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特許7374897セメント系製品における機械的強度およびCO2貯蔵を向上させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】セメント系製品における機械的強度およびCO2貯蔵を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 40/02 20060101AFI20231030BHJP
   B28B 11/24 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C04B40/02
B28B11/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020528926
(86)(22)【出願日】2018-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 US2018027068
(87)【国際公開番号】W WO2019133040
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(31)【優先権主張番号】15/855,348
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】316017181
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Saudi Arabian Oil Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】アムル,イッサム ティー
(72)【発明者】
【氏名】ファデル,バンダル
(72)【発明者】
【氏名】アル フナイディ,アリ シャキール
(72)【発明者】
【氏名】バマゲイン,ラミ エー
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘン ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ソルメ
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】日比野 隆治
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-80285(JP,A)
【文献】特開昭56-134578(JP,A)
【文献】特開2003-246688(JP,A)
【文献】特開2007-186373(JP,A)
【文献】特開2000-256077(JP,A)
【文献】特開2011-168436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B1/00-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系物品を硬化させる方法であって、
CaSiOを含むセメントバインダーと、骨材と、水との混合物から形成されたセメント系物品を用意することと、
前記セメント系物品を養生室内に置くことと、
前記養生室内の硬化相対湿度を40%~80%に維持することと、
前記養生室内の硬化温度を50℃~80℃に維持することと、
前記硬化相対湿度および前記硬化温度を時間~24時間の期間にわたり維持しながら、乾燥蒸気とCOとの混合物を前記養生室に流し込むことにより前記セメント系物品を硬化させることと、
を含み、
前記乾燥蒸気とCOとの混合物におけるCOの濃度が、2.5体積%~20.0体積%である、方法。
【請求項2】
前記乾燥蒸気とCOとの混合物を前記養生室に流し込むことが、乾燥蒸気を第1の入口を通して前記養生室に流し込み、純粋なCO流を前記第1の入口とは異なる第2の入口を通して前記養生室に流し込むことを含み、前記乾燥蒸気を前記第1の入口を通して流し込むこと、および前記COを前記第2の入口を通して流し込むことにより、前記養生室内のCOの濃度を2.5体積%~20.0体積%に維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記養生室に流れ込む前記乾燥蒸気とCOとの混合物におけるCOの濃度が、体積%~10体積%である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化相対湿度が、50%~70%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記硬化温度が、50℃~70℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記セメント系物品を、時間~16時間の期間にわたり前記養生室内で硬化させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記セメント系物品を、時間~10時間の期間にわたり前記養生室内で硬化させる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
時間~時間の期間にわたり前記養生室内で前記セメント系物品を硬化させる前に空気中で前記セメント系物品を硬化させることをさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記養生室内で前記セメント系物品を硬化させた後に、前記セメント系物品に空気硬化および水噴霧を行うことをさらに含む、請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記セメント系物品に空気硬化および水噴霧を行った後に、前記セメント系物品を空気硬化させることをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年12月27日に出願された米国特許出願第15/855,348号の利益を主張し、その開示全体が、参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、一般的に、セメント系物品を硬化させる方法、より具体的には、蒸気+二酸化炭素を使用してセメント系物品を硬化させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
