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特許7374869薬剤候補表示方法及びプログラム、薬剤識別装置、薬剤識別システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】薬剤候補表示方法及びプログラム、薬剤識別装置、薬剤識別システム
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20231030BHJP
   A61J 3/06 20060101ALI20231030BHJP
   A61J 3/07 20060101ALI20231030BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20231030BHJP
   G16H 20/10 20180101ALI20231030BHJP
   G06F 3/0481 20220101ALI20231030BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
A61J3/06 R
A61J3/07 R
G06T7/70 A
G16H20/10
G06F3/0481
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020145763
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040849
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】弓部 央奈
(72)【発明者】
【氏名】石川 成利
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/152225(WO,A1)
【文献】特開平10-3515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
A61J 3/06
A61J 3/07
G06T 7/70
G16H 20/10
G06F 3/0481
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤を撮影して画像を取得する撮影工程と、
前記薬剤が撮影された画像をディスプレイに表示する画像表示工程と、
前記表示された画像から前記薬剤が表示されている位置を特定する表示位置特定工程と、
前記表示位置特定工程により特定された薬剤の位置情報に基づいて前記表示された画像に含まれる薬剤のうちユーザから指定された指定薬剤を特定する指定薬剤特定工程と、
前記指定薬剤特定工程により特定された前記指定薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を薬剤情報データベースから取得する薬剤候補情報取得工程と、
前記薬剤候補情報取得工程により取得された前記複数の候補薬剤の情報を、前記ディスプレイの前記指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示するポップアップ表示工程と、
を備え
前記ポップアップ表示工程は、前記複数の候補薬剤の情報を、前記画像に含まれる薬剤のうち前記ポップアップ表示と重なる薬剤を除いて前記指定薬剤に最も近い位置にポップアップ表示し、
前記ポップアップ表示工程は、前記複数の候補薬剤の情報を第1の方向に並べ、前記複数の候補薬剤の情報のうち最も確定の確率の高い候補薬剤の情報を前記指定薬剤の表示位置の前記第1の方向に直交する第2の方向の位置にポップアップ表示する、
薬剤候補表示方法。
【請求項2】
前記ポップアップ表示工程は、前記複数の候補薬剤の情報を、前記指定された薬剤の表示位置に対して相対的に同一の位置にポップアップ表示する、
請求項1に記載の薬剤候補表示方法。
【請求項3】
前記画像表示工程は、前記指定薬剤について前記指定薬剤であること明示する請求項1又は2に記載の薬剤候補表示方法。
【請求項4】
前記複数の候補薬剤のうちユーザから選択された候補薬剤を前記指定薬剤の正解薬剤として確定する確定工程と、
前記正解薬剤の情報を前記ディスプレイの前記画像が表示された領域とは異なる領域に表示する薬剤情報表示工程と、
を備え、
前記ポップアップ表示工程は、前記確定工程において前記指定薬剤の正解薬剤を確定すると前記ポップアップ表示を消去する請求項1からのいずれか1項に記載の薬剤候補表示方法。
【請求項5】
前記画像表示工程は、前記画像に含まれる薬剤のうち正解薬剤が確定された薬剤の表示位置の近傍に確定済みであることを示す情報を表示する請求項に記載の薬剤候補表示方法。
【請求項6】
前記確定済みであることを示す情報は、前記正解薬剤と関連付けられた情報を含み、
前記薬剤情報表示工程は、前記正解薬剤の情報とともに前記関連付けられた情報を表示する請求項に記載の薬剤候補表示方法。
【請求項7】
前記確定済みであることを示す情報は、確定した順番を示すマークを含む請求項又はに記載の薬剤候補表示方法。
【請求項8】
前記複数の候補薬剤の情報は、薬剤の名称、薬剤のマスタ画像、及び薬剤のPTP(Press Through Package)シートの画像のうちの少なくとも1つを含む請求項1からのいずれか1項に記載の薬剤候補表示方法。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の薬剤候補表示方法をコンピュータに実行させためのプログラム。
【請求項10】
プロセッサに実行させるための命令を記憶するメモリと、
メモリに記憶された命令を実行するプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサは、
薬剤が撮影された画像をディスプレイに表示し、
前記表示された画像から前記薬剤が表示されている位置を特定し、
前記特定された薬剤の位置情報に基づいて前記表示された画像に含まれる薬剤のうちユーザから指定された指定薬剤を特定し、
前記特定された前記指定薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を薬剤情報データベースから取得し、
前記取得された前記複数の候補薬剤の情報を、前記ディスプレイの前記指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示し、
