(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】複数の塞栓除去構造体を有する塞栓除去デバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 17/3207 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A61B17/3207
(21)【出願番号】P 2020570124
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 US2019037265
(87)【国際公開番号】W WO2019245913
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-05-23
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】595148888
【氏名又は名称】ストライカー コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Stryker Corporation
【住所又は居所原語表記】2825 Airview Boulevard Kalamazoo MI 49002 (US)
(73)【特許権者】
【識別番号】522162015
【氏名又は名称】ストライカー ヨーロピアン オペレーションズ ホールディングス リミテッド ライアビリティー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Stryker European Operations Holdings LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】グランドフィールド,ライアン,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】レイノフ,アレクサンダー
【審査官】菊地 康彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-535352(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0038447(US,A1)
【文献】特開2007-082953(JP,A)
【文献】特表2014-533131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3207
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送達カテーテルから血管内に放出されたときに、半径方向に拘束された構成から半径方向に拡張された構成に拡張するようにバイアスされた細長い塞栓除去デバイスであって、
前記塞栓除去デバイスの長手方向軸に沿って延びる第1の細長いスパイン部材と、
前記第1の細長いスパイン部材とほぼ平行に、前記塞栓除去デバイスの長手方向軸に沿って延びる第2の細長いスパイン部材と、
第1の複数の血栓係合構造体であって、当該第1の複数の血栓係合構造体のうちの各血栓係合構造体が、前記第1の細長いスパイン部材に連結された第1の端部と、前記第2の細長いスパイン部材に連結された第2の端部とを有する、第1の複数の血栓係合構造体と、
第2の複数の血栓係合構造体であって、当該第2の複数の血栓係合構造体のうちの各血栓係合構造体が、前記第1の複数の血栓係合構造体のうちの対応する血栓係合構造体の第1の端部が前記第1の細長いスパイン部材に連結された位置で、前記第1の細長いスパイン部材に連結された第1の端部と、前記第1の複数の血栓係合構造体のうちの対応する血栓係合構造体の第2の端部が前記第2の細長いスパイン部材に連結された位置で、前記第2の細長いスパイン部材に連結された第2の端部と有する、第2の複数の血栓係合構造体とを備え、
それぞれの血栓係合構造体は、弾力性があり、前記塞栓除去デバイスが血栓と並んで血管内で引き抜かれるときに、前記第1および第2の複数の血栓係合構造体のうちの一方の血栓係合構造体が血管の壁に接触して
撓み、それにより前記第1および第2の複数の血栓係合構造体のうちの他方の血栓係合構造体
に前記一方の血栓係合構造体が撓んだ方向にバイアス力を提供して、他方の血栓係合構造体が血栓と係合するように構成され、
前記血栓係合構造体の各々が、それぞれの曲線部分を含み、それら曲線部分が、前記第1の細長いスパイン部材から
第1および第2の細長いスパイン部材の間における血栓係合構造体の中央部分に、そして前記中央部分から前記第2の細長いスパイン部材に延び、
前記血栓係合構造体のそれぞれが、逆V字形/叉骨のような形態を有することを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記塞栓除去デバイスが半径方向に拡張した構成にあるときに、前記第1の複数の血栓係合構造体の中央部分が、前記塞栓除去デバイスの長手方向軸に沿って半径方向外側に延びる実質的に整列した第1の一連のピークを形成し、前記第2の複数の血栓係合構造体の中央部分が、前記塞栓除去デバイスの長手方向軸に沿って半径方向外側に延びる実質的に整列した第2の一連のピークを形成することを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記塞栓除去デバイスが半径方向に拡張された構成にあるときに、前記血栓係合構造体の中央部分が、前記塞栓除去デバイスの長手方向軸に対して鋭角で遠位方向に延びることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項4】
請求項2に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記第1の一連のピークが、前記第2の一連のピークから約180°周方向にオフセットされていることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項5】
請求項2に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記第1および第2の複数の血栓係合構造体の中央部分が、それぞれの血栓係合構造体の曲線部分から尖っていることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項6】
請求項1に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記血栓係合構造体の前記曲線部分が非円弧状であることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一項に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記第1の複数の血栓係合構造体の血栓係合構造体が、第2の複数の血栓係合構造体の血栓係合構造体と整列していることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
