(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20231030BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 301
B41J2/14 605
B41J2/14 609
B41J2/18
B41J2/14 303
(21)【出願番号】P 2019166524
(22)【出願日】2019-09-12
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】西田 英明
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150496(JP,A)
【文献】特開2013-067178(JP,A)
【文献】特開2018-051981(JP,A)
【文献】特開2018-153920(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0124019(US,A1)
【文献】独国特許発明第69824019(DE,C2)
【文献】特開2006-130850(JP,A)
【文献】特開2017-124616(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106956511(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
B41J 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧力室を有する圧力室列を備える3以上のアクチュエータ部と、
並列方向における両端の前記アクチュエータ部の前記圧力室に連通する2つの固有流路と、
複数の前記アクチュエータ部の前記圧力室に連通する複数の共通流路と、を有する液体吐出部を備え
、
前記3以上のアクチュエータ部は、所定の並列方向に並ぶ第1アクチュエータ部、第2アクチュエータ部、及び第3アクチュエータ部、を有し、
前記2つの固有流路は、並列方向における一方側の端部に配される前記第1アクチュエータ部の一方側に配される第1固有流路と、並列方向の他方側の端部に配される前記第3アクチュエータ部の他方側に配される第2固有流路と、を有し、
前記複数の共通流路は、前記第1アクチュエータ部と、並列方向における中央に配される前記第2アクチュエータ部との間に配される第1共通流路と、前記第2アクチュエータ部と、並列方向の他方側の端部に配される前記第3アクチュエータ部との間に配される第2共通流路と、を有し、
前記第1固有流路の一端部に第1の流入流路が配され、
前記第1共通流路の他端部に第1の流出流路が配され、
前記第2共通流路の一端部に第2の流入流路が配され、
前記第2固有流路の他端部に第2の流出流路が配される、
液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記共通流路の流路抵抗は前記固有流路の流路抵抗の45%以上55%以下であり、 前記固有流路及び前記共通流路の少なくともいずれかの一次側に連通する2以上の流入流路と、
前記固有流路及び前記共通流路の少なくともいずれかの二次側に接続する2以上の流出流路と、を有し、
前記流入流路に連通する前記固有流路及び前記共通流路の総流路抵抗と、前記流出流路に連通する前記固有流路及び前記共通流路の総流路抵抗が同等に構成された、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記アクチュエータ部を備える複数のアクチュエータプレートと、
複数の前記アクチュエータプレートの間に配され前記共通流路を構成する1以上のフレームパーツと、
両端の前記アクチュエータプレートの外側に配され前記固有流路を構成する一対のカバープレートと、
前記アクチュエータプレート、前記フレームパーツ及び前記カバープレートが積層された一端面に対向配置され、複数の前記圧力室に対向する複数のノズルを有するノズルプレートと、
を備える請求項1
または請求項2のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至請求項
3のいずれか1に記載の液体吐出ヘッドと、
対象物を前記液体吐出ヘッドに相対移動可能に支持する支持装置と、
