(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】光学積層フィルムの製造装置、及び光学積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20231030BHJP
B29C 63/02 20060101ALI20231030BHJP
B65H 23/34 20060101ALI20231030BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G02B5/30
B29C63/02
B65H23/34
B65H37/04 B
(21)【出願番号】P 2020040161
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】弁理士法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植敷 大地
(72)【発明者】
【氏名】金本 憲博
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-61031(JP,A)
【文献】特表2019-533589(JP,A)
【文献】特開2016-136238(JP,A)
【文献】特開2015-18202(JP,A)
【文献】特開2007-62321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/02
B65H 23/34
B65H 37/04
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を有する光学フィルムと、前記粘着剤層を介して前記光学フィルムに貼り合わされたセパレーターフィルムと、を有する光学積層フィルムの製造装置において、
前記光学フィルムとセパレーターフィルムをそれぞれラミネートローラへと搬送する搬送装置と、
前記光学フィルムとセパレーターフィルムを前記粘着剤層を介して貼り合わせることによって前記光学積層フィルムを形成する第1ローラ及び第2ローラを有する前記ラミネートローラと、
前記ラミネートローラの出側に配置され且つ前記光学積層フィルムのカールを調整するカール調整ローラと、を有し、
前記搬送装置が、前記光学フィルム及びセパレーターフィルムのいずれか一方の、前記ラミネートローラへの送り量を調整する送り調整部を有し、
前記カール調整ローラが、前記光学積層フィルムの第1面に接しつつ、前記ラミネートローラの出側における前記光学積層フィルムの搬送経路を
前記セパレーターフィルムが積層される側及び前記光学フィルムが積層される側にそれぞれ変位させることができ、
前記送り調整部は、前記カール調整ローラが前記搬送経路をセパレーターフィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも少なくし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも多くし、前記カール調整ローラが前記搬送経路を光学フィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも多くし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも少なくする、光学積層フィルムの製造装置。
【請求項2】
前記ラミネートローラが、テンションカットすることなく前記光学フィルムとセパレーターフィルムを挟み込んで前記両フィルムを貼り合わせる、請求項1に記載の光学積層フィルムの製造装置。
【請求項3】
前記カール調整ローラの下流側に、さらに、ガイドローラを有し、
前記ラミネートローラから出た前記光学積層フィルムが、側面視で、前記カール調整ローラにて折れ曲がり前記ガイドローラに接して搬送される、請求項1または2に記載の光学積層フィルムの製造装置。
【請求項4】
前記カール調整ローラが接する前記光学積層フィルムの第1面とは反対側の第2面が、自由とされている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学積層フィルムの製造装置。
【請求項5】
前記光学フィルムが、偏光子を含む、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学積層フィルムの製造装置。
【請求項6】
前記カール調整ローラによって、前記光学積層フィルムの光学フィルムを、前記第1面側を凸とするカール、第2面側を凸とするカール、及び、フラットの何れかの状態に調整する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学積層フィルムの製造装置。
【請求項7】
光学フィルムとセパレーターフィルムをそれぞれ第1ローラ及び第2ローラを有するラミネートローラへと搬送する工程、
前記光学フィルムとセパレーターフィルムを前記第1ローラ及び第2ローラの間に通過させ、前記光学フィルムとセパレーターフィルムを粘着剤層を介して貼り合わせることによって光学積層フィルムを得る工程、
前記ラミネートローラの出側に配置されたカール調整ローラによって前記光学積層フィルムのカールを調整する工程、を有し、
前記カール調整ローラを、前記光学積層フィルムの第1面に接しつつ、前記ラミネートローラの出側における前記光学積層フィルムの搬送経路を
前記セパレーターフィルムが積層される側又は前記光学フィルムが積層される側に変位させ、
