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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】保存組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/362 20060101AFI20231030BHJP
   A61Q 5/12 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231030BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20231030BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20231030BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20231030BHJP
   A01N 37/06 20060101ALI20231030BHJP
   A01N 31/02 20060101ALI20231030BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61K8/362
A61Q5/12
A61K8/34
A61K8/31
A01P1/00
A01P3/00
A01N37/06
A01N31/02
A01N25/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020563425
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 EP2019062962
(87)【国際公開番号】W WO2019233752
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】18175856.6
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル-リー,スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ,ルパク
(72)【発明者】
【氏名】ポイントン,トーマス・リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ストット,イアン・ピーター
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-187914(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02877576(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
A01N1/00-65/48
A01P1/00-23/00
Mintel GNPD
CAPLUS/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)イタコン酸またはその塩、ならびに、
ii)テルピネオール、ゲラニオール、ペリリルアルコール及びそれらの混合物からなるリストから選択される第2の保存化学物質
を含む、抗菌保存系組成物
【請求項2】
前記第2の保存化学物質が、テルピネオールである、請求項に記載の抗菌保存系組成物
【請求項3】
化合物i)対化合物ii)の重量比が1:50~50:1である、請求項1または2に記載の抗菌保存系組成物
【請求項4】
化合物i)対化合物ii)の重量比が1:10~10:1である、請求項1~3のいずれかに記載の抗菌保存系組成物
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の抗菌保存系組成物を含む、水性組成物。
【請求項6】
全組成物の重量の、少なくとも75重量%の水を含む、請求項に記載の水性組成物。
【請求項7】
前記抗菌保存系組成物が全組成物の0.05~5重量%を構成する、請求項またはに記載の水性組成物。
【請求項8】
パーソナルケア組成物である、請求項のいずれか1項に記載の水性組成物。
【請求項9】
ヘアトリートメント組成物である、請求項に記載の水性組成物。
【請求項10】
組成物の保存方法であって、
該組成物に、以下:
i)イタコン酸またはその塩、ならびに、
ii)テルピネオール、ゲラニオール、ペリリルアルコール及びそれらの混合物からなるから選択される第2の保存化学物質
を含む抗菌保存系を添加する工程を含む、方法。
【請求項11】
化合物i)及びii)を、保存すべき組成物に加える前に予め混合する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
化合物i)及びii)を、保存すべき組成物に加える前に予め混合しない、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費者製品に使用するための保存系に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
消費財業界は、抗菌特性を有する薬剤を絶えず必要としており、他の方法では日持ちのしない製品(例えば、化粧品、医薬品または食品)の保存については特にそうである。
【0003】
多数の抗菌活性化合物が保存化学物質としてすでに採用されているが、考えられる生態学的懸念を回避し、皮膚に容易に許容される代替物が必要である。
【0004】
このような保存系は、安定的で、大きく好ましくは完全に無臭で、調製するのに安価で、調合が容易であり(すなわち、好ましくは液体)、最終製品に対して有害であってはならない。
【0005】
本発明は、特に効果的な保存系を提供する。
【0006】
本発明の記載
本発明は、以下:
