(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】薬剤識別装置、及び薬剤識別方法
(51)【国際特許分類】
A61J 3/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
(21)【出願番号】P 2022501862
(86)(22)【出願日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2021005416
(87)【国際公開番号】W WO2021166823
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020028454
(32)【優先日】2020-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149837
【氏名又は名称】富士フイルム富山化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】奥津 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智久
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-309198(JP,A)
【文献】登録実用新案第3218090(JP,U)
【文献】国際公開第2012/081261(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070485(US,A1)
【文献】特開平08-322913(JP,A)
【文献】特開2011-36485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/00
B65B 1/30
B65B 57/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が分包された分包袋を投入するための投入口と、
前記投入口から投入された前記分包袋を搬送する搬送路と、
前記搬送路の上で、前記薬剤を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子により撮像された前記薬剤の画像に基づいて前記薬剤を識別するプロセッサと、
前記投入口の上流に配置され
、前記分包袋を
水平状態で収容する収容ケースと、
前記収容ケースを振動させる振動装置と、
を有する薬剤識別装置。
【請求項2】
前記振動装置は、前記収容ケースを水平方向に振動する、請求項1に記載の薬剤識別装置。
【請求項3】
前記振動装置は、前記収容ケースを前記分包袋の搬送方向に対し直交する方向に振動する、請求項2に記載の薬剤識別装置。
【請求項4】
前記振動装置は、モーターと前記モーターに取り付けられたカムとを備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の薬剤識別装置。
【請求項5】
前記収容ケースは、前記投入口の位置に位置調整された水平ガイド路を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の薬剤識別装置。
【請求項6】
前記搬送路の上で、前記分包袋の中の前記薬剤を散開する分散装置を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の薬剤識別装置。
【請求項7】
投入口から投入された、薬剤が分包された分包袋を、搬送路の上で搬送する搬送工程と、
前記搬送路の上で、前記薬剤を撮像する撮像工程と、
撮像された前記薬剤の画像に基づいて前記薬剤を識別する識別工程と、
を備える薬剤識別方法であって、
前記投入口の上流に配置され
、収容ケースに前記分包袋を
水平状態で収容し、前記収容ケースを振動する振動工程を備える、薬剤識別方法。
【請求項8】
前記振動工程では、前記収容ケースを水平方向に振動する、請求項7に記載の薬剤識別方法。
【請求項9】
前記振動工程では、前記収容ケースを前記分包袋の搬送方向に対し、直交する方向に振動する、請求項8に記載の薬剤識別方法。
【請求項10】
前記振動工程では、前記分包袋を前記投入口に投入する前に前記収容ケースを振動する、請求項7から9のいずれか一項に記載の薬剤識別方法。
【請求項11】
前記振動工程では、前記分包袋を前記投入口に投入した後に前記収容ケースを振動する、請求項7から9のいずれか一項に記載の薬剤識別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤識別装置、及び薬剤識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、病院や薬局等では、分包装置、及び監査装置が導入されている。処方データに基づいて薬剤を分包袋に収納する分包作業が分包装置により実施されている。分包装置から排出された分包袋に処方データの通りに薬剤が収納されているかを検査する監査作業が監査装置により実施されている。
【0003】
分包装置から排出された分包袋では、薬剤同士が重なり合っている場合がある。薬剤同士の重なりがあると、監査装置において監査が正確に実施できない場合がある。このような課題に対応するため、例えば、特許文献1は、搬送路の上流側で、上方に設けられた加振手段により、加振手段と搬送路間に設けた振動空間で分包紙を上下に振ることで、複数の錠剤を適切に分離させることを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、加振手段の下流の振動空間では、分包袋の中で薬剤が進行方向の前側に寄っている状態である。そのため、分包袋の中で薬剤同士が重なるため、振動を加えても薬剤を分離することは難しい。また、加振手段の上流側では分包袋が下方から上方の加振手段に向けて供給され、加振手段の下流側では上方から下方の搬送路に供給される。そのため、分包袋の中の薬剤に対して分包袋の張力が働き、薬剤が移動し難い。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、分包袋の中の薬剤同士の重なりを分散可能な薬剤識別装置、及び薬剤識別方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様の薬剤識別装置は、薬剤が分包された分包袋を投入するための投入口と、投入口から投入された分包袋を搬送する搬送路と、搬送路の上で、薬剤を撮像する撮像素子と、撮像素子により撮像された薬剤の画像に基づいて薬剤を識別するプロセッサと、投入口の上流に配置された分包袋を収容する収容ケースと、収容ケースを振動させる振動装置と、を有する。第1態様によれば、分包袋の中の薬剤同士の重なりを分散できる。