コンクリートブロック、コンクリートの階段、コンクリートカウンタートップなどのセメント系製品は、成形機内でコンクリート混合物から所望の形状を形成し、続いて硬化させることによって商業的に生産することができる。コンクリート混合物は、セメントバインダー、砂、骨材および水を含み得る。コンクリート混合物は、一般的には、ホッパーから製品の鋳型に流れ込み、所望の形状のセメント系物品が、鋳型内で形成される。その後、セメント系物品を硬化させると、セメント系製品が形成される。セメント系物品は、空気に曝すことにより、例えば7~30日にわたり、ゆっくりと硬化させることができる。
【0004】
硬化の促進は、セメント系製品の製造の生産性を高めるために用いられ得る。特に、硬化の促進を用いると、安定したセメント系製品を比較的迅速に用意し、それにより、セメント系製品が完成品として輸送可能になるまでの時間を短縮することができる。硬化の促進は、一般的には、養生室としばしば称される囲いまたはチャンバー内にコンクリート製品を置き、養生室内の温度および相対湿度を数時間にわたり制御することを含む。セメント系製品を包装および輸送のために十分に硬化させる前の約8~48時間、セメント系製品は養生室内に置かれてもよい。しかしながら、硬化を促進するためのエネルギー要件には、膨大なコストがかかる可能性がある。したがって、セメント系物品を硬化させる代替的な方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
セメント系物品を硬化させるための一実施形態は、セメントバインダーと、砂と、骨材と、水との混合物から形成されたセメント系物品を用意することを含む。セメントバインダーは、CaSiOを含有する。セメント系物品が、養生室内に置かれ、約40%~約80%の硬化相対湿度および約50℃~約150℃の硬化温度が、養生室内で維持される。セメント系物品は、硬化相対湿度および硬化温度を約4~約24時間の期間にわたり維持しながら、乾燥蒸気とCOとの混合物を養生室に流し込むことにより硬化させられる。乾燥蒸気とCOとの混合物におけるCOの濃度は、約2.5体積%~約20.0体積%であり、および/または養生室内のCOの濃度は、約2.5体積%~約50体積%であり、硬化したセメント系物品は、少なくとも15重量%のCO吸収を有する。
【0006】
セメント系物品を硬化させるための別の実施形態は、セメントバインダーと、砂と、骨材と、水との混合物から形成されたセメント系物品を用意することを含む。セメントバインダーは、CaSiOを含有し、セメント系物品は、養生室内に置かれる。約40%~約80%の硬化相対湿度および約50℃~約150℃の硬化温度が、養生室内で維持される。セメント系物品は、硬化相対湿度および硬化温度を約4~約24時間の期間にわたり維持しながら、乾燥蒸気とCOとの混合物を養生室に流し込むことにより硬化させられる。乾燥蒸気とCOとの混合物におけるCOの濃度は、約2.5体積%~約20.0体積%であり、および/または養生室内のCOの濃度は、約2.5体積%~約50体積%であり、セメント系物品において、Ca(OH)は、以下の反応のうちの少なくとも1つにより形成される。
2CaSiO(s)+7HO(l)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3Ca(OH)(s)、
および
2CaSiO(s)+7HO(g)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3Ca(OH)(s)。
また、乾燥蒸気とCOとの混合物からのCOは、セメント系物品と反応して、セメント系物品において、以下の反応のうちの少なくとも1つによりCaCOを形成する。
2CaSiO(s)+3・CO(g)+4HO(l)→3CaO・2SiO2・4HO(s)+3CaCO(s)、
および
Ca(OH)(s)+CO(g)→CaCO(s)+HO(l)
実施形態において、硬化したセメント系物品は、少なくとも15重量%、例えば少なくとも20重量%のCO吸収を有する。
【0007】
別の実施形態において、セメント系物品中に二酸化炭素を貯蔵する方法は、COの濃度が約2.5体積%~20.0体積%の、乾燥蒸気とCOとの混合物を用意すること、および/または養生室内のCOの濃度が約2.5体積%~約50体積%であり、セメントバインダーと、砂と、骨材と、水との混合物から形成されたセメント系物品を用意することを含む。セメントバインダーは、CaSiOを含む。セメント系物品が、養生室内に置かれ、約50%~約70%の硬化相対湿度および約50℃~約70℃の硬化温度が、硬化温度内で維持される。乾燥蒸気とCOとの混合物は、導入されて、4~24時間の期間にわたり養生室に流れ込み、それにより、セメント系物品が硬化させられる。セメント系物品中で、化学化合物Ca(OH)は、以下の反応のうちの少なくとも1つにより形成される。
2CaSiO(s)+7HO(l)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3Ca(OH)(s)、
および
2CaSiO(s)+7HO(g)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3Ca(OH)(s)
また、乾燥蒸気とCOとの混合物からのCOは、セメント系物品中のCaSiOおよびCa(OH)のうちの少なくとも1種と反応し、セメント系物品中で、以下の反応のうちの少なくとも1つによりCaCOを形成する。
2CaSiO(s)+3・CO(g)+4HO(l)→3CaO・2SiO2・4HO(s)+3CaCO(s)、
および
Ca(OH)(s)+CO(g)→CaCO(s)+HO(l)
乾燥蒸気とCOとのガス混合物により硬化させたセメント系物品におけるCO吸収は、少なくとも15重量%である。
【0008】
