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  • 特許-シールリング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】シールリング
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3232 20160101AFI20231030BHJP
   F16J 15/3244 20160101ALI20231030BHJP
【FI】
F16J15/3232 201
F16J15/3244
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021207771
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2022136966
(43)【公開日】2022-09-21
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】10 2021 105 500.8
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501479868
【氏名又は名称】カール・フロイデンベルク・カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Carl Freudenberg KG
【住所又は居所原語表記】Hoehnerweg 2-4, D-69469 Weinheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エーリッヒ プレム
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル フレーリヒ
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-100882(JP,A)
【文献】特開2009-287651(JP,A)
【文献】特開2015-158253(JP,A)
【文献】実開平05-079130(JP,U)
【文献】特開2006-220269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3232
F16J 15/3244
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する第1の機械要素(22)に取り付けるためのシールリングであって、
前記シールリングの半径方向(1)の内側に配置された静的なシール座(2)と、
該シール座(2)の半径方向(1)の外側に配置された2つのシールリップ(3,4)と
を有し、
前記シールリップ(3,4)は、軸線方向シールリップ(5,6)として形成されており、前記軸線方向シールリップのうちの1つ(5)は、半径方向内側の第1の軸線方向シールリップ(7)として形成されており、
前記軸線方向シールリップのうちの1つ(6)は、半径方向外側の第2の軸線方向シールリップ(8)として形成されており、
前記第2の軸線方向シールリップ(8)は、外周側で半径方向に間隔(9)をあけて前記第1の軸線方向シールリップ(7)を包囲しており、
前記第1の軸線方向シールリップ(7)は、半径方向(1)において前記第2の軸線方向シールリップ(8)よりも大きなフレキシビリティを有しており、
前記第2の軸線方向シールリップ(8)は、半径方向において前記第1の軸線方向シールリップ(7)とは反対の側の半径方向外側に、表面構造(10)であって、前記表面構造(10)に接する空気層(11)を渦動し、前記シールリングの周辺環境(13)からの汚染物質(12)を防ぐように、前記シールリングの所定の使用中において空力的にアクティブな表面構造(10)を有する、シールリング。
【請求項2】
前記静的なシール座(2)と前記軸線方向シールリップ(7,8)とは、それぞれゴム弾性的なシール材料から成っている、請求項1記載のシールリング。
【請求項3】
前記シール座(2)と前記軸線方向シールリップ(7,8)とは、一体にかつ材料を統一されて形成されている、請求項1または2記載のシールリング。
【請求項4】
前記シールリングは、高靱性材料から成る実質的にL字形の支持体(14)を有しており、前記支持体(14)は、ゴム弾性的なシール材料により少なくとも実質的に包囲されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のシールリング。
【請求項5】
前記支持体(14)は、前記静的なシール座(2)を半径方向において外周側で包囲する軸線方向脚部(15)を有している、請求項4記載のシールリング。
【請求項6】
