(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】導電性インクのインサイチュ焼結のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/112 20170101AFI20231030BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20231030BHJP
B22F 12/55 20210101ALI20231030BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20231030BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231030BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20231030BHJP
【FI】
B29C64/112
B22F3/16
B22F12/55
B29C64/209
B33Y10/00
B33Y70/10
(21)【出願番号】P 2021065408
(22)【出願日】2021-04-07
(62)【分割の表示】P 2017549387の分割
【原出願日】2016-03-24
【審査請求日】2021-04-07
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2015-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ユドビン-ファーバー、アイラ
(72)【発明者】
【氏名】ドバシュ、エフライム
(72)【発明者】
【氏名】エリー、タル
【合議体】
【審判長】杉山 輝和
【審判官】関根 洋之
【審判官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/209994(WO,A2)
【文献】国際公開第2015/014824(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/112,64/209
B33Y 10/00,70/10
B22F 3/16,12/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システムによって行う、導電性要素の製造方法において、
焼結誘導剤を含有し、硬化させることができるモデリング材料を受容媒体の上に分配して層を形成する工程と、
導電性インクを前記モデリング材料の層の上に分配して導電性要素を形成する工程とを備え、硬化させることができる前記モデリング材料は付加製造に使用されるために配合され、前記モデリング材料自体の上に3次元物体を形成することが可能であり、
前記焼結誘導剤は、化学式
【化1】
(式中:
Xは、O又はNHであり、
Yは、1~20個の炭素原子の長さの置換又は非置換の炭化水素鎖であり、
R
1は、H、アルキル、又はシクロアルキルであり、
R
a及びR
bは、それぞれ独立して、H、アルキル又はシクロアルキルであり、
R
2~R
4は、それぞれ独立してアルキルであり、
Zは、アニオンである)で表される、
方法。
【請求項2】
前記アニオンはクロリドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記導電性インクが非硬化性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記導電性インクが硬化性である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記導電性インクを分配する工程よりも前に、前記モデリング材料を部分的に硬化させる工程をさらに備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性インクを分配する工程よりも後に、前記導電性インクを少なくとも部分的に乾燥させる工程をさらに備え、前記導電性インクを少なくとも部分的に乾燥させる工程は、前記導電性インクの溶媒の少なくとも10%の蒸発を伴う、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
硬化させることができるモデリング材料を分配して前記導電性要素の表面に層を形成するステップをさらに備え、前記導電性要素の前記表面に分配された硬化させることができる前記モデリング材料が前記焼結誘導剤をさらに含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
付加製造システムによって行う、導電性要素の製造方法において、
焼結誘導剤を含有し、硬化させることができるモデリング材料を受容媒体の上に分配して層を形成する工程であって、硬化させることができる前記モデリング材料は付加製造に使用するために配合され、それ自体で3次元の物体を形成することができる、焼結誘導剤を含有し、硬化させることができるモデリング材料を受容媒体の上に分配して層を形成する工程と、
導電性要素を形成するためにモデリング材料の前記層の上に導電性インクを分配する工程と、
前記層及び前記導電性要素の少なくとも1つの上に焼結誘導剤を含有する焼結誘導組成物を分配する工程であって、前記焼結誘導剤は、化学式
【化2】
(式中:
Xは、O又はNHであり、
Yは、1~20個の炭素原子の長さの置換又は非置換の炭化水素鎖であり、
R
1は、H、アルキル、又はシクロアルキルであり、
R
a及びR
bは、それぞれ独立して、H、アルキル又はシクロアルキルであり、
R
2~R
4は、それぞれ独立してアルキルであり、
Zは、アニオンである)で表される、焼結誘導剤を含有する焼結誘導組成物を分配する工程とを備える、方法。
【請求項9】
前記アニオンはクロリドである、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記導電性インクが硬化性である、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
前記導電性インクが非硬化性である、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項12】
前記焼結誘導組成物が少なくとも前記導電性要素の上に分配される、請求項
8~
11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記焼結誘導組成物が、一官能性又は多官能性であるアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、及びビニルエーテルからなる群から選択される焼結不活性材料をさらに含有し、前記焼結不活性材料はイオン性を含まず、前記焼結誘導組成物中における前記焼結不活性材料の分量は少なくとも20重量%である、請求項
8~
12のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのある実施形態において、自由形状製造に関し、特に、しかし排他的ではなく、自由形状製造中の導電性インクのインサイチュ焼結のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
固体自由形状製造(SFF)は、付加形成ステップによって、コンピュータデータから直接任意の形状の構造を製造できる技術である。あらゆるSFFシステムの基本的な操作は、3次元コンピュータモデルを薄い断面にスライスするステップと、その結果を2次元位置データに変換するステップと、そのデータを、層に基づく方法で3次元構造を製造する制御装置に入力するステップとからなる。
【0003】
付加製造(AM)は、材料が層ごとに分配されて最終製品が形成されるいくつかの製造技術を含む。あるAM技術は、3次元(3D)インクジェット印刷として知られている。この技術では、構成材料が一連のノズルを有する分配ヘッドから分配されて、支持構造上に層が堆積される。構成材料によるが、次に、適切なデバイスを用いて層を硬化又は固化させることができる。構成材料は、物体を形成するモデリング材料、及び物体が形成されるときにその物体を支持する支持材料を含むことができる。
【0004】
さまざまな3次元印刷技術が存在し、それらはたとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、及び特許文献9、ならびに特許文献10及び特許文献11に開示されており、これらすべては譲受人が同じであり、これらの内容は参照により本明細書に援用される。
【0005】
2次元(2D)導電性要素を平らな基板に印刷するための堆積及び印刷方法も周知である。たとえば、特許文献12には、物体の上を移動するジェットプリントヘッドを収容する印刷ブリッジが開示されている。このジェットプリントヘッドは、物体の表面上に第1の種類の物質を注入するための第1のジェットノズルと、物体の表面上に第2の種類の物質を注入するための第2のジェットノズルとを含む。第1の種類の物質は、はんだマスクパターンを印刷するために使用され、第2の種類の物質は、キャプションパターンの印刷に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,259,962号明細書
【文献】米国特許第6,569,373号明細書
【文献】米国特許第6,658,314号明細書
【文献】米国特許第6,850,334号明細書
【文献】米国特許第7,183,335号明細書
【文献】米国特許第7,209,797号明細書
【文献】米国特許第7,300,619号明細書
【文献】米国特許第7,225,045号明細書
【文献】米国特許第7,500,846号明細書
【文献】米国特許出願公開第20050104241号明細書
【文献】米国特許出願公開第20060054039号明細書
【文献】米国特許第8,534,787号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある実施形態の一態様によると、導電性要素の製造方法が提供され、この方法は、付加製造システムによって実施され、モデリング材料を受容媒体の上に分配して層を形成するステップと、導電性インクをモデリング材料の層の上に分配して導電性要素を形成するステップとを含む。本発明のある代表的な実施形態では、モデリング材料は焼結誘導剤を含む。
【0008】
本発明のある実施形態によると、導電性インクは非硬化性である。
本発明のある実施形態によると、導電性インクは硬化性である。
本発明のある実施形態によると、本発明の方法は、導電性インクを分配するステップの前に、モデリング材料を部分的に硬化させるステップを含む。
【0009】
本発明のある実施形態によると、本発明の方法は、導電性インクを分配するステップの後に、導電性インクを少なくとも部分的に乾燥させるステップを含む。
本発明のある実施形態によると、本発明の方法は、モデリング材料を分配して導電性要素の上に層を形成するステップを含み、導電性要素の上に分配されたモデリング材料も焼結誘導剤を含む。
【0010】
本発明のある実施形態によると、モデリング材料は硬化性であるが、焼結誘導剤は非硬化性である。
本発明のある実施形態によると、導電性インクは非硬化性である。
【0011】
本発明のある実施形態によると、導電性インクは硬化性である。
本発明のある実施形態の一態様によると、3次元物体の付加製造のための組成物が提供される。この組成物は、硬化性モデリング材料と、硬化性モデリング材料と混合された非硬化性焼結誘導剤とを含む。
