(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】複合材料の形成方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/453 20060101AFI20231030BHJP
C04B 35/495 20060101ALI20231030BHJP
H01B 3/12 20060101ALI20231030BHJP
H01B 17/60 20060101ALI20231030BHJP
H01P 1/36 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C04B35/453
C04B35/495
H01B3/12 318Z
H01B3/12 314
H01B3/12 329
H01B3/12 331
H01B17/60 A
H01P1/36 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022120450
(22)【出願日】2022-07-28
(62)【分割の表示】P 2018167099の分割
【原出願日】2018-09-06
【審査請求日】2022-08-16
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503031330
【氏名又は名称】スカイワークス ソリューションズ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SKYWORKS SOLUTIONS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ヒル、 マイケル デビッド
(72)【発明者】
【氏名】チアン、 チエンチョン
(72)【発明者】
【氏名】シャンクワイラー、 ジェフリー アラン
(72)【発明者】
【氏名】コーツ、 ニール ブルース
(72)【発明者】
【氏名】フィラー、 デビッド マーチン
(72)【発明者】
【氏名】クリュックシャンク、 デビッド ボウイ
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-025664(JP,A)
【文献】特開平11-145577(JP,A)
【文献】特表2011-515998(JP,A)
【文献】特開2009-088089(JP,A)
【文献】特表2014-518840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00 - 35/04
C04B 35/053 - 35/106
C04B 35/109 - 35/22
C04B 35/45 - 35/457
C04B 35/547 - 35/553
C04B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線周波数
デバイスにおけるアイソレータ又はサーキュレータとして使用される複合材料を形成する方法であって、
低温焼成可能外側材料を与えることであって、前記低温焼成可能外側材料はガーネット又は灰重石構造を有する
とともに、組成Bi
1-x/2
A
x/2
V
1-x
M
x
O
4
を有し、AはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、MはMo、W、又はこれらの組み合わせであり、xは0~1であることと、
高誘電性内側材料を前記低温焼成可能外側材料
における開口の中に入れることであって、前記高誘電性内側材料は30を上回る誘電率を有することと、
前記低温焼成可能外側材料及び前記高誘電性内側材料を一緒に、650~900℃の温度におい
て共焼成
して前記低温焼成可能外側材料を前記高誘電性内側材料の外側表面まわりに収縮させることと
を含む、方法。
【請求項2】
前記低温焼成可能外側材料は20~80の誘電率を有する、請求項
1の方法。
【請求項3】
前記共焼成によって形成される前記複合材料を含む無線周波数サーキュレータ又はアイソレータを形成することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】
前記共焼成は、接着剤又はのりを使用することなく行われる、請求項1の方法。
【請求項5】
前記低温焼成可能外側材料は700℃を上回る焼結温度を有する、請求項1の方法。
【請求項6】
無線周波数
デバイスにおけるアイソレータ又はサーキュレータとして使用される複合材料を形成する方法であって、
低温焼成可能外側材料を与えることであって、前記低温焼成可能外側材料はガーネット又は灰重石構造を有する
とともに、組成C
2
BiD
2
V
3
O
12
を有し、CはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、DはMg、Zn、Co、Ni、Cu、又はこれらの組み合わせであることと、
高誘電性内側材料を前記低温焼成可能外側材料における開口の中に入れることであって、前記高誘電性内側材料は30を上回る誘電率を有することと、
前記低温焼成可能外側材料及び前記高誘電性内側材料を一緒に650~900℃の温度におい
て共焼成
して前記低温焼成可能外側材料を前記高誘電性内側材料の外側表面まわりに収縮させることと
を含む、方法。
【請求項7】
前記低温焼成可能外側材料は20~80の誘電率を有する、請求項6の方法。
【請求項8】
前記共焼成によって形成される前記複合材料を含む無線周波数サーキュレータ又はアイソレータを形成することをさらに含む、請求項6の方法。
【請求項9】
前記共焼成は、接着剤又はのりを使用することなく行われる、請求項6の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、接着剤を使用することなく形成することができる共焼成可能誘電性材料に関する。
【0002】
いずれかの優先権出願の参照による組み入れ
本願は、2017年9月8日に出願された「低温共焼成可能誘電性材料」との名称の米
国仮出願第62/555,811号の利益を主張する。その全体がここに参照により組み
入れられる。
【背景技術】
【0003】
サーキュレータ及びアイソレータは、高周波(例えばマイクロ波)の無線周波数システ
ムにおいて、信号が一方向に通過するのを許容するが逆方向に反射されたエネルギーに対
しては高度のアイソレーションを与えるべく使用される受動電子デバイスである。サーキ
ュレータ及びアイソレータは一般に、環状誘電性要素の中に同心に配置される円盤形状の
フェライト又は他の強磁性セラミック要素を含む円盤形状アセンブリである。
【0004】
上記複合円盤アセンブリを製造する従来型プロセスが、
図1のフロー図により例示され
る。ステップ12において、誘電性セラミック材料から円筒が形成される。ステップ14
において、(未焼成又は「グリーン」の)円筒がその後、キルンの中で焼成される(一般
には単に「焼成」と称される)。すなわち、セラミック材料は「焼成可能」である。ステ
ップ16において、円筒の外表面がその後、その外径(OD)が、選択された寸法となる
ことを確保するべく機械加工される。アセンブリ要素において精密な寸法を達成すること
が重要なのは、その寸法によりマイクロ波導波路の特性が影響を受けるからである。ステ
ップ18において、円筒の内表面が、内径(ID)が、選択された寸法となることを確保
するべく、同様に機械加工される。加えて、ステップ20において、磁性セラミック材料
からロッドが形成される。ステップ22において、その後ロッドが焼成され、ステップ2
4において、その表面が、選択されたODまで機械加工される。ロッドのODは、円筒の
ODよりもわずかに小さいので、ロッドは、円筒の中に確実に嵌合することができる。ロ
ッドと円筒との良好な接着を促進する密接な嵌合を達成することが理由となって、ロッド
の外表面と円筒の内表面との双方が精密な公差まで機械加工される。
【0005】
重要なことだが、ステップ26において、エポキシ接着剤がロッド及び円筒の一方又は
双方に塗布される。ステップ28において、ロッド・円筒アセンブリを形成するべくロッ
ドが円筒の内側に挿入され、ステップ30により示されるようにエポキシの硬化(硬質化
)が許容される。ステップ32において、ロッド・円筒アセンブリの外表面が再び、精密
なODまで機械加工される。最後に、ステップ34においてロッド・円筒アセンブリがス
ライスされて一定数の円盤アセンブリとなる。すなわち、各円盤アセンブリは、誘電性セ
ラミックリング内に同心に配置された磁性セラミック円盤を含む。各円盤アセンブリは典
型的に、数ミリメートルの厚さとされる。
【0006】
接着を促進するための円筒内表面の機械加工、部品へのエポキシ塗布、エポキシ積載部
品の慎重な取り扱い及び組み付け、並びにエポキシ硬化に関連する時間が、プロセスの非
効率性に寄与してしまう。磁性・誘電性複合円盤アセンブリを製造する高効率の方法を与
えることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第7,687,014号明細書
【文献】米国特許第8,282,763号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0098885号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0016155号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0166763号明細書
【発明の概要】
【0008】
ここに開示されるのは、無線周波数コンポーネントとして使用される複合材料の実施形
態であって、ガーネット又は灰重石構造を有する低温焼成可能外側材料と、当該外側材料
の中に配置された30を上回る誘電率を有する高誘電性内側材料とを含み、当該低温焼成
可能外側材料及び当該高誘電性内側材料は、接着剤又はのりを使用することなく650~
900℃の温度で一緒に共焼成されるように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、リングのような形状とするこ
とができる。いくつかの実施形態において、高誘電性内側材料は、円盤のような形状とす
ることができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、Na0.2Bi0.8Mo0
.4V0.6O4又はNa0.35Bi0.65Mo0.7V0.3O4としてよい。
【0011】
いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、組成Bi1-x/2
A
x/2
