(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】HVACユニット
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20231030BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B60H1/00 102V
B60H1/32 614Z
(21)【出願番号】P 2019225371
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098361
【氏名又は名称】雨笠 敬
(72)【発明者】
【氏名】藤田 太一
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-100657(JP,A)
【文献】特開2002-036853(JP,A)
【文献】特開2003-039937(JP,A)
【文献】特開2005-178591(JP,A)
【文献】実開昭52-033848(JP,U)
【文献】実開平01-063514(JP,U)
【文献】実開平06-055822(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室の座席下に配置されるHVACユニットであって、
ハウジングと、
該ハウジング内に設けられた蒸発器を備え、
前記ハウジングの前記座席前方方向に位置する壁には、前記蒸発器が設けられる位置に対応して開口部が形成されており、
前記蒸発器は、前記ハウジング内より前記開口部を介して前記座席の前方方向に取出可能とされている
と共に、
前記蒸発器に送風するための送風機と、
前記開口部が形成された前記ハウジングの壁に着脱可能に取り付けられ、前記送風機の風量を制御する風量制御機器と、
該風量制御機器が取り付けられる位置の前記ハウジングの壁に形成された前記風量制御機器の挿入口を更に備え、
前記風量制御機器は、前記挿入口を閉塞するかたちで前記ハウジングに取り付けられ、前記挿入口は、前記ハウジングから前記風量制御機器を取り外した状態で、前記蒸発器を外部より目視可能な位置に形成されていることを特徴とするHVACユニット。
【請求項2】
前記蒸発器に通風可能な状態で当該蒸発器を納出可能に収容するケースを備え、
該ケースは、前記蒸発器を収容した状態で前記開口部より前記ハウジング内に挿脱自在に挿入され、当該ハウジングに着脱可能に取り付けられると共に、取り付けられた状態で前記開口部を閉塞することを特徴とする請求項1に記載のHVACユニット。
【請求項3】
前記ケースには把手部が形成されており、前記ハウジングに取り付けられた状態で、前記把手部は前記ハウジング外に位置することを特徴とする請求項2に記載のHVACユニット。
【請求項4】
前記蒸発器は、水平方向に対して鋭角で交差するかたちで前記ハウジング内に設けられると共に、
前記ケースの最下部には排水部が形成され、該排水部は、前記ケースが前記ハウジングに取り付けられた状態で、前記ハウジングに形成されたドレン受け部上方に位置することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のHVACユニット。
【請求項5】
前記ケースには、前記蒸発器に接続される冷媒配管の接続部を収容する配管接続収容部が形成されており、前記ハウジングに取り付けられた状態で、前記配管接続収容部は前記ハウジング外に位置すると共に、
前記配管接続収容部には、前記蒸発器に流入する冷媒を減圧するための膨張弁が収容されることを特徴とする請求項2乃至請求項4のうちの何れかに記載のHVACユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内に蒸発器を備えたHVACユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ショベルカーやブルドーザ等の建設機械では、運転室内を空調するために空調装置が設けられている。この空調装置を構成するHVACユニットのハウジング内には、冷媒回路の蒸発器が取り付けられ、運転室内の冷房を行うことができるように構成されているが、高振動、高粉塵の過酷な環境下で使用されるものであるため、塵埃やゴミの付着による蒸発器の不具合が発生し易い。
【0003】
空調装置に不具合が生じ、HVACユニット内の蒸発器の状態を確認する場合、従来ではHVACユニットを建設機械から取り外した後、当該HVACユニットを分解し、蒸発器を取り出して状態を確認する以外に方法が無く、メンテナンスに多大な工数がかかる問題があった。
