(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】無電解ニッケルめっき溶液
(51)【国際特許分類】
C23C 18/36 20060101AFI20231030BHJP
H01L 21/288 20060101ALI20231030BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20231030BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20231030BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20231030BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20231030BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20231030BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C23C18/36
H01L21/288 E
H01L21/28 301R
H01L21/88 T
H01L21/88 R
H01L21/92 604R
H01L21/60 301P
(21)【出願番号】P 2021523739
(86)(22)【出願日】2019-11-05
(86)【国際出願番号】 EP2019080239
(87)【国際公開番号】W WO2020094642
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】300081877
【氏名又は名称】アトテック ドイチュラント ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Atotech Deutschland GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Erasmusstrasse 20, D-10553 Berlin, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー ベーラ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シュヴァルツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュルツェ
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-201364(JP,A)
【文献】特開平10-306378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0125179(US,A1)
【文献】米国特許第05628807(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-18/54
H01L 21/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
・ ニッケルイオン源、
・ モリブデンイオン源、
・ タングステンイオン源、
・ 次亜リン酸イオン源、
・ 少なくとも1つの錯化剤
を含む無電解ニッケルめっき溶液であって、前記溶液はホウ素を含むいかなる還元剤も含まず、前記溶液がさらに、
・ 濃度0.38~38.00μmol/Lの少なくとも1つの有機硫黄含有化合物、および
・ 濃度0.67~40.13mmol/Lの少なくとも1つのアミノ酸
を含むことを特徴とする、前記無電解ニッケルめっき溶液。
【請求項2】
アミノ酸:有機硫黄含有化合物のモル比が、282:1~14,079:1である、請求項1に記載のめっき溶液。
【請求項3】
次亜リン酸イオンの濃度が0.09~0.27mol/Lである、請求項1または2に記載のめっき溶液。
【請求項4】
ニッケルイオンの濃度が0.067~0.133mol/Lである、請求項1から3までのいずれか1項に記載のめっき溶液。
【請求項5】
モリブデンイオンの濃度が1.05~4.18mmol/Lである、請求項1から4までのいずれか1項に記載のめっき溶液。
【請求項6】
タングステンイオンの濃度が12.1~109.2mmol/Lである、請求項1から5までのいずれか1項に記載のめっき溶液。
【請求項7】
前記アミノ酸が硫黄を含有しないアミノ酸で
ある、請求項1から6までのいずれか1項に記載のめっき溶液。
【請求項8】
前記有機硫黄含有化合物が、N,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、3,3-ジチオビス-1-プロパンスルホン酸、3-(2-ベンゾチアゾリルメルカプト)プロパンスルホン酸、3-[(エトキシ-チオキソメチル)チオ]-1-プロパンスルホン酸、3-S-イソチウロニウムプロパンスルホネート、ナトリウムジエチルジチオカルバメート、チオ二酢酸、ジチオ二酢酸、チオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸、チオスルフェート、チオウレア、チオシアネート、システインおよびシスチンからなる群から選択される、請求項1から7までのいずれか1項に記載のめっき溶液。
【請求項9】
前記錯化剤が、クエン酸、イソクエン酸、EDTA、EDTMP、HDEPおよびピロリン酸塩からなる群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載のめっき溶液。
【請求項10】
基板(2
)上でニッケル合金層(5)を無電解めっきする方法であって、前記基板を請求項1から9までのいずれか1項に記載の無電解ニッケルめっき溶液と接触させることを含む、前記方法。
【請求項11】
前記基板が銅層(4)またはアルミニウム層を含み、その際、前記ニッケル合金層(5)を銅層(4)またはアルミニウム層上でめっきする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
・ 81.5~98.4質量%のニッケル
