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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】回転式加熱調理装置、及び加熱装置
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20231030BHJP
   A47J 37/04 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A47J27/14 D
A47J37/04 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019190147
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021062171
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】305049090
【氏名又は名称】株式会社サンデリカ
(73)【特許権者】
【識別番号】000178594
【氏名又は名称】山崎製パン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087550
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 莞爾
(72)【発明者】
【氏名】加藤 新悟
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-278829(JP,A)
【文献】特開2005-069641(JP,A)
【文献】特開平08-024142(JP,A)
【文献】特開2001-078896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/14
A47J 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をした周側面を有する調理容器と、
前記調理容器を、これが周方向に回転可能となる状態でその外側から支持する筐体と、
該筐体および調理容器の傾斜角度を調節するための傾動軸と、
前記調理容器の周側面の一部を下方から加熱するため、該周側面の下方に所定の間隔を設けて、調理容器と前記筐体との間に配設された加熱手段と、
を少なくとも備え、
前記調理容器は、金属製であり、
前記加熱手段が、面的に上方に一定の熱量で加熱する燃焼領域を一又は複数形成した表面燃焼バーナであり、前記調理容器の周側面の一部に対して加熱部位により異なる熱量で加熱する燃焼領域を備え、
前記加熱手段は、燃焼領域が、前記調理容器の開口側から底面側へ向かうに従って幅広形状となるように配設されている、
ことを特徴とする回転式加熱調理装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、耐熱金属繊維を布状に編み込んだバーナプレートを備えるメタルニットバーナであることを特徴とする請求項1に記載の回転式加熱調理装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、燃焼領域が、前記調理容器の開口側から底面側へ向かう軸方向と直行する方向において少なくとも2つ以上に分けて配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式加熱調理装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、燃焼領域が、前記調理容器の開口側から底面側へ向かう軸方向と平行な方向において少なくとも2つ以上に分けて配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転式加熱調理装置。
【請求項5】
前記燃焼領域は、回転中の前記調理容器の開口側から見て、該調理容器内部の食材が移動する方向において上流側より下流側の方が大きいことを特徴とする請求項4に記載の回転式加熱調理装置。
【請求項6】
円筒状をした周側面を有する調理容器と、前記調理容器をこれが周方向に回転可能となる状態でその外側から支持する筐体と、を少なくとも備える回転式加熱調理装置に用いられ、
耐熱金属繊維を布状に編み込んだバーナプレートと、
前記バーナプレートを加熱するバーナと、
を少なくとも備えるメタルニットバーナからなり、
前記調理容器の周側面の一部を下方から加熱するため、該周側面の下方に所定の間隔を設けて、調理容器と前記筐体との間に配設され、
面的に上方に一定の熱量で加熱する燃焼領域を一又は複数形成した表面燃焼バーナであり、前記調理容器の周側面の一部に対して加熱部位により異なる熱量で加熱する燃焼領域を備え、