i)イタコン酸またはその塩、ならびに、
ii)テルピネオール、ゲラニオール、ペリリルアルコール、メントール、テルピネン、リナロール、シトロネロール及びそれらの混合物からなるリストから選択される第2の保存化学物質
を含む、抗菌保存系に関する。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記の抗菌保存系を含む組成物に関する。
【0008】
本発明の第3の態様は、組成物に、以下:
i)イタコン酸又はその塩、ならびに、
ii)テルピネオール、ゲラニオール、ペリリルアルコール、メントール、テルピネン、リナロール、シトロネロール及びそれらの混合物からなるリストから選択される第2の次保存化学物質
を含む抗菌保存系を添加する工程を含む、組成物の保存方法に関する。
【0009】
本発明の方法の1つの実施形態において、化合物i)およびii)は、保存すべき組成物に加える前に予め混合される。
【0010】
本発明の方法の第2の実施形態において、化合物i)およびii)は、保存すべき組成物に添加する前に予め混合されない。
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、イタコン酸またはその塩、好ましくは酸を含む抗菌性保存系に関する。
【0012】
保存系はさらに、テルピネオール、ゲラニオール、ペリリルアルコール、メントール、テルピネン、リナロール、シトロネロールからなるリストから選択される第2の保存化学物質を含む。
【0013】
好ましくは、第2の保存化学物質は、テルピネオール、ゲラニオール、ペリリルアルコールからなるリストから選択され、より好ましくは、第2の保存化学物質はテルピネオールである。
【0014】
化合物(C1~C6)、少なくとも2つのカルボキシル基を有する不飽和有機酸(好ましくはイタコン酸)i)対第2の保存化学物質ii)の重量比は、1:50~50:1である場合が好ましく、より好ましくは1:10~10:1であり、最も好ましくは1:5~5:1である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、保存系は組成物の一部として含まれる。好ましくは、組成物はパーソナルケア組成物であり、より好ましくは、組成物は毛髪処理組成物である。
【0016】
好ましくは、組成物内の保存系の全レベルは、全組成の0.05~5重量%であり、より好ましくは全組成の0.2~2重量%である。
【0017】
本発明の保存系を含む本発明の組成物は、全組成物の重量で、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも85重量%および最も好ましくは少なくとも87重量%の水を含む。
【0018】
組成物がさらに、カチオン性、アニオン性、非イオン性、両性イオン性もしくは両性界面活性剤またはそれらの混合物を含む場合に好ましい。
【0019】
有用な適当なカチオン性界面活性剤の例としては、以下の一般式に対応する第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤が挙げられる:
[N(R1)(R2)(R3)(R4)](X)
(式中、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に、
(a)炭素数1~22の脂肪族基、または、
(b)22個までの炭素原子を有する、芳香族、アルコキシ、ポリオキシアルキレン、アルキルアミド、ヒドロキシアルキル、アリールまたはアルキルアリール基
から選択され;
Xは、ハロゲン化物(例えば、塩化物、臭化物)、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、グリコール酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、およびアルキル硫酸塩ラジカルから選択されるものなどの塩形成アニオンである。)
【0020】
脂肪族基は炭素原子や水素原子に加えてエーテル結合、アミノ基のような他の基を含むことができる。長鎖脂肪族基、例えば約12炭素以上のものは、飽和または不飽和であり得る。
【0021】
このような好ましい第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤の具体例は、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、塩化ベヘントリモニウム(BTAC)およびそれらの混合物である。
【0022】
│あるいは、第一級、第二級または第三級脂肪アミンを酸と組み合わせて使用して、本発明での使用に適したカチオン性界面活性剤を提供することができる。この酸はアミンをプロトン化し、その場でアミン塩を形成する。したがって、アミンは効果的に非永久的な第四級アンモニウムまたは擬似第四級アンモニウムカチオン性界面活性剤である。
【0023】
このタイプの適当な脂肪アミンには、次の一般式のアミドアミンが含まれる:
1-C(O)-N(H)-R2-N(R3)(R4
(式中、R1は12~22個の炭素原子を含む脂肪酸鎖であり、R2は1~4個の炭素原子を含むアルキレン基であり、R3とR4はそれぞれ独立に1~4個の炭素原子を有するアルキル基である。特に好ましいのは、ステアラミドプロピルジメチルアミンである。)
【0024】
