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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】核酸分子およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20231030BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231030BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20231030BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231030BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231030BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C12N15/63 Z
A61K31/7105
A61K48/00
A61P7/04
C12N15/113 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020506869
(86)(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-05
(86)【国際出願番号】 US2018046110
(87)【国際公開番号】W WO2019032898
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-04
(31)【優先権主張番号】62/543,297
(32)【優先日】2017-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512147244
【氏名又は名称】バイオベラティブ セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】アレクシー・セレジン
(72)【発明者】
【氏名】トンヤオ・リウ
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・パタロヨ-ホワイト
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・ドレイガー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ティー・ピーターズ
(72)【発明者】
【氏名】ジァイン・リウ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/127057(WO,A1)
【文献】特開2011-067212(JP,A)
【文献】国際公開第2017/075619(WO,A1)
【文献】特表2014-511690(JP,A)
【文献】特表2002-527493(JP,A)
【文献】特表2014-511180(JP,A)
【文献】Methods, 2002, Vol.28, p.168-181
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/63
A61K 31/7105
A61K 48/00
A61P 7/04
C12N 15/113
C12N 15/12
C12N 15/62
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の逆方向末端反復配列(ITR)、第2のITRおよび遺伝子カセットを含む核酸分子であって;
ここで、該第1のITRおよび該第2のITRは非アデノ随伴ウイルス(非AAV)由来のITRであり、ここで、非AAVは、エリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)またはガチョウパルボウイルス(GPV)株であり;
ここで、該遺伝子カセットは該第1のITRと該第2のITRの間に配置され、
ここで、該遺伝子カセットは治療用タンパク質、miRNA、または治療用タンパク質およびmiRNAの両方をコードするヌクレオチド配列を含み、
ここで、核酸分子は無カプシドベクターである、前記核酸分子。
【請求項2】
治療用タンパク質は凝固因子を含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号167、168、169、170、176、171またはその組合せから選択される配列を含む、請求項1または2に記載の核酸分子。
【請求項4】
組織特異的プロモーターをさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項5】
プロモーターは肝細胞、内皮細胞、筋細胞、シヌソイド細胞またはその任意の組合せにおける治療用タンパク質の発現を促進する、請求項に記載の核酸分子。
【請求項6】
プロモーターは、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-抗トリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-抗トリプシン(AAT)、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、デスミン(DES)、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、tMCKおよびホスホ
グリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターからなる群から選択される、請求項に記載の核酸分子。
【請求項7】
遺伝子カセットは、5’から3’方向の順に
(a)イントロン配列、
(b)転写後調節エレメント、
(c)3’UTRポリ(A)テール配列、
(d)エンハンサー配列、または、
(e)(a)~(d)の任意の組合せ
を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項8】
(a)イントロン配列は、治療用タンパク質をコードするヌクレオチド配列の5’側に配置されるか;
(b)転写後調節エレメントは、突然変異したウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合部位、DNA核標的化配列または任意のその組合せを含むか;
(c)3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)および任意のその組合せからなる群から選択されるか;または
(d)(a)~(c)の任意の組合せである、
請求項に記載の核酸分子。
【請求項9】
(a)イントロン配列は、配列番号115を含むか;
(b)マイクロRNA結合部位は、miR142-3pへの結合部位を含むか;
(c)3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)を含むか;または
(d)(a)~(c)の任意の組合せである、
請求項に記載の核酸分子。
【請求項10】
(a)第1のITR;
(b)TTPプロモーターを含む組織特異的プロモーター配列;
(c)合成イントロンであるイントロン;
(d)凝固因子をコードするヌクレオチド配列;
(e)WPREを含む転写後調節エレメント;
(f)bGHpAを含む3’UTRポリ(A)テール配列;および
(g)第2のITR
をこの順序で含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項11】
ヌクレオチド配列によりコードされる治療用タンパク質は、凝固因子を含み、凝固因子は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第V因子(FV)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)または任意のその組合せを含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項12】
FVIIIは、配列番号106および109から選択される配列に示すアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の核酸分子。
【請求項13】
凝固因子は、アルブミン、免疫グロブリンFc領域、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、トランスフェリンおよび任意のその組合せからなる群から選択される異種部分を含む、請求項12に記載の核酸分子。
【請求項14】
脂質ナノ粒子を含む送達剤で製剤化される、請求項1~13のいずれか1項に記載の核酸分子。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の核酸分子および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項16】
請求項15のいずれか1項に記載の核酸分子および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物であって、それを必要とする対象において治療用タンパク質、miRNA、または治療用タンパク質およびmiRNAの両方を発現させるために使用される、前記医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出される配列表への参照
ASCIIテキストファイル(名称:4159_493PC01_ST25;サイズ:434,561バイト;作成日:2018年8月9日)の電子的に提出された配列表の内容は、参照により本明細書に完全に組み入れる。
【背景技術】
【0002】
遺伝子療法は、様々な疾患を治療する持続的手段を提供する。過去には、遺伝子療法は、ウイルスの使用に一般的に依存した。この目的のために選択することができる多数のウイルス剤があり、各々、それらを遺伝子療法のために多かれ少なかれ好適にするであろう明瞭な特性を有する。(非特許文献1)。しかし、それらの免疫原性プロファイルまたはがんを引き起こすそれらの傾向を含む一部のウイルスのベクターの望ましくない特性は臨床上の安全性懸念をもたらしており、最近まで、クリニックにおけるそれらの現在の使用をある特定の適用、例えば、ワクチンおよび腫瘍崩壊戦略に制限している。(非特許文献2)。
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、最も一般的に調査された遺伝子療法ベクターの1つである。AAVは、概ね4.8キロベース(kb)の小さな一本鎖DNAゲノムを囲んで保護している、タンパク質のシェルである。(非特許文献3)。AAVはパルボウイルス科に属し、複製するために他のウイルス、主にアデノウイルスとの共感染に依存する。同上。その一本鎖ゲノムは、3つの遺伝子、Rep(複製)、Cap(カプシド)およびaap(アセンブリー)を含有する。同上。これらのコード配列には、ゲノムの複製およびパッケージングのために必要とされる逆方向末端反復配列(ITR)が隣接する。同上。2つのシス作用性AAV ITRは、長さが概ね145ヌクレオチドであり、DNA複製の開始の間にプライマーとして機能するT字形ヘアピン構造に折りたたむことができる中断されたパリンドローム配列を有する。
【0004】
しかし、遺伝子送達ベクターとしての従来のAAVの使用は、多少の欠点をもたらした。主要な欠点の1つは、約4.5kbの異種DNAのAAVの限定されたウイルスのパッケージング能力に関連している。(非特許文献4)。さらに、AAVベクターの投与は、ヒトにおいて免疫応答を誘導することができる。AAVは一部の他のウイルス(すなわち、アデノウイルス)より免疫原性でないことが示されているが、カプシドタンパク質はヒト免疫系の様々な構成要素を誘発することができる。非特許文献3を参照のこと。AAVはヒト集団における一般的なウイルスであり、ほとんどの人々はAAVに曝露しており、したがってほとんどの人々は彼らが以前に曝露した特定のバリアントに対して免疫応答をすでに起こしている。この既存の適応応答は、AAVによる以降の再感染の臨床効能を減弱させるかもしれないNAbおよびT細胞、ならびに/または、AVVベースの遺伝子療法治療に対して既存の抗AAV免疫を有する患者を非適格にする、形質導入された細胞の排除を含むことができる。局所的にまたは全身的に投与されるかどうかにかかわらず、ウイルスは外来タンパク質と見られ、したがって、適応免疫系はそれを排除しようと試みる。さらに、AAV治療によって誘導される抗AAV中和抗体は、効能の治療レベルが最初のAAV治療によって達成しなかったときにAAVによる反復治療を妨害する。さらに、AAV ITRのT字形ヘアピンループが、AAV ITRのT字形ヘアピン構造に結合する宿主細胞タンパク質/タンパク質複合体による阻害に感受性であることを、証拠は示唆する。例えば、非特許文献5を参照のこと。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Zhouら、Adv Drug Deliv Rev.106(Pt A):3~26頁、2016年
【文献】Cotterら、Front Biosci.10:1098~105頁(2005)
【文献】Nasoら、BioDrugs、31(4):317~334頁、2017年
【文献】Dongら、Hum Gene Ther.7(17):2101~12頁、1996年
【文献】Zhouら、Scientific Reports 7:5432頁(2017年7月14日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、既存のAAVベクター技術の予想外の結果および限界の一部を回避しつつ、in vitroおよびin vivoの場面で標的配列、例えば治療的タンパク質および/またはmiRNAを効率的および持続的に発現させる必要性が当技術分野に存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、第1の逆方向末端反復配列(ITR)、第2のITR、および治療的タンパク質をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子であって;第1のITRおよび/または第2のITRは非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRであり、遺伝子カセットは第1のITRと第2のITRの間に配置され、治療的タンパク質は凝固因子を含む、核酸分子に関する。一部の実施形態では、非AAVは、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーおよび任意のその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、第1のITRは非AAVのITRであり、第2のITRはアデノ随伴ウイルス(AAV)のITRであるか、または第1のITRはAAVのITRであり、第2のITRは非AAVのITRであり。他の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは非AAVのITRである。一部の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは同一である。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、中断されないパリンドローム配列を含む。他の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、中断されるパリンドローム配列を含む。
【0008】
一部の実施形態では、核酸分子中の非AAVは、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーである。一部の実施形態では、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーは、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーはエリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)である。一部の実施形態では、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーは、タイワンアヒルパルボウイルス(MDPV)株である。一部の実施形態では、MDPV株は弱毒化FZ91-30である。一部の実施形態では、MDPV株は、病原性のYYである。さらに一部の実施形態では、デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)は、デペンドウイルス(Dependovirus)ガチョウパルボウイルス(GPV)株である。一部の実施形態では、GPV株は弱毒化82-0321Vである。一部の実施形態では、GPV株は病原性のBである。一部の実施形態では、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーは、ブタパルボウイルス(U44978)、マウス微小ウイルス(U34256)、イヌパルボウイルス(M19296)、ミンク腸炎ウイルス(D00765)および任意のその組合せからなる群から選択される。
【0009】
一部の実施形態では、核酸分子はプロモーターをさらに含む。一部の実施形態では、プロモーターは、組織特異的プロモーターである。一部の実施形態では、プロモーターは、肝細胞、内皮細胞、筋細胞、シヌソイド細胞または任意のその組合せにおける治療的タンパク質の発現を促進する。一部の実施形態では、プロモーターは、凝固因子をコードする核酸配列の5’側に配置される。一部の実施形態では、プロモーターは、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-抗トリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-抗トリプシン(AAT)、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、デスミン(DES)、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、tMCK、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターおよび任意のその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、プロモーターはTTPプロモーターを含む。
【0010】
一部の実施形態では、核酸分子はイントロン配列をさらに含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、凝固因子をコードする核酸配列の5’側に配置される。一部の実施形態では、イントロン配列は、プロモーターの3’側に配置される。一部の実施形態では、イントロン配列は、合成イントロン配列を含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、配列番号115を含む。
【0011】
一部の実施形態では、核酸分子は、転写後調節エレメントを含む。一部の実施形態では、転写後調節エレメントは、凝固因子をコードする核酸配列の3’側に配置される。一部の実施形態では、転写後調節エレメントは、突然変異したウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合部位、DNA核標的化配列または任意のその組合せを含む。一部の実施形態では、マイクロRNA結合部位は、miR142-3pへの結合部位を含む。
【0012】
一部の実施形態では、核酸分子は、3’UTRポリ(A)テール配列を含む。一部の実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)および任意のその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)を含む。
【0013】
一部の実施形態では、核酸分子は、エンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、エンハンサー配列は、第1のITRと第2のITRの間に配置される。
【0014】
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、遺伝子カセットおよび第2のITRをこの順序で含み;ここで、遺伝子カセットは組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、治療的タンパク質、例えば凝固因子またはmiRNAをコードする核酸配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む。
【0015】
一部の実施形態では、核酸分子は、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列をこの順序で含む。
【0016】
一実施形態では、核酸分子は:
(a)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第1のITR;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えば、TTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば、合成イントロン;
(d)治療的タンパク質、例えば凝固因子またはmiRNAをコードするヌクレオチド配列;
(e)転写後調節エレメント、例えば、WPRE;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えば、bGHpA;および
(g)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第2のITR、
を含む。
【0017】
一部の実施形態では、核酸分子は、一本鎖核酸を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、二本鎖核酸を含む。
【0018】
一部の実施形態では、核酸分子は、治療的タンパク質、例えば凝固因子をコードする遺伝子を含み、ここで、凝固因子は、肝細胞、内皮細胞、筋細胞、シヌソイド細胞または任意のその組合せによって発現される。一部の実施形態では、凝固因子は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第V因子(FV)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)または任意のその組合せを含む。一部の実施形態では、凝固因子は、FVIIIである。一部の実施形態では、FVIIIは、完全長の成熟FVIIIを含む。一部の実施形態では、FVIIIは、配列番号106のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメインおよび部分的なBドメインを含むか、またはBドメインを含まない。一部の実施形態では、FVIIIは、配列番号109のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0019】
一部の実施形態では、凝固因子は異種部分を含む。一部の実施形態では、異種部分は、アルブミンもしくはその断片、免疫グロブリンFc領域、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、アルブミン結合部分、その誘導体、および任意のその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、異種部分はFVIIIのN末端またはC末端に連結されるか、FVIIIの2つのアミノ酸の間に挿入される。一部の実施形態では、異種部分は、表5に掲載される挿入部位から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位の2つのアミノ酸の間に挿入される。一部の実施形態では、FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、場合によりBドメイン、および異種部分をさらに含み、ここで、異種部分は、成熟FVIII(配列番号106)に対応するアミノ酸745のすぐ下流に挿入される。
【0020】
一部の実施形態では、FVIIIは、FcRn結合パートナーをさらに含む。一部の実施形態では、FcRn結合パートナーは、免疫グロブリン定常ドメインのFc領域を含む。一部の実施形態では、FVIIIをコードする核酸配列は、コドン最適化される。一部の実施形態では、FVIIIをコードする核酸配列は、ヒトにおける発現のためにコドン最適化される。
【0021】
一部の実施形態では、FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号107のヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号71のヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0022】
一部の実施形態では、核酸分子は、送達剤で製剤化される。一部の実施形態では、送達剤は、1つまたはそれ以上の脂質ナノ粒子を含む。一部の実施形態では、送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、エンドソームおよび任意のその組合せからなる群から選択される。
【0023】
一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内、経皮、皮内、皮下、肺または経口送達、または任意のその組合せのために製剤化される。一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内送達のために製剤化される。
【0024】
一部の実施形態では、本明細書で、本開示全体に記載される核酸分子を含むベクターが提供される。一部の実施形態では、本明細書で、本開示全体に記載される核酸分子によってコードされるポリペプチドが提供される。一部の実施形態では、本明細書で、本開示全体に記載される核酸分子を含む宿主細胞が提供される。
【0025】
一部の実施形態では、本明細書で、(a)本明細書に記載される核酸、本開示全体に記載される核酸分子を含むベクター、本開示全体に記載される核酸分子によってコードされるポリペプチド、または本開示全体に記載される核酸分子を含む宿主細胞;(b)LNP;および(c)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。一部の実施形態では、本明細書で、本開示全体に記載される核酸分子およびそれを必要とする対象に核酸分子を投与するための説明書を含むキットが提供される。一部の実施形態では、本明細書で、本明細書に記載される核酸分子の生産のためのバキュロウイルス系が提供される。一部の実施形態では、本明細書で、本明細書に開示される核酸分子は昆虫細胞において生成されるバキュロウイルス系が提供される。
【0026】
一部の実施形態では、本明細書で、発現構築物のためのナノ粒子送達系が提供され、ここで、発現構築物は本明細書に記載される核酸分子を含む。
【0027】
本明細書で、凝固活性を有するポリペプチドを生成する方法であって、本明細書に開示される宿主細胞を適する条件下で培養すること、および凝固活性のあるポリペプチドを回収することを含む方法も開示される。一部の実施形態では、本明細書で、それを必要とする対象において凝固因子を発現させる方法であって、本明細書に開示される核酸分子、本明細書に開示されるベクター、本明細書に開示されるポリペプチドまたは本明細書に開示される医薬組成物を対象に投与することを含む方法が開示される。一部の実施形態では、本明細書で、凝固因子欠損を有する対象を治療する方法であって、本明細書に開示される核酸分子、本明細書に開示されるベクター、本明細書に開示されるポリペプチドまたは本明細書に開示される医薬組成物を対象に投与することを含む方法が開示される。一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内、経皮、皮内、皮下、経口、肺、または任意のその組合せで投与される。一部の実施形態では、核酸分子は、静脈内投与される。一部の実施形態では、この方法は、対象に第2の薬剤を投与することをさらに含む。一部の実施形態では、対象は、哺乳動物である。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0028】
一部の実施形態では、対象への核酸分子の投与は、投与前の対象におけるFVIII活性と比較して増加したFVIII活性をもたらし、ここで、FVIII活性は少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍または少なくとも約100倍増加する。
【0029】
一部の実施形態では、対象は、出血障害を有する。一部の実施形態では、出血障害は、血友病である。一部の実施形態では、出血障害は、血友病Aである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1-1】図1Aは、一本鎖凝固因子(例えば、FVIII)発現カセットの概略図である。非AAV由来の5’ITR(ssDNA構造の末端にヘアピンループを有する)、非AAV由来の3’ITR(ヘアピンループを有する)、プロモーター配列(例えば、TTPp)、および導入遺伝子配列、例えばBドメイン内に挿入されたXTEN144を有するFVIIIco6XTEN配列の位置が示される。例示的な発現カセットは、さらなる可能なエレメント、例えばイントロン配列、WPREmut配列、およびbGHpA配列も示す。図1B図1Dは、図1Aに示すカセットのような、一本鎖凝固因子発現カセットを調製するために使用されるプラスミドの概略図であり、ここで、カセットのITRはAAV2(図1B)、B19(図1C)、またはGPV(図1D)に由来する。本明細書に示したように、ssFVIII発現カセットを含むプラスミド構築物は、PvuII(PvuII部位において)(図1B)またはLguI(LguI部位において)(図1Cおよび図1D)で消化され、ウイルスゲノムを放出する。二本鎖DNAは95℃に加熱され、ssDNAを産生し、次いで4℃でインキュベートしてITR構造を形成させた。
図1-2】図1-2の続き。
図1-3】図1-3の続き。
図2A図2Aは、様々なパルボウイルス科のメンバー間の関係を示す系統樹である。B19、AAV-2、およびGPVは白抜きの四角でマークした。
図2B図2Bは、ヘアピン構造を含む、様々なカセットの概略図である。
図3図3Aおよび図3Bは、B19、GPV、およびAAV2(図3A)ならびにB19およびGPV(図3B)のITRのアラインメントを示す図である。グレーの影は相同性を示す。
図4-1】図4A図4Cは、Hem Aマウスにおける水圧注入(HDI)による一本鎖FVIII-AAVの裸のDNA(ssAAV-FVIII;図2A)、ssDNA-B19 FVIII(図2B)、またはssDNA-GPV FVIII(図2C)投与後のFVIII血漿活性を示す図である。FVIII活性は、50μg/マウス(図2C)、20μg/マウス(図2Aおよび図2B)、10μg/マウス(図2Aおよび図2C)、または5μg/マウス(図2A)でのssDNAの1回のHDIによって処置されたマウスにおいて、24時間、3日、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、および4カ月で血漿試料において測定された(対照のパーセンテージとして)。プラスミドDNA 5μg/マウスのHDIが対照として与えられた(図2A図2C)。
図4-2】図4-1の続き。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本開示は、第1の逆方向末端反復配列(ITR)、第2のITR、および、例えば治療的タンパク質またはmiRNAをコードする遺伝子カセットを含むプラスミド様核酸分子を記載し、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRは非アデノ随伴ウイルスのITRである(例えば、第1のITRおよび/または第2のITRは非AAVに由来する)。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、治療的タンパク質をコードする。一部の実施形態では、治療的タンパク質は、凝固因子、成長因子、ホルモン、サイトカイン、抗体、その断片、またはその組合せから選択されるタンパク質を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファ-グルコシダーゼ)または任意のその組合せをコードする。
【0032】
一部の実施形態では、治療的タンパク質は、凝固因子を含む。特定の一実施形態では、治療的タンパク質は、FVIIIまたはFIXタンパク質を含む。
【0033】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードする。ある特定の実施形態では、miRNAは、SOD1、HTT、RHOまたは任意のその組合せから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する。
【0034】
ある特定の実施形態では、非AAVは、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーおよび任意のその組合せからなる群から選択される。本開示は、それを必要とする対象において、治療的タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIIIを発現させる方法であって、第1の逆方向末端反復配列(ITR)、第2のITR、および、例えば治療的タンパク質またはmiRNAをコードする遺伝子カセットを含む核酸分子を対象に投与することを含み、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRは非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRである、方法にさらに関する。ある特定の実施形態では、本開示は、配列番号113および120から選択されるヌクレオチド配列と配列相同性を有するヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子を記載する。
【0035】
本開示の例示的な構築物は、付随する図面および配列表に例示される。明細書および請求項の明確な理解を提供するために、以下の定義を下に提供する。
【0036】
I.定義
用語「1つ(a)」または「1つ(an)」の実体とは、その実体の1つまたはそれ以上を指す点に留意する:例えば、「ヌクレオチド配列」は、1つまたはそれ以上のヌクレオチド配列を表すと理解される。同様に、「治療的タンパク質」および「miRNA」は、1つまたはそれ以上の治療的タンパク質および1つまたはそれ以上のmiRNAをそれぞれ表すと理解される。このように、用語「a」(または、「an」)、「1つまたはそれ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書で互換的に使用することができる。
【0037】
本明細書で、用語「約」は、概ね、だいたい、前後またはほぼを意味するものとして使用される。用語「約」が数値範囲と一緒に使用されるとき、それは、示される数値の上下の境界を拡張することによってその範囲を変更する。一般に、用語「約」は、明記される値の上下の数値を上下(高低)10%の分散によって変更するために、本明細書で使用される。
【0038】
同様に本明細書で使用されるように、「および/または」は、関連する掲載アイテムの1つまたはそれ以上のあらゆる可能な組合せ、ならびに択一的に解釈される場合には組合せの欠如(「または」)を指し、包含する。
【0039】
「核酸」、「核酸分子」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド(複数可)配列」および「ポリヌクレオチド」は互換的に使用され、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンまたはシチジン;「RNA分子」)もしくはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンまたはデオキシシチジン;「DNA分子」)のリン酸エステルポリマー形、または、一本鎖形もしくは二本鎖ヘリックスの形の任意のそのリン酸エステル類似体、例えばホスホロチオエートおよびチオエステルを指す。一本鎖核酸配列は、一本鎖DNA(ssDNA)または一本鎖RNA(ssRNA)を指す。二本鎖DNA-DNA、DNA-RNAおよびRNA-RNAヘリックスが可能である。用語核酸分子、特にDNAまたはRNA分子は、分子の一次および二次構造だけを指し、それをいかなる特定の三次形態にも限定しない。したがって、この用語は、とりわけ線状または環状DNA分子(例えば、制限断片)、プラスミド、スーパーコイルDNAおよび染色体に見出される、二本鎖DNAを含む。特定の二本鎖DNA分子の構造の議論では、本明細書で、DNAの非転写鎖(すなわち、mRNAに相同性の配列を有する鎖)に沿って5’から3’の方向の配列だけを与える通常の慣例によって配列を記載することができる。「組換えDNA分子」は、分子生物学的操作を受けたDNA分子である。DNAには、cDNA、ゲノムDNA、プラスミドDNA、合成DNAおよび半合成DNAが限定されずに含まれる。本開示の「核酸組成物」は、本明細書に記載される1つまたはそれ以上の核酸を含む。
【0040】
本明細書で使用されるように、「逆方向末端反復配列」(または、「ITR」)は、その逆相補体が下流に続くヌクレオチドのセット(初期配列)を含む一本鎖核酸配列、すなわちパリンドローム配列の5’または3’末端のいずれかに位置する核酸部分配列を指す。初期配列と逆相補体の間のヌクレオチドの介在配列は、ゼロを含む任意の長さであってよい。一実施形態では、本開示のために有益なITRは、1つまたはそれ以上の「パリンドローム配列」を含む。ITRは、任意の数の機能を有することができる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるITRは、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、T字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、非T字形ヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、ITRは、細胞の核の中の核酸分子の長期生存を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞の核の中の核酸分子の恒久的生存を促進する(例えば、細胞の全寿命期間)。一部の実施形態では、ITRは、細胞の核の中の核酸分子の安定性を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞の核の中の核酸分子の保持を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞の核の中の核酸分子の持続性を促進する。一部の実施形態では、ITRは、細胞の核の中の核酸分子の分解を抑制または阻止する。
【0041】
一実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~600ヌクレオチド、約2~550ヌクレオチド、約2~500ヌクレオチド、約2~450ヌクレオチド、約2~400ヌクレオチド、約2~350ヌクレオチド、約2~300ヌクレオチドまたは約2~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約5~600ヌクレオチド、約10~600ヌクレオチド、約15~600ヌクレオチド、約20~600ヌクレオチド、約25~600ヌクレオチド、約30~600ヌクレオチド、約35~600ヌクレオチド、約40~600ヌクレオチド、約45~600ヌクレオチド、約50~600ヌクレオチド、約60~600ヌクレオチド、約70~600ヌクレオチド、約80~600ヌクレオチド、約90~600ヌクレオチド、約100~600ヌクレオチド、約150~600ヌクレオチド、約200~600ヌクレオチド、約300~600ヌクレオチド、約350~600ヌクレオチド、約400~600ヌクレオチド、約450~600ヌクレオチド、約500~600ヌクレオチドまたは約550~600ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約5~550ヌクレオチド、約5~500ヌクレオチド、約5~450ヌクレオチド、約5~400ヌクレオチド、約5~350ヌクレオチド、約5~300ヌクレオチドまたは約5~250ヌクレオチドを含む。一部の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約10~550ヌクレオチド、約15~500ヌクレオチド、約20~450ヌクレオチド、約25~400ヌクレオチド、約30~350ヌクレオチド、約35~300ヌクレオチドまたは約40~250ヌクレオチドを含む。ある特定の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約225ヌクレオチド、約250ヌクレオチド、約275ヌクレオチド、約300ヌクレオチド、約325ヌクレオチド、約350ヌクレオチド、約375ヌクレオチド、約400ヌクレオチド、約425ヌクレオチド、約450ヌクレオチド、約475ヌクレオチド、約500ヌクレオチド、約525ヌクレオチド、約550ヌクレオチド、約575ヌクレオチドまたは約600ヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約400ヌクレオチドを含む。
【0042】
他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~200ヌクレオチド、約5~200ヌクレオチド、約10~200ヌクレオチド、約20~200ヌクレオチド、約30~200ヌクレオチド、約40~200ヌクレオチド、約50~200ヌクレオチド、約60~200ヌクレオチド、約70~200ヌクレオチド、約80~200ヌクレオチド、約90~200ヌクレオチド、約100~200ヌクレオチド、約125~200ヌクレオチド、約150~200ヌクレオチドまたは約175~200ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~150ヌクレオチド、約5~150ヌクレオチド、約10~150ヌクレオチド、約20~150ヌクレオチド、約30~150ヌクレオチド、約40~150ヌクレオチド、約50~150ヌクレオチド、約75~150ヌクレオチド、約100~150ヌクレオチドまたは約125~150ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~100ヌクレオチド、約5~100ヌクレオチド、約10~100ヌクレオチド、約20~100ヌクレオチド、約30~100ヌクレオチド、約40~100ヌクレオチド、約50~100ヌクレオチドまたは約75~100ヌクレオチドを含む。他の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、約2~50ヌクレオチド、約10~50ヌクレオチド、約20~50ヌクレオチド、約30~50ヌクレオチド、約40~50ヌクレオチド、約3~30ヌクレオチド、約4~20ヌクレオチドまたは約5~10ヌクレオチドを含む。別の実施形態では、初期配列および/または逆相補体は、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチドまたは20ヌクレオチドからなる。他の実施形態では、初期配列と逆相補体の間の介在ヌクレオチドは、0ヌクレオチド、1ヌクレオチド、2ヌクレオチド、3ヌクレオチド、4ヌクレオチド、5ヌクレオチド、6ヌクレオチド、7ヌクレオチド、8ヌクレオチド、9ヌクレオチド、10ヌクレオチド、11ヌクレオチド、12ヌクレオチド、13ヌクレオチド、14ヌクレオチド、15ヌクレオチド、16ヌクレオチド、17ヌクレオチド、18ヌクレオチド、19ヌクレオチドまたは20ヌクレオチドである(例えば、からなる)。
【0043】
したがって、本明細書で使用される「ITR」は、それ自体を折りたたみ、二本鎖セグメントを形成することができる。例えば、配列GATCXXXXGATCは、折りたたまれて二重ヘリックスを形成するとき、GATCの初期配列およびその相補体(3’CTAG5’)を含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と逆相補体の間で連続したパリンドローム配列(例えば、GATCGATC)を含む。一部の実施形態では、ITRは、初期配列と逆相補体の間で中断されたパリンドローム配列(例えば、GATCXXXXGATC)を含む。一部の実施形態では、連続しているか中断されたパリンドローム配列の相補的部分は、お互いと相互作用して「ヘアピンループ」構造を形成する。本明細書で使用されるように、「ヘアピンループ」構造は、一本鎖ヌクレオチド分子の上の少なくとも2つの相補的配列が塩基対を形成して二本鎖部分を形成するときにもたらされる。一部の実施形態では、ITRの一部だけがヘアピンループを形成する。他の実施形態では、ITR全体がヘアピンループを形成する。
【0044】
本開示では、少なくとも1つのITRは、非アデノウイルス随伴ウイルス(非AAV)のITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVメンバーのITRである。一部の実施形態では、ITRは、デペンドウイルス属(Dependovirus)またはエリスロウイルス属(Erythrovirus)の非AAVメンバーのITRである。特定の実施形態では、ITRは、ガチョウパルボウイルス(GPV)、タイワンアヒルパルボウイルス(MDPV)またはエリスロウイルスパルボウイルスB19(パルボウイルスB19、霊長類エリスロパルボウイルス1、B19ウイルスおよびエリスロウイルスとしても知られる)のITRである。ある特定の実施形態では、2つのITRのうちの1つのITRは、AAVのITRである。他の実施形態では、構築物の中の2つのITRのうちの1つのITRは、血清型1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および任意のその組合せから選択されるAAV血清型のITRである。特定の一実施形態では、ITRは、AAV血清型2から、例えばAAV血清型2のITRから誘導される。
【0045】
本開示のある特定の態様では、核酸分子は2つのITR、5’ITRおよび3’ITRを含み、ここで、5’ITRは核酸分子の5’末端に位置し、3’ITRは核酸分子の3’末端に位置する。5’ITRおよび3’ITRは、同じウイルスまたは異なるウイルスから誘導することができる。ある特定の実施形態では、5’ITRはAAVから誘導され、3’ITRはAAVウイルスから誘導されない(例えば、非AAV)。一部の実施形態では、3’ITRはAAVから誘導され、5’ITRはAAVウイルスから誘導されない(例えば、非AAV)。他の実施形態では、5’ITRはAAVウイルスから誘導されず(例えば、非AAV)、3’ITRは同じかまたは異なる非AAVウイルスから誘導される。
【0046】
本明細書で使用される用語「パルボウイルス」は、自己複製パルボウイルスおよびデペンドウイルスを非限定的に含む、パルボウイルス科(Parvoviridae)を包含する。自律的なパルボウイルスには、例えば、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)およびペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)属のメンバーが含まれる。
【0047】
例示的な自律的なパルボウイルスには、これらに限定されないが、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、イヌパルボウイルス、ミンク腸炎ウイルス、ウシパルボウイルス、ニワトリパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ネコパルボウイルス、ガチョウパルボウイルス、H1パルボウイルス、タイワンアヒルパルボウイルス、ヘビパルボウイルスおよびB19ウイルスが含まれる。他の自律的なパルボウイルスは、当業者に公知である。例えば、FIELDSら、VIROLOGY、第2巻、69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照のこと。
【0048】
本明細書で使用される用語「非AAV」は、パルボウイルス科(Parvoviridae)のいかなるアデノ随伴ウイルス(AAV)も除く、パルボウイルス科(Parvoviridae)からの核酸、タンパク質およびウイルスを包含する。「非AAV」には、これらに限定されないが、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)およびペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)属の自己複製メンバーが含まれる。
【0049】
本明細書で使用されるように、用語「アデノ随伴ウイルス」(AAV)には、これらに限定されないが、AAV1型、AAV2型、AAV3型(3A型および3B型を含む)、AAV4型、AAV5型、AAV6型、AAV7型、AAV8型、AAV9型、AAV10型、AAV11型、AAV12型、AAV13型、ヘビAAV、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、ヒツジAAV、ヤギAAV、エビAAV、Gaoら(J.Virol.78:6381頁(2004))およびMorisら(Virol.33:375頁(2004))によって開示されるAAV血清型および分岐群、ならびに現在知られているか後に発見された他の任意のAAVが含まれる。例えば、FIELDSら、VIROLOGY、第2巻、69章(第4版、Lippincott-Raven Publishers)を参照のこと。
【0050】
本明細書で使用されるように、用語「に由来する」は、指定された分子もしくは生物体から単離されるか、または指定された分子もしくは生物体もしくはそれからの情報(例えば、アミノ酸または核酸配列)を使用して作製される構成成分を指す。例えば、第2の核酸配列(例えば、ITR)に由来する核酸配列(例えば、ITR)は、第2の核酸配列のヌクレオチド配列と同一であるか実質的に類似しているヌクレオチド配列を含むことができる。ヌクレオチドまたはポリペプチドの場合、由来する種は、例えば、天然に存在する突然変異誘発、人工定方向突然変異誘発または人工ランダム突然変異誘発によって得ることができる。ヌクレオチドまたはポリペプチドを導出するために使用される突然変異誘発は、故意に方向付けることができるか、または故意にランダムであってよいか、または各々の混合であってよい。第1のものに由来する異なるヌクレオチドまたはポリペプチドを作製するヌクレオチドまたはポリペプチドの突然変異誘発は、ランダムな事象(例えば、ポリメラーゼ非忠実性によって引き起こされる)であってよく、由来するヌクレオチドまたはポリペプチドの同定は、例えば本明細書に議論されるように、適当なスクリーニング方法によって実行することができる。ポリペプチドの突然変異誘発は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの操作を一般的に必要とする。一部の実施形態では、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、それぞれ第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の配列同一性を有し、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。他の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)と少なくとも90%同一であり、ここで、非AAV(または、AAV)ITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)と少なくとも80%同一であり、ここで、非AAV(または、AAV)ITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)と少なくとも70%同一であり、ここで、非AAV(または、AAV)ITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)と少なくとも60%同一であり、ここで、非AAV(または、AAV)ITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)と少なくとも50%同一であり、ここで、非AAV(または、AAV)ITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。
【0051】
