(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】構造体、遊星歯車装置およびアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/028 20120101AFI20231030BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20231030BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
F16H57/028
F16H1/46
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2019239509
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 拓也
(72)【発明者】
【氏名】河田 敏樹
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-139339(JP,U)
【文献】特開2002-364735(JP,A)
【文献】特開平04-088239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/028
F16H 1/46
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延在する外周面を有し、前記外周面に第1凸部が形成される内歯車と、
前記内歯車の外周面に対向して隙間を空けて配置され
、第2凸部が形成される内周面を有し
、前記第1凸部と前記第2凸部とが線接触または点接触で接触することで、前記内歯車の周方向への移動を制限
しつつ前記内歯車をフローティング状態で収容するハウジングと、
を備え、
前記外周面と前記内周面のうち少なくとも一方の周面は、径方向外方に湾曲するクラウニング状の面である、
構造体。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記第1凸部と前記第2凸部とが線接触または点接触で接触することにより、前記内歯車を、前記ハウジングの軸線に対して、前記内歯車の軸線が傾斜するように移動可能に支持する、
請求項1記載の構造体。
【請求項3】
前記外周面及び前記内周面は、それぞれ径方向外方に湾曲するクラウニング状の面である、
請求項1または2記載の構造体。
【請求項4】
前記クラウニング状の面は、径方向外方に窪む前記内周面であり、
前記外周面の前記第1凸部は、前記内周面に沿って移動するとともに、且つ、前記第2凸部に周方向で接触するよう形成されている、
請求項1または2記載の構造体。
【請求項5】
前記第1凸部と前記第2凸部のうち、一方の凸部は、前記軸線方向で延在し、且つ、前記軸線方向の中央部分が他方の凸部に点接触または線接触するように周方向に凸状に湾曲して設けられている、
請求項1または2記載の構造体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の構造体と、
前記内歯車と噛み合う1又は複数の遊星歯車と、
前記1又は複数の遊星歯車の中央に位置し、前記1又は複数の遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、
前記1又は複数の遊星歯車を回転可能に支持ずるキャリアと、を備える、
遊星歯車装置。
【請求項7】
前記キャリアの回転に伴って回転する第2の太陽歯車と、
前記第2の太陽歯車の周囲に配され、前記第2の太陽歯車と噛み合う1又は複数の第2の遊星歯車と、
前記1又は複数の第2の遊星歯車を回転可能に支持する第2のキャリアと、
前記1又は複数の第2の遊星歯車と噛み合う内歯が内周面に形成された第2のハウジングと、をさらに備え、
前記ハウジングと前記第2のハウジングとは一体で成形されている、
請求項6に記載の遊星歯車装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の遊星歯車装置と、
前記遊星歯車装置に接続され該遊星歯車装置を駆動するモータと、を備える、
アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体、遊星歯車装置およびアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置は、入力された回転を減速して出力する減速機として、自動車、ロボットなどの様々な技術に用いられている。遊星歯車装置は複数の歯車が組み合わされて構成されているため、作動時に騒音及び振動が発生する。このような遊星歯車装置の作動時の騒音及び振動の発生を抑制するための技術が提案されている。
【0003】
このような技術を提案するものとして、特許文献1は、内歯車とハウジングとを分離した構造とし、両者の間に隙間を設けた遊星歯車装置を開示している。内歯車とハウジングとを分離した構造とすることで、内歯車からハウジングに振動が伝達しにくくなり、振動に起因する騒音が発生しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の遊星歯車装置では、内歯車の外周面とハウジングの内周面とが、互いに嵌まり合う形状に形成されている。そのため、遊星歯車装置の作動中に内歯車が移動すると、内歯車の外周面とハウジングの内周面とはある程度の広がりをもった範囲で接触することになる。
【0006】
これにより、内歯車とハウジングとが接触している状態では、内歯車まで伝わった遊星歯車機構の振動がハウジングに伝達しやすくなり、それに伴う遊星歯車装置の騒音も発生しやすいという問題がある。
【0007】
特に、各歯車を含む部品の製造誤差、或いは組付けの際の誤差等により、内歯車と噛み合う遊星歯車を支持するキャリアの中心軸がハウジングの中心軸に対して傾く等のアライメントの誤差が生じる場合の振動及び騒音の発生を抑制することが望まれている。