・ 1~10質量%のモリブデン
・ 0.1~4質量%のタングステン
・ 0.5~4.5質量%のリン
を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の無電解ニッケルめっき溶液から得られる四元系ニッケル合金層であって、-40~+120N/mm
2の範囲の法線応力を有し、前記法線応力は、ASTM規格B975に準拠するベントストリップ法: 銅-鉄合金PN: 1194応力ストリップ上に堆積し、続いて堆積物応力分析器を使用することによる応力測定に従って測定される、前記四元系ニッケル合金層。
【請求項13】
ニッケル合金層(5)を含む物品(1
)であって、前記ニッケル合金層が請求項12に記載のニッケル合金
層である、前記物品(1)。
【請求項14】
前記物品が、銅層またはアルミニウム層、続いて前記ニッケル合金層、およびパラジウムおよび/または金層の積層体をこの順で含
む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
2つの金属層間
でバリア層を生成するための
、無電解ニッケルめっき溶液の使用
であって、
前記無電解ニッケルめっき溶液は、
・ ニッケルイオン源、
・ モリブデンイオン源、
・ タングステンイオン源、
・ 次亜リン酸イオン源、
・ 少なくとも1つの錯化剤
を含み、
前記溶液はホウ素を含むいかなる還元剤も含まず、前記溶液がさらに、
・ 濃度0.38~38.00μmol/Lの少なくとも1つの有機硫黄含有化合物、および
・ 濃度0.67~40.13mmol/Lの少なくとも1つのアミノ酸
を含むことを特徴とする、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無電解ニッケルめっき溶液、基板上にニッケル合金層を無電解めっきする方法、前記めっき溶液から得られるニッケル合金層、およびかかる層を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子物品、例えば半導体ウェハまたは半導体チップは、いわゆる銅再配線層(Cu-RDL)を含むことが多い。再配線層(RDL)は、集積回路の入力または出力パッドを他の位置で利用可能にする追加的な金属層である。これは、チップまたはウェハ回路の外部回路への電気接続を可能にする。電気接続のための典型的なレイアウトは、例えばボールグリッドアレイとして知られるボンディング可能な(はんだ付け可能な)接続、および種々の形状のパッドである。Cu-RDL上でボンディング可能な(はんだ付け可能な)表面を作り出すために、ニッケル層がその上にめっきされる。この層はハウジングの理由から形成され(銅の酸化を回避し、機械的な強化を達成する)、且つCu-RDLと、その上に堆積されたボンディング可能な(はんだ付け可能な)金属層との間に拡散バリアを生成する。さらなる金属層、例えばパラジウムおよび任意に金層が前記ニッケル層上にめっきされ、ボンディング可能な(はんだ付け可能な)表面が得られて、いわゆるボンディング可能な積層体とも称される層の積層体がもたらされる。パラジウムまたは金層を介して、他の素子へのはんだ付けされた接続が作られる。電子物品と基板、例えばプリント回路板または他の回路キャリアとのはんだ付けされた接続を作り出すことは、積層体への熱負荷を伴い、なぜなら、それは高温に加熱されるからである。
【0003】
ニッケル層のアニールを行って、その層がはんだ付け工程の間に印加される熱応力に耐えられるかどうかを試験する。アニール後、Cu-RDL上に堆積されたニッケル層、またはボンディング可能な積層体および下にある金属層が剥離を示し、さらには層内で破壊が生じることが多い。これは、より高い抵抗または伝導性の低下、またはさらには非伝導性の原因になる。
【0004】
種々の組成を有するニッケル層が従来技術から、および他の出願においても公知である。ワイヤボンディングおよびフリップチップのはんだ付けのためのニッケルパラジウム金の無電解工程が従来技術から公知であり、例えば欧州特許出願公開第0701281号明細書(EP0701281 A2)に記載されている。同様の方法が米国特許第6445069号明細書(US patent No. 6,445,069)および欧州特許出願公開第1126519号明細書(EP1126519 A2)内に記載されている。
【0005】
従来技術の欧州特許出願公開第2177646号明細書(EP2177646 A1)においては、CuまたはAl層がまずウェハ表面上で被覆され、続いてNi-PおよびPd(および任意にAu)がめっきされる。これはウェハ表面の個々の区画(「パッド」)において行われ得る。
【0006】
国際公開第2009092706号(WO2009092706 A2)は、金属表面上でバリア層を堆積するための溶液であって、元素のニッケルおよびモリブデンの化合物、第二級および第三級の環式アミノボランの中から選択される少なくとも1つの還元剤、および少なくとも1つの錯化剤を含み、pH8.5~12を有する前記溶液に関する。
【0007】
国際公開第2006102180号(WO2006102180 A2)は、ニッケル合金層を開示している。例えば、ニッケル基合金は、二元系合金または三元系合金、例えばニッケルホウ化物(NiB)、ニッケルリン化物(NiP)、ニッケルタングステンリン化物(NiWP)、ニッケルタングステンホウ化物(NiWB)、ニッケルモリブデンリン化物(NiMoP)、ニッケルモリブデンホウ化物(NiMoB)、ニッケルレニウムリン化物(NiReP)、ニッケルレニウムホウ化物(NiReB)であってよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】欧州特許出願公開第0701281号明細書
【文献】米国特許第6445069号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1126519号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2177646号明細書
【文献】国際公開第2009092706号
