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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】半導体製造方法及び半導体製造装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/28 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
H01L21/28 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020541027
(86)(22)【出願日】2019-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2019024914
(87)【国際公開番号】W WO2020049835
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2018168229
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 輝尚
(72)【発明者】
【氏名】青柳 克信
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 範子
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/120999(WO,A1)
【文献】特開2006-135293(JP,A)
【文献】特開平06-314822(JP,A)
【文献】特開昭63-009118(JP,A)
【文献】特開2000-049114(JP,A)
【文献】特開2011-124455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナーあるいはアクセプターをドーピングされた窒化物半導体上に金属薄膜を蒸着する金属薄膜蒸着工程と、
蒸着した前記金属薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
を備え、
前記金属薄膜蒸着工程にて、前記窒化物半導体上にNiからなる前記金属薄膜を形成し、
前記レーザ光照射工程後に、前記金属薄膜にAuからなる薄膜を積層する半導体製造方法。
【請求項2】
前記レーザ光照射工程にて、基板上の前記金属薄膜に前記レーザ光を照射することでオーミック電極を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体製造方法。
【請求項3】
前記レーザ光はパルスレーザであり、パルス幅は1ns以上1000ns未満である請求項1又は2に記載の半導体製造方法。
【請求項4】
前記レーザ光の照射エネルギーは、前記金属薄膜が溶融せず、前記金属薄膜と前記窒化物半導体との界面温度が800℃以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体製造方法。
【請求項5】
前記金属薄膜は30nmより薄く、5nm以上の厚さである請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体製造方法。
【請求項6】
ドナーあるいはアクセプターをドーピングされた窒化物半導体上に金属薄膜を蒸着する金属薄膜蒸着部と、
前記金属薄膜蒸着部で蒸着した金属薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、を備え、
前記金属薄膜蒸着部にて、前記窒化物半導体上に、Niからなる前記金属薄膜を形成し、
前記レーザ光照射部より前記レーザ光が照射された前記金属薄膜にAuを蒸着するAu蒸着部を備える半導体製造装置。
【請求項7】
前記レーザ光照射部にて、基板上の前記金属薄膜に前記レーザ光を照射することでオーミック電極を形成することを特徴とする請求項6に記載の半導体製造装置。
【請求項8】
前記レーザ光照射部のレーザ光はパルスレーザであり、パルス幅は1ns以上1000ns未満である請求項6又は7に記載の半導体製造装置。
【請求項9】
前記レーザ光照射部は、前記レーザ光の照射エネルギーを、前記金属薄膜が溶融せず、前記金属薄膜と前記窒化物半導体との界面温度が800℃以下とする請求項6から8のいずれか一項に記載の半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造方法及び半導体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
AlN,AlGaN,GaN,InGaN,InNに代表される窒化物半導体は、シリコンに比べてバンドギャップが広く、高温環境下でも動作可能な高周波、高出力トランジスタなどへの適用が進んでいる。これにより、機器の大幅な小型化や高効率化が期待されている。
