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特許7374659本体、特にランプ本体、ならびに気密シールを製造するための方法
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  • 特許-本体、特にランプ本体、ならびに気密シールを製造するための方法 図1
  • 特許-本体、特にランプ本体、ならびに気密シールを製造するための方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】本体、特にランプ本体、ならびに気密シールを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 61/36 20060101AFI20231030BHJP
   C03C 27/04 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01J61/36
C03C27/04 B
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019151919
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2020031057
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】10 2018 214 319.6
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】19186915.5
(32)【優先日】2019-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】フリッツ ヴィンターシュテラー
(72)【発明者】
【氏名】ヘレナ ブリューメル
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】クリス ワンレス
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-006181(JP,A)
【文献】特開2005-251661(JP,A)
【文献】特開2001-312966(JP,A)
【文献】特開2009-046380(JP,A)
【文献】特開2017-162548(JP,A)
【文献】特開平11-111225(JP,A)
【文献】特開平11-162409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/36
H01J 5/32
H01J 9/32
C03C 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体であって、
-前記本体は、ガラス材料またはガラスセラミック材料からなる管状要素(1)を含み、前記管状要素(1)に少なくとも1つの導体が導入されており、
-前記本体は、さらにホウケイ酸ガラスである少なくともさらなるガラス材料を含み、前記さらなるガラス材料は、前記導体を取り囲み、前記管状要素に接続されており、
前記さらなるガラス材料(5)は、前記管状要素(1)と前記導体との間の気密シールを形成し、さらに前記さらなるガラス材料(5)は、焼結ガラスリングを含み、前記焼結ガラスリングは、前記導体を溶融後に完全に取り囲みかつ前記管状要素に対して気密に封止し、前記焼結ガラスリングは、5~20体積%の範囲の気泡を有し、
段階付けられた膨張係数α~αを有する複数の前記さらなるガラス材料が設けられ、前記管状要素は、第2の膨張係数αn+1を有するガラス材料またはガラスセラミック材料を含み、前記導体は、第3の膨張係数αn+2を有し、前記段階付けられた膨張係数α~αの値は、前記第2の膨張係数αn+1の値と、前記第3の膨張係数αn+2の値と、の間にあることを特徴とする、
本体。
【請求項2】
前記さらなるガラス材料のISO7884-8に準拠の変態温度Tgは、500℃よりも高い、
請求項1記載の本体。
【請求項3】
前記さらなるガラス材料のISO7884-3に準拠の軟化温度は、前記ガラス材料の粘度が107.6dPa・sの場合、850℃よりも高い、
請求項1または2記載の本体。
【請求項4】
前記さらなるガラス材料の熱膨張係数α~αは、1.1×10-6-1~4.0×10-6-1の範囲にある、
請求項1から3までのいずれか1項記載の本体。
【請求項5】
前記管状要素の前記ガラス材料または前記ガラスセラミック材料は、石英ガラスであり、かつ/または、前記焼結ガラスリングの前記さらなるガラス材料は、以下のガラス材料、すなわちGS10,GS15,GS20,GS25,GS30またはSchottガラス8228,8229,8230のうちの少なくとも1つ以上である、
請求項1から4までのいずれか1項記載の本体。
【請求項6】
前記さらなるガラス材料は、着色成分を含んでいる、
請求項1から5までのいずれか1項記載の本体。
【請求項7】
前記導体の材料は、
-タングステン
-モリブデン
-コバール
のうちの1つである、
請求項1から6までのいずれか1項記載の本体。
【請求項8】
ランプ本体のためのガラス材料またはガラスセラミック材料からなる管状要素と、焼結ガラスの形態のホウケイ酸ガラスであるさらなるガラス材料を有する導体と、の間の気密シールを製造するための方法であって、前記方法は、
-前記さらなるガラス材料をガラス粉末に粉砕するステップ(100)と、
-粉砕された前記ガラス粉末から顆粒を形成するステップ(102)と、
-前記顆粒をガラスリングに乾式プレスするステップ(104)と、
-前記ガラスリングを焼結するステップ(106)と、
-前記導体に前記ガラスリングを備えるステップ(108)と、
-前記ガラスリングを前記導体に溶融するステップと、
-前記溶融によって前記導体および前記管状要素を前記ガラスリングに気密に封止するステップ(110)と、
を含み、
段階付けられた膨張係数α~αを有する複数の前記さらなるガラス材料が設けられ、前記管状要素は、第2の膨張係数αn+1を有するガラス材料またはガラスセラミック材料を含み、前記導体は、第3の膨張係数αn+2を有し、前記段階付けられた膨張係数α~αの値は、前記第2の膨張係数αn+1の値と、前記第3の膨張係数αn+2の値と、の間にある、
方法。
【請求項9】
前記ガラス粉末に着色成分が添加される、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記ガラス粉末に粉砕するステップの後で、前記顆粒を形成するステップの前に、前記ガラス粉末に有機結合剤が加えられて引き続き霧化される、かつ/または、前記ガラス粉末は、5~20μmの範囲の平均粒径に粉砕され、かつ/または、粉砕された前記ガラス粉末から得られる顆粒は、25~150μmの範囲の平均粒径を有する、
請求項8または9記載の方法。
【請求項11】
前記さらなるガラス材料の焼結は、前記ガラス材料の粘度が1×10~1×10dPa・sの範囲にある前記さらなるガラス材料の焼結温度で5~30分間行われる、
請求項8から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
焼結後、前記ガラスリングを前記導体に取り付け、さらなる温度ステップにおいて焼結体を前記導体に溶融する、
請求項8から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記ガラスリングを前記導体に溶融するステップは、10-3~10-6dPa・sの粘度で5~30分間行われる、
請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材料またはガラスセラミック材料からなる管状要素を含み、該管状要素に少なくとも1つの導体が導入され、ならびにさらなるガラス材料を含み、該さらなるガラス材料は、導体を取り囲み、管状要素に接続されている、本体、特にランプ本体に関する。その他に本発明は、管状要素と導体との間の気密シールを製造するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高温の光源では、アノード導体もカソード導体も気密にして、好適には石英ガラスからなりランプを収容する通常は管状の充填本体に導入しなければならないという問題が生じる。石英ガラスの僅かな熱膨張性に基づいて、充填本体の膨張係数と導体の膨張係数との間にある膨張係数を有するシール材料を使用して導体を気密に封止する必要がある。この目的のために、従来技術では通常、特殊なガラス材料からなるガラスビーズが使用される。ガラスビーズのためのガラス材料は、例えば米国特許第5,979,187号明細書(US5,979,187B)から、例えば「Transition Glas Company Ltd, Unit 1 Global Court, Coldpit Road, Dannaby, Industrial State, Dannaby, South Yorkshire, United Kingdom」から提供されるシーリングガラスGS10を使用することが公知である。これに関しては、例えば「www.transitionglass.com/products/gs10-graded-seal-glass-rod/」が参照される。