【文献】国際公開第2006102180号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、アニール後に、低減された応力、特に低減された引張り応力、および増加された破壊靭性を有するニッケル堆積物を製造し、下にある金属層、特に銅またはアルミニウムからの剥離、およびニッケル層のクラックの形成を防ぐことであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、独立請求項による無電解ニッケルめっき溶液、無電解めっき方法、ニッケル合金層、物品および前記めっき溶液の使用を提供する。さらなる実施態様は従属請求項およびこの明細書に開示される。
【0011】
本発明の無電解ニッケルめっき溶液は、
・ ニッケルイオン源、
・ モリブデンイオン源、
・ タングステンイオン源、
・ 次亜リン酸イオン源、
・ 錯化剤、
・ 濃度0.38~38.00μmol/Lの少なくとも1つの有機硫黄含有化合物、
・ 好ましくは濃度0.67~40.13mmol/Lの少なくとも1つのアミノ酸
を含む。
【0012】
基板、特にウェハ上にニッケル合金を無電解めっきするための本発明の方法は、基板を本発明の無電解ニッケルめっき溶液と接触させることを含む。基板は特に半導体チップまたは半導体ウェハである。
【0013】
本発明のニッケル合金層は、
・ 67.5~98.4質量%(質量パーセント)、好ましくは81.5~98.4質量%、より好ましくは88~92質量%のニッケル、
・ 1~10質量%、好ましくは4~8.5質量%のモリブデン、
・ 0.1~4質量%、好ましくは0.5~2質量%のタングステン、
・ 0.5~4.5質量%、好ましくは1.5~3質量%のリン
を含み、且つ好ましくは他の合金成分不含である。
【0014】
好ましい実施態様において、ニッケル合金層は、
・ 81.5~98.4質量%、好ましくは88~92質量%のニッケル、
・ 1~10質量%、好ましくは4~8.5質量%のモリブデン、
・ 0.1~4質量%、好ましくは0.5~2質量%のタングステン、
・ 0.5~4.5質量%、好ましくは1.5~3質量%のリン
からなり、且つ
・ 他の合金成分不含である。
【0015】
この文脈における「不含」とは、ニッケルめっき溶液から同時に堆積され得る例えば硫黄および鉛(Pb)としての他の成分の量が合計で0~1質量%、好ましくは0~0.5質量%、より好ましくは0であることを意味する。それらの他の成分は、本発明の意味において本発明の層の特性を変えない。
【0016】
上記のニッケル層中の全成分の量は合計で100質量%であり、換言すれば全成分の合計は、さらなる成分が含まれている場合でも合計で100質量%を超えない。さらなる成分、例えば少量の他の合金成分が含まれる場合、ニッケル、モリブデン、タングステンおよびリンの質量%の範囲の互いに対する比は変わらず、互いに等しく低減される。
【0017】
本発明のニッケル合金層は、本発明の無電解ニッケルめっき溶液から、該溶液がそのような層をめっきするために使用される場合、または本発明の方法により、得ることができるか、または得られる。本発明のニッケル合金層は好ましくは結晶ニッケル合金層である。
【0018】
本発明の物品は特に電子物品、特に半導体チップまたは半導体ウェハである。前記物品は本発明のニッケル合金層を含む。前記物品は本発明の方法により得られるか、または得ることができる。前記物品は、銅層またはアルミニウム層、続いてニッケル合金層およびパラジウムおよび/または金層の順を有する層の積層体を含むことができ、ここで前記パラジウム層は好ましくは外側の層である。
【0019】
半導体チップは、複数の電子回路を有する半導体、典型的にはシリコン、結晶の小さな片である。半導体ウェハは複数の半導体チップを含む。それは半導体結晶インゴットからのスライスとして形成され、それに保持されるチップの回路を含む。
【0020】
本発明の無電解めっき溶液は、四元系のニッケル堆積物(NiMoWP)の堆積を可能にする。前記四元系のニッケル堆積物は、低減された応力、特に低減された引張応力、および改善された破壊靭性を特に例えば350~400℃のアニール後に示す。
【0021】
本発明を特に、Cu-RDL(再配線層)を有する電子物品を製造するために使用でき、その際、ニッケル堆積物がCu-RDL上にめっきされる。
【0022】
より具体的には、本発明を、ボンディング可能な金属被覆物の積層体を有する電子物品を製造するために使用でき、その際、前記積層体が銅またはアルミニウム層上に被覆される。典型的な積層体は、銅またはアルミニウム層上に以下の金属層:Ni/Pd(いわゆるENEP法により製造)、Ni/Pd/Au(いわゆるENEPIG法により製造)またはNi/Au(いわゆるENIG法により製造)を有することができ、その際、NiはNiMoWP層によるNi合金層としてみなされる。典型的には、前記積層体は、本願の導入部に記載されたとおり電子物品の一部であるCu-RDL上に形成される。
【0023】
本発明のニッケルめっき溶液は特に、2つの金属層間、特に銅層またはアルミニウム層と、パラジウムまたは金層との間でバリア層を生成するために使用することができる。
【0024】
発明の詳細な説明
本発明の無電解ニッケルめっき溶液は、無電解ニッケル浴または無電解ニッケルめっき浴とも称される。溶液との用語は、1つ以上の成分が溶解されていない状態で部分的に存在し得ることを除外しない。
【0025】
ニッケル合金層は、四元系ニッケル層または四元系ニッケル堆積物、ニッケル、モリブデン、タングステンおよびリンを含む四元系層とも称される。
【0026】
本願明細書において層が金属にちなんで、例えば「Pd層」または「Au層」と名付けられる場合、この用語は、特段記載されない限り、それぞれの金属を主成分として含む合金も包含する。主成分とは、その成分が少なくとも50質量%を構成することを意味する。
【0027】
本願明細書および特許請求の範囲において「含む」との用語が使用される場合、それは他の要素を除外しない。本発明について、「からなる」との用語は、「含む」との用語の好ましい実施態様であるとみなされる。下記において、ある群が少なくとも特定の数の実施態様または特徴を含むと定義される場合、これは好ましくはそれらの実施態様または特徴のみからなる群も開示すると理解されるべきである。