このような広帯域のバンドギャップ半導体は、その製造工程において、オーミック電極を形成するためにアニール装置(RTA)によって所定の温度で基板全体をアニールして、オーミック特性の向上が図られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-135515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、基板全体をアニール装置のチャンバー内で加熱するため、加熱の影響がオーミック電極以外にも及び、熱影響による高抵抗化など半導体としての特性が損なわれるなど、ワイドバンドギャップ半導体が持つ電気的な特性が活かしきれないという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、局所的にレーザアニールを行うことで、オーミック電極形成を効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体製造方法は、
ドナーあるいはアクセプターをドーピングされた窒化物半導体上に金属薄膜を蒸着する金属薄膜蒸着工程と、
蒸着した前記金属薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射工程と、
を備え、
前記金属薄膜蒸着工程にて、前記窒化物半導体上にNiからなる前記金属薄膜を形成し、
前記レーザ光照射工程後に、前記金属薄膜にAuからなる薄膜を積層する構成とした。
【0007】
また、本発明に係る半導体製造装置は、
ドナーあるいはアクセプターをドーピングされた窒化物半導体上に金属薄膜を蒸着する金属薄膜蒸着部と、
前記金属薄膜蒸着部で蒸着した金属薄膜にレーザ光を照射するレーザ光照射部と、を備え、
前記金属薄膜蒸着部にて、前記窒化物半導体上に、Niからなる前記金属薄膜を形成し、
前記レーザ光照射部より前記レーザ光が照射された前記金属薄膜にAuを蒸着するAu蒸着部を備える構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基板上の金属薄膜蒸着部(オーミック電極)を局所的に加熱することができ、オーミック電極以外に対する加熱の影響を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態であるドナーあるいはアクセプターをドーピングされた窒化物半導体を用いた半導体に関する断面図である。
図2】半導体製造装置の電子ビーム蒸着装置の概略構成図である。
図3】半導体製造装置のレーザ加工装置の概略構成図である。
図4A】半導体の製造方法を示した説明図である。
図4B図4Aに続く半導体の製造方法を示した説明図である。
図4C図4Bに続く半導体の製造方法を示した説明図である。
図4D図4Cに続く半導体の製造方法を示した説明図である。
図4E図4Dに続く半導体の製造方法を示した説明図である。
図4F図4Eに続く半導体の製造方法を示した説明図である。
図5】レーザ用マスク部材の平面図である。
図6】電極をレーザアニールした試料についてI-V特性を測定するための構成を示す説明図である。
図7】電極をレーザアニールした四つの試料におけるI-V特性を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ドナーあるいはアクセプターをドーピングされた窒化物半導体を用いた半導体の半導体製造方法及び半導体製造装置を説明する。
【0011】
[半導体]
以下、本発明について具体的に説明する。図1は、本発明に係る実施形態であるp型GaN基板を用いた半導体10に関する断面図である。
半導体10は、p型GaN基板11と、当該p型GaN基板11上に成膜された金属薄膜からなる電極16とを備えている。
なお、ここに示す半導体10は、p型GaN基板を用いた半導体の一例に過ぎず、本願発明は、ドナーあるいはアクセプターをドーピングされた窒化物半導体を使用する多種の半導体に適用可能である。
【0012】
上記p型GaN基板11は、図示のように、基板12の上面にLT(low-temperature)-GaN層13が形成され、LT-GaN層13の上面にHT(high-temperature)-GaN層14が形成されている。さらに、p型GaN基板11は、HT-GaN層14の上面に窒化物半導体層としてのGaN層15が形成された構成となっている。
【0013】
基板12としては、当該基板12表面に窒化物半導体層が形成可能な結晶であれば特に限定されないが、例えば、シリコン(Si)基板、サファイア基板、SiC基板、及び、GaN基板等を使用できる。ここではサファイア基板を例示する。基板12の厚さは、半導体技術の分野において通常の厚さ(100~1000[μm]程度)であればよく、特に限定されない。
【0014】