V1-xMxO4を有し得る。AはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、MはMo、W、又はこれらの組み合わせであり、xは0~1である。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、20~80の誘電率を有し得る。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、組成C2BiD2V3O12を有し得る。CはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、DはMg、Zn、Co、Ni、Cu、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、BaWO4との化学式を有するタングステン酸バリウムとしてよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、タングステン酸バリウムは、MgAl2O4又はCoA
l2O4により修正され得る。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料はN
a2BiMg2V3O12としてよい。いくつかの実施形態において、高誘電性内側材料
は約35を上回る誘電率を有してよい。
【0013】
ここにさらに開示されるのは、無線周波数デバイスにおけるアイソレータ又はサーキュ
レータとして使用される複合材料を製造する方法の実施形態である。この方法は、ガーネ
ット又は灰重石構造を有する低温焼成可能外側材料を与えることと、当該低温焼成可能外
側材料の開口の中に、30を上回る誘電率を有する高誘電性内側材料を入れることと、接
着剤又はのりを使用することなく当該低温焼成可能外側材料を当該高誘電性内側材料の外
側表面まわりに収縮させるべく、当該低温焼成可能外側材料及び当該高誘電性内側材料を
一緒に650~900℃の温度で共焼成することとを含む。
【0014】
いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、組成Bi1-x/2
A
x/2
V1-xMxO4を有し得る。AはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、MはMo、W、又はこれらの組み合わせであり、xは0~1である。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、組成C2BiD2V3O12を有し得る。CはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、DはMg、Zn、Co、Ni、Cu、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、化学式BaWO4を有するタングステン酸バリウムとしてよい。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料はNa2BiMg2V3O12としてよい。
【0015】
いくつかの実施形態において、方法はさらに、共焼成後の低温焼成可能外側材料及び高
誘電性内側材料をスライスすることも含み得る。
【0016】
さらにここに開示されるのは、無線周波数アイソレータ又はサーキュレータの実施形態
であって、ガーネット又は灰重石構造を有する低温焼成可能外側材料と、当該外側材料の
中に配置された30を上回る誘電率を有する高誘電性内側材料とを含み、当該低温焼成可
能外側材料及び当該高誘電性内側材料は、接着剤又はのりを使用することなく650~9
00℃の温度で一緒に共焼成されるように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、組成Bi1-x/2
A
x/2
V1-xMxO4を有し得る。AはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、MはMo、W、又はこれらの組み合わせであり、xは0~1である。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、組成C2BiD2V3O12を有し得る。CはLi、Na、K、又はこれらの組み合わせであり、DはMg、Zn、Co、Ni、Cu、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、低温焼成可能外側材料は、BaWO4との化学式を有するタングステン酸バリウムとしてよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】先行技術に係る複合磁性・誘電性円盤アセンブリを製作する方法のフロー図を例示する。
【
図2】ここに記載の一以上の特徴を有する材料をどのようにして設計、製作及び使用できるのかを模式的に示す。
【
図4A】矩形柱又は円筒状基板の中にフェライト円筒を有する複合構造の一実施形態を例示する。
【
図4B】フェライト円筒を矩形柱又は円筒状基板の中に有する複合構造の一実施形態を例示する。
【
図6】磁石なしの統合マイクロストリップサーキュレータを例示する。
【
図7】磁石ありの統合マイクロストリップサーキュレータを例示する。
【
図8】通信ネットワークの一例の模式的な図である。
【
図9】キャリアアグリゲーションを使用する通信リンクの一例の模式的な図である。
【
図10A】多入力
多出力(MIMO)通信を使用するダウンリンクチャネルの一例の模式的な図である。
【
図10B】MIMO通信を使用するアップリンクチャネルの一例の模式的な図である。
【
図12】統合マイクロストリップサーキュレータの一実施形態を有するアンテナシステムの模式図を例示する。
【
図13】本開示の複数の実施形態を組み入れるMIMOシステムを例示する。
【
図14】携帯型デバイスの一例の模式的な図である。
【
図15】一実施形態に係る電力増幅器システムの模式的な図である。
【
図16】複合統合マイクロストリップサーキュレータを形成する方法を例示する。
【
図17】試験用の統合マイクロストリップサーキュレータの一実施形態を例示する。
【
図18】本開示の実施形態を組み入れたセルラーアンテナ基地局の斜視図を例示する。
【
図19】開示の材料の実施形態を組み入れた基地局のハウジングコンポーネントを例示する。
【
図20】ここに開示の材料の実施形態を組み入れた基地局において使用されるキャビティフィルタを例示する。
【
図21】ここに開示の材料の実施形態を含む回路基板の一実施形態を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここに開示されるのは、低焼成の誘電性材料の複数の実施形態である。これらの材料は
、アイソレータ及びサーキュレータのアプリケーションのような磁性・誘電性アセンブリ
のための複合体を形成するべく、高誘電性材料とともに共焼成することができる。有利な
ことに、開示の材料の実施形態は、のり、エポキシ又は他の化学接着剤のようないずれの
接着剤も必要とすることなく共焼成することができる。すなわち、本開示の実施形態から
形成される複合物は、のりなし、エポキシなし、化学的付着なし、又は接着剤なしとする
ことができる。すなわち、いくつかの実施形態において、複合アセンブリを形成するとき
に、のり、エポキシ、及び接着剤が使用されることがない。
【0020】
本開示の実施形態によれば、有利なことに、詳しくは3GHz及びこれを上回る周波数
で動作する5Gシステムが、アンテナ、サーキュレータ、増幅器、及び/又は半導体ベー
スの増幅器のような異なるコンポーネントを含み得る統合アーキテクチャを形成すること
が可能となる。これらのコンポーネントの単一基板への統合が許容されることにより、デ
バイスの全体的な小型化を進めることができる。いくつかの実施形態において、開示のデ
バイスは、約1.8GHzから約30GHzの周波数で動作可能とすることができる。い
くつかの実施形態において、開示のデバイスは、約1、2、3、4、5、10、15、2
0又は25GHz超過の周波数で動作可能とすることができる。いくつかの実施形態にお
いて、開示のデバイスは、30、25、20、15、10、5、4、3又は2GHz未満
の周波数で動作可能とすることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、統合アーキテクチャは、標準的なアイソレータよりもそ
れほど大きくないパッケージサイズの方向性結合器及び/又はアイソレータを含み得る。
いくつかの実施形態において、統合アーキテクチャは高電力スイッチを含み得る。誘電性
タイルをインピーダンス変換器用の基板として使用することに加え、誘電性タイルはまた
、結合器、スイッチ及び終端用の基板としても使用することができる。
【0022】
図2は、一以上の化学元素(ブロック1)、化学複合物(ブロック2)、化学物質(ブ
ロック3)及び/又は化学混合物(ブロック4)を、ここに記載の一以上の特徴を有する
一以上の材料(ブロック5)を得るべくどのようにして処理することができるのかを模式
的に示す。いくつかの実施形態において、かかる材料は、所望の誘電特性(ブロック7)
、磁気特性(ブロック8)を含むように構成されたセラミック材料(ブロック6)にする
ことができる。
【0023】
いくつかの実施形態において、上記特性の一以上を有する材料を、無線周波数(RF)
アプリケーションのようなアプリケーション(ブロック10)に実装することができる。
かかるアプリケーションは、デバイス12においてここに記載の一以上の特徴を含み得る
。いくつかのアプリケーションにおいて、かかるデバイスはさらに、製品11に実装する
ことができる。かかるデバイス及び/又は製品の例がここに記載される。
【0024】
マイクロストリップサーキュレータ/アイソレータ
【0025】
サーキュレータは、マイクロ波又は無線周波数(RF)のような異なる信号を送受信で
きる受動マルチポートデバイスである。当該ポートは、サーキュレータへと又はサーキュ
レータから接続される外部導波路又は伝送線路とすることができる。アイソレータは、サ
ーキュレータに類似するが、当該ポートの一以上が遮断され得る。それゆえ、サーキュレ
ータとアイソレータとは、一般的な構造が類似し得ることからここでは、互換可能に使用
することができる。よって、以下の説明はすべて、サーキュレータ及びアイソレータの双
方に当てはまる。
【0026】
マイクロストリップサーキュレータ及びアイソレータは、業界で知られるデバイスであ
り、誘電性フェライト基板のような基板を覆うように堆積された薄膜回路からなる。いく
つかの実施形態において、一以上のフェライト円盤を当該基板に接着することができる。
その後さらに、フェライト円盤を通る信号を循環させるべく磁石が付着される。
【0027】
さらに、全フェライトのマイクロストリップサーキュレータもまた、詳しくはT/Rモ
ジュール用として、使用されている。全フェライトのマイクロストリップサーキュレータ
に回路群をプリントすることができ、頂部に、信号を誘導する磁石を加えることができる
。例えば、フェライト基板上にメタライゼーションパターンが形成される。典型的に、メ
タライゼーションパターンは、中心円盤及び多数の伝送線路からなる。
【0028】
サーキュレータは一般に、共鳴動作領域の上側又は下側のいずれかで動作することがで
きる。これが
図3に示される。いくつかの実施形態において、上側共鳴周波数は、狭帯域
のサブ4GHzサーキュレータにとって有利となり得る。それよりも高い周波数に対して
は、下側共鳴領域が有利となり得る。
【0029】
