(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】燃料電池スタックの動作の安全性および/または信頼性を高める方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0444 20160101AFI20231030BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/04492 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231030BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231030BHJP
【FI】
H01M8/0444
H01M8/0438
H01M8/04492
H01M8/00 Z
H01M8/04746
H01M8/04694
H01M8/04 H
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020566684
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2019062058
(87)【国際公開番号】W WO2019228785
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-02-04
(31)【優先権主張番号】102018208613.3
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】592245937
【氏名又は名称】バイエリッシェ モトーレン ヴェルケ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayerische Motoren Werke Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Petuelring 130, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ウルリヒ シュタール
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102012218572(DE,A1)
【文献】特開2009-283457(JP,A)
【文献】特開2016-80328(JP,A)
【文献】特開2013-20868(JP,A)
【文献】特開2000-48838(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタック(101)の動作の安全性および/または信頼性を高める方法(400)であって、前記方法(400)は、
空気交換率(221)が低下した
閉鎖空間(200)内に前記燃料電池スタック(101)が位置していると判定するステップ(401)と、
所定のタイムインターバル内での前記燃料電池スタック(101)の酸素消費に関する消費情報を求めるステップ(402)と、
前記
空気交換率(221)に基づき、前記タイムインターバル内に前記
閉鎖空間(200)に供給された酸素量に関する流入情報を求めるステップ(403)と、
前記消費情報と前記流入情報とに基づき、前記
閉鎖空間(200)内の空気の酸素含有量に対する推定値を求めるステップ(404)と、
を含む方法(400)。
【請求項2】
前記方法(400)は、
前記
閉鎖空間(200)外部の圧力に対し相対的な前記
閉鎖空間(200)内部の圧力に関する圧力情報を求めるステップと、
前記圧力情報に基づき、前記
空気交換率(221)および/または前記流入情報を求めるステップと、
を含む、
請求項1記載の方法(400)。
【請求項3】
前記燃料電池スタック(101)の動作時に、水蒸気が反応生成物として前記燃料電池スタック(101)から吐出され、
前記方法(400)は、前記
閉鎖空間(200)内で凝縮する水蒸気の割合を求めるステップを含み、
前記圧力情報は、前記
閉鎖空間(200)内で凝縮する水蒸気の割合に依存する、
請求項2記載の方法(400)。
【請求項4】
前記方法(400)は、
前記
閉鎖空間(200)内の空気の温度および/または前記
閉鎖空間(200)の凝縮面の温度に関する温度情報を求めるステップと、
前記
閉鎖空間(200)内の空気の相対空気湿度に関する湿度情報を求めるステップと、
前記温度情報と前記湿度情報とに基づき、前記
閉鎖空間(200)内で凝縮する水蒸気の割合を求めるステップと、
を含む、
請求項3記載の方法(400)。
【請求項5】
一連の時点について前記酸素含有量の推定値を求めるために、前記方法(400)は、消費情報を求める前記ステップ(402)、流入情報を求める前記ステップ(403)および前記酸素含有量の前記推定値を求める前記ステップ(404)を、前記一連の時点で繰り返し反復することを含む、
請求項1から4までのいずれか1項記載の方法(400)。
【請求項6】
前記方法(400)は、
前記タイムインターバル内の前記燃料電池スタック(101)の燃料消費を求めるステップと、
前記燃料電池スタック(101)内の燃料(121)と酸素との間の反応の化学量論と、前記燃料電池スタック(101)の前記燃料消費と、に基づき、前記燃料電池スタック(101)の前記酸素消費に関する前記消費情報を求めるステップ(402)と、
を含む、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法(400)。
【請求項7】
前記方法(400)は、
前記
閉鎖空間(200)内の空気体積に関する体積情報を求めるステップと、
前記
閉鎖空間(200)に流れ込む空気の酸素含有量と、前記
