(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ヒンジキャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/22 20060101AFI20231030BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B65D51/22 110
B65D47/08 100
(21)【出願番号】P 2020011519
(22)【出願日】2020-01-28
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100186358
【氏名又は名称】齋藤 信人
(74)【代理人】
【識別番号】100191145
【氏名又は名称】佐野 整博
(72)【発明者】
【氏名】早川 茂
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-099317(JP,A)
【文献】実開平06-061747(JP,U)
【文献】特開2019-189324(JP,A)
【文献】特開2017-154757(JP,A)
【文献】特開2017-007729(JP,A)
【文献】特開2015-101401(JP,A)
【文献】特開平10-338253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/22
B65D 47/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着されるキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体に連設される上蓋とからなるヒンジキャップであって、
キャップ本体は、容器の口部に装着される装着部と、装着部の内方に延設される基壁と、基壁の内側に立設される注出筒と、注出筒の内周に連設される隔壁と、隔壁に破断可能な弱化部によって画成され、開口予定部となる開栓部とを備え、
開栓部は、弱化部を介して隔壁と連結する底壁と、底壁の上面に立設され
、開栓時に上蓋に引き上げられる引上部とを備え、
上蓋は、頂壁と、頂壁の周縁部に垂設される側周壁と、頂壁の下面から垂設されるシール筒とを備え、
注出筒は、内周側に、閉蓋時にシール筒の下端部が当接する段部が設けられ、
基壁には、
変形可能な薄肉部が設けられることを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
基壁の薄肉部は、装着部から注出筒に向けて上方に傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のヒンジキャップ。
【請求項3】
上蓋は、シール筒の外側の頂壁に薄肉部が設けられ、
基壁の薄肉部の厚さは、上蓋の薄肉部より薄く、弱化部よりも厚いことを特徴とする請求項1または2に記載のヒンジキャップ。
【請求項4】
引上部は、ヒンジと反対側の底壁に、ヒンジと反対側の弱化部の内側から立設され、開栓時に上蓋と係合して引き上げ可能であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のヒンジキャップ。
【請求項5】
上蓋は、シール筒の内側に係合部を設け、
引上部は、上部に突出部を設け、
突出部は、閉蓋時に係合部に係合されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のヒンジキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着して使用されるヒンジキャップに関し、とくに最初の開蓋時に弱化部を破断して上蓋側に移行する開栓部を有するヒンジキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、容器に装着されるキャップ本体と、キャップ本体にヒンジを介して連設された上蓋とからなるヒンジキャップにおいて、容器の密封性を確保するため、キャップ本体の隔壁の開口予定部にプルリングなどを形成した除去部を設けていた。
しかし、除去部を開口するために、上蓋を開けた後、プルリングなどを引っ張り上げて除去部を開栓する作業が必要となり、手間がかかるともに、力の弱い利用者にとっては開栓に苦労するという問題があった。
【0003】
そこで、開口予定部としての除去部をなくした場合には、内容液がヒンジキャップ内に入り込み易くなるなど、密封性に問題が生じるため、プルリングを省略し、開口予定部に立設された係合壁13を上蓋1から垂設された垂下片6に係合させて、上蓋1の開蓋とともに、係合壁13ごと引っ張り上げて切断部11(弱化部)を破断して開栓するヒンジキャップが従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のヒンジキャップでは、内容液が充填された容器を運搬する時に、倒立落下した場合には、係合壁に衝撃が加わって切断部(弱化部)を破断してしまい、ヒンジキャップとしての密閉性が損なわれてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決することを課題とし、内容液が充填された容器を運搬時に、倒立落下した場合における弱化部の破断を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、ヒンジキャップとして、容器の口部に装着されるキャップ本体と、ヒンジを介してキャップ本体に連設される上蓋とからなるヒンジキャップであって、キャップ本体は、容器の口部に装着される装着部と、装着部の内方に延設される基壁と、基壁の内側に立設される注出筒と、注出筒の内周に連設される隔壁と、隔壁に破断可能な弱化部によって画成され、開口予定部となる開栓部とを備え、開栓部は、弱化部を介して隔壁と連結する底壁と、底壁の上面に立設され、開栓時に上蓋に引き上げられる引上部とを備え、上蓋は、頂壁と、頂壁の周縁部に垂設される側周壁と、頂壁の下面から垂設されるシール筒とを備え、注出筒は、内周側に、閉蓋時にシール筒の下端部が当接する段部が設けられ、基壁には、変形可能な薄肉部が設けられることを特徴とする構成を採用する。
