IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フリント グループ ジャーマニー ゲーエムベーハーの特許一覧 ▶ クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

特許7374898官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを製造する方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20231030BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20231030BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231030BHJP
   B32B 27/10 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C08F8/14
C08F290/12
B32B27/32 C
B32B27/10
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2020529309
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2018082993
(87)【国際公開番号】W WO2019106082
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】17204389.5
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508373925
【氏名又は名称】エクシス ジャーマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】XSYS Germany GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 1, 77731 Willstaett, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン ピーチュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス テルザー
(72)【発明者】
【氏名】カロリーネ ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ クラウス
(72)【発明者】
【氏名】モリッツ ツェー. バイアー
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/097656(WO,A1)
【文献】特開2002-275211(JP,A)
【文献】国際公開第2007/119735(WO,A1)
【文献】特表2009-519121(JP,A)
【文献】特開2000-128994(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00377190(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 6/00-246/00
C08F 290/00-290/14
C08F 299/00-299/08
B32B 1/00-43/00
C08F 2/00-2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融物中で、成分Aとしての部分加水分解ポリ酢酸ビニルと、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有し、かつヒドロキシルまたはアセテート基に反応性を示す少なくとも1個の反応性基を有する、成分Bとしての反応性化合物とを、成分Cとしての少なくとも1種の安定剤の存在下で、かつ任意に第三級アミンおよびN含有ヘテロ環から成る群より選択される、成分Dとしての少なくとも1種の触媒の存在下で反応させることにより、ビニルアルコール単位と、酢酸ビニル単位と、官能化されたビニルアルコール単位とを含む官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを製造する方法であって、
その際、反応混合物中の安定剤の量が、0.01~5重量%の範囲にあり、
a) 任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの1つ以上を乾燥させるステップ、
b) 任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの2つ以上を予備混合するステップ、
c) 前記成分を、成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合することが可能な混合装置に供給するステップ、
d) 前記装置中の成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合して溶融物を生じさせ、前記溶融物中の成分AおよびBを反応させるステップ、
e) 任意に、得られた混合物を冷却するか、または成形および冷却するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
成分Bについて、ヒドロキシルまたはアセテート基に反応性を示す前記基が、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、ハロゲン化スルホニル基、酸ハロゲン化物基、カルボン酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、アルデヒド基、マレイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルが、官能化されたビニルアルコールとして、以下の単位(Ia)~(Id):
【化1】
[式中、R1、R2、R3は、独立して、水素であるか、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基であり、Xは、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状または環状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基であり、Yは、OまたはSであり、Zは、N-R4、SまたはOであり、ここで、R4は、水素であるか、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基である]
より選択される単位を1つ以上含む、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
成分Bが、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸誘導体である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記(メタ)アクリル酸誘導体が、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸エステル、または(メタ)アクリル酸無水物である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記混合装置が、混練機、共混練機、単軸押出成形機、共回転または逆回転二軸押出成形機、および多軸押出成形機から成る群より選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記成分の前記供給が、部分加水分解ポリ酢酸ビニルを最初に供給して順次実施される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記押出成形機の直径に対する長さの比が、20~150の範囲である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記成分の前記供給が、押出成形機の異なる部分で実施される、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
ステップd)における前記反応温度が、100℃~270℃である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
ステップe)における前記冷却が、冷却要素、冷却ロール、冷却ベルト、液体浴、冷却媒体流、噴霧冷却媒体、および/もしくはガス冷却、またはそれらの組み合わせにより実施される、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記冷却ステップ前に、成形ステップが実施される、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
ステップd)またはe)の後に実施されるさらなるステップが、押出成形物の粉砕、切断、乾燥、混合、溶解、分散、成形、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記部分加水分解ポリ酢酸ビニルの加水分解度が、50~99mol%の範囲にある、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記反応混合物中の安定剤の量が、0.05~5重量%の範囲にある、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
成分Dが、前記反応混合物中に存在し、かつ前記反応混合物中の成分Dの量が、0.01~5重量%の範囲にある、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルの官能化度が、0.5~20mol%の範囲にある、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
a) 以下のもの:
A) 成分Aとしての部分加水分解ポリ酢酸ビニル、
B) 少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有し、かつヒドロキシルまたはアセテート基に反応性を示す少なくとも1個の反応性基を有する、成分Bとしての反応性化合物、
C) 成分Cとしての少なくとも1種の安定剤0.01~5重量%、および
D) 任意に、第三級アミンおよびN含有ヘテロ環から成る群より選択される、成分Dとしての少なくとも1種の触媒
を用意し、任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの1つ以上を乾燥させるステップ、