【0012】
本発明のある実施形態の一態様によると、3次元物体付加製造のための組成物が提供される。この組成物は、硬化性モデリング材料と、硬化性モデリング材料と混合された硬化性焼結誘導剤とを含む。
【0013】
本発明のある実施形態の一態様によると、付加製造システム中で使用するためのキットが提供される。このキットは、別々の包装中に、前述のように概説され場合により以下にさらに詳細に説明されるような、導電性インクと、3次元の付加製造のための組成物とを含む。
【0014】
本発明のある実施形態の一態様によると、導電性要素の製造方法が提供される。この方法は、付加製造システムによって実施され、モデリング材料を受容媒体の上に分配して層を形成するステップと、非硬化性又は硬化性の導電性インクをモデリング材料の層の上に分配して導電性要素を形成するステップと、焼結誘導剤を有する焼結誘導組成物を上記層及び導電性要素の少なくとも1つの上に分配するステップとを含む。
【0015】
本発明のある実施形態の一態様によると、導電性要素の製造方法が提供される。この方法は、付加製造システムによって実施され、モデリング材料を受容媒体の上に分配して層を形成するステップと、焼結誘導剤を有する焼結誘導組成物を上記層の上に分配するステップと、非硬化性又は硬化性の導電性インクを前記焼結誘導組成物の上に分配するステップとを含む。本発明のある実施形態によると、この方法は、焼結誘導組成物を上記層及び導電性要素の少なくとも1つの上に分配するステップを含む。
【0016】
本発明のある実施形態によると、焼結誘導組成物は、少なくとも導電性要素の上に分配される。
本発明のある実施形態によると、焼結誘導組成物は、フリーラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物、及びアニオン重合性化合物からなる群から選択される化合物である焼結誘導剤を含む。
【0017】
本発明のある実施形態によると、焼結誘導剤はイオン性基と対イオンとを含み、前記イオン性基はアクリル化合物である。
本発明のある実施形態によると、焼結誘導剤は塩である。
【0018】
本発明のある実施形態によると、対イオンはアニオンであり、イオン性基はカチオン性基である、又はカチオン性基を含む。
本発明のある実施形態によると、対アニオンは、ハロゲンアニオン、硫酸アニオン、過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、硝酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホン酸アニオン、リン酸アニオン、及びホスホン酸アニオンからなる群から選択される。
【0019】
本発明のある実施形態によると、対アニオンは、クロリド、サルフェート、ニトレート、ホスフェート、カルボキシレート、及びp-トルエンスルホネートからなる群から選択される。
【0020】
本発明のある実施形態によると、対アニオンはクロリドである。
本発明のある実施形態によると、イオン性基は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、オリゴマー、及び/又はポリマーを含む。
【0021】
本発明のある実施形態によると、カチオン性基は第4級アンモニウム基である。
本発明のある実施形態によると、イオン性基は、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、カチオンに帯電したポリイミド、ポリエチレンイミン、及びポリピロールからなる群から選択される。
【0022】
本発明のある実施形態によると、焼結誘導剤は一般式:
【0023】
【0024】
(式中:Xは、O(この場合、誘導剤はアクリレート誘導体となる)又はNH(この場合、誘導剤はアクリルアミド誘導体となる)であり、Yは、1~20個の炭素原子の長さの置換又は非置換の炭化水素鎖であり、R1は、H(この場合、塩はアクリル誘導体又はアクリルアミド誘導体となる)、又はアルキル、好適にはメチル(CH3)(この場合、塩はメタクリレート誘導体、又はメタクリルアミド(methacryamide)誘導体)、又はシクロアルキルであり、Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素、アルキル及びシクロアルキルから選択され、好適にはRa及びRbのそれぞれは水素(H)であり、R2~R4は、それぞれ独立して、アルキル、場合によりC1-4アルキルであり、Zは、本明細書に記載されるようなアニオンである)
で表される。
【0025】
本発明のある実施形態によると、焼結誘導剤は一般式:
【0026】
【0027】
(式中:Xは、O又はNHであり、Yは、1~20個の炭素原子の長さの置換又は非置換の炭化水素鎖であり、R1は、H(この場合、塩はアクリレート誘導体となる)又はアルキル、好適にはメチル、CH3(この場合、塩はメタクリレート誘導体となる)、又はシクロアルキル、でありR2~R4は、それぞれ独立して、アルキル、場合によりC1-4アルキルであり、Zはアニオンである)で表される。本発明のある実施形態によると、Yは非置換の炭化水素鎖である。本発明のある実施形態によると、R2~R4は、それぞれ独立して、メチル又はエチルである。本発明のある実施形態によると、R2~R4はそれぞれメチルである。
【0028】
本発明のある実施形態によると、Yは非置換の炭化水素鎖である。
本発明のある実施形態によると、R2~R4は、それぞれ独立して、メチル又はエチルである。
【0029】
本発明のある実施形態によると、R2~R4はそれぞれメチルである。
本発明のある実施形態によると、Ra及びRbはそれぞれ水素である。
本発明のある実施形態によると、焼結誘導組成物は焼結不活性材料をさらに含む。
【0030】
本発明のある実施形態によると、焼結不活性材料は硬化性材料である。
本発明のある実施形態によると、焼結誘導剤は、アンモニウム置換アクリレート、トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド、3-トリメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミドクロリド、及びアンモニウム置換アクリルアミドからなる群から選択される。
【0031】
他に定義されない場合、本明細書において使用されるすべての技術用語及び/又は科学用語は、本発明が関連する当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施又は試験に本明細書に記載されるものと同様又は同等の方法及び材料を使用することができるが、代表的な方法及び/又は材料が以下に記載される。矛盾が生じる場合は、定義を含めて本明細書に従う。さらに、材料、方法、及び例は、単に例示的なものであって、必ずしも限定を意図したものではない。
【0032】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施は、選択されたタスクを手動で、自動で、又はそれらを組み合わせて実施又は完成することを含むことができる。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の装置及び設備によると、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、ソフトウェアによって、もしくはファームウェアによって、又はオペレーティングシステムを用いたそれらの組合せによって実施することができる。
【0033】
たとえば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実施するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装することができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態による選択されたタスクは、あらゆる適切なオペレーティングシステムを使用するコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実施することができる。本発明の代表的な実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの代表的な実施形態による1つ以上のタスクは、複数の命令を実行するための計算プラットフォームなどのデータ処理装置によって行われる。場合により、データ処理装置は、命令及び/又はデータを記憶するための揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを記憶するための不揮発性記憶装置、たとえば、磁気ハードディスク、及び/又はリムーバブルメディアを含む。
【0034】
場合により、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ、及び/又はキーボードやマウスなどのユーザ入力装置も場合により提供される。
単なる例として、添付の図面及び画像を参照しながら、本発明の一部の実施形態が本明細書に記載される。これより特に図面を参照するが、示される詳細は、例として、本発明の実施形態の説明的議論のためのものであることを強調しておく。これに関して、図面を伴う説明によって、本発明の実施形態を実施できる方法が当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】本発明の一実施形態による付加製造システムの高レベルの概略を示すブロック図。
【
図1B】本発明の一実施形態による物体のAMに適切なシステムの代表的で非限定的な例を示す斜視図。
【
図2】本発明の種々の代表的な実施形態による導電性要素の製造方法のフローチャート図である。
【
図3】本発明の一実施形態による、導電性インクでできた導電性要素を有するモデリング材料でできた層の概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、モデリング材料の複数の層と、それらの中に埋め込まれた複数の導電性要素とから形成された物体の概略図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、モデリング材料の複数の層と、複数の導電性要素と、電気又は電子デバイスとから形成される物体の概略図である。
【
図6A】本発明の一実施形態により実施した実験中に撮影した画像。
【
図6B】本発明の一実施形態により実施した実験中に撮影した画像。
【
図6C】本発明の一実施形態により実施した実験中に撮影した画像。
【
図6D】本発明の一実施形態により実施した実験中に撮影した画像。
【
図6E】本発明の一実施形態により実施した実験中に撮影した画像。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、そのある実施形態においては、自由形状製造に関し、特に、しかし排他的ではなく、自由形状製造中の導電性インクのインサイチュ焼結のための方法及びシステムに関する。
【0037】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載される、及び/又は図面及び/又は実施例に示される、構成要素及び/又は方法の構成及び配列の詳細に、その使用が必ずしも限定されるものではないことを理解すべきである。本発明は、別の実施形態が可能であるか、又は種々の方法で実践もしくは実施が可能である。
【0038】