プッシャーワイヤをさらに備え、前記第1および第2の細長いスパイン部材の各々が、前記プッシャーワイヤの遠位端部分に連結されていることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか一項に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記第1および第2の細長いスパイン部材が、
伸縮性のない材料で構成されており、前記塞栓除去デバイスが血管内で近位方向に移動したときに、前記第1および第2の複数の血栓係合構造体がそれぞれ、前記第1および第2の細長いスパイン部材と同時に近位方向に移動して、
前記血栓係合構造体が前記血栓と係合するように構成されていることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記塞栓除去デバイスが送達カテーテルまたは血管内で移動、前進または後退するときに、前記第1および第2の細長いスパイン部材が、前記塞栓除去デバイスを曲げて長手方向の
中間軸に沿って塞栓除去デバイスを整列させるように構成されていることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記第1および第2の細長いスパイン部材による前記塞栓除去デバイスの整列によって、前記塞栓除去デバイスが血栓に近接して血管内に展開されたときに、それぞれの血栓係合構造体を血栓と
位置を合わせることが可能となっていることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の塞栓除去デバイスにおいて、
前記塞栓除去デバイスが近位方向に並進されて血管から血栓を除去するときに、それぞれの血栓係合構造体と血栓との
位置合わせが維持されることを特徴とする塞栓除去デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の発明は、概して、血管系から塞栓性閉塞物を除去するように構成された医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
血栓、塞栓または血塊が人の血管系に発生することがある。ときには、そのような血栓が害を及ぼすことなく血流に溶解することもある。しかしながら、またあるときは、そのような血栓が神経血管の内腔(例えば、頸動脈の下流)に留まり、そこで血液の流れを部分的または完全に塞ぐことがある。これは虚血性事象と呼ばれる。部分的または完全に閉塞した血管が、脳、肺または心臓などの傷付きやすい組織に血液を供給すると、深刻な組織損傷が生じる可能性がある。また、そのような虚血性事象は、アテローム性動脈硬化症、すなわち、血管を狭くし、かつ/または蛇行させる血管疾患によって、悪化することもある。血管の狭窄および/または蛇行の増加は、状況によっては、アテローム性動脈硬化性プラークを形成して、更なる合併症を引き起こす可能性もある。
【0003】
公知の塞栓除去デバイスは、血管から血栓またはその他の異物を除去するために様々な用途で使用されている。そのようなデバイスには、引用により全体が本明細書に援用されるGrandfieldの米国特許第8,529,596号に例示および記載されるような円筒形骨格の塞栓除去デバイスが含まれる。さらに、塞栓除去デバイスは、複数の足場を含むことができ、例えば、外側に係合する「ステントバスケット」内に同心円状に配置された内側円筒形足場を有するか、または、引用により全体が本明細書に援用される米国特許第8,852,205号に例示および記載されているように、隣接して配置された複数の内側円筒形足場を有することができる。
【0004】
図1Aおよび
図1Bは、Stryker社のNeurovascular部門(http://www.stryker.com/en-us/products/NewurovascularIntervention/index.htm)により製造販売されている例示的な先行技術の塞栓除去デバイス12を示している。
図1Aは塞栓除去デバイス12を二次元の平面図で示し、
図1Bは当該デバイス12の三次元の拡張した管状形態を示している。塞栓除去デバイス12は、自己拡張可能で生体適合性の形状記憶材料、例えばニチノールで構成されている。塞栓除去デバイス12は、好ましくは、形状記憶材料のチューブまたはシートをレーザカットすることによって製造される。塞栓除去デバイス12は、当該デバイス12から近位方向に延びる細長い可撓性ワイヤ40に連結され、このワイヤ40が、血管内の標的部位にシースおよび/またはカテーテルを介して塞栓除去デバイス12を押し込み、かつ引っ張るように構成されている。
【0005】
図1Aに示すように、塞栓除去デバイス12は、近位端部分14と、本体部分16と、遠位端部分18とを含み、本体部分が、複数の長手方向波状要素24(例えば、ワイヤ、ストラット)を含み、隣接する波状要素が、互いに位相がずれており、当該デバイスのそれぞれの近位端部分と遠位端部分の間に延在する複数の斜めに配置されたセル構造26を形成するように連結されている。塞栓除去デバイス12の本体部分16および遠位端部分18のセル構造26は、デバイス12の長手方向軸30の周囲に連続的にかつ周方向に延在している(
図1Aおよび
図1B)。
【0006】
特に、近位端部分14のセル構造26は、デバイス12の長手方向軸30の周りを周方向に延びているとはいえない。本体部分16のセル構造26の寸法および材料特性は、十分な半径方向の力(例えば、本体部分の外径が1.0mm~1.5mmの場合に、単位長さ当たりの半径方向の力が0.005N/mm~0.100N/mm、好ましくは0.040N/mm~0.080N/mm)および接触相互作用をもたらし、それにより、患者から塞栓性閉塞物を部分的または完全に除去すべく、セル構造26および/または要素24を血管系内に存在する塞栓性閉塞物と係合させるように選択されている。デバイス12の斜めに配置されたセル構造26の位相のずれた構成は、要素24が閉塞物と係合し、かつ/または、環状または対称的にではなく、
図2に示すように、螺旋状または非対称的に血管壁と接触するように、本体部分16に沿って半径方向の力を分散させることを可能にする。
【0007】
図1Bに最もよく示されているように、塞栓除去デバイス12は、約32ミリメートルの全体長さL1を有し、本体部分16の長さL2が約20ミリメートルである。通常、本体部分16の長さは、近位端部分14の長さの約2.5倍~約3.5倍である。
【0008】
図2は、塞栓性閉塞物または血栓75を捕捉するために患者の蛇行する血管構造の標的部位に配置された
図1Aおよび
図1Bの塞栓除去デバイス12を示している。塞栓除去デバイス12が送達カテーテル80内に配置されるときなど、未拡張の形態または半径方向に圧縮された形態(図示省略)では、塞栓除去デバイス12は0.4~0.7ミリメートルの未拡張外径(UOD)を有する。半径方向に拡張された形態(
図1Bおよび
図2)では、塞栓除去デバイス12は、2.5~5.0ミリメートルの拡張外径(EOD)を有する。塞栓除去デバイス12は、十分な半径方向の力および接触相互作用をもたらし、それにより、ストラット要素24および/またはセル構造26が、血管70内に位置する塞栓性閉塞物75と係合し、閉塞物を捕らえ、封入し、捕捉し、挟み込み、かつ/または閉じ込め、患者からの塞栓性閉塞物75の除去を可能にする。完全に拡張した形態における本体部分16の直径は、約4.0ミリメートルであり、セルパターン、要素24の寸法および材料は、本体部分の直径が1.0ミリメートル~1.5ミリメートルに減少したときに0.040N/mm~0.050N/mmの半径方向の力を生じるように選択される。セルパターン26、ストラット24の寸法および材料は、本体部分16の直径が3.0ミリメートルに減少したときに、0.010N/mm~0.035N/mmの半径方向の力を生成するように選択される。
