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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ベッド装置
(51)【国際特許分類】
   A61G 7/015 20060101AFI20231030BHJP
   A47C 20/12 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
A61G7/015
A47C20/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022172412
(22)【出願日】2022-10-27
(62)【分割の表示】P 2021159342の分割
【原出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2022186990
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010032
【氏名又は名称】フランスベッド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】ゲイリー・ペン
(72)【発明者】
【氏名】ティーシー・フアン
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-346311(JP,A)
【文献】国際公開第2018/020995(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0212807(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0157515(US,A1)
【文献】特開昭61-238232(JP,A)
【文献】特開平3-277316(JP,A)
【文献】特開昭55-19125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/015,7/16
A47C 20/08-20/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドフレームと、
背ボトムを含むボトムユニットと、
前記ボトムユニットを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がった座位状態とに変形させる駆動機構と、
前記臥位状態から前記座位状態への変形のコマンドを入力するボタンを含む入力装置と、を備え、
前記駆動機構は、
前記ベッドフレームに取り付けられた水平フレームと、
前記水平フレームに対して回動可能に連結されるとともに前記背ボトムを支持するチルトフレームと、を含み、
さらに、前記駆動機構は、前記臥位状態において前記ボタンが操作されたことに応じて前記ボトムユニットを前記座位状態に変形させ、その後に前記ボタンが再度操作されたことに応じて前記ボトムユニットが前傾するように前記チルトフレームを前記水平フレームに対して傾ける、ベッド装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記臥位状態において前記ボタンが継続的に押下されると、前記ボトムユニットを前記座位状態に徐々に変形させ、前記ボトムユニットが前記座位状態に変形し終えると、そのまま前記ボタンが押下し続けられても前記ボトムユニットを変形させず、前記ボタンの押下が一度停止され、その後に前記ボタンが再度押下された場合に前記座位状態の前記ボトムユニットが前傾するように前記チルトフレームを前記水平フレームに対して傾ける、
請求項1に記載のベッド装置。
【請求項3】
前記ボトムユニットは、前記背ボトムに連結された腰ボトムと、前記腰ボトムに連結された脚ボトムと、をさらに含み、
前記臥位状態においては、前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムが水平に並び、
前記座位状態においては、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記脚ボトムの一部が前記腰ボトムの下方に位置し、
前記チルトフレームが前記水平フレームに対して傾くことにより前記座位状態の前記ボトムユニットが前傾する際に、前記背ボトムの上端が前記ベッドフレームの足側に向かい、前記背ボトムの下端が前記ベッドフレームの頭側に向かうように前記ボトムユニットが回動する、
請求項1または2に記載のベッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臥位状態から座位状態に変形可能なベッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者や身体の不自由な者などの利用者がベッド装置上で容易に姿勢を変更できるように、背上げ機能や膝上げ機能のような補助機能を備えたベッド装置が知られている。この種のベッド装置は、背ボトム、腰ボトムおよび脚ボトムを含む複数のボトムを有しており、リモートコントローラのような入力装置の操作に応じて駆動機構が各ボトムを互いに回動させる。
【0003】
また、各ボトムが平坦な形状を成す臥位状態から座位状態に変形可能なベッド装置も提案されている(例えば特許文献1乃至3を参照)。座位状態においては、各ボトムがベッド装置の足側に移動するとともに、背ボトムが立ち上がる。これにより、利用者はベッド装置が置かれた床に足を付けて各ボトム上に座ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平4-819号公報
【文献】特許第4231549号公報
【文献】特開2018-15269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
臥位状態から座位状態に変形可能なベッド装置は、利用者や介助者の身体的負担を軽減できる点で極めて有用である。しかしながら、この種のベッド装置においては、座位状態におけるボトムの姿勢、座位状態への変形のための機構、さらには座位状態への変形を指示するための入力装置の操作性に関して改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、臥位状態から座位状態に変形可能なベッド装置の利便性をさらに向上させることを主要な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの観点によれば、ベッド装置は、
ベッドフレームと、
背ボトムと、
前記背ボトムに連結された腰ボトムと、
前記腰ボトムに連結された大腿部ボトムを含む脚ボトムと、
前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記大腿部ボトムが前記ベッドフレームの端部に位置した座位状態とに変形させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記臥位状態および前記座位状態の各々において、前記腰ボトムに連結された前記大腿部ボトムの一端を軸として前記大腿部ボトムを回動させることが可能である。
【0008】
本発明の他の観点によれば、ベッド装置は、
ベッドフレームと、
背ボトムと、
前記背ボトムに連結された腰ボトムと、
少なくとも一部が互いに重なる第1プレートおよび第2プレートを含む脚ボトムと、