【0004】
一方、HVACユニットへの蒸発器の取り付け構造としては、蒸発器をカセットやケースに収容し、その状態でハウジングに挿脱可能に取り付けられるようにしたものも考案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-10500号公報
【文献】特開2018-203217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載の構成によれば、蒸発器をハウジングに取り付ける際の作業性は改善されるものの、建設機械等に取り付けられた後に、蒸発器のメンテナンスを行う際の作業性には未だ改善の余地が大きかった。
【0007】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、ハウジング内に設けられる蒸発器のメンテナンス性を著しく改善することができるHVACユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明のHVACユニットは、運転室の座席下に配置されるものであって、ハウジングと、このハウジング内に設けられた蒸発器を備え、ハウジングの座席前方方向に位置する壁には、蒸発器が設けられる位置に対応して開口部が形成されており、蒸発器は、ハウジング内より開口部を介して座席の前方方向に取出可能とされていると共に、蒸発器に送風するための送風機と、開口部が形成されたハウジングの壁に着脱可能に取り付けられ、送風機の風量を制御する風量制御機器と、この風量制御機器が取り付けられる位置のハウジングの壁に形成された風量制御機器の挿入口を更に備え、風量制御機器は、挿入口を閉塞するかたちでハウジングに取り付けられると共に、挿入口は、ハウジングから風量制御機器を取り外した状態で、蒸発器を外部より目視可能な位置に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明のHVACユニットは、上記発明において蒸発器に通風可能な状態で当該蒸発器を納出可能に収容するケースを備え、このケースは、蒸発器を収容した状態で開口部よりハウジング内に挿脱自在に挿入され、当該ハウジングに着脱可能に取り付けられると共に、取り付けられた状態で開口部を閉塞することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明のHVACユニットは、請求項2の発明においてケースには把手部が形成されており、ハウジングに取り付けられた状態で、把手部はハウジング外に位置することを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明のHVACユニットは、請求項2又は請求項3の発明において蒸発器は、水平方向に対して鋭角で交差するかたちでハウジング内に設けられると共に、ケースの最下部には排水部が形成され、この排水部は、ケースがハウジングに取り付けられた状態で、ハウジングに形成されたドレン受け部上方に位置することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明のHVACユニットは、請求項2乃至請求項4の発明においてケースには、蒸発器に接続される冷媒配管の接続部を収容する配管接続収容部が形成されており、ハウジングに取り付けられた状態で、配管接続収容部はハウジング外に位置すると共に、配管接続収容部には、蒸発器に流入する冷媒を減圧するための膨張弁が収容されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明のHVACユニットは、運転室の座席下に配置されるものであって、ハウジングと、このハウジング内に設けられた蒸発器を備え、ハウジングの座席前方方向に位置する壁には、蒸発器が設けられる位置に対応して開口部が形成されており、蒸発器は、ハウジング内より開口部を介して座席の前方方向に取出可能とされているので、運転室内に確保された搭乗者の足下空間を利用して、ハウジングから蒸発器を取り出し、また、蒸発器をハウジングに取り付けることが可能となる。
【0014】
これにより、蒸発器に不具合が生じた場合にも、ハウジングを取り外して分解等すること無く、容易にハウジングから蒸発器を取り外し、清掃や交換を行うことができるようになる。特に、ハウジングへの蒸発器の着脱作業を運転室内にて行うことが可能となるので、総じてHVACユニットのメンテナンス作業性を著しく改善することができるようになる。
【0015】
