(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】接着フィルム及びこれを備えた電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 31/048 20140101AFI20231030BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20231030BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20231030BHJP
C09J 151/06 20060101ALI20231030BHJP
C09J 133/24 20060101ALI20231030BHJP
C09J 123/14 20060101ALI20231030BHJP
C09J 123/18 20060101ALI20231030BHJP
C09J 11/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01L31/04 560
C09J7/30
C09J123/08
C09J151/06
C09J133/24
C09J123/14
C09J123/18
C09J11/02
(21)【出願番号】P 2021572665
(86)(22)【出願日】2020-08-17
(86)【国際出願番号】 CN2020109634
(87)【国際公開番号】W WO2021253612
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2021-12-07
(31)【優先権主張番号】202010540366.3
(32)【優先日】2020-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519320941
【氏名又は名称】杭州福斯特応用材料股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏 夢娟
(72)【発明者】
【氏名】唐 国棟
(72)【発明者】
【氏名】侯 宏兵
(72)【発明者】
【氏名】周 光大
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-167412(JP,A)
【文献】特開2011-165908(JP,A)
【文献】特表2012-512523(JP,A)
【文献】特開2012-238857(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084681(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0141251(US,A1)
【文献】国際公開第2017/122713(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/151969(WO,A1)
【文献】特表2004-510865(JP,A)
【文献】特開平07-090783(JP,A)
【文献】特開2005-163030(JP,A)
【文献】特開2017-088683(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105176071(CN,A)
【文献】特開昭61-078810(JP,A)
【文献】特開平10-101746(JP,A)
【文献】HADDADI-ASL, V. et al.,RADIATION GRAFT MODIFICATION OF ETHYLENE-PROPYLENE RUBBER-II. EFFECT OF ADDITIVES,Radiat. Phys. Chem.,1995年,Vol. 45,pp. 191-198
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/048
C09J 7/00-7/50
C08F 255/00-255/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの変性ポリオレフィン樹脂層を含み、前記変性ポリオレフィン樹脂層を形成する樹脂は1~100%の変性ポリオレフィン樹脂を含み、変性ポリオレフィン樹脂の主鎖がエチレン-αオレフィン共重合体であり、グラフト分岐鎖が酸無水物基、アミド基、エポキシ基、及びグリシジル基のうちの1種又は複数種を含むビニル単量体で形成される化合物から選ばれ、前記グラフト分岐鎖の分子量が150~8000g/molであり、前記変性ポリオレフィン樹脂において、グラフト分岐鎖のグラフト率が0.5~15%であ
り、
前記グラフト分岐鎖は、式(I)で示されるアミド基を含むビニル単量体を含む単量体で形成される化合物が主鎖とラジカルグラフト反応を行うことによって形成される、ことを特徴とする接着フィルム。
(式中、前記R
1
はH、基A、前記基A中の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基又はエポキシ基で置換された置換基、又は前記基A中の少なくとも1つのメチレン基がカルボニル基で置換された置換基であり、前記基Aは直鎖アルキル基、分岐アルキル基又はシクロアルキル基であり、且つ前記基Aの炭素数が10以下であり、前記R
2
は炭素数2~20のアルケニル基である。)
【請求項2】
前記グラフト分岐鎖は分子量1000~5000g/molのアミド基含有化合物である、ことを特徴とする請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項3】
前記R
2は、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基又はオクタデセニル基から選ばれる、ことを特徴とする請求項
1に記載の接着フィルム。
【請求項4】
前記アミド基は、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、N-メタクリルアミド基、N-エチルアクリルアミド基、N-イソプロピルアクリルアミド基、N-t-ブチルアクリルアミド基、N-メチロールアクリルアミド基、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド基、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド基、マレイミド基、オレアミド基、9-ヘキサデセンアミド基、N-(2-ヒドロキシエチル)-ウンデカ-10-エナミド基、9-テトラデセンアミド基、9-ドデセンアミド基、9-デセンアミド基、オクテンアミド基、ヘプテンアミド基、ヘキセンアミド基、ペンテンアミド基、及びブテンアミド基からなる群から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項