前記カール調整ローラが前記搬送経路をセパレーターフィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも少なくし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも多くし、前記カール調整ローラが前記搬送経路を光学フィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも多くし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも少なくする、光学積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記ラミネートローラが、テンションカットすることなく前記光学フィルムとセパレーターフィルムを挟み込んで前記両フィルムを貼り合わせる、請求項7に記載の光学積層フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記カール調整ローラの下流側に、さらに、ガイドローラを有し、
前記ラミネートローラから出た前記光学積層フィルムを、側面視で、前記カール調整ローラにて折り曲げつつ前記ガイドローラに接して搬送する、請求項7または8に記載の光学積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムとセパレーターフィルムを有する光学積層フィルムの製造装置などに関し、さらに詳しくは、光学フィルムのカールを調整できる光学積層フィルムの製造装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置や有機EL表示装置などの画像表示装置に、光学フィルムが用いられている。前記光学フィルムとしては、偏光子を含む偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどが挙げられる。また、偏光フィルムなどは、偏光サングラス、調光窓などのような画像表示装置以外の用途にも用いられている。
光学フィルムには、画像表示装置の画面などに貼り付けるために、粘着剤層が積層されている場合がある。粘着剤層を有する光学フィルムは、例えば、その粘着剤層にセパレーターフィルムを積層した光学積層フィルムの形態で提供される。
このような光学積層フィルムは、光学フィルムとセパレーターフィルムを粘着剤層を介して貼り合わせることによって得られる。しかし、光学フィルムは、一般的に延伸処理などの各種処理が施されているため、カールの付いた状態となる傾向にある。
【0003】
このような光学フィルムのカールを修正するために、特許文献1には、貼り合わせ部から送り出される積層フィルムに生じたカールを修正するカール修正部を具備する積層フィルムの貼り合わせ装置が開示されている。特許文献1の貼り合わせ装置は、枚葉基材フィルムAと連続基材フィルムBをそれぞれ貼り合わせ部20に搬送し、貼り合わせ部20の貼り合わせローラ21U,21Lにて両フィルムを貼り合わすことによって積層フィルムCを形成する。貼り合わせローラ21U,21Lの出側には、カール修正ローラ31が配置されており、カール修正ローラ31を上昇させることによって、貼り合わせローラ21U,21Lから出た積層フィルムCの搬送経路をローラ21U側に変位させる。このように貼り合わせ部20の出側における積層フィルムCの搬送経路を上向き(貼り合わせ部20から出た積層フィルムCの搬出角度を上向き)にすることにより、積層フィルムCの下向きカールを修正できる。なお、符号は、特許文献1に記載の符号をそのまま援用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の貼り合わせ装置では、一方向きのカール(下向きカール)を修正できたとしても、それと反対向きのカールを適切に修正できない。
具体的には、カール修正ローラ31を下降させた際には、貼り合わせ部20から出た積層フィルムCの搬送経路が水平になるが、それ以上、積層フィルムCの搬送経路は変わらない。つまり、カール修正ローラ31を十分に下降させたとしても、貼り合わせ部20の出側における積層フィルムCの搬送経路を下向き(貼り合わせ部20から出た積層フィルムCの搬出角度を下向き)にできない。このため、特許文献1の貼り合わせ装置は、一方向きのカールしか修正できない。
用途に応じて、第1面側を凸とするカール状の光学フィルム、第2面側を凸とするカール状の光学フィルム、及び、フラット状の光学フィルムが求められる。従来の装置では、所望のカール又はフラットな光学フィルムを簡単に製造することが困難である。
【0006】
本発明の目的は、所望のカールが付いた状態又はフラットな状態の光学フィルムを簡単に製造できる光学積層フィルムの製造装置及び光学積層フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粘着剤層を有する光学フィルムと、前記粘着剤層を介して前記光学フィルムに貼り合わされたセパレーターフィルムと、を有する光学積層フィルムの製造装置において、前記光学フィルムとセパレーターフィルムをそれぞれラミネートローラへと搬送する搬送装置と、前記光学フィルムとセパレーターフィルムを前記粘着剤層を介して貼り合わせることによって前記光学積層フィルムを形成する第1ローラ及び第2ローラを有する前記ラミネートローラと、前記ラミネートローラの出側に配置され且つ前記光学積層フィルムのカールを調整するカール調整ローラと、を有し、前記搬送装置が、前記光学フィルム及びセパレーターフィルムのいずれか一方の、前記ラミネートローラへの送り量を調整する送り調整部を有し、前記カール調整ローラが、前記光学積層フィルムの第1面に接しつつ、前記ラミネートローラの出側における前記光学積層フィルムの搬送経路を前記セパレーターフィルムが積層される側及び前記光学フィルムが積層される側にそれぞれ変位させることができ、前記送り調整部は、前記カール調整ローラが前記搬送経路をセパレーターフィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも少なくし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも多くし、前記カール調整ローラが前記搬送経路を光学フィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも多くし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも少なくする。
【0008】
本発明の好ましい製造装置は、前記ラミネートローラが、テンションカットすることなく前記光学フィルムとセパレーターフィルムを挟み込んで前記両フィルムを貼り合わせる。
本発明の好ましい製造装置は、前記カール調整ローラの下流側に、さらに、ガイドローラを有し、前記ラミネートローラから出た前記光学積層フィルムが、側面視で、前記カール調整ローラにて折れ曲がり前記ガイドローラに接して搬送される。
本発明の好ましい製造装置は、前記カール調整ローラが接する前記光学積層フィルムの第1面とは反対側の第2面が、自由とされている。
本発明の好ましい製造装置は、前記光学フィルムが、偏光子を含む。
本発明の好ましい製造装置は、前記カール調整ローラによって、前記光学積層フィルムの光学フィルムを、前記第1面側を凸とするカール、第2面側を凸とするカール、及び、フラットの何れかの状態に調整する。
【0009】
本発明の別の局面によれば、光学積層フィルムの製造方法を提供する。
本発明の光学積層フィルムの製造方法は、光学フィルムとセパレーターフィルムをそれぞれ第1ローラ及び第2ローラを有するラミネートローラへと搬送する工程、前記光学フィルムとセパレーターフィルムを前記第1ローラ及び第2ローラの間に通過させ、前記光学フィルムとセパレーターフィルムを粘着剤層を介して貼り合わせることによって光学積層フィルムを得る工程、前記ラミネートローラの出側に配置されたカール調整ローラによって前記光学積層フィルムのカールを調整する工程、を有し、前記カール調整ローラを、前記光学積層フィルムの第1面に接しつつ、前記ラミネートローラの出側における前記光学積層フィルムの搬送経路を前記セパレーターフィルムが積層される側又は前記光学フィルムが積層される側に変位させ、前記カール調整ローラが前記搬送経路をセパレーターフィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも少なくし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも多くし、前記カール調整ローラが前記搬送経路を光学フィルム積層側に変位させる際には、前記セパレーターフィルムの送り量を前記光学フィルムの送り量よりも多くし又は前記光学フィルムの送り量を前記セパレーターフィルムの送り量よりも少なくする。
【0010】
本発明の好ましい製造方法は、前記ラミネートローラが、テンションカットすることなく前記光学フィルムとセパレーターフィルムを挟み込んで前記両フィルムを貼り合わせる。
本発明の好ましい製造方法は、前記カール調整ローラの下流側に、さらに、ガイドローラを有し、前記ラミネートローラから出た前記光学積層フィルムを、側面視で、前記カール調整ローラにて折り曲げつつ前記ガイドローラに接して搬送する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造装置及び製造方法によれば、所望のカールが付いた状態又はフラットな状態の光学フィルムを簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】1つの実施形態の光学積層フィルムの層構成を示す概略側面図。
【
図2】他の実施形態の光学積層フィルムの層構成を示す概略側面図。
【
図3】光学積層フィルムの製造装置を示す概略側面図。
【
図4】前記製造装置のカール調整ローラを第1ローラ側に移動させた状態を示す概略側面図。
【
図5】
図4の状態におけるラミネートローラ及びカール調整ローラ付近を拡大した拡大側面図。
【
図6】前記製造装置のカール調整ローラを第2ローラ側に移動させた状態を示す概略側面図。
【
図7】
図6の状態におけるラミネートローラ及びカール調整ローラ付近を拡大した拡大側面図。
【
図8】(a)は、第1面側を凸とするカールが付いた状態の光学積層フィルムを示す参考側面図、(b)は、第2面側を凸とするカールが付いた状態の光学積層フィルムを示す参考側面図、(c)は、フラットな状態の光学積層フィルムを示す参考側面図。
【
図9】光学積層フィルム(光学フィルム)のカール又はフラットの確認方法を示す参考側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、下流側は、フィルムの搬送に関して、その搬送の先頭側を意味し、上流側は、それとは反対側を意味する。本明細書において、用語の頭に、「第1」、「第2」を付す場合があるが、この第1などは、用語を区別するためだけに付加されたものであり、その順序や優劣などの特別な意味を持たない。また、「下限値X~上限値Y」で表される数値範囲は、下限値X以上上限値Y以下を意味する。前記数値範囲が別個に複数記載されている場合、任意の下限値と任意の上限値を選択し、「任意の下限値~任意の上限値」を設定できるものとする。