【0028】
単数形の名詞を参照して不定冠詞または定冠詞、例えば「ある("a", "an")」または「前記("the")」が使用される場合、特段記載されない限り、これはその名詞の複数形を含む。本発明の文脈における「約」または「およそ」との用語は、当業者が該当の特徴の技術的な効果がまだ確実であると理解する精度の間隔を示す。前記用語は典型的には示された数値から±10%、および好ましくは±5%のずれを示す。
【0029】
「少なくとも1つ」との用語は、特別な場合の「正確に1つ」または「1つ」を包含する。
【0030】
本願明細書内に示される濃度範囲は、全ての言及された化合物を合わせた総量に対する。換言すれば、例えば2つの有機硫黄含有化合物が使用される場合、全ての単独の有機硫黄含有化合物を一緒にした全濃度は、所定の濃度範囲外にはならない。
【0031】
以下の詳細な説明において、本発明の態様および特定の実施態様を示す。
【0032】
めっき溶液
本発明のめっき溶液を、本発明のニッケル合金層を基板上に、特に半導体ウェハまたはチップ上に堆積するために使用できる。本発明の特定の物品を以下に記載する。本発明のめっき溶液を、それらの物品のいずれかを製造するために使用できる。本発明の溶液を特に、2つの金属層の間、例えば銅層またはアルミニウム層と他の金属層との間のバリア層(拡散層)を製造して、前記他の金属中への銅のマイグレーションを防ぐために使用できる。前記他の金属は例えばパラジウムまたは金である。
【0033】
ニッケルイオン源
1つの実施態様において、ニッケルイオンの濃度は0.067~0.133mol/L、好ましくは0.084~0.116mol/Lである。
【0034】
さらなる実施態様において、ニッケルイオンの濃度は4.0~8.0g/L、好ましくは5.0~7.0g/Lである。
【0035】
形成されるべきNiMoWP層にニッケルを組み込めるように、ニッケルイオン源は、ニッケルを含み且つニッケルイオンを産出する1つ以上の化学的化合物であることができる。特定の実施態様において、ニッケルイオン源はNiSO4×6H2Oである。
【0036】
ニッケルイオン源がNiSO4×6H2Oである場合、NiSO4×6H2Oの濃度は17.53~35.05g/L、好ましくは21.91~30.69g/Lであってよい。
【0037】
モリブデンイオン源
1つの実施態様において、モリブデンイオンの濃度は1.05~4.18mmol/L、好ましくは1.58~3.66mmol/Lである。
【0038】
さらなる実施態様において、モリブデンイオンの濃度は0.1~0.4g/L、好ましくは0.15~0.35g/Lである。
【0039】
形成されるべきNiMoWP層にモリブデンを組み込めるように、モリブデンイオン源は、モリブデンを含み且つモリブデン含有イオンを産出する1つ以上の化学的化合物であってよい。好ましくは、モリブデンイオン源はモリブデン酸ナトリウム二水和物である。
【0040】
モリブデンイオン源がモリブデン酸ナトリウム二水和物である場合、モリブデン酸ナトリウム二水和物の濃度は0.25~1.00g/L、好ましくは0.38~0.88g/Lであってよい。
【0041】
タングステンイオン源
1つの実施態様において、タングステンイオンの濃度は12.1~109.2mmol/L、好ましくは24.2~97.1mmol/Lである。
【0042】
さらなる実施態様において、タングステンイオンの濃度は2.23~20.07g/L、好ましくは4.46~17.84g/Lである。
【0043】
形成されるべきNiMoWP層にタングステンを組み込めるように、タングステンイオン源は、タングステンを含み且つタングステン含有イオンを産出する1つ以上の化学的化合物であってよい。例えば、タングステンイオン源はタングステン酸ナトリウム二水和物である。
【0044】
タングステンイオン源がタングステン酸ナトリウム二水和物である場合、タングステン酸ナトリウム二水和物の濃度は4.0~36.0g/L、好ましくは8.0~32.0g/Lであってよい。
【0045】
次亜リン酸イオン源
ニッケル、モリブデンおよびタングステンを還元するための還元剤として、次亜リン酸塩が使用される。
【0046】
本発明の溶液は、好ましくは次亜リン酸塩以外のいかなる還元剤も含まないかまたは含有しない。本発明の溶液は、好ましくはホウ素を含むいかなる還元剤も含まず、特にジメチルアミンボラン(DMAB)を含まない。
【0047】
1つの実施態様において、次亜リン酸イオンの濃度は0.09~0.27mol/L、好ましくは0.11~0.23mol/Lである。
【0048】
さらなる実施態様において、次亜リン酸イオンの濃度は5.85~17.55g/L、好ましくは7.15~14.95g/Lである。
【0049】
次亜リン酸イオン源は、次亜リン酸塩を含み且つ形成されるべきNiMoWP層中に組み込まれるリンを産出する1つ以上の化学的化合物であってよい。次亜リン酸イオン源は、次亜リン酸、または浴に可溶性のそれらの塩、例えば次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウムおよび次亜リン酸アンモニウムであってよい。例えば、次亜リン酸イオン源は次亜リン酸ナトリウムである。
【0050】
次亜リン酸イオン源が次亜リン酸ナトリウムである場合、次亜リン酸ナトリウムの濃度は10.0~30.0g/L、好ましくは12.7~26.3g/Lであってよい。
【0051】
錯化剤
1つ以上の錯化剤が使用される場合、以下の濃度は全ての錯化剤の総量に関する。
【0052】
1つの実施態様において、錯化剤の濃度は0.095~0.178mol/L、好ましくは0.109~0.164mol/Lである。
【0053】
錯化剤はカルボン酸であってよい。有用なカルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸およびテトラカルボン酸を含む。前記カルボン酸は様々な置換部分、例えばヒドロキシ基またはアミノ基で置換されていてよく、且つ前記酸はそれらのナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩としてめっき溶液中に導入されることができる。