LT-GaN層13は、格子不整合の緩和のためにHT-GaN層14及びGaN層15よりも低温で積層されるバッファ層である。バッファ層としては、半導体技術の分野において一般的に用いられるものであればよい。
HT-GaN層14はLT-GaN層13に比べてより高温下で積層形成される。このHT-GaN層14としては次世代半導体材料が積層される。
【0015】
GaN層15は、GaN又はGaNとAlNが所定の比率で混じった混晶であるAlGaN、窒化インジウムガリウム(InGaN)、窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)等のいずれかに不純物がドープされた添加物ドープGaNからなる。また、不純物ドープGaNとしては、GaNにp型不純物がドープされたp型GaNとGaNにn型不純物がドープされたn型GaNのいずれでも良いが、ここでは、p型GaNからなるGaN層を例示する。
p型GaNからなるGaN層15は、不純物としてMgがドープされている。Mgのドープ量は1.0E+17以上6.0E+19[cm-3]以下の範囲とすることが望ましい。
また、GaN層15の厚さは当該GaN層15に形成される電極16の下層電極161の厚さの2倍以上、より望ましくは5倍以上とする。
なお、GaN層15をn型GaNで構成する場合には、その不純物としてはSiがドープされる。
【0016】
上記GaN層15の上面には、複数の電極16(図1では二つのみ図示)が所定間隔を置いて形成されている。
これらの電極16は半導体層であるGaN層15の片面全体を覆わずにその一部分のみを覆うように形成されている。そして、全ての電極16は半導体層であるGaN層15の片面側に形成されている。
これらの電極16は、オーミック特性を示すオーミック電極として形成される。これらの電極に用いる金属材料としては、金(Au)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、バナジウム(V)、モリブデン(Mo)といったものが挙げられる。また、これらの金属材料を複数組み合わせて積層して電極を形成しても良い。
【0017】
ここでは、電極16を、GaN層15側である下層電極161をNi、その上に積層される上層電極162をAuとする積層電極で構成する場合を例示する。例えば、上層電極162をAuとすることにより、Niからなる下層電極161を酸化などから保護することができる。
また、下層電極161は、膜の厚さを5nm以上30nm未満とすることが望ましい。下層電極161は、後述するレーザアニールによりオーミック化が図られるが、厚さをこの範囲とすることにより、レーザによる加熱が効果的に行われ、良好なオーミック接触が実現する。
【0018】
[半導体製造装置]
半導体製造装置は、上述した半導体10の製造に適した半導体製造装置であり、電子ビーム蒸着装置20(図2参照)とレーザ加工装置30(図3参照)とを主に備える構成となっている。
電子ビーム蒸着装置20は、半導体製造装置は、p型GaN基板11上に金属薄膜である電極16を蒸着する金属薄膜蒸着部として機能する。
また、レーザ加工装置30は、電子ビーム蒸着装置20で蒸着した金属薄膜からなる電極16にレーザ光を照射するレーザ光照射部として機能する。
【0019】
[半導体製造装置:電子ビーム蒸着装置]
図2は電子ビーム蒸着装置20の概略構成図である。
電子ビーム蒸着装置20は、図示のように、半導体10のp型GaN基板11を設置するステージ21と、ステージ21を格納するチャンバー22と、チャンバー22の排気口221にバルブ222を介して接続されたクライオポンプ23と、ステージ21から一定の間隔を空けて対向して設けられた金属薄膜の形成材料からなるターゲット24と、ターゲット24のステージ21の対向面とは反対側の面に電圧を印加するカソード電極25と、カソード電極25を支持するカソードシールド26とを備えている。
【0020】
チャンバー22は、外気を遮断し内部を密閉状態とすることが可能である。そして、このチャンバー22には、前述した内部の気体を排気する排気口221に加えて、プラズマを発生させるガスを導入するためのガス導入口223及びバルブ224が設けられている。
このガス導入口223からは、不活性ガス(例えば、Arガス)がチャンバー22内に供給される。
【0021】
チャンバー22内において、ステージ21は接地されている。そして、ステージ21に対向するターゲット24は、カソード電極25により所定の電圧を印加することができる。これにより、チャンバー22内に不活性ガスが供給された状態で、ターゲット24-p型GaN基板11間で放電を生じさせると、ターゲット材料からなる粒子をp型GaN基板11に付着させて蒸着することができる。
なお、ターゲット24の背面側(カソード電極25)に永久磁石又は電磁石を配置して、蒸着を行う構成としても良い。
【0022】
[半導体製造装置:レーザ加工装置]
図3はレーザ加工装置30の概略構成図である。