前記支持体(14)は、前記軸線方向シールリップ(7,8)が結合された半径方向脚部(16)を有している、請求項4または5記載のシールリング。
【請求項7】
前記第1の軸線方向シールリップ(7)は、その自由端部(17)とは反対の側に関節状の根元領域(18)を有しており、前記根元領域(18)は、横断面で見て先細に形成されている、請求項1から6までのいずれか1項記載のシールリング。
【請求項8】
前記表面構造(10)は、周方向(21)に見て交互に形成された隆起部(19)と凹部(20)とを有している、請求項1記載のシールリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールリングであって、シールリングの半径方向内側に配置された静的なシール座と、シール座の半径方向外側に配置された2つのシールリップとを有しており、シールリップは、軸線方向シールリップとして形成されており、軸線方向シールリップのうちの1つは、半径方向内側の第1の軸線方向シールリップとして形成されており、軸線方向シールリップのうちの1つは、半径方向外側の第2の軸線方向シールリップとして形成されており、第2の軸線方向シールリップは、外周側で半径方向に間隔をあけて第1の軸線方向シールリップを包囲している、シールリングに関する。
【0002】
背景技術
このようなシールリングは、一般に周知である。シールリングは、その静的なシール座でもって、例えば軸の、シールされるべき第1の機械要素に相対回動不能に配置されていると共に、その2つの軸線方向シールリップでもって動的にシールするように、例えば半径方向に間隔をあけて軸を包囲しているケーシングの、シールされるべき第2の機械要素の半径方向に延びるシール面に当接してシールする。
【0003】
軸線方向シールリップによるこのような動的なシールは、通常、潤滑が不十分であるもしくは全く行われない。したがって特に、互いにシールされるべき機械要素同士の相対回転数が高いと、摩耗が増大し、シールリングの早期破損が生じる恐れがある。
【0004】
シールされるべき機械要素に対する軸線方向シールリップの軸線方向の圧着力が減少させられると、確かに摩擦ひいては摩耗も低下するが、しかしながら同様にシール作用も低下することになるため、このようなシールリングが用いられたシールユニットは、全体として満足のいく使用特性を有してはおらず、特に不都合に短い使用期間を有している。
【0005】
発明の概要
本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式のシールリングを改良して、シールされるべき機械要素の高回転数においてシールリングが使用される場合でも、シールリングは長い使用期間中に良好な使用特性を有しているようにすることにある。このシールリングはさらに、低摩擦であることが望ましく、エネルギ効率良く作動し得る。
【0006】
この課題は本発明に基づき、請求項1記載のシールリングにより解決される。有利な構成については、請求項1を直接にまたは間接的に引用する各請求項を参照されたい。
【0007】
前記課題を解決するために設けられた、冒頭で述べたようなシールリングでは、第1の軸線方向シールリップが、半径方向において第2の軸線方向シールリップよりも大きなフレキシビリティを有しており、第2の軸線方向シールリップは、半径方向において第1の軸線方向シールリップとは反対の側の半径方向外側に、シールリングの所定の使用中は空力的にアクティブな表面構造を有しており、表面構造により、表面構造に接する空気層が渦動させられ、シールリングの周辺環境からの汚染物質が防がれるようになっている。
【0008】
次に、シールリングの機能について説明する。
【0009】
高回転数の場合でも、軸線方向シールリップの構成および配置により低摩擦トルクだけが生ぜしめられ、シールリングの作動中のエネルギ損失は最小である。
【0010】
半径方向内側の第1の軸線方向シールリップは、比較的高い回転数では遠心力に基づき負荷を軽減し、これにより低摩擦トルクだけを生ぜしめるように設計されている。これにより生じる、やや低下させられたシール確実性を補償するために、第2の軸線方向シールリップの、半径方向において反対の側に表面構造が設けられており、表面構造は、シールリングの回転時に、つまり所定の使用中に、渦動空気流を生ぜしめる。この空気流は、汚染物質をシール箇所から遠ざけると共に、第1の軸線方向シールリップの、遠心力に基づく圧着の低下により低下させられたシール確実性を補償する。重要なのは、追加的な摩擦トルクが生ぜしめられること無しに、表面構造により有利な使用特性が達成される点である。遠心力に基づき負荷軽減された第1の軸線方向シールリップと、第2の軸線方向シールリップの空力的にアクティブな表面構造とを組み合わせることにより、シールリングは高回転数の場合でも極少ない摩擦でエネルギ効率良く作動することができる。同時に、全ての回転数においてシールリングのひいてはシールリングが用いられるシールユニットのほぼ均一な堅牢性が得られる。堅牢性は、低回転数ではシールされるべき表面に接触している軸線方向シールリップに由来し、より高い回転数では主に、空力的にアクティブな表面構造により生ぜしめられる空気流に由来する。
