IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱源制御システムおよび熱源制御方法 図1
  • 特許-熱源制御システムおよび熱源制御方法 図2
  • 特許-熱源制御システムおよび熱源制御方法 図3
  • 特許-熱源制御システムおよび熱源制御方法 図4
  • 特許-熱源制御システムおよび熱源制御方法 図5
  • 特許-熱源制御システムおよび熱源制御方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】熱源制御システムおよび熱源制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/47 20180101AFI20231030BHJP
   F24F 11/64 20180101ALI20231030BHJP
   F24F 11/70 20180101ALI20231030BHJP
   F24F 140/60 20180101ALN20231030BHJP
【FI】
F24F11/47
F24F11/64
F24F11/70
F24F140:60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020001492
(22)【出願日】2020-01-08
(65)【公開番号】P2021110487
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-083058(JP,A)
【文献】特開2014-152984(JP,A)
【文献】特開2002-195684(JP,A)
【文献】特開2016-006355(JP,A)
【文献】特開2018-189313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/47
F24F 11/64
F24F 11/70
F24F 140/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱源機を制御するシステムであって、熱源コントローラーと、中央制御装置とを備え、
前記熱源コントローラーが、
2次側熱負荷の変動に応じて、前記中央制御装置から指示された起動順位に従い、前記熱源機の稼働台数を増減する台数制御部と、
前記中央制御装置から受信した停止指示に基づき、指示された前記熱源機を停止させる停止制御部と、
を有し、
前記中央制御装置が、
前記起動順位の組み合わせを複数含む起動順位テーブルを記憶する記憶部と、
単位時間毎の前記各熱源機の各出力の予定を定めた第1運転計画に基づき前記起動順位テーブルから選択した1の前記組み合わせと、前記第1運転計画に基づき決定した前記停止指示の対象期間とを定めた第2運転計画を作成する第2運転計画作成部と、
前記第2運転計画に基づき前記熱源コントローラーに対して前記起動順位の指示と前記停止指示とを送信する指示送信部と
を有する
熱源制御システム。
【請求項2】
前記第2運転計画作成部は、前記第2運転計画を作成する際に、前記第1運転計画において稼働コストを抑えるよりも消費電力を抑えるように前記出力の設定がなされている期間に対して、前記消費電力がより小さく前記稼働コストがより大きい前記熱源機の前記起動順位が、前記消費電力がより大きく前記稼働コストがより小さい前記熱源機の前記起動順位よりも優先されている前記組み合わせを前記起動順位テーブルから選択する
請求項1に記載の熱源制御システム。
【請求項3】
前記第1運転計画は、前記熱源機以外を含む所定の電力負荷の前記単位時間毎の予測値を含み、
前記第2運転計画作成部は、前記第2運転計画を作成する際に、前記単位時間毎に、前記第1運転計画において、前記消費電力がより小さく前記稼働コストがより大きい前記熱源機(第1熱源機とする)に前記出力の設定が無く、かつ、前記熱源機以外を含む所定の電力負荷の予測値が所定の第1閾値未満で、かつ、前記2次側熱負荷の予測値が所定の第2閾値未満である期間を、前記第1熱源機に対する前記停止指示の対象期間とする
請求項2に記載の熱源制御システム。
【請求項4】
前記第1閾値が目標電力デマンドに対して所定の第1余裕量を有するように設定され、
前記第2閾値が前記第1熱源機以外の前記熱源機の能力に対して所定の第2余裕量を有するように設定されている
請求項3に記載の熱源制御システム。
【請求項5】
複数の熱源機を制御する方法であって、
熱源コントローラーと、中央制御装置とを用いて、
前記熱源コントローラーにおいて、
2次側熱負荷の変動に応じて、前記中央制御装置から指示された起動順位に従い、前記熱源機の稼働台数を増減するステップと、