本発明の実施形態の方法及びシステムは、物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することによって、層に基づく方法でコンピュータ物体データに基づいて3次元物体を製造する。コンピュータ物体データは、限定するものではないが、標準テッセレーション言語(STL)、又はステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、バーチャルリアリティモデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、ドローイングエクスチェンジフォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適切なあらゆる他のフォーマットなどのあらゆる周知のフォーマットであってよい。
【0039】
本明細書において使用される場合、「物体」という用語は、物体全体又はその一部を意味する。
各層は、2次元表面を走査し、それをパターン化する付加製造装置によって形成される。走査しながら、装置は、2次元層又は表面上の複数のターゲット位置に到達し、各ターゲット位置又は一連のターゲット位置に関して、そのターゲット位置又は一連のターゲット位置が、構成材料によって占有されるかどうか、及びどの種類の構成材料をそこへ供給すべきかを決定する。この決定は、表面のコンピュータ画像により行われる。
【0040】
本発明の好ましい実施形態では、AMは、3次元印刷、より好適には3次元インクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、構成材料は、一連のノズルを有する分配ヘッドから分配されて、支持構造上に層として構成材料が堆積される。したがって、AM装置は、占有されるべきターゲット位置に構成材料を分配し、別のターゲット位置は空隙のまま離れる。この装置は、典型的には、複数の分配ヘッドを含み、そのそれぞれは異なる構成材料を分配するように構成することができる。たとえば、異なるターゲット位置は、異なる構成材料によって占有されうる。構成材料の種類は、モデリング材料及び支持材料の2つ主要な種類に分類することができる。支持材料は、製造プロセス中に物体又は物体の部分を支持するため、及び/又は他の目的、たとえば、中空又は多孔質の物体を得るための支持マトリックス又は構造として機能する。支持構造は、たとえばさらなる支持強度のためにモデリング材料要素をさらに含むことができる。
【0041】
モデリング材料は、一般に、付加製造に使用するために配合され、それ自体の上に3次元物体を形成することが可能である、すなわちあらゆる他の物質を混合又は併用する必要がない組成物である。
【0042】
最終3次元物体は、モデリング材料、又は複数のモデリング材料の組合せ、又はモデリング材料及び支持材料、又はそれらの修正形態(たとえば、硬化後)でできている。これらすべての動作は、固体自由形状製造の当業者には周知である。
【0043】
本発明のある代表的な実施形態では、2種類以上の異なるモデリング材料を分配することによって物体が製造され、各材料はAMの異なる分配ヘッドから分配される。材料は、場合により及び好適には、印刷ヘッドの同じパス中に層で堆積される。層中の材料及び材料の組合せは、物体の所望の性質により選択される。
【0044】
本発明のある実施形態による物体112のAMに適切なシステム110の代表的で非限定的な例を
図1A~Bに示す。システム110は、複数の分配ヘッドを含む分配装置121を有する付加製造装置114を含む。各ヘッドは、好適には
図1Bに示されるような1つ以上のノズルの配列122を含み、それらを通して液体構成材料124が分配される。
【0045】
好適には、必須ではないが、装置114は、3次元印刷装置であり、その場合、分配ヘッドは印刷ヘッドであり、構成材料はインクジェット技術によって分配される。これは、必ずしもそのような場合が必要なわけでなく、その理由は、ある用途の場合では、付加製造装置が3次元印刷技術を使用する必要がない場合があるからである。本発明の種々の代表的な実施形態により考慮される付加製造装置の代表例としては、バインダージェット粉末系装置、溶融堆積モデリング装置、及び溶融材料堆積装置が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
各分配ヘッドには、場合により好適には、温度制御装置(たとえば、温度センサ及び/又は加熱装置)、及び材料レベルセンサを場合により含むことができる構成材料リザーバを介して供給される。構成材料を分配するために、たとえば圧電インクジェット印刷技術などのように、分配ヘッドノズルを介して材料の液滴を選択的に堆積するために、電圧信号が分配ヘッドに印加される。各ヘッドの分配速度は、ノズルの数、ノズルの種類、及び印加される電圧信号の速度(周波数)によって決定される。このような分配ヘッドは、固体自由形状製造の当業者には周知である。
【0047】
好適には、必須ではないが、分配ノズル又はノズルアレイの総数は、分配ノズルの半分が支持材料を分配するように指定され、分配ノズルの半分がモデリング材料を分配するように指定されるように選択され、すなわちモデリング材料を吐出するノズルの数は、支持材料を吐出するノズルの数と同じである。
図1Aの代表例では、4つの分配ヘッド121a、121b、121c、及び121dが示されている。ヘッド121a、121b、121c、及び121dのそれぞれが1つのノズルアレイを有する。この例では、ヘッド121a及び121bはモデリング材料用に指定することができ、ヘッド121c及び121dは支持材料用に指定することができる。たとえば、ヘッド121aは第1のモデリング材料を分配することができ、ヘッド121bは第2のモデリング材料を分配することができ、及びヘッド121c及び121dの両方は支持材料を分配することができる。別の一実施形態では、たとえばヘッド121c及び121dは、支持材料を堆積するための2つのノズルアレイを有する1つのヘッドに組み合わせることができる。
【0048】
さらに、本発明の範囲の限定を意図したものではなく、モデリング材料堆積ヘッド(モデリングヘッド)の数と、支持材料堆積ヘッド(支持ヘッド)の数とが異なる場合もあることを理解すべきである。一般に、モデリングヘッドの数、支持ヘッドの数、ならびにそれぞれのヘッド又はヘッドアレイ中のノズルの数は、支持材料の最大分配速度と、モデリング材料の最大分配速度との間であらかじめ決定された比率aが得られるように選択される。あらかじめ決定された比率aの値は、好適には、形成されたそれぞれの層中で、モデリング材料の高さが支持材料の高さに等しくなるよることが保証されるように選択される。典型的なaの値は約0.6~約1.5である。
【0049】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は±10%を意味する。
たとえば、a=1の場合、すべてのモデリングヘッド及び支持ヘッドが動作する場合には、支持材料の全体の分配速度は、モデリング材料の全体の分配速度と一般に同じである。
【0050】
好適な一実施形態では、p個のノズルのm個のアレイをそれぞれ有するM個のモデリングヘッドと、q個のノズルのs個のアレイをそれぞれ有するS個の支持ヘッドが存在し、それによってM×m×p=S×s×qである。M×m個のモデリングアレイ及びS×s個の支持アレイのそれぞれは、別個の物理的単位として製造することができ、これらを集合させたり、一連のアレイから分離したりすることができる。この実施形態では、このようなそれぞれのアレイは、場合により及び好適には、それ自体の温度制御装置及び材料レベルセンサを含み、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0051】
装置114は、堆積した材料を硬化させることができる光、熱などを放出するように構成されたあらゆる装置を含むことができる硬化装置324をさらに含むことができる。たとえば、硬化装置324は、使用されるモデリング材料によって、たとえば紫外もしくは可視もしくは赤外のランプ、又は他の電磁放射線源、又は電子ビーム源であってよい1つ以上の放射線源を含むことができる。本発明のある実施形態では、硬化装置324は、モデリング材料の硬化又は固化に役立つ。
【0052】
分配ヘッド及び放射線源は、作業面として機能するトレイ360上を往復して移動するように好適には操作されるフレーム又はブロック128の中に好適には搭載される。本発明のある実施形態では、放射線源は、分配ヘッドを追跡して、分配ヘッドによって分配された直後の材料を少なくとも部分的に硬化又は固化させるように、ブロック中に搭載される。トレイ360は水平に配置される。一般的な慣習によると、X-Y面がトレイ360と平行になるようにX-Y-Zデカルト座標系が選択される。トレイ360は好適には、垂直方向(Z方向に沿って)、典型的には下方向に移動するように構成される。本発明の種々の代表的な実施形態では、装置114は、1つ以上のレベリング装置132、たとえばローラー326をさらに含む。レベリング装置326、連続して層を上に形成する前に、新しく形成された層をまっすぐにする、水平にする、及び/又は厚さを確立する機能を果たす。レベリング装置326は好適には、レベリング中に生じた過剰の材料を収集するための廃棄物収集装置136を含む。廃棄物収集装置136は、材料を廃棄物タンク又は廃棄物カートリッジに送り出すあらゆる機構を含むことができる。
【0053】
使用中、装置121の分配ヘッドは、この場合X方向で示される走査方向に移動し、トレイ360の上を移動する過程で、あらかじめ決定された構成で構成材料を選択的に分配する。構成材料は、典型的には、1種類以上の支持材料及び1種類以上のモデリング材料を含む。装置121の分配ヘッドが通過した後、放射線源126によるモデリング材料の硬化が行われる。ヘッドが逆方の移動において、堆積直後の層の出発点に戻り、あらかじめ決定された構成により、構成材料のさらなる分配を行うことができる。分配ヘッドの順方向及び/又は逆方向の移動において、こうして形成された層は、レベリング装置326によってまっすぐにすることができ、好適にはこれに続いて、分配ヘッドの経路のそれらの順方向及び/又は逆方向での移動が行われる。分配ヘッドがX方向に沿ったそれらの出発点に戻ると、分配ヘッドは、割り出し方向に沿った、本明細書ではY方向と記載されるもう1つの方向に移動して、X方向に沿った往復運動によって同じ層を形成し続けることができる。あるいは、分配ヘッドは、順方向及び逆方向の移動の間、又は2回以上の順方向-逆方向の移動の後に、Y方向に移動することができる。1つの層を完成するための分配ヘッドにより行われる一連の走査を本明細書では1走査サイクルと記載する。
【0054】
層が完成した後、続いて印刷される層の所望の厚さにより、トレイ360をあらかじめ決定されたZレベルまでZ方向に下げる。層に基づく方法で3次元物体112を形成するためにこの手順を繰り返す。
【0055】
別の一実施形態では、トレイ360は、層の中で、装置121の分配ヘッドの順方向及び逆方向の移動の間にZ方向に移動させることができる。このようなZ移動は、ある方向でレベリング装置を表面と接触させ、他の方向での接触は防止するために行われる。
【0056】
システム110は、場合により及び好適には、構成材料容器又はカートリッジを含み、複数の構成材料を製造装置114まで供給する構成材料供給システム330を含む。