また、蒸発器に送風するための送風機と、開口部が形成されたハウジングの壁に着脱可能に取り付けられ、送風機の風量を制御する風量制御機器と、この風量制御機器が取り付けられる位置のハウジングの壁に形成された風量制御機器の挿入口を更に備え、風量制御機器は、挿入口を閉塞するかたちでハウジングに取り付けられると共に、挿入口は、ハウジングから風量制御機器を取り外した状態で、蒸発器を外部より目視可能な位置に形成されているので、HVACユニットに不具合が生じた場合には、風量制御機器を取り外した状態で、運転室内にて座席の前方方向から挿入口を介して蒸発器の状態を確認することができるようになる。これにより、HVACユニットの不具合が蒸発器に起因するものか否かを容易に判断することができるようになるので、不具合原因の特定から対策までに要する時間を著しく短縮することが可能となる。特に、風量制御機器の挿入口を利用して蒸発器の状態を確認することができるので、蒸発器の状態を外部から確認するための格別な窓孔等をハウジングに形成する必要も無く、生産性に富んだものとなる。
【0016】
また、請求項2の発明のHVACユニットは、上記発明に加えて蒸発器に通風可能な状態で当該蒸発器を納出可能に収容するケースを備え、このケースは、蒸発器を収容した状態で開口部よりハウジング内に挿脱自在に挿入され、当該ハウジングに着脱可能に取り付けられると共に、取り付けられた状態で開口部を閉塞するようにしたので、ハウジングから蒸発器を取り出し、ハウジングに蒸発器を取り付ける作業が極めて容易となる。特に、蒸発器はケース内に収容されているので、メンテナンス作業時に蒸発器をケースで保護することができるようになり、作業中に蒸発器が破損してしまう不都合も効果的に解消、若しくは、抑制することができるようになる。
【0017】
また、請求項3の発明の如くケースに把手部を形成し、ハウジングに取り付けられた状態で、把手部がハウジング外に位置するようにすれば、ケースをハウジングに取り付け、ハウジングから取り外す作業を、把手部を持って容易に行えるようになる。
【0018】
また、請求項4の発明の如く蒸発器が、水平方向に対して鋭角で交差するかたちでハウジング内に設けられるようにすれば、HVACユニットの高さ方向の寸法を縮小することが可能となり、HVACユニットが運転室の座席下に配置される場合に特に有効となる。更に、ケースの最下部には排水部を形成し、この排水部が、ケースをハウジングに取り付けた状態で、ハウジングに形成されたドレン受け部上方に位置するようにすれば、蒸発器から滴下するドレン水をケースの排水部よりハウジングのドレン受け部に円滑に流し、排出することができるようになる。
【0019】
また、請求項5の発明の如くケースに、蒸発器に接続される冷媒配管の接続部を収容する配管接続収容部を形成し、ハウジングに取り付けられた状態で、配管接続収容部がハウジング外に位置するようにすれば、蒸発器が収容されたケースをハウジングに取り付けた後、ハウジング外にて配管接続収容部内の接続部に冷媒配管を容易に接続することができるようになる。また、配管接続収容部には、蒸発器に流入する冷媒を減圧するための膨張弁も収容されるので、蒸発器に加えて膨張弁もケースに取り付けられた状態でハウジングへの組み付け作業を行うことができるようになり、生産性が一段と向上する。
【0020】
特に、膨張弁もケースの配管接続収容部内に収容されているので、ハウジングへの取り付け、ハウジングからの取り外し作業時に膨張弁をケースで保護することができるようになり、作業中に膨張弁が破損してしまう不都合も効果的に解消、若しくは、抑制することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明を適用した一実施形態のHVACユニットを、建設機械の運転室に設けられた座席下に配置した状態を説明する斜視図である。
【
図2】
図1のHVACユニットの概略斜視図である。
【
図3】
図2のHVACユニットのハウジングの詳細斜視図である。
【
図4】ハウジングからケースを取り外した状態の
図1のHVACユニットの概略斜視図である。
【
図5】
図4のHVACユニットのハウジングとケースの詳細斜視図である。
【
図6】
図3のハウジングを構成する下ハウジング部材の平面図である。
【
図8】
図5のケースとシール部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明を適用する実施例のHVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning)ユニット1は、建設機械の運転室2内を空調する空気装置(エアコン)を構成するものであり、建設機械の運転室2内に設置され、運転室2内の空気(内気)又は運転室2外の空気(外気)を取り込んで温調し、それを運転室2内に吹き出すものである。