を備える液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドは、例えば液体を吐出する液体吐出部と、液体吐出部の一次側に接続された流入路と、液体吐出部の二次側に接続された流出路と液体吐出部に接続される駆動ICを搭載した回路基板と、を備える。液体吐出部は、例えば圧力室を構成する複数の溝を有するアクチュエータと、圧力室に連通する共通室を構成するフレームと、アクチュエータの各圧力室に連通するノズルを有するノズルプレートと、を備える。このような液体吐出ヘッドにおいて、ノズル及び圧力室を複数列備えるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、ノズルを高密度に配列できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、複数の圧力室を有する圧力室列を備える3以上のアクチュエータ部と、並列方向における両端の前記アクチュエータ部の前記圧力室に連通する2つの固有流路と、複数の前記アクチュエータ部の前記圧力室に連通する複数の共通流路と、を有する液体吐出部を備え、前記3以上のアクチュエータ部は、所定の並列方向に並ぶ第1アクチュエータ部、第2アクチュエータ部、及び第3アクチュエータ部、を有し、前記2つの固有流路は、並列方向における一方側の端部に配される前記第1アクチュエータ部の一方側に配される第1固有流路と、並列方向の他方側の端部に配される前記第3アクチュエータ部の他方側に配される第2固有流路と、を有し、前記複数の共通流路は、前記第1アクチュエータ部と、並列方向における中央に配される前記第2アクチュエータ部との間に配される第1共通流路と、前記第2アクチュエータ部と、並列方向の他方側の端部に配される前記第3アクチュエータ部との間に配される第2共通流路と、を有し、前記第1固有流路の一端部に第1の流入流路が配され、前記第1共通流路の他端部に第1の流出流路が配され、前記第2共通流路の一端部に第2の流入流路が配され、前記第2固有流路の他端部に第2の流出流路が配される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態にかかる液体吐出ヘッドの構成を示す正面図。
【
図2】同液体吐出ヘッドの液体吐出部の構成を示す斜視図。
【
図3】同液体吐出ヘッドの液体吐出部の構成を示す断面図。
【
図4】同液体吐出ヘッドの液体吐出部の構成を示す断面図。
【
図5】同液体吐出ヘッドの液体吐出部の構成を示す分解斜視図。
【
図6】同液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置の構成を示す説明図。
【
図7】第2実施形態にかかる液体吐出ヘッドの液体吐出部の構成を示す断面図。
【
図8】第3実施形態にかかる液体吐出ヘッドの液体吐出部の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下に、第1実施形態に係る液体吐出ヘッド1について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
図1は、第1実施形態にかかる液体吐出ヘッド1の正面図であり、
図2は液体吐出ヘッド1の液体吐出部10の斜視図である。
図3及び
図4は液体吐出部10の断面図であり、
図5は液体吐出部10の分解斜視図である。なお、図中矢印X、Y、Zはそれぞれ互いに直交する3方向を示す。本実施形態においてXは第1方向、Yは第2方向、Zは第3方向に沿っている。また、各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
【0008】
図1に示すように、液体吐出ヘッド1は、液体吐出部10と、ベース部20と、を備える。液体吐出ヘッド1は、例えばシェアモードシェアードウォール方式のインクジェットヘッドであり、例えば
図6に示されるインクジェット記録装置などの液体吐出装置100に設けられる。液体吐出ヘッド1は、液体吐出装置100に設けられた液体収容部としての供給タンク132に接続され、供給タンク132との間でインクを循環させる循環型のヘッドである。液体吐出ヘッド1は例えば液体吐出部10のノズル14aが下方に向く姿勢で配置される。液体吐出ヘッド1は、例えば第1方向に複数のノズル14aが並ぶノズル列を、第1方向に直交する第2方向において3列並べて備える。
【0009】
図1乃至
図5に示すように、液体吐出部10は、複数のアクチュエータプレート11A、11B、11C(アクチュエータ部材)と、複数のフレームパーツ12A、12B(フレーム部材)と、一対のカバープレート13A、13B(カバー部材)と、ノズルプレート14と、を備える。