前記中央制御装置から受信した停止指示に基づき、指示された前記熱源機を停止させるステップと、
前記中央制御装置において、
単位時間毎の前記各熱源機の各出力の予定を定めた第1運転計画に基づき前記起動順位の組み合わせを複数含む起動順位テーブルから選択した1の前記組み合わせと、前記第1運転計画に基づき決定した前記停止指示の対象期間とを定めた第2運転計画を作成するステップと、
前記第2運転計画に基づき前記熱源コントローラーに対して前記起動順位の指示と前記停止指示とを送信するステップと
を含む熱源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源制御システムおよび熱源制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空調熱源機、発電機、蓄電池などの設備機器の運転計画を、数理計画法などの最適化手法を用いて最適化し、電力デマンドを目標に押えつつ、システム全体で省エネ・省コスト運転する手法が提案されている(例えば特許文献1)。この手法を用いると30分や1時間などの単位時間ごとに各機器が定格出力の何%で稼動するのかという最適解が求まる。
【0003】
一方、空調熱源機(以下、熱源機という)は現状、システム保護や性能保全のため熱源コントローラーという自動制御機器が用いられている(例えば特許文献2の「従来技術」の欄)。熱源コントローラーは制御メーカーにより汎用化されており、コスト・システム設計の面で使用が必須化される場合がある。
【0004】
熱源コントローラーの主な機能としては以下のものがある。(1)システム保護:メンテナンス実行中の熱源機、故障熱源機の除外、ローテーションによる運転時間の均一化。(2)性能保全:2次側熱負荷の変動による台数制御(必要な熱源機のみ稼働させるために自動の増減段)、送水温度上昇時に自動増段、戻り温度低下時に自動減段。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5696877号公報
【文献】特開平8-42933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した熱源コントローラーは熱源機を台数制御によって運転する。台数制御ではあらかじめ起動順位が決められており、起動順位に従って2次側熱負荷処理に必要な台数が起動される。また、各熱源機の出力は例えば均等割りとなる。また、起動順位は例えば固定で変動しない。この例において、例えば冷水負荷250kW、A機:定格出力130kW、B機:定格出力100kW、C機:定格出力90kW、D機70kW、起動順位A→B→C→Dの場合、A機、B機、C機の順に起動され、各機の出力%=250/(130+100+90)=78%となり、全機同一割合での出力となってしまう。ここで、出力%は、定格出力に対する出力の割合を表す。これに対し、運転計画の最適解は任意の熱源機が任意の出力で運転する解として求められる。このため、上述した熱源コントローラーでは最適解通りの運転が不可能である。例えば時刻10:00にA機:130kW、B機:100kW、D機:20kW、時刻10:30にB機:100kW、C機:90kW、D機:60kWとなるような計画に対して、上述した熱源コントローラーでは対応することができない。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、上述した熱源コントローラーを用いて、できるだけ最適解に近い運転を行うことができる熱源制御システムおよび熱源制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、複数の熱源機を制御するシステムであって、熱源コントローラーと、中央制御装置とを備え、前記熱源コントローラーが、2次側熱負荷の変動に応じて、前記中央制御装置から指示された起動順位に従い、前記熱源機の稼働台数を増減する台数制御部と、前記中央制御装置から受信した停止指示に基づき、指示された前記熱源機を停止させる停止制御部と、を有し、前記中央制御装置が、前記起動順位の組み合わせを複数含む起動順位テーブルを記憶する記憶部と、単位時間毎の前記各熱源機の各出力の予定を定めた第1運転計画に基づき前記起動順位テーブルから選択した1の前記組み合わせと、前記第1運転計画に基づき決定した前記停止指示の対象期間とを定めた第2運転計画を作成する第2運転計画作成部と、前記第2運転計画に基づき前記熱源コントローラーに対して前記起動順位の指示と前記停止指示とを送信する指示送信部と
を有する熱源制御システムである。
【0009】