【0008】
本発明の目的は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、歯車機構からの振動の伝達及び遊星歯車装置から発生する騒音を抑制することができる構造体、遊星歯車装置およびアクチュエータを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る構造体の一態様は、軸線方向に延在する外周面を有し、前記外周面に第1凸部が形成される内歯車と、前記内歯車の外周面に対向して隙間を空けて配置され、第2凸部が形成される内周面を有し、前記第1凸部と前記第2凸部とが線接触または点接触で接触することで、前記内歯車の周方向への移動を制限しつつ前記内歯車をフローティング状態で収容するハウジングと、を備え、前記外周面と前記内周面のうち少なくとも一方の周面は、径方向外方に湾曲するクラウニング状の面である。
【0010】
本発明に係る遊星歯車装置の一態様は、上記構成の構造体と、前記内歯車と噛み合う1又は複数の遊星歯車と、前記1又は複数の遊星歯車の中央に位置し、前記1又は複数の遊星歯車と噛み合う太陽歯車と、前記1又は複数の遊星歯車を回転可能に支持ずるキャリアと、を備える。
【0011】
本発明に係るアクチュエータの一態様は、上記構成の遊星歯車装置と、前記遊星歯車装置に接続され該遊星歯車装置を駆動するモータと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、歯車機構からの振動の伝達及び遊星歯車装置から発生する騒音を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る構造体を有する遊星歯車装置が組み込まれたアクチュエータの軸線方向に沿った縦断面図である。
【
図2】軸線方向の一方側からみた構造体の正面図である。
【
図3】軸線方向の一方側からみた同構造体のハウジング本体の正面図である。
【
図4】同構造体のハウジング本体の軸線方向に沿った縦断面図である。
【
図5】ハウジング本体の第1ハウジング要素を示す斜視図である。
【
図6】軸線方向の一方側からみた同構造体の内歯車の正面図である。
【
図9】遊星歯車装置に組み込まれた構造体の作用の説明に供する縦断面図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る構造体の変形例1の軸線方向の一方側からみた正面図である。
【
図11】変形例1の構造体におけるハウジング本体の正面図である。
【
図12】同ハウジング本体を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図13】変形例1の構造体における内歯車を一方側からみた正面図である。
【
図15】本発明の実施の形態に係る構造体の変形例2の正面図である。
【
図16】本発明の実施の形態に係る構造体の変形例2を示す構造体の軸線方向に沿った部分断面図である。
【
図17】変形例2のハウジング本体の正面図である。
【
図18】変形例2のハウジング本体を示す軸線方向に沿った断面図である。
【
図19】
図19Aは、変形例2の構造体の内歯車を一方側からみた正面図であり、
図19Bは、同内歯車の側面図である。
【
図20】本発明の実施の形態に係る構造体の変形例3を軸線方向の一方側からみた構造体の正面図である。
【
図21】
図21Aは、変形例3の構造体のハウジング本体を一方側からみた正面図であり、
図21Bは、同ハウジング本体の軸線方向に沿った縦断面図である。
【
図22】
図22Aは、本発明の実施の形態に係る構造体の変形例3の内歯車を軸線方向の一方側からみた正面図であり、
図22Bは、同22Aの内歯車の側面図である。
【
図23】変形例4の構造体の軸線方向に沿った縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る構造体を有する遊星歯車装置が組み込まれたアクチュエータの軸線方向に沿った縦断面図である。なお、後述の実施の形態に係る遊星歯車装置及びアクチュエータは、本発明に係る遊星歯車装置及びアクチュエータの一例であり、本発明は後述の実施形態により限定されない。以下の説明では、
図1において左右方向をX方向または軸方向といい、左方向を「+X方向」、右方向を「-X方向」という。また、
図1においてX軸に対して直交する方向をY方向または径方向といい、径方向外側を「+Y方向」、径方向内側を「-Y方向」という。また、
図1においてX軸回りの方向を周方向という。具体的には、
図1のハウジング5において、ハウジング本体4の接続蓋体41が取り付けられるように開放されている側を一方側(-X方向側)と呼び、その反対側である、ハウジング本体4の開口閉塞部57の開口57aを有する側を他方側(+X方向側)と呼ぶ。しかしながら、本発明はこれに限定されず、ハウジング本体4の開口閉塞部57の開口57aを有する側を一方側とし、ハウジング本体4の接続蓋体41が取り付けられるように開放されている側を他方側とするように読み直して解釈してもよい。
【0016】
図1を参照して、実施形態1に係るアクチュエータ1、アクチュエータ1に組み込まれた遊星歯車装置3、及び遊星歯車装置3が備える構造体10について説明する。
【0017】
<アクチュエータの構成>
図1に示すアクチュエータ1は、例えば、自動車用の電動バックドアのアクチュエータとして使用される。但し、アクチュエータ1の用途は、特に限定されるものではない。
【0018】
アクチュエータ1は、モータ(電動モータ)2と、モータ2に接続された遊星歯車装置3とを有する。
【0019】
<モータ>
モータ2は、モータ本体21と、回転軸22と、を有する。モータ2は、制御部(図示省略)の制御下で作動し、回転軸22を回転させて遊星歯車装置3を駆動する。
