(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】積層セラミック電子部品の製造方法及び積層セラミック電子部品の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231030BHJP
B26D 7/18 20060101ALI20231030BHJP
B26D 1/06 20060101ALI20231030BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20231030BHJP
【FI】
H01G4/30 311A
H01G4/30 517
H01G4/30 311Z
B26D7/18 E
B26D1/06 Z
H01G13/00 391H
H01G4/30 201N
(21)【出願番号】P 2019225014
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良太
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-190139(JP,A)
【文献】特開2003-039418(JP,A)
【文献】特開2015-066658(JP,A)
【文献】特開2019-169588(JP,A)
【文献】特開2013-184885(JP,A)
【文献】特開2018-001389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
B26D 7/18
B26D 1/06
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部電極パターンをそれぞれ含み第1軸方向に積層された複数のセラミックシートと、前記第1軸方向にそれぞれ向いた第1主面及び第2主面と、を含み、前記第1軸方向において第1厚み寸法を有する積層シートを作製し、
前記積層シートの前記第2主面を、粘着シートの粘着層上に配置し、
前記第1主面から前記第2主面を通り前記粘着層に達するまで、前記積層シートに対して押し切り刃を前記第1軸方向に挿入することで、前記積層シートを切断し、
前記積層シートを切断した後、前記第1軸方向において前記第1厚み寸法よりも大きい第2厚み寸法を有するクリーニング用板材に対して、前記押し切り刃を前記第1軸方向に挿入することで、前記押し切り刃をクリーニングする
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記積層シートには、
前記第1軸と直交する第2軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、複数の積層セラミック電子部品にそれぞれ対応する複数の積層チップを前記積層シートから個片化するための複数の第1切断線と、
前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、前記複数の積層チップを前記積層シートから個片化するための複数の第2切断線と、
が設定され、
前記複数の第1切断線は、前記第3軸方向に間隔をあけて配置され、
前記複数の第2切断線は、前記第2軸方向に間隔をあけて配置され、
前記積層シートを切断する工程では、
前記複数の第1切断線に沿って前記積層シートを切断し、かつ、前記複数の第2切断線に沿って前記積層シートを切断し、
前記積層シートにおける全ての前記複数の第1切断線に沿って前記積層シートを切断し、かつ、前記積層シートにおける全ての前記複数の第2切断線に沿って前記積層シートを切断した後、前記押し切り刃をクリーニングする
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記積層シートには、
前記第1軸と直交する第2軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、複数の積層セラミック電子部品にそれぞれ対応する複数の積層チップを前記積層シートから個片化するための複数の第1切断線と、
前記第2軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、前記複数の積層チップを前記積層シートから個片化するための複数の第2切断線と、
前記第1軸及び前記第2軸と直交する第3軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、前記複数の積層チップを前記積層シートから個片化するための複数の第3切断線と、
が設定され、
前記複数の第1切断線及び前記複数の第2切断線は、前記第3軸方向に間隔をあけて交互に配置され、
前記複数の第3切断線は、前記第2軸方向に間隔をあけて配置され、
前記複数のセラミックシートは、
前記複数の第3切断線を横切って前記第2軸方向に沿ってそれぞれ延び、かつ、前記複数の第1切断線のうちの一本を横切って前記第3軸方向に沿ってそれぞれ延びる複数の第1内部電極パターンを含む複数の第1セラミックシートと、
前記複数の第3切断線を横切って前記第2軸方向に沿ってそれぞれ延び、前記複数の第2切断線のうちの一本を横切って前記第3軸方向に沿ってそれぞれ延びる複数の第2内部電極パターンを含む複数の第2セラミックシートと、を有し、
前記複数の第1内部電極パターンは、前記複数の第2切断線を挟んで前記第3軸方向に間隔をあけて配置され、
前記複数の第2内部電極パターンは、前記複数の第1切断線を挟んで前記第3軸方向に間隔をあけて配置され、
前記積層シートを作製する工程では、前記複数の第1セラミックシートと前記複数の第2セラミックシートとが前記第1軸方向に交互に積層され、
前記押し切り刃をクリーニングした後、前記複数の第1切断線及び前記複数の第2切断線に沿って前記積層シートを切断する前に、前記複数の第3切断線に沿って前記積層シートを切断する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記クリーニング用板材は、ゴム板である
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層セラミック電子部品の製造方法であって、
前記押し切り刃をクリーニングする工程では、
前記クリーニング用板材に対して、前記押し切り刃を3回以下挿入する
積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
粘着層が形成された粘着シートと、第1軸方向に積層された複数のセラミックシートを有し前記粘着シート上に配置され第1軸方向において第1厚み寸法を有する積層シートと、を配置することが可能な第1テーブルと、
前記第1軸方向において第1厚み寸法よりも大きい第2厚み寸法を有するクリーニング用板材を配置することが可能な第2テーブルと、
前記第1テーブル及び前記第2テーブルを支持し、前記第1テーブル及び前記第2テーブルを前記第1軸方向に直交する第2軸方向に並んで配置する支持部材と、
を有する支持体と、
前記第1軸方向における先端部を有する押し切り刃と、
前記押し切り刃を保持し、前記第1テーブル又は前記第2テーブルに対して前記押し切り刃を前記第1軸方向に駆動する第1駆動部と、
前記先端部が前記第1テーブルと前記第1軸方向に対向する第1の状態と、前記先端部が前記第2テーブルと前記第1軸方向に対向する第2の状態と、の間で、前記押し切り刃を前記支持体に対して前記第2軸方向に相対的に移動させる第2駆動部と、
を具備する積層セラミック電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミックコンデンサ等の積層セラミック電子部品の製造方法は、典型的には、内部電極パターンを含む複数のセラミックシートを積層する工程と、この積層体を切断刃によって切断することにより、この積層体から複数の積層チップを個片化する工程と、を含む。積層体は、切断時に、例えば粘着シートに貼り付けられる。押し切り刃等の切断刃は、積層体を厚み方向に確実に切断するために、積層体を貫通して粘着シートまで達するように駆動される。
【0003】
切断刃が粘着シートまで達した場合、切断刃の先端部に粘着シート由来の付着物が付着することがある。このような付着物が付着した押し切り刃で積層体を切断した場合、積層体の切断面に付着物が付着する可能性がある。
【0004】
特許文献1には、粘着剤屑の発生を抑制する観点から、積層体に複数の切削ハーフカット溝を形成し、当該ハーフカット溝が形成された積層体の主面に粘着シートを貼り付け、他方の主面からハーフカット溝と連通するように貫通孔を形成し、積層体を個々の積層体チップに分割する、積層セラミック電子部品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、積層体を個々の積層体チップに分割する際に、ハーフカット溝の形成工程と貫通孔の形成工程とを行う必要があり、工程が煩雑であった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産効率を高めつつ、押し切り刃の付着物による不具合を防止することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法及びその製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法は、内部電極パターンをそれぞれ含み第1軸方向に積層された複数のセラミックシートと、上記第1軸方向にそれぞれ向いた第1主面及び第2主面と、を含み、上記第1軸方向において第1厚み寸法を有する積層シートを作製する工程を含む。