また、本発明の一態様は、複数の熱源機を制御する方法であって、熱源コントローラーと、中央制御装置とを用いて、前記熱源コントローラーにおいて、2次側熱負荷の変動に応じて、前記中央制御装置から指示された起動順位に従い、前記熱源機の稼働台数を増減するステップと、前記中央制御装置から受信した停止指示に基づき、指示された前記熱源機を停止させるステップと、前記中央制御装置において、単位時間毎の前記各熱源機の各出力の予定を定めた第1運転計画に基づき前記起動順位の組み合わせを複数含む起動順位テーブルから選択した1の前記組み合わせと、前記第1運転計画に基づき決定した前記停止指示の対象期間とを定めた第2運転計画を作成するステップと、前記第2運転計画に基づき前記熱源コントローラーに対して前記起動順位の指示と前記停止指示とを送信するステップとを含む熱源制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の各態様によれば、単位時間毎の各熱源機の各出力の予定を定めた第1運転計画(例えば最適解)に基づいて設定した起動順位と停止期間に従い、熱源コントローラーが複数の熱源機を制御することになるので、各熱源機をより第1運転計画に近い状態で運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る空調システムの構成例を示す構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る起動順位テーブルの構成例を示す構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る運転計画の例を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る運転計画の例を示す模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る処理の流れを示す模式図である。
図6】本発明の一実施形態に係るシステムの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る空調システム100の構成例を示す構成図である。図1に示す空調システム100は、熱源制御システム1と、第1運転計画作成装置4と、熱源システム5とを備える。熱源制御システム1は、中央制御装置2と、熱源コントローラー3とを備える。熱源システム5は、2次側負荷51と、熱源機52と、熱源機53と、1次ポンプ54と、1次ポンプ55と、温度センサ56と、温度センサ57と、流量センサ58と、ヘッダ61と、ヘッダ62と、配管63と、配管64とを備える。
【0014】
2次側負荷51は、熱源機52および熱源機53に対して熱負荷となる空調機等の複数の機器から構成される。2次側負荷51へは、熱源機52および熱源機53で製造された冷水または温水がヘッダ61および配管63を介して供給される。また、2次側負荷51を通った冷水または温水は、配管64、ヘッダ62、および1次ポンプ54または1次ポンプ55を介して、熱源機52または熱源機53へ戻される。
【0015】
熱源機52および熱源機53は、冷凍機、冷温水機、ヒートポンプなどの熱源機(熱源機器)であり、2次側負荷51に対して配管63、配管64等を介して供給される冷水または温水の出口温度を、所定の温度に制御する。また、熱源機52および熱源機53は、熱源コントローラー3から送られてくる所定の制御信号に応じて、起動または停止する。
【0016】
なお、本実施形態において、熱源機52は、電力が主要な動力源である空冷ヒートポンプであるとする。また、熱源機53は、ガスが主要な動力源であるガス吸収式冷温水機であるとする。また、熱源機52は、熱源機53と比較して、消費電力がより大きく稼働コストがより小さい熱源機であるとする。また、熱源機53は、熱源機52と比較して、消費電力がより小さく稼働コストがより大きい熱源機であるとする。
【0017】
温度センサ56は、ヘッダ61から配管63を介して2次側熱負荷51へ送られる冷水または温水の温度(2次側往温度)を検知し、検知した温度を示す信号を熱源コントローラー3に対して出力する。温度センサ57は、2次側熱負荷51から配管64を介してヘッダ62へ送られる冷水または温水の温度(2次側還温度)を検知し、検知した温度を示す信号を熱源コントローラー3に対して出力する。流量センサ58は、配管64に流れる冷水または温水の流量を検知し、検知した流量を示す信号を熱源コントローラー3に対して出力する。
【0018】
1次ポンプ54は、ヘッダ62から熱源機52へ冷水または温水を送水する。1次ポンプ55は、ヘッダ62から熱源機52へ冷水または温水を送水する。1次ポンプ54と1次ポンプ55は、熱源コントローラー3から送られてくる所定の制御信号に応じて、起動または停止したり、内部のモータの回転数を制御したりする。