b) 任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの少なくとも2つを予備混合するステップ、
c) 前記成分を、成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合することが可能な混合装置に供給するステップ、
d) 前記装置中の成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合して溶融物を生じさせ、前記溶融物中の成分AおよびBを反応させるステップ、
e) さらなる成分と、ステップd)で得られた官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルとを計量供給および混合し、流体混合物を形成するステップ、その際、前記さらなる成分が、ポリマー、フィラー、可塑剤、粘着防止剤、モノマー、添加剤、安定剤、架橋剤、バインダー、発色化合物、染料、顔料、酸化防止剤、開始剤、光開始剤、およびそれらの組み合わせから選択される、および
f) 前記混合物を基材に載せるステッ
含む、官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを含む層状組成物を製造する方法。
【請求項19】
ステップc)、d)、およびe)が、同じ混合装置内で実施される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記混合装置が、混練機、共混練機、単軸押出成形機、共または逆回転二軸押出成形機、および多軸押出成形機を含む群より選択される、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
前記層状組成物が、レリーフ前駆体またはコート紙である、請求項18から20までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応押出成形を使用して部分加水分解ポリ酢酸ビニルを製造する方法、それにより得られるポリマー、およびそれらを含有する組成物に関する。
【0002】
官能化されたポリ酢酸ビニルの製造は、公知であり、例えば、USRE2740、独国特許出願公開第3015419号明細書、欧州特許出願公開第0079514号明細書、独国特許出願公開第3322993号明細書、欧州特許出願公開第849635号明細書、および欧州特許出願公開第962828号明細書に記載されている。USRE2740には、硫酸カリウムおよびチオ硫酸ナトリウムの存在下で、ポリビニルアルコールとメタクリル酸無水物とのエステル化により、水中にて架橋ヒドロゲルを製造することが記載されている。独国特許出願公開第3015419号明細書には、3時間にわたり50℃でメタクリル酸無水物とともに塩化メチレンに懸濁した部分加水分解ポリ酢酸ビニルの転化が記載されている。続いて、ポリマーは、濾過により分離されて、乾燥させられる必要がある。欧州特許出願公開第0079514号明細書から、反応がアセトン中および60℃で実施される類似した方法が知られている。この場合でも、製造されたポリマーは、濾過により分離されて、乾燥させられる必要がある。独国特許出願公開第3322993号明細書には、第三級アミン(例えば、ピリジン誘導体)を、アセトン中で、またトルエン中で使用することによる方法の改善が記載されている。ここでも、濾過および乾燥が必要である。欧州特許出願公開第962828号明細書において、方法は、アルキルカーボネート(例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート)の混合物が溶媒として使用されるという点で修正されている。
【0003】
国際公開第96/18133号には、ポリビニルアルコールが水溶液中で不飽和アルデヒドまたは相応するアセタールと反応させられる方法が記載されている。
【0004】
これらの方法の欠点は、有機溶媒が使用され、反応終了後に除去される必要があることである。さらに、出発ポリマーは、完全に溶解するのではなく、単に膨潤しているだけであり、これにより不均一な反応がもたらされ、この反応は、コア内よりも、膨潤した粒子の表面においてより強い。これらの方法はバッチ式で実施されるが、連続的な作業プロセスが好ましい。
【0005】
欧州特許出願公開第670521号明細書には、約210℃の溶融物中での、カルボン酸無水物、特に分子内環状無水物によるポリビニルアルコールの転化であって、それによりカルボキシル基を有する側鎖が導入される転化が開示されている。よって、得られたポリマーをさらなる沈殿ステップにおいて精製して、水および有機溶媒を除去する必要がある。続いて、官能化されたポリビニルアルコールとグリシジルメタクリレートとが反応させられて、不飽和二重結合を有するポリビニルアルコールが得られる。この方法は、煩雑であり、かつ費用がかかる。
【0006】
独国特許出願公開第19925133号明細書には、押出成形による部分加水分解ポリ酢酸ビニルの変形およびグリシジルアクリレートの使用が記載されている。しかしながら、前のステップにおいて、ポリマーを軟化させるために、エチレングリコールまたはアルキルカーボネートなどの可塑剤がポリマーに配合される。この方法の欠点は、他のものが反応に不利な影響を与えることから、特定の可塑剤しか使用することができないことである。さらに、これらの可塑剤は、特定の用途において不所望な効果を有し得る。通常、可塑剤は、架橋することができず、抽出されることがあるため、これにより、生成物の硬度が上昇し得る。また可塑剤は、材料が幾つかの用途についてあまりに柔らかくなり過ぎる要因ともなり得る。
【0007】
特開平07173219には、溶融物中でのカルボン酸無水物による部分加水分解ポリ酢酸ビニルの修飾が記載されているが、二重結合を含む無水物は、おそらく反応中の架橋を理由に除外される。
【0008】
本発明の対象は、溶媒または可塑剤を使用することなくエチレン性不飽和基を部分加水分解ポリ酢酸ビニルに導入する単純な方法であって、不所望な不純物を含まず、かつ均一な分布のエチレン性不飽和官能基を有する、官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを製造する方法を提供することである。この方法は、好ましくは連続方式で機能し、より少ないプロセスステップを有するべきである。
【0009】
この対象は、溶融物中で、成分Aとしての部分加水分解ポリ酢酸ビニルと、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有し、かつヒドロキシルまたはアセテート基に反応性を示す少なくとも1個の反応性基を有する、成分Bとしての反応性化合物とを、成分Cとしての少なくとも1種の安定剤の存在下で、また任意に成分Dとしての触媒の存在下で反応させることにより、ビニルアルコール単位と、酢酸ビニル単位と、官能化されたビニルアルコール単位とを含む官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを製造する方法であって、
a) 任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの1つ以上を乾燥させるステップ、
b) 任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの少なくとも2つを予備混合するステップ、
c) これらの成分を、成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合することが可能な混合装置に供給するステップ、
d) この装置中の成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合して溶融物を生じさせ、成分AおよびBを溶融物中で反応させるステップ、
e) 任意に、得られた混合物を冷却するか、または成形および冷却するステップ
を含む方法により解決される。
【0010】
成分Aとして使用される部分加水分解ポリ酢酸ビニルは、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、および官能化されたビニルアルコール単位を含み、任意に、酢酸ビニルの重合の間におよび/またはこの重合後の反応により導入されたさらなる単位を含み得る。そのような他の単位は、部分加水分解ポリ酢酸ビニルのすべてのモノマー単位を基準として、0.1~50mol%、好ましくは0.1~25mol%、より好ましくは0.1~15mol%の量で存在していてもよい。そのような他の単位は、ビニル単位を有する他の化合物から、例えば、α-オレフィン、例えば、エチレンおよびプロピレン;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、およびオクタデシル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド誘導体、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、およびそれらの塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩または第四級塩、ならびにN-メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;ビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、およびステアリルビニルエーテル;ニトリル、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニルおよびフッ化ビニル;ハロゲン化ビニリデン、例えば、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン;アリル化合物、例えば、アリルアセテート、アリルアルコール、アリル、塩化アリル、および3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、1,4-ジアセトキシ-1-ブテン、および1,4-ジヒドロキシ-1-ブテン;不飽和ジカルボン酸、例えば、マレイン酸、イタコン酸、およびフマル酸、ならびにそれらの塩またはそれらのエステル;ビニルシリル化合物、例えば、ビニルトリメトキシシラン;酢酸イソプロペニル;などから由来し得る。好ましいさらなる単位は、例えば、エチレンのようなα-オレフィン、(メタ)アクリル酸およびその塩、(メタ)アクリル酸エステルからのビニル単位である。酢酸ビニルコポリマーのポリマー構造は、シンジオタクチック、イソタクチック、アタクチック、直鎖状、環状、分枝鎖状、グラフト状、もしくは樹枝状、またはそれらの組み合わせであり得る。統計コポリマーおよび交互またはブロックコポリマーを使用することが可能である。ポリマーは、有機溶媒または水溶液に不溶性であっても、可溶性であっても、それらの組み合わせであってもよい。ポリマーは、水または水溶液に対して、可溶性、分散性、または乳化性のいずれかであることが好ましい。
