(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 236/06 20060101AFI20231030BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20231030BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20231030BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20231030BHJP
C08F 4/54 20060101ALI20231030BHJP
C08F 4/606 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C08F236/06
C08K3/36
C08K3/04
C08L9/00
C08F4/54
C08F4/606
(21)【出願番号】P 2020566209
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 IB2019054427
(87)【国際公開番号】W WO2019229660
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】102018000005841
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】519463673
【氏名又は名称】ベルサリス エッセ.ピー.アー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペレッタ コスタンティーノ
(72)【発明者】
【氏名】ディ マルティーノ シルヴァーナ
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/027402(WO,A1)
【文献】特表2011-516642(JP,A)
【文献】特表2015-516020(JP,A)
【文献】特開2009-013420(JP,A)
【文献】特開2003-226721(JP,A)
【文献】特開2014-145077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08C 19/00- 19/44
C08F 4/00- 4/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法であって、該方法は、少なくとも1種の有機溶媒及びin situで調製された触媒系の存在下でブタジエン及びイソプレンを共重合することを含み、
前記触媒系は、
(a
1)前記有機溶媒に可溶であり、
所定量の水を含み、H
2O/Ndモル比が0.001/1~0.50/1である、少なくとも1種のネオジムカルボキシレートと、
(a
2)少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物と、
(a
3)少なくとも1つのハロゲン原子を含む少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物と、
を含
み、
前記少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルミニウムアルキル化合物(a
3
)中に存
在する前記ハロゲン原子と前記ネオジムカルボキシレート(a
1
)とのモル比は、2.5
/1~5.5/1である、方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルキルアルミニウム化合物(a
3)は、一般式(III):
AlXnR
2
3-n (III)
(式中、R
2は、直鎖又は分岐C
1~C
10アルキル基を表し、Xは、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン原
子を表し、nは1又は2である)を有する化合物から選択さ
れ
る、請求項1~6のいずれか1項に記載の高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法。
【請求項13】
以下の特性:
95%~99%のシス-1,4-ブタジエンユニット含有量;
95%~99.95%のシス-1,4-イソプレンユニット含有量;
以下の式:
R.I.=[(BI+IB)/2]/結合イソプレンの総モル
(式中、BI及びIBは、それぞれ、0.6~0.9の、高含有量のシス-1,4ユ
ニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマー中に存在する、ブタジエン-
イソプレン及びイソプレン-ブタジエンダイアドの量である)に従って計算されたイソプ
レンランダム化指数(R.I.);
90:10~45:55の、結合ブタジエンと結合イソプレンとの重量比(重量%)
;
両コモノマーの実際のランダム化の指標である、-105℃~-85℃の、単一のガ
ラス転移温度値(Tg);
35~65の、ムーニー粘度(ML1+4@100℃);
2.0~3.2の重量平均分子量(M
w
)と数平均分子量(M
n
)との比(すなわち
、比M
w
/M
n
)に相当する多分散指数として示される、分子量分布;
を有する、請求項12に記載の高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジ
エン-イソプレンコポリマー。
【請求項15】
請求項
14に記載の加硫性エラストマー組成物の加硫により得られる加硫製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-スチレンコポリマーを作製する方法に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法であって、該方法は、少なくとも1種の有機溶媒及びin situで調製された触媒系の存在下でブタジエン及びイソプレンを共重合することを含み、上記触媒系は、(a1)上記有機溶媒に可溶であり、可変量の水を含み、H2O/Ndモル比が0.001/1~0.50/1である、少なくとも1種のネオジムカルボキシレートと、(a2)少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物と、(a3)少なくとも1つのハロゲン原子を含む少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物とを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0003】
上述の方法により得られる高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーは、プラスチックの改質(例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の取得)からタイヤの製造、特にタイヤトレッド及び/又はタイヤサイドウォールの製造までにわたる多くの用途で有利に用いられ得る。
【0004】
また、上述の方法により得られる高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーは、また、加硫性エラストマー組成物に有利に用いられ得る。
【0005】
したがって、本発明の更なる対象は、上述の方法により得られる、少なくとも1種の高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを含む加硫性エラストマー組成物である。
【0006】
上記加硫性エラストマー組成物は、加硫製品の製造、特に、タイヤの製造、更に特にタイヤトレッド及び/又はタイヤサイドウォールの製造に有利に用いられ得る。
【0007】
本発明の別の対象は、上述の方法により得られる高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーであり、該コポリマーは、下記に報告される特性を有する。
【0008】
ランダム、ブロック又は「テーパー」ブタジエン-イソプレンコポリマー、及びこれらを得る方法は、当該技術分野において既知である。
【0009】
例えば、特許文献1は潤滑組成物に関しており、該潤滑組成物は、粘度指数を改善可能な試剤として、20%~55%の1,4構成を有するとともに、約10:90~約70:30のブタジエンとイソプレンとの重量比を有する水素化ブタジエン-イソプレンコポリマーを含む。上記コポリマーは、炭化水素溶媒とリチウムベース触媒の存在下でのアニオン共重合によって得られ得る、ランダム、ブロック又は「テーパー」ブタジエン-イソプレンコポリマーから選択され得る。
【0010】
特許文献2は、改善された加工性及び以下の特性を有するイソプレン-ブタジエンコポリマーに関している:(1)70%~90%の1,4-トランスユニットと2%~8%のビニルユニットとを有するブタジエン部の微細構造;(2)3重量%~25重量%のイソプレン含有量;(3)0重量%~30重量%のスチレン含有量;(4)30~150のムーニー粘度;(5)1.2~3.5の分子量分布Mw/Mn;(6)上記コポリマーは、非伸長状態で、示差走査熱量計(DSC)により分析する場合、融点を示さない。上記コポリマーはブロック又はランダムであり得て、有機溶媒と開始剤の存在下での共重合によって得ることができ、該開始剤は、(i)周期律表のIIA族に属する金属の有機化合物、及び、(ii)リチウムベースの有機化合物、リチウムベースの有機化合物及びアルミニウムベースの有機化合物の混合物、マグネシウムの有機化合物からなる群から選択される化合物から選択され得る。上記コポリマーは、タイヤの製造、例えばトレッド及びカーカスの製造に有利に用いられるとされている。