ある特定の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV(または、AAV)のITRの断片を含むかまたはそれからなる。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV(または、AAV)のITRの断片を含むかまたはそれからなり、ここで、断片は少なくとも約5個のヌクレオチド、少なくとも約10個のヌクレオチド、少なくとも約15個のヌクレオチド、少なくとも約20個のヌクレオチド、少なくとも約25個のヌクレオチド、少なくとも約30個のヌクレオチド、少なくとも約35個のヌクレオチド、少なくとも約40個のヌクレオチド、少なくとも約45個のヌクレオチド、少なくとも約50個のヌクレオチド、少なくとも約55個のヌクレオチド、少なくとも約60個のヌクレオチド、少なくとも約65個のヌクレオチド、少なくとも約70個のヌクレオチド、少なくとも約75個のヌクレオチド、少なくとも約80個のヌクレオチド、少なくとも約85個のヌクレオチド、少なくとも約90個のヌクレオチド、少なくとも約95個のヌクレオチド、少なくとも約100個のヌクレオチド、少なくとも約125個のヌクレオチド、少なくとも約150個のヌクレオチド、少なくとも約175個のヌクレオチド、少なくとも約200個のヌクレオチド、少なくとも約225個のヌクレオチド、少なくとも約250個のヌクレオチド、少なくとも約275個のヌクレオチド、少なくとも約300個のヌクレオチド、少なくとも約325個のヌクレオチド、少なくとも約350個のヌクレオチド、少なくとも約375個のヌクレオチド、少なくとも約400個のヌクレオチド、少なくとも約425個のヌクレオチド、少なくとも約450個のヌクレオチド、少なくとも約475個のヌクレオチド、少なくとも約500個のヌクレオチド、少なくとも約525個のヌクレオチド、少なくとも約550個のヌクレオチド、少なくとも約575個のヌクレオチド、または少なくとも約600個のヌクレオチドを含み;ここで、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。ある特定の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV(または、AAV)のITRの断片を含むかまたはそれからなり、ここで、断片は少なくとも約129個のヌクレオチドを含み、ここで、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。ある特定の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV(または、AAV)のITRの断片を含むかまたはそれからなり、ここで、断片は少なくとも約102個のヌクレオチドを含み、ここで、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の機能特性を保持する。
【0052】
一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、非AAV(または、AAV)のITRの断片を含むかまたはそれからなり、ここで、断片は、非AAV(または、AAV)のITRの長さの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含む。
【0053】
ある特定の実施形態では、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列に由来するヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、適切に整列させたとき、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の相同部分と、それぞれ少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有し、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。他の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、適切に整列させたとき、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の相同部分と少なくとも90%同一であり、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、適切に整列させたとき、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の相同部分と少なくとも80%同一であり、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、適切に整列させたとき、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の相同部分と少なくとも70%同一であり、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、適切に整列させたとき、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の相同部分と少なくとも60%同一であり、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。一部の実施形態では、非AAV(または、AAV)のITRに由来するITRは、適切に整列させたとき、非AAV ITR(または、それぞれAAV ITR)の相同部分と少なくとも50%同一であり、ここで、第1のヌクレオチドまたはアミノ酸配列は、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸配列の生物活性を保持する。
【0054】
「無カプシド」または「カプシドのない」ベクターまたは核酸分子は、カプシドを含まないベクター構築物を指す。一部の実施形態では、カプシドのないベクターまたは核酸分子は、例えばAAV Repタンパク質をコードする配列を含有しない。
【0055】
本明細書で使用されるように、「コード領域」または「コード配列」は、アミノ酸に翻訳可能なコドンからなるポリヌクレオチドの部分である。「終止コドン」(TAG、TGAまたはTAA)はアミノ酸に一般的に翻訳されないが、それはコード領域の一部であると考えることができるが、いずれの隣接配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロンなども、コード領域の一部でない。コード領域の境界は、生じるポリペプチドのアミノ末端をコードする5’末端の開始コドン、および生じるポリペプチドのカルボキシル末端をコードする3’末端の翻訳終止コドンによって一般的に決定される。2つ以上のコード領域が、例えば単一のベクターの上の単一のポリヌクレオチド構築物に、または例えば別個の(異なる)ベクターの上の別個のポリヌクレオチド構築物に存在することができる。その結果、次に、単一のベクターは単一のコード領域だけを含有することができるか、2つ以上のコード領域を含むことができる。
【0056】
哺乳動物細胞によって分泌されるある特定のタンパク質は、粗い小胞体を越えた成長しているタンパク質鎖の移行が開始されると成熟したタンパク質から切断される、分泌シグナルペプチドに関連している。当業者は、シグナルペプチドがポリペプチドのN末端に一般的に融合していること、および、完全なまたは「完全長の」ポリペプチドから切断されてポリペプチドの分泌された、または「成熟した」形態を生成することを知っている。ある特定の実施形態では、天然のシグナルペプチド、またはそれと作動可能に関連するポリペプチドの分泌を方向付ける能力を保持するその配列の機能的誘導体。あるいは、異種哺乳動物のシグナルペプチド、例えば、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼシグナルペプチド、またはその機能的誘導体を使用することができる。
【0057】
用語「下流」は、参照ヌクレオチド配列の3’側に位置するヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、下流のヌクレオチド配列は、転写の開始点に続く配列に関する。例えば、遺伝子の翻訳開始コドンは、転写の開始部位の下流に位置する。
【0058】
用語「上流」は、参照ヌクレオチド配列の5’側に位置するヌクレオチド配列を指す。ある特定の実施形態では、上流のヌクレオチド配列は、コード領域または転写の開始点の5’側に位置する配列に関する。例えば、ほとんどのプロモーターは、転写の開始部位の上流に位置する。
【0059】
本明細書で使用されるように、用語「遺伝子調節領域」または「調節領域」は、コード領域の上流(5’非コード配列)、その中、または下流(3’非コード配列)に位置し、関連するコード領域の転写、RNAプロセシング、安定性または翻訳に影響するヌクレオチド配列を指す。調節領域は、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、ポリアデニル化認識配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位またはステムループ構造を含むことができる。コード領域が真核細胞における発現を意図している場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終止配列はコード配列の3’側に通常位置する。
【0060】
生成物、例えばmiRNAまたは遺伝子産物(例えば、治療的タンパク質などのポリペプチド)をコードするポリヌクレオチドは、1つまたはそれ以上のコード領域と作動可能に関連するプロモーターおよび/または他の発現(例えば、転写または翻訳)制御エレメントを含むことができる。作動可能な関連では、遺伝子産物、例えばポリペプチドのためのコード領域は、遺伝子産物の発現を調節領域(複数可)の影響下または制御下に置くような方法で1つまたはそれ以上の調節領域と関連する。例えば、コード領域およびプロモーターは、プロモーター機能の誘導がコード領域によってコードされる遺伝子産物をコードするmRNAの転写をもたらす場合、およびプロモーターとコード領域の間の連結の性質が遺伝子産物の発現を方向付けるプロモーターの能力に干渉しないか、またはDNA鋳型の転写される能力に干渉しない場合、「作動可能に関連する」。プロモーター以外の他の発現制御エレメント、例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終止シグナルも、遺伝子産物発現を方向付けるためにコード領域に作動可能に関連することができる。
【0061】
「転写制御配列」は、宿主細胞におけるコード配列の発現を可能にするDNA調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを指す。様々な転写制御領域が、当業者に公知である。これらには、限定されないが、脊椎動物細胞において機能する転写制御領域、例えば、これらに限定されないが、サイトメガロウイルス(イントロン-Aと一緒の前初期プロモーター)、シミアンウイルス40(初期プロモーター)およびレトロウイルス(ラウス肉腫ウイルスなど)からのプロモーターおよびエンハンサーセグメントが含まれる。他の転写制御領域には、脊椎動物の遺伝子から誘導されるもの、例えばアクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビン、ならびに真核生物細胞における遺伝子発現を制御することが可能な他の配列が含まれる。さらなる適する転写制御領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサー、ならびにリンホカイン誘導可能プロモーター(例えば、インターフェロンまたはインターロイキンによって誘導可能なプロモーター)が含まれる。
【0062】
同様に、様々な翻訳制御エレメントが当業者に公知である。これらには、限定されないが、リボソーム結合部位、翻訳開始および終止コドン、ならびにピコルナウイルスから誘導されるエレメント(特に、リボソーム内部進入部位またはIRES、CITE配列とも呼ばれる)が含まれる。
【0063】
本明細書で使用される用語「発現」は、ポリヌクレオチドが遺伝子産物、例えば、RNAまたはポリペプチドを生成する過程を指す。それは、メッセンジャーRNA(mRNA)、転移RNA(tRNA)、小さいヘアピンRNA(shRNA)、小さい干渉RNA(siRNA)または他の任意のRNA生成物へのポリヌクレオチドの転写、およびポリペプチドへのmRNAの翻訳を限定されずに含む。発現は、「遺伝子産物」を生成する。本明細書で使用されるように、遺伝子産物は、核酸、例えば遺伝子の転写によって生成されるメッセンジャーRNAであっても、または転写物から翻訳されるポリペプチドであってもよい。本明細書に記載される遺伝子産物には、転写後修飾、例えばポリアデニル化もしくはスプライシングを有する核酸、または翻訳後修飾、例えば、メチル化、グリコシル化、脂質付加、他のタンパク質サブユニットとの結合、またはタンパク分解性切断を有するポリペプチドがさらに含まれる。本明細書で使用される用語「収量」は、遺伝子の発現によって生成されるポリペプチドの量を指す。
【0064】
「ベクター」は、宿主細胞への核酸のクローニングおよび/または移入のための任意のビヒクルを指す。ベクターは、付着しているセグメントの複製をもたらすように別の核酸セグメントを付着させることができるレプリコンであってよい。「レプリコン」は、in vivoでの複製の自律的な単位として機能する、すなわちそれ自身の制御下での複製が可能である、任意の遺伝子エレメント(例えば、プラスミド、ファージ、コスミド、染色体、ウイルス)を指す。用語「ベクター」は、in vitro、ex vivoまたはin vivoで核酸を細胞に導入するためのビヒクルを含む。例えばプラスミド、改変された真核生物ウイルスまたは改変された細菌ウイルスを含めて、当技術分野で多数のベクターが公知であり、使用される。適するベクターへのポリヌクレオチドの挿入は、相補的な粘着末端を有する選択されたベクターに適当なポリヌクレオチド断片をライゲーションすることによって達成することができる。
【0065】
ベクターを組み込んだ細胞の選択または同定を可能にする選択可能なマーカーまたはレポーターをコードするように、ベクターを工学的に操作することができる。選択可能なマーカーまたはレポーターの発現は、ベクター上に含有される他のコード領域を組み込み、発現する宿主細胞の同定および/または選択を可能にする。当技術分野で公知であり、使用される選択可能なマーカー遺伝子の例には、以下のものが含まれる:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどへの耐性を提供する遺伝子;および、表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子など。当技術分野で公知であり、使用されるレポーターの例には、以下のものが含まれる:ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光性タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)など。選択可能なマーカーは、レポーターであると考えることもできる。
【0066】
本明細書で使用される用語「宿主細胞」は、例えば、ssDNAまたはベクターのレシピエントとして使用することができるか使用されている、微生物、酵母細胞、昆虫細胞および哺乳動物細胞を指す。本用語は、形質導入された元の細胞の後代を含む。したがって、本明細書で使用される「宿主細胞」は、外因性DNA配列を形質導入された細胞を一般的に指す。単一の親細胞の後代は、天然、偶然または故意の突然変異のために、元の親と形態において、またはゲノムもしくは全DNA相補体において必ずしも完全に同一でなくてもよいことが理解される。一部の実施形態では、宿主細胞は、in vitroの宿主細胞であってよい。
【0067】
用語「選択可能なマーカー」は、マーカー遺伝子の作用、すなわち、抗生物質耐性、除草剤耐性、比色マーカー、酵素、蛍光性マーカーなどに基づいて選択することができる、同定用因子、通常、抗生物質または化学物質耐性遺伝子を指し、ここで、この作用は、目的の核酸の継承を追跡するために、および/または目的の核酸を継承した細胞もしくは生物体を同定するために使用される。当技術分野で公知であり、使用される選択可能なマーカー遺伝子の例には、以下のものが含まれる:アンピシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、カナマイシン、ハイグロマイシン、ビアラホス除草剤、スルホンアミドなどへの耐性を提供する遺伝子;および、表現型マーカーとして使用される遺伝子、すなわち、アントシアニン調節遺伝子、イソペンタニルトランスフェラーゼ遺伝子など。
【0068】
用語「レポーター遺伝子」は、レポーター遺伝子の作用に基づいて同定することができる、同定用因子をコードする核酸を指し、ここで、この作用は、目的の核酸の継承を追跡するために、目的の核酸を継承した細胞もしくは生物体を同定するために、および/または遺伝子発現の誘導もしくは転写を測定するために使用される。当技術分野で公知であり、使用されるレポーター遺伝子の例には、以下のものが含まれる:ルシフェラーゼ(Luc)、緑色蛍光性タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、β-グルクロニダーゼ(Gus)など。選択可能なマーカー遺伝子は、レポーター遺伝子と考えることもできる。
【0069】
「プロモーター」および「プロモーター配列」は互換的に使用され、コード配列または機能的RNAの発現を制御することが可能なDNA配列を指す。一般に、コード配列はプロモーター配列の3’側に位置する。プロモーターは天然の遺伝子から完全に誘導することができるか、天然に見出される異なるプロモーターから誘導される異なるエレメントで構成されるか、合成DNAセグメントを含むこともできる。当業者は、異なるプロモーターが異なる組織もしくは細胞型において、または発達の異なる段階で、または異なる環境もしくは生理的条件に応答して遺伝子の発現を方向付けることができることを理解する。ほとんどの細胞型においてほとんどのときに遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「構成プロモーター」と呼ばれる。特異的細胞型において遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「細胞特異的プロモーター」または「組織特異的プロモーター」と呼ばれる。発達または細胞分化の特異的段階で遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「発達特異的プロモーター」または「細胞分化特異的プロモーター」と呼ばれる。プロモーターを誘導する薬剤、生体分子、化学物質、リガンド、光などによる細胞の曝露または処理の後に誘導されて、遺伝子を発現させるプロモーターは、一般に「誘導可能なプロモーター」または「調節可能なプロモーター」と呼ばれる。ほとんどの場合、調節配列の正確な境界が完全に規定されているとは限らないので、異なる長さのDNA断片が同一のプロモーター活性を有することができることがさらに認識される。
【0070】
プロモーター配列は転写開始部位がその3’末端に一般的に結合し、上流(5’方向)に伸長してバックグラウンドより高い検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小限の数の塩基またはエレメントを含む。プロモーター配列の中には、転写開始部位(例えばヌクレアーゼS1によるマッピングによって都合良く規定される)、ならびにRNAポリメラーゼの結合の役割を担うタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見出される。
【0071】
一部の実施形態では、核酸分子は、組織特異的プロモーターを含む。ある特定の実施形態では、組織特異的プロモーターは、肝臓において、例えば肝細胞および/または内皮細胞において、治療的タンパク質、例えば凝固因子の発現を促進する。特定の実施形態では、プロモーターは、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-抗トリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターおよび任意のその組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、プロモーターは、肝臓特異的プロモーター(例えば、α1-抗トリプシン(AAT))、筋肉特異的プロモーター(例えば、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)およびデスミン(DES))、合成プロモーター(例えば、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCKおよびtMCK)および任意のその組合せから選択される。特定の一実施形態では、プロモーターはTTPプロモーターを含む。
【0072】
用語「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」は互換的に使用され、二本鎖DNAの中の特異的ヌクレオチド配列の中で結合して切断する酵素を指す。
【0073】
用語「プラスミド」は、細胞の中心的代謝の一部でなく、通常、環状二本鎖DNA分子の形である遺伝子をしばしば有する染色体外エレメントを指す。そのようなエレメントは、任意の供給源から誘導される一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの、線状、環状またはスーパーコイル状の、自己複製配列、ゲノム組入れ配列、ファージまたはヌクレオチド配列であってよく、そこでは、適当な3’非翻訳配列とともに選択される遺伝子産物のためのプロモーター断片およびDNA配列を細胞に導入することが可能である特異な構築物に、いくつかのヌクレオチド配列が連結されているか組み換えられている。
【0074】
使用することができる真核生物のウイルスベクターには、これらに限定されないが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ポックスウイルス、例えば、ワクシニアウイルスベクター、バキュロウイルスベクターまたはヘルペスウイルスベクターが含まれる。非ウイルス性のベクターには、プラスミド、リポソーム、帯電した脂質(サイトフェクチン)、DNA-タンパク質複合体およびバイオポリマーが含まれる。
【0075】
「クローニングベクター」は、プラスミド、ファージまたはコスミドなどの、逐次的に複製し、複製開始点を含む単位長の核酸である「レプリコン」を指し、付着しているセグメントの複製をもたらすように別の核酸セグメントをそれに対して付着させることができる。ある特定のクローニングベクターは、1つの細胞型、例えば細菌における複製、および別の細胞型、例えば真核細胞における発現が可能である。クローニングベクターは、ベクターを含む細胞の選択のために使用することができる1つまたはそれ以上の配列、および/または目的の核酸配列の挿入のための1つまたはそれ以上の多重クローニング部位を一般的に含む。
【0076】
用語「発現ベクター」は、宿主細胞への挿入の後に、挿入された核酸配列の発現を可能にするように設計されたビヒクルを指す。挿入された核酸配列は、上記の調節領域との作動可能な関係に置かれる。
【0077】
ベクターは、当技術分野で周知である方法、例えば、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション(リソソーム融合)、遺伝子銃の使用、またはDNAベクター輸送体によって宿主細胞に導入される。本明細書で使用されるように、「培養」、「培養すること」および「培養すること」は、細胞の増殖もしくは分裂を可能にするin vitro条件の下で細胞をインキュベートすること、または細胞を生存状態に維持することを意味する。本明細書で使用されるように、「培養された細胞」は、in vitroで増殖した細胞を意味する。
【0078】
本明細書で使用されるように、用語「ポリペプチド」は、単数の「ポリペプチド」ならびに複数の「ポリペプチド」を包含するものであり、アミド結合(ペプチド結合としても知られる)によって線状に連結される単量体(アミノ酸)で構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖または複数の鎖を指し、具体的長さの生成物を指さない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」または2つ以上のアミノ酸の鎖または複数の鎖を指すために使用される他の任意の用語が「ポリペプチド」の定義の中に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかの代わりにまたは互換的に使用することができる。用語「ポリペプチド」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク分解性切断または天然に存在しないアミノ酸による改変を限定されずに含む、ポリペプチドの発現後の改変の生成物も指すものである。ポリペプチドは天然の生物供給源から誘導することができるか、または組換え技術で生成することができるが、必ずしも指定された核酸配列から翻訳されるとは限らない。それは、化学的合成を含む任意の方法で生成することができる。
【0079】
用語「アミノ酸」には、アラニン(AlaまたはA);アルギニン(ArgまたはR);アスパラギン(AsnまたはN);アスパラギン酸(AspまたはD);システイン(CysまたはC);グルタミン(GlnまたはQ);グルタミン酸(GluまたはE);グリシン(GlyまたはG);ヒスチジン(HisまたはH);イソロイシン(IleまたはI):ロイシン(LeuまたはL);リシン(LysまたはK);メチオニン(MetまたはM);フェニルアラニン(PheまたはF);プロリン(ProまたはP);セリン(SerまたはS);トレオニン(ThrまたはT);トリプトファン(TrpまたはW);チロシン(TyrまたはY);およびバリン(ValまたはV)が含まれる。非伝統的なアミノ酸も本開示の範囲内であり、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、およびEllmanら、Meth.Enzym.202:301~336頁(1991)に記載されるものなどの他のアミノ酸残基類似体が含まれる。そのような天然に存在しないアミノ酸残基を生成するために、Norenら、Science 244:182頁(1989)および上記のEllmanらの手法を使用することができる。簡潔には、これらの手法は、天然に存在しないアミノ酸残基でサプレッサーtRNAを化学的に活性化することと、続くRNAのin vitro転写および翻訳を含む。非伝統的アミノ酸の導入は、当技術分野で公知のペプチド化学を使用して達成することもできる。本明細書で使用されるように、用語「極性アミノ酸」は、ゼロ総電荷を有するが、それらの側鎖の異なる部分にノンゼロ部分電荷を有するアミノ酸を含む(例えば、M、F、W、S、Y、N、Q、C)。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電的相互作用に関与することができる。本明細書で使用されるように、用語「荷電アミノ酸」は、それらの側鎖にノンゼロ総電荷を有することができるアミノ酸を含む(例えば、R、K、H、E、D)。これらのアミノ酸は、疎水性相互作用および静電的相互作用に関与することができる。
【0080】
ポリペプチドの断片またはバリアントおよび任意のその組合せも本開示に含まれる。本開示のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子を指す場合の用語「断片」または「バリアント」は、参照ポリペプチドの特性(例えば、FcRn結合ドメインまたはFcバリアントへのFcRn結合親和性、FVIIIバリアントの凝固活性またはVWF断片へのFVIII結合活性)の少なくとも一部を保持する任意のポリペプチドを含む。ポリペプチドの断片には、本明細書の他の場所で議論される特異的抗体断片に加えてタンパク分解性断片ならびに欠失断片が含まれるが、天然に存在する完全長ポリペプチド(または、成熟したポリペプチド)は含まれない。本開示のポリペプチド結合ドメインまたは結合分子のバリアントには、上記の断片、およびアミノ酸の置換、欠失または挿入のために変更されたアミノ酸配列を有するポリペプチドも含まれる。バリアントは、天然に存在するもの、または天然に存在しないものであってもよい。天然に存在しないバリアントは、当技術分野で公知の突然変異誘発技術を使用して生成することができる。バリアントポリペプチドは、保存的または非保存的なアミノ酸置換、欠失または付加を含むことができる。
【0081】
「保存的なアミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、無極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分枝状側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む、類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーが当技術分野で規定されている。したがって、ポリペプチドの中のアミノ酸が同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸で置き換えられる場合、その置換は保存的であると考えられる。別の実施形態では、アミノ酸のひもは、側鎖ファミリーメンバーの順序および/または組成が異なる構造的に類似しているひもで保存的に置き換えることができる。
【0082】
当技術分野で公知であるように、用語「同一性パーセント」は、配列の比較で判定される、2つ以上のポリペプチド配列または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当技術分野で、「同一性」は、そのような配列のひもの間の一致によって判定される、場合によってポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」は、以下に記載されるものを非限定的に含む、公知の方法によって容易に計算することができる:Computational Molecular Biology(Lesk,A.M.編)Oxford University Press、New York(1988);Biocomputing:Informatics and Genome Projects(Smith,D.W.編)Academic Press、New York(1993);Computer Analysis of Sequence Data、パートI(Griffin,A.M.およびGriffin,H.G.編)Humana Press、New Jersey(1994);Sequence Analysis in Molecular Biology(von Heinje,G.編)Academic Press(1987);およびSequence Analysis Primer(Gribskov,M.およびDevereux,J.編)Stockton Press、New York(1991)。同一性を判定する好ましい方法は、試験する配列の間で最高の一致を与えるように設計される。同一性を判定する方法は、公に入手できるコンピュータープログラムに体系化されている。配列アラインメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.、Madison、WI)、GCGプログラムスイート(Wisconsin Packageバージョン9.0、Genetics Computer Group(GCG)、Madison、WI)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403頁(1990))およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison、WI53715 USA)などの、配列分析ソフトウェアを使用して実行することができる。本出願の文脈の範囲内で、配列分析ソフトウェアが分析のために使用される場合、特に明記しない限り、分析の結果は参照したプログラムの「デフォルト値」に基づくことが理解される。本明細書で使用されるように、「デフォルト値」は、最初に初期化されるときにソフトウェアと一緒に当初ロードする任意のセットの値またはパラメーターを意味する。治療的タンパク質、例えば、凝固因子、本開示の配列および参照配列の間の同一性パーセントを判定する目的のために、同一性パーセントを計算するために治療的タンパク質、例えば凝固因子、本開示の配列の中のヌクレオチドに対応する参照配列のヌクレオチドだけを使用する。例えば、Bドメインを含有する完全長FVIIIヌクレオチド配列を本開示の最適化されたBドメイン欠失(BDD)FVIIIヌクレオチド配列と比較するとき、A1、A2、A3、C1およびC2ドメインを含むアラインメントの部分は、同一性パーセントを計算するために使用される。Bドメイン(これは、アラインメントに大きな「ギャップ」をもたらす)をコードする完全長FVIII配列の部分のヌクレオチドは、ミスマッチとして数えられない。さらに、本開示の最適化されたBDD FVIII配列またはその指定部分(例えば、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374)と参照配列の間の同一性パーセントの判定では、同一性パーセントは、一致したヌクレオチドの数を最適化されたBDD-FVIII配列の完全配列または、本明細書に列挙されるその指定部分のヌクレオチドの総数で割ることによって計算される。
【0083】
本明細書で使用されるように、本開示の特定の配列のヌクレオチドに対応するヌクレオチドは、参照配列との同一性を最大にするような本開示の配列のアラインメントによって同定される。参照配列中の同等のアミノ酸を同定するために使用される数は、本開示の配列中の対応するアミノ酸を同定するために使用される数に基づく。
【0084】
「融合」または「キメラ」タンパク質は、それが本来は天然に連結していない第2のアミノ酸配列に連結している第1のアミノ酸配列を含む。別個のタンパク質に通常は存在するアミノ酸配列を融合ポリペプチドの中に一緒に持ってくることができるか、または、同じタンパク質に通常は存在するアミノ酸配列を、融合ポリペプチド、例えば、本開示の第VIII因子ドメインのIg Fcドメインとの融合における新しい配置に置くことができる。融合タンパク質は、例えば、化学合成によって、またはペプチド領域が所望の関係でコードされるポリヌクレオチドを作製し、翻訳することによって作製される。キメラタンパク質は、共有結合、非ペプチド結合または非共有結合によって第1のアミノ酸配列に関連付けられた第2のアミノ酸配列をさらに含むことができる。
【0085】
本明細書で使用されるように、用語「挿入部位」は、異種部分を挿入することができる位置のすぐ上流にある、ポリペプチドまたはその断片、バリアントもしくは誘導体の中の位置を指す。「挿入部位」は番号で規定され、この番号は参照配列の中のアミノ酸の番号である。例えば、FVIIIにおける「挿入部位」は、挿入位置のすぐN末端側にある、挿入部位が対応する成熟した天然のFVIII(配列番号15)におけるアミノ酸配列の番号を指す。例えば、「a3は配列番号15のアミノ酸1656に対応する挿入部位に異種部分を含む」というフレーズは、異種部分が配列番号15のアミノ酸1656およびアミノ酸1657に対応する2つのアミノ酸の間に位置することを示す。
【0086】
本明細書で使用される「アミノ酸のすぐ下流」というフレーズは、アミノ酸の末端カルボキシル基のすぐ隣の位置を指す。同様に、「アミノ酸のすぐ上流」というフレーズは、アミノ酸の末端アミン基のすぐ隣の位置を指す。
【0087】
本明細書で使用されるように、用語「挿入された」、「挿入される」、「に挿入される」または文法的に関連した用語は、親のポリペプチドの中の類似した位置に対する、ポリペプチド、例えば凝固因子の中の異種部分の位置を指す。例えば、ある特定の実施形態では、「挿入された」などは、天然の成熟したヒトFVIIIの類似した位置に対する、組換えFVIIIポリペプチドの中の異種部分の位置を指す。本明細書で使用されるように、これらの用語はポリペプチドの特徴を指し、ポリペプチドが作製されたいかなる方法またはプロセスをも示しも、暗示も、意味もしない。
【0088】
本明細書で使用されるように、用語「半減期」は、in vivoにおける特定のポリペプチドの生物学的半減期を指す。半減期は、対象に投与された量の半分が動物の循環および/または他の組織から消去されるのに必要とされる時間で表すことができる。所与のポリペプチドの消去曲線が時間の関数として構築される場合、曲線は、通常迅速なα相およびより長いβ相による二相性である。α相は、一般的に脈管内と脈管外の空間の間の投与されたFcポリペプチドの平衡化を表し、一部、ポリペプチドのサイズによって判定される。β相は、脈管内空間におけるポリペプチドの異化作用を一般的に表す。一部の実施形態では、治療的タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIII、およびそれを含むキメラタンパク質は一相性であり、したがってアルファ相を有さず、単一のベータ相だけである。したがって、ある特定の実施形態では、本明細書で使用される用語半減期は、β相におけるポリペプチドの半減期を指す。
【0089】
本明細書で使用される用語「連結される」は、共有結合または非共有結合で第2のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列にそれぞれ連結される第1のアミノ酸配列またはヌクレオチド配列を指す。第1のアミノ酸またはヌクレオチド配列は第2のアミノ酸またはヌクレオチド配列に直接的に連結または並置させることができるか、あるいは、介在配列で第1の配列を第2の配列に共有結合させることができる。用語「連結される」は、C末端またはN末端での第1のアミノ酸配列の第2のアミノ酸配列への融合を意味するだけでなく、第1のアミノ酸配列(または、第2のアミノ酸配列)全体の第2のアミノ酸配列の(または、第1のアミノ酸配列それぞれの)任意の2つのアミノ酸の中への挿入も含む。一実施形態では、第1のアミノ酸配列は、ペプチド結合またはリンカーによって第2のアミノ酸配列に連結することができる。第1のヌクレオチド配列は、ホスホジエステル結合またはリンカーによって第2のヌクレオチド配列に連結することができる。リンカーは、ペプチドもしくはポリペプチド(ポリペプチド鎖の場合)またはヌクレオチドもしくはヌクレオチド鎖(ヌクレオチド鎖の場合)または任意の化学部分(ポリペプチドおよびポリヌクレオチド鎖の場合)であってよい。用語「連結される」は、ハイフン(-)によっても示される。
【0090】
本明細書で使用されるように、止血は、出血もしくは大出血の停止もしくは鈍化;または、血管もしくは身体部分を通しての血流の停止もしくは鈍化を意味する。
【0091】
止血障害は、本明細書で使用されるように、フィブリン凝塊を形成する能力の障害または欠損による、自然発生的なまたは外傷の結果としての出血傾向によって特徴付けられる、遺伝的に継承したかまたは後天性の状態を意味する。そのような障害の例には、血友病が含まれる。3つの主な形態は、血友病A(第VIII因子欠損)、血友病B(第IX因子欠損または「クリスマス病」)および血友病C(第XI因子欠損、軽度の出血傾向)である。他の止血障害には、例えば、フォン・ウィルブラント病、第XI因子欠損(PTA欠乏症)、第XII因子欠損、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子または第XIII因子の欠損または構造異常、GPIbの欠陥または欠損であるベルナール-スリエ症候群が含まれる。vWFの受容体GPIbが欠損し、一次凝塊形成(一次止血)の喪失および出血傾向の増加、ならびにGlanzmanおよびNaegeliの血小板無力症(Glanzmann血小板無力症)につながることがある。肝不全(急性および慢性の形態)では、肝臓による凝固因子の生成が不十分であり、これは、出血リスクを増加させることがある。
【0092】
単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、または本開示の単離された核酸分子を含むベクターは、予防的に使用することができる。本明細書で使用されるように、用語「予防的治療」は、出血エピソードの前の分子の投与を指す。一実施形態では、全身止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、受けようとしている。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはベクターは、予防薬として手術の前後に投与することができる。本開示のポリヌクレオチド、ポリペプチドまたはベクターは、急性出血エピソードを制御するために、手術中に、または後に投与することができる。手術には、これらに限定されないが、肝移植、肝臓切除、歯科処置または幹細胞移植が含まれ得る。
【0093】
本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチド、またはベクターは、要求に応じた治療のためにも使用される。用語「要求に応じた治療」は、出血エピソードの症状に応答した、または出血を引き起こす可能性のある活動の前の、単離された核酸分子、単離されたポリペプチドまたはベクターの投与を指す。一態様では、要求に応じた治療は、損傷の後など出血が開始するとき、または手術の前など出血が予想されるときに対象に与えることができる。別の態様では、要求に応じた治療は、接触競技などの出血のリスクを増加させる活動の前に与えることができる。
【0094】
本明細書で使用されるように、用語「急性出血」は、根底にある原因に関係なしに出血エピソードを指す。例えば、対象は、外傷、尿毒症、遺伝性出血障害(例えば、第VII因子欠損)、血小板障害または凝固因子に対する抗体の発達による耐性を有してもよい。
【0095】
本明細書で使用されるように、治療する、治療、治療することは、例えば疾患または状態の重症度の低減;疾患経過期間の低減;疾患または状態に関連した1つまたはそれ以上の症状の改善;疾患または状態を必ずしも治癒せず、疾患または状態に関連した1つまたはそれ以上の症状の予防もなしに、疾患または状態を有する対象に有益な作用を提供することを指す。一実施形態では、用語「治療すること」または「治療」は、本開示の単離された核酸分子、単離されたポリペプチドまたはベクターを投与することによって、対象において、例えば、少なくとも約1IU/dL、2IU/dL、3IU/dL、4IU/dL、5IU/dL、6IU/dL、7IU/dL、8IU/dL、9IU/dL、10IU/dL、11IU/dL、12IU/dL、13IU/dL、14IU/dL、15IU/dL、16IU/dL、17IU/dL、18IU/dL、19IU/dL、20IU/dL、25IU/dL、30IU/dL、35IU/dL、40IU/dL、45IU/dL、50IU/dL、55IU/dL、60IU/dL、65IU/dL、70IU/dL、75IU/dL、80IU/dL、85IU/dL、90IU/dL、95IU/dL、100IU/dL、105IU/dL、110IU/dL、115IU/dL、120IU/dL、125IU/dL、130IU/dL、135IU/dL、140IU/dL、145IU/dLまたは150IU/dLのFVIIIトラフレベルを維持することを意味する。別の実施形態では、治療することまたは治療は、FVIIIトラフレベルを約1から約150IU/dL、約1から約125IU/dL、約1から約100IU/dL、約1から約90IU/dL、約1から約85IU/dL、約1から約80IU/dL、約1から約75IU/dL、約1から約70IU/dL、約1から約65IU/dL、約1から約60IU/dL、約1から約55IU/dL、約1から約50IU/dL、約1から約45IU/dL、約1から約40IU/dL、約1から約35IU/dL、約1から約30IU/dL、約1から約25IU/dL、約25から約125IU/dL、約50から約100IU/dL、約50から約75IU/dL、約75から約100IU/dL、約1から約20IU/dL、約2から約20IU/dL、約3から約20IU/dL、約4から約20IU/dL、約5から約20IU/dL、約6から約20IU/dL、約7から約20IU/dL、約8から約20IU/dL、約9から約20IU/dL、または約10から約20IU/dLの間で維持することを意味する。疾患または状態の治療または治療することは、対象におけるFVIII活性を、非血友病対象におけるFVIII活性の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、105%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%または150%と同等のレベルに維持することを含むこともできる。治療のために必要とされる最小限のトラフレベルは、1つまたはそれ以上の公知の方法によって測定することができ、各個人のために調整する(増加または低下させる)ことができる。
【0096】
本明細書で使用されるように、「投与すること」は、薬学的に許容される核酸分子、そこから発現されるポリペプチド、または本開示の核酸分子を含むベクターを、薬学的に許容される経路を通して対象に与えることを意味する。投与経路は静脈内、例えば、静脈内注射および静脈内注入であってよい。さらなる投与経路には、例えば、皮下、筋肉内、経口、経鼻および肺投与が含まれる。核酸分子、ポリペプチドおよびベクターは、少なくとも1つの賦形剤を含む医薬組成物の一環として投与することができる。
【0097】
本明細書で使用される用語「薬学的に許容される」は、ヒトに投与したときに、生理的に許容され、毒性も胃の不調、めまいなどのアレルギー性もしくは類似の厄介な反応も一般的に起こさない、分子実体および組成物を指す。場合により、本明細書で使用されるように、用語「薬学的に許容される」は、連邦もしくは州政府の規制機関に承認されたこと、または、動物、より詳細にはヒトでの使用のために米国薬局方もしくは他の公認の薬局方に掲載されていることを意味する。
【0098】
本明細書で使用されるように、「それを必要とする対象」というフレーズは、例えば止血を向上させるために、本開示の核酸分子、ポリペプチドまたはベクターの投与から利益を受けるであろう哺乳動物対象などの対象を含む。一実施形態では、対象には、これらに限定されないが、血友病の個体が含まれる。別の実施形態では、対象には、これらに限定されないが、治療的タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIIIに対する阻害物質を発生させ、したがってバイパス療法を必要とする個体が含まれる。対象は、成人または未成年(例えば、12才未満)であってよい。
【0099】
本明細書で使用されるように、用語「治療的タンパク質」は、対象に投与することができる当技術分野で公知の任意のポリペプチドを指す。一部の実施形態では、治療的タンパク質は、凝固因子、成長因子、抗体、その機能的断片、またはその組合せから選択されるタンパク質を含む。本明細書で使用されるように、用語「凝固因子」は、対象において出血エピソードを予防するかその期間を短くする、天然に存在するかまたは組換えで生成される分子またはその類似体を指す。言い換えると、それは、凝固促進活性を有する、すなわち、血液の凝集または凝固を引き起こす不溶性フィブリンのメッシュへのフィブリノーゲンの変換の役割を担う分子を意味する。本明細書で使用される「凝固因子」は、活性化凝固因子、その酵素前駆体または活性化可能な凝固因子を含む。「活性化可能な凝固因子」は、活性型に変換することが可能である不活性型(例えば、その酵素前駆体の形態)にある凝固因子である。用語「凝固因子」には、これらに限定されないが、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第V因子(FV)、FVII、FVIII、FIX、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)、その酵素前駆体、その活性化型または任意のその組合せが含まれる。
【0100】
本明細書で使用されるように、凝固活性は、フィブリン凝塊の形成を完了させる、および/または大出血もしくは出血エピソードの重症度、期間もしくは頻度を低減する生化学反応のカスケードに参加する能力を意味する。
【0101】
本明細書で使用されるように、「成長因子」は、サイトカインおよびホルモンを含む、当技術分野で公知の任意の成長因子を含む。一部の実施形態では、成長因子は、アドレノメデュリン(AM)、アンギオポエチン(Ang)、オートクリン運動性因子、骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP2、BMP4、BMP5、BMP7)、線毛神経栄養因子ファミリーメンバー(例えば、線毛神経栄養因子(CNTF)、白血病抑制因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6))、コロニー刺激因子(例えば、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、上皮成長因子(EGF)、エフリン(例えば、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、エフリンB3)、エリスロポエチン(EPO)、線維芽細胞成長因子(FGF)(例えば、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、FGF23)、胎児ウシ成長ホルモン(FBS)、GDNFファミリーメンバー(例えば、神経膠細胞系由来の神経栄養性因子(GDNF)、ニュールツリン、ペルセフィン、アルテミン)、増殖分化因子-9(GDF9)、肝細胞成長因子(HGF)、肝癌由来の成長因子(HDGF)、インスリン、インスリン様成長因子(例えば、インスリン様成長因子-1(IGF-1)またはIGF-2、インターロイキン(IL)(例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、遊走刺激因子(MSF)、マクロファージ刺激タンパク質(MSPまたは肝細胞成長因子様タンパク質(HGFLP))、ミオスタチン(GDF-8)、ニューレグリン(例えば、ニューレグリン1(NRG1)、NRG2、NRG3、NRG4)、ニューロトロフィン(例えば、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、ニューロトロフィン-3(NT-3)、NT-4、胎盤成長因子(PGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、レナラーゼ(RNLS)、T細胞成長因子(TCGF)、トロンボポエチン(TPO)、トランスフォーミング成長因子(例えば、トランスフォーミング成長因子アルファ(TGF-α)、TGF-β、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)および血管内皮成長因子(VEGF)から選択される。
【0102】
一部の実施形態では、治療的タンパク質は、X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファ-グルコシダーゼ)または任意のその組合せから選択される遺伝子によってコードされる。
【0103】
本明細書で使用されるように、用語「異種」または「外因性」は、所与の場面、例えば細胞またはポリペプチドにおいて通常は見出されない分子を指す。外因性または異種分子を細胞に導入することができ、例えばトランスフェクションまたは遺伝子操作の他の形態による細胞の操作の後にだけ存在するか、または異種アミノ酸配列が、それが天然に見出されないタンパク質に存在することができる。
【0104】
本明細書で使用されるように、用語「異種ヌクレオチド配列」は、所与のポリヌクレオチド配列と一緒に天然に存在しないヌクレオチド配列を指す。一実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、治療的タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIIIの半減期を延長することが可能なポリペプチドをコードする。別の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、治療的タンパク質、例えば凝固因子、例えばFVIIIの流体力学半径を増加させるポリペプチドをコードする。他の実施形態では、異種ヌクレオチド配列は、その生物活性にも機能(例えば、凝血促進活性)にも有意に影響を与えることなく、治療的タンパク質の1つまたはそれ以上の薬物動態学的特性を向上させるポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、治療的タンパク質は、異種ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドにリンカーによって連結または接続される。異種ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチド部分の非限定的な例には、免疫グロブリン定常領域またはその一部、アルブミンまたはその断片、アルブミン結合部分、トランスフェリン、米国特許出願第20100292130号のPASポリペプチド、HAP配列、トランスフェリンまたはその断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、アルブミン結合小分子、XTEN配列、FcRn結合部分(例えば、FcRnに結合する完全Fc領域またはその部分)、単鎖Fc領域(ScFc領域、例えば、US2008/0260738、WO2008/012543またはWO2008/1439545に記載のもの)、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、ペプチドおよびとりわけ50%未満から50%超の様々な程度の二次構造を有する、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)から選択される2つのタイプのアミノ酸の6~40アミノ酸の短いポリペプチド、またはその2つ以上の組合せが含まれる。一部の実施形態では、異種ヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドは、非ポリペプチド部分に連結される。非ポリペプチド部分の非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン結合小分子、ポリシアル酸、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、その誘導体または任意のその組合せが含まれる。
【0105】