【0011】
出発時、すなわち官能化前の部分加水分解ポリ酢酸ビニルの加水分解度は、コモノマー単位を含む、部分加水分解ポリ酢酸ビニルに含まれるすべてのモノマー単位を基準として、0.01~99.9mol%の範囲、好ましくは50~99mol%の範囲、より好ましくは60~95mol%の範囲、最も好ましくは70~90mol%の範囲であることが一般的である。さらなる実施形態において、出発部分加水分解ポリ酢酸ビニルの粘度(4重量%の水溶液として測定)は、0.1~50mPa・sの範囲、好ましくは1~30Pa・sの範囲、より好ましくは2~10mPa・sの範囲にある。
【0012】
少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する、成分Bとして使用される反応性化合物は、部分加水分解ポリ酢酸ビニルのOH-またはOAc-基のうちの1個以上と反応可能な少なくとも1個の反応性基を有する。2個以上の反応性化合物の混合物も使用されてもよい。1個より多くの反応性基および/または1個より多くの炭素-炭素二重結合を有する化合物も使用することが可能である。成分Bの反応性化合物の反応性基は、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、アジリジン基、ハロゲン化スルホニル基、酸ハロゲン化物基、カルボン酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、アルデヒド基、マレイミド基、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル基、またはそれらの組み合わせから成る群より選択される。反応性基は、カルボン酸無水物基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、またはアルデヒド基であることが好ましい。最も好ましい反応性基は、カルボン酸無水物基およびカルボン酸基である。エチレン性不飽和基は、脂肪族またはヘテロ脂肪族環の一部を形成し得る置換または非置換炭素-炭素二重結合であってもよい。二重結合における置換基は、脂肪族であっても、ヘテロ脂肪族であっても、または芳香族であってもよい。エチレン不飽和二重結合は、ラジカル重合および/またはカチオン重合および/または架橋反応および/またはさらなる官能化反応を受けることが可能なことが好ましい。エチレン性不飽和基は、メタクリル基、アクリル基、ビニルエーテル基、スチレン基、アリルエーテル基、ビニルシラン基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、エポキシアクリレート基、またはそれらの組み合わせとして存在することが好ましい。好ましい実施形態において、反応性化合物Bは、メタクリル酸誘導体またはアクリル酸誘導体である。反応性化合物は、(メタ)アクリル酸ハロゲン化物、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸無水物、またはカルボン酸(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドまたは1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)用もしくはメタクリル酸の相応するNHS-エステル(N-ヒドロキシスクシンイミド)用の活性化試薬を使用することにより製造された誘導体であることが好ましい。最も好ましい反応性化合物は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸無水物、およびグリシジル(メタ)アクリレートである。特に好ましい反応性化合物は、メタクリル酸無水物、アクリル酸無水物、およびグリシジル(メタ)アクリレートである。反応性化合物は、リンカーを介してポリマーに共有結合されており、以下の構造単位(Ia)~(Id)のうちの少なくとも1つを有する。反応性化合物は、リンカーを介してポリマーに共有結合されている。リンカー単位は、以下の構造単位のうちの少なくとも1つを有する:エステル、チオエステルアミド、エーテル、チオエーテル、ウレタン、尿素、チオ尿素。
【0013】
反応混合物中の反応性化合物の量は、成分A、B、C、および任意にDを含有する反応混合物の総重量を基準として、0.1~30重量%、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~15重量%、最も好ましくは1~13重量%の範囲にある。
【0014】
成分Cとして使用される安定剤は、ラジカル捕捉化合物であり、そのような安定剤の混合物も用いることができる。安定剤の例は、立体障害フェノール、N-H、N-RまたはN-ORタイプのヒンダードアミンを含む立体障害アミン、ヒドロキノン、フェノチアジン、チオール、およびそれらの組み合わせである。そのような化合物は、例えば、「Handbuch Kunststoff Additive」、Ralph-Dieter Maier編、Michael Schiller、第4版、Carl Hanser Verlag Muenchen 2016に一覧にされている。ヒンダードフェノールまたはチオールまたは立体障害アミン、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、2-tert-ブチル-4-エチルフェノール、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシ-4-メチルベンゾフェノン、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(ジメチルアミノメチル)フェノール、3’,5’-ジクロロ-2’-ヒドロキシアセトフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2’,4’-ジヒドロキシ-3’-プロピルアセトフェノン、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2-ヒドロキシ-4-(オクチルオキシ)ベンゾフェノン、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール]、2,2’-メチレンビス(6-tert-ブチル-4-エチルフェノール)、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)、オクタデシル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリトリトールテトラキス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、メンチルアントラニレート、オクタデシル3,5ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート、ペンタエリトリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート);オキサデシル-3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート;エチレンビス(オキシエチレン)ビス-(3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリルプロピオネート、N、N’-ヘキサン-1、6-ジイルビス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ベンゼンプロパン酸、3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7~C9分枝鎖状アルキルエステル、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジペリルフェニル)ベンゾトリアゾール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N-(1-アセチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)-2-ドデシルスクシンイミド、2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの誘導体、ポリ[[6-[(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ]-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]-1,6ヘキサンジイル[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)イミノ]])、ビス(2、2、6、6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1、2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート、ビス(1、2、2、6、6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)-2-ブチル-2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)プロパンジオアート、2-6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、アルキル化ビスフェノール、例えば、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール);2-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-4,6-ビス(n-オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン、ジラウリルチオプロピオネート、ジドデシル3,3’-チオジプロピオネート、4-アリルオキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-tert-ブチル-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-[3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]エチルメタクリレート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(2-プロペニル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート、3,9-ビス(2,4-ジクミルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(4,6-ジフェニル-1、3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]フェノール、5-エチル-1-アザ-3,7-ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、エチル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシルサリチレート、またはフェノチアジンを使用することが好ましい。