別の実施形態において、セメント系製品は、コンクリート混合物を鋳型に流し込み、セメント系物品を形成することを含むプロセスにより製造される。コンクリート混合物は、CaSiOを有するセメントバインダー、骨材、および水を含む。セメント系物品は、6時間~10時間の期間にわたり養生室内に置かれる。養生室は、約50℃~70℃の温度、および約50%~約70%の相対湿度の硬化環境を有していてもよい。乾燥蒸気およびCOが養生室に導入され、養生室内で流れ、硬化したセメント系物品が形成される。養生室に流れ込む乾燥蒸気およびCOにおけるCOについての体積パーセント(体積%)での濃度は、約5体積%~10体積%であり、乾燥蒸気およびCOは、セメント系物品の気孔に流れ込み、これを通って流れる。セメント系物品中で、化学化合物Ca(OH)は、以下の反応のうちの少なくとも1つにより形成される。
2CaSiO(s)+7HO(l)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3Ca(OH)(s)、
および
2CaSiO(s)+7HO(g)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3Ca(OH)(s)
また、COは、セメント系物品と反応して、セメント系物品において、以下の反応のうちの少なくとも1つによりCaCOを形成する。
2CaSiO(s)+3CO(g)+4HO(l)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3CaCO(s)、
および
Ca(OH)(s)+CO(g)→CaCO(s)+HO(l)
硬化したセメント系物品は、養生室から取り出され、15重量%以上の重量パーセント(重量%)のCO吸収を有する。いくつかの実施形態において、硬化したセメント系物品におけるCO吸収は、20重量%以上である。他の実施形態において、硬化したセメント系物品におけるCO吸収は、25重量%以上である。
【0009】
さらなる特徴および利点は、以下の詳細な説明に記載され、一部は、明細書から当業者に容易に明らかとなるか、または記載の明細書およびその特許請求の範囲、ならびに添付の図面で説明される実施形態を実践することにより認識されるであろう。
【0010】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明のどちらも、単に例に過ぎず、クレームの性質および特徴を理解するための概要または枠組みを提供することを意図していると理解されたい。添付の図面は、さらなる理解を提供するために同封されており、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施形態を図示しており、その説明とともに、様々な実施形態の原理および動作を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、セメント系物品を硬化させる方法を概略的に示す。
図2】本明細書に記載の1つ以上の実施形態による、セメント系物品を硬化させるための養生室を概略的に示す。
図3】異なる量の蒸気およびCOを含有する硬化環境を使用して図2に示される養生室内で硬化させられた3組のコンクリート試料の圧縮強度をグラフで示す。
図4】異なる量の蒸気およびCOを含有する硬化環境を使用して図2に示される養生室内で硬化させられた3組のコンクリート試料のX線回折スキャンをグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の文章には、本開示の多数の実施形態について広範な説明が記載されている。この説明は、単なる例として解釈されるべきであり、あらゆる可能な実施形態について説明するあらゆる可能な実施形態の意味合いが、不可能ではないにしても非実用的であることを述べてはおらず、本明細書に記載の特徴、特性、要素、組成、製品、工程または方法論は、すべてまたは一部が削除されても、本明細書に記載の任意の他の特徴、特性、要素、組成、製品、工程または方法論と組み合わされても、あるいは置き換えられてもよいと理解されるであろう。依然として特許請求の範囲に含まれる現在の技術またはこの特許の出願日以降に開発された技術のいずれかを使用して、多数の代替的な実施形態を実現することができるだろう。
【0013】
図1を参照すると、セメント系物品を硬化させる方法10は、蒸気と二酸化炭素(CO)との混合物(本明細書では「蒸気+CO」または「蒸気+COガス混合物」とも称される)を、セメント系物品(本明細書では「コンクリート物品」とも称される)がその内部に配置された養生室に同時に流し込むことを含む。本明細書で使用されるように、「セメント系物品(複数可)」または「コンクリート物品(複数可)」という用語は、硬化前にコンクリート混合物から形成されて最終製品として輸送する準備ができた物品を指し、「コンクリート製品(複数可)」の「セメント系製品(複数可)」という用語は、硬化させられて最終製品として輸送する準備ができたセメント系物品を指す。また、本明細書で使用されているように、特に明記しない限り、「蒸気」という用語は、「乾燥蒸気」、すなわち気相中の水(HO(g))を指し、「CO」という用語は、気相中のCOを指す。
【0014】
蒸気とCOとの混合物における養生室に流入するCOの濃度は、体積パーセント(体積%)で、約2.5体積%~約40体積%であり得る。すなわち、養生室に流れ込む蒸気+COの総体積に対するCOの体積は、約2.5体積%~約40体積%である。蒸気およびCOは、セメント系製品中の化合物、特にケイ酸三カルシウムと反応して、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを形成し、これらはどちらも、セメント系製品の強度を増加させる。また、COは、セメント系物品の硬化中に形成された水酸化カルシウムと反応して炭酸カルシウムを形成し、それにより、セメント系製品中にCOを封じ込めることができる。実施形態において、硬化の初期段階中に形成される水酸化カルシウムの量は、セメント系物品における水和熱が、COなしでの硬化と比較して低減されるように調節される。理論に縛られるものではないが、セメント系物品における水和熱の低減により、硬化の初期段階でのセメント系物品の熱膨張が少なくなり、セメント系物品において形成されるマイクロクラックが減少する。セメント系物品におけるマイクロクラックの減少により、硬化したセメント系製品の強度が増加する。