前記複数の候補薬剤の情報を、前記画像に含まれる薬剤のうち前記ポップアップ表示と重なる薬剤を除いて前記指定薬剤に最も近い位置にポップアップ表示し、
前記複数の候補薬剤の情報を第1の方向に並べ、前記複数の候補薬剤の情報のうち最も確定の確率の高い候補薬剤の情報を前記指定薬剤の表示位置の前記第1の方向に直交する第2の方向の位置にポップアップ表示する、
薬剤識別装置。
【請求項11】
請求項10に記載の薬剤識別装置と、
前記薬剤を撮影して画像を取得するカメラと、
前記薬剤が撮影された画像を表示するディスプレイと、
前記表示された画像に含まれる薬剤をユーザが指定する入力装置と、
前記指定された薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を記憶する薬剤情報データベースと、
を備える薬剤識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は薬剤候補表示方法及びプログラム、薬剤識別装置、薬剤識別システムに係り、特に識別する薬剤と候補となる薬剤とを比較する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の錠剤を撮影した画像から錠剤を識別し、識別された錠剤のうち鑑別する錠剤の画像を解析して候補となる錠剤を抽出し、抽出された候補錠剤を一覧表にして表示する装置が知られている。
【0003】
特許文献1~3には、錠剤画像鑑別ウィンドウの第1の部分に表示された薬剤のうち、鑑別がまだ完了していない薬剤が選択されると、選択された薬剤が第2の部分に拡大表示され、選択された薬剤の候補薬が第3の部分にリスト表示される装置が記載されている。
【0004】
特許文献4には、撮影された薬剤の画像に基づいて薬剤の識別情報を認識する際に、画像中に異常がある場合に、画像中の異常がある部分を識別する識別マークを画像に重ね合わせて表示する装置が記載されている。
【0005】
特許文献5には、持参薬の鑑別処理において、必要事項を入力して検索ボタンを操作すると、薬剤に関するデータベースを検索して検索結果である薬剤の一覧を薬品検索結果欄に表示する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-011122号公報
【文献】特開2019-076787号公報
【文献】国際公開WO2017/183533号公報
【文献】特開2017-158743号公報
【文献】特開2013-137775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の装置では、表示画面上において、鑑別する錠剤の表示位置と候補となる錠剤の表示位置とが離れているため、視線の移動量が多くなり効率が悪いという問題点があった。また、表示画面上に候補錠剤を表示するための表示領域が必要となるため、限られた表示スペースを圧迫するという問題点があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、表示スペースを圧迫することなく識別する薬剤と候補となる薬剤とをユーザに容易に比較させることができる薬剤候補表示方法及びプログラム、薬剤識別装置、薬剤識別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための薬剤候補表示方法の一の態様は、薬剤を撮影して画像を取得する撮影工程と、薬剤が撮影された画像をディスプレイに表示する画像表示工程と、表示された画像から薬剤が表示されている位置を特定する表示位置特定工程と、表示位置特定工程により特定された薬剤の位置情報に基づいて表示された画像に含まれる薬剤のうちユーザから指定された指定薬剤を特定する指定薬剤特定工程と、指定薬剤特定工程により特定された指定薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を薬剤情報データベースから取得する薬剤候補情報取得工程と、薬剤候補情報取得工程により取得された複数の候補薬剤の情報を、ディスプレイの指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示するポップアップ表示工程と、を備える薬剤候補表示方法である。
【0010】
本態様によれば、複数の候補薬剤の情報を、ディスプレイの指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示するようにしたので、表示スペースを圧迫することなく識別する指定薬剤と候補薬剤とをユーザに容易に比較させることができる。
【0011】
ポップアップ表示工程は、複数の候補薬剤の情報を、画像に含まれる薬剤のうちポップアップ表示と重なる薬剤を除いて指定薬剤に最も近い位置にポップアップ表示することが好ましい。これにより、視線の移動量を少なくすることができる。
【0012】
ポップアップ表示工程は、複数の候補薬剤の情報を第1の方向に並べ、複数の候補薬剤の情報のうち最も確定の確率の高い候補薬剤の情報を指定薬剤の表示位置の第1の方向に直交する第2の方向の位置にポップアップ表示することが好ましい。これにより、複数の候補薬剤の情報を確定の確率の高いほど見やすい位置に表示することができる。
【0013】
ポップアップ表示工程は、複数の候補の情報を、指定された薬剤の表示位置に対して相対的に同一の位置にポップアップ表示することが好ましい。これにより、視線の移動量及び移動方向を一定にすることができる。
【0014】
画像表示工程は、指定薬剤について指定薬剤であること明示することが好ましい。これにより、画像に複数の薬剤が含まれる場合であっても、指定薬剤をユーザに認識させることができる。
【0015】
複数の候補薬剤のうちユーザから選択された候補薬剤を指定薬剤の正解薬剤として確定する確定工程と、正解薬剤の情報をディスプレイの画像が表示された領域とは異なる領域に表示する薬剤情報表示工程と、を備え、ポップアップ表示工程は、確定工程において指定薬剤の正解薬剤を確定するとポップアップ表示を消去することが好ましい。これにより、不要な候補薬剤の情報が表示され続けることを防止することができる。
【0016】
画像表示工程は、画像に含まれる薬剤のうち正解薬剤が確定された薬剤の表示位置の近傍に確定済みであることを示す情報を表示することが好ましい。これにより、正解薬剤が確定された薬剤がユーザにより再び指定薬剤に指定されることを防止することができる。