マイクロストリップサーキュレータは詳しくは、下側共鳴動作領域において動作するの
が典型的である。当該サーキュレータは、例えば六角形フェライトの場合には非常に小さ
い磁石を使用する。すなわち自己バイアスがかかり得る。しかしながら、正方形タイルは
、詳しくは業界で知られる全フェライトマイクロストリップサーキュレータにとって、均
一に磁化することが難しい形状である。すなわち、これらは、低磁場損失領域近くで動作
する。変換器が高損失の未磁化フェライト上に取り付けられると、性能が損なわれる。さ
らに、電力が増加すると、性能の悪化がさらに知られるようになる。したがって、業界で
知られるサーキュレータは、性能損失及び相互変調ひずみ(IMD)並びに電力性能の悪
化につながるフェライトタイルの不良な磁化に起因する問題に悩まされる。
【0030】
共焼成マイクロストリップサーキュレータ/アイソレータ
【0031】
本開示の実施形態によれば、全体的な磁化が改善され、現在知られているマイクロスト
リップサーキュレータに生じ得る性能問題を低減することができる。一般に、マイクロス
トリップサーキュレータは、例えばイットリウム鉄ガーネット(YIG)から作られた酸
化物フェライト円盤のようなフェライト円盤を、誘電性基板に直接組み込むことによって
形成することができる。その組み合わせがその後、共焼成されて硬い複合構造が形成され
る。銀又は他のメタライゼーション物質から形成された付加回路群を加えることができる
。共焼成プロセスがなければ、回路メタライゼーションを適用することができない。本開
示の実施形態により、業界の有意な問題のいくつかを軽減することができる。
【0032】
任意数の異なるフェライト円盤材料を使用することができる。いくつかの実施形態にお
いて、フェライト円盤材料の飽和磁化レベルは、1000~5000(又は約1000~
約5000)ガウスの範囲となり得る。
【0033】
さらに、業界で知られる任意数の異なる誘電性基板も使用することができる。さらに、
誘電体は、誘電性粉末又は低温共焼成セラミック(LTCC)テープから形成することが
できる。いくつかの実施形態において、誘電率は、6、10、15、20、25、30、
40、50又は60を上回るようにすることができる。いくつかの実施形態において、誘
電率は、6~30(又は約6から約30)からの範囲となり得る。いくつかの実施形態に
おいて、誘電率は、約60、50、40、30、25、20、15又は10を下回るよう
にすることができる。
【0034】
詳しくは、
図4A~4Bに示されるように、複合マイクロストリップサーキュレータ1
00を形成するべく、磁性酸化物円盤102又は他の磁性円盤を誘電性基板104の開口
に挿入することができる。いくつかの実施形態において、円盤102は、円筒状ロッドと
なり得る。ただし、この特定の形状に制限されるわけではない。円盤102は、グリーン
でも、事前焼成でも、非事前焼成でもよい。
【0035】
さらに、基板104は一般に、
図4Aに示されるように矩形柱でよいが、
図4Bに示さ
れる円筒のような他の形状も同様に使用することができる。基板104の実施形態は、以
下に詳細に開示される。ひとたび円盤102が基板104の内部に存在すれば、特許文献
1又は2に説明される方法を使用してコンポーネントを一緒に焼成(例えば共焼成)する
ことができる。特許文献1又は2は、その全体がここに参照により組み入れられて以下に
説明される。この共焼成プロセスにより、さらに以下に詳述されるように、基板104は
、円盤102まわりに収縮し、これを、複合構造100を形成するべく接着剤を伴って一
定位置に保持することができる。この複合構造物100はその後スライスされ、
図5A~
5Bに示されるチップ構造物を形成する(
図5Aが矩形柱スライスを示し、
図5Bが円筒
スライスを示す)。しかしながら、いくつかの実施形態において、スライスは行われず、
当該コンポーネントが最終厚さにおいて一緒に共焼成される。いくつかの実施形態におい
て、複数の異なる円盤を、複数の異なる開口において単一の基板の中に挿入することがで
きる。
【0036】
このように、いくつかの実施形態において、磁性酸化物円盤を共焼成して、正方形若しくは矩形の誘電性基板又は任意の他形状の基板にすることができる。当該基板はその後、回路群のような他のコンポーネントのためのプラットフォームとしての役割を果たすことができる。この複合構造物はその後、磁化されて例えばマイクロストリップサーキュレータ及び/又はアイソレータパッケージとしての役割を果たすことができる。または、フェライト円盤は、挿入前に磁化しておくこともできる。いくつかの実施形態において、フェライト円盤は、共焼成ステップに先立って磁化することができる。
【0037】
ひとたび複合構造物が形成されると、当該基板に、付加薄膜回路等のような他のコンポ
ーネントを加えることができる。このように、本開示の実施形態は、標準的なアイソレー
タよりもそれほど大きくはないパッケージサイズの方向性結合器及び/又はアイソレータ
を含み得る統合ソリューションを形成することができる。さらに、有利なことに損失は、
当該レベルの磁場によっては影響を受けず、又は少なくとも低減され得る。いくつかの実
施形態において、開示のサーキュレータは、すべての現行のフェライトマイクロストリッ
プサーキュレータよりも大きくなることがない(さらに、選択されたフェライト/誘電体
の組み合わせに応じて小さくなりえる)。
【0038】
このように、共焼成プロセスを使用して、
図5A~5Bに示されるように、フェライト
円盤を誘電性タイルに組み入れることができる。図に示される薄いフェライト円盤は、業
界で知られる正方形又は他の奇妙な形状の小片よりもはるかに容易に、均一に磁化するこ
とができる。いくつかの実施形態において、誘電性タイルは、約25mm正方形となり得
る。ただし、この特定の寸法に限られるわけではない。これは、3~4(又は約3~約4
)GHzの領域において使用することができる。
【0039】
誘電性タイルを使用してその後、
図6に示されるような変換器を製造することができる
。図示のように、基板104は、他のコンポーネントアタッチメントのために空けられた
スペースを有する。変換器の形成後、
図7に示されるように、小さな磁石のみを当該タイ
ル上に配置しなければならない。すなわち、組み付け時間を、従前に行われていたよりも
かなり短くすることができる。
【0040】
誘電性タイルは、インピーダンス変換器用の基板として使用することに加え、結合器、
スイッチ、終端のための基板としても使用することができる。すなわち、デバイスの全体
的な設置面積を低減する共焼成後に、一定数の他のコンポーネントを当該基板上に加える
ことができる。さらに、回路メタライゼーションも加え得るが、これはデバイスが共焼成
された後に限られる。
【0041】
リング用の低温焼成誘電性材料
【0042】
本開示の実施形態は、例えば、アンテナのような無線周波数コンポーネント用のサーキ
ュレータ/アイソレータの形成を目的とした、磁性材料を使用した共焼成プロセスにとっ
て特に有利となり得る。詳しくは、磁性材料を、低い焼成温度により高誘電性磁性材料と
することができる(例えば低温で焼成可能とすることができる)。
【0043】
具体的には、上記
図4A~4Bに示されるような開示の低温焼成誘電性材料の実施形態
から形成された未焼成リングに(104がリングであり、102がロッドである)、磁性
材料のロッド(又は円盤若しくは正方形のような他の形状)を挿入することができる。リ
ングとロッドとの組み合わせはその後、一緒に共焼成され、当該リングが当該ロッドまわ
りに収縮する。これらの材料は双方とも、「焼成可能」とすることができる。「焼成可能
」とは、これらが、オーブン/キルン/他の加熱デバイスにおいて焼成又は焼結され得る
ことを意味する。いくつかの実施形態において、焼成により、ここで説明されるセラミッ
ク材料のような材料の一以上の特性が変化し得る。すなわち、リング材料及びロッド材料
が、これらの物理特性のいずれかへのマイナスの影響を回避するべく一般に類似する焼成
温度を有することが、有利となり得る。これらのアセンブリの実施形態は、5Gアプリケ
ーションのような無線周波数アプリケーションのためのアイソレータ及び/又はサーキュ
レータとして使用することができる。
【0044】
有利なことに、この共焼成プロセスは、接着剤/エポキシ/のりなしで行うことができ
るので、「のりなしアセンブリ」又は「接着剤なしアセンブリ」とみなすことができる。
リング焼成温度が高すぎると、溶融をもたらし、又は少なくとも内部ロッドの特性をかな
り損なわせ得るが、それゆえ、組み付けの従前の反復は、焼成可能リングを焼成可能ロッ
ドとは別に焼成する。先行技術の方法に対しては、双方のセグメントが別々に焼成され得
る。または、リングを最初に焼成し、その後、リング/ロッドアセンブリが一緒に焼成さ
れる。これらのアプローチはいずれも、リングがロッドまわりに十分に収縮するわけでは
なく、ひいては、リング及びロッドが互いに付着し合うように接着剤又は他の化学的付着
手段が必要とされる。このため、本開示の実施形態は、いずれの接着剤も使用することな
く磁性ロッドまわりに収縮するリング材料とすることができる。これは、リングをロッド
まわりに収縮させることの(摩擦力のような)機械的拘束となって、当該ロッドを当該リ
ング内の一定位置に保持する。
【0045】
接着剤は一定数の欠点を有するので、開示の接着剤なしアセンブリを使用することは有
利となり得る。有利なことに、開示の材料は、ロッド及びリングが一緒に共焼成され得る
ので、そのような接着剤を必要とすることなしに複合構造を形成し得る。例えば、ひとた
び接着剤が存在すると、アセンブリのメタライゼーションは、不可能ではないにしても極
めて難しい。これは、メタライゼーションに必要とされる温度が、接着剤のための使用温
度よりもかなり高くなり、当該接着剤が溶融及び/又は接着剤喪失をもたらすからである
。さらに、接着剤が喪失されると、のり付けされたコンポーネントの性能損失が増加する
。高周波数におけるのり/接着剤の誘電性損失は、磁性又は誘電性材料よりも大きい。す
なわち、有利なことに、開示のアセンブリは接着剤の使用を必要としない。
【0046】
リング内に保持される磁性ロッドとして、以下の材料を使用することができる。具体的
には、リング材料の実施形態は、全体がここに参照により組み入れられる特許文献3に開
示のように、高磁化スピネル(例えばニッケル亜鉛フェライト)ロッドとの共焼成に適し
た、詳しくは高周波数(5G)アプリケーションに適した、低い誘電率(10未満)を有
し得る。これは、Ni1-w-x-y-zZnwCoxMnyCuzFe2O4のような
材料を含み得る。ここで、wは0.2から0.6の範囲であり、x、y及びzはそれぞれ
が0から0.2の範囲であり、aは0から0.2の範囲である。好ましい実装において、
w=0.4725、x=0.0225、y=0.02、z=0、かつa=0.08である
。他の好ましい実装において、w=0.4、x=0.0275、y=0.01、z=0、
かつa=0.08である。一つの実装において、ロッド材料は、式Ni1-x-yZnx
CoyFe2O4により代表され得る。ここで、x=0.2~0.6、及び0<y<0.
