(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】アンモニア合成システムおよびアンモニアの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01C 1/04 20060101AFI20231030BHJP
C01C 1/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C01C1/04 D
C01C1/02 E
(21)【出願番号】P 2020553403
(86)(22)【出願日】2019-10-21
(86)【国際出願番号】 JP2019041370
(87)【国際公開番号】W WO2020085324
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2018198952
(32)【優先日】2018-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517420810
【氏名又は名称】つばめBHB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】八木 太一
(72)【発明者】
【氏名】山口 克誠
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-071622(JP,A)
【文献】国際公開第1990/006281(WO,A1)
【文献】特開2016-056039(JP,A)
【文献】特開昭60-235718(JP,A)
【文献】国際公開第2017/215814(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01083150(EP,A1)
【文献】特表昭61-502678(JP,A)
【文献】特開2020-066753(JP,A)
【文献】米国特許第04568530(US,A)
【文献】特開2010-159194(JP,A)
【文献】特開2006-131493(JP,A)
【文献】特表2004-514633(JP,A)
【文献】特開昭53-130283(JP,A)
【文献】米国特許第03350170(US,A)
【文献】FLOREZ-ORREGO, D. et al.,"Modeling and optimization of an industrial ammonia synthesis unit: An exergy approach",Energy,2017年06月29日,Vol.137,pp.234-250,doi: 10.1016/j.energy.2017.06.157
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 1/00 - 1/14
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア合成触媒を用いて、10MPa以下の反応圧力の条件下で窒素および水素からアンモニアを合成するアンモニア合成反応器を1つまたは2つ以上有するアンモニア合成反応部、
前記アンモニア合成反応部から排出された、前記アンモニア合成反応部により合成されたアンモニアガスを含むアンモニア含有ガスを冷却するアンモニア冷却器、
前記アンモニア冷却器により冷却された前記アンモニア含有ガスから生成する液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離する気液分離器、および
前記アンモニア含有ガスおよび前記循環ガスの少なくとも一方のガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給するアンモニア合成用ガス供給部を備え、
前記アンモニア合成用ガス供給部によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた前記循環ガスが前記アンモニア合成反応部に供給され、
前記アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度が
6体積%以上であるアンモニア合成システム。
【請求項2】
前記アンモニア冷却器において前記アンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度が-40~15℃である請求項1に記載のアンモニア合成システム。
【請求項3】
前記アンモニア合成反応部が2つ以上の前記アンモニア合成反応器を有し、
前記2つ以上のアンモニア合成反応器が直列に接続している請求項1または2に記載のアンモニア合成システム。
【請求項4】
前記アンモニア合成反応部において、それぞれのアンモニア合成反応器における入口ガスの温度が100~600℃である請求項1~3のいずれか1項に記載のアンモニア合成システム。
【請求項5】
前記アンモニア合成反応部は、複数の前記アンモニア合成反応器の間に前記アンモニア合成反応器の出口ガスを冷却する熱交換器をさらに有する請求項1~4のいずれか1項に記載のアンモニア合成システム。
【請求項6】
前記アンモニア合成用ガス供給部により供給される窒素ガスおよび水素ガスと、前記循環ガスとの少なくとも一方のガスを用いて前記アンモニア合成反応器の出口ガスを冷却する請求項1~5のいずれか1項に記載のアンモニア合成システム。
【請求項7】
前記アンモニア合成反応部において、それぞれのアンモニア合成反応器の入口ガスにおける窒素ガスに対する水素ガスの比率(H
2/N
2:モル比)が0.5~4である請求項1~6のいずれか1項に記載のアンモニア合成システム。
【請求項8】
前記アンモニア合成用ガス供給部から供給される窒素ガスおよび水素ガスを圧縮するアンモニア合成用ガス圧縮器、および
前記気液分離器によって分離された循環ガスを圧縮する循環ガス圧縮器をさらに備えた請求項1~7のいずれか1項に記載のアンモニア合成システム。
【請求項9】
前記アンモニア冷却器が、1気圧における沸点が-33.0℃以上である液体と前記アンモニア含有ガスとの間の熱交換により前記アンモニア含有ガスを冷却する請求項1~8のいずれか1項に記載のアンモニア合成システム。
【請求項10】
アンモニア合成触媒を用いて、10MPa以下の反応圧力の条件下で窒素および水素を反応させて、アンモニアガスを含むアンモニア含有ガスを製造するアンモニア含有ガス製造工程、
前記アンモニア含有ガス製造工程により製造されたアンモニア含有ガスを冷却するアンモニア含有ガス冷却工程、
前記アンモニア含有ガス冷却工程による前記アンモニア含有ガスの冷却により液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離して液化したアンモニアを得るアンモニア分離工程、および
前記アンモニア含有ガスおよび前記循環ガスの少なくとも一方のガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給するアンモニア合成用ガス供給工程を含み、
前記アンモニア含有ガス製造工程は
、前記アンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた前記循環ガスを用いて窒素および水素を反応させ、
前記アンモニア含有ガス製造工程で用いられた循環ガス中のアンモニアガスの濃度が
6体積%以上であるアンモニアの製造方法。
【請求項11】
前記アンモニア含有ガス冷却工程における前記アンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度が-40~15℃である請求項10に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項12】
前記アンモニア含有ガス製造工程は、前記循環ガス、または前記アンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた前記循環ガスを使用してアンモニア合成触媒を用いて窒素および水素を反応させてアンモニアガスを含む第1のアンモニア含有ガスを製造する第1のアンモニア含有ガス製造工程、および前記第1のアンモニア含有ガスを使用してアンモニア合成触媒を用いて窒素および水素を反応させて、前記第1のアンモニア含有ガスに比べて高い濃度でアンモニアガスを含む第2のアンモニア含有ガスを製造する第2のアンモニア含有ガス製造工程を少なくとも有する請求項10または11に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項13】
前記第1のアンモニア含有ガス製造工程に用いる前記循環ガス、または前記アンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた前記循環ガスの温度および前記第2のアンモニア含有ガス製造工程に用いる前記第1のアンモニア含有ガスの温度がそれぞれ100~600℃である請求項12に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項14】
前記アンモニア含有ガス製造工程は、前記第1のアンモニア含有ガスを熱交換により冷却する第1のアンモニア含有ガス冷却工程を少なくとも有し、
前記第2のアンモニア含有ガス製造工程は、前記第1のアンモニア含有ガス冷却工程により冷却された前記第1のアンモニア含有ガスを用いて第2のアンモニア含有ガスを製造する請求項12または13に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項15】
前記アンモニア含有ガス製造工程は、前記アンモニア合成用ガス供給工程により供給される窒素ガスおよび水素ガスと、前記循環ガスとの少なくとも一方のガスを用いて前記第1のアンモニア含有ガスを冷却する第1のアンモニア含有ガス冷却工程を少なくとも有し、
前記第2のアンモニア含有ガス製造工程は、前記第1のアンモニア含有ガス冷却工程により冷却された前記第1のアンモニア含有ガスを用いて第2のアンモニア含有ガスを製造する請求項12または13に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項16】
前記第1のアンモニア含有ガス製造工程において用いる、前記循環ガス、または前記アンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた前記循環ガス、および前記第2のアンモニア含有ガス製造工程において用いる前記第1のアンモニア含有ガスにおける窒素ガスに対する水素ガスの比率(H
2/N
2:モル比)が0.5~4である請求項12~15のいずれか1項に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項17】
