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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】RFイオントラップイオン装填方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/00 20060101AFI20231030BHJP
   H01J 49/06 20060101ALI20231030BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20231030BHJP
   H01J 49/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01J49/00 500
H01J49/06 700
H01J49/42 150
H01J49/42 250
H01J49/02 200
H01J49/42 900
H01J49/00 310
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021510881
(86)(22)【出願日】2019-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 IB2019057459
(87)【国際公開番号】W WO2020049487
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】62/728,637
(32)【優先日】2018-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510075457
【氏名又は名称】ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】グナ, ミルシア
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-517888(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044247(WO,A1)
【文献】特開2009-117388(JP,A)
【文献】米国特許第06177668(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0248157(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0219337(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/00
H01J 49/02
H01J 49/06
H01J 49/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計内でイオンを処理する方法であって、
異なる質量/電荷(m/z)比を有する複数のイオンを衝突セル内に捕獲することと、
前記イオンを前記衝突セルからm/z比の降順において放出することと、
複数のロッドを有する質量分析器内に前記イオンを受容することであって、前記複数のロッドのうちの少なくとも1つにRF電圧が印加される、ことと
を含み、
前記RF電圧の振幅は、前記放出されたイオンが前記質量分析器によって受容されるにつれて、第1の値からより低い第2の値に変動される、方法。
【請求項2】
前記受容されるイオンを前記質量分析器から質量選択的軸方向射出(MSAE)を介して放出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記衝突セルは、四重極構成に配列された複数のロッドを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記イオンを前記衝突セルから放出する前記ステップは、質量選択的軸方向射出(MSAE)を利用することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記MSAEは、前記衝突セルの前記複数のロッドの2つの半径方向に対向するロッドを横断した双極電圧の印加によって実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記双極電圧の振幅は、第1の値から第2のより低い値に漸減され、降順m/z比においてイオンを前記衝突セルから放出する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記MSAEは、励起電圧を前記衝突セルと前記質量分析器との間に配置されたレンズに印加することによって実施される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記質量分析器は、四重極構成に配列された複数のロッドを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記RF電圧は、前記複数のロッドのうちの少なくとも1つに印加される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記RF電圧の振幅は、前記第1の値から前記第2の値に線形に変動される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記RF電圧の振幅は、前記第1の値から前記第2の値に非線形に変動される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
