(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】加圧ガスによってタンクを充填するための設備および方法
(51)【国際特許分類】
F17C 5/06 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
F17C5/06
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019206060
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】テュー、アーン・タオ
(72)【発明者】
【氏名】カルドン、ギヨーム
【審査官】永田 勝也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534308(JP,A)
【文献】特開2012-167767(JP,A)
【文献】国際公開第2017/186337(WO,A1)
【文献】特表2018-505360(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0157402(US,A1)
【文献】特開2005-330979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧流体によって、特に、加圧ガスによって、とりわけ、加圧水素によって、タンクを充填するための設備であって、液化ガスの供給源(2)と、流体輸送回路(3)とを備え、
前記流体輸送回路(3)は、前記供給源(2)に接続されている上流端部と、充填される
べきタンク(12)に接続されることが意図される少なくとも1つの下流端部とを備え、
前記流体輸送回路(3)は、上流から下流へ直列に配置された、前記供給源から来る前記加圧流体を下流方向に変位させるための液体変位部材(4)と、前記加圧流体の温度が少なくとも2つの個別の温度の間で調整されることを可能にするように構成されている温度調整デバイス(5、6、7)と、バッファーストレージリザーバー(8)とを備え、
前記バッファーストレージリザーバー(8)は、前記
温度調整デバイス(5、6、7)の出口部に接続されている入口部と、前記流体輸送回路(3)の前記下流端部に接続されている出口部とを備え、それは、充填される
べき前記タンク(12)へ供給される前記加圧流体が、前記バッファーストレージリザーバー(8)を介して通らなければならないということを意味しており、
前記設備(1)
が、少なくとも前記温度調整デバイス(5、6、7)を制御するように構成された電子データ処理及びストレージ部材(10)を備える、設備において、
前記電子データ処理及びストレージ部材(10)は、タンク(12)を充填するため
の流体が前記バッファーストレージリザーバー(8)から引き出されている間に、相対的により高い第1の温度で前記バッファーストレージリザーバー(8)に流体を供給するように構成されて
いるとともに、
タンク(12)を充填するため
の流体が前記バッファーストレージリザーバー(8)から引き出されていないときには、相対的により低い第2の温度で前記バッファーストレージリザーバー(8)に流体を供給するように構成されていることを特徴とする、設備。
【請求項2】
前記液体変位部材(4)は、クライオポンプを備えることを特徴とする、請求項1に記載の設備。
【請求項3】
前記温度調整デバイス(5、6、7)は、2重にされている前記流体輸送回路(3)の一部分を備え、前記流体輸送回路(3)の前記一部分は、2つの並列のパイプを有しており、そのうちの1つは、前記加圧流体を温めるための交換器(5)を備え、前記温度調整デバイス(5、6、7)は、1セットのバルブ(6、7)を備え、前記1セットのバルブ(6、7)は、前記温度調整デバイス(5、6、7)の下流の前記加圧流体の温度を調整するために、前記供給源から来る前記加圧流体の分配を前記2つの並列のパイプの中へ決定付けるように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の設備。
【請求項4】
前記バッファーストレージリザーバー(8)は、断熱材を備えるタンクであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の設備。
【請求項5】
前記流体輸送回路(3)は、前記バッファーストレージリザーバー(8)の下流に、膨張バルブ(9)、及び、前記加圧流体の温度を調整するように構成された熱交換器(11)のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の設備。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の設備を使用して、加圧流体によって、特に、加圧ガスによって、とりわけ、加圧水素によって、タンクを充填するための方法であって、前記バッファーストレージリザーバー(8)からタンク(12)に向けての流体の輸送と同時に、決定された第1の温度で前記バッファーストレージリザーバー(8)へ流体を輸送する第1のステップを備える、方法。