前記アンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを圧縮するアンモニア合成用ガス圧縮工程、および
前記アンモニア含有ガス冷却工程において分離された前記循環ガスを圧縮する循環ガス圧縮工程をさらに含む請求項10~16のいずれか1項に記載のアンモニアの製造方法。
【請求項18】
前記アンモニア含有ガス冷却工程は、1気圧における沸点が-33.0℃以上である液体と前記アンモニア含有ガスとの間の熱交換により前記アンモニア含有ガスを冷却する請求項10~17のいずれか1項に記載のアンモニアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素ガスおよび水素ガスからアンモニアを合成するアンモニア合成システムおよびアンモニアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業生産において広く用いられる硫安や尿素などの窒素肥料は、アンモニアを主原料として製造される。そのためアンモニアは非常に重要な化学原料として、その製造方法が検討されている。
最も広く使用されているアンモニア製造技術として、ハーバー・ボッシュ法が挙げられる。ハーバー・ボッシュ法は、原料としての窒素および水素を、鉄を主成分とした触媒と高温高圧下で接触させることでアンモニアを製造する方法である。
ハーバー・ボッシュ法以外の合成方法として、種々の担体にルテニウムを担持した担持金属触媒を用いた合成方法が検討されている。
【0003】
近年、アンモニアの製造コストをさらに削減するために、アンモニア合成プロセスの省エネルギー化が進められている。例えば、特許文献1に記載のアンモニア合成システムでは、製品アンモニアを液体として取り出す際、水冷式または空冷式の冷却器を用いて未反応ガスを含むアンモニアガスを30~50℃の温度に冷却する。これにより、製品アンモニアの一部をチラー冷媒として用いる必要がなくなるので、冷却コストを削減できるとともに、アンモニア合成の運転効率の向上を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、水冷式または空冷式の冷却器を用いて未反応ガスを含むアンモニアガスから製品アンモニアを液体として取り出すためには、冷却の際のアンモニアガスの圧力を高くする必要がある。特許文献1の段落0021には、アンモニア合成の反応圧力が7~25MPa、より好ましくは10~20MPaであると記載されている。しかし、実際には、製品アンモニアを液体として取り出す効率を高めるために、10MPaを超える反応圧力が必要となる(特許文献1の段落0033参照、実施例では13.8MPa)。このため、特許文献1に記載のアンモニア合成システムでは、アンモニアガスを冷却するために必要なエネルギーは軽減されるものの、アンモニア合成の反応圧力を高くするために必要なエネルギーはかえって増大し、アンモニアの製造に必要なトータルエネルギーがあまり軽減されないという問題点がある。なお、アンモニアガスを冷却するために必要なエネルギーとは、例えば、アンモニアガスを冷却する冷却器の駆動エネルギーである。また、アンモニア合成の反応圧力を高くするために必要なエネルギーとは、例えば、ガスを圧縮するために用いるガス圧縮器の駆動エネルギーである。
【0006】
そこで、本発明は、アンモニアの生産能力を確保しつつアンモニアの製造に必要なエネルギーを軽減できるアンモニア合成システムおよびアンモニアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、アンモニア合成の際の反応圧力を所定値以下とし、かつ、アンモニア合成に用いる循環ガス中のアンモニアガスの濃度を所定値以上とすることによって、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
[1]アンモニア合成触媒を用いて、10MPa以下の反応圧力の条件下で窒素および水素からアンモニアを合成するアンモニア合成反応器を1つまたは2つ以上有するアンモニア合成反応部、アンモニア合成反応部から排出された、アンモニア合成反応部により合成されたアンモニアガスを含むアンモニア含有ガスを冷却するアンモニア冷却器、アンモニア冷却器により冷却されたアンモニア含有ガスから生成する液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離する気液分離器、およびアンモニア含有ガスおよび循環ガスの少なくとも一方のガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給するアンモニア合成用ガス供給部を備え、循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給部によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスがアンモニア合成反応部に供給され、アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度が3体積%以上であるアンモニア合成システム。
[2]アンモニア冷却器においてアンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度が-40~15℃である上記[1]に記載のアンモニア合成システム。
[3]アンモニア合成反応部が2つ以上のアンモニア合成反応器を有し、2つ以上のアンモニア合成反応器が直列に接続している上記[1]または[2]に記載のアンモニア合成システム。
[4]アンモニア合成反応部において、それぞれのアンモニア合成反応器における入口ガスの温度が100~600℃である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のアンモニア合成システム。
[5]アンモニア合成反応部は、複数のアンモニア合成反応器の間にアンモニア合成反応器の出口ガスを冷却する熱交換器をさらに有する上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のアンモニア合成システム。
[6]アンモニア合成用ガス供給部により供給される窒素ガスおよび水素ガスと、循環ガスとの少なくとも一方のガスを用いてアンモニア合成反応器の出口ガスを冷却する上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のアンモニア合成システム。
[7]アンモニア合成反応部において、それぞれのアンモニア合成反応器の入口ガスにおける窒素ガスに対する水素ガスの比率(H2/N2:モル比)が0.5~4である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載のアンモニア合成システム。
[8]アンモニア合成用ガス供給部から供給される窒素ガスおよび水素ガスを圧縮するアンモニア合成用ガス圧縮器、および気液分離器によって分離された循環ガスを圧縮する循環ガス圧縮器をさらに備えた上記[1]~[7]のいずれか1つに記載のアンモニア合成システム。
[9]アンモニア冷却器が、1気圧における沸点が-33.0℃以上である液体とアンモニア含有ガスとの間の熱交換によりアンモニア含有ガスを冷却する上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のアンモニア合成システム。
[10]アンモニア合成触媒を用いて、10MPa以下の反応圧力の条件下で窒素および水素を反応させて、アンモニアガスを含むアンモニア含有ガスを製造するアンモニア含有ガス製造工程、アンモニア含有ガス製造工程により製造されたアンモニア含有ガスを冷却するアンモニア含有ガス冷却工程、アンモニア含有ガス冷却工程によるアンモニア含有ガスの冷却により液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離して液化したアンモニアを得るアンモニア分離工程、およびアンモニア含有ガスおよび循環ガスの少なくとも一方のガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給するアンモニア合成用ガス供給工程を含み、アンモニア含有ガス製造工程は、循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスを用いて窒素および水素を反応させ、アンモニア含有ガス製造工程で用いられた循環ガス中のアンモニアガスの濃度が3体積%以上であるアンモニアの製造方法。
[11]アンモニア含有ガス冷却工程におけるアンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度が-40~15℃である上記[10]に記載のアンモニアの製造方法。
[12]アンモニア含有ガス製造工程は、循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスを使用してアンモニア合成触媒を用いて窒素および水素を反応させてアンモニアガスを含む第1のアンモニア含有ガスを製造する第1のアンモニア含有ガス製造工程、および第1のアンモニア含有ガスを使用してアンモニア合成触媒を用いて窒素および水素を反応させて、第1のアンモニア含有ガスに比べて高い濃度でアンモニアガスを含む第2のアンモニア含有ガスを製造する第2のアンモニア含有ガス製造工程を少なくとも有する上記[10]または[11]に記載のアンモニアの製造方法。
[13]第1のアンモニア含有ガス製造工程に用いる循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスの温度および第2のアンモニア含有ガス製造工程に用いる第1のアンモニア含有ガスの温度がそれぞれ100~600℃である上記[12]に記載のアンモニアの製造方法。
[14]アンモニア含有ガス製造工程は、第1のアンモニア含有ガスを熱交換により冷却する第1のアンモニア含有ガス冷却工程を少なくとも有し、第2のアンモニア含有ガス製造工程は、第1のアンモニア含有ガス冷却工程により冷却された第1のアンモニア含有ガスを用いて第2のアンモニア含有ガスを製造する上記[12]または[13]に記載のアンモニアの製造方法。
[15]アンモニア含有ガス製造工程は、アンモニア合成用ガス供給工程により供給される窒素ガスおよび水素ガスと、循環ガスとの少なくとも一方のガスを用いて第1のアンモニア含有ガスを冷却する第1のアンモニア含有ガス冷却工程を少なくとも有し、第2のアンモニア含有ガス製造工程は、第1のアンモニア含有ガス冷却工程により冷却された第1のアンモニア含有ガスを用いて第2のアンモニア含有ガスを製造する上記[12]または[13]に記載のアンモニアの製造方法。