【0010】
液体吐出部10は、複数の圧力室11aを有する3枚のアクチュエータプレート11A、11B、11Cと、アクチュエータプレート11A、11Bの間、及びアクチュエータプレート11B、11Cの間にそれぞれ配される2枚のフレームパーツ12A、12Bと、アクチュエータプレート11A、11Cの外側である片側に対向配置されるカバープレート13A、13Bと、が第2方向に積層される。液体吐出部10は、第1方向に並ぶ複数の圧力室11aを有する3列の圧力室列C1、C2、C3と、第1方向に延びるとともに圧力室列C1、C2、C3のうち2列の各圧力室11aに液体を供給する二本の共通流路C4、C5と、第1方向に延びるとともに圧力室列C1、C3のいずれか1列の各圧力室11aに液体を供給する二本の固有流路C6、C7と、を有する。
【0011】
共通流路C5及び固有流路C6との、第1方向一端部に、流入口15A、15Bがそれぞれ形成され、共通流路C4及び固有流路C7の、第1方向他端部に、流出口16A、16Bが、それぞれ形成され、共通流路C5、C4、及び固有流路C6、C7において、インクは、流入口15A、15Bのある第1方向一端部から、流出口16A、16Bのある他端部に向かって流れる。
【0012】
複数のアクチュエータプレート11A、11B、11Cは、第1方向及び第3方向に沿って延びる一対の主面部を有する板状に構成される。アクチュエータプレート11A、11B、11Cのノズルプレート14に対向する端面に、アクチュエータ部となる積層圧電体17を備える。
【0013】
積層圧電体17は、例えば一対の分極された圧電部材が積層され、圧力室11aを構成する複数の溝17aと、複数の壁状の駆動素子部とが、交互に並んで配される櫛歯状に構成されている。圧電部材として例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)が用いられる。アクチュエータプレート11のノズルプレート14側の端部に、複数の駆動素子部が形成され、隣接する駆動素子部の間にそれぞれ圧力室11aが形成されている。圧力室11aを構成する溝17aは、第1方向に複数配列される。各溝17aは、第2方向の全長にわたって延び、第2方向の両側に配される共通流路C4、C5または固有流路C6、C7のいずれか2つに連通する。また、各圧力室11aは、対向配置されるノズルプレート14のノズル14aにそれぞれ連通する。
【0014】
具体的には、アクチュエータプレート11A(第1アクチュエータ部)は第1共通流路C4及び第1固有流路C6の間に配され、アクチュエータプレート11Aの複数の圧力室11aは、第1共通流路C4及び第1固有流路C6に連通する。アクチュエータプレート11B(第2アクチュエータ部)は第1共通流路C4及び第2共通流路C5の間に配され、アクチュエータプレート11Bの複数の圧力室11aは第1共通流路C4及び第2共通流路C5に連通する。アクチュエータプレート11C(第3アクチュエータ部)は第2共通流路C5及び第2固有流路C7の間に配され、アクチュエータプレート11Cの複数の圧力室11aは、第2共通流路C5及び第2固有流路C7に連通する。
【0015】
各溝17aの内壁、すなわち圧力室11aの内壁には、電極が形成されている。電極は、各アクチュエータプレート11A、11B、11Cの主面に形成された配線11bを介して、回路基板26上のドライブIC27に電気的に接続されている。
【0016】
一対のフレームパーツ12A、12Bは、第1方向及び第2方向に延びる板状に構成される。一対のフレームパーツ12A、12Bは、アクチュエータプレート11A、11B間、及びアクチュエータプレート11B、11Cの間に、それぞれ配置される。
【0017】
各フレームパーツ12A、12Bには、X方向に延び共通流路C4、C5を構成する凹部12aが形成されている。凹部12aは第1方向及び第2方向に沿って延びる底面部を有する。フレームパーツ12A、12Bとアクチュエータプレート11A、11B、11Cとの間には複数の溝17aの一端側に連通する共通流路C4、C5が形成される。共通流路C4、C5はフレームパーツ12A、12Bの凹部12aの底面部と、アクチュエータプレート11A、11Cの主面部と、ノズルプレート14と、によって構成されている。共通流路C4、C5はインクの流れ方向である第1方向に直交する流路断面の形状が矩形であり、複数の圧力室11aに隣接する領域において流路断面積が一定に構成されている。
【0018】