【0054】
本発明の溶液中での錯化剤として有用であるカルボン酸の例は、モノカルボン酸、例えば酢酸、ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)、アミノ酢酸(グリシン)、2-アミノプロピオン酸(アラニン); 2-ヒドロキシプロピオン酸(乳酸); ジカルボン酸、例えばコハク酸、アミノコハク酸(アスパラギン酸)、ヒドロキシコハク酸(リンゴ酸)、プロパン二酸(マロン酸)、酒石酸; トリカルボン酸、例えば2-ヒドロキシ-1,2,3プロパントリカルボン酸(クエン酸); およびテトラカルボン酸、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。1つの実施態様において、2つ以上の上記の錯化剤/キレート剤の混合物が本発明の溶液中で利用される。
【0055】
錯化剤は特に、クエン酸、イソクエン酸、EDTA、EDTMP、HDEPおよびピロリン酸塩からなる群から選択できる。
【0056】
錯化剤は、アルカリ性のpHに適した錯化剤であってよい。
【0057】
特定の実施態様において、錯化剤はクエン酸である。
【0058】
錯化剤がクエン酸である場合、クエン酸の濃度は18.4~34.4g/L(またはクエン酸一水和物の場合20.1~37.6g/L)、好ましくは21.1~31.5g/L(またはクエン酸一水和物の場合23.1~34.6g/L)であってよい。
【0059】
有機硫黄含有化合物
有機硫黄含有化合物、好ましくは二価の硫黄含有化合物は、めっき溶液用の安定剤として使用される。安定剤は、めっきされないことが望まれる基板領域において、例えば開いた領域が備えられていない半導体基板のパッシベーション上で、めっきが生じないか、あまり生じないようにする。さらに、それは浴の安定性を高めて、浴をその自己分解について防止することができる。
【0060】
1つ以上の硫黄含有化合物が使用される場合、以下の濃度は全ての硫黄含有化合物の総量に関する。
【0061】
1つの実施態様において、有機硫黄含有化合物は、N,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸、3-メルカプトプロパンスルホン酸、3,3-ジチオビス-1-プロパンスルホン酸、3-(2-ベンゾチアゾリルメルカプト)プロパンスルホン酸、3-[(エトキシ-チオキソメチル)チオ]-1-プロパンスルホン酸、3-S-イソチウロニウムプロパンスルホネート、ナトリウムジエチルジチオカルバメート、チオ二酢酸、ジチオ二酢酸、チオジグリコール酸、ジチオジグリコール酸、チオスルフェート、チオウレア、チオシアネート、システイン(めっき浴中のアミノ酸がシステインではない場合)、またはシスチンからなる群から選択される。
【0062】
有機硫黄含有化合物の濃度は、0.38~38.00μmol/L、好ましくは1.9~19.0μmol/Lである。自身の実験では、本発明の範囲内の所定の範囲が最も良好に機能することが示された。有機硫黄含有化合物のより高い濃度および遙かに高い濃度は良好に機能せず、望ましくない結果をもたらす。
【0063】
さらなる実施態様において、有機硫黄含有化合物は、例えばスルフィド基において、1つ以上の自由電子対を有する少なくとも1つの硫黄原子を含む。より特定の実施態様において、1つ以上の自由電子対を有する硫黄原子の濃度は、0.38~38.00μmol/L、好ましくは1.9~19.0μmol/Lである。
【0064】
さらにより特定の実施態様において、有機硫黄含有化合物はN,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸であり、その濃度は0.1~10.0mg/L、好ましくは0.5~5.0mg/Lである。
【0065】
アミノ酸
1つ以上のアミノ酸が使用される場合、以下の濃度は全てのアミノ酸の総量に関する。
【0066】
アミノ酸は応力を低減する添加剤として使用される。これは、めっき層中の引張応力が低減されることを意味する。
【0067】
1つの実施態様において、前記アミノ酸は硫黄を含有しないアミノ酸である。好ましくは、アミノ酸はグリシン、および非置換の炭水化物側鎖を有するアミノ酸からなる群から選択される。特定の実施態様において、アミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンまたはイソロイシンからなる群から選択される。
【0068】
1つの実施態様において、アミノ酸の濃度は0.67~40.13mmol/L、好ましくは5.36~26.75mmol/Lである。
【0069】
より特定の実施態様において、アミノ酸はグリシンであり、その濃度は0.05~3.00g/L、好ましくは0.4~2.0g/Lである。
【0070】
アミノ酸:有機硫黄含有化合物の比
1つ以上の硫黄含有化合物およびアミノ酸が使用される場合、以下の比は全ての硫黄含有化合物の合計および全てのアミノ酸の合計に関する。
【0071】
1つの実施態様において、アミノ酸:有機硫黄含有化合物のモル比、好ましくはアミノ酸:1つ以上の電子対を有する硫黄原子の比は282:1~14,079:1であり、より好ましくはこの好ましい比のうちで、少なくとも1つの有機硫黄含有化合物の濃度は1.9~19.00μmol/Lであり、且つ少なくとも1つのアミノ酸の濃度は5.36~26.75mmol/Lである。
【0072】
特定の実施態様において、アミノ酸はグリシンであり且つ有機硫黄含有化合物はN,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸であり、且つグリシン:N,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸のモル比は2,000:1~5,000:1である。
【0073】
溶液の任意成分
さらなる成分として、前記溶液は酸、例えば硫酸を含み得る。
【0074】
さらなる成分として、前記溶液は塩基、例えば水酸化ナトリウムを含み得る。
【0075】
前記溶液は1つ以上の安定剤、例えばPbイオン、Snイオン、Sbイオン、Znイオン、Cdイオンおよび/またはBiイオン源を含み得る。そのような安定剤は自己触媒の無電解ニッケルめっき溶液の自発的な自己分解を防ぐことができる。