【請求項7】
前記バッファーストレージリザーバー(8)からタンク(12)への流体の輸送の後
であって、前記タンク(12)を充填するための流体が前記バッファーストレージリザーバー(8)から引き出されていないときには、前記第1の温度よりも相対的に低い第2の温度で、前記バッファーストレージリザーバー(8)へ流体を輸送する第2のステップを備えることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の温度は、230Kから室温の間に含まれることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の温度は、50Kから150Kの間に含まれることを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バッファーストレージリザーバー(8)へ流体を輸送する前記第1のステップの間に、前記バッファーストレージリザーバー(8)の中の圧力の降下及び/若しくは温度の降下を防止するために、又は前記バッファーストレージリザーバー(8)の中の
圧力及び/若しくは温度が所定の値の下に降下するのを低減するために、
前記バッファーストレージリザーバー(8)へ供給される前記流体の流量及び/又は温度が制御されることを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧ガスによってタンクを充填するための設備および方法に関する。
【0002】
本発明は、より具体的には、加圧ガスによって、とりわけ、加圧水素によって、タンクを充填するための設備であって、設備は、液化ガスの供給源と、流体輸送回路とを備え、流体輸送回路は、供給源に接続されている上流端部と、充填されることとなるタンクに接続されることが意図される少なくとも1つの下流端部とを備え、輸送回路は、上流から下流へ直列に配置された、供給源から来る流体を下流方向に変位させるための部材と、流体の温度が少なくとも2つの個別の温度の間で調整されることを可能にするように構成されている温度調整デバイスと、バッファーストレージリザーバー(buffer storage reservoir)とを備え、バッファーストレージリザーバーは、温度調整デバイスの出口部に接続されている入口部と、輸送回路の下流端部に接続されている出口部とを備え、それは、充填されることとなるタンクへ供給される流体が、バッファーストレージリザーバーを介して通らなければならないということを意味しており、設備は、少なくとも温度調整デバイスを制御するように構成された電子データ処理およびストレージ部材を備える、設備に関する。高い容量の水素車両補給ステーションを提供するために、液体水素の供給が必要とされる。また、液体液化ガスの供給は、冷温エネルギーの供給源をステーションに提供する。また、他の冷温供給源が、ステーションにおいて利用可能であり得る。車両を充填するために、水素は、実際に、一般的に、-30℃~-40℃まで(事前に)冷却されることを必要とする。
【背景技術】
【0003】
車両タンクを充填する前の水素の事前冷却は、非常に要求が多い。冷却されることとなるフローは、一般的に、高い圧力(100~1000bar)になっており、高度に可変の流量(0.5~3.6kg/min)になっており、高度に可変の入口温度(室温、-20℃から40℃)を有している。-40℃から-33℃の範囲にあるほんの数度の公差を伴う、温度の微調整が必要とされる。
【0004】
利用可能な冷温フローは、非常に異なる特性:非常に低い温度(液体水素に関して-253℃、または、クライオポンプの出口側において-193℃から-123℃の範囲内);設備によって異なる可変の圧力および流量を有している。
【0005】
さまざまな解決策が知られており、たとえばWO2017186337Aまたは米国特許第5479966号を参照されたい。
【0006】
しかし、これらの解決策は、ステーションを使用するときの冷温のおよび高温のフローの効果的な管理を可能にしていない。
【発明の概要】
【0007】
本発明の目的は、先行技術の上述の不利益のうちのすべてまたはいくつかを軽減することである。
【0008】
この目的のために、本発明による設備、他の観点では、上記のプリアンブルの中に与えられるその一般的な定義による設備は、電子データ処理およびストレージ部材は、タンクを充填するために流体がバッファーストレージリザーバーから引き出されている間に、相対的により高い第1の温度でバッファーストレージリザーバーに流体を供給するように構成されており、また、タンクを充填するために流体がバッファーストレージリザーバーから引き出されていないときには、相対的により低い第2の温度でバッファーストレージリザーバーに流体を供給するように構成されていることを本質的に特徴とする。