上記積層シートの上記第2主面が、粘着シートの粘着層上に配置される。
上記第1主面から上記第2主面を通り上記粘着層に達するまで、上記積層シートに対して押し切り刃を上記第1軸方向に挿入することで、上記積層シートが切断される。
上記積層シートを切断した後、上記第1軸方向において上記第1厚み寸法よりも大きい第2厚み寸法を有するクリーニング用板材に対して、上記押し切り刃を上記第1軸方向に挿入することで、上記押し切り刃がクリーニングされる。
【0009】
クリーニング用板材に押し切り刃を挿入することで、押し切り刃の先端に付着した粘着層由来の付着物が、クリーニング用板材に付着する。これにより、押し切り刃から当該付着物が除去され、押し切り刃を清浄な状態に維持することができる。
また、クリーニング用板材が積層シートの第1厚み寸法よりも大きい第2厚み寸法を有することで、押し切り刃をクリーニング用板材に第1厚み寸法以上挿入することができる。これにより、押し切り刃の先端から第1厚み寸法の範囲に付着した付着物を、確実に除去することができる。
したがって、この構成により、切断時において、押し切り刃の付着物が積層シートの切断面に付着することを防止でき、当該付着物による不具合を防止することができる。
【0010】
また、上記積層シートには、
上記第1軸と直交する第2軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、複数の積層セラミック電子部品にそれぞれ対応する複数の積層チップを上記積層シートから個片化するための複数の第1切断線と、
上記第1軸及び上記第2軸と直交する第3軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、上記複数の積層チップを上記積層シートから個片化するための複数の第2切断線と、
が設定される。
上記複数の第1切断線は、上記第3軸方向に間隔をあけて配置される。
上記複数の第2切断線は、上記第2軸方向に間隔をあけて配置される。
上記積層シートを切断する工程では、
上記複数の第1切断線に沿って上記積層シートを切断し、かつ、上記複数の第2切断線に沿って上記積層シートを切断する。
上記積層シートにおける全ての上記複数の第1切断線に沿って上記積層シートを切断し、かつ、上記積層シートにおける全ての上記複数の第2切断線に沿って上記積層シートを切断した後、上記押し切り刃がクリーニングされる。
【0011】
これにより、1つの積層シートについての全ての積層チップを個片化した後、押し切り刃をクリーニングすることができる。このようなタイミングで押し切り刃のクリーニングを行うことで、他の積層シートの切断を開始する際に、清浄な押し切り刃を用いることができる。また、押し切り刃に粘着層由来の付着物が多く堆積することを防止することができる。したがって、押し切り刃に付着した付着物が積層チップの切断面に付着することによる不具合を、より効果的に防止することができる。
【0012】
上記積層シートには、
上記第1軸と直交する第2軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、複数の積層セラミック電子部品にそれぞれ対応する複数の積層チップを上記積層シートから個片化するための複数の第1切断線と、
上記第2軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、上記複数の積層チップを上記積層シートから個片化するための複数の第2切断線と、
上記第1軸及び上記第2軸と直交する第3軸方向に沿って延びる仮想的な直線であり、上記複数の積層チップを上記積層シートから個片化するための複数の第3切断線と、
が設定される。
上記複数の第1切断線及び上記複数の第2切断線は、上記第3軸方向に間隔をあけて交互に配置される。
上記複数の第3切断線は、上記第2軸方向に間隔をあけて配置される。
上記複数のセラミックシートは、
上記複数の第3切断線を横切って上記第2軸方向に沿ってそれぞれ延び、かつ、上記複数の第1切断線のうちの一本を横切って上記第3軸方向に沿ってそれぞれ延びる複数の第1内部電極パターンを含む複数の第1セラミックシートと、
上記複数の第3切断線を横切って上記第2軸方向に沿ってそれぞれ延び、上記複数の第2切断線のうちの一本を横切って上記第3軸方向に沿ってそれぞれ延びる複数の第2内部電極パターンを含む複数の第2セラミックシートと、を有する。
上記複数の第1内部電極パターンは、上記複数の第2切断線を挟んで上記第3軸方向に間隔をあけて配置される。
上記複数の第2内部電極パターンは、上記複数の第1切断線を挟んで上記第3軸方向に間隔をあけて配置される。
上記積層シートを作製する工程では、上記複数の第1セラミックシートと上記複数の第2セラミックシートとが上記第1軸方向に交互に積層される。
上記押し切り刃をクリーニングした後、上記複数の第1切断線及び上記複数の第2切断線に沿って上記積層シートを切断する前に、上記複数の第3切断線に沿って上記積層シートが切断される。
【0013】
この構成では、第1切断線及び第2切断線は、内部電極が引き出される側の切断面に対応する。つまり、第1切断線に対応する切断面からは、第1内部電極パターンに対応する内部電極の端部が露出する。第2切断線に対応する切断面からは、第2内部電極パターンに対応する内部電極の端部が露出する。
一方、第3切断線に対応する切断面は、第1内部電極に対応する内部電極の端部及び第2内部電極に対応する内部電極の端部の双方が露出する。
このため、押し切り刃をクリーニングした後に第3切断線に沿って切断することで、第1内部電極及び第2内部電極の端部が双方に露出する切断面に付着物が付着することを抑制できる。これにより、第1内部電極及び第2内部電極間のショート等の不具合を効果的に防止することができる。
【0014】
上記クリーニング用板材は、例えばゴム板であってもよい。
これにより、押し切り刃をゴム板に挿入でき、ゴム板への挿入によって押し切り刃に付着した付着物を容易にゴム板に付着させることができる。
【0015】
上記押し切り刃をクリーニングする工程では、
上記クリーニング用板材に対して、上記押し切り刃が3回以下挿入される。
これにより、押し切り刃をクリーニングできるとともに、クリーニング工程による生産工程の遅延を防止でき、生産工程の効率化を図ることができる。
【0016】
本発明の他の形態に係る積層セラミック電子部品の製造装置は、支持体と、押し切り刃と、第1駆動部と、第2駆動部と、を具備する。
上記支持体は、第1テーブルと、第2テーブルと、支持部材と、を有する。
上記第1テーブルは、粘着層が形成された粘着シートと、第1軸方向に積層された複数のセラミックシートを有し上記粘着シート上に配置され第1軸方向において第1厚み寸法を有する積層シートと、を配置することが可能に構成される。
上記第2テーブルは、上記第1軸方向において第1厚み寸法よりも大きい第2厚み寸法を有するクリーニング用板材を配置することが可能に構成される。
上記支持部材は、上記第1テーブル及び上記第2テーブルを支持し、上記第1テーブル及び上記第2テーブルを上記第1軸方向に直交する第2軸方向に並んで配置する。
上記押し切り刃は、上記第1軸方向における先端部を有する。
上記第1駆動部は、上記押し切り刃を保持し、上記第1テーブル又は上記第2テーブルに対して上記押し切り刃を上記第1軸方向に駆動する。
上記第2駆動部は、上記先端部が上記第1テーブルと上記第1軸方向に対向する第1の状態と、上記先端部が上記第2テーブルと上記第1軸方向に対向する第2の状態と、の間で、上記押し切り刃を上記支持体に対して上記第2軸方向に相対的に移動させる。
【0017】
上記構成では、積層シートを配置する第1テーブルと、クリーニング用板材を配置する第2テーブルとが第2軸方向に並んで配置される。これにより、第2駆動部が押し切り刃を支持体に対して第2軸方向に相対的に移動させることにより、押し切り刃が積層シートを切断する第1状態と、押し切り刃がクリーニングされる第2状態と、の間を容易に切り替えることができる。したがって、クリーニング工程にかかる時間を短縮でき、生産効率を維持しつつ押し切り刃を清浄な状態に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、生産効率を高めつつ、押し切り刃の付着物による不具合を防止することが可能な積層セラミック電子部品の製造方法及びその製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサの斜視図である。
【
図2】上記積層セラミックコンデンサのA-A'線に沿った断面図である。
【
図3】上記積層セラミックコンデンサのB-B'線に沿った断面図である。
【