[16]第1のアンモニア含有ガス製造工程において用いる、循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガス、および第2のアンモニア含有ガス製造工程において用いる第1のアンモニア含有ガスにおける窒素ガスに対する水素ガスの比率(H2/N2:モル比)が0.5~4である上記[12]~[15]のいずれか1つに記載のアンモニアの製造方法。
[17]アンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを圧縮するアンモニア合成用ガス圧縮工程、およびアンモニア含有ガス冷却工程において分離された循環ガスを圧縮する循環ガス圧縮工程をさらに含む上記[10]~[16]のいずれか1つに記載のアンモニアの製造方法。
[18]アンモニア含有ガス冷却工程は、1気圧における沸点が-33.0℃以上である液体とアンモニア含有ガスとの間の熱交換によりアンモニア含有ガスを冷却する上記[10]~[17]のいずれか1つに記載のアンモニアの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンモニアの生産能力を確保しつつアンモニアの製造に必要なエネルギーを軽減できるアンモニア合成システムおよびアンモニアの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムのアンモニア合成反応部におけるアンモニア合成を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムの変形例を示す概略図である。
【
図12】
図12は、実施例でシミュレーションに用いたシステムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本発明の一実施形態のアンモニア合成システム]
図1を参照して本発明の一実施形態のアンモニア合成システムを説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムを示す概略図である。
【0012】
本発明の一実施形態のアンモニア合成システム1は、アンモニア合成触媒を用いて、窒素および水素からアンモニアを合成する2つのアンモニア合成反応器11,12を有するアンモニア合成反応部10、アンモニア合成反応部10から排出された、アンモニア合成反応部10により合成されたアンモニアガスを含むアンモニア含有ガス(NH3含有ガス)を冷却するアンモニア冷却器20、アンモニア冷却器20により冷却されたアンモニア含有ガスから生成する液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離する気液分離器30、および循環ガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給するアンモニア合成用ガス供給部40を備える。そして、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスがアンモニア合成反応部10に供給される。
本発明の一実施形態におけるアンモニア合成システム1は、所望により、アンモニア合成用ガス供給部40から供給される窒素ガスおよび水素ガスを圧縮するアンモニア合成用ガス圧縮器50および気液分離器30によって分離された循環ガスを圧縮する循環ガス圧縮器60をさらに備えてもよい。
【0013】
(アンモニア合成反応部)
上述したように、アンモニア合成反応部10は、アンモニア合成触媒を用いて窒素および水素からアンモニアを合成する2つのアンモニア合成反応器11,12を有する。そして、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスがアンモニア合成反応部10に供給される。
【0014】
<アンモニア合成触媒>
アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒は、10MPa以下の反応圧力で窒素および水素からアンモニアを合成できるアンモニア合成触媒であればとくに限定されない。また、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒は、アンモニアの濃度が高くても高い活性を示す触媒であることが好ましい。
【0015】
アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒には、例えば、(i)導電性マイエナイト型化合物を担体として用いた担持金属触媒、(ii)二次元エレクトライド化合物またはその前駆体化合物を担体として用いた担持金属触媒、および(iii)ZrO2、TiO2、CeO2およびMgOから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含む担体基材と、その担体基材に担持された式M(NH2)x(式中、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびEuから選ばれる少なくとも1種を表し、xはMの価数を表す。)で示される金属アミドとからなる複合体を担体として用いた担持金属触媒などが挙げられる。
【0016】
(i)導電性マイエナイト型化合物を用いた担持金属触媒
担持金属触媒の担体として使用する「導電性マイエナイト型化合物」とは、伝導電子を含むマイエナイト型化合物である。マイエナイト型化合物とは、鉱物のマイエナイトそれ自体、マイエナイト型岩石、および鉱物のマイエナイト結晶と同型の結晶構造を有する複合酸化物をいう。マイエナイト型化合物の結晶は、内径0.4nm程度の籠状の構造(ケージ)がその壁面を共有し、三次元的に繋がることで構成されている。通常、マイエナイト型化合物のケージの内部にはO2-などの負イオンが含まれているが、アニールによってそれらを伝導電子に置換することが可能である。アニール時間を長くすることにより、マイエナイト型化合物中の伝導電子濃度は高くなる。
【0017】
導電性マイエナイト型化合物の代表組成は、式[Ca24Al28O64]4+(O2-)2-x(e-)2x(0<x≦2)で示される。アンモニア合成活性の観点から、マイエナイト型化合物中の伝導電子濃度は、好ましくは1015cm-3以上、より好ましくは1016cm-3以上、さらに好ましくは1017cm-3以上、さらにより好ましくは1018cm-3以上である。該伝導電子濃度の上限は、特に限定されないが、通常、2.2×1021cm-3以下、2.0×1021cm-3以下などとし得る。マイエナイト型化合物中の伝導電子濃度は、例えば、国際公開第2012/077658号に記載の方法により測定することができる。
【0018】
導電性マイエナイト型化合物は、上記の代表組成の式に含まれるCaの一部または全てがLi、Na、K、Mg、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ir、Ru、RhおよびPtからなる群から選択される少なくとも1種の典型金属元素または遷移金属元素で置換されていてもよい。また、上記の代表組成に含まれるAlの一部または全てがB、Ga、C、Si、FeおよびGeからなる群から選択される少なくとも1種の典型金属元素または遷移金属元素で置換されていてもよい。さらに、上記の代表組成の式に含まれるOの一部または全てがH、F、Cl、BrおよびAuからなる群から選択される少なくとも1種の典型元素または金属元素で置換されていてもよい。導電性マイエナイト型化合物は、例えば、国際公開第2012/077658号に記載の方法により調製することができる。
また、導電性マイエナイト型化合物は、導電性マイエナイト型化合物の電子化物であってもよい。このような導電性マイエナイト型化合物としては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物の電子化物(12CaO・7Al2O3の電子化物)などが挙げられる。
【0019】
(ii)二次元エレクトライド化合物またはその前駆体化合物の担持金属触媒
担持金属触媒の担体として使用する「二次元エレクトライド化合物」とは、層間に電子が陰イオンとして存在する層状化合物、すなわち、層同士が層間に存在する電子により結びつけられているエレクトライド(電子化物)をいう。
【0020】
二次元エレクトライド化合物では、電子が二次元的に非局在化された陰イオン的電子として空間的隙間に存在する。そのため、電子は、該化合物全体を極めてスムーズに動き回ることができる。
【0021】
2013年にCa2Nが二次元のエレクトライドであることが見出された(K.Lee,S.W.Kim,Y.Toda,S.Matsuishi and H.Hosono,”Nature”,494,336-341(2013))。Ca2Nは、[Ca2N]+で構成される層同士の間に電子が陰イオンとして結びついた層状化合物であり、Ca3N2と金属Caを真空中で加熱することにより得られる。Ca2Nの伝導電子濃度は1.39×1022/cm3であり、2.6eVの仕事関数を有することが報告されている。その後、A.Walsh and D.O.Scanlon,Journal of Materials Chemistry C,1,3525-3528(2013)において、この2次元のエレクトライドについて報告されている。さらに、層状結晶構造を持ち、イオン式[AE2N]+e-で表記される窒化物(AEは、Ca、Sr、Baから選択される少なくとも1種の元素)からなる窒化物エレクトライドが報告されている(特開2014-24712号公報)。
【0022】
担持金属触媒の担体として使用し得る二次元エレクトライド化合物としては、式M1
2N(式中、M1は、Ca、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を表す。)で示される窒化物エレクトライド、および式M2
2C(式中、M2は、Y、Sc、Gd、Tb、Dy、HoおよびErからなる群から選択される少なくとも1種を表す。)で示される炭化物エレクトライドからなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。なお、M1およびM2の一部はLi、Na、K、RbおよびCsからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属元素で置換されていてもよい。
【0023】
二次元エレクトライド化合物の前駆体化合物を担体として使用してもよい。例えば、二次元エレクトライド化合物であるCa2Nの前駆体としては、Ca3N2または式CaxNyHz(1<x<11、1<y<8、0<z<4)で示される窒化カルシウムの水素化物が使用できる。窒化カルシウムの水素化物(以下、「Ca-N-H系化合物」)としては、Ca2NH、CaNH、Ca(NH2)2などが知られている。Sr2NやBa2Nの前駆体化合物は、Ca2Nの前駆体化合物と同様である。
