(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】運転者警告システム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/526 20060101AFI20231030BHJP
B62J 50/21 20200101ALI20231030BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20231030BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20231030BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
G01S7/526 J
B62J50/21
G01S15/931
G08B21/00 A
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2020550949
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(86)【国際出願番号】 IB2019058317
(87)【国際公開番号】W WO2020074998
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2018192548
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】勝井 秀一
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
【審査官】渡辺 慶人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-023697(JP,A)
【文献】特開2017-223697(JP,A)
【文献】特開平09-281220(JP,A)
【文献】特開2002-101165(JP,A)
【文献】特開2003-240850(JP,A)
【文献】特開2003-026064(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
13/00 - 17/95
G08G 1/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の超音波を発信する第1の発信回路と、
第2の超音波を受信する第1の受信回路と、
前記第2の超音波から
得られる信号に遅延を与え、周波数、パルス繰り返し周波数、あるいは波長等の異なる参照信号と比較し、物体の有無を検知する演算回路と、
前記演算回路で得られる信号を基に第3の超音波を発信する第2の発信回路と、を有する第1の筐体と、
前記第3の超音波を受信する第2の受信回路を有する第2の筐体と、を有し、
前記演算回路は、
前記第2の超音波に応じた電位を異なるタイミングで選択する第1選択回路と、
前記第2の超音波に応じた電位を保持する複数の信号保持回路と、
前記複数の信号保持回路のいずれか一を選択する第2選択回路と、
前記第2選択回路で選択されて出力される信号が入力される信号処理回路と、を有し、
前記複数の信号保持回路は、それぞれ、第1トランジスタを有し、
前記第2の超音波は、前記第1の超音波が反射して得られる超音波であり、
前記第1トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有し、
前記第2選択回路は、前記複数の信号保持回路をそれぞれ異なるタイミングで選択することで、前記第2の超音波を遅延した信号を生成し、
前記信号をもとに生成された前記第3の超音波を前記第2の筐体に送信する、運転者警告システム。
【請求項2】
第1の超音波を発信する第1の発信回路と、
第2の超音波を受信する第1の受信回路と、
第3の超音波を発信する第2の発信回路と、
第4の超音波を受信する第2の受信回路と、
前記第2の超音波および前記第4の超音波から
得られる信号に遅延を与え、周波数、パルス繰り返し周波数、あるいは波長等の異なる参照信号と比較し、物体の有無を検知する演算回路と、
前記演算回路で得られる信号を基に第5の超音波を発信する第3の発信回路と、を有する第1の筐体と、
前記第5の超音波を受信する第3の受信回路を有する第2の筐体と、を有し、
前記演算回路は、
前記第2の超音波または前記第4の超音波に応じた電位を異なるタイミングで選択する第1選択回路と、
前記第2の超音波または前記第4の超音波に応じた電位を保持する複数の信号保持回路と、
前記複数の信号保持回路のいずれか一を選択する第2選択回路と、
前記第2選択回路で選択されて出力される信号が入力される信号処理回路と、を有し、
前記第2の超音波は、前記第1の超音波が反射して得られる超音波であり、
前記第4の超音波は、前記第3の超音波が反射して得られる超音波であり、
前記複数の信号保持回路は、それぞれ、第1トランジスタを有し、
前記第1トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有し、
前記第2選択回路は、前記複数の信号保持回路をそれぞれ異なるタイミングで選択することで、前記第2の超音波または前記第4の超音波を遅延した信号を生成し、
前記信号をもとに生成された前記第5の超音波を前記第2の筐体に送信する、運転者警告システム。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1トランジスタは、前記第1選択回路における選択スイッチとして機能する運転者警告システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一において、
前記複数の信号保持回路はそれぞれ、第2トランジスタを有する増幅回路を有し、
前記第2トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有する運転者警告システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一において、
前記第2選択回路は、第3トランジスタを有し、
前記第3トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有する運転者警告システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一において、
前記信号処理回路は、差動回路と、積分回路と、コンパレータと、三角波生成回路と、を有し、
前記差動回路には、第1電圧および第2電圧が入力され、
前記積分回路には、前記差動回路の出力信号が入力され、
前記コンパレータには、前記積分回路の出力信号および前記三角波生成回路の出力信号が入力される運転者警告システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、運転者警告システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自転車の運転者警告システムの研究開発が検討されている(例えば特許文献1)。特許文献1の自転車では近接センサとしてマイクロ波超音波レーダを取り付け、エコーロケーション(反響定位)によって前方および後方を監視する構成について開示している。また特許文献1では近接センサで検知した情報をもとにハンドルに取り付けた振動モータを振動させることで、運転者に警告を発する構成について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転者は、センサ等で得た情報を基にした警告を認知する。運転者がより警告を認知しやすくするためには、警告を発する機器が身体に装着可能、すなわちウエアラブル機器であることが好ましい。しかしながらウエアラブル機器がプロセッサやA/D変換回路などの消費電力および回路面積の大きい構成を有すると、ウエアラブル機器が大型化してしまうといった虞がある。
【0005】
本発明の一態様は、機器の小型化を実現できる、新規な構成の運転者警告システムを提供することを課題の一とする。または本発明の一態様は、機器の低消費電力化を実現できる、新規な構成の運転者警告システムを提供することを課題の一とする。または本発明の一態様は、安全性を高めることができる、新規な構成の運転者警告システムを提供することを課題の一とする。
【0006】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、第1の超音波を発信する第1の発信回路と、第2の超音波を受信する第1の受信回路と、第2の超音波から物体の有無を検知する演算回路と、演算回路で得られる信号を基に第3の超音波を発信する第2の発信回路と、を有する第1の筐体と、第3の超音波を受信する第2の受信回路を有する第2の筐体と、を有し、演算回路は、第2の超音波に応じた電位を異なるタイミングで選択する第1選択回路と、第2の超音波に応じた電位を保持する複数の信号保持回路と、複数の信号保持回路のいずれか一を選択する第2選択回路と、第2選択回路で選択されて出力される信号が入力される信号処理回路と、を有し、複数の信号保持回路は、それぞれ、第1トランジスタを有し、第2の超音波は、第1の超音波が反射して得られる超音波であり、第1トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有し、第2選択回路は、複数の信号保持回路をそれぞれ異なるタイミングで選択することで、第2の超音波を遅延した信号を生成し、信号をもとに生成された第3の超音波を第2の筐体に送信する、運転者警告システムである。
【0008】
本発明の一態様は、第1の超音波を発信する第1の発信回路と、第2の超音波を受信する第1の受信回路と、第3の超音波を発信する第2の発信回路と、第4の超音波を受信する第2の受信回路と、第2の超音波および第4の超音波から物体の有無を検知する演算回路と、演算回路で得られる信号を基に第5の超音波を発信する第3の発信回路と、を有する第1の筐体と、第5の超音波を受信する第3の受信回路を有する第2の筐体と、を有し、演算回路は、第2の超音波または第4の超音波に応じた電位を異なるタイミングで選択する第1選択回路と、第2の超音波または第4の超音波に応じた電位を保持する複数の信号保持回路と、複数の信号保持回路のいずれか一を選択する第2選択回路と、第2選択回路で選択されて出力される信号が入力される信号処理回路と、を有し、第2の超音波は、第1の超音波が反射して得られる超音波であり、第4の超音波は、第3の超音波が反射して得られる超音波であり、複数の信号保持回路は、それぞれ、第1トランジスタを有し、第1トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有し、第2選択回路は、複数の信号保持回路をそれぞれ異なるタイミングで選択することで、第2の超音波または第4の超音波を遅延した信号を生成し、信号をもとに生成された第5の超音波を第2の筐体に送信する、運転者警告システムである。
【0009】
本発明の一態様において、第1トランジスタは、第1選択回路における選択スイッチとして機能する運転者警告システムが好ましい。
【0010】