2である。
【0047】
さらに、リング内に保持される磁性ロッドとして、以下の材料も使用することができる
。すなわち、開示の低焼成誘電性リング材料の実施形態は、全体がここに参照により組み
入れられる特許文献4に開示のように、高誘電率ロッド材料との共焼成が可能な灰重石又
はガーネット構造を有し得る。高誘電率磁性ロッドは、ビスマス置換高誘電率磁性ガーネ
ットとしてよい。開示の全体がここに参照により組み入れられる「インジウム含有磁性ガ
ーネット材料」との名称で2018年5月7日に出願された米国特許出願第15/972
,617号明細書に開示のような他の材料も使用することができる。ガーネットの例は、
Y3-x-yBixCayZryFe5-yO12を含む。いくつかの実施形態において
、0<x<1.8かつ0<y<1.0である。いくつかの実施形態において、修正された
合成ガーネット組成を、一般組成Y3-x-y-2aBixCay+2aZryInzV
aFe5-y-z-aO12により定義することができる。いくつかの実施形態において
、0<x<1.8、0<y<1.0、0<z <1.0、かつ0<a<1.0である。
【0048】
磁性ロッド材料に関して上に与えられた例は、単なる例であって、他の材料も同様に使
用することができる。いくつかの実施形態において、磁性ロッド材料(例えば高誘電性内
側材料)は、約20、30、35、40又は50の誘電率を有し得る。いくつかの実施形
態において、磁性ロッド材料は、60、50又は40を下回る誘電率を有し得る。
【0049】
上述のように、化学接着剤の使用を回避するべく、上述の磁性ロッド材料のような高磁
性ロッド材料と両立する(例えば焼成/焼結温度が両立する)外側リング材料を使用する
ことは、有利となり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、焼成可能リング材料(例えば低温焼成誘電性材料)は、化学式BiVO4を有するバナジウム酸ビスマスに基づき得る。例えば、当該材料の実施形態は、一般式Bi1-x/2
A
x/2
V1-xMxO4を有し得る。いくつかの実施形態において、xは0~1(又は約0~約1)となり得る。いくつかの実施形態において、0<x<1である。いくつかの実施形態において、xは1と等しくなり得る。Aは、Li、Na、K、又はこれらの組み合わせとなり得る。Mは、Mo、W、又はこれらの組み合わせとなり得る。
【0051】
このリング材料は、900℃を下回る焼結温度、詳しくは650~800℃の焼結温度
(例えば焼成温度)を有し得る。いくつかの実施形態において、材料は、850℃を下回
る焼結温度となり得る。いくつかの実施形態において、材料は、900、850、800
又は750℃を下回る(又は約900、約850、約800若しくは約750℃を下回る
)焼結温度を有し得る。いくつかの実施形態において、材料は、500、550、600
、650又は700℃を上回る(又は約500、約550、約600、約650若しくは
約750℃を上回る)焼結温度を有し得る。
【0052】
さらに、リング材料の実施形態は、20~80(又は約20~約80)又は20~70
(又は約20~約70)の誘電率範囲を有し得る。いくつかの実施形態において、材料は
、10、20、30、40、50、60又は70を上回る(又は約10、20、30、4
0、50、60若しくは70を上回る)誘電率を有し得る。いくつかの実施形態において
、材料は、80、70、60、50、40、30又は20を下回る(又は約80、70、
60、50、40、30若しくは20を下回る)誘電率を有し得る。
【0053】
代替実施形態において、リング材料は、組成C2BiD2V3O12を有し得る。Cは
、Li、Na、K、又はこれらの組み合わせとなり得る。Dは、Mg、Zn、Co、Ni
、Cu、又はこれらの組み合わせとなり得る。この組成はガーネット構造を有し得る。
【0054】
このリング材料は、900℃を下回る焼結温度、詳しくは650~800℃の焼結温度
を有し得る。いくつかの実施形態において、材料は、850℃を下回る焼結温度となり得
る。いくつかの実施形態において、材料は、900、850、800又は750℃を下回
る(又は約900、約850、約800若しくは約750℃を下回る)焼結温度を有し得
る。いくつかの実施形態において、材料は、500、550、600、650又は700
℃を上回る(又は約500、約550、約600、約650若しくは約750℃を上回る
)焼結温度を有し得る。
【0055】
さらに、リング材料の実施形態は、10~30(又は約10~約30)の誘電率範囲を
有し得る。いくつかの実施形態において、材料は、10、15、20、25又は30を上
回る(又は約10、15、20、25若しくは30を上回る)誘電率を有し得る。いくつ
かの実施形態において、材料は、30、25、20、15又は10を下回る(又は約30
、25、20、15若しくは10を下回る)誘電率を有し得る。
【0056】
代替実施形態において、リング材料はNa2BiMg2V3O12としてよい。この材
料は、25(又は約25)の誘電率を有し得る。
【0057】
この材料は、900℃を下回る焼結温度、詳しくは650~800℃の焼結温度を有し
得る。いくつかの実施形態において、材料は、850℃を下回る焼結温度を有し得る。い
くつかの実施形態において、材料は、900、850、800又は750℃を下回る(又
は約900、約850、約800若しくは約750℃を下回る)焼結温度を有し得る。い
くつかの実施形態において、材料は、500、550、600、650又は700℃を上
回る(又は約500、約550、約600、約650若しくは約750℃を上回る)焼結
温度を有し得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、結合剤を、上記開示のリング材料組成の中にブレンドし
てよい。例えば、結合剤は、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリエチレングリコー
ル(PEG)の単独又は組み合わせとなり得る。しかしながら、結合剤のタイプは限られ
るわけではない。例えば、結合剤は、組成全体の2%レベルとして導入してよい。
【0059】
以下の表Iは、有利なことに外側リング材料として使用することができる一定数の材料
の焼成温度及び誘電率を与える。すなわち、いくつかの実施形態において、外側リング材
料は灰重石構造を有し得る。
【表1】
【0060】
いくつかの実施形態において、タングステン酸バリウムは、外側リングのための低温焼
成誘電性材料として使用することができる。タングステン酸バリウムは、式BaWO4を
有して灰重石構造を形成することができる。さらに、タングステン酸バリウムを主要成分
として備えた固溶体も使用することができる。これは詳しくは、上述のような、リチウム
フェライト又はニッケル亜鉛フェライトのような高磁化スピネルとともに焼成する低誘電
率共焼成可能材料として使用することができる。この材料を使用することは、モーディン
グを回避する上で、及び高周波数においても必要な薄い基板のインピーダンス効果をオフ
セットする上で、有利となり得る。
【0061】
これは、高周波マイクロストリップ又は表面統合導波路設計にとって特に有用となり得
る。
【0062】
いくつかの実施形態において、タングステン酸バリウムは、フェライトの熱膨張性を修
正するべくMgAl2O4又はCoAl2O4によって修正することができる。しかしな
がら、この修正もまた、上述のようなリング材料のいずれかによって行うことができる。
例えば、これらの組成は、上述のような外側リング材料の焼結に先立って混合することが
できる。フェライト外側リングの熱膨張が、誘電性磁性ロッドに密接に整合することは有
利となり得る。
【0063】
以下の表IIは、外側リング材料として有利な材料の例、及びその固有特性を示す。
【表2】
【0064】
いくつかの実施形態において、上に開示のリング材料は、10未満(又は約10未満)のε’又は誘電率を有し得る。すなわち、本開示の実施形態は、5Gを下回る共鳴アプリケーションのために使用することができる。これは、モーディングを回避する上で、及び高周波数でも使用される薄い基板のインピーダンス効果をオフセットする上で、有利となり得る。したがって、10を下回る(又は約10を下回る)値が、20GHzを上回る周波数に対して使用される。
【0065】
5Gアプリケーション
【0066】
開示の複合マイクロストリップサーキュレータの実施形態は、第5世代無線システム(
5G)アプリケーションにとって特に有利となり得る。ただし、初期の4G及び3Gアプ