前記燃焼領域は、前記調理容器の開口側から底面側へ向かうに従って幅広形状となるように配設されている、
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
前記燃焼領域は、平面視形状が台形であることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
【請求項8】
前記燃焼領域は、平面視形状が三角形であることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
【請求項9】
前記燃焼領域は、平面視形状が凸形であることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
【請求項10】
前記燃焼領域は、少なくとも2つ以上に分かれて設けられていることを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載の加熱装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、回転する調理容器内において食材(調理材料)を加熱混合して調理する回転式加熱調理装置と、これに用いられる加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転式加熱調理装置は円柱状の形状で、底面は円盤状で、円筒状をした周側面を有し、底面の反対側の上部が開放された調理容器を、食材がこぼれないように傾斜角度を調節することが可能であり、任意の傾斜状態で回転させた際に、周側面の内壁に備える1~2の掻き上げ羽根によって混合しながら、連続的に食材を加熱調理するものである(たとえば、特許文献1を参照)。
【0003】
このような回転式加熱調理装置における加熱手段としては、通常、ブンゼン式バーナが用いられている。
しかしながら、ブンゼン式バーナは、燃料であるガスの燃焼時に大量の二次空気を必要とするため、この二次空気により燃焼室が冷却されて火力が弱くなる(熱効率が悪くなる)といった問題があった。
【0004】
そこで近年、二次空気を必要とせず、ブンゼン式バーナに比べて熱効率の良い表面燃焼バーナが着目されている。この表面燃焼バーナは、編目状をした耐熱金属(耐熱金属繊維をニット状に編み込んだもの)をバーナで加熱し、耐熱金属からの放射熱(輻射熱)とバーナの火力で加熱する無炎の燃焼バーナである。また、表面燃焼バーナは、同じ燃焼エネルギーを得るに際して、有炎のブンゼン式バーナに比べて燃焼ガスの消費量が少なく、伝熱量が増加し、昇温も早いため、熱効率の良さから加熱調理装置においても使用されている(たとえば、特許文献2を参照)。
【0005】
ところが、上記特許文献2に記載された加熱調理装置は、調理容器における底面部全体を表面燃焼バーナによって均等に加熱することを開示するもの、もしくは調理容器における側面部の一部の領域や、底面部から側面部にかけての一部の領域、といった一面を表面燃焼バーナによって均等に加熱することを示唆するものである。ゆえに、このような表面燃焼バーナを、傾斜状態で回転する調理容器を備える回転式加熱調理装置に適用しても、効率良く適切に食材を加熱調理することが困難であった。
【0006】
すなわち、傾斜状態の調理容器では食材が下方に片寄って存することから、調理容器の一面を均等に加熱するようにしたのでは、下方の食材の多いところでは火力が弱く、一方、上方の食材の少ないところでは火力が強く過ぎるものとなり、食材に調理ムラ(すなわち、加熱による温度ムラ)が生じてしまうおそれがあった。ゆえに、傾斜状態で回転する調理容器を備える回転式加熱調理装置に表面燃焼バーナを適用するには更なる検討が必要であった。
【0007】
また、バーナに比して温度調整(温度調節)がし易い加熱手段として誘導加熱コイルを用い、複数個の誘導加熱コイルを調理容器(回転ドラム)における加熱領域(エリア)毎に設置することで、効率良く適切に食材を加熱調理するようにした回転式加熱調理装置も提案されている(たとえば、特許文献3,4を参照)。
しかしながら、誘導加熱コイルは熱源として電気を使用するものであるため、熱源としてガスを用いるバーナに比して装置稼働時のコストが掛かるものとなってしまう。
【0008】
さらに、回転式加熱調理装置における調理容器としてはステンレス製が一般的であり、ステンレス製の調理容器は、鉄製の調理容器に比して冷め難いといった利点がある。しかしながら、ステンレス製の調理容器は、鉄製の調理容器に比して熱し難いといった欠点があることから、温度制御がし易い誘導加熱コイルを用いたとしても、調理容器における加熱領域での温度調整(温度調節)がし難いものである。
