(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】BET阻害剤の結晶固体形態
(51)【国際特許分類】
C07D 471/04 20060101AFI20231030BHJP
A61K 31/538 20060101ALI20231030BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231030BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231030BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231030BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231030BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20231030BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20231030BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231030BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231030BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231030BHJP
C07F 5/02 20060101ALI20231030BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
C07D471/04 104Z
A61K31/538
A61P43/00 111
A61P37/06
A61P35/02
A61P35/00
A61P31/12
A61P29/00
A61P1/00
A61P3/10
A61P11/00
A61P11/06
A61P17/06
A61P17/00
A61P19/02
A61P25/00
A61P31/04
C07F5/02 C
C07B61/00 300
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022053417
(22)【出願日】2022-03-29
(62)【分割の表示】P 2018566525の分割
【原出願日】2017-06-19
【審査請求日】2022-03-29
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505193450
【氏名又は名称】インサイト・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】INCYTE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】シリ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンジアン・ジア
(72)【発明者】
【氏名】ピンリー・リウ
(72)【発明者】
【氏名】レイ・チャオ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジョン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】ジアチェン・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】リー・チュン
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/164480(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/210425(WO,A1)
【文献】薬剤学,2006年,Vol.66,No.6,p.435-439
【文献】真野高司,創薬の探索段階における薬剤学的研究の意義と実践,日本薬理学雑誌,2009年03月01日,第133巻,第3号,第149-153頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物1:
【化1】
の
固体形態の調製方法であって、化合物1及び溶媒を含む溶液から
前記固体形態を析出させることを含む、前記方法
であり、前記固体形態が、2シータに関して、8.7°±0.2°、9.8°±0.2°、11.6°±0.2°、12.7°±0.2°、14.7°±0.2°、15.7°±0.2°、20.0°±0.2°、21.4°±0.2°、23.3°±0.2°、及び27.1°±0.2°から選択される2つ以上の特徴的なXRPDピークを有する結晶(以下、「形態I」と記す)であり、前記形態Iが温度266℃±3℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有し、前記溶媒がメタノール及びアセトンを含む、前記方法。
【請求項2】
前記溶媒が、
さらにn-ヘプタ
ンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記析出が、(1)化合物1の前記溶液の温度を低下させること、(2)化合物1の前記溶液を濃縮すること、(3)貧溶媒を化合物1の前記溶液に添加すること、または(4)それらの任意の組み合わせにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
形態Iの前記調製が、
(ia)化合物1の前記溶液を温
度50℃
±3℃~60℃
±3℃に加熱すること;
(iia)温
度50℃
±3℃~60℃
±3℃の化合物1の前記溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiia)温度
を55℃
±3℃~65℃
±3℃に維持しながら化合物1の前記低体積溶液に貧溶媒を添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(iva)化合物1の前記温溶液を温
度15℃
±3℃~30℃
±3℃に冷却して形態Iを析出させること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
形態Iの前記調製が、
(ib)前記溶液は溶媒としてメタノール及びアセトンを含む、化合物1の前記溶液を温
度50℃
±3℃~60℃
±3℃に加熱すること;
(iib)温
度50℃
±3℃~60℃
±3℃の化合物1の前記溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiib)温度
を55℃
±3℃~65℃
±3℃に維持しながら化合物1の前記低体積溶液にn-ヘプタンを添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(ivb)化合物1の前記温溶液を温
度15℃
±3℃~30℃
±3℃に冷却して形態Iを析出させること、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
化合物1:
【化2】
の
固体形態の調製方法であって、化合物1及び溶媒を含む溶液から
前記固体形態を析出させることを含む、前記方法
であり、前記固体形態が、約2シータに関して、6.7°±0.2°、9.5°±0.2°、10.5°±0.2°、14.8°±0.2°、16.2°±0.2°、17.0°±0.2°、18.8°±0.2°、及び19.3°±0.2°から選択される2つ以上の特徴的なXRPDピークを有する結晶(以下、「形態II」と記す)であり、前記形態IIが温度268℃±3℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有し、前記溶媒がテトラヒドロフラン(THF)、アセトン及びn-ヘプタンを含む、前記方法。
【請求項7】
前記析出が、(1)化合物1の前記溶液の温度を低下させること、(2)化合物1の前記溶液を濃縮すること、(3)貧溶媒を化合物1の前記溶液に添加すること、または(4)それらの任意の組み合わせにより行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
形態IIの前記調製が、
(ic)化合物1の前記溶液を温
度50℃
±3℃~60℃
±3℃に加熱すること;
(iic)温
度50℃
±3℃~60℃
±3℃の化合物1の前記溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiic)温度
を55℃
±3℃~65℃
±3℃に維持しながら化合物1の前記低体積溶液に貧溶媒を添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(ivc)化合物1の前記温溶液を温
度15℃
±3℃~30℃
±3℃に冷却して形態IIを析出させること、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
化合物8:
【化3】
をB1と反応させることを含み、B1が塩基である方法によって、化合物1またはその塩を調製することをさらに含む、請求項1~
8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
B1がアルカリ金属水酸化物塩基である、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
化合物8とB1との前記反応が第1の溶媒中で行われる、請求項
9または10に記載の方法。
【請求項12】
化合物7:
【化4】
を化合物9:
【化5】
とP2及びB2の存在下で反応させることを含み、P2が遷移金属触媒であり、B2が塩基である方法によって、化合物8を調製することをさらに含む、請求項
9~11のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、がんなどの疾患の治療に有用である、BRD2、BRD3、BRD4、及びBRD-tなどのBETタンパク質の阻害剤である、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンの結晶固体形態に関する。本出願には、その調製方法及びそれを調製する際の中間体を含む。
【背景技術】
【0002】
真核生物のゲノムは、細胞の核内で高度に組織化されている。DNAはヒストンタンパク質のコアに巻き付き、ヌクレオソームを形成することによりクロマチンに収納されている。このヌクレオソームはさらに凝集及び折り畳みによって圧縮され、高度に凝縮したクロマチン構造を形成する。様々な異なる凝縮状態が可能であるが、この構造の凝集性は細胞周期中に変化し、細胞分裂期で最もコンパクトになる。クロマチン構造はタンパク質のDNAへの接近を調節することにより遺伝子転写の調節に重要な役割を果たす。クロマチン構造は、主として、コアのヌクレオソーム構造を越えて伸長するヒストンH3及びH4のテール内でのヒストンタンパク質に対する一連の翻訳後修飾によって制御される。こうした可逆的修飾として、アセチル化、メチル化、リン酸化、ユビキチン化、及びSUMO化が挙げられる。ヒストンテール内の特定の残基を修飾する特定の酵素により、このエピジェネティックなマークが書き込まれたり、消去されたりすることによってエピジェネティックコードが形成される。他の核タンパク質はこれらのマークに結合し、この情報によって指定される出力をクロマチン構造及び遺伝子転写の調節を通じて行う。神経変性障害、代謝性疾患、炎症、及びがんなどの疾患におけるヒストンマークの異常をもたらす、エピジェネティックな修飾因子及び調節因子をコードする遺伝子と遺伝的変化との関連性を示す証拠が増えている。
【0003】
修飾によりDNAとヒストンタンパク質との間の相互作用が弱まり、転写機構によるDNAへの接近が増大することから、ヒストンのアセチル化は一般的に遺伝子転写の活性化と関連する。特定のタンパク質はヒストン内のアセチル化リジン残基に結合してエピジェネティックコードを「読み取る」。ブロモドメインと呼ばれる高度に保存されたタンパク質モジュールは、ヒストン及び他のタンパク質のアセチル化リジン残基に結合する。ヒトゲノムには60超のブロモドメイン含有タンパク質が存在する。
【0004】
ブロモドメイン含有タンパク質のBET(Bromodomain and Extra-Terminal)ファミリーには、ヒストン及び他のタンパク質のアセチル化リジン残基に結合することができるタンデム配列のN末端ブロモドメインを含有する保存された構造組織を共有する4種のタンパク質(BRD2、BRD3、BRD4、及びBRD-t)が含まれる。BRD2、BRD3、及びBRD4は遍在的に発現するが、BRDtは生殖細胞に限定される。BRDタンパク質は、遺伝子転写の調節及び細胞増殖の制御において不可欠な役割を果たすが、その役割は重複しない。BETタンパク質は、遺伝子転写の多くの局面を制御するメディエーター、PAFc、及び超伸長複合体を含む大きいタンパク質複合体と結合する。BRD2及びBRD4タンパク質は、有糸分裂中に染色体と複合体化した状態を維持することがわかっており、細胞周期を開始するサイクリンD及びc-Mycを含む重要な遺伝子の転写を促進するために必要である(Mochizuki J Biol.Chem.2008 283:9040-9048)。BRD4は、タンパク質翻訳伸長因子B複合体を誘導性遺伝子のプロモーターに動員して、RNAポリメラーゼIIのリン酸化をもたらし、増殖性遺伝子の転写及び伸長を刺激するために不可欠である(Jang et al.Mol.Cell 2005 19:523-534)。場合によっては、BRD4のキナーゼ活性によりRNAポリメラーゼIIを直接的にリン酸化して活性化することができる(Devaiah et al.PNAS 2012 109:6927-6932)。BRD4欠損細胞は、細胞周期の進行に障害を示す。BRD2及びBRD3は、転写が活発な遺伝子周囲のヒストンと結合することが報告されており、転写伸長の促進に関与している可能性がある(Leroy et al,Mol.Cell.2008 30:51-60)。アセチル化ヒストンに加えて、BETタンパク質は、NF-kB及びGATA1のRelAサブユニットを含むアセチル化転写因子に選択的に結合し、それによってこれらのタンパク質の転写活性を直接的に調節し、炎症及び造血分化に関与する遺伝子の発現を制御することが示されている(Huang et al,Mol.Cell.Biol.2009 29:1375-1387;Lamonica Proc.Nat.Acad.Sci.2011 108:E159-168)。
【0005】
NUT(精巣の核タンパク質)とBRD3またはBRD4とが関与して新たな融合腫瘍遺伝子BRD-NUTを形成する再発性転座は、高度に悪性形態の上皮腫瘍形成にみられる(French et al,Cancer Research 2003 63:304-307;French et al,Journal of Clinical Oncology 2004 22:4135-4139)。この腫瘍遺伝子を選択的に切除すると、正常な細胞分化が回復し、腫瘍原性表現型が逆転する(Filippakopoulos et al,Nature 2010 468:1068-1073)。BRD2、BRD3、及びBRD4の遺伝的ノックダウンは、広範な血液腫瘍細胞及び固形腫瘍細胞の増殖及び生存を減退させることが示されている(Zuber et al,Nature 2011 478:524-528;Delmore et al,Cell 2011 146:904-917)。がんにおける役割とは別に、BETタンパク質は細菌攻撃に対する炎症応答を制御しており、BRD2ハイポモルフマウスモデルで炎症性サイトカインレベルの大幅な低下及び肥満誘発糖尿病からの保護を示した(Wang et al Biochem J.2009 425:71-83;Belkina et al.J.Immunol 2013)。さらに、ウイルスによってはウイルス複製過程の一部として、これらのBETタンパク質を利用してウイルスのゲノムを宿主細胞のクロマチンに結合させたり、BETタンパク質を使用してウイルス遺伝子の転写及び抑制を促進したりするものもある(You et al,Cell 2004 117:349-60;Zhu et al,Cell Reports 2012 2:807-816)。
【0006】
BETタンパク質の阻害剤は現在開発中である。例示的なBETタンパク質阻害剤は、例えば、米国特許出願公開第2014/0275030号;同第2015/0011540号;同第2015/0148375号;同第2015/0148342号;同第2015/0148372号;同第2015/0175604号;及び同第2016/007572号に記載されている。具体的には、BET阻害化合物である2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンが、US2015/0307493に記載されている。薬物の開発にとって、通常、その調製、精製、再現性、安定性、バイオアベイラビリティ、及びその他の特徴に関して望ましい特性を有する薬物の形態を使用する方が有利である。したがって、本明細書で提供する化合物の固体結晶形態は、疾患治療のためのBET阻害剤の開発に関する現行の要求を満たす一助となる。
【発明の概要】
【0007】
本出願は特に、結晶固体形態のBETタンパク質阻害剤を提供する。この阻害剤は、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンである。
【0008】
本出願はまた、結晶固体形態の2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0009】
本出願はまた、結晶固体形態の2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンをBETタンパク質の活性と関連する疾患及び障害の治療に使用する方法を提供する。
【0010】
さらに、本出願は、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン及びその結晶固体形態を調製する方法を提供する。
【0011】
さらに、本出願は、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンの合成に有用である、中間体化合物及びその調製方法を提供する。
【0012】
1つ以上の実施形態の詳細を以下の説明に記載する。他の特長、目的、及び利点は、本明細書及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】化合物1の形態IのX線粉末回折(XRPD)パターンである。
【
図2】化合物1の形態Iの示差走査熱量測定(DSC)のサーモグラムである。
【
図3】化合物1の形態Iの熱重量分析(TGA)のサーモグラムである。
【
図4】化合物1の形態IIのXRPDパターンである。
【
図5】化合物1の形態IIのDSCサーモグラムである。
【
図6】化合物1の形態IIのTGAサーモグラムである。
【
図7】化合物1の形態IaのXRPDパターンである。
【
図8】化合物1の形態IIIのXRPDパターンである。
【
図9】化合物1の形態IVのXRPDパターンである。
【
図10】化合物1の形態VのXRPDパターンである。
【
図11】化合物1の形態VaのXRPDパターンである。
【
図12】化合物1の形態VIのXRPDパターンである。
【
図13】化合物1の形態VIIのXRPDパターンである。
【
図14】化合物1の形態VIIIのXRPDパターンである。
【
図15】化合物1の形態IXのXRPDパターンである。
【
図16】化合物1の形態XのXRPDパターンである。
【
図17】化合物1の形態XIのXRPDパターンである。
【
図18】化合物1の形態XIIのXRPDパターンである。
【
図19】化合物1の形態XIIIのXRPDパターンである。
【
図20】化合物1の形態XIVのXRPDパターンである。
【
図21】化合物1の形態XVのXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
結晶形態とその調製方法
本出願は特に、結晶固体形態のBETタンパク質阻害剤を提供する。この阻害剤は、本明細書で「化合物1」と称する2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(以下を参照)である。
【化1】
【0015】
通常、同じ物質の異なる結晶形態は、例えば吸湿性、溶解性、安定性などに関するバルク特性が異なっている。融点の高い形態は、多くの場合、熱力学的安定性に優れ、固体形態を含有する薬物製剤の貯蔵寿命を延長する上で有利である。融点の低い形態は、多くの場合、熱力学的安定性に劣るが、水溶性を高める上で有利であり、薬物のバイオアベイラビリティの向上につながる。熱及び湿度に対する安定性を得るには、弱吸湿性の形態が望ましく、長期保存中に分解しにくい。無水形態は、溶媒または含水量の変化に起因する重量または組成の変動を気にせずに、一貫した製造が可能であるため、望ましい場合が多い。一方、水和形態または溶媒和形態は吸湿しにくく、貯蔵条件下で湿度安定性の向上を示し得るという点で有利であり得る。
【0016】
本発明の結晶固体形態は、水などの溶媒を含んでも(例えば、水和形態)、または水及び溶媒を実質的に含まなくてもよい(例えば、無水物の形態)。いくつかの実施形態では、結晶固体形態は無水物である。さらなる実施形態では、結晶固体形態は水和されている。
【0017】
化合物1は、下記及び実施例に記載する形態Iと呼ばれる固体結晶形態で得ることができる。実験データは、形態Iが無水物であることを示している。形態Iの特性を、そのXRPDパターン及び他の固体状態の特徴によって決定する。いくつかの実施形態では、形態Iは、2シータに関して約12.7°に特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Iは、2シータに関して約8.7°、約9.8°、及び約12.7°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Iは、2シータに関して約8.7°、約9.8°、約12.7°、約21.4°、及び約23.3°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、形態Iは、2シータに関して約8.7°、約9.8°、約12.7°、約21.4°、及び約23.3°から選択される2つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、形態Iは、2シータに関して約8.7°、約9.8°、約11.6°、約12.7°、約14.7°、約15.7°、約20.0°、約21.4°、約23.3°、及び約27.1°から選択される2つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0020】
いくつかの実施形態では、形態Iは、2シータに関して約8.7°、約9.8°、約11.6°、約12.7°、約14.7°、約15.7°、約20.0°、約21.4°、約23.3°、及び約27.1°から選択される3つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0021】