閉鎖空間(200)から流れ出る空気の酸素含有量と、の間の酸素含有量差を求めるステップと、
前記酸素含有量差、前記
空気交換率(221)、前記体積情報および前記タイムインターバルの時間長(Δt)に基づき、前記
閉鎖空間(200)に供給された酸素量に関する前記流入情報を求めるステップ(403)と、
を含む、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法(400)。
【請求項8】
前記方法(400)は、
前記流入情報と前記消費情報とに基づき、前記タイムインターバル内での前記
閉鎖空間(200)内の酸素量の変化を求めるステップと、
前記タイムインターバル内での前記
閉鎖空間(200)内の前記酸素量の変化に基づき、前記酸素含有量に対する前記推定値を更新するステップと、
を含む、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法(400)。
【請求項9】
前記方法(400)は、
前記燃料電池スタック(101)が設けられている車両(100)の運動に関する運動データを求めるステップ、および/または
前記燃料電池スタック(101)および/または前記車両(100)のポジションに関するポジションデータを求めるステップ、および/または
前記燃料電池スタック(101)および/または前記車両(100)のすぐ近くの周囲に関する周囲データを求めるステップ、および/または
前記車両(100)から送信されるもしくは送信された、かつ/または前記車両(100)により受信されるもしくは受信された、電磁信号の遮蔽および/または減衰に関する信号データを求めるステップ、および/または
前記燃料電池スタック(101)および/または前記車両(100)のユーザの入力に関する入力データを求めるステップ、および
前記運動データ、前記ポジションデータ、前記周囲データ、前記信号データおよび/または前記入力データに基づき、
前記空気交換率(221)が低下した
前記閉鎖空間(200)内に前記燃料電池スタック(101)が位置していると判定するステップ(401)
を含む、
請求項1から8までのいずれか1項記載の方法(400)。
【請求項10】
前記方法(400)は、前記酸素含有量の求められた前記推定値に依存して
、措置を講じるステップ(406)を含み、
前記措置は
、
前記燃料電池スタック(101)のユーザへの指示の送出、
前記
空気交換率(221)を増やすための少なくとも1つの措置、および/または
前記燃料電池スタック(101)の前記酸素消費を低減するための少なくとも1つの措置
を含む、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法(400)。
【請求項11】
措置を講じる前記ステップ(406)は、前記酸素含有量の求められた前記推定値が酸素含有量閾値に達したかまたは前記酸素含有量閾値を下回ったときに、前記措置を講じる、請求項10記載の方法(400)。
【請求項12】
燃料電池スタック(101)の動作の安全性および/または信頼性を高める方法(300)であって、前記方法(300)は、
前記燃料電池スタック(101)の動作に関する測定データ(111)を一連の時点において求めるステップ(301)と、
前記一連の時点における前記測定データ(111)に基づき、前記燃料電池スタック(101)の周囲における空気の酸素含有量が変化し
たと判定するステップ(302)と、
前記判定に応答して、前記燃料電池スタック(101)の動作の安全性および/または信頼性を高めるための措置を講じるステップ(303)と、
を含
み、
前記測定データ(111)は、前記燃料電池スタック(101)内部の湿度の度合いに関係し、
前記方法(300)は、
前記一連の時点における前記測定データ(111)に基づき、前記燃料電池スタック(101)の周囲における空気の空気湿度の上昇を検出するステップと、
前記燃料電池スタック(101)の周囲における空気の空気湿度が高まったことが検出されると、前記燃料電池スタック(101)の周囲における空気の酸素含有量が低下したと判定するステップと、
を含む、
方法(300)。
【請求項13】
前記測定データ(111)は、
前記燃料電池スタック(101)のオフガス(123)から前記燃料電池スタック(101)の反応
室への水の再循環の程度、期間および/または頻度、および/または
前記燃料電池スタック(101)のアノードおよび/またはカソードの加湿の程度、期間および/または頻度
を表す、
請求項12記載の方法(300)。
【請求項14】
前記反応室はカソードである、請求項13記載の方法(300)。
【請求項15】
前記方法(300)は、前記測定データ(111)と、前記燃料電池スタック(101)の動作に関する特性データと、に基づき、前記燃料電池スタック(101)の周囲における空気の酸素含有量に対する推定値を特定するステップを含み、
前記特性データは、複数の測定量の種々の値の組み合わせについて、前記酸素含有量の対応する推定値を表す、
請求項
12から
14までのいずれか1項記載の方法(300)。
【請求項16】
前記複数の測定量は、以下を含む、かつ/または、前記測定データ(111)は、以下を表す、すなわち
前記燃料電池スタック(101)に供給される空気(122)の体積流および/または質量流、および/または
前記燃料電池スタック(101)に供給される燃料(121)の体積流および/または質量流、および/または
前記燃料電池スタック(101)により生成される電力量、および/または
前記燃料電池スタック(101)のオフガス(123)中の未反応燃料(121)の量、および/または
前記燃料電池スタック(101)の反応のために供給される所定量の空気(122)の空気率
請求項
15記載の方法(300)。
【請求項17】
請求項1から