【0009】
したがって、調理容器における加熱領域での温度調整(温度調節)がし易く、効率良く適切に食材を加熱調理することが出来る回転式加熱調理装置が望まれているが、出願人が知る限り、そのような回転式加熱調理装置は未だ提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開平2-67928号公報
【文献】特開2010-187914号公報
【文献】特開2004-267519号公報
【文献】特許第4956578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、傾斜状態で回転する調理容器を備える回転式加熱調理装置において、調理容器における加熱領域での温度調整(温度調節)がし易く、効率良く適切に食材を加熱調理することを可能とした技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る回転式加熱調理装置は、円筒状をした周側面を有する調理容器と、前記調理容器を、これが周方向に回転可能となる状態でその外側から支持する筐体と、該筐体および調理容器の傾斜角度を調節するための傾動軸と、前記調理容器の下方に位置し、前記調理容器の周側面の一部を下方から加熱する、該周側面の下部の外面に沿って外面から所定の間隔を設けて前記筐体との間に配設された加熱手段と、を少なくとも備え、前記調理容器は、金属製であり、前記加熱手段が、面的に上方に一定の熱量で加熱する燃焼領域を一又は複数形成した表面燃焼バーナであり、前記調理容器の周側面の一部に対して加熱部位により異なる熱量で加熱する燃焼領域を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の回転式加熱調理装置において加熱手段は、たとえば、耐熱金属繊維を布状に編み込んだ(織り込んだ)バーナプレートを備えるメタルニットバーナとすることが出来る。加熱手段としてメタルニットバーナなどの表面燃焼バーナを用いた場合、調理容器を加熱する燃焼領域はバーナプレートの形状に相当する部分となる。
ゆえに、本発明では、バーナプレートの形状や配置構造を種々変更することで、調理容器に対して加熱部位により異なる熱量を提供することが出来るものとなる。
【0014】
バーナプレートの形状としては、たとえば、調理容器に対して加熱部位により異なる熱量を提供するために、調理容器の開口側から底面側へ向かうに従って、平面視して幅広形状となるように配設された燃焼領域を備えたものとすることが望ましい。すなわち、調理容器の開口側においては低い温度を提供する幅狭の燃焼領域を備え、一方、調理容器の底面側においては高い温度を提供する幅広の燃焼領域を備えたものとする。
【0015】
また、加熱手段は、開口部が斜め上方を向く傾斜状態とした調理容器に対して加熱部位により異なる熱量を提供するために、バーナプレートの配置構造を、調理容器の開口側から底面側へ向かう軸方向と直交する方向において少なくとも2つ以上に分けて配設された燃焼領域を備え、燃焼領域ごとに熱量の調整が可能であるものとすることも出来る。
さらに、加熱手段は、周方向に回転する調理容器に対して加熱部位により異なる温度を提供するために、バーナプレートの配置構造を、調理容器の開口側から底面側へ向かう軸方向と平行する方向において少なくとも2つ以上に分けて配設された燃焼領域を備え、燃焼領域ごとに熱量の調整が可能であるものとしても良い。この際、燃焼領域は、回転中の調理容器の開口側から見て、容器内部の食材が移動する方向において上流側より下流側の方が大きい(広い)ものとすることが望ましい。
【0016】
本発明に係る加熱装置は、円筒状をした周側面を有する調理容器と、前記調理容器をこれが周方向に回転可能となる状態でその外側から支持する筐体と、を少なくとも備える回転式加熱調理装置に用いられ、耐熱金属繊維を布状に編み込んだ(織り込んだ)バーナプレートと、前記バーナプレートを加熱するバーナと、を少なくとも備えるメタルニットバーナからなり、前記調理容器の周側面の一部を下方から加熱するため、該周側面の下方に所定の間隔を設けて、調理容器と前記筐体との間に配設され、面的に上方に一定の熱量で加熱する燃焼領域を一又は複数形成した表面燃焼バーナであり、前記調理容器の周側面の一部に対して加熱部位により異なる熱量で加熱する燃焼領域を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の加熱装置において燃焼領域は、調理容器の開口側から底面側へ向かうに従って幅広形状となるように設けられているものとすることが出来る。すなわち、調理容器の開口側に位置することとなる一端側においては低い温度を提供する幅狭の燃焼領域を備え、一方、調理容器の底面側に位置することとなる他端側においては高い温度を提供する幅広の燃焼領域を備えたものとすることが出来る。