本発明の一態様において、複数の信号保持回路はそれぞれ、第2トランジスタを有する増幅回路を有し、第2トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有する運転者警告システムが好ましい。
【0011】
本発明の一態様において、第2選択回路は、第3トランジスタを有し、第3トランジスタは、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する半導体層を有する運転者警告システムが好ましい。
【0012】
本発明の一態様において、信号処理回路は、差動回路と、積分回路と、コンパレータと、三角波生成回路と、を有し、差動回路は、第1電圧および第2電圧が入力され、積分回路は、差動回路の出力信号が入力され、コンパレータは、積分回路の出力信号および三角波生成回路の出力信号が入力される運転者警告システムが好ましい。
【0013】
なおその他の本発明の一態様については、以下で述べる実施の形態における説明、および図面に記載されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様により、機器の小型化を実現できる、新規な構成の運転者警告システムを提供することができる。または本発明の一態様は、機器の低消費電力化を実現できる、新規な構成の運転者警告システムを提供することができる。または本発明の一態様は、安全性を高めることができる、新規な構成の運転者警告システムを提供することができる。
【0015】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
なお本明細書等において、「第1」、「第2」、「第3」という序数詞は、構成要素の混同を避けるために付したものである。従って、構成要素の数を限定するものではない。また、構成要素の順序を限定するものではない。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素が、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において「第2」に言及された構成要素とすることもありうる。また例えば、本明細書等の実施の形態の一において「第1」に言及された構成要素を、他の実施の形態、あるいは特許請求の範囲において省略することもありうる。
【0019】
なお図面において、同一の要素または同様な機能を有する要素、同一の材質の要素、あるいは同時に形成される要素等には同一の符号を付す場合があり、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の一態様の運転者警告システムの構成および動作について、
図1乃至
図9を用いて説明する。本発明の一態様の運転者警告システムは、超音波を受信して得られる信号に遅延を与え、参照信号と比較することで物体の有無の検知、物体までの距離を検知することができる反響定位(エコーロケーション)装置としての機能を有する。
【0021】
図1Aに示す運転者警告システム100は、筐体10および筐体20で構成される。筐体10は、演算回路11、発信回路12、受信回路13、および発信回路14を有する。筐体20は、受信回路21、制御回路22、および振動モータ23を有する。
【0022】
筐体10は、自転車等のフレームあるいはハンドルに相当する。あるいは、筐体10は、自転車等のフレームあるいはハンドルに取り付け可能な機器に相当する。演算回路11、発信回路12、受信回路13、および発信回路14といった各構成は、筐体10の内部あるいは外部に取り付けることができる。筐体10は、自転車などのように、運転者がヘルメット等の装着可能(ウエアラブル)な筐体をつけて運転する移動体の一部である。移動体としては、自転車の他、自動二輪車、電動自転車等を上げることができる。
【0023】
筐体20は、ヘルメットあるいは腕時計のように運転者が装着可能な構成に相当する。受信回路21、制御回路22、および振動モータ23といった各構成は、筐体20の内部あるいは外部に取り付けることができる。筐体20は、運転者が装着可能な電子機器である。電子機器としては、時計型、ヘッドマウント型、ゴーグル型、眼鏡型、腕章型、ブレスレット型、ネックレス型等のウエアラブル型の電子端末を上げることができる。
【0024】
筐体20は、筐体10の発信回路14から発信される超音波33を受信回路21で受信する。受信した超音波33に応じて、制御回路22は振動モータ23の起動の選択を行う機能を有する。なお振動モータ23は、物体の検知を運転者に知らせるための一例として挙げた構成であって、別の構成とすることも可能である。
【0025】
演算回路11は、発信回路12を介して超音波31を出力する機能を有する。超音波31は、物体30で反射して超音波32となる。超音波31の反射波である超音波32は、受信回路13で観測することができる。演算回路11では、受信回路13を介して超音波32を受信して得られる信号に遅延を与えて、周波数、パルス繰り返し周波数、あるいは波長等の異なる参照信号と比較する。演算回路11は、比較結果に応じて物体30の有無、物体30までの距離の情報を取得する。当該情報は、超音波33に重畳して発信回路14を介して筐体20に送信される。
【0026】
発信回路12および発信回路14は、超音波振動子から超音波を発する回路構成である。受信回路13および受信回路21は、超音波を受信する回路構成である。
【0027】
超音波31は、20kHz以上の周波数の音波をパルス状に発信した音波である。当該周波数とすることで、指向性を有する音波を発信し、反射波による物体の検知等を行うことができる。また超音波31のパルス繰り返し周波数は、5Hz以上100Hz以下の範囲で切り替え可能であることが好ましい。パルス繰り返し周波数に応じて物体30の測定可能な距離が切り替わる。そのため、筐体10の速度、または物体30の有無に応じて、パルス繰り返し周波数を切り替えることが好ましい。
【0028】
超音波32は、筐体10と物体との相対速度によるドップラー効果、環境温度によって変化する空気中の吸収減衰、あるいは物体30の音響インピーダンスなどに応じて、超音波31のパルス周波数、パルス繰り返し周波数、振幅、あるいは波長等が変化した超音波である。
【0029】
超音波33は、物体30の有無、および筐体10から物体30までの距離の情報を重畳可能な信号であればよい。筐体10と筐体20との間の距離に応じて、適宜別の周波数(RF帯、UHF帯)の信号を用いることが可能である。
【0030】
演算回路11の構成例について、
図1Bに示すブロック図を用いて説明する。演算回路11は、信号生成回路40、遅延回路41、および信号処理回路42を有する。遅延回路41は、選択回路111、複数の信号保持回路112、および選択回路113を有する。
【0031】
なお信号保持回路112のうち1つを特定する必要があるときは、信号保持回路112の符号を用いて説明し、任意の信号保持回路を指すときには信号保持回路112_1、信号保持回路112_2などの符号を用いて説明する。他の要素についても同様であり、複数の要素を区別するために、「_2」、あるいは[1]等の符号が用いられる。
【0032】
信号生成回路40は、発信回路12を介して超音波31を発信するための信号を生成するための回路である。信号生成回路40は、発信回路12に出力した信号に基づいて、遅延回路を制御するための信号W、信号Sを出力するための回路である。
【0033】
受信回路13は、超音波32を受信して得られるアナログ値の電気信号(アナログ信号)である信号SINを生成する。遅延回路41は、受信回路13毎に設けられることが好ましい。
【0034】
選択回路111(第1選択回路ともいう)は、信号SINを複数の信号保持回路112に振り分けるデマルチプレクサとしての機能を有する。選択回路111はスイッチの機能を有し、選択信号Wによってオンまたはオフが制御される。選択回路111は、一例として、nチャネル型のトランジスタで構成する。
【0035】
複数の信号保持回路112は、信号SINに応じたアナログ電圧を保持し、当該アナログ電圧に応じた電圧を出力する機能を有する。信号保持回路112は、所定のタイミングの時刻に選択回路111が有するスイッチをオンにして信号SINをサンプリングすることで、アナログ電圧が書き込まれる。信号保持回路112へのアナログ電圧の書き込みは、選択信号WをHレベルとすることで制御することができる。また信号保持回路112でのアナログ電圧の保持は、選択信号WをLレベルとすることで制御することができる。
【0036】
なお複数の信号保持回路112にはそれぞれ、異なるタイミングで選択信号WをHレベルとした時刻での信号SINに基づくアナログ電圧が書き込まれ、Lレベルとすることで当該アナログ電圧が保持される。すなわち複数の信号保持回路112ではそれぞれ、信号SINを異なるタイミングで取得し、当該信号SINに応じた電圧を保持することができる。そのため複数の信号保持回路112では、次々と信号SINのサンプリングを行うことで、受信回路13から出力される信号SINにおける離散的な値を保持することができる。
【0037】
また複数の信号保持回路112は、保持したアナログ電圧を増幅して出力する機能を有する。一例としては、複数の信号保持回路112はそれぞれソースフォロワ回路を有し、当該ソースフォロワ回路等を介して保持したアナログ電圧に応じた電圧を出力する機能を有する。
【0038】
選択回路113(第2選択回路ともいう)は、複数の信号保持回路112に保持したアナログ電圧のいずれか一を選択して異なるタイミングで出力するマルチプレクサとしての機能を有する。選択回路113はスイッチの機能を有し、選択信号Sによってオンまたはオフが制御される。選択回路113は、一例として、nチャネル型のトランジスタで構成する。この場合、選択回路113が有するトランジスタは、選択信号SがHレベルでオンとなり、Lレベルでオフとなる。
【0039】
選択回路113は、信号SSELを得ることができる。信号SSELは信号SINに対応する信号であり、遅延回路41が有する複数の信号保持回路112に保持したアナログ電圧を順次出力することで得られる離散的な信号である。この信号SSELは、信号SINを所定の時間だけ遅延させた信号に相当する。つまり選択回路113では、選択信号Sを所定の遅延時間に設定することで、遅延時間が定められた信号SSELを出力することができる。
【0040】
遅延回路41を構成する各トランジスタとしては、特にチャネル形成領域が酸化物半導体を有するトランジスタ(以下、OSトランジスタという)で構成されることが好ましい。本発明の一態様の構成では、OSトランジスタを遅延回路41が有するトランジスタに用いる構成とすることで、オフ時にソースとドレイン間を流れるリーク電流(以下、オフ電流)が極めて低いことを利用して、信号SINをサンプリングして得られるアナログ電圧を遅延回路41内の信号保持回路112に保持させることができる。そのため、アナログ電圧の精度の高い取得を可能にする構成とすることができ、信号SINに基づく物体の検知、物体までの距離測定をより正確に行うことが可能になる。
【0041】