前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記第1プレートおよび前記第2プレートが前記腰ボトムの下方に位置する座位状態とに変形させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、
前記背ボトムおよび前記腰ボトムを支持するとともに、前記ベッドフレームに取り付けられた第1スライドフレームと、
前記第1スライドフレームに取り付けられた第2スライドフレームと、
前記第1プレートと前記第2スライドフレームを複数の回動軸において回動可能に連結する第1リンクと、
前記第2プレートと前記第2スライドフレームを前記第1リンクと異なる数の回動軸において回動可能に連結する第2リンクと、を含み、
前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して、前記第1スライドフレームが前記ベッドフレームに対して第1方向に移動し、前記第2スライドフレームが前記第1スライドフレームに対して前記第1方向と反対の第2方向に移動し、これにより前記第1プレートと前記第2プレートが互いにスライドしながらそれぞれ前記第1リンクおよび前記第2リンクにより前記腰ボトムの下方に向けて回動する。
【0009】
本発明のさらに他の観点によれば、ベッド装置は、
ベッドフレームと、
背ボトムを含むボトムユニットと、
前記ボトムユニットを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がった座位状態とに変形させる駆動機構と、
前記臥位状態から前記座位状態への変形のコマンドを入力するボタンを含む入力装置と、を備え、
前記駆動機構は、
前記ベッドフレームに取り付けられた水平フレームと、
前記水平フレームに対して回動可能に連結されるとともに前記背ボトムを支持するチルトフレームと、を含み、
さらに、前記駆動機構は、前記臥位状態において前記ボタンが操作されたことに応じて前記ボトムユニットを前記座位状態に変形させ、その後に前記ボタンが再度操作されたことに応じて前記ボトムユニットが前傾するように前記チルトフレームを前記水平フレームに対して傾ける。
【0010】
本発明のさらに他の観点によれば、ベッド装置は、
ベッドフレームと、
背ボトムと、
前記背ボトムに連結された腰ボトムと、
前記腰ボトムに連結された大腿部ボトムを含む脚ボトムと、
前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記大腿部ボトムが前記ベッドフレームの端部に位置した座位状態とに変形させる駆動機構と、を備え、
前記背ボトムは、
前記腰ボトムが連結された中央ボトムと、
前記中央ボトムの幅方向における両側に対してそれぞれ回動可能に連結された一対のサイドボトムと、
前記一対のサイドボトムの各々の裏面に設けられ、前記幅方向と交差する長手方向に沿って延びる一対の突条部と、を含み、
前記駆動機構は、
前記ベッドフレームに取り付けられた第1スライドフレームと、
前記脚ボトムを支持するとともに、前記第1スライドフレームに対してスライド可能に取り付けられた第2スライドフレームと、
前記第1スライドフレームに対して回動可能に連結され、前記背ボトムを支持する背上げフレームと、
前記背上げフレームに設けられた一対のローラと、
を含み、
前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して、前記第1スライドフレームが前記ベッドフレームに対して第1方向に移動するとともに前記第2スライドフレームが前記第1スライドフレームに対して前記第1方向と反対の第2方向に移動し、前記第2スライドフレームが前記第2方向に移動している間に前記脚ボトムの一部が前記腰ボトムの下方に引き込まれ、さらに、前記背上げフレームが回動して前記背ボトムを立ち上がらせるとともに前記一対のローラが前記一対の突条部をそれぞれ押すことにより前記一対のサイドボトムの各々を前記中央ボトムに対して傾斜させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、臥位状態から座位状態に変形可能なベッド装置の利便性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係るベッド装置の概略的な斜視図である。
図2図2は、上記ベッド装置の他の概略的な斜視図である。
図3図3は、上記ベッド装置の概略的な側面図である。
図4図4は、上記ベッド装置が備えるボトムユニットの形状のいくつかの例を概略的に示す側面図である。
図5図5は、上記ボトムユニットの形状の他の例を概略的に示す側面図である。
図6図6は、上記ボトムユニットを取り外した状態におけるベッド装置の概略的な平面図である。
図7図7は、上記ベッド装置が備える昇降機構を説明するための概略的な斜視図である。
図8図8は、上記ベッド装置が備えるスライド機構を説明するための概略的な平面図である。
図9図9は、上記スライド機構を説明するための他の概略的な平面図である。
図10図10は、上記ベッド装置が備える第1及び第2プレートと第2スライドフレームとを連結するリンク機構の概略的な斜視図である。
図11図11は、図10に示す主要な要素の概略的な分解斜視図である。
図12図12は、座位状態に変形する途中の上記ボトムユニットの概略的な側面図である。
図13図13は、座位状態における上記ボトムユニットの概略的な側面図である。
図14図14は、上記ベッド装置が備える背上げ機構を説明するための概略的な斜視図である。
図15図15は、上記背上げ機構を説明するための他の概略的な斜視図である。
図16図16は、上記背上げ機構が備える背上げフレームによる背ボトムの支持構造の一例を示す図である。
図17図17は、上記背ボトムの裏面等を概略的に示す斜視図である。
図18図18は、上記ベッド装置が備える膝上げ機構を説明するための概略的な斜視図である。
図19図19は、上記膝上げ機構を説明するための他の概略的な斜視図である。
図20図20は、図19に示した各要素のF20-F20線に沿う概略的な断面図である。
図21図21は、上記ベッド装置が備える腰上げ機構を説明するための概略的な斜視図である。
図22図22は、上記腰上げ機構を説明するための他の概略的な斜視図である。
図23図23は、図22に示した各要素のF23-F23線に沿う概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係るベッド装置につき、図面を参照しながら説明する。
図1および図2は、本実施形態に係るベッド装置Bの概略的な斜視図である。以下の説明においては、図示したようにX方向、Y方向およびZ方向を定義する。X方向は、ベッド装置Bの頭側から足側に向かう方向である。Y方向は、ベッド装置Bの幅方向である。Z方向は、ベッド装置Bの高さ方向である。Y方向の矢印が示す側(仰臥位の利用者から見た左)を「左」と言い、その反対側(仰臥位の利用者から見た右)を「右」と言うことがある。また、Z方向の矢印が示す側を「上」と言い、その反対側を「下」と言うことがある。
【0014】
ベッド装置Bは、ボトムユニット1と、駆動機構2と、ベッドフレーム3と、ベースフレーム4と、入力装置5と、制御装置6(図2参照)とを備えている。ボトムユニット1の上には図示せぬマットレス等が置かれる。
【0015】