【0020】
<遊星歯車装置3の全体構成>
遊星歯車装置3は、モータ2によって入力された回転を、所定の減速比で減速して出力軸87から出力する。
【0021】
遊星歯車装置3は、例えば、接続蓋体41及びハウジング本体4を有するハウジング5と、接続蓋体41及びハウジング本体4の内部に収容された遊星歯車機構6とを備える。遊星歯車機構6は、例えば、軸方向に沿って配置された複数の遊星歯車機構(第1遊星歯車機構7及び第2遊星歯車機構8)と、出力軸87とを有している。
【0022】
<ハウジング5>
ハウジング5は、本実施の形態では、遊星歯車機構6として接続された複数の遊星歯車機構7、8を、接続蓋体41及びハウジング本体4とで収容し、複数段の減速を実現している。ハウジング5では、遊星歯車機構6は、モータ2の駆動による回転軸22の回転を2段階で減速して出力軸87から出力する。
【0023】
<接続蓋体41>
接続蓋体41は、例えば、モータ2を遊星歯車装置3に取り付けるための部材である。また、接続蓋体41は、ハウジング本体4と組み合わされて内部に遊星歯車機構6を収容する収容空間を形成する。接続蓋体41の中央には、モータ2の回転軸22を通すための開口31aが形成されている。開口31aに通された回転軸22は、遊星歯車機構6の後述する太陽歯車71に固定される。接続蓋体41は、例えば合成樹脂製で射出成形により成形される。
【0024】
<ハウジング本体4>
ハウジング本体4は、例えば、
図1に示すように、接続蓋体41が取り付けられる軸方向の一方側(-X方向側)が開放されており、この開放された部分から遊星歯車機構6を収容している。
【0025】
ハウジング本体4は、第1遊星歯車機構7が収容される第1ハウジング要素40と、第2遊星歯車機構8が収容されるとともに、第2遊星歯車機構8の出力軸87を外部へ突出させる第2ハウジング要素50と、を有する。なお、ハウジング本体4、具体的には、第1ハウジング要素40及び第2ハウジング要素50は、例えば合成樹脂製で、射出成形により成形される。
【0026】
第1ハウジング要素40は、後述する太陽歯車71及び複数の遊星歯車72を囲むように設けられたリング状の第1内歯車90を収容する。第2ハウジング要素50は、後述する太陽歯車81及び複数の遊星歯車82を囲むように設けられたリング状の第2内歯車部56を有する。
【0027】
第1ハウジング要素40が本発明の構造体10のハウジングの一例に該当する。第1ハウジング要素40は、第1ハウジング要素40の収容する第1遊星歯車機構7の一部として機能する第1内歯車90とともに、構造体10を構成する。
【0028】
<第1ハウジング要素40>
図2~
図5を参照して、本発明の実施の形態に係る構造体10におけるハウジングとしての第1ハウジング要素40を説明する。
図2は、軸線方向の一方側(-X方向側)からみた構造体の正面図であり、
図3は、軸線方向の一方側からみた同構造体のハウジング本体の正面図である。また、
図4は、ハウジング本体の軸線方向に沿った縦断面図である。また、
図5は、第1ハウジング要素を示す斜視図である。
【0029】
第1ハウジング要素40は、筒状体であり、一方側(-X方向側)で開口し、他方側(X方向側)の開口端面部40aで第2ハウジング要素50に連続して設けられている。本実施の形態では、第1ハウジング要素40と第2ハウジング要素50とは一体に形成され、互いの中空の内部は連通し、遊星歯車機構6の収容空間を構成している。
【0030】
第1ハウジング要素40は、本実施の形態では、
図1から
図5に示すように、第1内歯車90の外周面92と隙間を空けて対向する内周面46を有する第1円筒体44を有する。内周面46にはストッパとして機能する第2凸部45が形成されている。
【0031】
第1ハウジング要素40は、第2凸部45と第1内歯車90の第1凸部95との接触により、第1内歯車90を、周方向への移動を制限しつつ、フローティング状態(全方位移動可能な状態)で収容する。
【0032】
第1ハウジング要素40は、第2凸部45と第1凸部95との点接触または線接触で接触することにより、第1内歯車90を、第1ハウジング要素40の軸線に対して、第1内歯車90の軸線が傾斜するように移動可能に支持する。例えば、第1ハウジング要素40は、第1内歯車90を第1円筒体44内において、ピッチング及びヨーイングのような移動を容易に収容している。
【0033】
第1円筒体44は、第2円筒体54と一体に設けられている。第1円筒体44の外周面は、第2ハウジング要素50の外周面とともにハウジング本体4の外周面を構成する。
【0034】
第1円筒体44は、第1遊星歯車機構7を構成する太陽歯車71、遊星歯車72、キャリア73に加えて、第1内歯車90を囲むように設けられている。第1円筒体44は、太陽歯車71、遊星歯車72、キャリア73及び第1内歯車90を囲む内周面46を有する。
【0035】
第1円筒体44の一方側の開口縁部には、接続蓋体41に係合して固定される係合部42が設けられている。係合部42は、本実施の形態では、開口縁部から周方向に所定間隔を空けて突出する爪部である。爪部が、接続蓋体41に設けられた被係合部と係合することにより、接続蓋体41とハウジング本体4との軸方向と周方向への相対移動が制限される。
【0036】
第1円筒体44の内周面46は、後述する第1内歯車90が揺動可能となるように、第1内歯車90の外周面92に対応して設けられている。内周面46は、第1内歯車90の外周面92と相対移動可能な形状である。内周面46は、本実施の形態では、径方向外方に窪むように湾曲するクラウニング形状の面(以下、「クラウニング面」と称することもある)である。内周面46は、軸線方向の中央部分で、径方向に窪むように形成され、内歯車90の外周面92と所定間隔を空けて配置されている。なお、内周面46の形状は、内歯車90の外周面92との関係により規定されてもよく、詳細は後述する。内周面46及び外周面92の少なくとも一方は、クラウニング状に形成される。