いくつかの実施形態では、形態Iは、2シータに関して約8.7°、約9.8°、約11.6°、約12.7°、約14.7°、約15.7°、約20.0°、約21.4°、約23.3°、及び約27.1°から選択される4つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0022】
いくつかの実施形態では、形態Iは実質的に
図1に示すようなXRPDパターンを有する。
【0023】
いくつかの実施形態では、形態Iは、温度約266℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態Iは実質的に
図2に示すようなDSCサーモグラムを有する。
【0024】
いくつかの実施形態では、形態Iは実質的に
図3に示すようなTGAサーモグラムを有する。
【0025】
形態Iは一般に、化合物1及び溶媒を含む溶液から形態Iを析出させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、メタノール、アセトン、n-ヘプタン、またはそれらの混合物を含む。例えば、形態Iは、化合物1及びアセトンを含む溶液から形態Iを析出させることによって調製することができる。形態Iの調製には、化合物1を化合物1の飽和アセトン溶液に添加し、得られた溶液を約25℃で約3日間撹拌することを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、形態Iの析出は、(1)化合物1の溶液(例えば、高温の化合物1の溶液)の温度を低下させること、(2)化合物1の溶液を濃縮すること、(3)貧溶媒を化合物1の溶液に添加すること、またはそれらの任意の組み合わせにより行われる。いくつかの実施形態では、析出は、化合物1の溶液に貧溶媒を添加することによって行われ、その場合、化合物1の前記溶液はプロトン性溶媒及び非プロトン性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、プロトン性溶媒はメタノールであり、非プロトン性溶媒はアセトンであり、貧溶媒はn-ヘプタンである。いくつかの実施形態では、形態Iの析出は、化合物1の溶液にn-ヘプタンを添加することによって行われ、その場合、化合物1の前記溶液はメタノール及びアセトンを含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、形態Iの調製に以下を含む:
(ia)化合物1の溶液を温度約50℃~約60℃に加熱すること;
(iia)温度約50℃~約60℃の化合物1の溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiia)温度を約55℃~約65℃に維持しながら化合物1の低体積溶液に貧溶媒を添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(iva)化合物1の温溶液を温度約15℃~約30℃に冷却して形態Iを析出させること。
【0028】
いくつかの実施形態では、形態Iの調製に以下を含む:
(ib)化合物1の溶液(この溶液は溶媒としてメタノール及びアセトンを含む)を温度約50℃~約60℃に加熱すること;
(iib)温度約50℃~約60℃の化合物1の溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiib)温度を約55℃~約65℃に維持しながら化合物1の低体積溶液にn-ヘプタンを添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(ivb)化合物1の温溶液を温度約15℃~約30℃に冷却して形態Iを析出させること。
【0029】
化合物1はまた、下記及び実施例に記載する形態IIと呼ばれる結晶形態として得ることができる。実験データは、形態IIが無水物であることを示している。形態IIの特性を、そのXRPDパターン及び他の固体状態の特徴によって決定する。いくつかの実施形態では、形態IIは、2シータに関して約17.0°に特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態IIは、2シータに関して約17.0°及び約19.3°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態IIは、2シータに関して約16.2°、約17.0°、及び約19.3°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0030】
いくつかの実施形態では、形態IIは、約2シータに関して6.7°、約9.5°、約10.5°、約14.8°、約16.2°、約17.0°、約18.8°、及び約19.3°から選択される2つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0031】
いくつかの実施形態では、形態IIは、2シータに関して約6.7°、約9.5°、約10.5°、約14.8°、約16.2°、約17.0°、約18.8°、及び約19.3°から選択される3つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、形態IIは、2シータに関して約6.7°、約9.5°、約10.5°、約14.8°、約16.2°、約17.0°、約18.8°、及び約19.3°から選択される4つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。
【0033】
いくつかの実施形態では、形態IIは実質的に
図4に示すようなXRPDパターンを有する。
【0034】
いくつかの実施形態では、形態IIは、温度約268℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有する。いくつかの実施形態では、形態IIは実質的に
図5に示すようなDSCサーモグラムを有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、形態IIは実質的に
図6に示すようなTGAサーモグラムを有する。
【0036】
形態IIは一般に、化合物1及び溶媒を含む溶液から形態IIを析出させることによって調製することができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、n-ヘプタン、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、形態IIの析出は、(1)化合物1の溶液の温度を低下させること、(2)化合物1の溶液を濃縮すること、(3)貧溶媒を化合物1の溶液に添加すること、またはそれらの任意の組み合わせにより行われる。いくつかの実施形態では、形態IIの析出は、化合物1の溶液に貧溶媒を添加することによって行われ、その場合、前記溶液はエーテル溶媒及び非プロトン性溶媒を含む。いくつかの実施形態では、エーテル溶媒はTHFであり、非プロトン性溶媒はアセトンであり、貧溶媒はn-ヘプタンである。いくつかの実施形態では、形態IIの析出は、化合物1の溶液にn-ヘプタンを添加することによって行われ、その場合、化合物1の前記溶液はTHF及びアセトンを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、形態IIの調製に以下を含む:
(ic)化合物1の溶液を温度約50℃~約60℃に加熱すること;
(iic)温度約50℃~約60℃の化合物1の溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiic)温度を約55℃~約65℃に維持しながら化合物1の低体積溶液に貧溶媒を添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(ivc)化合物1の温溶液を温度約15℃~約30℃に冷却して形態IIを析出させること。
【0038】
いくつかの実施形態では、形態IIの調製に以下を含む:
(id)化合物1の溶液(この溶液は溶媒としてTHF及びアセトンを含む)を温度約50℃~約60℃に加熱すること;
(iid)温度約50℃~約60℃の化合物1の溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiid)温度を約55℃~約65℃に維持しながら化合物1の低体積溶液にn-ヘプタンを添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(ivd)化合物1の温溶液を温度約15℃~約30℃に冷却して形態IIを析出させること。
【0039】
化合物1はまた、下記及び実施例に記載する形態Ia、III、IV、V、Va、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXVと呼ばれる固体結晶形態で得ることができる。形態Ia、III、IV、V、Va、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXVの特性を、そのXRPDパターン及び他の固体状態の特徴によって決定する。
【0040】
いくつかの実施形態では、形態Iaは、2シータに関して約8.8°、約10.0°、約11.7°、約12.8°、及び約13.5°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Iaは、2シータに関して約8.8°、約10.0°、約11.7°、約12.8°、約13.5°、約20.0°、約21.5°、約22.6°、及び約23.3°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Iaは実質的に
図7に示すようなXRPDパターンを有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、形態IIIは、2シータに関して約7.8°、約12.4°、約13.1°、約15.2°、及び約15.5°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態IIIは、2シータに関して約7.8°、約12.4°、約13.1°、約15.2°、約15.5°、約16.9°、約17.5°、及び約20.3°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態IIIは実質的に
図8に示すようなXRPDパターンを有する。
【0042】
いくつかの実施形態では、形態IVは、2シータに関して約11.2°、約16.3°、約18.7°、及び約22.1°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態IVは実質的に
図9に示すようなXRPDパターンを有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、形態Vは、2シータに関して約8.2°、約8.5°、約14.1°、約16.3°、及び約17.1°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Vは、2シータに関して約8.2°、約8.5°、約14.1°、約16.3°、約17.1°、約18.9°、約19.8°、約21.8°、及び約22.7°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Vは実質的に
図10に示すようなXRPDパターンを有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、形態Vaは、2シータに関して約8.7°、約16.5°、約17.3°、約19.9°、及び約21.6°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Vaは実質的に
図11に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態Vaは、温度約133℃の吸熱ピーク、温度約267℃の吸熱ピーク、またはそれらの組み合わせを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、形態VIは、2シータに関して約8.5°、約9.6°、約11.4°、及び約12.1°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態VIは、2シータに関して約8.5°、約9.6°、約11.4°、約12.1°、約13.5°、約14.5°、約15.2°、約17.1°、約17.7°、約18.1°、約19.2°、及び約20.7°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態VIは実質的に
図12に示すようなXRPDパターンを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、形態VIIは、2シータに関して約9.9°、約12.2°、約14.8°、及び約15.7°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態VIIは、2シータに関して約9.9°、約12.2°、約14.8°、約15.7°、約17.0°、約17.5°、及び約18.8°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態VIIは実質的に
図13に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態VIIは、温度約126℃の吸熱ピーク、温度約256℃の吸熱ピーク、温度約260℃の発熱ピーク、温度約267℃の吸熱ピーク、またはそれらの組み合わせを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、形態VIIIは、2シータに関して約8.1°、約8.5°、約16.2°、及び約17.0°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態VIIIは、2シータに関して約8.1°、約8.5°、約16.2°、約16.6°、約17.0°、約17.5°、約18.0°、約18.9°、約19.6°、約20.1°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態VIIIは実質的に
図14に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態VIIIは、温度約145℃の吸熱ピーク、温度約265℃の吸熱ピーク、またはそれらの組み合わせを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0048】
いくつかの実施形態では、形態IXは、2シータに関して約8.6°、約9.1°、約11.4°、約13.4°、及び約15.2°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態IXは、2シータに関して約8.6°、約9.1°、約11.4°、約13.4°、約15.2°、約18.2°、約22.1°、約22.8°、及び約23.9°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態IXは実質的に
図15に示すようなXRPDパターンを有する。
【0049】
いくつかの実施形態では、形態Xは、2シータに関して約14.9°、約15.3°、約15.8°、及び約17.0°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Xは、2シータに関して約14.9°、約15.3°、約15.8°、約17.0°、約17.7°、約18.3°、及び約19.7°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態Xは実質的に
図16に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態Xは、温度約121℃の吸熱ピーク、温度約267℃の吸熱ピーク、またはそれらの組み合わせを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、形態XIは、2シータに関して約8.9°、約12.8°、約18.0°、約21.5°、約22.6°、及び約23.3°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XIは実質的に
図17に示すようなXRPDパターンを有する。
【0051】
いくつかの実施形態では、形態XIIは、2シータに関して約5.6°、約11.7°、約13.8°、及び約14.5°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XIIは、2シータに関して約5.6°、約11.7°、約13.8°、約14.5°、約16.9°、約17.7°、及び約18.7°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XIIは、2シータに関して約5.6°、約11.7°、約13.8°、約14.5°、約16.9°、約17.7°、約18.7°、約23.5°、約24.6°、約34.3°、約44.2°、及び44.6°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XIIは実質的に
図18に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態XIIは、温度約264℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、形態XIIIは、2シータに関して約5.7°、約8.6°、約9.8°、及び約11.8°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XIIIは、2シータに関して約5.7°、約8.6°、約9.8°、約11.8°、約12.6°、約13.4°、約14.1°、約14.8°、約16.6°、約19.1°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XIIIは実質的に
図19に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態XIIIは、温度267℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0053】
いくつかの実施形態では、形態XIVは、2シータに関して約4.0°、約11.2°、約11.9°、約14.1°、約14.8°、及び約15.9°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XIVは実質的に
図20に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態XIVは、温度267℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、形態XVは、2シータに関して約7.4°、約9.6°、約12.4°、約13.4°、及び約15.5°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XVは、2シータに関して約7.4°、約9.6°、約12.4°、約13.4°、約15.5°、約16.9°、約17.7°、約19.0°、約19.5°、約20.6°、及び約22.5°から選択される1つ以上の特徴的なXRPDピークを有する。いくつかの実施形態では、形態XVは実質的に
図21に示すようなXRPDパターンを有する。いくつかの実施形態では、形態XVは、温度約85℃の吸熱ピーク、温度約172℃の吸熱ピーク、温度約192℃の発熱ピーク、温度約268℃の吸熱ピーク、またはそれらの組み合わせを特徴とするDSCサーモグラムを有する。
【0055】
本明細書で使用される場合、語句「固体形態」とは、本明細書で非晶質状態または結晶状態(「結晶形態」または「結晶固体」または「結晶固体形態」)のいずれかで提供される化合物を指す。したがって本明細書で、結晶状態で提供される化合物には、場合により結晶格子内に溶媒または水が含まれており、例えば溶媒和または水和された結晶形態を形成する場合がある。本明細書で使用される場合、用語「水和された」とは、結晶格子内に水分子を含む結晶形態を指すことを意図する。「水和された」結晶形態の例として、半水和物、一水和物、二水和物などが挙げられる。チャネル水和物などの他の水和形態もまた、本用語の意味の範囲内に含まれる。
【0056】
本明細書で提供する化合物(例えば、化合物1)の様々な結晶形態の特性を、X線粉末回折(XRPD)、示差走査熱量測定(DSC)、及び/または熱重量分析(TGA)によって決定する。反射(ピーク)のX線粉末回折(XRPD)パターンは通常、特定の結晶形態の指紋と考えられる。XRPDピークの相対強度は、とりわけ、試料調製技術、結晶サイズ分布、使用される種々のフィルター、試料のマウント手順、及び使用される具体的な装置に応じて大きく異なり得ることがよく知られている。場合によって、装置の種類または設定(例えばNiフィルターの使用の有無)によっては、新しいピークが観測されたり、既存のピークが消失したりすることがある。本明細書中で使用される場合、用語「ピーク」または「特徴的なピーク」とは、相対的な高さ/強度が最大ピーク高さ/強度の少なくとも約3%である反射を指す。さらに、装置の差異及びその他の要因が2シータ値に影響する可能性がある。したがって、本明細書で報告されるようなピーク指定は、上下約0.2°(2シータ)の範囲で変動する可能性があり、本明細書でXRPDに関連して使用される用語「実質的に」または「約」は、上記の変動を指すことを意図する。
【0057】
同様に、DSC、TGA、または他の熱実験に関連する温度測定値は、装置、具体的な設定、試料調製などに応じて約±3℃変動する可能性がある。したがって、「実質的に」図のいずれかに示すようなDSCサーモグラムを有する本明細書で報告する結晶形態は、そのような変動を考慮するものと理解される。
【0058】
用語「結晶形態」とは、ある特定の格子配置である結晶物質を指すことを意図する。同じ物質の異なる結晶形態は通常、結晶格子(例えば単位細胞)が異なっており、通常はその結晶格子の違いに起因して物理的性質が異なり、また場合によって水または溶媒の含有量が異なっている。結晶格子の違いは、X線粉末回折(XRPD)などの固体状態の特性決定方法によって識別することができる。さらに示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、動的水蒸気吸着(DVS)などの他の特性決定方法は結晶形態の識別に役立ち、加えて安定性及び溶媒/水含有量の決定にも役立つ。
【0059】
化合物1などの特定の物質の異なる結晶形態は、その物質の無水形態及びその物質の溶媒和/水和形態の両方を含む可能性があり、XRPDパターンの違い、または他の固体状態の特性決定方法によって結晶格子の違いを示すことにより、無水形態及び溶媒和/水和形態のそれぞれを互いに区別する。場合によって、単結晶形態(例えば、固有のXRPDパターンによって識別される)は水または溶媒の含有量が変動する可能性があり、その場合、水及び/または溶媒に関する組成が変化しても、(XRPDパターンと同様に)格子は実質的に変化しないままである。
【0060】