リケーションに対しても使用することができる。5G技術はまた、ここでは5Gニューラ
ジオ(NR)とも称される。5Gネットワークは、一エリアに多数の消費者を許容するこ
とができる現行の4Gシステムよりも有意に高い容量を与えることができる。これはさら
に、アップロード/ダウンロードの制限及び要件を改善することができる。詳しくは、こ
こに記載されるもののような、5Gに必要とされる多数のサーキュレータ(典型的にはフ
ロントエンドモジュールすなわちFEM当たり一つ)には、さらなるコンポーネント統合
が必要となる。開示のサーキュレータの実施形態は、この統合を許容するので、特に有利
となり得る。フロントエンドモジュールにおける他のコンポーネントは、マイクロストリ
ップ又はSMTベースとなる。ここでの材料とともに使用することができる統合マイクロ
ストリップサーキュレータの例は、全体が参照により組み入れられる特許文献5に開示さ
れている。
【0067】
5G NRの予備仕様は、ミリ波スペクトル、ビーム形成能力、高スペクトル効率波形
、低遅延通信、マルチ無線ニューメロロジー(multiple radio nume
rology)、及び/又は非直交多元接続(NOMA)による通信のような様々な特徴
をサポートする。かかるRF機能により、ネットワークに柔軟性が与えられ、ユーザデー
タ転送速度が高められるにもかかわらず、かかる特徴をサポートすることは、一定数の技
術的課題を引き起こす。
【0068】
ここでの教示は、LTEアドバンスト、LTEアドバンストプロ、及び/又は5G N
Rのようなアドバンストセルラー技術を使用する通信システムを含むがこれらに限られな
い広範な通信システムに適用可能である。
【0069】
図8は、通信ネットワーク410の一例の模式的な図である。通信ネットワーク410
は、マクロセル基地局401、携帯型デバイス402、スモールセル基地局403及び静
止型無線デバイス404を含む。
【0070】
図8の例示の通信ネットワーク410は、例えば、4G LTE、5G NR、及びW
i-Fiのような無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)を含む様々な技術を使用
する通信をサポートする。サポートされる通信技術の様々な例が示されるにもかかわらず
、通信ネットワーク410は、広範な通信技術をサポートするべく適合することができる
。
【0071】
通信ネットワーク410の様々な通信リンクが
図8に描かれる。通信リンクは、例えば
、周波数分割複信(FDD)及び/又は時分割複信(TDD)の使用を含む広範な態様で
二重化することができる。FDDは、信号の送受信に異なる周波数を使用する一タイプの
無線周波数通信である。FDDは、高データ転送速度及び低遅延のような一定数の利点を
与え得る。それとは対照的に、TDDは、信号の送受信にほぼ同じ周波数を使用する一タ
イプの周波数通信であり、送受信通信が時間でスイッチングされる。TDDは、スペクト
ルの効率的な使用、並びに送信方向及び受信方向間でのスループットの可変割り当てのよ
うな、一定数の利点を与え得る。
【0072】
図8に示されるように、携帯型デバイス402は、4G LTE技術と5G NR技術
との組み合わせを使用する通信リンクを介してマクロセル基地局401と通信する。携帯
型デバイス402はまた、本開示の実施形態を含み得るスモールセル基地局403とも通
信する。図示の例において、携帯型デバイス402とスモールセル基地局403とは、5
G NR技術、4G LTE技術、及びWi-Fi技術を使用する通信リンクを介して通
信する。
【0073】
所定の実装において、携帯型デバイス402は、6ギガヘルツ(GHz)未満の一以上
の周波数帯域を介する5G NR技術を使用してマクロセル基地局402及びスモールセ
ル基地局403と通信する。一つの実施形態において、携帯型デバイス402は、HPU
E電力クラス仕様をサポートする。
【0074】
本開示の実施形態を組み入れる例示のスモールセル基地局403はまた、静止型無線デ
バイス404とも通信する。スモールセル基地局403は、例えば、6GHzを上回る一
以上の周波数帯域を介する5G NR技術を使用する広帯域サービスを与えるように使用
することができる。その周波数帯域は、例えば、30GHz~300GHzの周波数範囲
にあるミリ波帯域を含む。
【0075】
所定の実装において、スモールセル基地局403は、ビームフォーミングを使用して静
止型無線デバイス404と通信する。例えば、ビームフォーミングは、ミリ波周波数を介
する通信に関連する高損失のような経路損失を克服するべく、信号強度を集中させるよう
に使用することができる。
【0076】
図8の通信ネットワーク410は、本開示の実施形態を含み得るマクロセル基地局40
1と、スモールセル基地局403とを含む。所定の実装において、スモールセル基地局4
03は、マクロセル基地局401と比べて相対的に低い電力、短い範囲、及び/又は少な
い同時ユーザで動作することができる。スモールセル基地局403はまた、フェムトセル
、ピコセル又はマイクロセルと称することもある。
【0077】
通信ネットワーク410が2つの基地局を含むように例示されるにもかかわらず、通信
ネットワーク410は、2つ以下の基地局及び/又は他のタイプの基地局を含むように実
装することもできる。
【0078】
図8の通信ネットワーク410は、一つの携帯型デバイス及び一つの静止型無線デバイ
スを含むように例示される。携帯型デバイス402及び静止型無線デバイス404は、ユ
ーザデバイス又はユーザ機器(UE)の2つの例を示す。通信ネットワーク410が2つ
のユーザデバイスを含むように例示されるにもかかわらず、通信ネットワーク410は、
2つ以下のユーザデバイス及び/又は他のタイプのユーザデバイスと通信するように使用
することができる。例えば、ユーザデバイスは、携帯型電話機、タブレット、ノートパソ
コン、IoTデバイス、装着可能電子機器、及び/又は広範な他の通信デバイスを含み得
る。
【0079】
通信ネットワーク410の複数のユーザデバイスは、利用可能なネットワークリソース
(例えば利用可能な周波数スペクトル)を広範な態様で共有する。
【0080】
高度携帯型ブロードバンド(eMBB)が、LTEネットワークのシステム容量を高め
る技術を言及する。例えば、eMBBは、各ユーザデバイスに対してピークデータ転送速
度が少なくとも10Gbpsかつ最小でも100Mbpsとなる通信を言及し得る。超高
信頼性低遅延通信(uRLLC)が、例えば2ms未満のような非常に低い遅延の通信技
術を言及する。uRLLCは、例えば自律走行及び/又は遠隔手術のようなアプリケーシ
ョンにとっての基幹通信に使用することができる。大量マシンタイプ通信(mMTC)が
、例えばモノのインターネット(IoT)アプリケーションに関連付けられたもののよう
な、日常的な物体との無線接続に関連付けられた低コストかつ低データ転送速度の通信を
言及する。
【0081】
図8の通信ネットワーク410は、eMBB、uRLLC及び/又はmMTCを含むが
これらに限られない広範なアドバンスト通信の特徴をサポートするように使用することが
できる。
【0082】
通信リンク(例えば基地局及びユーザデバイス間)のピークデータ転送速度は、様々な
因子に依存する。例えば、ピークデータ転送速度は、通信に使用されるチャネル帯域幅、
変調次数、一定数のコンポーネントキャリア、及び/又は一定数のアンテナにより影響を
受ける。
【0083】
例えば、所定の実装において、通信リンクのデータ転送速度はM*B*log2(1+
S/N)にほぼ等しくなり得る。ここで、Mは通信チャネルの数、Bはチャネル帯域幅、
及びS/Nは信号雑音比(SNR)である。
【0084】
したがって、通信リンクのデータ転送速度は、通信チャネルの数を増やすことにより(
例えば多数のアンテナを使用する送受信)、広い帯域幅を使用することにより(例えばキ
ャリアのアグリゲーションにより)、及び/又はSNRを改善することにより(例えば送
信電力の増加、及び/又は受信器感度の改善により)、増加させることができる。
【0085】
5G NR通信システムは、データ転送速度及び/又は通信性能を向上させるべく広範
な技法を用いることができる。
【0086】
図9は、キャリアアグリゲーションを使用する通信リンクの一例の模式的な図である。
キャリアアグリゲーションは、多数の周波数キャリアを介した通信をサポートすることに
より、通信リンクの帯域幅を広げるように使用することができる。フラグメント化された
スペクトル割り当てを利用することにより、ユーザデータ転送速度が増加し、ネットワー
ク容量が向上する。