【0015】
さらに図1を参照すると、方法10は、工程100でコンクリートを混合することを含む。本明細書で使用されるように、「コンクリート」という用語は、セメントバインダーと、骨材と、水との混合物を指す。セメントバインダーは、ケイ酸三カルシウム(CaSiOまたは3CaO・SiO)、ケイ酸二カルシウム(CaSiOまたは2CaO・SiO)、アルミン酸三カルシウム(CaAlまたは3CaO・Al・Fe)、鉄アルミン酸四石灰(CaAlFe10または4CaO・Al・Fe)および石膏(CaSO・2HO)を含有するポルトランドセメントバインダーであってもよい。ポルトランドセメントバインダーの1つの非限定的な組成を、以下の表1に示す。
【表1】
表1にポルトランドセメントバインダーの組成が示されているが、本方法、および本明細書に記載の方法により形成されるセメント系製品は、他のタイプのセメントバインダーを含んでいてもよいと理解されるべきである。本明細書に記載の方法で使用可能なセメントバインダーの非限定的な例としては、急速硬化セメントバインダー、低熱セメントバインダー、耐硫酸塩セメントバインダー、白色セメントバインダー、ポゾランセメントバインダー、疎水性セメントバインダー、着色セメントバインダー、防水セメントバインダー、高炉セメントバインダー、空気連行セメントバインダー、高アルミナセメントバインダー、および膨張性セメントバインダーが挙げられる。
【0016】
セメントバインダー中の骨材は、化学的に不活性な固体状の物体を含んでいてもよい。骨材は、様々な形状およびサイズを有していてもよく、砂の微粒子から大きな粗い岩石までの様々な材料から作製されていてもよい。骨材としては、超軽量骨材、軽量骨材、普通骨材、および重量骨材が挙げられ得る。超軽量骨材の非限定的な例としては、バーミキュライト、セラミック球、およびパーライトが挙げられる。軽量骨材としては、膨張粘土、頁岩または粘板岩、または破砕レンガが挙げられる。普通骨材としては、破砕石灰岩、砂、川の砂利、または破砕再生コンクリートが、重量骨材としては、鋼鉄もしくは鉄のショット、または鋼鉄もしくは鉄のペレットが挙げられ得る。
【0017】
セメントバインダー、骨材および水に加えて、混和剤をコンクリート混合物に添加して、コンクリート混合物および/またはコンクリート混合物から形成されるセメント系製品の耐久性、加工性、強度などを増加させることができる。例えば、洗浄剤の形態の空気連行混和剤をコンクリート混合物に添加して、コンクリート混合物の耐久性および加工性を改善することができる。流動化剤混和剤(例えば、ポリマー添加剤)を添加して、加工可能なコンクリートに必要な水を減少させることにより、セメント系製品の強度を増加させることができる。砂糖などの遅延混和剤を使用して、コンクリート混合物の硬化時間を遅らせ、セメント系製品の長期強度を増加させることができる。あるいは、塩化カルシウムなどの促進混和剤を添加して、コンクリート混合物の硬化時間を加速させ、セメント系物品の初期強度を改善することができる。フライアッシュなどの鉱物混和剤を添加して、加工性、成形性および強度を改善することができ、金属酸化物などの顔料混和剤を添加して、セメント系製品に色を付けることができる。
【0018】
コンクリート混合物が工程102で鋳型に注がれ、セメント系物品が鋳型の形状に成形される。鋳型および成形されたセメント系物品の非限定的な例としては、ブロック(一般的にコンクリートブロックと称される)、ステア、カウンタートップ、プレハブ式コンクリート壁などが挙げられる。セメント系物品は、工程104で養生室内に置かれる。囲い200内の温度(本明細書では「硬化温度」とも称される)を制御することができる。例えば、囲い200内の硬化温度は、約40℃~約80℃であり得る。実施形態において、囲い200内の硬化温度は、約50℃~約70℃であり得る。他の実施形態において、囲い200内の硬化温度は、約55℃~約65℃であり得る。さらなる他の実施形態において、囲い200内の硬化温度は、約57℃~約63℃であり得る。囲い200内の相対湿度(本明細書では「硬化相対湿度」とも称される)を制御することもできる。例えば、囲い200内の硬化相対湿度は、約40%~約80%であり得る。実施形態において、囲い200内の硬化相対湿度は、約50%~約70%であり得る。他の実施形態において、囲い200内の硬化相対湿度は、約55%~約65%であり得る。さらなる他の実施形態において、囲い200内の硬化相対湿度は、約57%~約63%であり得る。
【0019】
実施形態において、セメント系物品は、養生室内に置く前に工程103で空気硬化させられてもよい。本明細書で使用されるように、「空気硬化」という用語は、周囲条件、すなわち周囲温度および周囲相対湿度でセメント系物品を硬化させることを指す。例えば、セメント系物品を、約1時間~8時間、例えば2時間の期間にわたり周囲空気中で硬化させてもよい。他の実施形態において、セメント系物品は、停止部104で養生室内に置く前に空気硬化させられない。
【0020】