【0024】
したがって、二次元エレクトライド化合物の前駆体化合物は、式M1
3N2で示される窒化物および式M1
xNyHz(1<x<11、1<y<8、0<z<4)で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。式中、M1は、Ca、SrおよびBaからなる群から選択される少なくとも1種を表す。
【0025】
二次元エレクトライド化合物は、公知の方法により調製してよい。例えば、Ca2Nは、Ca3N2と金属Caを混合し、真空条件下、長時間加熱(例えば、800℃程度の高温で100時間程度)することによって得られる。
【0026】
アンモニア合成に触媒能を呈する金属を二次元エレクトライド化合物またはその前駆体化合物に担持させて担持金属触媒を形成すると、アンモニア合成活性が飛躍的に向上し、長時間の反応においても安定な著しく高性能な触媒を実現し得る。
【0027】
(iii)金属酸化物と金属アミドとの複合体を用いた担持金属触媒
担持金属触媒の担体としては、ZrO2、TiO2、CeO2およびMgOから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を含む担体基材と、該担体基材に担持された式M(NH2)x(式中、Mは、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、YbおよびEuから選ばれる少なくとも1種)で示される金属アミドとからなる複合体も好適である。
【0028】
例えば、金属アミドとしてCa(NH2)2を使用する場合、アンモニア合成条件下でCa(NH2)2が、Ca2Nや、Ca2NH、CaNHなどのCa-N-H系化合物へと変化して、活性金属と共同して活性種としての機能を増強する。これにより、上記複合体を担体として含む担持金属触媒は、アンモニア合成において、安定した触媒活性を長時間実現することができる。
【0029】
担体基材として、活性炭、グラファイト、金属酸化物などが使用できるが、特にZrO2、TiO2、CeO2およびMgOなどの表面が塩基性から中性を示す担体基材が好ましく、あるいはこれらを1種以上含む担体基材でも構わない。担体基材としては、粉末、あるいは成形した担体基材の何れも用いることができる。
【0030】
複合体における金属アミドの担持量は、1~90質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0031】
担体基材の表面を金属アミドで十分に被覆し所期の触媒活性を得る観点から、担体基材の比表面積をA(m2/g)、複合体における金属アミドの担持量をB(質量%)とするとき、B/Aが、好ましくは0.07以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、0.3以上または0.4以上となるように複合体を調製することが好ましい。上記B/Aの上限は、所期の触媒活性を得る観点から、好ましくは2.3以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下、1.6以下または1.5以下である。
【0032】
<担持金属触媒に用いる活性金属>
上記(i)~(iii)の担持金属触媒に用いる活性金属としては、水素と窒素との直接反応によるアンモニア合成に触媒能を呈する金属であれば特に限定されず、例えば、周期表の6族、7族、8族および9族に属する金属の少なくとも1種または該金属を含む化合物が挙げられる。周期表6族金属としては、例えば、Cr、MoおよびWが挙げられる。周期表7族金属としては、例えば、Mn、TcおよびReが挙げられる。周期表8族金属としては、例えば、Fe、RuおよびOsが挙げられる。周期表9族金属としては、例えば、Co、RhおよびIrが挙げられる。低圧条件下で窒素および水素からアンモニアを合成できるという観点から、これらの活性金属の中で上記(i)~(iii)の担持金属触媒に用いる活性金属としてRuが好ましい。
【0033】
担持金属触媒における活性金属の担持量は、アンモニア合成活性の観点から、担体を100質量部としたとき、好ましくは0.01質量部以上であり、より好ましくは0.02質量部以上であり、さらに好ましくは0.03質量部以上、0.05質量部以上、0.1質量部以上、0.3質量部以上、0.5質量部以上、または1質量部以上である。活性金属の担持量の上限は、アンモニア合成反応時の活性金属粒子のシンタリングを抑制して所期のアンモニア合成活性を維持し得る観点から、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは20質量部以下であり、さらに好ましくは15質量部以下であり、または10質量部以下である。なお、上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0034】
担持金属触媒の比表面積は、特に限定されないが、好ましくは0.1~250m2/gであり、より好ましくは0.5~200m2/gである。担持金属触媒の比表面積は、例えば、BET吸着法により測定することができる。
【0035】
担持金属触媒は、上記の担体と活性金属を使用して、公知の方法により調製することができる。例えば、担体として導電性マイエナイト型化合物を含む担持金属触媒は、国際公開第2012/077658号に記載の方法により調製することができる。
【0036】
なお、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒は、10MPa以下の反応圧力で窒素および水素からアンモニアを合成できるアンモニア合成触媒であれば、上記(i)~(iii)の担持金属触媒に限定されない。例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化チタン(チタニア)、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム、酸化セリウム(セリア)、ゼオライトなどの酸化物;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化マグネシウムなどの窒化物;活性炭などを担体として用いた担持ルテニウム触媒も使用することができる。
【0037】
また、国際公開第2017/111028号に記載されている、一般式A5X3(Aは希土類元素を示し、XはSiまたはGeを表す。)で表される金属間化合物に遷移金属を担持して得られる遷移金属担持金属間化合物を用いた担持金属触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。これらの中で、アンモニア合成活性が高いという観点から、Y5Si3に遷移金属を担持して得られる遷移金属担持金属間化合物を用いた担持金属触媒がより好ましい。
さらに、Nature Catalysis,Vol.1,MARCH 2018,pp.178-185に記載されている3元系金属間化合物LaCoSiを用いた担持金属触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
【0038】
また、国際公開第2018/030394号に記載されている、水熱合成法で製造されたマイエナイト型化合物を用いた担持金属触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
さらに、国際公開第2017/047709号に記載されている、一般式ARu2(Aは、Y、Sc又は、Ceを除くランタノイド元素から選ばれる一種以上の元素)で示される組成を有するラーベス相金属間化合物を触媒活性成分として含む触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。これらの中で、入手が比較的容易で安価であるという観点から、YRu2を触媒活性成分として含む触媒が好ましい。
【0039】
また、Advanced Materials,29,1700924-1-7(2017)に記載されている金属間化合物LaScSiを用いた担持金属触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
さらに、Inorganic Chemistry,Vol.55,pp8833-8838(2016)に記載されている、一般式LnH2(LnはLa、Ce、CaまたはYを表す。)で表されるエレクトライドを用いた担持金属触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
【0040】
また、Chemical Science,Vol.9,2230-2237(2018)に記載されているルテニウムを担持した酸化物担持型触媒(Ru/La0.5Ce0.5O1.75)も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
さらに、Chemical Science,Vol.8,674-679(2017)に記載されている酸化プラセオジムにルテニウムを担持した触媒(Ru/Pr2O3)も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
【0041】
また、Industrial & Engineering Chemistry,Vol.18,pp.1307-1309(1926)に記載されているマグネタイト型構造の鉄触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
さらに、Applied Catalysis A,Vol.142,pp.209(1996)に記載されているウスタイト型構造の鉄触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
【0042】
また、Bulltin of the Chemical Society of Japan, Vol.44,pp.3216(1971)に記載されているセライト(登録商標)にルテニウムを担持した触媒(Ru/Celite)も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
さらに、国際公開第84/03642号に記載されているグラファイトにルテニウムを担持した触媒(Ru/グラファイト)も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
【0043】
また、Journal of Catalysis,Vol.208,pp.180-186(2002)に記載されている、セシウムを添加したコバルト・モリブデン複合窒化物を含む触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