本実施形態において、ボトムユニット1は、利用者の背部を支持する背ボトム10と、利用者の腰部を支持する腰ボトム11と、利用者の脚部を支持する脚ボトム12とを備えている。
【0016】
背ボトム10は、中央ボトム10Cと、一対のサイドボトム10L,10Rとを含む。サイドボトム10L,10Rは、中央ボトム10Cの幅方向(Y方向)における左右両側に対し、それぞれ中央ボトム10Cの長手方向(Y方向と直交する方向)と平行な軸周りに回動可能に連結されている(図17参照)。
【0017】
腰ボトム11は、第1腰ボトム13と、第2腰ボトム14とを含む。また、脚ボトム12は、利用者の大腿部を支持する大腿部ボトム15と、利用者の膝部または腓腹部を支持する膝ボトム16と、利用者の足部を支持する第1プレート17および第2プレート18とを含む。
【0018】
中央ボトム10Cと第1腰ボトム13、第1腰ボトム13と第2腰ボトム14、第2腰ボトム14と大腿部ボトム15、大腿部ボトム15と膝ボトム16、膝ボトム16と第1プレート17は、Y方向と平行な軸周りに回動可能に連結されている。第2プレート18は、第1プレート17に対してスライド可能である。第1プレート17と第2プレート18は、少なくとも一部が重なっている。
【0019】
図1においては、背ボトム10、腰ボトム11および脚ボトム12が水平(X-Y平面と平行)である。一方、図2においては、背ボトム10および第1腰ボトム13がZ方向に立ち上がるとともに、膝ボトム16が頂点となるように脚ボトム12が屈曲している。
【0020】
駆動機構2は、ボトムユニット1を支持するとともに、ボトムユニット1を後述する各種の形状に変形させる。ベッドフレーム3は、ボトムユニット1の下方に配置されている。ベースフレーム4は、ベッドフレーム3を支持している。ベースフレーム4は、ベッド装置Bの4隅において床面に接する脚部4aを有している。ベースフレーム4は、脚部4aに代えてキャスターを有してもよい。
【0021】
入力装置5は、例えばリモートコントローラであり、ボトムユニット1の変形やベースフレーム4に対するベッドフレーム3の昇降のコマンドを入力するための複数のボタンを有している。入力装置5は、後述の臥位状態から座位状態へとボトムユニット1を変形させるコマンドを入力するための座位変形ボタン5aを含む。
【0022】
制御装置6は、例えばベッドフレーム3に取り付けられている。制御装置6は、入力装置5から入力されるコマンドに応じて駆動機構2を制御する。入力装置5と制御装置6は、例えばコード5bを介して通信接続されている。ただし、入力装置5と制御装置6は、無線にて通信接続されていてもよい。
【0023】
図3は、ベッド装置Bの概略的な側面図である。駆動機構2は、ボトムユニット1を支持するための要素として、固定ピン35と、背上げフレーム41と、一対の膝上げアーム51L,51Rおよびこれらの先端に取り付けられた一対の膝上げローラ52L,52R(図18および図19参照)と、一対の第1リンク71L,71Rおよび一対の第2リンク72L,72R(図10および図11参照)とを備えている。
【0024】
固定ピン35は、第2腰ボトム14に設けられた一対の孔14a(図1および図2参照)に通されている。背上げフレーム41は、背ボトム10(中央ボトム10C)の裏面を支持している。膝上げローラ52L,52Rは、大腿部ボトム15の裏面を支持している。第1リンク71L,71Rは、第1プレート17を回動可能に支持している。第2リンク72L,72Rは、第2プレート18を回動可能に支持している。
【0025】
駆動機構2は、背上げフレーム41、膝上げアーム51L,51R、第1リンク71L,71Rおよび第2リンク72L,72Rの位置関係や傾斜角度を調整することにより、ボトムユニット1を種々の形状に変形させることが可能である。
【0026】
図4は、ボトムユニット1の形状の一例を概略的に示す側面図である。図4(a)に示すボトムユニット1においては、図1の例と同じく、背ボトム10、腰ボトム11および脚ボトム12がいずれも水平に並んでいる。以下、少なくとも背ボトム10が水平(X-Y平面と平行)なボトムユニット1の形状を臥位状態と呼ぶ。
【0027】
図4(b)に示すボトムユニット1においては、図2の例と同じく、背ボトム10がZ方向に立ち上がるとともに、腰ボトム11および脚ボトム12が曲がっている。具体的には、第1腰ボトム13がZ方向に立ち上がるとともに、膝ボトム16が大腿部ボトム15および各プレート17,18よりも上方に位置するように脚ボトム12が上方に凸の形状を成している。
【0028】
図4(c)に示すボトムユニット1においては、各プレート17,18が腰ボトム11および大腿部ボトム15の下方に位置している。大腿部ボトム15は、例えば上述のベッドフレーム3の足側の端部3a近傍に位置しており、腰ボトム11とともに座面を形成する。膝ボトム16は、大腿部ボトム15と第1プレート17の間でZ方向に延びている。以下、このようなボトムユニット1の形状を座位状態と呼ぶ。
【0029】
図4(d)に示すボトムユニット1も座位状態にあり、図4(c)の例よりもボトムユニット1全体が前傾している。本実施形態における「前傾」は、少なくとも背ボトム10の上端が足側に向かい、かつ背ボトム10の下端が頭側に向かうようにボトムユニット1が回動することを意味する。このようなボトムユニット1の形状への変形は、利用者が座位から立ち上がる動作の補助に役立つ。
【0030】
このように、ボトムユニット1は、図4(a)に示す臥位状態から図4(b)に示す形状を経て図4(c)(d)に示す座位状態に変形可能である。
【0031】
以下の説明においては、背ボトム10を図4(b)~(c)のように立ち上げる動作を背上げと呼ぶ。また、大腿部ボトム15を図4(b)のようにZ方向に立ち上げる動作を膝上げと呼ぶ。また、図4(d)に示すように座位状態のボトムユニット1を前傾させる動作を腰上げと呼ぶ。
【0032】
図4(a)~(c)には、第1プレート17と第2プレート18が重なる距離Dを示している。距離Dや各プレート17,18が重なる面積Sは、図4(a)に示す臥位状態から図4(c)に示す座位状態に向けて増加する。すなわち、臥位状態から座位状態への変形に際して、第1プレート17および第2プレート18は、互いに重なる面積が増す方向にスライドする。
【0033】
図4(a)に示す臥位状態から図4(c)に示す座位状態への変形のコマンドは、上述の座位変形ボタン5aによって入力することができる。すなわち、臥位状態において座位変形ボタン5aが継続的に押下されると、駆動機構2がボトムユニット1を座位状態に徐々に変形させる。この変形の途中に座位変形ボタン5aの押下が停止されると、ボトムユニット1の変形も停止する。
【0034】
ボトムユニット1が座位状態に変形し終えると、そのまま座位変形ボタン5aを押下し続けてもボトムユニット1は何ら変形しない。一方、座位変形ボタン5aの押下が一度停止され、その後に当該ボタン5aが再度押下された場合、駆動機構2は、ボトムユニット1を図4(d)に示すように前傾させる。
【0035】
なお、上述の入力装置5は、ボトムユニット1を座位状態から臥位状態に変形させるコマンドを入力するためのボタンも有している。このボタンが押されている間、図4(d)に示す状態から図4(a)に示す臥位状態へとボトムユニット1が徐々に変形する。
【0036】