【0014】
[光学積層フィルム]
図1及び
図2は、本発明の光学積層フィルム1の層構成を例示している。
本発明の光学積層フィルム1は、光学フィルム2と、セパレーターフィルム4と、光学フィルム2とセパレーターフィルム4の間に介在して両フィルム2,4を貼り合わせる粘着剤層3と、を有する。粘着剤層3は、光学フィルム2に強固に接着され、且つ、セパレーターフィルム4には剥離可能に接着されている。
従って、セパレーターフィルム4は、粘着剤層3との界面において剥離できる。セパレーターフィルム4を剥離することによって、前記光学積層フィルム1は、粘着剤層3を有する光学フィルム2と、セパレーターフィルム4と、に分離できる。
【0015】
光学フィルム2は、光学機能フィルムを含んでいる。前記光学機能フィルムとしては、偏光子、位相差フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム、光反射フィルムなどが挙げられる。偏光子は、特定の1つの方向に振動する光(偏光)を透過し、それ以外の方向に振動する光を遮断する性質を有するフィルムである。位相差フィルムは、光学異方性を示すフィルムであり、代表的には、例えば、1/2λフィルム、1/4λフィルムなどが挙げられる。
また、光学フィルム2は、保護フィルムを含んでいてもよい。保護フィルムは、前記光学機能フィルムを保護する目的で積層される。保護フィルムは、典型的には、光学異方性のない無色透明なフィルムが用いられる。
【0016】
図1に例示する光学積層フィルム1では、光学フィルム2は、図面の下から順に、第1保護フィルム21と、偏光子22と、第2保護フィルム23と、表面保護フィルム24とを有する。前記各フィルム21,22,23,24が互いに接着されることにより、1つの積層フィルム(光学フィルム2)が構成されている。なお、図示例では、第1保護フィルム21と偏光子22、偏光子22と第2保護フィルム23、及び、第2保護フィルム23と表面保護フィルム24は、それぞれ直接的に接着されているが、必要に応じて、これらのフィルムの間に接着剤層(又は粘着剤層)が介在され且つ各フィルムが接着剤層(又は粘着剤層)を介して接着されていてもよい(図示せず)。
【0017】
図2に例示する光学積層フィルム1では、光学フィルム2は、図面の下から順に、位相差フィルム25と、表面保護フィルム26と、を有する。前記各フィルム25,26が互いに接着されることにより、1つの積層フィルム(光学フィルム2)が構成されている。なお、図示例では、位相差フィルム25と表面保護フィルム26は、直接的に接着されているが、必要に応じて、これらのフィルムの間に接着剤層(又は粘着剤層)が介在され且つ各フィルムが接着剤層(又は粘着剤層)を介して接着されていてもよい(図示せず)。
なお、光学フィルム2は、
図1及び
図2の層構成に限られず、様々に変更できる。例えば、光学フィルム2は、2層以上の光学機能フィルムを含んでいてもよく、或いは、1層の光学機能フィルムのみから構成されていてもよい。
【0018】
前記光学フィルム2の第2面に設けられる粘着剤層3は、常温で粘着性を有し且つ剥離後も粘着性が持続して再貼付可能なものである。粘着剤層3は、公知の粘着剤によって構成される。前記粘着剤としては、無色透明なアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。
前記粘着剤層3の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1μm~50μmであり、好ましくは1μm~30μmである。粘着剤層3の厚みが前記範囲内であると、適度な剥離性と再貼付性を有する粘着剤層3を構成できる。
【0019】
セパレーターフィルム4は、特に限定されないが、通常、光学機能フィルムを含まないフィルムが用いられる。
セパレーターフィルム4は、前記粘着剤層に対して剥離性に優れた離型面を有する。
セパレーターフィルム4としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム;紙;織布、不織布、網布などの多孔質フィルム;発泡樹脂フィルム;などが挙げられる。表面平滑性に優れていることから、セパレーターフィルム4は、樹脂フィルムであることが好ましい。
前記樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
なお、一般に、セパレーターフィルム4の表面(離型面)には、一般に、剥離処理が施されている。セパレーターフィルム4の材質と粘着剤層3の材質に依存するが、セパレーターフィルム4そのものが粘着剤層3に対する剥離性に優れた材質からなる場合には、前記剥離処理を施さなくてもよい場合がある。前記剥離処理としては、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系又は脂肪酸アミド系の離型剤を塗布することなどが挙げられる。
前記セパレーターフィルム4の厚みは、特に限定されず、例えば、5μm~200μmであり、好ましくは10μm~100μmである。
【0020】
[光学積層フィルムの製造装置]
図3は、光学積層フィルム1の製造装置の概略側面図である。