【0008】
ヒンジキャップの具体的実施形態として、基壁の薄肉部は、装着部から注出筒に向けて上方に傾斜していることを特徴とする構成、上蓋は、シール筒の外側の頂壁に薄肉部が設けられ、基壁の薄肉部の厚さは、上蓋の薄肉部より薄く、弱化部よりも厚いことを特徴とする構成、また、引上部は、ヒンジと反対側の底壁に、ヒンジと反対側の弱化部の内側から立設され、開栓時に上蓋と係合して引き上げ可能であることを特徴とする構成を採用する。
【0009】
ヒンジキャップのさらなる具体的実施形態として、上蓋は、シール筒の内側に係合部を設け、引上部は、上部に突出部を設け、突出部は、閉蓋時に係合部に係合されることを特徴とする構成を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒンジキャップは、内容液が充填された容器が倒立落下した場合にも、上記構成を有することにより、注出筒の段部にシール筒の下端部が当接しているため、弱化部への負荷が軽減されるとともに、キャップ本体の基壁の薄肉部が変形して弱化部が保護されるので、ヒンジキャップとしての密閉性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例のヒンジキャップを容器に装着し、閉蓋した状態を示す側面断面図である。
【
図3】実施例のヒンジキャップの製造直後の開蓋状態を示す図で、(a)は上面図で、(b)は側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のヒンジキャップを具体化した実施例を示した図面を参照して説明する。
【実施例】
【0013】
図1において、Aは容器、Bはキャップ本体、Cはヒンジ、DはヒンジCを介してキャップ本体Bに開閉可能に取り付けられた上蓋である。
容器Aは、上部に口部1を有し、口部1の外周面には、嵌合突条2が設けられている。
【0014】
キャップ本体Bは、
図1および
図3に示すように、容器Aの口部1に装着される装着部3と、装着部3の内縁上端から内方に延設される基壁4と、基壁4の縁端に立設される注出筒5とを備えている。
【0015】
装着部3は、周縁に係止突条6が設けられ、上蓋Dと係合する環状の蓋係合部7と、蓋係合部7の内周側から垂設される内筒8と、蓋係合部7の外周側から垂設される外周壁部9とから構成されている。
外周壁部9は、内周下部には容器Aの嵌合突条2と係合するための係合突部10が設けられている。
【0016】
装着部3と注出筒5との間の基壁4には、
変形可能な薄肉部4aが形成されるとともに、本実施例では、注出筒5側を高くする傾斜が設けられている。
注出筒5内には容器Aの口部1を密封する隔壁20が設けられ、隔壁20には、使用時に注出口を開口するために、破断可能な弱化部21によって画成される開栓部22が設けられている。
また、注出筒5の内周側には、
図2に示すように、段部11が設けられており、後述するシール筒33の下端部33aが閉蓋時に当接するように設けられている。
【0017】
開栓部22は、弱化部21を介して隔壁20に連結される底壁23と、底壁23の上面には、ヒンジCと反対側に、弱化部21の内側から引上部24が立設されている。
本実施例では、
図3(a)に示すように、引上部24は、筒状であり、ヒンジC側が丸く、また、ヒンジCと反対側は、ヒンジCと反対側の弱化部21近傍を頂点とする角張った形状をしており、また、引上部24のヒンジC側には、補強リブ26が設けられ、そうすることで、開栓時にヒンジCと反対側の弱化部21の破断を容易にする。
なお、引上部24は、持ち上げたときに破断可能となるものであれば、どのような形状・構造のものであってもよい。
【0018】
また、本実施例では、
図3(b)に示すように、引上部24の上部には、山形状の突出部28が設けられている。
突出部28は、下部が広がった台形状であり、ヒンジC側の上部は傾斜がなくなり、ほぼ直立している。
突出部28の上面は、本実施例では平面状であるが、丸くなっていても構わない。
【0019】
上蓋Dは、
図1および
図3に示すように、ヒンジCを介してキャップ本体Bの外周壁部9の外周上端に、回動自在に取着されており、頂壁30と、頂壁30の周縁部から垂設された側周壁31とを備えている。
頂壁30は、下面からシール筒33が垂設され、シール筒33は、
図2に示すように、閉蓋時に下端部33aがキャップ本体Bの注出筒5の段部11に当接するように設けられている。
シール筒33の下端部33aが段部11に当接することで、倒立落下の際に、弱化部21への負荷を軽減するとともに、基壁4の薄肉部4aが変形して弱化部21の破断を防止することができる。
なお、本実施例では、シール筒33の下端部33aの外周面が段部11の縦面に、また、下端部33aの下面部が段部11の横面に当接しており、両方に当接するのが好ましいが、どちらかに当接していればもう一方は近接するものであってもよい。
【0020】
本実施例では、上蓋Dのシール筒33の外側の頂壁30に変形可能な薄肉部30aが形成されており、薄肉部30aが変形して上蓋Dからの倒立落下時の衝撃を緩和することができる。