【0011】
静的なシール座が、シールされるべき機械要素に相対回動不能に配置されていることにより、静的なシール座は、シールされるべき機械要素の回転数で共に回転する。
【0012】
一定の良好な使用特性において可能な限り長い使用期間を達成するために、本発明によるシールリングは内在潤滑剤を有していてもよい。動的に作用する軸線方向シールリップの内在潤滑を実現するために、第1の構成では、半径方向において2つの軸線方向シールリップの間にグリース入れが配置されている、ということが想定されていてもよい。軸線方向シールリップの設計時に、半径方向外側の軸線方向シールリップは使用されるグリースを保持するように十分剛性に寸法決めされている、ということが留意される。第2の構成では、軸線方向シールリップは、摩擦を低下させひいては摩耗を減少させる表面コーティングを有している、ということが想定されていてもよい。グリース入れと、摩耗を減少させるコーティングとが互いに組み合わせられてもよい。
【0013】
1つの有利な構成では、静的なシール座と軸線方向シールリップとは、それぞれゴム弾性的なシール材料から成っている、ということが想定されていてもよい。ゴム弾性的なシール材料は、様々な用途に関する多くの様々な仕様が周知であり、容易に入手可能であることが多い。
【0014】
シール座と軸線方向シールリップとは、好適には互いに移行し合うように一体にかつ材料を統一されて形成されている。これにより、シールリングは簡単に確実に加工されかつ廉価に製造可能であると共に、概ね単一種でリサイクル可能である。
【0015】
シールリングは、高靱性材料から成る実質的にL字形の支持体を有していてもよく、この場合、支持体は、ゴム弾性的なシール材料により少なくとも実質的に包囲されている。この場合に有利なのは、静的なシール座が支持体により確実にシールされて機械要素上、例えば軸上に保持される、という点である。シールリングの取付け状態では、支持体の脚部がシール座の外周側を、半径方向に予荷重を加えて包囲している。さらに有利なのは、支持体は、シール材料により周辺環境の影響から良好に保護されている、という点である。したがって、例えば別個にもたらされるべき防食手段を必要としない。
【0016】
支持体は、静的なシール座を半径方向において外周側で包囲する軸線方向脚部を有していてもよい。軸線方向脚部により、静的なシール座は弾性的な予荷重を加えられた状態で、シールユニットのシールされるべき機械要素のシールされるべき表面に密着させられる。
【0017】
支持体はさらに、軸線方向シールリップが回動可能に結合された半径方向脚部を有していてもよい。軸線方向シールリップの相互のかつ静的なシール座に対する空間的な対応配置は、支持体により明確に規定されている。シールリングの弛緩による変形は、実地では支持体により防がれている。
【0018】
第1の軸線方向シールリップは、その自由端部とは反対の側に関節状の根元領域を有していてもよく、根元領域は、横断面で見て先細に形成されている。このような構成に基づき、第1の軸線方向シールリップは、半径方向において第2の軸線方向シールリップよりも大きなフレキシビリティを有している。関節状の根元領域に基づき、シールリングの所定の使用中に回転させられると、シールされるべき面に対する第1の軸線方向シールリップの圧着が大幅に低下させられ、これにより摩擦も同様に低下させられ、シールリングのエネルギ効率が高められることになる。第1の軸線方向シールリップは、最高回転数では実質的に軸線方向の予荷重無しで、シールされるべき面に当接するように触れるか、またはそれどころかシールされるべき面から持ち上がるように設計されている。この場合、第1の軸線方向シールリップは事実上、摩擦トルクを生ぜしめない。この場合、シール作用は実質的に、半径方向外側の第2の軸線方向シールリップのみにより生ぜしめられる。第2の軸線方向シールリップは、シールされるべき面に「ちょうど触れる」ように設計される。すなわち、製造誤差の状態に応じて、ここには僅かな被覆または最小の隙間が生じる。最高回転数において、第1の軸線方向シールリップは、対応回転面に対するその圧着力を大幅に軽減されはするが、持ち上がることはない。半径方向内側の第1の軸線方向シールリップの比較的弱い軸線方向での圧着に基づき低下したシール作用を、空力的なシール作用が補償する。
【0019】