【0017】
確定済みであることを示す情報は、正解薬剤と関連付けられた情報を含み、薬剤情報表示工程は、正解薬剤の情報とともに関連付けられた情報を表示することが好ましい。これにより、画像に含まれる薬剤のうち正解薬剤が確定された薬剤と正解薬剤の情報との関連をユーザに認識させることができる。
【0018】
確定済みであることを示す情報は、確定した順番を示すマークを含むことが好ましい。これにより、確定した順番をユーザに認識させることができる。
【0019】
複数の候補の情報は、薬剤の名称、薬剤のマスタ画像、及び薬剤のPTP(Press Through Package)シートの画像のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、指定薬剤と候補薬剤とをユーザに容易に比較させることができる。
【0020】
上記に記載の薬剤候補表示方法をコンピュータに実行させるためのプログラムも本態様に含まれる。このプログラムが記録された、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体も本態様に含んでよい。
【0021】
上記目的を達成するための薬剤識別装置の一の態様は、プロセッサに実行させるための命令を記憶するメモリと、メモリに記憶された命令を実行するプロセッサと、を備え、プロセッサは、薬剤が撮影された画像をディスプレイに表示し、表示された画像から薬剤が表示されている位置を特定し、特定された薬剤の位置情報に基づいて表示された画像に含まれる薬剤のうちユーザから指定された指定薬剤を特定し、特定された指定薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を薬剤情報データベースから取得し、取得された複数の候補薬剤の情報を、ディスプレイの指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示する、薬剤識別装置である。
【0022】
本態様によれば、複数の候補薬剤の情報を、ディスプレイの指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示するようにしたので、表示スペースを圧迫することなく識別する指定薬剤と候補薬剤とをユーザに容易に比較させることができる。
【0023】
上記目的を達成するための薬剤識別システムの一の態様は、上記に記載の薬剤識別装置と、薬剤を撮影して画像を取得するカメラと、薬剤が撮影された画像を表示するディスプレイと、表示された画像に含まれる薬剤をユーザが指定する入力装置と、指定された薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を記憶する薬剤情報データベースと、を備える薬剤識別システムである。
【0024】
本態様によれば、複数の候補薬剤の情報を、ディスプレイの指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示するようにしたので、表示スペースを圧迫することなく識別する指定薬剤と候補薬剤とをユーザに容易に比較させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、表示スペースを圧迫することなく識別する薬剤と候補となる薬剤とをユーザに容易に比較させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、薬剤識別システムのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、3つの薬包を示す平面図である。
図3図3は、撮影装置の概略構成を示す平面図である。
図4図4は、撮影装置の概略構成を示す側面図である。
図5図5は、薬剤識別方法の工程を示すフローチャートである。
図6図6は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図7図7は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図8図8は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図9図9は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図10図10は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図11図11は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図12図12は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図13図13は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図14図14は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図15図15は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図16図16は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図17図17は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図18図18は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図19図19は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図20図20は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図21図21は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
図22図22は、ディスプレイに表示される画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。
【0028】
〔薬剤識別システムの構成〕