【0076】
Pbイオン、Snイオン、Sbイオン、Znイオン、Cdイオンおよび/またはBiイオン源は、それらのイオンの1種以上を含み且つPbイオン、Snイオン、Sbイオン、Znイオン、Cdイオンおよび/またはBiイオンを産出する1つ以上の化学的化合物であってよい。それらのイオンは便利なことに、可溶性且つ相溶性の塩、例えば酢酸塩等の形態で導入することができる。
【0077】
1つの実施態様において、Pbイオン、Snイオン、Sbイオンおよび/またはBiイオンの濃度は0.49~49.0μmol/L、好ましくは2.45~24.50μmol/Lである。この濃度は、全てのPbイオン、Snイオン、Sbイオン、および/またはBiイオンの合計に関する。
【0078】
さらなる実施態様において、Pbイオン、Snイオン、Sbイオンおよび/またはBiイオンの濃度は0.1~10.0mg/L、好ましくは0.5~5.0mg/Lである。この濃度は、全てのPbイオン、Snイオン、Sbイオン、および/またはBiイオンの合計に関する。
【0079】
特定の実施態様において、鉛イオン源は硝酸鉛であり、且つ硝酸鉛の濃度は0.16~16.00mg/L、好ましくは0.8~8.00mg/Lである。
【0080】
他の材料、例えば緩衝剤、湿潤剤、促進剤、抑制剤、光沢剤等がニッケルめっき溶液中に含まれ得る。それらの材料は当該技術分野で公知である。
【0081】
前記溶液のさらなる特性
前記溶液のpHは7~11、好ましくは8~10の範囲であってよい。
【0082】
本発明の方法
本発明の方法においては、本願内で記載される本発明の任意の溶液を使用できる。
【0083】
基板は特に半導体チップまたは半導体ウェハである。基板は、該基板上にニッケル合金層をめっきすることによって本発明の物品に変換される。従って、基板および物品は、本発明のニッケル合金層によって区別される。ウェハまたはチップが前記方法における基板および本発明の物品であってもよく、両者はニッケル合金層によって区別される。換言すれば、ウェハまたはチップは、本発明のニッケル合金層または任意のさらなる金属層が追加されたとしても、まだウェハまたはチップと称される。
【0084】
本発明の方法は、ニッケル層を他の金属、好ましくは銅またはアルミニウム上で堆積するために使用できる。特定の実施態様において、基板は銅層またはアルミニウム層を含み、その際、前記ニッケル合金層は銅層またはアルミニウム層上にめっきされる。銅層またはアルミニウム層は、基板の表面全体または表面の一部に広がり得る。
【0085】
特定の実施態様において、基板は半導体ウェハまたはチップであり、前記ウェハまたはチップは銅層またはアルミニウム層を含む。
【0086】
1つの実施態様において、前記方法はさらに、前記ニッケル合金層上でパラジウム層をめっきすることを含む。パラジウム層をめっきして、ボンディング可能な(はんだ付け可能な)表面を得ることができる。
【0087】
さらなる実施態様において、前記方法はさらに、前記パラジウム層または前記ニッケル層上で金層をめっきすることを含む。
【0088】
前記方法は、いわゆる「アンダー・バンプ・メタライゼーション」(UBM)を含み得る。UBMはウェハレベルの小型化、電気シグナルインテグリティ、および金属積層体の信頼性についての近年の要請に鑑みて開発された。
【0089】
UBM工程は一般に4つの異なる部分に分けることができる:
第1の部分は前処理を含み、上述の銅またはアルミニウム層の表面、例えばAl/Al合金およびCuパッドの表面についての表面処理を含む。Alの前処理のために、種々の亜鉛化(zincation)が利用可能であり、例えばシアン化物不含の化学の産業標準を満たすXenolyte(商標)cleaner ACA(商標)、Xenolyte Etch MA(商標)、Xenolyte CFA(商標)、またはXenolyte CF(商標)(全てAtotech Deutschland GmbHから入手可能)である。
【0090】
UBM工程における第2の部分は無電解ニッケルめっきを含む。
【0091】
ニッケル合金層の無電解めっきは、好ましくはT=40~90℃、より好ましくは75~87℃の温度で実施できる。この温度は、本発明の溶液の温度である。
【0092】
本発明の溶液と、めっきされる基板との接触時間は、ニッケル合金の所望の厚さに依存する関数である。典型的には、接触時間は1~30分の範囲であってよい。
【0093】
本発明の方法において、ニッケル合金層を基板上でめっきするために、好ましくは基板を本発明の溶液に浸漬する。
【0094】
ニッケル合金の堆積の間、穏やかな撹拌を用いることができ、この撹拌は穏やかな空気撹拌、機械的な撹拌、ポンピングによる浴の循環、バレルめっきの回転等であってよい。本発明の溶液を、間欠的または連続的なろ過処理に供して、その中の汚染物質の水準を低下させることもできる。いくつかの実施態様においては、浴の成分の補給を、成分の濃度、特にニッケルイオンおよび次亜リン酸イオンの濃度並びにpHの水準を所望の制限内に保持することに基づき、間欠的に、または連続的に実施することもできる。
【0095】
UBM工程の第3の段階は、無電解パラジウムめっき浴からのめっきを含む。
【0096】
無電解パラジウムめっき浴は、例えば米国特許第5882736号明細書(US5882736A)に記載されている。低温でのPdめっきのために、無電解Pdめっき段階の前にニッケル合金層の活性化段階が任意に行われることがある。
【0097】
無電解Pdめっきのための有用な浴のパラメータは以下のとおりである:
pH: 好ましくは5~6.5、より好ましくは5.6~6.0
浴の温度: 好ましくは70~90℃、より好ましくは82~87℃
浸漬時間: 好ましくは3~20分、より好ましくは5~10分
追加的な安定剤: 好ましくは10~500mg/L、より好ましくは100~300mg/L。
【0098】