【0019】
熱源コントローラー3は、PLC(Programmable Logic Controller;プログラマブルロジックコントローラ)等のコンピュータを有する制御装置を用いて構成され、そのコンピュータ、そのコンピュータの周辺装置等からなるハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせで構成される機能的構成として、通信部31、台数制御部32、停止制御部33、および、入出力部34を備える。
【0020】
通信部31は、中央制御装置2から、熱源機52および熱源機53の起動順位を指示するための信号、熱源機52および熱源機53の停止を指示するための停止指示を受信したり、中央制御装置2に対して、熱源システム5で検知された温度、流量等を示すデータを送信したりする。
【0021】
台数制御部32は、2次側熱負荷の変動に応じて、中央制御装置2から指示された起動順位に従い、熱源機52および熱源機53のうちから稼働する台数を増減する。台数制御部32は、例えば、温度センサ56が検知した温度と、温度センサ57が検知した温度と、流量センサ58が検知した流量とに基づき、起動順位に従い、稼働する熱源機の台数を0、1または2台に変更する。
【0022】
停止制御部33は、中央制御装置2から受信した停止指示に基づき、停止指示が有効な時間、指示された熱源機52もしくは熱源機53または両方を停止させる(起動させない)。
【0023】
入出力部34は、温度センサ56から検知した温度を示す信号、温度センサ57が検知した温度を示す信号、および、流量センサ58が検知した流量を示す信号を入力するとともに、熱源機52および熱源機53に対して起動または停止を指示する所定の制御信号と、1次ポンプ54および1次ポンプ55に対して起動もしくは停止または回転数を指示する所定の制御信号を出力する。
【0024】
一方、第1運転計画作成装置4は、サーバー、パーソナルコンピューター等のコンピュータであり、単位時間毎(例えば30分毎)の熱源機52および熱源機53の各出力の予定(予測)を定めた第1運転計画を作成する。第1運転計画作成装置4は、例えば、特許文献1に記載されているように、省エネ、省コストまたは省CO2(二酸化炭素)を図り、かつ、電力デマンド制約を満たすように、数理計画法などによって、第1運転計画を作成する。各出力の予定値は、その値で運転された場合が最適であるという値であり、運転出力の目標となる値である。なお、第1運転計画は、例えば、単位時間毎の所定の電力負荷の予測値を含んでいてもよい。ここで、所定の電力負荷(電力を消費する装置)は、電力デマンド(契約電力やデマンドリスポンスによる電力抑制)の対象となる電力負荷であり、例えば、熱源機52および熱源機53が有する電力負荷、1次ポンプ54および1次ポンプ55が有する電力負荷、2次側熱負荷51が有する電力負荷、2次側熱負荷51が設置されている施設が備える機器や設備が有する電力負荷を含む。また、所定の電力負荷は、熱源機52および熱源機53が有する電力負荷や1次ポンプ54および1次ポンプ55が有する電力負荷を含んでいなくてもよい。また、第1運転計画は、例えば、単位時間毎の蓄電設備の充放電予定等を表す電源運転計画等を含んでいてもよい。
【0025】
図3および図4は、本実施形態に係る運転計画の例を示す模式図である。図3図4は、ある1日分(例えば翌日の0時から翌々日の0時(翌日の24時)まで)の運転計画(第1運転計画と、後述する第2運転計画および第3運転計画)の例を示す。図3図4に示す第1運転計画は、30分ごとの熱源機52(空冷ヒートポンプ)と熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の出力(%出力)の予定を定める。図3に示す例では、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の出力(%出力)の予定は終日0%である。図4に示す例では、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の出力(%出力)の予定は10時から16時の時間、0%より大きい値である。また、図3に示す例と図4に示す例では、0時から4時までと、23時以降は、熱源機52(空冷ヒートポンプ)と熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の出力(%出力)の予定はどちらも0%である。
【0026】
第1運転計画作成装置4は、例えば、図3および図4に示すような第1運転計画を示すファイルを作成し、作成された第1運転計画を示すファイルは、所定の記録媒体や通信回線を介して、中央制御装置2へ入力される。なお、第1運転計画作成装置4は、例えば、中央制御装置2に含まれる形態で構成されていてもよい。