薬剤識別システム10は、撮影対象物である薬剤を撮影し、撮影した画像内の薬剤の正解薬剤を確定するシステムである。薬剤識別システム10は、薬剤を鑑別するシステムであってもよいし、薬剤を鑑査するシステムであってもよい。薬剤の鑑別とは、薬剤の外観からその薬剤の種別を特定することを指す。また、薬剤の鑑査とは、薬剤が処方通りに調剤されていることを確認することを指す。ここでは、識別とは鑑別及び鑑査を含む概念である。
【0029】
図1は、薬剤識別システム10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、薬剤識別システム10は、撮影装置12、入力装置20、ディスプレイ22、薬剤情報データベース24、及び薬剤識別装置26を備える。
【0030】
撮影装置12は、カメラ14、及び光源16を備える。カメラ14は、不図示の対物レンズ及び不図示の撮像素子を有するいわゆるデジタルカメラであり、撮影対象物のカラー画像を撮影する。撮像素子は、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型又はCCD(charge coupled device)型の撮像素子である。また、カメラ14は、撮像素子から読み出した画素毎のアナログ信号からデジタルの画像データを生成するデータ処理回路を備える。カメラ14は、静止画を撮影してもよいし、一定のフレームレートの動画を撮影してもよい。
【0031】
光源16は、4つの光源16A、16B、16C、及び16Dを含む。光源16A、16B、16C、及び16Dは、それぞれLED(Light Emitting Diode)光源である。光源16A、16B、16C、及び16Dは、それぞれ異なる方向から撮影対象物に可視光の照明光を照射する。
【0032】
入力装置20は、ユーザが薬剤識別装置26に各種の情報及び所望の指示を入力するための入力インターフェースである。入力装置20は、マウス等のポインティングデバイス、及びキーボード等の入力デバイスを含む。
【0033】
ディスプレイ22は、画像データ等の情報をユーザに視認させるための表示装置である。ディスプレイ22は、入力装置20での操作に必要な画面を表示し、GUI(Graphical User Interface)を実現する部分として機能する。また、ディスプレイ22は、薬剤の認識結果等を表示する。入力装置20とディスプレイ22とを一体化したタッチパネルディスプレイを適用してもよい。
【0034】
薬剤情報データベース24は、大容量ストレージ装置によって構成されるデータベースである。薬剤情報データベース24は、薬剤毎の詳細情報である薬剤情報を管理する。薬剤情報は、GS1コード、薬剤の名称、薬剤のマスタ画像、及び薬剤のPTP(Press Through Package)シートの画像を含む。
【0035】
薬剤識別装置26は、例えば汎用のコンピュータによって構成される。薬剤識別装置26は、撮影装置12から画像データを取得する。薬剤識別装置26は、入力装置20からユーザが入力した指示等を取得する。また、薬剤識別装置26は、画像データ等の情報をディスプレイ22に表示させる。さらに、薬剤識別装置26は、薬剤情報データベース24から所望の薬剤情報を取得する。
【0036】
薬剤識別装置26は、プロセッサ28、及びメモリ30を備える。プロセッサ28は、メモリ30に記憶された命令を実行する。
【0037】
プロセッサ28のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、画像処理に特化したプロセッサであるGPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるPLD(Programmable Logic Device)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0038】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、又はCPUとFPGAの組み合わせ、あるいはCPUとGPUの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の機能部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の機能部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の機能部として作用させる形態がある。第2に、SoC(System On Chip)等に代表されるように、複数の機能部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0039】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0040】
メモリ30は、プロセッサ28に実行させるための命令を記憶する。メモリ30は、不図示のRAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。プロセッサ28は、RAMを作業領域とし、ROMに記憶された薬剤識別プログラムを含む各種のプログラム及びパラメータを使用してソフトウェアを実行し、かつROM等に記憶されたパラメータを使用することで、薬剤識別装置26の各種の処理を実行する。
【0041】
〔撮影装置の構成〕
撮影装置12により撮影される撮影対象物は、例えば服用1回分の複数の薬剤である。複数の薬剤は、薬包に入っていてもよいし、薬包に入っていなくてもよい。
【0042】
図2は、複数の薬剤が一包化された3つの薬包を示す平面図である。図2に示す各薬包TPには、一例としてそれぞれ6個の薬剤Tが分包されている。各薬包TPは、帯状に連結されており、各薬包TPを切り離し可能にする切取線が入っている。ここでは、撮影装置12は、薬包TP毎に薬剤Tを撮影する。
【0043】
図3は、撮影装置12の概略構成を示す平面図である。また、図4は、撮影装置12の概略構成を示す側面図である。撮影装置12は、薬包TPを載置するためのステージ18を備える。ステージ18は、平坦な載置面18Aを水平面(XY平面)と平行にして不図示の支持部材により支持される。薬包TPは、ステージ18の載置面18Aの上に載置される。
【0044】
カメラ14は、ステージ18の載置面18Aの中心から+Z方向に一定量離れた位置に、光軸を載置面18Aに向けて不図示の支持部材により支持される。
【0045】