制御装置340は、製造装置114を制御し、場合により及び好適には供給システム330も制御する。制御装置340は、典型的には、制御操作を行うように構成された電子回路を含む。制御装置340は好適には、コンピュータ物体データに基づいた製造命令に関するデジタルデータを伝送するデータ処理装置154、たとえば、標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形態でコンピュータが読み取り可能な媒体上に示されるCAD構成と通信する。典型的には、制御装置340は、それぞれの分配ヘッド又はノズルアレイに印加される電圧、及びそれぞれの印刷ヘッド中の構成材料の温度を制御する。
【0057】
処理装置154は、たとえば、中央処理装置(CPU)、チップ、又はあらゆる適切なコンピュータデバイス又は計算装置、メモリ、及び記憶装置を含むことができる。メモリとしては、たとえば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、ダイナミックRAM(DRAM)、シンクロナスDRAM(SD-RAM)、ダブルデータレート(DDR)メモリチップ、フラッシュメモリ、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、キャッシュメモリ、バッファ、短期メモリ装置、長期メモリ装置、又はその他の適切なメモリ装置もしくは記憶装置を挙げることができる。メモリは、複数の場合により異なるメモリ装置を含むことができる。
【0058】
メモリは、実行可能なコード、たとえば、アプリケーション、プログラム、プロセス、タスク、又はスクリプトを含むことができる。実行可能なコードは、本明細書に記載の実施形態により3D物体を製造するためにシステム110を制御するためのコード又は命令を含むことができる。たとえば、メモリは、構成材料を分配する分配ヘッドなどを使用し、構成材料を硬化させて層を形成するためのコードを含むことができる。このコードは、導電性インクを分配して層の上に導電性要素を形成するステップをさらに含むことができる。
【0059】
製造データが制御装置340にロードされた後、制御装置340は、使用者が介入することなく動作させることができる。ある実施形態では、制御装置340は、たとえばデータ処理装置154を用いて、又は装置340と通信するユーザインターフェース116を用いて、操作員からのさらなる入力を受け取る。ユーザインターフェース116は、限定するものではないがキーボード、タッチスクリーンなどの当技術分野において周知のあらゆる種類のものであってよい。たとえば、制御装置340は、さらなる入力として、1つ以上の構成材料の種類及び/又は属性、たとえば、限定するものではないが、色、特性ひずみ、及び/又は転移温度、粘度、電気的性質、磁気的性質を受け取ることができる。他の属性及び属性のグループも考慮される。
【0060】
あらゆる適切な数の入力装置をユーザインターフェース116中に含めることが可能なことは理解されよう。ユーザインターフェース116は、1つ以上のディスプレイ、スピーカ及び/又はあらゆる他の適切な出力装置などの出力装置をさらに含むことができる。あらゆる適切な数の出力装置をユーザインターフェース116中に含めることが可能なことは理解されよう。あらゆる適用可能な入力/出力(I/O)装置は、制御装置340に接続することができる。たとえば、有線又は無線のネットワークインターフェースカード(NIC)、モデム、プリンタ、又はファクシミリ装置、ユニバーサルシリアルバス(USB)機器、又は外部ハードドライブをユーザインターフェース116中に含めることができる。
【0061】
ある実施形態は、異なる分配ヘッドから異なる材料を分配することによる物体の製造を考慮している。これらの実施形態は、特に、特定の数の材料から材料を選択して、選択した材料及びそれらの性質の所望の組合せを画定する機能を提供する。本発明の実施形態によると、異なる材料が異なる3次元空間的位置を占有するため、又は層中に材料の堆積後の空間的組合せが可能となるように2種類以上の異なる材料が実質的に同じ3次元位置もしくは隣接する3次元位置を占有し、それによってそれぞれの位置もしくは複数の位置で複合材料を形成するために、層の中での各材料の堆積の空間的位置が画定される。
【0062】
モデリング材料のあらゆる堆積後の組合せ又は混合が考慮される。たとえば、ある材料が分配された後、その材料は元の性質を維持することができる。しかし、別のモデリング材料又は別の分配材料と同時に分配され、それらが同じ場所又は隣接する場所に分配される場合、分配された材料と異なる1つ以上の性質を有する複合材料が形成される。
【0063】
したがって本発明の実施形態によって、広範囲の材料の組合せの堆積と、物体のそれぞれの部分を特徴付けるために望ましい性質により物体の異なる部分で材料の複数の異なる組合せからなることができる物体の製造とが可能となる。
【0064】
システム110などのAMシステムの原理及び操作に関するさらなる詳細は、米国特許出願公開第20100191360号明細書に見ることができ、その内容は参照により本明細書に援用される。
【0065】
本発明のある実施形態では、AMシステムは、モデリング材料及び導電性インクを選択的に分配してモデリング材料の層の上に導電性要素を形成するように操作される。AMシステムは、場合により及び好適には、層の体積中に形成された導電性パターンを含む層状3D物体を形成するために操作される。本発明の実施形態は、水平方向(面内又は水平面に対して平行)、水平面に対して傾いた方向、及び垂直方向(水平方向に対して垂直)などのあらゆる方向に沿ってパターン化材料のセグメント(たとえば、導電性セグメント)を形成するために使用することができる。
【0066】
ある実施形態では、構成材料の堆積中に電気的接触を形成する導電性材料を選択的に堆積することによって、堆積プロセス中に3D物体の内部にマイクロチップ、電池、ランプ、又はPCBなどの電気又は電子部品を挿入しながら、それらの電気デバイス又は電子部品への電気的接続を形成することができる。
【0067】
ある実施形態では、複数の相互接続された導電性要素を形成するために、導電性材料が断続的に分配される。それぞれの導電性要素の厚さは、好適には、構成材料の堆積された層の厚さとは異なる。典型的には、導電性要素の厚さは、上又は下にパターン要素が分配されるモデリング材料層の厚さの少なくとも3分の1、又は少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1、又は少なくとも50分の1である。たとえば、構成(モデリング又は支持)材料の層は、5~1000μm、より好適には10~100μmの厚さを有することができ、一方、導電性要素は、0.1~100μm、より好適には0.1~10μm、より好適には0.1~5μm、より好適には0.1~3μmの厚さを有することができる。
【0068】
導電性インク好適には導電性粒子を含み、場合により及び好適には、液体溶媒中に分散させた導電性(たとえば金属)マイクロ粒子又はナノ粒子を含む。本発明のある実施形態では液体溶媒は非硬化性であり、本発明のある実施形態では液体溶媒は硬化性である。溶媒が蒸発すると、このインクが占有する領域の厚さが、たとえば、前述の厚さ範囲まで減少する。導電性インクは、場合により及び好適には、分散安定剤、乳化剤、湿潤及びレオロジー添加剤などの配合助剤を含む。
【0069】
本発明のある実施形態により使用される粒子は、少なくとも1つの寸法がナノメートル規模である、たとえば平均サイズが約0.1~約900nm、又は約0.1~約500nm、約0.1~約100nm、約0.1~約10nm、又は0.1~約5nm、又は約1~約10nm、又は約10~約30nm、又は約10~約100nmである固体粒子である。本発明のある実施形態では、これらの粒子は約1~約100ミクロン(micros)の粒度を有する。
【0070】
粒子は、限定するものではないが、ロッド(たとえばナノロッド)、球状粒子、ワイヤ(たとえばナノワイヤ)、シート(たとえばナノシート)、量子ドット、及びコア-シェル粒子などのあらゆる形状又は形態であってよい。粒子が略球状の場合、粒度は球の直径を意味する。粒子が球形ではない場合、粒度は粒子の最大寸法を意味する。
【0071】
粒子は、元素周期表のブロックdのIIIB族、IVB族、VB族、VIB族、VIIB族、VIIIB族、IB族、又はIIB族の金属から選択される金属で構成することができる。ある実施形態では、粒子は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Tc、Ru、Mo、Rh、W、Au、Pt、Pd、Ag、Mn、Co、Cd、Hf、Ta、Re、Os、Al、Sn、In、Ga、及びIrから選択される1種類以上の元素を含む。ある実施形態では、粒子は、Cu、Ni、Ag、Au、Pt、Pd、Al、Fe、Co、Ti、Zn、In、Sn、及びGaから選択される1種類以上の元素を含む。ある実施形態では、粒子は、Cu、Ni、及びAgから選択される1種類以上の元素を含む。ある実施形態では、粒子はAg及びCuから選択される1種類以上の元素を含む。ある実施形態では、粒子はAgを含む。
【0072】
本発明の種々の好ましい実施形態では、構成材料の分配後プロセスは、導電性インクの分配後プロセスとは異なる。たとえば、構成(モデリング、支持)材料は、典型的には、さらに詳細に前述したように分配後に固化又は硬化が行われる。導電性インクは、場合により及び好適には、乾燥させて溶媒を蒸発させる。導電性インク中に種々の成分が存在し、それらの成分が粒子間に絶縁層を形成するので、乾燥によって導電率が低下することがある。これらの場合、導電性インクは、その中の導電性粒子を凝固させるために好適には焼結も行われる。
【0073】
本発明の種々の代表的な実施形態では、化学焼結が使用される。化学焼結の利点の1つは、分配ブロック中に焼結装置を使用する必要がないことである。化学焼結の別の利点の1つは、構成材料が曝露して構成材料層の形状を変化させうる不要な放射線の量が減少することである。
【0074】
化学焼結は、場合により及び好適には、分配された導電性要素と、焼結を誘導するために選択された物質とを接触させることによって実現される。この物質としては、場合により及び好適には、以下にさらに詳細に記載されるようなフリーラジカル重合性化合物、カチオン重合性化合物及びアニオン重合性化合物からなる群から選択される化合物を挙げることができる。
【0075】
この物質は、AMシステムの別個の分配ヘッドから分配される別個の組成物として供給することができる。これとは別に、又はこれに加えて、この物質は、非導電性材料中に含まれる(たとえば混合される)焼結助剤として供給することができる。
【0076】
焼結誘導剤が非導電性材料中に含まれる場合、導電性インクは、場合により及び好適には、導電性インク中の粒子がモデリング材料中の焼結誘導剤と接触できるように、モデリング材料の硬化が終了する前にモデリング材料層の上に分配される。これとは別に、又はより好適にはこれに加えて、焼結誘導剤を含有する非導電性材料を導電性要素の上に塗布することができる。これは、導電性インクを乾燥させた後、導電性インクを部分的に乾燥させた後(たとえば、約10%~90%の溶媒が導電性インクから蒸発した後)、又は導電性インクを分配した直後の乾燥させる前に行うことができる。
【0077】
好適には、非導電性モデリング材料中の焼結誘導剤は非硬化性である。非硬化性物質が導電性インクと反応できることによって化学焼結がより促進されるので、硬化性モデリング材料に非硬化性成分を混入すると有利となることを本発明者らは見出した。
【0078】