さらに、ChemCatChem,vol.4,pp.2836-2839(2015)に記載されている、バリウムを添加したコバルトを担持金属として用いカーボンを担体として用いた触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
【0044】
また、RSC Advances,Vol.4,pp.38093-38102(2014)に記載されている、コバルトを担持金属として用い酸化セリウムを担体として用いた触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
さらに、特開2017-148810号公報に記載されている、担体がペロブスカイト型酸化物の半導体を含むアンモニア合成触媒も、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
【0045】
また、国際公開第2018/169076号に記載されている下記一般式(1)で表されるシアナミド化合物に遷移金属を担持した金属担持物からなる担持金属触媒もアンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
MCN2 ・・・(1)
(式中、Mは、周期表第II族元素を表す。)
Mは具体的には、Be、Mg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも一種の元素であり、これらの中で、好ましくは、Mg、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも一種の元素である。高温の反応条件でも熱分解することなく安定であることから、Mは、Ca、SrおよびBaの中から選ばれる少なくとも一種の元素がより好ましい。そして、原子番号が小さく、単位重量あたりの面積(比表面積)を大きくすることが容易なことから、MはCaであることがさらに好ましい。
すなわち、上記シアナミド化合物は、具体的にはシアナミド(Cyanamide・CN2H2)と周期律表II属元素との塩である。
【0046】
また、国際公開第2019/176987号に記載されている下記一般式(2)で示されるランタノイド酸水素化物を用いた電子又はヒドリドイオン吸放出材料に遷移金属を担持した遷移金属担持物を含む担持金属触媒もアンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒として用いることができる。
Ln(HO) ・・・(2)
(式中のLnはランタノイド元素を示す。)
Lnは具体的にはGd、Sm、Pr、Ce、Er、Dy、Ho、La、Ndの中から選ばれる少なくとも一種の元素である。
また、遷移金属は、例えばRu、Fe、Co、Cr及びMnからなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。
【0047】
上述の触媒の中で、低温においても高い触媒活性を示すという観点から、アンモニア合成反応器11,12に使用するアンモニア合成触媒は、導電性マイエナイト型化合物を用いた担持金属触媒、二次元エレクトライド化合物またはその前駆体化合物を担体として用いた担持金属触媒、金属酸化物を含む担体基材と金属アミドとからなる複合体を担体として用いた担持金属触媒、Y5Si3に遷移金属を担持して得られる遷移金属担持金属間化合物を用いた担持金属触媒、3元系金属間化合物LaCoSiを用いた担持金属触媒、水熱合成法で製造されたマイエナイト型化合物を用いた担持金属触媒、YRu2を触媒活性成分として含む触媒、金属間化合物LaScSiを用いた担持金属触媒、一般式LnH2(LnはLa、Ce、CaまたはYを表す。)で表されるエレクトライドを用いた担持金属触媒、ウスタイト型構造の鉄触媒、シアナミド化合物および一般式Ln(HO)(LnはGd、Sm、Pr、Ce、Er、Dy、Ho、LaまたはNdを表す)で表されるランタノイド酸水素化物に遷移金属を担持した金属担持物からなる担持金属触媒が好ましい。
【0048】
アンモニア合成反応器11,12において、上記担持金属触媒を、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の担持金属触媒を使用する場合、反応形式に応じて、2種以上の担持金属触媒を混合して使用してもよく、種類毎に別個の層を形成するように担持金属触媒を積層して使用してもよく、種類毎に異なる反応管に充填するように担持金属触媒を別個の反応管に充填した後に該反応管を組み合わせて使用してもよい。また、アンモニア合成反応器11に使用する担持金属触媒とアンモニア合成反応器12に使用する担持金属触媒とは相互に同じであってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0049】
<アンモニア合成触媒を用いたときのアンモニア合成反応の活性化エネルギー>
10MPa以下の反応圧力で窒素および水素からアンモニアを合成できるという観点から、アンモニア合成反応のみかけの活性化エネルギーが、好ましくは80kJ/mol以下となる、より好ましくは60kJ/mol以下となるアンモニア合成触媒をアンモニア合成反応器11,12に用いることが好ましい。なお、アンモニア合成反応のみかけの活性化エネルギーは、アンモニア合成反応によるアンモニア生成速度をy軸とし、反応温度の逆数をx軸としたx-y平面に測定結果をブロットして得られた直線の傾きから算出することができる。
【0050】
<アンモニア合成の反応圧力>
アンモニア合成の反応圧力は10MPa以下であり、好ましくは7MPa以下であり、より好ましくは5MPa以下であり、さらに好ましくは3MPa以下である。アンモニア合成の反応圧力が10MPaよりも大きいと、アンモニア合成の原料ガスを圧縮するのに要するエネルギーが大きくなる。
アンモニア合成の反応圧力が低ければ低いほど、アンモニア合成の原料ガスを圧縮するのに要するエネルギーは低くなるので、アンモニアの生産能力を確保しながらアンモニアを合成できる限り、アンモニア合成の反応圧力の範囲の下限値は特に限定されない。しかし、反応圧力が高い方がアンモニア合成の反応は促進するので、アンモニア合成の反応圧力は、好ましくは500kPa以上である。なお、反応圧力はゲージ圧である(以下同様)。また、上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
【0051】
<アンモニア合成の反応温度>
アンモニア合成反応の化学平衡およびアンモニア合成の容易性の観点から、アンモニア合成の反応温度は、好ましくは650℃以下、より好ましくは600℃以下であり、さらに好ましくは550℃以下であり、とくに好ましくは530℃以下である。また、アンモニア合成反応の反応速度の観点から、アンモニア合成の反応温度は、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは200℃以上であり、さらに好ましくは250℃以上であり、とくに好ましくは270℃以上である。なお、上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。また、アンモニア合成の反応温度とは、アンモニア合成反応器の内部で起きているアンモニア合成反応の温度であり、アンモニア合成反応器の入口ガスの温度とは異なるものである。
【0052】
<アンモニア合成反応器内におけるアンモニア合成の温度調節>
アンモニア合成反応器11,12ではアンモニア合成触媒を用いてアンモニアを合成する。このため、アンモニア合成反応器11,12内でアンモニア合成触媒の温度調節を適切に行う必要がある。触媒の温度調節の方法には、例えば、(i)触媒層間冷却方式および(ii)触媒層内冷却方式の何れか1つの方式と、(iii)冷ガス混合方式(ガスクエンチ式)および(iv)熱交換方式の何れか1つの方式とを組み合わせて行う4通りの方法がある。
方式(i)は、触媒層を多段に分けて、触媒層で加熱された反応ガスを冷却してから次の触媒層に送る方式である。方式(ii)は、触媒層内で反応ガスを冷却する方式である。反応ガスを冷却する方法として、冷原料ガスを反応ガスに直接混合する方式(iii)と冷却管を層間に配置して反応ガスを冷却する方式(iv)とがある。
【0053】
<アンモニア合成反応器の配置>
アンモニア合成反応器11,12は直列に接続していることが好ましい。これにより、アンモニア合成反応器11から排出されるアンモニア含有ガスを用いてアンモニア合成反応器12がアンモニアを合成することができる。その結果、アンモニア合成反応部10から排出されるアンモニア含有ガス中のアンモニアガスの濃度をさらに高くすることができる。そして、気液分離器30に分離される液化したアンモニアの回収量を大きくすることができる。また、アンモニア合成反応部10に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度も高くすることができる。
【0054】
<アンモニア合成反応器の入口ガスの温度>
アンモニア合成反応が発熱反応であるという観点およびアンモニア合成の反応温度を上述の反応温度の範囲内に調整するという観点から、それぞれのアンモニア合成反応器11,12における入口ガスの温度は、好ましくは100~600℃であり、より好ましくは200~500℃であり、さらに好ましくは250~450℃である。なお、入口ガスの温度とは、アンモニア合成反応器11,12の不図示の入口におけるガスの温度である。
【0055】
<アンモニア合成反応器の入口ガスにおける窒素ガスに対する水素ガスの比率>
アンモニアを効率よく合成できるという観点から、アンモニア合成反応器の入口ガスにおける窒素ガスに対する水素ガスの比率(H2/N2:モル比)は、好ましくは0.5~4.0であり、より好ましくは1.5~3.3であり、さらに好ましくは1.5~3.0である。
【0056】
アンモニア合成反応器11,12の間にアンモニア合成反応器11の出口ガスを冷却する熱交換器13をアンモニア合成反応部10がさらに有することによって、アンモニア合成反応器12の入口ガスの温度を上記範囲内に調節できるようにしてもよい。これにより、アンモニア合成反応器12の入口ガスの温度を上記範囲内に、より容易に調節することができるとともに、アンモニア合成反応器11におけるアンモニア合成の反応により発生した熱を回収して有効活用できる。熱交換器13は、アンモニア合成反応器11の出口ガスの熱を用いて他の伝熱媒体を加熱できるものであれば、特に限定されない。熱交換器13は、例えば、アンモニア合成反応器11の出口ガスの熱を用いてブロワーで送られる空気を暖めてもよいし、水を加熱して高圧水蒸気を発生させてもよい。
【0057】
<アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度>