図4】上記積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図5】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図6】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図7】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図8】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図9】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図10】上記積層セラミックコンデンサの製造過程で用いられる押し切り刃を示す側面図である。
【
図11】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図12】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図13】上記積層セラミックコンデンサの製造装置を示す模式的な図である。
【
図14】上記製造装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図15】本発明の第2実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造方法を示すフローチャートである。
【
図17】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す平面図である。
【
図18】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図19】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す断面図である。
【
図20】上記積層セラミックコンデンサの製造過程を示す斜視図である。
【
図21】上記積層セラミックコンデンサを示す断面図である。
【
図22】他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造装置を示す模式的な図である。
【
図23】さらに他の実施形態に係る積層セラミックコンデンサの製造装置を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0021】
<第1実施形態>
[積層セラミックコンデンサの構成]
本発明の第1実施形態に係る積層セラミックコンデンサ10を示す図である。
図1は、積層セラミックコンデンサ10の斜視図である。
図2は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のA-A'線に沿った断面図である。
図3は、積層セラミックコンデンサ10の
図1のB-B'線に沿った断面図である。
【0022】
積層セラミックコンデンサ10は、セラミック素体11と、第1外部電極14と、第2外部電極15と、を備える。セラミック素体11は、X軸方向に向いた第1端面11a及び第2端面11bと、Y軸方向に向いた第1側面11c及び第2側面11dと、Z軸方向に向いた第1主面11e及び第2主面11fと、を有する。セラミック素体11の第1端面11a及び第2端面11b、第1側面11c及び第2側面11d並びに第1主面11e及び第2主面11fは、平坦に構成されてもよい。ここでいう「平坦」とは、表面の微少な凹凸や面全体に存在する微少な湾曲など、一般に製造される製造物の表面状態を含む。この場合、第1端面11a及び第2端面11bはX軸方向に直交する。第1側面11c及び第2側面11dはY軸方向に直交する。第1主面11e及び第2主面11fはZ軸方向に直交する。なお、セラミック素体11の各面を接続する稜部は丸みを帯びていてもよい。
【0023】
第1外部電極14は、第1端面11aに設けられる。第2外部電極15は、第2端面11bに設けられる。第1外部電極14は、セラミック素体11の第1端面11aから両主面11e,11f及び両側面11c,11dに延出している。同様に、第2外部電極15は、セラミック素体11の第2端面11bから両主面11e,11f及び両側面11c,11dに延出している。なお、外部電極14,15の形状は、
図1に示すものに限定されない。
【0024】
外部電極14,15は、電気の良導体により形成されている。外部電極14,15を形成する電気の良導体としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0025】
セラミック素体11は、容量形成部16と、サイドマージン部17と、カバー部18と、を有する。
【0026】
容量形成部16は、複数のセラミック層19を挟んでZ軸方向に交互に積層された第1内部電極12及び第2内部電極13を有する。内部電極12,13は、電気の良導体により形成されている。内部電極12,13を形成する電気の良導体としては、典型的にはニッケル(Ni)が挙げられ、この他にも銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)、金(Au)などを主成分とする金属又は合金が挙げられる。
【0027】
内部電極12,13は、それぞれ、X-Y平面に沿って延びるシート状に構成される。第1内部電極12は、第1端面11aに引き出され、第1外部電極14に接続される。第2内部電極13は、第2端面11bに引き出され、第2外部電極15に接続される。これにより、第1外部電極14及び第2外部電極15の間に電圧が印加されると、第1内部電極12と第2内部電極13との間のセラミック層19に電圧が加わり、容量形成部16に当該電圧に応じた電荷が蓄えられる。
【0028】
セラミック素体11では、内部電極12,13間の各セラミック層19の容量を大きくするため、高誘電率の誘電体セラミックスが用いられる。高誘電率の誘電体セラミックスとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)に代表される、バリウム(Ba)及びチタン(Ti)を含むペロブスカイト構造の材料が挙げられる。
【0029】
なお、セラミック層19は、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)系、チタン酸カルシウム(CaTiO3)系、チタン酸マグネシウム(MgTiO3)系、ジルコン酸カルシウム(CaZrO3)系、チタン酸ジルコン酸カルシウム(Ca(Zr,Ti)O3)系、ジルコン酸バリウム(BaZrO3)系、酸化チタン(TiO2)系などで構成してもよい。
【0030】
カバー部18は、容量形成部16のZ軸方向両側にそれぞれ設けられる。カバー部18は、絶縁性セラミックスで形成され、容量形成部16のZ軸方向における絶縁性を確保するとともに、容量形成部16を保護する。本実施形態では、容量形成部16及びカバー部18が、略直方体状の積層体として構成される。
【0031】
サイドマージン部17は、容量形成部16のY軸方向両側にそれぞれ設けられる。サイドマージン部17は、絶縁性セラミックスで形成され、容量形成部16のY軸方向における絶縁性を確保するとともに、容量形成部16を保護する。本実施形態のサイドマージン部17は、容量形成部16及びカバー部18からなる上記積層体のY軸方向側面を覆うように構成される。この場合、第1内部電極12のY軸方向端部のうち、最もY軸方向内方に位置する端部と、最もY軸方向外方に位置する端部とのY軸方向における距離が、0.5μm以内に収まっている。同様に、第2内部電極13のY軸方向端部のうち、最もY軸方向内方に位置する端部と、最もY軸方向外方に位置する端部とのY軸方向における距離が、0.5μm以内に収まっている。
【0032】
カバー部18及びサイドマージン部17に用いられる絶縁性セラミックスは、セラミック層19で用いられた誘電体セラミックスを含んでいてもよい。これにより、セラミック素体11における内部応力が抑制される。
【0033】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
図4は、積層セラミックコンデンサ10の製造方法を示すフローチャートである。
図5~12は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図4に沿って、
図5~12を適宜参照しながら説明する。
【0034】
(ステップS11:積層シート作製)
ステップS11では、内部電極パターンを含む第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102と、内部電極パターンを含まない第3セラミックシート103と、をZ軸方向に積層して、積層シート104を作製する。
【0035】
セラミックシート101,102,103は、誘電体セラミックスを主成分とする未焼成の誘電体グリーンシートとして構成される。セラミックシート101,102,103は、例えば、ロールコーターやドクターブレードなどを用いてシート状に成形される。セラミックシート101,102,103の厚さは適宜調整可能である。
【0036】
図5は、セラミックシート101,102,103の平面図である。この段階では、セラミックシート101,102,103が、個片化されていない大判のシートとして構成される。各セラミックシート101,102,103には、積層シート104から、各積層セラミックコンデンサ10にそれぞれ対向する複数の積層チップを個片化するための切断線Lx,Ly1,Ly2が設定されている。