光源16A、16B、16C、及び16Dは、それぞれステージ18から+Z方向に一定量離れた位置に、不図示の支持部材により支持される。光源16Aは、ステージ18の中心から-X方向に一定量離れた位置に配置される。光源16Bは、ステージ18の中心から+Y方向に一定量離れた位置に配置される。光源16Cは、ステージ18の中心から+X方向に一定量離れた位置に配置される。光源16Dは、ステージ18の中心から-Y方向に一定量離れた位置に配置される。
【0046】
光源16A、16B、16C、及び16Dは、それぞれ+Z方向に対して傾斜した方向からステージ18に向かって照明光を照射する。光源16A、16B、16C、及び16Dの発光は、薬剤識別装置26により個別に制御される。
【0047】
撮影は、次のように行われる。まず、撮影装置12は、カメラ14によって薬包TPの第1の面を撮影する。撮影装置12は、光源16A、16B、16C、及び16Dを順次発光させ、光源16Aのみが発光している状態の画像、光源16Bのみが発光している状態の画像、光源16Cのみが発光している状態の画像、及び光源16Dのみが発光している状態の画像の撮影をカメラ14において行う。続いて、撮影装置12は、光源16A、16B、16C、及び16Dを同時に発光させた状態の画像の撮影をカメラ14により行う。
【0048】
次に、撮影装置12は、カメラ14によって薬包TPの第1の面とは反対面である第2の面を撮影する。このために、ユーザは、薬包TPの表裏を反転させて、薬包TPを再びステージ18の載置面18Aに載置する。表裏の反転は、不図示の自動反転機構によって行ってもよい。カメラ14による撮影は、第1の面の場合と同様である。
【0049】
光源16A、16B、16C、及び16Dを順次発光させて撮影される4枚の画像は、それぞれ照明方向が異なっている。このため、薬剤Tの表面に刻印(凹凸)がある場合に刻印による影の出方が異なるものとなる。これらの4枚の撮影画像は、薬剤の表面の刻印を強調した刻印画像を生成するために使用される。4枚の撮影画像は、薬剤の表面の印刷を強調した画像を生成するために使用されてもよい。
【0050】
なお、刻印とは、薬剤Tの表面の陥没領域である溝であり、薬剤Tの識別情報を示している。溝は、表面を掘って形成されたものに限定されず、表面を押圧することで形成されたものであってもよい。また、刻印は、割線等の識別機能を伴わないものも含んでもよい。
【0051】
光源16A、16B、16C、及び16Dを同時に発光させて撮影される1枚の画像は、輝度ムラのない画像である。このため、薬剤Tの表面の画像(薬剤画像)を切り出す場合に使用され、刻印画像が重畳される。
【0052】
なお、1つの薬包TPに対する撮影の順番、撮影枚数は上記の例に限定されない。また、撮影は暗室の状態で行われ、撮影の際に薬包TPに照射される光は、光源16からの照明光のみである。したがって、上記のようにして撮影される撮影画像は、背景は黒であり、各薬剤Tの領域は薬剤Tの色である。
【0053】
〔薬剤識別方法〕
薬剤識別システム10を用いた薬剤識別方法について説明する。薬剤識別方法は、プロセッサ28がメモリ30に記憶された薬剤識別プログラムを実行することで実現される。薬剤識別プログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体によって提供されてもよい。この場合、薬剤識別装置26は、非一時的記憶媒体から薬剤識別プログラムを読み取り、メモリ30に記憶させてもよい。
【0054】
図5は、薬剤識別方法の工程を示すフローチャートである。また、図6図22は、ディスプレイ22に表示される画面の一例である。ここでは、複数の薬剤Tを含む薬包TPについて撮影を行い、複数の薬剤Tの識別を行う例を説明する。
【0055】
図6は、薬剤識別方法を開始した時点におけるディスプレイ22の画面SC1を示す図である。図6に示すように、薬剤識別装置26は、画面SC1の上部左側を第1の領域A1、上部右側を第2の領域A2として分割している。また、薬剤識別装置26は、第1の領域A1の下部にボタンB1を配置している。ボタンB1は、薬包TPの撮影を開始するためのボタンである。
【0056】
ユーザは、撮影する薬包TPを、薬包TPの第1の面を+Z方向に向けてステージ18の載置面18Aに載置する。その後、ユーザが入力装置20を用いてボタンB1を操作すると、薬剤識別装置26は、カメラ14によって薬剤Tを含む薬包TPを撮影し、撮影された画像を取得する(ステップS1:撮影工程の一例)。
【0057】
ここでは、カメラ14は、薬剤識別装置26の制御に従って、光源16A、16B、16C、及び16Dを順次発光させて4枚の画像を撮影し、かつ光源16A、16B、16C、及び16Dを同時に発光させて1枚の画像を撮影する。薬剤識別装置26は、これらの計5枚の画像を取得する。
【0058】
次に、薬剤識別装置26は、薬剤Tが撮影された画像をディスプレイ22に表示する(ステップS2:画像表示工程)。ここでは、薬剤識別装置26は、光源16A、16B、16C、及び16Dを同時に発光させて撮影した画像をディスプレイ22の第1の領域A1に表示する。図7は、ステップS2の工程が終了した時点におけるディスプレイ22の画面SC2を示す図である。図7に示すように、ここでは薬剤Tとして、7つの錠剤T1~T7及び1つのカプセル剤TCが撮影された画像が第1の領域A1に表示されている。
【0059】
薬剤識別装置26は、第1の領域A1の下部に、ボタンB1に代えてボタンB2及びボタンB3を配置している。ボタンB2は、薬包TPの撮影を再度実行するためのボタンである。ユーザが入力装置20を用いてボタンB2を操作すると、薬剤識別装置26は、ステップS1の処理に戻る。
【0060】
ボタンB3は、ディスプレイ22に表示された画像から薬剤が表示されている位置を特定するためのボタンである。ユーザが入力装置20を用いてボタンB3を操作すると、薬剤識別装置26は、ディスプレイ22に表示された画像から薬剤Tが表示されている位置を特定する(ステップS3:表示位置特定工程)。薬剤Tが表示されている位置は、ディスプレイ22の画面内の座標位置として特定される。また、薬剤識別装置26は、位置を特定した薬剤Tの領域をそれぞれ囲う矩形の枠をディスプレイ22に表示する。さらに、薬剤識別装置26は、ステップS1で撮影された光源16A、16B、16C、及び16Dを順次発光させた4枚の画像から各薬剤Tの刻印画像を生成し、生成した刻印画像を第1の領域に表示された画像の各薬剤Tの領域にそれぞれ重畳させる。薬剤識別装置26は、光源16A、16B、16C、及び16Dを同時に発光させて撮影した画像に基づいて薬剤の印刷部分を強調する処理を行う。