イオンが前記質量分析器よって前記衝突セルから受容されるにつれて、ガス圧力パルスを前記質量分析器印加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
複数のイオンを捕獲する前記ステップに先立って、以下のステップ:
イオンを発生させるステップと、
捕獲するために、前記発生されたイオンのサブセットを質量選択するステップと
を実施することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
低m/z比から高m/z比において、前記イオンを前記質量分析器から質量選択的に軸方向に射出することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
質量分析計であって、
異なる質量/電荷(m/z)比を有する複数のイオンを発生させるための源と、
前記複数のイオンの少なくともサブセットを受容および捕獲するためのイオントラップであって、前記サブセットは、異なるm/z比を有するイオンを備える、イオントラップと、
前記イオントラップの下流に位置付けられた質量分析器であって、前記質量分析器は、複数のロッドを備え、前記複数のロッドのうちの少なくとも1つにRF電圧が印加され得る質量分析器と、
m/z比の降順において前記イオントラップからの前記捕獲されたイオンの放出をもたらし、前記放出されたイオンが前記質量分析器によって受容されるにつれて、前記質量分析器の少なくとも1つのロッドに印加される前記RF電圧の振幅を変動させるためのコントローラと
を備える、質量分析計。
【請求項16】
前記イオントラップは、四重極構成に配列され4つのロッドを備える、請求項15に記載の質量分析計。
【請求項17】
イオンをその中に半径方向に閉じ込めるために、RF電圧を前記質量分析器の前記少なくとも1つのロッドに印加するための少なくとも第1のRF電圧源と、RF電圧を前記イオントラップの少なくとも1つのロッドに印加するための少なくとも第2のRF電圧源とをさらに備える、請求項15に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記質量分析計はさらに、前記イオントラップ内に含有されるイオンの放出を生じさせるために前記イオントラップの前記4つのロッドのうちの2つのロッドを横断して励起電圧を印加するための、前記コントローラの制御下で動作する励起電圧源を備える、請求項16に記載の質量分析計。
【請求項19】
前記コントローラは、前記放出されたイオンが前記質量分析器によって受容されるにつれて、前記第1のRF電圧源を制御し、前記質量分析器の前記少なくとも1つのロッドに印加されるRF電圧の振幅の変動を生じさせる、請求項17に記載の質量分析計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、参照することによってその全体として本明細書に組み込まれる、2018年9月7日に出願され、「RF Ion Trap Ion Loading Method」と題された、米国仮出願第62/728,637号の優先権を主張する。
【0002】
本教示は、概して、質量分析計内のイオントラップ、例えば、線形イオントラップ(LIT)の中へのあるm/z比の範囲を有するイオンの効率的輸送のための方法およびシステムに関連する。
【背景技術】
【0003】
(背景)
質量分析法(MS)は、定質的および定量的用途の両方を伴う、分子の質量/電荷比を測定するための分析技法である。MSは、未知の化合物を識別し、その断片化を観察することによって特定の化合物の構造を判定し、サンプル中の特定の化合物の量を定量化するために有用であり得る。質量分析計は、検体と荷電イオンの変換がサンプル処理の間に生じなければならないようなイオンとして化学実体を検出する。
【0004】
タンデム質量分析法(MS/MS)では、イオン源から発生されるイオンは、質量分析法の第1の段階において、質量選択されることができ(前駆体イオン)、前駆体イオンは、第2の段階において、断片化され、生成イオンを発生させることができる。生成イオンは、次いで、検出および分析されることができる。
【0005】
ある場合には、上流質量フィルタによって選択された前駆体イオンは、その中でそれらが断片化を受ける衝突セルとして機能する、RFイオントラップの中に導入されることができる。断片化されたイオンは、次いで、下流LITによって受容され、そのm/z比に従って、例えば、質量選択的軸方向射出(MSAE)を介して放出され、下流検出器によって検出されることができる。
【0006】
しかしながら、従来の線形イオントラップは、低有効捕獲電位に起因して、低印加RF電圧では、大m/zイオンに関して不良捕獲効率を呈し得る。印加されるRF電圧を増加させることは、大m/zイオンの捕獲効率を増加させることができるが、より高い印加RF電圧では、低m/zイオンの運動が不安定になり得るため、低m/zイオンの捕獲に悪影響を及ぼし得る。その結果、線形イオントラップの質量範囲は、典型的には、別個のサンプル工程を使用して解析され、ともに繋ぎ戻され、広範囲のm/z比を有するイオンを処理することが可能である。しかしながら、質量範囲のそのような解析は、デューティサイクルおよび感度を減少させ得る。