適当なアニオン性界面活性剤には、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルカリルスルフォネート、アルカノイルイセチオネート、アルキルコハク酸塩、アルキルスルホシネート、N-アルコイルサルコシネート、アルキルリン酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、アルキルエーテルカルボキシレート、およびアルファ-オレフィンスルホネート、特にそれらのナトリウム、マグネシウムアンモニウムおよびモノ-、ジ-およびトリエタノールアミン塩が含まれる。アルキル基とアシル基は一般に8~18個の炭素原子を含み、不飽和であってもよい。アルキルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸塩およびアルキルエーテルカルボキシレートは、分子あたり1~10のエチレンオキシドまたはプロピレンオキサイドユニットを含有することができ、好ましくは分子あたり2~3のエチレンオキサイドユニットを含有する。
【0025】
適切なアニオン性界面活性剤の例としては、オレイルコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸アンモニウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン、ココイルイセチオン酸ナトリウム、ラウロイルイセチオン酸ナトリウムおよびN-ラウリルサルコシン酸ナトリウムが挙げられる。最も好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、トリエタノールアミンラウリル硫酸塩、トリエタノールアミンモノラウリルリン酸塩、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム1EO、2EOおよび3EO、ラウリル硫酸アンモニウムおよびラウリルエーテル硫酸アンモニウム1EO、2EOおよび3EOである。
【0026】
本発明の組成物に使用するのに適した非イオン性界面活性剤には、脂肪族(C8-C18)の第一級または第に級直鎖もしくは分岐鎖アルコールまたはフェノールとアルキレンオキシド(通常はエチレンオキシド)との縮合生成物が含まれ、一般に6~30のエチレンオキシド基を有する。他の適当な非イオン性化合物には、モノ-またはジ-アルキルアルカノールアミド、ラムノ脂質およびソホロ脂質の群から好ましくは選択される糖脂質が含まれる。
【0027】
例としては、ココモノ-またはジ-エタノールアミドおよびココモノ-イソプロパノールアミドが挙げられる。
【0028】
本発明の組成物における使用に適した両性イオン界面活性剤は、アルキルアミンオキシド、アルキルベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルスルホベタイン(スルタイン)、アルキルグリシネート、アルキルカルボキシグリシネート、アルキル両性プロピオネート、アルキルアミドプロピルヒドロキシスルタイン、アシルタウレートおよびアシルグルタメートを含み得、ここでアルキル基およびアシル基は8~19個の炭素原子を有する。例としては、ラウリルアミンオキシド、ココジメチルスルホプロピルベタイン、および好ましくはラウリルベタイン、コカミドプロピルベタインおよびコカンプトプロピオン酸ナトリウムが挙げられる。
【0029】
一般に、界面活性剤は、本発明のシャンプー組成物中に0.1~50重量%、好ましくは5~30重量%、より好ましくは8~20重量%の量で存在する。
【0030】
本発明は、ここで、以下の非限定的な例によって例示されるであろう
【0031】

単離および混合における阻害性抗菌剤の種々の挙動は、Fractional Concentration and Fractional Inhibitory Concentration(FIC)の概念を用いて広く探求されてきた。例えば、JRW Lambert and R Lambert, J. Appl. Microbiol 95, 734 (2003); T. Jadavji, CG Prober and R Cheung, Antimicrobial Agents and Chemotherapy 26, 91 (1984)および国際公開第2004/006876号を参照のこと。これらのパラメータは、以下のように定義することができる:
FC(成分a)=混合物中で試験された成分の濃度/MIC(単一の活性物質として試験された成分a)
FIC(成分a)=MIC(混合物中で試験された成分a)/MIC(単一の活性物質として試験された成分a)
【0032】
抗菌剤間の相互作用は、単独で試験した場合、個々の成分の同一の総濃度について得られたものと同等か、それ以上かそれ以下かによって、相加的、相乗的、またはおそらく拮抗的であり得る。
【0033】
これらの関係は、混合物中に存在する全成分の分数MIC値(fractional MIC values)を合計して「分数阻害指数(fractional inhibitory index)」を与えることにより、数学的見地から表現することができる:
【数1】
【0034】
ここで:
ΣFIC≧1は、相加的または拮抗的作用に相当する
ΣFIC<1は、相乗作用に相当する
【0035】
比較可能な方法は、相乗指数(SI)の算出であり、これは、Kull, F.C.; Eisman, P.C.; Sylwestrowicz,H.D. and Mayer, R.L., in Applied Microbiology 9:538-541(1961)によって記載された工業的に許容された方法である。
【0036】
方法
液体ブロスアッセイ(MICおよびチェッカーボード)を実施し、保存化学物質の個々の組合せおよび2成分の組合せの最小濃度を同定した。スクリーニングには、ISO 20776-1:2006に修正された方法論を以下のように利用した。保存化学物質およびトリプシン大豆液体培地の保存溶液に1-5x106微生物を接種し、30℃で24時間インキュベートした後、OD600 nmにおける光学濃度を測定した。MICは、保存化学物質を含まない陽性増殖対照と比較して<25%の増殖が認められた濃度と定義した。防腐剤は0.0156~2%の濃度範囲でスクリーニングに供した。
【表1】
【表2】