【0011】
特許文献3は、トラックのタイヤトレッドの製造に有利に使用され得るイソプレン-ブタジエンコポリマーに関しており、該イソプレン-ブタジエンコポリマーは、約20重量%~約50重量%のイソプレンから、及び、約50重量%~約80重量%の1,3-ブタジエンから生成された繰り返しユニットを含み、イソプレンと1,3-ブタジエンとから生成された繰り返しユニットは実質的にランダムな順であり、繰り返しユニットの約3%~約10%は1,2構造を有するポリブタジエンユニットであり、上記繰り返しユニットの約50%~約70%は1,4構造を有するポリブタジエンユニットであり、上記繰り返しユニットの約1%~約4%は3,4構造を有するポリイソプレンユニットであり、上記繰り返しユニットの約25%~約40%は1,4構造を有するポリイソプレンユニットであり、上記コポリマーは、-90℃~-75℃のガラス転移温度(Tg)を有し、上記コポリマーは、約55~約140のムーニー粘度を有し、該コポリマーに存在するイソプレンの60%超は3以下の繰り返しユニット数により形成されるブロックで存在している。
【0012】
特許文献4は、トラックのタイヤトレッドの製造に有利に用いられる、優れた特性の組み合わせを有するイソプレン-ブタジエン2ブロックコポリマーに関しており、該イソプレン-ブタジエン2ブロックコポリマーは、ブタジエンブロックとイソプレン-ブタジエンブロックを含み、上記ブタジエンブロックは約25000~約350000の平均分子量を有し、上記イソプレン-ブタジエンブロックは約25000~約350000の平均分子量を有し、上記イソプレン-ブタジエンブロックコポリマーは実質的に約-100℃~約-70℃のガラス転移温度(Tg)を有し、上記イソプレン-ブタジエンブロックコポリマーは、約50~約140の100℃でのムーニーML-4粘度を有し、上記イソプレン-ブタジエン2ブロックコポリマーにおけるイソプレンから及び1,3-ブタジエンから生成される繰り返しユニットは、実質的にランダムな順にある。上記イソプレン-ブタジエン2ブロックコポリマーは、有機溶媒、リチウムベースの開始剤及び少なくとも1種の極性改質剤の存在下にて1,3-ブタジエンの共重合が、リビングポリブタジエンブロックを得るために行われる第1の段階と、上記リビングポリブタジエンブロックが、有機溶媒及び少なくとも1種の極性改質剤の存在下でイソプレンと共重合される第2の段階とを含む2段階プロセスによって得られる。
【0013】
特許文献5は、約5重量%~約95重量%のイソプレンから及び約5重量%~約95重量%の1,3-ブタジエンから生成される繰り返しユニットから実質的になる、イソプレン-ブタジエン液状ポリマーに関しており、イソプレンから及び1,3-ブタジエンから生成される繰り返しユニットは、実質的にランダムであり、上記液状イソプレン-ブタジエンポリマーは、約3000~約50000の低い数平均分子量を有し、上記液状イソプレン-ブタジエンポリマーは、約-50℃~約20℃のガラス転移温度(Tg)を有する。上記液状イソプレン-ブタジエンポリマーは、有機溶媒、リチウムベースの開始剤及び極性改質剤の存在下での重合により作製され得る。上述の液状イソプレン-ブタジエンポリマーは、優れたドライトラクション性及び耐久性を示す、レーシングカーを含む高機能車両タイヤのトレッドの製造に有利に用いられるとされている。
【0014】
特許文献6は、ブタジエン-イソプレンコポリマーの作製方法に関しており、該方法は、ブタジエン及びイソプレンを有機溶媒中で、-10℃~90℃の温度でジフェニルマグネシウム及びチタンテトラヨーダイド(titanium tetraiodate)を混合して得られた、エーテルを含まない触媒と接触させることを含み、上記ブタジエン-イソプレンコポリマーは、80モル%~99モル%のブタジエン及び40モル%~90モル%のシス-1,4構成のイソプレンを含み、イソプレン含有量は5モル%~95モル%であり、ブタジエン含有量は95モル%~5モル%である。上述のブタジエン-イソプレンコポリマーは、低ヒステリシス、良好な冷特性及び良好な耐摩擦性を有し、したがって、タイヤの製造に特に有用な加硫性製品を生産可能な加硫性エラストマー組成物において有利に使用されるとされている。
【0015】
特許文献7は、有機溶媒の存在下かつ触媒系の存在下でイソプレン及び1,3-ブタジエンコポリマーを含むブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法に関しており、該触媒系は、以下の順次の段階により得られる:(1)(a)アルミニウムヒドリド、(b)脂肪族又は脂環式アルコール、脂肪族又は脂環式チオール、トリアルキル又はトリアリールシラノールからなる群から選択される化合物、及び、(c)任意付加的に、修飾アルミニウムヒドリドを得るための有機溶媒中の1,3-ブタジエンを混合する段階、(2)周期律表のIIIB族に属する金属を含む修飾アルミニウムヒドリドを得るための、周期律表のIIIB族に属する金属(好ましくはネオジム)を含む有機金属化合物を添加する段階、及び(3)少なくとも1種の不安定ハロゲン原子を含む化合物を添加する段階。上述のブタジエン-イソプレンコポリマーは、ランダム及び「非テーパー」であるとされ、かつ、トラックのタイヤのサイドウォールの製造に有利に用いられるとされている。
【0016】
特許文献8は、ブタジエン-イソプレンコポリマーの作製方法に関しており、該方法は、触媒系の存在下でブタジエン及びイソプレンを共重合することを含み、該触媒系は、(a)共役ジエンのモノマー;(b)リン酸と少なくとも1種の希土類金属との有機塩;(c)式AlR3又はHAlR2(式中Rはアルキル基である)を有する、アルキル化剤としてのアルミニウムアルキル化合物;及び(d)ハロゲンドナーとしての、アルミニウムアルキル化合物のハロゲン化物を含み、上記塩は、上記触媒系に含まれる、少なくとも1種の飽和脂肪族又は脂環式炭化水素溶媒に懸濁されており、上記アルキル化剤と、上記リン酸との少なくとも1種の希土類金属との有機塩とのモル比は1~8であり、任意付加的に、共重合が不活性炭化水素溶媒の存在下で行われる。得られるブタジエン-イソプレンコポリマーは、高含有量のシス-1,4ユニットを有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第4,032,459号
【文献】米国特許第4,413,098号
【文献】米国特許第5,405,927号
【文献】米国特許第5,612,436号
【文献】米国特許第6,204,320号
【文献】米国特許第3,772,256号
【文献】欧州特許出願公開第629640号
【文献】米国特許第7,115,639号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、上述の、ブタジエン-イソプレンコポリマーを作製するための共重合方法は、所望の結果、例えば、両モノマーすなわちブタジエン及びイソプレンのランダム構成及び/又は高含有量のシス-1,4ユニット、及び/又は分子量分布に関して所望の結果を必ずしも与えるものとは限らない。さらに、上述の方法のいくつかでは、予め生成した触媒が用いられ、これはしたがって、より長いプロセス時間、結果的に、プロセスコストの上昇を要する。
【0019】
したがって、本出願人は、高含有量のシス-1,4ユニットを有するブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法を見出すことをその課題としている。より詳細には、本出願人は、両モノマーすなわちブタジエン及びイソプレンの高含有量のシス-1,4ユニット、狭い分子量分布、並びに特定のイソプレンランダム化指数(下記に示すように計算される)を有する、ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法を見出すことをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本出願人は、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの作製が、少なくとも1種の有機溶媒及びin situで調製される触媒系の存在下でブタジエン及びイソプレンを共重合することを含む方法を介して有利に行われ得ることをここに見出し、該触媒系は、(a1)上記有機溶媒に可溶であり、可変量の水を含み、モルH2O/Nd比が0.001/1~0.50/1である少なくとも1種のネオジムカルボキシレート;(a2)少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物;(a3)少なくとも1つのハロゲン原子を含む少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物を含む。上記方法によれば、両モノマーすなわちブタジエン及びイソプレンの高含有量のシス-1,4ユニット、狭い分子量分布、並びに特定のイソプレンランダム化指数(下記に報告するように計算される)を有する、ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーが得られる。さらに、得られる高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマー中の結合したブタジエンとイソプレンとの重量比は、上記方法を通じて調節することもできる。さらに、上記方法によれば、プラスチックの改質(例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の取得)から、タイヤの製造、特にタイヤトレッド及び/又はタイヤサイドウォールの製造にわたる多くの用途に有利に使用され得る、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーが得られる。