図3の製造装置5は、長尺帯状の光学積層フィルム1を製造できる。長尺帯状は、長手方向の長さが幅方向よりも十分に長い平面視略長方形状をいう。長尺帯状としては、例えば、幅方向の長さが1000mm~4000mmで、長手方向の長さが5m以上であり、好ましくは、長手方向の長さが10m以上である。なお、幅方向は、長手方向と直交する方向である。
図3を参照して、製造装置5は、光学フィルム2及びセパレーターフィルム4をそれぞれ搬送する搬送装置と、前記光学フィルム2とセパレーターフィルム4を粘着剤層3を介して貼り合わせるラミネートローラ7と、ラミネートローラ7の出側に配置され且つ光学フィルム2のカールを調整するカール調整ローラ8と、前記カール調整ローラ8の下流側に配置されたガイドローラ9と、を有する。
図3乃至
図7の白抜き矢印は、光学フィルム2、セパレーターフィルム4及び光学積層フィルム1の搬送向きを示す。
【0021】
具体的には、搬送装置は、第2面に粘着剤層3が積層された光学フィルム2と、セパレーターフィルム4と、をそれぞれ独立して、ラミネートローラ7へと搬送する。光学フィルム2及びセパレーターフィルム4は、いずれも長尺帯状であり、前記搬送装置は、各フィルム2,4をその長手方向に搬送する。
搬送装置は、ニップローラ61と、光学フィルム2を搬送する搬送部62(以下、光学フィルム搬送部62という)と、セパレーターフィルム4を搬送する搬送部64(以下、セパレーター搬送部64という)と、を有する。
前記ニップローラ61は、一対のローラから構成される。
光学フィルム搬送部62は、ニップローラ61とラミネートローラ7との間に配置された少なくとも1つのガイドローラ621を有する。ニップローラ61の出側において、光学フィルム2は、第1面がガイドローラに接しながらラミネートローラ7へと搬送される。なお、ニップローラ61の出側において、光学フィルム2は、セパレーターフィルム4から独立した搬送経路でラミネートローラ7に搬送される。ここで、第1面は、フィルムのいずれか一方の面をいい、第2面は、第1面とは反対側を面をいう。光学フィルム2の第1面は、粘着剤層3が設けられていない側の面であり、光学フィルム2の第2面は、第1面とは反対側の面であって粘着剤層3が設けられている面である。
光学フィルム搬送部62には、必要に応じて、光学フィルム2のテンションを計測する張力計などの公知の機器が具備されていてもよい。
【0022】
セパレーター搬送部64は、ニップローラ61とラミネートローラ7との間に配置された少なくとも1つのガイドローラ641と、セパレーターフィルム4のラミネートローラ7への送り量を調整する送り調整部と、を有する。送り調整部は、ダンサーローラ642を有し、好ましくは、前記ダンサーローラ642と、前記ダンサーローラ642の下流側に配置された振り子ローラ643と、を有する。ダンサーローラ642は、セパレーターフィルム4に接しつつ1つの方向(図示では、上下方向)に移動可能である。ダンサーローラ642が移動することにより、セパレーターフィルム4のラミネートローラ7への送り量を調整できる。振り子ローラ643は、固定側645(例えば、設備のフレームや天井面など)に固定された支持軸646を中心として、側面視で弧状に振れ動く。
図3にダンサーローラ642の移動方向及び振り子ローラ643の振れ方向を矢印で示す。
ニップローラ61の出側において、セパレーターフィルム4は、ガイドローラ641、ダンサーローラ642及び振り子ローラ643に接しながらラミネートローラ7へと搬送される。なお、ニップローラ61の出側において、セパレーターフィルム4は、光学フィルム2から独立した搬送経路でラミネートローラ7に搬送される。ここでのセパレーターフィルム4の搬送経路は、上述の光学フィルム2の搬送経路よりも長くなっている。
光学フィルム搬送部62及びセパレーター搬送部64には、必要に応じて、光学フィルム2のテンションを計測する張力計などの公知の機器(図示せず)が具備されていてもよい。
【0023】
ラミネートローラ7は、向かい合った第1ローラ71及び第2ローラ72から構成される。第1ローラ71と第2ローラ72の隙間に前記セパレーターフィルム4と光学フィルム2が挟み込まれることによって、光学フィルム2に具備されている粘着剤層3にセパレーターフィルム4が貼り合わされる。従って、ラミネートローラ7に入ったセパレーターフィルム4と光学フィルム2は、ラミネートローラ7を通過して光学積層フィルム1となる。
ラミネートローラ7の第1ローラ71及び第2ローラ72の大きさは特に限定されず、例えば、カール調整ローラ8と同径でもよく、又は、それよりも大きい若しくは小さくてもよい。好ましくは、ラミネートローラ7の第1ローラ71及び第2ローラ72の各直径は、カール調整ローラ8の直径よりも大きい。例えば、ラミネートローラ7の第1ローラ71及び第2ローラ72の各直径は、カール調整ローラ8の直径の1.5倍以上であり、好ましくは、2倍以上である。
【0024】
ラミネートローラ7は、テンションカットすることなく前記光学フィルム2とセパレーターフィルム4を挟み込んで両フィルム2,4を貼り合わせる。通常のラミネートローラ(ニップローラ)は、いわゆるテンションカットローラであるが、本願のラミネートローラ7は、貼り合わせ時に光学フィルム2及びセパレーターフィルム4のテンションをカットしない(テンションを吸収しない)。本願のラミネートローラ7は、光学フィルム2とセパレーターフィルム4を粘着剤層3を介して貼り合わせることができる程度に両フィルム2,4を緩やかに押さえるが、両フィルム2,4を過度に押さえつけないように設定されている。
【0025】