3に記載の接着フィルム。
【請求項5】
前記エチレン-αオレフィン共重合体は、エチレンと少なくとも1種の炭素数10以下のα-オレフィンとの共重合体である、ことを特徴とする請求項1に記載の接着フィルム。
【請求項6】
前記炭素数10以下のα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選ばれる1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項
5に記載の接着フィルム。
【請求項7】
前記エチレン-αオレフィン共重合体の密度が0.86~0.89g/cm
3であり、前記エチレン-αオレフィン共重合体のメルトインデックスが1~40g/10minである、ことを特徴とする請求項
5に記載の接着フィルム。
【請求項8】
前記エチレン-αオレフィン共重合体の密度が0.87~0.88g/cm
3であり、前記エチレン-αオレフィン共重合体のメルトインデックスが3~30g/10minである、ことを特徴とする請求項
7に記載の接着フィルム。
【請求項9】
前記接着フィルムは少なくとも1つのエチレン-酢酸ビニル共重合体層をさらに含み、且つ隣接層は同時に前記エチレン-酢酸ビニル共重合体層ではない、ことを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の接着フィルム。
【請求項10】
隣接する前記変性ポリオレフィン樹脂層と前記エチレン-酢酸ビニル共重合体層との厚さの比が1:(1~3)である、ことを特徴とする請求項
9に記載の接着フィルム。
【請求項11】
前記変性ポリオレフィン樹脂層及び前記エチレン-酢酸ビニル共重合体層を形成する原料は、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、防食剤、顔料のうちの1種又は複数種をさらに含む、ことを特徴とする請求項
10に記載の接着フィルム。
【請求項12】
封止接着フィルムを含む電子デバイスであって、
前記封止接着フィルムは請求項1~
11のいずれか1項に記載の接着フィルムを含む、ことを特徴とする電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換デバイスの分野に関し、具体的には、接着フィルム及びこれを備えた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換とは、太陽光発電効果によって太陽エネルギーを電気エネルギーに変換することである。上記の光電変換プロセスを実現し得る一般的な電子デバイス(光電変換デバイス)は、太陽電池(例えば、結晶シリコン電池、アモルファスシリコン電池、テルル化カドミウム電池、銅インジウムガリウム錫電池、ペロブスカイト電池)、液晶パネル、電界発光デバイス、プラズマディスプレイデバイス、センサなどを含むが、これらに限定されない。通常は、1層又は複数層の高分子材料でシールされ、このシール材料が上下2枚の基板と接着されて完全な電子デバイスモジュールが形成される。
【0003】
例えば、結晶シリコンソーラーモジュールの場合に、通常、表層ガラス基板、表層シール層重合体、結晶シリコン電池、裏面シール層重合体、裏面ガラス基板又は重合体基板の順で積層した後に、真空ラミネータにより加熱加圧して完全なソーラーモジュールが形成される。
【0004】
重合体シール材は、通常、以下の条件を満たす必要がある。
I)接着性。重合体シール材は、熱により融解した後に、化学的作用により電子デバイス及び基板と接着され、長期の使用において電子デバイス及び基板との間に層間剥離が発生しないことが一般的に期待される。
II)柔軟性。弾性率が低く、電子デバイスを外力の衝撃による損傷から保護する。
III)透明性。例えば太陽電池では、太陽光を最大限に利用し、発電効率を向上させるために、シール材に高光透過率が求められる。
IV)絶縁性。通常、この重合体シール材は、大きな漏れ電流の発生を回避するために、高い体積抵抗率を必要とする。
V)化学的安定性。ソーラーモジュールは長期にわたって屋外で使用される時に、高温、高湿度、紫外線放射などにさらされるが、シール材には深刻な劣化が生じて、黄変、機械的性質の低下、腐食性化合物の放出などを引き起こしてはならない。
VI)耐熱性。ソーラーモジュールは屋外で長期の高温作用を受けるため、シール材に流動やクリープ(creep)が発生してはならないので、シール材は通常架橋処理を必要とする。
【0005】
現在、一般的に使用されている光電変換デバイスの封止材料はエチレン-酢酸ビニルやポリオレフィンであり、エチレン-酢酸ビニルは太陽光発電モジュールの使用中に酢酸を発生し、電子デバイスの腐食やPID(電力誘起出力低下)の問題を引き起こす可能性がある。ポリオレフィンはエチレン-酢酸ビニル共重合体よりも水蒸気バリア性と気密性の両方に優れているが、コストが高く、両者を併用することができる。性能とコスト削減を両立させることができるものの、両者を同時に使用すると接着フィルムの粘結性が著しく低下する。
【0006】
従来の文献には、接着フィルムの重合過程に小分子アミド系化合物を直接添加することがあるが、ラミネートの過程で接着フィルムの表面に気泡が発生しやすく、モジュールの外観に影響を与え、封止材料の架橋度が低下し、封止材料とモジュールとの粘結力が低下し、発電電力がさらに低下し、太陽光発電モジュールの25年の寿命を達成することが困難である。
【0007】
このため、変性ポリオレフィン接着フィルム、又は変性ポリオレフィン接着フィルムとエチレン-酢酸ビニル共重合体の共押出接着フィルムの粘結性及び耐PID性を向上させるためには、新規な電子デバイス用封止材料を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主な目的は、従来のポリオレフィンフィルムとエチレン-酢酸ビニル共重合体層との間の粘結性能が悪いこと、及びPIDの技術的課題を解決するために、接着フィルム及びこれを備えた電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成させるために、本発明の1つの態様によれば、少なくとも1つの変性ポリオレフィン樹脂層を含み、該変性ポリオレフィン樹脂層を形成する樹脂は1~100%の変性ポリオレフィン樹脂を含み、変性ポリオレフィン樹脂における主鎖がエチレン-αオレフィン共重合体であり、グラフト分岐鎖が、酸無水物基、ヒドロキシ基、エステル基、カルボニル基、アミド基、ピリジル基、エポキシ基、ピロリジノニル基、及びグリシジル基のうちの1種又は複数種を含むビニル単量体で形成される化合物から選ばれ、グラフト分岐鎖の分子量が150~8000g/molであり、且つ隣接層は同時にエチレン-酢酸ビニル共重合体層ではない接着フィルムを提供する。