いくつかの実施形態では、本出願の化合物(またはその水和物及び溶媒和物)はバッチで調製され、これをバッチ、試料、または調製物と呼ぶ。バッチ、試料、または調製物は、水和形態及び非水和形態、ならびにそれらの混合物を含む、本明細書に記載の結晶形態または非結晶性形態のいずれかで本明細書に提供される化合物を含み得る。
【0061】
本明細書で開示される化合物は、その中に存在する原子の同位体すべてを含み得る。同位体には、原子番号は同じであるが質量数が異なる原子を包含する。例えば、水素の同位体には、三重水素及び重水素が含まれる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する化合物(例えば、化合物1)、またはその塩、またはその結晶形態は、実質的に単離される。用語「実質的に単離された」とは、化合物または塩が形成または検出された環境から少なくとも部分的にまたは実質的に分離されていることを意味する。部分的分離物には、例えば、本明細書で提供する化合物、塩、または結晶形態が濃縮された組成物を含み得る。実質的な分離物には、本明細書で提供される化合物、塩、または結晶形態を少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%、少なくとも約90重量%、少なくとも約95重量%、少なくとも約97重量%、または少なくとも約99重量%含有する組成物を含み得る。
【0063】
「薬学的に許容される」という語句を本明細書で用いる場合、このような化合物、物質、組成物、及び/または剤形が、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴うことなく、堅実な医学的判断の範囲内で、ヒト及び動物の組織に接触させて使用するのに適しており、妥当なベネフィット/リスク比に見合うことを指す。
【0064】
化合物1の調製方法
本出願はさらに、化合物1の調製方法であってスケールアップに適合可能である方法を提供する。化合物1の調製方法は、US2015/0307493に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。US2015/0307493に記載された方法と比較して、本明細書で提供する方法は、スケールアップに適合可能であるという明白な利点を有する。例えば、本明細書で提供する方法は、危険性の低い試薬を使用しても、高収率で良好な品質の生成物が得られる。さらに本明細書で提供する方法は、化合物7(下記参照)を単離せずに、化合物7を原位置で生成することができ、大規模製造での効率を向上させる。
【0065】
いくつかの実施形態では、化合物1の調製方法には、化合物8:
【化2】
をB1と反応させることを含み、その場合、B1は塩基である。
【0066】
いくつかの実施形態では、B1は水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物塩基である。化合物8とB1との反応は溶媒中で行うことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は1,4-ジオキサンなどのエーテル溶媒を含む。1,4-ジオキサンなどのエーテル溶媒は、化合物1を高収率かつ良好な品質で得ることができる。いくつかの実施形態では、化合物8とB1との反応は、高温、例えば、温度約50℃~約85℃(例えば、約60℃~約80℃または約65℃~約75℃)で行われる。いくつかの実施形態では、温度は約70℃である。いくつかの実施形態では、化合物8の量に対してモル過剰のB1を供給する。いくつかの実施形態では、化合物8の1当量を基準として、約3~約4当量または約3.5当量のB1を使用する。
【0067】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに化合物7:
【化3】
を化合物9:
【化4】
とP2及びB2の存在下で反応させて化合物8を生成することを含み、その場合、P2は遷移金属触媒であり、B2は塩基である。
【0068】
いくつかの実施形態では、P2はパラジウム触媒などの遷移金属触媒である。パラジウム触媒の例として、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2、例えばPd(dppf)Cl2-CH2Cl2)、ジクロロ(ビス{ジ-tert-ブチル[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-ホスホラニル})パラジウム(Pd-132)、Pd(PPh3)4、及びテトラキス(トリ(o-トリル)ホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。いくつかの実施形態では、P2はPd(dppf)Cl2である。いくつかの実施形態では、B2は重炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属重炭酸塩塩基である。いくつかの実施形態では、B2は、K2CO3などのアルカリ金属炭酸塩塩基である。化合物7と化合物9との反応は溶媒中で行うことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、プロトン性溶媒、エーテル溶媒、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、溶媒は、水、1,4-ジオキサン、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、化合物7と化合物9との反応は、高温、例えば、温度約80℃~約100℃(例えば、約85℃~約95℃)で行われる。いくつかの実施形態では、温度は約90℃である。いくつかの実施形態では、化合物7または(以下に示す構造を有する)化合物6の1当量を基準として、約1当量の化合物9を使用する。いくつかの実施形態では、十分な触媒量のP2を供給する。例えば、化合物7の1当量を基準として、約0.01~約0.05当量または約0.03当量のP2を使用する。いくつかの実施形態では、化合物9の量に対してモル過剰のB2を供給する。いくつかの実施形態では、化合物9の1当量を基準として、約2~約3当量または約2.5当量のB2を使用する。
【0069】
いくつかの実施形態では、この方法はさらに化合物6:
【化5】
を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP3及びB3の存在下で反応させて化合物7を生成することを含み、その場合、P3は遷移金属触媒であり、B3は塩基である。
【0070】
いくつかの実施形態では、P3はパラジウム触媒などの遷移金属触媒である。パラジウム触媒の例として、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(Pd(dppf)Cl2、例えばPd(dppf)Cl2-CH2Cl2)、ジクロロ(ビス{ジ-tert-ブチル[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-ホスホラニル})パラジウム(Pd-132)、Pd(PPh3)4、及びテトラキス(トリ(o-トリル)ホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。いくつかの実施形態では、P3はPd(dppf)Cl2である。いくつかの実施形態では、B3は、酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩塩基である。化合物6と4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)との反応は溶媒中で行うことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は1,4-ジオキサンなどのエーテル溶媒を含む。いくつかの実施形態では、化合物6と4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)との反応は、高温、例えば、温度約70℃~約90℃(例えば、75℃~約85℃)で行われる。いくつかの実施形態では、温度は約80℃である。いくつかの実施形態では、化合物6の量に対してモル過剰の試薬4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)を供給する。いくつかの実施形態では、化合物6の1当量を基準として、約2~約2.5当量の4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)を使用する。いくつかの実施形態では、化合物6の量に対してモル過剰のB3を供給する。いくつかの実施形態では、化合物6の1当量を基準として、約3~約3.5当量のB3を使用する。いくつかの実施形態では、十分な触媒量のP3を供給する。いくつかの実施形態では、化合物6の1当量を基準として、約0.01~約0.05当量または約0.03当量のP3を使用する。
【0071】
いくつかの実施形態では、化合物7を生成した後、続いて化合物8を生成する反応は、化合物7を単離せずに同じ反応容器内で行われる。化合物7を生成した後、化合物8を生成する反応を同じ反応容器内で(化合物7を単離せずに)行う場合、P2を添加せずに、例えば同じ反応容器内でP3(遷移金属触媒)を使用して化合物7を生成することにより、化合物7及び9から化合物8を生成することができる。あるいは、化合物6から化合物8を生成するカップリング反応を2段階の工程で行ってもよく、その場合、化合物7を単離し、化合物7から化合物8を生成する反応にP2を使用する。
【0072】
あるいは、化合物8は、化合物6を化合物15:
【化6】
とP4及びB4の存在下で反応させることを含み、P4が遷移金属触媒であり、B4が塩基である方法により調製することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、P4はパラジウム触媒などの遷移金属触媒である。パラジウム触媒の例として、4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-ジクロロパラジウム(2:1)、Pd(dppf)Cl2(例えばPd(dppf)Cl2-CH2Cl2)、ジクロロ(ビス{ジ-tert-ブチル[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-ホスホラニル})パラジウム(Pd-132)、Pd(PPh3)4、及びテトラキス(トリ(o-トリル)ホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。いくつかの実施形態では、P4は4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-ジクロロパラジウム(2:1)である。いくつかの実施形態では、P4はPd(dppf)Cl2(例えば、Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2)である。いくつかの実施形態では、B4はフッ化セシウムなどの塩基である。別の実施形態では、B4はK2CO3などのアルカリ金属炭酸塩である。化合物6と化合物15との反応は溶媒中で行うことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、プロトン性溶媒、エーテル溶媒、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、反応は、1,4-ジオキサン、水、またはそれらの混合物を含む溶媒中で行われる。いくつかの実施形態では、化合物6と化合物15との反応は、還流温度付近などの高温(例えば、室温より高い)で行われる。いくつかの実施形態では、化合物6の1当量を基準として、約1当量の化合物15を使用する。いくつかの実施形態では、化合物6に対してモル過剰のB4を供給する。いくつかの実施形態では、化合物6の1当量を基準として、約3~約4当量または約3.5当量のB4を使用する。P4は通常、十分な触媒量で供給する。いくつかの実施形態では、化合物6の1当量を基準として、約0.01~約0.1当量または約0.05当量のP4を使用する。
【0074】
いくつかの実施形態では、化合物15は、化合物9を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP8及びB8の存在下で反応させることを含み、P8が遷移金属触媒であり、B8が塩基である方法により調製することができる。
【0075】
いくつかの実施形態では、P8はパラジウム触媒などの遷移金属触媒である。パラジウム触媒の例として、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3、4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-ジクロロパラジウム(2:1)、Pd(dppf)Cl2(例えばPd(dppf)Cl2-CH2Cl2)、ジクロロ(ビス{ジ-tert-ブチル[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-ホスホラニル})パラジウム(Pd-132)、Pd(PPh3)4、及びテトラキス(トリ(o-トリル)ホスフィン)パラジウム(0)が挙げられる。いくつかの実施形態では、P8は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3である(例えば、配位子としてジシクロヘキシル(2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル-2-イル)ホスフィン(Xphos)を付加できる)。いくつかの実施形態では、B8は、酢酸カリウムなどのアルカリ金属酢酸塩塩基である。化合物9と4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)との反応は溶媒中で行うことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は1,4-ジオキサンなどのエーテル溶媒を含む。いくつかの実施形態では、化合物9と4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)との反応は、温度約75℃~約95℃で行われる。いくつかの実施形態では、温度は約80℃~約90℃または約80℃~約85℃である。いくつかの実施形態では、化合物9の1当量を基準として、約2当量の4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)を使用する。いくつかの実施形態では、化合物9に対してモル過剰のB8を供給する。いくつかの実施形態では、化合物9の1当量を基準として、約2~約3当量のB8を使用する。P8は通常、十分な触媒量で供給する。いくつかの実施形態では、化合物9の1当量を基準として、約0.01~約0.1当量または約0.025当量のP8を使用する。
【0076】
いくつかの実施形態では、化合物6は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2015/0307493の手順に従って調製することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、化合物6は、化合物5:
【化7】
をメチル化剤及びB5と反応させることを含み、B5が塩基である方法により調製される。いくつかの実施形態では、メチル化剤は、ヨウ化メチル(MeI)、硫酸ジメチル、炭酸ジメチル、または塩化テトラメチルアンモニウムである。いくつかの実施形態では、メチル化剤はヨウ化メチルである。いくつかの実施形態では、B5は、炭酸カリウム(K
2CO
3)などのアルカリ金属炭酸塩塩基である。いくつかの実施形態では、化合物5とメチル化剤との反応は、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性溶媒を含む溶媒中で行うことができる。いくつかの実施形態では、化合物5とメチル化剤との反応は、温度約10℃~約20℃または約15℃~約20℃で行われる。
【0078】
いくつかの実施形態では、化合物5は、化合物4:
【化8】
を2-ブロモ-2-メチルプロパノイルブロミド及びB6と反応させることを含み、B6が塩基である方法により調製される。いくつかの実施形態では、B6は、炭酸カリウム(K
2CO
3)などのアルカリ金属炭酸塩である。化合物4と2-ブロモ-2-メチルプロパノイルブロミドとの反応は溶媒存在下で行うことができる。例えば、溶媒は、アセトニトリル、水、またはそれらの混合物を含む。化合物4と2-ブロモ-2-メチルプロパノイルブロミドとの反応は、高温、例えば、温度約60℃~約90℃で行うことができる。いくつかの実施形態では、温度は約75℃である。
【0079】
いくつかの実施形態では、化合物4は、化合物3:
【化9】
を還元剤と反応させることを含む方法により調製される。いくつかの実施形態では、還元剤は、ハイドロサルファイトナトリウムまたはH
2/ラネーNiである。化合物3と還元剤との反応は溶媒存在下で行うことができる。いくつかの実施形態では、溶媒は、プロトン性溶媒(例えば、水及びメタノール)、エーテル溶媒(テトラヒドロフラン)、またはそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、化合物3とハイドロサルファイトナトリウムとの反応は、水、テトラヒドロフラン、またはそれらの混合物中で行われる。いくつかの実施形態では、化合物3とH
2/ラネーNiとの反応は、メタノール中で行われる。いくつかの実施形態では、化合物3と還元剤との反応は、室温で行われる。いくつかの実施形態では、ハイドロサルファイトナトリウムは、重炭酸ナトリウムと組み合わせて使用される。化合物3とハイドロサルファイトナトリウム及び重炭酸ナトリウムとの反応は、大規模製造では危険な可能性があるH
2/ラネーNiと比較して、穏やかなプロセス条件下で化合物4を生成することができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、化合物3は、化合物2:
【化10】
をN-ブロモスクシンイミド(NBS)と反応させることを含む方法により調製される。NBSを使用すると、例えばキログラム規模での大規模製造で、高収率かつ良好な品質の生成物を得ることができる。いくつかの実施形態では、この反応は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性溶媒を含む溶媒中で行われる。いくつかの実施形態では、この反応は室温で行われる。
【0081】
いくつかの実施形態では、化合物2は、化合物1a:
【化11】
を硝酸及び酢酸と反応させることを含む方法により調製される。いくつかの実施形態では、この反応は、温度約60℃~約90℃または約75℃~約80℃で行われる。
【0082】
いくつかの実施形態では、化合物9は、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれるUS2015/0307493及びWO2013/097601の手順に従って調製することができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、化合物9は、化合物14:
【化12】
をヨウ化メチル及び水素化ナトリウムと反応させることを含む方法により調製される。いくつかの実施形態では、この反応は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性溶媒を含む溶媒中で行われる。
【0084】
いくつかの実施形態では、化合物14は、化合物13:
【化13】
を酸と反応させることを含む方法により調製される。いくつかの実施形態では、酸はHClなどの強酸水溶液である。いくつかの実施形態では、この反応は、1,4-ジオキサンなどのエーテル溶媒を含む溶媒中で行われる。
【0085】
いくつかの実施形態では、化合物13は、化合物12:
【化14】
をp-トルエンスルホニルクロリド(p-TsCl)及び水素化ナトリウム(NaH)と反応させることを含む方法により調製される。いくつかの実施形態では、この反応は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性溶媒を含む溶媒中で行われる。
【0086】
いくつかの実施形態では、化合物12は、化合物11:
【化15】
を鉄(Fe)及び酢酸(HOAc)と反応させることを含む方法により調製される。いくつかの実施形態では、この反応は、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル溶媒を含む溶媒中で行われる。鉄と酢酸との組み合わせを還元剤として使用することができ、大規模製造では危険な可能性があるH
2/ラネーNiなどの還元剤に代わる安全な選択肢となり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、化合物11は、化合物10:
【化16】
を1,1-ジエトキシ-N,N-ジメチルメタンアミンと、さらにB7と反応させることを含み、B7が塩基である方法により調製される。いくつかの実施形態では、B7は、リチウムメタノラートなどのアルカリ金属アルコキシドである。いくつかの実施形態では、この反応は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの非プロトン性溶媒を含む溶媒中で行われる。
【0088】
いくつかの実施形態では、化合物6の調製方法は以下を含む:
(i)化合物1aを硝酸及び酢酸と反応させて化合物2を生成すること;
(ii)化合物2をN-ブロモスクシンイミド(NBS)と反応させて化合物3を生成すること;
(iii)化合物3を還元剤と反応させて化合物4を生成すること;
(iv)化合物4を2-ブロモ-2-メチルプロパノイルブロミド及びB6と反応させて化合物5を生成すること;ならびに
(v)化合物5をメチル化剤及びB5と反応させて化合物6を生成すること。
【0089】
いくつかの実施形態では、化合物9の調製方法は以下を含む:
(i)化合物10を1,1-ジエトキシ-N,N-ジメチルメタンアミンさらにB7と反応させて化合物11を生成すること;
(ii)化合物11を鉄(Fe)及び酢酸(HOAc)と反応させて化合物12を生成すること;
(iii)化合物12をp-トルエンスルホニルクロリド(p-TsCl)及び水素化ナトリウム(NaH)と反応させて化合物13を生成すること;
(iv)化合物13を酸と反応させて化合物14を生成すること;ならびに
(v)化合物14をヨウ化メチル及び水素化ナトリウムと反応させて化合物9を生成すること。
【0090】
いくつかの実施形態では、化合物1またその塩の調製方法は以下を含む:
(i)化合物6を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP3及びB3の存在下で反応させて化合物7を生成すること;
(ii)化合物7を化合物9とP2及びB2の存在下で反応させて化合物8を生成すること;ならびに
(iii)化合物8をB1と反応させて化合物1またはその塩を生成すること。
【0091】
いくつかの実施形態では、化合物1またその塩の調製方法は以下を含む:
(i)化合物6を化合物15とP4及びB4の存在下で反応させて化合物8を生成すること;及び
(ii)化合物8をB1と反応させて化合物1またはその塩を生成すること。
【0092】