加えてOSトランジスタを用いた信号保持回路112では、電荷の充電又は放電することによってアナログ電圧の書き換えおよび読み出しが可能となるため、実質的に無制限回のアナログ電圧の取得および読み出しが可能である。OSトランジスタを用いた信号保持回路は、磁気メモリあるいは抵抗変化型メモリなどのように原子レベルでの構造変化を伴わないため、書き換え耐性に優れている。またOSトランジスタを用いた信号保持回路は、フラッシュメモリのように繰り返し書き換え動作でも電子捕獲中心の増加による不安定性が認められない。
【0042】
またOSトランジスタを用いた信号保持回路は、チャネル形成領域がシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタ)を用いた回路上などに自由に配置可能であるため、複数の遅延回路を備える構成した場合であっても、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。
【0043】
またOSトランジスタは、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極に加えて、バックゲート電極を含むと、4端子の半導体素子とすることができる。ゲート電極またはバックゲート電極に与える電圧に応じて、ソースとドレインとの間を流れる信号の入出力が独立制御可能な電気回路網で構成することができる。そのため、LSIと同一思考で回路設計を行うことができる。加えてOSトランジスタは、高温環境下において、Siトランジスタよりも優れた電気特性を有する。具体的には、125℃以上150℃以下といった高温下においてもオン電流とオフ電流の比が大きいため、良好なスイッチング動作を行うことができる。
【0044】
信号処理回路42は、選択回路113で選択された信号SSELと参照信号との差を演算し、当該差の積分を演算し、位相が揃う遅延時間を見積もる機能を有する。信号処理回路42は、一例として、差動回路と、積分回路と、コンパレータと、三角波生成回路と、を有する。差動回路には、選択回路113で選択された信号SINと、参照信号と、が入力される。積分回路は、差動回路の出力信号を積分して得られる値を出力する。コンパレータには、積分回路の出力信号および三角波生成回路の出力信号が入力される。信号処理回路42は、アナログ値の信号同士を比較して信号処理を行うためA/D変換回路などの専有面積の大きい回路を省略することができ、回路面積の増大の抑制、および低消費電力化を図ることができる。
【0045】
図1Aに示す運転者警告システム100は、
図1Bに図示する遅延回路41を構成する各トランジスタとしてOSトランジスタとし、異なるタイミングでサンプリングしたアナログ電圧に応じた電荷を直接保持する方式とする。OSトランジスタはオフ電流が極めて低いため、一旦保持したアナログ電圧を保持容量の小さいノードであっても保持が可能とできるため、複数の遅延回路を搭載することができる。加えて
図1Aに示す運転者警告システム100は、遅延回路41内に保持した電荷に応じたアナログ電圧を異なるタイミングで読み出すことで離散的な信号S
INを出力信号として読み出す方式とする。制御信号Sのタイミングを異ならせることで、所望の遅延時間に読み出すよう制御することができる。そのため信号S
INをデジタル信号に変換することなく所望の遅延時間に読み出すよう制御することができ、離散化された信号S
INの位相を遅延させる構成とすることができる。
【0046】
図1Cでは、
図1Bで説明した遅延回路41の具体的な回路構成例について説明する。
図1Cは、信号S
INを2つのノードで保持し、遅延時間の異なる信号S
SELとして出力する遅延回路の構成例である。
【0047】
図1Cは、選択回路111を構成するトランジスタ121、信号保持回路112を構成するトランジスタ121、トランジスタ122、およびトランジスタ123、並びに選択回路113を構成するトランジスタ124、を図示している。トランジスタ121乃至124は、nチャネル型のトランジスタとする。
【0048】
図1Cは、選択信号Wとして、選択信号W11およびW12を図示している。選択信号W11およびW12は、異なるタイミングで信号S
INのアナログ電圧をサンプリングするための信号である。
【0049】
図1Cは、選択回路111でサンプリングされたアナログ電圧を保持するためのノードF11およびF12を図示している。また
図1CではノードF11およびF12がソースフォロワ回路の入力端子であるトランジスタ122のゲートに接続される構成を図示している。またソースフォロワ回路のバイアス電圧V
Bがトランジスタ123のゲートに印加される構成を図示している。なおノードF11およびF12には、容量素子が接続される構成を図示しているが、トランジスタ122のゲート容量を十分大きくとるなどの構成とすることで容量素子を省略することもできる。
【0050】
図1Cは、選択回路113の選択信号Sとして、選択信号S11乃至S12を図示している。選択回路113は、サンプリングしたアナログ電圧に応じた電圧を選択信号S11乃至S12で選択的に出力することで、信号S
INを所定の期間だけ遅延させた信号に相当する信号S
SELを生成することができる。なおトランジスタ124は、ソースとドレイン間が電気的に並列となるよう、複数設ける構成としてもよい。当該構成とすることで、遅延時間の異なる複数の信号を順次出力することができる。
【0051】
なお
図1Aでは、筐体10に受信回路および発信回路をそれぞれ1つ備える構成について図示したが、それぞれ複数でもよい。例えば、
図2Aに図示するように、発信回路12Aおよび発信回路12B、並びに受信回路13Aおよび受信回路13Bを備え、超音波31Aおよび31Bを発信し、超音波32Aおよび32Bを受信する構成とすることもできる。異なる超音波を受信して物体30を検知することができるため、より安全性に優れた運転者警告システムとすることができる。なお超音波32Aおよび32Bは超音波31A、31Bが物体30で反射して得られる超音波である。
【0052】
また
図1Bの場合、遅延回路41は
図2Bに図示するように受信回路13A、13Bごとに設ける構成とすることが好ましい。当該構成とすることで、受信回路13Aで受信した超音波32Aに基づく信号S
IN_A、受信回路13Bで受信した超音波32Bに基づく信号S
IN_Bを別々の遅延回路41に保持することができる。
【0053】
次いで
図1Cに図示する遅延回路41の動作について、
図3乃至
図5を参照して説明する。
【0054】
図3Aは、
図1Cにおける動作の理解を容易にするため、信号S
INをサンプリングするための選択信号Wを選択信号W11乃至W13とし、保持した複数のアナログ電圧を信号S
SEL_1および信号S
SEL_2として読み出すための選択信号Sを選択信号S111およびS112、S121およびS122、並びにS131およびS132、とした遅延回路41の構成例である。
図3Aにおいてトランジスタ124は、ソースとドレイン間が電気的に並列となるよう、複数設ける構成を図示している。信号S
SEL_1および信号S
SEL_2は、信号S
INを位相の異なる信号として得られる信号である。つまり
図3Aに図示する遅延回路41は、異なる3回のタイミングで信号S
INのサンプリングを行って3つのアナログ電圧を取得するとともに、異なる2回のタイミングで遅延時間の異なる2つの信号S
SEL_1および信号S
SEL_2を出力する構成である。また
図3Aでは、ノードF11乃至F13を図示している。
【0055】
図3Bは、
図3Aに示す遅延回路41に接続された信号S
INをサンプリングする動作を説明するためのタイミングチャートである。
図3Bでは、信号S
INの波形とともに、選択信号W11乃至W13、ノードF11乃至F13に書き込まれる電圧について時刻T1乃至T4での動作について説明する。なおタイミングチャートを説明する図において、ハッチングを付した期間は、不定状態を表す期間である。
【0056】
上述したように時刻T1で選択信号W11をHレベルとし、信号SINの電圧V1をノードF11に書き込んで信号SINのサンプリングが行われる。
【0057】
期間Tをあけた時刻T2で選択信号W12をHレベルとし、信号SINの電圧V2をノードF12に書き込んで信号SINのサンプリングが行われる。なお時刻Tは短い方が好ましい。信号SINのサンプリング数を多くでき、物体を検知しやすくすることができる。
【0058】
時刻T2で選択信号W13をHレベルとし、信号SINの電圧V3をノードF13に書き込んで信号SINのサンプリングが行われる。
【0059】
ノードF11乃至F13に保持した電圧V1乃至V3は、選択信号W11乃至W13をLレベルとすることで保持することができる。初期化する場合は、時刻T4に示すように定電位の信号SINを与えた状態で選択信号W11をHレベルとすればよい。
【0060】
図4は、
図1Cにおける動作の理解を容易にするため、信号S
INをサンプリングするための選択信号Wを選択信号W11乃至W13とし、保持した電圧を信号S
SEL_1および信号S
SEL_2として読み出すための選択信号Sを選択信号S111およびS112、S121およびS122、並びにS131およびS132、とした遅延回路41の構成例である。つまり
図4に図示する遅延回路41は、3つのアナログ電圧を取得するとともに、異なる2回のタイミングで遅延時間の異なる2つの出力信号を出力する構成である。また
図4では、ノードF11乃至F13を図示している。
【0061】
図5は、
図4に示す遅延回路41のノードF11乃至F13に保持された電圧V1乃至V3を信号S
SEL_1および信号S
SEL_2として読み出す動作を説明するためのタイミングチャートである。また
図5では、選択信号S111およびS112、S121およびS122、S131およびS132によってノードF11乃至F13から読み出される信号S
SEL_1および信号S
SEL_2について、時刻T5乃至T8における動作を説明する。
【0062】
時刻T5で選択信号S111をHレベルとし、ノードF11の電圧V1に対応する電圧を信号SSEL_1として出力する。
【0063】
時刻T6で選択信号S121をHレベルとし、ノードF12の電圧V2に対応する電圧を信号SSEL_1として出力する。また同じ時刻T6で選択信号S112をHレベルとし、ノードF11の電圧V4に対応する電圧を信号SSEL_2として出力する。
【0064】
時刻T7で選択信号S131をHレベルとし、ノードF13の電圧V3に対応する電圧を信号SSEL_1として出力する。また同じ時刻T7で選択信号S122をHレベルとし、ノードF12の電圧V5に対応する電圧を信号SSEL_2として出力する。
【0065】
時刻T8で選択信号S132をHレベルとし、ノードF13の電圧V3に対応する電圧を信号SSEL_2として出力する。
【0066】
図5に示すように信号S
SEL_2は、信号S
SEL_1を遅延させた信号として得ることができる。選択信号Sのタイミングを制御することで任意の遅延時間で、信号保持回路に保持した信号を遅延させて出力することができる。そのため、例えば遅延回路41で遅延時間を切り替えていくことで異なる信号同士の位相を揃えることができ、物体の検知をすることができる。
【0067】
次いで
図6では、信号処理回路42の具体的な構成例について図示する。