【0009】
塞栓除去デバイス12の製造に使用される技術にかかわらず、ストラット要素24を相互に接続する方法が、デバイスの長手方向および半径方向の剛性および柔軟性を決定する。血栓または塞栓性閉塞物75と係合するのに必要な半径方向の力を提供するには、半径方向の剛性が必要であるが、標的部位への送達のためにデバイス12の半径方向の圧縮を容易にするには、半径方向の柔軟性が必要である。血管70から係合した血栓または塞栓性閉塞物75を引き出すには、長手方向の剛性が必要であるが、(例えば、蛇行する血管系を介した)デバイス12の送達を容易にするには、長手方向の柔軟性が必要である。塞栓除去デバイス12のパターンは、典型的には、デバイス12の長手方向および半径方向の剛性と柔軟性との間の最適なバランスを維持するように設計される。しかしながら、特定の用途では、塞栓除去デバイス12を血管70内に展開した後に、デバイス12が引き出しまたは取り出しのために張力/力を受けると、デバイス12、特に本体部分16が、伸びて、上述した非拡張外形(UOD)(例えば、0.4~0.7ミリメートル)と同様の、より小さい外形または外径(OD)を形成しやすい。
【0010】
図3Aは、カテーテル80よりも遠位側に位置する血管70内に配置された、より小さい外形/ODを有する
図1A、
図1Bおよび
図2の塞栓除去デバイス12を示している。デバイス12の伸びおよびより小さい外形/ODによって、
図3Aおよび
図3C~
図3Gに示すように、塞栓性閉塞物75と係合することなく、または塞栓性閉塞物を捕捉することなく、閉塞物75を通り過ぎてデバイス12の引き抜きが生じる可能性がある。
図3B~
図3Gは、塞栓性閉塞物75が内部にある内腔72を有する血管70の断面図である。血管の内腔72から塞栓性閉塞物75を除去するための塞栓摘出術では、送達カテーテル80の遠位部分が閉塞物75に隣接する標的部位に配置されるまで、
図3Cに示すように、半径方向に圧縮された塞栓除去デバイス12がカテーテル80内に配置された状態で、カテーテル80が内腔72を通って進められる。その後、カテーテル80から血管の内腔72内にデバイス12を展開するために、塞栓除去デバイス12がカテーテル80に対して遠位方向に押し込まれるか、あるいはカテーテル80が塞栓除去デバイス12(またはそれぞれの一部)に対して近位方向に引き込まれ、それにより、半径方向の拘束から解放された塞栓除去デバイス12が血管の内腔72内で半径方向に拡張して、閉塞物75と係合し、閉塞物を捕獲および捕捉することが可能となる。
【0011】
しかしながら、特定の場合(例えば、硬質/高密度の塞栓性閉塞物75)には、塞栓除去デバイス12の半径方向の拡張力33が、
図3Dに示すように、塞栓性閉塞物75の硬さおよび抵抗力36に打ち勝ってデバイス12のストラットを血栓75内に進入させて血栓と一体化させデバイス12の外方向の拡張を最小限に抑えるのに十分ではなく、あるいは
図3Eに示すように、デバイス12が閉塞物75の周囲に延びて最も抵抗の少ない経路を通るようになる。他の実施形態では、半径方向の拡張力33が作用して塞栓除去デバイス12を拡張させるときに、押す力31および引く力32がデバイス12の拡張中に作用および反応し、その結果、
図3Fに示すように、塞栓性閉塞物75の抵抗力36に打ち勝つのに十分な力が向けられないか、または生成されなくなる。通常は、デバイス12のそれらの力31/32は、
図3Gに示すように、閉塞物75へのデバイス12のストラットの部分的または不十分な進入および/または一体化を可能にする。望ましくない最小限に拡張された外形/OD(
図3D)、閉塞物75の周りに延びる細長い外形/OD(
図3E)、または閉塞物75と最小限に係合するデバイス12の適切でない拡張(
図3Fおよび
図3G)においては、塞栓性閉塞物75へのデバイス12の進入、一体化、係合および/または捕捉が全く生じないか、または最小限に抑えられて、デバイス12が引き抜かれたときに閉塞物75を捕捉および/または除去することなく、塞栓性閉塞物75を通過または後に残すことになり易い。
【発明の概要】
【0012】
開示の発明の実施形態は、送達カテーテルから血管内に放出されたときに、半径方向に拘束された構成から半径方向に拡張された構成に拡張するようにバイアスされた塞栓除去デバイスを対象としており、この塞栓除去デバイスは、塞栓除去デバイスの長手方向軸に沿って延びる実質的に平行な関係で配置された第1および第2の細長いスパイン部材(spine members)と、第1の細長いスパイン部材に連結された第1の端部、および第2の細長いスパイン部材に連結された第2の端部を有する第1の複数の血栓係合構造体と、第2の複数の血栓係合構造体であって、当該第2の複数の血栓係合構造体のうちの各血栓係合構造体が、第1の複数の血栓係合構造体のうちの対応する血栓係合構造体の第1の端部が第1の細長いスパイン部材に連結された位置で第1の細長いスパイン部材に連結された第1の端部と、第1の複数の血栓係合構造体のうちの対応する血栓係合構造体の第2の端部が第2の細長いスパイン部材に連結された位置で第2の細長いスパイン部材に連結された第2の端部と有する、第2の複数の血栓係合構造体とを含み、第1の複数の血栓係合構造体および第2の複数の血栓係合構造体のそれぞれの血栓係合構造体は、弾力性があり、塞栓除去デバイスが血栓と並んで血管内で引き抜かれるときに、第1および第2の複数の血栓係合構造体のうちの一方の血栓係合構造体が血管の壁に接触して圧縮し、それにより第1および第2の複数の血栓係合構造体のうちの他方の血栓係合構造体と血栓との係合を容易にするバイアス力を提供するように構成されている。
【0013】
一実施形態では、第1および第2の複数の血栓係合構造体の各血栓係合構造体の中央部分が、逆V字形/叉骨のような形態を有する。非限定的な例として、塞栓除去デバイスが半径方向に拡張した構成にあるときに、第1の複数の血栓係合構造体の中央部分が、塞栓除去デバイスの長手方向軸に沿って半径方向外側に延びる実質的に整列した第1の一連のピークを形成することができ、第2の複数の血栓係合構造体の中央部分が、塞栓除去デバイスの長手方向軸に沿って半径方向外側に延びる実質的に整列した第2の一連のピークを形成することができ、第1の一連のピークが、第2の一連のピークから約180°周方向にオフセットされている。そのようないくつかの実施形態では、ピークが顎のような形状であってもよい。
【0014】
様々な実施形態では、第1および第2の複数の血栓係合構造体の血栓係合構造体が、円弧状または非円弧状の形態を有することができる。
【0015】
様々な実施形態では、第1の複数の血栓係合構造体の血栓係合構造体が、第2の複数の血栓係合構造体の血栓係合構造体と整列していてもよい。
【0016】
様々な実施形態では、塞栓除去デバイスがプッシャーワイヤを含み、第1および第2の細長いスパイン部材の各々が、プッシャーワイヤの遠位端部分に連結されている。