図5は、ボトムユニット1の形状の他の例を概略的に示す側面図である。図5(a)に示すように、臥位状態においても大腿部ボトム15を水平な状態からZ方向に立ち上げることで膝上げを実行できる。このように臥位状態で膝上げを行えば、仰臥位の利用者の膝を曲げることが可能である。
【0037】
また、図5(b)に示すように、座位状態においても大腿部ボトム15を水平な状態からZ方向に立ち上げることで膝上げを実行できる。このように座位状態で膝上げを行えば、ボトムユニット1に座った利用者が座面から滑り落ちにくくなる。
【0038】
図6は、ボトムユニット1を取り外した状態におけるベッド装置Bの概略的な平面図である。上述の駆動機構2は、昇降モータM1を含む昇降機構20と、第1スライドモータM2および第2スライドモータM3を含むスライド機構30と、背上げモータM4を含む背上げ機構40と、膝上げモータM5を含む膝上げ機構50と、腰上げモータM6を含む腰上げ機構60とを備えている。各モータM1~M6は、駆動源の一例である。
【0039】
詳しくは後述するが、スライド機構30は、第1スライドフレーム31と、第2スライドフレーム32とを備えている。第1スライドフレーム31は、ベッドフレーム3に対してスライド可能に取り付けられている。第2スライドフレーム32は、第1スライドフレーム31に対してスライド可能に取り付けられている。
【0040】
第1スライドフレーム31は、水平フレーム33と、チルトフレーム34とを含む。水平フレーム33は、X-Y平面と平行である。チルトフレーム34は、水平フレーム33に対して傾けることが可能である。チルトフレーム34には、上述の背上げフレーム41、一対の固定ピン35、一対の膝上げアーム51L,51Rおよび一対の膝上げローラ52L,52R等が設けられている。
【0041】
以下、昇降機構20、スライド機構30、背上げ機構40、膝上げ機構50および腰上げ機構60の詳細について順に説明する。
【0042】
[昇降機構20]
図7は、昇降機構20を説明するための概略的な斜視図である。この図においては、昇降機構20と関連しない要素を省略している。
【0043】
ベッドフレーム3とベースフレーム4のY方向における一方の側部は、X字状に交差した第1昇降リンク21Lおよび第2昇降リンク22Lで連結されている。ベッドフレーム3とベースフレーム4のY方向における他方の側部は、X字状に交差した第1昇降リンク21Rおよび第2昇降リンク22Rで連結されている。
【0044】
第1昇降リンク21Lと第2昇降リンク22Lは、回動軸23によって連結されている。第1昇降リンク21Lの一端は、ブラケット211を介してベースフレーム4に対し回動可能に連結されている。第1昇降リンク21Lの他端には、ローラ212が設けられている。ローラ212は、ベッドフレーム3に設けられたレール24内をX方向に沿って転動することができる。
【0045】
第2昇降リンク22Lの一端は、ブラケット221を介してベッドフレーム3に対し回動可能に連結されている。図7には表れていないが、第2昇降リンク22Lの他端にはローラが設けられている。このローラは、ベースフレーム4に設けられたレール25内をX方向に沿って転動することができる。
【0046】
なお、第1昇降リンク21Rおよび第2昇降リンク22Rをそれぞれベッドフレーム3およびベースフレーム4に連結する構造は、第1昇降リンク21Lおよび第2昇降リンク22Lをこれらフレーム3,4に連結する構造と同様である。
【0047】
昇降モータM1には、筒状のシリンダC1と、シリンダC1に収容されたロッドR1とが設けられている。昇降モータM1の動作に伴い、シリンダC1からのロッドR1の突出量が変化する。昇降モータM1は、ベースフレーム4に設けられたブラケットB11に対して回動可能に連結されている。ロッドR1の先端は、Y方向に長尺な押上部材26に設けられたブラケットB12に対して回動可能に連結されている。押上部材26は、第1昇降リンク21L,21Rの下面に接触している。
【0048】
昇降モータM1が駆動され、シリンダC1からのロッドR1の突出量が増加すると、押上部材26が第1昇降リンク21L,21Rを上方に押し上げる。これにより、第1昇降リンク21L,21Rの各々のローラ212がレール24を転動するとともに、第2昇降リンク22L,22Rの各々のローラがレール25内を転動する。ベッドフレーム3は、第1昇降リンク21L,21Rおよび第2昇降リンク22L,22RによってZ方向に押し上げられ、ベースフレーム4に対して上昇する。反対に、シリンダC1からのロッドR1の突出量が減少すると、ベッドフレーム3がベースフレーム4に向かって下降する。このような昇降機構20により、ボトムユニット1を昇降させることができる。
【0049】
[スライド機構30]
図8および図9は、スライド機構30を説明するための概略的な平面図である。これらの図においては、スライド機構30と関連しない要素を省略している。
【0050】
ベッドフレーム3は、Y方向に間隔を空けて並ぶ一対のレール36L,36Rを有している。レール36L,36Rは、いずれもX方向に延びている。上述の第1スライドフレーム31および第2スライドフレーム32は、レール36L,36Rの間に配置されている。
【0051】
第1スライドフレーム31の水平フレーム33は、Y方向に間隔を空けて並ぶ一対のフレーム材331L,331Rと、これらフレーム材331L,331Rの頭側(図中左側)の端部同士を連結する連結部材332とを有している。フレーム材331L,331Rは、いずれもX方向に延びている。
【0052】
さらに、水平フレーム33は、フレーム材331L,331Rから当該フレーム33の外側に向けて延出する複数のロッド333を有している。図8においてレール36Lの一部を破断して示すように、各ロッド333の先端にはローラ334が設けられている。これらローラ334がレール36L,36R内を転動することで、第1スライドフレーム31がベッドフレーム3に対してX方向と平行にスライド可能である。
【0053】
第1スライドフレーム31のチルトフレーム34は、Y方向に間隔を空けて並ぶ一対のフレーム材341L,341Rと、フレーム材341L,341Rの頭側(図中左側)の端部同士を連結する連結部材342と、フレーム材341L,341Rの足側(図中右側)の端部同士を連結する連結部材343とを有している。詳しくは図21および図22を参照して後述するが、フレーム材341L,341Rはそれぞれフレーム材331L,331Rに対して回動可能に連結されている。上述の一対の固定ピン35は、フレーム材341L,341Rにそれぞれ設けられている。
【0054】
第2スライドフレーム32は、Y方向に間隔を空けて並ぶ一対のレール321L,321Rと、これらレール321L,321Rの足側(図中右側)の端部同士を連結する連結部材322とを有している。レール321L,321Rは、いずれもX方向に延びている。
【0055】
チルトフレーム34は、フレーム材341L,341Rから当該フレーム34の外側に向けて延出する複数のロッド344を有している。図8においてレール321Rの一部を破断して示すように、各ロッド344の先端にはローラ345が設けられている。これらローラ345がレール321L,321R内を転動することで、第2スライドフレーム32が第1スライドフレーム31(チルトフレーム34)に対してスライド可能である。
【0056】
第1スライドモータM2(第1駆動源)には、筒状のシリンダC2と、シリンダC2に収容されたロッドR2とが設けられている。第1スライドモータM2の動作に伴い、シリンダC2からのロッドR2の突出量が変化する。