図6に図示する信号処理回路42は、差動回路51_1乃至51_9、積分回路52_1乃至52_9、コンパレータ53_1乃至53_9、三角波生成回路54、および演算回路55を有する。また
図6では、参照信号REF1乃至REF3を出力する参照信号生成回路50を図示している。参照信号REF1乃至REF3は、超音波が物体にぶつかり反射して得られる信号と比較して、物体の位置を検知するための信号である。参照信号REF1乃至REF3は、一例として、発信回路12から発信した超音波31に同期した信号を用いることができる。
【0068】
差動回路51_1乃至51_9は、遅延回路41から出力される信号SSELおよび参照信号生成回路50から出力される参照信号REFの各信号の差を演算する。積分回路52_1乃至52_9、は、各差動回路51_1乃至51_9の出力信号が入力され、当該出力信号を積分する。コンパレータ53_1乃至53_9は、三角波生成回路54から出力される三角波と、積分回路52_1乃至52_9の出力信号と、が入力され、電圧を比較する。演算回路55は、コンパレータ53_1乃至53_9の出力信号が入力され、信号SINと参照信号REFとの位相を揃えるための遅延時間を見積もることで、物体までの距離に対応する信号SOUTを得ることができる。
【0069】
信号処理回路42を構成する回路の具体例について
図7A乃至
図7Cを参照して説明する。
図7Aは、
図6で図示する信号処理回路42の一段分の構成を抜き出したブロック図である。
図7Aでは、一例として、差動回路51、積分回路52、コンパレータ53、三角波生成回路54を図示している。
【0070】
差動回路51の構成例について、
図7Bに示す。差動回路51は、一例として、抵抗素子61、62、およびトランジスタ63、64、65を有する。トランジスタ63のゲートには、非反転入力端子が接続される。トランジスタ64のゲートには、反転入力端子が接続される。トランジスタ65のゲートには、バイアス電圧Vbiasを与える配線が接続される。トランジスタ64のドレイン端子側には、差動回路51の出力端子OUTが設けられる。
【0071】
積分回路52の構成例について、
図7Cに示す。積分回路52は、一例として、ダイオード71、抵抗素子72、オペアンプ73、容量素子74、およびスイッチ75を有する。ダイオード71の入力端子に差動回路51の出力信号が与えられる。オペアンプの出力端子には、積分回路52の出力端子OUTが設けられる。
【0072】
【0073】
図1C、
図3A等において、トランジスタ121乃至124は、バックゲート電極がないトップゲート構造またはボトムゲート構造のトランジスタとして図示したがこれに限らない。例えば、
図8Aに図示する遅延回路41Aのように、バックゲート電極を有するトランジスタ121A乃至124Aとしてもよい。
図8Aの構成とすることで、トランジスタ121A乃至124Aの状態を外部より制御しやすくすることができる。
【0074】
または、例えば、
図8Bに図示する遅延回路41Bのように、ゲート電極に接続されたバックゲート電極を有するトランジスタ121B乃至124Bとしてもよい。
図8Bの構成とすることで、トランジスタ121B乃至124Bを流れる電流量を増やすことができる。
【0075】
【0076】
図7Bにおいて、トランジスタ63乃至65は、バックゲート電極がないトップゲート構造またはボトムゲート構造のトランジスタとして図示したがこれに限らない。例えば、
図9Aに図示する差動回路51Aのように、バックゲート電極を有するトランジスタ63A乃至65Aとしてもよい。
図9Aの構成とすることで、トランジスタ63A乃至65Aの状態を外部より制御しやすくすることができる。
【0077】
または、例えば、
図9Bに図示する差動回路51Bのように、ゲート電極に接続されたバックゲート電極を有するトランジスタ63B乃至65Bとしてもよい。
図9Bの構成とすることで、トランジスタ63B乃至65Bを流れる電流量を増やすことができる。
【0078】
以上説明した本発明の一態様の運転者警告システムは、OSトランジスタを有する演算回路でアナログ電圧を保持する構成とすることで、信号を遅延するために必要なアナログデジタル変換回路等の回路を不要にすることができる。または本発明の一態様の運転者警告システムは、小型化および低消費電力化に加え、運転者が装着可能な電子機器に搭載可能とすることができるため、安全性を高めることができる。
【0079】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した遅延回路等の回路構成に適用可能なトランジスタの構成、具体的には異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設ける断面模式図の構成について説明する。当該構成とすることで、回路の設計自由度を高めることができる。また、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設けることで、回路の集積度を高めることができる。
【0080】
図10に示す断面模式図は、トランジスタ300と、トランジスタ500と、容量素子600と、を有している。
図12Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図12Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図12Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0081】
トランジスタ500は、チャネル形成領域に金属酸化物を有するトランジスタ(OSトランジスタ)である。トランジスタ500は、オフ電流が小さいため、長期にわたり書き込んだデータ電圧あるいは電荷を保持することが可能である。
【0082】
本実施の形態で説明する断面模式図では、
図10に示すようにトランジスタ300、トランジスタ500、容量素子600を図示している。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600はトランジスタ300、及びトランジスタ500の上方に設けられている。なお、容量素子600は、メモリ回路MCにおける容量素子Csなどとすることができる。
【0083】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ソース領域又はドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bを有する。
【0084】
トランジスタ300は、
図12Cに示すように、半導体領域313の上面及びチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0085】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0086】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、又はドレイン領域となる低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。又は、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。又はGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0087】
低抵抗領域314a、及び低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、又はホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0088】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0089】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0090】
なお、
図10に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、トランジスタをOSトランジスタのみの単極性回路(nチャネル型トランジスタのみ、などと同極性のトランジスタからなる回路を意味する)とする場合、
図11に示すとおり、トランジスタ300の構成を、酸化物半導体を用いているトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。
【0091】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0092】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0093】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書中において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0094】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0095】
また、絶縁体324には、基板311、又はトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0096】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0097】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0098】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0099】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、及び絶縁体326には容量素子600、又はトランジスタ500と接続する導電体328、及び導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、及び導電体330は、プラグ又は配線としての機能を有する。また、プラグ又は配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、及び導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0100】
各プラグ、及び配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を、単層又は積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。又は、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0101】
絶縁体326、及び導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図10において、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、及び絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0102】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0103】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0104】