アンモニア冷却器20において、アンモニア合成反応部10に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度を高くすることによって、アンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度を高くすることができる。すなわち、アンモニア合成反応部10に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度が高くなれば、気液分離器30において、アンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度を高くすることができる。このような観点から、アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度は、3体積%以上であり、好ましくは5体積%以上であり、より好ましくは6体積%以上であり、さらに好ましくは7体積%以上である。アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度が3体積%未満であると、アンモニア含有ガス中のアンモニアを液化するためにアンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度をより低くする必要があり、アンモニア含有ガスを冷却するときに必要なエネルギーが大きくなる。
【0058】
アンモニア合成反応部10に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度が高すぎると、アンモニア含有ガスから回収される液体アンモニアの回収量が減少する。このため、アンモニア含有ガスから回収される液体アンモニアの回収量を確保するという観点から、アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度は、好ましくは35体積%以下であり、より好ましくは25体積%以下である。なお、上記上限値および下限値は任意に組み合わせることができる。
なお、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスがアンモニア合成反応部10に供給される場合、アンモニア合成反応部10に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度は、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガス中のアンモニアガスの濃度である。
【0059】
本発明の一実施形態におけるアンモニア合成システム1では、アンモニア合成の反応圧力を上述の範囲内とし、かつ、アンモニア合成反応部10に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度を上述の範囲内とすることにより、アンモニアの生産能力を確保しつつアンモニアの製造に必要なエネルギーを軽減できる。
具体的に説明すると、アンモニア合成の反応圧力を上述の範囲内にすると、アンモニア合成の反応圧力を高くするために必要なエネルギーを軽減できる。しかし、アンモニアの生産能力を確保するためには、アンモニア含有ガスの冷却温度を低くする必要があり、アンモニアガスを冷却するために必要なエネルギーはかえって増加する。しかしながら、アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度を上述の範囲内とすることによって、アンモニア合成の反応圧力を上述の範囲内にすることに伴うアンモニア含有ガスの冷却温度の低下を抑制できる。その結果、アンモニア合成の反応圧力を上述の範囲内にすることに伴うアンモニア含有ガスを冷却するために必要なエネルギーの増加を抑制することができる。そして、アンモニア合成の反応圧力を高くするために必要なエネルギーはアンモニアガスを冷却するために必要なエネルギーに比べて大きいため、結果として、アンモニアの製造に必要なエネルギーを軽減できる。
【0060】
<アンモニア合成反応部におけるアンモニア合成>
図2を参照して、アンモニア合成反応部10におけるアンモニア合成を説明する。例えば、アンモニアガスの濃度が4体積%であり、温度が300℃である循環ガスがアンモニア合成反応器11に供給されるとする(ポイントA)。アンモニア合成反応器11内では、3MPaの反応圧力の条件下でアンモニアの合成反応が進み、反応ガス中のアンモニアの濃度が上昇する。また、アンモニアの合成反応は発熱反応であるので、反応ガスの温度も上昇する。そして、アンモニア合成反応器11の出口ガスのアンモニアの濃度は例えば9体積%となり、出口ガスの温度は例えば400℃となる(ポイントB)。アンモニア合成反応器11の出口から排出された反応ガスはアンモニア合成反応器12へ供給される。アンモニア合成反応器11の出口から排出された反応ガスは、アンモニアの濃度を維持した状態で温度が低下する。そして、アンモニア合成反応器12の入口に達するときには、反応ガスの温度は例えば300℃まで低下する(ポイントC)。アンモニア合成反応器12内では、3MPaの反応圧力の条件下でアンモニアの合成反応が進み、アンモニア合成反応器12に供給された反応ガスの温度は再び上昇するとともに反応ガス中のアンモニアの濃度はさらに増加する。そして、アンモニア合成反応器12の出口から排出された反応ガス中のアンモニアの濃度は例えば13体積%ととなり、反応ガスの温度は、アンモニア合成反応器11の出口ガスの温度(ポイントB)よりも低い温度、例えば350℃となる(ポイントD)。このようにして、例えば、アンモニアガスの濃度が4体積%である循環ガスからアンモニアガスの濃度が13体積%であるアンモニア含有ガスが合成される。
【0061】
アンモニアの合成反応では、
図2の3MPaの平衡曲線が示すように、化学平衡の観点からは、反応温度が低い方がアンモニアの濃度を高くすることができる。一方、反応速度の観点からは、反応温度が低いと、アンモニア合成反応が化学平衡に達するまでに時間がかかる。このため、反応速度の観点からは、反応温度が高い方がアンモニアの濃度を高くすることができる。
本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1におけるアンモニア合成反応部10では、アンモニア合成反応器11では、反応速度の観点から高い反応温度でアンモニア合成反応を進め、アンモニア合成反応器12では、化学平衡の観点から低い反応温度でアンモニア合成反応を進めているので、アンモニア合成反応部10から排出されるアンモニア含有ガス中のアンモニアガスの濃度をより高くすることができる。
【0062】
(アンモニア冷却器)
アンモニア冷却器20は、上述したように、アンモニア合成反応部10から排出された、アンモニア合成反応部10により合成されたアンモニアガスを含むアンモニア含有ガスを冷却する。これにより、アンモニア合成反応部10により合成されたアンモニアガスを液化し、液化したアンモニアを気液分離器30により回収することができる。アンモニア冷却器20は、例えば、伝熱媒体を用いて冷却された固体壁(主として金属壁)にアンモニア含有ガスを接触させることによって熱交換を行うことによりアンモニア含有ガスを冷却する。
【0063】
<冷却温度>
循環ガス中のアンモニアガスの濃度を比較的高くすることによりアンモニア含有ガスの圧力が低くてもアンモニアガスを液化できる冷却温度であるという観点、および工場で一般的に使用している冷媒が適用可能であるという観点から、アンモニア冷却器20においてアンモニア含有ガスを冷却するときの冷却温度は-40~15℃であることが好ましい。さらにアンモニアガスが液化するときの圧力をさらに低減できるという観点から、上記冷却温度は-30~5℃であることがより好ましい。
【0064】
<アンモニア含有ガスの冷却に用いる液体>
アンモニア冷却器20は、1気圧における沸点が-33.0℃以上である液体とアンモニア含有ガスとの間の熱交換によりアンモニア含有ガスを冷却することが好ましい。これにより、アンモニア含有ガスを冷却するときに伝熱媒体として用いる液体が気化してしまい、アンモニア冷却器20の冷却能力が低減するのを抑制することができる。アンモニア含有ガスを効率的に冷却できるという観点から、アンモニア含有ガスを冷却するときに用いる液体としては、例えば、不凍液が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、メタノールなどのアルコールを含むアルコール系ブラインがより好ましい。
【0065】
(気液分離器)
気液分離器30は、上述したように、アンモニア冷却器20により冷却されたアンモニア含有ガスから生成する液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離する。具体的には、気液分離器30は、循環ガスに同伴される液体アンモニアを循環ガスから分離除去する装置である。気液分離器30には、例えば、折板、ルーバーなどを用いた衝突型気液分離器、サイクロン型気液分離器、邪魔板型気液分離器、泡鐘塔、充填塔、ワイヤーメッシュ型気液分離器などが挙げられる。
【0066】
(アンモニア合成用ガス供給部)
アンモニア合成用ガス供給部40は、上述したように、循環ガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給する。これにより、アンモニアの合成反応により消費された窒素ガスおよび水素ガスを循環ガスに補充することができる。
【0067】
<窒素ガス>
アンモニア合成用ガス供給部40により供給される窒素は、窒素分離膜あるいは深冷分離法を用いて空気から窒素を分離して調製してよい。あるいは、炭化水素の部分酸化反応を利用して水素を調製する場合には、酸素源として使用した空気中の窒素を利用してもよい。あるいはまた、アンモニア合成用ガス供給部40は、窒素ボンベ(窒素ボンベカードルを含む。以下同じ。)、窒素タンク(窒素セルフローダーなどの移動式タンクを含む。以下同じ。)から窒素を供給してもよい。
【0068】
<水素ガス>
アンモニア合成用ガス供給部40により供給される水素は、周知の方法、例えば、(i)炭化水素(例えば、石炭、石油、天然ガスおよびバイオマス)を、水蒸気改質反応、部分酸化反応またはこれらの組み合わせによりCOおよびH2を含むガスへと転化した後、COシフト反応、脱CO2処理を実施する方法、(ii)水を電気分解する方法、(iii)光触媒を用いて水を分解する方法によって調製することができる。あるいはまた、アンモニア合成用ガス供給部40は、水素ボンベ(水素ボンベカードルを含む。以下同じ。)、水素タンク(水素セルフローダーなどの移動式タンクを含む。以下同じ。)から水素を供給してもよい。