【0087】
図示の例において、通信リンクは、基地局421と携帯型デバイス422との間に設け
られる。
図9に示されるように、通信リンクは、基地局421から携帯型デバイス422
へのRF通信を目的として使用されるダウンリンクチャネルと、携帯型デバイス422か
ら基地局421へのRF通信を目的として使用されるアップリンクチャネルとを含む。
【0088】
図9がFDD通信の文脈でのキャリアアグリゲーションを例示するにもかかわらず、キ
ャリアアグリゲーションはまた、TDD通信に対しても使用することができる。
【0089】
所定の実装において、通信リンクが、ダウンリンクチャネル及びアップリンクチャネル
に対して非対称なデータ転送速度を与えることができる。例えば、携帯型デバイスへのマ
ルチメディアコンテンツの高速ストリーミングを可能にする相対的に高いダウンリンクデ
ータ転送速度をサポートする一方、携帯型デバイスからクラウドへのデータアップロード
には相対的に遅いデータ転送速度を与えるように、通信リンクを使用することができる。
【0090】
図示の例において、基地局421と携帯型デバイス422とは、通信リンクの帯域幅を
選択的に増加させるべく使用可能なキャリアアグリゲーションを介して通信する。キャリ
アアグリゲーションは、同じ動作周波数帯域内の隣接するキャリアが集約される隣接アグ
リゲーションを含む。キャリアアグリゲーションはまた、非隣接となって、共通の帯域又
は異なる帯域の中で周波数が分離されたキャリアを含み得る。
【0091】
図9に示される例において、アップリンクチャネルは、3つの集約されたコンポーネン
トキャリアf
UL1、f
UL2及びf
UL3を含む。それに加え、ダウンリンクチャネル
は、5つの集約されたコンポーネントキャリアf
DL1、f
DL2、f
DL3、f
DL4
及びf
DL5を含む。コンポーネントキャリアアグリゲーションの一例が示されるにもか
かわらず、アップリンク及び/又はダウンリンクに対し、それよりも多い又は少ないキャ
リアを集約してもよい。さらに、一定数の集約されたキャリアは、所望のアップリンク及
びダウンリンクデータ転送速度を達成するべく経時的に変化し得る。
【0092】
例えば、特定の携帯型デバイスに対するアップリンク及び/又はダウンリンク通信のた
めの一定数の集約されたキャリアは、経時的に変化し得る。例えば、集約されたキャリア
の数は、デバイスが通信ネットワークを通って移動するにつれ、及び/又はネットワーク
利用が経時的に変化するにつれ、変化し得る。
【0093】
図9を参照すると、キャリアアグリゲーションにおいて使用される個別のコンポーネン
トキャリアが、例えば同じ帯域に又は多数帯域にある周波数キャリアを含む様々な周波数
をとり得る。それに加え、キャリアアグリゲーションは、個別のコンポーネントキャリア
が異なる帯域幅を有する実装と同様、個別のlコンポーネントキャリアがほぼ同じ帯域幅
をとる実装に適用可能である。
【0094】
図10Aは、多入力
多出力(MIMO)通信を使用するダウンリンクチャネルの一例の模式的な図である。
図10Bは、MIMO通信を使用するアップリンクチャネルの一例の模式的な図である。
【0095】
MIMO通信は、共通の周波数スペクトルを介して多数のデータストリームと同時に通
信するべく多数のアンテナを使用する。所定の実装において、データストリームは、受信
器におけるデータ受信を向上させるべく異なる基準信号を使用して動作する。MIMO通
信は、無線環境の差異を空間多重化することに起因する高いSNR、改善された符号化、
及び/又は低減された信号干渉による利益を受ける。
【0096】
MIMO次数とは、送信又は受信される一定数の別個のデータストリームのことをいう
。例えば、ダウンリンク通信に対するMIMO次数は、基地局の一定数の送信アンテナと
、携帯型デバイスのようなUEに対する一定数の受信アンテナとによって記述することが
できる。例えば、ツーバイツー(2×2)DL MIMOは、2つの基地局アンテナ及び
2つのUEアンテナを使用したMIMOダウンリンク通信のことをいう。それに加え、フ
ォーバイフォー(4×4)DL MIMOは、4つの基地局アンテナ及び4つのUEアン
テナを使用したMIMOダウンリンク通信のことをいう。
【0097】
図10Aに示される例において、ダウンリンクMIMO通信は、基地局41のMアンテ
ナ443a、443b、443c、…443mを使用した送信と、携帯型デバイス442
のNアンテナ444a、444b、444c、…444nを使用した受信とによって与え
られる。したがって、
図10Aは、M×NのDL MIMOの一例を示す。
【0098】
同様に、アップリンク通信のMIMO次数は、携帯型デバイスのようなUEの一定数の
送信アンテナと、基地局の一定数の受信アンテナとによって記述することができる。例え
ば、2×2のUL MIMOは、2つのUEアンテナ及び2つの基地局アンテナを使用し
たMIMOアップリンク通信のことをいう。それに加え、4×4のUL MIMOは、4
つのUEアンテナ及び4つの基地局アンテナを使用したMIMOアップリンク通信のこと
をいう。
【0099】
図10Bに示される例において、アップリンクMIMO通信は、携帯型デバイス442
のNアンテナ444a、444b、444c、…444nを使用した送信と、基地局44
1のMアンテナ443a、443b、443c、…443mを使用した受信とによって与
えられる。したがって、
図10Bは、N×MのUL MIMOの一例を示す。
【0100】
MIMOのレベル又は次数を増加させることにより、アップリンクチャネル及び/又は
ダウンリンクチャネルの帯域幅が増加し得る。
【0101】
FDDの文脈において例示されるにもかかわらず、MIMO通信はまた、TDDを使用
する通信リンクにも適用可能である。
【0102】
これらの5Gネットワークに対し、一形態の基地局が大量の多入力多出力(MIMO)
ベースとなり、恐らくは64~128個のアンテナのアレイが、非常に高いデータ転送速
度で扱われる端末と相互作用をする多ビームフォーミングを可能とする。すなわち、本開
示の実施形態は、高容量アプリケーションを与えるべく基地局に組み入れることができる
。
【0103】
このアプローチは、各アンテナ要素に対して個別の送受信器を備えたレーダーフェーズ
ドアレイT/Rモジュールに類似する。ただし、大量MIMOは、レーダー検知の点では
フェーズドアレイではない。目的は、方向の発見というよりはむしろ、端末における最適
なコヒーレント信号強度にあるからである。さらに、信号分離は、Tx信号とRx信号と
を分離するべく二重化/スイッチング手段を必要とする時分割(TD)ベースとなる。
【0104】
説明を目的として、アンテナごとに一つのTx、一つのRxモジュール、一つの二重化
サーキュレータ、及び一つのアンテナフィルタが存在することを仮定する。しかしながら
、他の構成も同様に使用することができる。
【0105】
図8は、ドライバ及びスイッチングロジックを省いたRF送信システムの単純化された
バージョンを示す。図示のように、システムは、サーキュレータを含む一定数の異なるコ
ンポーネントを含み得る。すなわち、本開示の実施形態は、新たに作られたシステムのた
めの、又は従前のシステムの改善置換品としてのいずれかで、RFシステムにおけるサー
キュレータとして使用することができる。具体的には、本開示の実施形態は、ストリップ
線路サーキュレータと、残りのコンポーネントに対するマイクロストリップ又はストリッ
プ線路トポロジーとを使用するハイブリッドソリューションに関する。
【0106】
図9は、単純化されたRFアンテナ構造について上述した
図5A~5Bの統合コンポー
ネントを例示する。図示のように、基板は、サーキュレータのための共焼成フェライト/
誘電性タイルを含み得る。加えて、結合器、スイッチ及び負荷もまた、フェライトの外側
にある誘電性タイルに適用することができる。導体及びグランド板は厚膜銀の中に存在し
てよい。いくつかの実施形態において、サーキュレータサブアセンブリはまた、電力増幅
器(PA)及びラウドノイズ増幅器(LNA)モジュールとともに統合することもできる
。
【0107】
本開示の実施形態は、業界で知られるサーキュレータに対して利点を有し得る。例えば
、
・結合器及び他の伝送線路の性能損失が、半導体結合器のような他の結合器と比べ、かな
り低くなり、
・結合が一貫したものとなり、
・負荷が、ソフト基板と比べ、容易に放熱することができ、
・サーキュレータの損失が、全フェライト基板ベースのデバイスよりも低くなり、
・誘電体が温度安定的となって、結合器及びサーキュレータの性能を補助し、