工程104でセメント系粒子を養生室内に置いた後に、工程108で、蒸気+COガス混合物を養生室に導入する。実施形態において、蒸気は、第1の入口を通って養生室に流れ込み、COは、第1の入口とは異なる第2の入口を通って養生室に流れ込む。他の実施形態では、蒸気+COガス混合物を、単一の入口を通して養生室に導入する。工程106では、蒸気を発生させることができる。例えば、発電ボイラ、熱回収システムなどからの蒸気は、囲い200に圧送されてもよい。蒸気+COガス混合物におけるCOの濃度は、約2.5体積%~約40.0体積%であり得る。例えば、蒸気+COガス混合物におけるCOの濃度は、2.5体積%、3.0体積%、3.5体積%、4.0体積%、4.5体積%、5.0体積%、5.5体積%、6.0体積%、6.5体積%、7.0体積%、7.5体積%、8.0体積%、8.5体積%、9.0体積%、9.5体積%、10.0体積%、10.5体積%、11.0体積%、11.5体積%、12.0体積%、12.5体積%、13.0体積%、13.5体積%、14.0体積%、14.5体積%、15.0体積%、または15.5体積%、16.0体積%、18.0体積%、20.0体積%、25.0体積%、30.0体積%、または35.0体積%以上、かつ40.0体積%、35.0体積%、30.0体積%、25.0体積%、20.0体積%、19.5体積%、19.0体積%、18.5体積%、18.0体積%、17.5体積%、17.0体積%、16.5体積%、16.0体積%、15.5体積%、15.0体積%、14.5体積%、14.0体積%、13.5体積%、13.0体積%、12.5体積%、12.0体積%、11.5体積%、11.0体積%、10.5体積%、10.0体積%、9.5体積%、9.0体積%、8.5体積%、8.0体積%、7.5体積%、7.0体積%、6.5体積%、6.0体積%、または5.5体積%以下であり得る。実施形態において、蒸気+COガス混合物におけるCOの濃度は、約2.5体積%~約15.0体積%であり得る。他の実施形態において、蒸気+COガス混合物におけるCOの濃度は、約2.5体積%~約10.0体積%であり得る。
【0021】
セメント系物品は、工程108で約2時間~24時間の期間にわたり養生室内で硬化させられる。例えば、セメント系物品は、工程108で約4時間~約16時間の期間にわたり養生室内で硬化させられてもよい。実施形態において、セメント系物品は、6時間~約12時間の期間にわたり養生室内で硬化させられてもよい。他の実施形態において、セメント系物品は、約7時間~約9時間、例えば約8時間の期間にわたり養生室内で硬化させられてもよい。養生室内での硬化中に、蒸気+COガス混合物は、下記でより詳細に論じるように、セメント系物品の気孔に流れ込み、これを通って、セメントバインダーと反応して、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムを形成する。セメント系物品における水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの形成には、硬化プロセスにおける利点が2倍ある。特に、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウムの形成は、セメント系物品の強度の増加をもたらし、炭酸カルシウムの形成は、セメント系物品によるCO吸収(CO封じ込め)をもたらす。本明細書で使用されるように、「CO吸収」または「CO封じ込め」という用語は、セメント系物品またはセメント系製品におけるCOの長期貯蔵を指す。実施形態において、硬化したセメント系物品は、15重量%以上の重量パーセント(重量%)のCO吸収を有していてもよい。他の実施形態において、硬化したセメント系物品は、20重量%以上のCO吸収を有していてもよい。さらなる他の実施形態において、硬化したセメント系物品は、25重量%以上のCO吸収を有していてもよい。
【0022】
硬化したセメント系物品(セメント系製品)は、工程110で養生室から取り出される。セメント系製品は、工程112で空気硬化+水噴霧によりさらに硬化させられてもよい。セメント系製品の空気硬化+水噴霧としては、合計7日にわたる1日2回の空気中での硬化および水噴霧が挙げられ得る。セメント系製品は、工程114で空気硬化を使用してさらに硬化させられてもよい。例えば、セメント系製品は、さらに28日にわたり空気硬化させられてもよい。
【0023】
工程108での養生室内における硬化の間に、水は、セメントバインダーの化合物と反応して、これを水和させる。ケイ酸カルシウムの水和だけがセメント系製品の強度に寄与することができると理解されるべきであり、ケイ酸三カルシウムが、硬化の最初の7日以内に発現する強度のほとんどに関与することができ、ケイ酸二カルシウムの水和が、より長い時間で得られる強度に関与することができる。ケイ酸三カルシウムの水和は、以下の化学反応を介して起こる。
2CaSiO(s)+7HO(l)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3Ca(OH)(s)
(1)
ケイ酸二カルシウムの水和は、以下の化学反応を介して起こる。
2CaSiO(s)+5HO(l)→3CaO・2SiO・4HO(s)+Ca(OH)(s)
(2)
実施形態において、乾燥蒸気は、ケイ酸三カルシウムと反応して水酸化カルシウムを形成する液体状の水に凝縮する。すなわち、乾燥蒸気は、セメント系物品の気孔に流れ込み、その内部で凝縮して、ケイ酸三カルシウムと反応して水酸化カルシウムを形成する水分(水)を気孔内にもたらす。あるいは、またはそれに加えて、乾燥蒸気は、ケイ酸三カルシウムと直接反応して、以下の化学反応を介して水酸化カルシウムを形成する。
2CaSiO(s)+7HO(g)→3CaO・2SiO・4HO(s)
(3)
また、乾燥蒸気は、凝縮熱または伝導熱のいずれかを介してケイ酸三カルシウムに熱をもたらし、それにより、水酸化カルシウム形成の速度を上げることができる。
【0024】
工程108での養生室内における硬化の間に、蒸気とCOとの混合物におけるCOは、セメントバインダーのケイ酸カルシウムと反応して、炭酸カルシウムを形成する。特に、COは、セメント系物品中の気孔内で拡散し、水と溶媒和を起こしてCO(水溶液)を形成し、それから水和して炭酸(HCO)を形成する。炭酸はイオン化して、H、HCO およびCO 2-のイオンを形成する。Hイオンはセメント系のpHを低下させ、それにより、ケイ酸三カルシウムおよびケイ酸二カルシウムが溶解し、Ca2+およびSiO 4-のイオンを放出する。Ca2+イオンはCO 2-イオンと反応して、炭酸カルシウム(CaCO)を形成する。COとケイ酸三カルシウムとの全体反応は、以下の通りである。
2CaSiO(s)+3CO(g)+4HO(l)→3CaO・2SiO・4HO(s)+3CaCO(s)
(4)
COとケイ酸二カルシウムとの全体反応は、以下の通りである。
4CaSiO(s)+2CO(g)+8HO(l)→2(3CaO・2SiO・4HO)(s)+2CaCO(s)
(5)