【0010】
さらに、グラフト分岐鎖は分子量1000~5000g/molのアミド基含有化合物であり、変性ポリオレフィン樹脂において、グラフト分岐鎖のグラフト率が0.5~15%である。
【0011】
さらに、グラフト分岐鎖は、式(I)で示されるアミド基を含むビニル単量体で形成される化合物が主鎖とラジカルグラフト反応を行うことによって形成される。
(式中、R
1はH、基A、基A中の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基又はエポキシ基で置換された置換基、又は基A中の少なくとも1つのメチレン基がカルボニル基で置換された置換基であり、基Aは直鎖アルキル基、分岐アルキル基又はシクロアルキル基であり、且つ第1の置換基の炭素数が10以下であり、R
2は炭素数2~20のアルケニル基である。)
【0012】
さらに、R2は、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基又はオクタデセニル基から選ばれる。
【0013】
さらに、アミド基を含むビニル単量体は、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、N-メタクリルアミド基、N-エチルアクリルアミド基、N-イソプロピルアクリルアミド基、N-t-ブチルアクリルアミド基、N-メチロールアクリルアミド基、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド基、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド基、マレイミド基、オレアミド、9-ヘキサデセンアミド基、N-(2-ヒドロキシエチル)-ウンデカ-10-エナミド基、9-テトラデセンアミド基、9-ドデセンアミド基、9-デセンアミド基、オクテンアミド基、ヘプテンアミド基、ヘキセンアミド基、ペンテンアミド基、及びブテンアミド基からなる群から選ばれる1種又は複数種である。
【0014】
さらに、エチレン-αオレフィン共重合体は、エチレンと少なくとも1種の炭素数10以下のα-オレフィンとの共重合体である。
【0015】
さらに、炭素数10以下のα-オレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選ばれる1種又は複数種である。
【0016】
さらに、エチレン-αオレフィン共重合体の密度が0.86~0.89g/cm3であり、エチレン-αオレフィン共重合体のメルトインデックスが1~40g/10minである。
【0017】
さらに、エチレン-αオレフィン共重合体の密度が0.87~0.88g/cm3であり、エチレン-αオレフィン共重合体のメルトインデックスが3~30g/10minである。
【0018】
さらに、上記接着フィルムは少なくとも1つのエチレン-酢酸ビニル共重合体層をさらに含み、隣接層は同時にエチレン-酢酸ビニル共重合体層ではない。
【0019】
さらに、隣接する変性ポリオレフィン樹脂層とエチレン-酢酸ビニル共重合体層との厚さの比が1:(1~3)である。
【0020】
さらに、変性ポリオレフィン樹脂層及びエチレン-酢酸ビニル共重合体層を形成する原料は、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、防食剤、顔料のうちの1種又は複数種をさらに含む。
【0021】
本出願の別の態様は、封止接着フィルムを含む電子デバイスであって、該封止接着フィルムは上記接着フィルムを含む電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の技術案を用いると、以下の優れた技術的効果がある。
【0023】
(1)グラフト分岐鎖中の変性基がエチレン-αオレフィン共重合体とグラフトしやすく、且つ上記のいくつかの基のいずれにもヘテロ原子が含まれているので、上記極性基、特に強極性のアミド基が導入されると、分子間水素結合を形成し、封止材料の変性POE層の架橋度及び架橋密度を向上させ、変性POE接着フィルム層の水蒸気バリア性及びイオンバリア性を向上させ、接着フィルムの耐PID性を向上させるのに有利である。
【0024】
(2)上記接着フィルムで形成される共押出接着フィルムにおいては、表面層のEVA又は他の極性材料の表面抵抗が低く、電池セルの裏面電荷を収集する能力が高くなり、収集した電荷が変性POE層により吸着され、共押出接着フィルムの耐PID性がさらに向上する。
【0025】
(3)グラフト分岐鎖中の変性基が変性POE層の極性を向上させ、且つエチレン-酢酸ビニル共重合体とは良好な適合性を有し、しかも、上記極性基はラミネート中に優れた熱安定性を有し、このため、上記極性基の導入により変性POE層とEVA層との粘結性能が向上し、ラミネートする時にラミネート界面が発生することが回避される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
なお、矛盾しない限り、本出願の実施例及び実施例の特徴は互いに組み合わせることができる。以下、実施例を参照して本発明を詳細に説明する。
【0027】
背景技術に記載のとおり、従来のポリオレフィンフィルムとエチレン-酢酸ビニル共重合体層(EVA層)では、粘結性能が劣り、またPIDの問題が存在する。
【0028】
上記技術的課題を解決するために、本出願は接着フィルムを提供し、該接着フィルムは、少なくとも1つの変性ポリオレフィン樹脂層(変性POE層)を含み、該変性ポリオレフィン樹脂層を形成する樹脂は1~100%の変性ポリオレフィン樹脂を含み、変性ポリオレフィン樹脂における主鎖がエチレン-αオレフィン共重合体であり、グラフト分岐鎖が酸無水物基、ヒドロキシ基、エステル基、カルボニル基、アミド基、ピリジル基、エポキシ基、ピロリジノニル基、及びグリシジル基のうちの1種又は複数種を含むビニル単量体で形成される化合物から選ばれ、グラフト分岐鎖の分子量が150~8000g/molである。
【0029】
上記のいくつかの基がエチレン-αオレフィン共重合体とグラフトしやすく、且つ上記のいくつかの基のいずれにもヘテロ原子が含まれているので、上記極性基が導入されると、分子間水素結合を形成し、封止材料のポリオレフィン層の架橋度及び架橋密度を向上させるのに有利である。
【0030】