【0017】
様々な実施形態では、第1および第2の細長いスパイン部材が、伸縮抵抗性材料で構成されており、塞栓除去デバイスが血管内で近位方向に移動したときに、第1および第2の複数の血栓係合構造体がそれぞれ、第1および第2の細長いスパイン部材と同時に近位方向に移動して、血栓係合構造体と血栓との係合を容易にするように構成されている。
【0018】
様々な実施形態では、デバイスが送達カテーテルまたは血管内で移動、前進または後退するときに、第1および第2の細長いスパイン部材が、塞栓除去デバイスを曲げて長手方向の中立軸に沿って塞栓除去デバイスを整列させるように構成されており、好ましくは、第1および第2の細長いスパイン部材による塞栓除去デバイスの整列によって、塞栓除去デバイスが血栓に近接して血管内に展開されたときに、それぞれの血栓係合構造体を血栓と整列させることが可能となっている。好ましくは、デバイスが近位方向に並進されて血管から血栓を除去するときに、それぞれの血栓係合構造体と血栓との整列が維持される。
【0019】
開示の発明の実施形態のその他のおよび更なる態様および特徴は、添付図面を考慮して、次の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】
図2は、血管内の塞栓性閉塞物を捕捉している間の
図1Aおよび
図1Bに示す先行技術の塞栓除去装置の断面図である。
【
図4】
図4は、開示の発明の一実施形態に従って構成された例示的な塞栓除去デバイスの平断面図である。
【
図5】
図5は、開示の発明に係る
図4のデバイスの斜視図である。
【
図6】
図6は、開示の発明に係る
図4のデバイスの斜視図である。
【
図7】
図7は、開示の発明に係る
図4のデバイスの斜視図である。
【
図8】
図8は、
図4~
図7の塞栓除去デバイスと塞栓性閉塞物との一体化を描いた例示的な斜視図である。
【
図9】
図9は、開示の発明の別の実施形態に従って構成された例示的な塞栓除去デバイスの平断面図である。
【
図13】
図13は、
図9のデバイスの開示の発明の代替的な実施形態に従って構成された例示的な塞栓除去デバイスであり、半径方向に拡張された構成を示している。
【
図14】
図14は、
図9のデバイスの開示の発明の代替的な実施形態に従って構成された例示的な塞栓除去デバイスであり、半径方向に拡張された構成を示している。
【
図17】
図17は、開示の発明に係る、吸引カテーテルを用いた
図4~
図7のデバイスの使用を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、開示の発明の別の実施形態に従って構成された例示的な塞栓除去デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の定義された用語については、本明細書のその他の箇所または特許請求の範囲に異なる定義が与えられない限りは、それら定義が適用されるものとする。
【0022】
本明細書において、全ての数値は、明示されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾されるものとする。「約」という用語は、一般に、記載の値に同等と当業者が考える数の範囲(すなわち、同じ作用または結果を有する範囲)を指している。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に端数処理された数を含むことができる。終点による数的範囲の記述は、その範囲内のすべての数を含む(例えば、1~5は、1,1.5,2,2.75,3,3.80,4および5を含む)。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「a」、「an」および「the」は、それ以外の明示が無い限りは、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において、「or」(または)という用語は、それ以外の明示が無い限りは、「and/or」(および/または)を含む意味で一般に用いられる。
【0023】
以下に、図面を参照しながら、開示の発明の様々な実施形態を説明する。なお、図面は必ずしも同じ縮尺では描かれておらず、選択要素の相対的な縮尺は明確化のために誇張されており、また、同様の構造または機能の構成要素は、図面全体を通じて同様の符号により表されていることに留意されたい。また、図面は、実施形態の説明を容易にすることのみを目的としており、本発明の包括的な記述または発明の範囲の限定を意図したものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物のみによって規定されることにも留意されたい。さらに、開示の発明の例示的な実施形態は、開示の態様または利点すべてを含む必要はない。開示の発明の特定の実施形態とともに記載される態様または利点は、その実施形態に必ずしも限定されるものではなく、その他の実施形態において、そのように記載されていなくとも、実施し得るものである。
【0024】
図4~
図7は、開示の発明の一実施形態に従って構成された細長い塞栓除去デバイス100を示している。
図4は、塞栓除去デバイス100を、表面上に平らに置かれているかのような二次元平面図で示している。塞栓除去デバイス100は、単一の構成要素(例えば、フラットシートまたは円筒のレーザカット、管状構造、3D印刷、押出成形など)から形成することができ、あるいは、溶接、接合または他の方法で互いに結合された別個の構成要素を含むことができる。単一の構成要素から形成される場合のデバイスの非限定的な例として、
図4の二次元平面図は、カットパターンとして使用することができ、例えば、管状構造体の上および/または周囲に上記パターンを置いて、上記パターンを管状構造体にレーザカットすることにより、塞栓除去デバイス100を製造することができる。さらに、本明細書で使用される場合、「結合された」という用語は、直接または間接的に連結され、固定され、または別の方法で接続され得る1または複数の構成要素を指すことができる。塞栓除去デバイス100は、自己拡張材料および/または形状記憶材料、例えばニチノール、または他の適切な材料またはその組合せ(例えば、ステンレス鋼、チタン、白金、ニッケル、タンタル、クロムコバルト合金など)を含む。塞栓除去デバイス100は、ワイヤ、ストラット、ワイヤの束、drawn-filled tubesなどから構成されるものであってもよい。塞栓除去デバイス100は、放射性不透過性マーカーを含むようにしても、あるいは放射性不透過性材料の層で被覆するようにしてもよい。
【0025】
図4に示すように、塞栓除去デバイス100は、近位部分144と、遠位部分150と、それらの間に延びる長手方向軸130と含む。塞栓除去デバイス100は、長手方向軸130に沿って延びる第1の細長いスパイン部材110と、長手方向軸130に沿って延び、第1の細長いスパイン部材110とほぼ平行に配置された第2の細長いスパイン部材120とを有する。塞栓除去デバイス100は、第1の複数の血栓係合構造体170を有し、第1の複数の血栓係合構造体170のうちの各血栓係合構造体170が、第1の細長いスパイン部材110に連結された第1の端部172と、第2の細長いスパイン部材120に連結された第2の端部174とを有する。塞栓除去デバイス100は、第2の複数の血栓係合構造体180をさらに有し、第2の複数の血栓係合構造体のうちの各血栓係合構造体180は、第1の複数の血栓係合構造体のうちの対応する血栓係合構造体170の第1の端部172が第1の細長いスパイン部材100に連結された位置で第1の細長いスパイン部材110に連結された第1の端部182と、第1の複数の血栓係合構造体170のうちの対応する血栓係合構造体の第2の端部174が第2の細長いスパイン部材120に連結された位置で第2の細長いスパイン部材120に連結された第2の端部184とを有している。