いくつかの実施形態では、化合物1またその塩の調製方法は以下を含む:
(i)化合物9を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP8及びB8の存在下で反応させて化合物15を生成すること;
(ii)化合物6を化合物15とP4及びB4の存在下で反応させて化合物8を生成すること;及び
(iii)化合物8をB1と反応させて化合物1またはその塩を生成すること。
【0093】
いくつかの実施形態では、化合物1の調製方法は以下を含む:
(i)化合物1aを硝酸及び酢酸と反応させて化合物2を生成すること;
(ii)化合物2をN-ブロモスクシンイミド(NBS)と反応させて化合物3を生成すること;
(iii)化合物3を還元剤と反応させて化合物4を生成すること;
(iv)化合物4を2-ブロモ-2-メチルプロパノイルブロミド及びB6と反応させて化合物5を生成すること;
(v)化合物5をメチル化剤及びB5と反応させて化合物6を生成すること;
(vi)化合物6を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP3及びB3の存在下で反応させて化合物7を生成すること;
(vii)化合物7を化合物9とP2及びB2の存在下で反応させて化合物8を生成すること;ならびに
(viii)化合物8をB1と反応させて化合物1を生成すること。
【0094】
いくつかの実施形態では、化合物1の調製方法は以下を含む:
(i)化合物1aを硝酸及び酢酸と反応させて化合物2を生成すること;
(ii)化合物2をN-ブロモスクシンイミド(NBS)と反応させて化合物3を生成すること;
(iii)化合物3を還元剤と反応させて化合物4を生成すること;
(iv)化合物4を2-ブロモ-2-メチルプロパノイルブロミド及びB6と反応させて化合物5を生成すること;
(v)化合物5をメチル化剤及びB5と反応させて化合物6を生成すること;
(vi)化合物6を化合物15とP4及びB4の存在下で反応させて化合物8を生成すること;ならびに
(vii)化合物8をB1と反応させて化合物1を生成すること。
【0095】
いくつかの実施形態では、化合物1の調製方法は以下を含む:
(i)化合物10を1,1-ジエトキシ-N,N-ジメチルメタンアミンさらにB7と反応させて化合物11を生成すること;
(ii)化合物11を鉄(Fe)及び酢酸(HOAc)と反応させて化合物12を生成すること;
(iii)化合物12をp-トルエンスルホニルクロリド(p-TsCl)及び水素化ナトリウム(NaH)と反応させて化合物13を生成すること;
(iv)化合物13を酸と反応させて化合物14を生成すること;
(v)化合物14をヨウ化メチル及び水素化ナトリウムと反応させて化合物9を生成すること;
(vi)化合物7を化合物9とP2及びB2の存在下で反応させて化合物8を生成すること;ならびに
(vii)化合物8をB1と反応させて化合物1を生成すること。
【0096】
いくつかの実施形態では、化合物1の調製方法は以下を含む:
(i)化合物10を1,1-ジエトキシ-N,N-ジメチルメタンアミンさらにB7と反応させて化合物11を生成すること;
(ii)化合物11を鉄(Fe)及び酢酸(HOAc)と反応させて化合物12を生成すること;
(iii)化合物12をp-トルエンスルホニルクロリド(p-TsCl)及び水素化ナトリウム(NaH)と反応させて化合物13を生成すること;
(iv)化合物13を酸と反応させて化合物14を生成すること;
(v)化合物14をヨウ化メチル及び水素化ナトリウムと反応させて化合物9を生成すること;
(vi)化合物9を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP8及びB8の存在下で反応させて化合物15を生成すること;
(vii)化合物6を化合物15とP4及びB4の存在下で反応させて化合物8を生成すること;ならびに
(viii)化合物8をB1と反応させて化合物1を生成すること。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書で
【化17】
またはその塩である化合物を提供する。
【0098】
いくつかの実施形態では、本明細書で、化合物6を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP3及びB3の存在下で反応させて化合物7を生成する方法を提供する。
【0099】
明確性を目的として個々の実施形態に関連して記載される本発明の特定の特徴は、組み合わせることで単一の実施形態としても提供され得るものと理解される(ただし、各実施形態は、多項従属形式で記載されているかのように組み合わされることを意図する)。逆に、簡潔性を目的として単一の実施形態に関連して記載される本発明の種々の特徴は、個別に提供することも、または任意の好適なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0100】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する高温の化合物1の溶液とは、室温を上回る温度の溶液を指す。例えば、高温の化合物1の溶液は、室温付近を上回る温度、例えば約20℃超、約30℃超、約40℃超、約50℃超、約60℃超、約70℃超、約80℃超、約90℃超、または約100℃超である。
【0101】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する溶液の濃縮とは、溶媒を蒸発させること、溶液を加熱すること、溶液に減圧をかけること、またはそれらの任意の組み合わせにより、溶液の体積を減少させることを指す。
【0102】
単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される語句「アルカリ金属重炭酸塩塩基」とは、本明細書で使用される場合、式M(HCO3)(式中のMはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、またはカリウムを指す)を有する塩基を指す。アルカリ金属重炭酸塩塩基の例として、重炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、及び重炭酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される語句「アルカリ金属炭酸塩塩基」とは、本明細書で使用される場合、式M2CO3(式中のMはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、またはカリウムを指す)を有する塩基を指す。アルカリ金属炭酸塩塩基の例として、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される語句「アルカリ金属水酸化物塩基」とは、本明細書で使用される場合、式MOH(式中のMはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、またはカリウムを指す)を有する塩基を指す。アルカリ金属水酸化物塩基の例として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
単独でまたは他の用語と組み合わせて使用される語句「アルカリ金属酢酸塩塩基」とは、本明細書で使用される場合、式M(OC(O)CH3)(式中のMはアルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、またはカリウムを指す)を有する塩基を指す。アルカリ金属酢酸塩塩基の例として、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、及び酢酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本明細書で使用される場合、語句「遷移金属触媒」とは、炭素-炭素カップリング反応を触媒するのに適した金属触媒(例えば、パラジウム触媒またはニッケル触媒)を指す。遷移金属触媒の例として、PdCl2(PPh3)2、Pd(PPh3)4、ジクロロ(ビス{ジ-tert-ブチル[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-ホスホラニル})パラジウム(Pd-132)、NiCl2(dppf)、及びNiCl2(dppp)(式中の(dppf)は1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンを指し、(dppp)は1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパンを指す)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
パラジウム触媒の例として、PdCl2(PPh3)2、Pd(PPh3)4、ジクロロ(ビス{ジ-tert-ブチル[4-(ジメチルアミノ)フェニル]-ホスホラニル})パラジウム(Pd-132)、炭素担持パラジウム、PdCl2、Pd(OAc)2、PdCl2(MeCN)2、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3、4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-ジクロロパラジウム(2:1)、Pd(dppf)Cl2(例えばPd(dppf)Cl2-CH2Cl2)、及びテトラキス(トリ(o-トリル)ホスフィン)パラジウム(0)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
本明細書で使用される場合、用語「反応(させること)」は当技術分野で知られるように使用され、一般に分子レベルでの相互作用が起きるような方法で化学試薬を混和し、化学的または物理的変換を達成することを指す。いくつかの実施形態では、反応には2つの試薬が関与し、その場合、第1の試薬に対して1当量以上の第2の試薬が使用される。本明細書に記載の方法の反応工程は、指定される生成物の調製に適した時間及び条件下で行うことができる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の貧溶媒とは、別の溶媒または溶媒混合物の溶液と比較して化合物1が溶解されにくい溶媒を指す。例えば、貧溶媒には、ベンゼン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン(例えばn-ヘプタン)、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、m-キシレン、o-キシレン、もしくはp-キシレン、オクタン、インダン、ノナン、またはナフタレンを含み得るが、これらに限定されない。
【0110】
本明細書に記載する方法の反応は、好適な溶媒中で実施することができ、この溶媒は有機合成の当業者が容易に選択することができる。好適な溶媒は、反応が実施される温度で、出発物質(反応物質)、中間体、または生成物と実質的に非反応性であり得、例えば、その温度とは溶媒の凍結温度から溶媒の沸点までの範囲であり得る。所与の反応は、1種の溶媒または複数の溶媒の混合物中で行うことができる。個々の反応工程に応じて、個々の反応工程に適した溶媒を選択することができる。いくつかの実施形態では、試薬の少なくとも1つが液体または気体である場合など、溶媒の非存在下で反応を行うことができる。
【0111】
好適な溶媒には、四塩化炭素、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、クロロホルム、ブロモクロロメタン、ジブロモメタン、塩化ブチル、ジクロロメタン(塩化メチレン)、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、1,1-ジクロロエタン、2-クロロプロパン、α,α,α-トリフルオロトルエン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジブロモエタン、ヘキサフルオロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、それらの混合物などのハロゲン化溶媒を含み得る。
【0112】
好適なエーテル溶媒としては、ジメトキシメタン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、フラン、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、tert-ブチルメチルエーテル、それらの混合物などが挙げられる。
【0113】
例示を目的とする限定されない好適なプロトン性溶媒には、水、メタノール、エタノール、2-ニトロエタノール、2-フルオロエタノール、2,2,2-トリフルオロエタノール、エチレングリコール、1-プロパノール、2-プロパノール、2-メトキシエタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-エトキシエタノール、ジエチレングリコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、もしくは3-ペンタノール、ネオペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、フェノール、またはグリセロールを含み得る。
【0114】
例示を目的とする限定されない好適な非プロトン性溶媒には、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン(DMPU)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、ギ酸エチル、酢酸メチル、ヘキサクロロアセトン、アセトン、エチルメチルケトン、酢酸エチル、スルホラン、N,N-ジメチルプロピオンアミド、テトラメチル尿素、ニトロメタン、ニトロベンゼン、またはヘキサメチルホスホラミドを含み得る。
【0115】
好適な炭化水素溶媒としては、ベンゼン、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、トルエン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、エチルベンゼン、m-キシレン、o-キシレン、もしくはp-キシレン、オクタン、インダン、ノナン、またはナフタレンが挙げられる。
【0116】
本明細書に記載する方法の反応は、空気中または不活性雰囲気下で行うことができる。実質的に空気と反応性である試薬または生成物を含む反応は通常、当業者に周知の空気不安定物質の合成技術を用いて行うことができる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「周囲温度」及び「室温」という表現は、当技術分野で理解されており、一般に、例えば反応温度、すなわち反応が実施される部屋の温度付近の温度、例えば約20℃~約30℃の温度を指す。
【0118】
使用方法
化合物1またはその塩はBETタンパク質阻害剤であることから、BETタンパク質の活性に関連する疾患及び障害の治療に有用である。本明細書に記載のいずれの実施形態をも含む、化合物1のいずれの形態も、本明細書に記載される用途に使用することができる。
【0119】
化合物1は、BETタンパク質BRD2、BRD3、BRD4、及びBRD-tのうち1種以上を阻害することができる。いくつかの実施形態では、化合物1は、1種以上のBETタンパク質を別のタンパク質よりも選択的に阻害する。「選択的」とは、化合物が、他のBETタンパク質などの参照物質と比較して、高い親和性でBETタンパク質に結合するか、または高い効力でBETタンパク質を阻害することを意味する。例えば、化合物は、BRD3、BRD4、及びBRD-tよりもBRD2に対して選択的であり、BRD2、BRD4、及びBRD-tよりもBRD3に対して選択的であり、BRD2、BRD3、及びBRD-tよりもBRD4に対して選択的であり、BRD2、BRD3、及びBRD4よりもBRD-tに対して選択的であり得る。いくつかの実施形態では、化合物は、2種以上のBETタンパク質またはBETタンパク質すべてを阻害する。一般に、選択性は、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約50倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約500倍、または少なくとも約1000倍であり得る。
【0120】
したがって化合物1はBETタンパク質媒介性障害の治療に有用である。用語「BETタンパク質媒介性障害」または「BET媒介性障害」とは、BRD2、BRD3、BRD4、及び/またはBRD-tなどの1種以上のBETタンパク質、またはその変異体が関与する何らかの障害、疾患、または病態であるか、その場合の疾患または病態が1種以上のBETタンパク質の発現または活性に関連しているものを指す。したがって、BETタンパク質の阻害剤としての化合物1は、BRD2、BRD3、BRD4、及び/またはBRD-tなどのBETタンパク質、またはその変異体が関与することが知られている疾患及び病態を治療する、または重症度を軽減するために使用することができる。
【0121】
化合物1を用いて治療可能な疾患及び病態として、がん及び他の増殖性障害、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、急性炎症性疾患、敗血症、ならびにウイルス感染症が挙げられるが、これらに限定されない。疾患は、治療を必要とする個体(例えば、患者)に、化合物1もしくはその実施形態のいずれか、またはその医薬組成物の治療有効量または投与量を投与することによって治療することができる。本開示はまた、BET媒介性疾患または障害の治療に使用される、固体形態の化合物1もしくはその実施形態のいずれか、または固体形態を含む医薬組成物を提供する。BET媒介性疾患または障害を治療するための医薬品の製造における、固体形態の化合物1もしくはその実施形態のいずれか、または固体形態を含む医薬組成物の使用も提供する。
【0122】
化合物1を用いて治療可能な疾患には、がんが含まれる。がんには、副腎癌、腺房細胞癌、聴神経腫、末端性黒子性黒色腫、先端汗腺腫、急性好酸球性白血病、急性赤白血病、急性リンパ性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、腺癌、腺様嚢胞癌、腺腫、腺様歯原性腫瘍、腺扁平上皮癌、脂肪組織腫瘍、副腎皮質癌、成人T細胞白血病/リンパ腫、侵襲性NK細胞白血病、AIDS関連リンパ腫、胞状横紋筋肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮線維腫、未分化大細胞リンパ腫、未分化甲状腺癌、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管筋脂肪腫、血管肉腫、星状細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、基底細胞癌、胆道癌、膀胱癌、芽細胞腫、骨癌、ブレンナー腫瘍、褐色腫、バーキットリンパ腫、乳癌、脳腫瘍、癌腫、上皮内癌、癌肉腫、軟骨腫瘍、セメント質腫、骨髄肉腫、軟骨腫、脊索腫、絨毛癌、脈絡叢乳頭腫、腎明細胞肉腫、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞リンパ腫、子宮頸癌、大腸癌、デゴス病、線維形成性小円形細胞腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、未分化胚細胞種、胎児性癌、内分泌腺腫瘍、内胚葉洞腫瘍、腸症型T細胞リンパ腫、食道癌、胎児内胎児、線維腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、濾胞性甲状腺癌、神経節神経腫、胃腸癌、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛癌、巨細胞線維芽細胞腫、骨巨細胞腫、神経膠細胞腫瘍、多形膠芽腫、神経膠腫、大脳神経膠腫症、グルカゴノーマ、性腺芽腫、顆粒膜細胞腫、ギナンドロブラストーマ、胆嚢癌、胃癌、有毛細胞白血病、血管芽細胞腫、頭頸部癌、血管周皮腫、血液悪性腫瘍、肝芽腫、肝脾T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、浸潤性小葉癌、腸癌、腎臓癌、喉頭癌、悪性黒子、致死性正中癌腫、白血病、ライデッヒ細胞腫、脂肪肉腫、肺癌、リンパ管腫、リンパ管肉腫、リンパ上皮腫、リンパ腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肝臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、MALTリンパ腫、悪性線維性組織球腫、悪性末梢神経鞘腫、悪性トリトン腫瘍、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、マスト細胞白血病、縦隔胚細胞腫、乳腺髄様癌、甲状腺髄様癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性尿路上皮癌、ミューラー管混合腫瘍、粘液腫瘍、多発性骨髄腫、筋組織腫瘍、菌状息肉腫、粘液様脂肪肉腫、粘液腫、粘液肉腫、鼻咽頭癌、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経線維腫、神経腫、結節性黒色腫、眼球癌、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、膨大細胞腫、視神経鞘髄膜腫、視神経腫瘍、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、パンコースト腫瘍、乳頭状甲状腺癌、傍神経節腫、松果体芽腫、松果体細胞腫、下垂体細胞腫、下垂体腺腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、多胚腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出リンパ腫、原発性腹膜癌、前立腺癌、膵癌、咽頭癌、腹膜偽粘液腫、腎細胞癌、腎髄様癌、網膜芽細胞腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、リヒターの形質転換、直腸癌、肉腫、シュワノマトーシス、精上皮腫、セルトリ細胞腫、性索間質腫瘍、印環細胞癌、皮膚癌、小円形青色細胞腫瘍、小細胞癌、軟組織肉腫、ソマトスタチノーマ、煤煙性疣贅、脊椎腫瘍、脾辺縁帯リンパ腫、扁平上皮細胞癌、滑膜肉腫、セザリー病、小腸癌、扁平上皮癌、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、莢膜細胞腫、甲状腺癌、移行上皮癌、咽喉癌、尿膜管癌、泌尿生殖器癌、尿路上皮癌、ブドウ膜黒色腫、子宮癌、疣状癌、視覚経路神経膠腫、外陰癌、腟癌、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ワルチン腫瘍、及びウイルムス腫瘍を含み得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、がんは、腺癌、成人T細胞性白血病/リンパ腫、膀胱癌、芽細胞腫、骨癌、乳癌、脳腫瘍、癌腫、骨髄肉腫、子宮頸癌、大腸癌、食道癌、胃腸癌、多形膠芽腫、神経膠腫、胆嚢癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、腸癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肺癌、リンパ腫、肝臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、中皮腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、眼球癌、視神経腫瘍、口腔癌、卵巣癌、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、膵癌、咽頭癌、腎細胞癌、直腸癌、肉腫、皮膚癌、脊椎腫瘍、小腸癌、胃癌、T細胞リンパ腫、精巣癌、甲状腺癌、咽喉癌、泌尿生殖器癌、尿路上皮癌、子宮癌、腟癌、またはウイルムス腫瘍であり得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、がんは血液癌である。