【0037】
第2凸部45は、第1円筒体44内で収容される第1内歯車90の第1凸部95と接触し、第1内歯車90の少なくとも周方向の移動を制限する。
【0038】
第2凸部45は、本実施の形態では、内周面46において、軸線方向に沿って(軸線方向の一方側から他方側に向かって)延在して形成されている。
【0039】
第2凸部45は、
図4及び
図5に示すように、径方向内側に位置する先端部が、周方向で第1凸部95が位置する側に凸状となるように湾曲して設けられており、第1凸部95と点接触または線接触可能に形成されている。
【0040】
第2凸部45は、本実施の形態では、
図2~
図4に示すように、第1円筒体44の内周面46の一部に周方向に対をなして配置されている。これら対の第2凸部45間には、後述する第1内歯車90の第1凸部95(
図6、
図7及び
図9参照)が差し込まれ、第2凸部45に接触することにより、第1ハウジング要素40内における第1内歯車90の移動が制限される。
【0041】
第2凸部45は、本実施の形態では、それぞれ軸線方向に直交する断面で切断すると山形状の断面を有し、内周面46からの突出高さは一定であるが、軸線方向に亘って延在する先端部を有する。この先端部は、互いの軸方向の中央部分で、周方向で対向する方向に互いに突出する凸状に形成されている。すなわち、対をなす第2凸部45の先端部がそれぞれ、周方向で第1凸部95が位置する側に凸状となるように湾曲しているため、第2凸部45の先端部間の間隔は、軸方向中央部が軸方向端部よりも狭くなっている。
【0042】
なお、第2凸部45は、対でなくてもよい。また、第2凸部45は、本実施の形態及び後述する変形例1~5において、第1ハウジング要素40内で第1内歯車90が移動した際に、第1内歯車90と周方向で点接触または線接触で接触する形状であれば、どのような形状あってもよい。
【0043】
<第2ハウジング要素50>
第2ハウジング要素50は、第2円筒体54と、第2円筒体54の内壁に形成された第2内歯車部56とを有している。第2内歯車部56は、例えば、軸線方向に対して角度をもって斜めに刻まれている。すなわち、第2内歯車部56を有する第2ハウジング要素50は、例えば、はすば歯車を構成している。
【0044】
ハウジング本体4の開口閉塞部57は、例えば、円筒状をなし、遊星歯車機構6の出力軸87を通すための開口57aを有している。これにより、出力軸87の先端に設けられた出力歯車87aから出力するトルクを外部の機構に伝達することができる。ハウジング本体4は、例えば合成樹脂製で、射出成形により成形される。
【0045】
<遊星歯車機構6>
遊星歯車機構6は、
図1に示すように、ハウジング本体4内に収容され、モータ2から伝達された回転を減速して出力軸87の出力歯車87aから出力する。
【0046】
遊星歯車機構6は、軸線方向に沿って配置された第1遊星歯車機構7と第2遊星歯車機構8とを有している。
【0047】
<第1遊星歯車機構7>
第1遊星歯車機構7は、太陽歯車71と、太陽歯車71を中央にしてその周囲に配された複数の遊星歯車72と、複数の遊星歯車72を回転可能に支持するキャリア73と、第1内歯車90とを備えている。第1遊星歯車機構7は、1つ以上の遊星歯車72を備えていればよいが、本実施の形態では、3つの遊星歯車72を備える。
【0048】
太陽歯車71は、外周面に太陽歯部71aが形成された外歯車であり、モータ2の回転軸22に接続され、回転軸22と同軸心で回転可能である。太陽歯車71は、モータ2の駆動により、回転する。太陽歯部71aは、本実施の形態では、太陽歯車71の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有し、本実施の形態の太陽歯車71は、所謂、はすば歯車である。
【0049】
遊星歯車72は、外周面に遊星歯部72aが形成された外歯車である。複数の遊星歯車72は、太陽歯車71と第1内歯車90との間に等間隔に配置され、太陽歯車71と第1内歯車90の双方に噛み合う。複数の遊星歯車72は、本実施の形態では、第1遊星歯車機構7の軸を中心とした同一の円上に配置され、キャリア73により回転可能に支持されている。遊星歯部72aは、本実施の形態では、遊星歯車72の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有し、本実施の形態の遊星歯車72は、所謂、はすば歯車である。
【0050】
遊星歯車72はそれぞれ、太陽歯車71の回転に基づいて、自身の中心軸(遊星軸76)を中心に回転する。また、遊星歯車72はそれぞれ、それ自体の回転及び第1内歯車90との噛合に基づいて、太陽歯車71の周りを公転する。遊星歯車72の公転の中心軸は、太陽歯車71の中心軸に一致してよい。
【0051】
キャリア73は、遊星歯車72を回転可能(自転可能)に支持する。加えて、キャリア73は、遊星歯車72の公転に基づいて回転し、回転を第2遊星歯車機構8に伝達する。また、キャリア73は、本実施の形態では、円筒状に形成されており、その外周面に形成された収容開口(図示省略)内に、遊星歯車72を収容している。遊星歯車72のそれぞれは、収容開口内で軸線方向に向けられた遊星軸76により回転可能に支持されている。遊星歯車72は、本実施の形態では、一部が収容開口から径方向外方に突出しており、キャリア73の外周面から突出した状態で取り付けられている。これにより、遊星歯部72aは、第1内歯車90の内歯部91と噛み合う。
【0052】
<第1内歯車(内歯車)90>
図6~
図8は、構造体10としての内歯車に相当する第1内歯車90の説明に供する図である。具体的には、
図6は、軸線方向の一方側からみた構造体の内歯車の正面図であり、