【0023】
尚、以下の説明ではHVACユニット1以外の空調装置の構成部品は示さないが、実際にはHVACユニット1に設けられる蒸発器3及び膨張弁4と、運転室2の外に設けられる図示しない圧縮機や放熱器が冷媒配管にて接続され、周知の冷媒回路を構成することで、運転室2内の冷房や除湿を行うものである。また、HVACユニット1には運転室2内の暖房を行うための図示しないヒータも設けられているものとする。このヒータは、エンジンのヒータコア、電気ヒータ(PTCヒータ)、若しくは、空調装置の冷媒回路を構成する暖房用の熱交換器等にて構成される。
【0024】
図1はHVACユニット1を運転室2に設置された座席6の下側に配置した状態の斜視図を示している。座席6は図示しない建設機械の運転室2内に設けられ、搭乗者が座って建設機械を操縦するための席である。本発明ではHVACユニット1を、この座席6の下側に配置している。本発明のHVACユニット1は、
図2~
図5に示すように横長のハウジング7と、このハウジング7に取り付けられる蒸発器3、膨張弁4、前記ヒータ、及び、これら蒸発器3やヒータに運転室2内外の空気を送風するための送風機8(2台)等から構成されている。
【0025】
前記ハウジング7は、詳しくは
図3に示す如く硬質合成樹脂等から成形された下ハウジング部材11(
図6、
図7)と、この下ハウジング部材11に嵌め合わされる上ハウジング部材12から構成され、両者により内部に蒸発器収納空間13と吹出空間14を含む連続した通風路16(
図6、
図7)を構成している。この場合、蒸発器収納空間13はハウジング7の向かって右側、吹出空間14の向かって左側に構成されており、蒸発器収納空間13側のハウジング7の端部には、空気入口17が形成され、吹出空間14側の端部には吹出口18が形成されている。尚、19は各吹出口18に設けられたダンパであり、前述したヒータはこのダンパ19の奥側の吹出空間14(蒸発器3の風下側)に配設されるものとする。
【0026】
下ハウジング部材11の蒸発器収納空間13に対応する部分は、
図6、
図7に示す如く空気入口17側の端部に向けて低く傾斜してドレン受け部21を構成しており、このドレン受け部21の最下部には、排水孔部21Aが形成されている。この排水孔部21Aには図示しない排水パイプが下側から接続される。
【0027】
図1、
図2、
図4において、22はファンケースである。前述した二台の送風機8は実施例では遠心ファンから成り、このファンケース22内に取り付けられている。ファンケース22の一端には送風機8の空気吸込側に連通する吸込口23が形成されており、この吸込口23の反対側は二カ所で開口し、各開口は各送風機8の空気吹出側に連通している。そして、ファンケース22は送風機8が取り付けられた状態で、各開口がハウジング7の各空気入口17に対応するかたちでハウジング7に取り付けられている。これにより、送風機8の空気吹出側は、吹出口18とは反対側となる通風路16の端部に連通する。
【0028】
また、座席6の前方方向に位置するハウジング7の壁7A(搭乗者の足下空間に面する壁)には、
図4や
図5に示されるような開口部24が形成されている(実際には下ハウジング部材11と上ハウジング部材12とにより縁取られて開口部24は構成される)。この開口部24は水平方向に対して鋭角で交差するかたちで、水平に近い角度で斜めに形成されている。この開口部24は蒸発器3が設けられる蒸発器収納空間13に対応する位置に形成されている。
【0029】
また、ハウジング7の壁7Aには、送風機8の風量を制御する風量制御機器26が着脱可能に取り付けられる(
図2、
図4)。この風量制御機器26は空調装置のコントローラに電気的に接続され、送風機8の風量を制御するものであるが、この風量制御機器26が取り付けられる位置の壁7Aには、当該風量制御機器26を挿入するための挿入口27が開口形成されている(
図3、
図5)。
【0030】
この挿入口27はハウジング7内の蒸発器収納空間13に対応して形成されており、
図2に示すように風量制御機器26がハウジング7に取り付けられた状態では当該風量制御機器26によって閉塞されている。また、風量制御機器26をハウジング7から取り外した状態では、挿入口27は
図3や
図5の如く開放され、当該挿入口27を介してハウジング7内に設けられた蒸発器3の状態を、