【0124】
いくつかの実施形態では、がんは、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病(AML)、またはびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。
【0125】
化合物1を用いて治療可能な疾患にはまた、myc RNA発現またはMYCタンパク質発現の少なくとも1つに関連するがんであるMYC依存性癌が含まれる。がん組織または細胞でのmyc RNA発現またはMYCタンパク質発現を測定することによって、このような治療の対象となる患者を特定することができる。
【0126】
化合物1を用いて治療可能な疾患には、非がん性増殖性障害も含まれる。治療可能な増殖性疾患の例としては、良性軟部組織腫瘍、骨腫瘍、脳脊椎腫瘍、眼瞼眼窩腫瘍、肉芽腫、脂肪腫、髄膜腫、多発性内分泌腫瘍、鼻ポリープ、下垂体腫瘍、プロラクチノーマ、偽性脳腫瘍、脂漏性角化症、胃ポリープ、甲状腺小節、嚢胞性膵臓腫瘍、血管腫、声帯の小節、ポリープ、及び嚢胞、キャッスルマン病、慢性毛巣病、皮膚線維腫、毛嚢胞、化膿性肉芽腫、ならびに若年性ポリポーシス症候群が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
化合物1を用いて治療可能な疾患及び病態には、慢性自己免疫病態及び炎症病態も含まれる。治療可能な自己免疫病態及び炎症病態の例としては、急性、超急性、または慢性の臓器移植拒絶反応、急性痛風、急性炎症反応(急性呼吸窮迫症候群及び虚血傷害/再灌流傷害など)、アジソン病、無ガンマグロブリン血症、アレルギー性鼻炎、アレルギー、脱毛症、アルツハイマー病、虫垂炎、アテローム性動脈硬化症、喘息、変形性関節症、若年性関節炎、乾癬性関節炎、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、自己免疫性脱毛症、自己免疫性の溶血状態及び血小板減少状態、自己免疫性下垂体機能低下症、自己免疫性多腺性内分泌疾患、ベーチェット病、水疱性皮膚疾患、胆嚢炎、慢性特発性血小板減少性紫斑病、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、硬変症、変形性関節疾患、うつ病、皮膚炎、皮膚筋炎、湿疹、腸炎、脳炎、胃炎、糸球体腎炎、巨細胞動脈炎、グッドパスチャー症候群、ギランバレー症候群、歯肉炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、肝炎、脳下垂体炎、炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎)、炎症性骨盤疾患、過敏性腸症候群、川崎病、LPS誘発性エンドトキシンショック、髄膜炎、多発性硬化症、心筋炎、重症筋無力症、菌状息肉腫、筋炎、腎炎、骨髄炎、膵炎、パーキンソン病、心膜炎、悪性貧血、肺炎、原発性胆汁性硬化性胆管炎、結節性多発動脈炎、乾癬、網膜炎、強膜炎、スクレラシエルマ(scleracierma)、強皮症、副鼻腔炎、シェーグレン病、敗血症、敗血症性ショック、日焼け、全身性エリテマトーデス、組織移植片拒絶反応、甲状腺炎、I型糖尿病、高安動脈炎、尿道炎、ブドウ膜炎、血管炎、巨細胞性動脈炎を含む血管炎、糸球体腎炎などの臓器関与を伴う血管炎、白斑、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、ならびにウェゲナー肉芽腫症が挙げられる。
【0128】
化合物1を用いて治療可能な疾患及び病態には、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫、またはそれらの毒素への感染に対する炎症反応を伴う疾患及び病態、例えば敗血症、敗血症症候群、敗血症性ショック、エンドトキシン血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器機能不全症候群、毒素性ショック症候群、急性肺傷害、ARDS(成人呼吸促迫症候群)、急性腎不全、劇症肝炎、火傷、急性膵炎、術後症候群、サルコイドーシス、ヘルクスハイマー反応、脳炎、脊髄炎、髄膜炎、マラリア、ならびにインフルエンザ、帯状ヘルペス、単純ヘルペス、及びコロナウイルスなどのウイルス感染に関連するSIRSも含まれる。
【0129】
化合物1を用いて治療可能な他の疾患には、ウイルス感染症が含まれる。治療可能なウイルス感染症の例として、エプスタイン・バーウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、及び他のエピソーム型のDNAウイルスが挙げられる。したがって、化合物1を使用して、単純ヘルペス感染及び再活性化、単純疱疹、帯状疱疹感染及び再活性化、水痘、帯状疱疹、ヒトパピローマウイルス、子宮頸部腫瘍、急性呼吸器疾患を伴うアデノウイルス感染、ならびに牛痘及び天然痘などのポックスウイルス感染症、ならびにアフリカブタコレラウイルスなどの疾患及び病態を治療することができる。いくつかの実施形態では、皮膚または子宮頸部上皮のヒトパピローマウイルス感染症の治療に化合物1を使用することができる。
【0130】
化合物1を用いて治療可能な疾患及び病態には、虚血再灌流傷害に関連する病態も含まれる。そのような病態の例としては、心筋梗塞、脳血管虚血(脳卒中)、急性冠症候群、腎臓再灌流傷害、臓器移植、冠動脈バイパス移植、心肺バイパス手術、及び肺、腎臓、肝臓、胃腸または末梢肢の塞栓症などの病態が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
化合物1はまた、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化症、及びアルツハイマー病などの、APO-A1の調節による脂質代謝障害の治療にも有用である。
【0132】
化合物1はまた、特発性肺線維症、腎線維症、術後狭窄、ケロイド形成、強皮症、及び心筋線維症などの線維症病態の治療にも有用である。
【0133】
化合物1はまた、ドライアイなどの眼科的適応症の治療にも使用することができる。
【0134】
化合物1はまた、心不全などの心疾患の治療にも使用することができる。
【0135】
本明細書で使用される場合、用語「接触させる」とは、in vitro系またはin vivo系において指定成分を一緒にすることを指す。例えば、BETタンパク質を化合物1(例えば、結晶固体形態などの固体形態の化合物1)と「接触させる」とは、BETタンパク質を有する個体または患者、例えばヒトに化合物1を投与することに加え、例えば本明細書で提供する固体形態の化合物を、BETタンパク質を含有する細胞調製物または精製調製物を含有する試料に導入することを包含する。
【0136】
本明細書で使用される場合、同義に使用される用語「個体」または「患者」とは、互換的に用いられ、哺乳動物を含む任意の動物、好ましくはマウス、ラット、他の齧歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、または霊長類、及び最も好ましくはヒトを指す。
【0137】
本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」とは、組織、系、動物、個体、またはヒトにおいて、研究者、獣医、医師、またはその他の臨床医が求める生物学的反応または薬効反応を誘発する活性化合物または医薬品の量を指す。
【0138】
本明細書で使用される場合、用語「治療する」または「治療」とは、疾患を抑制すること、例えば、疾患、病態、または障害の病変または症候を経験しているかまたは発症している個体において疾患、病態、または障害を抑制すること(すなわち、病変及び/または症候のさらなる発現を阻止すること)、または疾患を改善すること、例えば、疾患、病態、または障害の病変または症候を経験しているかまたは発症している個体において疾患、病態、または障害を改善すること(すなわち、病変及び/または症候を逆転させること)、例えば疾患の重症度を低下させることを指す。
【0139】
本明細書で使用される場合、用語「予防する」または「予防」とは、疾患を予防すること、例えば、疾患、病態、または障害に罹患しやすい可能性があるが、疾患の病変または症候をまだ経験していないか、または発症していない個体において、疾患、病態、または障害を予防することを指す。
【0140】
併用療法
化合物1は、1つ以上の追加の治療薬の投与など、他の療法と併用して化合物1を投与する併用療法に使用することができる。追加の治療薬は一般的に、治療対象となる特定の病態の治療に通常使用されているものである。BETタンパク質関連の疾患、障害、または病態の治療のための追加の治療薬には、例えば、化学療法剤、抗炎症剤、ステロイド類、免疫抑制剤、ならびにBcr-Abl、Flt-3、RAF、FAK、及びJAKキナーゼ阻害剤が含まれ得る。1つ以上の追加の医薬品を同時にまたは連続して患者に投与することができる。
【0141】
いくつかの実施形態では、化合物1は、エピゲノム制御因子を標的とする治療薬と併用することができる。エピゲノム制御因子の例として、ヒストンリジンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンアルギニンメチルトランスフェラーゼ、ヒストンデメチラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、ヒストンアセチラーゼ、及びDNAメチルトランスフェラーゼが挙げられる。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤には、例えばボリノスタットが含まれる。
【0142】
がん及び他の増殖性疾患を治療するために、化合物1を化学療法剤または他の抗増殖剤と併用することができる。化合物1はまた、外科手術または放射線療法、例えばガンマ線照射、中性子線放射線療法、電子ビーム放射線療法、陽子線治療、近接照射療法、及び非密封小線源療法などの医学療法と併用することもできる。好適な化学療法剤の例としては、アバレリクス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ボルテゾミブ、ブスルファン静注、ブスルファン経口、カルステロン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルテパリンナトリウム、ダサチニブ、ダウノルビシン、デシタビン、デニロイキン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エクリズマブ、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン、クエン酸フェンタニル、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、イブリツモマブチウキセタン、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロンアルファ2a、イリノテカン、ニトシル酸ラパチニブ、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、酢酸リュープロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、フェンプロピオン酸ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロン酸、パニツムマブ、ペグアスパラガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、マレイン酸スニチニブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ボリノスタット、及びゾレドロン酸のいずれかが挙げられる。
【0143】
がん及び他の増殖性疾患を治療するために、化合物1をルキソリチニブと併用することができる。
【0144】
化合物1を1種以上の免疫チェックポイント阻害剤と併用することができる。例示的な免疫チェックポイント阻害剤としては、CD27、CD28、CD40、CD122、CD96、CD73、CD47、OX40、GITR、CSF1R、JAK、PI3Kデルタ、PI3Kガンマ、TAM、アルギナーゼ、CD137(別名4-1BB)、ICOS、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、LAG3、TIM3、VISTA、PD-1、PD-L1、及びPD-L2などの免疫チェックポイント分子に対する阻害剤が挙げられる。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、CD27、CD28、CD40、ICOS、OX40、GITR、及びCD137から選択される刺激チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子は、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、CTLA-4、IDO、KIR、LAG3、PD-1、TIM3、及びVISTAから選択される抑制チェックポイント分子である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される化合物は、KIR阻害剤、TIGIT阻害剤、LAIR1阻害剤、CD160阻害剤、2B4阻害剤、及びTGFRベータ阻害剤から選択される1種以上の薬剤と併用することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、抗PD1抗体、抗PD-L1抗体、または抗CTLA-4抗体である。
【0146】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、PD-1の阻害剤、例えば、抗PD-1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブ、ペムブロリズマブ(別名MK-3475)、ピジリズマブ、SHR-1210、PDR001、またはAMP-224である。いくつかの実施形態では、抗PD-1モノクローナル抗体は、ニボルマブまたはペムブロリズマブである。いくつかの実施形態では、抗PD1抗体はペムブロリズマブである。
【0147】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、PD-L1の阻害剤、例えば、抗PD-L1モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、BMS-935559、MEDI4736、MPDL3280A(別名RG7446)、またはMSB0010718Cである。いくつかの実施形態では、抗PD-L1モノクローナル抗体は、MPDL3280AまたはMEDI4736である。
【0148】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、CTLA-4の阻害剤、例えば、抗CTLA-4抗体である。いくつかの実施形態では、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。
【0149】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、LAG3の阻害剤、例えば、抗LAG3抗体である。いくつかの実施形態では、抗LAG3抗体はBMS-986016またはLAG525である。
【0150】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、GITRの阻害剤、例えば、抗GITR抗体である。いくつかの実施形態では、抗GITR抗体は、TRX518またはMK-4166である。
【0151】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント分子の阻害剤は、OX40の阻害剤、例えば、抗OX40抗体またはOX40L融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、抗OX40抗体はMEDI0562である。いくつかの実施形態では、OX40L融合タンパク質はMEDI6383である。
【0152】
化合物1は、がんなどの疾患の治療のために1種以上の薬剤と併用することができる。いくつかの実施形態では、薬剤は、アルキル化剤、プロテアソーム阻害剤、副腎皮質ステロイド、または免疫調節剤である。アルキル化剤の例としては、シクロホスファミド(CY)、メルファラン(MEL)、及びベンダムスチンが挙げられる。いくつかの実施形態では、プロテアソーム阻害剤はカルフィルゾミブである。いくつかの実施形態では、副腎皮質ステロイドはデキサメタゾン(DEX)である。いくつかの実施形態では、免疫調節剤は、レナリドミド(LEN)またはポマリドミド(POM)である。
【0153】
自己免疫病態または炎症病態を治療するために、化合物1を、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルオシノロン、コルチゾン、プレドニゾロン、またはフルメトロンなどの副腎皮質ステロイドと併せて投与することができる。
【0154】
自己免疫病態または炎症病態を治療するために、化合物1を、フルオシノロンアセトニド(Retisert(登録商標))、リメキソロン(AL-2178,Vexol,Alcon)、またはシクロスポリン(Restasis(登録商標))などの免疫抑制剤と併せて投与することができる。
【0155】
自己免疫病態または炎症病態を治療するために、化合物1を、Dehydrex(商標)(Holles Labs)、Civamide(Opko)、ヒアルロン酸ナトリウム(Vismed、Lantibio/TRB Chemedia)、シクロスポリン(ST-603、Sirion Therapeutics)、ARG101(T)(テストステロン、Argentis)、AGR1012(P)(Argentis)、エカベトナトリウム(Senju-Ista)、ゲファルナート(Santen)、15-(s)-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(15(S)-HETE)、セビレミン(cevilemine)、ドキシサイクリン(ALTY-0501、Alacrity)、ミノサイクリン、iDestrin(商標)(NP50301、Nascent Pharmaceuticals)、シクロスポリンA(Nova22007、Novagali)、オキシテトラサイクリン(Duramycin,MOLI1901、Lantibio)、CF101(2S,3S,4R,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-[6-[(3-ヨードフェニル)メチルアミノ]プリン-9-イル]-N-メチル-オキソラン-2-カルバミル、Can-Fite Biopharma)、ボクロスポリン(LX212もしくはLX214、Lux Biosciences)、ARG103(Agentis)、RX-10045(合成リゾルビン類似体、Resolvyx)、DYN15(Dyanmis Therapeutics)、リボグリタゾン(DE011、Daiichi Sanko)、TB4(RegeneRx)、OPH-01(Ophtalmis Monaco)、PCS101(Pericor Science)、REV1-31(Evolutec)、ラクリチン(Senju)、レバミピド(Otsuka-Novartis)、OT-551(Othera)、PAI-2(University of Pennsylvania及びTemple University)、ピロカルピン、タクロリムス、ピメクロリムス(AMS981、Novartis)、エタボン酸ロテプレドノール、リツキシマブ、ジクアホソルテトラナトリウム(INS365、Inspire)、KLS-0611(Kissei Pharmaceuticals)、デヒドロエピアンドロステロン、アナキンラ、エファリズマブ、ミコフェノール酸ナトリウム、エタネルセプト(Embrel(登録商標))、ヒドロキシクロロキン、NGX267(TorreyPines Therapeutics)、またはサリドマイドから選択される1種以上の追加の薬剤と併せて投与することができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、化合物1を、抗生物質、抗ウイルス剤、抗真菌剤、麻酔薬、ステロイド系及び非ステロイド系抗炎症薬を含む抗炎症剤、ならびに抗アレルギー剤から選択される1種以上の薬剤と併せて投与することができる。好適な薬剤の例として、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ストレプトマイシン、ネチルマイシン、及びカナマイシンなどのアミノグリコシド類;シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、トロバフロキサシン、ロメフロキサシン、レボフロキサシン、及びエノキサシンなどのフルオロキノロン類;ナフチリジン;スルホンアミド類;ポリミキシン;クロラムフェニコール;ネオマイシン;パラモマイシン;コリスチメタート;バシトラシン;バンコマイシン;テトラサイクリン;リファンピン及びその誘導体(「リファンピン類」);サイクロセリン;β-ラクタム類;セファロスポリン類;アムホテリシン類;フルコナゾール;フルシトシン;ナタマイシン;ミコナゾール;ケトコナゾール;副腎皮質ステロイド類;ジクロフェナク;フルルビプロフェン;ケトロラク;スプロフェン;クロモリン;ロドキサミド;レボカバスチン;ナファゾリン;アンタゾリン;フェニラミン;またはアザライド系抗生物質が挙げられる。
【0157】