このガラスGS10は、84.8重量%の割合のSiOと、10重量%の割合のBiと、4.7重量%の割合のAlと、0.45重量%の割合のBaOと、0.01重量%の割合のFeとを有するホウケイ酸ガラスである。ガラスGS10の膨張係数は、50℃~400℃の温度範囲において、9.5~11.5×10-71/ケルビンの範囲にある。ガラスGS10からなるガラスビーズは、欧州特許出願公開第1598845号明細書(EP1598845A2)にも開示されている。この欧州特許出願公開第1598845号明細書(EP1598845A2)においても、米国特許第5,979,187号明細書(US5,979,187B)においても、導体材料はタングステンであり、導体が挿入され、ランプもその中に配置されている管状ランプ本体は、好適には石英ガラスからなる。米国特許第5,979,187号明細書(US5,979,187B)は、フラッシュランプもしくはレーザーランプである。介在ガラスとも称され、好適にはガラスGS10であるシーリングガラスは、ロッド溶融を介してそれ自体回転する電極に被着される。米国特許第5,979,187号明細書(US5,979,187B)は、欧州特許出願公開第1598845号明細書(EP1598845A1)と同様に、最も近い先行技術を表している。
【0003】
米国特許第2,316,999号明細書(US2,316,999B)からは、放電ランプにおけるガラス-タングステン溶融のための、導体の膨張係数と充填ガラスの膨張係数との間にある膨張係数を有するシーリングガラスからなるガラスビーズの手作業による溶融が公知である。
【0004】
また独国特許発明第886043号明細書(DE886043C)も、たしかに米国特許第2,316,999号明細書(US2,316,999A)と同様の配置構成を示しているが、ガラス溶融ビーズがどのように製造されるかについての情報は提供されていない。
【0005】
また特開2012/199153号公報(JP2012/199153A2)は、石英ガラス容器およびタングステン電極を有するフラッシュランプを示しており、ここでは、タングステン電極に溶融される円筒形ガラスビーズが使用されている。
【0006】
欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)からは、高圧放電ランプおよび本体を備えた高圧放電ランプ用のリード導体が公知である。この欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)による本体の管状要素は、セラミック材料からなる。欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)によるセラミックは、ガラスセラミック系を形成するのではなくむしろ結晶性化合物に分類されるイットリウム-アルミニウム-ガーネット(YAG)を含む。
【0007】
欧州特許第0982278号明細書(EP0982278B1)は、高圧放電ランプ用の本体を示している。この欧州特許第0982278号明細書(EP0982278B1)による放電ランプハウジングもセラミックハウジングである。
【0008】
シーリング材料として、欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)から公知の高圧放電ランプのもとではセラミックシーリング複合材もしくはAl-SiO-Dyの軟磁器が使用される。この種のシーリング複合材の熱的特性は、Liu Yuzhu, Geng Zhiting, Zhuang Weidong, He Huaqiangらによる「Study on thermal expansion behavior of Dy2O3 - Al2O3 - SiO2 glass」、Journal of Rare earth,26(2008)85-88に記載されており、ガラスシールとは全く異なる。
【0009】
従来技術から公知のすべての方法の欠点は、それらが多くの方法ステップのために非常に手間がかかるものであったことにある。そのため、従来技術によれば、ガラスと電極とを予熱することは通常のことであった。その後、予熱されたガラスからはガラスビーズが成形され、このガラスビーズは、導体と一緒にランプ本体の封止材または充填本体に挿入し、引き続きシーリングガラスまたは介在ガラスを用いて封止材または充填本体と共に溶融させるために、冷却後に手作業で個々の導体に被着されていた。従来技術によるガラスビーズを製造するためのすべての方法は、ガラスビーズが手作業による方法でしか製造できないという欠点を有しており、このことは、非常に手間のかかる製造につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服し、特に、代替的な方法と、簡単に製造することができる代替的な本体とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、ガラス材料またはガラスセラミック材料からなる管状要素を含み、この場合、導体が、当該導体を取り囲み管状要素に導入されるさらなるガラス材料を有する、本体、特にランプ本体によって解決される。欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)とは対照的に、管状要素はセラミック材料からではなく、むしろガラス材料またはガラスセラミック材料からなっている。石英ガラスの使用は特に有利である。このことは、特に可視光に対して透過性が高いという利点を有する。次いで、本発明によるさらなるガラス材料は、ガラス材料またはガラスセラミック材料からなる管状要素と導体との間の気密シールを形成する。本発明によれば、さらなるガラス材料は、従来のガラスではなく、むしろ、好適にはガラス粉末から製造される焼結ガラスであることが想定されている。この焼結ガラスは、例えば、焼結ガラスリングの形態で存在し、この場合、この焼結ガラスリングは、従来技術によるガラスビーズのように導体に被着されている。次いで、導体が焼結ガラスリングと共に管状要素に挿入され、焼結ガラス材料が溶融されると、管状要素と導体との間に気密シールが提供される。驚くべきことに、焼結ガラス材料では、焼結ガラス材料と導体および/または管状要素のガラス材料との溶融後の十分な気密性、すなわちガス密性が、600℃を超える、好適には800℃を超える、特に1000℃を超える温度から2000℃までの、特に1500℃までの高温のもとでも達成される。この種の高温は、例えば、大電力を有する、例えば映画館の照明具本体のようなランプ本体において発生する。本願において気密またはガス密とは、1barの圧力差のもとで、He漏れ率が少なくとも1×10-8mbars-1未満であることを意味するものと理解されたい。特に好適には、He漏れ率はむしろ少なくとも1×10-9mbars-1未満であってもよい。
【0012】
焼結ガラスまたはシーリング材料の使用は、欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)または独国特許出願公開第69931877号明細書(DE69931877T2)から公知のセラミックシーリング材料の場合とはまったく異なっている。そのため、焼結ガラスをシーリング材料として使用することは、亀裂形成を抑制する所定の割合の空気を閉じ込めることができる点で優れている。焼結ガラスは、ガラス粉末の焼結によって製造された多孔質ガラスである。焼結とは、高圧下のプレスによって引き起こされる粉末の成形を意味するものと理解されたい。特に、焼結ガラスは、ホウケイ酸塩含有ガラスから得ることができる。例えば、アルカリホウケイ酸ガラスは、自身が熱処理を受けると、可溶性の相(ナトリウムに富むホウ酸塩相)と不溶性の相(ケイ酸塩=マトリックス)とに分離され得る。鉱酸で抽出することにより、可溶性の相を除去することができ、海綿状のケイ酸塩含有ネットワークが残留する。引き続き、その後の焼結プロセスにより、ケイ酸塩焼結ガラスが得られるが、その特性は石英ガラスとごく僅かしか異ならない。
【0013】
同様に、当業者にとって驚くべきことは、500℃を超える、好ましくは550℃を超える、特に570℃を超える非常に高い変態温度Tgを有し、したがって、η=107.6dPa・sの粘度のもとで800℃を超える、好ましくは900℃を超える高い軟化温度を伴うガラス材料が、導体および/または管状要素との溶融後にシーリング材料として十分な気密性、すなわちガス密性を有するガラスリングに焼結できることであり、このことは、800℃を超える温度でのガラス材料の処理には問題があるため、より一層驚異的である。
【0014】
高い透過性が優れている従来技術で使用されるようなシーリングガラスとしてのガラスビーズとは対照的に、焼結ガラスリングは、透過ガラスではなくむしろ乳白色に曇っており、そのためこの焼結ガラスリングは、その異なる光学特性に基づき容易に識別され得る。したがって、焼結ガラスリングの異なる製造方法は、従来技術のガラスビーズとは明らかに異なる焼結ガラスリングの形態のガラスシールをもたらす。焼結ガラス本体は、従来技術からのガラスビーズとは対照的に、閉じ込められた気泡に基づき不透明であり、従来技術からのガラスビーズに比べて明確に区別することができる。焼結ガラスの異なる光学特性は、焼結ガラスリングがランプ本体と導体とのガス密な接続を形成するために溶融される場合でも維持され続ける。
【0015】