16までのいずれか1項記載の方法(300、400)を実施するように構成されてい
る装置(110)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に車両における、燃料電池スタックを動作させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両、特に道路走行自動車は、多数の燃料電池を含む燃料電池スタックを備えた燃料電池システムを有することができ、この場合、燃料電池システムは、例えば水素などのような燃料に基づき、車両を動作させるための、特に駆動するための、電気エネルギーを生成する。
【0003】
燃料電池システムが動作している状況で、燃料電池システムの周囲空気から酸素が消費され、この場合、燃料電池システム内で反応が起こると、一般的に水素および酸素からオフガスとして水が発生する。
【0004】
酸素の消費によって、燃料電池システム周囲の換気状況次第では、燃料電池システム周囲において酸素不足が引き起こされる可能性がある。かかる酸素不足は、燃料電池システムのユーザの安全性を損なうおそれがあり、かつ/または燃料電池システムの動作の劣化を引き起こすおそれがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される技術の好ましい課題は、従前より知られている解決手段の少なくとも1つの欠点を減らすかまたは取り除くこと、あるいは択一的な解決手段を提案することである。特に、本明細書で開示される技術の好ましい課題は、車両の燃料電池システムの動作の安全性および/または信頼性を高めることである。本明細書で開示される技術の有利な効果から、さらなる好ましい課題が明らかになり得る。この(これらの)課題は、独立請求項1および11に記載された事項によってそれぞれ解決される。従属請求項には好ましい実施形態が示されている。
【0006】
1つの態様によれば、燃料電池スタックの動作の安全性および/または信頼性を高める方法について記述される。燃料電池スタックは、1つまたは複数の燃料電池を含むことができる。燃料電池スタックを、車両、特に道路走行自動車、の一部とすることができる。特に燃料電池スタックを、車両の駆動モータを動作させるための電気エネルギーを(水素を含む燃料と酸化剤、特に空気、とに基づき)生成するように構成することができる。この方法を、車両の制御装置によって実施することができる。
【0007】
この方法は、換気回数が低下した空間内に、特に車庫内に、燃料電池スタックが位置していると判定するステップを含む。この目的で、燃料電池スタックが設けられている車両の運動に関する運動データを求めることができる。特に、燃料電池スタックもしくは車両の運動の空間的広がりを求めることができる(さらにそこから閉鎖空間の空間的広がりを推定することができる)。択一的にまたは補足的に、燃料電池スタックおよび/または車両のポジションに関するポジションデータ(例えばGPS座標)を求めることができる。次いで、燃料電池スタックおよび/または車両の目下のポジションを、例えば建物および/または車庫ならびにそれらのポジションが掲載されたディジタルマップ情報と比較することができる。(例えばデータベースの形態の)ディジタルマップ情報から例えば、換気回数が低下した空間内に燃料電池スタックが位置している、ということを判定する(すなわち読み出す)ことができる。さらに場合によっては、換気回数の値および/または空間の容積を求めることができる。
【0008】
択一的にまたは補足的に、燃料電池スタックおよび/または車両のすぐ近くの周囲に関する周囲データを、(例えば車両の周囲センサ、例えば画像カメラ、に基づき)捕捉することができる。次いで、燃料電池スタックおよび/または車両が閉鎖空間内に位置しているか否かを求めるために、それらの周囲データを評価することができる。
【0009】
択一的にまたは補足的に、車両から送信されるかつ/または送信された、かつ/または車両により受信されるかつ/または受信された、電磁信号の遮蔽および/または減衰に関する信号データを求めることができる。例えば、以前は受信していた信号の欠落から(つまり以前は受信していた信号が受信されないことから)、閉鎖空間内での停車を推測することができる。択一的にまたは補足的に、(例えば車両のユーザインタフェースを介した)燃料電池スタックおよび/または車両のユーザの入力に関する入力データを捕捉することができる。
【0010】
このようにすれば、運動データ、ポジションデータ、周囲データ、信号データ、および/または入力データに基づき、換気回数が低下した空間内に燃料電池スタックが位置しているか否かについて、確実な手法で判定することができる。
【0011】
これに加えこの方法は、所定のタイムインターバル内での燃料電池スタックの酸素消費に関する消費情報を求めるステップを含む。この方法を、例えば特定の頻度または繰り返し数で、周期的に反復することができる。タイムインターバルは、この方法の2つの反復の間の時間長Δtを有することができる。
【0012】
この方法の枠内で、燃料電池スタックの燃料消費をこのタイムインターバル内で求めることができる。この目的で一方では、燃料電池スタックへの燃料の質量流を捕捉することができる。さらに、燃料電池スタックのオフガス中の未反応燃料の量を捕捉することができる。次いでその差から、燃料電池スタックの実効燃料消費を求めることができる。
【0013】
このようにすれば、燃料電池スタックの酸素消費に関する消費情報を、(例えば反応式2H2+O2→2H2Oによる)燃料電池スタック内の燃料と酸素との間の反応の化学量論と、燃料電池スタックの燃料消費とに基づき、求めることができる。このようにして効率的かつ正確な手法で、燃料電池スタックの酸素消費を求めることができる。
【0014】