図3に示すように外部から直接目視できるように構成されている。
【0031】
実施例の蒸発器3は全体として矩形板状を呈しており、
図9に示されるように冷媒入口管3Aと冷媒出口管3Bを備えており、それらの端部には蒸発器3に冷媒配管を接続するための接続部3Cが設けられている。また、この接続部3Cには蒸発器3に流入する冷媒を減圧するための前述した膨張弁4も取り付けられている(
図9)。そして、この蒸発器3は本発明では硬質樹脂製のケース28に収容された状態でハウジング7内に設けられる。
【0032】
次に、
図8~
図15を参照しながらケース28について説明する。ケース28の全体形状は
図10に示されている。このケース28は蒸発器3を収容可能な寸法を有する枠状の上ケース部材31(
図13)と、この上ケース部材31に係脱自在に係合する枠状の下ケース部材32(
図11、
図12)と、シール部材33A、33B(
図8)から構成されている。
【0033】
枠状の上ケース部材31の一側辺には上把手部34と、上配管接続収容部36が形成されており、周辺部には複数の被係合部37が形成されている(
図13、
図14)。また、枠状の下ケース部材32の一側辺には下把手部38と、下配管接続収容部39が形成されており、周辺部には複数の係合爪41が形成されている(
図11、
図15)。下ケース部材32の下配管接続収容部39の下面には、
図12に示すように蒸発器3の接続部3Cの開口形状に対応した開口が形成されているものとする。また、ケース28が後述するようにハウジング7内に挿入された状態で最下部となる位置の下ケース部材32には、
図12、
図15に示す如く排水部42が開口形成されている。
【0034】
蒸発器3をケース28内に収容する際には、
図9中矢印で示すように下ケース部材32上に蒸発器3を載置し、冷媒入口管3A、3B、接続部3C及び膨張弁4を下配管接続収容部39内に挿入する。その状態で同じく
図9中矢印で示すように上ケース部材31を下ケース部材32に被せ、被係合部37に係合爪41を係脱自在に係合させることで、上下ケース部材31、32を結合させる。
【0035】
この状態で、蒸発器3は上下ケース部材31、32により挟まれた状態でケース28内に納出可能に収容される(
図14、
図15)。このとき、上下ケース部材31、32は枠状を呈しているので、蒸発器3はケース28内に収容された状態で、外部から通風可能な状態とされる。また、上下把手部34、38は相互に結合されて把手部43を構成し、上下配管接続収容部36、39も相互に結合されて配管接続収容部44を構成する。そして、冷媒入口管3A、3B、接続部3C及び膨張弁4はこの配管接続収容部44内に収容される。尚、
図9中の46は把手部43にて上下ケース部材31、32を着脱自在に締結するネジである。
【0036】
このように蒸発器3をケース28内に収容した後、他側辺とそれに直交して相対向する辺には
図8に示されるように連続したシール部材33Aが貼付される。また、上下ケース部材31、32の一側辺には上下把手部34、38の蒸発器3側となる位置に上下フランジ部47、48が張り出し形成されており、これらフランジ部47、48の蒸発器3側となる面の周囲にシール部材33Bが貼付される(
図8)。
【0037】
蒸発器3をハウジング7内に設ける際には、上記の如く蒸発器3をケース28内に収容し、シール部材33A、33Bを貼付した後、把手部43を持って
図5中墨色矢印で示すように開口部24よりハウジング7内に挿脱自在に挿入する。これにより、
図3に示すように、蒸発器3は水平方向に対して鋭角で交差するかたち、即ち、水平に近い角度で斜めに傾斜した状態で、ハウジング7の通風路16の蒸発器収納空間13内に配置される。
【0038】
尚、
図5中49はケース28をハウジング7に着脱可能に締結するためのネジである。また、この場合開口部24は座席6の前方方向に位置するハウジング7の壁7Aに形成されているので、ケース28の挿入作業は、搭乗者の足下空間を利用して行うことができる。
【0039】
図3のように蒸発器3がハウジング7内に設けられた状態で、シール部材33Aはハウジング7の壁内面に密接する。また、シール部材33Bはハウジング7の開口部24の周囲の壁7A外面に密接するので、これにより、ケース28とハウジング7の壁内面との間には実質的に隙間が無くなる(封止される)と共に、開口部24もケース28により閉塞(密閉)されることになる。また、ケース28の排水部42はハウジング7の下ハウジング部材11のドレン受け部21の上方に位置する。
【0040】
