IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-孔壁測定方法及び孔壁測定装置 図1
  • 特許-孔壁測定方法及び孔壁測定装置 図2
  • 特許-孔壁測定方法及び孔壁測定装置 図3
  • 特許-孔壁測定方法及び孔壁測定装置 図4
  • 特許-孔壁測定方法及び孔壁測定装置 図5
  • 特許-孔壁測定方法及び孔壁測定装置 図6
  • 特許-孔壁測定方法及び孔壁測定装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】孔壁測定方法及び孔壁測定装置
(51)【国際特許分類】
   E21B 47/085 20120101AFI20231030BHJP
   G01B 17/00 20060101ALI20231030BHJP
   G01C 7/06 20060101ALI20231030BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
E21B47/085
G01B17/00 A
G01C7/06
G01C15/00 104B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019218418
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021088829
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】眞野 英之
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-078690(JP,U)
【文献】特開2002-161695(JP,A)
【文献】特開平01-074909(JP,A)
【文献】特開2000-258157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 47/085
G01B 17/00
G01C 7/06
G01C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサー収納筐体を吊下し、センサー収納筐体に設けられた超音波センサーによって、測定位置における掘削孔の孔壁までの距離を測定する孔壁測定方法において、
センサー収納筐体に設けられた超音波センサーの周縁に、前記超音波センサーのセンサー面の法線方向に延びるパイプ状の開口を有するカバー部材を取り付け、
前記センサー収納筐体を昇降させつつ、前記超音波センサーにより孔壁までの距離を測定することを特徴とする孔壁測定方法。
【請求項2】
前記センサー収納筐体には、互いに反対方向に超音波を出射する一対の超音波センサーが設けられており、前記一対の超音波センサーのそれぞれの周縁に、前記カバー部材が取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の孔壁測定方法。
【請求項3】
前記カバー部材の内壁面には凹凸部材が配されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の孔壁測定方法。
【請求項4】
前記カバー部材の内壁面には起毛部材が配されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の孔壁測定方法。
【請求項5】
センサー収納筐体を吊下し、センサー収納筐体に設けられた超音波センサーによって、測定位置における掘削孔の孔壁までの距離を測定する孔壁測定装置において、
センサー収納筐体に設けられた超音波センサーの周縁に、前記超音波センサーのセンサー面の法線方向に延びるパイプ状の開口を有するカバー部材が取り付けられることを特徴とする孔壁測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、拡底された掘削孔における孔壁の内径を測定するのに好適な孔壁測定方法及び孔壁測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超高層ビルなど重量の大きい建物では、杭基礎として場所打ちコンクリート拡底杭が多用されている。このような場所打ちコンクリート拡底杭(以下、コンクリート拡底杭という)では、例えば、特許文献1(特許第2607966号公報)に示されるような、略一定の径の軸部と、軸部の先端部側を必要な支持力に合わせて拡底してなる略円錐台状の拡底部とを備えて構築され、杭先端部に拡底部を設けることで支持耐力を大幅に向上させる構造のものが知られている。
【0003】
コンクリート拡底杭を構築する際には、例えば、掘削機を用いて地表面から略一定の径の掘削孔を所定の深度まで安定液を充填しつつ掘削形成する。次に、ロッドの先端に接続した拡底用掘削機を挿入して掘削孔の先端部に配置した段階で、拡底用掘削機を拡張させつつロッドを中心軸周りに回転させて孔壁部分の地盤を掘削し、掘削孔の先端部を拡底する。
【文献】特許第2607966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにして拡底用掘削機を用いて掘削された孔の孔壁の内径が、設計された内径以上であることを確認するために超音波センサーを用いた孔壁測定方法が用いられていた。図7は従来の孔壁測定方法における問題点を説明する図である。
【0005】