さらにこの方法は、換気回数に基づき、タイムインターバル内に空間に供給された酸素量に関する流入情報を求めるステップを含む。この場合、単位時間あたりに供給される酸素の量は一般的に、換気回数が増えるにつれて上昇する。換気回数を、ポジションデータとディジタルマップ情報とに基づき求めることができ、その際にマップ情報は、種々の建物に関する換気回数を表すことができる。択一的にまたは補足的に、換気回数に関して最悪のケースを想定することができる(SAEによれば例えば毎時0.03の換気回数)。
【0015】
この方法の枠内で、空間内の空気体積Vに関する体積情報を、(例えばディジタルマップ情報または周囲データに基づき)求めることができる。換言すれば、どれくらいの空気体積Vが閉鎖空間内に存在しているのかを求めることができる。さらに、空間内に流れ込む空気の酸素含有量と、空間から流れ出る空気の酸素含有量と間の酸素含有量差を求めることができる。空間内に流れ込む空気の酸素含有量は、一般的に約21%付近にある。着目するタイムインターバル内に空間から流れ出る空気は一般的に、酸素含有量について直前に(この方法により)求められた推定値を有する。
【0016】
このようにすれば、酸素含有量差、換気回数、体積情報、およびタイムインターバルの時間長Δtに基づき、空間に供給された酸素量に関する流入情報を、正確かつ効率的な手法で求めることができる。
【0017】
さらにこの方法は、消費情報と流入情報とに基づき(特に消費された酸素量と供給された酸素量との差に基づき)、空間内の空気の酸素含有量に対する推定値を求めるステップを含む。特に、流入情報と消費情報とに基づき、タイムインターバル内での空間内の酸素量の変化を求めることができる。その後、(時点t+Δtでの)酸素含有量に対する推定値を、タイムインターバル内での空間内の酸素量の変化に基づき、(時点tでの酸素含有量に対する推定値をベースに)更新することができる。
【0018】
一連の時点について酸素含有量の推定値を求める目的で、消費情報を求めるステップ、流入情報を求めるステップ、および酸素含有量の推定値を求めるステップを、一連の時点で反復することができる。その際に一連の時点における時点をそれぞれ、互いにΔtだけ時間的に隔てられたものとすることができる。このようにすることで、閉鎖空間内の酸素含有量の経時的進展を、効率的かつ確実な手法で監視することができる。よって、燃料電池スタックの安全かつ確実な動作を可能にすることができる。
【0019】
燃料電池スタックの動作の安全性および/または信頼性を高めるために、この方法は特に、酸素含有量について求められた推定値に依存して、特に求められた推定値が酸素含有量閾値に達したかまたはそれを下回ったときに、少なくとも1つの措置を講じるステップおよび/または実施するステップを含むことができる。例示的な措置は、燃料電池スタックのユーザへの指示の送出、空間の換気回数を増やすための少なくとも1つの措置、および/または燃料電池スタックの酸素消費を減らすための少なくとも1つの措置である。
【0020】
換気回数を、燃料電池スタックの動作の動作条件に依存させることができ、特に燃料電池スタックのすぐ近くの周囲における圧力に依存させることができる。この方法の枠内で、空間外部の圧力に対し相対的な空間内部の圧力に関する圧力情報を求めることができる。特に、空間内において、空間の外部周囲に対し相対的に過剰圧力、バランスのとれた圧力、または過小圧力が発生しているのかを求めることができる。次いで、圧力情報に基づき、換気回数および/または流入情報を求めることができる。よって、酸素含有量について求められる推定値の精度をさらに高めることができる。
【0021】
燃料電池スタックの動作時に、一般的に水蒸気が反応生成物として燃料電池スタックから吐出される。本発明の枠内で、空間内で凝縮する水蒸気の割合を求めることができる。この目的で、空間内の空気の温度および/または空間の凝縮面の温度に関する温度情報を求めることができる。さらに、空間内の空気の相対空気湿度に関する湿度情報を求めることができる。次いで、温度情報と湿度情報とに基づき(水に関する露点表に依存して)、空間内で凝縮する水蒸気の割合を正確かつ効率的な手法で求めることができる。
【0022】
圧力情報を、空間内で凝縮する水蒸気の割合に依存させることができる。特に、水蒸気が比較的高い割合で凝縮すると、一般的に空間内で過小圧力が発生する。他方、水蒸気が比較的低い割合で凝縮すると、一般的に空間内で過剰圧力が発生する。したがって燃料電池スタックの動作中に、空間の換気回数を正確な手法で更新することができ、このことにより酸素含有量について正確な推定値を求めることが可能となる。
【0023】
さらなる態様によれば、燃料電池スタックの動作の安全性および/または信頼性を高める方法について記述される。本明細書で説明する態様を、この方法にも適用することができる。
【0024】
この方法は、燃料電池スタックの動作に関する測定データを一連の時点において求めるステップを含む。このようにすれば、1つまたは複数の測定量の値について、経時的推移を求めることができる。1つまたは複数の測定量は以下を含むことができ、かつ/または測定データは以下を表すことができる。すなわち、燃料電池スタックに(酸化剤として)供給される空気の体積流および/または質量流、燃料電池スタックに供給される燃料(特に水素)の体積流および/または質量流、燃料電池スタックにより生成される電力量、燃料電池スタックの動作時に生成される温度もしくは熱量、燃料電池スタックのオフガス中の未反応燃料の量および/または割合、および/または燃料電池スタックの反応のために供給される所定量の空気の空気率。
【0025】