【0037】
切断線Lxは、X軸方向に沿って延びる仮想的な直線である。切断線Lxは、Y軸方向に間隔をあけて配置されている。切断線Lxは、本実施形態において「第2切断線」に対応する。
【0038】
切断線Ly1,Ly2は、Y軸方向に沿って延びる仮想的な直線である。切断線Ly1,Ly2は、X軸方向に間隔をあけて交互に配置される。切断線Ly1,Ly2は、本実施形態において「第1切断線」に対応する。
【0039】
図5に示すように、第1セラミックシート101は、第1内部電極12に対応する第1内部電極パターン112pを含む。第2セラミックシート102は、第2内部電極13に対応する第2内部電極パターン113pを含む。第3セラミックシート103は内部電極パターンを含まない。
【0040】
各第1内部電極パターン112pは、Y軸方向及びX軸方向に延びる矩形状の電極パターンとして構成される。各第1内部電極パターン112pは、複数の切断線Lxを横切ってY軸方向に延び、かつ、切断線Ly1のうちの一本を横切ってX軸方向に延びる。また、第1内部電極パターン112pは、切断線Ly2を挟んでX軸方向に間隔をあけて配置される。
【0041】
各第2内部電極パターン113pも同様に、Y軸方向及びX軸方向に延びる矩形状の電極パターンとして構成される。但し、第2内部電極パターン113pは、第1内部電極パターン112pとX軸方向に1チップ分ずれて配置されている。具体的に、各第2内部電極パターン113pは、複数の切断線Lxを横切ってY軸方向に延び、かつ、切断線Ly2のうちの一本を横切ってX軸方向に延びる。また、第2内部電極パターン113pは、切断線Ly1を挟んでX軸方向に間隔をあけて配置される。
【0042】
図6に示すように、第1セラミックシート101及び第2セラミックシート102がZ軸方向に交互に積層され、そのZ軸方向上下面に第3セラミックシート103が積層される。これにより、積層シート104が作製される。積層シート104は、Z軸方向にそれぞれ向いた第1主面104a及び第2主面104bをそれぞれ有している。
【0043】
セラミックシート101,102の積層体は、焼成後の容量形成部16に対応する。第3セラミックシート103の積層体は、焼成後のカバー部18に対応する。セラミックシート101,102,103の積層数は、図示の例に限定されず、適宜調整可能である。
【0044】
積層シート104は、セラミックシート101,102,103を圧着することにより一体化される。セラミックシート101,102,103の圧着には、例えば、静水圧加圧や一軸加圧などを用いることが好ましい。これにより、積層シート104を高密度化することが可能である。
【0045】
(ステップS12:粘着シート貼付)
ステップS12では、
図7に示すように、積層シート104の第2主面104bを、粘着シートEの粘着層E2上に配置する。粘着シートEは、基材E1と、粘着層E2と、を含む。基材E1は、樹脂フィルム、紙、布、金属箔、これらの積層体等のシート材で構成される。粘着層E2は、粘着力を有し、かつ、熱や紫外線によって粘着力が変化する材料で形成されてもよい。粘着層E2の材料としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤等が挙げられる。
【0046】
積層シート104は、
図7に示すように、Z軸方向において第1厚み寸法T1を有する。第1厚み寸法T1は、積層シート104のZ軸方向における厚み寸法のうち、最も大きい寸法である。
【0047】
(ステップS13:切断)
ステップS13では、積層シート104を切断線Lx,Ly1,Ly2に沿って切断することにより、未焼成の積層チップ105を作製する。
【0048】
図8は、本ステップの詳細について説明する模式的な断面図である。
【0049】
まず、
図8(A)に示すように、粘着シートEが貼り付けられた積層シート104を、後述する切断装置200の第1テーブル211上に配置する。このとき、積層シート104は、切断装置200の押し切り刃220の先端部221とZ軸方向に対向している。
【0050】
次に、
図8(B)に示すように、第1主面104aから第2主面104bを通り粘着層E2に達するまで、積層シート104に対して押し切り刃220をZ軸方向に挿入する。これにより、押し切り刃220が積層シート104を貫通し、積層シート104がZ軸方向の厚み全体にわたって切断される。このとき、押し切り刃220が粘着シートEを完全に貫通しないように調整することで、個片化後も複数の積層チップ105を一括して扱うことが可能となる。
【0051】
そして、
図8(C)に示すように、押し切り刃220をZ軸方向上方に移動させて、積層シート104から押し切り刃220を引き抜く。これにより、積層シート104が複数の積層チップ105に個片化される。粘着シートEは、切断後、所定のタイミングで積層チップ105から除去される。
【0052】
図9は、ステップS13で得られる積層チップ105の斜視図である。
【0053】
積層チップ105は、切断線Ly1に対応しX軸方向に向いた第1切断面105aと、切断線Ly2に対応しX軸方向に向いた第2切断面105bと、切断線Lxに対応しY軸方向に向いた第3切断面105c及び第4切断面105dと、Z軸方向に向いた第1主面105e及び第2主面105fと、を含む。積層チップ105には、容量形成部116及びカバー部118が形成されている。第1切断面105aからは、第1内部電極112の端部が露出している。第2切断面105bからは、第2内部電極113の端部が露出している。第3及び第4切断面105c,105dからは、内部電極112,113の双方の端部が露出している。内部電極112,113の間にはセラミック層119が形成されている。
【0054】
ステップS13では、押し切り刃220の先端部221が粘着層E2に達するため、
図8(C)に示すように、先端部221に粘着層E2由来の付着物Pが付着することがある。このような状態の押し切り刃220を繰り返し切断に用いることにより、新たな付着物が先端部221に付着するとともに、古い付着物が刃面222のZ軸方向上方に押し上げられ、付着物が堆積していく。この結果、
図10に示すように、先端部221近傍の刃面222に付着物の堆積領域Rが形成される。
【0055】
押し切り刃220は、通常、製造コスト及び廃棄物削減等の観点から、1枚の積層シート104の切断毎には交換されない。つまり、積層シート104切断後の押し切り刃220は、次の積層シート104の切断にも用いられ得る。付着物が堆積した押し切り刃220を新たな積層シート104の切断工程に使用した場合、当該付着物が、押し切り刃220の挿入に伴って、積層チップ105の切断面105a,105b,105c,105d等に付着し得る。
【0056】
例えば、付着物が付着した第3切断面105c及び/又は第4切断面105dに後述するサイドマージン部117が形成された場合、積層チップ105とサイドマージン部17との境界部に付着物が挟まれた状態のセラミック素体11が作製され得る。当該境界部には、第1内部電極12及び第2内部電極13の端部が交互に配置される。このため、隣り合う第1内部電極12及び第2内部電極13が付着物を介して電気的に接続され、ショートする可能性がある。また、付着物が第1切断面105a及び/又は第2切断面105bに付着した場合も、外部電極14,15が所望の形状に形成できない、あるいは外部電極14,15と内部電極12,13との導通が十分に確保できないといった不具合が発生し得る。
【0057】
このため、本実施形態では、切断後の押し切り刃220を清浄に維持する観点から、以下のステップを行う。
【0058】
(ステップS14:押し切り刃のクリーニング)
ステップS14では、切断後の押し切り刃220をクリーニングする。
図11は、本ステップの詳細について説明する模式的な断面図である。
【0059】
図11(A)に示すように、押し切り刃220を、クリーニング用板材GのZ軸方向上方に配置する。押し切り刃220には、粘着層E2由来の付着物Pが付着している。なお、付着物Pは、実際には
図10に示すように、刃面222の一定範囲を占める堆積領域Rを構成し得るが、
図11では説明のため、先端部221近傍のみに付着しているものとして示す。
【0060】
クリーニング用板材Gは、後述する切断装置200の第2テーブル212上に配置される。クリーニング用板材Gは、押し切り刃220とZ軸方向に対向し得るクリーニング面G1を有する。クリーニング用板材Gは、押し切り刃220を挿入することが可能に構成され、例えばゴム板である。当該ゴム板の材質は、例えば、ウレタンゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、天然ゴム等を適宜用いることができる。クリーニング用板材Gの硬度(ショアA硬度)は、例えば50~85程度とすることができる。
【0061】
クリーニング用板材Gは、Z軸方向において第1厚み寸法T1よりも厚い第2厚み寸法T2を有する。第2厚み寸法T2は、クリーニング用板材GのZ軸方向における厚み寸法のうち、最も大きい寸法である。
【0062】
次に、
図11(B)に示すように、クリーニング用板材Gに対し、押し切り刃220をZ軸方向に挿入する。押し切り刃220は、例えば、Z軸方向に、クリーニング面G1から第1厚み寸法T1よりも大きい深さT3まで挿入される。