・デバイスのサイズが、必要に応じて高誘電率セラミック誘電体を使用することによって
低減される。
【0108】
さらに、セラミックサーキュレータの実施形態は、以下の利点を有し得る。
・PA及び負荷の熱/電力の放散/熱伝導性
・結合器/フィルタ設計の等方的な誘電性(TTBを除く)
・サイズ低減のための誘電率範囲(4~100+)
・低い誘電性損失(結合器/フィルタ)
・緊密な誘電率公差(結合器/フィルタ/アンテナ)
・温度に対して安定した誘電率(結合器/フィルタ/サーキュレータ)
・控えめなコスト
【0109】
他方、ソフト基板(例えばソフトボード)は以下の不利点を有し得る。
・プラスチック導体ゆえの低い伝導性
・非等方性(xy対z方向)
・3~10だけのものもあれば、固定のものもある
・高い損失
・緩い公差
・温度に対する不安定性
【0110】
したがって、本開示の実施形態は、業界で従前に周知のサーキュレータに対して有意な
利点を有し得る。
【0111】
図13は、開示のマイクロストリップサーキュレータを組み入れることができるMIM
Oシステムの他の実施形態を例示する。5Gシステムに対する大量MIMOの出現により
、現行のアンテナは、例えば64個のアレイ要素を有するアンテナアレイによって置換さ
れる。各要素は、
図11及び12に示されるブロックを含む別個のフロントエンドモジュ
ール(FEM)により供給することができる。ここで、共焼成タイル上に形成されたマイ
クロストリップサーキュレータの実施形態は、統合コンポーネントとすることができる。
【0112】
図14は、携帯型デバイス800の一例の模式的な図である。携帯型デバイス800は
、ベース帯域システム801、送受信器802、フロントエンドシステム803、アンテ
ナ804、電力管理システム805、メモリ806、ユーザインタフェイス807及び電
池808を含み、ここに開示のマイクロストリップサーキュレータの実施形態を含む基地
局と相互作用をし得る。
【0113】
携帯型デバイス800は、2G、3G、4G(LTE、LTEアドバンスト及びLTE
アドバンストプロを含む)、5G NR、WLAN(例えばWi-Fi)、WPAN(例
えばブルートゥース(登録商標)、ジグビー(登録商標))、及び/又はGPS技術を含
むがこれらの限られない広範な通信技術を使用した通信のために使用することができる。
【0114】
送受信器802は、送信のためのRF信号を生成し、アンテナ804から受信した入来
RF信号を処理する。理解されることだが、RF信号の送信及び受信に関連付けられた様
々な機能は、送受信器802として
図14に集合的に表された一以上のコンポーネントに
よって達成することができる。一例において、所定タイプのRF信号を扱うべく、別個の
コンポーネント(例えば別個の回路又はダイ)を与えることができる。
【0115】
所定の実装において、携帯型デバイス800は、キャリアアグリゲーションをサポート
することにより、ピークデータ転送速度を増加させる柔軟性を与える。キャリアアグリゲ
ーションは、周波数分割複信(FDD)及び時分割複信(TDD)の双方のために使用す
ることができ、複数のキャリア又はチャネルを集約するべく使用することができる。キャ
リアアグリゲーションは、同じ動作周波数帯域内の隣接するキャリアが集約される隣接ア
グリゲーションを含む。キャリアアグリゲーションはまた、非隣接となって、共通の帯域
又は異なる帯域の中で周波数が分離されたキャリアを含み得る。
【0116】
アンテナ804は、広範なタイプの通信のために使用されるアンテナを含み得る。例え
ば、アンテナ804は、広範な周波数及び通信規格に関連付けられた信号の送信及び/又
は受信に関連付けられたアンテナを含み得る。
【0117】
所定の実装において、アンテナ804は、MIMO通信及び/又はスイッチトダイバー
シティ通信をサポートする。例えば、MIMO通信は、単一の無線周波数チャネルを介し
て多数のデータストリームを通信するべく多数のアンテナを使用する。MIMO通信は、
無線環境の差異を空間多重化することに起因する高い信号雑音比、改善された符号化、及
び/又は低減された信号干渉による利益を受ける。スイッチトダイバーシティとは、特定
の時刻に動作することを目的として特定のアンテナが選択される通信のことをいう。例え
ば、観測されたビット誤り率及び/又は信号強度インジケータのような様々な因子に基づ
いて、一群のアンテナから特定のアンテナを選択するべく、スイッチを使用することがで
きる。
【0118】
図15は、一つの実施形態に係る電力増幅器システム840の模式的な図である。例示
の電力増幅器システム840は、ベース帯域プロセッサ821、送信器822、電力増幅
器(PA)823、方向性結合器824、帯域通過フィルタ825、アンテナ826、P
Aバイアス制御回路827、及びPA供給制御回路828を含む。例示の送信器822は
、I/Q変調器837、混合器838、及びアナログデジタル変換器(ADC)839を
含む。所定の実装において、送信器822は、送信及び受信双方の機能が与えられるよう
に送受信器に含まれる。開示のマイクロストリップサーキュレータの実施形態は、電力増
幅器システムに組み入れることができる。
【0119】
方法論
【0120】
ここに開示されるのは、統合マイクロストリップコンポーネントを作るプロセスの実施
形態である。
図16は、使用可能なプロセス300の一実施形態を開示する。
【0121】
図16を参照すると、ステップ302において、フェライト円盤又は円筒を、かかる要
素、すなわち高周波数電子コンポーネントにおいて使用されるタイプの磁性酸化物、を作
る上で業界で知られる任意の適切な従来型プロセスにより、磁性セラミック材料から形成
することができる。同様に、ステップ304において、任意の適切な従来型プロセスによ
り誘電性材料から基板を形成することができる。いくつかの実施形態において、フェライ
ト円盤は、キルンにおいて焼成することにより焼結され得る。材料及び焼成温度のいくつ
かの例が、このプロセスフローの記載に従って以下に記載される。しかしながら、本発明
に関する当業者は、本タイプの磁性セラミック及び誘電性セラミック要素が作られる材料
及びプロセスが、業界周知であることを理解している。したがって、適切な材料及び温度
は網羅的に挙げられてはいない。本タイプのロッド、円筒及び同様の要素を作る上で適切
な材料及びプロセスすべてが、本発明の範囲内に存在することが意図される。
【0122】
ステップ306において、円盤を、開口を備えた誘電性基板に組み合わせることができ
る。例えば、円盤の外表面は、基板開口の内径(ID)のよりも小さい外径(OD)とな
ることを確保するべく機械加工することができる。いくつかの実施形態において、円盤が
基板の中に挿入され得るようにODはIDよりもわずかに小さくされる。
【0123】
いくつかの実施形態において、事前焼成円盤が、
図4A~4Bに示される複合アセンブ
リ100を形成するべく、未焼成基板すなわち「グリーン」基板に受容され得る。
【0124】
ステップ308において、円盤及び基板が共焼成され得る。すなわち、複合アセンブリ
100が焼成される。共焼成温度は、円盤が焼成された温度よりも低くして当該円盤の物
理的及び電気的特性が不変のままとなることを確保することができる。共焼成温度は、か
かるコンポーネントが従来のように焼成される周知の範囲内としてよい。重要なことであ
るが、共焼成により基板は、円盤まわりに収縮するので、双方が一緒になるように固定さ
れる。その後、複合アセンブリ100の外表面を機械加工し、当該外表面が、特定された
又はそうでなければ予め決められたODとなることを確保することができる。さらに、こ
のステップは、フェライト円盤が従前に磁化されていない場合に複合アセンブリ100を
メタライズ及び/又は磁化するべく使用することもできる。
【0125】
ステップ310及び312は、複合アセンブリ100の共焼成後にとられ得るオプショ
ンのステップを示す。例えば、最終的な電子コンポーネントを形成するべく、回路群のよ
うな付加的コンポーネントを基板に加えることができる310。さらに、いくつかの実施
形態において、複合アセンブリ100をスライスし312、又はそうでなければパーティ
ション分けして一定数の別々のアセンブリを形成することもできる。いくつかの実施形態
において、これらのオプションのステップを双方とも行うことができ、その特定の順番に
は限られない。いくつかの実施形態において、オプションのステップの一つのみがとられ
てもよい。いくつかの実施形態において、オプションのステップがいずれもとられなくて
もよい。
【0126】