本明細書で使用されるように、用語「Fc領域」は、天然のIgのFc領域に対応するポリペプチドの部分、すなわち、その2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体結合によって形成されるものと規定される。天然のFc領域は、別のFc領域とホモダイマーを形成する。対照的に、本明細書で使用されるように、用語「遺伝子融合Fc領域」または「単鎖Fc領域」(scFc領域)は、単一のポリペプチド鎖の中で遺伝子的に連結される(すなわち、単一の連続した遺伝子配列にコードされる)Fcドメインで構成される合成二量体Fc領域を指す。
【0106】
一実施形態では、「Fc領域」は、パパイン切断部位(すなわち、重鎖定常領域の最初の残基を114としたときの、IgGの残基216)のすぐ上流のヒンジ領域から始まり抗体のC末端で終わる、単一のIg重鎖の部分を指す。したがって、完全なFcドメインは、ヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを少なくとも含む。
【0107】
Ig定常領域のFc領域は、Igアイソタイプにより、CH2、CH3およびCH4ドメイン、ならびにヒンジ領域を含むことができる。IgのFc領域を含むキメラタンパク質は、安定性の増加、血清中半減期の増加(Caponら、1989年、Nature 337:525頁を参照のこと)、ならびに新生児Fc受容体(FcRn)などのFc受容体への結合性を含むいくつかの望ましい特性をキメラタンパク質に与える(米国特許第6,086,875号、第6,485,726号、第6,030,613号;WO03/077834;US2003-0235536A1)、これらは参照により本明細書に完全に組み入れる。
【0108】
本開示のヌクレオチド配列との比較において本明細書で使用される場合、「参照ヌクレオチド配列」は、配列が最適化されていないこと以外は、本開示のヌクレオチド配列と事実上同一であるポリヌクレオチド配列である。例えば、配列番号1のコドン最適化BDD FVIIIおよび、その3’末端で配列番号1に連結される単鎖Fc領域をコードする異種ヌクレオチド配列からなる核酸分子のための参照ヌクレオチド配列は、配列番号16の元の(または、「親」の)BDD FVIIIおよび、その3’末端で配列番号16に連結される単鎖Fc領域をコードする同一の異種ヌクレオチド配列からなる核酸分子である。
【0109】
本明細書で使用されるように、ヌクレオチド配列に関する用語「最適化される」は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を指し、ここで、ポリヌクレオチド配列は、そのポリヌクレオチド配列の特性を強化するように突然変異している。一部の実施形態では、最適化は、転写レベルを増加させるために、翻訳レベルを増加させるために、定常状態のmRNAレベルを増加させるために、基本転写因子などの調節タンパク質の結合性を増減するために、スプライシングを増減するために、または、ポリヌクレオチド配列によって生成されるポリペプチドの収量を増加させるために実行される。それを最適化するためにポリヌクレオチド配列に加えることができる変更の例には、コドン最適化、G/C含有量最適化、反復配列の除去、冨ATエレメントの除去、潜在性スプライス部位の除去、転写または翻訳を抑圧するシス作用性エレメントの除去、ポリTまたはポリA配列を加えるか除去すること、転写開始部位の周囲にコザックコンセンサス配列などの転写を強化する配列を加えること、ステムループ構造を形成するかもしれない配列の除去、不安定化配列の除去、および2つ以上のその組合せが含まれる。
【0110】
II.核酸分子
本開示は、標的タンパク質の発現をモジュレートすることができる治療的タンパク質または遺伝子をコードする、プラスミド様、無カプシドの核酸分子に関する。ウイルスのタンパク質の殻であるカプシドは、ウイルスの遺伝物質を封入する。カプシドは、ウイルスゲノムを保護し、ゲノムを宿主に送達し、宿主と相互作用することによって、ビリオンの機能を助けることが知られている。それにもかかわらず、ウイルスカプシドは、ベクターのパッケージング能力の制限および/または、特に遺伝子療法で使用する場合の免疫応答の誘導における因子である可能性がある。
【0111】
AAVベクターは、より一般的なタイプの遺伝子療法ベクターの1つとして現れた。しかし、カプシドの存在は、遺伝子療法におけるAAVベクターの有用性を制限する。詳細には、カプシドは、ベクターに含まれる導入遺伝子のサイズを4.5kb未満という低さにそれ自体制限することができる。遺伝子療法において有益である可能性がある様々な治療的タンパク質は、調節エレメントが加えられる前でさえ、このサイズを容易に超えることができる。
【0112】
さらに、カプシドを構成するタンパク質は、対象の免疫系が標的にすることができる抗原の役割をすることができる。一般集団においてAAVは非常に一般的であり、ほとんどの人は生涯の間にAAVに曝露している。その結果、ほとんどの潜在的遺伝子療法レシピエントは、AAVに対する免疫応答をすでに起こしている可能性があり、したがって、療法を拒絶する可能性がより高い。
【0113】
本開示のある特定の態様は、AAVベクターのこれらの欠陥を克服することを目指す。詳細には、本開示のある特定の態様は、第1のITR、第2のITR、および、例えば治療的タンパク質および/またはmiRNAをコードする遺伝子カセットを含む核酸分子に関する。一部の実施形態では、核酸分子は、カプシドタンパク質、複製タンパク質および/またはアセンブリータンパク質をコードする遺伝子を含まない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、治療的タンパク質をコードする。一部の実施形態では、治療的タンパク質は凝固因子を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、miRNAをコードする。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、第1のITRと第2のITRの間に配置される。一部の実施形態では、核酸分子は、1つまたはそれ以上の非コード領域をさらに含む。ある特定の実施形態では、1つまたはそれ以上の非コード領域は、プロモーター配列、イントロン、転写後調節エレメント、3’UTRポリ(A)配列または任意のその組合せを含む。
【0114】
一実施形態では、遺伝子カセットは、一本鎖核酸である。別の実施形態では、遺伝子カセットは、二本鎖核酸である。
【0115】
一実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第1のITR;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えばTTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)miRNAまたは治療的タンパク質、例えば凝固因子をコードするヌクレオチド;
(e)転写後調節エレメント、例えばWPRE;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;
(g)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第2のITR。
【0116】
一実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第1のITR;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えばTTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)miRNAをコードするヌクレオチド、ここで、miRNAは、SOD1、HTT、RHOまたは任意のその組合せから選択される標的遺伝子の発現を下方制御する;
(e)転写後調節エレメント、例えばWPRE;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;
(g)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第2のITR。
【0117】
一実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第1のITR;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えばTTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファ-グルコシダーゼ)または任意のその組合せをコードするヌクレオチド;
(e)転写後調節エレメント、例えばWPRE;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;
(g)パルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである第2のITR。
【0118】
一実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)AAVのITRである第1のITR、例えばAAV血清型2ゲノム;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えばTTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)FVIIIをコードするヌクレオチド;ここで、ヌクレオチドは配列番号1~14または配列番号71から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有し、ヌクレオチドによってコードされるFVIIIはFVIII活性を保持する;
(e)転写後調節エレメント、例えばWPRE;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;および
(g)AAVのITRである第2のITR、例えばAAV血清型2ゲノム。
【0119】
一実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)AAVのITRである第1のITR、例えばAAV血清型2ゲノム;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えばTTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)miRNAをコードするヌクレオチド、ここで、miRNAは、標的遺伝子、例えばSOD1、HTT、RHOおよび任意のその組合せの発現を下方制御する;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;および
(g)AAVのITRである第2のITR、例えばAAV血清型2ゲノム。
【0120】
一実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)AAVのITRである第1のITR、例えばAAV血清型2ゲノム;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えばTTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)X連鎖ジストロフィン、MTM1(ミオチューブラリン)、チロシン水酸化酵素、AADC、シクロヒドロラーゼ、SMN1、FXN(フラタキシン)、GUCY2D、RS1、CFH、HTRA、ARMS、CFB/CC2、CNGA/CNGB、Prf65、ARSA、PSAP、IDUA(MPS I)、IDS(MPS II)、PAH、GAA(酸性アルファ-グルコシダーゼ)または任意のその組合せをコードするヌクレオチド;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;および
(g)AAVのITRである第2のITR、例えばAAV血清型2ゲノム。
【0121】
別の実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)第1のITR;
(b)組織特異的プロモーター配列、例えばTTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)miRNAまたは治療的タンパク質、例えば凝固因子をコードするヌクレオチド;
(e)転写後調節エレメント、例えばWPRE;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;および
(g)第2のITR、
ここで、第1のITRまたは第2のITRの1つはパルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRであり、他のITRはAAV、例えばAAV血清型2ゲノムのITRである。
【0122】
一実施形態では、核酸分子は以下のものを含む:
(a)第1のITR;
(b)組織特異的プロモーター配列、TTPプロモーター;
(c)イントロン、例えば合成イントロン;
(d)miRNAまたは治療的タンパク質、例えば凝固因子をコードするヌクレオチド;
(e)転写後調節エレメント、例えばWPRE;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列、例えばbGHpA;および
(g)第2のITR、
ここで、第1のITRが合成ITRであるか、第2のITRが合成ITRであるか、または第1のITRおよび第2のITRの両方が合成ITRである。
【0123】
A.逆方向末端反復配列
本開示のある特定の態様は、第1のITR、例えば5’ITR、および第2のITR、例えば3’ITRを含む核酸分子に関する。一般的に、ITRは、原核生物のプラスミドからのパルボウイルス(例えば、AAV)DNAの複製および解放、または切除に関与する(Samulskiら、1983年、1987年;Senapathyら、1984年;GottliebおよびMuzyczka、1988年)。さらに、ITRは、AAVプロウイルス組入れのために、およびビリオンへのAAV DNAのパッケージングのために必要とされる最小限の配列のようである(McLaughlinら、1988年;Samulskiら、1989年)。これらのエレメントは、パルボウイルスゲノムの効率的な増殖のために必須である。ITR機能にとって不可欠な最小限の規定エレメントは、Rep結合部位(例えば、RBS;AAV2の場合GCGCGCTCGCTCGCTC(配列番号104))および末端分解部位(例えば、TRS;AAV2の場合AGTTGG(配列番号105))、さらにヘアピン形成を可能にする可変パリンドローム配列であると仮定されている。パリンドロームヌクレオチド領域は、DNA複製の起点として、およびウイルスのためのパッケージングシグナルとして、通常シスで一緒に機能する。ITRの中の相補的配列は、DNA複製の間、ヘアピン構造に折りたたまれる。一部の実施形態では、ITRは、ヘアピンT字形構造に折りたたまれる。他の実施形態では、ITRは、非T字形ヘアピン構造、例えば、U字形ヘアピン構造に折りたたまれる。AAV ITRのT字形ヘアピン構造は、ITRに隣接する導入遺伝子の発現を抑制することができることをデータは示唆する。例えば、Zhouら、Scientific Reports 7:5432頁(2017年7月14日)を参照のこと。T字形ヘアピン構造を形成しないITRを利用することによって、この形態の抑制を回避することができる。したがって、ある特定の態様では、非AAV ITRを含むポリヌクレオチドは、T字形ヘアピンを形成するAAV ITRを含むポリヌクレオチドと比較して向上した導入遺伝子発現を有する。
【0124】
一部の実施形態では、ITRは天然に存在するITRを含む、例えば、ITRはパルボウイルスITRの全部または一部を含む。一部の実施形態では、ITRは、合成配列を含む。一実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、合成配列を含む。別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRの各々は、合成配列を含む。一部の実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、天然に存在する配列を含む。別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRの各々は、天然に存在する配列を含む。
【0125】
一部の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRの一部、例えばトランケートされたITRを含むかそれからなる。一部の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRの断片を含むかそれからなり、ここで、断片は少なくとも約5個のヌクレオチド、少なくとも約10個のヌクレオチド、少なくとも約15個のヌクレオチド、少なくとも約20個のヌクレオチド、少なくとも約25個のヌクレオチド、少なくとも約30個のヌクレオチド、少なくとも約35個のヌクレオチド、少なくとも約40個のヌクレオチド、少なくとも約45個のヌクレオチド、少なくとも約50個のヌクレオチド、少なくとも約55個のヌクレオチド、少なくとも約60個のヌクレオチド、少なくとも約65個のヌクレオチド、少なくとも約70個のヌクレオチド、少なくとも約75個のヌクレオチド、少なくとも約80個のヌクレオチド、少なくとも約85個のヌクレオチド、少なくとも約90個のヌクレオチド、少なくとも約95個のヌクレオチド、少なくとも約100個のヌクレオチド、少なくとも約125個のヌクレオチド、少なくとも約150個のヌクレオチド、少なくとも約175個のヌクレオチド、少なくとも約200個のヌクレオチド、少なくとも約225個のヌクレオチド、少なくとも約250個のヌクレオチド、少なくとも約275個のヌクレオチド、少なくとも約300個のヌクレオチド、少なくとも約325個のヌクレオチド、少なくとも約350個のヌクレオチド、少なくとも約375個のヌクレオチド、少なくとも約400個のヌクレオチド、少なくとも約425個のヌクレオチド、少なくとも約450個のヌクレオチド、少なくとも約475個のヌクレオチド、少なくとも約500個のヌクレオチド、少なくとも約525個のヌクレオチド、少なくとも約550個のヌクレオチド、少なくとも約575個のヌクレオチド、または少なくとも約600個のヌクレオチドを含み;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRの断片を含むかそれからなり、ここで、断片は少なくとも約129個のヌクレオチドを含み、ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。ある特定の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRの断片を含むかそれからなり、ここで、断片は少なくとも約102個のヌクレオチドを含み、ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。
【0126】
一部の実施形態では、ITRは、天然に存在するITRの一部を含むかそれからなり、ここで、断片は、天然に存在するITRの長さの少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%を含み;ここで、断片は天然に存在するITRの機能特性を保持する。
【0127】
ある特定の実施形態では、ITRは、適切に整列させたとき、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも50%、少なくとも51%、少なくとも52%、少なくとも53%、少なくとも54%、少なくとも55%、少なくとも56%、少なくとも57%、少なくとも58%、少なくとも59%、少なくとも60%、少なくとも61%、少なくとも62%、少なくとも63%、少なくとも64%、少なくとも65%、少なくとも66%、少なくとも67%、少なくとも68%、少なくとも69%、少なくとも70%、少なくとも71%、少なくとも72%、少なくとも73%、少なくとも74%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。他の実施形態では、ITRは、適切に整列させたとき、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させたとき、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも80%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させたとき、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも70%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させたとき、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも60%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、ITRは、適切に整列させたとき、天然に存在するITRの相同部分と少なくとも50%の配列同一性を有する配列を含むかそれからなり;ここで、ITRは天然に存在するITRの機能特性を保持する。
【0128】
一部の実施形態では、ITRは、AAVゲノムからのITRを含む。一部の実施形態では、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11および任意のその組合せから選択されるAAVゲノムのITRである。特定の実施形態では、ITRは、AAV2ゲノムのITRである。別の実施形態では、ITRは、AAVゲノムの1つまたはそれ以上に由来するITRをその5’および3’末端に含むように遺伝子操作された合成配列である。
【0129】
一部の実施形態では、ITRは、AAVゲノムに由来しない。一部の実施形態では、ITRは、非AAVのITRである。一部の実施形態では、ITRは、これらに限定されないが、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択される、ウイルスのパルボウイルス科からの非AAVゲノムのITRである。ある特定の実施形態では、ITRは、エリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。別の実施形態では、ITRは、タイワンアヒルパルボウイルス(MDPV)株に由来する。ある特定の実施形態では、MDPV株は弱毒化される、例えば、MDPV株FZ91-30。他の実施形態では、MDPV株は病原性である、例えば、MDPV株YY。一部の実施形態では、ITRは、ブタパルボウイルス、例えば、ブタパルボウイルスU44978に由来する。一部の実施形態では、ITRは、マウス微小ウイルス、例えば、マウス微小ウイルスU34256に由来する。一部の実施形態では、ITRは、イヌパルボウイルス、例えば、イヌパルボウイルスM19296に由来する。一部の実施形態では、ITRは、ミンク腸炎ウイルス、例えば、ミンク腸炎ウイルスD00765に由来する。一部の実施形態では、ITRは、デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)に由来する。一実施形態では、デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)は、デペンドウイルス(Dependovirus)ガチョウパルボウイルス(GPV)株である。具体的な実施形態では、GPV株は弱毒化される、例えば、GPV株82-0321V。別の具体的な実施形態では、GPV株は病原性である、例えば、GPV株B。
【0130】
核酸分子の第1のITRおよび第2のITRは、同じゲノム、例えば同じウイルスのゲノム、または異なるゲノム、例えば2つ以上の異なるウイルスゲノムのゲノムに由来し得る。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは、同じAAVゲノムに由来する。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子に存在する2つのITRは同じであり、特にAAV2 ITRであってよい。他の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来し、第2のITRはAAVゲノムに由来しない(例えば、非AAVゲノム)。他の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来せず(例えば、非AAVゲノム)、第2のITRはAAVゲノムに由来する。さらに他の実施形態では、第1のITRと第2のITRは、両方ともAAVゲノムに由来しない(例えば、非AAVゲノム)。特定の一実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは同一である。
【0131】
一部の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来し、第2のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来する。他の実施形態では、第2のITRはAAVゲノムに由来し、第1のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来する。他の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来し、ここで、第1のITRおよび第2のITRは同じゲノムに由来する。他の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRは、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)、ペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来し、ここで、第1のITRおよび第2のITRは異なるゲノムに由来する。
【0132】
一部の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来し、第2のITRはエリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。他の実施形態では、第2のITRはAAVゲノムに由来し、第1のITRはエリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)に由来する。
【0133】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、B19に由来するITRの全体または一部を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号167、168、169、170および171から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが由来するB19 ITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号167、168、169、170および171から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRはヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0134】
一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号167、168、169、170および171から選択されるヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号167に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号168に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号169に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号170に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号171に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。
【0135】
【表1】
【表2】
【0136】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRはヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号169に示す最小限のヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号167に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であり、それが誘導されるB19 ITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRはヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号169に示す最小限のヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号167に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRはヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0137】
一部の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムから誘導され、第2のITRはGPVから誘導される。他の実施形態では、第2のITRはAAVゲノムから誘導され、第1のITRはGPVから誘導される。
【0138】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、GPVから誘導されるITRの全体または一部を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号172、173、174、175および176から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが誘導されるGPV ITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、GPVから誘導されるITRの全体または一部を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号172、173、174、175および176から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRはヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号172、173、174、175および176から選択されるヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号172に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号173に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号174に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号175に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号176に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。
【0139】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRはヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は配列番号174に示す最小限のヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号172に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが誘導されるGPV ITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号174に示す最小限のヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号172に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRはヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0140】
ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRはヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は配列番号176に示す最小限のヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号172に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが由来するGPV ITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、ヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号176に示す最小限のヌクレオチド配列を含み、ここで、ヌクレオチド配列は、配列番号172に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRはヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。
【0141】
ある特定の実施形態では、第1のITRまたは第2のITRの1つは、AAV2に由来するITRの全体または一部を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、配列番号177または178に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRは、それが由来するAAV2 ITRの機能特性を保持する。一部の実施形態では、第1のITRまたは第2のITRは、配列番号177または178に示すヌクレオチド配列と少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるヌクレオチド配列を含むかそれからなり、ここで、第1のITRおよび/または第2のITRはヘアピン構造を形成することが可能である。ある特定の実施形態では、ヘアピン構造は、T字形ヘアピンを含まない。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号177または178に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号177に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、配列番号178に示すヌクレオチド配列を含むかそれからなる。
【0142】
一部の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来し、第2のITRはタイワンアヒルパルボウイルス(MDPV)株に由来する。他の実施形態では、第2のITRはAAVゲノムに由来し、第1のITRはタイワンアヒルパルボウイルス(MDPV)株に由来する。ある特定の実施形態では、MDPV株は弱毒化される、例えば、MDPV株FZ91-30。他の実施形態では、MDPV株は病原性である、例えば、MDPV株YY。
【0143】
一部の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来し、第2のITRはデペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)に由来する。一部の実施形態では、第2のITRはAAVゲノムに由来し、第1のITRはデペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)に由来する。他の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来し、第2のITRはデペンドウイルス(Dependovirus)ガチョウパルボウイルス(GPV)株に由来する。他の実施形態では、第2のITRはAAVゲノムに由来し、第1のITRはデペンドウイルス(Dependovirus)GPV株に由来する。ある特定の実施形態では、GPV株は弱毒化される、例えば、GPV株82-0321V。他の実施形態では、GPV株は病原性である、例えば、GPV株B。
【0144】
ある特定の実施形態では、第1のITRはAAVゲノムに由来し、第2のITRは、ブタパルボウイルス、例えばブタパルボウイルス株U44978;マウス微小ウイルス、例えばマウス微小ウイルス株U34256;イヌパルボウイルス、例えばイヌパルボウイルス株M19296;ミンク腸炎ウイルス、例えばミンク腸炎ウイルス株D00765;および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来する。他の実施形態では、第2のITRはAAVゲノムに由来し、第1のITRは、ブタパルボウイルス、例えばブタパルボウイルス株U44978;マウス微小ウイルス、例えばマウス微小ウイルス株U34256;イヌパルボウイルス、例えばイヌパルボウイルス株M19296;ミンク腸炎ウイルス、例えばミンク腸炎ウイルス株D00765;および任意のその組合せからなる群から選択されるゲノムに由来する。
【0145】
別の特定の実施形態では、ITRは、AAVゲノムに由来しないITRをその5’および3’末端に含むように遺伝子操作された合成配列である。別の実施形態では、ITRは、非AAVゲノムの1つまたはそれ以上に由来するITRをその5’および3’末端に含むように遺伝子操作された合成配列である。本発明の核酸分子に存在する2つのITRは、同じであるか異なる非AAVゲノムであってよい。詳細には、ITRは、同じ非AAVゲノムに由来し得る。具体的な実施形態では、本発明の核酸分子に存在する2つのITRは同じであり、特にAAV2 ITRであってよい。
【0146】
一部の実施形態では、ITR配列は、1つまたはそれ以上のパリンドローム配列を含む。本明細書に開示されるITRのパリンドローム配列には、これらに限定されないが、天然のパリンドローム配列(すなわち、天然に見出される配列)、合成配列(すなわち、天然に見出されない配列)、例えば偽パリンドローム配列、およびその組合せまたは改変形態が含まれる。「偽パリンドローム配列」は、二次構造を形成する天然のAAVまたは非AAVパリンドローム配列中の配列と、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、10%未満または5%未満、または同一性なしを含む80%未満の核酸配列同一性を共有する、不完全パリンドローム配列を含むパリンドロームDNA配列である。天然のパリンドローム配列は、本明細書に開示される任意のゲノムから得るかまたはそれに由来し得る。合成パリンドローム配列は、本明細書に開示される任意のゲノムに基づくことができる。
【0147】
パリンドローム配列は、連続的であっても中断されていてもよい。一部の実施形態では、パリンドローム配列は中断され、ここで、パリンドローム配列は第2の配列の挿入を含む。一部の実施形態では、第2の配列は、プロモーター、エンハンサー、インテグラーゼのための組入れ部位(例えば、CreまたはFlpリコンビナーゼのための部位)、遺伝子産物のためのオープンリーディングフレーム、またはその組合せを含む。
【0148】
一部の実施形態では、ITRは、ヘアピンループ構造を形成する。一実施形態では、第1のITRは、ヘアピン構造を形成する。別の実施形態では、第2のITRは、ヘアピン構造を形成する。さらに別の実施形態では、第1のITRおよび第2のITRの両方は、ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、T字形ヘアピン構造を形成しない。ある特定の実施形態では、第1のITRおよび/または第2のITRは、非T字形ヘアピン構造を形成する。一部の実施形態では、非T字形ヘアピン構造は、U字形ヘアピン構造を含む。
【0149】
一部の実施形態では、本明細書に記載される核酸分子中のITRは、転写活性化ITRであってよい。転写活性化ITRは、少なくとも1つの転写活性エレメントの包含によって転写活性化された野生型ITRの全部または一部を含むことができる。各種の転写活性エレメントがこの場面での使用に適する。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、構成的転写活性エレメントである。構成的転写活性エレメントは継続したレベルの遺伝子転写を提供し、導入遺伝子が継続的に発現されることが望まれるときに好ましい。他の実施形態では、転写活性エレメントは、誘導可能な転写活性エレメントである。誘導可能な転写活性エレメントは、インデューサー(また、誘導条件)の不在下で低い活性を一般的に示し、インデューサーの存在(または、誘導条件への切り替え)の下で上方制御される。ある特定のときだけもしくはある特定の場所だけで発現が望ましい場合、または誘導剤を使用して発現レベルを滴定することが望ましい場合、誘導可能な転写活性エレメントが好ましいかもしれない。転写活性エレメントは、組織特異的であってもよい;すなわち、それらは、ある特定の組織または細胞型においてだけ活性を示す。
【0150】
転写活性エレメントは、様々な方法でITRに組み込むことができる。一部の実施形態では、転写活性エレメントは、ITRの任意の部分の5’側に、またはITRの任意の部分の3’側に組み込まれる。他の実施形態では、転写活性化ITRの転写活性エレメントは、2つのITR配列の間にある。転写活性エレメントが間隔をあけなければならない2つ以上のエレメントを含む場合、それらのエレメントはITRの部分を交互に用いることができる。一部の実施形態では、ITRのヘアピン構造は欠失し、転写エレメントの逆方向反復で置き換えられる。この後者の配置は、構造の欠失部分を模倣するヘアピンを形成するであろう。転写活性化ITRに複数の直列型の転写活性エレメントが存在することができ、これらは隣接するか離れていてもよい。さらに、転写活性化ITRの転写活性エレメントに、タンパク質結合部位(例えば、Rep結合部位)を導入することができる。転写活性エレメントは、RNAを形成するRNAポリメラーゼによるDNAの制御された転写を可能にする任意の配列を含むことができ、例えば、下で規定される転写活性エレメントを含むことができる。
【0151】
転写活性化ITRは、比較的制限されたヌクレオチド配列長の核酸分子に転写活性化およびITR機能の両方を提供し、それは、核酸分子から運び、発現させることができる導入遺伝子の長さを効果的に最大にする。転写活性エレメントのITRへの組み込みは、様々な方法で達成することができる。転写活性エレメントのITR配列および配列必要条件の比較は、ITRの中のエレメントをコードする方法に関する識見を提供することができる。例えば、転写活性エレメントの機能的エレメントを複製するITR配列における特異的変更の導入を通して、転写活性をITRに加えることができる。特異的部位で特定のヌクレオチド配列を効率的に加え、削除し、および/または変更するために、いくつかの技術が当技術分野に存在する(例えば、DengおよびNickoloff(1992)Anal.Biochem.200:81~88頁を参照のこと)。転写活性化ITRを作製する別の方法は、ITRの所望の位置での制限部位の導入を含む。さらに、当技術分野で公知の方法を使用して、複数の転写活性エレメントを転写活性化ITRに組み込むことができる。
【0152】
実例として、転写活性化ITRは、TATAボックス、GCボックス、CCAATボックス、Sp1部位、Inr領域、CRE(cAMP調節エレメント)部位、ATF-1/CRE部位、APBβボックス、APBαボックス、CArGボックス、CCACボックス、または当技術分野で公知であるような転写に関与する任意の他のエレメントなどの、1つまたはそれ以上の転写活性エレメントの包含によって生成することができる。
【0153】
B.治療用タンパク質
本開示のある特定の態様は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つの治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つより多い治療用タンパク質をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同一の治療用タンパク質の2つまたはそれ以上の複製をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同一の治療用タンパク質の2つまたはそれ以上のバリアントをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、2つまたはそれ以上の異なる治療用タンパク質をコードする。
【0154】
本開示のある特定の実施形態は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子であって、治療用タンパク質が凝固因子を含む、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、凝固因子は、FI、FII、FIII、FIV、FV、FVI、FVII、FVIII、FIX、FX、FXI、FXII、FXIII、VWF、プレカリクレイン、高分子キニノーゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、ヘパリン補因子II、タンパク質C、タンパク質S、タンパク質Z、タンパク質Z関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)、その任意の酵素前駆体、その任意の活性形態、およびその任意の組合せからなる群から選択される。一実施形態では、凝固因子は、FVIIIまたはそのバリアントもしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、FIXまたはそのバリアントもしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、FVIIまたはそのバリアントもしくは断片を含む。別の実施形態では、凝固因子は、VWFまたはそのバリアントもしくは断片を含む。
【0155】
1.凝固因子
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、第VIII因子ポリペプチドを含む。本出願全体を通して「FVIII」と略される「第VIII因子」は、本明細書で使用されるように、別段に特定されていなければ、凝固におけるその通常の役割において、機能的なFVIIIポリペプチドを意味する。よって、FVIIIという用語は、機能的であるバリアントポリペプチドを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(またはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例として、これらに限定されないが、凝固を活性化する能力、第IX因子に関する補因子として作用する能力、またはCa2+とリン脂質の存在下で、第IX因子とテンナーゼ複合体を形成し、次いで、第X因子を活性化形態Xaに変換する能力が挙げられる。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスのFVIIIタンパク質であり得る。さらに、ヒト由来のFVIIIと他の種由来のFVIIIの間の比較によって、機能に必要とされる可能性の高い保存残基が特定された(Cameronら、Thromb. Haemost. 79:317~22(1998);US6,251,632)。全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、多くの機能的断片、突然変異体および改変バージョンがそうであるように、公知である。様々なFVIIIアミノ酸およびヌクレオチド配列が、例えば、米国特許出願公開第2015/0158929号、同第2014/0308280号、および同第2014/0370035号ならびに国際特許出願公開第2015/106052号に開示されている。FVIIIポリペプチドとして、例えば、全長FVIII、全長FVIIIからN末端のMetを除いたもの、成熟FVIII(シグナル配列を除いたもの)、N末端に追加のMetを有する成熟FVIII、および/またはBドメインの全体的または部分的欠失を有するFVIIIが挙げられる。FVIIIバリアントは、部分的欠失であるか全体的欠失であるかにかかわらず、Bドメインの欠失を含む。
【0156】
a.FVIIIおよびFVIIIタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、第VIII因子ポリペプチドを含む。本出願全体を通して「FVIII」と略される「第VIII因子」は、本明細書で使用されるように、別段に特定されていなければ、凝固におけるその通常の役割において、機能的なFVIIIポリペプチドを意味する。よって、FVIIIという用語は、機能的であるバリアントポリペプチドを含む。「FVIIIタンパク質」は、FVIIIポリペプチド(またはタンパク質)またはFVIIIと互換的に使用される。FVIII機能の例として、これらに限定されないが、凝固を活性化する能力、第IX因子に関する補因子として作用する能力、またはCa2+とリン脂質の存在下で、第IX因子とテンナーゼ複合体を形成し、次いで、第X因子を活性化形態Xaに変換する能力が挙げられる。FVIIIタンパク質は、ヒト、ブタ、イヌ、ラット、またはマウスのFVIIIタンパク質であり得る。さらに、ヒト由来のFVIIIと他の種由来のFVIIIの間の比較によって、機能に必要とされる可能性の高い保存残基が特定された(Cameronら、Thromb. Haemost. 79:317~22(1998);US6,251,632)。全長ポリペプチドおよびポリヌクレオチド配列は、多くの機能的断片、突然変異体および改変バージョンがそうであるように、公知である。様々なFVIIIアミノ酸およびヌクレオチド配列が、例えば、米国特許出願公開第2015/0158929号、同第2014/0308280号、および同第2014/0370035号ならびに国際特許出願公開第2015/106052号に開示されている。FVIIIポリペプチドとして、例えば、全長FVIII、全長FVIIIからN末端のMetを除いたもの、成熟FVIII(シグナル配列を除いたもの)、N末端に追加のMetを有する成熟FVIII、および/またはBドメインの全体的または部分的欠失を有するFVIIIが挙げられる。FVIIIバリアントは、部分的欠失であるか全体的欠失であるかにかかわらず、Bドメインの欠失を含む。
【0157】
本明細書で使用されるキメラタンパク質におけるFVIII部分は、FVIII活性を有する。FVIII活性は、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができる。いくつかの検査は、凝固系の機能を評価するのに利用可能である:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)検査、発色アッセイ、ROTEMアッセイ、プロトロンビン時間(PT)検査(INRを決定するためにも使用される)、フィブリノーゲン検査(Clauss方法による場合も多い)、血小板数、血小板機能検査(PFA-100による場合も多い)、TCT、出血時間、混合検査(患者の血漿が正常な血漿と混合される場合に、異常が訂正されるかどうか)、凝固因子アッセイ、抗リン脂質抗体、D-二量体、遺伝子検査(例えば、第V因子ライデン、プロトロンビン突然変異G20210A)、希釈ラッセル蛇毒時間(dRVVT)、種々の血小板機能検査、トロンボエラストグラフィー(TEGまたはSonoclot)、トロンボエラストメトリー(TEM(登録商標)、例えば、ROTEM(登録商標))、または真性グロブリン溶解時間(ELT)。
【0158】
aPTT検査は、「内因系」凝固経路(接触活性化経路とも称される)と通常の凝固経路の両方の有効性を測定する性能指標である。この検査は、市販の組換え凝固因子、例えば、FVIIIの凝固活性を測定するために、通常使用される。この検査は、外因系経路を測定するプロトロンビン時間(PT)と合わせて使用される。
【0159】
ROTEM分析は、止血の動態額全体に関する情報を提供する:凝固時間、血餅形成、血餅の安定性および溶解。トロンボエラストメトリーの様々なパラメーターは、血漿凝固系の活性、血小板機能、線維素溶解、またはこれらの相互作用に影響を及ぼす多くの因子に依存する。このアッセイは、二次的止血の全景を提供することができる。
【0160】
発色アッセイのメカニズムは、活性化したFVIIIが、活性化した第IX因子、リン脂質およびカルシウムイオンの存在下で、第X因子の第Xa因子への変換を加速する血液凝固カスケードの原理に基づく。第Xa因子の活性は、第Xa因子に特異的なp-ニトロアニリド(pNA)基質の加水分解によって評価される。405nMで測定されるp-ニトロアニリン放出の初期速度は、試料中の第Xa因子活性、よってFVIII活性に直接比例する。
【0161】
国際血栓止血学会(the International Society on Thrombosis and Hemostatsis (ISTH))の学術標準化委員会(the Scientific and Standardization Committee (SSC))のFVIIIおよび第IX因子の分科委員会により、発色アッセイが推奨される。1994年以来、発色アッセイは、FVIII濃縮物の効力の帰属に関するヨーロッパ薬局方の基準方法でもある。よって、一実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIまたはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))を含むキメラポリペプチドに匹敵するFVIII活性を有する。