【0007】
故に、質量分析法において使用するための改良された線形イオントラップの必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要約)
一側面では、質量分析計内でイオンを処理する方法が、開示され、方法は、異なる質量/電荷(m/z)比を有する複数のイオンを衝突セル内に捕獲することと、該イオンを衝突セルからm/z比の降順において放出することと、複数のロッドを有する質量分析器内にイオンを受容することであって、複数のロッドのうちの少なくとも1つにRF(無線周波数)電圧が印加される、こととを含み、RF電圧は、放出されたイオンが質量分析器によって受容されるにつれて、第1の値からより低い第2の値に変動される。
【0009】
第1の値から第2の値へのRF電圧の変化は、イオンが上流衝突セルからm/z比の降順において放出されるにつれて、質量分析器内のイオンの効率的捕獲が達成され、質量分析器によって受容されることを確実にするように構成される。いくつかの実施形態では、質量分析器に印加されるRF電圧の変動は、分析器がイオンを衝突セルから受容するにつれて、線形であり得るが、他の実施形態では、そのような変動は、非線形であることができる。いくつかの実施形態では、時間の関数としてのRF電圧の変動は、プラトーによって分離される、減少部分によって特徴付けられることができる。いくつかの実施形態では、質量分析器に印加されるRF電圧は、約50~約1,000の範囲内のm/z比を有するイオンが分析器によって受容されるにつれて、少なくとも約80%減少される。
【0010】
質量分析器によって受容されるイオンは、次いで、例えば、質量選択的軸方向射出(MSAE)を介して放出され、下流検出器によって検出されることができる。例えば、質量分析器内に含有されるイオンは、MSAEを介して、m/z比の昇順において、すなわち、低m/zから高m/z比へと放出されることができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、衝突セルは、四重極構成に配列される、複数のロッドを備えることができる。1つ以上のRF電圧が、イオンを衝突セル内に半径方向に閉じ込めるために、衝突セルの1つ以上のロッドに印加され、電磁場を発生させることができる。いくつかの実施形態では、衝突セルの入口および/または出口に近接して配置される、1つ以上の電極が、イオンの軸方向閉じ込めを提供するために、軸方向電場を衝突セルに印加するように採用されることができる。
【0012】
いくつかの実施形態では、衝突セルからのイオンの放出は、質量選択的軸方向射出(MSAE)を介して達成されることができる。実施例として、MSAEは、励起されたイオンと衝突セルの遠位端におけるフリンジ場との間の相互作用が衝突セルからのイオンの射出を生じさせ得るように、衝突セルの少なくとも1つのロッドへのAC励起電圧の印加を介して達成され、イオンのサブセットを半径方向に励起させることができる。いくつかの実施形態では、励起電圧の振幅は、第1の値から第2の値に漸減されることができ、第1の値は、第2の値を下回る。実施例として、励起電圧の振幅は、約0.2ボルト~約5ボルトで変動されることができる。いくつかの実施形態では、励起電圧は、衝突セルの一対のロッドに印加される、双極電圧である。いくつかの実施形態では、MSAEは、励起電圧を衝突セルと質量分析器との間に配置されるレンズに印加することによって実施される。
【0013】
いくつかの実施形態では、イオンは、衝突セルの四重極ロッドセットのロッドに印加されるAC電圧の振幅を第1の値から第2の値に変動させることによって、衝突セルから放出される。
【0014】
いくつかの実施形態では、ガス圧力パルスが、イオンが質量分析器によって受容されるにつれて、そこに印加されるRF電圧の低減と併せて、質量分析器に印加されることができる。そのような圧力パルスは、有利なこととして、質量分析器によって受容されるイオンの冷却を促進し、質量分析器内において、例えば、約30~約4,000の範囲内の大m/z比範囲を有する、イオンの効率的捕獲を向上させることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、衝突セルの上流に位置付けられる、イオン源は、複数のイオンを発生させ、イオン源と衝突セルとの間に配置される、フィルタ、例えば、RF/DCフィルタは、衝突セルの中への導入のために、それらのイオンのサブセットを選択するように採用される。
【0016】
関連側面では、質量分析計が、開示され、質量分析計は、異なる質量/電荷(m/z)比を有する複数のイオンを発生させるための源と、該複数のイオンの少なくともサブセットを受容および捕獲するためのイオントラップとを備え、該サブセットは、異なるm/z比を有する、イオンを備える。質量分析器は、イオントラップの上流に位置付けられる。質量分析器は、そのうちの少なくとも1つにRF電圧が印加され得る、複数のロッドと、m/z比の降順においてイオントラップからの捕獲されたイオンの放出をもたらし、放出されたイオンが該質量分析器によって受容されるにつれて、質量分析器の少なくとも1つのロッドに印加されるRF電圧を変動させるためのコントローラとを備えることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、イオントラップは、四重極構成に配列される、4つのロッドを含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、イオントラップは、衝突セルとして構成されることができる。