【0061】
図8は、ステップS3の工程が終了した時点におけるディスプレイ22の画面SC3を示す図である。図8に示すように、ここでは7つの錠剤T1~T7及び1つのカプセル剤TCに対してそれぞれの領域を囲う矩形の枠F1が表示されている。また、錠剤T1~T7の刻印及びカプセル剤TCの印刷は、強調されて表示されている。
【0062】
薬剤識別装置26は、第1の領域A1の下部に、ボタンB3に代えてボタンB4を配置している。ボタンB4は、正解薬剤の確定を完了するためのボタンである。
【0063】
次に、薬剤識別装置26は、ステップS3において特定された薬剤Tの位置情報に基づいてディスプレイ22に表示された画像に含まれる薬剤Tのうちユーザから指定された指定薬剤を特定する(ステップS4:指定薬剤特定工程)。例えば、ユーザは、入力装置20のポインティングデバイスを用いて薬剤Tを指定する。薬剤識別装置26は、ポインティングデバイスによって指定された位置情報に基づいて、指定薬剤を特定する。
【0064】
続いて、薬剤識別装置26は、ステップS4において特定された指定薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を薬剤情報データベース24から取得する(ステップS5:薬剤候補情報取得工程)。薬剤識別装置26は、指定薬剤に対する複数の候補薬剤を、指定薬剤と薬剤情報データベース24に記憶されたマスタ画像とのテンプレートマッチングによって抽出する。薬剤識別装置26は、指定薬剤に対する複数の候補薬剤を、指定薬剤の画像を入力とする薬剤識別AI(Artificial Intelligence)によって抽出してもよい。ここでは、薬剤識別装置26は、3つの候補薬剤を抽出し、抽出した3つの候補薬剤の情報を薬剤情報データベース24から取得する。
【0065】
さらに、薬剤識別装置26は、ステップS5において取得された複数の候補薬剤の情報を、ディスプレイ22の指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示する(ステップS6:ポップアップ表示工程)。ここで、複数の候補薬剤の情報をポップアップ表示するとは、ディスプレイ22のレイヤの最前に複数の候補薬剤の情報を表示することをいう。ポップアップ表示された複数の候補薬剤の情報は、ディスプレイ22の第1の領域A1、第2の領域A2、及びそれ以外の領域の少なくとも1つの領域に重畳して表示される。ここで、複数の候補薬剤の情報が表示された範囲の背面となる部分は、複数の候補の情報に隠れて視認できない状態となる。なお、複数の候補薬剤の情報と指定薬剤とが同時に観察できる位置とは、複数の候補薬剤の情報と指定薬剤とがユーザの視界に同時に入る位置であればよい。
【0066】
図9は、ステップS6の工程が終了した時点におけるディスプレイ22の画面SC4を示す図である。図9に示すように、ここではユーザにより錠剤T1が指定されており、錠剤T1に対する候補薬剤の情報がポップアップP1としてポップアップ表示されている。ポップアップP1には、候補薬剤の情報として、候補薬剤C1、C2、及びC3の情報が含まれている。
【0067】
ここで、指定薬剤である錠剤T1の領域を囲む枠F1は、指定薬剤であることをユーザに対して明示するために、その他の薬剤Tの領域を囲む枠F1とは異なる太さで表示される。例えば、錠剤T1の領域を囲む枠F1の線を相対的に太くし、錠剤T1以外の薬剤Tの領域を囲む枠F1の線を相対的に細くする。枠の線の太さを異ならせるのではなく、枠の形状、枠の色等を異ならせて表示させてもよい。また、枠F1を異ならせるのではなく、ポップアップP1から指定薬剤に向けて矢印線を表示する等の方法で明示してもよい。
【0068】
図10は、矢印F2を用いて指定薬剤を明示する場合のディスプレイ22の画面SC4Aを示す図である。また、図11は、吹出しF3を用いて指定薬剤を明示する場合のディスプレイ22の画面SC4Bを示す図である。
【0069】
図9の説明に戻り、この画面SC4において、ユーザは、入力装置20のポインティングデバイスを用いてポップアップP1に含まれる3つの候補薬剤C1、C2、及びC3の情報のうちの1つを選択することができる。ここで、選択とは、例えばマウスカーソルを候補薬剤C1、C2、及びC3のいずれかの位置に移動させることを指す。図12は、ユーザが候補薬剤を選択した時点におけるディスプレイ22の画面SC5を示す図である。図12に示すように、画面SC5では、マウスカーソルMCを用いてユーザに選択された候補薬剤C1の薬剤名の領域の色が変更され、候補薬剤C1が選択された薬剤であることが明示されている。
【0070】
ユーザが、複数の候補薬剤のうちのいずれかの候補薬剤を選択した状態で例えばマウスボタンをクリック操作すると、選択された候補薬剤が正解薬剤として確定される。すなわち、薬剤識別装置26は、複数の候補薬剤のうちユーザから選択された後にクリック操作された候補薬剤を指定薬剤の正解薬剤として確定する(ステップS7:確定工程)。また、薬剤識別装置26は、確定した正解薬剤の情報をディスプレイの画像が表示された領域とは異なる領域に表示し(ステップS8:薬剤情報表示工程)、ポップアップ表示されたポップアップP1を消去する(ポップアップ表示工程の一例)。
【0071】
さらに、薬剤識別装置26は、画像に含まれる薬剤のうち正解薬剤が確定された薬剤の表示位置の近傍に確定済みであることを示す情報を表示する(画像表示工程の一例)。確定済みであることを示す情報は、正解薬剤と関連付けられた情報を含む。薬剤識別装置26は、正解薬剤の情報とともに関連付けられた情報を表示する(薬剤情報表示工程の一例)。確定済みであることを示す情報は、確定した順番を示すマークを含む。確定済みであることを示す情報は、正解薬剤が確定された薬剤の表示位置の近傍にチェックマーク(日本では「レ点」ともいう)を付与してもよいし、正解薬剤が確定された薬剤の枠F1の内側を半透明グレーの表示にしてもよい。
【0072】