図7は、同構造体の内歯車の平面図であり、
図8は、同構造体の内歯車の斜視図である。
【0053】
第1内歯車90は、第1内歯車90の軸線方向に延在する内周面及び外周面92を有する。内周面には、内歯部91が形成されている。内歯部91は、本実施の形態では、第1内歯車90の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有するはすば歯車である。なお、第1内歯車90の歯先円の直径は、円筒状のキャリア73の直径よりも大きく、第1内歯車90の内部に、遊星歯車72を保持したキャリア73が収容される。キャリア73の外周面から突出した遊星歯部72aは、第1内歯車90の内歯部91と噛み合わせられる。
【0054】
第1内歯車90の外周面92は、第1ハウジング要素40の第1円筒体44の内周面46の形状に対応して設けられている。
【0055】
外周面92は、本実施の形態では、第1内歯車90の軸線方向或いはアクチュエータの出力軸線方向の中央部分を、最も径方向外方に突出するように凸状に形成されたクラウニング形状の面(クラウニング面)となっている。本実施の形態では、外周面92は、フローティング状態を確保すべく、第1円筒体44の内周面46に沿って略一定間隔の隙間が空くように形成されている。すなわち、第1内歯車90は、第1円筒体44内において、外方に凸状のクラウニング面である外周面92と、これに遊嵌するように、第1円筒体44において外方に凹状のクラウニング面である内周面46とが、隙間を空けて対向配置される。
【0056】
第1内歯車90の外周面92には、
図2、
図6~
図8に示すように、第1凸部95が形成されている。第1凸部95は、隙間において、ハウジング本体4の内周面46に形成された対の第2凸部45と周方向で係合する。
【0057】
第1凸部95は、本実施の形態では、対の第2凸部45に対応して設けられており、対の第2凸部45の間に入り込む。
【0058】
第1凸部95は、本実施の形態では、軸線方向に直交する平面で切断すると概ね三角形状の断面を有し、軸線方向に延在して設けられている。第1凸部95は、周方向に移動した際に第2凸部45に接触し易くするために凸状に湾曲した部位を有する。
【0059】
第1凸部95は、第1内歯車90の外周面92から斜めに立ち上がる斜面部95aと、両サイドから立ちあがった斜面部95aが交差する箇所に位置する丸みを帯びた頂部95bとを有している。第1凸部95の高さは、外周面92のクラウニング形状に対応しており、第1凸部95は、クラウニング面である外周面92から一定の高さで突条に設けられている。第1凸部95は、
図8に示すように、斜面部95aにおいて軸線方向の中央部分が周方向に太くなるように形成されている。これにより、第1凸部95が、対の第2凸部45間に差し込まれたときに、点接触或いは線接触しやすくなる。第1内歯車90の全幅にわたって形成されているが、一部の範囲のみに形成されていてもよい。第1内歯車90は、例えば合成樹脂製である。なお、後述するように、第1内歯車90は、ハウジング本体4を形成する合成樹脂よりも低い硬度の合成樹脂から形成されている。
【0060】
ハウジング本体4(第1ハウジング要素40)と、第1内歯車90とは物理的に分離しており、アクチュエータ1が作動していない場合、両者の間には隙間が形成されている。第1内歯車90は、隙間の分だけハウジング本体4内での移動が許容される。ハウジング本体4内において第1内歯車90が許容される移動とは、軸線方向回り、つまり周方向の回転や、軸線方向に直交する方向への揺動が許容される。そして、第1内歯車90に形成された第1凸部95が対の第2凸部45に当接することで、第1内歯車90のそれ以上の軸周り方向への移動が制限される。
【0061】
<第2遊星歯車機構8>
第2遊星歯車機構8は、第1遊星歯車機構7から伝達された回転を、所定の減速比で減速して、出力する。第2遊星歯車機構8は、第1遊星歯車機構7よりも軸方向における他方側(
図1の左側であり、出力側)に設けられている。第2遊星歯車機構8は、ハウジング本体4の収容空間において、ハウジング本体4の第2ハウジング要素50内、具体的には、第2内歯車部56に対応する部分に配置されている。なお、第2遊星歯車機構8は、省略されてもよい。
【0062】
第2遊星歯車機構8は、本実施の形態では、太陽歯車81と、遊星歯車82と、遊星歯車82を回転可能に支持するキャリア83と、出力軸87とを備えている。第2遊星歯車機構8は、1つ以上の遊星歯車82を備えていればよいが、本実施の形態では、3つの遊星歯車82を備える。
【0063】
太陽歯車81は、外歯車であって、外周面に、太陽歯部81aを有する。太陽歯部81aは、本実施の形態では、太陽歯車81の中心軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有しており、太陽歯車81は、所謂、はすば歯車である。
【0064】
太陽歯車81は、本実施の形態では、第1遊星歯車機構7のキャリア73に互いの軸線を一致させた状態で固定されている。これにより、太陽歯車81は、第1遊星歯車機構7のキャリア73の回転に伴い、第1遊星歯車機構7のキャリア73の回転に連動して回転する。すなわち、太陽歯車81は、第1遊星歯車機構7のキャリア73の回転に伴い、第1遊星歯車機構7のキャリア73と同じ回転方向に、第1遊星歯車機構7のキャリア73と同じ回転速度で回転する。
【0065】
遊星歯車82は、外周面に遊星歯部が形成された外歯車である。複数の遊星歯車82は、太陽歯車81と第2内歯車部56との間に等間隔に配置され、太陽歯車81と第2内歯車部56の双方に噛み合う。複数の遊星歯車82は、本実施の形態では、第2遊星歯車機構8の軸を中心とした同一の円上に配置され、キャリア83の遊星軸86に回転可能に支持されている。遊星歯部は、本実施の形態では、遊星歯車82の軸に対して斜めに切られた螺旋状の歯を有し、本実施の形態の遊星歯車82は、所謂、はすば歯車である。