【0018】
上記の実施形態のうちのいくつかでは、質量分析計はさらに、RF電圧を質量分析器の少なくとも1つのロッドに印加するための1つのRF電圧源と、RF電圧をイオントラップの少なくとも1つのロッドに印加するための第2のRF電圧源とを含むことができる。さらに、質量分析計は、イオントラップからのイオンの質量選択的軸方向射出(MSAE)を生じさせるために、励起電圧をイオントラップの2つのロッドを横断して印加するための、コントローラの制御下で動作する励起電圧源を含むことができる。
【0019】
加えて、コントローラは、イオントラップから放出されたイオンが質量分析器によって受容されるにつれて、RF電圧を質量分析器に供給するRF電圧源を制御し、質量分析器のための少なくとも1つのロッドに印加されるRF電圧の振幅を変動させ、例えば、RF電圧を減少させることができる。
【0020】
本教示の種々の側面のさらなる理解は、下記に簡単に説明される、関連付けられる図面と併せて、以下の発明を実施するための形態を参照することによって取得されることができる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
質量分析計内でイオンを処理する方法であって、
異なる質量/電荷(m/z)比を有する複数のイオンを衝突セル内に捕獲することと、
前記イオンを前記衝突セルからm/z比の降順において放出することと、
複数のロッドを有する質量分析器内に前記イオンを受容することであって、前記複数のロッドのうちの少なくとも1つにRF電圧が印加される、ことと
を含み、
前記RF電圧の振幅は、前記放出されたイオンが前記質量分析器によって受容されるにつれて、第1の値からより低い第2の値に変動される、方法。
(項目2)
前記受容されるイオンを前記質量分析器から質量選択的軸方向射出(MSAE)を介して放出することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記衝突セルは、四重極構成に配列された複数のロッドを備える、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記イオンを前記衝突セルから放出する前記ステップは、質量選択的軸方向射出(MSAE)を利用することを含む、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記MSAEは、前記衝突セルの前記複数のロッドの2つの半径方向に対向するロッドを横断した双極電圧の印加によって実施される、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記励起電圧の振幅は、第1の値から第2のより低い値に漸減され、降順m/z比においてイオンを前記衝突セルから放出する、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記MSAEは、励起電圧を前記衝突セルと前記質量分析器との間に配置されたレンズに印加することによって実施される、項目4に記載の方法。
(項目8)
前記質量分析器は、四重極構成に配列された複数のロッドを備える、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記RF電圧は、前記複数のロッドのうちの少なくとも1つに印加される、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記RF電圧の振幅は、前記第1の値から前記第2の値に線形に変動される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記RF電圧の振幅は、前記第1の値から前記第2の値に非線形に変動される、項目1に記載の方法。
(項目12)
イオンが前記質量分析器イオントラップによって前記衝突セルから受容されるにつれて、ガス圧力パルスを前記質量分析器イオントラップに印加することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
複数のイオンを捕獲する前記ステップに先立って、以下のステップ:
イオンを発生させるステップと、
捕獲するために、前記発生されたイオンのサブセットを質量選択するステップと
を実施することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目14)
低m/z比から高m/z比において、前記イオンを前記質量分析器から質量選択的に軸方向に射出することをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
質量分析計であって、
異なる質量/電荷(m/z)比を有する複数のイオンを発生させるための源と、
前記複数のイオンの少なくともサブセットを受容および捕獲するためのイオントラップであって、前記サブセットは、異なるm/z比を有するイオンを備える、イオントラップと、
前記イオントラップの下流に位置付けられた質量分析器であって、前記質量分析器は、そのうちの少なくとも1つにRF電圧が印加され得る、複数のロッドを備える、質量分析器と、