絶縁体354、及び導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図10において、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、及び絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0105】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0106】
絶縁体364、及び導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図10において、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、及び絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0107】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0108】
絶縁体374、及び導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図10において、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、及び絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグ又は配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0109】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0110】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、及び導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る断面模式図の構成はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0111】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0112】
例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、例えば、基板311、又はトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0113】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0114】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、及び絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0115】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0116】
また、例えば、絶縁体512、及び絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、及び絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0117】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、及び絶縁体516には、導電体518、及びトランジスタ500を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0118】
特に、絶縁体510、及び絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、及び水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0119】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0120】
図12A、
図12Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514及び絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516及び導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542a及び導電体542bと、導電体542a及び導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面及び側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体550と、絶縁体550の形成面に配置された導電体560と、を有する。
【0121】
また、
図12A、
図12Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、及び導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図12A、
図12Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図12A、
図12Bに示すように、絶縁体580、導電体560、及び絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0122】
なお、以下において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
【0123】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、又は4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図10、
図12Aに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0124】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542a及び導電体542bは、それぞれソース電極又はドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542a及び導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、トランジスタの微細化、高集積化を図ることができる。
【0125】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542a又は導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542a及び導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0126】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0127】
導電体503は、酸化物530、及び導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、及び導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。本明細書等において、第1のゲート電極、及び第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0128】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514及び絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ500では、導電体503a及び導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、又は3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0129】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、又は酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、又は上記酸素のいずれか一又は、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0130】
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0131】
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体505は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体503bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0132】
絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、及び絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0133】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。
【0134】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、又は3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、又は100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0135】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0136】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0137】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又は(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層又は積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0138】
特に、不純物、及び酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0139】