このような燃焼領域としては、たとえば、平面視形状が台形である燃焼領域としたり、平面視形状が三角形である燃焼領域としたり、平面視形状が凸形である燃焼領域としたりすることが出来る。
【0018】
そして、この燃焼領域は、少なくとも2つ以上に分かれて設けられている配置構造とすることが出来、さらに、燃焼領域ごとにそれぞれ熱量の調整が可能であるものとすると望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の回転式加熱調理装置では、調理容器は金属製であり、加熱手段は表面燃焼バーナであって、加熱手段は調理容器の一面に対して加熱部位により異なる温度を提供する燃焼領域を備えるものとなっている。
ゆえに、本発明の回転式加熱調理装置は、調理容器の一面において食材(調理材料)の多いところでは火力を強くして温度を高く、一方、食材の少ないところでは火力を弱くして温度を低くして、食材に調理ムラ(すなわち、加熱による温度ムラ)が生じてしまわないようにすることが出来る。
【0020】
したがって、傾斜状態で回転する調理容器を備える回転式加熱調理装置において、食材が片寄って多く存在する調理容器の底面側付近を強い火力によって高い温度で加熱し、効率良く適切に食材を調理することが出来るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る回転式加熱調理装置を示す正面図である。
図2】本発明に係る回転式加熱調理装置を構成する調理容器を示す右側面図である。
図3】本発明に係る回転式加熱調理装置を構成する調理容器を示す底面図である。
図4】本発明に係る回転式加熱調理装置を構成する表面燃焼バーナ(加熱装置)を模式的に示す(A)側面図、(B)平面図である。
図5】本発明に係る回転式加熱調理装置を構成する調理容器の調理状態を模式的に示す正面中央縦断面図(調理容器の正面を中央から縦断した右側面図)である。
図6】本発明に係る回転式加熱調理装置を構成する他の表面燃焼バーナを示す平面図である。
図7】本発明に係る回転式加熱調理装置を構成する他の表面燃焼バーナを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る回転式加熱調理装置の実施の形態の一例について、図面に基づき説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0023】
図1乃至図3に示すように、本実施の形態における回転式加熱調理装置10は、給食センターや食品メーカ等の厨房設備に配設され、食材(調理材料)を加熱混合しながら、多量の炒飯や焼きそば等を調理する装置であって、調理容器(内釜)1と、筐体(外釜)2と、加熱手段3とを少なくとも備える。また、調理容器1と筐体2との間には遮熱壁(図示せず)が設けられたものとなっている。
【0024】
調理容器1は、円筒状をした周側面を有する有底体であって、一端に食材の投入、取り出し用の開口が形成されたものとなっている。また、調理容器1は、開口(釜口)1A側が徐々に周胴部の径より小径となる絞りテーパ部11を備えると共に、開口11には開閉自在に蓋体(図示せず)が設けられたものとしても良い。
【0025】
この調理容器1の内面には、投入された食材を掬い上げてほぐし、焦げ付きを防止すると共に、余分な水分の蒸発を図ることができる掻き上げ羽根(撹拌片)12が、たとえば、対向する位置にそれぞれ設けられたものとなっている。この掻き上げ羽根(撹拌片)12は、その先端周縁部が調理容器1の内側周面に対して隙間を形成して取り付けられている。この隙間は、炒め油が通過し得るものであり、これにより、炒め油が調理容器1の内側周面全体に行き渡り、食材が調理容器1の内側周面に焦げ付いてしまうことを防ぐことができる。
図2及び図5において掻き上げ羽根(撹拌片)12は、棒状をした撹拌片が6本等間隔に設けられた櫛歯状をしたものとして示されている。
【0026】
また、調理容器1は、筐体2の内部に配されたものとなっており、調理容器1の底面1Bにおける径方向中央外側には、筐体2を貫通する回転軸8の上端に対応するカップリング13が設けられている。
図1及び図2において調理容器1は、開口1Aが水平方向を向いた横倒し状態で、絞りテーパ部11側が筐体2の端縁部から露呈するように筐体2の内部に配されたものとして示されている。
【0027】
カップリング13は、ベルトやチェーン等の動力伝達部材(図示せず)を介して、モータ等の駆動源7と連絡されている回転軸8との連結を可能とするものであり、調理容器1は、これにより回転軸8を中心にして周方向に沿って回動可能なものとなっている。すなわち、調理容器1は、駆動源7からの動力が動力伝達部材を介して回転軸8からカップリング13に伝達されることによって、図1において一点鎖線矢印で示すように、軸周りに回動することが出来るものとなっている。