フレームパーツ12Aの凹部12aの第1方向他端側には第1流出流路を構成する流出管部16aが形成される。流出管部16aはベース部20の第1流出ダクト部23Aに接続される。
【0019】
フレームパーツ12Bの凹部12aの第1方向一端側には第2流入流路を構成する流入管部15aが形成される。流入管部15aはベース部20の第2流入ダクト部22Bに接続される。
【0020】
一対のカバープレート13A、13Bは第1方向及び第2方向に延びる板状に構成される。一対のカバープレート13A、13Bは、積層方向の両端に配される2つのアクチュエータプレート11A、11Cの外側の主面にそれぞれ対向配置される。
【0021】
各カバープレート13A、13Bの、アクチュエータプレート11A、11Cに対向する対向面に凹部13aが形成されている。凹部13aは、第1方向及び第2方向に沿って延びる底面部と、第1方向及び第3方向に延びるとともにアクチュエータプレートの外側面に対向する側面部と、を有する。カバープレート13とアクチュエータプレート11との間には複数の溝17aの一端側に連通する固有流路C6、C7が形成される。固有流路C6、C7は、カバープレート13A、13Bの凹部13aの底面部及び側面部と、アクチュエータプレート11A、11Cの主面部と、ノズルプレート14と、によって構成されている。すなわち、固有流路C6、C7は、インクの流れ方向である第1に直交する流路断面の形状が矩形であり、複数の圧力室11aに隣接する領域において流路断面積が一定に構成されている。
【0022】
一方のカバープレート13Aは、凹部13aの第1方向一端部に連通するとともに、ベース部20の第1流入ダクト部22Aに連通する第1流入流路を構成する流入管部15aを備える。
【0023】
他方のカバープレート13Bは、凹部13aの第1方向他端部に連通するとともに、ベース部20の第2流出ダクト部23Bに連通する第2流出流路を構成する流出管部16bを備える。
【0024】
図2及び
図4に示すように、ノズルプレート14は、第1方向及び第2方向に沿う一対の主面を有する板状に構成される。ノズルプレート14は複数のノズル14aが第1方向に並ぶノズル列を、3列有する。各ノズル14aは、ノズルプレート14を第3方向に貫通する貫通孔である。
【0025】
図1に示すように、ベース部20は、樹脂やアルミ合金などの材料で構成されるベースフレーム21と、複数本の流入ダクト部22A、22Bと、複数本の流出ダクト部23A、23Bと、供給管24と、回収管25と、複数枚の回路基板26と、を備える。
【0026】
流入ダクト部22A、22Bは、ベース部20の第1方向における一端側にそれぞれ設けられ、流入管部15a、15bにそれぞれ接続されるとともに第3方向に延びる管状部材である。流入ダクト部22A、22Bは供給管24に連通する流入流路22aを構成する。流入流路22aはインクの流れ方向に直交する流路断面の形状が矩形であり、流路断面積が一定に構成されている。
【0027】
流出ダクト部23A、23Bは、ベース部20の第1方向における他端側に設けられ、流出管部16a、16bにそれぞれ接続されるとともに第3方向に延びる管状部材である。流出ダクト部23A、23Bは、回収管25に連通する流出流路23aを構成する。流出流路23aはインクの流れ方向に直交する流路断面の形状が矩形であり、流路断面積が一定に構成されている。
【0028】
供給管24はベース部20の第1方向における一端側に設けられ、2本の流入ダクト部22A、22Bの一次側に接続される管状部材である。供給管24は、第3方向に延びるとともに流路断面が円形状に構成される供給路24aを構成する。供給路24aは、一端側が接続流路133を介して供給タンク132に接続され、他端側が2つに分岐して一対の流入流路22aに接続される。
【0029】
回収管25は、ベース部20の第1方向における他端側に設けられ、2本の流出ダクト部23A、23Bの二次側に接続される管状部材である。回収管25は、第3方向に延びるとともに流路断面が円形状に構成される回収路25aを構成する。回収路25aは、一端側が接続流路133を介して供給タンク132に接続され、他端側は一対の流出流路23aに接続される。
【0030】
回路基板26は、ベースフレーム21に保持される矩形の配線基板である。本実施形態において、3枚の回路基板26が3列の各アクチュエータプレート11A、11B、11Cの上部に配される。各回路基板26には複数のフレキシブル配線基板28が並列配置され、それぞれのフレキシブル配線基板28にドライブIC27が搭載されている。フレキシブル配線基板28は、第2方向における一端側が回路基板26に、他端側がアクチュエータプレート11に、それぞれ接続されている。