又は、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。又はこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0140】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコン及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520や、絶縁体526を得ることができる。
【0141】
なお、
図12A、
図12Bのトランジスタ500では、3層の積層構造からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、及び絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、又は4層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0142】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS、CAC-OSであることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0143】
また、トランジスタ500には、キャリア濃度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0144】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0145】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。また、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「キャリア密度」に言い換えることができる。
【0146】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0147】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0148】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0149】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0150】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0151】
また、酸化物530においてチャネル形成領域として機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0152】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0153】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530a又は酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0154】
また、酸化物530a及び酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530a及び酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0155】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、及び酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化又は連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0156】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530a及び酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0157】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、及び酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0158】
酸化物530b上には、ソース電極、及びドレイン電極として機能する導電体542a、及び導電体542bが設けられる。導電体542a、及び導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、又は上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、窒化タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、又は、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。更に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素又は酸素に対するバリア性があるため好ましい。
【0159】
また、
図12では、導電体542a、及び導電体542bを単層構造として示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0160】
また、チタン膜又は窒化チタン膜と、そのチタン膜又は窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜又は窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜又は窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜又は窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜又は銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜又は窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫又は酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0161】
また、
図12Aに示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543a、及び領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域又はドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域又はドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0162】
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア濃度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
【0163】
絶縁体544は、導電体542a、及び導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、及び導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0164】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタン又は、マグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコン又は窒化シリコンなども用いることができる。
【0165】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、又はハフニウムの一方又は双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム、及びハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウムよりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、及び導電体542bが耐酸化性を有する材料、又は、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0166】
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、及び水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0167】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面、及び側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
【0168】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0169】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0170】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0171】
なお、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。トランジスタの微細化、及び高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合があるため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0172】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図12A、
図12Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0173】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。又は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、又は酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、酸化物半導体の電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0174】