したがって、複合アセンブリ100は、高周波数電子コンポーネントを製造するときに
、従来製造されていたこのタイプのアセンブリと同じ態様で使用することができる。しか
しながら、本発明の方法は従来型の方法よりも経済的である。本発明は接着剤の使用に関
与しないからである。
【0127】
図17は、ここで使用される円盤としてのサーキュレータの実施形態の一例を示す。厚
膜銀を回路としてプリントすることができる。標準的なサーキュレータアプリケーション
によれば、サーキュレータはポート1、ポート2及びポート3を含む。これらのポートの
一つを遮断してアイソレータを形成することができる。
【0128】
遠隔通信基地局
【0129】
ここに記載の一以上の特徴を有する回路及びデバイスは、無線基地局のようなRFアプ
リケーションに実装することができる。かかる無線基地局は、RF信号の送信及び/又は
受信を容易にするべく構成された一以上のアンテナを含み得る。かかるアンテナは、ここ
に記載される一以上のサーキュレータ/アイソレータを有する回路及びデバイスに結合す
ることができる。
【0130】
すなわち、いくつかの実施形態において、上記開示の材料は、例えばセルラーネットワ
ーク及び無線通信のために使用される遠隔通信基地局の異なるコンポーネントに組み入れ
ることができる。基地局2000の斜視図の一例が
図18に示される。これは、セルタワ
ー2002及び電子機器建屋2004の双方を含む。セルタワー2002は、サービスを
最適化するべく異なる方向を向くのが典型的な一定数のアンテナ2006を含み得る。ア
ンテナ2006がセルラー信号の受信及び送信双方に使用することができる一方、電子機
器建屋2004は、以下に説明されるフィルタ、増幅器等のような電子コンポーネントを
保持することができる。アンテナ2006及び電子コンポーネントは双方ともが、開示の
セラミック材料の実施形態を組み入れることができる。
【0131】
図19は基地局2010を示す。基地局は、RF信号の送信及び/又は受信を容易にす
るべく構成されたアンテナを含み得る。かかる信号は、送受信器によって生成され及び/
又は処理され得る。送信を目的として、送受信器は送信信号を生成することができる。そ
の送信信号は、電力増幅器(PA)により増幅され、アンテナによる送信を目的としてフ
ィルタリング(Txフィルタ)される。受信を目的として、アンテナから受信された信号
がフィルタリング(Rxフィルタ)され、ローノイズ増幅器(LNA)により増幅された
後、送受信器へと送られる。かかるTx経路及びRx経路の文脈の例において、ここに記
載の一以上の特徴を有するサーキュレータ及び/又はアイソレータは、例えばPA回路及
びLNA回路に実装し、又はこれらに接続することができる。サーキュレータ及びアイソ
レータは、ここに開示の材料の実施形態を含み得る。さらに、アンテナは、その高い周波
数範囲での作動を許容するここに開示の材料を含み得る。
【0132】
図20は、電子機器建屋2004において使用可能であって、
図12に関連して上述し
たコンポーネントを含み得るハードウェア2020を例示する。例えば、ハードウェア2
020は、携帯型システムのためのトラフィック及びシグナリングを扱うことができる基
地局サブシステム(BSS)としてよい。
【0133】
図21は、上述したハードウェア2020のさらなる詳細を例示する。具体的には
図2
1は、基地局に組み入れることが可能なキャビティフィルタ/結合器3002を有する回
路ボード3004を描く。キャビティフィルタ3002は、例えば、開示の材料の実施形
態を組み入れたもののような帯域通過フィルタを含み、異なる周波数の2つ以上の送信器
の出力を結合させることを許容することができる。
【0134】
上述の記載から、複合マイクロストリップサーキュレータ/アイソレータに対する発明
の製品及びアプローチが開示されていることがわかる。いくつかのコンポーネント、技法
及び側面が所定程度の特定性で記載されてきたが、本開示の要旨及び範囲から逸脱するこ
となくここに上述された固有の設計、構造及び方法論において多くの変更がなされ得るこ
とは明らかである。
【0135】
別個の実装の文脈において本開示に記載された所定の特徴はまた、単一の実装において
組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装の文脈において記載される様々な
特徴はまた、多数の実装にも別個に又は任意の適切なサブコンビネーションにおいて実装
することもできる。さらに、特徴が所定のコンビネーションで作用するとして上述され得
るにもかかわらず、請求されるコンビネーションからの一以上の特徴は、いくつかの場合
に、当該コンビネーションから実施することができ、当該コンビネーションは、任意のサ
ブコンビネーション、又は任意のサブコンビネーションのバリエーションとして請求する
ことができる。
【0136】
さらに、方法が特定の順序で図面に描かれ又は明細書に記載され得るが、かかる方法は
、示される特定順序又は逐次的順序で行う必要はなく、所望の結果を達成するべく当該す
べての方法を行う必要もない。描かれ又は記載されていない他の方法も、方法及びプロセ
スの例に組み入れることができる。例えば、一以上の付加的方法を、記載の方法のいずれ
かの前に、後に、同時に、又は間に行ってよい。さらに、方法は、他の実装において配列
し直し又は順序付けをし直してもよい。さらに、上述の実装における様々なシステムコン
ポーネントの分離は、かかる分離をすべての実装において要求するものとして理解するべ
きではなく、記載のコンポーネント及びシステムを一般に、単一の製品において統合し、
又はパッケージ化して多数の製品にすることもできる。それに加え、他の実装も本開示の
範囲内にある。
【0137】
「できる」、「し得る」、「してよい」、「かもしれない」のような条件付き言語は一
般に、特にそうでないことが述べられ、又は使用の文脈上そうでないことが理解される場
合を除き、所定の実施形態が所定の特徴、要素及び/又はステップを含み又は含まないこ
とを伝えるように意図される。すなわち、かかる条件付き言語は、特徴、要素、及び/又
はステップがいずれかの態様で一以上の実施形態に必要とされることを示唆するように一
般に意図されるというわけではない。
【0138】
句「X、Y及びZの少なくとも一つ」のような連結的言語は、特にそうでないことが述
べられる場合を除き、そうでなければ、項目、用語等がX、Y又はZのいずれかとなり得
ることを一般に伝えるべく使用される文脈により理解される。すなわち、かかる連結的言
語は、所定の実施形態が、Xの少なくとも一つ、Yの少なくとも一つ、及びZの少なくと
も一つの存在を必要とすることを示唆するように一般に意図されるというわけではない。
【0139】
用語「ほぼ」、「約」、「一般に」及び「実質的に」のような、ここに使用される程度
の言語は、述べられた値、量又は特徴に近い、依然として所望の機能を果たし又は所望の
結果を達成する値、量、又は特徴を表す。例えば、用語「ほぼ」、「約」、「一般に」及
び「実質的に」は、述べられた量の10%以下以内、5%以下以内、1%以下以内、0.
1%以下以内、及び0.01%以下以内の量を言及する。述べられた量が0(例えば、な
し、いずれもない)の場合、上記範囲は、固有の範囲としてよく、当該値の特定%以内と
いうことではなくなる。例えば、述べられた量の10重量/体積%以内、5重量/体積%
以内、1重量/体積%以内、0.1重量/体積%以内、及び0.01重量/体積%以内で
ある。
【0140】
いくつかの実施形態が、添付図面に関連して記載されてきた。図面は縮尺どおりという
わけではないが、かかる縮尺は限定的ではない。これは、図示のもの以外の寸法及び比率
も考慮されて開示の発明の範囲内にあるからである。距離、角度等は単なる例示であって
、必ずしも、例示のデバイスの実際の寸法及びレイアウトに対して正確な関係が保たれる
わけではない。コンポーネントを追加、除去、及び/又は再配列してよい。さらに、様々
な実施形態に関連する任意の特定の特徴、側面、方法、特性、特徴、品質、帰属、要素等
のここでの開示は、ここに記載される他の実施形態すべてにおいて使用することができる
。それに加え、わかることだが、ここに記載のいずれの方法も、記載のステップを行うの
に適切ないずれのデバイスを使用して実施することができる。
【0141】
一定数の実施形態及びそのバリエーションが詳細に記載されてきたが、他の修正例及び
これを使用した方法も当業者にとって明らかである。したがって、様々なアプリケーショ
ン、修正例、材料、及び置換も、独自かつ独創的なここでの開示又は特許請求の範囲から
逸脱することのない均等物からなし得る。