【0162】
別の実施形態では、この開示のFVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIIIまたはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))を含むキメラタンパク質に匹敵する第Xa因子の生成速度を有する。
【0163】
第X因子を活性化して第Xa因子とするために、活性化した第IX因子(第IXa因子)は、Ca2+、膜リン脂質、およびFVIII補因子の存在下で、第X因子の1つのアルギニン-イソロイシン結合を加水分解して、第Xa因子を形成する。したがって、FVIIIの第IX因子との相互作用は、凝集経路において決定的である。ある特定の実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))を含むキメラポリペプチドに匹敵する速度で第IXa因子と相互作用することができる。
【0164】
さらに、FVIIIは、フォンビルブランド因子に結合するが、循環血液中で不活性である。FVIIIは、VWFに結合しない場合、急速に分解し、トロンビンの作用によってVWFから放出される。一部の実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))を含むキメラポリペプチドに匹敵するレベルでフォンビルブランド因子に結合する。
【0165】
FVIIIは、カルシウムおよびリン脂質の存在下で、活性化したタンパク質Cによって不活性化され得る。活性化したタンパク質Cは、A1ドメインのアルギニン336の後のFVIII重鎖を切断して、第X因子の基質相互作用部位を破壊し、A2ドメインのアルギニン562の後を切断して、A2ドメインの解離を促進して第IXa因子との相互作用部位を破壊する。この切断はまた、A2ドメイン(43kDa)を二等分し、A2-Nドメイン(18kDa)とA2-Cドメイン(25kDa)を生じる。よって、活性化したタンパク質Cは、重鎖における複数の切断部位を触媒することができる。一実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))を含むキメラポリペプチドに匹敵するレベルの活性化したタンパク質Cによって不活性化される。
【0166】
他の実施形態では、FVIIIを含むキメラタンパク質は、成熟FVIIIの配列またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))を含むキメラポリペプチドに匹敵するin vivoでのFVIII活性を有する。特定の実施形態では、FVIIIを含むキメラポリペプチドは、HemAマウスの尾静脈切断モデルの成熟FVIIIの配列またはBDD FVIII(例えば、ADVATE(登録商標)、REFACTO(登録商標)、またはELOCTATE(登録商標))を含むキメラポリペプチドに匹敵するレベルのHemAマウスを保護することが可能である。
【0167】
FVIIIの「Bドメイン」は、本明細書で使用されるように、内部アミノ酸配列の同一性およびトロンビンによるタンパク質切断の部位により定義される、当技術分野で公知のBドメインと同一であり、例えば、成熟ヒトFVIIIの残基Ser741~Arg1648である。他のヒトFVIIIドメインは、成熟ヒトFVIIIに対して、以下のアミノ酸残基により定義される:A1,成熟FVIIIの残基Ala1~Arg372;A2,成熟FVIIIの残基Ser373~Arg740;A3,成熟FVIIIの残基Ser1690~Ile2032;C1,成熟FVIIIの残基Arg2033~Asn2172;C2,成熟FVIIIの残基Ser2173~Tyr2332。別段指定されていなければ、いずれの配列番号にも言及しない本明細書で使用される配列残基番号は、シグナルペプチドの配列(19アミノ酸)を含まないFVIII配列に対応する。FVIII重鎖としても知られるA3-C1-C2配列は、残基Ser1690~Tyr2332を含む。残りの配列、残基Glu1649~Arg1689は、通常、FVIII軽鎖活性化ペプチドと称される。また、ブタ、マウスおよびイヌのFVIIIに関するBドメインを含む、ドメインの全てに関する境界の位置も、当技術分野で公知である。一実施形態では、FVIIIのBドメインは欠失している(「Bドメイン欠失FVIII」または「BDD FVIII」)。BDD FVIIIの一例は、REFACTO(登録商標)(組換えBDD FVIII)である。特定の一実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIバリアントは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746から1648の欠失を含む。
【0168】
「Bドメイン欠失FVIII」は、米国特許第6,316,226号、同第6,346,513号、同第7,041,635号、同第5,789,203号、同第6,060,447号、同第5,595,886号、同第6,228,620号、同第5,972,885号、同第6,048,720号、同第5,543,502号、同第5,610,278号、同第5,171,844号、同第5,112,950号、同第4,868,112号、および同第6,458,563号ならびに国際特許出願公開第2015106052号(PCT/US2015/010738)に開示される、全部または部分的な欠失を有し得る。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIII配列は、米国特許第6,316,226号(また、米国特許第6,346,513号)の第4欄4行目から第5欄28行目および実施例1~5に開示される欠失のうちのいずれか1つを含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失第FVIII因子は、S743/Q1638 Bドメイン欠失第VIII因子(SQ BDD FVIII)(例えば、アミノ酸744からアミノ酸1637の欠失を有する第VIII因子、例えば、成熟FVIIIのアミノ酸1~743およびアミノ酸1638~2332を有する第VIII因子)である。一部の実施形態では、本開示の方法において使用されるBドメイン欠失FVIIIは、米国特許第5,789,203号(また、米国特許第6,060,447号、同第5,595,886号、および同第6,228,620号)の第2欄、26~51行目および実施例5~8に開示される欠失を有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失第VIII因子は、米国特許第5,972,885号の第1欄25行目~第2欄40行目;米国特許第6,048,720号の第6欄1~22行目および実施例1;米国特許第5,543,502号の第2欄17~46行目;米国特許第5,171,844号の第4欄22行目~第5欄36行目;米国特許第5,112,950号の第2欄55~68行目、図2、および実施例1;米国特許第4,868,112号の第2欄2行目から第19欄21行目および表2;米国特許第7,041,635号の第2欄1行目から第3欄19行目、第3欄40行目から第4欄67行目、第7欄43行目から第8欄26行目、および第11欄5行目から第13欄39行目;または米国特許第6,458,563号の第4欄25~53行目に記載の欠失を有する。一部の実施形態では、WO91/09122に開示されるように、Bドメイン欠失FVIIIは、ほとんどのBドメインの欠失を有するが、2つのポリペプチド鎖内での一次翻訳産物のin vivoタンパク質プロセシングに不可欠であるBドメインのアミノ末端配列を依然として含有する。一部の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、アミノ酸747~1638の欠失、すなわち、Bドメインの実質的に完全な欠失により構築される。Hoeben R.C.ら J. Biol. Chem. 265(13):7318~7323頁(1990)。Bドメイン欠失VIII因子は、FVIIIのアミノ酸771~1666またはアミノ酸868~1562の欠失を含有する場合もある。Meulien P.ら Protein Eng. 2(4):301~6(1988)。本開示の一部であるさらなるBドメイン欠失として、アミノ酸982から1562または760から1639(Tooleら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83:5939~5942頁(1986))、797から1562(Eatonら、Biochemistry 25:8343~8347頁(1986))、741から1646(Kaufman (国際公開第87/04187号))、747~1560(Sarverら、DNA 6:553~564頁(1987))、741から1648(Pasek(PCT出願第88/00831号))、または816から1598もしくは741から1648(Lagner (Behring Inst. Mitt.(1988) No 82:16~25頁、EP 295597))の欠失が挙げられる。特定の一実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基746から1648の欠失を含む。別の実施形態では、Bドメイン欠失FVIIIは、成熟FVIIIのアミノ酸残基745から1648の欠失を含む。一部の実施形態では、BDD FVIIIは、成熟FVIIIの全長(rVIII-SingleChainおよびAFSTYLA(登録商標)としても知られる)に対応するアミノ酸765から1652の欠失を含有する単鎖FVIIIを含む。米国特許第7,041,635号を参照のこと。
【0169】
他の実施形態では、BDD FVIIIは、全長FVIII配列のアミノ酸配列に対応する、1つまたはそれ以上のN連結グリコシル化部位、例えば、残基757、784、828、900、963、または場合により943を保持するBドメインの断片を含有するFVIIIポリペプチドを含む。Bドメイン断片の例は、Miao, H.Z.ら、Blood 103(a):3412~3419頁(2004)、Kasuda, Aら、J. Thromb. Haemost. 6:1352~1359頁(2008)およびPipe, S.W.ら、J. Thromb. Haemost. 9:2235~2242頁(2011)に開示されるBドメインの226アミノ酸または163アミノ酸を含む(すなわち、Bドメインの第1の226アミノ酸または163アミノ酸が保持される)。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、点突然変異を残基309(PheからSer)にさらに含み、BDD FVIIIタンパク質の発現を向上させる。Miao, H.Z.ら、Blood 103(a):3412~3419頁(2004)を参照されたい。さらに他の実施形態では、BDD FVIIIは、Bドメインの一部分は含有するが、1つまたはそれ以上のフーリン切断部位は含有しない(例えば、Arg1313およびArg1648)FVIIIポリペプチドを含む。Pipe, S.Wら、J. Thromb. Haemost. 9:2235~2242頁(2011)を参照されたい。一部の実施形態では、BDD FVIIIは、成熟FVIIIの全長(rVIII-SingleChainおよびAFSTYLA(登録商標)としても知られる)に対応するアミノ酸765から1652に欠失を含有する単鎖FVIIIを含む。米国特許第7,041,635号を参照のこと。前記欠失のそれぞれは、任意のFVIII配列においてなされ得る。
【0170】
非常に多くの機能的FVIIIバリアントが、上記および下記で議論されるように公知である。さらに、FVIIIにおける数百もの非機能的突然変異が血友病患者において特定されており、FVIII機能に関するこれらの突然変異の効果は、それらが、置換の性質に関するよりもFVIIIの3次元構造内にある場合により起因することが決定されており(Cutlerら、Hum. Mutat. 19:274~8頁(2002))、参照によってその全体として本明細書に組み入れる。さらに、ヒト由来のFVIIIと他の種由来のFVIIIの比較から、機能に必要とされる可能性のある保存残基が特定されており(Cameronら、Thromb. Haemost. 79:317~22頁(1998);US6,251,632)、参照によってその全体として本明細書に組み入れる。
【0171】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドは、FVIIIバリアントまたはその断片を含み、FVIIIバリアントまたはその断片は、FVIII活性を有する。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、全長FVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、遺伝子カセットは、Bドメイン欠失(BDD)FVIIIポリペプチドをコードし、FVIIIのBドメインの全てまたは一部が欠失している。特定の一実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号106、107、109、110、111、または112と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその断片をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号106のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその断片をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号107と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号109のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその断片をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号16と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号109と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0172】
一部の実施形態では、本開示の遺伝子カセットは、シグナルペプチドまたはその断片を含むFVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、遺伝子カセットは、シグナルペプチドを欠くFVIIIポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号17のアミノ酸1~19を含む。
【0173】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、参照によってその全体として組み入れられる、国際特許出願第PCT/US2017/015879号に開示されているヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、コドン最適化されている。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号1~14から選択されるヌクレオチド配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号71と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、配列番号19と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0174】
i.FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列
一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、第1のITRおよび第2のITRは、AAVゲノムに由来し、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、全長FVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、Bドメイン欠失(BDD)FVIIIポリペプチドをコードし、FVIIIのBドメインの全てまたは一部は、欠失している。特定の一実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号17と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片をコードする。一実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号17のアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその断片をコードする。
【0175】
一部の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、シグナルペプチドまたはその断片を含むFVIIIポリペプチドをコードする。他の実施形態では、コドン最適化された配列は、シグナルペプチドを欠くFVIIIポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、シグナルペプチドは、配列番号17のアミノ酸1~19を含む。
【0176】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791または(ii)配列番号4のヌクレオチド58~1791と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。特定の一実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号3のヌクレオチド58~1791と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。別の実施形態では、第1の核酸配列は、配列番号4のヌクレオチド58~1791と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~1791または配列番号4のヌクレオチド58~1791を含む。
【0177】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド1~1791または(ii)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。一実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1~1791または配列番号4のヌクレオチド1~1791を含む。別の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374を含む。さらに別の実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または配列番号4の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374)と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または配列番号4の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド1792~4374または配列番号4の1792~4374)を含む。
【0178】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374または(ii)配列番号6の1792~4374と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。ある特定の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~4374と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号6のヌクレオチド1792~4374と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~4374または配列番号6の1792~4374を含む。一部の実施形態では、上記に列挙した第2の核酸配列に連結した第1の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド58~1791または配列番号6のヌクレオチド58~1791と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、上記に列挙した第2の核酸配列に連結した第1の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1~1791または配列番号6のヌクレオチド1~1791と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0179】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374)または(ii)配列番号6の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。ある特定の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第2の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または配列番号6の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374および配列番号6の1792~4374)を含む。一部の実施形態では、上記に列挙した第2の核酸配列に連結した第1の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド58~1791または配列番号6のヌクレオチド58~1791と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、上記に列挙した第2の核酸配列に連結した第1の核酸配列は、配列番号5のヌクレオチド1~1791または配列番号6のヌクレオチド1~1791と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0180】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第1の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド58~1791、(ii)配列番号2のヌクレオチド58~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド58~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド58~1791と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。他の実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58~1791、配列番号2のヌクレオチド58~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド58~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド58~1791を含む。
【0181】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第1の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1~1791、(ii)配列番号2のヌクレオチド1~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド1~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1~1791と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。一実施形態では、第1のヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド1~1791、配列番号2のヌクレオチド1~1791、(iii)配列番号70のヌクレオチド1~1791、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1~1791を含む。別の実施形態では、第1のヌクレオチド配列に連結した第2のヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド1792~4374、配列番号2の1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の一実施形態では、第1のヌクレオチド配列に連結した第2のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~4374、(ii)配列番号2の1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374を含む。他の実施形態では、第1のヌクレオチド配列に連結した第2のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一実施形態では、第2のヌクレオチド配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374を含む。
【0182】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第2の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。特定の一実施形態では、第2の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~4374を含む。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化された配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み、第2の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド1792~4374、配列番号2のヌクレオチド1792~4374、配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または配列番号71のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有し、N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有する。一実施形態では、第2の核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(ii)配列番号2のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、(iii)配列番号70のヌクレオチド1792~2277および2320~4374、または(iv)配列番号71のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメインの断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド1792~4374、配列番号2のヌクレオチド1792~4374、配列番号70のヌクレオチド1792~4374、または配列番号71のヌクレオチド1792~4374)を含む。
【0183】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58から4374と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド58~4374)と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号1と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号1のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド58~4374)または配列番号1のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、配列番号1のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1のヌクレオチド1~4374)または配列番号1のヌクレオチド1から4374を含む。
【0184】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド58~4374と少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド58~2277および2320~4374と少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号2と少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号2のヌクレオチド58~4374)または配列番号2のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号2のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号2のヌクレオチド1~4374)または配列番号2のヌクレオチド1から4374を含む。
【0185】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド58~4374と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号70のヌクレオチド58~4374)と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号70と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号70のヌクレオチド58~4374)または配列番号70のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号70のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号70のヌクレオチド1~4374)または配列番号70のヌクレオチド1から4374を含む。
【0186】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド58~4374と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号71と少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号71のヌクレオチド58~4374)または配列番号71のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号71のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号71のヌクレオチド1~4374)または配列番号71のヌクレオチド1から4374を含む。
【0187】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~4374と少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド58~4374)と少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号3と少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド58~4374)または配列番号3のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号3のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号3のヌクレオチド1~4374)または配列番号3のヌクレオチド1から4374を含む。
【0188】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド58~4374と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号4のヌクレオチド58~4374)と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、核酸配列は、配列番号4と少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号4のヌクレオチド58~4374)または配列番号4のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号4のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号4のヌクレオチド1~4374)または配列番号4のヌクレオチド1から4374を含む。
【0189】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド58~4374と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド58~4374)と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号5と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド58~4374)または配列番号5のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号5のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1~4374)または配列番号5のヌクレオチド1から4374を含む。
【0190】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド58~4374と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド58~4374)と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸配列は、配列番号6と少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド58~4374)または配列番号6のヌクレオチド58から4374を含む。さらに他の実施形態では、ヌクレオチド配列は、配列番号6のヌクレオチド1~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1~4374)または配列番号6のヌクレオチド1から4374を含む。
【0191】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、シグナルペプチドをコードする核酸配列を含む。ある特定の実施形態では、シグナルペプチドは、FVIIIシグナルペプチドである。一部の実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、コドン最適化されている。特定の一実施形態では、シグナルペプチドをコードする核酸配列は、(i)配列番号1のヌクレオチド1から57;(ii)配列番号2のヌクレオチド1から57;(iii)配列番号3のヌクレオチド1から57;(iv)配列番号4のヌクレオチド1から57;(v)配列番号5のヌクレオチド1から57;(vi)配列番号6のヌクレオチド1から57;(vii)配列番号70のヌクレオチド1から57;(viii)配列番号71のヌクレオチド1から57;または(ix)配列番号68のヌクレオチド1から57と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の配列同一性を有する。
【0192】
配列番号1~6、70、および71は、開始または「親」または「野生型」FVIIIヌクレオチド配列である、配列番号16の最適化されたバージョンである。配列番号16は、Bドメイン欠失ヒトFVIIIをコードする。配列番号1~6、70、および71は、FVIIIの特異的なBドメイン欠失形態(配列番号16)に由来するが、本開示は、FVIIIの他のバージョンをコードする核酸の最適化されたバージョンも含むと理解されるべきである。例えば、FVIIIの他のバージョンとして、全長FVIII、FVIIIの他のBドメイン欠失(本明細書に記載する)、またはFVIII活性を保持するFVIIIの他の断片を挙げることができる。
【0193】
一実施形態では、遺伝子カセットは、表2A~2Cに列挙したポリヌクレオチド配列(6526ヌクレオチド)を含むFVIII構築物を含む。一実施形態では、遺伝子カセットは、表2Bに列挙したポリヌクレオチド配列(6526ヌクレオチド)を含むFVIII構築物を含む。
【0194】
ある特定の実施形態では、単離された核酸分子は、配列番号179または182のヌクレオチド配列と少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、または約100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み、機能的FVIIIタンパク質を発現する能力を保持する。
【0195】
【表3】
【表4】
【表5】
【0196】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【0197】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【0198】
A.コドン適応インデックス
一実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列のヒトコドン適応インデックスは、配列番号16に対して増加する。例えば、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、少なくとも約0.88(88%)、少なくとも約0.89(89%)、少なくとも約0.90(90%)、少なくとも約0.91(91%)、少なくとも約0.92(92%)、少なくとも約0.93(93%)、少なくとも約0.94(94%)、少なくとも約0.95(95%)、少なくとも約0.96(96%)、少なくとも約0.97(97%)、少なくとも約0.98(98%)、または少なくとも約0.99(99%)であるヒトコドン適応インデックスを有し得る。一部の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。他の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。他の実施形態では、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約.97(97%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。
【0199】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;ヌクレオチド配列のヒトコドン適応インデックスは、配列番号16に対して増加する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、少なくとも約0.88(88%)、少なくとも約0.89(89%)、少なくとも約0.90(90%)、または少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。特定の一実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。
【0200】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含むヌクレオチド配列を含み;第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374または(ii)配列番号6の1792~2277および2320~4374と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;ヌクレオチド配列のヒトコドン適応インデックスは、配列番号16に対して増加する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、または少なくとも約0.88(88%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。特定の一実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.83(83%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。
【0201】
他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;ヌクレオチド配列のヒトコドン適応インデックスは、配列番号16に対して増加する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約0.75(75%)、少なくとも約0.76(76%)、少なくとも約0.77(77%)、少なくとも約0.78(78%)、少なくとも約0.79(79%)、少なくとも約0.80(80%)、少なくとも約0.81(81%)、少なくとも約0.82(82%)、少なくとも約0.83(83%)、少なくとも約0.84(84%)、少なくとも約0.85(85%)、少なくとも約0.86(86%)、少なくとも約0.87(87%)、または少なくとも約0.88(88%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。特定の一実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.75(75%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.83(83%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.88(88%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.91(91%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。別の実施形態では、ヌクレオチド配列は、少なくとも約.97(97%)であるヒトコドン適応インデックスを有する。
【0202】
一部の実施形態では、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対して増加した最適コドン頻度(frequency of optimal codon)(FOP)を有する。ある特定の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列のFOPは、少なくとも約40、少なくとも約45、少なくとも約50、少なくとも約55、少なくとも約60、少なくとも約64、少なくとも約65、少なくとも約70、少なくとも約75、少なくとも約79、少なくとも約80、少なくとも約85、または少なくとも約90である。
【0203】
他の実施形態では、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対して増加した相対同義コドン使用頻度(relative synonymous codon usage)(RCSU)を有する。一部の実施形態では、単離された核酸分子のRCSUは、1.5を超える。他の実施形態では、単離された核酸分子のRCSUは、2.0を超える。ある特定の実施形態では、単離された核酸分子のRCSUは、少なくとも約1.5、少なくとも約1.6、少なくとも約1.7、少なくとも約1.8、少なくとも約1.9、少なくとも約2.0、少なくとも約2.1、少なくとも約2.2、少なくとも約2.3、少なくとも約2.4、少なくとも約2.5、少なくとも約2.6、または少なくとも約2.7である。
【0204】
さらに他の実施形態では、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対して減少したコドンの有効数を有する。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、約50より少ない、約45より少ない、約40より少ない、約35より少ない、約30より少ない、または約25より少ないコドンの有効数を有する。特定の一実施形態では、単離された核酸分子は、約40、約35、約30、約25、または約20のコドンの有効数を有する。
【0205】
B.G/C含量の最適化
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16のG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、少なくとも約58%、少なくとも約59%、または少なくとも約60%であるG/C含量を有する。
【0206】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;ヌクレオチド配列は、配列番号16のG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、少なくとも約57%、または少なくとも約58%であるG/C含量を有する。特定の一実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、少なくとも約58%であるG/C含量を有する。
【0207】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374)、または(iv)配列番号6の1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16のG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%、少なくとも約46%、少なくとも約47%、少なくとも約48%、少なくとも約49%、少なくとも約50%、少なくとも約51%、少なくとも約52%、少なくとも約53%、少なくとも約54%、少なくとも約55%、少なくとも約56%、または少なくとも約57%であるG/C含量を有する。特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約52%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約55%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約57%であるG/C含量を有する。
【0208】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)ヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)に対して少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;ヌクレオチド配列は、配列番号16のG/Cヌクレオチドのパーセンテージと比較してより高いパーセンテージのG/Cヌクレオチドを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約45%であるG/C含量を有する。特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約52%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約55%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約57%であるG/C含量を有する。別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約58%であるG/C含量を有する。さらに別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、少なくとも約60%であるG/C含量を有する。
【0209】
「G/C含量」(またはグアニン-シトシン含量)、または「G/Cヌクレオチドのパーセンテージ」は、グアニンまたはシトシンのいずれかである、DNA分子中の窒素塩基のパーセンテージを指す。G/C含量は、以下の式:
【数1】
を使用して計算することができる。
【0210】
ヒト遺伝子のG/C含量は非常に不均一であり、一部の遺伝子は20%程度の低いG/C含量を有し、他の遺伝子は95%程の高いG/C含量を有する。一般的に、G/Cリッチな遺伝子は、より高度に発現される。実際に、遺伝子のG/C含量の増加が、遺伝子発現の増加を導く場合があり、これはほとんどが転写の増加とmRNAレベルが非常に安定した状態であることに起因することが実証されている。Kudlaら、PLoS Biol.、4(6):e180頁(2006)を参照のこと。
【0211】
C.マトリックス結合領域様配列
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0212】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0213】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;ヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0214】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ないMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大6、最大5、最大4、最大3、または最大2個のMARS/ARS配列を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大1個のMARS/ARS配列を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、MARS/ARS配列を含有しない。
【0215】
サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の自己複製配列(ARS)および核-マトリックス結合領域(MAR)と配列類似性を共有するヒトFVIIIヌクレオチド配列におけるATリッチエレメントを同定した。(Falluxら、Mol. Cell. Biol. 16:4264~4272頁(1996))。これらのエレメントのうちの1つは、in vitroで核因子に結合し、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子の発現を抑制することが実証されている。同上。これらの配列は、ヒトFVIII遺伝子の転写抑制の原因となる可能性があると仮定されている。よって、一実施形態では、全てのMAR/ARS配列は、本開示のFVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列において消失している。親FVIII配列(配列番号16)には、4つのMAR/ARS ATATTT配列(配列番号21)と3つのMAR/ARS AAATAT配列(配列番号22)が存在する。これらの部位の全ては、最適化されたFVIII配列(配列番号1~6)のMAR/ARS配列を破壊するよう突然変異させた。これらのエレメントのそれぞれの位置、および最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を以下の表3に示す。
【0216】
【表14】
【表15】
【0217】
D.不安定化配列
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0218】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0219】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIII活性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0220】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の不安定化エレメントを含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の不安定化エレメントを含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、不安定化エレメントを含有しない。
【0221】
親FVIII配列(配列番号16)には10個の不安定化エレメント:6個のATTTA配列(配列番号23)および4個のTAAAT配列(配列番号24)が存在する。一実施形態では、これらの部位の配列が突然変異して、最適化されたFVIIIの配列番号1~6、70、および71における不安定化エレメントを破壊した。これらのエレメントのそれぞれの位置、および最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を表3に示す。
【0222】
E.潜在的プロモーター結合部位
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0223】