レーザ加工装置30は、半導体10の電極16を加工対象物として、電極16にレーザ光を照射してアニール処理を行うレーザアニール装置である。
【0023】
レーザ加工装置30は、レーザ光源31、アッテネータ32、ビームホモジナイザ34、ビームスキャナ35、レンズ36、チャンバー37、ステージ38及び光検出器39を備えている。
【0024】
レーザ光源31は、紫外域のパルスレーザビームを出力する。レーザ光源31は、パルスレーザビームを、例えば、パルス幅が1[ns]以上1000[ns]未満の範囲で出力を行うことができる。即ち、上記範囲の中で所望のパルス幅のパルスレーザビームを出力するレーザ光源31が使用される。
レーザ光源31には、例えば、波長355[nm]の第3高調波を出力するNd:YVO4レーザ発振器が用いられる。その他に、Nd:YLFレーザ発振器、Nd:YAGレーザ発振器等を用いてもよい。
【0025】
ステージ38は、下層電極161が形成されたp型GaN基板11を載置することができる。
チャンバー37は、内部にステージ38を格納し、外気を遮断し内部を密閉状態とすることが可能である。
チャンバー37には、レーザ透過窓371が設けられており、レーザ光源31からのレーザビームを内部のステージ38上に導入することができる。
レンズ36及びレーザ透過窓371は、ビームスキャナ35によって走査されたパルスレーザビームの経路に配置された光学部品である。レーザ透過窓371は、例えば合成石英の板の表面に反射防止膜をコーティングした構造を有する。
【0026】
また、チャンバー37は、図示しない酸素または不活性ガス(アルゴン、窒素など)の導入口と排気口とを備えており、レーザアニール中は、酸素雰囲気、大気雰囲気、不活性雰囲気または真空にすることができる。なお、酸素または不活性ガスの供給源及び排気ポンプは図示を省略している。
【0027】
アッテネータ32は、図示しない半導体製造装置の制御装置からの指令に基づいて、パルスレーザビームの減衰率を変化させる。
ビームホモジナイザ34は、p型GaN基板11の表面におけるビームプロファイルを均一化する。
ビームスキャナ35は、図示しない半導体製造装置の制御装置からの走査指令に基づき、パルスレーザビームを二次元方向に走査する。このビームスキャナ35には、例えば一対の可動ミラーを持つガルバノスキャナを用いることができる。
レンズ36は、例えば、fθレンズで構成され、ほぼ像側テレセントリック光学系を実現している。ビームスキャナ35で走査されたパルスレーザビームの入射位置の、半導体10の電極16の表面における移動速度は、例えば200[mm/s]である。
【0028】
チャンバー37内には、光検出器39が配置されている。ビームスキャナ35を制御することにより、パルスレーザビームを光検出器39に入射させることができる。この状態で、光検出器39はパルスレーザビームの光強度、例えば平均パワー、パルスエネルギ等を測定することができる。光検出器39は測定結果を図示しない制御装置に入力し、制御装置は、これに基づいて、レーザ光源31、アッテネータ32、ビームホモジナイザ34の正常性を確認することができる。さらに、レンズ36、レーザ透過窓371の、パルスレーザビームが透過した箇所の汚れや劣化の有無を確認することができる。
【0029】
[半導体の製造方法]
図4A図4Fは半導体10の製造方法を順番に示した説明図である。
図4Aに示すように、まず、厚さ0.43[μm]のサファイア基板からなる基板12を用意する。
【0030】
次に、図4Bに示すように、基板12上にLT-GaN層13、HT-GaN層14、GaN層15を順番に形成する(半導体層形成工程)。これら各層の形成には、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、分子線気相成長法(MBE)、またはパルスレーザデポジション法(PLD)などの気相成長法を用いることができる。
【0031】
次に、図4Cに示すように、電子ビーム蒸着装置20を使用して金属薄膜からなる電極16の下層電極161を形成する(金属薄膜蒸着工程)。なお、下層電極161の形成前に、p型GaN基板11のGaN層15上を有機洗浄、SPM洗浄、酸洗浄、純水洗浄にて十分に洗浄し、十分乾燥させる。
下層電極161のような電極の形成は、GaN層15の上面に対するフォトレジストの塗布、所望の電極パターンが形成されたフォトマスクによりフォトレジストの露光現像、電極形成領域のフォトレジストの除去、洗浄後に電子ビーム蒸着装置20によるNiをターゲット24とした蒸着により行うことが可能である。
【0032】
また、フォトレジストに替えて、レーザアニールの際に使用するレーザ用マスク部材Mを使用して下層電極161の形成を行っても良い。
レーザ用マスク部材Mは、レーザビームの照射に耐久する素材(ステンレスやニッケル合金等)の所定の板厚からなる平板である。図5に示すように、レーザ用マスク部材Mは、電極の形成パターンに応じた開口M1を備える。