【0021】
したがって、本発明の対象は、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを作製する方法であって、該方法は、少なくとも1種の有機溶媒及びin situで調製された触媒系の存在下でブタジエン及びイソプレンを共重合することを含み、
上記触媒系は、
(a1)上記有機溶媒に可溶であり、可変量の水を含み、H2O/Ndモル比が0.001/1~0.50/1である、少なくとも1種のネオジムカルボキシレートと、
(a2)少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物と、
(a3)少なくとも1つのハロゲン原子を含む少なくとも1種のアルミニウムアルキル化合物と、
を含む、方法である。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲のため、数値範囲の規定は、特に指定しない限り、常に両端の値を含む。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲のため、「~を含む(comprising)」の用語は、「~実質的にからなる(which essentially consists of)」又は「~からなる(which consists of)」の用語も含む。
【0024】
本発明の対象となる方法によって共重合され得るブタジエン及びイソプレンの相対量は、広い範囲にわたって変わり得る。例えば、共重合リアクターに供給されるモノマー組成物は、約1重量%~約99重量%のブタジエン及び約1重量%~約99重量%のイソプレンを含み得る。多くの場合、共重合リアクターに供給されるモノマー組成物は、約10重量%~約90重量%のブタジエン及び約10重量%~約90重量%のイソプレン、好ましくは、共重合リアクターに供給されるモノマー組成物は、約50重量%のブタジエン及び約50重量%のイソプレンを含み得る。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態によれば、上記ブタジエン及び上記イソプレンは、有機溶媒の総重量に対して、5重量%~40重量%、好ましくは、10重量%~25重量%の総量(すなわち、ブタジエン量+イソプレン量)で存在し得る。好ましくは、従前に蒸留されたブタジエン及びイソプレンが用いられ、任意付加的に、分子篩及び/又は活性アルミナで処理される。好ましくは、1,3-ブタジエン及びイソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)が用いられる。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態によれば、例えば、上記有機溶媒は、例えば、ブタン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン又はこれらの混合物等の飽和脂肪族炭化水素;例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン又はこれらの混合物等の飽和脂環式炭化水素;例えば、1-ブテン、2-ブテン又はこれらの混合物等のモノオレフィン;例えば、メチレンクロリド、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエン又はこれらの混合物等のハロゲン化炭化水素から選択され得る。好ましくは、上記有機溶媒は、飽和脂肪族炭化水素から、より好ましくはn-ヘキサン;混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物から選択され得る。好ましくは、上記有機溶媒は、できるだけ無水であり、プロトン生成物質を含まないものでなければならない。蒸留後に、必要に応じてアルミナ床及び3A又は4A分子篩で処理するだけで、適切な溶媒を得るには十分である。
【0027】
本発明の好ましい実施の形態によれば、ネオジムカルボキシレート(a1)は、ネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3]であり得る。好ましくは、上記ネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3]は、遊離バーサチック酸を含み、遊離バーサチック酸/Ndモル比は2未満、より好ましくは0.5未満である。
【0028】
本発明の好ましい実施の形態によれば、上記ネオジムカルボキシレートは、重合されるモノマー(ブタジエン+イソプレン)1000g当たり、0.1mmol~10mmol、好ましくは0.5mmol~5mmolの量で使用され得る。ネオジムカルボキシレートの量が0.1mmol未満の場合、反応速度は許容できない値に低下し、一方、ネオジムカルボキシレートの量が10mmolを超える場合、触媒濃度が高すぎ、得られるポリマーの平均重量分子量(Mw)が上記の用途には小さ過ぎることに留意すべきである。
【0029】
本発明の好ましい実施の形態によれば、アルミニウムアルキル化合物(a2)は、例えば、一般式(I)又は(II):
Al(R1)3 (I)
AlH(R1)2 (II)
(式中、R1は、直鎖又は分岐C1~C10アルキル基を表す)を有する化合物から選択され得る。
【0030】
本発明のために有利に使用され得る一般式(I)又は(II)を有するアルキルアルミニウム化合物の具体例は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム(TEA)、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリ-イソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-イソブチルアルミニウム、トリ-ペンチルアルミニウム、トリ-ヘキシルアルミニウム、トリ-シクロヘキシルアルミニウム、トリ-オクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジヘキシルアルミニウムヒドリド、ジ-イソ-ヘキシルアルミニウムヒドリド又はこれらの混合物である。トリエチルアルミニウム(TEA)、トリ-イソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)が好ましい。ジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)が特に好ましい。
【0031】
本発明の好ましい実施の形態によれば、上記少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルミニウムアルキル化合物(a3)は、例えば、一般式(III):
AlXnR2
3-n (III)
(式中、R2は、直鎖又は分岐C1~C10アルキル基を表し、Xは、例えば、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等のハロゲン原子、好ましくは塩素を表し、nは1又は2である)を有する化合物から選択され得る。
【0032】
本発明のために有利に使用され得る少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルキルアルミニウム化合物(a3)の具体例は、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、ジ-イソブチルアルミニウムクロリド(DIBAC)又はこれらの混合物である。ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)が好ましい。ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)が特に好ましい。
【0033】
本発明の好ましい実施の形態によれば、アルミニウムアルキル化合物(a2)とネオジムカルボキシレート(a1)とのモル比は、1/1~30/1、好ましくは1/1~10/1であり得る。
【0034】
本発明の好ましい実施の形態によれば、少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルキルアルミニウム化合物(a3)中に存在するハロゲンとネオジムカルボキシレート(a1)とのモル比は、2.5/1~5.5/1、好ましくは2.8/1~5.2/1であり得る。
【0035】
少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルミニウムアルキル化合物(a3)に存在するハロゲンと、ネオジムカルボキシレート(a1)との上記モル比は、分子量分布に影響を及ぼし、特許請求される範囲内の、狭い分子量分布を有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを得ることを可能にすることに留意すべきである。実際、この範囲外では、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(すなわち、比Mw/Mn)に対応する多分散指数は、3.2より高い値に達する。