【0027】
また、中央制御装置2は、サーバー、パーソナルコンピューター等のコンピュータを用いて構成され、そのコンピュータ、そのコンピュータの周辺装置等からなるハードウェアと、コンピュータが実行するプログラム等のソフトウェアとの組み合わせで構成される機能的構成として、通信部21、記憶部22、入力部23、第2運転計画作成部24、および、指示送信部25を備える。
【0028】
通信部21は、熱源コントローラー3に対して、熱源機52および熱源機53の起動順位を指示するための信号と、熱源機52および熱源機53の停止を指示するための停止指示を送信したり、熱源コントローラー3から、熱源システム5で検知された温度、流量等を示すデータを受信したりする。
【0029】
記憶部22は、熱源機52および熱源機53の起動順位の組み合わせを複数含む起動順位テーブルを記憶する。図2は、本実施形態に係る起動順位テーブルの構成例を示す構成図である。図2に示す起動順位テーブル22aは、熱源機52(空冷ヒートポンプ)を起動順位1として熱源機53(ガス吸収式冷温水機)を起動順位2とする組み合わせ(モード1)と、熱源機52(空冷ヒートポンプ)を起動順位2として熱源機53(ガス吸収式冷温水機)を起動順位1とする組み合わせ(モード2)を含む。なお、起動順位1は、起動順位2より優先して起動されることを意味する。
【0030】
入力部23は、第1運転計画作成装置4が作成した第1運転計画を示すファイル(データ)を入力する。
【0031】
第2運転計画作成部24は、単位時間毎の各熱源機52および53の各出力の予定を定めた第1運転計画に基づき、起動順位テーブル22aから選択した1の組み合わせ(モード1またはモード2)と、第1運転計画に基づき決定した各熱源機52および53の停止指示の対象期間とを定めた第2運転計画を作成する。
【0032】
図3および図4に示す例の場合、第2運転計画作成部24は、第1運転計画において24時間に熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の出力の予定が0%でない時間(0%より大きい時間)が含まれているとき(図4のとき)、図2の起動順位テーブル22aからモード2(熱源機53(ガス吸収式冷温水機)が優先)を選択し、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の出力の予定が終日、0%のとき(図3のとき)、起動順位テーブル22aからモード1(熱源機52(空冷ヒートポンプ)が優先)を選択する。
【0033】
この場合、第2運転計画作成部24は、第1運転計画において、24時間(1日の間)に、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の運転が予定されている時間が含まれている場合、その24時間が、第1運転計画において稼働コストを抑えるよりも消費電力を抑えるように出力の設定がなされている期間であるとして、消費電力がより小さく稼働コストがより大きい熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の起動順位が、消費電力がより大きく稼働コストがより小さい熱源機52(空冷ヒートポンプ)の起動順位よりも優先されている組み合わせ(モード2)を起動順位テーブル22aから選択する。他方、第2運転計画作成部24は、第1運転計画において、24時間の内に、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の運転が予定されている時間が含まれていない場合、その24時間が、第1運転計画において消費電力を抑えるよりも稼働コストを抑えるように出力の設定がなされている期間であるとして、消費電力がより大きく稼働コストがより小さい熱源機52(空冷ヒートポンプ)の起動順位が、消費電力がより小さく稼働コストがより大きい熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の起動順位よりも優先されている組み合わせ(モード1)を起動順位テーブル22aから選択する。本実施形態では、例えば、ガス熱源が動いていた日は、デマンド制約がかかったものと考え、モード2の起動順序を使用し、ガス熱源が動いていない日は空冷ヒートポンプが優先のモード1の起動順序を使用する。
【0034】