【0033】
そして、図4Cに示すように、レーザ用マスク部材Mがp型GaN基板11のGaN層15の電極形成面側に密着させて取り付けられ、電子ビーム蒸着装置20のチャンバー22内のステージ21に設置される。そして、Niからなるターゲット24がステージ21に対向して装備され、チャンバー22内は脱気されると共に不活性ガスが充填される。さらに、ターゲット24に電圧が印加され、電子ビーム蒸着によりレーザ用マスク部材M及び開口M1から覗いたGaN層15の表面にNiが蒸着される。
これにより、GaN層15の電極形成面上には、電極の形成パターンに応じて下層電極161が形成される。
【0034】
次に、図4Dに示すように、レーザ加工装置30による下層電極161のレーザアニールが行われる(レーザ光照射工程)。
レーザ加工装置30のチャンバー37内のステージ38に、下層電極161が形成されたp型GaN基板11をレーザ用マスク部材Mと共に設置する。
【0035】
チャンバー37内は、大気雰囲気状態に維持される。
レーザ光源31からは、パルス幅が1ns以上1000nsの範囲でパルスレーザビームが出力される。
レーザ光の照射エネルギーは、下層電極161が溶融せず、下層電極161とp型GaN基板11との界面温度が800℃以下となるように、アッテネータ32が制御される。また、界面温度を少なくとも300°以上とする。
また、ビームスキャナ35の制御により、パルスレーザビームの照射が主走査方向及び副走査方向に二次元的に走査されるように行われ、p型GaN基板11のGaN層15の電極形成面全体が照射範囲となるようにパルスレーザビームが照射される。これにより、パルスレーザビームは、各開口M1から各下層電極161に照射され、それ以外は全てレーザ用マスク部材Mに照射される。
このレーザアニールにより、p型GaN基板11に対する下層電極161の良好なオーミック接触が実現する。
【0036】
次に、図4Eに示すように、再び、電子ビーム蒸着装置20を使用して金属薄膜からなる電極16の上層電極162を形成する(Au蒸着工程)。
上層電極162の場合も、レーザ用マスク部材Mを外して、GaN層15の上面に対するフォトレジストの塗布、所望の電極パターンが形成されたフォトマスクによりフォトレジストの露光現像、電極形成領域のフォトレジストの除去、洗浄、電子ビーム蒸着装置20によるAuをターゲット24とした成膜により形成することが可能である。
また、フォトレジストに替えて、レーザ用マスク部材Mを装備したままの状態で、電子ビーム蒸着装置20によるAuをターゲット24とした成膜により形成することも可能である。
【0037】
そして、図4Fに示すように、上層電極162の形成後は、レーザ用マスク部材Mが取り外され、p型GaN基板11上における電極16の形成が完了する。
【0038】
[発明の実施形態による技術的効果]
上記半導体製造方法では、レーザ光照射工程により蒸着した電極16の下層電極161にレーザ光を照射してレーザアニールを行うので、p型GaN基板11の下層電極161のみを選択的に加熱することが容易となり、下層電極161の良好なオーミック化を図ることが可能となる。
さらに、下層電極161以外の加熱を抑制し、p型GaN基板11における下層電極161以外の部分に対する加熱の影響を最小限に抑えることが可能である。特に、p型GaN基板11上に下層電極161以外の構成が既に形成されている場合には、このような他の構成に対する加熱の影響を特に効果的に抑制することが可能となる。
【0039】
また、半導体製造装置は、金属薄膜を蒸着する電子ビーム蒸着装置20と、金属薄膜からなる下層電極161にレーザ光を照射するレーザ加工装置30とを備えている。このため、下層電極161の良好なオーミック化を図りつつ、下層電極161以外の構成に対する加熱の影響を効果的に抑制する半導体製造装置を提供することが可能となる。
【0040】
また、半導体製造方法において、レーザ光照射工程後に下層電極161にAuからなる上層電極162を蒸着するので、上層電極162によりレーザビームが反射されることなく、下層電極に対して効果的にレーザアニールを行うことが可能となる。
【0041】
また、レーザ加工装置30によるレーザ光をパルスレーザとし、パルス幅を1ns以上1000ns未満として照射する構成としている。これにより、基板深さ方向の熱影響を抑制・制御できる。
【0042】
また、レーザ加工装置30によるレーザ光の照射エネルギーを、下層電極161が溶融せず、下層電極161とGaN層15との界面温度が800℃以下となる範囲としている。これにより、下層電極161の溶融を回避し、p型GaN基板11の窒素抜けを抑制し、下層電極161の良好なオーミック化を図ることが可能となる。
【0043】
