他の手段によって較正段階の間に測定される。それにもかかわらず、1つ以上の位置を決定するために非線形関係式を導出して使用する原理は、他の信号取得及び処理方法及びシステムに適合したものであり、線形関係式を適用することよりも潜在的に優れている。
【0045】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上述の様々な特徴の組み合わせ及びその一部の組み合わせの両方、並びに上述の説明を読むことで当業者により想到されるであろう、また従来技術において開示されていない、それらの変形及び修正を含むものである。参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部と見なすものとする。
【0046】
〔実施の態様〕
(1) (i)較正段階において、
(a)マッピング電極と、(b)位置測定システムのセンサと、を含む較正ツールを患者の臓器内に配置し、
前記位置測定システムを使用して前記臓器内の異なる位置で前記較正ツールを追跡し、
各較正データポイントが前記マッピング電極を使用して得られた信号値と、前記位置測定システムによる前記センサの対応する位置測定値と、を含む、1組の較正データポイントを前記それぞれの異なる位置において生成することと、
(ii)前記較正段階に続く調査段階において、
マッピング電極を有するが前記位置測定システムのセンサは有さない検査ツールを、前記患者の前記臓器内の位置に配置し、
前記調査ツールの前記マッピング電極を使用して、前記位置における前記信号値を測定し、
前記較正データポイントのサブセットを用いて、(a)前記調査ツールの前記マッピング電極を使用して得られた前記信号値と、(b)前記位置の座標と、の間のそれぞれの非線形関係式を導出し、前記非直線関係式を解くことによって前記位置の座標を決定することと、を含む、方法。
(2) 前記非線形関係式を解くことが、1組の三次方程式を解くことを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記体内の位置を測定することが、カテーテルに基づいた磁気位置追跡システムを使用して前記体内の位置を測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記信号値を測定することが、電圧及びインピーダンスのうちの1つを測定することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) システムであって、
いずれも患者の器官内に挿入されるように構成された較正ツール及び調査ツールと通信するように構成されたインターフェースであって、前記較正ツールが、マッピング電極と、位置測定システムのセンサと、を備え、前記調査ツールが、マッピング電極を含むが前記位置測定システムのセンサは含まない、インターフェースと、
プロセッサであって、
(i)較正段階において、
前記位置測定システムを使用して前記臓器内の異なる位置で前記較正ツールを追跡し、
各較正データポイントが前記マッピング電極を使用して得られた信号値と、前記位置測定システムによる前記センサの対応する位置測定値と、を含む、1組の較正データポイントを前記それぞれの異なる位置において生成し、
(ii)前記較正段階に続く調査段階において、
前記調査ツールの前記マッピング電極を使用して、位置における前記信号値を測定し、
前記較正データポイントのサブセットを用いて、(a)前記調査ツールの前記マッピング電極を使用して得られた前記信号値と、(b)前記位置の座標と、の間のそれぞれの非線形関係式を導出し、前記非直線関係式を解くことによって前記位置の座標を決定するように構成された、プロセッサと、を含む、システム。
【0047】
(6) 前記プロセッサが、1組の三次方程式を解くことにより前記非線形関係式を解くように構成されている、実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記位置測定システムが、カテーテルに基づく磁気位置追跡システムを含む、実施態様5に記載のシステム。
(8) 前記信号値が、電圧及びインピーダンスのうちの1つを含む、実施態様5に記載のシステム。