図7に示す孔壁測定方法において、ワイヤーは掘削孔Hの芯CLを通るように配されている。超音波センサーが内蔵されているセンサー収納筐体は当該ワイヤーに吊り下げられている。また、ワイヤーは不図示のウインチにより送り出されたり、巻き取られたりすることができるようになっており、ワイヤーに吊り下げられているセンサー収納筐体は、ウインチの動作に基づいて鉛直方向に昇降する。また、ウインチの動作状況に基づいて、センサー収納筐体の鉛直方向の位置が把握される。
【0006】
センサー収納筐体に露出するように設けられている超音波センサーは、超音波を出射すると共に、測定対象で反射された超音波を受振し、これを電気信号に変換する。孔壁測定においては、超音波を出射したタイミングと、電気信号により得られる、反射された超音波を受振したタイミングとに基づいて、超音波センサーと測定対象(本例では、孔壁W)との間の距離を測定する。
【0007】
掘削孔Hの芯CLを通るワイヤーによりセンサー収納筐体を降下させながら、超音波センサーで孔壁Wとの間の距離を測定することで、センサー収納筐体の位置(掘削孔Hの深さ)と、孔壁Wまでの距離(掘削孔Hの内径)との関係を得る。
【0008】
以上のような孔壁測定方法における問題点について説明する。超音波センサーにおいては、センサー面の法線に対して、±20°程度の範囲に超音波を出射するようになっている。コンクリート拡底杭に対応する掘削孔Hにおいては、図7に示すようにテーパー面を有している。
【0009】
図7において、(a)は超音波センサーのセンサー面の法線の方向に出射された超音波とその反射波を示しており、Aの位置はこれに基づく掘削孔Hの孔壁Wの壁面を示している。孔壁測定方法では、このような(a)に基づいた測定データを、掘削孔Hの内径として取得することを意図している。
【0010】
一方、(b)は超音波センサーのセンサー面の法線に対して、正の仰角をもって出射された超音波とその反射波を示しており、Bの位置はこれに基づく掘削孔Hの内径を示している。(b)に基づいた測定データは、本来意図した測定データより、小さくなることが分かる。
【0011】
また、(c)は超音波センサーのセンサー面の法線に対して、正の俯角をもって出射された超音波とその反射波を示しており、Cの位置はこれに基づく掘削孔Hの内径を示している。(c)に基づいた測定データは、本来意図した測定データより、大きくなってしまうことが分かる。
【0012】
以上のように従来の孔壁測定方法によれば、測定データにバラツキが生じてしまい、掘削孔Hの孔壁Wの内径を精度高く測定することが困難であった。特に、掘削孔Hの内径が設計値より小さく測定されてしまうと、再掘削の作業を行う必要が生じ、多大な労力・コスト・時間の無駄が発生する、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記課題を解決するものであって、本発明に係る孔壁測定方法は、センサー収納筐体を吊下し、センサー収納筐体に設けられた超音波センサーによって、測定位置における掘削孔の孔壁までの距離を測定する孔壁測定方法において、センサー収納筐体に設けられた超音波センサーの周縁に、前記超音波センサーのセンサー面の法線方向に延びるパイプ状の開口を有するカバー部材を取り付け、前記センサー収納筐体を昇降させつつ、前記超音波センサーにより孔壁までの距離を測定することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る孔壁測定方法は、前記センサー収納筐体には、互いに反対方向に超音波を出射する一対の超音波センサーが設けられており、前記一対の超音波センサーのそれぞれの周縁に、前記カバー部材が取り付けられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る孔壁測定方法は、前記カバー部材の内壁面には凹凸部材が配されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る孔壁測定方法は、前記カバー部材の内壁面には起毛部材が配されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る孔壁測定装置は、センサー収納筐体を吊下し、センサー収納筐体に設けられた超音波センサーによって、測定位置における掘削孔の孔壁までの距離を測定する孔壁測定装置において、センサー収納筐体に設けられた超音波センサーの周縁に、前記超音波センサーのセンサー面の法線方向に延びるパイプ状の開口を有するカバー部材が取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る孔壁測定方法によれば、意図しない反射波が超音波センサーに入射することを、カバー部材により低減することができ、測定データのバラツキを抑制し、掘削孔Hの孔壁Wの内径を精度高く測定することが可能となる。これにより、不必要な再掘削の作業を行うことがなくなり、多大な労力・コスト・時間の無駄を排することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る孔壁測定装置10に基づく孔壁測定方法を説明する図である。
図2】本発明の実施形態に係る孔壁測定装置10にセンサー収納筐体70近傍の構成を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る孔壁測定装置10による測定の様子を模式的に示す図である。
図4】記録部20における記録例を示す図である。