ケイ酸カルシウムと反応するCOに加えて、ケイ酸カルシウムと水との反応(例えば、上記の反応(1)、(2)および/または(3)を介する)により形成された水酸化カルシウムは、以下の全体反応を介して炭酸カルシウムに変換されてもよい。
Ca(OH)(s)+CO(g)→CaCO(s)+HO(l)
(6)
したがって、COは、炭酸カルシウムの量を増加させながら、セメント系製品中の水酸化カルシウムの量を減少させることができる。
【0025】
セメント系物品におけるCOとケイ酸三カルシウムとの反応による炭酸カルシウムの形成、およびCOと水酸化カルシウムとの反応による炭酸カルシウムの形成により、セメント系製品の強度が増加すると理解されるべきである。またCOは、COが存在しない場合に上記の反応(1)、(2)、および/または(3)ごとに形成される水酸化カルシウムの少なくとも一部の形成を防止し、および/または形成された水酸化カルシウムの一部を炭酸カルシウムに変換する。すなわち、COが存在することにより、炭酸カルシウムが形成されるのみならず、本明細書に記載の方法を使用して形成されるセメント系物品内の水酸化カルシウムの形成および量も調節される。水酸化カルシウムの形成をそのように調節(例えば低減)することにより、蒸気のみでの硬化と比較して、セメント系物品における水和熱を低減させることができる。理論に縛られるものではないが、セメント系物品における水和熱を低減させることより、硬化の初期段階でのセメント系物品の熱膨張を減少させることができ、また硬化の初期段階でのセメント系物品におけるマイクロクラックを減少させることができる。セメント系物品におけるマイクロクラックの減少は、セメント系製品による強度の増加をもたらすと理解されるべきである。すなわち、セメント系製品における欠陥(マイクロクラック)が少ないと、蒸気のみでの硬化と比較して強度の増加が見られる。
【0026】
ここで図2を参照すると、本明細書に記載の方法を使用した、セメント系物品を硬化させるための養生室20が示される。養生室20は、壁210、床220、および屋根230により画定された囲い200を含む。複数のセメント系物品205が、囲い200内に置かれてもよい。第1の入口240および第2の入口250が含まれており、蒸気とCOとの混合物を囲い200に流し込むために使用され得る。実施形態において、蒸気は、1個の入口(入口240)を通って囲い200に流れ込むことができ、CO、例えば純粋(100体積%)なCOは、別個の入口(入口250)を通って囲い200に流れ込むことができる。あるいは、単一の入口、例えば第1の入口240または第2の入口250を使用して、蒸気とCOとの混合物を囲い200に流し込んでもよい。加湿器260およびヒーター270が、養生室20の囲い200内の相対湿度および温度を制御するために含まれていてもよい。
【0027】
蒸気とCOとの混合物におけるCOの濃度により、セメント系製品における水酸化カルシウムと炭酸カルシウムとの望ましい組み合わせがもたらされると理解されるべきである。特に、養生室20の囲い200に導入される蒸気とCOとの混合物におけるCOの濃度により、所望の量の水酸化カルシウムが形成され、そのため、所定の量の水酸化カルシウムが存在して強度がもたらされ、また炭酸カルシウムを形成するCOとの反応(例えば上記の反応(6)による)について所定の量が存在して、強度およびCO封じ込めがもたらされる。
【0028】
上記で具体化されたセメント系製品を形成する方法は、任意の適切なセメント系製品を形成するために使用することが可能である。本方法の実施形態により形成される物品の非限定的な例としては、コンクリートブロック、コンクリートの階段、コンクリートカウンタートップ、ならびにプレハブ式コンクリート壁および構造物が挙げられる。様々な実施形態について、以下の実施例によりさらに明確にする。
【実施例
【0029】
ここで図1~2を参照して、蒸気とCOとの混合物による硬化の効果を特定するために、3組のコンクリート圧縮試料を製造し、異なる環境下で硬化させた。同じ量のタイプのセメントバインダー、骨材、および同量の水を使用して、3組のコンクリート試料を製造した。1組目のコンクリート試料を、以下の硬化手順を使用して硬化させた:2時間にわたる空気硬化;8時間にわたる蒸気中での硬化(すなわち蒸気のみ);合計7日にわたる1日2回の空気硬化+水噴霧;28日にわたる空気中での硬化。2組目のコンクリート試料を、以下の硬化手順を使用して硬化させた:2時間にわたる空気硬化;8時間にわたる蒸気+10体積%のCO中での硬化(すなわち蒸気+5体積%のCO);合計7日にわたる1日2回の空気硬化+水噴霧;28日にわたる空気中での硬化。3組目のコンクリート試料を、以下の硬化手順を使用して硬化させた:2時間にわたる空気硬化;8時間にわたるCO中での硬化(すなわちCOのみ);合計7日にわたる1日2回の空気硬化+水噴霧;28日にわたる空気中での硬化。3組の試料それぞれの硬化手順の概要を、以下の表2に要約する。蒸気、蒸気+5体積%のCO、およびCOにおける硬化を、図2に示されるように、養生室内で実施した。養生室内の温度は60℃であり、相対湿度は60%であった。したがって、3組の試料の硬化における唯一の変数は、蒸気およびCOの濃度であった。
【表2】
【0030】
3組の試料をそれぞれ、養生室内で8時間にわたり硬化させた後、および7日にわたり1日2回空気硬化を水噴霧とともに行った後に、圧縮強度試験にかけた。圧縮強度試験の結果を図3に示す。養生室内で8時間にわたり硬化させた後に、1組目の試料(蒸気のみ)は22.5メガパスカル(MPa)の圧縮強度を有し、2組目の試料(蒸気+10体積%のCO)は24.2MPaの圧縮強度を有し、3組目の試料(COのみ)は4.7MPaの圧縮強度を有していた。したがって、2組目の試料(蒸気+10体積%のCO)は、1組目の試料(蒸気のみ)と比較して7.6%の強度増加を有し、3組目の試料(COのみ)と比較して415%の強度増加を有していた。7日にわたる1日2回の空気硬化+水噴霧の後に、1組目の試料(蒸気のみ)は29.8MPaの圧縮強度を有し、2組目の試料(蒸気+10体積%のCO)は34.8MPaの圧縮強度を有し、3組目の試料(COのみ)は29.2MPaの圧縮強度を有していた。したがって、2組目の試料(蒸気+10体積%のCO)は、1組目の試料(蒸気のみ)と比較して16.8%の強度増加を有し、3組目の試料(COのみ)と比較して19.2%の強度増加を有していた。