m/z比の降順において前記イオントラップからの前記捕獲されたイオンの放出をもたらし、前記放出されたイオンが前記質量分析器によって受容されるにつれて、前記質量分析器の少なくとも1つのロッドに印加される前記RF電圧の振幅を変動させるためのコントローラと
を備える、質量分析計。
(項目16)
前記イオントラップは、四重極構成に配列される、4つのロッドを備える、項目15に記載の質量分析計。
(項目17)
イオンをその中に半径方向に閉じ込めるために、RF電圧を前記質量分析器の前記少なくとも1つのロッドに印加するための少なくとも第1のRF電圧源と、RF電圧を前記イオントラップの少なくとも1つのロッドに印加するための少なくとも第2のRF電圧源とをさらに備える、項目15に記載の質量分析計。
(項目18)
前記質量分析計はさらに、前記衝突セル内に含有されるイオンの放出を生じさせるために前記衝突セルの2つのロッドを横断して励起電圧を印加するための、前記コントローラの制御下で動作する励起電圧源を備える、項目15に記載の質量分析計。
(項目19)
前記コントローラは、前記放出されたイオンが前記質量分析器によって受容されるにつれて、前記第1のRF電圧源を制御し、前記質量分析器の前記少なくとも1つのロッドに印加されるRF電圧の振幅の変動を生じさせる、項目17に記載の質量分析計。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、質量分析器にあるm/z比範囲を有するイオンを装填するための、本教示による方法における種々のステップを描写する、フローチャートである。
図2図2は、m/zの降順における、衝突セルからのイオンの放出と、衝突セルから放出されたイオンを受容するように位置付けられる下流の質量分析器のロッドに印加される、RF電圧の振幅の同時減少とを図式的に描写する。
図3図3は、段階的方式での、m/z比の降順における、衝突セルからのイオンの放出と、類似段階的方式での、衝突セルからのイオンの放出と連動した、下流の質量分析器のロッドに印加されるRF電圧の振幅の同時減少とを図式的に描写する。
図4A図4Aは、本教示のある実施形態による、質量分析計を図式的に描写する。
図4B図4Bは、圧力パルスを質量分析計の質量分析器に印加するための、図4Aの質量分析計において利用されるガス源を図式的に描写する。
図5A図5Aは、イオンをそこから放出するための、図4Aの質量分析計の衝突セルのロッドへの励起電圧の印加の実施例を描写する。
図5B図5Bは、イオンをそこから放出するための、図4Aの質量分析計の衝突セルおよび/または質量分析器のロッドへの励起電圧の印加の実施例を描写する。
図6図6は、m/zの降順においてイオンをそこから放出するための衝突セルの2つの対向するロッドへの双極電圧と、下流の質量分析器のロッドに印加されるRF電圧との印加を図式的に描写し、イオンが質量分析器によって受容されるにつれたRF電圧の減少を描写する。
図7図7は、段階的方式での、m/zの降順における、イオンをそこから放出するための衝突セルの2つの対向するロッドへの段階的方式での双極励起電圧と、下流の質量分析器のロッドに印加されるRF電圧との印加を図式的に描写し、RF電圧は、衝突セルからのイオンの放出と連動して段階的方式で減少される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(詳細な説明)
本教示は、概して、質量分析器イオントラップを効率的に装填するための方法およびシステムに関する。さらに詳細に議論されるように、いくつかの実施形態では、質量分析器イオントラップは、イオンを上流衝突セルから受容することができる。ロッド、例えば、質量分析器イオントラップの四重極ロッドセットに印加されるRF閉じ込め電圧の振幅は、イオンが質量分析器によって受容されるにつれて、例えば、線形または非線形方式において低減される。このように、質量分析器は、広範囲のm/z比、例えば、約30~約4,000の範囲内のm/z比を有するイオンで、効率的に装填されることができる。下記でさらに詳細に議論されるように、いくつかの実施形態では、質量分析器のロッドに印加されるRF電圧の振幅を低減させることに加え、ガス圧力パルスが、質量分析器に印加され、それによって受容されるイオンの冷却を促すことができる。
【0023】
図1のフローチャートを参照すると、質量分析計内でイオンを処理するための本教示の一実施形態では、異なる質量/電荷(m/z)比を有する、複数のイオンが、衝突セル内で捕獲される。捕獲されたイオンは、次いで、m/z比の降順において、衝突セルから放出され、放出されたイオンは、そのうちの少なくとも1つにRF電圧が、印加され、質量分析器内のイオンの捕獲を促進し得る、四重極構成に配列される複数のロッドを備える、質量分析器内に受容される。質量分析器に印加されるRF電圧は、イオンが質量分析器によって受容されるにつれて減少される。いくつかの実施形態では、衝突セルからのイオンの放出は、質量選択的軸方向射出(MSAE)を使用して達成されることができる。
【0024】
続いて、質量分析器内に収集されるイオンは、例えば、MSAEを介して放出されることができ、放出されたイオンは、次いで、下流検出器によって検出されることができる。
【0025】