【0057】
第1スライドモータM2は、ベッドフレーム3に設けられたブラケットB21に対して連結されている。シリンダC2の下方には、水平フレーム33の連結部材332から第1スライドフレーム31の内側に向けてX方向に延出する突出部材335が設けられている(図9参照)。ロッドR2の先端は、この突出部材335に設けられたブラケットB22に対して連結されている。
【0058】
第2スライドモータM3(第2駆動源)には、筒状のシリンダC3と、シリンダC3に収容されたロッドR3とが設けられている。第2スライドモータM3の動作に伴い、シリンダC3からのロッドR3の突出量が変化する。
【0059】
第2スライドモータM3およびシリンダC3は、チルトフレーム34の連結部材342,343に取り付けられたX方向に長尺なブラケットB31の上に配置され、当該ブラケットB31によって支持されている。ロッドR3の先端は、第2スライドフレーム32の連結部材322に設けられたブラケットB32に対して回動可能に連結されている。このような構成においては、後述の腰上げ機構60による腰上げ時において、第2スライドモータM3、シリンダC3およびロッドR3がチルトフレーム34および第2スライドフレーム32とともに水平フレーム33に対して傾斜する。
【0060】
図8に示す第1スライドフレーム31および第2スライドフレーム32等の位置関係は、臥位状態に対応する。一方、図9に示す第1スライドフレーム31および第2スライドフレーム32等の位置関係は、座位状態に対応する。
【0061】
すなわち、臥位状態においては、第1スライドモータM2のロッドR2がシリンダC2に最大限収容されるとともに、第2スライドモータM3のロッドR3がシリンダC3から最大限突出している。これにより、第2スライドフレーム32は、第1スライドフレーム31から足側(図中右側)に大きく突出する。
【0062】
図8に示す臥位状態から図9に示す座位状態への変形に際しては、第1スライドモータM2によりロッドR2がシリンダC2から送り出されると同時に、第2スライドモータM3によりロッドR3がシリンダC3に引き込まれる。このとき、第1スライドフレーム31および第2スライドモータM3等がベッドフレーム3に対してX方向(第1方向)に押される。また、第2スライドフレーム32が第1スライドフレーム31およびベッドフレーム3に対してX方向の反対(第2方向)に引かれる。図9の例においては、第2スライドフレーム32の足側の端部(連結部材322)が第1スライドフレーム31の足側の端部(連結部材343)よりも頭側に位置している。
【0063】
このようなスライド動作により、図9に示す座位状態においては、第1スライドフレーム31が図8に示す臥位状態に比べてベッドフレーム3の足側に移動している。さらに、第2スライドフレーム32が図8に示す臥位状態に比べてベッドフレーム3の頭側に移動している。
【0064】
以上のスライド機構30の動作により、図4(a)に示した臥位状態から図4(c)に示した座位状態へのボトムユニット1の変形に際して、大腿部ボトム15がベッドフレーム3の足側の端部に位置付けられる。さらに、第1プレート17および第2プレート18が腰ボトム11の下方に引き込まれる。
【0065】
図10は、第1プレート17および第2プレート18と第2スライドフレーム32とを連結するリンク機構の概略的な斜視図である。図11は、図10に示す主要な要素の概略的な分解斜視図である。
【0066】
図10および図11に示すように、レール321L,321Rの先端部の下面には、それぞれX方向に延びる第1取付部材73L,73Rが設けられている。第1取付部材73L,73Rの互いに対向する内面には、それぞれY方向に延びる第2取付部材74L,74Rが設けられている。
【0067】
図11に示すように、第1プレート17の裏面には、格子状のフレーム171が取り付けられている。さらに、第1プレート17は、Y方向における両端部近傍にスリット172を有している。一方、第2プレート18の裏面には、Y方向の両端部にそれぞれ溝部181が形成されている。各スリット172により分けられた第1プレート17の両端部をそれぞれ溝部181に挿入することで、第1プレート17が第2プレート18に対しスライド可能に取り付けられる。
【0068】
上述の第1リンク71L,71Rの各々は、第1ブラケット711と、第2ブラケット712と、アーム713とを有している。第1リンク71Lの第1ブラケット711は、第2取付部材74Lに取り付けられている。第2リンク72Rの第1ブラケット711は、第2取付部材74Rに取り付けられている。第1リンク71L,71Rの各々の第2ブラケット712は、フレーム171に取り付けられている。
【0069】
第1リンク71L,71Rの各々において、アーム713の一端は第1ブラケット711に対し第1回動軸714によって回動可能に連結され、アーム713の他端は第2ブラケット712に対し第2回動軸715によって回動可能に連結されている。
【0070】
第2リンク72L,72Rの各々は、第1取付部材73L,73Rに取り付けられたブラケット721と、第2プレート18の裏面に取り付けられたアーム722とを有している。第2リンク72L,72Rの各々において、ブラケット721とアーム722は、回動軸723によって回動可能に連結されている。
【0071】
図12は、座位状態に変形する途中のボトムユニット1の概略的な側面図である。図13は、座位状態におけるボトムユニット1の概略的な側面図である。各図においては、第2スライドモータM3、シリンダC3、ロッドR3、第1リンク71Rおよび第2リンク72Rも示している。
【0072】
図12においては、ロッドR3がシリンダC3から突出している。図13においては、ロッドR3がシリンダC3に最大限収容されている。このようにロッドR3がシリンダC3に収容されていく過程において、第1プレート17および第2プレート18は腰ボトム11の下方に引き込まれていく。
【0073】
このとき、第1リンク71R(71L)は上述の第1回動軸714および第2回動軸715にて回動し、第2リンク72R(72L)は上述の回動軸723にて回動する。第2プレート18は1軸での回動であるため、正円形の軌跡を描く。一方、第1プレート17は2軸での回動であるため、より複雑な軌跡を描くことが可能である。
【0074】
仮に第1プレート17も1軸で回動する場合には、両プレート17,18を互いにスライドさせながら図13に示す位置に引き込むことができない。これに対し、第1プレート17が2軸で回動する場合には、両プレート17,18を互いにスライドさせながら図13に示す位置に引き込むことができる。
【0075】
しかも、引き込みが進行するほど第1プレート17と第2プレート18が重なる面積が増え、両プレート17,18がコンパクトになる。これにより、回動時に要する床面からの高さも低くて済む。
【0076】
なお、第1リンク71L,71Rが有する回動軸の数(M)と、第2リンク72L,72Rが有する回動軸の数(N)は、M,Nが互いに異なっていれば本実施形態のようにM=2かつN=1である場合に限られない。また、M,Nが互いに異なっていればM<Nの関係が成立してもよい。
【0077】
[背上げ機構40]
図14および図15は、背上げ機構40を説明するための概略的な斜視図である。これらの図においては、背上げ機構40と関連しない要素を省略している。