図13は、この時点におけるディスプレイ22の画面SC6を示す図である。図13に示すように、画面SC6では、ディスプレイ22の第2の領域A2に、ユーザに選択されてクリック操作された候補薬剤C1が正解薬剤D1として表示され、ポップアップP1は消去されている。正解薬剤D1の情報は、薬剤の名称、薬剤のマスタ画像、及び薬剤のPTP(Press Through Package)シートの画像のうちの少なくとも1つを含む。薬剤のマスタ画像は、表側の画像及び裏側の画像を含むことが好ましい。ここでは、正解薬剤D1の情報として、さらに錠数を表示している。したがって、ユーザに正解薬剤の薬剤数を認識させることができる。
【0073】
また、画面SC6では、第1の領域A1の錠剤T1の領域の近傍に確定した順番を示すマークM1が表示され、第2の領域A2の正解薬剤D1には確定した順番を示すマークN1が表示されている。マークM1及びマークN1は、錠剤T1が確定済みであり、錠剤T1と正解薬剤D1とが関連付けられており、かつ確定した順番が1番目であることを示している。
【0074】
この後、ユーザが入力装置20を用いてボタンB4を操作すると、薬剤識別装置26は、本フローチャートの処理を終了する。
【0075】
なお、ユーザが錠剤T1以外の薬剤Tについて正解薬剤を確定させる場合は、ステップS4~S8の工程を再度実行すればよい。
【0076】
〔複数の薬剤について正解薬剤を確定する場合〕
図14は、画面SC6が表示された状態からユーザが錠剤T2を2つ目の指定薬剤として指定した時点におけるディスプレイ22の画面SC7を示す図である。図14に示すように、指定された錠剤T2に対する候補薬剤の情報がポップアップP2としてポップアップ表示されている。ポップアップP2には、候補薬剤の情報として、候補薬剤C4、C5、及びC6の情報が含まれている。また、指定薬剤である錠剤T2の領域を囲む枠F1は、錠剤T2以外の薬剤Tの領域を囲む枠F1より相対的に太い線で表示される。
【0077】
図15は、画面SC7が表示された状態からユーザが候補薬剤C4を選択した時点におけるディスプレイ22の画面SC8を示す図である。図15に示すように、画面SC8では、マウスカーソルMCを用いてユーザに選択された候補薬剤C4の薬剤名の領域の色が変更されている。
【0078】
図16は、画面SC8が表示された状態から錠剤T2の正解薬剤が確定された時点でのディスプレイ22の画面SC9を示す図である。図16に示すように、画面SC9では、ディスプレイ22の第2の領域A2に、ユーザに選択されてクリック操作された候補薬剤C4が正解薬剤D2として表示され、ポップアップP2は消去されている。また、画面SC9では、第1の領域A1の錠剤T2の領域の近傍に確定した順番を示すマークM2が表示され、第2の領域A2の正解薬剤D2には確定した順番を示すマークN2が表示されている。マークM2及びマークN2は、錠剤T2が確定済みであり、錠剤T2と正解薬剤D2とが関連付けられており、かつ確定した順番が2番目であることを示している。
【0079】
〔同じ薬包の第2の面を続けて撮影する場合〕
図17は、ユーザが薬包TPの第1の面の撮影画像から錠剤T1~T4の正解薬剤を確定させた時点でのディスプレイ22の画面SC10を示す図である。図17に示すように、画面SC10では、ディスプレイ22の第2の領域A2に、錠剤T1~T4に対する正解薬剤D1~D4が表示されている。また、画面SC10は、第1の領域A1にボタンB1が配置されている。
【0080】
ユーザは、ステージ18の載置面18Aに載置された薬包TPの表裏を反転させ、薬包TPの第1の面とは反対の第2の面を+Z方向に向けて再び載置面18Aに載置する。図18は、画面SC10が表示された状態でユーザが入力装置20を用いてボタンB1を操作することで、薬包TPの第2の面が撮影され、撮影された画像が第1の領域A1に表示された時点でのディスプレイ22の画面SC11を示す図である。
【0081】
また、図19は、画面SC11が表示された状態から薬剤識別装置26がディスプレイ22に表示された画像の薬剤が表示されている位置を特定した時点でのディスプレイ22の画面SC12を示す図である。図19に示すように、画面SC12は、錠剤T1~T7に対してそれぞれの領域を囲う矩形の枠F1が表示されている。また、画面SC12は、錠剤T1~T7の刻印が強調されて表示されている。
【0082】
画面SC12では、第1の領域A1の錠剤T1~T4の領域の近傍にそれぞれ確定した順番を示すマークM1~M4が表示され、第2の領域A2の正解薬剤D1~D4にはそれぞれ確定した順番を示すマークN1~N4が表示されている。このように、薬剤識別装置26は、薬包TPの第2の面を撮影した画像から、正解薬剤がすでに確定された薬剤を認識できる場合には、第2の面を撮影した画像の各薬剤の領域の近傍にそれぞれ確定した順番を示すマークを表示する。
【0083】
図20は、画面SC12が表示された状態からユーザが錠剤T5を5つ目の指定薬剤として指定した時点でのディスプレイ22の画面SC13を示す図である。図20に示すように、指定された錠剤T5に対する候補薬剤の情報がポップアップP5としてポップアップ表示されている。ポップアップP5には、候補薬剤の情報として、候補薬剤C7、C8、及びC9の情報が含まれている。また、指定薬剤である錠剤T5の領域を囲む枠F1は、錠剤T5以外の薬剤Tの領域を囲む枠F1より相対的に太い線で表示される。
【0084】
図21は、画面SC13が表示された状態からユーザが候補薬剤C7を選択した時点でのディスプレイ22の画面SC14を示す図である。図21に示すように、画面SC14では、ユーザに選択された候補薬剤C7の薬剤名の領域の色が変更されている。
【0085】
図22は、画面SC14が表示された状態から錠剤T5の正解薬剤が確定された時点でのディスプレイ22の画面SC15を示す図である。図22に示すように、画面SC15では、ディスプレイ22の第2の領域A2に、ユーザに選択されてクリック操作された候補薬剤C7が正解薬剤D5として表示され、ポップアップP5は消去されている。また、画面SC15では、第1の領域A1の錠剤T5の領域の近傍に確定した順番を示すマークM5が表示され、第2の領域A2の正解薬剤D5には確定した順番を示すマークN5が表示されている。マークM5及びマークN5は、錠剤T5が確定済みであり、錠剤T5と正解薬剤D5とが関連付けられており、かつ確定した順番が5番目であることを示している。
【0086】