【0063】
そして、
図11(C)に示すように、押し切り刃220をZ軸方向上方に移動させて、クリーニング用板材Gから押し切り刃220を引き抜く。
【0064】
クリーニング用板材Gに押し切り刃220を挿入することで、押し切り刃220の先端部221及び刃面222がクリーニング用板材Gと強く接触する。これにより、押し切り刃220に付着した粘着層E2由来の付着物Pが、クリーニング用板材Gに付着する。これにより、押し切り刃220から付着物Pが除去され、押し切り刃220が清浄な状態となる。
【0065】
また、クリーニング用板材Gが積層シート104の第1厚み寸法T1よりも大きい第2厚み寸法T2を有することで、押し切り刃220をクリーニング用板材Gに第1厚み寸法T1以上の深さT3まで挿入することができる。これにより、押し切り刃220の先端部221から、積層シート104の厚みである第1厚み寸法T1の範囲に付着した付着物Pを、より確実に除去することができる。したがって、押し切り刃220を積層シート104の切断に用いる際に、付着物Pが積層シート104に付着することをより確実に抑制することができる。
【0066】
第2厚み寸法T2は、例えば、第1厚み寸法T1の1.1倍以上である。これにより、押し切り刃220を第1厚み寸法T1以上の深さT3までより確実に挿入させることができ、付着物Pの除去をより確実に行うことができる。
【0067】
(ステップS15:サイドマージン部形成)
ステップS15では、積層チップ105の第3切断面105c及び第4切断面105dに未焼成のサイドマージン部117を設ける。これにより、
図12に示す未焼成のセラミック素体111が作製される。
【0068】
サイドマージン部117は、例えば、積層チップ105の第3切断面105c及び第4切断面105dにセラミックシートを貼り付けることにより形成することができる。あるいは、サイドマージン部117は、例えば塗布やディップなどによって積層チップ105の第3切断面105c及び第4切断面105dをセラミックスラリーでコーティングすることにより形成することもできる。
【0069】
(ステップS16:焼成)
本ステップでは、ステップS15で得られた未焼成のセラミック素体111を焼結させることにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10のセラミック素体11を作製する。つまり、ステップS16により、容量形成部116が容量形成部16になり、カバー部118がカバー部18になり、サイドマージン部117がサイドマージン部17になる。
【0070】
本ステップおける焼成温度は、セラミック素体111の焼結温度に基づいて決定可能である。例えば、誘電体セラミックスとしてチタン酸バリウム系材料を用いる場合には、焼成温度を1000~1300℃程度とすることができる。焼成は、例えば、還元雰囲気下、又は低酸素分圧雰囲気下において行うことができる。
【0071】
(ステップS17:外部電極形成)
本ステップでは、ステップS16で得られたセラミック素体11に外部電極14,15を形成することにより、
図1~3に示す積層セラミックコンデンサ10を作製する。外部電極14,15は、例えば、端面11a,11bに塗布された未焼成の電極材料を焼き付け、当該焼き付けられた導電膜を下地膜として電解メッキなどのメッキ処理を行うことにより、形成される。
【0072】
なお、上記のステップS17における処理の一部を、ステップS16の前に行ってもよい。例えば、ステップS16の前に未焼成のセラミック素体111の端面11a,11bに未焼成の電極材料を塗布してもよい。これにより、ステップS16において、未焼成のセラミック素体111の焼成と電極材料の焼き付けとを同時に行うことができる。
【0073】
以上より、本実施形態によれば、押し切り刃220の使用後に押し切り刃220のクリーニングを行うため、押し切り刃220を付着物Pの少ない清浄な状態に維持することができる。これにより、押し切り刃220の付着物Pに由来する、ショートや導通不良などの積層セラミックコンデンサ10の不具合を抑制することができる。さらに、以下に示すように、本実施形態の切断装置200は、ステップS14のクリーニング工程を非常に効率よく実施することができ、クリーニング工程による生産効率の低下を抑制することができる。
【0074】
[切断装置の構成]
本実施形態の切断装置200は、積層セラミックコンデンサ10の製造装置として機能し、ステップS13の切断だけでなく、ステップS14の押し切り刃220のクリーニングも行うことができる。以下、切断装置200の構成について説明する。
【0075】
図13は、切断装置200を模式的に示す図である。
図13に示すように、切断装置200は、例えば、支持体210と、押し切り刃220と、第1駆動部230と、第2駆動部240と、第3駆動部250と、制御部260と、を備える。
【0076】
図13に示すように、支持体210は、第1テーブル211と、第2テーブル212と、支持部材213と、を有する。
【0077】
第1テーブル211は、粘着シートEと、粘着シートE上に配置された積層シート104と、を配置することが可能に構成される。第1テーブル211は、第1支持面211aを有する。第1支持面211aは、例えばZ軸方向と直交する面である。第1支持面211a上には、粘着シートEが配置され、粘着シートE上に、粘着層E2(
図7参照)を介して積層シート104が配置される。
第1テーブル211は、配置された粘着シートE及び積層シート104を固定するための構成をさらに有していてもよく、このような構成として、例えば真空吸着機構を有していてもよい。
【0078】
第2テーブル212は、クリーニング用板材Gを配置することが可能に構成される。第2テーブル212は、第2支持面212aを有する。第2支持面212aは、例えばZ軸方向に直交する面であり、クリーニング用板材Gが配置される。
第2テーブル212は、配置されたクリーニング用板材Gを固定するための構成をさらに有していてもよく、このような構成として、例えば真空吸着機構を有していてもよい。
【0079】
支持部材213は、第1テーブル211及び第2テーブル212を支持し、第1テーブル211及び第2テーブル212をZ軸方向に直交する方向に並んで配置する。
図13に示す例では、第2テーブル212は、第1テーブル211と例えばY軸方向に並んで配置される。あるいは、第2テーブル212は、第1テーブル211とX軸方向に並んで配置されてもよい。「第1テーブル211及び第2テーブル212が並んで配置される」とは、典型的には、第1支持面211aと第2支持面212aとがXY平面と平行な同一平面上に配置される態様を意味する。但しこれに限定されず、第1支持面211aと第2支持面212aとがZ軸方向においてわずかに(例えば1mm以下)離間して配置される態様も含む。
【0080】
第1駆動部230は、押し切り刃220を保持し、第1テーブル211又は第2テーブル212に対して押し切り刃220をZ軸方向に駆動する。第1駆動部230は、例えば、押し切り刃220を保持する保持機構と、保持機構を駆動する押し切り刃駆動機構と、を有していてもよい。
保持機構は、例えば押し切り刃20を挟持することによって押し切り刃20を保持することができる。
押し切り刃駆動機構は、例えばモータを含み、押し切り刃20をZ軸方向に上下駆動させる。
【0081】
第2駆動部240は、押し切り刃220を、支持体210に対してX軸方向及びY軸方向に相対的に移動させる。第2駆動部240は、本実施形態において、支持体210を押し切り刃220に対して駆動させる支持体駆動機構を含む。つまり、第2駆動部240は、支持体210を駆動させることにより、押し切り刃220に対して支持体210を平行移動させる。第2駆動部240の支持体駆動機構は、例えば、支持体210を駆動させるモータ等を含んでいる。
【0082】
第2駆動部240は、押し切り刃220を、支持体210に対して第1テーブル211及び第2テーブル212が並ぶ方向(例えばY軸方向)に相対的に移動させる。これにより、第2駆動部240は、押し切り刃220を、先端部221が第1テーブル211とZ軸方向に対向する第1の状態と、先端部221が第2テーブル212とZ軸方向に対向する第2の状態と、の間で相対的に移動させる。
【0083】
また、第2駆動部240は、第1の状態において、押し切り刃220を各切断線Ly1,Ly2とZ軸方向に対向させ、かつ、押し切り刃220を各切断線LxとZ軸方向に対向させるように、押し切り刃220を第1テーブル211に対して相対的に移動させることができる。第2駆動部240は、例えば、第1テーブル211を、押し切り刃220に対してX軸方向及びY軸方向の双方に平行移動させる。これにより、押し切り刃220が、積層シート104内の複数の切断線Lx及び切断線Ly1,Ly2上に移動でき、これらの全てを切断することが可能となる。
【0084】
また、第2駆動部240は、第2の状態において、押し切り刃220をクリーニング用板材Gの挿入位置とZ軸方向に対向させるように、押し切り刃220を第2テーブル212に対して相対的に移動させることができる。第2駆動部240は、例えば、第2テーブル212を、押し切り刃220に対してX軸方向又はY軸方向の少なくとも一方に平行移動させる。これにより、押し切り刃220がクリーニング用板材Gの所定の挿入位置に挿入され、クリーニング用板材Gの清浄な部分を用いてクリーニングされ得る。