【0009】
そのうえ、本発明の実施形態は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を備えることが可能である。
【0010】
- 液体変位部材は、クライオポンプを備える、
- 温度調整デバイスは、2重にされている輸送回路の一部分を備え、輸送回路の該一部分は、2つの並列のパイプを有しており、そのうちの1つは、流体を温めるための交換器を備え、温度調整デバイスは、1セットのバルブを備え、1セットのバルブは、温度調整部材の下流の流体の温度を調整するために、供給源から来る流体の分配を2つの並列のパイプの中へ決定付けるように構成されている、
- バッファーストレージリザーバーは、断熱材を備えるタンクである、
- 輸送回路は、バッファーストレージリザーバーの下流に、膨張バルブ、および、流体の温度を調整するように構成された熱交換器のうちの少なくとも1つを備える。
【0011】
また、本発明は、上記または下記の特徴のうちのいずれか1つによる設備を使用して、加圧ガスによって、とりわけ、加圧水素によって、タンクを充填するための方法であって、バッファーストレージリザーバーからタンクに向けての流体の輸送と同時に、決定された第1の温度でバッファーストレージリザーバーへ流体を輸送する第1のステップを備える、方法に関する。
【0012】
他の可能な特定の特徴によれば、
- 方法は、バッファーストレージリザーバーからタンクへの流体の輸送の後に、第1の温度よりも相対的に低い第2の温度で、バッファーストレージリザーバーへ流体を輸送する第2のステップを備える、
- 第1の温度は、230Kから室温の間に含まれる、
- 第2の温度は、50Kから150Kの間に含まれる、
- バッファーストレージリザーバーへ流体を輸送する第1のステップの間に、バッファーストレージリザーバーの中の圧力の降下および/もしくは温度の降下を防止するために、または、バッファーストレージリザーバーの中の圧力の降下および/もしくは温度の降下を決定された値の下方に低減させるために、ストレージ施設へ供給される流体の流量および/または温度が制御される。
【0013】
また、本発明は、特許請求の範囲の中の上記の特徴または以下の特徴の任意の組み合わせを備える任意の代替的なデバイスまたは方法に関することが可能である。
【0014】
他の特定の特徴および利点が、単一の図を参照して与えられる以下の説明を読むことから明らかになることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による設備の構造および動作の1つの例を、概略的におよび簡単化された形態で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
設備1は、液化ガスの供給源2(たとえば、断熱された真空タンク)と、流体輸送回路3とを備え、流体輸送回路3は、供給源2に接続されている上流端部と、充填されることとなるタンク12に接続されることが意図される少なくとも1つの下流端部とを備える(いくつかの個別のタンクを充填するために、いくつかの下流端部が存在するということを考えることも可能である)。
【0017】
輸送回路3は、上流から下流へ直列に配置された、供給源から来る流体を下流方向に変位させるための部材4(たとえば、ポンプ)と、少なくとも2つの個別の温度の間で流体の温度を調整することを可能にするように構成されている温度調整デバイス5、6、7と、バッファーストレージリザーバー8とを備える。
【0018】
図示されているように、下流に、輸送回路3は、また、膨張バルブ7と、タンク12への輸送の前に温度を調整するための熱交換器5とを備えることが可能である。
【0019】
バッファーストレージリザーバー8は、加熱デバイス5、6、7の出口部に接続されている入口部と、輸送回路3の下流端部に接続されている出口部とを備える。それが意味することは、充填されることとなるタンク12へ供給される流体が、バッファーストレージリザーバー8を通過しなければならないということである(代替例として、並列の複数のバッファーストレージリザーバーが想定され得る)。バッファーストレージリザーバー8は、たとえば、断熱材を備えるタンクである(たとえば、タイプ-Iタンクまたはタイプ-IIタンク)。
【0020】
設備の部材(バルブ、ポンプなど)のうちのすべてまたはいくつかは、電子データ処理およびストレージ部材10によって制御され得、電子データ処理およびストレージ部材10は、特に、少なくとも温度調整デバイス5、6、7を制御するように構成されている。
【0021】