【0036】
本発明の好ましい実施の形態によれば、少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルミニウム化合物(a3)は、上記化合物(a3)中に存在するハロゲンとアルミニウムアルキル化合物(a2)との比が0.4~5、より好ましくは0.5~2.0であるような量で使用することができる。
【0037】
上述の方法は、断熱条件下で又は等温的に行われ得る。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態によれば、上記方法は、20℃~150℃、好ましくは40℃~120℃の温度で行われ得る。
【0039】
本発明の好ましい実施の形態によれば、上記方法は、1バール~10バール、好ましくは3バール~7バールの圧力で行われ得る。
【0040】
共重合時間について言えば、これは作業条件に応じて変わり、いずれの場合でも、単なる例だが、共重合中にブタジエン及びイソプレンの実質的に完全な転換は、30分~4時間の重合時間で得られる。
【0041】
本発明の対象となる方法は、不連続的に(「バッチ」)又は連続的に、好ましくは連続的に行われ得る。
【0042】
一般に、バッチリアクターが用いられる場合、所望量のネオジムカルボキシレート(a1)が、有機溶媒、モノマー(ブタジエン+イソプレン)、アルミニウムアルキル化合物(a2)、少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルミニウムアルキル化合物(a3)によって形成される混合物に添加される。
【0043】
代わりに、少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルミニウム(a3)は、有機溶媒、モノマー(ブタジエン+イソプレン)、ネオジムカルボキシレート(a1)及びアルミニウムアルキル化合物(a2)によって形成される共重合混合物中に、最後の成分として添加されてもよい。
【0044】
好ましくは、本発明による方法では、ネオジムカルボキシレート(a1)は最後の成分として反応混合物に添加される。
【0045】
連続プロセスが用いられる場合、ネオジムカルボキシレート(a1)は、好ましくは、共重合リアクター自体に直接供給され、アルミニウムアルキル化合物(a2)と少なくとも1つのハロゲン原子を含むアルミニウムアルキル化合物(a3)との接触は回避される。
【0046】
連続プロセスでは、単一の共重合リアクター又は直列のいくつかのリアクターが用いられ得る。好ましくは、2つ又は3つの共重合リアクターが直列に用いられる。
【0047】
共重合の終わりに、得られたブタジエン-イソプレンコポリマーは、当該技術分野で既知の技術によって回収され得る。例えば、得られたポリマー溶液は、残留反応溶媒を除去し、凝固物を得るために、蒸気の導入を通じて沸騰水の入った容器に供給され、この凝固物は、最初にコールドカレンダー内にてプレスされ、次にローラーを備えたカレンダー内にて80℃で完全に乾燥されて、ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーが得られ得る。代わりに、得られたポリマー溶液を、残留反応溶媒を除去するために「ストリッパー」に供給してもよく、次いで、得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーをオーブン中で、減圧下、40℃~50℃で乾燥させてもよい。代わりに、得られたポリマー溶液を、残留反応溶媒を除去するために「ストリッパー」に供給してもよく、次いで、得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを1つの押出機に又は直列の複数の押出機に通すことによって乾燥させてもよい。より詳細な内容は以下の実施例に見ることができる。
【0048】
上述のように、上述の方法によって得られる、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーは、本発明の更なる対象である。
【0049】
これゆえ、本発明は、以下の特性:
92%以上、好ましくは95%~99%のシス-1,4-ブタジエンユニット含有量;
92%以上、好ましくは95%~99.95%のシス-1,4-イソプレンユニット含有量;
以下の式:
R.I.=[(BI+IB)/2]/結合イソプレンの総モル
(式中、BI及びIBは、それぞれ、0.5~1、好ましくは0.6~0.9の、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマー中に存在する、ブタジエン-イソプレン及びイソプレン-ブタジエンダイアドの量である)に従って計算されたイソプレンのランダム化指数(R.I.);
99:1~40:60、好ましくは90:10~45:55の、結合ブタジエンと結合イソプレンとの重量比(重量%);
両コモノマーの有効ランダム化の指標である、-107℃~-65℃、好ましくは-105℃~-85℃の、単一のガラス転移温度値(Tg);
30~70、好ましくは35~65の、ムーニー粘度(ML1+4@100℃);
2.0~3.2の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(すなわち、比Mw/Mn)に相当する多分散指数として示される、分子量分布;
を有する、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに関する。
【0050】
上述のように、本発明の対象となる方法によって得られる、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーは、プラスチックの改質(例えば、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)の取得)から、タイヤの製造、特にタイヤトレッド及び/又はタイヤサイドウォールの製造にわたる多くの用途に有利に用いられ得る。
【0051】
さらに、上述のように、本発明の対象となる方法によって得られる高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーは、加硫性エラストマー組成物においても有利に使用され得る。
【0052】
例えば、高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーは、タイヤ、特にタイヤトレッド及び/又はタイヤサイドウォールを作製するための加硫性エラストマー組成物の成分として、例えば、シリカ及び/又はカーボンブラック等の少なくとも1種の充填剤との混合物において使用され得る。
【0053】
したがって、本発明の更なる対象は、上記のように得られた、少なくとも1種の高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーと、シリカ、カーボンブラック又はこれらの混合物から選択される少なくとも1種の充填剤と、少なくとも1種の加硫剤とを含む、加硫性エラストマー組成物である。好ましくは、上記充填剤は、上記加硫エラストマー組成物中に5phr~500phrの量で存在し得る。
【0054】
上記加硫性エラストマー組成物は、上記高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに加えて、例えば、天然ゴム(NR)、スチレン-ブタジエンコポリマー(SBR)等の他のエラストマー(コ)ポリマーを含み得る。しかし、上記加硫性エラストマー組成物は、該加硫性エラストマー組成物中に存在するエラストマーの総重量に対して、10重量%~65重量%の上記高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを含むことが好ましい。
【0055】
本発明及び添付の特許請求の範囲のために、「phr」の用語は、加硫性エラストマー組成物中に存在する1種以上の(コ)ポリマー100重量部当たりの、所与の成分の重量部を意味する。
【0056】
上記加硫剤は、例えば、可溶性又は不溶性の硫黄元素又は硫黄供与体又はこれらの混合物から選択され得る。
【0057】
硫黄供与体は、例えば、ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2-モルホリノ-ジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、又はそれらの混合物である。
【0058】
加硫剤が硫黄又は硫黄供与体から選択される場合、加硫収率を増大させるために、例えば、ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲネート、グアニジン誘導体、カプロラクタム、チオ尿素誘導体、又はそれらの混合物等の他の添加剤を使用することも有益であり得る。
【0059】
上記加硫性エラストマー組成物において、上記硫黄、及び/又は上記硫黄供与体、及び/又は上記で報告された上記他の添加剤は、存在する場合、通常、0.05phr~10phr、好ましくは0.1phr~8phrの量で存在する。
【0060】
例えば、飽和若しくは不飽和有機脂肪酸若しくはこれらの亜鉛塩;ポリアルコール;アミノアルコール(例えば、トリエタノールアミン);アミン(例えば、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシル-エチルアミン);ポリエーテルアミン;又はこれらの混合物等の他の化合物が、本発明の対象となる加硫性エラストマー組成物に添加され得る。