質量分析器に印加されるRF電圧は、衝突セルから放出されたイオンが、種々の異なる方法において質量分析器によって受容されるにつれて、変動(減少)されることができる。実施例として、図2に示されるように、質量分析器に印加されるRF電圧は、イオンが、衝突セルから放出され、質量分析器によって受容されるにつれて、線形方式において変動(減少)されることができる。図2に示されるように、そのような実施形態では、衝突セルから出射するイオンのm/z比は、時間の関数として実質的に線形に減少する。衝突セルからのそのようなイオンの放出と連動して、質量分析器に印加されるRF閉じ込め電圧の振幅も同様に、所与の時間における質量分析器に印加されるRF電圧がその時点で受容される閉じ込めイオンのために好適であるように、実質的に線形方式において減少される。言い換えると、RF電圧は、それらのイオンのm/z比が変化するにつれて衝突セルによって受容される閉じ込めイオンのために好適であるように変動される。より高いm/zイオンの衝突冷却は、より低いm/z比を伴うイオンが質量分析器によって受容されるにつれたRF電圧の振幅の低減にもかかわらず、質量分析器内におけるそれらのイオンの留保を促進することができる。
【0026】
代替として、図3に示されるように、質量分析器に印加されるRF電圧は、段階的方式において変動されることができる。図3に描写される実施形態では、イオンは、段階的方式において衝突セルから放出される。例えば、時間周期T1の間、A1のm/z比を有するイオンが、衝突セルから放出され、下流の質量分析器によって受容される。本時間周期の間、質量分析器のロッドに印加されるRF電圧は、これらのイオンの効果的閉じ込めを提供するように構成される。続いて、次の時間周期T2では、衝突セルから放出されるイオンは、A2のm/z比を有する。質量分析器に印加されるRF電圧は、これらのイオンの効果的半径方向閉じ込めを提供するように減少される。本プロセスは、衝突セル内に含有されるイオンの全てが、衝突セルから放出され、質量分析器によって受容されるまで、繰り返されることができる。
【0027】
多くの実施形態では、分析器が衝突セルから放出されるイオンを受容するにつれた質量分析器に印加されるRF電圧の変動は、大範囲に及ぶm/z比を有するイオン、例えば、約50~約1,000の範囲内のm/z比を有するイオンを質量分析器内に効果的に捕獲することを可能にすることができる。
【0028】
本教示は、種々の異なる質量分析計内に実装されることができる。実施例として、図4Aを参照すると、実施形態による、質量分析計1300は、イオンを発生させるためのイオン源1302を含む。イオン源は、その中に、それを通してイオン源によって発生されるイオンが下流区分に入射し得る、オリフィスを提供する、オリフィスプレート(図示せず)が配置される、カーテンチャンバ(図示せず)によって、分光計の下流区分から分離されることができる。本実施形態では、RFイオンガイド(Q0)が、ガス動態および無線周波数場の組み合わせを使用して、イオンを捕捉および集束させるために使用されることができる。イオンガイドQ0は、イオンを、レンズIQ1およびBrubakerレンズ、例えば、約2.35長RF専用四重極を介して、その中にRFイオンガイドQ0が配置される、チャンバのものを下回って維持され得る、圧力まで真空化され得る、真空チャンバ内に据え付けられ得る、下流の四重極質量分析器Q1に送達する。非限定的実施例として、Q1を含有する、真空チャンバは、約1×10-4Torr(例えば、約2×10-5Torr)未満の圧力に維持されることができるが、他の圧力も、本目的のために、または他の目的のために、使用されることができる。
【0029】
当業者によって理解されるであろうように、四重極ロッドセットQ1は、着目イオンタイプおよび/または着目イオンタイプの範囲を選択するように動作され得る、従来の伝送RF/DC四重極質量フィルタとして動作されることができる。実施例として、四重極ロッドセットQ1は、質量分解モードにおける動作のために好適なRF/DC電圧を提供されることができる。理解されるはずであるように、Q1の物理的および電気的性質を考慮することによって、印加されるRFおよびDC電圧に関するパラメータは、Q1が、選定されたm/z比の伝送窓を確立し、これらのイオンが、著しく摂動されずにQ1を横断し得るように、選択されることができる。しかしながら、窓外に該当するm/z比を有するイオンは、四重極内で安定軌道を達成せず、四重極ロッドセットQ1を横断しないように妨害され得る。本動作モードは、Q1のための1つの可能性として考えられる動作モードにすぎないことを理解されたい。実施例として、いくつかの実施形態では、四重極ロッドセットQ1は、RF専用モードにおいて動作され、したがって、Qから受容されるイオンのためのイオンガイドとして作用する。
【0030】
四重極ロッドセットQ1を通して通過するイオンは、短太ST2(また、Brubakerレンズとも称される)を通して通過し、その中でイオンの少なくとも一部が、断片化を受け、イオン断片を発生させる、衝突セル1304に入射することができる。本実施形態では、衝突セルは、四重極ロッドセットを含むが、他の多極ロッドセットもまた、他の実施形態では採用されることができる。コントローラ1312の制御下で動作する、RF電圧源1310aは、RF電圧を衝突セルのロッドに印加し、イオンを衝突セル内に半径方向に閉じ込める。さらに、本実施形態では、IQ2およびIQ3レンズは、衝突セルの入口および出口ポートに近接して配置される。DC電圧を衝突セルのロッドオフセットより高いIQ2およびIQ3レンズに印加することによって、イオンの軸方向捕獲が、達成されることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、衝突セルは、高圧、例えば、約2mTorr~約15mTorrの範囲内の圧力に維持され、その中に含有されるイオンの効率的冷却を確実にする。