ヒドロキノンのなかでも、例えば、モノメチルエーテルヒドロキノン(MEHQ)、トリメチルジヒドロキノン、ポリマー化されたトリメチルジヒドロキノン、2,3-ジメチルヒドロキノン、2-メトキシヒドロキノン、メチル-p-ベンゾキノン、メチルヒドロキノン、テトラクロロ-1,4-ベンゾキノンが、好ましい。特に好ましい安定剤は、BHTおよびMEHQである。反応混合物中の安定剤の量は、成分A、B、C、および任意にDを含有する反応混合物の総重量を基準として、0.01~5重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、より好ましくは0.05~3重量%の範囲、最も好ましくは0.05~2重量%の範囲にある。
【0015】
安定剤に加えて、1種の触媒または様々な触媒の混合物も、成分Dとして使用されてもよく、ほとんどの場合、アミンまたはN含有ヘテロ環が、成分Dとして加えられる。アミンは、第一級アミンであっても、第二級アミンであっても、または第三級アミンであってもよい。アミンは、第三級アミンであることが好ましい。アミンは、芳香族アミンであっても、脂肪族アミンであっても、またはヘテロ環式アミンであってもよい。この方法で使用すべきアミンおよびN含有ヘテロ環の例は、ピリジンおよびピペリジンであり得る。この方法で使用されることが好ましいアミンおよびN含有ヘテロ環の例は、N-メチルイミダゾール、ピリジン、2-メチルイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、ジアミノビシクロオクタン、p-ジメチルアミノピリジン、p-ピロリジノピリジン、N,N-ベンジルジメチルアミン、N-エチルモルホリン、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、2-ヒドロキシエチルピペラジン、1,4-ジ-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、トリス[3-(ジメチルアミノ)プロピル]ヘキサヒドロ-s-トリアジンである。以下の触媒が使用されることは好ましい:N-メチルイミダゾール、ピリジン、2-メチルイミダゾール、ジメチルアミノピリジン、トリエチルアミン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、p-ジメチルアミノピリジン、およびp-ピロリジノピリジン。特に好ましい実施形態において、第三級アミンおよびN含有ヘテロ環の双方であるN-メチルイミダゾールが使用される。様々な触媒の組み合わせも使用され得る。反応混合物中の触媒の量は、反応混合物の総重量を基準として、0.01~5重量%の範囲、好ましくは0.05~4重量%の範囲、より好ましくは0.05~3重量%の範囲、最も好ましくは0.05~2重量%の範囲にある。
【0016】
官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルは、官能化されたビニルアルコール単位として、特に、以下の単位(Ia)~(Id):
【化1】
【0017】
[式中、R1、R2、およびR3は、独立して、水素であるか、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基であり、Xは、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状または環状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基であり、Yは、OまたはSであり、Zは、N-R4、SまたはOであり、ここで、R4は、水素であるか、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基である]
より選択される1個以上の単位を含む。
【0018】
別の実施形態において、R1およびR2は、水素であり、R3は、水素であるか、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基であり、Xは、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状または環状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基であり、Yは、OまたはSであり、Zは、N-R4、SまたはOであり、ここで、R4は、水素であるか、1~12個の炭素原子を有する直鎖状または分枝鎖状の脂肪族またはヘテロ脂肪族基であるか、3~12個の炭素原子を有する脂環式、ヘテロ環式または芳香族基である。R1およびR2は、水素であり、R3は、1~6個の炭素原子を有する直鎖状の脂肪族基であることが好ましい。R1およびR2は、水素であり、R3は、メチルまたはエチルであることがより好ましい。Xは、Oであることが好ましい。
【0019】
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、および官能化された単位に加えて、本発明の方法により得られる官能化されたポリ酢酸ビニル生成物は、任意に、酢酸ビニルの重合の間におよび/またはこの重合後の反応により導入されたさらなる単位を含み得る。そのような他の単位は、ビニル単位を有する他の化合物から、例えば、α-オレフィン、例えば、エチレンおよびプロピレン;(メタ)アクリル酸およびその塩;(メタ)アクリル酸エステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、およびオクタデシル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリルアミド誘導体、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、およびそれらの塩、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルアミンおよびその塩または第四級塩、ならびにN-メチロール(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体;ビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、およびステアリルビニルエーテル;ニトリル、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;ハロゲン化ビニル、例えば、塩化ビニルおよびフッ化ビニル;ハロゲン化ビニリデン、例えば、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン;アリル化合物、例えば、アリルアセテート、アリルアルコール、アリル、塩化アリル、および3,4-ジアセトキシ-1-ブテン、3,4-ジヒドロキシ-1-ブテン、1,4-ジアセトキシ-1-ブテン、および1,4-ジヒドロキシ-1-ブテン;不飽和ジカルボン酸、例えば、マレイン酸、イタコン酸、およびフマル酸、ならびにそれらの塩またはそれらのエステル;ビニルシリル化合物、例えば、ビニルトリメトキシシラン;酢酸イソプロペニル;などから由来し得る。当然のことながら、官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルは、出発ポリマーの一般構造を有する。官能化されたポリ酢酸ビニル生成物の構造は、シンジオタクチック、イソタクチック、アタクチック、直鎖状、環状、分枝鎖状、グラフト状、もしくは樹枝状、またはそれらの組み合わせであり得る。統計コポリマーおよび交互またはブロックコポリマーを得ることが可能である。官能化されたポリ酢酸ビニル生成物は、有機溶媒または水溶液に不溶性であっても、可溶性であっても、それらの組み合わせであってもよい。官能化されたポリ酢酸ビニル生成物は、水または水溶液に対して、可溶性、分散性、または乳化性のいずれかであることが好ましい。
【0020】
別の実施形態において、官能化されたポリ酢酸ビニル生成物の官能化度は、官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルのすべてのモノマー単位を基準として、0.01~99.9mol%の範囲、好ましくは0.1~30mol%の範囲、より好ましくは0.5~20mol%の範囲、最も好ましくは0.5~10mol%の範囲、特定の場合において、0.5~5mol%の範囲にある。
【0021】
別の実施形態において、官能化後の部分加水分解ポリ酢酸ビニルの加水分解度は、官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルに含まれるすべてのモノマー単位を基準として、0.01~99.8mol%の範囲、好ましくは50~99mol%の範囲、より好ましくは60~95mol%の範囲、最も好ましくは70~90mol%の範囲にある。
【0022】
さらなる実施形態において、官能化されたポリ酢酸ビニルポリマーの粘度(4重量%の水溶液として測定)は、0.1~50mPa・sの範囲、好ましくは1~30mPa・sの範囲、より好ましくは2~10mPa・sの範囲にある。
【0023】
ステップa)およびb)は、任意である。場合によって、出発材料を乾燥させ、水または残留溶媒を除去し、不所望な反応および/または泡形成を回避することが有利であり得る。乾燥について、当業者に公知のあらゆる手順が使用されてもよい。乾燥手順は、加熱、真空処理、水捕捉剤による処理、噴霧乾燥、凍結乾燥、およびそれらの組み合わせから成る群より選択され得る。
【0024】