架橋反応はポリオレフィン層のセグメントの規則性を破壊し、セグメントの結晶を抑制し、結晶核のサイズを減少させ、結晶粒の粒子径を可視光波長よりも小さくし、それにより、接着フィルムの光透過率を向上させることができる。
【0031】
また、上記いくつかの基は変性POE層の極性を向上させることができ、上記極性基はラミネート中に優れた熱安定性を有し、且つエチレン-酢酸ビニル共重合体とは良好な適合性を有し、このため、上記極性基の導入により変性POE層とEVA層などとの粘結性能が向上する。形成される共押出接着フィルムでは、表面層のEVA又は他の極性材料の表面抵抗が低く、電池セルの裏面電荷を収集する能力が高くなり、収集した電荷が変性POE層により吸着され、共押出接着フィルムは優れた耐PID性を有するようになる。
【0032】
変性POE層の極性をさらに向上させるとともに、変性POE層とEVA層との間の粘結性能をさらに向上させるために、好ましくは、グラフト分岐鎖は分子量1000~5000g/molのアミド基含有化合物である。
【0033】
1つの好ましい実施例では、変性ポリオレフィン樹脂において、グラフト分岐鎖のグラフト率は0.5~15%である。上記大分子量極性基のグラフト率は上記範囲を含むが、これに限定されるものではない。上記範囲内に限定されると、大分子量極性基とエチレン-酢酸ビニル共重合体との適合性をさらに向上させるのに有利であり、それにより、変性POE層とEVA層との粘結性能をさらに向上させる。
【0034】
分子量1000~5000g/molのアミド基含有化合物はラミネート中に良好な熱安定性を有するので、ラミネート中に気泡を発生させることがなく、このため、これをグラフト分岐鎖として変性POE層を形成する場合に、モジュールの外観への影響をなくし、また、気泡の発生により封止材料とモジュールとの粘結力に悪影響を与えることも回避できる。また、上記アミド基で変性されたPOEは助剤に対する吸収能力が高く、このため、他の極性基で変性されるPOE材料よりも、アミド基で変性されたPOEは、より良い総合的性能を有する。
【0035】
1つの好ましい実施例では、アミド基は式(I)で示される有機物から炭素原子に連結された1つの水素原子を除去したものである。
(式中、R
1はH、基A、上記基A中の少なくとも1つの水素原子がヒドロキシ基又はエポキシ基で置換された置換基、又は上記基A中の少なくとも1つのメチレン基がカルボニル基で置換された置換基であり、基Aは直鎖アルキル基、分岐アルキル基又はシクロアルキル基であり、且つ基Aの炭素数が10以下であり、R
2は炭素数2~20のアルケニル基である。)
【0036】
式(I)で示される有機物から炭素原子に連結された1つの水素原子を除去したアミド基は、重合可能な基として炭素数2~20のアルケニル基を有し、ラミネート中に変性POE層に架橋重合を引き起こし、それにより、変性POE層の架橋度を向上させ、EVA層とより緊密に結合させ、粘度をさらに高める。
【0037】
変性POEの架橋密度をさらに向上させるために、より好ましくは、R2はビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、ヘキサジエニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基又はオクタデセニル基を含むが、これらに限定されるものではない。
【0038】
1つの好ましい実施例では、アミド基を含むビニル単量体は、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、N-メタクリルアミド基、N-エチルアクリルアミド基、N-イソプロピルアクリルアミド基、N-t-ブチルアクリルアミド基、N-メチロールアクリルアミド基、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド基、N-(2-ヒドロキシプロピル)アクリルアミド基、N,N’-メチレンビスアクリルアミド基、マレイミド基、オレアミド、9-ヘキサデセンアミド基、N-(2-ヒドロキシエチル)-ウンデカ-10-エナミド基、9-テトラデセンアミド基、9-ドデセンアミド基、9-デセンアミド基、オクテンアミド基、ヘプテンアミド基、ヘキセンアミド基、ペンテンアミド基又はブテンアミド基である。
【0039】
他の重合体と比較して、エチレン-αオレフィン共重合体はより優れた水蒸気バリア性能、高絶縁性能及び高光透過性を有し、このため、熱可塑性重合樹脂として用いると、接着フィルムの水蒸気バリア性能、絶縁性及び光透過率のさらなる向上に有利である。
【0040】
1つの好ましい実施例では、エチレン-αオレフィン共重合体を形成するαオレフィンはエチレンと少なくとも1種の炭素数10未満のα-オレフィンとの共重合体である。より好ましくは、エチレン-αオレフィン共重合体を形成するαオレフィンは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ペンテン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテンからなる群から選ばれる1種又は複数種である。さらに好ましくは、1-ブテン、及び/又は1-オクテンである。
【0041】
1つの好ましい実施例では、エチレン-αオレフィン共重合体の密度は0.86~0.89g/cm3、好ましくは、0.87~0.88g/cm3である。共重合体の密度が高すぎると、接着フィルムの光透過率に悪影響を及ぼし、密度が低すぎると、熱可塑性重合樹脂にべたつきが生じて、加工性能を損なう可能性がある。
【0042】
1つの好ましい実施例では、エチレン-αオレフィン共重合体とエチレンホモポリマーのメルトインデックスは1~40g/10min、好ましくは、3~30g/10min、より好ましくは、5~25g/10minである。
【0043】
熱可塑性重合樹脂のメルトインデックスが低すぎると、接着フィルムの成形が困難になり、また、ガラスなどの基材との濡れ性が低下し、その結果、粘着力が低下し、メルトインデックスが高すぎると、封止接着フィルムの製造において接着フィルムやエンボスローラと粘着しやすく、また、電子デバイスのラミネート中に、重合体が溶融して流動性が高くなるため、縁部からのこぼれが発生しやすい。
【0044】
エチレン-αオレフィン共重合体とエチレンホモポリマーのメルトインデックスが上記範囲に限定されると、接着フィルムの成形性、基材との粘着力及び接着フィルム製品の外観性の向上に有利である。
【0045】
接着フィルムの総合的性能を向上させるために、好ましくは、隣接する変性POE層とEVA層との厚さの比が1:(1~3)である。
【0046】