特定の一実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0224】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0225】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、配列番号16に対してより少ない潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大9、最大8、最大7、最大6、または最大5個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、最大4、最大3、最大2、または最大1個の潜在的プロモーター結合部位を含有する。なお他の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、潜在的プロモーター結合部位を含有しない。
【0226】
TATAボックスは、真核生物のプロモーター領域において見出されることが多い調節配列である。これらは、一般的な転写因子であるTATA結合タンパク質(TBP)の結合部位としての役割を果たす。TATAボックスは、通常、配列TATAA(配列番号28)またはそれに近いバリアントを含む。しかしながら、コード配列内のTATAボックスは、全長タンパク質の翻訳を阻害し得る。野生型BDD FVIII配列(配列番号16)には、10個の潜在的プロモーター結合部位:5個のTATAA配列(配列番号28)および5個のTTATA配列(配列番号29)が存在する。一部の実施形態では、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、または少なくとも4個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。一部の実施形態では、少なくとも5個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。他の実施形態では、少なくとも6、少なくとも7、または少なくとも8個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。一実施形態では、少なくとも9個のプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。特定の一実施形態では、全てのプロモーター結合部位が、本開示のFVIII遺伝子において消失する。各潜在的プロモーター結合部位の位置および最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を表3に示す。
【0227】
F.他のCis作用型ネガティブ調節領域
上述のMAR/ARS配列、不安定化エレメント、および潜在的プロモーター部位に加えて、いくつかのさらなる潜在的阻害配列を、野生型BDD FVIII配列(配列番号16)において特定することができる。2つのAUリッチ配列エレメント(ARE)を、最適化されていないBDD FVIII配列におけるポリA部位(AAAAAAA;配列番号26)、ポリT部位(TTTTTT;配列番号25)、およびスプライス部位(GGTGAT;列番号27)と一緒に、特定することができる(ATTTTATT(配列番号30);およびATTTTTAA(配列番号31))。1つまたはそれ以上のこれらのエレメントは、最適化されたFVIII配列から除去することができる。これらの部位のそれぞれの位置および最適化された配列における対応するヌクレオチドの配列を表3に示す。
【0228】
ある特定の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のcis作用型ネガティブ調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列、またはそれらの任意の組合せを含有しない。
【0229】
別の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第2の核酸配列は、(i)配列番号5のヌクレオチド1792~4374;(ii)配列番号6のヌクレオチド1792~4374;(iii)配列番号5のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号5のヌクレオチド1792~4374);または(iv)配列番号6のヌクレオチド1792~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号6のヌクレオチド1792~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のcis作用型ネガティブ調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列、またはそれらの任意の組合せを含有しない。
【0230】
他の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、ヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、1つまたはそれ以上のcis作用型ネガティブ調節エレメント、例えば、スプライス部位、ポリT配列、ポリA配列、ARE配列、またはそれらの任意の組合せを含有しない。
【0231】
一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、スプライス部位GGTGAT(配列番号27)を含有しない。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリT配列(配列番号25)を含有しない。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリA配列(配列番号26)を含有しない。一部の実施形態では、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列は、FVIIIポリペプチドのN末端部分をコードする第1の核酸配列およびFVIIIポリペプチドのC末端部分をコードする第2の核酸配列を含み;第1の核酸配列は、(i)配列番号3のヌクレオチド58~1791;(ii)配列番号3のヌクレオチド1~1791;(iii)配列番号4のヌクレオチド58~1791;または(iv)配列番号4のヌクレオチド1~1791と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約86%、少なくとも約87%、少なくとも約88%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有し;N末端部分とC末端部分は一緒に、FVIIIポリペプチド活性を有し;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、AREエレメント(配列番号30または配列番号31)を含有しない。
【0232】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、スプライス部位GGTGAT(配列番号27)を含有しない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリT配列(配列番号25)を含有しない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、ポリA配列(配列番号26)を含有しない。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIIポリペプチドをコードするコドン最適化されたヌクレオチド配列を含み、コドン最適化されたヌクレオチド配列は、(i)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~4374または(ii)配列番号1、2、3、4、5、6、70、および71から選択されるアミノ酸配列のヌクレオチド58~2277および2320~4374(すなわち、BドメインまたはBドメイン断片をコードするヌクレオチドを含まない配列番号1、2、3、4、5、6、70、または71のヌクレオチド58~4374)と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約89%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する核酸配列を含み;コドン最適化されたヌクレオチド配列は、AREエレメント(配列番号30または配列番号31)を含有しない。
【0233】
他の実施形態では、本開示の最適化されたFVIII配列は、1つまたはそれ以上の抗ウイルスモチーフ、ステムループ構造、およびリピート配列を含まない。
【0234】
さらに他の実施形態では、転写開始部位を囲むヌクレオチドは、コザックコンセンサス配列(GCCGCCACCATGC(配列番号32)、配列中、下線を付したヌクレオチドは開始コドンである。)に変化した。他の実施形態では、制限部位を付加または除去して、クローニングプロセスを促進する。
【0235】
b.FIXタンパク質をコードするFIXおよびポリヌクレオチド配列
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドを含む。一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、FIXまたはそのバリアントもしくは断片を含み、FIXまたはそのバリアントもしくは断片は、FIX活性を有する。
【0236】
ヒトFIXは、血液凝固カスケードの内因的経路の重要な構成成分であるセリンプロテアーゼである。「第IX因子」または「FIX」は、本明細書で使用されるように、凝固因子タンパク質ならびにその種および配列バリアントを指し、これらに限定されないが、ヒトFIX前駆体ポリペプチド(「プレプロ」)の461単鎖アミノ酸配列、成熟ヒトFIX(配列番号125)の415単鎖アミノ酸配列、およびR338L FIX(Padua)バリアント(配列番号126)を含む。FIXは、血液凝固FIXの典型的な特徴を有する任意の形態のFIX分子を含む。本明細書で使用されるように、「第IX因子」および「FIX」は、ドメインGla(γ-カルボキシグルタミン酸残基を含有する領域)、EGF1およびEGF2(ヒト上皮成長因子と相同な配列を含有する領域)、活性化ペプチド(成熟FIXの残基R136~R180によって形成される「AP」)、およびC末端プロテアーゼドメイン(「Pro」)、もしくは当技術分野で公知のこれらのドメインのシノニムを含むポリペプチドを包含することを意図するか、またはネイティブタンパク質の生体活性の少なくとも一部を保持するトランケートされた断片もしくは配列バリアントであり得る。FIXまたは配列バリアントは、米国特許第4,770,999号および同第7,700,734号に記載されているようにクローニングされ、ヒトFIXをコードするcDNAが単離、特徴付けされ、発現ベクターへとクローニングされている(例えば、Chooら、Nature 299:178~180頁(1982);Fairら、Blood 64:194~204頁(1984);およびKurachiら、Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A. 79:6461~6464頁(1982)を参照のこと)。Simioniら、2009によって特徴付けられるFIXの1つの特定のバリアントである、R338L FIX(Padua)バリアント(配列番号2)は、ネイティブFIXに対してPaduaバリアントの活性がほぼ8倍増加して相関する機能獲得型突然変異を含む(表4)。FIXバリアントは、FIXポリペプチドのFIX活性に影響を及ぼさない1つまたはそれ以上の保存的アミノ酸置換を有する任意のFIXポリペプチドも含むことができる。一部の実施形態では、FIXバリアントは、切断可能なリンカーによって融合したrFIXアルブミン、例えば、IDELVION(登録商標)を含む。参照によってその全体として本明細書に組み入れる、US7,939,632を参照のこと。
【0237】
【表16】
【表17】
【表18】
【0238】
FIXポリペプチドは、55kDaであり、プレプロポリペプチド(prepropolypetide)鎖(配列番号125)として、3つの領域:28アミノ酸のシグナルペプチド(配列番号127のアミノ酸1から28)、グルタミン酸残基のガンマカルボキシル化に必要とされる18アミノ酸のプロペプチド(アミノ酸29から46)、および415アミノ酸の成熟した第IX因子(配列番号125または126)から合成される。プロペプチドは、ガンマカルボキシグルタメートドメインに対してN末端の18アミノ酸残基の配列である。プロペプチドは、ビタミンK依存性ガンマカルボキシラーゼに結合し、次いで、内因性プロテアーゼ、最も可能性が高いものとして、フューリンまたはPCSK3としても公知であるPACE(対合塩基性アミノ酸切断酵素)によって、FIXの前駆体ポリペプチドから切断される。ガンマカルボキシル化しなければ、Glaドメインは、負に帯電したリン脂質表面にタンパク質をつなぎとめるのに必要な正確な立体配座を想定するためにカルシウムに結合することができず、それによって、第IX因子は非機能的となる。カルボキシル化される場合でさえ、Glaドメインはまた、適切な機能のためのプロペプチドの開裂に依存しており、これは、保持されたプロペプチドが、カルシウムおよびリン脂質に対する最適な結合に必要なGlaドメインの立体配座変化に干渉するためである。ヒトでは、結果として生じる成熟した第IX因子は、肝細胞によって、およそ17重量%の炭水化物を含有する415アミノ酸残基の単鎖タンパク質である不活性な酵素前駆体として、血流中に分泌される(Schmidt, A. E.ら(2003)Trends Cardiovasc Med、13:39頁)。
【0239】
成熟したFIXは、NからC末端の立体配置において、GLAドメイン、EGF1ドメイン、EGF2ドメイン、活性化ペプチド(AP)ドメイン、およびプロテアーゼ(または触媒)ドメインであるいくつかのドメインから構成される。短いリンカーは、APドメインを含むEGF2ドメインに接続する。FIXは、それぞれ、R145~A146およびR180~V181によって形成される2つの活性化ペプチドを含有する。活性化の後、単鎖FIXは、2つの鎖がジスルフィド結合によって連結される2鎖分子となる。凝固因子を、それらの活性化ペプチドを置き換えることによって操作し、活性化特異性の変更をもたらすことができる。哺乳動物では、成熟したFIXは、第IXa因子を得るために、活性化した第XI因子によって活性化されなければならない。FIXからFIXaへの活性化の際に、プロテアーゼドメインは、FIXの触媒活性をもたらす。活性化した第VIII因子(FVIIIa)は、FIXa活性の全発現に対する特異的補因子である。
【0240】
ある特定の実施形態では、FIXポリペプチドは、血漿由来のFIXのThr148対立形質を含み、内因性FIXに類似する構造的かつ機能的特徴を有する。
【0241】
多くの機能的FIXバリアントが当技術分野で公知である。国際特許出願公開第WO02/040544号は、4頁、9~30行および15頁、6~31行に、ヘパリンによる阻害に対する耐性の増加を呈する突然変異体を開示している。国際特許出願公開第WO03/020764号は、表2および3(14~24頁)、および12頁、1~27行に、T細胞の免疫原性が低下したFIX突然変異体を開示している。国際特許出願公開第WO2007/149406号は、4頁、1行から19頁、11行に、タンパク質安定性の増加、in vivoおよびin vitro半減期の増加、ならびにプロテアーゼに対する耐性の増加を呈する機能的突然変異体のFIX分子を開示している。WO2007/149406は、19頁、12行から20頁、9行に、キメラおよび他のバリアントのFIX分子も開示している。国際特許出願公開第WO08/118507号は、5頁、14行から6頁、5行に、凝固活性の増加を呈するFIX突然変異体を開示している。国際特許出願公開第WO09/051717号は、9頁、11行から20頁、2行に、半減期の増加および/または回復をもたらすN連結および/またはO連結グリコシル化部位数が増加したFIX突然変異体を開示している。国際特許出願公開第WO09/137254号は、2頁、段落[006]から5頁、段落[011]および16頁、段落[044]から24頁、段落[057]に、グリコシル化部位数の増加した第IX因子突然変異体を開示している。国際特許出願公開第WO09/130198号は、4頁、26行から12頁、6行に、半減期の増加をもたらす、グリコシル化部位数が増加した機能的突然変異体のFIX分子を開示している。国際特許出願公開第WO09/140015号は、11頁、段落[0043]から13頁、段落[0053]に、ポリマー(例えば、PEG)のコンジュゲーションのために使用することができるCys残基数の増加した機能的FIX突然変異体を開示している。2011年7月11日に出願され、2012年1月12日にWO2012/006624として公開された国際特許出願第PCT/US2011/043569号に記載されたFIXポリペプチドは、参照によってその全体として本明細書に組み入れる。一部の実施形態では、FIXポリペプチドは、アルブミンに融合したFIXポリペプチド、例えば、FIX-アルブミンを含む。ある特定の実施形態では、FIXポリペプチドは、IDELVION(登録商標)またはrIX-FPである。
【0242】
さらに、FIXにおける数百もの非機能的突然変異が、血友病患者において同定され、それらの多くは、国際特許出願公開第WO09/137254号の11~14頁の表6に開示されている。このような非機能的突然変異は、本発明に含まれないが、突然変異が機能的FIXポリペプチドをもたらす傾向が多少ある追加のガイダンスを提供する。
【0243】
一実施形態では、FIXポリペプチド(または融合ポリペプチドの第IX因子部分)は、配列番号1もしくは2に示す配列(配列番号125または126のアミノ酸1から415)、またはあるいは、プロペプチド配列、もしくはプロペプチドおよびシグナル配列(全長のFIX)と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、FIXポリペプチドは、配列番号2に示す配列と少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0244】
FIX凝固活性は、国際単位(IU)として表される。FIX活性の1単位は、正常なヒト血漿1ミリリットルにおけるFIXの量に概ね相当する。一段階凝固アッセイ(活性化部分トロンボプラスチン時間;aPTT)、トロンビン生成時間(TGA)および回転トロンボエラストメトリー(ROTEM(登録商標))を含む、FIX活性を測定するためのいくつかのアッセイが利用可能である。本発明は、FIXの生体活性もしくは生物学的機能の少なくとも一部を保持するおよび/または凝固因子に関連する疾患、欠乏症、障害もしくは状態(例えば、外傷、手術に関連する、凝固因子の欠乏症に関する出血エピソード)を予防、処置、媒介、もしくは軽快するのに有用な、天然の、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、哺乳動物(飼育動物を含む)に由来するFIX配列、配列断片に対して相同性を有する配列、および非天然の配列バリアントを企図する。ヒトFIXに対して相同性を有する配列は、標準的な相同性検索技術、例えば、NCBI BLASTによって見出され得る。
【0245】
ある特定の実施形態では、FIX配列は、コドン最適化されている。コドン最適化されたFIX配列の例として、これらに限定されないが、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際特許出願公開第WO2016/004113号の配列番号1および54~58が挙げられる。
【0246】
c.FVIIおよびFVIIタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、第VII因子ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、FVIIポリペプチドは、FVIIまたはFVII活性を有するそのバリアントもしくは断片を含む。
【0247】
「第VII因子」(「FVII」、または「F7」;第7因子、凝固因子VII、血清因子VII、血清プロトロンビン変換促進剤、SPCA、プロコンベルチンおよびエプタコグアルファとも称される)は、凝固カスケードの一部であるセリンプロテアーゼである。一実施形態では、本明細書に記載の核酸における凝固因子は、FVIIである。組換え活性型第VII因子(「FVII」)は、血友病AもしくはB、第XI凝固因子、FVIIの欠乏症、不完全な血小板機能、血小板減少症、またはフォンビルブランド病を有する患者において起こるものなどの大出血の処置に広く使用されるようになった。
【0248】
組換え活性型FVII(rFVIIa;NOVOSEVEN(登録商標))は、(i)FVIIIまたはFIX(阻害剤)に対する中和抗体を有する血友病患者、(ii)FVII欠乏症を有する患者、または(iii)血友病AもしくはBを有する患者の出血エピソードを、外科手技を経て、阻害剤で処置するために使用される。しかしながら、NOVOSEVEN(登録商標)は、不十分な効能しか示さない。組織因子の非存在下での活性化血小板に対する低い親和性、短い半減期、および不十分な酵素活性によって、出血を制御するために、高濃度でのFVIIaの繰り返し投与が必要とされることが多い。したがって、FVIIIおよびFIX阻害剤を有するおよび/またはFVII欠損症を有する血友病患者に対するより良い処置および予防の選択肢には、満たされていない医学的需要が存在する。
【0249】
一実施形態では、遺伝子カセットは、FVIIの成熟形態またはそのバリアントをコードする。FVIIは、Glaドメイン、2つのEGFドメイン(EGF-1およびEGF-2)、および、例えば、キモトリプシンに関するような、セリンプロテアーゼのペプチダーゼS1ファミリーの全メンバーの間で高度に保存されているセリンプロテアーゼドメイン(またはペプチダーゼS1ドメイン)を含む。FVIIは、単鎖酵素前駆体(すなわち、活性化可能なFVII)および十分に活性化した二本鎖形態として生じる。
【0250】
C.成長因子
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、成長因子を含む。成長因子は、当技術分野で公知の任意の成長因子から選択することができる。一部の実施形態では、成長因子は、ホルモンである。他の実施形態では、成長因子は、サイトカインである。一部の実施形態では、成長因子は、ケモカインである。
【0251】
一部の実施形態では、成長因子は、アドレノメデュリン(AM)である。一部の実施形態では、成長因子は、アンギオポエチン(Ang)である。一部の実施形態では、成長因子は、自己分泌型細胞運動刺激因子である。一部の実施形態では、成長因子は、骨形成タンパク質(BMP)である。一部の実施形態では、BMPは、BMP2、BMP4、BMP5、およびBMP7から選択される。一部の実施形態では、成長因子は、毛様体神経栄養因子ファミリーのメンバーである。一部の実施形態では、毛様体神経栄養因子ファミリーのメンバーは、毛様体神経栄養因子(CNTF)、白血病阻害因子(LIF)、インターロイキン-6(IL-6)から選択される。一部の実施形態では、成長因子は、コロニー刺激因子である。一部の実施形態では、コロニー刺激因子は、マクロファージコロニー刺激因子(m-CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)から選択される。一部の実施形態では、成長因子は、上皮成長因子(EGF)である。一部の実施形態では、成長因子は、エフリンである。一部の実施形態では、エフリンは、エフリンA1、エフリンA2、エフリンA3、エフリンA4、エフリンA5、エフリンB1、エフリンB2、およびエフリンB3から選択される。一部の実施形態では、成長因子は、エリスロポエチン(EPO)である。一部の実施形態では、成長因子は、線維芽細胞成長因子(FGF)である。一部の実施形態では、FGFは、FGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF5、FGF6、FGF7、FGF8、FGF9、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、およびFGF23から選択される。一部の実施形態では、成長因子は、ウシ胎仔ソマトトロフィン(FBS)である。一部の実施形態では、成長因子は、GDNFファミリーのメンバーである。一部の実施形態では、GDNFファミリーのメンバーは、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、パーセフィン、およびアルテミンから選択される。一部の実施形態では、成長因子は、成長分化因子-9(GDF9)である。一部の実施形態では、成長因子は、肝細胞成長因子(HGF)である。一部の実施形態では、成長因子は、肝細胞腫由来成長因子(HDGF)である。一部の実施形態では、成長因子は、インスリンである。一部の実施形態では、成長因子は、インスリン様成長因子である。一部の実施形態では、インスリン様成長因子は、インスリン様成長因子-1(IGF-1)またはIGF-2である。一部の実施形態では、成長因子は、インターロイキン(IL)である。一部の実施形態では、ILは、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、およびIL-7から選択される。一部の実施形態では、成長因子は、ケラチノサイト成長因子(KGF)である。一部の実施形態では、成長因子は、遊走刺激因子(MSF)である。一部の実施形態では、成長因子は、マクロファージ刺激タンパク質(MSPまたは肝細胞成長因子様タンパク質(HGFLP))である。一部の実施形態では、成長因子は、ミオスタチン(GDF-8)である。一部の実施形態では、成長因子は、ニューレグリンである。一部の実施形態では、ニューレグリンは、ニューレグリン1(NRG1)、NRG2、NRG3、およびNRG4から選択される。一部の実施形態では、成長因子は、ニューロトロフィンである。一部の実施形態では、成長因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)である。一部の実施形態では、成長因子は、神経成長因子(NGF)である。一部の実施形態では、NGFは、ニューロトロフィン-3(NT-3)またはNT-4である。一部の実施形態では、成長因子は、胎盤成長因子(PGF)である。一部の実施形態では、成長因子は、血小板由来成長因子(PDGF)である。一部の実施形態では、成長因子は、レナラーゼ(RNLS)である。一部の実施形態では、成長因子は、T細胞成長因子(TCGF)である。一部の実施形態では、成長因子は、トロンボポエチン(TPO)である。一部の実施形態では、成長因子は、形質転換成長因子である。一部の実施形態では、形質転換成長因子は、形質転換成長因子-アルファ(TGF-α)またはTGF-βである。一部の実施形態では、成長因子は、腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-α)である。一部の実施形態では、成長因子は、血管内皮成長因子(VEGF)である。
【0252】
D.マイクロRNA(miRNA)
マイクロRNA(miRNA)は、翻訳を阻害するかまたはメッセンジャーRNA(mRNA)の分解を誘導することによって、遺伝子発現を負に調節する非コードRNA小分子(約18~22ヌクレオチド)である。これらの発見以来、miRNAは、アポトーシス、分化および細胞増殖を含む様々な細胞プロセスに関係し、発癌において重要な役割を果たすことが示されてきた。遺伝子発現を調節するmiRNAの能力によって、遺伝子療法において、miRNAのin vivoでの有益なツールを発現させる。
【0253】
本開示のある特定の態様は、第1のITR、第2のITR、およびmiRNAをコードする遺伝子カセットを含むプラスミド様核酸分子であって、第1のITRおよび/または第2のITRが、非アデノ随伴ウイルスのITRである(例えば、第1のITRおよび/または第2のITRは、非AAVに由来する)、プラスミド様核酸分子を対象とする。miRNAは、当技術分野で公知の任意のmiRNAである。一部の実施形態では、miRNAは、標的遺伝子の発現を下方調節する。ある特定の実施形態では、標的遺伝子は、SOD1、HTT、RHO、またはそれらの任意の組合せから選択される。
【0254】
一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つのmiRNAをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、1つより多いmiRNAをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、2つまたはそれ以上の異なるmiRNAをコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同一のmiRNAのうちの2つまたはそれ以上の複製をコードする。一部の実施形態では、遺伝子カセットは、同一の治療用タンパク質のうちの2つまたはそれ以上のバリアントをコードする。ある特定の実施形態では、遺伝子カセットは、1つまたはそれ以上のmiRNAおよび1つまたはそれ以上の治療用タンパク質をコードする。
【0255】
一部の実施形態では、miRNAは、天然に存在するmiRNAである。一部の実施形態では、miRNAは、操作されたmiRNAである。一部の実施形態では、miRNAは、人工的miRNAである。ある特定の実施形態では、miRNAは、Eversら、Molecular Therapy 26(9):1~15頁(2018年6月に印刷に先立って電子的に公開された)に開示されているmiHTTにより操作されたmiRNAを含む。ある特定の実施形態では、miRNAは、Dirrenら、Annals of Clinical and Translational Neurology 2(2):167~84頁(2015年2月)に開示されているmiR SOD1という人工的miRNAを含む。ある特定の実施形態では、miRNAは、RHOを標的とするmiR-708を含む(Behrmanら、JCB 192(6):919~27頁(2011)を参照のこと)。
【0256】
一部の実施形態では、miRNAは、遺伝子の阻害因子の発現を下方調節することによって遺伝子の発現を上方調節する。一部の実施形態では、阻害因子は、天然の、例えば、野生型の阻害因子である。一部の実施形態では、阻害因子は、突然変異した、異種の、および/また誤って発現した遺伝子に起因する。
【0257】
E.異種部分
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含み、治療用タンパク質は、少なくとも1つの異種部分を含む。一部の実施形態では、異種部分は、治療用タンパク質のN末端またはC末端に融合される。他の実施形態では、異種部分は、治療用タンパク質内の2つのアミノ酸の間に挿入される。
【0258】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよびFVIIIポリペプチド内の2つのアミノ酸の間に挿入される異種部分を含む。一部の実施形態では、異種部分は、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位で、FVIIIポリペプチド内に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際特許出願公開第WO2013/123457A1号、同第WO2015/106052A1号または米国特許出願公開第2015/0158929号に開示されている任意の部位で、本開示の核酸分子によってコードされる凝固因子ポリペプチド内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIおよび異種部分を含み、異種部分は、成熟FVIIIに対して745位のアミノ酸のすぐ下流のFVIII内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIおよびXTENを含み、XTENは、成熟FVIIIに対して745位のアミノ酸のすぐ下流のFVIII内に挿入される。特定の一実施形態では、FVIIIは、ヒト成熟FVIII(配列番号15)に対応する、746~1646位のアミノ酸の欠失を含み、異種部分は、ヒト成熟FVIII(配列番号15)に対応する、745位のアミノ酸のすぐ下流に挿入される。
【0259】
【表19】
【0260】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびFIXポリペプチド内の2つのアミノ酸の間に挿入される異種部分を含む。一部の実施形態では、異種部分は、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位のFIXポリペプチド内に挿入される。一部の実施形態では、異種アミノ酸配列は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際特許出願第PCT/US2017/015879号に開示される任意の部位で、本開示の核酸分子によってコードされる凝固因子のポリペプチド内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよび異種部分を含み、異種部分は、成熟FIXに対する166位のアミノ酸のすぐ下流のFIXポリペプチド内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは、成熟FVIIIに対する166位のアミノ酸のすぐ下流のFIX内に挿入される。
【0261】
【表20】
【0262】
他の実施形態では、本開示の治療用タンパク質は、2、3、4、5、6、7、または8個の異種ヌクレオチド配列をさらに含む。一部の実施形態では、全ての異種部分は、同一である。一部の実施形態では、少なくとも1つの異種部分は、他の異種部分と異なる。一部の実施形態では、本開示は、2、3、4、5、6個、または7個を超える異種部分をタンデムに含む場合がある。
【0263】
一部の実施形態では、異種部分は、治療用タンパク質の半減期を増加させる(「半減期延長剤」である)。
【0264】
一部の実施形態では、異種部分は、本開示のタンパク質に組み込まれた場合に、in vivo半減期の延長と関連する非構造的特徴または構造的特徴のいずれかを有するペプチドまたはポリペプチドである。非限定例として、アルブミン、アルブミン断片、免疫グロブリンのFc断片、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、HAP配列、XTEN配列、トランスフェリンもしくはその断片、PASポリペプチド、ポリグリシンリンカー、ポリセリンリンカー、アルブミン結合部分、またはこれらのポリペプチドの任意の断片、誘導体、バリアント、もしくは組合せが挙げられる。特定の一実施形態では、異種アミノ酸配列は、免疫グロブリン定常領域もしくはその一部、トランスフェリン、アルブミン、またはPAS配列である。一部の態様では、異種部分は、フォンビルブランド因子またはその断片を含む。他の関連する態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せのような非ポリペプチド部分に対する結合部位(例えば、システインアミノ酸)を含む場合がある。一部の態様では、異種部分は、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、ポリシアル酸、またはこれらのエレメントの任意の誘導体、バリアント、もしくは組合せのような非ポリペプチド部分に対する結合部位として機能するシステインアミノ酸を含む。
【0265】
具体的な一実施形態では、第1の異種部分は、当技術分野で公知の半減期延長分子であり、第2の異種部分は、当技術分野で公知の半減期延長分子である。ある特定の実施形態では、第1の異種部分(例えば、第1のFc部分)および第2の異種部分(例えば、第2のFc部分)は、互いに会合して、二量体を形成する。一実施形態では、第2の異種部分は、第2のFc部分であり、第2のFc部分は、第1の異種部分、例えば、第1のFc部分に連結するかまたはそれと会合する。例えば、第2の異種部分(例えば、第2のFc部分)は、リンカーによって第1の異種部分(例えば、第1のFc部分)に連結するかまたは共有結合もしくは非共有結合によって第1の異種部分と会合することができる。
【0266】
一部の実施形態では、異種部分は、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、少なくとも約2000、少なくとも約2500、少なくとも約3000、または少なくとも約4000個のアミノ酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリペプチドである。他の実施形態では、異種部分は、約100から約200個のアミノ酸、約200から約300個のアミノ酸、約300から約400個のアミノ酸、約400から約500個のアミノ酸、約500から約600個のアミノ酸、約600から約700個のアミノ酸、約700から約800個のアミノ酸、約800から約900個のアミノ酸、または約900から約1000個のアミノ酸を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリペプチドである。
【0267】
ある特定の実施形態では、異種部分は、その生体活性または機能に重大な影響を及ぼすことなく、治療用タンパク質の1つまたはそれ以上の薬物動態特性を改善する。
【0268】
ある特定の実施形態では、異種部分は、本開示の治療用タンパク質のin vivoおよび/またはin vitro半減期を増加させる。他の実施形態では、異種部分は、本開示の治療用タンパク質またはその断片(例えば、FVIIIタンパク質のタンパク質切断後の異種部分を含む断片)の可視化または局在化を促進する。本開示の治療用タンパク質またはその断片の可視化および/または局在化は、in vivo、in vitro、ex vivo、またはこれらの組合せである。
【0269】
他の実施形態では、異種部分は、本開示の治療用タンパク質またはその断片(例えば、治療用タンパク質、例えば、凝固因子のタンパク質切断後の異種部分を含む断片)の安定性を増加させる。本明細書で使用されるように、用語「安定性」は、環境条件(例えば、温度上昇または低下)に応じて、治療用タンパク質の1つまたはそれ以上の物理特性の維持についての当技術分野で認識される尺度を指す。ある特定の態様では、物理特性は、治療用タンパク質の共有結合による構造の維持(例えば、タンパク質分解、望ましくない酸化または脱アミド化のないこと)である。他の態様では、物理特性は、正確にフォールディングされた状態の治療用タンパク質の存在(例えば、可溶性または不溶性の凝集または沈殿のないこと)でもある。一態様では、治療用タンパク質の安定性は、治療用タンパク質の生体物理特性、例えば、温度安定性、pHアンフォールディングプロファイル、グリコシル化の安定な除去、溶解度、生化学的機能(例えば、タンパク質、レセプターまたはリガンドに結合する能力)など、および/またはこれらの組合せをアッセイすることにより測定される。別の態様では、生化学的機能は、相互作用の結合親和性により実証される。一態様では、タンパク質安定性の尺度は、熱安定性、すなわち、熱の負荷に対する耐性である。安定性は、HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)、SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、DLS(動的光散乱)などのような当技術分野で公知の方法を使用して測定することができる。熱安定性を測定する方法として、これらに限定されないが、示差走査熱量測定(DSC)、示差走査蛍光定量(DSF)、円二色性(CD)、および熱負荷アッセイが挙げられる。
【0270】
ある特定の態様では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、少なくとも1つの半減期延長剤、すなわち、治療用タンパク質のin vivo半減期を、異種部分を欠く対応する治療用タンパク質のin vivo半減期に対して増加させる、このような異種部分を含む。治療用タンパク質のin vivo半減期は、当業者に公知の任意の方法、例えば、活性アッセイ(例えば、治療用タンパク質がFVIIIポリペプチドを含む染色体アッセイまたは一段階凝固aPTTアッセイ)、ELISA、ROTEM(登録商標)などによって決定することができる。
【0271】
一部の実施形態では、1つまたはそれ以上の半減期延長剤の存在は、治療用タンパク質の半減期を、このような1つまたはそれ以上の半減期延長剤を欠く対応するタンパク質の半減期と比較して増加させる。半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、このような半減期延長剤を欠く対応する治療用タンパク質のin vivo半減期より、少なくとも約1.5倍、少なくとも約2倍、少なくとも約2.5倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、または少なくとも約12倍長い。
【0272】
一実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、このような半減期延長剤を欠く対応するタンパク質のin vivo半減期より、約1.5倍から約20倍、約1.5倍から約15倍、または約1.5倍から約10倍長い。別の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、このような半減期延長剤を欠く対応するタンパク質のin vivo半減期と比較して、約2倍から約10倍、約2倍から約9倍、約2倍から約8倍、約2倍から約7倍、約2倍から約6倍、約2倍から約5倍、約2倍から約4倍、約2倍から約3倍、約2.5倍から約10倍、約2.5倍から約9倍、約2.5倍から約8倍、約2.5倍から約7倍、約2.5倍から約6倍、約2.5倍から約5倍、約2.5倍から約4倍、約2.5倍から約3倍、約3倍から約10倍、約3倍から約9倍、約3倍から約8倍、約3倍から約7倍、約3倍から約6倍、約3倍から約5倍、約3倍から約4倍、約4倍から約6倍、約5倍から約7倍、または約6倍から約8倍延長される。
【0273】
他の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、少なくとも約17時間、少なくとも約18時間、少なくとも約19時間、少なくとも約20時間、少なくとも約21時間、少なくとも約22時間、少なくとも約23時間、少なくとも約24時間、少なくとも約25時間、少なくとも約26時間、少なくとも約27時間、少なくとも約28時間、少なくとも約29時間、少なくとも約30時間、少なくとも約31時間、少なくとも約32時間、少なくとも約33時間、少なくとも約34時間、少なくとも約35時間、少なくとも約36時間、少なくとも約48時間、少なくとも約60時間、少なくとも約72時間、少なくとも約84時間、少なくとも約96時間、または少なくとも約108時間である。
【0274】
さらに他の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の半減期は、約15時間から約2週間、約16時間から約1週間、約17時間から約1週間、約18時間から約1週間、約19時間から約1週間、約20時間から約1週間、約21時間から約1週間、約22時間から約1週間、約23時間から約1週間、約24時間から約1週間、約36時間から約1週間、約48時間から約1週間、約60時間から約1週間、約24時間から約6日間、約24時間から約5日間、約24時間から約4日間、約24時間から約3日間、または約24時間から約2日間である。
【0275】
一部の実施形態では、半減期延長剤を含む治療用タンパク質の対象当たりの平均半減期は、約15時間、約16時間、約17時間、約18時間、約19時間、約20時間、約21時間、約22時間、約23時間、約24時間(1日間)、約25時間、約26時間、約27時間、約28時間、約29時間、約30時間、約31時間、約32時間、約33時間、約34時間、約35時間、約36時間、約40時間、約44時間、約48時間(2日間)、約54時間、約60時間、約72時間(3日間)、約84時間、約96時間(4日間)、約108時間、約120時間(5日間)、約6日間、約7日間(1週間)、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、または約14日間である。
【0276】
1つまたはそれ以上の半減期延長剤を治療用タンパク質のC末端もしくはN末端に融合させるかまたは治療用タンパク質内に挿入することができる。
【0277】
1.免疫グロブリン定常領域またはその一部
別の態様では、異種部分は、1つまたはそれ以上の免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えば、Fc領域)を含む。一実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、免疫グロブリン定常領域またはその一部をコードする異種核酸配列をさらに含む。一部の実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその部分は、Fc領域である。
【0278】
免疫グロブリン定常領域は、CH(定常重鎖)ドメイン(CH1、CH2など)で示されるドメインから構成される。アイソタイプ、(すなわち、IgG、IgM、IgA IgD、またはIgE)に応じて、定常領域は、3つまたは4つのCHドメインから構成される。いくつかのアイソタイプ(例えば、IgG)定常領域は、ヒンジ領域も含有する。Janewayら 2001年、Immunobiology, Garland Publishing, N.Y.、N.Y.を参照のこと。
【0279】
本開示の免疫グロブリン定常領域またはその一部は、いくつかの異なる供給源から得ることができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来することも理解される。さらに、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、およびIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来する。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0280】
種々の免疫グロブリン定常領域の遺伝子配列(例えば、ヒト定常領域の遺伝子配列)が、公的にアクセス可能な寄託物の形態で利用可能である。特定のエフェクター機能を有する(または特定のエフェクター機能を欠く)か免疫原性を低下させる特定の改変を伴う定常領域ドメインの配列を選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、好適なIg定常領域の配列(例えば、ヒンジ、CH2、および/もしくはCH3配列、またはその部分)は、技術分野で認識される技法を使用して、これらの配列から導出される。次いで、前述の方法のいずれかを使用して得られる遺伝子材料を変更または合成して、本開示のポリペプチドを得ることができる。この開示の範囲が、定常領域のDNA配列の対立遺伝子、バリアントおよび突然変異を包含することがさらに認識されるであろう。
【0281】
免疫グロブリン定常領域またはその一部の配列は、例えば、目的のドメインを増幅するために選択されるポリメラーゼ連鎖反応およびプライマーを使用してクローニングすることができる。抗体から免疫グロブリン定常領域またはその一部の配列をクローニングするために、mRNAを、ハイブリドーマ、脾臓、またはリンパ細胞から単離し、DNAに逆転写し、PCRによって抗体の遺伝子を増幅させることができる。PCR増幅方法は、米国特許第4,683,195号;同第4,683,202号;同第4,800,159号;同第4,965,188号;および、例えば、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」 Innisら編、Academic Press、San Diego、CA(1990);Hoら 1989. Gene 77:51頁;Hortonら 1993.Methods Enzymol. 217:270頁に詳述されている。PCRは、コンセンサス定常領域のプライマーによってまたは公開された重鎖および軽鎖のDNAおよびアミノ酸配列に基づくより特異的なプライマーによって開始することができる。PCRは、抗体の軽鎖および重鎖をコードするDNAクローンを単離するためにも使用することができる。この場合には、コンセンサスプライマーまたはマウス定常領域のプローブのようなより大きな相同なプローブによって、ライブラリーをスクリーニングすることができる。抗体遺伝子の増幅に好適な多数のプライマーセットが当技術分野で公知である(例えば、精製抗体のN末端配列に基づく5’プライマー(BenharおよびPastan. 1994. Protein Engineering 7:1509頁);cDNA末端の迅速増幅(Ruberti, F.ら 1994. J. Immunol. Methods 173:33頁);抗体リーダー配列(Larrickら 1989 Biochem. Biophys. Res. Commun. 160:1250頁)。抗体配列のクローニングは、参照によって本明細書に組み入れる、1995年1月25日に出願されたNewmanらの米国特許第5,658,570号にさらに記載される。
【0282】
本明細書で使用される免疫グロブリン定常領域は、全てのドメインおよびヒンジ領域またはそれらの部分を含むことができる。一実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、CH2ドメイン、CH3ドメイン、およびヒンジ領域、すなわち、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む。
【0283】
本明細書で使用されるように、用語「Fc領域」は、ネイティブIgのFc領域に対応するポリペプチドの部分として、すなわち、その2つの重鎖のそれぞれのFcドメインの二量体会合によって形成されるような部分として定義される。ネイティブFc領域は、別のFc領域とホモ二量体を形成する。対照的に、用語「遺伝子的に融合されるFc領域」または「単鎖Fc領域」(scFc領域)は、本明細書で使用されるように、単一ポリペプチド鎖内で遺伝子的に連結される(すなわち、単一の連続の遺伝子配列でコードされる)Fcドメインから構成される合成の二量体Fc領域を指す。参照によってその全体として本明細書に組み入れる、国際特許出願公開第WO2012/006635号を参照のこと。
【0284】
一実施形態では、「Fc領域」は、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まり(すなわち、重鎖定常領域の第1の残基を114として、IgGの残基216)、抗体のC末端で終わる、単一のIg重鎖の部分を指す。したがって、完全Fc領域は、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。
【0285】
免疫グロブリン定常領域またはその部分は、FcRn結合パートナーである場合がある。FcRnは、成体の上皮組織で活性であり、腸の管腔、肺気道、鼻腔面、膣表面、結腸および直腸表面において発現される(米国特許第6,485,726号)。FcRn結合パートナーは、FcRnに結合する免疫グロブリンの一部である。
【0286】
FcRnレセプターは、ヒトを含むいくつかの哺乳動物種から単離されている。ヒトFcRn、サルFcRn、ラットFcRn、およびマウスFcRnの配列が公知である(Storyら 1994年、J. Exp. Med. 180:2377頁)。FcRnレセプターは、IgG(IgA、IgM、IgD、およびIgEのような他の免疫グロブリンクラスではなく)に比較的低いpHで結合し、IgGを管腔中で漿膜の方向に経細胞的に能動輸送し、次いで、間質液中で見られる比較的高いpHでIgGを遊離する。これは、肺および腸の上皮(Israelら 1997、Immunology 92:69頁) 腎近位尿細管上皮(Kobayashiら 2002年、Am. J. Physiol. Renal Physiol. 282:F358頁)ならびに鼻腔上皮、膣表面、および胆道系表面を含む成体の上皮組織(米国特許第6,485,726号、同第6,030,613号、同第6,086,875号;WO03/077834;US2003-0235536)において発現される。
【0287】
本開示において有用なFcRn結合パートナーは、IgG全体、IgGのFc断片、およびFcRnレセプターの完全結合領域を含む他の断片を含む、FcRnレセプターによって特異的に結合される分子を包含する。FcRnレセプターに結合するIgGのFc部分の領域は、X線結晶学に基づいて記載されている(Burmeisterら 1994年、Nature 372:379頁)。FcのFcRnとの主な接触領域は、CH2およびCH3ドメインの接合部に近い。Fc-FcRn接触は全て、単一のIg重鎖内である。FcRn結合パートナーとして、IgG全体、IgGのFc断片、およびFcRnの完全結合領域を含むIgGの他の断片が挙げられる。主な接触部位として、CH2ドメインの248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、および314位のアミノ酸残基、ならびにCH3ドメインの385~387、428、および433~436位のアミノ酸残基が挙げられる。免疫グロブリンもしくは免疫グロブリン断片、または領域のアミノ酸ナンバリングに対してなされる言及は全て、Kabatら 1991年、Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S. Department of Public Health、Bethesda、Md.に基づく。
【0288】