このように、薬包TPの第1の面を撮影した画像から正解薬剤を確定できなかった薬剤についても、第1の面とは反対の第2の面を撮影した画像から正解薬剤を確定することができる。
【0087】
薬剤識別方法の各工程のうち、ステップS1~ステップS6の工程が薬剤候補表示方法を構成する。
【0088】
〔ポップアップの表示タイミング〕
候補薬剤の情報を含むポップアップがポップアップ表示されるタイミングは、薬剤識別装置26がユーザから指定された指定薬剤を特定し、指定薬剤の正解薬剤を確定するための複数の候補薬剤の情報を薬剤情報データベースから取得したタイミングである。
【0089】
〔ポップアップの消去タイミング〕
候補薬剤の情報を含むポップアップが消去されるタイミングは、指定薬剤の正解薬剤が確定したタイミングである。
【0090】
〔ポップアップの表示位置〕
薬剤識別装置26は、複数の候補薬剤の情報を含むポップアップを、ディスプレイ22の第1の領域A1に表示された画像内の指定薬剤と同時に観察できる位置にポップアップ表示する。ユーザが指定薬剤と複数の候補薬剤の情報とを同時に観察できるためには、画像内の指定薬剤の領域とが重畳しない位置に候補薬剤の情報を含むポップアップがポップアップ表示される必要がある。このようにポップアップ表示することで、表示スペースを圧迫することなく識別する指定薬剤と候補薬剤とをユーザに容易に比較させることができる。
【0091】
薬剤識別装置26は、複数の候補薬剤の情報を含むポップアップを、画像に含まれる薬剤のうちポップアップと重なる薬剤を除いて指定薬剤に最も近い位置にポップアップ表示する。例えば、図14に示すポップアップP2は、ポップアップP2と重なるカプセル剤TC、錠剤T3、及び錠剤T5を除き、指定薬剤である錠剤T2に最も近い位置にポップアップ表示されている。このようにポップアップ表示することで、正解薬剤を確定する際の視線の移動量を少なくすることができる。
【0092】
なお、薬剤とポップアップの距離は、ポップアップを指定薬剤の右側に表示する場合であれば、薬剤領域の右端とポップアップの左端との間の距離とすることができる。
【0093】
また、薬剤識別装置26は、ポップアップ内に複数の候補薬剤の情報を第1の方向に並べ、複数の候補薬剤の情報のうち最も確定の確率(照合率)の高い候補薬剤の情報を指定薬剤の表示位置の第1の方向に直交する第2の方向の位置に配置してポップアップ表示する。例えば、第1の方向はディスプレイ22の縦方向であり、第2の方向はディスプレイ22の横方向である。
【0094】
確定の確率は、マスタ画像とのテンプレートマッチングによって候補薬剤を抽出した場合であれば、マスタ画像と指定薬剤の画像との合致率を表すスコアを用いればよい。また、薬剤識別AIによって抽出した場合であれば、薬剤識別AIのスコアを用いれよい。
【0095】
さらに、薬剤識別装置26は、複数の候補薬剤の情報のうち、最も確定の確率の高い薬剤の情報が指定薬剤の領域画像に近い位置に配置するようにポップアップ表示する。
【0096】
例えば、図14に示すポップアップP2は、複数の候補薬剤C4、C5、及びC6の情報が縦方向に並べられ、最も確定の確率の高い候補薬剤C4の情報が指定薬剤である錠剤T2の表示位置の右側の真横の位置に表示されている。
【0097】
このようにポップアップ表示することで、指定薬剤と複数の薬剤候補の情報とをユーザが比較しやすくなる。また、視線と操作とが特定エリアに集まることで、ユーザの作業の効率化を図ることができる。
【0098】
さらに、薬剤識別装置26は、複数の候補の情報を含むポップアップを、指定薬剤の表示位置に対して相対的に同一の位置にポップアップ表示する。すなわち、図12に示す指定薬剤である錠剤T1とポップアップP1、図14に示す指定薬剤である錠剤T2とポップアップP2、及び図20に示す指定薬剤である錠剤T5とポップアップP5は、相対的に同一の位置関係を有している。相対的に同一の位置とは、指定薬剤の位置に対するポップアップの位置が、上下左右の方向と距離とが固定された位置であることをいう。
【0099】
このように複数の候補の情報を含むポップアップを、指定薬剤の表示位置に対して常に相対的に同一の位置にポップアップ表示することで、ポインティングデバイスによるカーソルの移動パターンが固定され、ポインティングデバイスの操作が迅速かつ容易になる。
【0100】
〔ポップアップの表示内容〕
ポップアップに含まれる複数の候補の情報は、薬剤の名称、薬剤のマスタ画像、及び薬剤のPTP(Press Through Package)シートの画像のうちの少なくとも1つを含む。薬剤のマスタ画像は、表側の画像及び裏側の画像を含むことが好ましい。これにより、候補薬剤の情報をユーザに報知することができる。
【0101】
また、ポップアップに含まれる複数の候補の情報がマスタ画像を含む場合は、指定薬剤と最も近い位置にマスタ画像を表示させることが好ましい。これにより、指定薬剤の画像とマスタ画像との比較が容易になる。
【0102】
また、ポップアップに含まれる複数の候補の情報は、確定の確率の高い順に配置することが好ましい。例えば、複数の候補の情報をディスプレイ22の縦方向に並べる場合、照合率の高い順に上から表示する。図14に示すポップアップP2の場合であれば、照合率の高い順に候補薬剤C4、C5、及びC6である。
【0103】
〔その他〕
本発明の技術的範囲は、上記の実施形態に記載の範囲には限定されない。各実施形態における構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各実施形態間で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0104】
10…薬剤識別システム
12…撮影装置
14…カメラ
16、16A~16D…光源
18…ステージ
18A…載置面
20…入力装置
22…ディスプレイ
24…薬剤情報データベース
26…薬剤識別装置
28…プロセッサ
30…メモリ
A1…第1の領域
A2…第2の領域
B1~B4…ボタン
C1~C9…候補薬剤
D1~D5…正解薬剤
F1…枠
F2…矢印
F3…吹出し
MC…マウスカーソル
M1~M5…マーク
N1~N5…マーク
P1、P2、P5…ポップアップ
SC1~SC15…画面
T…薬剤
T1~T7…錠剤
TC…カプセル剤
TP…薬包
S1~S8…薬剤識別方法の各工程
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22