【0066】
遊星歯車82はそれぞれ、太陽歯車81の回転に基づいて、自身の中心軸(遊星軸86)を中心に回転する。また、遊星歯車82はそれぞれ、それ自体の回転及び第2内歯車部56との噛合に基づいて、太陽歯車81の周りを公転する。遊星歯車82の公転の中心軸は、太陽歯車81の中心軸に一致してよい。
【0067】
キャリア83は、遊星歯車82を回転可能(自転可能)に支持する。加えて、キャリア83は、遊星歯車82の公転に基づいて回転し、回転を出力軸87に伝達する。
【0068】
キャリア83は、本実施の形態では、歯車保持部84と、出力軸87を保持する出力保持部85とを有する。
【0069】
歯車保持部84は、遊星歯車82を保持するものであり、円筒状に形成されている。歯車保持部84の外周面には、収容開口(図示省略)が形成され、収容開口内に、遊星歯車82を収容している。遊星歯車82のそれぞれは、収容開口内で軸線方向に向けられた遊星軸86により回転可能に支持されている。遊星歯車82は、本実施の形態では、一部が収容開口から径方向外方に突出しており、キャリア83の外周面から突出した状態で取り付けられている。これにより、遊星歯部は、第2内歯車部56の歯部と噛み合う。
【0070】
出力保持部85は、歯車保持部84より他方側(出力側)に歯車保持部84に連続して設けられている。出力保持部85は、歯車保持部84よりも小径の円筒状に形成されており、出力保持部85の径方向における内側には、出力軸87が固定されている。
【0071】
出力軸87は、軸状に形成され、本実施の形態では、キャリア83に保持され、キャリア83とともに回転する。出力軸87は、出力側の端部の外周にローレット形状の歯を有する。これら歯は、出力軸87の端部に出力歯車を形成している。
【0072】
<アクチュエータ1の動作>
以下に、アクチュエータ1の動作の一例について説明する。先ず、
図1に示すモータ2が作動すると、回転軸22が、第1方向又は第2方向に回転する。以下、回転軸22が第1方向に回転した場合について説明する。
【0073】
なお、以下の説明において、各部材の回転方向に関する第1方向とは、各部材を軸方向(X及びX軸に平行な方向)における他方(
図1における左側)から見た場合の、時計回りの方向を意味する。一方、以下の説明において、各部材の回転方向に関する第2方向は、各部材を軸方向における他方(
図1における左側)から見た場合の、時計回りの方向と反対の方向を意味する。
【0074】
回転軸22が第1方向に回転すると、回転軸22の回転に伴い、太陽歯車71が第1方向に回転する。太陽歯車71の回転に伴い、太陽歯車71と噛み合った3つの遊星歯車72がそれぞれ、自身の中心軸(遊星軸86)を中心に、第2方向に回転(自転)する。また、遊星歯車72は、遊星歯車72の自転、及び、遊星歯車72と第1内歯車90との噛合に基づいて、太陽歯車71の回転中心軸を中心に、第1方向に回転(公転)する。遊星歯車72の回転(公転)に伴い、キャリア73は、自身の中心軸(太陽歯車71の中心軸に一致する中心軸)を中心に第1方向に回転する。
【0075】
このように、キャリア73が第1方向に回転すると、キャリア73に固定された太陽歯車81が第1方向に回転する。太陽歯車81が第1方向に回転するのに伴い、太陽歯車81と噛み合った3つの遊星歯車82がそれぞれ第2方向に回転(自転)する。また、遊星歯車82は、第2内歯車部56と噛み合っていることから第2方向に回転(自転)し、この回転により、遊星歯車82は、第2遊星歯車機構8の中心軸の周りを第1方向に回転(公転)する。遊星歯車82の第1方向への回転(公転)に伴い、キャリア83は、自身の中心軸を中心に第1方向に回転(自転)する。そして、キャリア83の回転は、キャリア83に保持された出力軸87に伝達される。
【0076】
アクチュエータ1の動作の一例として、回転軸22が第1方向に回転した場合について説明したが、回転軸22を第2方向に回転させた場合には、各歯車の回転方向が反対になるだけで同様にアクチュエータ1の動作を説明することができる。
【0077】
上述したように、遊星歯車装置では、構造体10において、ハウジング本体4と、第1内歯車90とは物理的に分離されている。そして、アクチュエータ1が作動していない場合、ハウジング本体4(第1ハウジング要素)と第1内歯車90との間には隙間が形成されている。そして、アクチュエータ1が作動すると、第1内歯車90は、設けられた隙間の分だけハウジング本体4内でクラウニング面に沿って、軸線回りの回転や軸線に直交する方向への移動が許容される。
【0078】
第1内歯車90が、第2凸部45と第1凸部95とが周方向で離間した位置で、第1方向(時計回り)に回転したとすると、第1内歯車90に形成された第1凸部95が、ハウジング本体4に形成された対応する第2凸部45に点接触或いは線接触する。これにより、第1内歯車90はこれ以上時計回りに回転することができなくなるが、第1歯車90は、その軸線が、ハウジング本体4の軸線に対して、傾き可能にハウジング本体4の第1ハウジング要素40に保持される。なお、第2凸部45は本実施形態では、対で形成されていることから、第1内歯車90が第2方向(反時計回り)に回転した場合であっても同様に線接触し、第1内歯車90の軸線回りの回転が制限されつつ、傾き可能に保持される。
【0079】
図9は、遊星歯車装置3に組み込まれた構造体10の作用の説明に供する縦断面図である。本実施の形態では、第1内歯車90の外周面92と第1円筒体44の内周面46とは双方ともクラウニング面であり、互いに抜けにくく全方向に相対移動可能となっている。
【0080】