【0078】
上述の背上げフレーム41は、Y方向に延びる背上げシャフト42と、背上げシャフト42に連結された長尺な支持部材43L,43Rとを有している。背上げシャフト42は、チルトフレーム34のフレーム材341L,341Rに対して回動可能に連結されている。
【0079】
支持部材43L,43Rの互いに対向する内面には、それぞれ2つのローラ44が設けられている。また、支持部材43L,43Rの外面には、それぞれ2つの可動ロッド45が設けられている。各可動ロッド45の先端には、ローラ46が設けられている。
【0080】
背上げモータM4には、筒状のシリンダC4と、シリンダC4に収容されたロッドR4とが設けられている。背上げモータM4の動作に伴い、シリンダC4からのロッドR4の突出量が変化する。背上げモータM4は、チルトフレーム34の連結部材343に設けられたブラケットB41に対して回動可能に連結されている。ロッドR4の先端は、背上げシャフト42に設けられたブラケットB42に対して回動可能に連結されている。
【0081】
図14は臥位状態に対応しており、支持部材43L,43RがX方向と平行である。この状態において背上げモータM4によりロッドR4がシリンダC4から送り出されると、ブラケットB42を介して背上げシャフト42が回動する。これにより、図15に示すように支持部材43L,43Rが背上げシャフト42を中心に回動して立ち上がる。
【0082】
背ボトム10は、背上げフレーム41によって支持される。すなわち、背上げフレーム41の姿勢が図14に示す状態から図15に示す状態に変化したことに伴い、背ボトム10が図4(a)に示した水平な状態から図4(b)(c)に示したように立ち上がる。
【0083】
図16は、背上げフレーム41による背ボトム10の支持構造の一例を示す図である。図示した例においては、中央ボトム10Cの裏面に一対のレール47L,47Rが設けられている。これらレール47L,47Rは、中央ボトム10Cの長手方向(臥位状態におけるX方向)に沿って長尺に延びるとともに、支持部材43L,43Rの間に位置している。
【0084】
図16においてレール47Rの一部を破断して示すように、支持部材43L,43Rに設けられたローラ44は、それぞれレール47L,47R内に位置している。すなわち、中央ボトム10Cは、レール47L,47Rおよび各ローラ44によって、支持部材43L,43Rに対し長手方向にスライド可能に支持されている。
【0085】
図16に示す支持部材43L,43Rとレール47L,47Rの位置関係は、座位状態に対応する。例えば図中の左上の可動ロッド45に着目すると、臥位状態においては破線で示す位置P1に当該可動ロッド45が位置する。臥位状態から座位状態への変形に際し背上げフレーム41が立ち上がるに連れて支持部材43L,43Rがスライドし、当該可動ロッド45が図中の位置P2まで移動する。
【0086】
サイドボトム10Lは、2つのヒンジ48によって中央ボトム10Cの左側辺に連結されている。同様に、サイドボトム10Rは、2つのヒンジ48によって中央ボトム10Cの右側辺に連結されている。
【0087】
サイドボトム10L,10Rの裏面RFの各々には、2つの突条部49が設けられている。各突条部49は、サイドボトム10L,10Rの長手方向(Y方向と直交する方向)に沿って延びるとともに、可動ロッド45およびローラ46に対応する位置に配置されている。
【0088】
可動ロッド45は、その中腹に回動軸45aを有しており、この回動軸45aを中心に曲げることが可能である。図16の例においては、各可動ロッド45が直角に曲げられている。この場合においては、各ローラ46が各突条部49と重ならない位置に退避する。一方、図16の右上の可動ロッド45およびローラ46に関して破線で示すように、可動ロッド45を直線状に延ばすと、ローラ46が突条部49と重なる。
【0089】
図17は、背ボトム10の裏面およびローラ46の一部を概略的に示す斜視図である。この図においては可動ロッド45が直線状に延ばされ、ローラ46が突条部49と重なっている。
【0090】
突条部49は、ローラ46と接触する傾斜面49aを有している。例えば、傾斜面49aは、図中下方(腰ボトム11がある方向)に向かうに連れてサイドボトム10L,10Rの裏面RFからの高さが増すとともに中央ボトム10C側により傾斜する曲面である。
【0091】
図17中のローラ46は、臥位状態の位置P1にある。このとき、中央ボトム10Cとサイドボトム10L,10Rは平行であり、平板状の背ボトム10が形成される。
【0092】
座位状態への変形に際して、ローラ46は、裏面RFからの高さが小さい位置P1から当該高さが大きい位置P2に到達するまで傾斜面49aを転がる。これにより突条部49がローラ46によって押され、サイドボトム10L,10Rがヒンジ48の回動軸を中心に回動し、破線で示すように中央ボトム10Cに対して傾斜する。
【0093】
このようにサイドボトム10L,10Rが傾斜すれば、座位状態において利用者の上半身の左右が支持されるため、ベッド装置Bの安全性が向上する。なお、サイドボトム10L,10Rを傾斜させるための構造の細部には、特許第3910873号に開示された構造が適用されてもよい。
【0094】
[膝上げ機構50]
図18および図19は、膝上げ機構50を説明するための概略的な斜視図である。これらの図においては、膝上げ機構50と関連しない要素を省略している。
【0095】
チルトフレーム34のフレーム材341L,341Rの間には、Y方向に延びる膝上げシャフト53が配置されている。膝上げシャフト53は、フレーム材341L,341Rに対して回動可能に連結されている。
【0096】
上述の膝上げアーム51L,51Rの一端は、膝上げシャフト53に対して連結されている。膝上げアーム51L,51Rの他端には、上述の膝上げローラ52L,52Rがそれぞれ取り付けられている。
【0097】
膝上げモータM5には、筒状のシリンダC5と、シリンダC5に収容されたロッドR5とが設けられている。膝上げモータM5の動作に伴い、シリンダC5からのロッドR5の突出量が変化する。膝上げモータM5は、チルトフレーム34の連結部材342に設けられたブラケットB51に対して回動可能に連結されている。ロッドR5の先端は、膝上げシャフト53に設けられたブラケットB52に対して回動可能に連結されている。
【0098】
図18は膝上げされていない状態に対応しており、膝上げアーム51L,51RがX方向と平行である。この状態において膝上げモータM5によりロッドR5がシリンダC5から送り出されると、ブラケットB52を介して膝上げシャフト53が回動する。これにより、図19に示すように膝上げアーム51L,51Rが膝上げシャフト53とともに回動して立ち上がる。
【0099】
図20は、図19に示した各要素のF20-F20線に沿う概略的な断面図である。この図においては、大腿部ボトム15も示している。膝上げローラ52R(52L)は、大腿部ボトム15の裏面に接触している。
【0100】
膝上げアーム51R(51L)が図18に示す状態から図19に示す状態に回動すると、膝上げローラ52R(52L)が大腿部ボトム15の裏面を押し上げ、図20に示すように大腿部ボトム15がX方向に対して傾斜する。
【0101】