管状要素のガラス材料と管状要素に挿入される導体材料との間の膨張係数の大きな差と、ひいては上記で定められるような気密性、すなわちガス密性とを保証するために、シーリングガラスとして使用されるさらなるガラス材料の膨張係数が、管状要素のガラス材料またはガラスセラミック材料の膨張係数と、導体の膨張係数との間にあると有利である。シーリングガラスのさらなるガラス材料の熱膨張係数をαで表し、管状要素のガラス材料またはガラスセラミック材料の熱膨張係数をαで表し、導体の膨張係数α3で表すならば、第1の膨張係数αの値が、αおよびαの値の間にあると有利である。この種のシールは「直接シール(direct seal)」と称される。
【0016】
しかしながら、シーリング要素が、唯一のガラスからなるのではなく、むしろ段階的な膨張係数α~αを有する複数のガラス材料からなり、管状要素のガラス材料が値αn+1を有することも考えられる。導体の膨張係数の値は、αn+2である。したがって、膨張係数の値α~αは、管状要素のガラス材料の膨張係数の値αn+1と、導体の膨張係数の値αn+2との間にある。この種のシーリングガラスは、「段階的シール(graded seal)」と称され、とりわけ、ランプ本体および好適にはタングステンからなるリード導体の800℃を超える高い加熱に結びつく大電流をランプ本体に導入する必要がある場合に使用される。導体の直径が大きい場合には、導体とランプ球との間の膨張差を直接シールで穴埋めできない可能性がある。したがって、そのような場合には、膨張の差を穴埋めする段階的シールが使用される。
【0017】
本発明によれば、ランプ本体、特に管状ランプ本体は、従来技術とは対照的に、セラミック材料ではなく、ガラス材料またはガラスセラミックを含む。ガラス材料もガラスセラミックも、高い透過性によって優れており、特にUV領域およびIR領域までの可視波長領域においても優れている。
【0018】
好適には、ランプ本体のためのガラス材料として、190nm~3500nmの範囲の高い透過性によって優れ、特にUV光に対しても透過的である石英ガラスが使用される。
【0019】
管状本体のガラスとしての石英ガラスの膨張係数は、0.5~0.6×10-6-1である。好適にはタングステンからなる導体の膨張係数は、4.4×10-6-1にある。焼結ガラスリングに対して例示的に使用される本発明によるガラス材料の膨張係数は、以下の表に示されるように介在的に存在する。
【0020】
表1:例示的に使用されるガラスの膨張係数
【表1】
【0021】
焼結ガラス本体が唯一のシーリングガラス(例えばGS10)からなっている場合、これは「直接シール(direct seal)」と称される。それに対して、焼結ガラス本体が複数のシーリングガラスからなる場合、これは「段階的シール(graded seal)」と称される。この「段階的シール」では、最初にガラス粉末が別個にプレスされ、引き続き当該成形体が一緒に焼結され、「段階的シール」が生じる。
【0022】
「直接シール」および「段階的シール」に対する例は以下のとおりである。すなわち、直接シール:タングステン-GS10-石英ガラス
段階的シール:タングステン-GS30-GS25-GS20-GS10-石英ガラス。
【0023】
管状要素に対するガラス材料として、石英ガラスが使用される場合、この石英ガラスは、さらに自身の高い軟化温度により、高いランプ動作温度を可能にする。石英ガラスの極端に低い膨張性は、耐高温衝撃性につながるさらなる利点である。
【0024】
シーリングガラスとして、例えば前述したように、シーリングガラスGS10,GS15,GS20,GS25,GS30のようなホウケイ酸ガラスが使用される。代替的なガラスとして、Schott-ガラス8228,8229および8230も考慮される。これらのガラスの特性に関しては、「www.schott.com/tubing/german/products/properties/matched-sealing.html」が参照される。Schottガラス8228,8229および8230は、他のガラスと溶融可能である遷移ガラスである。ガラスビーズを、焼結ガラスリングの形態で着色により特徴付けるために、好適には封止ガラスに、着色成分、例えばCoO,Fe,CrOを添加することができる。好適にはこれらの着色成分は、ガラスリングの焼結前にガラス粉末に添加される。
【0025】
導体に対する材料として、特に、タングステンだけでなく、モリブデンまたはコバールも使用される。シーリングガラスによって穴埋めしなければならない熱膨張の差を可及的に少なくするために、ランプ球の熱膨張に可及的に近い熱膨張係数を有する材料が有利である。
【0026】
本発明による本体、特にランプ本体の他に、本発明はさらにまた、管状要素と導体との間のシールを形成するガラス材料を製造するための方法も提供する。この本発明による方法は、ガラス材料が粉砕され、乾式プレスされ、焼結されることを特徴とする。