また、2種以上の出発材料を予備混合して均一性を増加させることが有利であり得る。混合について、当業者に公知のあらゆる方法が使用されてもよい。混合手順は、乾式混合、共沈、溶融混合、溶解混合、別の成分の粒子への1種の成分のスプレーコーティング、別の成分の粒子への1種以上の成分の溶液のスプレーコーティング、それに続く溶媒の任意の除去、およびそれらの組み合わせの群より選択され得る。固体への液体の組み込みまたは液体への固体の組み込みによる混合が有利であり得、加熱および混合することが可能な装置の入口の数を低減させる。一実施形態において、成分の供給は、すべての成分または幾つかの成分と、続く他の成分との予備混合物が使用されるように実施される。
【0025】
ステップc)において、成分A、B、C、および任意にDを加熱および混合し、溶融物を形成することが可能な混合装置が設けられ、出発材料が、少なくとも1つの供給入口を使用して装置に供給される。本発明によると、熱可塑性プロセスについて当業者に公知の方法が使用され得る。同様に、当業者に公知かつこの目的に適した設備も使用され得る。ただし、溶融押出成形が好ましく、よって、溶融押出成形機を使用することが好ましい。
【0026】
一実施形態において、成分を加熱および混合し、溶融物を形成することが可能な装置は、混練機、(Buss)共混練機(co-kneader)、単軸押出成形機、共または逆回転二軸押出成形機、および多軸押出成形機から成る群より選択される。その形状を、期待される処理機能、例えば、取り込み、運搬、均質化、溶融および圧縮に適合させる必要のある適切な押出成形機スクリューの選定は、当業者の一般的な知見の範囲内である。
【0027】
幾つかの実施形態において、押出成形機の直径に対する長さの比は、20~150、好ましくは40~110、より好ましくは42~60の範囲である。一般的に、押出成形機は、少なくとも1個の輸送要素と、混合要素、混錬要素、バックポンピング要素、バリア要素、脱気要素、冷却要素およびそれらの組み合わせから成る群より選択される任意の他の要素とを含む。幾つかの要素は、異なる機能、例えば、脱気および混合を組み合わせることもできる。押出成形機に沿った異なる要素の位置は、例えば、温度プロファイルもしくは供給順またはそれらの組み合わせにより決定される。以下の構成が使用されることが好ましい。
【0028】
成分の供給は、まず、すべての成分の予備混合物が供給されるか、または幾つかの成分の予備混合物が供給されて、続いて他の成分が供給されるように実施され得る。
【0029】
好ましい実施形態において、成分の供給は、ポリ酢酸ビニルを最初に供給して順次実施される。(括弧内に示される順序での)成分を供給する幾つかの好ましい順番は、以下の通りである:
a. (1)ポリ酢酸ビニル、続いて、(2)安定剤、その後、(3)触媒、その後、(4)反応性化合物、
b. (1)触媒と混合されたポリ酢酸ビニル、続いて、(2)安定剤、および(3)反応性化合物、
c. (1)触媒および安定剤および反応性化合物と混合されたポリ酢酸ビニル、
d. (1)同時に供給されるポリ酢酸ビニルおよび安定剤、続いて、(2)触媒、および(3)反応性化合物、
e. (1)安定剤と混合されたポリ酢酸ビニル、続いて、(2)触媒、および(3)反応性化合物、
f. (1)安定剤の一部と混合されたポリ酢酸ビニル、続いて、(2)触媒、および(3)安定剤の一部と混合された反応性化合物、
g. (1)ポリ酢酸ビニル、続いて、(2)触媒、および(3)安定剤と混合された反応性化合物、
h. (1)ポリ酢酸ビニル、続いて、(2)安定剤と混合されたポリ酢酸ビニル、および(3)触媒、続いて、(4)反応性化合物、
i. (1)ポリ酢酸ビニル、続いて、(2)安定剤と混合された触媒、および(3)反応性化合物、
j. (1)安定剤および触媒と混合されたポリ酢酸ビニル、続いて、(2)反応性化合物、または
k. (1)ポリ酢酸ビニルおよび安定剤、続いて、(2)触媒と混合されたポリ酢酸ビニル、続いて、(3)反応性化合物。
【0030】
上記の順番d、e、f、gまたはj、最も好ましくはdまたはeが使用されることが好ましい。反応性化合物が添加される前に保護するためには、ポリ酢酸ビニル内に安定剤を均一に分布させることが有利である。反応性化合物が添加される前に触媒を均一に分布させて、均一な官能化を得ることが好ましい。反応性化合物の後に触媒が添加されると、高い濃度が局所的に生じ、これは、均一な反応にとって好ましくない。eの場合、ポリ酢酸ビニルおよび安定剤を同時に添加することで、dに記載のさらなる混合ステップが省略される。
【0031】
成分の供給は、成分の性質および添加の順に応じて、装置の異なる部分で実施され得る。また供給要素の位置は、装置の特定の位置で達成される温度に応じ得る。液体も固体も、適切な供給ユニットを使用して供給され得る。
【0032】
副生成物が生成される反応、例えば、縮合反応の場合、これらを少なくとも部分的に除去することが有利である。本発明で使用される反応は、たいてい縮合反応であり、縮合物は脱気要素により除去され得る。というのも、使用される温度では、大部分の縮合物、例えば、水または(メタ)アクリル酸が揮発可能であるからである。
【0033】
ステップc)の間、出発材料を混合および加熱して均一な溶融物を形成し、温度を、室温から、ポリマーが軟化および/または流動し始める温度に上昇させる。ステップd)において、温度を、反応性化合物と部分加水分解ポリ酢酸ビニルのOH-および/またはOAc-基との反応が開始する温度にさらに上昇させることができる。この温度は、反応の速度を増加させるためにさらに増加させてもよいが、分解および/または不所望な副反応が生じる温度未満である必要がある。ステップc)の間も、温度は、意図される反応が開始し、かつステップd)を短縮することが可能な水準に達し得る。触媒を使用すると、反応温度を低下させ、反応速度を増加させることができ、不所望な副反応を抑制するのに役立つ。押出成形機シリンダーの異なる帯域の温度は、0℃~270℃の範囲、好ましくは10℃~260℃の範囲、より好ましくは15℃~250℃の範囲、最も好ましくは15℃~230℃の範囲にあるように選択される。一般的に、押出成形機の供給部は、10~25℃に冷却され、温度は、2D~20Dの距離にわたり、70~270℃、好ましくは100℃~240℃の範囲、より好ましくは160℃~230℃の範囲、最も好ましくは180℃~210℃の範囲の押出成形機温度に徐々に増加させられ、押出成形機の端部までそこで保たれる。任意に、温度は、押出成形機の端部で徐々に低下し、溶融物温度を下げ、それから、溶融物が押出成形機から出る。押出成形機のダイ温度は、溶融物のスムーズな押出成形を保証すべく、一般的な知見に基づいて調整される。
【0034】
反応が終了したら、任意の冷却ステップe)において、混合物を積極的に冷却してもよい。これは、例えば、反応をある段階で停止または遅延させるべき場合、または混合物を熱に敏感な容器に詰める必要がある場合に、有利であり得る。冷却は、当業者に公知の方法で実施され得る。使用すべき冷却法の例は、例えば、押出成形機に結合した冷却要素による冷却であって、水または他の冷却液が、要素、冷却ロール、冷却ベルトを冷却するために使用され得る冷却であるか、押出成形される材料を、例えば水または他の液体が充填された液体冷却浴に通すことであるか、混合物またはその組み合わせに、冷却液体を噴霧、またはガス、好ましくは空気を吹き付けることである。
【0035】
場合によって、冷却ステップの前に成形ステップを実施し、それにより、ストランドまたはプロファイル、フィルム、テープ、プレート、チューブ、ロッド、またはペレットのうちの1つ以上を形成することが推奨され得る。ペレットの形成は、例えば、押出成形された材料を押出成形機のダイにて直接切断することにより、または形成されたプロファイルを切断することにより行われ得る。切断について、回転ブレードが使用され得る。成形は、相応する形状を有するダイの使用および/またはそれらの切断により実施することが可能である。形成および冷却の組み合わせも、例えば、水中ペレット化で使用することが可能である。
【0036】
任意に、さらなるステップが冷却後に実施され得る。そのようなステップは、押出成形物の粉砕、切断、乾燥、混合、溶解、分散、カレンダー加工、積層化、成形、ペレット化、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0037】
本発明の方法により得られる官能化されたポリ酢酸ビニルは、バインダー、架橋剤、機能性コーティング(例えば、バリア層)、硬化剤、改質剤、接着剤、またはそれらの組み合わせとして使用することが可能である。
【0038】
本発明の方法により得られる官能化されたポリ酢酸ビニルは、
i) 上記の方法により得られる少なくとも1種の官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを用意するステップ、
ii) 官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルとさらなる成分とを計量供給および混合し、流体混合物を形成するステップ、
iii) 混合物を基材に載せるステップ、および
iv) 任意のさらなるステップ
を含む、層状組成物の製造のために使用することが可能である。
【0039】
本発明の方法により得られる少なくとも1種の官能化されたポリ酢酸ビニルまたはそのようなポリマーの混合物は、ステップi)で用意され、次のステップii)において、計量供給され、さらなる原料と混合されて、流体混合物を形成する。そのような方法は、乾式混合、撹拌、溶解、分散、乳化、溶融、押出成形、およびそれらの組み合わせであり得る。これは、当業者に公知の方法を使用して実施され得る。押出成形および溶解または分散が使用されることが好ましい。流体混合物は、溶融物、溶液、懸濁液、エマルション、またはそれらの組み合わせであり得る。場合によって、例えば溶媒を蒸発させて固体含量を増加させることにより、または濾過して不所望な粒子を除去することにより、混合物の一部を除去することが有利であり得る。
【0040】
その後、ステップiii)において、流体混合物は、当業者に公知の方法を使用して、例えば、ダイを通した押出成形、コーティング、積層化、カレンダー加工、噴霧、蒸発、堆積、およびそれらの組み合わせにより基材に載せられる。押出成形および/またはコーティングにより載せることが好ましい。場合によって、溶媒が除去されてフィルムが形成され、その後、このフィルムが基材上に積層させられる。基材の性質について制限はなく、基材は、3次元のフィルムもしくはシート状であっても、繊維、ロッドもしくはチューブの形態であっても、またはそれらの組み合わせであってもよい。基材は、金属、天然もしくは人工ポリマー、木材、紙、セラミック、石材、またはそれらの組み合わせであってもよい。基材は、金属またはポリマーのフィルムまたはシートであることが好ましい。
【0041】