膝上げモータM5、膝上げシャフト53、膝上げアーム51L,51Rおよび膝上げローラ52L,52R等の要素は、第1スライドフレーム31(チルトフレーム34)によって支持されている。したがって、これらの要素は第1スライドフレーム31とともにスライドすることが可能であり、臥位状態および座位状態のいずれにおいても膝上げローラ52L,52Rが大腿部ボトム15の直下に位置する。そのため、図5(a)(b)に示したように、臥位状態および座位状態の双方において膝上げを実行することができる。
【0102】
[腰上げ機構60]
図21および図22は、腰上げ機構60を説明するための概略的な斜視図である。これらの図においては、腰上げ機構60と関連しない要素を省略している。
【0103】
上述の水平フレーム33とチルトフレーム34は、一対の回動軸61L,61Rによって回動可能に連結されている。具体的には、回動軸61Lは、水平フレーム33のフレーム材331Lとチルトフレーム34のフレーム材341Lとを回動可能に連結している。また、回動軸61Rは、水平フレーム33のフレーム材331Rとチルトフレーム34のフレーム材341Rとを回動可能に連結している。
【0104】
図21および図22の例において、フレーム材341L,341Rは、下方が開口したカバーであり、チルトフレーム34が傾斜していない状態においては図21に示すようにフレーム材331L,331Rにそれぞれ被せられている。
【0105】
腰上げモータM6には、筒状のシリンダC6と、シリンダC6収容されたロッドR6とが設けられている。腰上げモータM6の動作に伴い、シリンダC6からのロッドR6の突出量が変化する。腰上げモータM6は、水平フレーム33の連結部材332に設けられたブラケットB61に対して回動可能に連結されている。ロッドR6の先端は、チルトフレーム34の連結部材342に設けられたブラケットB62に対して回動可能に連結されている。連結部材342は、連結部材332よりも上方に位置している。シリンダC6およびロッドR6は、チルトフレーム34が傾斜していない状態において、シリンダC6およびロッドR6の先端側が上方に位置するように傾斜している。
【0106】
図21は腰上げされていない座位状態に対応しており、フレーム材341L,341RがX方向と平行である。この状態において腰上げモータM6によりロッドR6がシリンダC6から送り出されると、図22に示すようにチルトフレーム34の頭側(図中左側)が持ち上げられる。チルトフレーム34によって支持された第2スライドフレーム32、背上げフレーム41および膝上げアーム51L,51R等の要素も、チルトフレーム34とともに傾斜する。
【0107】
図23は、図22に示した各要素のF23-F23線に沿う概略的な断面図である。この図においては、ボトムユニット1も示している。背上げフレーム41、膝上げアーム51L,51R、第1リンク71L,71Rおよび第2リンク72L,72R(図10参照)等のボトムユニット1を支持する要素は、いずれもチルトフレーム34または第2スライドフレーム32に設けられている。
【0108】
すなわち、背ボトム10、腰ボトム11および脚ボトム12は、チルトフレーム34および第2スライドフレーム32によって支持される。したがって、腰上げ機構60によって腰上げ動作が実行されると、図4(d)にも示したように座位状態のボトムユニット1が全体的に前傾する。
【0109】
以上説明した昇降機構20、スライド機構30、背上げ機構40、膝上げ機構50および腰上げ機構60を用いれば、図4および図5に例示したようにボトムユニット1を臥位状態、座位状態あるいはさらに他の形状に変形させたり、ボトムユニット1の床面からの高さを変更したりすることができる。これにより、利用者の姿勢変更やベッド装置Bからの立ち上がりが容易となる。
【0110】
本実施形態においては、図5(a)(b)に示したように臥位状態および座位状態の双方における膝上げが可能である。仮に、臥位状態および座位状態における膝上げを別々の機構により実現する場合には、ベッド装置の部品点数が増加するし、製造コストも上昇する。さらには、各種の機構を配置するためのスペースをボトムユニットの下方に確保することも困難となり得る。これに対し、本実施形態においては同一の膝上げ機構50により臥位状態および座位状態の双方における膝上げが可能なため、これらの問題を抑制できる。
【0111】
本実施形態においては、脚ボトム12の端部が第1プレート17および第2プレート18で構成され、これらプレート17,18がそれぞれ第1リンク71L,71Rおよび第2リンク72L,72Rを介して第2スライドフレーム32に連結されている。しかも、第1リンク71L,71Rが有する回動軸の数と、第2リンク72L,72Rが有する回動軸の数が異なる。このような構成であれば、臥位状態から座位状態への変形に際して、第1プレート17および第2プレート18を互いにスライドさせながら腰ボトム11の下方に引き込むことができる。
【0112】
図4を参照して説明したように、臥位状態において第1プレート17および第2プレート18が重なる面積よりも、座位状態においてこれらプレート17,18が重なる面積の方が小さい。この場合、臥位状態におけるボトムユニット1の面積を広く確保しつつも、座位状態における脚ボトム12をコンパクト化することができる。
【0113】
本実施形態においては、ボトムユニット1を臥位状態から座位状態に変形させるための座位変形ボタン5aを座位状態への変形完了後に再度押すことで、腰上げ機構60によりボトムユニット1を前傾(腰上げ)させることが可能である。このように一つのボタンの操作で座位状態への変形とその後の腰上げが実行されれば、利用者がベッド装置Bから降りる一連の動作を極めて円滑に行うことができる。
【0114】
本実施形態においては、図16および図17を参照して説明したローラ46および突条部49を含む構造により、座位状態への変形に際してサイドボトム10L,10Rが中央ボトム10Cに対して傾斜する。これにより、座位状態において利用者の上半身の左右が支持されるため、ベッド装置Bの安全性が向上する。しかも、サイドボトム10L,10Rは背ボトム10を立ち上げる背上げ機構40の動作に伴い傾斜するので、サイドボトム10L,10Rを傾斜させるための専用の駆動源が不要である。
【0115】
なお、サイドボトム10L,10Rを傾斜させる必要が無い場合には、可動ロッド45を図16に示したように突条部49と重ならない位置に退避させておけばよい。
【0116】
その他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。本実施形態によれば、臥位状態から座位状態に変形可能なベッド装置Bの利便性が格段に向上する。
【0117】
なお、上記実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、上記実施形態にて開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
原出願の出願当初の特許請求の範囲に記載された請求項を以下に付記する。
[請求項1]
ベッドフレームと、
背ボトムと、
前記背ボトムに連結された腰ボトムと、
前記腰ボトムに連結された大腿部ボトムを含む脚ボトムと、
前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記大腿部ボトムが前記ベッドフレームの端部に位置した座位状態とに変形させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、前記臥位状態および前記座位状態の各々において、前記腰ボトムに連結された前記大腿部ボトムの一端を軸として前記大腿部ボトムを回動させることが可能である、ベッド装置。