【0061】
例えば、N-シクロヘキシルチオフタルイミド(PVI)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DNPT)、無水フタル酸(PTA)、ジフェニル-ニトロソアミン又はこれらの混合物等の加硫抑制剤も添加され得る。
【0062】
上述の加硫剤及び/又は上記で報告された他の化合物に加えて、本発明の対象となる加硫性エラストマー組成物は、例えば、他の充填剤、充填剤活性剤、オゾン保護剤、エージング防止剤、酸化防止剤、加工助剤、増量剤油、可塑剤、補強材、離型剤等の、加硫性エラストマー組成物に通常用いられ、当業者に既知の他の添加剤を含み得る。
【0063】
本発明の目的で使用することができる他の充填剤は、例えば、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、テフロン(登録商標)(好ましくは、粉末形)、シリケート、又はそれらの混合物である。但し、充填剤の総量は、5phr~500phrである。
【0064】
例えば、本発明の目的で使用することができる充填剤活性剤は、例えばビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(オクタデシル)-メチルジメトキシシラン、又はそれらの混合物等の有機シランである。更なる充填剤活性剤は、例えば、トリエタノールアミン、エチレングリコール、又はそれらの混合物等の界面活性物質である。充填剤活性剤の量は、概して0phr~10phrである。
【0065】
また、本発明の別の対象は、上記加硫性エラストマー組成物の加硫によって得られる加硫製品である。この加硫製品は、例えば、タイヤトレッド又はタイヤサイドウォールであり得る。
【0066】
本発明をよりよく理解し、これを実施するために、以下は、そのいくつかの例示的であり限定的ではない例である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
実施例
以下の特性評価技術及び分析技術を用いた。
【0068】
13C-NMR分析-ランダム化の程度の研究、シス-1,4ユニットの含有量の決定及び結合したブタジエン及びイソプレンの含有量の決定
ブタジエン及びイソプレンのダイアド(II;IB+BI;BB)に関連する信号は、例えば、Lobach M. I. et al., "Polymer" (1977), Vol. 18, Issue 11, p. 1196-1198に記載されているような13C-NMR分析によって、本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーにおいて、ポリマー鎖に沿ったコモノマーの分布を定める可能性及びモノマー組成を得る可能性と共に、(シス/トランス)1,2-及び1,4-ブタジエンユニット並びに(シス/トランス)3,4-及び1,4-イソプレンユニットに関する上記コポリマーの微細構造も考慮して、帰属を決定することができる。
【0069】
上述の13C-NMR分析は以下のように行った。
【0070】
計測
BRUKERのAVANCE-DPX-300MHz分光計;
周波数300.13(1H);75.47(13C);
10mm 1H/13C(プロトン/炭素)デュアル「プローブ」(高温用);
「13C-周波数」:75MHz。
【0071】
取得パラメーター:
取得温度:79.85~99.85℃;
取得ポイント数(TD):64;
サイズ:32;
ラインブロードニング(LB):1.2Hz;
スペクトルウィンドウ(SW):18000Hz(240.0~0.0ppm);
PULPROG*:「zgig_bilev」;INVGATEベースのプログラム;
CPDPRG2*:「waltz16_bilev」;デカップリングプログラム;
緩和時間(D1):10秒;
パルス角:90°;
スキャン数:6600(s/n=>750);
s/n比の計算:200~10ppmのスペクトル振幅、60~50ppmの自動ノイズ計算、27.9~27.3ppmの基準ピーク**からの信号の計算;
データ収集/処理プログラム:TOPSPIN。
(*)NOE(核オーバーハウザー増強)効果を排除するためのデカップリングを備えた取得プログラム。
(**)13C-NMRスペクトルにおけるピーク割り当ては、TMS(テトラメチルシラン)に基づく。
【0072】
サンプル調製
この目的のために、約250mgの、分析対象の高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを、2mlの1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2(99.5%重水素化溶媒-Aldrich)に溶解させ、この1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2から、10mm目盛り付きガラスNMRチューブ中で減圧下での窒素バブリング(1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2 2ml当たり約15分)によって酸素を従前に除去しておいた(約12.5%w/v)。得られた溶液を、濃度勾配の形成を排除するために約3時間~4時間撹拌しながら、分解現象を避けるために窒素フロー中で、制御温度のオーブン(80℃~100℃)中に保持した。
【0073】
スペクトル割り当て
通常、モノマーAとモノマーBとの共重合によって得られるコポリマーについては、4(22)つのダイアド:AA、AB+BA、BBが存在する。
【0074】
実際、本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの場合、メチルの存在によりイソプレンユニットが対称性でないため、ダイアドの数はより多くなり、その結果、2つのメチル(I1及びI4)は異なる化学的環境を有する。上記高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに存在する実際のダイアドの全リストを表1に示す。
【0075】
表2は、代わりに、定量分析に用いた、本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの13C-NMRスペクトル中のピークの割り当てを示す。
【0076】
【0077】
【0078】
ランダム化指数(R.I.)の決定
ランダム化指数(R.I.)は以下のように決定した。
【0079】
以下の:
I1(i4)≡I4(i1);I1(b)≡I4(b);B(i1)≡B(i4)
というダイアドの同等性を仮定すると、ダイアドの分布の計算は簡素化され、以下のようにまとめられ得る:
II=I1(i4)/DEN、但し、I1(i4)は信号1の積分;
BI+IB=[I1(b)+I4(b)]/DEN、但し、I1(b)及びI4(b)はそれぞれ信号2及び信号3の積分;
BB=[B(b)×0.5]/DEN、但し、B(b)は信号5の積分;
(式中、
II及びBBは、2つの同一のモノマーユニット(この場合、それぞれ、イソプレン及びブタジエン)によって形成されるダイアドであり、
BI及びIBは、2つの異なるモノマーユニット(この場合、それぞれ、ブタジエンとイソプレン、及び、イソプレンとブタジエン)によって形成されるダイアドであり、
DEN=[I1(i4)+I1(b)+I4(b)+B(b)×0.5])。
【0080】
本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーにおいては、鎖のランダム化の程度を評価するために用い得る、より高濃度の(IB+BI)ダイアドが存在する一方、ブロックコポリマーにおいては、(IB+BI)ダイアドの割合は減少し、II配列及びBB配列の割合が増加して、これが支配的となる。
【0081】
次に、イソプレンモノマーのランダム化指数(R.I.)は、以下の式:
R.I.=[(BI+IB)/2]/結合イソプレンの総モル
(BI及びIBは、上記で報告されたものと同じ意味を有する)に従って定められる。
【0082】
本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの場合、上記で報告されているように、ランダム化指数は0.5~1である。
【0083】
ダイアドによるモノマー組成の決定
対象となる本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーにおける、全てのブタジエン及びイソプレンユニットに対するモノマー組成は、以下の数学的関係:
[PIs]%mol=II+0.5×(IB+BI)
[PBu]%mol=BB+0.5×(IB+BI)
(式中、PIsはポリイソプレンであり、PBuはポリブタジエンであり、II、BI、IB及びBBは上記と同じ意味である)に従って得た。
【0084】
各モノマーユニットの分子量を考慮して、重量%で組成を得ることが可能である。
【0085】
鎖結合モノマーの異性体構成の決定
(シス及びトランス)1,4-及び1,2-ブタジエンユニットの特性信号並びに(シス及びトランス)1,4-及び3,4-イソプレンユニットの特性信号の特定及び積分により、以下の式に従って、ポリブタジエン及びポリイソプレンの両方の異性体比を得ることができる。
【0086】
ポリブタジエン:
fP1,2-Bu=IA/(IA+IB+IC);
1,2-ブタジエンユニット=fP1,2-Bu×PButot;
fPcis-1,4-Bu=IB/(IA+IB+IC);