【0031】
複数のドライブIC27は、回路基板26上の配線に接続されるとともに、フレキシブル配線基板28及び、アクチュエータプレート11A、11B、11C上の配線11bを介して、圧力室11aの電極に、電気的に接続される。
【0032】
以上のように構成された液体吐出ヘッド1は、ドライブIC27により駆動電圧を印加することで、駆動する圧力室11a内の電極と、両隣の電極に電位差を与える。すると、積層圧電体を構成する一対の圧電材料が互いに逆向きに変形し、駆動素子部17bが屈曲変形する。そして、異なる方向の屈曲変形を交互に繰り返すことで、圧力室11aの容積を増減することで、圧力室11aに対向するノズル14aから液滴を吐出させる。
【0033】
液体吐出ヘッド1において、インクは、供給タンク132から、供給路24aから複数の流入ダクト部22A、22Bを通って、第1固有流路C6及び第2共通流路C5に至る。そして、第1固有流路C6に流入したインクは、アクチュエータプレート11Aの圧力室列C1に流入し、圧力室列C1の各圧力室11aに対向配置されたノズル14aから吐出される。一方、吐出されなかったインクは、圧力室列C1から第1共通流路C4、流出管部16a、流出ダクト部23A、回収路25aを通って、供給タンク132に回収され、循環する。
【0034】
第2共通流路C5に流入したインクは、アクチュエータプレート11B、11Cの圧力室列C2、C3に流入し、圧力室列C2、C3の各圧力室11aに対向配置されたノズル14aから吐出される。圧力室列C2から吐出されなかったインクは、第1共通流路C4を通って流出ダクト部23A、回収路25aを通って、供給タンク132に回収され、循環する。圧力室列C3から吐出されなかったインクは、圧力室列C3から第2固有流路C7、流出管部16b、流出ダクト部23B、回収路25aを通って、供給タンク132に回収され、循環する。
【0035】
液体吐出部10において、固有流路C6、C7は、それぞれ隣接する1つの圧力室列C1、C3の各圧力室11aに連通するのに対し、共通流路C4は両側の一対の圧力室列C1、C2の各圧力室11aに、共通流路C5は圧力室列C2、C3の各圧力室11aに、それぞれ連通する。ここで、複数の圧力室列C1、C2、C3を通過する流量を等しくすることが、重要である。したがって、共通流路C4、C5には固有流路C6、C7の2倍の流量が流れることになるため、隣り合うアクチュエータ部における圧力の差を極力無くすことができる。すなわち、本実施形態においては、共通流路C4、C5の、圧力室列C1、C2、C3の長さに沿う第1方向の流路抵抗を、固有流路C6、C7の流路抵抗の45%~55%の範囲、好ましくは、50%となるように構成する。
【0036】
ここで、一般的に、管路を流体が流れるとき、ρ:密度、λ:管摩擦係数、L:管の長さ、d:管の直径、V:管内の平均流速とすると、摩擦による圧力損失は以下のダルシー・ワイスバッハの式により与えられる。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
ここで、1列の圧力室をC1、C2、C3通過する流量が同じであるとすれば、共通流路(直径:D1)の流量が固有流路(直径:D2)の流量の2倍となる。長さと粘度は同じである場合、圧力損失を等しくするには、
【0048】
【0049】
【0050】
そして、流路が円管でない場合には、水力直径を用いればよく、非円形断面の面積をA、周長をCとすると水力直径Dhは、
【0051】
【数13】
である。ここで、
図4に示すように、共通流路C4、C5及び固有流路C6、C7は、第1方向の長さが等しく構成されるとともに、第2方向の長さはそれぞれa1、a2であり、第3方向の長さはいずれもbである矩形状の流路断面を有している。このように流路断面が矩形の場合には
【0052】
【0053】
【数15】
となる。したがって、
図4に示すように、固有流路C6、C7と共通流路C4、C5の関係は式15の関係を満たすように構成すればよい。例えば共通流路C4、C5の流路抵抗が固有流路C6、C7の1/2程度となるように、式15の関係に近い条件としてもよい。なお、流路の長さが異なる場合や分岐または合流がある場合は、条件に応じた補正を行えばよい。
【0054】