接着フィルムの総合的性能を向上させるために、1つの好ましい実施例では、変性ポリオレフィン樹脂層及びエチレン-酢酸ビニル共重合体層を形成する原料は、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、増粘剤、防食剤、顔料からなる群のうちの1種又は複数種をさらに含む。さらに、変性ポリオレフィン樹脂材料100重量部又は太陽光発電封止材料EVA樹脂100重量部に対して、変性ポリオレフィン樹脂層及びエチレン-酢酸ビニル共重合体層を形成する原料は、架橋剤0.01~3重量部、架橋助剤0.01~10重量部、紫外光吸収剤0~0.4重量部、酸化防止剤0~0.5重量部、光安定剤0~1.0重量部、増粘剤0~3.0重量部をさらに含む。
【0047】
架橋剤は複数のエチレン性不飽和基を有する分子であり、重合体の架橋を促進して、架橋度をより高くすることができる。
【0048】
上記組成物において、架橋剤は本分野でよく使用される種類のものを使用してもよく、好ましくは、架橋剤は、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ジメチル-2,5-(ジ-t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、炭酸t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルペルオキシ)ブタン、炭酸t-アミルオキシ(2-エチルヘキシル)、2,5-ジメチル2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)-ヘキサン、ペルオキシ炭酸t-アミル、t-ブチルペルオキシ3,3,5-トリメチルヘキサノエートからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0049】
1つの好ましい実施例では、架橋助剤は、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化グリセロールトリアクリレート、プロポキシ化グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラアクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラメタクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、2,4,6-トリス(2-プロペニルオキシ)-1,3,5-トリアジン、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、及びポリエチレングリコールジメタクリレートからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0050】
酸化防止剤は重合体の押出加工、及び長期使用中の安定性を向上させ、熱酸化作用による分解を遅延させるものである。1つの好ましい実施例では、酸化防止剤はヒンダードフェノール系化合物及び/又はホスファイト系化合物である。他の酸化防止剤に比べて、上記酸化防止剤は良好な安定性及び抗酸化性能を有する。
【0051】
より好ましくは、ヒンダードフェノール系化合物は、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチレン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、7-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラ-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0052】
ホスファイト系化合物は、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス[2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル]エチルホスファイト、テトラ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジイルジホスファイト、及びビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0053】
紫外光吸収剤とは、ほとんどの紫外線エネルギーを吸収して熱エネルギーに変換し得る物質のことであり、ある電子デバイスを紫外線による破壊から保護する。1つの好ましい実施例では、上記紫外光吸収剤は、ベンゾフェノン類及び/又はベンゾトリアゾール類物質を含むが、これらに限定されるものではない。
【0054】
より好ましくは、紫外光吸収剤は、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン、2,2-テトラメチレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2-(2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノンからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0055】
光安定剤は、長期間にわたって紫外線が照射される場合の封止接着フィルムの安定性を向上させるものである。好ましくは、光安定剤はヒンダードアミン系化合物である。
【0056】
1つの好ましい実施例では、光安定剤は、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンとα-オレフィンモノマーとが重合して得たグラフト共重合体、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリドール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-安息香酸セチル、セバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)、及びトリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ホスファイトからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0057】
増粘剤を加えることにより接着フィルムの接着性能を向上させることができる。1つの好ましい実施例では、増粘剤は、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-メチルアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(2,3-グリシドキシ)プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシジルエーテルオキシプロピルトリメチルシラン、3-アミノプロピルトリメチルシランからなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0058】