図示されているように、温度調整デバイスは、好ましくは、2重にされている輸送回路の一部分を備え、その輸送回路の該一部分は、2つの並列のパイプを有しており、そのうちの1つは、流体を温めるための交換器5を備え、温度調整デバイスは、1セットのバルブを備え、1セットのバルブは、温度調整デバイスの下流の流体の温度を調整するために、供給源から来る流体の分配を2つの並列のパイプの中へ決定付けるように構成されている。2つの並列のレッグのうちの一方または両方の間で、供給源2から引き出される液体を分配することによって、低い温度(フローのすべてが加温交換器5を回避するとき)と高い温度(フローのすべてが加温交換器5を通過するとき)との間で、流体の温度を制御および変化させることが可能である。これらの2つの温度の間で、実現され得る1つまたはいくつかの中間温度が存在している。
【0022】
1つの有利な特徴によれば、電子データ処理およびストレージ部材10は、タンク12を充填するために流体がバッファーストレージリザーバー8から引き出されている間に、相対的により高い第1の温度でバッファーストレージリザーバー8へ流体を供給するように構成され得、また、タンク12を充填するために流体がバッファーストレージリザーバー8から引き出されていないときには、相対的により低い第2の温度でバッファーストレージリザーバー8へ流体を供給するように構成され得る。
【0023】
したがって、設備の構造は、比較的に簡単であることが可能であり、液体水素の供給源である1つだけのストレージ施設2と、クライオポンプ4と、小さい大気加熱器5と、簡単な調整システムを備えた1つまたは複数のバッファーストレージリザーバー8とを備えることが可能である。
【0024】
液体水素が、極低温度で供給源2からバッファーストレージリザーバー8に向けて直接的にポンプ送りされ得る。
【0025】
バッファーストレージリザーバー8は、好ましくは、断熱されており、また、比較的に冷温の水素をタンク12へ供給する準備ができた状態にするために、冷温を維持する。
【0026】
タンク12を充填する局面の間に、ポンプ4は、流体がバッファーストレージリザーバー8から引き出されている間に、バッファーストレージリザーバー8の圧力と温度とを維持するために、加熱器5によって温められるポンプ送りされた水素を供給することが可能である。
【0027】
2つの充填動作の間に、バッファーストレージリザーバー8は、比較的により冷温の流体によって、もう一度充填され得る。この充填局面の間に、バッファーストレージリザーバー8の充填における断熱加熱を補償するために、ポンプ4は、加熱器5を回避する経路を介して、より冷温の水素を供給することが可能である。
【0028】
この動作モードは、ジュール-トムソン効果を補償するために、輸送回路の下流端部において必要とされる温度(たとえば、200K~230K)よりも低いほぼ一定の冷温に、バッファーストレージリザーバー8を維持することを可能にする。
【0029】
タンク12の充填の間に、出口温度調整器5は、適当な場合に、輸送される流体の温度の微調節を提供することが可能である。
【0030】
この構造は、簡単で効果的な方式で、ポンプ4の出口部に冷温のエネルギーを使用することを可能にする。実際に、この効果を実現するために、特別な交換器は必要とされず、また、制御バルブの複雑な制御も必要とされない。
【0031】
ポンプ送りされる液体水素の冷温の容量のすべてが用いられ得る。電力消費は、存在し得る任意の加熱器11(たとえば、電気加熱器)において最小に留まり、たとえば、摂氏数度だけの追加加熱を提供するに過ぎない。
【0032】
また、このアーキテクチャーおよびその動作は、ポンプ4の送達レートが充填送達レートから解離されることを可能にする。これは、比較的に低出力のポンプ4の使用を可能にし、また、高圧バッファーストレージリザーバー8からの充填レートの簡単な制御の使用を可能にし、それは、ガスを供給される充填ステーションからよく知られている。
【0033】
また、流体がバッファーストレージリザーバー8から引き出される局面の間に、バッファーストレージリザーバー8が温められた水素によって充填されるという事実は、バッファーストレージリザーバー8の容量を最大化し、その中の圧力の降下を最小化することを可能にする。
【0034】
バッファーストレージリザーバー8は、断熱されており、比較的に低い温度で、たとえば、200Kから230Kの間で、維持されるかまたは維持され得る。バッファーストレージリザーバー8は、好ましくは、熱損失を最小化するために断熱されている。この温度で断熱するための方法がよく知られている。また、それは、極低温の温度に耐えることができることも必要とする。
【0035】
優先的には、バッファーストレージリザーバーが作製されている金属(または、他の材料)の熱容量は、その中に含有されるガスの熱容量の少なくとも2倍の高さであり、圧力/温度変動を制限するようになっている。断熱体の厚さは、システムの合計熱容量(ガス+バッファーストレージリザーバー)にしたがって計算され得る。
【0036】
これは、たとえば、10cmよりも小さい厚さの発泡断熱体を備えて待機した状態で、12時間後に、圧力変動を30barに制限し、温度変動を10℃に制限することを可能とする。
【0037】