図5】本発明の他の実施形態に係る孔壁測定装置10の模式図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る孔壁測定装置10の模式図である。
図7】従来の孔壁測定方法における問題点を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施形態に係る孔壁測定装置10に基づく孔壁測定方法を説明する図である。また、図2は本発明の実施形態に係る孔壁測定装置10にセンサー収納筐体70近傍の構成を示す斜視図である。
【0021】
本発明に係る孔壁測定装置10は、センサー収納筐体70を吊下するウインチ機構40により掘削孔Hにおける測定位置の深さ(D)を測定し、センサー収納筐体70に設けられた第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72によって掘削孔Hの孔壁Wまでの距離(r1、r2)を測定する装置である。第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72により得られる距離r1、r2は、掘削孔Hの内径に関するデータである。また、本発明の孔壁測定方法は、上記のような孔壁測定装置10で孔壁Wを測定する方法に係るものである。
【0022】
なお、以下で説明する本実施形態においては、センサー収納筐体70を吊下するものがウインチ機構40であり、このウインチ機構40に基づいて、センサー収納筐体70の深さ(D)も測定する構成を採用しているが、本発明に係る孔壁測定装置10がこのような構成に限定されるものではない。すなわち、センサー収納筐体70を吊下するものがウインチ機構40である必要はないし、また、センサー収納筐体70の深さ(D)はウインチ機構40以外の他の構成によっても測定することができる。
【0023】
本発明に係る孔壁測定装置10は、制御部30は、ウインチ機構40の駆動・動作を制御したり、第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72による測定に関する処理を実行したりする。また、制御部30は、ウインチ機構40より得られるセンサー収納筐体70の深さ(D)に係るデータ、及び、第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72により得られる距離に関する測定データ(r1、r2)を記録部20に対して出力する。記録部20はこれを受け、深さ(D)とこれに対応する距離データ(r1、r2)を記録する。
【0024】
図4は記録部20における記録例を示す図である。図4に示すように、記録部20では、掘削孔Hのセンサー収納筐体70から孔壁Wまでの距離、すなわち、掘削孔Hの内径r1、r2を掘削孔Hの深さ(D)に沿って記録する。ここで、掘削孔Hの深さ(D)における基準となる0の値は、測定の準備段階において適宜調整される。
【0025】
ウインチ機構40は、少なくとも2つのウインチを有する。本例では、ウインチ機構40は、第1ウインチ41及び第2ウインチ42を有している。また、第1ウインチ41及び第2ウインチ42は同一の寸法・規格を有するものであり、同一の寸法・規格を有する第1ワイヤー51及び第2ワイヤー52をそれぞれ巻き取ったり、送り出したりするようになっている。第1ワイヤー51及び第2ワイヤー52には、略T字状の連結金具60を介してセンサー収納筐体70が接続されている。
【0026】
第1ウインチ41及び第2ウインチ42が、同一のペースで第1ワイヤー51及び第2ワイヤー52を巻き取ったり、送り出したりすることで、センサー収納筐体70が鉛直方向に昇降する。このようにウインチ機構40は、少なくとも2本の第1ワイヤー51及び第2ワイヤー52により、センサー収納筐体70を昇降するので、センサー収納筐体70はその姿勢が維持されつつ昇降される。すなわち、センサー収納筐体70が水平面内で回転したり、或いは、第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72のセンサー面の法線方向が水平方向からずれたりしたりすることがなく、精度高く掘削孔Hの孔壁Wの測定を行うことができる。
【0027】
第1ワイヤー51及び第2ワイヤー52で吊り下げられているセンサー収納筐体70の中心は、掘削孔Hの芯CLを通るように配されている。また、制御部30は、ウインチ機構40における第1ウインチ41、第2ウインチ42の回転動作状況などから、センサー収納筐体70の位置、すなわち、掘削孔Hの深さ(D)を取得する。
【0028】
センサー収納筐体70は略直方体の形状をなしており、センサー収納筐体70には、互いに反対方向に超音波を出射する一対の第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72が設けられている。また、この一対の第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72のそれぞれの周縁に、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120が取り付けられている。
【0029】