【0027】
本発明による、焼結ガラスリングを製造するためのプロセスは、従来のプロセスに比べてかかる手間が大幅に低減され、多くのガラスリングを並行して製造することができ、このことは、結果として、製造の手間を低減させ、特にコストの削減にもなる。
【0028】
本発明による方法のさらなる利点は、焼結ガラスリングを用いることにより、僅かな公差のもとでガラスリングの実際上変わらない寸法が可能になることである。したがって、例えば、ガラスビーズの製造における操作者による品質への影響を取り除くことができる。本方法のさらなる実施形態では、焼結ガラスリングを、着色によりガラスビーズとして特徴付けることが想定されている。このことは、着色成分をガラス粉末に添加し、ガラス材料に焼結させることによって可能である。顆粒およびガラス粉末の平均粒子サイズは、例えば25~150μmの範囲にある。焼結温度は、107*6dPa・sの粘度で定められているガラスの軟化温度の範囲にある。使用されるガラスの軟化温度は、好適には850℃より高く、特に900℃より高く、850℃~1500℃、特に900℃~1400℃の範囲にある。
【0029】
本発明によるシーリング材料として使用される焼結ガラスのガラスビーズは、従来技術に比べて焼結体が気泡を所定の割合有することができるというさらなる利点を有する。この割合は、5~20体積%の範囲にある。この種の気泡は、ガラス内の亀裂伝播を抑制するという利点がある。ガラス内の亀裂の先端は、非常に狭幅な半径を有する。亀裂に張力がかかっていると、先端の狭幅な半径によって応力集中効果が非常に高くなり、このことは亀裂を前方に伝播させ得る。この種の亀裂が気泡に達すると、そこからは気泡の直径によって、応力集中効果の原因となる亀裂先端の半径が定められる。しかしながら、これらの気泡の半径は、通常の亀裂の半径よりも大幅に大きいため、応力集中効果は減少し、亀裂は停止する。したがって、焼結ガラスリングを用いることにより、亀裂および亀裂発生確率が大幅に低いシーリングガラスが提供される。気泡は、自身が導体および/または管状要素のガラス材料もしくはガラスセラミック材料と共に溶融されている場合、焼結ガラスにも含まれている。
【0030】
欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)とは対照的に、ガラスビーズは、シーリング材料としてランプ本体に載置されているが、それに反して欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)では、シーリング材料は、ランプ本体と電極との間に導入されている。その上さらに、従来技術でのシーリング材料、特に欧州特許第1006560号明細書(EP1006560B1)のシーリング材料は、セラミックもしくは軟磁器であり、それらは本発明によるシーリング材料としての焼結ガラスとは完全に異なる。
【0031】
以下では本発明を、それに基づく限定なしで、図面に基づき例示的に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】従来技術によるランプ本体を示した図
図2】本発明によるシーリングガラスリングを製造するための本発明による方法の個々のステップを示した図
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1には、管状要素1からなるランプ本体が示されており、該ランプ本体には、導体3、好適にはタングステンからなる導体3が挿入される。導体が管状ランプ本体に挿入される箇所には、ガラスビーズ5が、従来技術によるシーリングガラスとして設けられており、この場合、このガラスビーズのガラス材料は、導体材料の熱膨張係数と管状ランプ本体の熱膨張係数との間にある熱膨張係数を有する。シーリングガラスまたは介在ガラスとしてのガラスビーズを用いた溶融により、シーリングガラスの膨張係数の選択に基づき、シーリングガラスと充填ガラス材料との間の導体は、十分にストレスフリーで管状要素に気密に、すなわちガス密に挿入される。
【0034】
先行技術におけるガラスビーズの被着は、好適には複雑なプロセスで行われていたのに対して、本発明によれば、図2に示されているように、複雑な方法で導体に被着されるガラスビーズの代わりに、本発明によりガラス粉末からそれに続く焼結によって得られる焼結ガラスリングを、シーリングガラスとして使用することが想定されている。
【0035】
図2は、本発明による方法の個々のプロセスステップを詳細に示す。
【0036】