シス-1,4-ブタジエンユニット=fPcis-1,4-Bu×PButot;
fPtrans-1,4-Bu=IC/(IA+IB+IC);
トランス-1,4-ブタジエンユニット=fPtrans-1,4-Bu×PButot;
式中:
fPBu i=i番目の異性体ユニットのモル分率;
IA=1,2-ブタジエンユニットの信号に関連する積分;
IB=シス-1,4-ブタジエンユニットの信号に関連する積分;
IC=トランス-1,4-ブタジエンユニットの信号に関連する積分;
PButot=ダイアドから計算された総モルパーセント。
【0087】
ポリイソプレン:
fP3,4-Is=IE/(ID+IE+IF);
3,4-イソプレンユニット=fP3,4-Is×PIstot;
fPcis-1,4-Bu=ID/(ID+IE+IF);
シス-1,4-ブタジエンユニット=fPcis-1,4-Is×PIstot;
fPtrans-1,4-Is=IF/(ID+IE+IF);
トランス-1,4-イソプレンユニット=fPtrans-1,4-Is×PIstot;
式中:
fPIs i=i番目の異性体ユニットのモル分率;
ID=シス-1,4-イソプレンユニットの信号に関連する積分;
IE=3,4-イソプレンユニットの信号に関連する積分;
IF=トランス-1,4-イソプレンユニットの信号に関連する積分;
PIstot=ダイアドから計算された総モルパーセント。
【0088】
各モノマーユニットの分子量を考慮して、重量%で各異性体組成を得ることが可能である。
【0089】
分子量分布(MWD)の決定
本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの分子量分布(MWD)からは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(すなわち、Mw/Mn比)に相当する多分散指数も得られるが、該分子量分布(MWD)は、ポリスチレンを標準として用い、汎用的な較正法を適用する、標準的な方法ISO 11344:2004、IDT("Rubber, raw, synthetic - Determination of the molecular-mass distribution of solution polymers by gel permeation chromatography")に従って簡便に行われる、ゲル浸透クロマトグラフィー分析(GPC)によって決定した。
【0090】
ムーニー粘度
ムーニー粘度(ML1+4@100℃)は、ASTM D1646に従って決定した。特に、本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの粘度は、100℃で、ワイドローター(L)を用いて、1分間予熱して4分間測定した。
【0091】
熱分析(DSC):ガラス転移温度(Tg)の決定
本発明による高含有量のシス-1,4ユニットを有するランダムブタジエン-イソプレンコポリマーのガラス転移温度(Tg)を決定するための熱分析(DSC)(「示差走査熱量測定」)を、TA InstrumentsのDSC Q1000示差走査熱量計を用いて行った。
【0092】
この目的のために、以下の熱サイクルをサンプルに適用した(T=温度;v=スキャン速度):
v=200℃/分でのT=+25℃からT=-130℃へのサンプルの冷却;
T=-130℃からのサンプルの調整;
その後の、v=10℃/分でのT=-130℃からT=+100℃への加熱(標準スキャン)(1回目のサイクル);
v=200℃/分でのT=+100℃からT=-130℃へのサンプルの冷却;
T=-130℃によるサンプルの調整;
その後の、v=10℃/分でのT=-130℃からT=+100℃への加熱(標準スキャン)(2回目のサイクル)。
【0093】
ガラス転移温度(Tg)は、最初の標準スキャン(1回目のサイクル)を通じたサンプルの全ての熱履歴をリセットするために、2回目のサイクルで計算した。
【実施例】
【0094】
実施例1(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物)を含む、450gの無水炭化水素溶媒を、撹拌機及び冷却システムを備えた1リットル容のリアクターに入れ、60℃に加熱した。続いて、45gの無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)、5gの無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)(重量%ブタジエン:イソプレン=90:10)、0.95Mのジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比DIBAH/Nd=5)0.658ml(0.625mmol)、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Albemarle製)溶液(モル比Cl/Nd=3)0.665ml(0.375mmol)を上記溶媒にこの順序で添加し、全体を、撹拌しながら60℃で25分間維持した。続いて、遊離酸/Ndのモル比が0.3で、H2O/Ndのモル比が0.018である、0.514Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3][モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液0.24ml(0.125mmol)を添加した。全体を、撹拌しながら90分間保持した。90分後、反応は完了したと見なし、中断した。ポリマー溶液をリアクターから抽出し、フェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、得られたコポリマーの総重量に対して0.1重量%の量)を加えた。次に、得られたポリマー溶液を、蒸気の導入を介して沸騰水の入った容器に入れ、撹拌した。このようにして、残留反応溶媒を除去し、凝固物を得た。この凝固物をまずコールドカレンダー内にてプレスし、次にローラーを備えたカレンダー内にて80℃で完全に乾燥させて、ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを得た。
【0095】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0096】
実施例2(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
実施例2は、実施例1と同じ方法で行ったが、唯一の違いは、35gの無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)及び15gの無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)(重量%ブタジエン:イソプレン=70:30)を用いたことである。
【0097】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0098】
実施例3(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
実施例3は、実施例1と同じ方法で行ったが、唯一の違いは、25gの無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)及び25gの無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)(重量%ブタジエン:イソプレン=50:50)を用いたことである。
【0099】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0100】
実施例4(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物)を含む、450gの無水炭化水素溶媒を、撹拌機及び冷却システムを備えた1リットル容のリアクターに入れ、60℃に加熱した。続いて、35gの無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)、15gの無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)(重量%ブタジエン:イソプレン=70:30)、0.12Mのジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比DIBAH/Nd=5)0.658ml(0.625mmol)、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比Cl/Nd=4)0.887ml(0.5mmol)を上記溶媒にこの順序で添加し、全体を、撹拌しながら60℃で25分間維持した。続いて、遊離酸/Ndのモル比が0.3で、H2O/Ndのモル比が0.018である、0.514Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3][モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液0.24ml(0.125mmol)を添加した。全体を、撹拌しながら90分間保持した。90分後、反応は完了したと見なし、中断した。ポリマー溶液をリアクターから抽出し、フェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、得られたコポリマーの総重量に対して0.1重量%の量)を加えた。次に、得られたポリマー溶液を、蒸気の導入を介して沸騰水の入った容器に入れ、撹拌した。このようにして、残留反応溶媒を除去し、凝固物を得た。この凝固物をまずコールドカレンダー内にてプレスし、次にローラーを備えたカレンダー内にて80℃で完全に乾燥させて、ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを得た。