【0069】
なお、アンモニア合成用ガス供給部40は、窒素ガスおよび水素ガスの少なくとも一方のガスを製造する原料ガス製造装置をさらに備えていてもよい。原料ガス製造装置は、上記のとおり、公知の装置を用いてよい。あるいはまた、アンモニア合成用ガス供給部40は、窒素を供給するための窒素ボンベ、窒素タンクを備えていてもよく、水素を供給するための水素ボンベ、水素タンクを備えていてもよい。
【0070】
(アンモニア合成用ガス圧縮器および循環ガス圧縮器)
上述したように、本発明の一実施形態のおけるアンモニア合成システム1は、アンモニア合成用ガス供給部40から供給される窒素ガスおよび水素ガスを圧縮するアンモニア合成用ガス圧縮器50および気液分離器30によって分離された循環ガスを圧縮する循環ガス圧縮器60をさらに備えてもよい。これにより、アンモニア合成における反応圧力およびアンモニア含有ガスを冷却するときのアンモニア含有ガスの圧力をさらに適切に制御することができる。また、アンモニア合成システム1がアンモニア合成用ガス圧縮器50をさらに備えることにより、循環ガスに加える窒素ガスおよび水素ガスの添加量をさらに適切に制御することができる。さらに、アンモニア合成システム1が循環ガス圧縮器60をさらに備えることにより、気液分離器30によって分離された循環ガスをさらに経済的に適切な空間速度で再循環させることができる。なお、アンモニア合成用ガス圧縮器50は、窒素ガスおよび水素ガスをそれぞれ圧縮してもよいし、窒素ガスおよび水素ガスを混合して得られた混合ガスを圧縮してもよい。
【0071】
[変形例]
本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1は以下のように変形することができる。
【0072】
(変形例1)
本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1では、アンモニア合成反応部10におけるアンモニア合成器11,12の数は2であった。しかし、アンモニア合成反応部におけるアンモニア合成器の数は2に限定されず、1であってもよいし、3以上であってもよい。しかし、アンモニア合成器の数を増やすことによって増加させることができるアンモニア含有ガス中のアンモニアの濃度と、アンモニア合成器の数を増やすことによって増加するアンモニア合成システム1の製造コストおよび運転のコストとのバランスから、アンモニア合成反応部10におけるアンモニア合成器の数は、好ましくは2~5であり、より好ましくは2~4であり、さらに好ましくは2または3である。
【0073】
(変形例2)
本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1では、アンモニア合成反応部10におけるアンモニア合成器11の出口ガスを、熱交換器13を用いて冷却した。しかし、アンモニア合成器11の出口ガスを冷却する方法は、熱交換器13による冷却に限定されない。
例えば、ガスが、アンモニア合成器11からアンモニア合成器12に移動する間に自然に冷却される場合は、アンモニア合成器11とアンモニア合成器12との間に冷却手段を設けなくてもよい。
また、
図3に示すアンモニア合成システム1Aのように、アンモニア合成用ガス供給部40から供給される窒素ガスおよび水素ガスをクエンチガスとして用いることによって、アンモニア合成器11の出口ガスを冷却してもよい。
さらに、
図4に示すアンモニア合成システム1Bのように、循環ガスをクエンチガスとして用いることによって、アンモニア合成器11の出口ガスを冷却してもよい。
また、
図5に示すアンモニア合成システム1Cのように、アンモニア合成用ガス供給部40から供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスをクエンチガスとして用いることによって、アンモニア合成器11の出口ガスを冷却してもよい。
【0074】
なお、アンモニア合成反応部が複数のアンモニア合成器を有する場合、上述の冷却手段を設ける位置は、複数のアンモニア合成反応器の間であれば、特に限定されない。例えば、
図6に示すアンモニア合成システム1Dのように、アンモニア合成反応部10Dが3つのアンモニア合成器11,12,14を有する場合、アンモニア合成器11およびアンモニア合成器12の間に熱交換器13を設け、アンモニア合成器12およびアンモニア合成器14の間に熱交換器を設けないようにしてもよい。
【0075】
(変形例3)
本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1では、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給される窒素ガスおよび水素ガスを循環ガスに加えていた。しかし、
図7に示すアンモニア合成システム1Eのように、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給される窒素ガスおよび水素ガスをアンモニア含有ガスに加えてもよい。これにより、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給される窒素ガスおよび水素ガスに含まれる水分および微量の二酸化炭素は、気液分離器30によって分離される液体アンモニアに移行する。そして、アンモニア合成反応部10に供給される循環ガスには、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給される窒素ガスおよび水素ガスに含まれる水分および二酸化炭素が残留しない。よって、アンモニアを合成する前に、アンモニア合成に用いるガスから触媒毒である水分および二酸化炭素を除去することができる。
なお、アンモニア含有ガス中の流量に比べて、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給される窒素ガスおよび水素ガスの流量は通常小さい。このため、アンモニア合成用ガス供給部40によって供給される窒素ガスおよび水素ガスをアンモニア含有ガスに加えても、アンモニア含有ガス中のアンモニアガスの濃度はあまり低下しない。
【0076】
さらに、変形例3を上記変形例2と組み合わせてもよい。
例えば
図8に示すアンモニア合成システム1Fのように、循環ガスをクエンチガスとして用いることによって、アンモニア合成器11の出口ガスを冷却してもよい。
また、
図9に示すアンモニア合成システム1Gのように、アンモニア合成用ガス供給部40から供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスをクエンチガスとして用いることによって、アンモニア合成器11の出口ガスを冷却してもよい。
【0077】
(変形例4)
図10に示すアンモニア合成システム1Hのように、気液分離器30によって分離された循環ガスを、熱交換器70を用いてアンモニア含有ガスとの間で、熱交換を行った後、循環ガスをアンモニア合成反応部10に供給するようにしてもよい。循環ガスとの熱交換によりアンモニア含有ガスの温度は低下するので、冷却器の駆動エネルギーを軽減することができる。
【0078】
(変形例5)
図11に示すアンモニア合成システム1Iのように、アンモニア合成反応部10から排出されたアンモニア含有ガスを、熱交換器80を用いてアンモニア合成反応部10に供給される循環ガスとの間で、熱交換を行った後、アンモニア含有ガスをアンモニア冷却器20に供給するようにしてもよい。循環ガスとの熱交換によりアンモニア含有ガスの温度は低下するので、冷却器の駆動エネルギーを軽減することができる。
【0079】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明のアンモニア合成システムは、上記の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムおよびその変形例に何ら限定されるものではない。
【0080】
本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムおよびその変形例を組み合わせることができるし、変形例同士を組み合わせることもできる。
【0081】
[本発明のアンモニアの製造方法]
本発明のアンモニアの製造方法は、アンモニア合成触媒を用いて、10MPa以下の反応圧力の条件下で窒素および水素を反応させて、アンモニアガスを含むアンモニア含有ガスを製造するアンモニア含有ガス製造工程、アンモニア含有ガス製造工程により製造されたアンモニア含有ガスを冷却するアンモニア含有ガス冷却工程、アンモニア含有ガス冷却工程によるアンモニア含有ガスの冷却により液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離して液化したアンモニアを得るアンモニア分離工程、およびアンモニア含有ガスおよび循環ガスの少なくとも一方のガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給するアンモニア合成用ガス供給工程を含み、アンモニア含有ガス製造工程は、循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスを用いて窒素および水素を反応させ、アンモニア含有ガス製造工程で用いられた循環ガス中のアンモニアガスの濃度が3体積%以上である。以下、本発明のアンモニアの製造方法を詳細に説明する。
【0082】
(アンモニア含有ガス製造工程)
アンモニア含有ガス製造工程では、アンモニア合成触媒を用いて、10MPa以下の反応圧力の条件下で窒素および水素を反応させて、アンモニアガスを含むアンモニア含有ガスを製造する。そして、循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスを用いて窒素および水素を反応させる。なお、アンモニア含有ガス製造工程で用いるアンモニア合成触媒、アンモニア合成反応の反応圧力および反応温度ならびに循環ガス中のアンモニアガスの濃度は、上述の本発明の一実施形態にかかるアンモニア合成システムのアンモニア合成反応部の項目で説明したものと同様であるので、アンモニア含有ガス製造工程で用いるアンモニア合成触媒、アンモニア合成反応の反応圧力および反応温度ならびに循環ガス中のアンモニアガスの濃度の説明は省略する。
【0083】
<第1のアンモニア含有ガス製造工程および第2のアンモニア含有ガス製造工程>
アンモニア含有ガス製造工程は、以下の第1のアンモニア含有ガス製造工程および第2のアンモニア含有ガス製造工程を有することが好ましい。