FcRnに結合したFc領域またはFcRn結合パートナーは、FcRnによって、上皮バリアを越えて効率的に運ぶことができるので、所望の治療用分子を全身投与するための非侵襲的手段をもたらす。さらに、Fc領域またはFcRn結合パートナーを含む融合タンパク質は、FcRnを発現する細胞によって貪食される。しかし、これらの融合タンパク質は、分解の対象にはならずに、リサイクルされて、再度血液循環に入るので、これらのタンパク質のin vivo半減期が増加する。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン定常領域の部分は、典型的には、ジスルフィド結合と他の非特異的相互作用を介して、別のFc領域または別のFcRn結合パートナーと会合して、二量体、およびそれより高次の多量体を形成するFc領域またはFcRn結合パートナーである。
【0289】
2つのFcRnレセプターが、単一のFc分子と結合することができる。結晶学的データから、各FcRn分子が、Fcホモ二量体の単一のポリペプチドと結合することが示唆される。一実施形態では、FcRn結合パートナー、例えば、IgGのFc断片を生物活性分子に連結させることにより、生物活性分子の経口送達、口腔内送達、舌下送達、直腸送達、膣内送達、経鼻的なエアロゾル投与によるかもしくは経肺経路による送達、または眼局所経路による送達の手段が得られる。別の実施形態では、凝固因子タンパク質は、侵襲的に、例えば、皮下、静脈内に投与することができる。
【0290】
FcRn結合パートナー領域は、FcRnレセプターが特異的に結合し、その結果、Fc領域をFcRnレセプターによって能動輸送できる分子または部分である。特異的な結合とは、生理的条件下で、比較的安定である複合体を形成する2つの分子を指す。通常、親和性が低く、中程度から高度の容量を有する非特異的な結合と区別されるように、特異的な結合は、高い親和性と、低度から中程度の容量によって特徴付けられる。典型的には、親和性定数KAが、10-1を超えるか、または10-1を超える場合に、結合は、特異的であると考えられる。必要な場合、非特異的結合は、結合条件を変えることによって、特異的な結合に実質的な影響を及ぼすことなく低減される。分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合させる時間、ブロッキング剤(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度のような適切な結合条件などは、当業者であれば、通常の技法を使用して最適化することができる。
【0291】
ある特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、1つまたはそれ以上のトランケートされたFc領域であって、トランケートされているにもかかわらず、Fcレセプター(FcR)結合特性をFc領域に付与するのに十分である、トランケートされたFc領域を含む。例えば、FcRnに結合するFc領域の部分(すなわち、FcRn結合部分)は、EUの番号付けで、IgG1の282~438位周辺のアミノ酸を含む(主要な接触部位は、CH2ドメインの248、250~257、272、285、288、290~291、308~311、および314位のアミノ酸と、CH3ドメインの385~387、428、および433~436位のアミノ酸残基である)。よって、本開示のFc領域は、FcRn結合部分を含むかまたはそれからなる場合がある。FcRn結合部分は、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むいずれかのアイソタイプの重鎖に由来する場合がある。一実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1の抗体由来のFcRn結合部分が使用される。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG4の抗体由来のFcRn結合部分が使用される。
【0292】
Fc領域は、いくつかの異なる供給源から得ることができる。一実施形態では、ポリペプチドのFc領域は、ヒト免疫グロブリンに由来する。しかしながら、Fc部分は、例えば、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット)または非ヒト霊長類(例えば、チンパンジー、マカク)種を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来する場合がある。さらに、Fcドメインまたはその部分のポリペプチドは、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来する場合がある。別の実施形態では、ヒトアイソタイプIgG1が使用される。
【0293】
ある特定の実施形態では、Fcバリアントにより、前記野生型Fcドメインを含むFc部分によって付与される少なくとも1つのエフェクター機能に変化がもたらされる(例えば、Fcレセプター(例えば、FcγRI、FcγRII、またはFcγRIII)もしくは補体タンパク質(例えば、C1q)に結合するか、または抗体依存性細胞障害性(ADCC)、食作用、もしくは補体依存性細胞障害性(CDCC)を誘発するFc領域の能力の改善または低下)。他の実施形態では、Fcバリアントにより、操作されたシステイン残基がもたらされる。
【0294】
本開示のFc領域は、エフェクター機能および/またはFcRもしくはFcRnの結合を変化させる(例えば、増強または低減する)ことが知られている技術分野で認識されるFcバリアントを用いることができる。具体的には、本開示のFc領域は、例えば、それらのそれぞれを参照によって本明細書に組み入れる、国際PCT出願公開第WO88/07089A1号、同第WO96/14339A1号、同第WO98/05787A1号、同第WO98/23289A1号、同第WO99/51642A1号、同第WO99/58572A1号、同第WO00/09560A2号、同第WO00/32767A1号、同第WO00/42072A2号、同第WO02/44215A2号、同第WO02/060919A2号、同第WO03/074569A2号、同第WO04/016750A2号、同第WO04/029207A2号、同第WO04/035752A2号、同第WO04/063351A2号、同第WO04/074455A2号、同第WO04/099249A2号、同第WO05/040217A2号、同第WO04/044859号、同第WO05/070963A1号、同第WO05/077981A2号、同第WO05/092925A2号、同第WO05/123780A2号、同第WO06/019447A1号、同第WO06/047350A2号および同第WO06/085967A2号;米国特許出願公開第US2007/0231329号、同第US2007/0231329号、同第US2007/0237765号、同第US2007/0237766号、同第US2007/0237767号、同第US2007/0243188号、同第US20070248603号、同第US20070286859号、同第US20080057056号;または米国特許第5,648,260号、同第5,739,277号、同第5,834,250号、同第5,869,046号、同第6,096,871号、同第6,121,022号、同第6,194,551号、同第6,242,195号、同第6,277,375号、同第6,528,624号、同第6,538,124号、同第6,737,056号、同第6,821,505号、同第6,998,253号、同第7,083,784号、同第7,404,956号、および同第7,317,091号に開示されているアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上に、変更(例えば、置換)を含むことができる。一実施形態では、具体的な変更(例えば、当技術分野において開示されている1つまたはそれ以上のアミノ酸の具体的な置換)は、開示されているアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上においてなされる。別の実施形態では、開示されているアミノ酸位置のうちの1つまたはそれ以上において異なる変更(例えば、当技術分野において開示されている1つまたはそれ以上のアミノ酸位置の異なる置換)がなされる。
【0295】
部位特異的突然変異誘発などのような十分に認識されている手順に従って、IgGのFc領域またはFcRn結合パートナーを改変して、FcRnが結合することになる改変型IgGもしくはFc断片またはその部分を得ることができる。このような改変として、FcRn接触部位から離れた部位の改変と、FcRnへの結合を保持するかまたはさらには増強する、接触部位内の改変が挙げられる。例えば、FcRnに対するFc結合親和性を有意に喪失することなく、ヒトIgG1 Fc(Fcγ1)における以下の単一のアミノ酸残基を置換することができる:P238A、S239A、K246A、K248A、D249A、M252A、T256A、E258A、T260A、D265A、S267A、H268A、E269A、D270A、E272A、L274A、N276A、Y278A、D280A、V282A、E283A、H285A、N286A、T289A、K290A、R292A、E293A、E294A、Q295A、Y296F、N297A、S298A、Y300F、R301A、V303A、V305A、T307A、L309A、Q311A、D312A、N315A、K317A、E318A、K320A、K322A、S324A、K326A、A327Q、P329A、A330Q、P331A、E333A、K334A、T335A、S337A、K338A、K340A、Q342A、R344A、E345A、Q347A、R355A、E356A、M358A、T359A、K360A、N361A、Q362A、Y373A、S375A、D376A、A378Q、E380A、E382A、S383A、N384A、Q386A、E388A、N389A、N390A、Y391F、K392A、L398A、S400A、D401A、D413A、K414A、R416A、Q418A、Q419A、N421A、V422A、S424A、E430A、N434A、T437A、Q438A、K439A、S440A、S444AおよびK447A(例えば、P238Aは、位置数238における野生型プロリンのアラニンへの置換を表す)。一例として、具体的な実施形態では、N297A突然変異を組み込んで、高度に保存されたN糖鎖付加部位を除去している。アラニンに加えて、上で特定した位置の野生型アミノ酸を他のアミノ酸で置換することができる。突然変異を個々にFcに組み込んで、ネイティブFcと異なるFc領域を100個超もたらすことができる。さらに、これらの個々の突然変異のうちの2つ、3つ、またはそれ以上の組合せを一緒に組み込んで、何百ものさらなるFc領域をもたらすことができる。
【0296】
上記のうちの特定の突然変異により、Fc領域またはFcRn結合パートナーに、新たな機能を付与することができる。例えば、一実施形態では、N297Aを組み込んで、高度に保存されたN糖鎖付加部位を除去している。この突然変異の作用は、免疫原性を低減することであり、それによって、Fc領域の循環血液中半減期が増強すること、およびFcRnに対する親和性を損なうことなく、Fc領域がFcγRI、FcγRIIA、FcγRIIB、およびFcγRIIIAに結合するのを不可能とすることである(Routledgeら 1995年、Transplantation 60:847頁;Friendら 1999年、Transplantation 68:1632頁;Shieldsら 1995年、J.Biol.Chem. 276:6591頁)。上記の突然変異に起因する新たな機能のさらなる例として、いくつかの例では、FcRnに対する親和性を野生型の親和性よりも増加させることができる。この親和性の増加は、「会合」速度の上昇、「解離」速度の低下または「会合」速度の上昇と「解離」速度の低下の両方を反映することができる。FcRnに対する親和性を増加させると考えられる突然変異の例として、これらに限定されないが、T256A、T307A、E380A、およびN434Aが挙げられる(Shieldsら 2001年、J.Biol.Chem. 276:6591頁)。
【0297】
さらに、少なくとも3つのヒトFcガンマレセプターは、下流のヒンジ領域、一般的には、234~237位のアミノ酸内の、IgG上の結合部位を認識すると考えられる。したがって、新たな機能および免疫原性の潜在的な減少の別の例は、例えば、ヒトIgG1の233~236位のアミノ酸「ELLG」(配列番号45)を、IgG2の対応する配列「PVA」(1つのアミノ酸が欠失している)で置換することによるなど、この領域の突然変異に起因する場合がある。このような突然変異が導入された場合、様々なエフェクター機能を媒介するFcγRI、FcγRII、およびFcγRIIIが、IgG1に結合しなくなることが示されている。WardおよびGhetie 1995年、Therapeutic Immunology 2:77頁およびArmourら 1999年、Eur.J.Immunol. 29:2613頁。
【0298】
別の実施形態では、免疫グロブリン定常領域またはその一部は、ヒンジ領域またはその一部に、第2の免疫グロブリン定常領域またはその一部と1つまたはそれ以上のジスルフィド結合を形成するアミノ酸配列を含む。第2の免疫グロブリン定常領域またはその一部は、第2のポリペプチドに連結して、治療用タンパク質と第2のポリペプチドを一体とすることができる。一部の実施形態では、第2のポリペプチドは、エンハンサー部分である。本明細書で使用されるように、用語「エンハンサー部分」は、治療用タンパク質の活性を増強することが可能な分子、その断片またはポリペプチドの構成成分を指す。エンハンサー部分は、可溶性組織因子(sTF)のような補因子であり、ここで、治療用タンパク質は凝固因子であるか、または凝固促進ペプチドである。よって、凝固因子の活性化の際に、エンハンサー部分は、凝固因子の活性を増強するために利用可能である。
【0299】
ある特定の実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、Ig定常領域の抗原依存性エフェクター機能、特に、タンパク質の循環血液中半減期を変化させる、免疫グロブリン定常領域またはその一部(例えば、Fcバリアント)に対するアミノ酸置換を含む。
【0300】
2.scFc領域
別の態様では、異種部分は、scFc(単鎖Fc)領域を含む。一実施形態では、本開示の単離された核酸分子は、ScFc領域をコードする異種核酸配列をさらに含む。scFc領域は、同じ直鎖状ポリペプチド鎖内に、フォールディングして(例えば、分子内または分子間フォールディングして)、Fcペプチドリンカーによって連結される1つの機能性scFc領域を形成することが可能な、少なくとも2つの免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えば、Fc部分またはFcドメイン(例えば、2、3、4、5、6個、またはそれ以上のFc部分またはドメイン))を含む。例えば、一実施形態では、半減期を改善するかもしくは免疫エフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞障害性(ADCC)、食作用、または補体依存性細胞障害性(CDCC))を誘発する、および/または製造性を改善する目的で、本開示のポリペプチドは、そのScFc領域を介して、少なくとも1つのFcレセプター(例えば、FcRn、FcγRレセプター(例えば、FcγRIII)、または補体タンパク質(例えば、C1q))に結合することが可能である。
【0301】
3.CTP
別の態様では、異種部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットの1つのC末端ペプチド(CTP)、またはその断片、バリアントもしくは誘導体を含む。組換えタンパク質に挿入された1つまたはそれ以上のCTPペプチドは、そのタンパク質のin vivo半減期を増加させることが知られている。例えば、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、米国特許第5,712,122号を参照のこと。
【0302】
例示的なCTPペプチドとして、DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL(配列番号33)またはSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ(配列番号34)が挙げられる。例えば、参照によって組み入れる、米国特許出願公開第2009/0087411A1号を参照のこと。
【0303】
4.XTEN配列
一部の実施形態では、異種部分は、1つまたはそれ以上のXTEN配列、その断片、バリアント、または誘導体を含む。本明細書で使用されるように、「XTEN配列」は、低分子親水性アミノ酸で主に構成され、生理的条件下では二次構造もしくは三次構造をとる程度が低いかまたはそれをとらない、天然に存在しない、実質的に非反復の配列を有する伸長したポリペプチドを指す。異種部分として、XTENは、半減期延長部分としての機能を果たすことができる。さらに、XTENは、これらに限定されないが、薬物動態パラメーターおよび溶解特性の増強を含む所望の特性をもたらすことができる。
【0304】
XTEN配列を含む異種部分の、本開示のタンパク質への組み込みにより、以下の有利な特性:立体配座の柔軟性、水溶解性の向上、高度なプロテアーゼ耐性、低免疫原性、哺乳動物レセプターへの低結合性、または流体力学的(またはストークス)半径の増大という有益な特性のうちの1つまたはそれ以上をタンパク質に付与することができる。
【0305】
特定の態様では、XTEN配列は、より長いin vivo半減期または曲線下面積(AUC)の増加のような薬物動態特性を向上させることができ、その結果、本開示のタンパク質は、in vivoに留まり、XTENという異種部分を有さないこと以外は同じであるタンパク質と比較して増加した期間、凝固促進活性を有する。
【0306】
一部の実施形態では、本開示に関して有用なXTEN配列は、約20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1200、1400、1600、1800、または2000個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。ある特定の実施形態では、XTENは、約20超から約3000個のアミノ酸残基、30超から約2500個の残基、40超から約2000個の残基、50超から約1500個の残基、60超から約1000個の残基、70超から約900個の残基、80超から約800個の残基、90超から約700個の残基、100超から約600個の残基、110超から約500個の残基、または120超から約400個の残基を有するペプチドまたはポリペプチドである。特定の一実施形態では、XTENは、長さが、42個のアミノ酸より長く、144個のアミノ酸より短い、アミノ酸配列を含む。
【0307】
本開示のXTEN配列は、5から14個(例えば、9から14個)のアミノ酸残基のうちの1つもしくはそれ以上の配列モチーフ、または配列モチーフと少なくとも80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含むことができ、そのモチーフは、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)からなる群から選択される4から6種のアミノ酸(例えば、5種類のアミノ酸)を含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなる。US2010-0239554A1を参照のこと。
【0308】
一部の実施形態では、XTENは、配列の約80%、または少なくとも約85%、または少なくとも約90%、または約91%、または約92%、または約93%、または約94%、または約95%、または約96%、または約97%、または約98%、または約99%または約100%が、表7から選択される単一のモチーフファミリーから選択される非重複配列の複数ユニットからなる(その結果、ファミリー配列が得られる)非重複配列モチーフを含む。本明細書で使用されるように、「ファミリー」は、XTENが、表7からの単一のモチーフカテゴリー、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BC、またはBDのXTENのみから選択されるモチーフを有することと、およびファミリーモチーフに由来しないXTENにおける任意の他のアミノ酸が、必要とされる特性を実現するために、例えば、コードヌクレオチドによる制限部位の組み込み、切断配列の組み込みを可能とするために、または治療用タンパク質の十分な連結を実現するために選択されることを意味する。XTENファミリーの一部の実施形態では、XTEN配列は、ADモチーフファミリー、またはAEモチーフファミリー、またはAFモチーフファミリー、またはAGモチーフファミリー、またはAMモチーフファミリー、またはAQモチーフファミリー、またはBCファミリー、またはBDファミリーの非重複配列モチーフを複数ユニット含み、得られたXTENは、上記の範囲の相同性を示す。他の実施形態では、XTENは、表7のモチーフファミリーのうちの2つまたはそれ以上からのモチーフ配列を複数ユニットを含む。これらの配列は、以下にさらに詳しく説明されている、モチーフのアミノ酸組成によって付与される実効電荷、親水性、二次構造の欠如、または反復性の欠如のような特性を含む所望の物理的/化学的特徴を実現するように選択することができる。この段落で説明される上記の実施形態では、本明細書に記載されている方法を使用して、XTENに組み込まれるモチーフを選択およびアセンブルして、約36から約3000個のアミノ酸残基のXTENを実現することができる。
【0309】
【表21】
【0310】
本開示の治療用タンパク質において、異種部分として使用することができるXTEN配列の例は、例えば、そのそれぞれを参照によってその全体として本明細書に組み入れる、米国特許出願公開第2010/0239554A1号、同第2010/0323956A1号、同第2011/0046060A1号、同第2011/0046061A1号、同第2011/0077199A1号もしくは同第2011/0172146A1号、または国際特許出願公開第WO2010091122A1号、同第WO2010144502A2号、同第WO2010144508A1号、同第WO2011028228A1号、同第WO2011028229A1、もしくは同第WO2011028344A2号に開示されている。
【0311】
治療用タンパク質に挿入または連結するために、XTENは様々な長さを有する場合がある。一実施形態では、XTEN配列の長さは、融合タンパク質において実現される特性または機能に基づいて選択される。意図する特性または機能に応じて、XTENは、長さが短いかもしくは中程度の配列または担体としての役割を果たすことができるより長い配列である。ある特定の実施形態では、XTENは、約6から約99個のアミノ酸残基という短いセグメント、約100から約399個のアミノ酸残基という中程度の長さ、および約400から約1000個、かつ最大で約3000個のアミノ酸残基というより長い長さを含む。よって、治療用タンパク質に挿入または連結されるXTENは、約6、約12、約36、約40、約42、約72、約96、約144、約288、約400、約500、約576、約600、約700、約800、約864、約900、約1000、約1500、約2000、約2500、または最大で約3000個のアミノ酸残基長の長さを有する場合がある。他の実施形態では、XTEN配列は、約6から約50、約50から約100、約100から150、約150から250、約250から400、約400から約500、約500から約900、約900から1500、約1500から2000、または約2000から約3000個のアミノ酸残基長である。治療用タンパク質に挿入または連結されるXTENの正確な長さは、治療用タンパク質の活性に有害な影響を及ぼさなければ、様々である。一実施形態では、本発明で使用されるXTENのうちの1つまたはそれ以上は、42個のアミノ酸、72個のアミノ酸、144個のアミノ酸、288個のアミノ酸、576個のアミノ酸、または864個のアミノ酸長さを有し、XTENファミリー配列、すなわち、AD、AE、AF、AG、AM、AQ、BCまたはBDのうちの1つまたはそれ以上から選択することができる。
【0312】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは、288個のアミノ酸を含む。一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは、288個のアミノ酸を含み、XTENは、FVIIIポリペプチドのBドメイン内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよび配列番号109を含むXTENを含み、XTENは、FVIIIポリペプチドのBドメイン内に挿入される。特定の一実施形態では、治療用タンパク質は、FVIIIポリペプチドおよび配列番号109を含むXTENを含み、XTENは、成熟FVIIIの745位のアミノ酸のすぐ下流のFVIIIポリペプチド内に挿入される。
【0313】
一部の実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは、72個のアミノ酸を含む。一実施形態では、治療用タンパク質は、FIXポリペプチドおよびXTENを含み、XTENは、72個のアミノ酸を含み、XTENは、成熟FIXの166位のアミノ酸のすぐ下流のFVIIIポリペプチド内に挿入される。
【0314】
一部の実施形態では、本開示で使用されるXTEN配列は、AE42、AG42、AE48、AM48、AE72、AG72、AE108、AG108、AE144、AF144、AG144、AE180、AG180、AE216、AG216、AE252、AG252、AE288、AG288、AE324、AG324、AE360、AG360、AE396、AG396、AE432、AG432、AE468、AG468、AE504、AG504、AF504、AE540、AG540、AF540、AD576、AE576、AF576、AG576、AE612、AG612、AE624、AE648、AG648、AG684、AE720、AG720、AE756、AG756、AE792、AG792、AE828、AG828、AD836、AE864、AF864、AG864、AM875、AE912、AM923、AM1318、BC864、BD864、AE948、AE1044、AE1140、AE1236、AE1332、AE1428、AE1524、AE1620、AE1716、AE1812、AE1908、AE2004A、AG948、AG1044、AG1140、AG1236、AG1332、AG1428、AG1524、AG1620、AG1716、AG1812、AG1908、AG2004、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される配列と少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。US2010-0239554A1を参照のこと。特定の一実施形態では、XTENは、AE42、AE72、AE144、AE288、AE576、AE864、AG42、AG72、AG144、AG288、AG576、AG864、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0315】
本開示の治療用タンパク質において、異種部分として使用することができる例示的なXTEN配列として、XTEN AE42-4(配列番号47によってコードされる配列番号46)、XTEN AE144-2A(配列番号49によってコードされる配列番号48)、XTEN AE144-3B(配列番号51によってコードされる配列番号50)、XTEN AE144-4A(配列番号53によってコードされる配列番号52)、XTEN AE144-5A(配列番号55によってコードされる配列番号54)、XTEN AE144-6B(配列番号57によってコードされる配列番号56)、XTEN AG144-1(配列番号59によってコードされる配列番号58)、XTEN AG144-A(配列番号61によってコードされる配列番号60)、XTEN AG144-B(配列番号63によってコードされる配列番号62)、XTEN AG144-C(配列番号65によってコードされる配列番号64)、およびXTEN AG144-F(配列番号67によってコードされる配列番号66)が挙げられる。特定の一実施形態では、XTENは、配列番号18によってコードされる。
【0316】
別の実施形態では、XTEN配列は、AE36(配列番号130)、AE42(配列番号131)、AE72(配列番号132)、AE78(配列番号133)、AE144(配列番号134)、AE144_2A(配列番号48)、AE144_3B(配列番号50)、AE144_4A(配列番号52)、AE144_5A(配列番号54)、AE144_6B(配列番号135)、AG144(配列番号136)、AG144_A(配列番号137)、AG144_B(配列番号62)、AG144_C(配列番号64)、AG144_F(配列番号66)、AE288(配列番号138)、AE288_2(配列番号139)、AG288(配列番号140)、AE576(配列番号141)、AG576(配列番号142)、AE864(配列番号143)、AG864(配列番号144)、XTEN_AE72_2A_1(配列番号145)、XTEN_AE72_2A_2(配列番号146)、XTEN_AE72_3B_1(配列番号147)、XTEN_AE72_3B_2(配列番号148)、XTEN_AE72_4A_2(配列番号149)、XTEN_AE72_5A_2(配列番号150)、XTEN_AE72_6B_1(配列番号151)、XTEN_AE72_6B_2(配列番号152)、XTEN_AE72_1A_1(配列番号153)、XTEN_AE72_1A_2(配列番号154)、XTEN_AE144_1A(配列番号155)、AE150(配列番号156)、AG150(配列番号157)、AE294(配列番号158)、AG294(配列番号159)、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。具体的な実施形態では、XTEN配列は、AE72、AE144、およびAE288からなる群から選択される。ある特定のXTEN配列に関するアミノ酸配列は、表8に示される。
【0317】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【0318】
一部の実施形態では、XTENのアミノ酸の100%未満が、グリシン(G)、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)、グルタミン酸(E)およびプロリン(P)から選択されるか、または配列の100%未満が、表7からの配列モチーフもしくは本発明で提供されるXTEN配列からなる。このような実施形態では、XTENの残りのアミノ酸残基は、他の14種の天然L-アミノ酸のうちのいずれかから選択されるが、XTEN配列が、親水性アミノ酸を少なくとも約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または少なくとも約99%含有するように、親水性アミノ酸から優先的に選択することができる。共役構築物において利用されるXTENにおける疎水性アミノ酸の含有率は、5%未満、または2%未満、または1%未満である。XTENの構築の際に、あまり好ましくない疎水性残基として、トリプトファン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、およびメチオニンが挙げられる。さらに、XTEN配列は、以下のアミノ酸:メチオニン(例えば、酸化を回避するため)、またはアスパラギンおよびグルタミン(脱アミド化を回避するため)を5%未満または4%未満または3%未満または2%未満または1%未満または0%含有することができる。
【0319】
1つまたはそれ以上のXTEN配列は、治療用タンパク質のC末端もしくはN末端に挿入されるかまたは治療用タンパク質のアミノ酸配列内の2つのアミノ酸の間に挿入される可能性がある。例えば、治療用タンパク質がFVIIIポリペプチドを含む場合、XTENは、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位で、2つのアミノ酸の間に挿入される。治療用タンパク質がFIXポリペプチドを含む場合、XTENは、表5から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位で、2つのアミノ酸の間に挿入される。
【0320】
本発明に従って使用することができるXTEN配列の追加例は、米国特許出願公開第2010/0239554 A1号、同第2010/0323956 A1号、同第2011/0046060 A1号、同第2011/0046061 A1号、同第2011/0077199 A1号、もしくは同第2011/0172146 A1号、または国際特許出願公開第WO2010091122 A1号、同第WO2010144502 A2号、同第WO2010144508 A1号、同第WO2011028228 A1号、同第WO2011028229 A1号、同第WO2011028344 A2号、WO2014/011819 A2号、もしくは同第WO2015/023891号に開示されている。
【0321】
5.アルブミン、またはその断片、誘導体もしくはバリアント
一部の実施形態では、異種部分は、アルブミンまたはその機能性断片を含む。完全長形態では609個のアミノ酸のタンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA、またはHA)は、血清の浸透圧のかなりの部分を担っており、内因性および外因性リガンドの担体としても機能する。本明細書で使用されるように、用語「アルブミン」は、完全長アルブミンまたはその機能性断片、バリアント、誘導体、もしくはアナログを含む。アルブミンまたはその断片もしくはバリアントの例は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、米国特許出願公開第2008/0194481 A1号、同第2008/0004206 A1号、同第2008/0161243 A1号、同第2008/0261877 A1号、もしくは同第2008/0153751 A1号、またはPCT特許出願公開第2008/033413 A2号、同第2009/058322 A1号、もしくは同第2007/021494 A2号に開示されている。
【0322】
一実施形態では、本開示の治療用タンパク質は、免疫グロブリン定常領域またはその部分(例えばFc領域)、PAS配列、HES、PEGおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される第2の異種部分にさらに連結されたアルブミン、その断片、またはバリアントを含む。
【0323】
6.アルブミン結合部分
ある特定の実施形態では、異種部分は、アルブミン結合ペプチド、細菌アルブミン結合ドメイン、アルブミン結合抗体断片、またはこれらの任意の組合せを含むアルブミン結合部分である。
【0324】
例えば、アルブミン結合タンパク質は、細菌アルブミン結合タンパク質、ドメイン抗体を含む抗体または抗体断片である場合がある(米国特許第6,696,245号を参照のこと)。アルブミン結合タンパク質は、例えば、連鎖球菌タンパク質Gのもののような細菌アルブミン結合ドメインである場合がある(Konig,TおよびSkerra,A.(1998)J. Immunol. Methods 218、73~83頁)。共役パートナーとして使用することができるアルブミン結合ペプチドの他の例は、例えば、米国特許出願公開第2003/0069395号またはDennisら(Dennisら(2002)J. Biol. Chem. 277、35035~35043頁)に記載されているように、Cys-Xaa-Xaa-Xaa-Xaa-Cysというコンセンサス配列(配列中、Xaaは、Asp、Asn、Ser、Thr、またはTrpであり、Xaaは、Asn、Gln、His、Ile、Leu、またはLysであり、Xaaは、Ala、Asp、Phe、Trp、またはTyrであり、Xaaは、Asp、Gly、Leu、Phe、Ser、またはThrである)を有するものである。
【0325】
Kraulisら、FEBS Lett. 378:190~194頁(1996)およびLinhultら、Protein Sci. 11:206~213頁(2002)に開示されているように、連鎖球菌タンパク質Gからのドメイン3は、細菌アルブミン結合ドメインの一例である。アルブミン結合ペプチドの例として、コア配列DICLPRWGCLW(配列番号35)を有する一連のペプチドが挙げられる。例えば、Dennisら、J. Biol. Chem. 2002年、277:35035~35043頁(2002)を参照のこと。アルブミン結合抗体断片の例は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、MullerおよびKontermann、Curr. Opin. Mol. Ther. 9:319~326頁(2007);Rooversら、Cancer Immunol. Immunother. 56:303~317頁(2007)、およびHoltら、Prot. Eng. Design Sci.、21:283~288頁(2008)に開示されている。このようなアルブミン結合部分の例は、Trusselら、Bioconjugate Chem. 20:2286~2292頁(2009)に開示されている2-(3-マレイミドプロパンアミド)-6-(4-(4-ヨードフェニル)ブタンアミド)ヘキサノエート(「Albu」タグ)である。
【0326】
脂肪酸、特に、長鎖脂肪酸(LCFA)および長鎖脂肪酸様アルブミン結合化合物を使用して、本開示の凝固因子タンパク質のin vivo半減期を延長することができる。LCFA様アルブミン結合化合物の例は、16-(1-(3-(9-(((2,5-ジオキソピロリジン-1-イルオキシ)カルボニルオキシ)-メチル)-7-スルホ-9H-フルオレン-2-イルアミノ)-3-オキソプロピル)-2,5-ジオキソピロリジン-3-イルチオ)ヘキサデカン酸である(例えば、WO2010/140148を参照のこと)。
【0327】
7.PAS配列
他の実施形態では、異種部分は、PAS配列である。PAS配列は、本明細書で使用されるように、アラニン残基およびセリン残基を主に含むかまたはアラニン残基、セリン残基、およびプロリン残基を主に含むアミノ酸配列であって、生理的条件下でランダムコイル立体配座を形成するアミノ酸配列を意味する。したがって、PAS配列は、キメラタンパク質において異種部分の一部として使用することができるアラニン、セリン、およびプロリンを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなるビルディングブロック、アミノ酸ポリマー、または配列カセットである。ただし、PAS配列における微量成分として、アラニン、セリン、およびプロリン以外の残基が付加される場合、アミノ酸ポリマーがランダムコイル立体配座を形成できることは、当業者であれば分かる。用語「微量成分」は、本明細書で使用されるように、アラニン、セリン、およびプロリン以外のアミノ酸を、PAS配列に、ある特定の程度まで、例えば、最大で約12%、すなわち、PAS配列の100個のアミノ酸のうちの約12個、最大で約10%、すなわち、PAS配列の100個のアミノ酸のうちの約10個、最大で約9%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約9個、最大で約8%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約8個、約6%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約6個、約5%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約5個、約4%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約4個、約3%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約3個、約2%、すなわち、100個のアミノ酸のうちの約2個、約1%、すなわち、100個のアミノ酸うちの約1個付加できることを意味する。アラニン、セリン、およびプロリンと異なるアミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、Tyr、およびValからなる群から選択することができる。
【0328】
生理的条件下では、PAS配列伸長体は、ランダムコイル立体配座を形成し、それによって、凝固因子タンパク質に対して、in vivoおよび/またはin vitro安定性の増加を媒介することができる。ランダムコイルドメインは、それ自体が安定な構造または機能を持たないため、凝固因子タンパク質によって媒介される生体活性は、本質的に保持される。他の実施形態では、ランダムコイルドメインを形成するPAS配列は、特に、血漿中でのタンパク質分解、免疫原性、等電点/静電挙動、細胞表面レセプターへの結合またはインターナリゼーションに関して、生物学的に不活性であるが、生分解性を有し、それにより、PEGのような合成ポリマーを上回る明らかな利点をもたらす。
【0329】
ランダムコイル立体配座を形成するPAS配列の非限定例は、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号36)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号37)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号38)、APSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号39)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号40)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号41)、ASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号42)およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。PAS配列のさらなる例は、例えば、米国特許出願公開第2010/0292130 A1号およびPCT特許出願公開第WO2008/155134 A1号から公知である。
【0330】
8.HAP配列
ある特定の実施形態では、異種部分は、グリシンリッチホモアミノ酸ポリマー(HAP)である。HAP配列は、少なくとも50個のアミノ酸、少なくとも100個のアミノ酸、120個のアミノ酸、140個のアミノ酸、160個のアミノ酸、180個のアミノ酸、200個のアミノ酸、250個のアミノ酸、300個のアミノ酸、350個のアミノ酸、400個のアミノ酸、450個のアミノ酸、または500個のアミノ酸長を有するグリシン反復配列を含む場合がある。一実施形態では、HAP配列は、HAP配列に融合または連結された部分の半減期を延長することが可能である。HAP配列の非限定例として、これらに限定されないが、(Gly)、(GlySer)またはS(GlySer)(式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20である)が挙げられる。一実施形態では、nは、20、21、22、23、24、25、26、26、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40である。別の実施形態では、nは、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200である。
【0331】
9.トランスフェリンまたはその断片
ある特定の実施形態では、異種部分は、トランスフェリンまたはその断片である。いずれかのトランスフェリンを使用して、本開示の凝固因子タンパク質を作製することができる。一例として、野生型ヒトTF(TF)は、およそ75KDaの679個のアミノ酸タンパク質であり(糖鎖付加は考慮せず)、2つの主要ドメイン、N(約330個のアミノ酸)およびC(約340個のアミノ酸)を有し、遺伝子重複に起因すると考えられる。その全てを参照によってその全体として本明細書に組み入れる、GenBank受託番号NM001063、XM002793、M12530、XM039845、XM039847およびS95936(www.ncbi.nlm.nih.gov/)を参照のこと。トランスフェリンは、2つのドメイン、NドメインおよびCドメインを含む。Nドメインは、N1ドメインおよびN2ドメインという2つのサブドメインを含み、Cドメインは、C1ドメインおよびC2ドメインという2つのサブドメインを含む。
【0332】
一実施形態では、トランスフェリン異種部分として、トランスフェリンスプライスバリアントが挙げられる。一例では、トランスフェリンスプライスバリアントは、ヒトトランスフェリンのスプライスバリアント、例えばGenBank受託AAA61140である場合がある。別の実施形態では、キメラタンパク質のトランスフェリン部分は、トランスフェリン配列の1つまたはそれ以上のドメイン、例えば、Nドメイン、Cドメイン、N1ドメイン、N2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメインまたはこれらの任意の組合せを含む。
【0333】
10.クリアランスレセプター
ある特定の実施形態では、異種部分は、クリアランスレセプター、その断片、バリアント、または誘導体である。LRP1は、第X因子のような種々のタンパク質のレセプター媒介性クリアランスに関与する600KDaの膜内在性タンパク質である。例えば、Naritaら、Blood 91:555~560頁(1998)を参照のこと。
【0334】
11.フォンビルブランド因子またはその断片
ある特定の実施形態では、異種部分は、フォンビルブランド因子(VWF)またはその1つもしくはそれ以上の断片である。
【0335】
VWF(F8VWFとしても知られている)は、血漿中に存在し、内皮(バイベルパラーデ小体内)、巨核球(血小板のα顆粒)、および内皮下結合組織において構成的に産生される大きな多量体糖タンパク質である。基本的なVWF単量体は、2813個のアミノ酸のタンパク質である。各単量体は、D’およびD3ドメイン(一体になって、第VIII因子に結合する)、A1ドメイン(血小板GPIbレセプター、ヘパリン、および/またはおそらくはコラーゲンに結合する)、A3ドメイン(コラーゲンに結合する)、C1ドメイン(このドメインが活性化すると、RGDドメインが血小板インテグリンαIIbβ3に結合する)、ならびにタンパク質のC末端にある「システインノット」ドメイン(VWFは、このドメインを血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子-β(TGFβ)およびβ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βHCG)と共有する)という、特有の機能を有するいくつかの特有のドメインを含有する。
【0336】
ヒトVWFの2813個の単量体アミノ酸配列は、GenBankの受託番号NP000543.2として報告されている。ヒトVWFをコードするヌクレオチド配列は、GenBankの受託番号NM00552.3として報告されている。配列番号129は、配列番号128によってコードされるアミノ酸配列である。D’ドメインは、配列番号129の764から866位のアミノ酸を含む。D3ドメインは、配列番号44の867から1240位のアミノ酸を含む。
【0337】
血漿中では、FVIIIの95~98%は、完全長VWFとの強固な非共有結合複合体中で循環する。in vivoでFVIIIIの適切な血漿中レベルを維持するために、この複合体の形成が重要である。Lentingら、Blood. 92(11):3983~96(1998);Lentingら、J. Thromb. Haemost. 5(7):1353~60頁(2007)。重鎖の372および740位と、軽鎖の1689位におけるタンパク質分解により、FVIIIが活性化される場合、FVIIIに結合したVWFが、活性化FVIIIから外れる。
【0338】
ある特定の実施形態では、異種部分は、完全長フォンビルブランド因子である。他の実施形態では、異種部分は、フォンビルブランド因子断片である。本明細書で使用されるように、用語「1つのVWF断片」または「複数のVWF断片」は、FVIIIと相互作用し、完全長VWFによってFVIIIに通常もたらされる、少なくとも1つまたはそれ以上の特性、例えば、FVIIIaに対する早期活性化を防止すること、早期タンパク質分解を防止すること、早期クリアランスをもたらすことのあるリン脂質膜との会合を防止すること、ネイキッドFVIIIには結合することができるがVWFの結合したFVIIIには結合することができないFVIIIクリアランスレセプターへの結合を防止すること、および/またはFVIIIの重鎖と軽鎖の相互作用を安定化することを保持する任意のVWF断片を意味する。具体的な実施形態では、異種部分は、VWFのD’ドメインおよびD3ドメインを含む(VWF)断片である。D’ドメインおよびD3ドメインを含むVWF断片は、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、D1ドメイン、D2ドメイン、D4ドメイン、B1ドメイン、B2ドメイン、B3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、CKドメイン、これらの1つまたはそれ以上の断片、およびこれらの任意の組合せからなる群から選択されるVWFドメインをさらに含むことができる。VWF断片に融合したFVIII活性を有するポリペプチドのさらなる例は、その両方を参照によってその全体として本明細書に組み入れる、2012年7月3日に出願された米国仮特許出願第61/667,901号、および米国特許出願公開第2015/0023959 A1号に開示されている。
【0339】
12.リンカー部分
ある特定の実施形態では、異種部分は、ペプチドリンカーである。
【0340】
本明細書で使用されるように、用語「ペプチドリンカー」または「リンカー部分」は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列における2つのドメインを接続するペプチドまたはポリペプチド配列(例えば、合成ペプチドまたはポリペプチド配列)を指す。
【0341】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーを、本開示の治療用タンパク質とアルブミンのような上記の異種部分との間に挿入することができる。ペプチドリンカーは、キメラポリペプチド分子に柔軟性をもたらすことができる。リンカーは、典型的には、切断されないが、このような切断が望ましい場合がある。一実施形態では、これらのリンカーは、プロセシング中に除去されない。
【0342】
本開示のキメラタンパク質中に存在することができるタイプのリンカーは、切断部位(すなわち、プロテアーゼ切断部位基質、例えば、第XIa因子、第Xa因子、またはトロンビン切断部位)を含み、その切断部位のN末端もしくはC末端のいずれかまたは両側に追加のリンカーを含むことができる、プロテアーゼで切断可能なリンカーである。これらの切断可能なリンカーは、本開示の構築物に組み込まれると、異種の切断部位を有するキメラ分子を生じる。
【0343】
一実施形態では、本開示の核酸分子によってコードされる治療用タンパク質は、単一のポリペプチド鎖に含まれるFc領域を形成するように、cscFcリンカーを介して連結された2つまたはそれ以上のFcドメインもしくはFc部分を含む。cscFcリンカーは、少なくとも1つの細胞内プロセシング部位、すなわち、細胞内酵素によって切断される部位に隣接している。少なくとも1つの細胞内プロセシング部位でポリペプチドが切断されると、少なくとも2本のポリペプチド鎖を含むポリペプチドが得られる。
【0344】
他のペプチドリンカーを、本開示の構築物において、例えば、凝固因子タンパク質をFc領域に接続するために、場合により使用することができる。本開示との関連で使用することができるいくつかの例示的なリンカーとして、例えば、下にさらに詳述されているGlySerアミノ酸を含むポリペプチドが挙げられる。
【0345】
一実施形態では、ペプチドリンカーは、合成、すなわち、天然に存在しないものである。一実施形態では、ペプチドリンカーは、アミノ酸からなる第1の直鎖状配列を、自然には連結されないかまたは自然には遺伝的に融合されないアミノ酸からなる第2の直鎖状配列に連結または遺伝的に融合するアミノ酸配列を含むペプチド(またはポリペプチド)(天然に存在することができるかまたは存在することができない)を含む。例えば、一実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチドの改変形態である(例えば、付加、置換または欠失のような突然変異を含む)天然に存在しないポリペプチドを含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在しないアミノ酸を含むことができる。別の実施形態では、ペプチドリンカーは、自然には生じない直鎖状配列で生じる天然に存在するアミノ酸を含むことができる。さらに別の実施形態では、ペプチドリンカーは、天然に存在するポリペプチド配列を含むことができる。
【0346】
例えば、ある特定の実施形態では、ペプチドリンカーを使用して、同一のFc部分に融合させ、それによって、ホモ二量体scFc領域を形成することができる。他の実施形態では、ペプチドリンカーを使用して、異なるFc部分(例えば、野生型Fc部分およびFc部分バリアント)に融合させ、それによって、ヘテロ二量体scFc領域を形成することができる。
【0347】