【0101】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0102】
実施例5(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
実施例5は、実施例4と同じ方法で行ったが、唯一の違いは、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比Cl/Nd=5)1.11ml(0.625mmol)を用いたことである。
【0103】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0104】
実施例6(比較例)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
実施例6は、実施例4と同じ方法で行ったが、唯一の違いは、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比Cl/Nd=2)0.443ml(0.25mmol)を用いたことである。
【0105】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0106】
実施例7(比較例)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
実施例7は、実施例4と同じ方法で行ったが、唯一の違いは、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比Cl/Nd=6)1.33ml(0.75mmol)を用いたことである。
【0107】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0108】
実施例8(比較例)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
実施例8は、実施例4と同じ方法で行ったが、唯一の違いは、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比Cl/Nd=7)1.55ml(0.875mmol)を用いたことである。
【0109】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0110】
実施例9(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物)を含む、450gの無水炭化水素溶媒を、撹拌機及び冷却システムを備えた1リットル容のリアクターに入れ、60℃に加熱した。続いて、35gの無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)、15gの無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)(重量%ブタジエン:イソプレン=90:10)、0.95Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比DIBAH/Nd=4)0.526ml(0.5mmol)、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比Cl/Nd=5)1.11ml(0.625mmol)を上記溶媒にこの順序で添加し、全体を、撹拌しながら60℃で25分間維持した。続いて、遊離酸/Ndのモル比が0.3で、H2O/Ndのモル比が0.018である、0.514Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3][モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液0.24ml(0.125mmol)を添加した。全体を、撹拌しながら90分間保持した。90分後、反応は完了したと見なし、中断した。ポリマー溶液をリアクターから抽出し、フェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、得られたコポリマーの総重量に対して0.1重量%の量)を加えた。次に、得られたポリマー溶液を、蒸気の導入を介して沸騰水の入った容器に入れ、撹拌した。このようにして、残留反応溶媒を除去し、凝固物を得た。この凝固物をまずコールドカレンダー内にてプレスし、次にローラーを備えたカレンダー内にて80℃で完全に乾燥させて、ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを得た。
【0111】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0112】
実施例10(比較例)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(バッチリアクター内)
ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物と含む混合物)を含む、450gの無水炭化水素溶媒を、撹拌機及び冷却システムを備えた1リットル容のリアクターに入れ、60℃に加熱した。続いて、35gの無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)、15gの無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)(重量%ブタジエン:イソプレン=90:10)、0.95Mのジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比DIBAH/Nd=4)0.526ml(0.5mmol)、0.564Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(モル比Cl/Nd=2)0.443ml(0.25mmol)を上記溶媒にこの順序で添加し、全体を、撹拌しながら60℃で25分間維持した。続いて、遊離バーサチック酸/Ndのモル比が0.3で、H2O/Ndのモル比が0.018である、0.514Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液0.24ml(0.125mmol)[モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd]を添加した。全体を、撹拌しながら90分間保持した。90分後、反応は完了したと見なし、中断した。ポリマー溶液をリアクターから抽出し、フェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、得られたコポリマーの総重量に対して0.1重量%の量)を加えた。次に、得られたポリマー溶液を、蒸気の導入を介して沸騰水の入った容器に入れ、撹拌した。このようにして、残留反応溶媒を除去し、凝固物を得た。この凝固物をまずコールドカレンダー内にてプレスし、次にローラーを備えたカレンダー内にて80℃で完全に乾燥させて、ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーを得た。
【0113】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0114】
実施例11(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(連続的)
無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)と、無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)と、ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物)を含む無水炭化水素溶媒とを、100l容の一次リアクター、100l容の二次リアクター、及び、ウォールスクレーピングスターラーを備えた45l容の三次リアクターを含む直列した3つのリアクターを含むプラントに供給し、蒸留し、3A分子篩床を通過させることにより、モノマーの総濃度が混合物の総重量に対して13重量%に等しく、かつ、ブタジエン+イソプレンの1時間当たりの量が、ブタジエン:イソプレンの重量比90:10で、6kg/時間に等しいような速度で更に乾燥させた。得られたモノマー及び溶媒混合物の温度は22℃を超えない値に設定し、いかなる場合でも(リアクターが設けられたジャケット内を循環する蒸気の量とともに)一次リアクターの底部における合成温度が一定で、60℃の値を中心にするように調節した。同じ供給ラインで、0.0921Mのジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(DIBAH/Ndモル比=4)、1Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(Cl/Ndモル比=4.3)、一方で、0.3の遊離バーサチック酸とNdとのモル比及び0.014のH2O/Ndモル比を有する、0.0248Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液[モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd]を、一次リアクターに直接個別に供給した。脱塩水とフェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、ポリマー溶液の総重量に対して0.1重量%)を添加した後、最後の重合リアクターからのポリマー溶液を撹拌ブレンダーに移し、保存した。その後、ポリマー溶液を上記ブレンダーからストリッパーに供給して残留反応溶媒を除去し、ストリッパーの底部から排出されたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに押出機内にて乾燥段階を行った。