[請求項2]
前記座位状態において、前記脚ボトムの一部が前記腰ボトムの下方に位置するように前記脚ボトムが屈曲する、
請求項1に記載のベッド装置。
[請求項3]
前記駆動機構は、
前記背ボトムおよび前記腰ボトムを支持するとともに、前記ベッドフレームに取り付けられた第1スライドフレームと、
前記脚ボトムを支持するとともに、前記第1スライドフレームに取り付けられた第2スライドフレームと、を含み、
前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して、前記第1スライドフレームが前記ベッドフレームに対して第1方向に移動し、前記第2スライドフレームが前記第1スライドフレームに対して前記第1方向と反対の第2方向に移動し、前記第2スライドフレームが前記第2方向に移動している間に前記脚ボトムの一部が前記腰ボトムの下方に引き込まれる、
請求項2に記載のベッド装置。
[請求項4]
前記駆動機構は、
前記第1スライドフレームに設けられたシャフトと、
前記シャフトに連結されたアームと、
前記アームの先端に設けられるとともに前記大腿部ボトムの裏面に接したローラと、
前記シャフトを軸として前記アームおよび前記ローラを回動させる駆動源と、を含み、
前記臥位状態および前記座位状態の各々において、前記駆動源が前記シャフトを軸として前記アームおよび前記ローラを回動させることにより、前記腰ボトムに連結された前記大腿部ボトムの一端を軸として前記大腿部ボトムが回動する、
請求項3に記載のベッド装置。
[請求項5]
ベッドフレームと、
背ボトムと、
前記背ボトムに連結された腰ボトムと、
少なくとも一部が互いに重なる第1プレートおよび第2プレートを含む脚ボトムと、
前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記第1プレートおよび前記第2プレートが前記腰ボトムの下方に位置する座位状態とに変形させる駆動機構と、を備え、
前記駆動機構は、
前記背ボトムおよび前記腰ボトムを支持するとともに、前記ベッドフレームに取り付けられた第1スライドフレームと、
前記第1スライドフレームに取り付けられた第2スライドフレームと、
前記第1プレートと前記第2スライドフレームを複数の回動軸において回動可能に連結する第1リンクと、
前記第2プレートと前記第2スライドフレームを前記第1リンクと異なる数の回動軸において回動可能に連結する第2リンクと、を含み、
前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して、前記第1スライドフレームが前記ベッドフレームに対して第1方向に移動し、前記第2スライドフレームが前記第1スライドフレームに対して前記第1方向と反対の第2方向に移動し、これにより前記第1プレートと前記第2プレートが互いにスライドしながらそれぞれ前記第1リンクおよび前記第2リンクにより前記腰ボトムの下方に向けて回動する、ベッド装置。
[請求項6]
前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して、前記第1プレートおよび前記第2プレートは、互いに重なる面積が増す方向にスライドする、
請求項5に記載のベッド装置。
[請求項7]
前記駆動機構は、
前記ベッドフレームに取り付けられ、前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して前記第1スライドフレームを前記第1方向に押す第1駆動源と、
前記第1スライドフレームに取り付けられ、前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して前記第2スライドフレームを前記第2方向に引く第2駆動源と、を含む、
請求項5又は6に記載のベッド装置。
[請求項8]
ベッドフレームと、
背ボトムと、
前記背ボトムに連結された腰ボトムと、
前記腰ボトムに連結された大腿部ボトムを含む脚ボトムと、
前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記大腿部ボトムが前記ベッドフレームの端部に位置した座位状態とに変形させる駆動機構と、
前記臥位状態から前記座位状態への変形のコマンドを入力するボタンを含む入力装置と、を備え、
前記駆動機構は、
前記ベッドフレームに取り付けられた水平フレームと、
前記水平フレームに対して回動可能に連結されるとともに前記背ボトムおよび前記腰ボトムを支持するチルトフレームと、を含み、
さらに、前記駆動機構は、前記臥位状態において前記ボタンが操作されたことに応じて前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを前記座位状態に変形させ、その後に前記ボタンが再度操作されたことに応じて少なくとも前記背ボトムが前傾するように前記チルトフレームを前記水平フレームに対して傾ける、ベッド装置。
[請求項9]
ベッドフレームと、
背ボトムと、
前記背ボトムに連結された腰ボトムと、
前記腰ボトムに連結された大腿部ボトムを含む脚ボトムと、
前記背ボトム、前記腰ボトムおよび前記脚ボトムを、少なくとも前記背ボトムが水平な臥位状態と、前記背ボトムが立ち上がるとともに前記大腿部ボトムが前記ベッドフレームの端部に位置した座位状態とに変形させる駆動機構と、を備え、
前記背ボトムは、
前記腰ボトムが連結された中央ボトムと、
前記中央ボトムの幅方向における両側に対してそれぞれ回動可能に連結された一対のサイドボトムと、
前記一対のサイドボトムの各々の裏面に設けられ、前記幅方向と交差する長手方向に沿って延びる一対の突条部と、を含み、
前記駆動機構は、前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して前記一対の突条部をそれぞれ押すことにより前記一対のサイドボトムの各々を前記中央ボトムに対して傾斜させる一対のローラを含む、ベッド装置。
[請求項10]
前記一対の突条部の各々は、前記腰ボトムに向かうに連れて前記裏面からの高さが増す傾斜面を有し、
前記臥位状態から前記座位状態への変形に際して、前記一対のローラがそれぞれ前記一対の突条部の前記傾斜面を前記裏面からの高さが小さい位置から当該高さが大きい位置に向けて転がり、これにより前記一対のサイドボトムの各々が前記中央ボトムに対して傾斜する、
請求項9に記載のベッド装置。
【符号の説明】
【0118】
B…ベッド装置、1…ボトムユニット、2…駆動機構、3…ベッドフレーム、4…ベースフレーム、5…入力装置、6…制御装置、10…背ボトム、10C…中央ボトム、10L,10R…サイドボトム、11…腰ボトム、12…脚ボトム、13…第1腰ボトム、14…第2腰ボトム、15…大腿部ボトム、16…膝ボトム、17…第1プレート、18…第2プレート、31…第1スライドフレーム、32…第2スライドフレーム、33…水平フレーム、34…チルトフレーム、41…背上げフレーム、46…ローラ、49…突条部、51L,51R…膝上げアーム、52L,52R…膝上げローラ、M1…昇降モータ、M2…第1スライドモータ、M3…第2スライドモータ、M4…背上げモータ、M5…膝上げモータ、M6…腰上げモータ。
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