1つの好ましい実施例では、上記接着フィルムは、少なくとも1つのエチレン-酢酸ビニル共重合体層(EVA層)をさらに含み、且つ隣接層は同時にエチレン-酢酸ビニル共重合体層ではない。
【0059】
エチレン-αオレフィン共重合体は優れた水蒸気バリア性能、高絶縁性能及び高光透過性を有し、且つコストが低く、このため、上記主鎖とグラフト分岐鎖を有する変性POE層を用いてEVA層とともに接着フィルムを形成する場合に、各層同士が良好な粘結性能を有し、ラミネート界面がなく、且つ接着フィルムは、水蒸気バリア性能に優れ、絶縁性能が良好であり、光透過性が高く、低コストであるなどの利点がある。
【0060】
防食剤を加えることにより接着フィルムの耐食性を向上させることができる。1つの好ましい実施例では、防食剤は、接着フィルム中の遊離酸を吸収し得る物質を指し、金属酸化物、金属水酸化物及び金属炭酸化合物を含むが、これらに限定されるものではない。防食剤は、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ハイドロタルサイト等からなる群のうちの1種又は複数種を含むが、これらに限定されるものではない。
【0061】
顔料を加えることにより顧客のニーズに応じて様々の応用シーンに対応できる。1つの好ましい実施例では、顔料は、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、滑石粉、二酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、グラフェン、酸化グラフェン、銅クロマイトブラック、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトールエステル、ポリリン酸メラミンホウ酸塩からなる群のうちの1種又は複数種を任意の配合比で混合したものを含むが、これらに限定されるものではない。
【0062】
本発明の別の態様は、変性POE層及びEVA層を形成する材料をそれぞれ均一に混合した後に、異なる押出機に投入するステップと、変性POE層の押出材料、EVA層の押出材料をそれぞれ溶融して可塑化した後に、同一のダイヘッドに注入し、Tダイヘッド内で合わせて1つのメルト流れとし、溶融押出、流延成膜、冷却、切断、及び巻き取りなどの工程を経て、多層接着フィルムを製造するステップとを含む接着フィルムの好ましい製造方法をさらに提供する。
【0063】
本出願のさらなる態様は、封止接着フィルムを含む電子デバイスであって、該封止接着フィルムは本出願による上記接着フィルムを含む電子デバイスをさらに提供する。
【0064】
本出願による製造方法によって製造される接着フィルムにおいては、各層同士が良好な粘結性能を有し、ラミネート界面がなく、且つ接着フィルムは、また優れた水蒸気バリア性能、高い絶縁性能、耐PID性、及び高い光透過性を有する。このため、上記接着フィルムを封止接着フィルムとすると、電子デバイスの発電パワーを大幅に向上させ、その耐用年数を延ばすのに有利である。
【0065】
以下、特定実施例を参照して本出願をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本出願の特許範囲を限定するものとして理解できない。
【0066】
実施例1
変性ポリオレフィン層:重量部基準で、エチレン-ヘキセン共重合体99部、エチレン-ヘキセン共重合体グラフトポリアクリルアミド(グラフト分岐鎖分子量150g/mol、グラフト率10wt%、密度0.875g/cm3、メルトインデックス25g/10min)1部に、架橋剤としてt-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート0.5部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート0.5部を加えた。
【0067】
エチレン-酢酸ビニル共重合体層:重量部基準で、エチレン-酢酸ビニル(VA含有量28%、米国デュポン社)100部に、架橋剤として炭酸t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル0.5部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート0.5部を加えた。
【0068】
上記変性ポリオレフィン層及びエチレン-酢酸ビニル共重合体層の樹脂と助剤との組成物を均一に混合した後に、異なる押出機に投入した。前記変性ポリオレフィン層の押出材料、エチレン-酢酸ビニル共重合体層の押出材料をそれぞれ溶融して可塑化した後に、同一ダイヘッドに注入し、Tダイヘッド内で合わせて1つのメルト流れとし、溶融押出、流延成膜、冷却、切断及び巻き取りなどの工程を経て、双層複合太陽光発電封止接着フィルムEVA-POEを製造してE1とし、分配器によって計算したところ、得た封止接着フィルム変性ポリオレフィン層の厚さは0.2mmで、エチレン-酢酸ビニル共重合体層の厚さは0.3mmであった。
【0069】
実施例2
変性ポリオレフィン層:重量部基準で、エチレン-オクテン共重合体90部、エチレン-オクテン共重合体グラフトポリ9-ヘキサデセンアミド基(グラフト分岐鎖分子量5000g/mol、グラフト率0.5wt%、密度0.862g/cm3、メルトインデックス15g/10min)10部に、架橋剤として1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン1.5部、架橋助剤としてエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート3部を加えた。
【0070】
エチレン-酢酸ビニル共重合体層:重量部基準で、エチレン-酢酸ビニル(VA含有量24%、米国デュポン社)100部に、架橋剤として炭酸t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル1部、架橋助剤としてトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート2部を加えた。
【0071】