また、図3および図4に示す例の場合、第2運転計画作成部24は、第1運転計画において24時間のうち熱源機52(空冷ヒートポンプ)または熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の出力の予定がどちらも0%である時間を、熱源機52(空冷ヒートポンプ)と熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の両方に対する停止指示の対象期間であると定める。図3に示す例と図4に示す例では、0時から4時までと、23時以降が、停止指示の対象期間とされる。この場合、熱源機52(空冷ヒートポンプ)と熱源機53(ガス吸収式冷温水機)は、4時から23時まで起動可能となる。図3または図4に示す例の場合、熱源コントローラー3は、4時から23時まで、熱源機52(空冷ヒートポンプ)と熱源機53(ガス吸収式冷温水機)を、モード1の起動順位の組み合わせ(図3の例)またはモード2の起動順位の組み合わせ(図4の例)で運転(台数制御)する。
【0035】
また、第2運転計画作成部24は、例えば次のようにして、第2運転計画が含む熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の停止指示の対象期間を修正することができる。以下、修正された第2運転計画を第3運転計画という。第3運転計画は、修正前の第2運転計画に対して、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の起動可能時間をより限定した計画である。第3運転計画では、次の2条件が満たされる場合、停止指示の対象期間(停止期間)を追加する。1つ目の条件は、追加しようとする停止期間が、第1運転計画において熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の運転が予定されている時間に該当しないということである。2つ目の条件は、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)を運転しなくても、消費電力の予測値が電力デマンド(消費電力の制限要求)を満足でき、かつ、熱負荷の予測値を満足できることである。これらの条件が満足される時間については、第3運転計画において、修正前の第2運転計画に対して、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の停止指示の対象期間が追加される。なお、起動順位の組み合わせの指示と熱源機52(空冷ヒートポンプ)に対する停止指示については、第2運転計画と第3運転計画は同一である。
【0036】
図3および図4に示す第3運転計画は、一例として、上記の2つめの条件のうち、「消費電力の予測値が電力デマンド(消費電力の制限要求)を満足でき」るという条件を「電力予測値<目標デマンドの90%」とし、「熱負荷の予測値を満足できる」という条件を「熱負荷予測値が熱源機52(空冷ヒートポンプ)の能力の90%未満」であるとして、作成されている。すなわち、図3および図4に示す第3運転計画は、停止期間が、第1運転計画において熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の運転が予定されている時間に該当せず、かつ、電力予測値が目標デマンドの90%未満であり、かつ、熱源機52(空冷ヒートポンプ)の出力の予定値が90%未満である場合を、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)に対する停止期間の対象期間とすることで作成されている。なお、図3および図4に示す例では、すべての時間で電力予測値は目標デマンドの90%未満であるとする。図3に示す第3運転計画では、第1運転計画において熱源機52(空冷ヒートポンプ)の出力の予定値が90%以上である12時00分から12時30分を除く時間が、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)に対する停止指示の対象期間とされている。この場合、図3に示す第3運転計画によれば熱源コントローラー3は12時00分から12時30分まで熱源機53(ガス吸収式冷温水機)を起動することができる。
【0037】
一方、図4に示す例では、第1運転計画において熱源機52(空冷ヒートポンプ)の出力の予定値は90%以上となっていないが、10時から16時まで熱源機53(ガス吸収式冷温水機)の運転が予定されているので、第3運転計画において、10時から16時までを除く時間が、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)に対する停止指示の対象期間とされている。この場合、図4に示す第3運転計画によれば熱源コントローラー3は10時から16時まで熱源機53(ガス吸収式冷温水機)を起動することができる。
【0038】