このようにすれば、一連の時点における測定データに基づき、特に1つまたは複数の測定量の値の経時的推移に基づき、燃料電池スタックの周囲における空気の酸素含有量が変化した、特に低下した、と判定することができる。特に、1つの測定量の値の経時的変化を、これ以外には1つまたは複数の他の測定量について値が一定であれば、燃料電池スタックに供給される空気における酸素含有量の変化に対する指標とすることができる。
【0026】
酸素含有量の変化、特に低下を、燃料電池スタック(特に燃料電池スタックが設けられている車両)が、換気回数が低下した閉鎖空間内に位置している、ということに対する指標とすることができる。
【0027】
酸素含有量の変化が検出されたならば、燃料電池スタックの動作の安全性および/または信頼性を高めるための1つまたは複数の措置を講じることができ、または実施することができる。このようにすることで、燃料電池スタックの動作の安全性および/または信頼性を、効率的かつ確実に高めることができる。
【0028】
測定データと、燃料電池スタックの動作に関する特性データとに基づき、燃料電池スタックの周囲における空気の酸素含有量に対する推定値を求めることができる。この場合、特性データは、複数の測定量の種々の値の組み合わせについて、酸素含有量の対応する推定値を表すことができる。特性データを、燃料電池スタックにおいて事前に実験により求めて、記憶させておくことができる。このようにすれば、燃料電池スタックに供給される空気の酸素含有量を、効率的かつ正確な手法で求めることができる。
【0029】
測定データを、燃料電池スタック内部の湿度の度合いに関係するものとすることができる。特に測定データは、燃料電池スタックのオフガスから燃料電池スタックの反応室内への、特にカソードへの、水の再循環の程度、期間および/または頻度を表すことができる。択一的にまたは補足的に測定データは、燃料電池スタックのアノードおよび/またはカソードの加湿の程度、期間および/または頻度を表すことができる。
【0030】
このようにすることで測定データに基づき、燃料電池スタック内部の湿度および/または含水量の進展を求めることができる。燃料電池スタックの湿度および/または含水量は一般的に、燃料電池スタックに酸化剤として供給される空気の空気湿度に依存する。閉鎖空間内では一般的に、燃料電池スタックから吐出される水に起因して、閉鎖空間内の空気の空気湿度が上昇する。その結果、燃料電池スタックが閉鎖空間内で動作させられると、燃料電池スタックの湿度および/または含水量も上昇する。よって、燃料電池スタック内部の湿度の度合いに関する測定データを、燃料電池スタックが閉鎖空間内で動作させられるのか否かに対する指標と見なすことができる。さらに、湿度の度合いに関する測定データから、閉鎖空間内の空気の酸素含有量を推定することができ、特にその理由は、燃料電池スタックの動作期間が長くなるにつれて酸素含有量が低下し、燃料電池スタックの動作期間が長くなるにつれて空気湿度がそれ相応に上昇するからである。この場合、(吐出された水の凝縮が発生しなければ)空気湿度の度合いは、酸素含有量の低下に反比例して上昇する可能性がある。
【0031】
したがってこの方法の枠内で、一連の時点における測定データに基づき、燃料電池スタックの周囲における空気の空気湿度の上昇を検出することができる。このようにすれば、燃料電池スタックの周囲における空気の空気湿度が上昇したことが検出されたならば、燃料電池スタックの周囲における空気の酸素含有量が低下したと、確実に判定することができる。
【0032】
さらなる態様によれば、本明細書で説明する方法のうちの1つまたは複数を実施するように構成された装置について記述される。
【0033】
さらなる態様によれば、本明細書で説明する装置を含む道路走行自動車(特に自家用車またはトラックまたはバスまたはオートバイ)について記述される。
【0034】
さらなる態様によれば、ソフトウェア(SW)プログラムについて記述される。このソフトウェアプログラムを、プロセッサにおいて(例えば車両の制御装置において)実行されるようにし、それによって本明細書で説明する方法のうちの少なくとも1つを実行するように構成することができる。
【0035】
さらなる態様によれば、記憶媒体について記述される。この記憶媒体はソフトウェアプログラムを含むことができ、このソフトウェアプログラムは、プロセッサにおいて実行されるようにし、それによって本明細書で説明する方法のうちの少なくとも1つを実行するように構成されている。
【0036】
ここで留意されたいのは、本明細書に記載されている方法、装置およびシステムを、単独でも、本明細書に記載されている他の方法、装置およびシステムと組み合わせても、使用することができる、ということである。さらに、本明細書に記載されている方法、装置およびシステムのいかなる態様であっても、互いに多種多様に組み合わせることができる。特に、各請求項の特徴を互いに多種多様に組み合わせることができる。
【0037】
次に、本発明を実施例に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図3】燃料電池システムを動作させるための例示的な方法を示すフローチャートである。
【
図4】燃料電池システムを動作させるためのさらなる例示的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
冒頭で述べたように本明細書は、特に車両における、燃料電池システムの確実かつ安全な動作に取り組むものである。これに関連して
図1には、車両100の例示的な構成要素が示されている。特に
図1には、一般的に複数の燃料電池を含む燃料電池スタック101が示されている。燃料電池スタック101は、車両100の駆動モータを動作させるための電気エネルギーを生成するように構成されている。この目的で、燃料容器102から(特に圧力容器102から)燃料電池スタックへ、燃料121を供給することができる。
【0040】