第1のアンモニア含有ガス製造工程では、循環ガス、またはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスを使用してアンモニア合成触媒を用いて窒素および水素を反応させてアンモニアガスを含む第1のアンモニア含有ガスを製造する。また、第2のアンモニア含有ガス製造工程では、第1のアンモニア含有ガス製造工程、および第1のアンモニア含有ガスを使用してアンモニア合成触媒を用いて窒素および水素を反応させて、第1のアンモニア含有ガスに比べて高い濃度でアンモニアガスを含む第2のアンモニア含有ガスを製造する。
これにより、アンモニア含有ガス製造工程で製造されるアンモニア含有ガス中のアンモニアガスの濃度をさらに高くすることができる。
なお、第1のアンモニア含有ガス製造工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1におけるアンモニア合成反応部10のアンモニア合成反応器11におけるアンモニアの合成と同様である。また、第2のアンモニア含有ガス製造工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1におけるアンモニア合成反応部10のアンモニア合成反応器12におけるアンモニアの合成と同様である。したがって、第1のアンモニア含有ガス製造工程および第2のアンモニア含有ガス製造工程の説明は省略する。
【0084】
アンモニア合成反応が発熱反応であるという観点およびアンモニア合成の反応温度を上述の反応温度の範囲内に調整するという観点から、第1のアンモニア含有ガス製造工程に用いる循環ガスまたはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガスの温度、および第2のアンモニア含有ガス製造工程に用いる第1のアンモニア含有ガスの温度(例えば、アンモニア合成反応器12の入口ガスの温度)は、それぞれ100~600℃であることが好ましく、200~500℃であることがより好ましく、250~450℃であることがさらに好ましい。
また、アンモニアを効率よく合成できるという観点から、第1のアンモニア含有ガス製造工程に用いる循環ガスまたはアンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを加えた循環ガス、および第2のアンモニア含有ガス製造工程に用いる第1のアンモニア含有ガスにおける窒素ガスに対する水素ガスの比率(H2/N2:モル比)は、好ましくは0.5~4.0であり、より好ましくは1.5~3.3であり、さらに好ましくは1.5~3.0である。
【0085】
<熱交換器を用いた第1のアンモニア含有ガス冷却工程>
アンモニア含有ガス製造工程は、第1のアンモニア含有ガスを熱交換により冷却する第1のアンモニア含有ガス冷却工程を有してもよい。そして、第2のアンモニア含有ガス製造工程は、第1のアンモニア含有ガス冷却工程により冷却された第1のアンモニア含有ガスを用いて第2のアンモニア含有ガスを製造してもよい。なお、第1のアンモニア含有ガス冷却工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1におけるアンモニア合成反応部10の熱交換器13によるアンモニア合成反応器11の出口ガスの冷却と同様であるので、第1のアンモニア含有ガス冷却工程の説明は省略する。
【0086】
<クエンチガスを用いた第1のアンモニア含有ガス冷却工程>
アンモニア含有ガス製造工程は、アンモニア合成用ガス供給工程により供給される窒素ガスおよび水素ガスと、循環ガスとの少なくとも一方のガスを用いて第1のアンモニア含有ガスを冷却する第1のアンモニア含有ガス冷却工程を有してもよい。そして、第2のアンモニア含有ガス製造工程は、第1のアンモニア含有ガス冷却工程により冷却された第1のアンモニア含有ガスを用いて第2のアンモニア含有ガスを製造してもよい。なお、第1のアンモニア含有ガス冷却工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1の変形例2におけるアンモニア合成反応器11の出口ガスの冷却と同様であるので、第1のアンモニア含有ガス冷却工程の説明は省略する。
【0087】
(アンモニア含有ガス冷却工程)
アンモニア含有ガス冷却工程では、アンモニア含有ガス製造工程により製造されたアンモニア含有ガスを冷却する。なお、アンモニア含有ガス冷却工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1におけるアンモニア冷却器20によるアンモニア含有ガスの冷却と同様であるので、アンモニア含有ガス冷却工程の説明は省略する。
【0088】
(アンモニア分離工程)
アンモニア分離工程では、アンモニア含有ガス冷却工程によるアンモニア含有ガスの冷却により液化したアンモニアと、未反応の窒素ガスおよび水素ガスならびにアンモニアガスを含む循環ガスとに分離して液化したアンモニアを得る。なお、アンモニア分離工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1における気液分離器30による循環ガスの分離と同様であるので、アンモニア分離工程の説明は省略する。
【0089】
(アンモニア合成用ガス供給工程)
アンモニア合成用ガス供給工程では、アンモニア含有ガスおよび循環ガスの少なくとも一方のガスに加える窒素ガスおよび水素ガスを供給する。なお、アンモニア合成用ガス供給工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1におけるアンモニア合成用ガス供給部40による窒素ガスおよび水素ガスの供給と同様であるので、アンモニア合成用ガス供給工程の説明は省略する。
【0090】
(アンモニア合成用ガス圧縮工程および循環ガス圧縮工程)
本発明のアンモニアの製造方法は、アンモニア合成用ガス供給工程によって供給された窒素ガスおよび水素ガスを圧縮するアンモニア合成用ガス圧縮工程、およびアンモニア含有ガス冷却工程において分離された循環ガスを圧縮する循環ガス圧縮工程をさらに含んでもよい。なお、アンモニア合成用ガス圧縮工程および循環ガス圧縮工程は、上述の本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システム1におけるアンモニア合成用ガス圧縮器50による窒素ガスおよび水素ガスの圧縮ならびに循環ガス圧縮器による循環ガスの圧縮と同様であるので、アンモニア合成用ガス圧縮工程および循環ガス圧縮工程の説明は省略する。
【実施例】
【0091】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0092】
表1に示す条件および以下に示す条件にてアンモニア合成のシミュレーションを行い、アンモニア合成システムの中で最も動力を消費するガス圧縮器の動力を調べた。シミュレーションに用いたシステムの構成を
図12に示す。なお、本発明の一実施形態に係るアンモニア合成システムにおける、アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度は、
図12に示すアンモニア合成システムのS403におけるアンモニアの濃度に該当する。
【0093】
なお、低温および低圧下で高い触媒活性を有するアンモニア合成触媒を使用することにより、以下のシミュレーションの結果を実際のアンモニア合成システムで再現することができる。例えば、Angew.Chem.Int.Ed.2018,57,2648-2652のFig.1は、Ru/Ba-Ca(NH2)2触媒(金属酸化物を含む担体基材と金属アミドとからなる複合体を担体として用いた担持金属触媒)、Cs-Ru/MgO触媒およびFe触媒(ウスタイト型構造の鉄触媒)が、0.9MPaの圧力下、300~400℃の温度で高い活性を示すことを示している。少なくとも、これらの触媒を用いることにより、以下のシミュレーションの結果を実際のアンモニア合成システムで再現することができる。もちろん、これらの触媒以外にも、上記「アンモニア合成触媒」の項目で説明したアンモニア合成触媒も低温および低圧下で高い触媒活性を有するので、これらのアンモニア合成触媒を用いても、以下のシミュレーションの結果を実際のアンモニア合成システムで再現することができる。
【0094】
(アンモニア合成のシミュレーションの条件)
NH3生産量:20,000トン/年(1日24時間稼働、1年に330日稼働)
シミュレーションソフト:「PRO/II」,インベンシス・プロセス・システムス株式会社製
物性推算式:SRKM
なお、原料水素の供給圧力は3.3MPa、窒素の供給圧力は0.7MPa、循環ガス圧縮器の昇圧幅は0.3MPa、圧縮器の効率は80%としてシミュレーションを実施した。
上記シミュレーションによるガス圧縮器の動力の評価結果を次の表1に示す。
【0095】
【0096】
なお、上述の「アンモニア合成触媒」の項目で説明したいずれの触媒を用いても上記シミュレーションの結果を再現することが可能となる。しかしながら、上述の「アンモニア合成触媒」の項目で説明した触媒の中で、上記シミュレーションの条件において触媒活性が高いという観点、すなわち、低温においても高い触媒活性を示すという観点から、上述の「アンモニア合成触媒」の項目で好ましい触媒として挙げられた触媒が、上記シミュレーションの結果を再現するアンモニア合成触媒としても好ましい。
【0097】
表1に示すように、アンモニア合成反応の反応圧力が10MPa以下であり、アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度が3体積%以上であると、年間20,000トンのアンモニアの生産能力を確保しつつ、アンモニア合成システムの中で最も動力を消費するガス圧縮器の動力を軽減できることがわかった。
比較例1が示すとおり、特許文献1に記載のアンモニア合成システムのように未反応ガスを含むアンモニアガスを30℃の温度で冷却する場合、年間20,000トンのアンモニアの生産能力を確保するためにはアンモニア合成反応の反応圧力を25MPaと、10MPaに比べて非常に大きくする必要があり、このため、アンモニア合成システムの中で最も動力を消費するガス圧縮器の動力が大きくなることがわかった。
また、比較例2が示すとおり、アンモニア合成反応の反応圧力が10MPaよりも大きくなると、年間20,000トンのアンモニアの生産能力を確保するためには、アンモニア合成反応部に供給される循環ガス中のアンモニアガスの濃度を3体積%以上とする必要はないものの、アンモニア合成システムの中で最も動力を消費するガス圧縮器の動力が大きくなることがわかった。
【符号の説明】
【0098】
1、1A~1I アンモニア合成システム
10,10A~10D アンモニア合成反応部
11,12,14 アンモニア合成反応器
13,70,80 熱交換器
20 アンモニア冷却器
30 気液分離器
40 アンモニア合成用ガス供給部
50 アンモニア合成用ガス圧縮器
60 循環ガス圧縮器