上記変性ポリオレフィン層及びエチレン-酢酸ビニル共重合体層の樹脂と助剤との組成物を均一に混合した後に、異なる押出機に投入した。前記変性ポリオレフィン層の押出材料、エチレン-酢酸ビニル共重合体層の押出材料をそれぞれ溶融して可塑化した後に、同一ダイヘッドに注入し、Tダイヘッド内で合わせて1つのメルト流れとし、溶融押出、流延成膜、冷却、切断及び巻き取りなどの工程を経て、外層をEVA、中間層をPOEとした三層複合太陽光発電封止接着フィルムEVA-POE-EVAを製造してE2とし、分配器によって計算したところ、得た封止接着フィルム変性ポリオレフィン層の厚さは0.2mmで、エチレン-酢酸ビニル共重合体層の厚さは0.15mmであった。
【0072】
実施例3
変性ポリオレフィン層:重量部基準で、エチレン-ブテン共重合体グラフトポリN-メチロールアクリルアミド(グラフト分岐鎖分子量1000g/mol、グラフト率5wt%、密度0.870g/cm3、メルトインデックス20g/10min)100部に、架橋剤として1,1-ビス(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン2部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート0.02部、架橋助剤としてエトキシ化グリセロールトリアクリレート1.0部、増粘剤としてビニルトリペルオキシt-ブチルシラン0.8部、光安定剤としてセバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)0.8部を加えた。
【0073】
エチレン-酢酸ビニル共重合体層:重量部基準で、エチレン-酢酸ビニル(VA含有量28%、米国デュポン社)100部に、架橋剤として炭酸t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシル2部、架橋助剤としてジエチレングリコールジメタクリレート1部、光安定剤としてトリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ホスファイト0.8部を加えた。
【0074】
上記変性ポリオレフィン層及びエチレン-酢酸ビニル共重合体層の樹脂と助剤との組成物を均一に混合した後に、異なる押出機に投入した。前記変性ポリオレフィン層の押出材料、エチレン-酢酸ビニル共重合体層の押出材料をそれぞれ溶融して可塑化した後に、同一ダイヘッドに注入し、Tダイヘッド内で合わせて1つのメルト流れとし、溶融押出、流延成膜、冷却、切断及び巻き取りなどの工程を経て、双層複合太陽光発電封止接着フィルムEVA-POEを製造してE3とし、分配器によって計算したところ、得た封止接着フィルム変性ポリオレフィン層の厚さは0.2mmで、エチレン-酢酸ビニル共重合体層の厚さは0.25mmであった。
【0075】
実施例4
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリN,N’-メチレンビスアクリルアミド(グラフト分岐鎖分子量2000g/mol、グラフト率1.5wt%、密度0.880g/cm3、メルトインデックス18g/10min)であった。
【0076】
実施例5
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリN-(2-ヒドロキシエチル)-ウンデカ-10-エナミド基(グラフト分岐鎖分子量8000g/mol、グラフト率1.0wt%、密度0.873g/cm3、メルトインデックス3g/10min)であった。
【0077】
実施例6
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリN-エチルアクリルアミド基(グラフト分岐鎖分子量500g/mol、グラフト率15wt%、密度0.862g/cm3、メルトインデックス15g/10min)であった。
【0078】
実施例7
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリ加水分解ポリマレイン酸無水物(グラフト分岐鎖分子量2300g/mol、グラフト率1.5wt%、密度0.875g/cm3、メルトインデックス20g/10min)であった。
【0079】
実施例8
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリ加水分解ポリ(4-ビニルピリジン)(分岐鎖分子量300g/mol、グラフト率10wt%、密度0.865g/cm3、メルトインデックス25g/10min)であった。
【0080】
実施例9
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリ加水分解ポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)(分岐鎖分子量330g/mol、グラフト率5wt%、密度0.870g/cm3、メルトインデックス24g/10min)であった。
【0081】
実施例10
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリ加水分解ポリグリシジルかご型ポリシルセスキオキサン(分岐鎖分子量1300g/mol、グラフト率2.5wt%、密度0.873g/cm3、メルトインデックス19g/10min)であった。
【0082】
実施例11
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリN-メチロールアクリルアミド(分岐鎖分子量1000g/mol、グラフト率0.1wt%、密度0.869g/cm3、メルトインデックス19g/10min)であった。
【0083】
実施例12
実施例3との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリN-メチロールアクリルアミド(分岐鎖分子量1000g/mol、グラフト率18wt%、密度0.870g/cm3、メルトインデックス21g/10min)であった。
【0084】
実施例13
実施例3との相違点は以下のとおりである。グラフト分岐鎖は、エポキシ基とアミド基を同時に含有するエチレン-ブテン共重合体(分岐鎖分子量1000g/mol、グラフト率15wt%、密度0.875g/cm3、メルトインデックス21g/10min)であった。
【0085】
実施例14
実施例3との相違点は以下のとおりである。グラフト分岐鎖はエチレン-ヘキセン共重合体グラフトポリアクリルアミドであり、グラフト分岐鎖分子量1000g/mol、グラフト率5wt%、密度0.875g/cm3、メルトインデックス15g/10minであった。
【0086】
実施例15
実施例3との相違点は以下のとおりである。グラフト分岐鎖は、分子量200g/mol、グラフト率15%、密度0.875g/cm3、メルトインデックス15g/10minであった。
【0087】
実施例16