燃料電池スタック101の燃料電池はアノードとカソードとを含み、これらはイオン選択性もしくはイオン浸透性のセパレータにより分離されている。アノードに燃料121が供給される。好ましい燃料は、水素、低分子アルコール、バイオ燃料、または液化天然ガスである。カソードに酸化剤122が供給される。好ましい酸化剤122は、空気、酸素および過酸化水素である。イオン選択性セパレータを例えば、プロトン交換膜(proton exchange membrane, PEM)として形成することができる。好ましくは、カチオン選択性の高分子電解質膜を使用することができる。かかる膜のための材料は例えば、Nafion(登録商標)、Flemion(登録商標)およびAciplex(登録商標)である。
【0041】
燃料電池スタック101の燃料電池において発生する反応生成物(特に水)を、オフガス123として1つまたは複数のオフガスダクトを介して、燃料電池スタック101から導出することができる。
【0042】
車両100はさらに、燃料電池スタック101を備えた燃料電池システムの動作を制御する装置110を含む。この目的で測定データ111を求めることができ、その際に測定データ111は、1つまたは複数の測定量の値を表すことができる。例示的な測定量は、
・燃料電池スタック101への燃料121および/または酸化剤122の体積流、
・燃料電池スタック101により生成された電力、
・個々の燃料電池内部の水の量および/または
・オフガス123中の未反応燃料121の量
である。
【0043】
装置110は、測定データ111に基づき燃料電池スタック101の1つまたは複数の動作パラメータ112を変更するように構成されている。例示的な動作パラメータ112は、
・燃料電池スタック101への燃料121および/または酸化剤122の体積流、
・(不活性ガスおよび/または凝縮物を排出する目的で)燃料121により燃料電池のアノードを洗浄する洗浄サイクルの期間、強度および/または頻度、この場合、強度は特に、アノードの洗浄に使用される燃料121の質量流を表すことができる、
・空気率、すなわち酸化剤122と燃料121との比、空気率を変更することにより、燃料電池スタック101の燃料電池のカソードにおける水の量を変化させることができる、および/または
・アノードおよび/またはカソードに供給されるガスの加湿および/または乾燥
である。
【0044】
かくして、装置110は測定データ111として、供給される酸化剤122(特に空気)の質量を(酸化剤触媒のパラメータを介して)求めることができる。さらに装置110は測定データ111として、(燃料電池スタック101のバルブ制御および/またはインジェクタの制御を介して)燃料121の消費を求めることができる。さらに装置110は測定データ111として、(特に電池電圧および作用する電流を介して)燃料電池スタック101の発生した電力を求めることができる。さらに、オフガス123中の未反応燃料121(特に水素)および/または酸素の量を、測定データ111として相応のセンサ機構を介して(例えばラムダセンサを介して)求めることができる。
【0045】
酸化剤122中の酸素含有量の変化(特に低下)を識別するために、装置110は測定データ111を使用することができる。例えばオフガス123中の未反応燃料121の量が(これ以外の条件が同じままであるときに)上昇したことは、酸化剤122中の酸素含有量が低下したことに対する指標である。特に、酸素含有量の変化(特に低下)を、オフガス123中で測定された空気率を介して識別することができる。
【0046】
上述のように、燃料電池スタック101の動作時に、オフガス123として一般的に水が生成される。したがって燃料電池スタック101の動作によって一般的に、特に酸素不足発生時もしくは閉鎖空間内での燃料電池スタック101の動作時に、燃料電池スタック101の周囲空気の空気湿度が上昇することになり、これによりいわば外部の再循環を介して、カソードに供給されるガスの空気湿度が上昇することになる。このため上昇した空気湿度によって一般的に、燃料電池の湿度が上昇することになる。燃料電池スタック101の電池内部の上昇した湿度を、測定データ111として捕捉することができる。
【0047】
燃料電池スタック101における燃料電池のアノードおよび/またはカソードの湿度を、それぞれ特定の目標値に合わせて調整するように、特に閉ループ制御するように、装置110を構成することができる。例えば、カソードの湿度が過度に低いことが識別されたならば、反応生成物から燃料電池のカソードへ水を再循環させることができる。択一的にまたは補足的に、アノードの湿度が過度に低いことが識別されたならば、アノードに供給されるガスの加湿を行うことができる。よって、水の再循環および/またはアノード加湿の程度および/または頻度に基づき、燃料電池スタック101における燃料電池の湿度の度合いを推定することができる。
【0048】
さらに、燃料電池スタック101における燃料電池の湿度の度合いが上昇したことから、燃料電池スタック101の周囲における空気の空気湿度が上昇したことを、ひいては周囲空気の酸素不足を、推定することができる。
【0049】
かくして、燃料電池スタック101の動作時に測定データ111および/または動作パラメータ112に基づき、酸素不足が発生したことを識別もしくは判定するように、装置110を構成することができる。さらに、識別された酸素不足に関する1つまたは複数の措置を講じるように、装置110を構成することができる。例示的な措置は、
・(音響的および/または光学的)警告指示の送出、
・燃料電池スタック101の周囲における通気および/または換気を増やすための1つまたは複数の措置、および/または
・燃料電池スタック101による酸素消費の節減、制限および/または終了。
【0050】