【0028】
また、カップリング13は、回転軸8との連結・解除が自在であり、調理容器1は、カップリング13と回転軸8との連結を解除するように引き抜くことで、筐体2から取り外して洗浄等ができるものとなっている。
【0029】
さらに、この調理容器1は後述するように、開口1Aが水平方向を向いた横倒し状態から上向き(垂直方向に向かう)状態となるように、もしくは、開口が上向き状態から水平方向を向いた横倒し状態となるように、筐体2と共に傾斜可能に支持されたものとなっている。
【0030】
筐体2は、調理容器1を収容するための凹状をした収容部を備えることにより、この収容部内において調理容器1を支持すると共に、上述したように調理容器1が周方向へ回動可能となるように、底面に回転軸8が嵌合する軸口(図示せず)を備える。また、この筐体2の内部には、収容された調理容器1を加熱するための加熱手段3が配設されるものとなっている。
【0031】
また、筐体2は、一定間隔を保って垂立する左右一対の軸受フレーム4a,4bによって調理容器1の角度調整が可能となるように支持されている。すなわち、筐体2の側面には、対峙するように一対の傾動軸21,21が設けられ、この傾動軸21が軸受フレーム4a,4bに対してそれぞれ筐体2および調理容器1が傾動可能に取り付けられたものとなっている。ゆえに、筐体2および調理容器1は、開口1Aが徐々に上向き、もしくは下向きとなるように角度の調整が可能なものとなる。
【0032】
また、一方の軸受フレーム4aは設定ボックス6が取り付けられている。この設定ボックス6には、電源ボタン、運転開始ボタン、運転停止ボタン、左回転ボタン、右回転ボタン、正逆回転ボタン、回転速度設定ボタン、バーナ点火ボタン、バーナ消火ボタン、加熱温度設定ボタン、加熱時間設定ボタン、リセットボタン等の各種の操作ボタン等が配設されている。
【0033】
また、設定ボックス6は、演算部や記憶部を備え、調理する食材等に応じて調理方法が詳細に設定することが出来るものとなっている。すなわち、記憶部等に記憶・入力されたプログラム・データに基づいて、駆動源7等の回転駆動手段や加熱手段3を設定して、一連の加熱調理を実現することが出来るものとなっている。
【0034】
図1及び図2において、筐体2は、内部に配設され、開口1Aが水平方向を向いた横倒し状態である調理容器1の下方に位置し、調理容器1の周側面を下方から加熱する加熱手段3を保持した状態で、調理容器1の外周を覆ったものとして示されている。
【0035】
加熱手段3は、開口1Aが斜め上方を向く傾斜状態とした調理容器1の周側面の一部を下方から加熱する装置(すなわち、本発明に係る加熱装置)であって、調理容器1の周側面の外面に沿うと共に、外面から所定の間隔を設けて、筐体2との間に配設されたものとなっている。このような加熱手段3としては、たとえば、表面燃焼バーナを挙げることが出来る。
【0036】
表面燃焼バーナ3としては、たとえば、図4に示すように、耐熱性金属繊維を布状に編み込んだ(織り込んだ)バーナプレート(バーナエレメント)31と、このバーナプレート31を加熱するバーナ32とを少なくとも備えるメタルニットバーナを挙げることが出来る。
【0037】
バーナプレート31は、燃料ガスと空気とを混合した燃焼気体(混合ガス)が拡散通過するのに十分な編目を有し、その表面が燃焼領域となるものであり、発生する火炎を内部に保有して無炎燃焼とするとともに、その燃焼熱を輻射熱として外部に放出させるためのものである。
【0038】
バーナ32は、燃焼気体を吐出するバーナヘッド(図示せず)を有し、バーナプレート31の裏面から燃焼気体を供給して、バーナプレート31の表面において燃焼気体を燃焼させるものである。バーナ32においてバーナヘッド部分は、ニット状に編み込まれた耐熱性金属繊維よりなるバーナプレート31のメタルニット部で被覆されたものとなっている。
【0039】
この表面燃焼バーナ3によれば、バーナプレート31表面の熱分布を均一にすることができる。このような表面燃焼バーナ3のバーナプレート31に用いる耐熱性金属繊維としては、たとえば、Cr(クロム)、Al(アルミニウム)、Y(イットリウム)を含有する鉄合金を挙げることが出来る。
【0040】
なお、表面燃焼バーナ3に対しては、図1において白抜き矢印で示すように、図示しないガス供給手段よってガスGが供給されるものとなっている。ガス供給手段は、配管を介して外部のガス供給源と接続されている。また、ガス供給手段から供給されたガスGは、バーナヘッドより吐出され、近接して配設されたスパーク手段によって着火されるものとなっている。なお、バーナヘッドから噴出するガスの着火をよくするために種火バーナを付設するものとしても良い。