また、液体吐出ヘッド1は、一対の流入管部15a、15bに連通する固有流路及び共通流路の総流路抵抗と、一対の流出管部16a、16bに連通する固有流路及び共通流路の総流路抵抗は同等に構成されている。例えば、流入管部15aに連通する第1固有流路C6と流入管部15bに連通する第2共通流路C5の流路抵抗の総和である総流路抵抗は、例えば、流出管部16aに連通する第2共通流路C4と流出管部16bに連通する第2固有流路C7の流路抵抗の総和である総流路抵抗とが、同等となるように構成されている。すなわち流入側の抵抗の総和が流出側の抵抗の総和と等しく、あるいは同程度の範囲内となるように、構成される。
【0055】
以下、液体吐出ヘッド1を有する液体吐出装置100について、
図6を参照して説明する。
図6は液体吐出装置100としてインクジェットプリンタの構成を示す説明図である。
図6に示すように、液体吐出装置100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、支持装置である搬送装置115と、制御部116と、を備える。
【0056】
液体吐出装置100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路A1に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
【0057】
媒体供給部112は複数の給紙カセット112aを備える。媒体排出部114は、排紙トレイ114aを備える。画像形成部113は、用紙を支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0058】
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
【0059】
ヘッドユニット130は、複数の液体吐出ヘッドである液体吐出ヘッド1と、各液体吐出ヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数の供給タンク132と、液体吐出ヘッド1と供給タンク132とを接続する接続流路133と、循環部である循環ポンプ134と、を備える。ヘッドユニット130は、液体を循環させる循環型のヘッドユニットである。
【0060】
本実施形態において、液体吐出ヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色の液体吐出ヘッド1C、1M、1Y、1Kと、これらの各色のインクをそれぞれ収容する供給タンク132として、供給タンク132C、132M、132Y、132Kを備える。供給タンク132は接続流路133によって液体吐出ヘッド1に接続される。接続流路133は、液体吐出ヘッド1の供給路24aに接続される供給流路133aと、液体吐出ヘッド1の回収路25aに接続される回収流路133bと、を備える。
【0061】
また、供給タンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結されている。そして、液体吐出ヘッド1と供給タンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置により供給タンク132内を負圧制御することで、液体吐出ヘッド1の各ノズルに供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
【0062】
循環ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。循環ポンプ134は、供給流路133aに設けられている。循環ポンプ134は、配線により制御部116に接続され、CPU(Central Processing Unit)116aの制御によって制御可能に構成されている。循環ポンプ134は、液体吐出ヘッド1と供給タンク132を含む循環流路で液体を循環させる。
【0063】
搬送装置115は、媒体供給部112の給紙カセット112aから画像形成部113を通って媒体排出部114の排紙トレイ114aに至る搬送路A1に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路A1に沿って配置される複数のガイドプレート対121a~121hと、複数の搬送用ローラ122a~122hと、を備えている。搬送装置115は、用紙Pを液体吐出ヘッド1に相対移動可能に支持する。
【0064】
制御部116は、プロセッサの一例としてのCPU(中央制御装置)116aと、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0065】