【0085】
第3駆動部250は、押し切り刃220を、第1テーブル211に対して相対的に、Z軸まわりに少なくとも90度回転させる。これにより、第3駆動部250は、押し切り刃220を、各切断線Ly1,Ly2とZ軸方向に対向する状態と、各切断線LxとZ軸方向に対向する状態と、の間で遷移させることができる。
【0086】
第3駆動部250は、第1テーブル211を、第1テーブル211上の略中心点に位置するZ軸方向と平行な回転軸まわりに回転させる回転駆動機構を含む。回転駆動機構は、例えば、第1テーブル211を回転させるモータ等を含んでいる。回転駆動機構は、少なくとも第1テーブル211を回転できればよいが、支持体210全体を回転させてもよい。
【0087】
制御部260は、第1駆動部230及び第2駆動部240に接続され、第1駆動部230及び第2駆動部240の動作を制御する。制御部260は、さらに、第3駆動部250に接続され、第3駆動部250の動作を制御し得る。制御部260は、例えばMPU(Micro-Processing Unit)やCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、メモリとを含んでいる。制御部260は、メモリに格納された駆動プログラムに基づいて、切断装置200の各部を制御することができる。
【0088】
切断装置200は、上述のように、第1テーブル211に配置された積層シート104を切断して積層シート104から複数の積層チップ105を個片化する。その後、切断装置200は、第2テーブル212に配置されたクリーニング用板材Gを用いて押し切り刃220のクリーニングを行う。以下、詳細に説明する。
【0089】
[切断装置の動作例]
図14は、切断装置200の動作例を示すフローチャートである。
本動作例において、切断装置200は、制御部260に記憶されたプログラムに基づき、自動的に各ステップを行うものとする。
【0090】
(ステップS21:切断線Ly1,Ly2の切断)
ステップS21では、第2駆動部240が押し切り刃220を各切断線Ly1,Ly2とZ軸方向に対向させ、かつ、第1駆動部230が各切断線Ly1,Ly2に押し切り刃220を挿入することにより、積層シート104を全ての切断線Ly1,Ly2に沿って切断する。第2駆動部240及び第1駆動部230の動作は、制御部260によって制御される。このとき、押し切り刃220は、先端部221が第1テーブル211のZ軸方向に対向する第1の状態である。
なお、切断線Ly1及び切断線Ly2を、一括して切断線Lyとも称する。
【0091】
まず、第2駆動部240及び第1駆動部230は、積層シート104において最もX軸方向外側の切断線Lyに沿って積層シート104を切断する。
以下、一本の切断線Lyに沿って積層シート104を切断する際の切断装置200の詳細な動作例について説明する。
【0092】
第2駆動部240は、積層シート104において最もX軸方向外側の切断線Lyと押し切り刃220の先端部221がZ軸方向に対向するように、第1テーブル211をX軸方向及び/又はY軸方向に移動させる。
続いて、第1駆動部230は、押し切り刃220をZ軸方向下方に駆動して、押し切り刃220を積層シート104の最もX軸方向外側の切断線Lyに沿って挿入する。このとき、押し切り刃220の先端部221は、上述のように粘着シートEの粘着層E2まで達する。このため、先端部221近傍には、粘着層E2由来の付着物Pが付着し得る。
そして、第1駆動部230は、押し切り刃220をZ軸方向上方に駆動して、押し切り刃220を積層シート104から引き抜く。
【0093】
続いて、第2駆動部240及び第1駆動部230は、積層シート104において切断された切断線Lyと隣り合う切断線Lyに沿って、積層シート104を同様に切断する。第3駆動部250及び第1駆動部230は、これらの工程を繰り返し、全ての切断線Lyに沿って積層シート104を切断する。
【0094】
(ステップS22:切断線Lxの切断)
ステップS22では、第3駆動部250が第1テーブル211を90度回転させた後、第2駆動部240が押し切り刃220を各切断線LxとZ軸方向に対向させ、かつ、第1駆動部230が各切断線Lxに押し切り刃220を挿入することにより、積層シート104を全ての切断線Lxに沿って切断する。第3駆動部250、第2駆動部240及び第1駆動部230の動作は、制御部260によって制御される。
【0095】
まず、第3駆動部250は、ステップS21の状態から、第1テーブル211を、第1テーブル211上の略中心点に位置するZ軸方向と平行な回転軸まわりに回転させる。これにより、第1テーブル211及びそれに配置された積層シート104が、押し切り刃220に対して90度回転する。
【0096】
続いて、第2駆動部240及び第1駆動部230は、積層シート104において最もY軸方向外側の切断線Lxに沿って積層シート104を切断する。切断線Lxの切断については、切断線Lyの切断と同様に行うことができる。
【0097】
続いて、第2駆動部240及び第1駆動部230は、積層シート104において切断された切断線Lxと隣り合う切断線Lxに沿って、積層シート104を同様に切断する。第3駆動部250及び第1駆動部230は、これらの工程を繰り返し、全ての切断線Lxに沿って積層シート104を切断する。
【0098】
ステップS22により、積層シート104から、積層シート104に含まれる全ての積層チップ105が個片化される。本実施形態では、切断装置200が、1つの積層シート104における全ての切断線Lyに沿って積層シート104を切断し、かつ、積層シート104における全ての切断線Lxに沿って積層シート104を切断した後であって、例えば他の積層シート104を切断する前に、押し切り刃220をクリーニングする。つまり、1つの積層シート104から全ての積層チップ105が個片化される度に、クリーニングが実施され得る。
【0099】
(ステップS23:第1の状態から第2の状態への遷移)
ステップS23では、第2駆動部240が、制御部260による制御に基づき、ステップS22の第1の状態から支持体210をY軸方向に移動させる。これにより、押し切り刃220は、第1の状態から、先端部221が第2テーブル212とZ軸方向に対向する第2の状態に遷移する。
【0100】
(ステップS24:押し切り刃220のクリーニング)
ステップS24では、第1駆動部230が、押し切り刃220をクリーニング用板材Gに対してZ軸方向に挿入することで、押し切り刃220をクリーニングする。
【0101】
本ステップでは、最初に、第2駆動部240が、クリーニング用板材Gの所定の挿入位置と押し切り刃220の先端部221がZ軸方向に対向するように、第2テーブル212をY軸方向に移動させる。「クリーニング用板材Gの所定の挿入位置」は、例えば、クリーニング面G1において、まだ押し切り刃220が挿入されていない位置に設定される。
【0102】
そして、第1駆動部230が、押し切り刃220をZ軸方向下方に駆動して、押し切り刃220をクリーニング用板材Gに挿入する。このとき、押し切り刃220に付着した付着物Pが、クリーニング用板材Gのクリーニング面G1又は切断面に付着する。
そして、第1駆動部230は、押し切り刃220をZ軸方向上方に駆動して、押し切り刃220をクリーニング用板材Gから引き抜く。これにより、押し切り刃220がクリーニング用板材Gに1回挿入され、押し切り刃220がクリーニングされる。
【0103】
本実施形態において、ステップS24では、クリーニング用板材Gに対して、押し切り刃220を3回以下挿入してもよい。これにより、クリーニングの時間を短縮し、高い生産効率を維持することができる。
【0104】
特に、押し切り刃220を複数回(例えば2回又は3回)挿入する場合には、各挿入時に、異なる挿入位置が設定され得る。つまり、第2駆動部240が、押し切り刃220を複数の挿入位置とZ軸方向に対向させ、かつ、第1駆動部230が各挿入位置に押し切り刃220を挿入する。具体的には、押し切り刃220が第1駆動部230によって上下駆動されクリーニング用板材Gに一回挿入された後、第2駆動部240が押し切り刃220に対して第2テーブル212をY軸方向に移動する。その後、押し切り刃220が第1駆動部230によって上下駆動され、クリーニング用板材Gに再度挿入される。これにより、押し切り刃220の付着物Pをより確実に除去することができる。
【0105】
本実施形態では、ステップS24の押し切り刃220のクリーニング中に、積層シート104から個片化された積層チップ105の第1テーブル211からの搬出、及び新たな積層シート104の第1テーブル211への搬入が行われてもよい。これらの搬出及び搬入は、例えば図示しない搬送装置によって行われる。
【0106】
(ステップS25:第2の状態から第1の状態への遷移)
ステップS25では、第2駆動部240が、制御部260による制御に基づき、ステップS24の第2の状態から支持体210をY軸方向に移動させる。これにより、押し切り刃220は、第2の状態から、先端部221が第1テーブル211とZ軸方向に対向する第1の状態に遷移する。