無電解Pdめっき段階の前に活性化段階が行われる場合、Pdめっき浴の温度は約40℃の低さ(且つ約95℃まで)であってよい。そのような活性化は、例えばいわゆるイオノゲンのPd活性化剤によって達成でき、それは通常は酸性であり、Pd2+源、例えばPdCl2またはPdSO4を含有し且つ元素のPdのシード層をNi合金層上に堆積する。そのような活性化剤は当業者によく知られており、且つ商標Xenolyte Activator ACU1(商標)(Atotech Deutschland GmbHの製品)として、溶液として市販されている。PdクラスタがSnによって取り囲まれている、いわゆるコロイド状酸性活性化剤もよく知られており且つ使用できる。
【0099】
欧州特許出願公開第0698130号明細書(EP0698130)に記載されるように、従来技術の無電解パラジウムめっき浴におけるさらなる安定剤を使用して、本発明のニッケル合金層上で追加的な活性化を行わずにパラジウムを堆積できる。さらに、そのような安定剤は、70℃~90℃の温度でのパラジウムの無電解めっきを可能にし、そのことは堆積されたパラジウム層の内部応力の低減をもたらす。公知の無電解パラジウムめっき浴は、そのような高い浴温度では短い寿命を示し、そのことは産業用途においては許容されない。さらなる安定剤は、スルフィミド、ポリフェニルスルフィド、ピリミジン、ポリアルコールおよび無機の錯化剤、例えばロダン化物を含む群から選択される。好ましいスルフィミドはサッカリンであり、好ましいピリミジンはニコチンアミド、ピリミジン-3-スルホン酸(suphonic acid)、ニコチン酸、2-ヒドロキシピリジンおよびニコチンである。好ましいポリアルコールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールコポリマーおよびそれらの誘導体である。
【0100】
最後に、任意の金層をNi合金/Pd積層体上にめっきすることができる。このために、従来技術から公知の無電解金めっき電解液を使用できる。パラジウム層の上部の任意の金層の厚さは、0.01~0.5μm、好ましくは0.05~0.3μmである。任意の金層は最も好ましくは浸漬法によって堆積される。無電解金めっきのために適した浴は、商標Aurotech SFplus(商標)として市販されている(T=80~90℃、; pH=4.5~6.0; 浸漬時間=7~15分; 0.5~2g/l Au(K[Au(CN)2]として)。
【0101】
本発明において出発基板としてAl被覆されたウェハが使用される場合、前記方法は好ましくは洗浄、エッチング、亜鉛化(前処理段階として)の段階を含み、ニッケル合金めっき、任意にニッケル合金層の活性化、パラジウムめっき、および任意に金めっきが続く。
【0102】
出発基板としてCu被覆されたウェハが使用される場合、好ましくは任意の前処理が洗浄、任意にエッチングおよびPd活性化の段階を含み、ここでもまた、任意にニッケルめっき、任意にニッケル合金層の活性化、パラジウムめっき、および任意に金めっきの段階が続く。
【0103】
本発明のニッケル合金層およびさらなる製品
本発明のニッケル合金層は、上述の無電解ニッケルめっき溶液から、該溶液がそのような層をめっきするために使用される場合、または上述の方法により、得ることができるか、または得られる。
【0104】
前記ニッケル合金層は2つの金属層の間、例えば銅層と他の金属層との間のバリア層として使用されて、他の金属中への銅のマイグレーションを防ぐことができる。前記他の金属は例えばパラジウムまたは金である。
【0105】
1つの実施態様において、ニッケル合金層は-40~+120N/mm2、好ましくは-20~+40N/mm2の範囲の法線応力を示す。正の値を有する法線応力は引張応力とも称される。負の値を有する法線応力は圧縮応力とも称される。法線応力は、ベントストリップ法: Cu応力ストリップ(銅-鉄合金PN: 1194)上に堆積し、続いて堆積物応力分析器を使用することによる応力測定(ASTM規格B975)によって測定される。
【0106】
1つの実施態様において、本発明のニッケル合金層は0.1~5μm、好ましくは0.5~3μmの範囲の厚さを有する。
【0107】
本発明の物品は本発明の方法により得られるか、または得ることができる。
【0108】
1つの実施態様において、本発明の物品は銅層またはアルミニウム層を含み、且つニッケル合金層が前記銅層上または前記アルミニウム層上に配置される。
【0109】
従って、本発明の物品は以下の層:
銅層またはアルミニウム層/(本発明の)ニッケル合金層
を含むことができ、その際、本発明のニッケル合金層は好ましくは外側の層、つまり自由なアクセス可能な表面を含む。
【0110】
「/」との記号は、この記号に隣接する層が互いに接している、つまり隣接する層であることを意味する。
【0111】
本発明の物品はさらにパラジウム層を含んでよく、その際、前記パラジウム層はニッケル合金層の上に配置される。従って、前記物品は以下の層の積層体をこの順:
銅層またはアルミニウム層/(本発明の)ニッケル合金層/パラジウム層
で含むことができ、その際、前記パラジウム層は好ましくは外側の層、つまり自由なアクセス可能な表面を含む。パラジウム層を介して他の素子、例えば回路キャリアまたはプリント回路板へのはんだ付けされた接続を作製することができる。
【0112】
ニッケル合金層を、銅層とパラジウム層との間のバリア層として使用して、パラジウム中への銅のマイグレーションを防ぐことができる。
【0113】
本発明の物品はさらに金層を含むことができ、その際、前記金層はニッケル層の上に直接的に、またはパラジウム層上に配置される。従って、本発明の物品は以下の層の積層体:
銅層またはアルミニウム層/(本発明の)ニッケル合金層/金層、または
銅層またはアルミニウム層/(本発明の)ニッケル合金層/パラジウム層/金層
を含むことができ、その際、前記金層は好ましくは外側の層であり、つまり、自由なアクセス可能な表面を含む。金層を介して他の素子、例えば回路キャリアまたはプリント回路板へのはんだ付けされた接続を作製することができる。
【0114】
上述の層は表面全体または表面の一部に広がることができる。例えば、前記銅層は、基板または物品の表面の一部または表面全体に広がることができる。前記ニッケル合金層は、前記銅層の表面の一部または表面全体に広がることができる。前記パラジウム層は、前記ニッケル合金層の表面の一部または表面全体に広がることができる。前記金層は、前記パラジウム合金層の表面の一部または表面全体に広がることができる。