図9に示すように、本実施の形態では、モータ2が駆動して、遊星歯車機構6が作動すると、遊星歯車82との歯合などにより、第1内歯車90は、第1ハウジング要素40の第1円筒体44内で移動する。これにより、第1凸部95が周方向で第2凸部45に接触する。第1内歯車90は、第1凸部95及び第2凸部45の点接触或いは線接触により、周方向への移動を制限されつつ、全方向に移動可能となっている。
【0081】
これにより、第1内歯車90と噛み合う遊星歯車72を支持するキャリア73の軸線がハウジング本体4(第1ハウジング要素40)の軸線に対して傾く場合等のアライメントの誤差がある場合でも、傾きに対応して遊星歯車との好適な噛み合いを実現できる。よって、本実施の形態によれば、歯車どうしのアラインメント誤差に対するロバスト性の向上を図ることができ、内歯車側からの振動の伝達及び遊星歯車装置から発生する騒音を抑制することができる。
【0082】
なお、第1ハウジング要素40、ハウジング本体4を形成する合成樹脂としては、リアリレート(PAAR)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。第1内歯車90と、第1円筒体44を含む第1ハウジング要素40を形成する合成樹脂は、同じ材料であってもよく、異なる材料であってもよい。本発明の効果を奏する範囲において適宜選択することができる。また、第1円筒体44と第1内歯車90を形成する合成樹脂材料(材料)に関しては、主成分が同じ合成樹脂材料を用いて、合成樹脂の密度等を変えて、第1円筒体44を形成する合成樹脂の方が硬くなるようにすることが望ましい。
【0083】
(変形例)
この発明は、上記実施の形態に限定されず、様々な変形及び応用が可能である。上記の実施形態では、第1ハウジング要素40と第1内歯車90とを有する構造体10の構成において、第1ハウジング要素40の第1円筒体44の内周面46と、第1円筒体44内に収容する第1内歯車90の外周面92の双方をクラウニング形状の面とした。
【0084】
ここで、第1ハウジング要素40と第1内歯車90は、第1凸部95及び第2凸部45の点接触或いは線接触により、第1内歯車90を、第1ハウジング要素40の軸線に対して、第1内歯車90の軸線が傾斜するように移動可能に支持するものであれば、どのように構成されてもよい。
【0085】
以下、
図10~
図23に構造体の変形例を示す。各変形例の説明では、ハウジング本体4及び第1内歯車90と異なる構成について説明し、同様の構成要素については同名称同符号を付して説明は省略する。
【0086】
図10~
図14に示す変形例1としての構造体10Aは、構造体10の構成において、第1ハウジング要素(ハウジング)40の第2凸部45と、第1内歯車90の第1凸部95とを逆に設けている。すなわち、対の第1凸部95A間に第2凸部45Aが入り込む形状となっている。
【0087】
第1内歯車90Aは、軸線方向に延在する外周面92Aを有する。外周面92Aは、第1内歯車90と同様に径方向外方に突出するクラウニング面であり、外周面92Aに、第2凸部45と同様に構成される第1凸部95Aが軸線方向に延在して形成されている。
【0088】
第1凸部95Aの先端部は、外周面92Aに対で設けられ、軸線方向の中央部分が周方向で互いに対向する方向に突出する凸状に形成されている。
【0089】
一方、第1内歯車90Aを囲むように第1ハウジング要素40Aが配置され、第1ハウジング要素40は、第1内歯車90Aの外周面92Aに対向して隙間を空けて配置される内周面46Aを有する。内周面46Aは、第1円筒体44Aに設けられ、内周面46と同様に径方向外方に窪む凹状のクラウニング面である。内周面46Aは、内周面46と同様に軸線方向に延在する第2凸部45Aを有する。第2凸部45Aは、第1凸部95と同様に設けられたものである。変形例1における第2凸部45Aは、断面三角形状で軸線方向に同形状が連続するように形成される。
【0090】
第1ハウジング要素40A内において、遊星歯車装置3の作動に伴い、第1内歯車90Aが、周方向に回転すると、対の第1凸部95A間に第2凸部45Aが入り込み、上述した構造体10と同様の効果をうることができる。
【0091】
また、
図15~
図19に示す変形例2の構造体10Bの第1ハウジング要素40Bでは、第1ハウジング要素40の構成における対の第2凸部45の形状を、軸線方向に互いに並行に延在する第2凸部45Bとしている。第1ハウジング要素40Bの第1筒状体44Bの内周面46Bは、軸線方向中央部が最も窪む凹状のクラウニング面である。第2凸部45Bは、クラウニング面である内周面46Bから同じ高さで断面同じ形状で延在するように対で設けられている。
【0092】
一方、第1内歯車90Bは、第1内歯車90と比較して、外周面をクラウニング面とせず、軸線と平行な円筒状の外周面92Bとしている。この外周面92Bの軸線方向の中央部分には、第1凸部として、突起部95Bが径方向外方に突出して設けられている。
【0093】
突起部95Bは、錐体であり、尖鋭形状の頭頂部を有する。突起部95Bは、第1ハウジング要素40Bのクラウニング面である内周面46Bと接触可能となっている。
【0094】
構造体10Bが
図15に示す状態であっても、第1内歯車90Bは、遊星歯車装置3の作動により第1内歯車90B内を移動すると、周方向に移動して、突起部95Bが対の第2凸部45B間に入り込む等して、第2凸部45Bに点接触または線接触する。変形例2の構造体10Bでは、第1内歯車90の外周面及び第1ハウジング要素40の内周面の双方をクラウニング面にしていない。この構成において、第1ハウジング要素40Bが、第1内歯車90Bを、第1ハウジング要素40Bの軸線に対して、第1内歯車90Bの軸線が傾斜するように、移動可能に支持できる。
【0095】
図20~
図22に示す構造体の変形例3の構造体10Cは、構造体10と比較して、第1ハウジング要素(ハウジング)40の第2凸部45と、第1内歯車90の第1凸部95の形状が異なる。