ラミネートローラ7の出側には、光学フィルム2のカールを調整するカール調整ローラ8が配置されている。カール調整ローラ8は、ラミネートローラ7から出た光学積層フィルム1の第1面に接しつつ、前記光学積層フィルム1の第1面に対して略鉛直な方向に移動させることができる。カール調整ローラ8が接する光学積層フィルム1の第1面とは反対側の第2面は、自由とされている。第2面が自由とは、第2面にローラなどの部材が接触せず、第2面が空気に触れているだけの状態を意味する。光学積層フィルム1の第1面は、光学フィルム2の第1面に相当し、光学積層フィルム1の第2面は、セパレーターフィルムの粘着剤層とは反対側の面に相当する。
図3の例では、カール調整ローラ8は、紙面の左右方向(紙面の左側及び右側の双方)に移動可能である。
図3にカール調整ローラ8の移動方向を矢印で示す。前記カール調整ローラ8は、光学積層フィルム1の第1面に接しつつ、前記ラミネートローラ7の出側における前記光学積層フィルム1の搬送経路を第1ローラ71側及び第2ローラ72側にそれぞれ変位させることができる。カール調整ローラ8には、カール調整ローラ8を移動させる駆動装置(図示せず)が具備されている。なお、ニップローラ61などのローラも、必要に応じて、それらを動かす駆動装置(図示せず)が具備されている。
【0026】
具体的には、ラミネートローラ7の下流側には、順に、カール調整ローラ8とガイドローラ9が配置されている。このガイドローラ9は、カール調整ローラ8の直ぐ下流側に配置されているガイドローラである(以下、このガイドローラ9と他のガイドローラとを用語上区別するために、「特定ガイドローラ9」という)。
ラミネートローラ7から出た光学積層フィルム1は、
図3に示す側面視で、カール調整ローラ8にて折れ曲がり、さらに、特定ガイドローラ9に接して搬送される。例えば、ラミネートローラ7から出た光学積層フィルム1は、側面視で、カール調整ローラ8において鈍角状に折れ曲がりつつ特定ガイドローラ9へと搬送される。
特定ガイドローラ9は、次のような位置に配置される。通常、ラミネートローラ7の出側における光学積層フィルム1は、第1ローラ71及び第2ローラ72に共通する接線方向(
図3の紙面の上下方向)に沿って搬送される。特定ガイドローラ9は、仮にカール調整ローラ8を配置しなかったときに、光学積層フィルム1を前記接線方向に対して傾斜した方向に沿って搬送できるように配置される。例えば、特定ガイドローラ9は、仮にカール調整ローラ8を配置しなかったときに、光学積層フィルム1の搬送経路が第2ローラ72側に近づく傾斜状になるような位置に配置される。
【0027】
上記カール調整ローラ8及び特定ガイドローラ9がラミネートローラ7の下流側に設けられていることにより、カール調整ローラ8を変位させることにより、光学積層フィルム1の搬送経路を第1ローラ71側及び第2ローラ72側にそれぞれ変えることができる。
図3は、ラミネートローラ7の出側における光学積層フィルム1の搬送経路が、第1ローラ71及び第2ローラ72に共通する接線方向(紙面の上下方向)となるように、カール調整ローラ8が位置している状態を示している。このカール調整ローラ8の位置をホームポジションという。前記接線は、前記光学積層フィルム1が第1ローラ71及び第2ローラ72に点接触している箇所での第1ローラ71の接線及び第2ローラ72の接線をいい、この2つの接線は共通する。
このホームポジションからカール調整ローラ8を光学積層フィルム1側(紙面の左側)に移動させる。すると、
図4に示すように、光学積層フィルム1が第1ローラ71側に押し出されて、光学積層フィルム1の搬送経路が第1ローラ71側に変位する。
他方、ホームポジションからカール調整ローラ8を光学積層フィルム1と離れる側(紙面の右側)に移動させる。すると、
図6に示すように、光学積層フィルム1が第2ローラ72側に引き寄せられて、光学積層フィルム1の搬送経路が第2ローラ72側に変位する。
【0028】
特定ガイドローラ9の下流側には、カールを調整した光学積層フィルム1を巻き取る巻き取り部51が設けられている。
【0029】
本発明の製造装置5は、カール調整ローラ8によって、光学積層フィルム1の光学フィルム2を、第1面側(第1面は上述のように粘着剤層3が設けられていない側の面)を凸とするカール、第2面側(第2面は上述のように粘着剤層3が設けられている側の面)を凸とするカール、及び、フラットの何れかの状態に調整できる。
2種類のカール及びフラットについて、
図8(a)乃至(c)を参照して説明する。
図8(a)は、長手方向において第1面2a側を凸とするカールが付いた状態の光学積層フィルム1を示し、同図(b)は、長手方向において第2面2b側を凸とするカールが付いた状態の光学積層フィルム1を示し、同図(c)は、長手方向においてフラットの状態の光学積層フィルム1を示す。
以下、
図8(a)の状態のカールを「凸カール」といい、
図8(a)の状態の光学積層フィルム1を「凸カールフィルム」といい、
図8(b)の状態のカールを「凹カール」といい、
図8(b)の状態の光学積層フィルム1を「凹カールフィルム」といい、
図8(c)の状態の光学積層フィルム1を「フラットフィルム」という。
【0030】
前記3つの状態は、次のようにして確認できる。
例えば、カール調整後の光学積層フィルム1から所定形状(例えば、長手方向における長さが15cm、幅方向における長さが15cmの正方形状)のサンプルSを切り出し、