【0115】
本発明の物品はさらに、ボールグリッドアレイとも称される、はんだボールのグリッドアレイを含むことができる。はんだボールは好ましくは上述のパラジウム層の表面上、または上述の金層の表面上に位置付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【実施例】
【0117】
方法
応力測定
法線応力はベントストリップ法: Cu応力ストリップ(銅-鉄合金PN: 1194)上に堆積し、続いて堆積物応力分析器を使用することによる応力測定(ASTM規格B975)によって測定される。
【0118】
破壊靭性
Fischerscope H100Cを用い、ビッカースを使用して押込試験を実施した。試験されるべきニッケル層を400℃の温度で、10分間(加熱および冷却を除く)アニールした。次いで、ビッカース圧子(ビッカース硬さを測定するために使用される試料)を最大負荷1N、保持時間4秒、および負荷/除去速度 dF/dt=±0.5N/秒で前記層中に押し込む。次いで、押込を光学顕微鏡によって検査する。
【0119】
例1: 本発明のめっき溶液の組成
以下の成分を水中で混合する:
【表1】
【0120】
例2: 層の組成
例2は、例1の溶液を使用することによる6つの異なる堆積物からの層の組成を示す。各々の堆積についてめっき時間は10分であった。
【0121】
【0122】
例3: ホウ素系還元剤の添加
例3は本発明の溶液の全ての化合物を使用するが、その際、還元剤の次亜リン酸塩を、増加する量のDMAB(ジメチルアミンボラン)と一緒に混合される比較例に関する。
【0123】
例3においては、次のめっき溶液を使用する: 例1からの2Lの浴、250rpmで撹拌、88℃。めっき時間を連続的に減少して、同等のNiの厚さを得る。
【0124】
例2aは本発明による例である。上記で示しためっき溶液に、増加する量のDMABをさらなる還元剤として添加する(2c-e)。
【0125】
【0126】
前記の実験で、本発明の溶液中でのN,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸とグリシンとの組み合わせおよび濃度が、DMABと組み合わせて使用されても、これは本発明とは対照的に、応力の低減をもたらさないことが示される。
【0127】
ホウ素系還元剤の添加は、層の応力特性を劇的に悪化させる。
【0128】
例4: 様々なアミノ酸
例4は、種々の量のアミノ酸のアラニンと共に本発明の溶液を使用する例に関する。
【0129】
以下のめっき浴を使用する: 例1からの浴、250rpmで撹拌、88℃、しかし以下の添加剤の組み合わせを用いる:
【表4】
【0130】
全ての実験においてめっき時間は8分である。前記の実験は、アラニンの量の増加が応力を改善(低下)させ、圧縮応力(負の値)の領域に達することを可能にすることを示し、それは有益であり、なぜなら、層が加熱される際、応力が増加して約ゼロの値またはゼロ付近の領域における値がもたらされかねないからである。
【0131】
例5: 様々な量の硫黄含有化合物およびアミノ酸としてのグリシン
例1からの浴、250rpmで撹拌、88℃、pH=9.5、10分のめっき時間だが、以下の添加剤の組み合わせを用いる:
5.1 N,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸とグリシンとの組み合わせ
【表5】
【0132】
最初の2つの実験は比較例であり、ここでめっき浴はN,N-ジメチル-ジチオカルバミルプロピルスルホン酸またはグリシンの1つだけを含む。
【0133】
両者の組み合わせが、相乗作用的に層の応力特性を改善することが示される。
【0134】
5.2 シスチンとグリシンとの組み合わせ
【表6】
【0135】
グリシンを用いない2つの実験は比較例である。
【0136】
種々の量のシスチンで、グリシンの量を増加すると、相乗作用的に層の応力特性が改善されることが示される。
【0137】
例6: 破壊靭性
全ての試料は400℃で10分間アニールされた。
【0138】
【0139】
破壊靭性試験は上記の方法において記載されたとおりに行われる。本発明の層は著しくより強靭であり、押込後にクラックを示さないことが判明した。
【0140】
比較例1および2においては、MoおよびWがなく、ここで例1は通常の標準的な二元系のNiP層であって約8.2質量%の中程度のP含有率を有するものを示す。この層は押込後のクラックの問題がある。例2も二元系のNiP層であり、本発明の層と同様のP含有率を示すが、対照的に押込後にクラックを示す。
【0141】
比較例3は、P含有率が本発明より高いので比較例である。
【0142】
例5は、リンの量が比較的多いが、本発明の範囲内である例である。
【0143】
例6は、タングステンが比較的少ない量で存在する場合の、本発明に関して少なめのリンを有する例である。
【0144】
例7も、タングステンとモリブデンとの両方が少ない量で存在する場合の、本発明に関して中程度のリンを有する例である。
【0145】
図1は、ニッケル合金層5を含む本発明の電子物品1を(縮尺通りではなく)示す。ニッケル合金層5は、ウェハ3と銅層4とを含む基板2を本発明のめっき浴と接触させることにより製造される。
【0146】
基板2の銅層4が本発明のめっき浴と接触すると、ニッケル合金層5が銅層4の上にめっきされる。さらなる方法の段階において、パラジウム層6がニッケル合金層5の上で任意にめっきされる。
【0147】
示される層の積層体において、ニッケル合金層5は銅層4とパラジウム層6との間のバリア層としてはたらく。
【0148】
金層7がパラジウム層6上に任意にめっきされ、且つはんだボール8が金層7上に配置され、それはボールグリッドアレイの一部である。ここではウェハ3の一部のみが示されている。ウェハ3は種々の位置でいくつかの層の積層体4、5、6、7を含み、各々の層の積層体ははんだボール8を含む。ウェハは、ウェハ表面の個々の区画(「パッド」)を含むことができ、各々の区画はここで1つの例において示されるような層の積層体4、5、6、7を含み得る。