このストレージ施設8は、好ましくは、タイプ-Iまたはタイプ-IIのものである。
【0038】
タンク12の充填の間に、水素は、低い温度でバッファーストレージリザーバー8から引き出され、下流の充填調整バルブ9(たとえば、ジュール-トムソンタイプのもの)の中で膨張させられ得る。バッファーストレージリザーバー8の温度は、この膨張が-33℃を超えて水素を加熱しないように定格を決められ得る。この温度は、たとえば、200Kから230Kの間に含まれ得る。この局面の間に、バッファーストレージリザーバー8を離れる水素は、次いで、必要に応じて、調整器5の中を通ることが可能であり、それは、充填されることとなるタンク12に接続された充填ノズルに向けて方向付けられるガスの温度の微調節を可能にする。
【0039】
この充填局面の間に、バッファーストレージリザーバー8の中の圧力および温度の降下を最小化するように、ポンプ4は、同時に、バッファーストレージリザーバー8の充填に貢献することが可能である。
【0040】
これを行うために、ポンプ4を離れる流体は、バッファーストレージリザーバー8に進入する前に、周囲加熱器5によって完全に温められ得る。
【0041】
対応するバルブ6は、完全に閉じられたままであることが可能である。
【0042】
比較的に温かい水素のこの流入は、バッファーストレージリザーバー8の中の断熱膨張による温度の降下および圧力の降下を最小化することを可能にする。
【0043】
この動作モードによって、バッファーストレージリザーバー8の中の圧力および温度は、ポンプの出力が充填送達出力よりもはるかに小さくなっているとしても、バッファーストレージリザーバー8の熱慣性のおかげで、および、比較的に温かい水素の追加のおかげで、タンク12の充填の間にほとんど変化しない。
【0044】
熱交換器11は、電気加熱器であることが可能であり、または、冷温エネルギーが、潜熱または顕熱を使用して、範囲(-33℃から-45℃)の中の温度で貯蔵され得る。
【0045】
バッファーストレージリザーバー8(タンク12の充填の外側)を充填する局面の間に、ポンプ4は、「半-極低温の」水素をストレージリザーバー8に供給することが可能である。したがって、バッファーストレージリザーバー8の温度が、高い閾値(たとえば、220K~230Kの間)に到達するときには、供給源2からの液体水素は、バッファーストレージリザーバー8の圧力までポンプ送りされ得る(たとえば、400barから900barの間に含まれる圧力)。
【0046】
ポンプ4から離れるこの極低温の水素(たとえば、80Kから50Kの間の温度)は、それを加圧するためにバッファーストレージリザーバー8の中へ真っ直ぐに方向付けされ得る。この充填温度において、ストレージリザーバー8は、(ストレージリザーバー8の金属質量に応じて、充填サイクル当たりに0.5Kから5K)のオーダーで徐々に温度降下することが可能である。バッファーストレージリザーバー8の温度が、低い閾値(たとえば、200Kの辺り)に到達するときには、ポンプ4からの高圧水素は、バッファーストレージリザーバー8を過度に冷却することを回避するために、大気加熱器5を通過するように方向付けされ得る。
【0047】
ポンプ送りされる水素からのフリゴリーの入力なしの非使用の局面の間に、熱損失は、バッファーストレージリザーバー8の中の圧力および温度が上昇することを引き起こす可能性がある。
【0048】
バッファーストレージリザーバー8の高い熱慣性は、これらの温度変動を部分的に滑らかにすることを可能にすることができる。たとえば、(たとえば、発泡体タイプの)簡単な断熱体が、200Kから230Kの間の温度におけるバッファーストレージリザーバー8の100l当たりに50~100Wのオーダーまで、これらの損失を低減させるのに十分であることが可能である。断熱体の品質(たとえば、断熱体の厚さ)は、この圧力の上昇および温度の上昇が特定の待機時間にわたって制限されたままになることを保証するように、定格を決められ得る。たとえば、12時間のオーダーの待機時間に関して、典型的に、50bar未満のおよび20K未満の上昇が予想される。また、圧力および温度の設定点は、こうした増加を計算に入れるために、マージンを組み込むことも可能である。
【0049】
バッファーストレージリザーバー8は、その最大動作圧力よりも低い30barから50barにある圧力設定点を有することが可能である。
【0050】
同様に、このバッファーストレージリザーバー8は、ジュール-トムソン効果によって充填するために必要とされる温度より下方の10Kから20Kの温度設定点を有することが可能である。
【0051】
上記に述べられているように、バッファーストレージリザーバー8は、異なる圧力レベルにおいてカスケードで使用されるいくつかのストレージリザーバーを備えることが可能である(たとえば、1つは、400barから700barの間の圧力に関するものであり、別のものは、800barから900barの間の圧力に関するものである)。これは、ジュール-トムソン効果を制限することを可能にする。