センサー収納筐体70には、第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72が露出するように設けられている。第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72には同一の寸法・規格のものが用いられる。第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72のセンサー面からはそれぞれの面の法線方向に超音波が出射される。出射された超音波は、掘削孔Hの孔壁Wで反射され、反射された超音波は再び第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72で受振され、それぞれのセンサーで、電気信号に変換される。
【0030】
第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72でそれぞれ得られた電気信号は、制御部30において、それぞれの距離に関する測定データ(r1、r2)に変換される。本発明の孔壁測定方法としては、ウインチ機構40により、D=0の位置からセンサー収納筐体70を降下させつつ、第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72のそれぞれで測定データを取得していくことで、掘削孔Hの深さDに対応した掘削孔Hの内径r1、r2を順次測定していく。
【0031】
なお、本実施形態においては、略直方体の形状をなすセンサー収納筐体70の対向する2側面に第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72を設け、2つの内径r1、r2を測定する構成としたが、センサー収納筐体70の先の2側面と異なる2側面に、第3、第4の超音波センサーを設け、平面視で90°毎の4つの内径r1、r2、r3、r4を測定する構成としてもよい。
【0032】
また、センサー収納筐体70に設けられた1つの超音波センサーのみによってデータを測定することもできる。しかしながら、より多くの情報を得られるために、2つ以上の超音波センサーを対で用いることがより好ましい。さらに、対向する側面に設けられた超音波センサーの対を利用することが好ましいのは、センサー収納筐体70自体のバランスをとることができる、という理由もある。
【0033】
図2に示すように、センサー収納筐体70に設けられた第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72のそれぞれの周縁には、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120が取り付けられている。
【0034】
第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120は比較的長尺の両端に開口を有するパイプ状の部材である。ここで、本実施形態では第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120は断面が円形のものを用いたが、必ずしも断面が円形である必要はない。
【0035】
第1筒状カバー部材110の長手方向の長さをL1、内径をφ1とし、第2筒状カバー部材120の長手方向の長さをL2、内径をφ2とする。センサー収納筐体70は、連結金具60を介して2本の第1ワイヤー51、第2ワイヤー52で吊下されているので、水平方向にバランスがとれていることが好ましく、従って、L1=L2とすることが好ましい。長さL1、L2は任意であるが、目安として、例えば、第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72のセンサー面の直径が60mmであるとすると、L1、L2は250mm以上、より好ましくは500mm以上とする。
【0036】
なお、長さL1、L2を長くすると、それぞれの筒状カバー部材を、センサー収納筐体70と当接する部分のみで支持することが困難となる。そこで、連結金具60と第1筒状カバー部材110の第1開口111付近との間、及び、連結金具60と第2筒状カバー部材120の第2開口121付近との間に、紐状、チェーン状の吊下部材を、張力を有する状態で渡して第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120の支持力を向上させることも好ましい実施形態である。
【0037】
また、L1、L2の上限値は、掘削孔Hの上方における孔壁Wの内径が広げられていない円筒状の区間における内径より、若干小さい程度までとすることができる。
【0038】
内径φ1、φ2は第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72のセンサー面の直径より大きく設定される。また、第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72は同一寸法・規格である場合、φ1=φ2とすることが好ましい。
【0039】
上記のような第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120を設けることの効果について図3を参照して説明する。図3は本発明の実施形態に係る孔壁測定装置10による測定の様子を模式的に示す図である。また、図3においては、第1超音波センサー71側のみの効果を説明しているが、第2超音波センサー72側においても同様の効果を期待することができる。
【0040】
図3において、(a)は第1超音波センサー71のセンサー面の法線の方向に出射された超音波とその反射波を示しており、掘削孔Hの内径に係る測定データとして理想的なものを示している。
【0041】