図9に示すように、平坦面Fを有するテーブル上の載置する。そして、次の(a)乃至(c)のいずれかの方法によって、サンプルSの状態(カール又はフラット)を確認する。(a)このサンプルSを側面方向から目視して、サンプルSの状態(カール又はフラット)を確認する、(b)
図9に示すように、サンプルSの端と平坦面Fまでの距離Dを定規で計測してサンプルSの状態を確認する、(c)カメラなどの撮像手段でサンプルSを側面方向から撮像し、その像からサンプルSの状態を確認する。
なお、本発明においては、光学フィルム2の状態(カール又はフラット)を調整するものであるが、セパレーターフィルム4は、前記光学フィルム2の状態に影響を与えない。このため、上記のように光学積層フィルム1(光学フィルム2/粘着剤層3/セパレーターフィルム4)の状態を確認することは、実質的に光学フィルム2の状態を確認することに等しい。
【0031】
[光学積層フィルムの製造装置の動作及びカールの調整方法]
本発明の光学積層フィルムの製造方法は、前記光学フィルムとセパレーターフィルムをそれぞれ前記第1ローラ及び第2ローラを有するラミネートローラへと搬送する工程、前記ラミネートローラにより前記光学フィルムとセパレーターフィルムを前記粘着剤層を介して貼り合わせることによって光学積層フィルムを得る工程、前記ラミネートローラの出側に配置されたカール調整ローラによって前記光学積層フィルムのカールを調整する工程、を有する。前記カール調整ローラを、前記光学積層フィルムの第1面に接しつつ、前記ラミネートローラの出側における前記光学積層フィルムの搬送経路を前記第1ローラ側及び第2ローラ側にそれぞれ変位させることにより、光学積層フィルムを所望のカールが付いた状態及びフラットな状態に調整できる。
【0032】
図3を参照して、光学フィルム2/粘着剤層3/セパレーターフィルム4からなる長尺帯状の原反1Aをニップローラ61へ供給する。
通常、光学フィルム2などの廃棄量を少なくするため、原反1Aの光学フィルム2及びセパレーターフィルム4の各先端側には、いわゆるダミーフィルム(図示せず)が取り付けられている。製造初期には、それぞれのダミーフィルムをニップローラ61などに通し、巻き取り部に取り付けることによって、光学フィルム2及びセパレーターフィルム4が装置内に搬送される。
なお、光学積層フィルムの製造装置及びカール調整を含む光学積層フィルムの製造方法の基本的な説明においては、原反1Aに含まれる光学フィルム2はフラットフィルムであることを前提にしている。
原反1Aに含まれる光学フィルム2の状態は、原反1Aから少しサンプルを取り出し、そのサンプルの光学フィルム2を調べることにより、凸カール、凹カール又はフラットのいずれであるかを確認できる。
この原反1Aの光学フィルム2の状態の確認についても、上述と同様にして、その原反1AからサンプルSを切り出し、平坦面F上に載置して行なえばよい。
【0033】
ニップローラ61を通過した後、原反1Aは、粘着剤層3を備える光学フィルム2と、セパレーターフィルム4とに分離される。光学フィルム2は、光学フィルム搬送部62によってラミネートローラ7へと搬送される。セパレーターフィルム4は、セパレーター搬送部64によってラミネートローラ7へと搬送される。光学フィルム2などの搬送状況を図示するため、
図3は、細破線で囲んだ部分のフィルム拡大を含んでいる。
【0034】
前記ラミネートローラ7の第1ローラ71と第2ローラ72の間に前記セパレーターフィルム4と光学フィルム2が挟み込まれることによって、ラミネートローラ7から光学積層フィルム1が排出される。
光学フィルム2/粘着剤層3/セパレーターフィルム4からなる長尺帯状の光学積層フィルム1は、カール調整ローラ8及び特定ガイドローラ9を通過して、巻き取り部51に巻き取られる。
【0035】
図3のように、カール調整ローラ8がホームポジションにあるときには、ラミネートローラ7への光学フィルム2の送り量及びセパレーターフィルム4の送り量は同じである。
また、カール調整ローラ8がホームポジションにあるときには、ラミネートローラ7から出る光学積層フィルム1は、第1ローラ71及び第2ローラ72の何れの側にも寄っていない。従って、光学積層フィルム1は、ラミネートローラ7の出側において第1ローラ71及び第2ローラ72に点接触している。この場合、ラミネートローラ7とカール調整ローラ8の間における光学積層フィルム1の搬送経路は、第1ローラ71及び第2ローラ72に共通する接線方向と略平行である。ホームポジションにおいては、光学フィルム2にはカールが付与されず、原反1Aの光学フィルム2がフラットフィルムである場合には、フラット状態の光学積層フィルム1が得られる。
【0036】
<凹カール付与>
次に、この光学フィルム2に凹カールを付与する場合には、
図4及び
図5に示すように、カール調整ローラ8を光学積層フィルム1側に移動させる。
図4及び
図5において、カール調整ローラ8の移動向きを太矢印で示す。
カール調整ローラ8を光学積層フィルム1側に移動させると、ラミネートローラ7とカール調整ローラ8の間における光学積層フィルム1の搬送経路は、第1ローラ71側へ変位する。搬送経路が第1ローラ71側に変わると、ラミネートローラ7から出た光学積層フィルム1は、第1ローラ71の周面に接しながら、カール調整ローラ8へと搬送される。第1ローラ71側にセパレーターフィルム4が面しているので、ラミネートローラ7の出側においてセパレーターフィルム4が第1ローラ71の周面に接して搬送される。