本発明の実施形態では、UV反応性(たとえば、UV硬化性)の焼結誘導剤と、非UV反応性(非UV硬化性)の焼結誘導剤との両方が考慮される。
本発明の種々の代表的な実施形態では、焼結誘導組成物又は焼結誘導剤は、イオン性部分を含む。これは、電荷交換反応によって、インク中の導電性粒子の静電安定性を低下させることができる。好適には、焼結誘導組成物又は焼結誘導剤は、場合により及び好適にはアクリルモノマー又は誘導体であるイオン性基と、対イオンとを含み、イオン性基は担体として機能し、対イオンは、分散剤分子と導電性粒子との分離又は結合抑制の機能を果たし、それによってそれらを凝固させることができる。
【0079】
本発明の種々の代表的な実施形態では、対イオンは陰イオンであり、イオン性基は陽イオンであり、すなわちイオン性基はカチオン性基である、又はカチオン性基を含む。焼結誘導剤は、場合により及び好適には、塩から選択することができる。
【0080】
対アニオンは、たとえば、ハロゲンアニオン(F-、Cl-、Br-及び/又はI-)、硫酸アニオン(SO4
2-及び/又はRSO4
-(式中のRは、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールであり、好適には水素である)、過塩素酸アニオン(ClO4
-)、塩素酸アニオン(ClO3
-)、硝酸アニオン(NO3
-)、カルボン酸アニオン(たとえば、RCO2
-(式中のRは、アルキル、シクロアルキル、又はアリールであり、好適にはアルキルである);スルホン酸アニオン(たとえば、SO3
2-又はRSO3
-(式中のRは、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールであり、好適には、メタンスルホン酸アニオンなどのアルカンスルホネートが得られるアルキル、又はたとえばp-トルエンスルホン酸アニオンが得られるアリールである));リン酸アニオン(P(=O)-O3
3-及び/又はP(=O)(OR)O2
2-及び/又はP(=O)(OR)2O-(式中のRは、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである);及びホスホン酸アニオン(R’P(=O)-O2
2-及び/又はR’P(=O)(OR)O-(式中のRは、水素、アルキル、シクロアルキル又はアリールである)であってよい。本発明のある実施形態では、対アニオンは、クロリド、サルフェート、ニトレート、ホスフェート、カルボキシレート(たとえば、アセテート)、及びハロゲンからなる群から選択される。ある実施形態では、対アニオンはクロリドである。あらゆる他のアニオンも考慮される。
【0081】
本発明の実施形態は、種々のアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、ならびにそれらのオリゴマー及びポリマーを考慮しており、本明細書では一括してアクリル化合物又は(メタ)アクリル化合物と記載され、これらは1つ以上の帯電した基、好適には正に帯電した基(カチオン性基)を含有する。本発明の実施形態に適切なカチオン性基の代表例としては、第4級アンモニウム基が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0082】
ある実施形態では、アニオン(たとえば、本明細書に記載のようなもの)と、カチオン性アクリル化合物とを含む塩は一般式:
【0083】
【0084】
(式中:Xは、O(この場合、この物質はアクリレート誘導体となる)又はNH(この場合、この物質はアクリルアミド誘導体となる)であり、Yは1~20個の炭素原子の長さの置換又は非置換の炭化水素鎖であり、R1は、H(この場合、この塩はアクリレート誘導体又はアクリルアミド誘導体となる)又はアルキル、好適にはメチルCH3(この場合、この塩はメタクリレート誘導体又はメタクリルアミド誘導体となる)、又はシクロアルキルであり、Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素、アルキル、及びシクロアルキルから選択され、好適にはRa及びRbのそれぞれは水素(H)であり、R2~R4は、それぞれ独立して、アルキル、場合によりC1~4アルキルであり、Zはアニオンである)で表される。ある実施形態では、アニオン(たとえば、本明細書に記載のようなもの)と、カチオン性アクリル化合物とを含む塩は一般式:
【0085】
【0086】
(式中:
Xは、本明細書に記載のようにO又はNHであり;
Yは、1~20個の炭素原子の長さの置換又は非置換の炭化水素鎖であり;
R1は、本明細書に記載のようにH又はアルキル、好適にはCH3であり;
R2~R4は、それぞれ独立してアルキルであり;
Zは本明細書に記載のアニオンである)で表される。
【0087】
ある実施形態では、Yは非置換の炭化水素鎖(アルキレン)である。
ある実施形態では、Yは、1~10個の炭素原子の長さである。ある実施形態では、Yは1~4個の炭素原子の長さである。ある実施形態では、Yは2又は3個の炭素原子の長さ(たとえば、-CH2CH2-又は-CH2CH2CH2-)である。
【0088】
ある実施形態では、R1はCH3である。
ある実施形態では、R2~R4は、それぞれ独立して、メチル又はエチルである。ある実施形態では、R2~R4はそれぞれメチルである。
【0089】
焼結誘導剤として使用可能なアクリル化合物の代表例としては、アンモニウム置換アクリレート(たとえば、アダムクアト(Adamquat) MQ 80)、トリメチルアンモニウムメチルメタクリレートクロリド(たとえば、ビジオマー(Visiomer)
TMAEMC)、3-トリメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミドクロリド(たとえば、ビジオマー MAPTAC 30)、及びアンモニウム置換アクリルアミド(たとえば、DMAPAAQ、たとえば、ラーン(Rahn)、RCX-14/705)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
焼結誘導剤として使用可能な物質としては、たとえば(メタ)アクリル官能基及びメタ(アクリル)アミド官能基などの重合性反応性官能基から選択することができるフリーラジカル重合性化合物を挙げることができる。
【0091】
「(メタ)アクリル」又は「(メタ)アクリレート」という用語及びそれらの転用は、アクリル化合物及びメタクリル化合物の両方を意味する。
フリーラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル又はメタ(アクリル)アミドモノマー、(メタ)アクリル又は(メタ)アクリルアミドオリゴマー、(メタ)アクリル又は(メタ)アクリルアミドポリマー、及びそれらのあらゆる組合せを挙げることができる。代表的なそのような化合物は前述している。
【0092】
焼結誘導剤に使用可能な物質としては、カチオン重合性モノマー、たとえばエポキシド化合物、オキセタン、ビニルエーテル、及び/又はオリゴマーを主成分とするものを挙げることができ、カチオン性部分を有するモノマーは、たとえば第4級アンモニウム塩であってよい。エポキシ化合物の非限定的な例としてはグリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが挙げられる。
【0093】
焼結誘導剤として使用可能な物質としては、これとは別に、又はこれに加えて、ポリウレタン化学反応のための第4級アンモニウム基を場合により及び好適には有するイソシアネート化合物、及び/又はアニオン重合のための第4級アンモニウム基を場合により及び好適には有するカプロラクタム系化合物を挙げることができる。
【0094】
カチオン性基のさらなる例としては、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、カチオンに帯電したポリイミド、ポリエチレンイミン、及びポリピロールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0095】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部では、焼結誘導剤は焼結誘導組成物を形成する。これらの実施形態の一部では、たとえば、焼結誘導剤が、本明細書に記載のような第4級アンモニウム基を有するアクリル化合物である場合、そのような組成物は、高粘度を示すことがあり、それによって3Dインクジェット印刷プロセスにおけるその使用が制限されうる。このようなアクリル化合物は、比較的低い反応性をさらに示すことがあり、このことはそれらの3D構成能力に影響を与えうる。
【0096】
このような焼結誘導組成物の性能を改善するために、焼結に対して不活性である「非活性」材料を焼結誘導組成物に加えることができる。このような材料は、本明細書において焼結不活性材料とも記載される。ある実施形態では、焼結不活性材料は硬化性材料である。ある実施形態では、焼結不活性材料はUV硬化性材料である。あるいは、焼結不活性材料は、フリーラジカル重合性材料である、又はカチオン重合によって重合可能である。
【0097】
ある実施形態では、焼結誘導組成物中の焼結不活性材料の量は、組成物の全重量の少なくとも20重量%、少なくとも30重量%、少なくとも40重量%、少なくとも45重量%、少なくとも50重量%、少なくとも55重量%、又は少なくとも60重量%である。
【0098】
ある実施形態では、焼結不活性材料は、親水性であり、好適には塩の中の重合性イオン性基(たとえば、第4級アンモニウムアクリル化合物)と相溶性である。
焼結不活性材料の非限定的な例としては、一官能性又は多官能性(たとえば、二官能性、三官能性など)のアクリレート又はメタクリレート、たとえばアクリロイルモルホリン(ACMO)、アクリル酸ヒドロキシエチル(BASF)、ヒドロキシエチルアクリルアミド(ラーン)(HEAA)、ポリエチレングリコールジアクリレート(サートマー(Sartomer)、SR344)、エトキシル化トリメチロールプロパンアクリレート(サートマー、SR415)、ヒドロキシエチルアクリレート、ビスフェノールAエトキシル化ジメタクリレート(サートマー、SR9036)などが挙げられる。
【0099】
焼結不活性材料のさらなる非限定的な例としては、一官能性又は多官能性(たとえば、二官能性、三官能性など)のビニルエーテル、たとえばヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、エチルビニルエーテル、ブタンジオールビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0100】
本明細書に記載の実施形態のいずれかの一部では、焼結誘導組成物が硬化性材料(たとえば、硬化性焼結誘導剤及び/又は焼結不活性硬化性材料)を含む場合、組成物は重合を開始するための開始剤をさらに含む。
【0101】
ある実施形態では、開始剤はフリーラジカル重合を開始するためのものであり、ある実施形態では、これはUV照射によって活性化可能な光開始剤(photoiniator)である。
【0102】
ある実施形態では、中圧水銀ランプを使用するUV活性化にはラジカル光開始剤が適切である。
光開始剤は、1種類の化合物、又は開始系を形成する2種類以上の化合物の組合せであってよい。適切なUVフリーラジカル開始剤の非限定的な例は、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンであり、これはイルガキュア(IGRACURE) I-2959の商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)(スイス)より入手可能である。別のα-ヒドロキシケトン、たとえばダロキュア(Darocure) 1173、チバ(Ciba)のイルガキュア(Irgacure) 184、及びアシルホスフィン、たとえばダロキュア TPOも使用することができる。