酸素不足が発生する可能性があるのは特に、燃料電池スタック101を備えた車両100が閉鎖空間200内、特に(比較的狭い)車庫内、に位置しているときである。
図2には、(閉鎖空間の例として)車庫200内にある、燃料電池スタック101を備えた例示的な車両100が示されている。車庫200は一般的に、比較的僅かなガス交換もしくは比較的僅かな換気回数221を生じさせる可能性がある。さらに車庫200は一般的に、車庫200の寸法211、212、213によってもたらされる比較的小さい容積Vを有する。
【0051】
車庫200内での停車を除外できない燃料電池スタック101の動作フェーズについて、車庫200内の酸素濃度を求めるように、装置110を構成することができる。その際に、車庫200の特定の換気回数221を前提とすることができる(例えばSAE, Society of Automotive Engineersに従って定義された、毎時0.03回の換気という換気回数221を有する車庫200)。
【0052】
したがって任意の時点において、(特に車庫200内の)燃料電池スタック101の周囲における酸素含有量に対する推定値を求めることができる。予め設定された酸素含有量閾値に達すると、またはそれを下回ると、上述の措置のうちの1つまたは複数を講じることができる。
【0053】
換気回数221が低下した閉鎖空間200内に車両100が位置しているのか否かを判定するように、装置110を構成することができる。この目的で例えば、車両100の車輪の運動を解析することができる。一般的な車庫寸法211とは相容れない(例えば10メートル以上の)距離を辿る車輪の運動を、車庫200内の停車が発生していないことに対する指標として考慮することができる。択一的にまたは補足的に、車両100が車庫200内に位置しているのか否かを判定する目的で、車両100の目下のポジションに関するポジションデータおよび/または地理情報(例えば建物および道路網に関するディジタルマップ情報)を考慮することができる。択一的にまたは補足的に、車両100が車庫200内に位置しているのか否かを判定する目的で、電磁信号の遮蔽および/または減衰を考慮することができる。択一的にまたは補足的に、車両100の周囲の画像データに基づき、車両100が車庫200内に位置しているのか否かを判定する目的で、車両100のカメラおよび画像処理システムを使用することができる。択一的にまたは補足的に、車両100のユーザの入力に基づき、車両100が車庫200内に位置しているのか否かを判定することができる。
【0054】
特に、換気回数221が低下した空間200内に車両100が位置していると判定されたならば、測定データ111に基づき、特に目下の燃料消費に基づき、目下の酸素消費を求めるように、装置110を構成することができる。その際に酸素と燃料121との比は、関与する反応の化学量論によって与えられており、特に燃料電池のケースでは
2 H2+O2→2 H2O
である。
【0055】
図4には、燃料電池スタック101の周囲空気における酸素含有量を求めるための例示的な方法400が示されている。ここでは、燃料121が(一般的に圧縮された形態で)容器102から一定の体積で供給される、ということを前提とすることができる。このため、(たとえ燃料121が消費されても)容器102の容積は一定のまま維持される、ということを前提とすることができる。
【0056】
ステップ401において、換気回数221が低下した空間200内に燃料電池スタック101が位置しているのか否か、を判定することができる。十分に多い換気回数221を有する周囲に燃料電池スタック101が位置していると判定されたならば、時点tでの酸素含有量に対する推定値O2含有量(t)として、一般的には21%である基本値が採用される(ステップ407)。
【0057】
他方、換気回数221が低下した空間200内に燃料電池スタック101が位置していると判定されたならば、期間Δtを有するタイムインターバル内にどのくらいの酸素が消費されたのか、を求めることができる。消費された酸素体積を、測定データ111に基づき求めることができる。特に、燃料121の消費された体積(すなわち期間Δtを有するタイムインターバル内でのH2消費)を求めることができる。さらに、燃料電池内の反応の化学量論に基づき、燃料121の量あたりどのくらいの酸素量が消費されるのか、を表す係数Fを求めることができる。次いで、係数Fと、期間Δtを有するタイムインターバル内のH2消費との積として、消費されたO2体積を求めることができる(ステップ402)。
【0058】
さらに換気回数221に基づき、タイムインターバルΔtの間にどのくらいの酸素が閉鎖空間200内に新たに流入したのか、を求めることができる。その際に一般的に、十分な酸素含有量を有する(例えば21%の基本値を有する)空気と、O2含有量(t)である低下した酸素含有量を有する空気との交換が行われる。よって、(21%の)基本値と、空間200内の酸素含有量の目下の推定値O2含有量(t)との差から、空気の体積単位あたりに供給される酸素量が得られる。
【0059】
全体として交換される空気体積は、閉鎖空間200の容積Vと、換気回数221と、タイムインターバルの期間Δtとに依存する。よって、
図4に示されている式(ステップ403を参照)に基づき、タイムインターバルΔt内に流入したO
2体積を求めることができる。
【0060】
次いで、ステップ404に示されている式に従い、タイムインターバル内に流入したO2体積と、タイムインターバル内に消費したO2体積との差に基づき、空間200内の酸素含有量の更新された推定値O2含有量(t+Δt)が得られる。
【0061】