表面構造は、周方向に見て交互に形成された隆起部と凹部とを有していてもよい。この場合、空力的な表面構造は、各用途に応じてそれぞれ異なって形成されていてもよい。例えば、表面構造をシールリングの回転方向とは関係なく、常に変わらず良好に機能するように形成する可能性がある。1つの別の構成では、表面構造は、回転方向に結び付いて作用するため、一方の回転方向においてのみ機能する、ということが想定されていてもよい。表面構造の領域において空気流が変向させられることにより、表面構造に接する空気層が渦動することになる。その結果、周辺環境からの汚染物質が軸線方向シールリップに迫り、シールされるべき空間内へ侵入することが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
以下に、本発明によるシールリングの1つの実施例を、それぞれ概略図で示す図1図3に基づき、より詳しく説明する。
図1】本発明によるシールリングが用いられたシールユニットを示す図である。
図2図1に示したシールリングの斜視図である。
図3図2に示したシールリングの表面の拡大図である。
【0021】
発明の実施
図1には、シールユニットが断面図で示されている。このシールユニットには、本発明によるシールリングが用いられている。シールリングは、2つの機械要素22,23を互いにシールしている。図示の実施例では、第1の機械要素22はシールされるべき軸により形成されており、第2の機械要素23はシールされるべきケーシングにより形成されている。
【0022】
シールリングは、その静的なシール座2を介して、第1の機械要素22に相対回動不能に配置されている。シールリングと第1の機械要素22との間のシールは、シールリングの半径方向1において内側に配置された静的なシール座2により行われる。第2の機械要素23は、それぞれ軸線方向シールリップ5,6として形成されたシールリップ3,4によりシールされる。第1の軸線方向シールリップ7はシールリングの半径方向内側に配置されており、第2の軸線方向シールリップ8はシールリングの半径方向外側に配置されている。
【0023】
2つの軸線方向シールリップ7,8の間に半径方向の間隔9により形成されたギャップ内には、バリアグリースが配置されていてもよい。
【0024】
第1の軸線方向シールリップ7は、半径方向1において第2の軸線方向シールリップ8よりも大きなフレキシビリティを有している。第1の軸線方向シールリップ7は、その自由端部17とは反対の側に関節状の根元領域18を有しており、根元領域18は図示のように、横断面で見て先細に形成されている。
【0025】
第2の軸線方向シールリップ8は、半径方向外側の、半径方向において第1の軸線方向シールリップ7とは反対の側に、空力的に作用する表面構造10を有している。これにより、シールリングが回転すると、表面構造10に接する空気層11の渦動が生じ、周辺環境13からの汚染物質12が防がれる。
【0026】
シールリングがシールされるべき第1の機械要素22と共に回転する回転数が高まるほど、第2の機械要素23のシールされるべき表面に対する第1の軸線方向シールリップ7の圧着は弱まる。回転数が高まるほど、第2の軸線方向シールリップ8の外周面を包囲している表面構造10は、より効果的である。第1の軸線方向シールリップ7と第2の軸線方向シールリップ8とが協働することで、長い使用期間中に高いエネルギ効率における最小の摩擦により、良好なシール作用を達成することができる。
【0027】
シールリングのシール作用は、シールされるべき第1の機械要素22の停止状態からその最大回転数まで、実質的に一定である。停止状態および低回転数において、第1の軸線方向シールリップ7は比較的大きな軸線方向の予荷重でもって密接するように、第2の機械要素に接触する。第2の軸線方向シールリップ8の表面構造10は、シール作用には事実上影響を及ぼさない。回転数が上昇すると、シールされるべき第2の機械要素23に対する第1の軸線方向シールリップ7の圧着が弱まると同時に、周辺環境13からの汚染物質12を防ぐ表面構造10の効果が高まる。
【0028】
図示の実施例では、シール座2と軸線方向シールリップ7,8とは、互いに移行し合うように一体にかつ材料を統一されて形成されており、ゴム弾性的なシール材料から成っている。シールリングはL字形の支持体14を有しており、支持体14は、例えば金属材料から成っている。支持体は、シールリングの良好な形状安定性をもたらす。支持体14の軸線方向脚部15は、第1の機械要素22の表面における静的なシール座2の良好なシール作用を生ぜしめる。これに対して半径方向脚部16には、軸線方向シールリップ7,8が回動可能に結合されている。
【0029】
図2には、図1に示したシールリングが斜視図で示されている。
【0030】
図3には、図2に示したシールリングの外周面が拡大図で示されている。表面構造10は、複数の隆起部19と複数の凹部20とにより形成されており、この場合、隆起部19と凹部20とは、周方向21において交互に、周面に沿って延びている。
図1
図2
図3