【0031】
CO吸収についても3組の試料を分析し、結果を以下の表3に要約する。以下の表3に示されるように、1組目の試料(水蒸気のみ)は、重量パーセント(重量%)で6.25重量%の平均CO吸収を有していた。2組目の試料(蒸気+10体積%のCO)は、20.05重量%の平均CO吸収を有していた。3組目の試料(COのみ)は、9.2重量%の平均CO吸収を有していた。したがって、2組目の試料(蒸気+10体積%のCO)は、1組目の試料(蒸気のみ)と比較して220%のCO吸収増加を有し、3組目の試料(COのみ)と比較して118%のCO吸収増加を有していた。したがって、蒸気+10体積%のCOによる硬化は、純粋なCOにおける硬化と比較して、CO封じ込めが増加した。上述のように、理論に縛られるものではないが、養生室20の内部250に導入された蒸気+COガス混合物におけるCOの濃度は、セメント系製品に強度をもたらし得る所望の量の水酸化カルシウムをもたらし、炭酸カルシウム形成の起点として機能する。
【表3】
【0032】
また3組の試料を、X線回折(XRD)を使用して、7日の空気硬化と水噴霧との後に、相または化合物の同定のために分析し、図4は、3つの試料のそれぞれのXRDスキャンをグラフで示す。1組目の試料(「蒸気」というラベルが付いている)のXRDスキャンに関して、水酸化カルシウム(Ca(OH))については比較的高いピークが観察される一方で、炭酸カルシウムについては比較的低いピークが観察される。3組目の試料(「CO」というラベルが付いている)のXRDスキャンに関して、水酸化カルシウムについては比較的低いピークが観察され、炭酸カルシウムについては比較的高いピークが観察される。この結果は、表3に示されるCO吸収と合致する。ただし、2組目の試料(蒸気+CO)のXRDスキャンを参照すると、水酸化カルシウムについて比較的低いピークが観察され、炭酸カルシウムについて最も高いピーク(1組目および3組目の試料と比較して)が観察される。したがって、表3に示されるCO吸収の結果と合致するXRDスキャンは、本明細書に記載の蒸気+COガス混合物による硬化が、蒸気のみおよびCOのみの硬化と比較して、セメント系製品によるCO封じ込めを増加させることを示す。
【0033】
本明細書に記載のセメント系製品を形成する方法には、蒸気とCOとの混合物が使用されるため、セメント系物品によるCO吸収は、蒸気のみの硬化およびCOのみの硬化と比較して大幅に増加する。また、本明細書に記載の蒸気とCOとの混合物は、セメント系製品の強度を増加させることができる。理論に縛られるものではないが、強度増加は、セメント系製品における炭酸カルシウムの形成および量の増加、ならびに/またはセメント系製品における欠陥の減少によるものである。本明細書に記載の方法を使用して製造されるセメント系製品のCO吸収および強度のそのような増加により、製造コストを削減し、CO封じ込めのための起点をもたらすことができる。
【0034】
特に明記しない限り、本明細書に記載の方法はいずれも、その工程を特定の順序で実行する必要があると解釈されることを意図したものではない。したがって、方法クレームによりその工程が従う順序が実際に記載されていない場合、または工程が特定の順序に限定されるべきであるとクレームまたは明細書に具体的に述べられていない場合、特定の順序が推測されることは意図されない。
【0035】
本明細書で使用されるように、「約」という用語は、分量、サイズ、配合、パラメーター、ならびに他の量および特性が正確ではなく、また正確である必要がなく、必要に応じて、許容誤差、変換率、四捨五入、測定誤差など、および当業者に公知の他の要素を反映して、近似値であっても、および/またはそれより大きくても、またはそれより小さくてもよいことを意味する。一般的に、分量、サイズ、配合、パラメーター、または他の量もしくは特性は、そのようであると明示的に述べられているかどうかに関係なく、「約」または「近似値」である。
【0036】
本明細書で使用される「または」という用語は、包括的であり、より具体的には、「AまたはB」という句は、「A、B、またはAおよびBの双方」を意味する。本明細書において、排他的な「または」は、例えば「AまたはBのいずれか」および「AまたはBのうちの1つ」などの用語により指定される。
【0037】
不定冠詞「1つの(aおよびan)」は、本発明の要素および構成要素を説明するために使用される。これらの冠詞の使用は、これらの要素または構成要素のうちの1つまたは少なくとも1つが存在することを意味する。これらの冠詞は通常、修飾名詞が単数名詞であることを示すために使用されるが、本明細書で使用されるように、冠詞「1つの(aおよびan)」には、特定の例で特に明記されていない限り、複数も含まれる。同様に、本明細書で使用される定冠詞「その(the)」も、特定の例で特に明記されていない限り、修飾名詞が単数でも複数でもよいことを意味する。
【0038】
当業者には、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更がなされ得ることが明らかであろう。本開示の趣旨および本質を組み込んだ開示される実施形態の修正、組み合わせ、部分的組み合わせ、および変形は、当業者であれば気付くことができるため、本開示の範囲は、添付のクレームの範囲内のすべてそれらの等価物を含むと解釈されるべきである。
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
実施形態1
セメント系物品を硬化させる方法であって、
Ca SiO を含むセメントバインダーと、骨材と、水との混合物から形成されたセメント系物品を用意することと、
前記セメント系物品を養生室内に置くことと、
前記養生室内の硬化相対湿度を約40%~約80%に維持することと、
前記養生室内の硬化温度を約50℃~約80℃に維持することと、