【0026】
図4の実施形態では、第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120は、それぞれ、約32ミリメートルの全長L4を有し、約30ミリメートルの動作部分長さL5と、近位端部分L6とを含む。スパイン部材110、120の動作部分長さL5は、第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造体180を含む。第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120は、それぞれの長さL4に沿って実質的に同じ質量(例えば、幅および/または厚さ)を有する適当な伸縮抵抗性材料で構成されている。いくつかの実施形態では、第1の細長いスパイン部材110および/または第2の細長いスパイン部材120のそれぞれの長さL4に沿った質量(例えば、幅および/または厚さ)が変化するものであってもよい。例えば、第1の細長いスパイン部材110および/または第2の細長いスパイン部材120は、塞栓除去デバイス100の遠位部分150の周りの幅および/または厚さと比較して、塞栓除去デバイス100の近位部分144の周りの方が幅および/または厚さが大きい。さらに、第1の細長いスパイン部材110および/または第2の細長いスパイン部材120のそれぞれの長さL4に沿った断面は、円形、楕円形、正方形または任意の他の適切な断面形状またはそれらの組合せを含むことができる。近位端部分L6は、
図5~
図8に示すように、互いに結合されたときにアンテナ115を形成する第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120のそれぞれの近位端を含む。近位端部分L6は、約0.1~1.0ミリメートルの長さである。
【0027】
非限定的な例示として、
図4に示すように、塞栓除去デバイス100は、第1の複数の血栓係合構造体170の血栓係合構造体170と、第2の複数の血栓係合構造体180の血栓係合構造体180とを含む。しかしながら、第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造体180は、5~45個の血栓係合構造体を有し、それらが、長さL5に沿って延びるか、またはそれぞれの第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120に連結されている。血栓係合構造体170および/または180のうちの1または複数の長さに沿った断面は、連続した形態を含むか、またはそれぞれの長さに沿って変化するものであってもよい。例えば、血栓係合構造体170の1つの断面は、第1の部分では円形であってもよく、第2の部分では楕円形であってもよい(図示省略)。さらに、血栓係合構造体170および/または180のうちの1または複数の長さに沿った断面は、円形、楕円形、正方形または他の任意の適切な断面形態またはそれらの組合せを含むことができる。
【0028】
第1の複数の血栓係合構造体170の各々は、
図4に示すように、逆V字形/叉骨のような形態を有し、それぞれの曲線領域173と、その間の尖った領域175とを有する。曲線領域173の各々は、血栓係合構造体170の各々の第1の端部172または第2の端部174で終端となる。さらに、第2の複数の血栓係合構造体180の各々は、それぞれの曲線領域183を有し、
図5~
図7に示すように、
図4の塞栓除去デバイス100の二次元平面図が三次元形態に形成された場合に、曲線領域183が(例えば、はんだ、溶接、接着または他の適切な連結方法で)互いに結合されて、それぞれの尖った領域185を形成するようになっている。第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造体180の逆V字形/叉骨のような形態は、後述するように、第2の細長いスパイン部材120が第1の細長いスパイン部材110に対して実質的に平行となるように、第2の細長いスパイン部材120の配置を補助、許容または維持する。さらに、塞栓除去デバイス100は、第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120の実質的に平行な配置を補助、許容または維持するように構成された第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造体180の代替的な形状および他の好適な形態を有することができることを理解されたい。
【0029】
図5~
図7は、デバイス拡張構成の斜視三次元図で
図4の塞栓除去デバイス100を示している。
図5は、拡張構成の斜視側面図で塞栓除去デバイス100を示している。
図6および
図7は、拡張構成の更なる斜視図で塞栓除去デバイス100を示しており、例えば、
図6に示すように、第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120が3Dデカルト座標系の同一平面に配置された塞栓除去デバイスを示している。
【0030】
塞栓除去デバイス100は、近位端部分L6(
図4)にアンテナ115(
図5~
図8)を備える。アンテナ115は、はんだ、溶接、接着または他の適切な連結方法によって一緒に結合された第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120のそれぞれの近位端部によって形成されている。アンテナ115は、塞栓除去デバイス100から近位方向に延びる細長いプッシャーワイヤ140にさらに結合されている。アンテナ115は、はんだ、溶接、接着または他の適切な連結方法によってプッシャーワイヤ140に結合されている。プッシャーワイヤ140は、シースおよび/またはカテーテルを介して、血管70(
図8)内の標的部位に塞栓除去デバイス100を前進させ、引き抜くように構成されている。塞栓除去デバイス100は、シースおよび/またはカテーテルを介して並進される送達拘束構成(図示省略)と、塞栓除去デバイス100が半径方向に拘束されていないときの展開拡張構成(
図5~
図7)とを含む。
【0031】
さらに、
図5~
図7に示すように、それぞれの第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120に対する第1の複数の血栓係合構造体170の連結は、それぞれの第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120に対する第2の複数の血栓係合構造体180の連結に対して対称的に配置されており、尖った領域175、185が、互いに対して外向きに広がっている。塞栓除去デバイス100の拡張構成では、