乾燥、冷却、積層化、さらなる層の適用、成形、切断、およびそれらの組み合わせの群より選択される任意のさらなるステップiv)において、層状組成物は、その最終的な使用のために調整され得る。
【0042】
溶融物中で、成分Aとしての部分加水分解ポリ酢酸ビニルと、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有し、かつヒドロキシルまたはアセテート基に反応性を示す少なくとも1個の反応性基を有する、成分Bとしての反応性化合物を、成分Cとしての少なくとも1種の安定剤の存在下で、また任意に成分Dとしての触媒の存在下で反応させることにより、ビニルアルコール単位と、酢酸ビニル単位と、官能化されたビニルアルコール単位とを含む官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを製造する方法。
【0043】
また本発明は、
a) 以下のもの:
A) 成分Aとしての部分加水分解ポリ酢酸ビニル、
B) 少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有し、かつヒドロキシルまたはアセテート基に反応性を示す少なくとも1個の反応性基を有する、成分Bとしての反応性化合物、
C) 成分Cとしての少なくとも1種の安定剤、および
D) 任意に、成分Dとしての触媒
を用意し、任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの1つ以上を乾燥させるステップ、
b) 任意に、成分A、B、C、および任意にDのうちの少なくとも2つを予備混合するステップ、
c) これらの成分を、成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合することが可能な混合装置に供給するステップ、
d) この装置中の成分A、B、C、および任意にDを加熱、溶融、および混合して溶融物を生じさせ、溶融物中でB中の成分Aを反応させるステップ、
e) さらなる成分を計量供給および混合し、流体混合物を形成するステップ、
f) 混合物を基材に載せるステップ、および
g) 任意のさらなるステップ
を含む、官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルを含む層状組成物を製造する方法に関する。
【0044】
この方法において、ステップa)~d)は、上記の方法のステップa)~d)に対応し、上記と同じ方法および条件が適用される。ステップe)において、さらなる成分が、計量供給され、前述のステップで得られた官能化された部分加水分解ポリ酢酸ビニルと混合される。成分A、B、C、およびDの計量供給および混合は、先に記載のように実施され、好ましくは、単一の押出成形機が、すべての混合および反応ステップに使用される。固体および/または液体の供給は、異なる位置および異なる順番で実施されてもよい。
【0045】
さらなる成分は、さらなるポリマー、フィラー、可塑剤、粘着防止剤、モノマー、添加剤(例えば、安定剤、染料)、安定剤、架橋剤、バインダー、発色化合物、染料、顔料、酸化防止剤、開始剤、光開始剤、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される。
【0046】
さらなるポリマーおよびバインダーとしては、水溶液、有機溶媒、または双方の組み合わせのいずれかにおいて可溶性、分散性、または乳化性のいずれかであるものが使用される。適切なポリマーバインダーは、活版印刷版の製造に従来的に使用されているものであり、例えば、完全または部分加水分解ポリビニルエステル、例えば、部分加水分解ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール誘導体、例えば、部分加水分解酢酸ビニル/アルキレンオキシドグラフトコポリマー、または例えば欧州特許出願公開第0079514号明細書、欧州特許出願公開第0224164号明細書もしくは欧州特許出願公開第0059988号明細書に記載の、ポリマー類似反応により後からアクリレート化されたポリビニルアルコール、およびそれらの混合物である。また、ポリマーバインダーとしては、例えば欧州特許出願公開第00856472号明細書または西独国特許出願公開第1522444号明細書に記載の、水または水/アルコール混合物に可溶のポリウレタンまたはポリアミドも適している。これらのポリマーバインダーは、混合物の総量の20~98、好ましくは50~90重量%を占めることが一般的である。
【0047】
フィラーとしては、有機および無機粒子が使用され得る。有機フィラーは、人工もしくは天然ポリマー、顔料、ワックス、炭素、木材、またはそれらの組み合わせであり得る。例えば、デンプンおよび誘導体、セルロースおよび誘導体、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ(エチレン)ケトン、ポリオキシメチレン(POM)、ポリテトラヒドロフラン、またはポリ(アルファメチルスチレン)が使用され得る。無機フィラーは、金属、合金、塩、ガラス、またはそれらの組み合わせであり得る。カーボンブラック、長石、粘土、酸化ケイ素、ガラス、石英、シリカ、炭酸カルシウム、雲母、タルク、およびステアリン酸金属塩から成る群より選択される少なくとも1つ以上を使用することが可能であり、シリカおよび/または炭酸カルシウムを使用することが特に好ましい。フィラーは、他の成分との架橋または結合形成をもたらし得る反応性基で変性されていてもよく、特に、(メタ)アクリレート化された粒子が好ましい。フィラーが、微粒子形態、特に球形またはほぼ球形で存在すると有利であり、粒径は、約0.1~20μm、好ましくは0.5~15μm、より好ましくは1~10μmの範囲にある。
【0048】
混合物の調製に適したモノマーは、光重合可能かつバインダーと適合したものである。このタイプの有用なモノマーは、100℃超の沸点を有することが一般的である。これらのモノマーは、3000未満、好ましくは2000未満の分子量を有することが一般的である。
【0049】
適切なモノマーの例は、アクリル酸および/またはメタクリル酸と一価または多価アルコールとのエステル、例えば、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタン-1,4-ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサン-1,6-ジオールジ(メタ)アクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジ、トリ、およびテトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ならびに3,12-ジヒドロキシ-1,5,10,14-テトラオキサテトラデカ-1,14-ジイルジ(メタ)アクリレートである。他の適切な化合物は、脂肪族モノカルボン酸のビニルエステル、例えば、ビニルオレエート;アルコールのジビニルエーテル、例えば、オクタデシルビニルエーテルおよびブタン-1,4-ジオールジビニルエーテル;フマル酸およびマレイン酸のジエステル;ならびに末端OH基を有するオリゴブタジエンとマレイン酸および/またはメタクリル酸との反応生成物である。アルケンカルボニルアミノ-N-メチレンエーテル、例えば、エチレングリコールビス-、プロパンジオールビス-、ブタンジオールビス-、ジエチレングリコールビス-、グリセロールビス-もしくはトリス-もしくはペンタエリトリトールテトラキス(メタクリルアミド-N-メチレン)エーテル、または相応するアクリルアミド-N-メチレンエーテルも適している。これらのモノマーのうち、3,12-ジヒドロキシ-1,5,10,14-テトラオキサテトラデカ-1,14-ジイルジ(メタ)アクリレートおよびエチレングリコールビス-、グリセロールビス-、およびグリセロールトリス(メタアクリルアミド-N-メチレン)エーテルが、特に有利である。例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸との反応により、またはモノまたはジイソシアネートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの、また必要に応じてヒドロキシル含有ポリエステルまたはポリエーテルとの反応により得られるエポキシおよびウレタン(メタ)アクリレートも適している。アクリルアミドおよびメタクリルアミドの誘導体、例えば、それらのN-メチロール誘導体と、一価または多価アルコール、例えば、エチレングリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパンまたはオリゴマー状もしくはポリマー状のエチレンオキシド誘導体とのエーテルも適している。モノマーは、1~50重量%の幅広い濃度範囲、好ましくは10~40重量%の範囲、より好ましくは15~35重量%の範囲で混合物に添加され得る。
【0050】
開始剤としては、熱的または光化学的に活性化可能な化合物が使用される。適切な熱開始剤は、ペルオキシド、ヒドロペルオキシド、アゾまたは硫黄化合物、硫黄(元素硫黄)、塩化硫黄、二塩化硫黄、メルカプト化合物、スルフィド化合物、ジスルフィド化合物、ポリスルフィド化合物、チウラム化合物、チオカルバミン酸化合物、および多官能メルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チウラム化合物、チオカルバミン酸化合物、および多官能メルカプト化合物である。適切な化合物は、例えば、ジクミルペルオキシド、α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン(および2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、セレニウムジメチルジチオカルバメート、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリトリトールテトラキスチオプロピオネート、トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)イソシアヌレート、およびジペンタエリトリトールヘキサキスチオプロピオネート、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、ならびにアゾビスイソブチロニトリルである。
【0051】