最初に、ステップ100に示されているように、例えばSchottガラス8228,8229,8230のような高いTgと高い処理温度とを有するガラス材料がガラス粉末に粉砕される。それに続いて、ステップ102により、ガラス粉末は顆粒に変換される。ガラス粉末には、一義的な識別のために着色成分が、顆粒への変換前に添加され得る。次いで、ステップ104に示されているように、顆粒は、ガラスリングに乾式プレスされる。ガラスリングの乾式プレス後、ステップ106によりガラスリングは焼結される。次いで、焼結ガラスリングは、導体または電極上に導入され、それによって導体または電極に被着もしくは張り付けられる。このことは、ステップ108に示されている。次いで、シーリングガラスは、ステップ110において焼結ガラスリングの形態で導体もしくは電極上で溶融され、引き続き、ランプ本体は、導体をランプ本体のガラス材料またはガラスセラミック材料で焼結シーリングガラスと新たに溶融することにより気密に密閉される。ピンへの成形体の最初の溶融により、導体とガラスビーズと間の移行部は既に気密に封止される。これにより、ガラスビーズ自体もガス不透過性になる。それに続いて、上述したように管状ランプ本体のガラス材料またはガラスセラミック材料との溶融が起こる。
【0037】
以下ではこの方法を、一実施例に基づきより詳細に説明するが、これは当該実施例への限定を意味するものではないことを述べておく。
【0038】
本発明の方法によれば、ガラス材料が最初にガラス粉末に粉砕される。この粉砕は、例えば、セラミック砥石を追加したセラミックドラムにおいて行うことができる。典型的には、10μmの粉末の平均粒径が望ましい。引き続き、必要に応じて、例えばCoO,FeまたはCrOのような粉末状の着色顔料が、0.5~5体積%、好適には0.5~2体積%の割合で添加される。粉末は、例えばSynthomer社(www.synthomer.com)のPlextol(登録商標)のような有機結合剤と混合され、いわゆるスプレータワーにおいてノズルによって霧化される。液状有機結合剤の表面張力により円形の液滴が形成され、この液滴はその後タワー内での噴霧中の乾燥により円形の流動可能な粒子、いわゆる顆粒を形成する。粉砕と顆粒の形成の後では、当該顆粒がガラスリングに乾式プレスされる。この目的のために、機械プレスにおいて成形すべき部品のネガに対応する中空室が充填され、機械プレスされる。この成形体は、引き続き、炉プロセスにおいて有機結合剤から解放され焼結される。有機結合剤は、第1の段階において200~300℃の間の温度のもとで成形体から排出され、その際燃焼される。引き続き、この成形体は、焼結のためのゾーンを通過する。ここでの焼結温度は、各ガラスの軟化温度のもとに置かれる。この軟化温度は、107.6dPa・sのガラス粘度によって定められている。シーリングガラスに使用されるガラス材料、例えばSchottガラス8228,8229,8230の場合、軟化温度は900℃~1200℃の範囲にある。軟化温度の際または軟化温度付近での焼結持続時間は、5~30分である。
【0039】
焼結により、機械的に安定した成形体が得られる。その後、導体は、シーリングガラスとして焼結ガラスリングを備える。そうしてさらなる熱プロセスでは、この焼結体または焼結ガラスリングは導体に溶融される。この溶融の温度は、10~10dPa・sのガラス粘度の範囲にある。使用されるガラス材料、例えばSchottガラス8228,8229,8230の場合、10~10dPa・sの範囲の粘度での処理温度は、1200℃~1800℃の間にある。溶融中、粘性ガラスの表面張力により、導体にしっかり溶融した円形のガラスビーズが焼結ガラスリングに形成される。これに対する持続時間は、5~30分である。これらのコンポーネントは、プロセス内で、例えばグラファイトや窒化ホウ素のような温度安定性でかつ液状ガラス非湿潤性の形態で維持される。
【0040】
上記のようにして得られた導体と遷移ガラスとの複合体は、引き続き、例えば管状石英ガラス本体に挿入することができ、ランプ本体との溶融後、導体材料と管状本体との間の封止がガラスリングもしくはガラスビーズを用いて可能になり、この場合、石英ガラス本体は、ガラスリングもしくはガラスビーズを介して導体と気密に接続されている。
【0041】
本発明による本体および焼結ガラスリングの形態のシーリングガラスを製造するための本発明による方法は、従来の方法に比べて、製造の容易さ、ガラスビーズの高い品質、再現可能な寸法および公差、ならびに着色成分の添加可能性によって優れている。その上さらに、ガラスビーズは、亀裂が回避されることによって優れている。
【0042】
本発明のさらなる利点は、色または隠されたマーカーを焼結ガラスに導入することができ、色または隠されたマーカーに基づいて製品を一義的に識別することでき、ひいては新たな方法による製品偽造からの保護が可能になることにある。
図1
図2