図5~
図7に示すように、対向する逆V字形/叉骨のような形態を有する、対称的に配置された第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造体180が、デバイス100の長さL5に沿って、複数の「顎状」構造体190を規定し、輪郭を描き、または形作る。それぞれの第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造体180の尖った領域175、185は遠位方向を向き、その結果、「顎状」構造体190の各々が塞栓除去デバイス100の遠位部分150を向いて、カテーテルのルーメン内にデバイス100を再び納めることが可能となっている。
【0032】
塞栓除去デバイス100の第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の複数の血栓係合構造体180のそれぞれの血栓係合構造体の対称性により、デバイスが血栓75を有する血管70内で拡張するときに、デバイス100は、
図19に示すように、複数の血栓係合構造体180のうちの1つが血管70の壁71または内面に対して及ぼす力によって、それ自体を曲がりの中立軸上に向ける。さらに、塞栓除去デバイス100の対称性により、第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120は、カテーテルまたは血管を介してデバイス100が並進(前進または後退)するときに、デバイス100を曲げて中立軸に沿って整列させる傾向がある。第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120が曲がってデバイス100の中立軸に整列しようとする傾向により(
図19)、デバイス100が展開されたときに、塞栓除去デバイス100の顎状の構造体190と塞栓性閉塞物75との整列を可能にするか、許容するか、または確実にし、その結果、第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120が閉塞物に対して横方向に配置される(
図8および
図20C~
図20D)。
【0033】
図8および
図20A~
図20Dは、開示の発明に係る塞栓除去デバイス100の例示的な使用を示している。
図20A~
図20Dは、血管70の内腔72内に配置された塞栓除去デバイス100の例示的な使用を示す断面図である。塞栓除去デバイス100が送達カテーテル80内に配置されているとき(
図20Aおよび
図20B)のような、非拡張構成または放射状に圧縮された構成では、塞栓除去デバイス100は、0.4~0.7ミリメートルの非拡張外径(UOD)を有している。放射状に拡張された構成(
図5~
図8および
図20D)では、塞栓除去デバイス100は、1.5~10ミリメートルの拡張外径(EOD)を備える。
図8は、内腔72を有する血管70が、その中に塞栓性閉塞物75を有し、塞栓除去デバイス100が閉塞物/血栓75に係合している様子を示す斜視図である。
図4~
図8の塞栓除去デバイス100の「顎状」構造体190を形成する第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造数体180のそれぞれの血栓係合構造体は、弾力性があり、塞栓除去デバイス100が血栓75と並んで血管70内で引き抜かれたときに、第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造数体180のうちの一方が血管の壁71に接触して圧縮し、後述するように、第1の複数の血栓係合構造体170および第2の複数の血栓係合構造数体180のうちの他方が血栓75と係合するのを容易にするバイアス力を提供するように構成されている
【0034】
図20Bは、送達カテーテル80内に配置された塞栓除去デバイス100を図示しており、カテーテル80が、塞栓性閉塞物/血栓75に隣接して配置されている。塞栓除去デバイス100がカテーテル80の外に進み、かつ/またはカテーテル80がデバイス100(または各々の一部)に対して相対的に近位方向に血管70内に引き出されると(
図20C)、それぞれの第1の細長いスパイン部材110および第2の細長いスパイン部材120は、「顎状」構造体190が放射状に拡張するように構成されている間に、(
図20Cの矢印a、bによって示されるように)外向きに並進するように構成されている。例示的な
図20Cおよび
図20Dに示すように、「顎状」構造体190の半径方向の拡張により、第1の複数の血栓係合構造体170が血管の壁71に接触して圧縮し、それにより、第2の複数の血栓係合構造体180が塞栓性閉塞物/血栓75に係合するのを容易にするようなバイアス力が提供される。さらに、血管70の壁71に対して複数の血栓係合構造体180が及ぼす押圧力は、第1のスパイン部材110および第2のスパイン部材120が血栓75を延ばすか、または包み込むことを可能にする一方で、他方の複数の血栓係合構造体170が血栓75を係合し、捕え、一体化し、捕捉し、かつ/または取り込むことを可能にする(
図20D)。デバイス100が拘束構成から拡張するとき、塞栓除去デバイス100のそれぞれの「顎状」構造体190は、十分な外向きおよび/または半径方向の力(例えば、0.005N/mm~0.10N/mmの単位長さあたりの半径方向の力、好ましくは、本体部分の外径が1.0mm~1.5mmの場合、0.040N/mm~0.080N/mmの単位長さあたりの半径方向の力、より好ましくは、本体部分の直径が約3.0mmの場合、0.010N/mm~0.035N/mmの単位長さあたりの半径方向の力)を発生させて、血管系内の閉塞物を捕え、係合し、かつ/または他の方法で捕捉することができる。
【0035】
図9~
図12は、開示の本発明の他の実施形態に従って構成された塞栓除去デバイス200を示している。
図4~
図8のデバイス100と同様に、塞栓除去デバイス200は、前述したように、単一の構成要素から形成されるか、または溶接、接合または他の方法で互いに結合された別個の構成要素を含むことができる。単一の構成要素で形成される場合のデバイスの非限定的な例を挙げると、
図9の二次元平面図は、カットパターンとして使用することができ、例えば、管状構造体の上および/または周囲に上記パターンを置いて、上記パターンを管状構造体にレーザカットすることにより、塞栓除去デバイス200を製造することができる。塞栓除去デバイス200は、ニチノールのような自己拡張性および/または形状記憶材料、または他の適切な材料、またはそれらの組合せを含み、さらに送達拘束構成および展開拡張構成(
図9~
図12)を含む。
【0036】
図4~
図8の塞栓除去デバイス100と同様に、
図9~