前記硬化相対湿度および前記硬化温度を約4時間~約24時間の期間にわたり維持しながら、乾燥蒸気とCO との混合物を前記養生室に流し込むことにより前記セメント系物品を硬化させることと、
を含み、
前記乾燥蒸気とCO との混合物におけるCO の濃度が、約2.5体積%~約20.0体積%であり、
Ca(OH) が、以下の反応のうちの少なくとも1つにより形成され、
2Ca SiO (s)+7H O(l)→3CaO・2SiO ・4H O(s)+3Ca(OH) (s)、および
2Ca SiO (s)+7H O(g)→3CaO・2SiO ・4H O(s)+3Ca(OH) (s)
前記乾燥蒸気とCO との混合物からのCO が、前記セメント系物品と反応して、前記セメント系物品において、以下の反応のうちの少なくとも1つによりCaCO を形成し、
2Ca SiO (s)+3CO (g)+4H O(l)→3CaO・2SiO ・4H O(s)+3CaCO (s)、およびCa(OH) (s)+CO (g)→CaCO (s)+H O(l)
前記硬化したセメント系物品が、15重量%以上のCO 吸収を含む、方法。
実施形態2
前記乾燥蒸気とCO との混合物を前記養生室に流し込むことが、乾燥蒸気を第1の入口を通して前記養生室に流し込み、純粋なCO 流を前記第1の入口とは異なる第2の入口を通して前記養生室に流し込むことを含み、前記乾燥蒸気を前記第1の入口を通して流し込むこと、および前記CO を前記第2の入口を通して流し込むことにより、前記養生室内のCO の濃度を約2.5体積%~約20.0体積%に維持する、実施形態1に記載の方法。
実施形態3
前記養生室に流れ込む前記乾燥蒸気とCO との混合物におけるCO の濃度が、約5体積%~約10体積%である、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4
前記硬化相対湿度が、約50%~約70%である、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5
前記硬化温度が、約50℃~約70℃である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6
前記セメント系物品を、約4時間~約16時間の期間にわたり前記養生室内で硬化させる、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7
前記セメント系物品を、約6時間~約10時間の期間にわたり前記養生室内で硬化させる、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8
前記硬化したセメント系物品が、20重量%以上のCO 吸収を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
実施形態9
前記硬化したセメント系物品が、25重量%以上のCO 吸収を含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10
約1時間~約4時間の期間にわたり前記養生室内で前記セメント系物品を硬化させる前に空気中で前記セメント系物品を硬化させることをさらに含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11
前記養生室内で前記セメント系物品を硬化させた後に、前記セメント系物品に空気硬化および水噴霧を行うことをさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12
前記セメント系物品に空気硬化および水噴霧を行った後に、前記セメント系物品を空気硬化させることをさらに含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態13
セメント系物品に二酸化炭素を貯蔵する方法であって、
乾燥蒸気とCO との混合物であって、約2.5体積%~約20.0体積%のCO の濃度を含む、前記乾燥蒸気とCO との混合物を用意することと、
Ca SiO を含むセメントバインダーと、骨材と、水との混合物から形成されたセメント系物品を用意することと、
前記セメント系物品を養生室内に置くことと、
前記養生室内の硬化相対湿度を約50%~約70%に維持することと、
前記硬化温度内の硬化温度を約50℃~約70℃に維持することと、
前記乾燥蒸気とCO との混合物を4~24時間の期間にわたり前記養生室に流し込み、前記セメント系物品を硬化させることと、
を含み、
Ca(OH) は、前記セメント系物品中で、以下の反応のうちの少なくとも1つにより形成され、2Ca SiO (s)+7H O(l)→3CaO・2SiO ・4H O(s)+3Ca(OH) (s)、および
2Ca SiO (s)+7H O(g)→3CaO・2SiO ・4H O(s)+3Ca(OH) (s)
前記乾燥蒸気とCO との混合物からのCO が、前記セメント系物品と反応して、前記セメント系物品において、以下の反応のうちの少なくとも1つによりCaCO を形成し、
2Ca SiO (s)+3CO (g)+4H O(l)→3CaO・2SiO ・4H O(s)+3CaCO (s)、および
Ca(OH) (s)+CO (g)→CaCO (s)+H O(l)
前記硬化したセメント系物品におけるCO 吸収が、15重量%以上である、方法。
実施形態14
前記乾燥蒸気とCO との混合物を前記養生室に流し込むことが、乾燥蒸気を第1の入口を通して前記養生室に流し込み、純粋なCO 流を前記第1の入口とは異なる第2の入口を通して前記養生室に流し込むことを含み、前記乾燥蒸気を前記第1の入口を通して流し込むこと、および前記CO を前記第2の入口を通して流し込むことにより、前記養生室内のCO の濃度を約2.5体積%~約20.0体積%に維持する、実施形態13に記載の方法。
実施形態15
前記硬化相対湿度が約50%~約70%であり、前記CO 吸収が20重量%以上であり、約1時間~約4時間の期間にわたり前記乾燥蒸気とCO との混合物中で前記セメント系物品を硬化させる前に空気中で前記セメント系物品を硬化させる、実施形態13または14に記載の方法。
図1
図2
図3
図4