【0041】
本実施の形態において表面燃焼バーナ3は、調理容器1の加熱領域に対して加熱部位により異なる温度を提供する燃焼領域を備える。この燃焼領域は、一端側から対向する他端側へ向かうに従って幅広形状となるように設けられている。具体的には、表面燃焼バーナ3において燃焼領域は、調理容器1の開口(一端)1A側から底面(他端)1B側へ向かうに従って幅広形状となるように配設され、調理容器の開口1A側においては低い温度を提供する幅狭の燃焼領域を備え、一方、調理容器の底面1B側においては高い温度を提供する幅広の燃焼領域を備えたものとなっている。
【0042】
ゆえに、本実施の形態における表面燃焼バーナ3は、調理容器1の開口1A側から底面1B側を均一な温度(火力)で加熱するのではなく、調理容器1の開口1A側に比べて底面1B側を高い温度(強い火力)で加熱することが出来るものとなっている。
【0043】
図4は、左方が開口1A側であり、右方が底面1B側であるものとして示し、 図4(B)において、調理容器1の開口1A側ら底面1B側へ向かう軸方向に従って徐々に幅広となる平面視形状が細長台形をした燃焼領域を有するバーナプレート31を備える表面燃焼バーナ3Aが示されている。
【0044】
以上のように構成した回転式加熱調理装置10は、図5において一点鎖線矢印で示すように、調理容器1の開口1A側が少し斜め上向き状態となるように配し、調理容器1を回転させながら加熱して調理を行う。すなわち、調理容器1の回転や掻き上げ羽根(撹拌片)12による食材の掬い上げと落下によって、食材Fを掬い上げて落下させるといった動作を所定時間繰り返しながら、効率的に均一に撹拌しながら加熱調理を行う。
【0045】
この際、調理容器1の傾斜によって食材Fは、調理容器1の底面1B側に片寄って多く存在し、開口1A側は少ないものとなるが、表面燃焼バーナ3の加熱領域は、調理容器1の開口1A側に比べて底面1B側が幅広で面積が大きく、高い温度(強い火力)で加熱できるものとなっている。
【0046】
ゆえに、本発明の回転式加熱調理装置10を用いることで、調理容器1の底面1B側における加熱効率が増大し、食材に調理ムラ(すなわち、加熱による温度ムラ)が生じてしまわないように短い時間で効率良く、かつ、容易に調理し、品質が安定した製品を提供することが出来るものとなる。
【0047】
さらに、熱源として電気ではなく、ガスを使用するものであるため、電気に比して装置稼働時のコスト低減させることも出来る。
【0048】
なお、上記実施の形態において表面燃焼バーナ3は、メタルニットバーナとして説明したが、本発明において表面燃焼バーナ3はこれに限らず、耐熱性金属繊維を積層して焼結したバーナプレート31を用いるメタルファイバーバーナとしても良い。
【0049】
また、本発明において表面燃焼バーナ3における耐熱性繊維は、金属繊維に比較して安価である点からセラミック繊維としても良い。セラミック繊維としては、たとえば、炭化珪素をコーティングしたSi-C-O系炭化珪素繊維を挙げることが出来る。ゆえに、表面燃焼バーナ3は、セラミック繊維を布状に編み込んだバーナプレート31を備えるものとしても良い。
【0050】
さらに、本発明において表面燃焼バーナ3は、燃焼気体(混合ガス)が拡散通過するに十分な表裏連通した細孔を有する多孔質金属板もしくは多孔質セラミック板などの多孔質部材からなるバーナプレート31を備えるものとしても良い。
【0051】
このようにセラミック繊維や多孔質部材からなるバーナプレート31を備える表面燃焼バーナ3においても、メタルニットバーナと同様に、バーナプレート31表面の熱分布を均一にすることが出来る。
【0052】
上記実施の形態においては、調理容器1に対して加熱部位により異なる温度を提供する燃焼領域を備える表面燃焼バーナ(加熱手段)3として、調理容器の開口側から底面側へ向かう軸方向に従って徐々に幅広となる平面視形状が細長台形をした燃焼領域を有するものとして説明したが、本発明において表面燃焼バーナ(加熱手段)3の燃焼領域の形状はこれに限定されない。
【0053】
ゆえに、たとえば、図6(A)に示すように、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向に従って徐々に幅広となる平面視形状が細長三角形をした燃焼領域を有するバーナプレート31を備える表面燃焼バーナ3Bとすることが出来る。また、図6(B)に示すように、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向に従って途中で幅広となる平面視形状が細長凸形をした燃焼領域を有するバーナプレート31を備える表面燃焼バーナ3Cとすることも出来る。