以上をいいかえると、第2運転計画作成部24は、第2運転計画を作成する際に、単位時間毎に、第1運転計画において、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)(=消費電力がより小さく稼働コストがより大きい熱源機(第1熱源機とする))に出力の設定が無く、かつ、所定の電力負荷の予測値が所定の第1閾値未満、かつ、2次側熱負荷51の予測値が所定の第2閾値未満である期間を、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)(=第1熱源機)に対する停止指示の対象期間とすることで第2運転計画を修正する(第3運転計画を作成する)ことができる。ここで、所定の電力負荷は、例えば、熱源機52が有する電力負荷、1次ポンプ54が有する電力負荷、2次側熱負荷51が有する電力負荷、2次側熱負荷51が設置されている施設が備える機器や設備が有する電力負荷等を含む。所定の電力負荷の予測値は、例えば一部または全部を第1運転計画に含ませることができる。また、熱源機52が有する電力負荷と1次ポンプ54が有する電力負荷の予測値については、例えば、第2運転計画に基づいて運転された場合に予測される値としてもよい。ここで、第1閾値が目標電力デマンドに対して所定の第1余裕量を有するように設定され、第2閾値が第1熱源機以外の熱源機の能力に対して所定の第2余裕量を有するように設定することができる。例えば、所定の電力負荷の予測値が所定の第1閾値未満であることは、電力予測値が目標デマンドの90%未満であることとすることができ、この場合、第1余裕量は目標デマンドの10%である。また、2次側熱負荷51の予測値が所定の第2閾値未満であることは、例えば、熱負荷予測値が熱源機52(空冷ヒートポンプ)の能力(定格)の90%未満であることとすることができ、この場合、第2余裕量は能力の10%である。
【0039】
一方、指示送信部25は、第2運転計画作成部24が作成した第2運転計画または第3運転計画に基づいて、予定の実行の際に(予定の実行日に)起動順位を指示する信号を通信部21を介して熱源コントローラー3へ送信するとともに、例えば単位時間毎に熱源機52および熱源機53の停止させる(または起動可能とする)停止指示を通信部21を介して熱源コントローラー3へ送信する。
【0040】
次に、図5を参照して、図1に示す熱源制御システム1と第1運転計画作成装置4の処理の流れについて説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る処理の流れを示す模式図である。図5は、図1に示す熱源制御システム1と第1運転計画作成装置4において、第1運転計画~第3運転計画を作成する処理の流れを示す。
【0041】
図5に示す処理では、まず、第1運転計画作成装置4が、数理計画法で30分間隔1日分の第1運転計画を作成する(S11)。その際、第1運転計画作成装置4は、省エネ、省コストまたは省CO2を目標とし、電力デマンド制約を満たすように第1運転計画を作成する。
【0042】
次に、第2運転計画作成部24が、第1運転計画において%出力のある時間は運転するとした第2運転計画を作成する(S12)。このとき、第2運転計画作成部24は、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)が動いていた日は、デマンド制約がかかったものと考え、モード2の起動順序を選択し、熱源機53(ガス吸収式冷温水機)が動いていない日は熱源機52(空冷ヒートポンプ)が優先のモード1の起動順序を選択する。
【0043】
次に、第2運転計画作成部24が、第2運転計画から熱源コントローラー3が台数制御で運転した場合の熱源機消費電力と、熱源機以外の電力の電力予測値を算出する(S13)。ここで、熱源機以外の電力の電力予測値は、例えば、第1運転計画作成装置4が算出し、第1運転計画に含めておくことができる。
【0044】
次に、第2運転計画作成部24は、30分間隔で以下の条件を判定する(S14)。すなわち、第2運転計画作成部24は、「第1運転計画でガス吸収式冷温水機が運転されていない(S15)」かつ「電力予測値<目標デマンドの90%(S16)」かつ「熱負荷予測値<空冷ヒートポンプの能力の90%(S17)」の条件が満たされるか否かを判定し、条件を満たす30分間については、ガス吸収式冷温水機を除外することを決定する(S18)。
【0045】