【0103】
焼結誘導剤が非UV反応性である場合、これは、限定するものではないがKCl、NaCl、MgCl2、AlCl3、LiCl、CaCl2などの塩、有機又は無機の酸、たとえば、HCl、H2SO4、HNO3、H3PO4、及び有機又は無機の塩基、たとえば、アンモニア、有機アミン(たとえば、アミノメチルプロパノール(AMP))、NaOH、及びKOH)からなる群から選択することができる。
【0104】
ある実施形態では、焼結は室温(たとえば、約25℃)であり、本発明のある実施形態では、焼結はAMシステムの操作温度、たとえば、約40℃~約50℃である。より高温も考慮される。
【0105】
図2は、本発明の種々の代表的な実施形態による導電性要素の製造方法のフローチャート図である。この方法は、付加製造システム、たとえば、システム110によって実施することができる。好適には、この方法は3Dインクジェット印刷システムによって実施される。
【0106】
他に規定されない限り、後述の操作は、実施の多くの組合せ又は順序で、同時又は連続のいずれかで実施することができることを理解すべきである。特に、フローチャート図の順序は、限定として見なすべきではない。たとえば、以下の説明又は特定の順序のフローチャート図に見られる2つ以上の操作は、異なる順序(たとえば、逆の順序)で、又は実質的に同時に実施することができる。さらに、後述のいくつかの操作は、任意選択であり、実施されない場合もある。
【0107】
この方法は10で始まり、11まで続き、そこでモデリング材料が受容媒体の上に分配されて層が形成される。受容媒体は、AMシステムのトレイ、トレイ上に配置された基板、又はAMシステムの分配ヘッドの1つ以上によってあらかじめ分配された層であってよい。12において、導電性インクが層の上に分配されて導電性要素が形成される。導電性要素は、限定するものではないが、線状形状(たとえば、直線又は曲線)、又はあらゆる他の平面形状などのあらゆる形状であってよい。本発明のある実施形態では、モデリング材料は好適には、さらに詳細に前述したように焼結誘導剤と混合される。これとは別に、又はこれに加えて、13で示されるように、焼結誘導剤を含む組成物を層及び/又は導電性要素の上に分配することができる。この組成物は、導電性要素の直接上に(場合により導電性要素に隣接する層の領域上にも)分配することができ、その場合、13は12の後に実施される。これとは別に、又はこれに加えて、13を12の前に実施することができ、その場合、導電性インクは、分配された組成物を含有する層の領域の上に分配される。
【0108】
本発明のある実施形態では、この方法は11に戻ってモデリング材料の追加層が形成される。追加層は導電性要素の上に分配することができる。モデリング材料が焼結誘導剤と混合される場合、導電性インクが導電性要素の上の焼結誘導剤と反応できるので、追加層によって焼結がさらに促進される。
【0109】
本発明のある実施形態では、この方法は、14に進み、そこで、形成された層の1つの上に電子又は電気デバイスが配置され、それによってデバイスの電気端子が導電性要素と接触する。このデバイスは、限定するものではないが、マイクロチップ、電池、PCB、発光デバイス(たとえば、発光ダイオード又はランプ)、無線周波数識別(RFID)タグ、トランジスタなどのあらゆる種類のものであってよい。デバイスが同じ面で結合する2つ以上の端子を含む場合、2種類以上のそれぞれの導電性要素が、場合により及び好適には、層の上に分配され、その後その上にデバイスが配置され、デバイスが所定の位置にあるときに、デバイスの電気端子と導電性要素との電気通信が確立できる層上の位置に、導電性要素が分配される。
【0110】
この方法は15で終了する。
モデリング材料が焼結誘導剤と混合される本発明の一実施形態による方法は、以下のようにまとめることができる:焼結誘導剤を含むモデリング材料が受容媒体の上に分配されて層が形成され、導電性インクがモデリング材料の層の上に分配されて導電性要素が形成される。
【0111】
焼結誘導剤を含む組成物が、導電性要素又はモデリング材料の上に分配される本発明の一実施形態による方法は以下のようにまとめることができる:モデリング材料が受容媒体の上に分配されて層が形成され、導電性インクがモデリング材料の層の上に分配されて導電性要素が形成され、焼結誘導剤を有する焼結誘導組成物が、上記層及び導電性要素の少なくとも1つの上に分配される。
【0112】
導電性インクが、焼結誘導剤を含む組成物の上に分配される本発明の一実施形態による方法は以下のようにまとめることができる:モデリング材料が受容媒体の上に分配されて層が形成され、焼結誘導剤を有する焼結誘導組成物が上記層の上に分配され、導電性インクが、分配された焼結誘導組成物の上に分配されて導電性要素が形成される。場合により、焼結誘導組成物の別の層が、上記層及び導電性要素の少なくとも1つの上に分配される。たとえば、焼結誘導組成物の2つの層の間に導電性要素が挟まれるように、焼結誘導組成物の追加層を分配することができる。
【0113】
本発明の実施形態のいずれかでは、本発明の方法の選択的操作は、場合により及び好適には、あらゆる数の層、あらゆる数の導電性要素、及びあらゆる数の電気もしくは電子デバイスを有する層状物体を得るために繰り返される。
【0114】
モデリング材料でできた層30及び導電性インクでできた導電性要素32の代表例を
図3に概略的に示している。モデリング材料の複数の層30と、それらの間に埋め込まれた複数の導電性要素32とから形成された物体40の代表例を
図4に概略的に示している。物体40が電気又は電子デバイス50をも含む実施形態の物体40の代表例を
図5に概略的に示している。
図5の概略図中、デバイス50は、デバイスの上にある導電性要素、及びデバイスの上下の別の導電性要素に接続される。しかし、必ずしもこのような場合である必要はなく、その理由は、ある用途では別の構成が考慮されるからである。たとえば、ある実施形態では、デバイス50は、デバイス50の下にある2つの別個の導電性要素に接続することができ、ある実施形態では、デバイス50は、デバイス50の上にある2つの別個の導電性要素に接続することができる。デバイス50が3つ以上の導電性要素に接続される実施形態も考慮される。これらの実施形態は、デバイス50が3つ以上の端子を有する場合に特に有用である。代表例の1つはトランジスタであり、その場合、1つの導電性要素はデバイス50をソース電極に接続するために使用され、1つの導電性要素はデバイスをドレイン電極に接続するために使用される、1つのパターンはデバイスの導電性要素をゲート電極に接続するために使用される。別の一例は多端子マイクロチップであり、その場合、マイクロチップの3つ以上の端子が異なる導電性要素に接続される。
【0115】
本明細書において使用される場合、「約」という用語は±10%を意味する。
「代表的な」という単語は、「ある例、場合、又は実例として機能する」ことを意味するために本明細書において使用される。「代表的」として記載されるいずれの実施形態も、必ずしも別の実施形態に対して好ましい又は有利であると解釈されるものではなく、及び/又は別の実施形態の特徴を含むことが排除されるものではない。
【0116】
「場合により」という単語は、ある実施形態では提供され、別の実施形態では提供されない」ことを意味するために本明細書において使用される。本発明のいずれの特定の実施形態も、複数の「場合による」特徴を、そのような特徴が矛盾しない限り含むことができる。
【0117】
単語の「含む」(comprises)、「含むこと」(comprising)、「含む」(includes)、「含むこと」(including)、「有すること」(having)、及びそれらの同根語は、「含むが、限定されるものではない」ことを意味する。
【0118】
「からなる」という用語は、「含み、限定される」ことを意味する。
「から本質的になる」という用語は、追加の成分、ステップ、及び/又は部分が請求される組成物、方法、又は構造の基本的で新規な特徴を実質的に変化させない場合にのみ、組成物、方法、又は構造が追加の成分、ステップ、及び/又は部分を含むことができることを意味する。
【0119】
本明細書において使用される場合、文脈が明確に他のことを示すのでなければ、単数形の「a」、「an」、及び「the」は複数への言及を含んでいる。たとえば、「1種類の化合物」又は「少なくとも1種類の化合物」は、複数の化合物、たとえばそれらの混合物を含むことができる。
【0120】
本明細書全体にわたって、本発明の種々の実施形態は、ある範囲の形式で示すことができる。範囲の形式の記述は、単に便宜的で簡潔にするためのものであり、本発明の範囲の変えられない限定と見なすべきではないことを理解すべきである。したがって、ある範囲の記述は、すべての可能な部分的範囲、及びその範囲内の個別の数値を明確に開示するものと見なすべきである。たとえば、1~6などの範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、及びその範囲内の個別の数値、たとえば、1、2、3、4、5、及び6を明確に開示していると見なすべきである。これは、範囲の幅には無関係に適用される。
【0121】
ある数値範囲が本明細書に示される場合は常に、示される範囲内で言及されるあらゆる数字(分数又は整数)を含むことを意味する。第1の指定の数と第2の指定の数と「の間に及ぶこと/の間の範囲」と、第1の指定の数から第2の指定の数まで「及ぶこと/の範囲」との語句は、本明細書において同義で使用され、第1及び第2の指定の数、ならびにそれらの間のあらゆる分数及び整数を含むことを意味する。
【0122】
本明細書全体にわたって、「炭化水素」という用語は、主として炭素原子と水素原子とから構成される化学基を集合的に表している。炭化水素は、アルキル、アルケン、アルキン、アリール、及び/又はシクロアルキルから構成されることができ、それぞれが置換又は非置換であってよく、1つ以上のヘテロ原子が割り込んでよい。炭素原子の数は2~20の範囲であってよく、好適にはより少なく、たとえば、1~10、又は1~6、又は1~4である。
【0123】
本明細書において使用される場合、「アミン」という用語は、-NR’R’’基 及び-NR’-基の両方を表し、ここでR’及びR’’は、それぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、アリールであり、これらの用語は以下で定義される。
【0124】
したがってアミン基は、R’及びR’’の両方が水素である場合は第1級アミン、R’が水素でありR’’がアルキル、シクロアルキル、又はアリールである場合は第2級アミン、R’及びR’’のそれぞれが独立して、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである場合は第3級アミンであってよい。
【0125】
あるいは、R’及びR’’は、それぞれ独立して、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、カルボニル、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってよい。