そして、切断装置200は、ステップS21に戻り、新たな積層シート104に対する切断工程を繰り返す。
【0107】
以上のように、本実施形態では、1つの積層シート104における全ての切断線Ly及び切断線Lxを切断した後、新たな積層シート104を切断する前に、押し切り刃220をクリーニングすることができる。これにより、押し切り刃220に付着物Pが多く堆積する前にクリーニング工程を実施することができる。したがって、押し切り刃220に付着した付着物Pが積層シート104に付着し、付着物Pによる不具合が生じることを防止することができる。
【0108】
加えて、本実施形態の切断装置200は、積層シート104を配置する第1テーブル211と、クリーニング用板材Gを配置する第2テーブル212と、を有し、これらが例えばY軸方向に並んだ支持体210を備えている。第2駆動部240は、押し切り刃220を支持体210に対して相対的にY軸方向に移動させることによって、押し切り刃220が積層シート104の切断を行う第1の状態と、押し切り刃220がクリーニングを行う第2の状態と、の間を容易に遷移させることができる。これにより、クリーニングのために押し切り刃220を切断装置200から取り外す等の手間を省き、インラインで効率的に押し切り刃220のクリーニングを行うことができる。したがって、切断装置200により、押し切り刃220に付着した付着物による不具合を防止しつつ、積層セラミックコンデンサ10の製造工程における生産効率を高めることができる。
【0109】
さらに、クリーニング工程中に、第1テーブル211において積層シート104の搬出及び搬入を行うことができ、生産効率をさらに高めることができる。
【0110】
<第2実施形態>
図15は、本実施形態に係る切断装置200の動作例を示すフローチャートである。
本実施形態では、切断装置200の構成は第1実施形態と同様であるが、その動作が第1実施形態と異なっている。すなわち、本実施形態では、押し切り刃220をクリーニングした後、複数の切断線Ly1,Ly2に沿って積層シート104を切断する前に、複数の切断線Lxに沿って積層シート104を切断する。
なお、本動作例においても、切断装置200は、制御部260に記憶されたプログラムに基づき、自動的に各ステップを行うものとする。
本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0111】
(ステップS31:切断線Lyの切断)
ステップS31では、上述のステップS21と同様に、第2駆動部240が押し切り刃220を各切断線LyとZ軸方向に対向させ、かつ、第1駆動部230が各切断線Lyに押し切り刃220を挿入することにより、積層シート104を全ての切断線Lyに沿って切断する。第2駆動部240及び第1駆動部230の動作は、制御部260によって制御される。このとき、押し切り刃220は、先端部221が第1テーブル211のZ軸方向に対向する第1の状態である。
【0112】
第2駆動部240及び第1駆動部230は、上述のステップS21と同様に、積層シート104において最もX軸方向外側の切断線Lyから順に、全ての切断線Ly(切断線Ly1及び切断線Ly2)に沿って積層シート104を切断する。この場合、切断線Ly1は「第1切断線」に対応し、切断線Ly2は「第2切断線」に対応する。
【0113】
(ステップS32:第1の状態から第2の状態への遷移)
ステップS32では、ステップS23と同様に、第2駆動部240が、制御部260による制御に基づき、ステップS31の第1の状態から支持体210をY軸方向に移動させる。これにより、押し切り刃220は、第1の状態から、先端部221が第2テーブル212とZ軸方向に対向する第2の状態に遷移する。
【0114】
(ステップS33:押し切り刃220のクリーニング)
ステップS33では、ステップS24と同様に、第1駆動部230が、押し切り刃220をクリーニング用板材Gに対してZ軸方向に挿入することで、押し切り刃220をクリーニングする。本実施形態においても、クリーニング用板材Gに対して、押し切り刃220が3回以下挿入されてもよい。
【0115】
(ステップS34:第2の状態から第1の状態への移動)
ステップS34では、ステップS25と同様に、第2駆動部240が、制御部260による制御に基づき、ステップS33の第2の状態から支持体210をY軸方向に移動させる。これにより、押し切り刃220は、先端部221が第1テーブル211とZ軸方向に対向する第1の状態に遷移する。
【0116】
(ステップS35:切断線Lxの切断)
ステップS35では、ステップS22と同様に、第3駆動部250が第1テーブル211を90度回転させた後、第2駆動部240が押し切り刃220を各切断線LxとZ軸方向に対向させ、かつ、第1駆動部230が各切断線Lxに押し切り刃220を挿入することにより、積層シート104を全ての切断線Lxに沿って切断する。第3駆動部250、第2駆動部240及び第1駆動部230の動作は、制御部260によって制御される。
【0117】
まず、第3駆動部250は、ステップS31の状態から、第1テーブル211を、第1テーブル211上の略中心点に位置するZ軸方向と平行な回転軸まわりに回転させる。これにより、第1テーブル211及びそれに配置された積層シート104が、押し切り刃220に対して90度回転する。
【0118】
続いて、第2駆動部240及び第1駆動部230は、上述のステップS22と同様に、積層シート104において最もY軸方向外側の切断線Lxから順に、全ての切断線Lxに沿って積層シート104を切断する。この場合、切断線Lxは「第3切断線」に対応する。
【0119】
本実施形態では、ステップS35の後、積層シート104から個片化された積層チップ105の第1テーブル211からの搬出及び切断前の新たな積層シート104の第1テーブル211への搬入が行われてもよい。そして、切断装置200は、ステップS31に戻り、他の新たな積層シート104に対する切断線Ly1,Ly2の切断工程を繰り返す。
また、ステップS35の後、ステップS31に戻るまでの間に、再度第2状態への遷移及び押し切り刃220のクリーニングが行われてもよい。
【0120】
本実施形態では、押し切り刃220をクリーニングした後、複数の切断線Ly1,Ly2に沿って積層シート104を切断する前に、複数の切断線Lxに沿って積層シート104を切断する。複数の切断線Lxは、内部電極112,113の双方が露出した積層チップ105の第3切断面105c及び第4切断面105dに対応する。本実施形態では、クリーニング後の付着物Pが除去された清浄な押し切り刃220で、積層チップ105の第3切断面105c及び第4切断面105dを切断することができる。これにより、付着物Pの付着による、第1内部電極112第2内部電極113間のショート等の不具合をより確実に防止することができる。
【0121】
<第3実施形態>
上述の第1実施形態では、切断装置200によって積層シート104から複数の積層チップ105が個片化され、積層チップ105の第3切断面105c及び第4切断面105dにサイドマージン部117が後付けされる構成について説明した。
本実施形態では、切断装置200によって、積層シートから複数の未焼成のセラミック素体が個片化される。本実施形態において、「未焼成のセラミック素体」が「積層セラミックコンデンサに対応する積層チップ」に相当する。
本実施形態において、第1及び第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0122】
[積層セラミックコンデンサの製造方法]
図16は、本実施形態の積層セラミックコンデンサ30の製造方法を示すフローチャートである。
図17~20は、積層セラミックコンデンサ10の製造過程を示す図である。以下、積層セラミックコンデンサ10の製造方法について、
図16に沿って、
図17~20を適宜参照しながら説明する。
なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0123】
(ステップS41:積層シート作製)
ステップS41では、内部電極パターン312pを含む第1セラミックシート301及び第2内部電極パターン313pを含む第2セラミックシート302と、第3セラミックシート303と、をZ軸方向に積層して、積層シート304を作製する。各セラミックシート301,302,303には、積層シート304から複数のセラミック素体を個片化するための切断線Lx,Ly1,Ly2が設定されている。切断線Lxは、本実施形態において「第2切断線」に対応する。切断線Ly1,Ly2は、本実施形態において「第1切断線」に対応する。
【0124】
図17は、第1セラミックシート301及び第2セラミックシート302の平面図である。なお、第3セラミックシート303は、第1実施形態の第3セラミックシート103と同様の構成を有するため、図示を省略する。
【0125】
図17に示すように、第1セラミックシート301では、切断線Ly1を跨いで延びる内部電極パターン312pがX軸方向に沿って配置された第1列と、切断線Ly2を跨いで延びる内部電極パターン312pがX軸方向に沿って配置された第2列とが、Y軸方向に交互に並んでいる。第1列では、X軸方向に隣接する内部電極パターン312p同士が切断線Ly2を挟んで相互に対向する。第2列では、X軸方向に隣接する内部電極パターン312p同士が切断線Ly1を挟んで相互に対向する。つまり、Y軸方向に隣接する第1列と第2列では、内部電極パターン312pが、1チップ分ずつX軸方向にずれて配置されている。