第2運転計画作成部24は、S14の判定処理を繰り返すことで、30分間隔1日分の運転計画を修正する(第3運転計画を作成する)(S19)。第2運転計画作成部24は、モード2で熱源機53(ガス吸収式冷温水機)が動いていない時間帯は最適解では稼動しないほうが最適であるので予測負荷との安全率をみて除外設定をかけ停止させる。これは電力が目標デマンドを超えないための安全率と供給熱負荷不足ならないための安全率である。なお、閾値の90の数値は適宜変更する。この除外を加味した結果が第3運転計画となり、最終的な計画である。
【0046】
次に、図6を参照して、図1に示す空調システム100に対して、図示していない蓄電池と蓄電池を制御する蓄電池コントローラー7を加えた備えたシステムについて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係るシステムの構成例を示す模式図である。図6に示すシステムにおいて、図1に示す第1運転計画作成装置4(図6では不図示)は、熱源システム5が備える各熱源機に対する運転計画(第1運転計画)と、蓄電池コントローラー7が制御する各蓄電池に対する運転計画である電源運転計画(S110)とを、数理計画法(S105)を用いて、最適解(S106)として算出する。
【0047】
最適解(S106)を数理計画法(S105)によって算出する際に、第1運転計画作成装置4は、空調熱源以外電力負荷予測(S101)、空調負荷(冷房・暖房)予測(S102)、気象予測(S103)、蓄電池残量(S104)等を示す最新の情報を入力する。また、数理計画法(S105)による最適解(S106)の算出処理では、熱源・補機性能設定(S201)、原単位など条件設定(S202)、機器モデル(熱源機・電源機・負荷・買電)(S203)、熱・電力収支モデル(S204)、目的関数(S205)、制約条件(S206)等を表す各情報を予め定義しておく。そして、数理計画法(S105)による最適解(S106)の算出処理では、目標デマンドを守り、省エネ・省コスト・省CO2かつ空調負荷を満たす熱源・電源の運転計画が最適解(S106)として算出される。
【0048】
次に、図1に示す第2運転計画作成部24(図6では不図示)は、最適解(S106)に含まれている第1運転計画を熱源コントローラー3向けに変換することで熱源の運転計画(第2運転計画または第3運転計画)を作成する(S107)。そして、作成された熱源運転計画(第2運転計画または第3運転計画)(S108)に基づいて熱源コントローラー3が制御される。
【0049】
また、最適解(S106)が含む電源運転計画(S110)に基づいて蓄電池コントローラー7が制御される。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、設備の最適運転計画で求まる理想的な最適解を、現実にある自動制御システム(熱源コントローラー3と熱源システム5)に反映させることができる。すなわち、本実施形態によれば、例えば汎用の熱源コントローラー3の機能を使って、可能な限り最適解に近い運転を行うことができる。すなわち、本実施形態によれば、既存の熱源コントローラーを用いても、省エネ・省コストといった最適運転に近い運転が可能となる。
【0051】
なお、最適運転に基づく運転を行っても、熱源機の運転の信頼性を担保するメンテナンス実行中の機器、故障機器の除外、ローテーション(例えば同一種類の熱源機が複数台ある場合)による運転時間の均一化などのシステム保護、2次側熱負荷の変動による台数制御(必要な機器のみに自動の増減段)、送水温度上昇時に自動増段、戻り温度低下時に自動減段などの性能保全の機能を利用できる。
【0052】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して説明してきたが、具体的な構成は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、熱源機の台数や方式は、2台や2種類に限定されない。また、熱源コントローラー3は複数台であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態でコンピュータが実行するプログラムの一部または全部は、コンピュータ読取可能な記録媒体や通信回線を介して頒布することができる。
【符号の説明】
【0054】
100…空調システム、1…熱源制御システム、2…中央制御装置、3…熱源コントローラー、4…第1運転計画作成装置、5…熱源システム、21…通信部、22…記憶部、23…入力部、24…第2運転計画作成部、25…指示送信部、31…通信部、32…台数制御部、33…停止制御部、34…入出力部、51…2次側負荷、52、53…熱源機、54、55…1次ポンプ、56、57…温度センサ、58…流量センサ、61、62…ヘッダ、63、64…配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6