別の実施形態では、ペプチドリンカーは、gly-serリンカーを含むかまたはそれからなる。一実施形態では、scFcまたはcscFcリンカーは、免疫グロブリンヒンジおよびgly-serリンカーの少なくとも一部分を含む。本明細書で使用されるように、用語「gly-serリンカー」は、グリシン残基およびセリン残基からなるペプチドを指す。ある特定の実施形態では、前記gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの2つの他の配列の間に挿入することができる。他の実施形態では、gly-serリンカーは、ペプチドリンカーの別の配列の一端または両端に結合する。また他の実施形態では、2つまたはそれ以上のgly-serリンカーは、ペプチドリンカーに直列に組み込まれる。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)上流の少なくとも一部、ヒンジ領域(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4分子に由来する)中央の少なくとも一部、および一連のgly/serアミノ酸残基を含む。
【0348】
本開示のペプチドリンカーは、少なくとも1つのアミノ酸長であり、様々な長さである。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1から約50アミノ酸長である。この関連で使用する場合、用語「約」は、+/-2個のアミノ酸残基を示す。リンカー長は、正の整数でなければならないため、約1から約50アミノ酸長の長さは、1~3から48~52アミノ酸長の長さを意味する。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約10から約20アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15から約50アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約20から約45アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約15から約35または約20から約30アミノ酸長である。別の実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、50、60、70、80、90、100、500、1000または2000アミノ酸長である。一実施形態では、本開示のペプチドリンカーは、20または30アミノ酸長である。
【0349】
一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、または少なくとも100個のアミノ酸を含むことができる。他の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、または少なくとも1000個のアミノ酸を含むことができる。一部の実施形態では、ペプチドリンカーは、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1900、または2000個のアミノ酸を含むことができる。ペプチドリンカーは、1~5個のアミノ酸、1~10個のアミノ酸、1~20個のアミノ酸、10~50個のアミノ酸、50~100個のアミノ酸、100~200個のアミノ酸、200~300個のアミノ酸、300~400個のアミノ酸、400~500個のアミノ酸、500~600個のアミノ酸、600~700個のアミノ酸、700~800個のアミノ酸、800~900個のアミノ酸、または900~1000個のアミノ酸を含むことができる。
【0350】
ペプチドリンカーは、当技術分野で公知の技法を使用して、ポリペプチド配列に導入することができる。改変は、DNA配列解析によって確認することができる。プラスミドDNAを使用して、産生されるポリペプチドが安定して産生されるように宿主細胞を形質転換することができる。
【0351】
13.単量体-二量体ハイブリッド
一部の実施形態では、本開示の治療用タンパク質は、凝固因子を含む単量体-二量体ハイブリッド分子を含む。
【0352】
本明細書で使用される用語「単量体-二量体ハイブリッド」は、ジスルフィド結合によって互いに会合する第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖を含むキメラタンパク質を指し、第1の鎖は、凝固因子、例えば、FVIII、および第1のFc領域を含み、第2の鎖は、凝固因子を含まない第2のFc領域を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる。よって、単量体-二量体ハイブリッド構築物は、1つの凝固因子のみを有する単量体の態様、および2つのFc領域を有する二量体の態様を含むハイブリッドである。
【0353】
14.発現制御配列
一部の実施形態では、本開示の核酸分子は、少なくとも1つの発現制御配列をさらに含む。発現制御配列は、本明細書で使用されるように、プロモーター配列またはプロモーターとエンハンサーの組合せのような任意の調節ヌクレオチド配列であって、その配列が作動可能に連結するコード核酸の効率的な転写と翻訳を促す、配列である。例えば、本開示の核酸分子は、少なくとも1つの転写制御配列に作動可能に連結される。遺伝子発現制御配列は、例えば、構成的または誘導性プロモーターのような哺乳動物プロモーターまたはウイルスプロモーターである場合がある。
【0354】
哺乳動物の構成的プロモーターとして、これらに限定されないが、以下の遺伝子に関するプロモーター:ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、アデノシンデアミナーゼ、ピルベートキナーゼ、ベータアクチンプロモーター、および他の構成的プロモーターが挙げられる。真核細胞において構成的に機能する例示的なウイルスプロモーターとして、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス(例えば、SV40)、パピローマウイルス、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ラウス肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルスの長鎖末端反復配列(LTR)、および他のレトロウイルスからのプロモーター、ならびに単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが挙げられる。他の構成的プロモーターは、当業者に知られている。本開示の遺伝子発現配列として有用なプロモーターとして、誘導性プロモーターも挙げられる。誘導性プロモーターは、誘導剤の存在下で発現する。例えば、メタロチオネインプロモーターは、ある特定の金属イオンの存在下で誘導されて、転写および翻訳を促進する。他の誘導性プロモーターは、当業者に知られている。
【0355】
一実施形態では、本開示は、組織特異的プロモーターおよび/またはエンハンサーの制御下で、導入遺伝子を発現させることを含む。別の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、肝細胞、類洞細胞、および/または内皮細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。特定の一実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、内皮細胞における導入遺伝子の発現を選択的に増強する。ある特定の実施形態では、プロモーターまたは他の発現制御配列は、筋細胞、中枢神経系、眼、肝臓、心臓、またはこれらの任意の組合せにおける導入遺伝子の発現を選択的に増強する。肝特異的プロモーターの例として、これらに限定されないが、マウスチレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、およびマウスアルブミンプロモーターが挙げられる。特定の実施形態では、プロモーターは、mTTRプロモーターを含む。mTTRプロモーターは、R.H.Costaら、1986年、Mol. Cell. Biol. 6:4697頁に記載される。F8プロモーターは、FigueiredoおよびBrownlee、1995年、J. Biol. Chem. 270:11828~11838に記載される。一部の実施形態では、プロモーターは、肝特異的プロモーター(例えば、α1-アンチトリプシン(AAT))、筋特異的プロモーター(例えば、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、およびデスミン(DES))、合成プロモーター(例えば、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、およびtMCK)、およびこれらの任意の組合せから選択される。
【0356】
一実施形態では、プロモーターは、マウスチレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ1-アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、TTPp、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-アンチトリプシン(AAT)、筋クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、デスミン(DES)、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、およびtMCK、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターおよびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。
【0357】
1つまたはそれ以上のエンハンサーを使用して、発現レベルをさらに高めて、治療効能を達成することができる。1つまたはそれ以上のエンハンサーは、単独でまたは1つまたはそれ以上のプロモーターエレメントと一緒に提供することができる。典型的には、発現制御配列は、複数のエンハンサーエレメントおよび組織特異的プロモーターを含む。一実施形態では、エンハンサーは、α1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサーの1つまたはそれ以上の複製を含む(Rouetら、1992年、J. Biol. Chem. 267:20765~20773頁;Rouetら、1995年、Nucleic Acids Res. 23:395~404頁;Rouetら、1998年、Biochem. J. 334:577~584頁;Illら、1997年、Blood Coagulation Fibrinolysis 8:S23~S30頁)。別の実施形態では、エンハンサーは、EBP、DBP、HNF1、HNF3、HNF4、HNF6のような肝特異的転写因子結合部位に由来し、Enh1は、HNF1、(センス)-HNF3、(センス)-HNF4、(アンチセンス)-HNF1、(アンチセンス)-HNF6、(センス)-EBP、(アンチセンス)-HNF4(アンチセンス)を含む。
【0358】
特定の例では、本開示に有用なプロモーターは、配列番号69(すなわち、ETプロモーター)を含み、この配列は、GenBank番号AY661265としても公知である。Vignaら、Molecular Therapy 11(5):763頁(2005)も参照のこと。他の好適なベクターおよび遺伝子調節エレメントの例は、参照によってその全体として本明細書に組み入れるWO02/092134、EP1395293、または米国特許第6,808,905号、同第7,745,179号、もしくは同第7,179,903号に記載される。
【0359】
一実施形態では、本開示の核酸分子は、イントロン配列をさらに含む。一部の実施形態では、イントロン配列は、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列に対して5’に位置する。一部の実施形態では、イントロン配列は、天然に存在するイントロン配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、合成配列である。一部の実施形態では、イントロン配列は、天然に存在するイントロン配列に由来する。ある特定の実施形態では、イントロン配列は、SV40スモールTイントロンを含む。一実施形態では、イントロン配列は、配列番号115を含む。
【0360】
一部の実施形態では、核酸分子は、転写後調節エレメントをさらに含む。ある特定の実施形態では、転写後調節エレメントは、突然変異したウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。特定の一実施形態では、転写後調節エレメントは、配列番号120を含む。
【0361】
一部の実施形態では、核酸分子は、マイクロRNA(miRNA)結合部位を含む。一実施形態では、miRNA結合部位は、miR-142-3pに関するmiRNA結合部位である。他の実施形態では、miRNA結合部位は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、Rennieら、RNA Biol. 13(6):554~560頁(2016)に開示されているmiRNA結合部位、およびhttp://sfold.wadsworth.org/starmirDB.phpにおいて利用可能なSTarMirDBから選択される。
【0362】
一部の実施形態では、核酸分子は、1つまたはそれ以上のDNA核標的化配列(DTS)を含む。DTSは、このような配列を含有するDNA分子の、核内への移行を促進する。ある特定の実施形態では、DTSは、SV40エンハンサー配列を含む。ある特定の実施形態では、DTSは、c-Mycエンハンサー配列を含む。一部の実施形態では、DTSは、第1のITRと第2のITRの間にある。一部の実施形態では、DTSは、第1のITRに対して3’、治療用タンパク質に対して5’にある。他の実施形態では、DTSは、治療用タンパク質に対して3’および第2のITRに対して5’にある。
【0363】
一部の実施形態では、核酸分子は、3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、アクチンポリ(A)部位を含む。一実施形態では、3’UTRポリ(A)テールは、ヘモグロビンポリ(A)部位を含む。
【0364】
特定の一実施形態では、3’UTRポリ(A)テール配列は、配列番号122を含む。
【0365】
III.組織特異的発現
ある特定の実施形態では、例えば、凝固因子導入遺伝子に作動可能に連結される1つまたはそれ以上のmiRNA標的配列をベクター内に含むことが有用である。よって、本開示は、凝固因子ヌクレオチド配列に作動可能に連結されるか、またはそうでなければ、ベクター内に挿入される少なくとも1つのmiRNA配列標的も提供する。ベクターに含まれるmiRNA標的配列の2つ以上の複製によって、その系の有効性を高めることができる。異なるmiRNA標的配列も含まれる。例えば、2つ以上の導入遺伝子を発現するベクターは、2つ以上のmiRNA標的配列(同じであるかまたは異なる場合もある)の制御下で、導入遺伝子を有することができる。miRNA標的配列は、タンデムに存在することができるが、他の配置も含まれる。miRNA標的配列を含有する導入遺伝子発現カセットは、ベクター内にアンチセンス方向で挿入することもできる。アンチセンス方向は、ウイルス粒子の産生において、その発現を回避しなければ、プロデューサー細胞に対して毒性を示すことのある遺伝子産物の発現を回避するのに有用である場合がある。他の実施形態では、ベクターは、同じかまたは異なるmiRNA標的配列を1、2、3、4、5、6、7または8複製含む。しかしながら、ある特定の別の実施形態では、ベクターは、いずれのmiRNA標的配列も含まないことになる。miRNA標的配列を含むか否か(および何個のmiRNA標的配列を含むか)の選択は、意図する組織標的、所要の発現レベルなどの公知のパラメーターなどによって導き出される。
【0366】
一実施形態では、標的配列は、骨髄系コミット前駆細胞において、発現を最も有効にブロックするとともに、より初期のHSPCにおいて、発現を少なくとも部分的にブロックすることが報告されているmiR-223標的である。miR-223標的は、顆粒球、単球、マクロファージ、骨髄樹状細胞を含む分化した骨髄細胞における発現をブロックすることができる。miR-223標的は、リンパ球系統または赤血球系統における導入遺伝子の活発な発現に依存する遺伝子療法用途に好適である場合もある。miR-223標的は、ヒトHSCにおける発現も非常に有効にブロックすることができる。
【0367】
別の実施形態では、標的配列は、miR142標的(tccataaagt aggaaacact aca(配列番号43))である。一実施形態では、ベクターは、miR-142標的配列を4複製含む。ある特定の実施形態では、miR-142(142T)のような造血特異的マイクロRNAの相補配列を、ベクター、例えば、レンチウイルスベクター(LV)の3’非翻訳領域に組み込み、導入遺伝子のコードする転写物がmiRNA媒介性下方調節を受けやすくする。この方法によって、非造血細胞における導入遺伝子の発現を保持したまま、造血系統抗原提示細胞(APC)において、導入遺伝子の発現を防止することができる(Brownら、Nat Med 2006年)。この戦略によって、導入遺伝子の発現に関するストリンジェントな転写後制御が可能となるため、導入遺伝子の安定な送達と長期的な発現が可能となる。一部の実施形態では、miR-142の調節により、形質導入された細胞の免疫媒介性クリアランスが防止され、および/または抗原特異的調節T細胞(T reg)が誘導されて、導入遺伝子のコードする抗原に対する強固な免疫寛容が媒介される。
【0368】
一部の実施形態では、標的配列は、miR181標的である。Chen C-ZおよびLodish H、Seminars in Immunology(2005)17(2):155~165には、マウス骨髄内のB細胞で特異的に発現するmiRNAであるmiR-181が開示されている(ChenおよびLodish、2005年)。いくつかのヒトmiRNAが、白血病に関連することも開示されている。
【0369】
標的配列は、miRNAに完全にまたは部分的に相補的である場合がある。用語「完全に相補的な」は、標的配列が、それを認識するmiRNAの配列に対して100%相補的である核酸配列を有することを意味する。用語「部分的に相補的な」は、標的配列が、それを認識するmiRNAの配列に対して一部分のみ相補的であり、それによって、部分的に相補的な配列が、依然として、miRNAによって認識されることを意味する。換言すると、本開示の関連において、部分的に相補的な標的配列は、対応するmiRNAを認識するのに有効であり、そのmiRNAを発現する細胞における導入遺伝子の発現を防止または低減するのに有効である。miRNA標的配列の例は、参照によってその全体として本明細書に組み入れる、WO2007/000668、WO2004/094642、WO2010/055413、またはWO2010/125471に記載されている。
【0370】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝臓を標的とする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、肝細胞を標的とする。他の実施形態では、導入遺伝子の発現は、内皮細胞を標的とする。特定の一実施形態では、導入遺伝子の発現は、内因性FVIIIを自然に発現した任意の組織を標的とする。
【0371】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、中枢神経系を標的とする。ある特定の実施形態では、導入遺伝子の発現は、神経細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、求心性神経を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、遠心性神経を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、介在神経細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、グリア細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、星状細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、乏突起膠細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、ミクログリアを標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、上衣細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、シュワン細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、衛星細胞を標的とする。
【0372】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、筋細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、平滑筋を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、心筋を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、骨格筋を標的とする。
【0373】
一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、眼を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、光受容細胞を標的とする。一部の実施形態では、導入遺伝子の発現は、網膜神経節細胞を標的とする。
【0374】
IV.宿主細胞
本開示は、本開示の核酸分子またはベクターを含む宿主細胞も提供する。本明細書で使用されるように、用語「形質転換」は、広い意味で、遺伝型を変化させ、その結果、レシピエント細胞を変化させる、レシピエント宿主細胞へのDNAの導入を指す。
【0375】
「宿主細胞」とは、組換えDNA技法を用いて構築され、少なくとも1つの異種遺伝子をコードするベクターで形質転換した細胞を指す。本開示の宿主細胞は、好ましくは、哺乳動物起源のものであり;最も好ましくは、ヒトまたはマウス起源のものである。当業者には、目的に最も適する特定の宿主細胞株を優先的に決定する能力がある。例示的な宿主細胞株として、これらに限定されないが、CHO、DG44およびDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣株、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)、BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、P3.times.63-Ag3.653(マウス骨髄腫)、BFA-1C1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、PER.C6(登録商標)、NS0、CAP、BHK21、およびHEK293(ヒト腎臓)が挙げられる。特定の一実施形態では、宿主細胞は、CHO細胞、HEK293細胞、BHK21細胞、PER.C6(登録商標)細胞、NS0細胞、CAP細胞およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。一部の実施形態では、本開示の宿主細胞は、昆虫起源のものである。特定の一実施形態では、宿主細胞は、SF9細胞である。宿主細胞株は、典型的には、商業サービスのAmerican Tissue Culture Collection、または公開された文献から入手可能である。
【0376】
宿主細胞への、本開示の核酸分子またはベクターの導入は、当業者に周知の様々な技法によって行うことができる。これらの技法として、これらに限定されないが、トランスフェクション(電気泳動および電気穿孔を含む)、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、エンベロープ化DNAとの細胞融合、マイクロインジェクション、およびインタクトウイルスによる感染が挙げられる。Ridgway、A.A.G. 「Mammalian Expression Vectors」 第24.2章、470~472頁 Vectors、RodriguezおよびDenhardt編(Butterworths、Boston、Mass. 1988)を参照のこと。最も好ましくは、宿主へのプラスミドの導入は、電気穿孔によるものである。形質転換した細胞を、軽鎖と重鎖の産生に適する条件下で成長させ、重鎖タンパク質および/または軽鎖タンパク質の合成についてアッセイする。例示的なアッセイ技法として、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、放射線免疫アッセイ(RIA)、または蛍光活性化セルソーター解析(FACS)、免疫組織化学などが挙げられる。
【0377】
本開示の単離された核酸分子またはベクターを含む宿主細胞を、適切な成長培地で成長させる。本明細書で使用されるように、用語「適切な成長培地」は、細胞の成長に必要な栄養素を含有する培地を意味する。細胞の成長に必要な栄養素として、炭素源、窒素源、必須アミノ酸、ビタミン、ミネラル、および成長因子を挙げることができる。場合によって、培地は、1つまたはそれ以上の選択因子を含有することができる。場合によって、培地は、仔ウシ血清またはウシ胎仔血清(FCS)を含有することができる。一実施形態では、培地は、IgGを実質的に含有しない。成長培地は、一般的には、例えば、薬物選択またはDNA構築物上の選択可能なマーカーもしくはDNA構築物とコトランスフェクションした選択可能なマーカーによって相補される必須栄養素の欠損によって、DNA構築物を含有する細胞を選択することになる。培養哺乳動物細胞は、一般的には、市販の血清含有培地または無血清培地(例えば、MEM、DMEM、DMEM/F12)で増殖させる。一実施形態では、培地は、CDoptiCHO(Invitrogen、Carlsbad、CA)である。別の実施形態では、培地は、CD17(Invitrogen、Carlsbad、CA)である。使用される特定の細胞株に適する培地の選択は、当業者のレベルの範囲内である。
【0378】
V.ポリペプチドの調製
本開示は、本開示の核酸分子によってコードされるポリペプチドも提供する。他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の核酸分子を含むベクターによってコードされる。さらに他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、本開示の核酸分子を含む宿主細胞によって産生される。
【0379】
他の実施形態では、本開示は、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの生成方法であって、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドが産生される条件下で、本開示の宿主細胞を培養することと、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドを回収することとを含む、方法も提供する。一部の実施形態では、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの発現は、参照ヌクレオチド配列(例えば、配列番号16:親FVIII遺伝子配列)を含むこと以外は同じ条件下で培養される宿主細胞よりも増加する。
【0380】
他の実施形態では、本開示は、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの発現を増加させる方法であって、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドが核酸分子によって発現される条件下で、本開示の宿主細胞を培養することを含み、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの発現が、参照核酸分子(例えば、配列番号16:親FVIII遺伝子配列)を含む同じ条件下で培養される宿主細胞よりも増加する、方法を提供する。
【0381】
他の実施形態では、本開示は、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの収量の改善方法であって、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドが、本明細書に開示されている核酸分子によって産生される条件下で、宿主細胞を培養することを含み、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドの収量が、参照核酸配列(例えば、配列番号16:親FVIII遺伝子配列)を含む同じ条件下で培養される宿主細胞よりも増加する、方法を提供する。
【0382】
本開示の治療用タンパク質、例えば、凝固因子は、げっ歯類、ヤギ、ヒツジ、ブタ、またはウシのようなトランスジェニック動物において合成することができる。用語「トランスジェニック動物」は、それらのゲノムに外来遺伝子が組み込まれた、非ヒト動物を指す。この遺伝子は、生殖系組織に存在するので、親から子孫に伝わる。外因性遺伝子は、単一細胞胚に導入される(Brinsterら 1985年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:4438頁)。免疫グロブリン分子を産生するトランスジェニックを含むトランスジェニック動物の生産方法は、当技術分野で公知である(Wagnerら 1981年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:6376頁;McKnightら 1983年、Cell 34:335頁;Brinsterら 1983年、Nature 306:332頁;Ritchieら 1984年、Nature 312:517頁;Baldassarreら 2003年、Theriogenology 59:831頁;Roblら 2003年、Theriogenology 59:107頁;Malassagneら 2003年、Xenotransplantation 10(3):267頁)。
【0383】
VII.医薬組成物
本開示の核酸分子、核酸分子によってコードされるポリペプチド、ベクター、または宿主細胞を含有する組成物は、好適な、薬学的に許容される担体を含有することができる。例えば、この組成物は、活性化合物を処理して、作用部位への送達用に設計された調製物にするのを容易にする賦形剤および/または補助剤を含有することができる。
【0384】
一実施形態では、本開示は、(a)本明細書に開示されている核酸分子、ベクター、ポリペプチド、または宿主細胞;および(b)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を対象とする。
【0385】
一部の実施形態では、医薬組成物は、送達剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、送達剤は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。他の実施形態では、医薬組成物は、リポソーム、他のポリマー分子、およびエキソソームをさらに含む。
【0386】
医薬組成物は、ボーラス注射による非経口投与(すなわち、静脈内、皮下、または筋肉内投与)用に製剤化することができる。注射用製剤は、単位剤形で、例えば、アンプルまたは複数回用量容器内に保存剤を加えた状態で供給することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁剤、液剤、または乳剤のような形態をとり、懸濁化剤、安定化剤および/または分散化剤のような製剤化剤を含有する場合がある。あるいは、活性成分は、好適なビヒクル、例えば、パイロジェンフリー水で構成される粉末形態である場合がある。
【0387】
非経口投与用の好適な製剤として、水溶性形態、例えば、水溶性塩である、活性化合物の水性液剤も挙げられる。さらに、適切な油性注射用懸濁剤としての活性化合物の懸濁剤を投与することができる。好適な親油性溶媒またはビヒクルとして、脂肪油、例えば、ゴマ油、または合成脂肪酸エステル、例えば、エチルオレエートまたはトリグリセリドが挙げられる。水性注射用懸濁剤は、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよびデキストランを含む、懸濁剤の粘度を向上させる物質を含有することができる。場合によって、懸濁剤は、安定剤も含有することができる。リポソームを使用して、細胞または間質腔への送達用に、本開示の分子を封入することもできる。例示的な薬学的に許容される担体は、生理学的に適合可能な溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張化剤および吸収遅延剤、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセリン、エタノールなどである。一部の実施形態では、組成物は、等張化剤、例えば、糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含む。他の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される物質(湿潤剤など)または活性成分の貯蔵寿命もしくは有効性を向上させる少量の補助物質(湿潤剤もしくは乳化剤、保存剤または緩衝剤など)を含む。
【0388】
本開示の組成物は、例えば、液体(例えば、注射用溶液および注入用溶液)、分散液、懸濁液、半固体および固体の剤形を含む、種々の形態である。好ましい形態は、投与方法と治療用途に応じて変わる。
【0389】
組成物は、液剤、マイクロエマルジョン剤、分散剤、リポソーム、または高い薬物濃度に適する他の規則構造体として製剤化することができる。滅菌注射用液剤は、必要に応じて、上で列挙した成分のうちの1つまたは組合せとともに、活性成分を所要量で適切な溶媒中に投入し、ろ過滅菌することによって調製することができる。一般的に、分散剤は、塩基性分散媒と上で列挙した他の成分のうちの必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに活性成分を投入することによって調製される。滅菌注射用液剤を調製するための滅菌散剤の場合には、好ましい調製方法は、事前に滅菌ろ過した溶液から、活性成分といずれかの所望の追加成分との粉末をもたらす真空乾燥と凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合には所要の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。注射用組成物の吸収時間の延長は、吸収を遅延させる作用剤、例えば、モノステアレート塩およびゼラチンを組成物中に含むことによって実現することができる。
【0390】
活性成分は、放出制御製剤または放出制御デバイスを用いて製剤化することができる。このような製剤およびデバイスの例として、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達系が挙げられる。生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンハイドライド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用することができる。このような製剤およびデバイスの調製方法は、当技術分野で公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems、J. R. Robinson編、Marcel Dekker,Inc.、New York、1978年を参照のこと。
【0391】
注射用デポー製剤は、ポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性ポリマー内の薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作製することができる。薬物とポリマーとの比率、および用いられるポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の例示的な生分解性ポリマーは、ポリオルトエステルおよびポリアンハイドライドである。注射用デポー製剤は、薬物をリポソームまたはマイクロエマルジョン中に捕捉することによっても調製することができる。
【0392】
補足的な活性化合物を組成物中に組み込むことができる。一実施形態では、本開示の核酸分子は、凝固因子、またはそのバリアント、断片、アナログもしくは誘導体とともに製剤化される。例えば、凝固因子として、これらに限定されないが、第V因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第XII因子、第XIII因子、プロトロンビン、フィブリノーゲン、フォンビルブランド因子またはこれらのいずれかの組換え可溶性組織因子(rsTF)もしくは活性化形態が挙げられる。止血剤の凝固因子として、抗線溶薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0393】
投与レジメンを調整して、最適な所望の応答をもたらすことができる。例えば、単回ボーラス投与を行うことも、経時的に、数回の分割投与を行うことも、または治療状況の緊急性によって示されるのに応じて、用量を比例的に減少または増加させることもできる。投与のし易さおよび投薬量の均一化のために、非経口組成物を投薬量単位形態で製剤化するのが有益である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co.、Easton、Pa. 1980年)を参照のこと。
【0394】
活性化合物に加えて、液体剤形は、水、エチルアルコール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、グリセリン、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルのような不活性成分を含有することができる。
【0395】
好適な医薬担体の非限定例は、E.W.MartinによるRemington’s Pharmaceutical Sciencesにも記載されている。賦形剤のいくつかの例として、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ナトリウムステアレート、グリセリンモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、グリセリン、プロピレン、グリコール、水、エタノールなどが挙げられる。組成物は、pH緩衝試薬、および湿潤剤または乳化剤も含有することができる。
【0396】
経口投与用には、医薬組成物は、従来の手段によって調製した錠剤またはカプセル剤の形態をとることができる。組成物は、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として調製することもできる。液体は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油)、および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を含むことができる。調製剤は、矯味矯臭剤、着色剤および甘味剤も含むことができる。あるいは、組成物は、水または別の好適なビヒクルで構成するための乾燥生成物として供給することができる。
【0397】
口腔内投与用では、組成物は、従来のプロトコールに従って、錠剤またはロゼンジ剤の形態をとることができる。
【0398】
吸入による投与用では、本開示に従って使用するための化合物は、利便的には、賦形剤を含むか含まないかにかかわらず、霧状化エアロゾル剤の形態または場合によって、噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素もしくは他の好適な気体とともに、圧縮パックもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。加圧エアロゾル剤の場合には、投薬量単位は、バルブを搭載して定量した量を送達することによって決定することができる。化合物とラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、例えば、吸入器または注入器において使用するためのゼラチンのカプセル剤およびカートリッジを製剤化することができる。
【0399】
医薬組成物は、直腸投与用に、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含有する坐剤または保持型浣腸剤として製剤化することもできる。
【0400】
一部の実施形態では、組成物は、局所投与、眼内投与、非経口投与、髄腔内投与、硬膜下投与および経口投与からなる群から選択される経路で投与される。非経口投与は、静脈内投与または皮下投与である場合がある。
【0401】
VIII.処置方法
一部の実施形態では、核酸分子は、第1のITR、第2のITR、および遺伝子カセットを含み、遺伝子カセットは、凝固因子を含み、核酸分子を使用して、それを必要とする対象における出血性疾患または状態を処置する。出血性疾患または状態は、出血性血液凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉内への大出血、口腔大出血、外傷、頭部外傷、消化器系出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内出血、腹膜後隙内出血、腸腰筋外筒内出血およびこれらの任意の組合せからなる群から選択される。さらに他の実施形態では、対象は、手術を受けることが予定されている。また他の実施形態では、処置は、予防的であるかまたは要求に応じるものである。
【0402】
本開示は、本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを、それを必要とする対象に投与することを含む、出血性障害を処置する方法を提供する。一部の実施形態では、出血性障害は、凝固因子、例えば、FVIIIの欠損によって特徴付けられる。一部の実施形態では、出血性障害は、血友病である。一部の実施形態では、出血性障害は、血友病Aである。出血性障害を処置する方法の一部の実施形態では、投与の24時間後の血漿中凝固因子、例えば、FVIIIの活性が、参照核酸分子(例えば、配列番号16、親FVIII遺伝子配列)、参照核酸分子を含むベクター、または参照核酸分子によってコードされるポリペプチドを投与された対象よりも向上する。
【0403】
本開示は、治療有効量の、本開示の単離された核酸分子または本開示の核酸分子によってコードされる凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドを投与することを含む、対象における止血障害を処置、軽快、または防止する方法にも関する。単離された核酸分子またはコードされたポリペプチドによる処置、軽快、および防止は、バイパス治療である場合がある。バイパス治療を受ける対象は、凝固因子、例えば、FVIIIに対するインヒビターをすでに発現しているか、または凝固因子インヒビターを発現することを条件とする場合がある。
【0404】
本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、フィブリン血餅の形成を促すことによって、止血障害を処置または防止する。本開示の核酸分子によってコードされる、凝固因子、例えば、FVIIIの活性を有するポリペプチドは、凝固カスケードのメンバーを活性化することができる。凝固因子は、外因経路、内因経路またはこれらの両方に関与することができる。
【0405】
本開示の核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを使用して、凝固因子を用いて処置可能であることが知られている止血障害を処置することができる。本開示の方法を使用して処置することができる止血障害として、これらに限定されないが、血友病A、血友病B、フォンビルブランド病、第XI因子欠損(PTA欠損)、第XII因子欠損、フィブリノーゲン、プロトロンビン、第V因子、第VII因子、第X因子、または第XIII因子の欠損または構造的異常、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉への大出血、口腔大出血、外傷、頭部の外傷、胃腸出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、腹膜後隙内の出血、および腸腰筋鞘内の出血が挙げられる。
【0406】
一部の実施形態では、止血障害は、遺伝性障害である。一実施形態では、対象は、血友病Aである。他の実施形態では、止血障害は、凝固因子の欠損の結果である。他の実施形態では、止血障害は、FVIIIの欠損の結果である。他の実施形態では、止血障害は、異常なFVIII凝固因子の結果である場合がある。
【0407】
別の実施形態では、止血障害は、後天性障害である場合がある。後天性障害は、裏に潜む二次的な疾患または状態によるものである場合がある。無関連の状態は、一例として、これらに限定されないが、がん、自己免疫疾患、または妊娠である場合がある。後天性障害は、加齢によるものであるか、または裏に潜む二次的な障害を処置するための薬物治療(例えば、がんへの化学療法)によるものである場合がある。
【0408】
本開示は、止血障害または止血障害の獲得の原因となる二次的な疾患もしくは状態を有さない対象を処置する方法にも関する。よって、本開示は、治療有効量の、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを投与することを含む、一般的な止血剤を必要とする対象を処置する方法に関する。例えば、一実施形態では、一般的な止血剤を必要とする対象は、手術を受けているか、または手術を受けようとしている。本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、手術の前または後に、予防として投与することができる。本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、手術の間または後に投与して、急性出血エピソードを制御することができる。手術として、これらに限定されないが、肝移植、肝切除、または幹細胞移植を挙げることができる。
【0409】
別の実施形態では、本開示の単離された核酸分子、ベクターまたはポリペプチドを使用して、急性出血エピソードを有する対象であって、止血障害を有さない対象を処置することができる。急性出血エピソードは、無制御な出血を引き起こす重大な外傷、例えば、手術、自動車事故、創傷、裂傷 銃創、またはいずれかの他の外傷事象に起因する場合がある。
【0410】
単離された核酸分子、ベクター、またはタンパク質を使用して、止血障害を有する対象を予防的に処置することができる。単離された核酸分子、ベクター、またはタンパク質を使用して、止血障害を有する対象の急性出血エピソードを処置することができる。
【0411】
別の実施形態では、本開示の単離された核酸分子またはベクターを投与することによる凝固因子タンパク質の発現は、対象における免疫応答を誘導しない。一部の実施形態では、免疫応答は、凝固因子に対する抗体の発生を含む。一実施形態では、免疫応答は、FVIIIに対する抗体の発生を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、サイトカインの分泌を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、B細胞、T細胞、またはB細胞とT細胞の両方の活性化を含む。一部の実施形態では、免疫応答は、阻害性免疫応答であり、対象における免疫応答は、免疫応答を発生していない対象における凝固因子の活性に対して、凝固因子タンパク質の活性を低下させる。ある特定の実施形態では、本開示の単離された核酸分子またはベクターを投与することによる凝固因子タンパク質の発現により、凝固因子タンパク質または単離された核酸分子またはベクターから発現される凝固因子タンパク質に対する阻害性免疫応答が防止される。
【0412】
一部の実施形態では、止血を促進する少なくとも1つの他の薬剤と組み合わせて、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはタンパク質組成物が投与される。前記他の薬剤は、凝固活性が示されている治療において、止血を促進する。一例として、これらに限定されないが、止血剤として、FV、FVII、FIX、FX、FXI、FXII、FXIII、プロトロンビン、もしくはフィブリノーゲンまたはこれらのいずれかの活性化形態を挙げることができる。凝固因子または止血剤として、抗線溶薬、例えば、イプシロン-アミノカプロン酸、トラネキサム酸も挙げることができる。
【0413】
本開示の一実施形態では、組成物(例えば、単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチド)は、対象に投与した場合に、凝固因子が活性化可能な形態で存在する組成物である。このような活性化可能な分子を、対象に投与後、in vivoにおいて、凝固部位で活性化することができる。
【0414】
単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、またはいずれかの粘膜表面を介した投与、例えば、経口投与、舌下投与、口腔内投与、舌下投与、経鼻投与、直腸投与、膣内投与または経肺経路を介した投与を行うことができる。凝固因子タンパク質は、キメラタンパク質の所望の部位への徐放を可能とするバイオポリマー固体支持体に埋め込まれるかまたは連結される場合がある。
【0415】
経口投与用に、医薬組成物は、従来の手段によって調製された錠剤またはカプセル剤の形態をとることができる。組成物は、液剤、例えば、シロップ剤または懸濁剤として調製することもできる。液剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ剤、セルロース誘導体または水素添加食用脂)、乳化剤(レシチンまたはアカシア)、非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコール、または分別植物油)、および保存剤(例えば、メチルもしくはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を含むことができる。調製剤は、矯味矯臭剤、着色剤および甘味剤も含むことができる。あるいは、組成物は、水または別の好適なビヒクルで構成するための乾燥生成物として供給することができる。
【0416】
口腔内および舌下投与用に、組成物は、従来のプロトコールに従って、錠剤、ロゼンジ剤または速溶性フィルムの形態をとることができる。
【0417】
吸入による投与用に、本開示に従って使用するための凝固因子活性を有するポリペプチドは、利便的に、好適な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロメタン、二酸化炭素または他の好適な気体とともに、圧縮パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー(例えば、PBS中)の形態で送達される。加圧エアロゾル剤の場合には、投薬量単位は、バルブを搭載して定量した量を送達することによって決定することができる。化合物とラクトースまたはデンプンのような好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、例えば、吸入器または注入器において使用するためのゼラチンのカプセル剤およびカートリッジを製剤化することができる。
【0418】
一実施形態では、単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドの投与経路は、非経口である。本明細書で使用されるように、用語非経口は、静脈内投与、動脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、直腸投与または膣内投与を含む。静脈内形態の非経口投与が好ましい。これら全ての投与形態は、明らかに、本開示の範囲内にあることが企図されているが、投与のための形態は、注射用液剤、特に、静脈内もしくは動脈内注射または点滴用の液剤となる。通常、好適な注射用医薬組成物は、緩衝剤(例えば、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤またはクエン酸緩衝剤)、界面活性剤(例えばポリソルベート)、場合によって安定化剤(例えばヒトアルブミン)などを含むことができる。しかしながら、本発明の教示と適合する他の方法では、単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、有害な細胞集団の部位に直接送達することによって、治療剤への疾患組織の曝露を増大することができる。
【0419】
非経口投与用調製剤として、滅菌水性もしくは非水性液剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられる。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油など)、および注射用有機エステル(エチルオレエートなど)である。水性担体として、水、アルコール溶液/水溶液、乳剤または懸濁液(生理食塩水および緩衝化媒体を含む)が挙げられる。本開示では、薬学的に許容される担体として、これらに限定されないが、0.01~0.1M、好ましくは0.05Mのリン酸緩衝剤または0.8%生理食塩水が挙げられる。他の一般的な非経口ビヒクルとして、リン酸ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとして、流体および栄養補給液、電解質補液(リンゲルデキストロースベースのものなど)などが挙げられる。例えば、抗微生物剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどのような保存剤および他の添加剤も存在することができる。
【0420】