なお、本実施例における上蓋Dの薄肉部30aの厚さは0.5mm程度であり、また、弱化部21の厚さは0.18~0.2mmであり、基壁4の薄肉部4aの厚さは0.3~0.5mmとなっている。
基壁4の薄肉部4aの厚さは、上蓋Dの薄肉部30aより薄く、弱化部21より厚くなるようにすることが好ましい。
【0021】
また、頂壁30には、シール筒33の内側に係合部34が設けられるとともに、係合部34の上部に、係合部34の内周面と連通する係合穴部35が開口されている。
係合部34は、
図1に示すように、内周面は突出部28の下部外周面に合わせて傾斜している。
また、係合部34の上面は係止部36となり、係合穴部35の下面となるように形成されている。
本実施例では、閉蓋時において、突出部28の上部は、係合穴部35にまで達しており、
図1に示すように、溶融等による抜け止め加工によって、突出部28の上部が係合穴部35を埋めるように広げられ、突出部28は係合部34上面の係止部36によって係合される。
【0022】
なお、本実施例では、引上部24の上方に突出部28を設け、さらに上蓋Dに係合穴部35を設け、閉蓋時において、突出部28の上部を抜け止め加工することによって係合部34に係合させるものであるが、引上部24と係合部34との係合方法についてはどのようなものであってもよく、また、上蓋Dの係合穴部35もなくても構わない。
【0023】
側周壁31の下端部は、内周側に、キャップ本体Bの蓋係合部7の係止突条6と係合する係合凹部38が周設されている。
側周壁31のヒンジCと反対側の外周には、周方向に円弧状の把手部39が延設され、把手部39の中央部下面には指掛け部40が設けられている。
【0024】
なお、本実施例のヒンジキャップは、使用前の不正開封を防止するために、図示していないが、キャップ本体Bと上蓋Dとの間にシュリンクラベルや封緘部材等が設けられている。
また、図示していないが、縦方向引き裂きラインおよび周方向引き裂きラインの薄肉弱化部を設ける等により、容器Aからヒンジキャップを分別廃棄可能にする分別廃棄機構を設けてもよい。
【0025】
次に、本実施例の使用態様と作用効果について説明する。
一体成形で製造された本実施例のヒンジキャップは、
図3に示すように、開蓋した状態で得られ、上蓋DをヒンジCを介して回動して閉蓋状態にされる。
その際、引上部24の上部の突出部28は、上方が小さく、また、ヒンジC側の傾斜がなくなっているため、係合部34の中に簡単に入り込み、上部は係合穴部35に達するとともに、突出部28の下部外周は、係合部34の内周に当接する。
【0026】
また、シール筒33の下端部33aは、注出筒5の段部11に当接するとともに、キャップ本体Bの蓋係合部7と、上蓋Dの係合凹部38とが嵌合する。
さらに、本実施例では、閉蓋状態で、突出部28の上部は溶融等により抜け止め加工が施され、突出部28は係合部34に係合され、
図1に示す閉蓋状態となる。
次に、閉蓋されたヒンジキャップは、内容液が充填された容器Aに打栓して装着される。
【0027】
本発明のヒンジキャップは、内容液が充填された容器Aを運搬する際に、倒立落下するようなことがあっても、注出筒5に段部11が設けられ、シール筒33の下端部33aが当接しているため、弱化部21まで応力が及ばないように保護するとともに、基壁4に変形可能な薄肉部4aが形成されているので、薄肉部4aが変形することによって弱化部21の破断を防止することができる。
また、上蓋Dの頂壁30の薄肉部30aは、倒立落下の際に変形して衝撃を緩和する。
【0028】
本発明のヒンジキャップを最初に使用する際には、開蓋することによって、キャップ本体Bの隔壁20に設けられた弱化部21を破断して開栓することができる。
まず、上蓋Dの指掛け部40に手指を掛け、把手部39を持ち上げると、上蓋Dに係合された引上部24とともに、ヒンジCと反対側の底壁23が持ち上げられ、それによってヒンジCと反対側の弱化部21が破断し始め、さらに上蓋Dを持ち上げることにより、ヒンジC方向に弱化部21の破断が進み、最後にヒンジCに近い部分の弱化部21が破断され、開栓部22が隔壁20から除去されて、開栓部22の部分が開口部となって、容器A内の内容液の注出が可能となる。
【0029】
内容液の使用後に、上蓋Dをキャップ本体Bに再び閉蓋することで、上蓋Dのシール筒33の下端部33aは注出筒5の段部11に当接するとともに、キャップ本体Bの蓋係合部7と、上蓋Dの係合凹部38とが嵌合して、ヒンジキャップ内を再度密封することができ、繰り返し上蓋Dを開閉して使用することができる。
【0030】
なお、上記の本実施例では、ヒンジキャップの容器Aへの装着を打栓としているが、ねじによる螺着であっても構わない。
また、弱化部21はヒンジCと反対側もヒンジC側も同じ薄肉にしているが、ヒンジCと反対側を破断しやすいようにより薄肉にしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のヒンジキャップは、内容液が充填された容器が、運搬時に倒立落下した場合にも、弱化部の破断を防止することができる。
ヒンジキャップとしての密閉性が確保されるため、気密性の必要な内容液を収納する容器用のヒンジキャップとして広い範囲に応用できる。
【符号の説明】
【0032】
A 容器
B キャップ本体
C ヒンジ
D 上蓋
1 口部
2 嵌合突条
3 装着部
4 基壁
4a 薄肉部
5 注出筒
6 係止突条
7 蓋係合部
8 内筒
9 外周壁部
10 係合突部
11 段部
20 隔壁
21 弱化部
22 開栓部
23 底壁
24 引上部
26 補強リブ
28 突出部
30 頂壁
30a 薄肉部
31 側周壁
33 シール筒
33a 下端部
34 係合部
35 係合穴部
36 係止部
38 係合凹部
39 把手部
40 指掛け部