図12の塞栓除去デバイス200は、長手方向軸230に沿って延びる第1の細長いスパイン部材210と、長手方向軸230に沿って延び、第1の細長いスパイン部材110と実質的に平行に配置された第2の細長いスパイン部材220とを備える。塞栓除去デバイス200は、第1の複数の血栓係合構造体270を有し、第1の複数の血栓係合構造体270の各血栓係合構造体270は、第1の細長いスパイン部材210に連結された第1の端部272と、第2の細長いスパイン部材220に連結された第2の端部274とを有する。塞栓デバイス200は、第2の複数の血栓係合構造体280をさらに有し、第2の複数の血栓係合構造体の各血栓係合構造体280は、第1の複数の血栓係合構造体の対応する血栓係合構造体270の第1の端部272が第1の細長いスパイン部材200に連結された位置で第1の細長いスパイン部材210に連結された第1の端部282と、第1の複数の血栓係合構造体の対応する血栓係合構造体270の第2の端部274が第2の細長いスパイン部材220に連結された位置で第2の細長いスパイン部材220に連結された第2の端部284とを有する。
【0037】
図9~
図12の塞栓除去デバイス200の第1の細長いスパイン部材210および第2の細長いスパイン部材220の各々は、約32ミリメートルの全長L8を有し、約30ミリメートルの動作部分の長さL9と、近位端部分長さL10とを有する。スパイン部材210、220の動作部分長さL9は、第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280を含む。近位端部分の長さL10は、アンテナ215を形成する、第1の細長いスパイン部材210および第2の細長いスパイン部材220の結合されたそれぞれの近位端を含む。近位端部分L10は、約0.1~1.0ミリメートルである。第1の細長いスパイン部材210および第2の細長いスパイン部材220は、それぞれの長さL8に沿って実質的に同じ質量(例えば、幅および/または厚さ)を有する適当な伸縮抵抗性材料で構成されている。いくつかの実施形態では、第1の細長いスパイン部材210および/または第2の細長いスパイン部材220のそれぞれの長さL8に沿った質量(例えば、幅および/または厚さ)は、前述したスパイン部材110、120と同様に、変化するものであってもよい。
【0038】
非限定的な例示として、
図9に示すように、塞栓除去デバイス200は、第1の複数の血栓係合構造体270における血栓係合構造体270と、第2の複数の血栓係合構造体280における血栓係合構造体280とを備える。しかしながら、第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280は、長さL9に沿って延びるか、またはそれぞれの第1の細長いスパイン部材210および第2の細長いスパイン部材220に連結される、5個(
図12)~45個(図示省略)の血栓係合構造体を有し得ることを理解されたい。
図9~
図12の実施形態では、第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280の各々は、
図4~
図8の実施形態と比較して、より多くの構造体を塞栓除去デバイス内に含むように、それぞれに関して密接に配置されている。血栓係合構造体270および/または280のうちの1または複数の長さに沿った断面は、連続的な構成を含むようにしても、またはそれぞれの長さに沿って変化するものであってもよい。例えば、血栓係合構造体270の1つの断面は、第1の部分では円形で、第2の部分では楕円形であってもよい(図示省略)。さらに、血栓係合構造体270および/または280のうちの1または複数の長さに沿った断面は、円形、楕円形、正方形または他の任意の適切な断面形態またはそれらの組合せを含むことができる。
【0039】
図4~
図8の塞栓除去デバイス100と同様に、
図9~
図12の塞栓除去デバイス200は、放射性不透過性マーカーを含むか、または放射性不透過性材料の層でコーティングすることができ、塞栓除去デバイス200から近位方向に延びる細長いプッシャーワイヤ140に結合されたアンテナ215を含む。アンテナ215は、はんだ、溶接、接着または他の適切な連結方法によってプッシャーワイヤ140に結合することができる。プッシャーワイヤ140は、シースおよび/またはカテーテルを介して塞栓除去デバイス100を血管内の標的部位に前進または後退させるように構成されている。
【0040】
デバイス100との1つの相違点は、塞栓除去デバイス200は、
図9の例示的な角度「A」で示すように、血栓係合構造体270の各々の第1の端部272が、第1の細長いスパイン部材210に実質的に直交して配置されて第1の細長いスパイン部材に連結され、第2の端部274が、第2の細長いスパイン部材220に実質的に直交して配置されて第2の細長いスパイン部材に連結されていることである。さらに、第2の血栓係合構造体280に連結された第1の端部282の各々は、
図9の例示的な角度「B」で示すように、第1の細長いスパイン部材210に実質的に直交して配置されて第1の細長いスパイン部材に連結され、第2の端部284は第2の細長いスパイン部材220に実質的に直交して配置されて第2の細長いスパイン部材に連結されている。デバイス100との別の相違点は、デバイス200のそれぞれの第1の細長いスパイン部材210および第2の細長いスパイン部材220への血栓係合構造体270、280の実質的に直交する連結が、
図5~
図8の逆V字形/叉骨のような形態を有する代わりに、
図10~
図12に示すように、血栓係合構造体270、280の湾曲したリブ状の形態を形成していることである。
【0041】
図13~
図16は、開示の発明の他の実施形態に従って構成された塞栓除去デバイス200の代替的な実施形態を示している。
図13~
図16の実施形態では、塞栓除去デバイス200の第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280の湾曲したリブ状の形態が遠位側に配置されている。遠位側に配置された第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280は、血管70内にある塞栓性閉塞物75を係合し、捕え、捕捉しかつ/または取り込むように構成され、かつ/またはシースまたはカテーテルのルーメン内に塞栓除去デバイス200を再び納めるのを容易にするように構成されている。
図13に示すように、血栓係合構造体270の各々が、第1の細長いスパイン部材210に連結された第1の端部272と、第2の細長いスパイン部材220に連結された第2の端部274との間に配置された中間部分273を備え、この中間部分273が、第1の端部272および第2の端部274の何れかに関して遠位側に配置されるように、第1の複数の血栓係合構造体270が遠位側に配置されている。さらに、
図13に示すように、血栓係合構造体280の各々が、第1の細長いスパイン部材210に連結された第1の端部282と、第2の細長いスパイン部材220に連結された第2の端部284との間に配置された中間部分283を構成し、この中間部分283が、第1の端部282および第2の端部284の何れかに関して遠位側に配置されるように、第2の複数の血栓係合構造体280が遠位側に配置されている。
【0042】
塞栓除去デバイス200の第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280の湾曲したリブ状の形態は、送達カテーテル80から引き抜かれたときに、展開構成で外向きに延びることを理解されたい。その後、血栓係合構造体270、280は、長手方向軸230に沿って中立のままであってもよい。代替的な実施形態では、血栓係合構造体270、280、特にそれらの中間部分273、283が、
図5~