提供される化合物と併用してもよい1つ以上の薬剤の他の例としては、ドネペジル及びリバスチグミンなどのアルツハイマー病治療薬;L-DOPA/カルビドパ、エンタカポン、ロピニロール、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキシフェニジル、及びアマンタジンなどのパーキンソン病治療薬;ベータインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)及びRebif(登録商標))、グラチラマー酢酸塩、及びミトキサントロンなどの多発性硬化症(MS)治療薬;アルブテロール及びモンテルカストなどの喘息治療薬;ジプレキサ、リスパダール、セロクエル、及びハロペリドールなどの統合失調症治療薬;デキサメタゾンもしくはプレドニゾンなどの副腎皮質ステロイド、TNF遮断薬、IL-1 RA、アザチオプリン、シクロホスファミド、及びスルファサラジンなどの抗炎症剤;シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、副腎皮質ステロイド、シクロホスファミド、アザチオプリン、及びスルファサラジンなどの免疫抑制剤を含む免疫調節剤;アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗痙攣薬、イオンチャネル遮断薬、リルゾール、もしくは抗パーキンソン病薬などの神経栄養因子;ベータ遮断薬、ACE阻害剤、利尿薬、硝酸薬、カルシウムチャネル遮断薬、もしくはスタチンなどの心血管疾患治療薬;副腎皮質ステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、及び抗ウイルス剤などの肝臓疾患治療薬;副腎皮質ステロイド、抗白血病薬、もしくは増殖因子などの血液疾患治療薬;またはガンマグロブリンなどの免疫不全障害治療薬が挙げられる。
【0158】
いくつかの実施形態では、化合物1を、JAKキナーゼ阻害剤(例えば、ルキソリチニブ、トファシチニブ、バリシチニブ、CYT387、GLPG0634、レスタウルチニブ、パクリチニブ、TG101348、またはJAK1選択的阻害剤)、Pimキナーゼ阻害剤(PIM1、PIM2、及びPIM3の1つ以上の阻害剤を含む)、PI3Kデルタ選択的阻害剤及び広域スペクトルPI3K阻害剤を含むPI3キナーゼ阻害剤、MEK阻害剤、サイクリン依存性キナーゼ阻害剤、b-RAF阻害剤、mTOR阻害剤、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ)、HDAC阻害剤(例えば、パノビノスタット、ボリノスタット)、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤、デキサメタゾン、メルファラン、または免疫調節剤(例えば、レノリドミド、ポマリドマイド)と併せて投与する。
【0159】
製剤、剤形、及び投与
医薬品として用いられる場合、化合物1(例えば、結晶固体形態などの固体形態の化合物1)は、医薬組成物の形態で投与することができる。これらの組成物は、製薬分野で周知の方法で調製することができ、局所治療または全身治療いずれが望ましいか、及び治療する領域に応じて、様々な経路で投与することができる。
【0160】
投与は、局所(経皮、上皮、眼内、ならびに鼻腔内送達、膣送達、及び直腸送達を含む経粘膜)、肺(例えば、ネブライザーを含む、粉末またはエアロゾルの吸引または吸入による;気管内または鼻腔内)、経口、または非経口であり得る。非経口投与には、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、筋肉内への注射もしくは注入;または頭蓋内、例えば、くも膜下腔内または脳室内投与が含まれる。非経口投与は、単回ボーラス投与の形態であってもよく、または例えば、連続灌流ポンプによるものであってもよい。局所投与用の医薬組成物及び製剤は、経皮パッチ剤、軟膏剤、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、滴剤、坐剤、スプレー剤、液剤、及び散剤を含み得る。従来の医薬担体、水性、粉末、または油性の基剤、粘稠剤などが必要とされる、または望ましい場合がある。
【0161】
本出願はまた、1種以上の薬学的に許容される担体(賦形剤)と組み合わせて、化合物1またはその薬学的に許容される塩を活性成分として含有する医薬組成物を含む。いくつかの実施形態では、この組成物は局所投与に適している。本明細書に記載の組成物の製造において、活性成分は通常、賦形剤と混合されるか、賦形剤で希釈されるか、または例えばカプセル、サシェ、紙、もしくは他の容器の形態のこのような担体内部に封入される。賦形剤が希釈剤として機能する場合、それは、活性成分にとってビヒクル、担体、または媒体として作用する固体、半固体、または液体の物質であり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、トローチ剤、サシェ剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁液、乳剤、液剤、シロップ剤、エアロゾル(固体として、または液体媒中)、例えば最大10重量%の活性化合物を含有する軟膏剤、軟質及び硬質ゼラチンカプセル剤、坐剤、滅菌注射溶液、ならびに滅菌包装散剤の形態であり得る。
【0162】
製剤を調製する際、他の成分と合剤にする前に、化合物1を粉砕して適切な粒径にすることができる。化合物1が実質的に不溶性である場合、200メッシュ未満の粒径に粉砕することができる。化合物1が実質的に水溶性である場合、粉砕により粒径を例えば約40メッシュに調整し、製剤中でほぼ均一に分散させることができる。
【0163】
化合物1を湿式粉砕などの既知の粉砕手順を使用して粉砕し、錠剤製剤及び他の製剤型に適した粒径にしてもよい。化合物1の微粉化(ナノ粒子状)調製物は、当技術分野で既知の方法(例えば国際出願第WO2002/000196号を参照)によって調製することができる。
【0164】
好適な賦形剤のいくつかの例として、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、及びメチルセルロースが挙げられる。製剤はさらに、タルク、ステアリン酸マグネシウム、及び鉱油などの滑沢剤;湿潤剤;乳化剤及び懸濁化剤;メチルベンゾエート及びプロピルヒドロキシベンゾエートなどの保存剤;甘味剤;ならびに着香剤を含み得る。本明細書で提供する組成物は、当技術分野で既知の手順を用いることにより、患者への投与後に活性成分の迅速な放出、持続放出、または遅延放出を得るように製剤化することができる。
【0165】
組成物は、所望量の活性成分を含有する単位剤形で製剤化することができる。用語「単位剤形」とは、ヒト対象及び他の哺乳動物に対する単位用量として適した物理的な個別単位を指し、各単位に、好適な医薬賦形剤の下で望ましい治療効果を得るように計算された所定量の活性物質を含有する。
【0166】
活性化合物は、広い用量範囲にわたって有効であり得るが、一般に薬学的有効量で投与される。ただし、実際に投与される化合物の量は通常、治療対象の病態、選択した投与経路、投与する実際の化合物、個々の患者の年齢、体重、及び反応、患者の症状の重症度などを含む関連する状況に応じて、医師が決定することを理解されたい。
【0167】
錠剤などの固体組成物を調製する場合、主な活性成分を医薬賦形剤と混合して、本明細書で提供する化合物の均質な混合物を含有する固体の予備製剤組成物を形成する。このような予備製剤組成物を均質と称する場合、一般的に活性成分は、組成物を錠剤、丸剤、及びカプセルなどの有効性の等しい単位剤形に容易に再分割できるように組成物全体に均一に分散されている。この固体予備製剤はさらに、上記の種類の単位剤形に再分割される。
【0168】
本明細書に記載の錠剤または丸剤をコーティングまたは他の方法で複合化することで、作用持続性の利点をもたらす剤形を得ることができる。例えば、錠剤または丸剤は、内部投与成分及び外部投与成分を含み、外部投与成分が内部投与成分を覆う外被の形態であり得る。胃で崩壊しにくい腸溶層によって2つの成分を隔てることで、内部成分を完全な状態で十二指腸に送ること、または放出を遅延させることが可能になる。そのような腸溶層または腸溶性コーティングには種々の材料を使用することができ、そのような材料には、多数のポリマー酸、ならびにポリマー酸とセラック、セチルアルコール、及び酢酸セルロースのような材料との混合物を含む。
【0169】
経口投与または注射により投与する場合に本明細書に記載の化合物1及び組成物を組み込むことができる液体形態として、水溶液、適切に着香されたシロップ、水性または油性懸濁液、及び食用油(綿実油、ゴマ油、ココナッツ油、またはピーナッツ油など)による着香乳剤、ならびにエリキシル剤及び同様の医薬ビヒクルが挙げられる。
【0170】
吸引または吸入用の組成物として、薬学的に許容される水性溶媒もしくは有機溶媒、またはその混合物の溶液及び懸濁液、ならびに粉末が挙げられる。液体組成物または固体組成物には、上記のような好適な薬学的に許容される賦形剤を含有することができる。いくつかの実施形態では、組成物は、局所作用または全身作用を及ぼすために経口または経鼻の呼吸経路によって投与される。組成物は、不活性ガスを使用して噴霧することができる。噴霧される溶液が噴霧装置から直接吸気されてもよく、または噴霧装置がフェイスマスク、テント、または間欠的陽圧呼吸装置に取り付けられていてもよい。溶液、懸濁液、または粉末組成物は、適切な方法で製剤を送達する装置から経口または経鼻により投与することができる。
【0171】
局所製剤には、1種以上の従来の担体を含有することができる。いくつかの実施形態では、軟膏には、水、及び1種以上の疎水性担体(例えば流動パラフィン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、プロピレングリコール、白色ワセリンなどから選択される)を含有することができる。クリーム剤の担体組成物は、グリセロール及び1種以上の他の成分、例えばグリセリンモノステアレート、PEG-グリセリンモノステアレート、及びセチルステアリルアルコールと組み合わせた水系成分であり得る。ゲル剤は、イソプロピルアルコール及び水を用いて、例えばグリセロール、ヒドロキシエチルセルロースなどの他の成分と適切に組み合わせて製剤化することができる。局所製剤は、好適には、例えば100gのチューブで包装することができ、場合により、選ばれた適応症、例えば乾癬または他の皮膚病態の治療に関する説明書が付属する。
【0172】
患者に投与される化合物または組成物の量は、投与されるもの、予防または治療のような投与の目的、患者の状態、投与方法などに応じて変更されることになる。治療用途の場合、組成物は、既に疾患に罹患している患者に、疾患の症状及びその合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で投与することができる。有効量は、治療される疾患の病態、ならびに疾患の重症度、患者の年齢、体重、及び全身状態などの要因に応じた担当臨床医の判断によって決定されることになる。
【0173】
患者に投与される組成物は、上記の医薬組成物の形態であり得る。これらの組成物は、従来の滅菌技術によって滅菌可能であり、または滅菌濾過してもよい。水溶液は、そのまま使用するため包装しても、または凍結乾燥してもよく、この凍結乾燥製剤は投与前に滅菌水性担体と混合される。化合物調製物のpHは、一般的に3~11、より好ましくは5~9、最も好ましくは7~8である。ある種の上記の賦形剤、担体、または安定剤を使用すると、薬学的塩の形態になることが理解されよう。
【0174】
化合物1の治療用量は、例えば、治療を行う個々の用途、化合物の投与方法、患者の健康状態及び病態、ならびに処方する医師の判断に従って変更することができる。本明細書で提供する化合物の医薬組成物中の比率または濃度は、用量、化学的特性(例えば、疎水性)、及び投与経路を含むいくつかの要因に応じて変更することができる。用量は、疾患または障害の進行型及び進行度、特定の患者の全体的な健康状態、選択された化合物の相対的生物学的有効性、賦形剤の配合、及びその投与経路などの変動要素に依存する可能性がある。有効量は、in vitroまたは動物モデルでの試験系から導出される用量反応曲線から推定することができる。
【0175】
本明細書で提供する組成物は、化学療法剤、ステロイド、抗炎症化合物、または免疫抑制剤などの1つ以上の追加の医薬品をさらに含むことができ、その例は上記に列挙されている。
【0176】
具体的な実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例は例示目的で記載するものであり、いかなる方法によっても本発明を限定することを意図しない。当業者は、様々な重大でないパラメーターを即座に認識し、本質的に同じ結果が得られるように変更または修正することができる。以下に記載するように、実施例の化合物が1つ以上のBETタンパク質の阻害剤であることを見出した。
【実施例】
【0177】
実施例1.2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物1)の合成
中間体化合物5の合成をスキーム1に従って実施した。
【化18】
【0178】
工程1a.4-(メチルスルホニル)-2-ニトロフェノール(化合物2)
酢酸(HOAc、91mL)に4-(メチルスルホニル)-フェノール(化合物1a、10g、58.1mmol)を撹拌した溶液に硝酸(69%、4.2mL、70mmol、1.2当量)を室温で1分かけて加えた。発熱が観察されたら、反応物を70℃に加熱した。反応混合物を75~80℃で3時間撹拌した。硝酸(69%、0.3mL、5.0mmol、0.086当量)を加え、混合物をさらに1時間撹拌した。反応混合物を15℃に冷却し、水(230mL)を加えた。30分間撹拌した後、得られた固体を濾過により回収し、水(2×45mL)ですすぎ、45℃で5時間真空乾燥して、目的の粗生成物、4-(メチルスルホニル)-2-ニトロフェノール(化合物2、11.0g)を得た。次いで、粗化合物2を55℃でテトラヒドロフラン(THF、110mL)に溶解し、温水(45℃、275mL)をゆっくりと加えた。この溶液を室温まで徐々に冷却し、室温で一晩撹拌した後、さらに9℃に冷却し、9℃で1時間撹拌した。濾過により固体を回収し、50℃で一晩真空乾燥して、4-(メチルスルホニル)-2-ニトロフェノール(化合物2、10.15g、理論値12.6g、収率80.6%)を黄色粉末として得た。化合物2:C7H8NO4S(M+H)+に対するLCMS計算値:218.0、実測値:218.1;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 12.20 (br s, 1H), 8.34 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 8.00 (dd, J = 8.8 Hz, J = 2.4 Hz, 1 H), 7.30 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 3.22 (s, 3H) ppm。
【0179】
工程2a.2-ブロモ-4-(メチルスルホニル)-6-ニトロフェノール(化合物3)
4-(メチルスルホニル)-2-ニトロ-フェノール(化合物2、825g、3.8モル)のDMF(5.9L)溶液にN-ブロモスクシンイミド(NBS、680g、3.82モル、1.0当量)を0℃で加えた。10分後に冷浴から取り出し、反応混合物を室温で2時間撹拌した。LCMSで反応の完了が確認されたら、水(5.9L)を加え、混合物を室温で1時間撹拌した。固体を濾過し、水(3×2.5L)で洗浄し、45℃で一晩真空乾燥して、2-ブロモ-4-(メチルスルホニル)-6-ニトロフェノール(化合物3、1085g、理論値1131.1g、収率95.9%)を黄色粉末として得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物3:C7H6BrNO5S(M-H)-に対するLCMS計算値:293.9、実測値:294.0;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 8.33 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 8.31 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.27 (s, 3H) ppm。
【0180】
工程3a.2-アミノ-6-ブロモ-4-(メチルスルホニル)フェノール(化合物4)
テトラヒドロフラン(THF、10L)と水(10L)との1:1混合液に2-ブロモ-4-(メチルスルホニル)-6-ニトロフェノール(化合物3、1037g、3.5モル)及びハイドロサルファイトナトリウム(Na2S2O4、工業等級85%、3.15kg、15.4モル、4.4当量)を溶解した溶液に、重炭酸ナトリウム(NaHCO3、2.6kg、30.95モル、8.8当量)を1時間かけて少しずつ加えた。得られた反応混合物を室温で2時間撹拌した。LCMSで反応の完了が確認されたら、反応混合物を酢酸エチル(EtOAc、2×10L)で抽出した。合一した有機層を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル(EtOAc、13L)に溶解し、不溶性物質を濾過により除去した。濾液を減圧蒸発させ、2-アミノ-6-ブロモ-4-(メチルスルホニル)フェノール粗製物(化合物4、736.5g、理論値931.4g、収率79%)をベージュ色の粉末として得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物4:C7H8BrNO3S(M+H)+に対するLCMS計算値:265.9、実測値:266.1;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 7.15 (d, J = 2.4 Hz, 1 H), 7.10 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 6.8 (br s, 2H), 3.4 (br s, 1H), 3.09 (s, 3H) ppm。
【0181】
工程4a.8-ブロモ-2,2-ジメチル-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物5)
2-アミノ-6-ブロモ-4-(メチルスルホニル)フェノール(化合物4、391g、1.47モル)のアセトニトリル(8L)溶液に、炭酸カリウム(K2CO3、842g、6.1モル、4.15当量)の水(2.8L)溶液を室温で加えた。次いで、2-ブロモ-2-メチルプロパノイルブロミド(466mL、864g、3.76モル、2.56当量)を反応混合物に室温で20分かけて加え、得られた反応混合物を室温で一晩撹拌した。対応する開環中間体が形成されたことをLCMSで確認したら、反応混合物を6時間で75℃に加熱した。反応混合物を半分の体積まで減圧濃縮した。水(4L)及び1N塩酸水溶液(HCl、2.24L)を加え、混合物を15分間撹拌した。濾過により固体を回収し、水(1.2L)で洗浄し、50℃で一晩真空乾燥して、目的の粗生成物(化合物5、404g)を得た。次いで、粗生成物をヘプタンとMTBE(1.2L)との5:1混合液とともに室温で3時間粉砕した。濾過により固体を回収し、ヘプタン(1L)で洗浄し、真空乾燥して、8-ブロモ-2,2-ジメチル-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物5、401g、理論値491.3g、収率81.6%、純度98%)を黄色から褐色の粉末として得た。化合物5:C11H12BrNO4S(M+H)+に対するLCMS計算値:334.0、実測値:333.9;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 11.10 (s, 1H), 7.74 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 7.38 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.22 (s, 3H), 1.46 (s, 6 H) ppm。
【0182】
工程5a.8-ブロモ-2,2,4-トリメチル-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物6)
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、添加漏斗、及び窒素導入口を200Lガラス反応器に取り付け、装置を窒素でパージした。DMF(30.0L)及び8-ブロモ-2,2-ジメチル-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物5、3000g、8.98モル)を反応器に入れ、混合物を溶液になるまで周囲温度で撹拌した。次いで、内部温度を約17℃に維持しながら、炭酸カリウム(K2CO3、1371g、9.92モル、1.11当量)及びヨウ化メチル(MeI、1536g、0.67L、10.83モル、1.21当量)を反応器に入れた。HPLCでメチル化反応の完了が確認されるまで、得られた反応混合物を約4時間撹拌した。内部温度を約19℃に維持しながら、飲料水(60.0L)を反応器に入れ、混合物を周囲温度で約2.5時間撹拌した。濾過により固体を回収し、湿ったケークを飲料水(30.0L)で洗浄し、約15.5時間風乾した後、約45℃で真空乾燥し、8-ブロモ-2,2,4-トリメチル-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン粗製物(化合物6、2834g、理論値3127g、収率90.6%)をオフホワイトから黄色の粉末として得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物6:1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.83 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 3.37 (s, 3H), 3.31 (d, J = 3.4 Hz, 3H), 1.49 (s, 6H) ppm;13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 167.47 (s), 144.14 (s), 136.03 (s), 131.46 (s), 126.07 (s), 113.71 (s), 111.25 (s), 79.80 (s), 43.98 (s), 29.42 (s), 24.28 (s) ppm。
【0183】
中間体化合物9の合成をスキーム2に従って実施した。
【化19】
【0184】
工程1b.(E)-2-(5-ブロモ-2-メトキシ-3-ニトロピリジン-4-イル)-N,N-ジメチルエテンアミン(化合物11)
リチウムメタノラート(11.5g、0.303モル、0.147当量)のメタノール(300mL)溶液を5-ブロモ-2-メトキシ-4-メチル-3-ニトロピリジン(化合物10、508g、2.057モル)のDMF(5.0L)溶液に加えた。反応混合物を90℃に加熱し、1,1-ジメトキシ-N,N-ジメチルメタンアミン(2180mL、8.0当量)を10分かけて加えた。反応混合物を90~95℃で一晩撹拌した。LCMSで反応の完了が確認されたら、反応混合物を5℃に冷却し、氷冷水(12.2L)を添加漏斗から加えた。混合物を冷却浴中で1時間撹拌し、沈殿した固体を濾過により回収した。固体を氷冷水(2L)で洗浄し、2時間吸引乾燥した後、40℃で一晩真空乾燥し、(E)-2-(5-ブロモ-2-メトキシ-3-ニトロピリジン-4-イル)-N,N-ジメチルエテンアミン粗製物(化合物11、506g、理論値619.2g、収率81.7%)を赤色固体として得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物11:1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 8.22 (s, 1H), 7.03 (d, J = 3.5 Hz, 1 H), 4.79 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 3.86 (s, 3H), 2.89 (s, 6H) ppm。