適切な光開始剤または光開始剤系は、放射線感受性記録材料(radiation-sensitive recording materials)についての従来のもの、例えば、フリーラジカル光開始剤、例えば、ベンゾインまたはベンゾイン誘導体、対称または非対称な置換ベンジルケタール、例えば、ベンジルジメチルケタールまたはベンジル1-メチル1-エチルケタール、ジアリールホスフィンオキシド、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドまたは2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートまたはアシルジアリールホスフィンオキシド、ジアシルホスフィンオキシドまたは置換および非置換キノン、例えば、エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、ベンゾフェノンまたは4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンである。トリアジンおよびヘキサアリールビスイミダゾールも適している。
【0052】
これらは、単独で使用されても、共開始剤との、例えば、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンを有するエチルアントラキノンとの、または第三級アミンもしくはホスフィン、例えばトリフェニルホスフィンを有するジアシルホスフィンオキシドとの混合物として使用されてもよい。光開始剤は、混合物中のすべての成分の合計を基準として、0.1~10、好ましくは0.2~5重量%の量で、放射線感受性混合物中に含有されることが一般的である。
【0053】
可塑剤としては、以下の化合物のうちの1つまたは組み合わせが使用され得る:ポリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、N-アルキルベンゾールスルホンアミド、フタレートおよびそれらの混合物、脂肪フタル酸エステル(aliphthatic acidesters)、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート;グリコールエステル、例えば、ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートまたはトリエチレングリコールジカプリル酸エステル;リン酸エステル、例えば、トリクレシルホスフェートまたはトリフェニルホスフェート;脂肪族ジエステル、例えば、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバセテート、ジブチルセバセテート、ジオクチルアゼレートまたはジブチルマレエート;ペンタエリトリトールポリオキシエチレンエーテル;ポリグリシジルメタクリレート;トリエチルシトレート;グリセリントリアセチルエステルおよびブチルラウレート。可塑剤の濃度は、混合物の1~30重量%、好ましくは1~20重量%、より好ましくは1~15重量%、最も好ましくは3~10重量%の範囲にある。
【0054】
さらに、さらなる助剤および添加剤、例えば、適切な染料、顔料またはフォトクロミック添加剤が、0.0001~2重量%の量で使用され得る。これらは、露出特性の制御のため、識別のため、露出結果の直接の監視のため、または審美目的のために役立つ。この選択についての前提条件は、これらが混合物の光重合を妨害しないことである。例えば、ニュートラルレッド(C.l.50040)、サフラニンT(C.l.50240)、ロダニルブルー、ローダミンDの塩またはアミド(ベーシックバイオレット10、C.l.45170)、メチレンブルーB(C.l.52015)、またはソルベントブラック3(C.l.26150)などの可溶性フェナジニウム、フェノキサジニウム、アクリジニウム、およびフェノチアジニウム染料が適している。これらの染料は、化学光の不在下では染料を還元しないが、露光されると励起電子状態の染料を還元することが可能な十分な量の還元剤と一緒に使用することも可能である。そのような穏やかな還元剤の例は、アスコルビン酸、アネトール、チオ尿素またはヒドロキシルアミン誘導体、特に、N-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミンの塩、好ましくはカリウム、カルシウム、およびアルミニウムの塩である。多くの場合において、3~10倍の量の染料を添加することが有用であると証明された。安定剤および酸化防止剤としては、先に記載の化合物が添加されてもよく、それらの濃度は、混合物の重量を基準として、0.01~5重量%、好ましくは0.1~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%の範囲にある。
【0055】
好ましい実施形態において、さらなる成分は、同じ混合装置、特に、先のステップc)およびd)で使用された同じ押出成形機に計量供給される。すなわち、ステップc)、d)、およびe)は、同じ混合装置内で実施される。
【0056】
ステップf)において、混合物は、当業者に公知の方法、例えば、ダイを通した押出成形、カレンダー加工、積層化、およびそれらの組み合わせを使用して、ステップiii)について先に記載のように、基材に載せられる。スリットが形成されたダイに通す押出成形により、または2つの基材上もしくはその間に溶融物をカレンダー加工することにより、載せることが好ましい。
【0057】
適切な寸法安定性基材の例は、金属、例えば、鋼、アルミニウム、銅もしくはニッケル、またはプラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミドおよびポリカーボネート、織布および不織布、例えば、ガラス繊維織物、ならびにガラス繊維とプラスチックとを含む複合材材料のプレート、シート、ならびに円錐形および円筒形のスリーブである。
【0058】
特に適切な寸法安定性基材は、寸法安定性基材シートおよび金属シート、例えば、ポリエチレンもしくはポリエステルシートまたは鋼もしくはアルミニウムシートである。これらの基材シートは、50~1100μm、好ましくは75~400μm、例えば約250μmの厚さであることが一般的である。これらの基材シートは、薄い接着促進層、例えば、1~5μmの厚さの層で、混合物に面する側の基材シートにコーティングされ得る。ステップd)、e)、およびf)の間またはその最中に、温度変化を実施して、例えば、粘度を調整するか、または成分の分解を防止してもよい。ほとんどの場合、温度を下げてもよいが、例えば溶融または軟化温度が高い化合物が添加される場合、温度を増加させる必要もあり得る。
【0059】
乾燥、冷却、積層化、さらなる層の適用、成形、切断、およびそれらの組み合わせから成る群より選択され得る任意のさらなるステップg)において、層状組成物は、その最終的な使用のために調整されてもよい。任意のステップg)において、さらなる層、例えば、カバーシート、マスク層、またはバリア層は、例えば積層化またはコーティングにより施与されることが好ましく、得られる層状複合材は、望ましい形状に切断されるか、または平らまたは円筒形の担体に取り付けられる。
【0060】
層状組成物は、レリーフ前駆体またはコート紙として使用され得る。レリーフ前駆体は、さらに処理されて、フレキソ印刷版、活版印刷版、タンポンプレス版、直接(レーザーで)彫刻可能なプレート、グラビア版、凹版、メータープレート(mater plate)、またはマイクロ流体装置として使用され得る。
【0061】
方法:
粘度:
測定のために、蒸留水中で4重量%の溶液を調製した。これらの測定は、DIN53015に準拠して、落球式粘度計において実施された。
【0062】
加水分解度:
加水分解度は、ビニルアルコール単位に加水分解された酢酸ビニル単位のパーセンテージを意味し、以下の等式により計算される。1gの物質中で加水分解によりエステルから放出される酸を中和するために必要なmgKOHの数であるエステル値についてのEV標準。これは、EN ISO3681に準拠して測定される:
加水分解度=100x(100-0.1535xEV)/(100-0.0749xEV)
【0063】
エステル値(EV):
およそ1gの出発部分加水分解ポリ酢酸ビニルを、250mlの丸底フラスコに秤量し、70mlの蒸留水と混合し、その後、これが溶解するまで還流で加熱した。冷却後、これを、0.1Nの水酸化カリウムでフェノールフタレインに対して中和した。中和が完了したら、0.1Nの水酸化カリウム50mlを添加し、還流で1時間にわたり混合物を沸騰させる。余剰な苛性溶液を、呈色が再び起こらなくなるまで、指示薬としてのフェノールフタレインに対して、0.1Nの塩酸を用いて、加熱しながら逆滴定する。ブランク試験を同時に実施する。
【0064】
エステル値= a*b*5.61/E
a=0.1Nの水酸化カリウムのmlでの消費量
b=ブランク試験における0.1Nの水酸化カリウムのmlでの消費量
E=出発部分加水分解ポリ酢酸ビニルの秤量量(乾燥)
溶解度試験:
およそ90gの蒸留水/n-プロパノール(w%、75/25)混合物を、250mlの丸底フラスコに秤量し、10gの部分加水分解ポリ酢酸ビニルと混合し、これを、撹拌しながら官能化させ、その後、4時間にわたり80℃に加熱した。その後、クリアランス(clearance)、濁り度、粒子量、凝集、またはクランピング(clumping)について詳細に、溶液の目視評価を実施する。
【0065】
官能化度:
以下で、メタクリル酸(MAA)で官能化させられた部分加水分解ポリ酢酸ビニルについて、方法を説明する。他の官能化について、この方法を適宜使用してもよい。第一のステップにおいて、測定すべき試料を洗浄し、反応の残留物、特にモノマーを除去する。よって、約12gの試料を、200gのアセトンにより6時間にわたり56℃にてソックスレー内で抽出する。続いて、これらを、真空(約100mbar)のもと2時間にわたり70℃で乾燥させる。乾燥した試料から、n-プロパノール50重量%、水50重量%の混合物を使用して、10重量%の溶液を調製し、固体含量を記録する。この溶液5gおよび水酸化カリウム溶液2g(水溶液2mol/L)を50mLのバイアルに秤量する。試料を4時間にわたり93℃で調温処理する。室温に冷却した後に、3gのHCL(2mol/L)を添加することにより溶液を中和する。
【0066】
続いて、バイアルを閉じ、45分にわたりIKA130Basic Ruettler(IKA)を用いて450U/minで振とうさせる。その後、デカノールを内部標準として含有する35gのアセトン(1500gのアセトン/0.51gの1-デカノール)を添加する。これらの試料を、IKA130Basic Ruettler(IKA)を用いて450U/minで1.5時間にわたり混合する。この溶液を、2mLのGCバイアルにサンプリングし、0.25μmのシリンジフィルタを使用して濾過する。これらのバイアルを、オートサンプラーに入れ、ソフトウェアChromeleon(バージョン7.2.)を使用するTriPlus100LSガスクロマトグラフ(Thermo Fisher Scientific)を備えたTRACE1300GCで分析する。メタクリル酸(MAA)および酢酸(AA)についての値が、mg/gで記載されている。長さ50m、220℃で0.25mmのカバレッジ、および175kPaを有するFFAPカラム(Chromatographie Service GmbH)と、FID検出器と、キャリアガスとしての水素(6.0、Air Liquide)とを使用する。