次いで、更新された推定値O2含有量(t+Δt)を、酸素含有量閾値もしくはO2限界値と比較することができる(ステップ405)。さらに、酸素含有量閾値を下回ったときに、1つまたは複数の措置を実施することができ、その目的は特に、ユーザが危険に晒されるのを回避するためであり、かつ/または燃料電池スタック101の確実な動作を可能にするためである(ステップ406)。
【0062】
方法400の枠内で、閉鎖空間200内で燃料電池スタック101の動作時に発生した水蒸気が、ガス状の成分として留まっているのか、または凝縮により液相に移行したのか、を区別することができる。この目的で、特に空間200内において、燃料電池スタック101の周囲における温度を考慮することができる。択一的にまたは補足的に、生成された水の凝縮に作用を及ぼす可能性のある凝縮点および/または凝縮面を空間200が有するか否か、を考慮することができる。さらに、空間200の凝縮面の温度を求めることができる。択一的にまたは補足的に、水の露点表を考慮することができ、この表は、空気温度と相対空気湿度とに依存して露点を表すものであり、露点以上では凝縮面において水の凝縮が発生する。
【0063】
生成された水が(大部分は)ガス状の状態に留まっている、ということが求められたならば、水蒸気によって閉鎖空間200内のガスの体積が増加することになり、ひいては閉鎖空間200内が過剰圧力となる。他方、水蒸気の(大部分の)凝縮により体積が減少することになり、ひいては閉鎖空間200内が過小圧力となる。
【0064】
したがってオフガス123中に含まれている水蒸気の凝縮に関して、測定データ111を求めることができる。測定データ111は、
・空間200内の空気温度、
・空間200内の相対空気湿度、および/または
・空間200の1つまたは複数の凝縮面の温度および/またはサイズ
を表すことができる。
【0065】
次いで、測定データ111に基づき、空間200の外部周囲の圧力に対し相対的な空間200内部の圧力に関する圧力情報を求めることができる。特に、空間200内において、空間200の外部周囲に対し相対的に過小圧力が発生しているのか、過剰圧力が発生しているのか、または大きな圧力差が発生していないか、を求めることができる。次いで、圧力データに依存して、換気回数221を整合させることができる。例えば、圧力差が生じていなければ、例えば発生した水素の半分の物質量がガスとして、他の半分が液状凝縮物としてそれぞれ発生しているならば、一般的に最小限のガス交換もしくは比較的少ない換気回数221となる。他方、特に過小圧力であれば、一般的に換気回数221が増やされることになる。
【0066】
地理データを用いて(特に車両100の目下のポジションに基づき、ディジタルマップ情報をベースとして)、車両100の個々の停車場所の容積Vおよび/または換気回数221を求めるように、装置110を構成することができる。その際にディジタルマップ情報は、換気回数221が低下した空間200の容積および/または換気回数221ならびにポジションを表すことができる。
【0067】
図3には、燃料電池スタック101の動作の安全性および/または信頼性を高めるための、例示的な方法300のフローチャートが示されている。この方法300を、燃料電池スタック101の制御装置110によって実施することができる。
【0068】
方法300は、燃料電池スタック101の動作に関する測定データ111を一連の時点において求めるステップ301を含む。例えば周期的に(例えば0.1Hz、1Hzまたはそれよりも高い頻度で)、測定データ111を捕捉し評価することができる。
【0069】
これに加え方法300は、一連の時点における測定データ111に基づき、燃料電池スタック101の周囲における空気の酸素含有量が変化した、特に低下した、と判定するステップ302を含む。特に、測定データ111の経時的推移から、酸素含有量の変化を識別することができる。場合によっては、測定データ111の経時的推移から、燃料電池スタック101の動作に関する特性データに基づき、酸素含有量に対する推定値を求めることができる。この場合、特性データは、測定量の種々の値の組み合わせ(例えば空気122の質量流、燃料121の質量流、生成された電力、オフガス123中の未反応燃料121の量など)について、酸素含有量の種々の推定値を表すことができる。特性データを、事前に実験により求めることができる。
【0070】
好ましくは、酸素含有量に対して改善された推定を達成する目的で、特性データに関してそれぞれ異なる測定値が組み合わせられて処理される。この場合、部分的に非線形のパラメータ関係に基づき、例えばカルマンフィルタ、特にEKF(拡張カルマンフィルタ)およびUKF(無香料カルマンフィルタ)といった再帰的予測子修正子構造を使用することができる。測定量の種々の値の組み合わせについて酸素含有量の種々の推定値を表す特性データを提供する目的で、その他の近似法(ガウス和フィルタ、射影フィルタおよび直交フィルタ)またはシミュレーション(逐次モンテカルロ法など)を使用することもできる。
【0071】
これに加え方法300は、酸素含有量が変化したとステップ302において判定されたことに応答して、燃料電池スタック101の動作の安全性および/または信頼性を高めるための措置を講じるステップ303を含む。特に、警告指示を送出させることができ、かつ/または燃料電池スタック101の酸素消費を整合させることができる。
【0072】
本明細書で説明した態様によって、燃料電池スタック101の周囲の酸素含有量を効率的かつ正確な手法で求めることができる。したがって確実な手法で酸素不足を識別することができ、かつ燃料電池スタック101の動作の安全性、効率および/または信頼性を高めるための適切な措置を講じる、もしくは実施することができる。
【0073】
本発明は、図示された実施例に限定されるものではない。特に、説明および図面は、提案した方法、装置およびシステムの基本原理を具体的に示そうとしたものであるにすぎない、という点に留意されたい。