【0052】
本発明は、特に、液体形態および/またはガス形態の、ならびに、特に、超臨界形態の、加圧された水素によって、タンクが充填されることを可能にする。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 加圧流体によって、特に、加圧ガスによって、とりわけ、加圧水素によって、タンクを充填するための設備であって、液化ガスの供給源(2)と、流体輸送回路(3)とを備え、前記流体輸送回路(3)は、前記供給源(2)に接続されている上流端部と、充填されることとなるタンク(12)に接続されることが意図される少なくとも1つの下流端部とを備え、前記流体輸送回路(3)は、上流から下流へ直列に配置された、前記供給源から来る前記加圧流体を下流方向に変位させるための液体変位部材(4)と、前記加圧流体の温度が少なくとも2つの個別の温度の間で調整されることを可能にするように構成されている温度調整デバイス(5、6、7)と、バッファーストレージリザーバー(8)とを備え、前記バッファーストレージリザーバー(8)は、前記加熱デバイス(5、6、7)の出口部に接続されている入口部と、前記流体輸送回路(3)の前記下流端部に接続されている出口部とを備え、それは、充填されることとなる前記タンク(12)へ供給される前記加圧流体が、前記バッファーストレージリザーバー(8)を介して通らなければならないということを意味しており、前記設備(1)は、少なくとも前記温度調整デバイス(5、6、7)を制御するように構成された電子データ処理およびストレージ部材(10)を備える、設備において、前記電子データ処理およびストレージ部材(10)は、タンク(12)を充填するために流体が前記バッファーストレージリザーバー(8)から引き出されている間に、相対的により高い第1の温度で前記バッファーストレージリザーバー(8)に流体を供給するように構成されており、また、タンク(12)を充填するために流体が前記バッファーストレージリザーバー(8)から引き出されていないときには、相対的により低い第2の温度で前記バッファーストレージリザーバー(8)に流体を供給するように構成されていることを特徴とする、設備。
[2] 前記液体変位部材(4)は、クライオポンプを備えることを特徴とする、[1]に記載の設備。
[3] 前記温度調整デバイス(5、6、7)は、2重にされている前記流体輸送回路(3)の一部分を備え、前記流体輸送回路(3)の前記一部分は、2つの並列のパイプを有しており、そのうちの1つは、前記加圧流体を温めるための交換器(5)を備え、前記温度調整デバイス(5、6、7)は、1セットのバルブ(6、7)を備え、前記1セットのバルブ(6、7)は、前記温度調整デバイス(5、6、7)の下流の加圧流体の温度を調整するために、前記供給源から来る前記加圧流体の分配を前記2つの並列のパイプの中へ決定付けるように構成されていることを特徴とする、[1]または[2]に記載の設備。
[4] 前記バッファーストレージリザーバー(8)は、断熱材を備えるタンクであることを特徴とする、[1]から[3]のいずれか一項に記載の設備。
[5] 前記流体輸送回路(3)は、前記バッファーストレージリザーバー(8)の下流に、膨張バルブ(9)、および、前記加圧流体の温度を調整するように構成された熱交換器(11)のうちの少なくとも1つを備えることを特徴とする、[1]から[4]のいずれか一項に記載の設備。
[6] [1]から[5]のいずれか一項に記載の設備を使用して、加圧流体によって、特に、加圧ガスによって、とりわけ、加圧水素によって、タンクを充填するための方法であって、前記バッファーストレージリザーバー(8)からタンク(12)に向けての流体の輸送と同時に、決定された第1の温度で前記バッファーストレージリザーバー(8)へ流体を輸送する第1のステップを備える、方法。
[7] 前記バッファーストレージリザーバー(8)からタンク(12)への流体の輸送の後に、前記第1の温度よりも相対的に低い第2の温度で、前記バッファーストレージリザーバー(8)へ流体を輸送する第2のステップを備えることを特徴とする、[6]に記載の方法。
[8] 前記第1の温度は、230Kから室温の間に含まれることを特徴とする、[7]に記載の方法。
[9] 前記第2の温度は、50Kから150Kの間に含まれることを特徴とする、[6]から[8]のいずれか一項に記載の方法。
[10] 前記バッファーストレージリザーバー(8)へ流体を輸送する前記第1のステップの間に、前記バッファーストレージリザーバー(8)の中の圧力の降下および/もしくは温度の降下を防止するために、または、前記バッファーストレージリザーバー(8)の中の前記圧力の降下および/もしくは前記温度の降下を決定された値の下方に低減させるために、ストレージ施設へ供給される前記流体の流量および/または温度が制御されることを特徴とする、[6]から[9]のいずれか一項に記載の方法。