【0032】
図4Aを継続して参照すると、分析器イオントラップ1308が、衝突セル1304の下流に位置付けられる。本実施形態では、分析器イオントラップ1308は、それに対してRF電圧が、印加され、その中のイオンの半径方向閉じ込めを提供し得る、四重極ロッドセットを含む。いくつかの実施形態では、分析器イオントラップ(図示せず)の入力および/または出力ポートに近接して位置付けられる、1つ以上の電極が、イオンの軸方向閉じ込めのために、例えば、電極へのDC電圧の印加を介して、軸方向場を分析器イオントラップ内に発生させるために採用されることができる。
【0033】
コントローラの制御下で動作する、別のRF電圧源1310bは、RF電圧を分析器イオントラップの四重極ロッドに印加することができる。コントローラは、イオンが、衝突セルから放出され、分析器イオントラップによって受容されるにつれて、RF電圧源1310bを制御し、分析器イオントラップに印加されるRF電圧の振幅を低減させることができる。いくつかの実施形態では、質量分析器のロッドに印加されるRF電圧の振幅の変化は、例えば、約20%~約90%の範囲内であることができる。質量分析器によって受容される、より高いm/z比を有するイオンは、衝突冷却を受ける一方、印加されるRF電圧の振幅は、より低いm/z比を有するイオンに適応するように減少される。より高いm/zイオン(例えば、約300~約1000の範囲内のm/z比を有するイオン)のそのような冷却は、印加されるRF電圧の振幅の減少にもかかわらず、質量分析器内に捕獲されたそれらのイオンの留保を促進することができる。
【0034】
例えば、図5Aは、イオンをその中に半径方向に閉じ込めるための、衝突セルの四重極ロッドと、Ωの周波数におけるそこに印加されるRF電圧とを図式的に描写する。本図に示されるように、Aロッドに印加されるRF閉じ込め電圧の位相は、Bロッドに印加されるものと反対である。本実施形態では、DC電圧RO2もまた、衝突セルのロッドに印加される。
【0035】
図5Aならびに図4Aを参照すると、同様にコントローラ1312の制御下で動作する、AC励起源1311が、
【化1】
の周波数におけるAC電圧を全ての衝突セルロッドに印加し、有効電位を衝突ロッドと四重極間レンズIQ3との間に生成することができる。
【0036】
本実施形態では、断片イオンが、衝突セルの端部において、IQ3レンズに印加されるDC電圧によって、軸方向に捕獲される。1ms~200msで変動し得る、充填時間後、IQ2に印加されるDC電圧は、付加的イオンが衝突セルに入射しないように防止するために上昇される。いくつかの実施形態では、LINAC電極が、衝突冷却されたイオンを衝突セルの出口領域に向かって移動させるために、軸方向場を衝突セルを横断して生成するために使用され得る。
【0037】
続いて、コントローラ1132は、周波数
【化2】
のAC電圧を、ゼロ電圧から、反発性IQ3電圧の不在下でさえ、着目m/z窓を横断してイオンを含有するであろう、有効電位を衝突セルロッドとIQ3レンズとの間に生成するために十分に大きい値に増加させるであろう。短周期、例えば、約100μs未満後、IQ3 DC電圧は、RO2ロッドオフセットに対して誘引性値に変化される。約1ms未満の付加的冷却周期後、AC振幅は、漸減され、したがって、降順m/zにおいて、衝突セル内に含有されるイオンの放出を生じさせる。衝突セル1304等のイオントラップからイオンを放出するためのそのような機構は、当技術分野において「Zeno」パルシングとして知られる。
【0038】
本実施形態では、衝突セルからのイオンの放出と同時に、コントローラは、RF源1310bに、質量分析器1308のロッドに印加されるRF電圧の振幅を減少させることができる。上記に議論されるように、そのような減少は、線形または非線形方式において達成されることができる。総放出時間は、m/z窓に応じて、1~20msで変動し得る。いくつかの実施形態では、質量分析器のロッドに印加されるRF電圧の振幅は、衝突セルから質量分析器の中へのイオンの導入の開始から、衝突セルから質量分析器へのイオンの実質的に全ての輸送が遂行されるまでに、少なくとも約20%、例えば、約20%~約95%の範囲内で減少し得る。いくつかの実施形態では、励起電圧が、IQ3レンズに印加されることができる。
【0039】
別の実施形態では、衝突セル内に含有される、断片イオンは、双極励起電圧差を衝突セルの四重極ロッドセットの2つのロッドを横断して印加することによって放出される。例えば、図5Bは、イオンをその中に半径方向に閉じ込めるための、衝突セルの四重極ロッドと、Ωの周波数におけるそこに印加されるRF電圧とを図式的に描写する。本図に示されるように、Aロッドに印加されるRF閉じ込め電圧の位相は、Bロッドに印加されるものと反対である。本実施形態では、DC電圧RO2もまた、衝突セルのロッドに印加される。
【0040】