また、下層電極161は30nmより薄く、5nm以上の厚さで形成されている。この範囲であれば、下層電極161は、レーザによる加熱が効果的に行われ、良好なオーミック接触が実現する。
【0044】
[実施例]
発明の実施例について説明する。
この実施例に示す半導体10のGaN層15は、Mgがドープされたp型GaNからなり、Mgのドープ量は1.6×1018[cm-3])である。基板12はサファイア基板を使用し、GaN層15はMOCVD装置により形成した。
また、p型GaN基板11の基板12の厚さは430[μm]、LT-GaN層13の厚さは0.02[μm]、HT-GaN層14の厚さは0.96[μm]、GaN層15の厚さは1.0[μm]で形成した。
【0045】
複数の下層電極161はNiからなり、電子ビーム蒸着装置20により、厚さ20[nm]で形成した。また、各下層電極161の並び方向の幅は1[mm]であり、各下層電極161の並び方向の間隔は5~500[μm]、具体的には500[μm]で形成した。
下層電極161が形成されたp型GaN基板11に対して、レーザ加工装置30によってレーザアニールを行った。
【0046】
レーザ光源31は、波長355[nm]の第3高調波のパルスレーザを出力し、パルス幅は40[ns]、周波数は20[kHz]、200[mm/s]の速度で走査し、オーバーラップ率は80%/80%とした。オーバーラップ率は、パルス出力されるレーザのビームスポットの主走査方向と副走査方向における重複の割合を示している。
また、上記レーザアニールは、チャンバー37を濃度20%酸素雰囲気とし、常温下で行った。
上記加工条件の下、レーザエネルギー密度をそれぞれ0.5、1.0、1.5、2.0[J/cm2]でレーザアニールを行った四つの試料を用意した。
また、各試料について、レーザアニール後には、下層電極161の上にAuからなる上層電極162を厚さ40[μm]で形成した。
【0047】
上記四つの試料について、それぞれ、図6に示すように、二つの電極16に直流電源Eを接続し、二つの電極16を流れる電流を電流計Tにて測定することで、それぞれの試料のI-V特性を測定した。
図7は、0.5、1.0、1.5、2.0[J/cm2]でレーザアニールを行った四つの試料におけるI-V特性を示す線図である。縦軸は電圧を示し、横軸は電流を示している。
その結果、1.0、1.5、2.0[J/cm2]でレーザアニールを行った三つの試料についてはショットキー接触の特性が示され、0.5[J/cm2]でレーザアニールを行った試料は良好なオーミック接触の特性が得られた。また、この試料ではレーザ照射後の表面状態が溶融していないことが光学顕微鏡で確認された。
【0048】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記の実施形態に限られず、実施の形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、半導体10については、GaN層の片面に電極を備える構成であれば良く、これら以外の構成については適宜変更可能である。
【0049】
また、レーザ加工装置30では、パルスレーザを照射する構成としてが、これに限らず、例えば、CWレーザを照射する構成でも良い。
また、下層電極161に対してレーザアニールを行う場合に、レーザ用マスク部材Mは使用しないで、半導体加工装置の制御装置に下層電極161を形成するための電極パターンの二次元データを用意し、ビームスキャナ35が下層電極161の形成位置のみにレーザビームを照射するように制御しても良い。
【0050】
また、半導体加工装置の金属薄膜蒸着部は、二極スパッタリング方式やマグネトロンスパッタリング方式のスパッタリング装置や、イオンビーム方式のスパッタリング装置を採用しても良い。
また、金属薄膜蒸着部は、真空蒸着方式、分子線蒸着方式、イオンプレーティング方式又はイオンビーム蒸着方式の蒸着装置を採用しても良い。
また、本実施形態及び特許請求の範囲の各請求項における「蒸着」の語は、上記各種のスパッタリング装置によるスパッタリングと加熱により蒸発気化したターゲット金属を基板に付着させる蒸着との両方を含む意味である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る半導体製造方法及び半導体製造装置は、窒化物半導体の加熱について産業上の利用可能性がある。
【符号の説明】
【0052】
10 半導体
11 p型GaN基板
12 基板
15 GaN層
16 電極
161 下層電極(金属薄膜)
162 上層電極(金属薄膜)
20 電子ビーム蒸着装置(金属薄膜蒸着部,Au蒸着部)
30 レーザ加工装置(レーザ光照射部)
31 レーザ光源
32 アッテネータ
34 ビームホモジナイザ
35 ビームスキャナ
M レーザ用マスク部材
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5
図6
図7