なお、図6(A),(B)は何れも、左側が開口1A側であり、右方が底面1B側であるものとして示されている。
【0054】
これらの形状をした燃焼領域を有する表面燃焼バーナ3B,3Cにおいても、平面視形状が細長台形をした燃焼領域を有する表面燃焼バーナ3Aと同様に、調理容器1の開口1A側に比べて底面1B側が幅広で面積が大きく、高い温度(強い火力)で加熱できるものとし、食材に調理ムラが生じてしまわないように効率良く、かつ、容易に調理し、品質が安定した製品を提供することが出来る。
【0055】
さらに、上記実施の形態においては、調理容器1に対して加熱部位により異なる温度を提供する燃焼領域を備える表面燃焼バーナ(加熱手段)3として、調理容器の開口側から底面側へ向かう軸方向に一つの燃焼領域を備えるものとしたが、本発明において燃焼領域の数はこれに限定されない。
【0056】
ゆえに、たとえば、図7(A)に示すように、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と直交する方向において2つに分けて配設された、平面視形状が矩形をした燃焼領域を有するバーナプレート31A,31Bを備える表面燃焼バーナ3Dを有し、バーナプレート31A,31Bにおける燃焼の有無又は強弱によって燃焼領域ごとに熱量の調整が可能であるものとしても良い。
なお、図7(A)は、左側が開口1A側に位置するバーナプレート31Aであり、右側が底面1B側に位置するバーナプレート31Bであるものとして示されている。
【0057】
調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と直交する方向において2つに分けて配設された場合、調理容器1の開口1A側と底面1B側とで燃焼領域における燃焼の有無又は強弱により加熱温度を容易に変えることが出来る。
【0058】
これにより、開口1A側が少し斜め上向き状態となるように配した調理容器1において、調理の際に食材の存在が少ない開口1A側の燃焼領域を構成するバーナプレート31Aは、低い温度が提供されることとなるように熱量を少なく(低く)調整し、一方、調理の際に食材の存在が多い底面1B側の燃焼領域を構成するバーナプレート31Bは、高い温度が提供されることとなるように熱量を多く(高く)調整することが出来る。
【0059】
なお、図7(A)において、燃焼領域は、調理容器1の開口1A側に位置するバーナプレート31Aと、底面1B側に位置するバーナプレート31Bとの2つに分けて構成されたものとして示されているが、これに限定されず3つ以上に分けて構成されたものとしても良い。
【0060】
したがって、このように調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と直交する方向において少なくとも2つ以上に分けて配設された燃焼領域を備える回転式加熱調理装置10においては、食材に調理ムラが生じてしまわないように一層効率良く、かつ、容易に調理することが出来る。
【0061】
また、たとえば、図7(B)に示すように、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と平行な方向において2つに分けて配設された、平面視形状が細長矩形をした燃焼領域を有するバーナプレート31D,31Uを備える表面燃焼バーナ3Eとし、バーナプレート31D,31Uにおける燃焼の有無又は強弱によって燃焼領域ごとに熱量の調整が可能であるものとしても良い。
なお、図7(B)は、上側が回転方向の上流に位置するバーナプレート31Uであり、下側が回転方向の下流に位置するバーナプレート31Dであるものとして示されている。
【0062】
すなわち、本発明の調理容器1は、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と平行な方向において2つに分けて配設された場合は、調理容器1の回転する上流側と下流側とで燃焼領域における燃焼の有無又は強弱によりの加熱温度を変えることが出来る。
【0063】
これにより、調理容器1の回転や掻き上げ羽根(撹拌片)12による食材の掬い上げと落下によって、調理の際に食材の存在が少ないものとなる周方向の上流側燃焼領域を構成するバーナプレート31Uにおいては、低い温度が提供されることとなるように熱量を少なく(低く)調整し、一方、調理の際に調理容器1の回転と掻き上げ羽根(撹拌片)12による食材の掬い上げと落下によって食材の存在が多いものとなる周方向の下流側燃焼領域を構成するバーナプレート31Dにおいては、高い温度が提供されることとなるように熱量を多く(高く)調整することが出来る。すなわち、下流側燃焼領域は、回転方向の上流側より面積が大きい(広い)ものとする。