一方、(b)は第1超音波センサー71のセンサー面の法線に対して、正の仰角をもって、第1筒状カバー部材110の第1開口111から出射された超音波とその反射波で、第1筒状カバー部材110により遮られ、第1開口111から第1超音波センサー71側へ入射することができなかったものを示している。
【0042】
また、(c)は第1超音波センサー71のセンサー面の法線に対して、正の俯角をもって、第1筒状カバー部材110の第1開口111から出射された超音波とその反射波で、第1筒状カバー部材110により遮られ、第1開口111から第1超音波センサー71側へ入射することができなかったものを示している。
【0043】
以上のように、第1筒状カバー部材110が第1超音波センサー71の周縁に取り付けられることで、第1超音波センサー71のセンサー面の法線方向からずれて出射された超音波による反射波が、第1超音波センサー71のセンサー面に入射する確率を大幅に抑制することが可能となることがわかる。これにより、第1超音波センサー71で距離を測定する際における精度を大幅に向上することができる。
【0044】
以上のような本発明に係る孔壁測定方法、孔壁測定装置10によれば、意図しない反射波が第1超音波センサー71及び第2超音波センサー72に入射することを、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120により低減することができ、測定データのバラツキを抑制し、掘削孔Hの孔壁Wの内径を精度高く測定することが可能となる。これにより、不必要な再掘削の作業を行うことがなくなり、多大な労力・コスト・時間の無駄を排することができる。
【0045】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図5は本発明の他の実施形態に係る孔壁測定装置10の模式図であり、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120については断面の様子を示している。
【0046】
本実施形態は、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120の内壁面における構成が第1の実施形態と異なるのみであり、その他の構成は同様であるので説明を割愛する。
【0047】
本実施形態に係る孔壁測定装置10において、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120の内壁面には凹凸部材130が配されている。このような凹凸部材130としては、粗面を有する部材であればどのようなものでもよく、例えばサンドペーパーなどを用いることができる。凹凸部材130は、孔壁Wで反射し、第1開口111、第2開口121から入射してしまった、センサー面の法線方向にない、ノイズとなる超音波を乱反射させてこれを減衰する。
【0048】
このような凹凸部材130が設けられた本実施形態によれば、測定データのバラツキを、第1の実施形態より抑制し、掘削孔Hの孔壁Wの内径を、より精度高く測定することができる。
【0049】
次に本発明の他の実施形態について説明する。図6は本発明の他の実施形態に係る孔壁測定装置10の模式図であり、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120については断面の様子を示している。
【0050】
本実施形態は、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120の内壁面における構成が第1の実施形態と異なるのみであり、その他の構成は同様であるので説明を割愛する。
【0051】
本実施形態に係る孔壁測定装置10において、第1筒状カバー部材110及び第2筒状カバー部材120の内壁面には起毛部材140が配されている。このような起毛部材140としては、毛羽立っている表面を有する部材であればどのようなものでもよく、例えばタオル素材の布地、フェルト、グラスルールなどを用いることができる。起毛部材140は、孔壁Wで反射し、第1開口111、第2開口121から入射してしまった、センサー面の法線方向にない、ノイズとなる超音波を吸収することでこれを減衰する。
【0052】
このような起毛部材140が設けられた本実施形態によれば、測定データのバラツキを、第1の実施形態より抑制し、掘削孔Hの孔壁Wの内径を、より精度高く測定することができる。
【0053】
以上、本発明に係る孔壁測定方法、孔壁測定装置によれば、意図しない反射波が超音波センサーに入射することを、カバー部材により低減することができ、測定データのバラツキを抑制し、掘削孔の孔壁の内径を精度高く測定することが可能となる。これにより、不必要な再掘削の作業を行うことがなくなり、多大な労力・コスト・時間の無駄を排することができる。
【符号の説明】
【0054】
10・・・孔壁測定装置
20・・・記録部
30・・・制御部
40・・・ウインチ機構
41・・・第1ウインチ
42・・・第2ウインチ
51・・・第1ワイヤー
52・・・第2ワイヤー
60・・・連結金具
70・・・センサー収納筐体
71・・・第1超音波センサー
72・・・第2超音波センサー
110・・・第1筒状カバー部材
111・・・第1開口
120・・・第2筒状カバー部材
121・・・第2開口
130・・・凹凸部材
140・・・起毛部材
W・・・孔壁
H・・・掘削孔
CL・・・掘削孔の芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7