【0185】
工程2b.4-ブロモ-7-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン(化合物12)
鉄粉末(Fe、1085g、19.5モル、10当量)及び酢酸(HOAc、4380mL、4595g、76.5モル、39.3当量)を、(E)-2-(5-ブロモ-2-メトキシ-3-ニトロピリジン-4-イル)-N,N-ジメチルエテンアミン(化合物11、587g、1.95モル)のテトラヒドロフラン(THF、5.25L)溶液に順次添加した。反応混合物を40℃に加熱し、1時間で77℃になるように穏やかで安定した発熱を生じさせた。75℃でさらに2時間撹拌した後、LCMSで反応の完了を確認した。反応混合物を50℃に冷却し、酢酸エチル(EtOAc、4L)で希釈し、室温で一晩撹拌した。セライト濾過により固体を除去して、セライトを酢酸エチル(EtOAc、6L)ですすいだ。合一した濾液を減圧濃縮した。残渣を酢酸エチル(EtOAc、16L)に溶解し、溶液を炭酸ナトリウム(Na2CO3、900g)の水(12L)溶液及び飽和ブライン(2L)で洗浄した。合一した水層を酢酸エチル(EtOAc、4L)で抽出した。合一した有機層を減圧蒸発させた。ヘプタン(4L)を加え、溶媒を減圧除去して、4-ブロモ-7-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン粗製物(化合物12、450g)を定量的に暗色の固体として得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物12:C8H7BrN2O(M+H)+に対するLCMS計算値:227.0、実測値:227.1;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 7.73 (s, 1H), 7.53 (d, J = 3.0 Hz, 1 H), 6.40 (d, J = 3.0 Hz, 1H), 3.99 (s, 3H) ppm。
【0186】
工程3b.4-ブロモ-7-メトキシ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン(化合物13)
水素化ナトリウムの60%鉱油分散物(NaH、120g、3モル、1.5当量)を、4-ブロモ-7-メトキシ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン粗製物(化合物12、450g、1.95モル)のDMF(4.5L)溶液に15分かけて分割添加した。反応混合物の温度は38℃に達した。反応混合物を10分間撹拌した後、20℃に冷却した。p-トルエンスルホニルクロリド(p-TsCl、562g、2.95モル、1.5当量)をすべて一度に加え、混合物を室温で2時間撹拌した。LCMSで反応の完了が確認されたら、水(9L)を加えた。濾過により固体を回収し、水(2.5L)ですすいだ後、酢酸エチル(EtOAc、5L)に溶解した。溶液を水(3L)で洗浄した。水層を酢酸エチル(EtOAc、3L)で逆抽出した。合一した有機層を減圧濃縮して、4-ブロモ-7-メトキシ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン粗製物(化合物13、801g)を定量的に暗色の固体として得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物13:C15H13BrN2O3S(M+H)+に対するLCMS計算値:381.0;実測値:381.0;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 8.15 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 7.97 (s, 1 H), 7.83 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 8.5 Hz, 2H), 6.78 (d, J = 3.8 Hz, 1H), 3.80 (s, 3H), 2.36 (s, 3H) ppm。
【0187】
工程4b.4-ブロモ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7-オール(化合物14)
4-ブロモ-7-メトキシ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン粗製物(化合物13、801g、1.95モル)を4M HClの1,4-ジオキサン(5.6L、22.4モル、11.5当量)溶液に溶解して、40~45℃で12時間撹拌した。反応混合物を減圧濃縮し、残渣をエチルエーテル(Et2O、1.5L)に懸濁させた。固体を濾過し、エチルエーテル(Et2O、0.5L)及びヘプタン(1L)で順次洗浄した後、40℃で一晩真空乾燥して、4-ブロモ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7-オール粗製物(化合物14、648g、理論値716g、3工程にわたる収率90.5%)を黄色粉末として得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物14:C14H11BrN2O3S(M+H)+に対するLCMS計算値:367.0、実測値:366.9;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 11.46 (s, 1H), 8.01 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 7.92 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.38 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 7.33 (s, 1 H), 6.57 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 2.36 (s, 3H) ppm。
【0188】
工程5b.4-ブロモ-6-メチル-1-トシル-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7-オン(化合物9)
水素化ナトリウムの60%鉱油分散物(NaH、132g、3.3モル、1.2当量)を、4-ブロモ-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7-オール(化合物14、1000g、2.72モル)のDMF(5L)溶液に15分かけて分割添加した。反応混合物の温度は39℃に達した。30分間撹拌した後、反応混合物を20℃に冷却した。ヨードメタン(MeI、205mL、467g、3.3モル、1.2当量)を加え、反応混合物を室温で2.5時間撹拌した。LCMSで反応の完了が確認されたら、水(13L)を加え、反応混合物を30分間撹拌した。固体を濾過し、水(2.5L)及びヘプタン(4L)で順次洗浄した。次いで固体をジクロロメタン(DCM、9L)に溶解し、溶液を分液漏斗に移した。残留水(約200mL)を除去した。ジクロロメタン溶液を硫酸ナトリウム(Na2SO4、200g)、シリカゲル(SiO2、170g)、及び活性炭(20g)の混合物で1時間処理した。固体をセライト(750g)パッドで濾過して除去し、セライトパッドをジクロロメタン(DCM、3L)で洗浄した。合一した濾液にトルエン(1.2L)を加えた。ジクロロメタンを減圧除去した。得られたトルエン中の固体を濾過により回収し、トルエン(1.2L)及びヘプタン(1.2L)で順次洗浄し、40℃で2時間真空乾燥して、4-ブロモ-6-メチル-1-トシル-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7-オン粗製物(化合物9、728g、理論値1036.9g、収率70.2%、純度99.3%)を得て、それ以上精製せずに次の反応に用いた。化合物9:C15H13BrN2O3S(M+H)+に対するLCMS計算値:381.0、実測値:381.0;1H NMR (300 MHz, DMSO-d6)δ 8.03 (m, 1 H), 7.93 (m, 2H), 7.78 (s, 1H), 7.41 (m, 2 H), 6.58 (m, 1H), 3.37 (s, 3H), 2.36 (s, 3H) ppm。
【0189】
化合物1の合成をスキーム3に従って実施した。
【化20】
【0190】
工程1及び2.2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物8)
100Lガラス反応器にオーバーヘッド撹拌機、熱電対、添加漏斗、及び窒素導入口を取り付け、22Lガラス反応器にオーバーヘッド撹拌機、冷却器、熱電対、添加漏斗、及び窒素導入口を取り付け、各装置を窒素でパージした。1,4-ジオキサン(15.8L)、8-ブロモ-2,2,4-トリメチル-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物6、1008g、2.90モル、1.05当量)、ビス(ピナコラト)ジボロン(1472g、5.80モル、2.11当量)、及び酢酸カリウム(KOAc、854g、8.70モル、3.16当量)を100L反応器に入れた。窒素を反応混合物に22分間吹き込み、Pd(dppf)Cl2-CH2Cl2(60.08g、0.07モル、0.03当量)を100L反応器へ1,4-ジオキサン(0.5L)ですすぎ入れた。再度、窒素を反応混合物に22分間吹き込んだ。得られた反応混合物を加熱して穏やかに還流させ(約81℃)、HPLCで第1のカップリング反応の完了が確認されるまで約19時間還流撹拌した。次いで反応混合物を約28℃に冷却した。それとは別に、重炭酸ナトリウム(NaHCO3、578g、6.89モル、2.50当量)及び飲用水(8.3L)を溶液になるまで完全に混合し、次いで窒素を溶液に約34分間吹き込むことにより、脱気した重炭酸ナトリウム水溶液を調製した。脱気した重炭酸ナトリウム水溶液及び4-ブロモ-6-メチル-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7(6H)-オン(化合物9、1050g、2.75モル)を順次、周囲温度で100L反応器に入れた。100L反応器内の得られた反応混合物を加熱して穏やかに還流させ(約89℃)、HPLCで第2のカップリング反応の完了が確認されるまで約2.5時間還流撹拌した。反応混合物を約29℃に冷却した後、飲料水(26.3L)及び酢酸エチル(EtOAc、39.4L)を入れた。混合物を周囲温度で約19分間撹拌した後、セライト(1050g)ベッドを通して濾過した。濾過ケークを酢酸エチル(EtOAc、4.2L)で洗浄した。濾液及び洗浄液を100L反応器に戻し、相を分離し、有機相を反応器に残した。それとは別に、亜硫酸水素ナトリウム(17,052g)と飲料水(41.0L)を完全に混合することにより、亜硫酸水素ナトリウム水溶液を調製した。亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15.6L)の約3分の1を100L反応器中の有機溶液に加え、得られた混合物を約50℃に加熱し、約54℃で約1時間撹拌した。混合物を約39℃に冷却し、前と同じセライトパッドを通して濾過し、濾過ケークを酢酸エチル(4.2L)で洗浄した。合一した濾液及び洗浄液を100L反応器に戻し、相を分離し、有機相を反応器に残した。亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15.6L)の約3分の1を100L反応器中の有機溶液に加え、得られた混合物を約50℃に加熱し、約52℃で約1時間撹拌した。反応混合物を約40℃に冷却し、相を分離し、有機相を反応器に残した。亜硫酸水素ナトリウム水溶液(15.6L)の残部を100L反応器中の有機溶液に加え、得られた混合物を約50℃に加熱し、約50℃で約1時間撹拌した。混合物を約40℃に冷却し、相を分離し、有機相を反応器に残した。飲料水(10.5L)、及び塩化ナトリウム2100gと飲料水10.5Lから別に調製した塩化ナトリウム水溶液で有機相を順次洗浄した。目標体積11L(仕込んだ化合物9の1kgあたり10~12L)が残存するように有機相を約42℃で減圧濃縮した。残渣を22L反応器に移した。目標体積5L(仕込んだ化合物9の1kgあたり5~6L)が残存するように有機相を約52℃でさらに減圧濃縮した。残渣を約24℃に冷却し、約19℃で約11.5時間撹拌した。濾過により固体を回収し、濾過ケークをn-ヘプタン(4.2L)で洗浄し、約4時間風乾した後、約15~17℃でさらに真空乾燥し、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン粗製物(化合物8、1232g、理論値1566.5g、収率78.6%)を黄色から褐色の粉末として得て、同じ手順で生成した粗化合物8の他のバッチと合一し、さらに以下の記載のように精製した。
【0191】
オーバーヘッド撹拌機、冷却器、熱電対、添加漏斗、及び窒素導入口を100Lガラス反応器に取り付け、装置を窒素でパージした。塩化メチレン(34L)及び2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン粗製物(化合物8、3400g)を反応器に入れ、混合物を溶液になるまで約17℃で撹拌した。得られた溶液にSi-チオール(850g)を加え、混合物を約31℃に加熱し、約31℃で約2.5時間撹拌した。次いで、混合物を約20℃に冷却した後、濾過した。濾過ケークを塩化メチレン(14L)で洗浄し、合一した濾液と洗浄液とを約32℃で真空濃縮し、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン精製物(化合物8、3728g)を黄色から褐色の粉末として得て、これを複数の有機溶媒を有したまま、それ以上乾燥させずに次の反応にそのまま使用した。化合物8:1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 7.99 (dd, J = 5.9, 2.3 Hz, 3H), 7.65 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.59 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 7.56 (s, 1H), 7.44 (d, J = 8.2 Hz, 2H), 6.46 (d, J = 3.5 Hz, 1H), 3.48 (s, 3H), 3.42 (s, 3H), 3.30 (s, 3H), 2.39 (s, 3H), 1.38 (s, 6H) ppm;13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 167.50 (s), 152.60 (s), 145.55 (s), 144.64 (s), 136.22 (s), 135.96 (s), 134.83 (s), 131.27 (s), 130.86 (s), 130.07 (s), 128.88 (s), 125.37 (s), 124.56 (s), 121.93 (s), 113.72 (s), 108.32 (s), 106.83 (s), 79.01 (s), 60.21 (s), 44.17 (s), 36.95 (s), 29.46 (s), 24.28 (s), 21.59 (s), 21.22 (s), 14.55 (s) ppm。
【0192】
工程3.2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物1)
オーバーヘッド撹拌機、蒸留装置、熱電対、添加漏斗、及び窒素導入口を50Lガラス反応器に取り付け、装置を窒素でパージした。1,4-ジオキサン(10.2L)及び2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物8、前工程から得た溶媒含有量3724g、乾燥換算で3400g、5.97モル)を撹拌しながら反応器に入れ、反応混合物を約62℃に加熱した。それとは別に、水酸化ナトリウム(NaOH、860g、21.49モル、3.60当量)と飲料水(21.5L)を完全に混合することにより、水酸化ナトリウム水溶液を調製した。内部温度を70℃未満に維持しながら、水酸化ナトリウム水溶液を約26分かけて反応器に入れた。反応混合物を約84℃に加熱し、HPLCで脱保護反応の完了が確認されるまで約84℃で約2.5時間撹拌した。目標体積17L(仕込んだ化合物8の1kgあたり5L)が残存するように反応混合物を約70℃で減圧蒸留した。飲料水(13.6L)を入れ、追加の7L(仕込んだ化合物8の1kgあたり2L)が回収されるまで約76℃で減圧蒸留を続けた。残渣の混合物を約25℃に冷却し、約18℃で約11時間撹拌した。濾過により固体を回収し、濾過ケークを水(34L)で洗浄し、約1時間フィルター上で脱水した後、約5日間風乾して、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン粗製物(化合物1、1728g、理論値2480g、収率69.7%)を得て、以下に記載する手順に従って精製した。
【0193】
オーバーヘッド撹拌機、熱電対、及び窒素導入口を50Lガラス反応器に取り付け、装置を窒素でパージした。アセトニトリル(17.2L)及び2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン粗製物(粗化合物1、1726g、4.25モル)を撹拌しながら反応器に入れた。得られた混合物を約72℃に加熱し、70~75℃で約1.5時間撹拌した。次いで、混合物を約25℃に冷却し、周囲温度で約1時間撹拌した。濾過により固体を回収し、濾過ケークをアセトニトリル(9L)で洗浄した後、アセトニトリル(17L)と共に反応器に戻した。混合物を約39℃に加熱し、約39℃で約1.5時間撹拌した。混合物を約17℃に冷却し、約17℃で約15時間撹拌した。濾過により固体を回収し、濾過ケークを塩化メチレン(9L)で洗浄した。生成物を約2時間フィルター上で脱水した後、約1日間風乾して、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン精製物(化合物1、1458g、理論値1726g、収率84.5%)を得て、これを再結晶し、以下に記載の手順に従って目的の結晶形態を得た。
【0194】
工程4.2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物1)の再結晶
100Lガラス反応器にオーバーヘッド撹拌機、熱電対、添加漏斗、及び窒素導入口を取り付け、50Lガラス反応器にオーバーヘッド撹拌機、冷却器、熱電対、添加漏斗、及び窒素導入口を取り付け、各装置を窒素でパージした。メタノール(18.9L)、化合物1(1454g)、及びアセトン(18.9L)を順次、撹拌しながら100L反応器に入れた。得られた混合物を約57℃に加熱し、透明な溶液になるまで約57℃で約1.25時間撹拌した。混合物をインラインフィルターを通して清浄な50L反応器に移した。メタノール(2.9L)で100L反応器及びフィルターをすすいで、フィルターを通して50L反応器に入れた。50L反応器内の混合物を約52℃に加熱し、透明な溶液になるまで約56℃で約7分間撹拌した。次いで、目標体積38Lが残存するように反応器内の溶液を約58℃で減圧濃縮した。内部温度を60℃未満に維持しながら、濾過したn-ヘプタン(37.7L)を少しずつ反応器に入れた。目標体積22Lが残存するまで約59℃で減圧蒸留を続けた。残渣の混合物を約24℃に冷却し、約17℃で約6.75時間撹拌した。濾過により固体を回収し、濾過ケークを濾過したn-ヘプタン(7.3L)で洗浄し、約1時間フィルター上で脱水した後、60~65℃で真空乾燥して、2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物1、1404g、理論値1454g、96.6%)を白色からオフホワイトの結晶(形態I)の粉末として得た。化合物1:mp 266.4℃;1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 12.13 (s, 1H), 7.67 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.62 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.33 (s, 2H), 6.19 (s, 1H), 3.59 (s, 3H), 3.43 (s, 3H), 3.31 (s, 3H), 1.41 (s, 6H) ppm;13C NMR (101 MHz, DMSO-d6) δ 167.66 (s), 154.57 (s), 144.55 (s), 134.74 (s), 130.96 (s), 130.33 (s), 129.68 (s), 127.40 (s), 126.96 (s), 124.39 (s), 123.53 (s), 113.15 (s), 109.35 (s), 103.07 (s), 78.80 (s), 44.22 (s), 36.15 (s), 29.46 (s), 24.26 (s) ppm。
【0195】
上記と同様の手順を用いてテトラヒドロフラン(THF)、アセトン、及びn-ヘプタンの混合物で行った再結晶化により、結晶化合物1原薬の形態IIを得た。形態I及び形態IIはいずれもDSCで非常に鮮明な融解吸熱ピークを有し、2つの形態のピーク融解温度には約1℃の差があり、形態Iは266.4℃、形態IIは267.5℃であった。しかしながら、形態I及び形態IIはXRDパターンが非常に異なっているにもかかわらず、両方とも水性懸濁液中で安定である。研究から、形態IはMeOH及びアセトン中で最も安定な形態であり、対する形態IIはIPA中でより安定であることが判明した。メタノール、アセトン、及びn-ヘプタンの混合物において、形態I及び形態IIは溶媒比、温度、及び時間などの条件に応じて互いに相互変換可能である。結晶化合物1の形態I及び形態IIは、有機溶媒及び水でも同じ溶解度を有する。
【0196】
形態Iは、化合物1の飽和または白濁アセトン溶液約2mLに約30mgの化合物1を加えた後、25±1℃で3日間撹拌することによっても得ることができる。
【0197】
別法による化合物8の合成をスキーム4に従って実施した。
【化21】
【0198】
工程1x.6-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7(6H)-オン(化合物15)