【0064】
なお、図7(B)において、燃焼領域は、調理容器1の回転方向の上流側に位置するバーナプレート31Uと、下流側に位置するバーナプレート31Dとの2つに分けて構成されたものとして示されているが、これに限定されず3つ以上に分けて構成されたものとしても良い。
【0065】
したがって、このように調理容器1が回転する周方向において少なくとも2以上に分けて配設された燃焼領域を備える回転式加熱調理装置10においては、調理の際に調理容器1の回転と掻き上げ羽根(撹拌片)12による食材の掬い上げと落下によって、食材の存在が多いものとなる、回転中の調理容器1の開口1A側から見て、該調理容器1内部の食材が移動する方向において上流側より下流側の熱量を大きくし、食材に調理ムラが生じてしまわないように一層効率良く、かつ、容易に調理することが出来る。
【0066】
さらに、たとえば、図7(C)に示すように、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と直交する方向において2つに分けると共に、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と平行な方向においても2つに分けて配設された、平面視形状が小さな矩形をした4つの燃焼領域を有するバーナプレート31AD,31AU,31BD,31BUを備える表面燃焼バーナ3Fとし、バーナプレート31AD,31AU,31BD,31BUにおける燃焼の有無又は強弱によって燃焼領域ごとに熱量の調整が可能であるものとしても良い。
なお、図7(C)は、左上側が開口1A側上流に位置するバーナプレート31AUであり、左下側が開口1A側下流に位置するバーナプレート31ADであり、右上側が底面1B側上流に位置するバーナプレート31BUであり、右下側が底面1B側下流に位置するバーナプレート31BDであるものとして示されている。
【0067】
これにより、開口1A側が少し斜め上向き状態となるように配した調理容器1において、調理容器1の回転や掻き上げ羽根(撹拌片)12による食材の掬い上げと落下によって、調理の際に食材の存在が最も少ないものとなる、調理容器1の開口1A側で、かつ、回転中の調理容器1の開口1A側から見て、該調理容器1内部の食材が移動する方向において上流側燃焼領域を構成するバーナプレート31AUにおいては、最も低い温度が提供されることとなるように熱量を少なく(低く)調整することができる。
【0068】
一方、調理の際に食材の存在が最も多いものとなる、調理容器1の底面1B側で、かつ、回転中の調理容器1の開口1A側から見て、該調理容器1内部の食材が移動する方向において下流側燃焼領域を構成するバーナプレート31BDにおいては、最も高い温度が提供されることとなるように熱量を多く(高く)調整することが出来る。
そして、調理容器1の開口1A側で、かつ、回転中の調理容器1の開口1A側から見て、該調理容器1内部の食材が移動する方向において下流側燃焼領域を構成するバーナプレート31AD、及び調理容器1の底面1B側で、かつ、回転中の調理容器1の開口1A側から見て、該調理容器1内部の食材が移動する方向において上流側燃焼領域を構成するバーナプレート31BUにおいては、その中間の温度が提供されることとなるように熱量を調整することが出来る。
【0069】
図7(C)において、燃焼領域は、調理容器1の回転方向の上流側に位置するバーナプレート31AU及び31BUと、下流側に位置するバーナプレート31AD及び31BDとの4つに分けて構成されたものとして示されているが、これに限定されず5つ以上に分けて構成されたものとしても良い。
【0070】
したがって、このように調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と直交する方向において少なくとも2つ以上に分けて配設されると共に、調理容器1の開口1A側から底面1B側へ向かう軸方向と平行な方向において少なくとも2つ以上に分けて配設された燃焼領域を備える回転式加熱調理装置10においては、燃焼領域の熱量を複数に分けて細かく適宜調整することができるので、食材に調理ムラが生じてしまわないようにより一層効率良く、かつ、容易に調理することが出来る。
【符号の説明】
【0071】
1 調理容器、1A 開口、1B 底面、2 筐体、3 表面燃焼バーナ(加熱装置)、4a,4b 軸受フレーム、6 設定ボックス、7 駆動源、8 回転軸、10 回転式加熱調理装置、11 絞りテーパ部、12 掻き上げ羽根(撹拌片)、13 カップリング、21 傾動軸、31 バーナプレート、32 バーナ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7