また、導電体560bは、タングステン、銅、又はアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0175】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、及び導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、及び窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、又は樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコン、及び酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0176】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530a、酸化物530bへと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0177】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、及び導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0178】
トランジスタを微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0179】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、及び絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550、及び絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0180】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、又はマグネシウムなどから選ばれた一種、又は二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0181】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、及び窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0182】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水又は水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0183】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、及び絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、及び導電体540bを配置する。導電体540a及び導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540a及び導電体540bは、後述する導電体546、及び導電体548と同様の構成である。
【0184】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0185】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、及びトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中及び作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0186】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、絶縁体586に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0187】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、及び絶縁体586には、導電体546、及び導電体548等が埋め込まれている。
【0188】
導電体546、及び導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、又はトランジスタ300と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体546、及び導電体548は、導電体328、及び導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0189】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620、絶縁体630とを有する。
【0190】
また、導電体546、及び導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、又は配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、及び導電体610は、同時に形成することができる。
【0191】
導電体612、及び導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、又は上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。又は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0192】
図10では、導電体612、及び導電体610は単層構造を示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、及び導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0193】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、又は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0194】
導電体620、及び絶縁体630上には、絶縁体640が設けられている。絶縁体640は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体640は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0195】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタにおいて、微細化又は高集積化を図ることができる。
【0196】
(実施の形態3)
本実施の形態では、運転者警告システムを適用可能なデバイス(半導体装置)の一例として、電子部品、および電子部品を適用可能なウエアラブル機器等について説明する。
【0197】
<電子部品の作製方法例>
図13Aは、電子部品の作製方法例を示すフローチャートである。電子部品は、半導体パッケージ、またはIC用パッケージともいう。この電子部品は、端子取り出し方向や、端子の形状に応じて、複数の規格や名称が存在する。そこで、本実施の形態では、その一例について説明することにする。以下述べる電子部品は、上記実施の形態1の筐体10あるいは筐体20の電子部品に適用可能である。
【0198】
トランジスタで構成される半導体装置は、組み立て工程(後工程)を経て、プリント基板に脱着可能な部品が複数合わさることで完成する。後工程については、
図13Aに示す各工程を経ることで完成させることができる。具体的には、前工程で得られる素子基板が完成(ステップST71)した後、基板の裏面を研削する。この段階で基板を薄膜化して、前工程での基板の反り等を低減し、部品の小型化を図る。次に、基板を複数のチップに分離するダイシング工程を行う(ステップST72)。
【0199】
図13Bは、ダイシング工程が行われる前の半導体ウエハ7100の上面図である。
図13Cは、
図13Bの部分拡大図である。半導体ウエハ7100には、複数の回路領域7102が設けられている。回路領域7102には、本発明の形態に係る各回路が設けられている。
【0200】
複数の回路領域7102は、それぞれが分離領域7104に囲まれている。分離領域7104と重なる位置に分離線(「ダイシングライン」ともいう。)7106が設定される。ダイシング工程ST72では、分離線7106に沿って半導体ウエハ7100切断することで、回路領域7102を含むチップ7110を半導体ウエハ7100から切り出す。
図13Dにチップ7110の拡大図を示す。
【0201】
分離領域7104に導電層や半導体層を設けてもよい。分離領域7104に導電層や半導体層を設けることで、ダイシング工程時に生じうるESDを緩和し、ダイシング工程に起因する歩留まりの低下を防ぐことができる。また、一般にダイシング工程は、基板の冷却、削りくずの除去、帯電防止などを目的として、炭酸ガスなどを溶解させて比抵抗を下げた純水を切削部に供給しながら行なう。分離領域7104に導電層や半導体層を設けることで、当該純水の使用量を削減することができる。
【0202】
ステップST72を行った後、分離したチップを個々にピックアップしてリードフレーム上に搭載し接合する、ダイボンディング工程を行う(ステップST73)。ダイボンディング工程におけるチップとリードフレームとの接着方法は製品に適した方法を選択すればよい。例えば、接着は樹脂やテープによって行えばよい。ダイボンディング工程は、インターポーザ上にチップを搭載し接合してもよい。ワイヤーボンディング工程で、リードフレームのリードとチップ上の電極とを金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する(ステップST74)。金属の細線には、銀線や金線を用いることができる。ワイヤーボンディングは、ボールボンディングとウェッジボンディングの何れでもよい。
【0203】
ワイヤーボンディングされたチップは、エポキシ樹脂等で封止される、モールド工程が施される(ステップST75)。モールド工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填され、機械的な外力による内蔵される回路部やワイヤーに対するダメージを低減することができ、また水分や埃による特性の劣化を低減することができる。リードフレームのリードをメッキ処理する。そしてリードを切断及び成形加工する(ステップST76)。めっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実に行うことができる。パッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す(ステップST77)。検査工程(ステップST78)を経て、電子部品が完成する(ステップST79)。
【0204】
完成した電子部品の斜視模式図を
図13Eに示す。
図13Eでは、電子部品の一例として、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。
図13Eに示すように、電子部品7000は、リード7001及びチップ7110を有する。
【0205】
電子部品7000は、例えばプリント基板7002に実装される。このような電子部品7000が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板7002上で電気的に接続されることで電子機器に搭載することができる。完成した回路基板7004は、電子機器等の内部に設けられる。