液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置100において、ノズル14aから液体を吐出する駆動時には、制御部116は、ドライブIC27により、駆動素子部17bに駆動電圧を印加する。電圧の印加により駆動する圧力室11a内の電極と、両隣の空気室の電極に電位差を与えると、駆動素子部17bにおいて一対の圧電部材は互いに逆向きに変形し、両圧電部材の変形により、駆動素子部17bが屈曲変形する。例えば、まず駆動する圧力室11aを開く方向に変形させ圧力室11a内を負圧にすることで、インクを圧力室11a内に導く。続いて、圧力室11aを閉じる方向に変形させ、圧力室11a内を加圧することで、ノズル14aからインク滴を吐出させる。
【0066】
本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置100によれば、ノズルを高密度に配列できる。すなわち、本実施形態にかかる液体吐出ヘッド1及び液体吐出装置100は、液体吐出部10において、いずれか1つの圧力室列C1、C3の各圧力室11aに連通する固有流路C6、C7と、圧力室列C1、C2、C3のうちの2列と連通する共通流路C4、C5の圧力損失が等しくなるように、流路形状が設定され、一例として、共通流路の流路抵抗が固有流路の流路抵抗の約1/2に構成されている。このため、吐出圧力を均一としながら高密度に3列のノズルを配することができ、高精度の印刷が可能となる。また、複数列の圧力室列C1、C2、C3の各圧力室11aに連通する共通流路C4、C5を備える構成としたことで、流路を共通化させることができるため、小型化が可能となる。
【0067】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0068】
上記実施形態においては、3列の圧力室列C1、C2、C3を備える例を示したがこれに限られるものではなく、圧力室列を4列以上備える構成としてもよい。例えば
図7は第2実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Aの説明図である。液体吐出ヘッド1Aは、4列の圧力室列C1、C2、C3、C8と、3列の共通流路C4、C5、C9と、一対の固有流路C6、C7を備える。液体吐出部10Aにおいて、一対の固有流路C6、C7及び中央の共通流路C5の一端部に流入管部15a、15b、15cが設けられ、共通流路C4、C9の他端部に、流出管部16a、16cが設けられている。
【0069】
図8は第3の実施形態にかかる液体吐出ヘッド1Bの説明図である。液体吐出ヘッド1Bは、5列の圧力室列C1、C2、C3、C10、C11と、4列の共通流路C4、C5、C12、C13と、一対の固有流路C6、C7を備える。液体吐出部10Bにおいて、固有流路C6と2つの共通流路C5、C13の一端部に流入管部15a、15b、15dが設けられ、共通流路C4、C12及び固有流路C7の他端部に、流出管部16a、16d、16bが設けられている。これらの実施形態にかかる液体吐出ヘッド1A、1Bにおいても、共通流路の流路抵抗を固有流路の流路抵抗の約1/2とすることで圧力損失を等しくすることができ、複数列の圧力室に均一にインクを供給できる。
【0070】
また、上記実施形態においては共通流路C4、C5、及び固有流路C6、C7が矩形の流路断面を有し、式15の関係に近い条件とした例を示したが、これに限られるものではない。例えば矩形以外の異形管にも適用可能である。矩形以外の異形管の場合にも、水力直径を用いて、(式11)、(式12)、(式13)の関係を保つ条件、あるいはこれらの式に近い条件とすればよい。
【0071】
また、複数の溝17aを全て圧力室11aとしてもよいし、一部にダミーとなる空気室を構成してもよい。すなわち、複数の圧力室列C1、C2、C3において、隣接する一対の圧力室11aの間に1以上の空気室が配される構成としてもよい。
【0072】
また、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
【0073】
液体吐出ヘッドは、上記の他、例えば静電気で振動板を変形してインク滴を吐出する構造、あるいはヒータ等の熱エネルギーを利用してノズルからインク滴を吐出する構造等でもよい。
【0074】