【0096】
第1内歯車90Cは、軸線方向に延在する外周面92Cを有する。外周面92Cは、第1内歯車90と同様に径方向外方に突出するクラウニング面である。外周面92Cには、径方向外方に突出し、且つ、軸線方向に延在する対の第1凸部95Cが形成されている。
【0097】
第1凸部95Cは、
図22に示すように、軸線方向のいずれの箇所でも断面三角形状で大きさが変わりなく高さを外周面92Cから同じとなるように形成されている。対の第1凸部95Cは、外周面92Cにおいて互いに平行に設けられている。
【0098】
一方、第1内歯車90Cを囲むように第1ハウジング要素40Cが配置され、第1ハウジング要素40Cは、第1内歯車90Cの外周面92Cに対向して隙間を空けて配置される第1筒状体44Cの内周面46Cを有する。内周面46Cは、内周面46と同様に径方向外方に窪む凹状のクラウニング面であり、外周面92Cに対応している。
【0099】
内周面46Cは、内周面46の構成と同様に軸線方向に延在する第2凸部45Cを有する。
第2凸部45Cは、クラウニング面に軸線方向で延在するように設けられている。
【0100】
第2凸部45Cは、第1内歯車90Cにおける対の第1凸部95C間に入り込み、周方向で点接触或いは線接触する。
【0101】
第2凸部45Cは、
図21に示すように、軸線方向に垂直な断面が三角形状であり、つまり、断面三角形状の突条体であり、軸線方向の中央部分の幅が太くなるように形成されている。これにより、第2凸部45Cは、周方向で第1凸部95Cに当接する際には、まず、周方向に張り出した中央部分で当接する。
【0102】
また、第2凸部45Cは、対の第1凸部95C間に入り込むと、中央部分で第1凸部95Cに点接触或いは線接触する。これにより、第1内歯車90Cの軸線が第1ハウジング要素40の軸線に対して傾いた状態であっても、第1内歯車90Cと、遊星歯車72とを好適に歯合させることができ、アラインメント誤差に対するロバストネス(ロバスト性)の向上を一層はかることができる。
【0103】
なお、上記実施の形態及び変形例1、3の構造体10、10A、10Cでは、第1内歯車90、90A、90Cの外周面92、92A、92Cと、第1ハウジング要素40、40A、40Cの内周面46、46A、46Cの双方をクラウニング面としている。このような構成では、互いの遊嵌度合い、つまり、隙間の大きさを調整することにより、第1ハウジング要素の収容空間への第1内歯車の径方向の移動を規制できる。
【0104】
例えば、
図23に示す変形例4の構造体10Dでは、第1ハウジング要素40Dの内周面46Dと、第1内歯車90D(便宜上、ハッチングで示す)の外周面92Dとをクラウニング面として、第1ハウジング要素40D内に第1内歯車90Dを収容している。これにより、第1内歯車90Dは、双方のクラウニング面により、第1ハウジング要素40Dに対して他方側(+X側)を含む軸方向の移動が制限されることになる。なお、第1円筒体44D、第2凸部45D、第1凸部95Dは、例えば、第1円筒体44、第2凸部45、第1凸部95と同様に構成、機能を有する。
【0105】
よって、例えば、第1内歯車において、Pで示す他方側の開口端面に、ハウジング内でハウジングの端面に当接する凸部を設ける必要が無い。なお、上述した変形例1~4の構造体10A~10Dは、それぞれ、構造体10に替えることで、遊星歯車装置3及び遊星歯車装置3が組み込まれたアクチュエータ1を実現できる。
【0106】
このように構造体10、10A~10Dに示すように、第1内歯車(内歯車)の外周面と第1ハウジング要素(ハウジング)の内周面のうち少なくとも一方にクラウニング面を有する。また、外周面の第1凸部と内周面の第2凸部のうちのすくなくとも一方において、他方に周方向で接触する部分が、周方向で点接触或いは線接触で接触するように凸状の湾曲した部分で構成されるものであれば、どのような形状で構成されてもよい。この接触により、第1内歯車は、第1ハウジング要素内において周方向への移動が制限された状態で、第1内歯車の軸線が第1ハウジング要素の軸線に対して傾いた状態でも、歯車機構における第1内歯車としての機能を損なうこと無く第1ハウジング要素により収納される。
【0107】
また、ハウジング本体4は、遊星歯車装置の一部として用いられる場合について説明したが、その用途は限定されず他の歯車機構の一部として用いてもよい。
【0108】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係る遊星歯車装置及びアクチュエータは、種々の機械装置に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0110】
1 アクチュエータ
2 モータ
3 遊星歯車装置
4 ハウジング本体
5 ハウジング
6 遊星歯車機構
7 第1遊星歯車機構
8 第2遊星歯車機構
10、10A、10B、10C、10D 構造体
21 モータ本体
22 回転軸
31a 開口
40、40A、40B、40C、40D 第1ハウジング要素(ハウジング)
40a 開口端面部
41 接続蓋体
42 係合部
57a 開口
44、44A、44B、44C、44D 第1円筒体
45、45A、45B、45C 第2凸部
46、46A、46B、46C 内周面
50 第2ハウジング要素
54 第2円筒体
56 第2内歯車部
57 開口閉塞部
71、81 太陽歯車
71a 太陽歯部
72、82 遊星歯車
72a 遊星歯部
73、83 キャリア
76、86 遊星軸
81a 太陽歯部
84 歯車保持部
85 出力保持部
87 出力軸
87a 歯車
90、90A、90B、90C、90D 第1内歯車(内歯車)
91 内歯部
92、92A、92B、92C、92D 外周面
95、95A、95C、95D 第1凸部
95a 斜辺部
95b 頂部
95B 突起部