鉱油バブラーに接続されたT管アセンブリを構成する500mL三つ口丸底フラスコに冷却器及び窒素入口を取り付けた。4-ブロモ-6-メチル-1-[(4-メチルフェニル)スルホニル]-1,6-ジヒドロ-7H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7-オン(化合物9、10.0g、26.2mmol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)(13g、52mmol、2.0当量)、ジシクロヘキシル(2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル-2-イル)ホスフィン(Xphos、1.2g、2.6mmol、0.1当量)、酢酸カリウム(5.66g、57.7mmol、2.2当量)、及び1,4-ジオキサン(110mL)をフラスコに入れた。混合物を窒素で5分間脱気した後、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(Pd2(dba)3、600mg、0.656mmol、0.025当量)を混合物に添加し、窒素脱気を1~2分間続けた。次いで、反応混合物を80℃に加熱し、80~86℃で19時間撹拌した。HPLCで反応の完了が確認されたら、反応混合物を室温に冷却した。2-メトキシ-2-メチルプロパン(MTBE、50mL)及びシリカゲル(SiO2、8g)を加え、混合物を室温で30分間撹拌した。混合物をシリカゲルパッドを通して濾過し、シリカゲルパッドをMTBEで洗浄した。合一した濾液を減圧濃縮し、残渣をフラッシュカラム(シリカゲル、ヘキサン中0~80%EtOAcの勾配)で精製して、6-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7(6H)-オン(化合物15、9.5g、理論値11.22g、84.7%)を褐色から赤色の油状物として得て、これを真空下、室温で静置して固化させた。化合物15:C21H25BN2O5S(M+H)+、(2M+Na)+に対するLCMS計算値:m/z429.3、879.3;実測値:429.1、879.3。
【0199】
工程2x.2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン(化合物8)
1,4-ジオキサン(350mL)及び水(80mL)に8-ブロモ-2,2,4-トリメチル-6-(メチルスルホニル)-2H-1,4-ベンゾオキサジン-3(4H)-オン(化合物6、22.4g、64.5mmol)及び6-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1-トシル-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-7(6H)-オン(化合物15、29.0g、67.7mmol、1.05当量)を溶解した溶液を、フッ化セシウム(CsF、33.9g、223mmol、3.46当量)及び4-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-N,N-ジメチルアニリン-ジクロロパラジウム(2:1)(2.0g、2.8mmol、0.043当量)で周囲温度にて処理した。次いで得られた反応混合物を、毎回窒素ガスの定常流を充填して3回脱気した。次いで、反応混合物を2~3時間加熱還流した。HPLCでカップリング反応の完了が確認されたら、反応混合物を30℃まで徐々に冷却した後、水(300mL)及び2-メトキシ-2-メチルプロパン(MTBE、300mL)を加えた。次いで混合物を周囲温度で15分間撹拌した後、2つの層を分離した。水層をメトキシ-2-メチルプロパン(MTBE、100mL)で抽出した。合一した抽出物を重硫酸水素ナトリウム(40g)の水(200mL)溶液で処理し、得られた混合物を周囲温度で2時間撹拌した。濾過により固体を回収し、水で洗浄し、真空オーブンで一晩乾燥させ、目的生成物2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンの第1の収量(化合物8、20.0g、理論値36.74g、収率54.4%)をオフホワイトから黄色の粉末として得て、それ以上精製せずに次の反応にそのまま用いた。
【0200】
濾液の2つの層を分離し、有機層をMgSO4で脱水し、減圧濃縮した。次いで残渣をカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサン中40~100%EtOAcの勾配溶出)により精製し、目的化合物2,2,4-トリメチル-8-(6-メチル-7-オキソ-1-トシル-6,7-ジヒドロ-1H-ピロロ[2,3-c]ピリジン-4-イル)-6-(メチルスルホニル)-2H-ベンゾ[b][1,4]オキサジン-3(4H)-オンの第2の収量(化合物8、13.8g、理論値36.74g、収率37.5%;合計33.8g、収率91.9%)を桃色の油状物として得て、真空下、室温で固化させ、それ以上精製せずに次の反応にそのまま用いた。
【0201】
この別法の合成プロセスによって生成された化合物8のバッチが、スキーム3に記載されている元の合成によって生成された物質と同一であることを確認した。その後、この物質をスキーム3の記載と同じ手順に従って化合物1に変換した。
【0202】
実施例2.形態I及び形態IIのX線粉末回折(XRPD)試験
化合物1の形態I及び形態IIをXRPDによって特性決定した。Bruker D2 PHASER X-ray Powder Diffractometer装置からXRPDを得た。XRPDの一般的な実験手順は次のとおりであった:(1)Kβフィルター及びLYNXEYE(商標)検出器を用い、1.054056Åで銅を発生源としてX線を照射する;(2)X線出力は30kV、10mAである;ならびに(3)試料粉末はバックグラウンドのない試料ホルダー上に分散させた。XRPDの一般的な測定条件は次のとおりであった:開始角5°;停止角30°;サンプリング=0.015°;及びスキャン速度=2°/分。
【0203】
形態IのXRPDパターンを
図1に示し、XRPDデータを表1に示す。
【表1】
【0204】
化合物1の形態IIのXRPDパターンを
図4に示し、XRPDデータを表2に示す。
【表2】
【0205】
実施例3.形態I及び形態IIの示差走査熱量測定(DSC)試験
化合物1の形態I及び形態IIをDSCによって特性決定した。TA Instruments製の示差走査熱量計、オートサンプラー搭載モデルQ2000からDSCを得た。DSC装置の条件は次のとおりであった:10℃/分で25~300℃;Tzeroアルミニウム試料パン及び蓋;ならびに窒素ガス流量50mL/分。
【0206】
形態IのDSCサーモグラムを
図2に示す。形態IのDSCサーモグラムは、開始温度264.7℃でピーク温度266.4℃の大きな吸熱事象を示した。これは化合物の融解/分解であると考えられる。
【0207】
形態IIのDSCサーモグラムを
図5に示す。形態IIのDSCサーモグラムは、開始温度266.7℃でピーク温度267.5℃の大きな吸熱事象を示した。これは化合物の融解/分解であると考えられる。
【0208】
実施例4.形態I及びIIの熱重量分析(TGA)試験
化合物1の形態I及び形態IIをTGAによって特性決定した。PerkinElmer製の熱重量分析装置、モデルPyris 1からTGAを得た。TGAの一般的な実験条件は次のとおりであった:10℃/分で25℃~350℃までの勾配;窒素パージガス流量60mL/分;セラミックるつぼ試料ホルダー。
【0209】
形態IのTGAサーモグラムを
図3に示す。150℃まで約0.4%の重量減少が観察されたが、これは水分または残留溶媒の減少に伴うものであると考えられる。250℃を超えると著しい重量減少が観察され、これは化合物の分解に伴うものであると考えられる。
【0210】
形態IIのTGAサーモグラムを
図6に示す。250℃を超えると著しい重量減少が観察され、これは化合物の分解に伴うものであると考えられる。
【0211】
実施例5.形態Ia、III、IV、V、Va、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXV、ならびに非晶質化合物1の調製
化合物1の形態Ia、III、IV、V、Va、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXV、ならびに化合物1の非晶質を以下の表3の手順に従って調製した。これらの形態を、XRPD(実施例6を参照)、DSC(実施例7を参照)、及びTGA(実施例8を参照)によって分析した。
【表3】
【0212】
実施例6.形態Ia、III、IV、V、Va、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXV、ならびに非晶質のXRPD
種々の形態について実施例5のXRPD試験を実施した。Rigaku MiniFlex X線粉末回折装置(XRPD)からX線粉末回折(XRPD)を得た。XRPDの一般的な実験手順は次のとおりであった:(1)Kβフィルターを用い、1.054056Åで銅を発生源としてX線を照射する;(2)X線出力は30KV、15mAである;ならびに(3)試料粉末はバックグラウンドのない試料ホルダー上に分散させた。XRPDの一般的な測定条件は次のとおりであった:開始角3°;停止角45°;サンプリング=0.02°;及びスキャン速度=2°/分。
【0213】
図7~21はそれぞれ、形態Ia、III、IV、V、Va、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXVのXRPDパターンである。表4~18はそれぞれ、形態Ia、III、IV、V、Va、VI、VII、VIII、IX、X、XI、XII、XIII、XIV、及びXVのピーク一覧である。実施例6の非晶質固体を、XRPDを用いて分析し、非晶質であると判定した。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13-1】
【表13-2】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【0214】
実施例7.多形体のDSC及びTGA試験
形態Va、VII、VIII、X、XII、XIII、XIV、及びXVについてDSC試験を実施した。TA Instruments製の示差走査熱量計、オートサンプラー搭載モデルQ200からDSCを得た。DSC装置の条件は次のとおりであった:10℃/分で30~300℃;Tzeroアルミニウム試料パン及び蓋;ならびに窒素ガス流量50mL/分。
【0215】
形態Va、VII、VIII、X、XIII、及びXVについてTGA試験を実施した。TA Instrument製の熱重量分析装置、モデルQ500からTGAを得た。TGAの一般的な実験条件は次のとおりであった:20℃/分で20℃~600℃までの勾配;窒素パージ、ガス流量40mL/分の後、パージ流量の平衡;試料パージ流量60mL/分;白金試料パン。
【0216】
以下の表19はDSC及びTGAの結果を示す。
【表19】
【0217】
本願は、以下の態様も包含する。
[態様1]
次式:
【化22】
を有する化合物の固体形態であって、前記固体形態が結晶である、前記固体形態。
[態様2]
無水物である、態様1に記載の固体形態。
[態様3]
形態Iを有する、態様1に記載の固体形態。
[態様4]
2シータに関して、約8.7°、約9.8°、約11.6°、約12.7°、約14.7°、約15.7°、約20.0°、約21.4°、約23.3°、及び約27.1°から選択される3つ以上の特徴的なXRPDピークを有する、態様3に記載の固体形態。
[態様5]
実質的に図1に示すようなXRPDパターンを有する、態様3に記載の固体形態。
[態様6]
温度約266℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有する、態様3~5のいずれか1つに記載の固体形態。
[態様7]
実質的に図2に示すようなDSCサーモグラムを有する、態様3~5のいずれか1つ記載の固体形態。
[態様8]
実質的に図3に示すようなTGAサーモグラムを有する、態様3~5のいずれか1つに記載の固体形態。
[態様9]
形態IIを有する、態様1に記載の固体形態。
[態様10]
2シータに関して、約6.7°、約9.5°、約10.5°、約14.8°、約16.2°、約17.0°、約18.8°、及び約19.3°から選択される3つ以上の特徴的なXRPDピークを有する、態様9に記載の固体形態。
[態様11]
実質的に図4に示すようなXRPDパターンを有する、態様9に記載の固体形態。
[態様12]
温度約268℃の吸熱ピークを特徴とするDSCサーモグラムを有する、態様9~11のいずれか1つに記載の固体形態。
[態様13]
実質的に図5に示すようなDSCサーモグラムを有する、態様9~11のいずれか1つに記載の固体形態。
[態様14]
実質的に図6に示すようなTGAサーモグラムを有する、態様9~11のいずれか1つに記載の固体形態。
[態様15]
態様1~14のいずれか1つに記載の固体形態及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
[態様16]
BETタンパク質を阻害する方法であって、態様1~14のいずれか1つに記載の固体形態または態様15に記載の医薬組成物を前記BETタンパク質と接触させることを含む、前記方法。
[態様17]
BETタンパク質に関連する疾患または病態を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、態様1~14のいずれか1つに記載の固体形態または態様15に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
[態様18]
増殖性疾患を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、態様1~14のいずれか1つに記載の固体形態または態様15に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
[態様19]
前記増殖性疾患ががんである、態様18に記載の方法。
[態様20]
前記がんが血液癌である、態様19に記載の方法。
[態様21]
前記がんが、腺癌、膀胱癌、芽細胞腫、骨癌、乳癌、脳腫瘍、癌腫、骨髄肉腫、子宮頸癌、大腸癌、食道癌、胃腸癌、多形膠芽腫、神経膠腫、胆嚢癌、胃癌、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、腸癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肺癌、リンパ腫、肝臓癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、中皮腫、多発性骨髄腫、AML、DLBCL、眼球癌、視神経腫瘍、口腔癌、卵巣癌、下垂体腫瘍、原発性中枢神経系リンパ腫、前立腺癌、膵癌、咽頭癌、腎細胞癌、直腸癌、肉腫、皮膚癌、脊椎腫瘍、小腸癌、胃癌、T細胞白血病、T細胞リンパ腫、精巣癌、甲状腺癌、咽喉癌、泌尿生殖器癌、尿路上皮癌、子宮癌、腟癌、またはウイルムス腫瘍である、態様19に記載の方法。
[態様22]
前記がんが多発性骨髄腫、AML、またはDLBCLである、態様19に記載の方法。
[態様23]
前記増殖性疾患が非がん性増殖性障害である、態様18に記載の方法。
[態様24]
自己免疫疾患または炎症疾患を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、態様1~14のいずれか1つに記載の固体形態または態様15に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
[態様25]
前記自己免疫疾患または炎症疾患が、アレルギー、アレルギー性鼻炎、関節炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、変形性関節疾患、皮膚炎、臓器拒絶反応、湿疹、肝炎、炎症性腸疾患、多発性硬化症、重症筋無力症、乾癬、敗血症、敗血症症候群、敗血症性ショック、全身性エリテマトーデス、組織移植片拒絶反応、及びI型糖尿病から選択される、態様24に記載の方法。
[態様26]
ウイルス感染を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、態様1~14のいずれか1つに記載の固体形態または態様15に記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、前記方法。
[態様27]
前記ウイルス感染が、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、またはポックスウイルスによる感染である、態様26に記載の方法。
[態様28]
化合物1:
【化23】
の形態Iの調製方法であって、化合物1及び溶媒を含む溶液から形態Iを析出させることを含む、前記方法。
[態様29]
前記溶媒が、メタノール、アセトン、n-ヘプタン、またはそれらの混合物を含む、態様28に記載の方法。
[態様30]
前記析出が、(1)化合物1の前記溶液の温度を低下させること、(2)化合物1の前記溶液を濃縮すること、(3)貧溶媒を化合物1の前記溶液に添加すること、または(4)それらの任意の組み合わせにより行われる、態様28に記載の方法。
[態様31]
形態Iの前記調製が、
(ia)化合物1の前記溶液を温度約50℃~約60℃に加熱すること;
(iia)温度約50℃~約60℃の化合物1の前記溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiia)温度を約55℃~約65℃に維持しながら化合物1の前記低体積溶液に貧溶媒を添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(iva)化合物1の前記温溶液を温度約15℃~約30℃に冷却して形態Iを析出させること、を含む、態様28に記載の方法。
[態様32]
形態Iの前記調製が、
(ib)前記溶液は溶媒としてメタノール及びアセトンを含む、化合物1の前記溶液を温度約50℃~約60℃に加熱すること;
(iib)温度約50℃~約60℃の化合物1の前記溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiib)温度を約55℃~約65℃に維持しながら化合物1の前記低体積溶液にn-ヘプタンを添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(ivb)化合物1の前記温溶液を温度約15℃~約30℃に冷却して形態Iを析出させること、を含む、態様28~31のいずれか1つに記載の方法。
[態様33]
化合物1:
【化24】
の形態IIの調製方法であって、化合物1及び溶媒を含む溶液から形態IIを析出させることを含む、前記方法。
[態様34]
前記溶媒が、テトラヒドロフラン(THF)、アセトン、n-ヘプタン、またはそれらの混合物を含む、態様33に記載の方法。
[態様35]
前記析出が、(1)化合物1の前記溶液の温度を低下させること、(2)化合物1の前記溶液を濃縮すること、(3)貧溶媒を化合物1の前記溶液に添加すること、または(4)それらの任意の組み合わせにより行われる、態様33に記載の方法。
[態様36]
形態IIの前記調製が、
(ic)化合物1の前記溶液を温度約50℃~約60℃に加熱すること;
(iic)温度約50℃~約60℃の化合物1の前記溶液の体積を減少させて、化合物1の低体積溶液を生成すること;
(iiic)温度を約55℃~約65℃に維持しながら化合物1の前記低体積溶液に貧溶媒を添加して、化合物1の温溶液を生成すること;及び
(ivc)化合物1の前記温溶液を温度約15℃~約30℃に冷却して形態IIを析出させること、を含む、態様33に記載の方法。
[態様37]
化合物8:
【化25】
をB1と反応させることを含み、B1が塩基である方法によって、化合物1またはその塩を調製することをさらに含む、態様28~36のいずれか1つに記載の方法。
[態様38]
B1がアルカリ金属水酸化物塩基である、態様37に記載の方法。
[態様39]
化合物8とB1との前記反応が第1の溶媒中で行われる、態様37~38のいずれか1つに記載の方法。
[態様40]
化合物7:
【化26】
を化合物9:
【化27】
とP2及びB2の存在下で反応させることを含み、P2が遷移金属触媒であり、B2が塩基である方法によって、化合物8を調製することをさらに含む、態様37~39のいずれか1つに記載の方法。
[態様41]
化合物8:
【化28】
を調製する方法であって、化合物7:
【化29】
を化合物9:
【化30】
とP2及びB2の存在下で反応させることを含み、P2が遷移金属触媒であり、B2が塩基である、前記方法。
[態様42]
P2がパラジウム触媒である、態様40または41に記載の方法。
[態様43]
B2がアルカリ金属重炭酸塩塩基である、態様40~42のいずれか1つに記載の方法。
[態様44]
化合物7と化合物9との前記反応が第2の溶媒中で行われる、態様40~43のいずれか1つに記載の方法。
[態様45]
化合物6:
【化31】
を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP3及びB3の存在下で反応させることを含み、P3が遷移金属触媒であり、B3が塩基である方法によって、化合物7を調製することをさらに含む、態様40~44のいずれか1つに記載の方法。
[態様46]
化合物7:
【化32】
を調製する方法であって、化合物6:
【化33】
を4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)とP3及びB3の存在下で反応させることを含み、P3が遷移金属触媒であり、B3が塩基である、前記方法。
[態様47]
B3がアルカリ金属酢酸塩塩基である、態様45~46のいずれか1つに記載の方法。
[態様48]
化合物6と4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)との前記反応が第3の溶媒中で行われる、態様45~47のいずれか1つに記載の方法。
[態様49]
化合物6と4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)との前記反応が、温度約70℃~約90℃で行われる、態様45~48のいずれか1つに記載の方法。
[態様50]
化合物6:
【化34】
を化合物15:
【化35】
とP4及びB4の存在下で反応させることを含み、P4が遷移金属触媒であり、B4が塩基である方法によって、化合物8を調製することをさらに含む、態様37~39のいずれか1つに記載の方法。
[態様51]
P4がパラジウム触媒である、態様50に記載の方法。
[態様52]
化合物6と化合物15との前記反応が第4の溶媒中で行われる、態様50~51のいずれか1つに記載の方法。
[態様53]
【化36】
またはその塩である、化合物。
上記の説明から、本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な変形例が当業者に明らかであろう。そのような変形例も、添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されることを意図する。すべての特許、特許出願、及び刊行物を含む、本出願に引用される各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。