図8の実施形態と同様に、軸230に向かって内向きに延びるものであってもよい。各々の中間部分273、283の向きの更なる代替的な実施形態は、必要に応じて、閉塞物/血栓75または血管72との相互作用を増加または減少させるように製造することができる。例えば、デバイス200の中立の中間部分273、283を血栓に向けて、血栓の位置を越える中間部分273、283を内側に向けることが望ましい場合がある。
【0043】
図13および
図14は、放射状に拡張された構成における塞栓除去デバイス200の遠位側に配置された第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280を示し、
図14はさらに、塞栓除去デバイス200のアンテナ215を示し、そこで、スパイン210、220が、接合されて、塞栓除去デバイス200から近位方向に延びる細長いプッシャーワイヤ(図示省略)に結合するように構成されている。
図15に示すように、半径方向に拘束された構成の塞栓除去デバイス200の遠位側に配置された第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280が、塞栓除去デバイス200が(例えば、カテーテル80によって)半径方向に拘束されているときに重なり合う血栓係合構造体270、280を有している。遠位側に対称的に配置された血栓係合構造体270、280は、それら構造体どうしの重なりを可能にし、それにより塞栓性閉塞物の捕捉および塞栓除去デバイス200の再収納を容易にする。
図16は、
図15の半径方向に拘束された塞栓除去デバイス200の一部の詳細図である。
【0044】
さらに、
図4~
図8の実施形態と同様に、
図9~
図16の塞栓除去デバイス200の第1の複数の血栓係合構造体270および第2の複数の血栓係合構造体280のそれぞれの血栓係合構造体の対称性により、血栓を有する血管内でデバイス200が拡張するときに、デバイス200は、血管の壁または内面に対して複数の血栓係合構造体のうちの一方が及ぼす力によって、曲がりの中立軸にそれ自体を向ける。さらに、血管の壁に対して複数の血栓係合構造体のうちの一方が及ぼす押圧力は、第1のスパイン部材210および第2のスパイン部材220が血栓を延ばすかまたは包み込むことを可能にする一方で、他方/反対側の複数の血栓係合構造体が血栓を係合し、捕え、一体化し、捕捉しかつ/または取り込むことを可能にする。
【0045】
図4~
図16の塞栓除去デバイス100、200は、
図1および
図2の先行技術のデバイスと比較して、デバイス100/200の近位端部L6/L10における近位側テーパが相対的に短く、質量が大幅に少ないことにより、患者の標的部位内での正確な展開を容易にし、閉塞物/血栓の除去を容易にするように構成されていることが理解されよう。
図4~
図16に示すように、それぞれの塞栓除去デバイス100/200のアンテナ115/215を有する近位端部分L6/L10は、第1のスパイン部材110および第2のスパイン部材120の近位部分のみを有することにより、相対的に短い近位側テーパおよびより少ない質量を備える。対照的に、
図1および
図2のデバイス12の近位端部分14は、当該部分14に複数のストラット24を有することにより、より長いテーパを有し、より大きな質量を有する。
図4~
図16を参照すると、各塞栓除去デバイス100、200のアンテナ115/215を有する近位端部分L6/L10における相対的に短い近位側テーパおよび実質的に少ない質量によって、塞栓除去デバイスは、相対的に大きな口径の吸引カテーテル80/81と対になって、血栓の吸引、係合および除去を容易にするように構成されている。
図17の例示的な実施形態では、塞栓除去デバイス100が、血栓の近位部分よりも遠位側に配置されており、また、デバイス100のアンテナ115を有する近位端部分L6の相対的に短い近位側テーパおよび大幅に少ない質量に起因して、デバイス100は、吸引カテーテル80/81との干渉を最小限または大幅に抑えることができ、それにより吸引カテーテル80/81による吸引(
図17の矢印で示される)、血栓の係合および除去を可能にし、容易にしている。
【0046】
図4~
図16の適切な伸縮抵抗性材料で構成されたそれぞれの第1のスパイン部材110および第2のスパイン部材120は、デバイス100/200が引き出されるときに、それぞれの塞栓除去デバイス100、200の顎状構造体(
図5~
図8)またはリブ状構造体(
図10~
図16)の引き抜き/後退を、互いに(例えば、顎状構造体またはリブ状構造体と)実質的に同時に行うことを可能にし、許容しかつ/または容易にすることが、さらに理解されよう。スパイン部材110/120によるデバイス100/200の顎状構造体またはリブ状構造体のほぼ同時の引き抜き/後退は、閉塞物/血栓75(
図8の矢印で示される)の全長に沿った引き抜き/後退をさらに可能にし、許容しかつ/または容易にする。塞栓除去デバイス100/200により閉塞物/血栓の全長に沿ってほぼ同時に引き抜き/後退を行うことにより、血栓が断片化されてデバイスから脱落することや、血栓を曲げたり、折り曲げたり、回転させたりして、血栓を血管系から除去するのがより困難な密度の高い塊に圧縮することなど、望ましくない結果をもたらす可能性のある部分的または直列に血栓を引き抜くことを最小限に抑え、防止することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、塞栓除去デバイス100/200が、第1のスパイン部材110および第2のスパイン部材120の長さに沿って、第1および第2の複数の血栓係合構造体の組合せを含むことができる。
図18は、
図9~
図12または
図13~
図16の第1の複数の血栓係合構造体280を近位部分に配置し、
図4~
図8の第2の複数の血栓係合構造体170を遠位部分に配置した塞栓除去デバイス100/200の例示的な実施形態を示している。塞栓除去デバイスの更なる実施形態は、前述したような第1および第2の複数の血栓係合構造体の他の好適な構成および組合せを含むことができる。
【0048】
図4~
図18に示す塞栓除去デバイスは、血管および非血管の両方の用途のために、例えば管状プロテーゼ、インプラント、ステント、流体ダイバータ内に配置された、他の適切な医療デバイスにおいて使用することができる。さらに、
図4~
図18の実施形態の間で、構成要素、特徴および機能を、本明細書に開示の本発明の概念の範囲から逸脱することなく組み合わせることができることが理解されよう。
【0049】
特定の実施形態を本明細書に開示および記載してきたが、当業者には、それらが本発明を限定することを意図したものではないことが理解されるであろう。また、以下の請求項およびその均等物によってのみ規定されるべき開示の発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、変形および修正(例えば、様々な部品の寸法、部品の組合せ)をなし得ることが当業者には明らかであろう。よって、本明細書および図面は、制限的な意味ではなく例示的な意味で考慮されるべきものである。本明細書に開示および記載された様々な実施形態は、開示の発明の代替物、変形物および均等物を網羅することを意図しており、それらは、添付の請求項の範囲内に含まれるものである。