また、把手部43及び配管接続収容部44はハウジング7の外側に位置する。特に配管接続収容部44の下面は略水平となる。そして、配管接続収容部44の下面の前述した開口を利用し、冷媒回路の冷媒配管を下方から接続部3Cに着脱可能に接続する。このようにして蒸発器3が設置されたHVACユニット1の送風機8が運転され、冷媒回路の圧縮機が運転されると、吸込口23から運転室2内外の空気が吸い込まれ、通風路16内の蒸発器3に通風されて当該蒸発器3内で蒸発する冷媒と熱交換する。この蒸発器3を通過した空気は次に前述したヒータを通過し、吹出口18から運転室2内に吹き出されるので、これにより、運転室2内は空調されることになる。
【0041】
蒸発器3に付着した空気中の水分(ドレン水)は、下ハウジング部材11のドレン受け部21上に滴下する。ドレン受け部21に滴下したドレン水は、排水孔部21Aに集められ、この排水孔部21Aより外部に排出される。
【0042】
ここで、HVACユニット1に不具合が生じた場合には、先ず、風量制御機器26をハウジング7から取り外す。この状態で挿入口27は開放され、挿入口27からは
図3の如く外部から蒸発器3を目視可能となるので、挿入口27を覗いて蒸発器3の状態を確認する。そして、蒸発器3に塵埃やゴミが付着する不具合が生じていると特定した場合には、先ず、冷媒回路の冷媒を回収した後、接続部3Cから冷媒配管を取り外し、ネジ49も外す。次に、ケース28の把手部43を持ってハウジング7内より開口部24を介して
図5中白抜き矢印で示すように座席6の前方方向にケース28(蒸発器3)を引き抜く。
【0043】
このケース28(蒸発器3)の取出作業も搭乗者の足下空間を利用して行うことができる。その後、シール部材33A、33Bを剥がし、ネジ46を外した後、下ケース部材32から上ケース部材31を取り外し、蒸発器3を取り出す。蒸発器3が清掃のみで再利用可能であれば、清掃後、再びケース28内に収容する。再利用不可であれば新たな蒸発器3をケース28内に収容し、前述した如くハウジング7内に挿入するものである。
【0044】
以上詳述した如く、本発明では運転室2の座席6下側に配置されるHVACユニット1のハウジング7の座席6の前方方向に位置する壁7Aに、蒸発器3が設けられる位置に対応して開口部24を形成し、蒸発器3を、ハウジング7内より開口部24を介して座席6の前方方向に取出可能としたので、運転室2内に確保された搭乗者の足下空間を利用して、ハウジング7から蒸発器3を取り出し、また、蒸発器3をハウジングに取り付けることが可能となる。
【0045】
これにより、蒸発器3に不具合が生じた場合にも、ハウジング7を建設機械等から取り外して分解すること無く、容易にハウジング7から蒸発器3を取り外し、清掃や交換を行うことができるようになる。特に、ハウジング7への蒸発器3の着脱作業を運転室2内にて行うことが可能となるので、総じてHVACユニット1のメンテナンス作業性を著しく改善することができるようになる。
【0046】
また、送風機8の風量を制御する風量制御機器26が取り付けられる位置のハウジング7の壁7Aに挿入口27を形成し、風量制御機器26を、挿入口27を閉塞するかたちでハウジング7に取り付けると共に、挿入口27を、ハウジング7から風量制御機器26を取り外した状態で、蒸発器3を外部より目視可能な位置に形成したので、HVACユニット1に不具合が生じた場合には、風量制御機器26を取り外した状態で、運転室2内にて座席6の前方方向から挿入口27を介して蒸発器3の状態を確認することができるようになる。
【0047】
これにより、HVACユニット1の不具合が蒸発器3に起因するものか否かを容易に判断することができるようになるので、不具合原因の特定から対策までに要する時間を著しく短縮することが可能となる。特に、風量制御機器26の挿入口27を利用して蒸発器3の状態を確認することができるので、蒸発器3の状態を外部から確認するための格別な窓孔をハウジングに形成する必要も無く、生産性に富んだものとなる。
【0048】
また、蒸発器3に通風可能な状態で当該蒸発器3を納出可能に収容するケース28を設け、このケース28を、蒸発器3を収容した状態で開口部24よりハウジング7内に挿脱自在に挿入し、当該ハウジング7に着脱可能に取り付けるようにし、取り付けられた状態で開口部24を閉塞するようにしたので、ハウジング7から蒸発器3を取り出し、ハウジング7に蒸発器3を取り付ける作業が極めて容易となる。特に、蒸発器3はケース28内に収容されているので、メンテナンス作業時に蒸発器3をケース28で保護することができるようになり、作業中に蒸発器3が破損してしまう不都合も効果的に解消、若しくは、抑制することができるようになる。