【0067】
この分析は、メタクリル酸および酢酸のモル量が、ポリマー中の相応する単位(酢酸ビニル単位および官能化された単位)のモル量に相応すること、ならびにビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、および官能化された単位のモル部分が合計100%になることを想定して行われる。GC分析からのメタクリル酸(mg/g)および酢酸(mg/g)についての値は、官能化されたポリマーの総量(g)を使用して計算され、それにより、mMAAおよびmAAの質量が、gで得られる。この計算は、
【数1】
により行われる。
【0068】
%での官能化度は、
【数2】
である。
【0069】
実施例
反応押出成形実験を、スクリュー径27mmおよびL/D比44を有するLeistritz ZSE27HP二軸押出成形機を用いて実施した。帯域の長さは4Dであったため、押出成形機は11個の帯域を有している。原材料の供給を帯域1および2内で実施した。真空を帯域10内で適用し、揮発物を除去した。以下の温度プロファイルをすべての実験について使用した:帯域1~3:15℃/50℃/120℃、帯域4~11 190℃。ダイ温度を190℃に設定した。押出成形機のスクリューのプロファイルを、すべての成分をわずかなせん断で均一に溶融および混合するように、当業者に公知の一般的な知見に従って、運搬要素および混錬ブロックで構成した。固体を、それぞれ個別の重量式フィーダーを用いて、帯域1で押出成形機に添加した。液体を、それぞれ個別の供給ポンプを用いて、帯域2で添加した。
【0070】
直径3mmのストランドを押出成形し、これを、水および空気冷却の組み合わせにより冷却した。冷却後、ストランドをストランドカッターにより切断してペレットにした。
【0071】
例1~8について、KURARAY POVALポリマーを、50℃および50mbarの真空炉内で1日にわたり乾燥させ、それから、これらを押出成形にかけた。
【0072】
例1(比較)
74mol%の加水分解度を有するKURARAY POVAL5-74を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物と一緒に押出成形した。10重量%の溶液は、良好な溶解度を示し、透明であった。官能化度を決定したところ、1.15mol%であった。
【0073】
例2(比較)
KURARAY POVAL5-74を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物および1重量%のN-メチルイミダゾールと一緒に押出成形した。10重量%の溶液は、良好な溶解度を示し、わずかに濁っていた。官能化度を決定したところ、1.61mol%であった。
【0074】
例3(比較)
KURARAY POVAL5-74を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物および2重量%のN-メチルイミダゾールと一緒に押出成形した。10重量%の溶液は、良好な溶解度を示し、わずかに濁っていた。官能化度を決定したところ、1.59mol%であった。
【0075】
例4
KURARAY POVAL5-74を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物および1重量%のBHTと一緒に押出成形した。10重量%の溶液は、良好な溶解度を示し、わずかに濁っていた。官能化度を決定したところ、0.81mol%であった。官能化度は、安定剤なしの例1よりいくらか低いものの、これは、安定剤の存在下で官能化が同等の水準で可能であることを示す。
【0076】
例5
KURARAY POVAL5-74を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物、2重量%のN-メチルイミダゾール、および1重量%のBHTと一緒に押出成形した。10重量%の溶液は、良好な溶解度を示し、わずかに濁っていた。官能化度を決定したところ、1.78mol%であった。
【0077】
例1~5の結果から、安定剤の添加が、触媒の存在下でも官能化度に有利な影響を与えることは明らかである。さらに、反応は、必要なプロセスステップがより少なく、かつさらなる可塑剤、溶媒または不所望な不純物のない、連続的でより迅速な手法で達成された。
【0078】
例6:
88mol%の加水分解度を有するKURARAY POVAL4-88を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物、2重量%のN-メチルイミダゾール、および1重量%のBHTと一緒に押出成形した。官能化度を決定したところ、1.24mol%であった。
【0079】
例7:
83mol%の加水分解度を有するKURARAY POVAL3-83を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物、2重量%のN-メチルイミダゾール、および1重量%のBHTと一緒に押出成形した。官能化度を決定したところ、1.79mol%であった。
【0080】
例8
88mol%の加水分解度を有するKURARAY POVAL8-88を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、5重量%のメタクリル酸無水物、2重量%のN-メチルイミダゾール、および1重量%のBHTと一緒に押出成形した。官能化度を決定したところ、0.81mol%であった。
【0081】
例9
82mol%の加水分解度を有するKURARAY POVAL5-82を、250rpmのスクリュー速度および27kg/hの処理量で、1重量%のN-メチルイミダゾールと一緒にまず押出成形した。続いて、得られた化合物を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、7.5重量%のメタクリル酸無水物および2重量%のMEHQの混合物と一緒に押出成形した。官能化度を決定したところ、1.16mol%であった。
【0082】
例10
KURARAY POVAL5-82を、1重量%のN-メチルイミダゾールおよび2重量%のBHTとブレンドした。ブレンドを、N-メチルイミダゾールおよびBHTをエタノールに溶解させることにより実施し、溶液を、ドラムミキサー内でポリマーと混合し、50℃の真空炉内で減圧のもと乾燥させた。その後、このブレンドを、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、7.5重量%のメタクリル酸無水物と一緒に押出成形した。官能化度を決定したところ、2.24mol%であった。
【0083】
例11
KURARAY POVAL5-82を、250rpmのスクリュー速度および27kg/hの処理量で、1重量%のN-メチルイミダゾールと一緒にまず押出成形した。続いて、得られた化合物を、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、6重量%のメタクリル酸無水物および2重量%のMEHQの混合物と一緒に押出成形した。官能化度を決定したところ、1.76mol%であった。
【0084】
例12
KURARAY POVAL5-82を、1重量%のN-メチルイミダゾールとブレンドした。ブレンドを、N-メチルイミダゾールをエタノールに溶解させることにより実施し、溶液を、ドラムミキサー内でポリマーと混合し、50℃の真空炉内で減圧のもと乾燥させた。このブレンドを、200rpmのスクリュー速度および15kg/hの処理量で、13重量%のメタクリル酸無水物および1.5重量%のBHTの混合物と一緒に押出成形した。官能化度を決定したところ、3.19mol%であった。
【0085】
例6~12は、他の官能化度を有するポリマーがこの方法で使用可能であること、および異なる順番での成分の混合に利点があり得ることを示す。
【0086】
例13
例8からの45重量部の官能化されたポリマーと、97%の加水分解度を有する20部のポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマーと、33.18部のフェニルグリシジルエーテルアクリレートと、1.5部の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノンと、0.3部のN-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミンカリウム塩と、0.01部のサフラニンT(C.l.50240)と、0.01部のアクリフラビン(C.l.46000)とを、276部の水および184部のn-プロパノール中で85℃にて混合し、均一な溶液を形成した。この溶液を、PET箔にコーティングし、60℃で乾燥させ、600μmの厚さの層を得た。得られた層状組成物を、構造化マスクを通して化学放射線に曝し、水で現像し、印刷板を形成した。
【0087】
例14
例8からの55部の官能化されたポリマーと、10部のポリエチレングリコール400ポリマーと、32.7部のフェニルグリシジルエーテルアクリレートと、1.5部の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノンと、0.3部のN-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミンカリウム塩とを、160~190℃の温度の押出成形機内で混合した。この流体混合物を、スリットダイを使用して鋼基材に施与し、室温に冷却し、600mmの厚さの層を得た。得られた層状組成物を、構造化マスクを通して化学放射線に曝し、水で現像し、印刷板を形成した。
【0088】
例15
例8を繰り返した(50部)が、ただし、さらなる供給部において、15部のポリエチレングリコールポリマーと、33部のフェニルグリシジルエーテルアクリレートと、1.5部の2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノンと、0.3部のN-ニトロソシクロヘキシルヒドロキシルアミンカリウム塩と、0.3部のBHTとを添加し、均一に混合した。この流体混合物を、スリットダイを使用して鋼箔に施与し、室温に冷却し、600mmの厚さの層を得た。得られた層状組成物を、構造化マスクを通して化学放射線に曝し、水で現像し、印刷板を形成した。