【0126】
第2セラミックシート302上の内部電極パターン313pも、内部電極パターン312pと同様に構成される。但し、第2セラミックシート302では、第1セラミックシート301の第1列に対応する列の内部電極パターン313pが、切断線Ly2を跨いで延び、第1セラミックシート301の第2列に対応する列の内部電極パターン313pが、切断線Ly1を跨いで延びる。つまり、内部電極パターン313pは、内部電極パターン312pとはX軸方向又はY軸方向に1チップ分ずれて形成されている。
【0127】
図18に示すように、第1セラミックシート301及び第2セラミックシート302がZ軸方向に交互に積層され、そのZ軸方向上下面に第3セラミックシート303が積層される。これにより、積層シート304が作製される。積層シート304は、Z軸方向にそれぞれ向いた第1主面304a及び第2主面304bをそれぞれ有している。
【0128】
(ステップS42:粘着シート貼付)
ステップS42では、
図19に示すように、上述のステップS12と同様に、積層シート304の第2主面304bを、粘着シートEの粘着層E2上に配置する。積層シート304は、Z軸方向において第1厚み寸法T1を有する。第1厚み寸法は、積層シート104のZ軸方向における厚み寸法のうち、最も大きい寸法である。
【0129】
(ステップS43:切断)
ステップS43では、上述のステップS13と同様に、積層シート304を切断線Lx,Ly1,Ly2に沿って切断することにより、未焼成のセラミック素体311を作製する。具体的には、第1主面304aから第2主面304bを通り粘着層E2に達するまで、積層シート304に対して押し切り刃220をZ軸方向に挿入することで、積層シート304を切断する。
【0130】
図20は、本ステップにより作製された未焼成のセラミック素体311を示す斜視図である。セラミック素体311は、X軸方向に向いた第1端面311a及び第2端面311bと、Y軸方向に向いた第1側面311c及び第2側面311dと、Z軸方向に向いた第1主面311e及び第2主面311fと、を有する。第1端面311aは、本実施形態において、切断線Ly1による切断面に相当する。第2端面311bは、本実施形態において、切断線Ly2による切断面に相当する。第1側面311c及び第2側面311dは、本実施形態において、切断線Lxによる切断面に相当する。
【0131】
第1端面311aからは、複数の第1内部電極312が露出している。第2端面311bからは、複数の第2内部電極313が露出している。ステップS43において、粘着層E2由来の付着物が付着した押し切り刃220を用いて切断線Ly1,Ly2を切断することで、端面311a,311bにこの付着物が付着し得る。これにより、外部電極14,15が所望の形状に形成できない、あるいは外部電極14,15と内部電極12,13との導通が十分に確保できないといった不具合が生じ得る。なお、本実施形態において、第1側面311c及び第2側面311dからは、内部電極312,313が露出していない。
【0132】
(ステップS44:押し切り刃のクリーニング)
そこで、本実施形態でも、ステップS44において、切断後の押し切り刃220をクリーニングする。本ステップの押し切り刃220のクリーニングは、上述のステップS14と同様に行われる。
【0133】
(ステップS45:焼成)
ステップS45では、ステップS43で得られた未焼成のセラミック素体311を焼結させることにより、
図21に示す積層セラミックコンデンサ30のセラミック素体31を作製する。本ステップの焼成は、上述のステップS16と同様に行われる。
【0134】
図21は、セラミック素体31(積層セラミックコンデンサ30)の
図3と同様の位置における断面を示す図である。
図21に示すように、セラミック素体31は、X軸方向に向いた第1端面31a及び第2端面31bと、Y軸方向に向いた第1側面31c及び第2側面31dと、Z軸方向に向いた第1主面31e及び第2主面31fと、を有する。また、セラミック素体31は、容量形成部16と、サイドマージン部37と、カバー部38と、を有する。セラミック素体31では、サイドマージン部37が、容量形成部16のY軸方向両側にそれぞれ設けられる。本実施形態では、容量形成部16及びサイドマージン部37が、略直方体状の積層体として構成される。カバー部38は、当該積層体のZ軸方向両側を覆うように構成される。
【0135】
(ステップS46:外部電極形成)
ステップS46では、ステップS45で得られたセラミック素体31に外部電極14,15を形成することにより、積層セラミックコンデンサ30を作製する。積層セラミックコンデンサ30の外観は、
図1に示す積層セラミックコンデンサ10と同様であるため、図示を省略する。
【0136】
なお、上記のステップS46における処理の一部を、ステップS45の前に行ってもよい。例えば、ステップS45の前に未焼成のセラミック素体311の端面31a,31bに未焼成の電極材料を塗布してもよい。これにより、ステップS45において、未焼成のセラミック素体311の焼成と電極材料の焼き付けとを同時に行うことができる。
【0137】
本実施形態でも、押し切り刃220による切断工程後に、押し切り刃220のクリーニングを行うことで、押し切り刃220に付着した付着物を除去することができる。これにより、押し切り刃220が清浄な状態を維持することができ、切断工程において、押し切り刃220の付着物が切断面である第1端面311a及び第2端面311bに付着することを防止できる。したがって、当該付着物による、外部電極14,15が所望の形状に形成できない、あるいは外部電極14,15と内部電極12,13との導通が十分に確保できないといった不具合を防止することができる。
【0138】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0139】
例えば、クリーニング用板材Gは、ゴム板に限定されず、押し切り刃が挿入されることが可能に構成された板材であればよい。一例として、クリーニング用板材Gは、セラミックシートが積層されたクリーニング用のセラミック積層体であってもよい。この場合、クリーニング用の積層体は、積層シートの第1厚み寸法よりも厚い第2厚み寸法を有していればよい。
【0140】
第1実施形態では、1つの積層シート104に対する全ての積層チップ105が個片化される度にクリーニング工程が実施される例を示したが、これに限定されない。クリーニング工程の頻度は、押し切り刃220の付着物の堆積状況等に応じて適宜設定することができる。例えば、所定の枚数の積層シート104に対する全ての積層チップ105が個片化される度にクリーニング工程が実施されてもよい。
【0141】
切断装置200は、
図22に示すように、第1駆動部230、第2駆動部240及び第3駆動部250の動作を制御する制御部260を有していなくてもよい。この場合は、コンピュータ等の外部機器が切断装置200に接続され、当該外部機器に格納された駆動プログラム等に基づいて、第1駆動部230及び第2駆動部240の動作が制御され得る。あるいは、第1駆動部230、第2駆動部240及び第3駆動部250がそれぞれ制御部を有しており、作業者の入力操作等に基づいて、これらの各駆動部が動作するように構成されてもよい。
【0142】
さらに、切断装置200は、
図23に示すように、第3駆動部250を有していなくてもよい。切断装置200が第3駆動部250を有していない場合は、例えば、積層シートの切断線が1箇所のみの場合や、積層シートが他の装置によって移動されるような場合があり得る。
【0143】
以上の実施形態では、第2駆動部240及び第3駆動部250がいずれも支持体210を駆動すると説明したが、押し切り刃220を駆動するように構成されてもよい。
【0144】
上記実施形態では積層セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサ10について説明したが、本発明は内部電極が積層されたセラミック素体を有する積層セラミック電子部品全般に適用可能である。このような積層セラミック電子部品としては、例えば、チップバリスタ、チップサーミスタ、積層インダクタなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0145】
10,30…積層セラミックコンデンサ(積層セラミック電子部品)
105…積層チップ
311…未焼成のセラミック素体(積層チップ)
101,301…第1セラミックシート(セラミックシート)
102,302…第2セラミックシート(セラミックシート)
112p,312p…第1内部電極パターン(内部電極パターン)
113p,313p…第2内部電極パターン(内部電極パターン)
104,304…積層シート
104a,304a…第1主面
104b,304b…第2主面
200…切断装置(積層セラミック電子部品の製造装置)
210…支持体
211…第1ステージ
212…第2ステージ
220…押し切り刃
221…先端部
230…第1駆動部
240…第2駆動部
E…粘着シート
E2…粘着層
G…クリーニング用板材