【0126】
本明細書において使用される場合、「アンモニウム」基は、+N-R’R’’R’’’で記載され、R’及びR’’は本明細書に記載の通りであり、R’’’はR’及びR’’に関する記載と同じである。R’、R’’、及びR’’’が、それぞれ独立して、アルキル、シクロアルキル、又はアリール(又は本明細書に記載の炭化水素)である場合、そのアンモニウムは第4級アンモニウムである。
【0127】
「アルキル」という用語は直鎖及び分岐鎖の基を含む飽和脂肪族炭化水素を表す。好適には、アルキル基は1~20個の炭素原子を有する。ある数値範囲、たとえば「1~20」が本明細書に記載される場合は常に、その基(この場合はアルキル基)が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、20個まで(20個を含む)の炭素原子を含有できることを意味する。より好適には、アルキルは、1~10個の炭素原子を有する中規模のサイズのアルキルである。最適には、他の指定がなければ、アルキルは、1~4個の炭素原子を有する低級アルキル(C(1~4)アルキル)である。アルキル基は置換されていても非置換であってもよい。置換アルキルは、1つ以上の置換基を有することができ、そのそれぞれの置換基は、独立して、たとえば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってよい。
【0128】
アルキル基は、末端基(この語句は前述のように定義され、1つの隣接原子に結合する)、又は結合基(この語句は前述のように定義され、その鎖の中の少なくとも2つの炭素によって2つ以上の部分を連結する)であってよい。アルキルが結合基である場合、本明細書において「アルキレン」又は「アルキレン鎖」と記載される場合もある。
【0129】
本明細書において、本明細書で定義されるような親水性基で置換されたC(1~4)アルキルは、本明細書における「親水性基」という語句に含まれる。
本明細書において使用される場合、アルケン及びアルキンは、それぞれ1つ以上の二重結合又は三重結合を含有する本明細書で定義されるアルキルである。
【0130】
「シクロアルキル」という用語は、1つ以上の環が完全共役π電子系を有さない、すべて炭素の単環式環又は縮合環(すなわち、隣接する炭素原子の組を共有する環)の基を表す。例としては、シクロヘキサン、アダマンタン(adamantine)、ノルボルニル、イソボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。シクロアルキル基は置換されていても非置換であってもよい。置換シクロアルキルは、1つ以上の置換基を有することができ、そのそれぞれの置換基は、独立して、たとえば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってよい。シクロアルキル基は、末端基(この語句は前述のように定義され、1つの隣接原子に結合する)、又は結合基(この語句は前述のように定義され、その2つ以上の場所において2つ以上の部分を連結する)であってよい。
【0131】
本明細書において定義されるような2つ以上の親水性基で置換された1~6個の炭素原子のシクロアルキルは、本明細書における「親水性基」という語句に含まれる。
「ヘテロ脂環式」という用語は、窒素、酸素、及び硫黄などの1つ以上の原子を環の中に有する単環式基又は縮合環基を表す。これらの環は1つ以上の二重結合を有することもできる。しかし、これらの環は完全共役π電子系を有さない。代表例は、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、モルホリノ、オキサゾリジン(oxalidine)などである。ヘテロ脂環式は、置換されていても非置換であってもよい。置換ヘテロ脂環式は、1つ以上の置換基を有することができ、そのそれぞれの置換基は、独立して、たとえば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってよい。ヘテロ脂環式基は、末端基(この語句は前述のように定義され、1つの隣接原子に結合する)、又は結合基(この語句は前述のように定義され、その2つ以上の場所において2つ以上の部分を連結する)であってよい。
【0132】
窒素及び酸素などの電子供与原子を1つ以上含み、炭素原子対ヘテロ原子の数の比が5:1以下であるヘテロ脂環式基は、本明細書における「親水性基」という語句に含まれる。
【0133】
「アリール」という用語は、完全共役π電子系を有するすべて炭素の単環式の又は縮合環多環式(すなわち、隣接する炭素原子の組を共有する環)の基を表す。アリール基は、置換されていても非置換であってもよい。置換アリールは、1つ以上の置換基を有することができ、そのそれぞれの置換基は、独立して、たとえば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、N-カルバメート、O-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってよい。アリール基は、末端基(この語句は前述のように定義され、1つの隣接原子に結合する)、又は結合基(この語句は前述のように定義され、その2つ以上の場所において2つ以上の部分を連結する)であってよい。
【0134】
「ヘテロアリール」という用語は、環の中に、たとえば窒素、酸素、及び硫黄などの1つ以上の原子を有し、さらに、完全共役π電子系を有する単環式又は縮合環(すなわち、隣接する原子の組を共有する環)の基を表す。限定するものではないが、ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、及びプリンが挙げられる。ヘテロアリール基は、置換されていても非置換であってもよい。置換ヘテロアリールは、1つ以上の置換基を有することができ、そのそれぞれの置換基は、独立して、たとえば、ヒドロキシアルキル、トリハロアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ脂環式、アミン、ハライド、スルホネート、スルホキシド、ホスホネート、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、チオヒドロキシ、チオアルコキシ、チオアリールオキシ、シアノ、ニトロ、アゾ、スルホンアミド、C-カルボキシレート、O-カルボキシレート、N-チオカルバメート、O-チオカルバメート、尿素、チオ尿素、O-カルバメート、N-カルバメート、C-アミド、N-アミド、グアニル、グアニジン、及びヒドラジンであってよい。ヘテロアリール基は、末端基(この語句は前述のように定義され、1つの隣接原子に結合する)、又は結合基(この語句は前述のように定義され、その2つ以上の場所において2つ以上の部分を連結する)であってよい。代表例は、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
【0135】
「ハロゲン」及び「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を表す。
「ハライド」又は「ハロゲンイオン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のアニオンを表す。
【0136】
「ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハライドでさらに置換された前述の定義のアルキル基を表す。
「サルフェート」という用語は、-O-S(=O)2-OR’末端基(この用語は前述の定義の通りである)又は-O-S(=O)2-O-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は前述の定義の通りである。
【0137】
「チオサルフェート」という用語は、-O-S(=S)(=O)-OR’末端基又は-O-S(=S)(=O)-O-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は前述の定義の通りである。
【0138】
本明細書において使用される場合、「カルボニル」又は「カーボネート」という用語は、-C(=O)-R’末端基又は-C(=O)-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は前述の定義の通りである。
【0139】
本明細書において使用される場合「チオカルボニル」という用語は、-C(=S)-R’末端基又は-C(=S)-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は前述の定義の通りである。
【0140】
本明細書において使用される場合、「オキソ」という用語は、酸素原子が指定の位置で二重結合によって原子(たとえば、炭素原子)に結合する(=O)基を表す。
本明細書において使用される場合、「チオオキソ」という用語は、硫黄原子が指定の位置で二重結合によって原子(たとえば、炭素原子)に結合する(=S)基を表す。
【0141】
「オキシム」という用語は、=N-OH末端基又は=N-O-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表す。
「ヒドロキシル」という用語は-OH基を表す。
【0142】
「アルコキシ」という用語は、本明細書に定義される-O-アルキル基及び-O-シクロアルキル基の両方を表す。
「アリールオキシ」という用語は、本明細書に定義される-O-アリール基及び-O-ヘテロアリール基の両方を表す。
【0143】
「チオヒドロキシ」という用語は-SH基を表す。
「チオアルコキシ」という用語は、本明細書に定義される-S-アルキル基、及び-S-シクロアルキル基の両方を表す。
【0144】
「チオアリールオキシ」という用語は、本明細書に定義される-S-アリール基及び-S-ヘテロアリール基の両方を表す。
「ヒドロキシアルキル」は、「アルコール」として記載される場合もあり、ヒドロキシ基で置換された本明細書の定義のアルキルを表す。
【0145】
「シアノ」という用語は-C≡N基を表す。
「イソシアネート」という用語は-N=C=O基を表す。
「イソチオシアネート」という用語は-N=C=S基を表す。
【0146】
「ニトロ」という用語は-NO2基を表す。
「ハロゲン化アシル」という用語は、R’’’’が前述の定義のハライドである-(C=O)R’’’’基を表す。
【0147】
本明細書において使用される場合、「カルボキシレート」という用語は、C-カルボキシレート及びO-カルボキシレートを含む。
「C-カルボキシレート」という用語は、-C(=O)-OR’末端基又は-C(=O)-O-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は本明細書に定義される通りである。
【0148】
「O-カルボキシレート」という用語は、-OC(=O)R’末端基又は-OC(=O)-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は本明細書に定義される通りである。
【0149】
本明細書において使用される場合、「チオカルボキシレート」という用語は、C-チオカルボキシレート及びO-チオカルボキシレートを含む。
「C-チオカルボキシレート」という用語は、-C(=S)-OR’末端基又は-C(=S)-O-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は本明細書に定義される通りである。
【0150】