【0049】
また、このケース28を、枠状の上ケース部材31と、この上ケース部材31に係脱自在に係合する枠状の下ケース部材32と、周縁部に設けられたシール部材33Aから成り、上下ケース部材31、32にて蒸発器3を挟んだ状態で当該蒸発器3を納出可能に収容し、収容した状態でハウジング7内に配置して当該ハウジング7に取り付けるようにしたので、枠状の下ケース部材32に蒸発器3を載置し、これも枠状の上ケース部材31を被せて当該上ケース部材31を下ケース部材32に係脱自在に係合させることで蒸発器3をケース28内に収容することができるようになり、ケース28内への蒸発器3の収容及びケース28から蒸発器3を取り出す作業も極めて容易となる。
【0050】
また、ケース28の周縁部に設けられたシール部材33Aは、ケース28がハウジング7に取り付けられた状態で当該ハウジング7の壁内面に密接するので、蒸発器3を収容したケース28をハウジング7に取り付けるだけで、ハウジング7内に通風される空気が蒸発器3に流入せずに通過する不都合を回避することができるようになり、HVACユニット1の組立作業性も極めて良好なものとなる。
【0051】
また、ケース28に把手部43を形成し、ハウジング7に取り付けられた状態で、把手部43がハウジング7外に位置するようにしたので、ケース28をハウジング7に取り付け、ハウジング7から取り外す作業を、把手部43を持って容易に行えるようになる。
【0052】
また、蒸発器3は水平方向に対して鋭角で交差するかたちでハウジング7内に設けられるようにしたので、HVACユニット1の高さ方向の寸法を縮小することが可能となり、HVACユニット1が運転室2の座席6下に配置される場合に特に有効となる。更に、ケース28の最下部には排水部42を形成し、この排水部42が、ケース28をハウジング7に取り付けた状態で、ハウジング7に形成されたドレン受け部21上方に位置するようにしているので、蒸発器3から滴下するドレン水をケース28の排水部42よりハウジング7のドレン受け部21に円滑に流し、排出することができるようになる。
【0053】
また、ケース28に、蒸発器3に接続される冷媒配管の接続部3Cを収容する配管接続収容部44を形成し、ハウジング7に取り付けられた状態で、配管接続収容部44がハウジング7外に位置するようにしているので、蒸発器3が収容されたケース28をハウジング7に取り付けた後、ハウジング7外にて配管接続収容部44内の接続部3Cに冷媒配管を容易に接続することができるようになる。また、配管接続収容部44には、蒸発器3に流入する冷媒を減圧するための膨張弁4も収容するようにしたので、蒸発器3に加えて膨張弁4もケース28に取り付けられた状態でハウジング7への組み付け作業を行うことができるようになり、生産性が一段と向上する。
【0054】
特に、膨張弁4もケース28の配管接続収容部44内に収容されているので、ハウジング7への取り付け、ハウジング7からの取り外し作業時に膨張弁4をケース28で保護することができるようになり、作業中に膨張弁4が破損してしまう不都合も効果的に解消、若しくは、抑制することができるようになる。
【0055】
尚、
図1では座席6の下のHVACユニット1が露出しているように示しているが、実際にはHVACユニット1の前方方向に着脱自在のグリルが設けられる。また、グリルに代えてHVACユニット1の前方に壁を設け、この壁にスリットを形成して、HVACユニット1とスリットを繋ぐダクトを設けてもよい。更に、係るダクトを用いず、パッキンでHVACユニット1とスリット間を覆うようにしてもよい。
【0056】
また、実施例で説明したHVACユニット1のハウジング7やファンケース22等の形状は、それに限定されるものでは無く、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能である。更に、実施例では建設機械を例に採って本発明を説明したが、それに限らず、農業機械や運送車両、或いは、一般的な車両にも本発明が有効であることは云うまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1 HVACユニット
3 蒸発器
4 膨張弁
6 座席
7 ハウジング
7A 壁
8 送風機
21 ドレン受け部
24 開口部
26 風量制御機器
27 挿入口
28 ケース
31 上ケース部材
32 下ケース部材
33A 33B シール部材
42 排水部
43 把手部
44 配管接続収容部