図5に示すように、光学フィルム2はセパレーターフィルム4よりも第1ローラ71の外側を通るので、ラミネートローラ7(第1ローラ71)とカール調整ローラ8の間における光学フィルム2の長さは、同間におけるセパレーターフィルム4の長さよりも大きくなる。ラミネートローラ7はテンションカットしていないので、前記ラミネートローラ7とカール調整ローラ8の間における両フィルム2,4の長さ差が生じた場合に、フィルムに過度なテンションが加わることを防止できる。
【0037】
前記両フィルム2,4の長さ差に応じて、セパレーター搬送部64の送り調整部が、セパレーターフィルム4の送り量を調整する。前記送り調整部は、光学積層フィルム1の搬送経路を第1ローラ71側へ変位させた際に、セパレーターフィルム4の送り量を、光学フィルム2の送り量よりも少なくする。すなわち、
図4に示すように、光学積層フィルム1の搬送経路を第1ローラ71側へ変位させた際には、ダンサーローラ642が下降することにより、セパレーターフィルム4の送り量が少なくなる。カール調整ローラ8を移動させても、ラミネートローラ7に送られるセパレーターフィルム4が少なくなる結果、そのフィルムに過度な弛みが生じることを防止できる。
このようにカール調整ローラ8を光学積層フィルム1側に移動させると、原反1Aの光学フィルム2がフラットフィルムである場合には、凹カールの付いた光学積層フィルム1(光学フィルム2)が得られる。
【0038】
<凸カール付与>
他方、前記光学フィルム2に凸カールを付与する場合には、
図6及び
図7に示すように、カール調整ローラ8を光学積層フィルム1とは反対側に移動させる。
図6及び
図7において、カール調整ローラ8の移動向きを太矢印で示す。
カール調整ローラ8を第1ローラ71から遠ざかる方向に移動させると、ラミネートローラ7とカール調整ローラ8の間における光学積層フィルム1の搬送経路は、第2ローラ72側へ変位する。搬送経路が第2ローラ72側に変わると、ラミネートローラ7から出た光学積層フィルム1は、第2ローラ72の周面に多く接しながら、カール調整ローラ8へと搬送される。第2ローラ72側に光学フィルム2が面しているので、ラミネートローラ7の出側において光学フィルム2が第2ローラ72の周面に接して搬送される。
図7に示すように、セパレーターフィルム4は光学フィルム2よりも第2ローラ72の外側を通るので、ラミネートローラ7(第2ローラ71)とカール調整ローラ8の間におけるセパレーターフィルム4の長さは、同間における光学フィルム2の長さよりも大きくなる。ラミネートローラ7はテンションカットしていないので、前記ラミネートローラ7とカール調整ローラ8の間における両フィルム2,4の長さ差が生じた場合に、フィルムに過度なテンションが加わることを防止できる。
【0039】
前記両フィルム2,4の長さ差に応じて、セパレーター搬送部64の送り調整部が、セパレーターフィルム4の送り量を調整する。前記送り調整部は、光学積層フィルム1の搬送経路を第2ローラ72側へ変位させた際に、セパレーターフィルム4の送り量を、光学フィルム2の送り量よりも多くする。すなわち、
図6に示すように、光学積層フィルム1の搬送経路を第2ローラ72側へ変位させた際には、振り子ローラ643が振れ、ダンサーローラ642が上昇することにより、セパレーターフィルム4の送り量が多くなる。カール調整ローラ8を移動させても、ラミネートローラ7に送られるセパレーターフィルム4が多くなる結果、そのフィルムに過度なテンションが加わることを防止できる。
このようにカール調整ローラ8を第1ローラ71から遠ざかる方向に移動させると、原反1Aの光学フィルム2がフラットフィルムである場合には、凸カールの付いた光学積層フィルム1(光学フィルム2)が得られる。
【0040】
本発明の製造装置5を用いれば、凸カールフィルム、凹カールフィルム及びフラットフィルムから選ばれる光学フィルム2を任意に作製できる。
上記では、原反1Aの光学フィルム2がフラットフィルムである場合を説明したが、原反1Aの光学フィルム2が凹カールフィルム又は凸カールフィルムである場合にも、所望のカールに調整できる。
例えば、原反1Aが凹カールフィルムである場合には、上記<凸カール付与>に従って光学積層フィルム1の搬送経路を変位させると、フラットフィルム又は凸カールフィルムとなった光学積層フィルム1(光学フィルム2)が得られる。カール調整ローラ8の移動量を適宜調整することにより、原反1Aが凹カールフィルムである場合に、それよりも緩やかな凹カールが付いた光学積層フィルム1(光学フィルム2)を得ることも可能である。
また、原反1Aが凸カールフィルムである場合には、上記<凹カール付与>に従って光学積層フィルム1の搬送経路を変位させると、フラットフィルム又は凹カールフィルムとなった光学積層フィルム1(光学フィルム2)が得られる。カール調整ローラ8の移動量を適宜調整することにより、原反1Aが凸カールフィルムである場合に、それよりも緩やかな凸カールが付いた光学積層フィルム1(光学フィルム2)を得ることも可能である。
【0041】
なお、上記製造装置5には、セパレーターフィルム4の、ラミネートローラ7への送り量を調整する送り調整部が設けられているが、これに代えて又はこれと併用して、光学フィルム2の、ラミネートローラ7への送り量を調整する送り調整部が製造装置5に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 光学積層フィルム
2 光学フィルム
3 粘着剤層
4 セパレーターフィルム
5 製造装置
62,64 搬送装置
642 送り調整部
7 ラミネートローラ
71 第1ローラ
72 第2ローラ
8 カール調整ローラ
9 カール調整ローラの下流側に配置されたガイドローラ