【0115】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0116】
実施例12(本発明)
ランダムブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(連続的)
無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)と、無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)と、ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物)を含む無水炭化水素溶媒とを、100l容の一次リアクター、100l容の二次リアクター、及び、ウォールスクレーピングスターラーを備えた45l容の三次リアクターを含む直列した3つのリアクターを含むプラントに供給し、蒸留し、3A分子篩床を通過させることにより、モノマーの総濃度が混合物の総重量に対して13重量%に等しく、かつ、ブタジエン+イソプレンの1時間当たりの量が、ブタジエン:イソプレンの重量比70:30で、6kg/時間に等しいような速度で更に乾燥させた。得られたモノマー及び溶媒混合物の温度は22℃を超えない値に設定し、いかなる場合でも(リアクターが設けられたジャケット内を循環する蒸気の量とともに)一次リアクターの底部における合成温度が一定で、60℃の値を中心にするように調節した。同じ供給ラインで、0.0921Mのジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(DIBAH/Ndモル比=4)、0.119Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(Cl/Ndモル比=4.3)、一方で、0.3の遊離バーサチック酸とNdとのモル比及び0.014のH2O/Ndモル比を有する、0.0248Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液[モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd]を、一次リアクターに直接個別に供給した。脱塩水とフェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、ポリマー溶液の総重量に対して0.1重量%)を添加した後、最後の重合リアクターからのポリマー溶液を撹拌ブレンダーに移し、保存した。その後、ポリマー溶液を上記ブレンダーからストリッパーに供給して残留反応溶媒を除去し、ストリッパーの底部から排出されたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに押出機内にて乾燥段階を行った。
【0117】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0118】
実施例13(本発明)
ブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(連続的)
無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)と、無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)と、ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物)を含む無水炭化水素溶媒とを、100l容の一次リアクター、100l容の二次リアクター、及び、ウォールスクレーピングスターラーを備えた45l容の三次リアクターを含む直列した3つのリアクターを含むプラントに供給し、蒸留し、3A分子篩床を通過させることにより、モノマーの総濃度が混合物の総重量に対して13重量%に等しく、かつ、ブタジエン+イソプレンの1時間当たりの量が、ブタジエン:イソプレンの重量比50:50で、6kg/時間に等しいような速度で更に乾燥させた。得られたモノマー及び溶媒混合物の温度は22℃を超えない値に設定し、いかなる場合でも(リアクターが設けられたジャケット内を循環する蒸気の量とともに)一次リアクターの底部における合成温度が一定で、60℃の値を中心にするように調節した。同じ供給ラインで、0.0921Mのジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(DIBAH/Ndモル比=4)、0.119Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(Cl/Ndモル比=4.3)、一方で、0.3の遊離バーサチック酸とNdとのモル比及び0.014のH2O/Ndモル比を有する、0.0248Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液[モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd]を、一次リアクターに直接個別に供給した。脱塩水とフェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、ポリマー溶液の総重量に対して0.1重量%)を添加した後、最後の重合リアクターからのポリマー溶液を撹拌ブレンダーに移し、保存した。その後、ポリマー溶液を上記ブレンダーからストリッパーに供給して残留反応溶媒を除去し、ストリッパーの底部から排出されたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに押出機内にて乾燥段階を行った。
【0119】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0120】
実施例14(比較例)
ブタジエン-イソプレンコポリマーの調製(連続的)
無水1,3-ブタジエン(Versalis S.p.A.製)と、無水イソプレン(Versalis S.p.A.製)と、ヘキサンの混合物(混合物の総重量に対して35重量%のn-ヘキサンと、混合物の総重量に対して65重量%の、Cepsa製の、n-ヘキサン異性体、脂肪族化合物及び脂環式化合物を含む混合物とを含む混合物)を含む無水炭化水素溶媒とを、100l容の一次リアクター、100l容の二次リアクター、及び、ウォールスクレーピングスターラーを備えた45l容の三次リアクターを含む直列した3つのリアクターを含むプラントに供給し、蒸留し、3A分子篩床を通過させることにより、モノマーの総濃度が混合物の総重量に対して13重量%に等しく、かつ、ブタジエン+イソプレンの1時間当たりの量が、ブタジエン:イソプレンの重量比70:30で、6kg/時間に等しいような速度で更に乾燥させた。得られたモノマー及び溶媒混合物の温度は22℃を超えない値に設定し、いかなる場合でも(リアクターが設けられたジャケット内を循環する蒸気の量とともに)一次リアクターの底部における合成温度が一定で、60℃の値を中心にするように調節した。同じ供給ラインで、0.0921Mのジ-イソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)(Akzo Nobel製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(DIBAH/Ndモル比=4)、0.119Mのジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)(Al/Clモル比=1;Albemarle製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液(Cl/Ndモル比=4.3)、一方で、0.3の遊離バーサチック酸とNdとのモル比及び0.014のH2O/Ndモル比を有する、0.0248Mのネオジムバーサテート[Nd(バーサテート)3](Rhodia製)のn-ヘキサン(Aldrich製)溶液[モノマー(1,3-ブタジエン+イソプレン)1000g当たり2.5mmolのNd]を、一次リアクターに直接個別に供給した。脱塩水とフェノール系酸化防止剤(Ciba製Irganox(商標)1520、ポリマー溶液の総重量に対して0.1重量%)を添加した後、最後の重合リアクターからのポリマー溶液を撹拌ブレンダーに移し、保存した。その後、ポリマー溶液を上記ブレンダーからストリッパーに供給して残留反応溶媒を除去し、ストリッパーの底部から排出されたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに押出機内にて乾燥段階を行った。
【0121】
得られたランダムブタジエン-イソプレンコポリマーに、上述の特性評価を行った。得られたデータを表3に示す。
【0122】