「O-チオカルボキシレート」という用語は、-OC(=S)R’末端基又は-OC(=S)-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’は本明細書に定義される通りである。
【0151】
本明細書において使用される場合、「カルバメート」という用語は、N-カルバメート及びO-カルバメートを含む。
「N-カルバメート」という用語は、R’’OC(=O)-NR’-末端基又は-OC(=O)-NR’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0152】
「O-カルバメート」という用語は、-OC(=O)-NR’R’’末端基又は-OC(=O)-NR’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0153】
本明細書において使用される場合、「チオカルバメート」という用語は、N-チオカルバメート及びO-チオカルバメートを含む。
「O-チオカルバメート」という用語は、-OC(=S)-NR’R’’末端基又は-OC(=S)-NR’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0154】
「N-チオカルバメート」という用語は、R’’OC(=S)NR’-末端基又は-OC(=S)NR’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0155】
チオカルバメートは、カルバメートに関して本明細書に記載されるように、直鎖又は環状であってよい。
本明細書において使用される場合、「ジチオカルバメート」という用語は、S-ジチオカルバメート及びN-ジチオカルバメートを含む。
【0156】
「S-ジチオカルバメート」という用語は、-SC(=S)-NR’R’’末端基又は-SC(=S)NR’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0157】
「N-ジチオカルバメート」という用語は、R’’SC(=S)NR’-末端基又は-SC(=S)NR’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0158】
本明細書に記載される場合、「アミド」という用語はC-アミド及びN-アミドを含む。
「C-アミド」という用語は、-C(=O)-NR’R’’末端基又は-C(=O)-NR’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0159】
「N-アミド」という用語は、R’C(=O)-NR’’-末端基又はR’C(=O)-N-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’及びR’’は本明細書に定義される通りである。
【0160】
「ヒドラジン」という用語は、-NR’-NR’’R’’’末端基又は-NR’-NR’’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’、R’’、及びR’’’は本明細書に定義される通りである。
【0161】
本明細書において使用される場合、「ヒドラジド」という用語は、-C(=O)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=O)-NR’-NR’’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’、R’’、及びR’’’は本明細書に定義される通りである。
【0162】
本明細書において使用される場合、「チオヒドラジド」という用語は、-C(=S)-NR’-NR’’R’’’末端基又は-C(=S)-NR’-NR’’-結合基(これらの語句は前述の定義の通りである)を表し、R’、R’’、及びR’’’は本明細書に定義される通りである。
【0163】
本明細書において使用される場合、「アルキレングリコール」という用語は、-O-[(CR’R’’)z-O]y-R’’’末端基又は-O-[(CR’R’’)z-O]y-結合基を表し、R’、R’’及びR’’’は本明細書に定義される通りであり、zは1~10、好適には2~6、より好適には2又は3の整数であり、yは1以上の整数である。好適にはR’及びR’’の両方が水素である。zが2であり、yが1である場合、この基はエチレングリコールである。zが3であり、yが1である場合、この基はプロピレングリコールである。
【0164】
yが4を超える場合、そのアルキレングリコールは本明細書においてポリ(アルキレングリコール)と記載される。本発明のある実施形態では、ポリ(アルキレングリコール)基又は部分は、10~200個の繰り返しアルキレングリコール単位を有することができ、そのためzは10~200、好適には10~100、より好適には10~50となる。
【0165】
別個の実施形態の状況で明確にするために記載される本発明の特定の複数の特徴は、1つの実施形態中で組み合わせて提供することのできることを理解されたい。逆に、1つの実施形態の状況で簡潔にするために記載される本発明の種々の特徴は、別々に、もしくはあらゆる適切な部分的な組合せで、又は適切な場合に本発明に記載のあらゆる他の実施形態に提供することもできる。種々の実施形態の状況で記載される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素を使用しないと機能しないのでなければ、それらの実施形態の本質的な特徴と見なすべきではない。
【0166】
以上に概略が示され、以下の特許請求の範囲の項で請求される本発明の種々の実施形態及び態様は、以下の実施例で実験的確証が見出される。
【実施例】
【0167】
これより以下の実施例を参照するが、それらは上記説明とともに、非限定的な方法で、本発明のある実施形態を例証している。
本発明のある実施形態により実験を行った。AMシステムを用いて、モデリング材料からトレンチを有する物体を作成した。トレンチの寸法は,幅10mm、長さ40mm、及び深さ2mmであった。
【0168】
導電性インクは、その中にAg粒子が含まれ、S.マグダッシ(Magdassi)インク、バッチ番号IC-3-9-14-2である。
2つの焼結誘導剤をこれらの実験で試験した。両方の誘導剤は、重合させた、第4級アンモニウム基を有するアクリルモノマーであった。第1の誘導剤は、ビジオマー(Visiomer) TMAEMCを含み、第2の誘導剤はアダムクアト(Adamquat)
MC 80を含んだ。これらのモノマーに、3%w/wのTPO光開始剤を加え(0.45gのTPOを15gのモノマーに加え)、続いて40℃で15分間加熱し、激しく混合した。
【0169】
2Wのフルークマルチメータを用いて表面抵抗測定を行った。
実験1:
光開始剤を含むアクリル焼結誘導剤約0.7gをトレンチに塗布した後、UV中圧水銀ランプを用いて硬化させた。あるトレンチ中のサンプル(トレンチ1と記載)は、半重合表面を得るために8サイクル曝露し、別のトレンチ中のサンプル(トレンチ2と記載)は6サイクル曝露した。さらなるトレンチを対照として使用し、焼結誘導剤は塗布しなかった。
【0170】
塗布したトレンチの画像を
図6Aに示しており、アダムクアト(Adamquat) MC 80を塗布したトレンチは画像の左側に示しており、ビジオマー(Visiomer) TMAEMCを塗布したトレンチは画像の右側に示している。トレンチには、それぞれトレンチ1及びトレンチ2を表す「1」及び「2」が付けられている。印のないトレンチは、アクリル材料を塗布していない対照である。
【0171】
この実験の抵抗測定の結果を以下の表1にまとめている。
【0172】
【0173】
実験2:
約0.1gのインクをトレンチ1及び2、ならびに実験1の対照トレンチに塗布した。したがって、トレンチ1及び2では、導電性インクがアクリル焼結誘導剤の上に塗布され、対照トレンチはアクリル材料を有さなかった。
【0174】
インク塗布直後のトレンチの画像を
図6Bに示している。表示は
図6Aと同じであり、アダムクアト(Adamquat) MC 80を有するトレンチは左側であり、ビジオマー(Visiomer) TMAEMCを有するトレンチは右側であり、印の「1」及び「2」はそれぞれトレンチ1及びトレンチ2を表し、印のないトレンチは対照である。
【0175】
室温で30分後トレンチ1及び2の銀色が変化した。対照トレンチでは色の変化は確認されなかった。これは
図6Cの画像に示される(表示は
図6Aと同じである)。
次に、溶媒を蒸発させるために、サンプルを40℃の温度で1時間維持した(
図6D、表示は
図6Aと同じである)。
実験3:
次に、実験2のトレンチ1及び2に、光開始剤を含むアクリル焼結誘導剤約0.7gを再び塗布した。アクリル材料を塗布する前に導電性インクを乾燥させたので、アクリレートと導電性インクとが混合されないことは明らかであった。UV中圧水銀ランプを用いて硬化を行った。トレンチ1は、半重合表面を得るために8サイクル曝露し、トレンチ2は6サイクル曝露した(
図6E、表示は
図6Aと同じである)。
【0176】
前述のように表面の抵抗を測定した。導電率測定のために導電性インクと直接接触できるように、塗布パターンは交差させた。
抵抗測定の結果を以下の表2にまとめており、横列Aはアクリル焼結誘導剤の再塗布を行っていない導電性インクの抵抗に対応し、横列Bはアクリル焼結誘導剤を再塗布した場合の抵抗に対応する。
【0177】
【0178】
表2は、焼結誘導剤を有する本発明のある実施形態による第4級アンモニウム基を含有するモデリング材料によって、インクの導電率を首尾良く改善されることを示している。インクの下に焼結誘導剤を使用することで、導電率が対照よりも約3桁増加し、インクの下及び上の両方に焼結誘導剤を使用することで、導電率が対照よりも約6桁増加する。
実験4:
以下の表3は、堆積された導電性パスのインサイチュ焼結への使用に適切な、本発明のある実施形態による焼結不活性材料を含有する代表的な焼結誘導組成物を示している。
【0179】
【0180】
抵抗測定の結果を以下の表4にまとめている。表4の横列Aは、焼結誘導剤を有する焼結誘導組成物の上に導電性インクを堆積した実験における導電性インクの抵抗に対応している。表4の横列Bは、導電性インクが焼結誘導組成物の2つの層の間に挟まれた(導電性インクを焼結誘導組成物の上に堆積し、次に、堆積した導電性インクの上に焼結誘導組成物の層を堆積した)実験における導電性インクの抵抗に対応している。表4の一番右の縦列は、焼結誘導組成物を使用せずに導電性インクを堆積した対照実験の抵抗を示している.示されるように、本発明の実施形態の焼結誘導組成物は、導電率が数桁改善される予期せぬ効果が得られる。
【0181】
【0182】
本発明をその特定の実施形態とともに記載してきたが、多くの代案、修正、及び変形が当業者に明らかとなることは明白である。したがって、添付の請求項の意図及び広範な範囲の中にあるそのようなすべての代案、修正、及び変形を含むことが意図される。
【0183】
本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許、又は特許出願が、参照により本明細書に援用されると明確に個別に示される場合と同じ程度まで、それらの全体が参照により本明細書に援用される。さらに、本願中のあらゆる参考文献の引用又は確認は、そのような参考文献が本発明に対する従来技術として利用できることの承認であると解釈すべきではない。項の表題が使用される範囲内で、それらが必ずしも限定であると解釈すべきではない。