図5Bならびに図4Aを参照すると、同様にコントローラ1312の制御下で動作する、AC励起源1311は、ωの周波数における励起電圧を、相互に半径方向に反対に位置付けられる、ロッドA印加することができる。周波数ωは、衝突セル内でイオンの励起を生じさせ、衝突セルからのその出射を生じさせるために、イオンの永続的運動の周波数に合致する。より具体的には、コントローラは、衝突セルからのその放出を生じさせるために、異なるm/z比を有するイオンを励起電圧と共鳴させるように、RF電圧の振幅の漸減を生じさせることができる。本実施形態では、励起電圧の振幅の漸減は、衝突セル内に含有されるイオンの放出を降順m/zにおいて生じさせるように構成される。代替として、RF電圧は、一定に維持されることができ、励起の周波数は、イオンが、励起され、降順m/zにおいてトラップから放出されるように増加されることができる。
【0041】
本実施形態では、衝突セルからのイオンの放出と同時に、コントローラは、RF源1310bに、質量分析器1308のロッドに印加されるRF電圧の振幅を減少させることができる。上記に議論されるように、そのような減少は、線形または非線形方式において達成されることができる。いくつかの実施形態では、質量分析器のロッドに印加されるRF電圧の振幅は、衝突セルから質量分析器の中へのイオンの導入の開始から、衝突セルから質量分析器へのイオンの実質的に全ての輸送が遂行されるまでに、少なくとも約20%、例えば、約20%~約95%の範囲内で減少することができる。いくつかの実施形態では、励起電圧は、IQ3レンズに印加されることができる。いくつかの実施形態では、励起電圧の振幅は、m/zに伴って漸減されることができる。
【0042】
さらなる例証として、図6は、いくつかの実施形態では、グラフAによって描写される衝突セルのロッドに印加されるAC電圧の振幅が、グラフBに示されるように、初期値AC1から最終値AC2までの時間において短調に減少し、m/zの降順において、Q2衝突セルからのイオンの放出を生じさせることを図式的に描写する。さらに、衝突セルからのイオンの放出と同時に、質量分析器Q3のロッドに印加されるRF閉じ込め電圧の振幅は、グラフCに図式的に示されるように減少され、質量分析器内の衝突セルから放出されるイオンの効率的捕獲を可能にする。
【0043】
さらなる例証として、図7は、いくつかの実施形態では、衝突セルのロッドに印加されるAC電圧の振幅が、段階的方式において変動され、異なるm/z比を有するイオンの放出を異なる時間間隔に生じさせることを図式的に描写する。例えば、時間間隔T1の間、衝突セルに印加されるAC電圧は、M1より大きいm/z比を有するイオンの放出を生じさせる一方、時間間隔T2の間、衝突セルに印加されるAC電圧は、M2より大きいm/z比を有するイオンの放出を生じさせ、続いて、衝突セルに印加されるAC電圧は、M3より大きいm/z比を有するイオンの放出を生じさせ、M1>M2>M3となる。図7に示されるように、衝突セルからのイオンの段階的放出と同時に、質量分析器に印加されるRF閉じ込め電圧の振幅は、衝突セルから受容されるイオンの効果的捕獲を提供するように、段階的方式において減少される。
【0044】
随意に、いくつかの実施形態では、ガス圧力パルスが、イオンが、衝突セルから放出され、質量分析器の中に導入されるにつれて、質量分析器に印加されることができる。例えば、図4Aに示されるように、いくつかのそのような実施形態では、コントローラ1312の制御下で動作する、ガス源1316は、質量分析器に流動的に結合されることができる。図4Bに図式的に示されるように、ガス源1316は、ガスリザーバ1316aと、ガスリザーバを質量分析器に結合する、弁1316bとを含む。コントローラは、弁1316bを作動させ、ガスのパルスを質量分析器に印加し、質量分析器内の内圧を増加させ、それによって、イオンの冷却を促進することができる。質量分析器の内圧のそのような増加は、イオンの冷却を促進し、それによって、より低いm/zイオンを捕獲するために、印加されるRF電圧の振幅の低減にもかかわらず、より高いm/zイオンの留保に役立つことができる。種々のガスが、採用されることができる。いくつかの好適な実施例は、限定ではないが、窒素、およびアルゴンを含む。
【0045】
質量分析器内のイオンの収集に続いて、イオンは、質量分析器から放出され、下流のイオン検出器1314によって検出されることができる。実施例として、質量分析器からのイオンの放出は、MSAEを介して達成されることができる。イオンは、イオン検出器によって検出されることができ、イオンの検出に応答してイオン検出器によって発生される、信号が、例えば、分析器(図示せず)を介して採用され、質量スペクトルを形成することができる。
【0046】
本教示は、いくつかの利点を提供する。例えば、それらは、高m/zおよび低m/zイオンの両方の効率的捕獲を可能にする。言い換えると、それらは、広範囲のm/z比、例えば、約50~約2,000の範囲内のm/z比を有する、イオンの効率的捕獲を可能にする。これは、ひいては、質量分析のデューティサイクルを向上させることができる。例えば、本教示の実装は、質量分析のデューティサイクルにおける少なくとも2倍の改良をもたらし得る。
【0047】
当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更が上記の実施形態に行われることができることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7