さらに詳細には、注射用途に好適な医薬組成物として、滅菌水溶液剤(水溶性の場合)または分散液剤および滅菌注射用液剤もしくは分散液剤の用時調製用の滅菌粉末が挙げられる。このような場合には、組成物は、無菌でなければならず、容易に注射可能な程度の流体でなければならない。医薬組成物は、製造条件および保管条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用から保護するのが好ましい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの好適な混合物を含有する溶媒または分散媒である場合がある。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散剤の場合には所要の粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0421】
医薬組成物は、直腸投与用に、例えば、ココアバターまたは他のグリセリドのような従来の坐剤基剤を含有する坐剤または保持型浣腸剤として製剤化することもできる。
【0422】
状態を処置するための、本開示の組成物の有効用量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬品、および処置が予防的なものであるか治療的なものであるかを含む多くの異なる要因に応じて変化する。通常、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含む非ヒト哺乳動物も処置することができる。当業者に知られている常法を使用して、処置投薬量を用量設定して、安全性および効能を最適化することができる。
【0423】
本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドは、場合によって、処置(例えば、予防的処置または治療的処置)を必要とする障害または状態の処置に有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。
【0424】
本明細書で使用されるように、補助療法と併せてまたは組み合わせて、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを投与することは、療法と開示されているポリペプチドを順次に、同時に、同域に、併用して、共存してまたは同時期に投与または適用することを意味する。処置の全体的有効性を増強するために、併用療法レジメンの各種成分の投与または適用のタイミングを決定することができることが、当業者に認識されるであろう。当業者(例えば、医師)は、過度の実験なしに、選択された補助療法と本明細書の教示に基づき、有効な併用療法レジメンを容易に識別することができるであろう。
【0425】
さらに、(例えば、併用療法レジメンを提供するために)1つの薬剤または複数の薬剤と併せてまたは組み合わせて、本開示の単離された核酸分子、ベクター、またはポリペプチドを使用することができることは明らかであろう。本開示のポリペプチドまたはポリヌクレオチドと組み合わせることができる例示的な薬剤として、治療される特定の障害に対する最新の標準ケアを表す薬剤が挙げられる。このような薬剤は、本質的に化学的または生物学的である場合がある。用語「生物学的」または「生物学的薬剤」は、治療剤としての使用を意図されている、生物および/またはそれらの産物から作製される任意の薬学的に活性な薬剤を指す。
【0426】
本開示のポリヌクレオチドまたはポリペプチドと組み合わせて使用される薬剤の量は、対象によって変化するかまたは当技術分野で公知の事象に従って投与することができる。例えば、Bruce A Chabnerら、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of TherapeuticsにおけるAntineoplastic Agents、1233~1287頁(Joel G.Hardmanら編、第9版 1996年)を参照のこと。別の実施形態では、このような薬剤は、標準ケアと整合する量で投与される。
【0427】
一実施形態では、本明細書に開示されている核酸分子および核酸分子を、それを必要とする対象に投与するための使用説明書を含むキットも、本明細書に開示されている。別の実施形態では、本発明において提供される核酸分子の産生のためのバキュロウイルス系が、本明細書に開示されている。核酸分子は、昆虫細胞において産生される。別の実施形態では、発現構築物に関するナノ粒子送達系が提供される。発現構築物は、本明細書に開示されている核酸分子を含む。
【0428】
IX.遺伝子療法
本開示のある特定の態様は、本開示の単離された核酸分子を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象において、遺伝構築物を発現する方法を提供する。一部の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子を、それを必要とする対象に投与することを含む、対象において、ポリペプチドの発現を増加させる方法を提供する。他の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子、例えば、miRNAを含む核酸配列を、それを必要とする対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、ポリペプチドの発現をモジュレートする方法を提供する。一部の態様では、本開示は、本開示の単離された核酸分子、例えば、miRNAを含む核酸配列を、対象に投与することを含む、それを必要とする対象において、標的遺伝子の発現を下方調節する方法を提供する。
【0429】
これらに限定されないが、血友病Aを含む、種々の状態に対して考え得る処置として、体細胞遺伝子療法が探求されている。ベクターの単回投与後、凝固因子、例えば、FVIIIの継続的な内因的産生を介して、血友病を治癒するその潜在能力のために、遺伝子療法は、血友病に対する特に魅力的な処置である。その臨床症状が、全体として、血漿においてわずかな量(200ng/ml)で循環する単一の遺伝子産物(例えば、FVIII)の欠如に起因するため、血友病Aは、遺伝子置き換え手法にかなり適している。
【0430】
本開示の凝固因子タンパク質は、哺乳動物、例えば、ヒトの患者において、in vivoで産生させることができる。出血凝固障害、関節血症、筋肉出血、口腔出血、大出血、筋肉への大出血、口腔大出血、外傷、頭部の外傷、胃腸出血、頭蓋内大出血、腹腔内大出血、胸腔内大出血、骨折、中枢神経系出血、咽頭後隙内の出血、腹膜後隙内の出血、および腸腰筋鞘内の出血からなる群から選択される出血性疾患または障害の処置に対する遺伝子療法による手法を使用することは、治療上、有益であろう。一実施形態では、出血性疾患または障害は、血友病である。別の実施形態では、出血性疾患または障害は、血友病Aである。
【0431】
他の状態も、本明細書に開示されている核酸分子を使用する処置に対して好適である。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、筋肉、中枢神経系(CNS)、眼、肝臓、心臓、腎臓、膵臓、肺、皮膚、膀胱、泌尿器、またはこれらの任意の組合せから選択される標的器官に影響を及ぼす疾患または状態を処置するために使用される。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)、XLMTM(X連鎖性筋細管ミオパチー)、パーキンソン、SMA(脊髄性筋萎縮症)、フリードライヒ運動失調症、GUCY2D-LCA(レーバー先天黒内障)、XLRS(X-連鎖性網膜分離症)、AMD(加齢黄斑変性症)、ACHM(色覚異常)、RPF65に媒介されるIRDから選択される疾患または状態を処置するために使用される(表9)。
【0432】
【表26】
【表27】
【0433】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、リソソーム蓄積症を処置するために使用される。一部の実施形態では、リソソーム蓄積症は、MLD(異染性白質ジストロフィー)、MPS(ムコ多糖症)、PKU(フェニルケトン尿症)、ポンペ糖原病II型、またはこれらの任意の組合せから選択される。
【0434】
一部の実施形態では、本明細書に記載の方法は、マイクロRNA(miRNA)療法において使用される。一部の実施形態では、miRNAは、遺伝子またはタンパク質の過剰発現によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、タンパク質の蓄積によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、遺伝子またはタンパク質の誤発現によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、突然変異体の遺伝子の発現によって引き起こされる状態を処置する。一部の実施形態では、miRNAは、異種遺伝子の発現によって引き起こされる状態を処置する。ある特定の実施形態では、miRNA療法によって、ALS(筋萎縮性側索硬化症)、ハンチントン病、AdRP(常染色体優性網膜色素変性症)、およびこれらの任意の組合せから選択される状態が処置される。ある特定の実施形態では、本開示の方法は、本明細書に開示されている核酸分子を投与することによって、ALSを標的とすること、処置することを含み、核酸分子が、miRNAをコードする遺伝子カセットを含み、miRNAがSOD1の発現を標的とする。ある特定の実施形態では、miRNAは、Dirren ら、Annals of Clinical and Translational Neurology 2(2):167~84頁(2015年2月)に開示されている人工的miRNAであるmiR SOD1を含む。SOD1遺伝子の突然変異は、遺伝性ALSの場合の約20%を占める。野生型SOD1は、神経培養において抗アポトーシス特性を実証したが、突然変異体のSOD1は、脊髄のミトコンドリアにおけるアポトーシスを促進するが、肝臓のミトコンドリアにおいては促進しない(突然変異体のSOD1が両者において等しく発現されるにもかかわらず)。突然変異したSOD1の発現を下方調節することにより、ALSにおける運動神経細胞変性を阻害させる。
【0435】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、本明細書に開示されている核酸分子を投与することによって、ハンチントン病を標的とすること、処置することを含み、核酸分子は、miRNAをコードする遺伝子カセットを含み、miRNAは、HTTの発現を標的とする。ある特定の実施形態では、miRNAは、Eversら、Molecular Therapy 26(9):1~15頁(2018年6月に印刷に先立って電子的に公開された)に開示されているmiHTTにより操作されたmiRNAを含む。ハンチントン病は、正常範囲を超える遺伝子の繰り返しセクションの長さによって引き起こされるいくつかのトリヌクレオチドリピート障害のうちの1つである。HTTは、3つのDNA塩基-シトシン-アデニン-グアニンの配列 トリヌクレオチドリピートとして知られている(CAG)-複数回繰り返し(すなわち、CAGCAGCAG...)を含有する。CAGは、アミノ酸であるグルタミンに関する3文字遺伝子コード(コドン)であり、よって、一連のこれらの繰り返しにより、ポリグルタミン鎖(またはポリQ鎖)、および遺伝子の繰り返し部分である、ポリQ領域として知られるグルタミン鎖の産生がもたらされる。一般的に、ヒトは、細胞質タンパク質であるハンチンチンの産生をもたらすポリQ領域における36より少ないグルタミンの繰り返しを有する。しかしながら、36またはそれ以上のグルタミンの配列は、異なる特徴を有するタンパク質の産生をもたらす。この変更された形態は、突然変異体のハンチンチン(mHTT)と称され、ある特定のタイプの神経細胞の崩壊速度を増加させる。一般的に、CAGの繰り返し数は、このプロセスが影響を及ぼされる程度に関連し、症状の発症年齢の変動の約60%を占める。残りの変動は、環境とハンチントン病のメカニズムを改変する他の遺伝子に起因する。36~39の繰り返しにより、症状の非常に遅い発症とよりゆっくりとした進行を伴う、疾患の浸透形態の低減をもたらす。一部の場合には、発症が非常に遅く、症状は気付かれない場合もある。非常に多い繰り返し数を有するハンチントン病は十分に浸透し、20歳より下の年齢でも起こる場合があり、その場合、若年性ハンチントン病、無動-筋強剛、またはウエストファールバリアントハンチントン病と称される。これは、ハンチントン病キャリアの約7%を占める。
【0436】
ある特定の実施形態では、本開示の方法は、本明細書に開示されている核酸分子を投与することによって、常染色体優性網膜色素変性症(AdRP)を処置することを含み、核酸分子は、miRNAをコードする遺伝子カセットを含み、miRNAは、RHO(ロドプシン)の発現を標的とする。ある特定の実施形態では、miRNAは、miR-708を含む(Behrmanら、JCB 192(6):919~27頁(2011)を参照のこと)。網膜色素変性症の原因であるRHO遺伝子突然変異のほとんどは、ロドプシンタンパク質の折り畳みまたは輸送を変更する。いくつかの突然変異は、光に応答して活性化される代わりに、ロドプシンを構成的に活性化させる。研究によって、ロドプシンの変更されたバージョンが、本質的な細胞の機能を妨害し、桿状体細胞を自己破壊させる(アポトーシスを起こす)ことが示唆される。桿状体細胞は、弱光条件下での視覚に必須であるため、これらの細胞の損失は、網膜色素変性症を伴うヒトの進行性夜盲症を引き起こす。
【0437】
本明細書に記載の様々な態様、実施形態、および選択肢は全て、いずれかおよび全ての変形形態で組み合わせることができる。
【0438】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、および特許出願を、個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照によって組み入れられることが具体的かつ個々に示されている場合と同程度に、参照によって本明細書に組み入れる。
【0439】
本開示について概ね説明してきたが、本明細書において提供される実施例を参照することによって、さらに深い理解を得ることができる。これらの実施例は、例示を目的とするに過ぎず、限定を意図するものではない。
【実施例
【0440】
実施例1.AAVおよび非AAVパルボウイルスITRを有するFVIII発現構築物の生成。
実施例1a.コドン最適化FVIII遺伝子およびAAV由来の逆方向末端反復配列(ITR)領域の遺伝子カセットへのクローニング。
FVIII遺伝子カセットは、AAV血清型2のゲノムに基づいて生成された。しかしながら、任意の血清型を起源とする(合成を含む)ITR領域がこの手法に使用された(図1A)。
【0441】
AAV由来の逆方向末端反復配列(ITR)に挟まれ、肝臓特異的プロモーター(TTPp、図1Aおよび図1B)の制御下にあるコドン最適化FVIIIコード配列をコードする発現プラスミドAAV2-FVIIIco6XTEN(AAV-FVIII)は、図1Bに示したように、in vitroおよびin vivoでの発現のために設計された。遺伝子カセットは、導入遺伝子の最適な発現のためにWPREおよびbGHpAエレメントも含有する(図1Aおよび図1B)。ITRに挟まれたコドン最適化FVIII配列は、複製のColE1オリジンおよびアンピシリン耐性を付与するベータ-ラクタマーゼの発現カセットを含むプラスミド骨格にクローニングされた(図1B)。発現カセットを挟んでいる制限エンドヌクレアーゼPvuIIの認識部位が工学的に作製され、PvuII消化時のAAV-FVIII構築物の正確な切り出しを可能にした(図1B)。
【0442】
実施例1b.コドン最適化FVIII遺伝子および非AAVパルボウイルス由来の逆方向末端反復配列(ITR)領域の遺伝子カセットへのクローニング。
AAVが属する、パルボウイルス科のメンバー間の系統学的な関係に基づき(図2A)、他の非AAVのディペンドウイルス属のメンバーおよびエリスロウイルス属のメンバー(おそらく、全ての/多くの他のウイルス科のメンバー)が、ウイルスのライフサイクルの維持、および最も重要な、耐性の確立、持続感染のために同様の細胞メカニズムを利用すると仮定された。したがって、これらのウイルスのゲノムを起源とするITR領域が、AAV-様(AAVベースではない)遺伝子発現カセットの開発に利用された。以下のパルボウイルスは、遺伝子療法用途のための遺伝子構築物の開発のため、それらのITR領域の適応性を試験された:ディペンドウイルスガチョウパルボウイルス(GPV)B株およびエリスロウイルスB19パルボウイルス(図2A
【0443】
バクテリア細胞におけるプラスミドベクターの増殖中のパルボウイルスITR領域の不安定性は、遺伝子構築物の生成および操作の周知のハードルである。全長AAV2 ITR(145nt)を含有する遺伝子構築物が、本発明者らを含むいくつかのグループによって成功裏に生成されたが、これらの構築物は非常に不安定であり、ほとんどのAAV2 ITRベースのプラスミドはITR領域のトランケートされた130ntバージョンを含有する(表1に例示する)。同様に、生成されたB19とGPV ITR両方の全長配列を有するプラスミド構築物は、バクテリア宿主において高い不安定性を示し(データは示さない)、遺伝子療法用途のための遺伝子ベクターの開発へのこれらのITRの利用を著しく制限する。
以前に、組換えB19ウイルスのレスキューのための逆遺伝学システムは、ITRのトランケートバージョンを有するように開発された(Manaresiら、2017年、Virology、doi:10.1016/j.virol.2017.05.006)(表2B、ITR ID:B19d135)。したがって、本発明者らは、B19d135 ITRを利用して、遺伝的に安定なFVIII発現プラスミドB19-FVIIIco6XTENを生成した(図1C)。GPV ITRベースの構築物の合成のためのこの手法をさらに利用するため、本発明者らは、B19、GPV、およびAAV2 ITRの全長野生型配列を比較した(図3A)。ITR機能に不要である、B19およびAAV2 ITR配列のそれぞれ最初の135ヌクレオチドおよび15ヌクレオチドへの相同性に基づき、本発明者らは、完全に機能的なITRを有する安定な遺伝子構築物を合成するためにGPV ITRの最初の162ヌクレオチドは除去できると仮定した(図3A、グレーに影を付けた配列)。したがって、それらの相当するITRのトランケートバージョンを有する構築物AAV2-FVIIIco6XTENおよびB19-FVIIIco6XTENと同様に、本発明者らはGPVd162(表2C)を使用して安定なFVIII発現プラスミド構築物GPV-FVIIIco6XTEN(図1D)を生成した。特に、全長B19とGPV ITRの両方は、全長AAV2 ITR(表1)よりもずっと長く、AAV ITRの特有のT型ヘアピン構造を形成しなかった(図2B)。
【0444】
非AAVパルボウイルスITRに挟まれたFVIII発現カセット(B19d135-FVIIIおよびGPVd162-FVIII)を含有するプラスミドB19-FVIIIco6XTEN(図1C;表2B)およびGPV-FVIIIco6XTEN(図1D;表2C)は実施例1aに記載のように生成された。制限エンドヌクレアーゼLguIの認識部位が使用され、両方のFVIII発現カセットを挟んだ(図1Cおよび図1D)。
【0445】
実施例1c.AAVおよび非AAVパルボウイルスITRに挟まれたFVIII発現カセットを含有する一本鎖DNA断片の調製。
FVIII発現カセットを挟んでいるITR領域内のヘアピン構造の形成は、標的細胞の持続的な形質導入を促進すると仮定された。概念証明研究のため、AAV ITRベースのプラスミドAAV2-FVIIIco6XTENならびに非AAV ITRベースのプラスミドB19-FVIIIco6XTENおよびGPV-FVIIIco6XTENは、それぞれPvuIIおよびLguIで消化された。ヘアピンITR構造が形成された一本鎖(ss)AAV-FVIII、B19-FVIII、またはGPV-FVIII断片は、PvuIIまたはLguI消化の二本鎖DNA断片産物(FVIII発現カセットおよびプラスミド骨格)を95℃で変性させ、次いで4℃に冷却し、パリンドロームITR配列を折りたたませることによって生成された(図1A)。生じたssAAV-FVIII、ssB19-FVIII、またはssGPV-FVIIIは、肝細胞の持続的な形質導入を確立する能力に関してHemA(血友病A)マウスモデルにおいて試験された。
【0446】
実施例1d.FVIII発現構築物を生成するバキュロウイルス発現システムの使用。
昆虫細胞において、クローズドエンドのDNA(ceDNA)分子の形態のAAV-FVIII、B19-FVIII、およびGPV-FVIII構築物の産生に関してLiら、PLoS ONE 8(8):e69879(2013年)に記載されたバキュロウイルス発現システムが利用される。ceDNA発現カセットの全身送達が実証され、肝細胞の持続的な形質導入が確立され、肝臓における安定な長期の導入遺伝子発現を促進した。
【0447】
実施例2.AAVおよび非AAVパルボウイルスITRに挟まれたFVIII発現カセットを含む遺伝子構築物の全身注射は、HemAマウスにおいて長期のFVIII発現をもたらす。
実施例2a.ssAAV-FVIII媒介FVIII発現のin vivo評価。
AAV ITR領域を有するssAAV-FVIIIのin vivoでの持続的な導入遺伝子発現を媒介する能力を評価するため、遺伝子発現カセットは、ssDNA遺伝子発現カセット(ssAAV-FVIII)5μg、10μg、または20μgで5~12週齢のHem Aマウスに(4匹/群)、水圧注入(HDI)によって全身に送達された(図4A)。HDIは、実験動物の肝臓への注射した物質の主な送達をもたらす。親の発現プラスミド5μg/マウスを注射された対照動物は、投与後短期間では高いFVIII血漿活性を示した。しかしながら、循環するFVIIIのレベルは急速に減少し、注射後(p.i.)15日目までに検出不可能になった。血漿試料は、ssAAV-FVIIIの単回水圧注入後18時間、3日、2週間、3週間、1カ月、2カ月、3カ月、および4カ月で実験動物から採取された。血液中のFVIII血漿活性は、発色FVIII活性アッセイによって分析された。ssAAV-FVIII 5、10、および20μg/マウスを注射された実験動物は、それぞれ通常のFVIIIレベルの約8、16、および32%の安定なレベルの循環FVIIIにより導入遺伝子の長期発現を発生した(図4A)。本発明者らが、注射した用量と処置の転帰の間の強い相関を示す強い用量応答を観察したことは強調されるべきである。
【0448】
実施例2b.ssB19-FVIII-およびssGPV-FVIII-媒介FVIII発現のin vivo評価。
それぞれ非AAVパルボウイルスITR領域B19d135およびGPVd162を有するssB19-FVIIIおよびssGPV-FVIIIからのFVIIIのin vivo発現を評価するため、ssB19-FVIII遺伝子発現カセット10または20μg/マウス、およびssGPV-FVIII遺伝子発現カセット10または50μg/マウスが、5~12週齢の血友病A(HemA)マウスにおいてHDIによって全身に送達された。血液試料は、注射後1日、3日、7日、14日、21日、および28日で採取され、血液中のFVIII活性は発色FVIII活性アッセイによって分析された。AAV-FVIII構築物による実験において以前に観察されたように、親のFVIII発現プラスミド5μg/マウスを注射された対照動物は、注射後24時間で高いレベルのFVIII血漿活性を示し、急速に減少し、注射後14日目までに検出不可能になった。ssB19-FVIIIを注射した実験動物は、注射後24時間でピークFVIII血漿活性を示し、次いで21日間にわたって徐々に減少し、注射後およそ28日で安定化された(図4B)。一方、ssGPV-FVIIIを注射したHemAマウスは、およそ7日で安定なレベルのFVIII血漿活性を急速に発生し、28日間の全観察期間中維持された(図4C)。特に、10μg/マウスでssAAV-FVIII(図4A)またはssGPV-FVIII(図4C)のいずれかを注射した動物は、非常に類似した安定なレベルのFVIII血漿活性を発生し、AAV2とGPV ITR領域の両方が、標的細胞の持続的な形質導入の効果的な確立に必要な遺伝因子を含むことを示している。
【0449】
実施例3.B19d135およびGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するFVIII発現構築物の生成およびin vivo評価。
実施例3a.B19およびGPV ITRの最小必須配列の決定。
ディペンドウイルスAAV2およびGPV、ならびにエリスロウイルスB19(それぞれ、Gene Bank受入番号NC_001401.2、U25749.1、およびKY940273.1)のITR配列間の比較に基づき、本発明者らは、そのようなITRを有する遺伝子構築物による真核細胞の持続的な形質導入のための追加の配列(スペーサー、挿入、逆位、追加、および/または他のパルボウイルスITRの野生型配列による組換え)有りまたは無しで、必要とされるGPVおよびB19パルボウイルスITRの最小配列を設計した(図3Aおよび図3B)。したがって、AAV2、GPV、およびB19 ITRの配列アラインメントは、可変配列のスペーサー領域の無い連続的な配列として表2A~2Cに示した3つのウイルス種全ての間での保存領域B19v1およびGPVv1を明らかにした。同様に、最小必須配列バリアントB19v3およびGPVv3は、B19とGPV ITRの間の配列比較に基づいて設計された。GPVd162 ITRを有するFVIII発現構築物は、B19d135 ITRを有する遺伝子構築物よりもin vivo実験においてより良く実行されたため、本発明者らは、継続的な形質導入に必要な全ての遺伝因子はGPV ITR配列に存在し;しかしながら、B19 ITR配列はこれらの遺伝因子のいくつかを欠損すると仮定した。したがって、B19v3配列は、B19とGPV ITR配列の間で保存された最小のB19 ITR配列領域を含み、GPVv3配列は、GPV ITR配列に存在し、B19 ITR配列から欠損する最小GPV ITR配列領域を含む(表2Bおよび表2C)。配列B19v2およびGPVv2は、最初の135および162ヌクレオチド、ならびにそれぞれB19およびGPV ITR配列のITRパリンドローム領域の相当する相補的な135および162ヌクレオチドを除外することによって生成された(表2Bおよび表2C)。
【0450】
実施例3b.機能性遺伝子構築物のB19およびGPV ITRならびにそれらの誘導体のパリンドローム領域の方向。
自己相補的なパリンドローム領域からなるパルボウイルスITRの部分。組換え感染性B19パルボウイルスに関して、順方向または逆方向のパリンドローム領域を有するレスキューされたウイルスは同様の増殖特性を示すことが以前に実証された(Manaresiら、2017年、Virology、doi:10.1016/j.virol.2017.05.006)。したがって、本発明者らは、B19およびGPV ITRならびにそれらの誘導体を有する遺伝子発現構築物が、そのようなITRのパリンドローム領域が順方向、逆方向、または遺伝子発現カセットに関して5’および3’ITR組合せの任意の可能な組合せであるかどうかにかかわらず依然として機能性であることを提案する。
【0451】
実施例3c.HemAマウスにおけるB19d135およびGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有する遺伝子構築物の全身注射。
B19d135およびGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するssDNA構築物からのFVIIIin vivo発現を評価するため、各ssDNA遺伝子発現カセット5、10、20、または50μg/マウスが、5~12週齢のHemAマウスにHDIによって全身に送達された。血液試料は、注射後1、3、7、14、21、および28日、次いで4カ月間月に1回採取された。血液中のFVIII活性は、発色FVIII活性アッセイによって分析された。
【0452】
実施例4.昆虫細胞におけるB19d135およびGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するceDNA発現構築物の産生およびin vivo評価。
実施例4a.B19d135およびGPVd162ITRの誘導体を有するceDNA発現構築物を生成するためのバキュロウイルス発現システムの使用。
実施例1dに記載のAAV-FVIII、B19-FVIII、およびGPV-FVIII構築物と同様に、本発明者らは、昆虫細胞においてceDNAの形態のB19d135およびGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有する遺伝子構築物のFVIII発現を生じさせるためのバキュロウイルス発現システムを使用する。
【0453】
実施例4b.HemAマウスにおけるB19d135およびGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するceDNA発現構築物の全身注射。
B19d135およびGPVd162非AAVパルボウイルスITRの誘導体を有するceDNA構築物からのFVIIIin vivo発現を評価するため、各ceDNA遺伝子発現カセット5、10、20、または50μg/マウスが、5~12週齢のHemAマウスにHDIによって全身に送達された。血液試料は、注射後1、3、7、14、21、および28日、次いで4カ月間月に1回採取された。血液中のFVIII活性は、発色FVIII活性アッセイによって分析された。
【0454】
実施例5.ssDNAおよびceDNA FVIII発現構築物の脂質ナノ粒子製剤の生成。
実施例1および4に記載のように、各ssDNAまたはceDNAが産生された後、各遺伝子構築物は、マイクロ流体混合によって適切な脂質組成物を使用して脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化された(LNP-ssDNAおよびLNP-ceDNA)。LNPに製剤化された、AAVまたは非AAVパルボウイルスITRのいずれかに挟まれたFVIII発現カセットをコードする親プラスミドは、形質導入効率の対照として使用された。
【0455】
実施例6.LNP-ssDNAおよびLNP-ceDNAのin vitroおよびin vivo評価。
実施例6a.培養肝細胞におけるssDNA-およびceDNA-媒介FVIII発現のin vitro評価。
ssDNAまたはceDNA FVIII発現遺伝子構築物および相当する親対照プラスミドは、実施例5に記載のように、標的化遺伝子送達のためにLNPに製剤化された。Huh7またはHEK293T(非肝細胞対照)細胞は、24ウェル組織培養プレートに7×10個の細胞/ウェルで播種され、終夜インキュベートされた。次の日、LNP-ssDNAまたはLNP-ceDNA製剤が細胞に1000、500、250、125、および62.5ng/ウェルで添加された。培養培地および細胞は、形質導入後24および48時間で回収された。培養培地中のFVIII活性は、発色FVIII活性アッセイによって測定された。細胞でのFVIIIの発現もウェスタンブロットによって分析された。
【0456】
さらに、細胞のヒストンはrAAVエピソームに沿って規則的に配置され、細胞の染色体DNAヌクレオソームパターンと類似したクロマチン様構造を作り出すことが文献に示されている。したがって、標的細胞の持続的な形質導入に必要なクロマチン様ヌクレオソーム構造を確立するこれらの構築物の能力も、サザンブロットによって評価された。
【0457】
実施例6b.静脈内投与後のHemAマウスにおける、LNP製剤化ssDNA-およびceDNA-媒介長期FVIII発現の評価。
5~12週齢のHemAマウスは、LNP-ssDNA、LNP-ceDNA、またはLNP-pDNA(プラスミド対照)のいずれかをIV注射によって5、10、20、40、100μg/マウスで投与された、N=4/群。血液試料は、注射後48時間から開始して6カ月まで選択された時点で採取され、血液中のFVIII活性は発色FVIII活性アッセイによって分析された。LNP-ssDNAまたはLNP-ceDNAによって処置されたマウスにおけるFVIII発現プロファイルは、実施例1および4に記載の各遺伝子構築物に関してLNP-pDNAによって処置されたマウスのものと比較された。
【0458】
実施例6c.ブースター注射後のssDNA-またはceDNA-媒介FVIII発現のin vivo評価。
実施例6bのLNP-ssDNAまたはLNP-ceDNAによって処置されたマウスのサブセットは、最初の注射の2カ月後同じ用量で相当するLNPの追加のIV注射ブーストを受けた。血液試料は、ブースター注射後48時間から開始して6カ月まで選択された時点で採取された。血液中のFVIII活性は発色FVIII活性アッセイによって分析された。LNP-ssDNAまたはLNP-ceDNAによって処置されたマウスにおけるFVIII発現プロファイルは、相当するLNP-pDNAによって処置されたマウスのものと比較された。
【0459】
実施例7.遺伝子療法における一般的な使用のためのB19またはGPV起源のITRを有する遺伝子発現構築物の利用。
実施例7a.B19またはGPV起源のITRを有するレポーター遺伝子構築物の生成。
遺伝子療法用途での一般的な使用のためのプラットフォームとして非AAV ITRベースの遺伝子発現システムの利用を実証するため、発現カセットを含むレポーター構築物は、実施例1bに記載の構築物に基づき、B19d135またはGPVd162 ITRのいずれかに挟まれた緑色蛍光タンパク質(GFP)またはルシフェラーゼ(luc)のいずれかのために生成された。したがって、B19-FVIIIco6XTEN(図1C)およびGPV-FVIIIco6XTEN(図1D)におけるFVIIIのオープンリーディングフレーム(ORF)は、従来の分子クローニング技術によってGFPまたはlucのいずれかのORFと置き換えられた。
【0460】
B19d135またはGPVd162 ITRに挟まれた発現カセットは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)のためにも生成され、関連するマウスモデルにおいてPAH発現を評価するために使用された。
【0461】
実施例7b.B19またはGPV起源のITRを有するssDNAレポーター遺伝子構築物の調製。
ssDNAレポーター/PAH構築物は、実施例1cに記載のように調製された。簡単に言うと、プラスミドはLguIで消化された。形成されたヘアピンITR構造を有するssDNA断片は、LguI消化の二本鎖DNA断片産物(レポーター発現カセットおよびプラスミド骨格)を95℃で変性させ、次いで4℃に冷却し、パリンドロームITR配列を折りたたませることによって生成された(図1A)。生じたssDNA構築物は、肝臓、筋肉組織、眼の光受容体、および中枢神経系(CNS)の持続的な形質導入を確立する能力に関してマウスにおいて試験された。
【0462】
実施例7c.ssDNA-媒介レポーター発現のin vivo評価。
実施例7bに記載のssDNAレポーター構築物のin vivoでの持続的な導入遺伝子発現を媒介する能力を評価するため、5~12週齢のマウス(4匹/群)は、レポーターssDNA 5、10、または20μg/マウスを、全身に、筋肉組織およびCNS細胞を標的として局所的に、および/または光受容体細胞を標的として網膜下に注射された。
【0463】
B19およびGPV ITRベースの発現構築物からのPAHの発現を評価するため、関連疾患マウスモデルが使用された。これらの遺伝子構築物は、肝臓を標的としてHDIによって全身に送達された。
【0464】
実施形態
E1.第1の逆方向末端反復配列(ITR)、第2のITR、および治療用タンパク質をコードする遺伝子カセットを含む核酸分子であって;第1のITRおよび/または第2のITRは非アデノ随伴ウイルス(非AAV)のITRであり、遺伝子カセットは第1のITRと第2のITRの間に配置され、治療用タンパク質は凝固因子を含む、核酸分子。
【0465】
E2.非AAVはウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーからなる群から選択される、E1の核酸分子。
【0466】
E3.第1のITRは非AAVのITRであり、第2のITRはアデノ随伴ウイルス(AAV)のITRであるか、または第1のITRはAAVのITRであり、第2のITRは非AAVのITRである、E1またはE2の核酸分子。
【0467】
E4.第1のITRおよび第2のITRは非AAVのITRである、E1またはE2の核酸分子。
【0468】
E5.第1のITRおよび第2のITRは同一である、E1、E2およびE4のいずれか1つの核酸分子。
【0469】
E6.第1のITRおよび/または第2のITRは中断されないパリンドローム配列を含む、E1~E5のいずれか1つの核酸分子。
【0470】
E7.第1のITRおよび/または第2のITRは中断されるパリンドローム配列を含む、E1~E5のいずれか1つの核酸分子。
【0471】
E8.非AAVはウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーである、E1~E7のいずれか1つの核酸分子。
【0472】
E9.ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーは、ボカウイルス(Bocavirus)、デペンドウイルス(Dependovirus)、エリスロウイルス(Erythrovirus)、アムドウイルス(Amdovirus)、パルボウイルス(Parvovirus)、デンソウイルス(Densovirus)、イテラウイルス(Iteravirus)、コントラウイルス(Contravirus)、アベパルボウイルス(Aveparvovirus)、コピパルボウイルス(Copiparvovirus)、プロトパルボウイルス(Protoparvovirus)、テトラパルボウイルス(Tetraparvovirus)、アムビデンソウイルス(Ambidensovirus)、ブレビデンソウイルス(Brevidensovirus)、ヘパンデンソウイルス(Hepandensovirus)およびペンスチルデンソウイルス(Penstyldensovirus)からなる群から選択される、E8の核酸分子。
【0473】
E10.ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーはエリスロウイルスパルボウイルスB19(ヒトウイルス)である、E8の核酸分子。
【0474】
E11.ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーはタイワンアヒルパルボウイルス(MDPV)株である、E8の核酸分子。
【0475】
E12.MDPV株は弱毒化FZ91-30である、E11の核酸分子。
【0476】
E13.MDPV株は病原性のYYである、E11の核酸分子。
【0477】
E14.デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)はデペンドウイルス(Dependovirus)ガチョウパルボウイルス(GPV)株である、E8の核酸分子。
【0478】
E15.GPV株は弱毒化82-0321Vである、E14の核酸分子。
【0479】
E16.GPV株は病原性のBである、E14の核酸分子。
【0480】
E17.ウイルスのパルボウイルス科(Parvoviridae)のメンバーは、ブタパルボウイルス(U44978)、マウス微小ウイルス(U34256)、イヌパルボウイルス(M19296)およびミンク腸炎ウイルス(D00765)からなる群から選択される、E8の核酸分子。
【0481】
E18.プロモーターをさらに含む、E1~E17のいずれか1つの核酸分子。
【0482】
E19.プロモーターは組織特異的プロモーターである、E18の核酸分子。
【0483】
E20.プロモーターは肝細胞、内皮細胞、筋細胞、シヌソイド細胞またはその任意の組合せにおける治療用タンパク質の発現を促進する、E18またはE19の核酸分子。
【0484】
E21.プロモーターは肝細胞における治療用タンパク質の発現を促進する、E18またはE19の核酸分子。
【0485】
E22.プロモーターは凝固因子をコードする核酸配列の5’側に配置される、E18~E21のいずれか1つの核酸分子。
【0486】
E23.プロモーターは、マウスサイレチンプロモーター(mTTR)、内因性ヒト第VIII因子プロモーター(F8)、ヒトアルファ-1-抗トリプシンプロモーター(hAAT)、ヒトアルブミン最小プロモーター、マウスアルブミンプロモーター、トリステトラプロリン(TTP)プロモーター、CASIプロモーター、CAGプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、α1-抗トリプシン(AAT)、筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、ミオシン重鎖アルファ(αMHC)、ミオグロビン(MB)、デスミン(DES)、SPc5-12、2R5Sc5-12、dMCK、tMCKおよびホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターからなる群から選択される、E18~E22のいずれか1つの核酸分子。
【0487】
E24.プロモーターはTTPプロモーターを含む、E18~E23のいずれか1つの核酸分子。
【0488】
E25.ヌクレオチド配列はイントロン配列をさらに含む、E1~E24のいずれか1つの核酸分子。
【0489】
E26.イントロン配列は、凝固因子をコードする核酸配列の5’側に配置される、E25の核酸分子。
【0490】
E27.イントロン配列は、プロモーターの3’側に配置される、E25またはE26の核酸分子。
【0491】
E28.イントロン配列は合成イントロン配列を含む、E25~E27のいずれか1つの核酸分子。
【0492】
E29.イントロン配列は配列番号115を含む、E25~E28のいずれか1つの核酸分子。
【0493】
E30.遺伝子カセットは転写後調節エレメントをさらに含む、E1~E29のいずれか1つの核酸分子。
【0494】
E31.転写後調節エレメントは凝固因子をコードする核酸配列の3’側に配置される、E30の核酸分子。
【0495】
E32.転写後調節エレメントは、突然変異したウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、マイクロRNA結合部位、DNA核標的化配列または任意のその組合せを含む、E30またはE31の核酸分子。
【0496】
E33.マイクロRNA結合部位はmiR142-3pへの結合部位を含む、E32の核酸分子。
【0497】
E34.遺伝子カセットは3’UTRポリ(A)テール配列をさらに含む、E1~E33のいずれか1つの核酸分子。
【0498】
E35.3’UTRポリ(A)テール配列は、bGHポリ(A)、アクチンポリ(A)、ヘモグロビンポリ(A)および任意のその組合せからなる群から選択される、E34の核酸分子。
【0499】
E36.3’UTRポリ(A)テール配列はbGHポリ(A)を含む、E34またはE35の核酸分子。
【0500】
E37.遺伝子カセットはエンハンサー配列をさらに含む、E1~E36のいずれか1つの核酸分子。
【0501】
E38.エンハンサー配列は第1のITRと第2のITRの間に配置される、E37の核酸分子。
【0502】
E39.第1のITR、遺伝子カセットおよび第2のITRをこの順序で含み;ここで、遺伝子カセットは、組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、凝固因子をコードする核酸配列、転写後調節エレメント、および3’UTRポリ(A)テール配列を含む、E1~E38のいずれか1つの核酸分子。
【0503】
E40.遺伝子カセットは:組織特異的プロモーター配列、イントロン配列、FVIIIポリペプチドをコードする核酸配列、転写後調節エレメントおよび3’UTRポリ(A)テール配列をこの順序で含む、E39の核酸分子。
【0504】
E41.
(a)第1のITRはパルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRであり;
(b)組織特異的プロモーター配列はTTPプロモーターを含み;
(c)イントロンは合成イントロンであり;
(d)ヌクレオチド配列は凝固因子をコードし;
(e)転写後調節エレメントはWPREを含み;
(f)3’UTRポリ(A)テール配列はbGHpAを含み;および
(g)第2のITRはパルボウイルス科(Parvoviridae)の非AAVファミリーメンバーのITRである、
E38またはE39の核酸分子。
【0505】
E42.遺伝子カセットは一本鎖の核酸を含む、E1~E41のいずれか1つの核酸分子。
【0506】
E43.遺伝子カセットは二本鎖の核酸を含む、E1~E41のいずれか1つの核酸分子。
【0507】
E44.凝固因子は、肝細胞、内皮細胞、筋細胞、シヌソイド細胞または任意のその組合せによって発現される、E1~E43のいずれか1つの核酸分子。
【0508】
E45.凝固因子は、第I因子(FI)、第II因子(FII)、第V因子(FV)、第VII因子(FVII)、第VIII因子(FVIII)、第IX因子(FIX)、第X因子(FX)、第XI因子(FXI)、第XII因子(FXII)、第XIII因子(FXIII)、フォンビルブランド因子(VWF)、プレカリクレイン、高分子量キニノーゲン、フィブロネクチン、抗トロンビンIII、ヘパリン補因子II、プロテインC、プロテインS、プロテインZ、プロテインZ関連プロテアーゼ阻害剤(ZPI)、プラスミノーゲン、アルファ2-抗プラスミン、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-1(PAI-1)、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤-2(PAI2)または任意のその組合せを含む、E1~E44のいずれか1つの核酸分子。
【0509】
E46.凝固因子はFVIIIである、E1~E45のいずれか1つの核酸分子。
【0510】
E47.FVIIIは完全長成熟FVIIIを含む、E46の核酸分子。
【0511】
E48.FVIIIは、配列番号106を有するアミノ酸配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、E47の核酸分子。
【0512】
E49.FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、A3ドメイン、C1ドメイン、C2ドメインおよび部分的なBドメインを含むか、またはBドメインを含まない、E46の核酸分子。
【0513】
E50.FVIIIは、配列番号109のアミノ酸配列と、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む、E49の核酸分子。
【0514】
E51.凝固因子は異種部分を含む、E1~E50のいずれか1つの核酸分子。
【0515】
E52.異種部分は、アルブミンもしくはその断片、免疫グロブリンFc領域、ヒト絨毛性ゴナドトロピンのβサブユニットのC末端ペプチド(CTP)、PAS配列、HAP配列、トランスフェリンもしくはその断片、アルブミン結合部分、その誘導体、または任意のその組合せからなる群から選択される、E51の核酸分子。
【0516】
E53.異種部分はFVIIIのN末端またはC末端に連結されるか、FVIIIの2つのアミノ酸の間に挿入される、E51またはE52の核酸分子。
【0517】
E54.異種部分は、表5に掲載される挿入部位から選択される1つまたはそれ以上の挿入部位の2つのアミノ酸の間に挿入される、E53の核酸分子。
【0518】
E55.FVIIIは、A1ドメイン、A2ドメイン、C1ドメイン、C2ドメイン、場合によりBドメイン、および異種部分をさらに含み、ここで、異種部分は、成熟FVIII(配列番号106)に対応するアミノ酸745のすぐ下流に挿入される、E45~E54のいずれか1つの核酸分子。
【0519】
E56.FVIIIはFcRn結合パートナーをさらに含む、E53~55のいずれか1つの核酸分子。
【0520】
E57.FcRn結合パートナーは免疫グロブリン定常ドメインのFc領域を含む、E56の核酸分子。
【0521】
E58.FVIIIをコードする核酸配列はコドン最適化される、E45~E57のいずれか1つの核酸分子。
【0522】
E59.FVIIIをコードする核酸配列はヒトにおける発現のためにコドン最適化される、E45~E58のいずれか1つの核酸分子。
【0523】
E60.FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号107のヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む、E59の核酸分子。
【0524】
E61.FVIIIをコードする核酸配列は、配列番号71のヌクレオチド配列と、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%または約100%同一であるヌクレオチド配列を含む、E59の核酸分子。
【0525】
E62.送達剤で製剤化される、E1~61のいずれか1つの核酸分子。
【0526】
E63.送達剤は脂質ナノ粒子を含む、E62の核酸分子。
【0527】
E64.送達剤は、リポソーム、非脂質ポリマー分子、エンドソームおよび任意のその組合せからなる群から選択される、E63の核酸分子。
【0528】
E65.静脈内、経皮、皮内、皮下、肺または経口送達、または任意のその組合せのために製剤化される、E1~E64のいずれか1つの核酸分子。
【0529】
E66.静脈内送達のために製剤化される、E65の核酸分子。
【0530】
E67.E1~E66のいずれか1つの核酸分子を含むベクター。
【0531】
E68.E1~E66のいずれか1つの核酸分子によってコードされるポリペプチド。
【0532】
E69.E1~66のいずれか1つの核酸分子を含む宿主細胞。
【0533】
E70.(a)E1~66のいずれか1つの核酸、E67のベクター、E68のポリペプチドまたはE69の宿主細胞;(b)LNP;および(c)薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【0534】
E71.E1~66のいずれか1つの核酸分子、およびそれを必要とする対象に核酸分子を投与するための説明書を含むキット。
【0535】
E72.E1~E66のいずれか1つの核酸分子の生産のためのバキュロウイルス系。
【0536】
E73.E1~66のいずれか1つの核酸分子は昆虫細胞で生産される、E72のバキュロウイルス系。
【0537】
E74.発現構築物のためのナノ粒子送達系であって、発現構築物はE1~E66のいずれか1つの核酸分子を含むナノ粒子送達系。
【0538】
E75.凝固活性を有するポリペプチドを生成する方法であって、適する条件の下でE69の宿主細胞を培養し、凝固活性を有するポリペプチドを回収することを含む方法。
【0539】
E76.それを必要とする対象において凝固因子を発現させる方法であって、E1~E66のいずれか1つの核酸分子、E67のベクター、E68のポリペプチドまたはE70の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【0540】
E77.凝固因子欠損を有する対象を治療する方法であって、E1~E66のいずれか1つの核酸分子、E67のベクター、E68のポリペプチドまたはE70の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【0541】
E78.核酸分子は、静脈内、経皮、皮内、皮下、経口、肺、または任意のその組合せで投与される、E76またはE77の方法。
【0542】
E79.核酸分子は静脈内投与される、E78の方法。
【0543】
E80.対象に第2の薬剤を投与することをさらに含む、E76~E79のいずれか1つの方法。
【0544】
E81.対象は哺乳動物である、E76~E80のいずれか1つの方法。
【0545】
E82.対象はヒトである、E76~E81のいずれか1つの方法。
【0546】
E83.対象への核酸分子の投与は、投与前の対象におけるFVIII活性と比較して増加したFVIII活性をもたらし、ここで、FVIII活性は少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約6倍、少なくとも約7倍、少なくとも約8倍、少なくとも約9倍、少なくとも約10倍、少なくとも約11倍、少なくとも約12倍、少なくとも約13倍、少なくとも約14倍、少なくとも約15倍、少なくとも約20倍、少なくとも約25倍、少なくとも約30倍、少なくとも約35倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍増加する、E76~E82のいずれか1つの方法。
【0547】
E84.対象は出血障害を有する、E76~E83のいずれか1つの方法。
【0548】
E85.出血障害は血友病である、E84の方法。
【0549】
E86.出血障害は血友病Aである、E84またはE85の方法。
【0550】
E87.対象への核酸分子の投与は、投与前の対象におけるFVIII活性と比較して増加したFVIII活性をもたらし、ここで、FVIII活性は、通常のFVIII活性と比較して、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約110%、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約140%、少なくとも約150%増加する、E76~E82、E85およびE86のいずれか1つの方法。
【0551】
本出願は、参照により完全に本明細書に組み入れる、2017年8月9日に出願の米国特許仮出願第62/543,297号の優先権を主張する。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2A
図2B
図3
図4-1】
図4-2】
【配列表】
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