【0206】
電子部品7000は、時計型、ヘッドマウント型、ゴーグル型、眼鏡型、腕章型、ブレスレット型、ネックレス型等のウエアラブル型の電子機器などに適用可能である。
【0207】
<電子機器への適用例>
次いで、ウエアラブル型の電子機器あるいは筐体に、上述の電子部品を適用する場合について説明する。
【0208】
図14Aは、自転車を運転する運転者を表す模式図である。自転車のフレーム80は、実施形態1で説明した筐体10に相当する。自転車の場合、ハンドルなどの部分も筐体10として適用可能である。図示は省略しているが、フレーム80には実施の形態1で説明した受信回路、送信回路、および演算回路等を有する電子部品を設けることができる。
【0209】
また
図14Aでは、上記実施の形態1で説明した筐体20に相当するウエアラブル機器として、時計型電子端末81およびヘルメット91を図示している。
図14Bでは時計型電子端末81、
図14Cではヘルメット91について拡大して図示している。
【0210】
図14Bに図示する時計型電子端末81は、表示部82を備える筐体に、実施の形態1で説明した受信回路21、制御回路22、および振動モータ23等を有する電子部品83が設けられる。電子部品83は、自転車本体であるフレーム80が発する超音波に応じて、振動モータ等により表示部82またはベルト84を振動させて運転者に物体の存在について知らせることができる。そのため、物体の存在の認知をしやすくでき、危険を未然に防止することができる。
【0211】
図14Cに図示するヘルメット91は、保護部92に、実施の形態1で説明した受信回路21、制御回路22、および振動モータ23等を有する電子部品93が設けられる。電子部品93は、自転車本体であるフレーム80が発する超音波に応じて、振動モータ等により保護部92またはベルト94を振動させて運転者に物体の存在について知らせることができる。そのため、物体の存在の認知をしやすくでき、危険を未然に防止することができる。
【0212】
(本明細書等の記載に関する付記)
以上の実施の形態、及び実施の形態における各構成の説明について、以下に付記する。
【0213】
各実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示す構成と適宜組み合わせて、本発明の一態様とすることができる。また、1つの実施の形態の中に、複数の構成例が示される場合は、構成例を適宜組み合わせることが可能である。
【0214】
なお、ある一つの実施の形態の中で述べる内容(一部の内容でもよい)は、その実施の形態で述べる別の内容(一部の内容でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態で述べる内容(一部の内容でもよい)に対して、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行うことが出来る。
【0215】
なお、実施の形態の中で述べる内容とは、各々の実施の形態において、様々な図を用いて述べる内容、又は明細書に記載される文章を用いて述べる内容のことである。
【0216】
なお、ある一つの実施の形態において述べる図(一部でもよい)は、その図の別の部分、その実施の形態において述べる別の図(一部でもよい)、及び/又は、一つ若しくは複数の別の実施の形態において述べる図(一部でもよい)に対して、組み合わせることにより、さらに多くの図を構成させることが出来る。
【0217】
また本明細書等において、ブロック図では、構成要素を機能毎に分類し、互いに独立したブロックとして示している。しかしながら実際の回路等においては、構成要素を機能毎に切り分けることが難しく、一つの回路に複数の機能が係わる場合や、複数の回路にわたって一つの機能が関わる場合があり得る。そのため、ブロック図のブロックは、明細書で説明した構成要素に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0218】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、説明の便宜上任意の大きさに示したものである。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は明確性を期すために模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。例えば、ノイズによる信号、電圧、若しくは電流のばらつき、又は、タイミングのずれによる信号、電圧、若しくは電流のばらつきなどを含むことが可能である。
【0219】
本明細書等において、トランジスタの接続関係を説明する際、「ソース又はドレインの一方」(又は第1電極、又は第1端子)、ソースとドレインとの他方を「ソース又はドレインの他方」(又は第2電極、又は第2端子)という表記を用いる。これは、トランジスタのソースとドレインは、トランジスタの構造又は動作条件等によって変わるためである。なおトランジスタのソースとドレインの呼称については、ソース(ドレイン)端子や、ソース(ドレイン)電極等、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0220】
また、本明細書等において「電極」や「配線」の用語は、これらの構成要素を機能的に限定するものではない。例えば、「電極」は「配線」の一部として用いられることがあり、その逆もまた同様である。さらに、「電極」や「配線」の用語は、複数の「電極」や「配線」が一体となって形成されている場合なども含む。
【0221】
また、本明細書等において、電圧と電位は、適宜言い換えることができる。電圧は、基準となる電位からの電位差のことであり、例えば基準となる電位をグラウンド電位(接地電位)とすると、電圧を電位に言い換えることができる。グラウンド電位は必ずしも0Vを意味するとは限らない。なお電位は相対的なものであり、基準となる電位によっては、配線等に与える電位を変化させる場合がある。
【0222】
なお本明細書等において、「膜」、「層」などの語句は、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0223】
本明細書等において、スイッチとは、導通状態(オン状態)、または、非導通状態(オフ状態)になり、電流を流すか流さないかを制御する機能を有するものをいう。または、スイッチとは、電流を流す経路を選択して切り替える機能を有するものをいう。
【0224】
本明細書等において、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲートとが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとの間の距離をいう。
【0225】
本明細書等において、チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲートとが重なる領域、またはチャネルが形成される領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。
【0226】
本明細書等において、AとBとが接続されている、とは、AとBとが直接接続されているものの他、電気的に接続されているものを含むものとする。ここで、AとBとが電気的に接続されているとは、AとBとの間で、何らかの電気的作用を有する対象物が存在するとき、AとBとの電気信号の授受を可能とするものをいう。
【符号の説明】
【0227】
F11:ノード、F12:ノード、F13:ノード、REF1:参照信号、REF3:参照信号、S11:選択信号、S12:選択信号、S111:選択信号、S112:選択信号、S121:選択信号、S122:選択信号、S131:選択信号、S132:選択信号、SSEL_1:信号、SSEL_2:信号、SSEL_21:信号、ST72:ダイシング工程、T1:時刻、T2:時刻、T4:時刻、T5:時刻、T6:時刻、T7:時刻、T8:時刻、W11:選択信号、W12:選択信号、W13:選択信号、10:筐体、11:演算回路、12:発信回路、12A:発信回路、12B:発信回路、13:受信回路、13A:受信回路、13B:受信回路、14:発信回路、20:筐体、21:受信回路、22:制御回路、23:振動モータ、30:物体、31:超音波、31A:超音波、31B:超音波、32:超音波、32A:超音波、32B:超音波、33:超音波、40:信号生成回路、41:遅延回路、41A:遅延回路、41B:遅延回路、42:信号処理回路、50:参照信号生成回路、51:差動回路、51_1:差動回路、51_9:差動回路、51A:差動回路、51B:差動回路、52:積分回路、52_1:積分回路、52_9:積分回路、53:コンパレータ、53_1:コンパレータ、53_9:コンパレータ、54:三角波生成回路、55:演算回路、61:抵抗素子、62:抵抗素子、63:トランジスタ、63A:トランジスタ、63B:トランジスタ、64:トランジスタ、65:トランジスタ、65A:トランジスタ、65B:トランジスタ、71:ダイオード、72:抵抗素子、73:オペアンプ、74:容量素子、75:スイッチ、80:フレーム、81:時計型電子端末、82:表示部、83:電子部品、84:ベルト、91:ヘルメット、92:保護部、93:電子部品、94:ベルト、100:運転者警告システム、111:選択回路、112:信号保持回路、112_1:信号保持回路、112_2:信号保持回路、113:選択回路、121:トランジスタ、121A:トランジスタ、121B:トランジスタ、122:トランジスタ、123:トランジスタ、124:トランジスタ、124A:トランジスタ、124B:トランジスタ、300:トランジスタ、311:基板、313:半導体領域、314a:低抵抗領域、314b:低抵抗領域、315:絶縁体、316:導電体、320:絶縁体、322:絶縁体、324:絶縁体、326:絶縁体、328:導電体、330:導電体、350:絶縁体、352:絶縁体、354:絶縁体、356:導電体、360:絶縁体、362:絶縁体、364:絶縁体、366:導電体、370:絶縁体、372:絶縁体、374:絶縁体、376:導電体、380:絶縁体、382:絶縁体、384:絶縁体、386:導電体、500:トランジスタ、503:導電体、503a:導電体、503b:導電体、505:導電体、510:絶縁体、512:絶縁体、514:絶縁体、516:絶縁体、518:導電体、520:絶縁体、522:絶縁体、524:絶縁体、526:絶縁体、530:酸化物、530a:酸化物、530b:酸化物、530c:酸化物、540a:導電体、540b:導電体、542:導電体、542a:導電体、542b:導電体、543a:領域、543b:領域、544:絶縁体、546:導電体、548:導電体、550:絶縁体、560:導電体、560a:導電体、560b:導電体、574:絶縁体、580:絶縁体、581:絶縁体、582:絶縁体、586:絶縁体、600:容量素子、610:導電体、612:導電体、620:導電体、630:絶縁体、640:絶縁体、7000:電子部品、7001:リード、7002:プリント基板、7004:回路基板、7100:半導体ウエハ、7102:回路領域、7104:分離領域、7106:分離線、7110:チップ