実施例3との相違点は以下のとおりである。グラフト分岐鎖は、分子量5000g/mol、グラフト率0.5%、密度0.875g/cm3、メルトインデックス10g/10minであった。
【0088】
実施例17
実施例3との相違点は、変性ポリオレフィン層の単層接着フィルムであることである。重量部基準で、エチレン-ブテン共重合体グラフトポリN-メチロールアクリルアミド(グラフト分岐鎖分子量1000g/mol、グラフト率5wt%、密度0.870g/cm3、メルトインデックス20g/10min)100部に、架橋剤として1,1-ビス(t-アミルペルオキシ)シクロヘキサン2部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート0.02部、架橋助剤としてエトキシ化グリセロールトリアクリレート1.0部、増粘剤としてビニルトリペルオキシt-ブチルシラン0.8部、光安定剤としてセバシン酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)0.8部を加えた。
【0089】
均一に混合して、上記混合物について予備混合、溶融押出、流延成膜、冷却、切断及び巻き取りなどの工程を経て、前記単層変性ポリオレフィン層の接着フィルム封止材料を製造した。
【0090】
実施例18
実施例17との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリN,N’-メチレンビスアクリルアミド(グラフト分岐鎖分子量2000g/mol、グラフト率1.5wt%、密度0.880g/cm3、メルトインデックス18g/10min)であった。
【0091】
実施例19
実施例17との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリN-(2-ヒドロキシエチル)-ウンデカ-10-エナミド基(グラフト分岐鎖分子量8000g/mol、グラフト率1.0wt%、密度0.873g/cm3、メルトインデックス3g/10min)であった。
【0092】
実施例20
実施例17との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ブテン共重合体グラフトポリ加水分解ポリマレイン酸無水物(グラフト分岐鎖分子量2300g/mol、グラフト率1.5wt%、密度0.875g/cm3、メルトインデックス20g/10min)であった。
【0093】
比較例1
ポリオレフィン接着フィルム:重量部基準で、エチレン-ヘキセン共重合体(密度0.870g/cm3、メルトインデックス25g/10min)100部に、アクリルアミド3部、架橋剤としてt-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート0.5部、架橋助剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート0.5部を加えた。
【0094】
比較例2
実施例1との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ヘキセン共重合体グラフトアクリルアミド(分岐鎖分子量71g/mol、グラフト率10wt%)であった。
【0095】
比較例3
実施例1との相違点は以下のとおりである。変性ポリオレフィン層はエチレン-ヘキセン共重合体グラフトポリアクリルアミド(分岐鎖分子量10000g/mol、グラフト率10wt%)であった。
性能テスト:
【0096】
実施例1~20、及び比較例1~3について、接着力及び架橋度をテストし、モジュールのラミネート特性を比較した。
【0097】
テスト項目及びテスト方法
1、粘結力
300mm×150mmのガラス/接着フィルム(2層)/可撓性背板を順次積層して、真空ラミネータに入れ、150℃、18分間のラミネートプロセスによってラミネートし、ラミネート部品を作製した。
【0098】
幅方向において5mm置きに可撓性背板/接着フィルムを10mm±0.5mmの試料にカットして、接着フィルムとガラスとの間の粘結力をテストした。GB/T2790-1995の試験方法に準じて、100mm/min±10mm/minの引張速度で引張試験機にて接着フィルムとガラスとの間の剥離力をテストし、3つの試験の算術平均を取って、0.1N/cmまで精確にした。
【0099】
2、架橋度
キシレンで加熱して抽出する方法によってテストした。キシレンによって溶解されなかった質量と初期の質量との比は架橋度であった。3つのサンプルの算術平均を取り、百分数で表す。
【0100】
3、モジュールのラミネート外観の評価
ガラス/接着フィルム/電池セル/接着フィルム/ガラスを順次積層して、上記粘結力テストのラミネートプロセスに従ってラミネートし、標準の二重ガラス太陽電池モジュールを作製し、モジュールの規格を60枚(6×10)電池セルのモデルとした。接着フィルムごとに、それぞれ100枚のモジュールを作製して外観評価を行った。評価基準については、気泡、異物、接着フィルムと電池セル又はガラスとの間の層間剥離を判定対象とし、具体的には以下のとおりである。
○:無
△:僅か
×:深刻
【0101】
4、モジュールのPID老化テスト
両面電池を用いて、IECTS2804-1:2015に準じてテストを行い、テストの条件を85℃、85%RHと厳しくし、負の1500Vとの一定の直流電圧を外部から印加し、192h後に、太陽光発電モジュールPIDの試験前後の出力低下を測定した。
各性能パラメータのテスト結果を表1に示す。
【0102】
【0103】
実施例1~20及び比較例1~3の比較から分かるように、本出願による共押出接着フィルムは、より高い架橋度、良好な粘結性能、高い耐PID性を有する。
【0104】
実施例3~20の比較から分かるように、変性ポリオレフィン樹脂層のグラフト基の種類、グラフト率及び分岐鎖の分子量が本出願の好ましい範囲に限定されると、共押出接着フィルムの架橋度、粘結性能及び耐PID性の向上に有利である。
【0105】
なお、本出願の明細書及び特許請求の範囲に記載の用語「第1」、「第2」などは、類似した対象を区別するためのものであり、必ずしも特定の順序や優先順位を示すわけではない。説明する本出願の実施形態が例えばここでのもの以外の順序で実施できるように、このように使用される用語は適切な場合には交換可能であることが理解できる。
【0106】
以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を制限するものではなく、当業者にとって、本発明の様々な変更や変化が可能である。本発明の趣旨及び原則を逸脱することなく行われる任意の修正、等同置換や改良などは本発明の特許範囲に含まれるものとする。