また、上記実施形態において、液体吐出ヘッドは、インクジェット記録装置等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0075】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ノズルを高密度に配列できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供できる。
【0076】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明と同等の記載を付記する。
(1)
複数の圧力室を有する圧力室列を備える3以上のアクチュエータ部と、
並列方向における両端の前記アクチュエータ部の前記圧力室に連通する2つの固有流路と、
複数の前記アクチュエータ部の前記圧力室に連通する複数の共通流路と、を有する液体吐出部を備える、液体吐出ヘッド。
(2)
前記共通流路の流路抵抗は前記固有流路の流路抵抗の45%以上55%以下であり、 前記固有流路及び前記共通流路の少なくともいずれかの一次側に連通する2以上の流入流路と、
前記固有流路及び前記共通流路の少なくともいずれかの二次側に接続する2以上の流出流路と、を有し、
前記流入流路に連通する前記固有流路及び前記共通流路の総流路抵抗と、前記流出流路に連通する前記固有流路及び前記共通流路の総流路抵抗が同等に構成された、(1)に記載の液体吐出ヘッド。
(3)
所定の方向に並ぶ第1アクチュエータ部、第2アクチュエータ部及び第3アクチュエータ部と、
並列方向における一方側の端部に配される前記第1アクチュエータ部の一方側に配される第1固有流路と、
前記第1アクチュエータ部と、並列方向における中央に配される前記第2アクチュエータ部との間に配される第1共通流路と、
前記第2アクチュエータ部と、並列方向の他方側の端部に配される第3アクチュエータ部との間に配される第2共通流路と、
前記第3アクチュエータ部の他方側に配される第2固有流路と、を備え、
前記第1固有流路の一端部に第1の流入流路が配され、
前記第1共通流路の他端部に第1の流出流路が配され、
前記第2共通流路の一端部に第2の流入流路が配され、
前記第2固有流路の他端部に第2の流出流路が配される、
(1)または(2)に記載の液体吐出ヘッド。
(4)
前記アクチュエータ部を備える複数のアクチュエータプレートと、
複数の前記アクチュエータプレートの間に配され前記共通流路を構成する1以上のフレームパーツと、
両端の前記アクチュエータプレートの外側に配され前記固有流路を構成する一対のカバープレートと、
前記アクチュエータプレート、前記フレームパーツ及び前記カバープレートが積層された一端面に対向配置され、複数の前記圧力室に対向する複数のノズルを有するノズルプレートと、
を備える(1)乃至(3)のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
(5)
請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の液体吐出ヘッドと、
対象物を前記液体吐出ヘッドに相対移動可能に支持する支持装置と、
を備える液体吐出装置。
【符号の説明】
【0077】
1…液体吐出ヘッド、10…液体吐出部、11、11A、11B、11C…アクチュエータプレート、11a…圧力室、11b…配線、12A、12B…フレームパーツ、12a…凹部、13、13A、13B…カバープレート、13a…凹部、14…ノズルプレート、14a…ノズル、15A、15B…流入口、15a、15b…流入管部、16A、16B…流出口、16a、16b…流出管部、17…積層圧電体、17a…溝、17b…駆動素子部、20…ベース部、21…ベースフレーム、22A、22B…流入ダクト部、22a…流入流路、23A、23B…流出ダクト部、23a…流出流路、24…供給管、24a…供給路、25…回収管、25a…回収路、26…回路基板、27…ドライブIC、28…フレキシブル配線基板、100…液体吐出装置、111…筐体、112…媒体供給部、112a…給紙カセット、113…画像形成部、114…媒体排出部、114a…排紙トレイ、115…搬送装置、116…制御部、116a…CPU、117…支持部、118…搬送ベルト、119…支持プレート、120…ベルトローラ、121a~121h…ガイドプレート対、122a~122h…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132…供給タンク、133…接続流路、133a…供給流路、133b…回収流路、134…循環ポンプ、A1…搬送路、C1、C2、C3…圧力室列、C4、C5…共通流路、C6、C7…固有流路。