【0008】
第2態様の薬剤識別装置において、振動装置は、収容ケースを水平方向に振動する。第2態様によれば、分包袋を水平方向に振動でき、分包袋の中で薬剤を水平方向に分散できる。
【0009】
第3態様の薬剤識別装置において、振動装置は、収容ケースを分包袋の搬送方向に対し直交する方向に振動する。第3態様によれば、分包袋を幅方向に振動でき、分包袋の中で薬剤を幅方向に分散できる。
【0010】
第4態様の薬剤識別装置において、振動装置は、モーターとモーターに取り付けられたカムとを備える。第4態様によれば、収容ケースを容易に振動できる。
【0011】
第5態様の薬剤識別装置において、収容ケースは、投入口の位置に位置調整された水平ガイド路を備える。第5態様によれば、投入口までの水平搬送路を長くでき、薬剤を搬送方向に分散しやすくなる。
【0012】
第6態様の薬剤識別装置において、搬送路の上で、分包袋の中の薬剤を散開する分散装置を備える。第6態様によれば、搬送路の上で、薬剤の分散をできる。
【0013】
第7態様の薬剤識別方法は、投入口から投入された、薬剤が分包された分包袋を、搬送路の上で搬送する搬送工程と、搬送路の上で、薬剤を撮像する撮像工程と、撮像された薬剤の画像に基づいて薬剤を識別する識別工程と、を備える薬剤識別方法であって、投入口の上流に配置された収容ケースに分包袋を収容し、収容ケースを振動する振動工程を備える。第7態様によれば、分包袋の中の薬剤同士の重なりを分散できる。
【0014】
第8態様の薬剤識別方法において、振動工程では、収容ケースを水平方向に振動する。第8態様によれば、分包袋を水平方向に振動でき、分包袋の中で薬剤を水平方向に分散できる。
【0015】
第9態様の薬剤識別方法において、振動工程では、収容ケースを分包袋の搬送方向に対し、直交する方向に振動する。第9態様によれば、分包袋を幅方向に振動でき、分包袋の中で薬剤を幅方向に分散できる。
【0016】
第10態様の薬剤識別方法において、振動工程では、分包袋を投入口に投入する前に収容ケースを振動する。
【0017】
第11態様の薬剤識別方法において、振動工程では、分包袋を投入口に投入した後に収容ケースを振動する。第10態様、及び第11態様は、収容ケースを振動する際の好ましい態様を規定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分包袋の中の薬剤同士の重なりを分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態の薬剤監査支援システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、レセプトコンピュータの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、分包機に備えられる包装機構の拡大図である。
【
図7】
図7は、分包装置の排出口から、分包袋が排出された状態を示す図である。
【
図8】
図8は、振動の前後での分包袋の中の薬剤の状態を示す図である。
【
図9】
図9は、収容ケースの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面にしたがって本発明の好ましい実施形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施形態により説明される。本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行うことができ、本実施形態以外の他の実施形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0021】
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ ~ ”を用いて表す場合は、“ ~ ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0022】
病院や薬局などで行われる薬剤処方作業は、大別して、処方データ入力作業と、ピッキング作業と、自動分包作業と、監査作業と、服薬指導及び処方作業とを含む。服薬指導及び処方作業では、薬剤師は、監査後に患者に対する服薬指導、並びに分包された薬剤の処方を行う。
【0023】
図1は薬剤監査支援システムの概略構成図である。
図1に示されるように、薬剤監査支援システム10は、分包装置100と、薬剤識別装置300と、レセプトコンピュータ500と、を備えている。
【0024】
処方データ入力作業では、処方箋に記載されている処方データを、薬剤師がレセプトコンピュータ500に入力する。処方データの例として、患者の氏名、年齢、薬剤の薬種、若しくは薬剤の名称、薬剤の分量、薬剤の用法、又は薬剤の用量などが挙げられる。本明細書における、薬剤の薬種の用語は、薬剤の種別、又は薬剤の種類と同義である。
【0025】
次いで、薬剤師は、レセプトコンピュータ500を操作して、レセプトコンピュータ500に接続しているプリンタ(不図示)から処方データを印刷する。
【0026】
ピッキング作業では、プリンタから出力された印刷物に記載の処方データに基づき、薬剤師が薬剤棚から処方データに対応する薬剤をピッキングする。薬剤の例として、錠剤、及びカプセル剤等が挙げられる。なお、ピッキング作業には、例えば、レセプトコンピュータに入力された処方データに基づき薬剤を自動的にピッキングする自動ピッキング装置を用いてもよい。
【0027】
本明細書において、方向を表す「上」「下」とは薬剤監査支援システムを通常使用される状態で設置した場合の「上」「下」を意味する。「縦」「横」とは、鉛直(V)の方向が「縦」を意味し、鉛直は略鉛直を含み、例えば、鉛直の方向を0°とした場合、±20°の範囲が含まれる。水平(H)の方向が「横」を意味し、水平は略水平を含み、例えば、水平の方向を0°とした場合、±20°の範囲が含まれる。「縦方向の姿勢」及び「横方向の姿勢」は、連続する分包袋の短手方向(又は幅方向ともいう)を基準に「縦」「横」を判断する。「上流」、及び「下流」とは、分包紙、又は分包袋の搬送方向に関連して、ある基準に対して搬送方向の側が「下流」を、搬送方向と反対の側が「上流」を意味する。
【0028】
<レセプトコンピュータ>
レセプトコンピュータ500は、プロセッサ等を備える制御装置501と、ディスプレイ装置で構成される表示装置502と、キーボードで構成される入力装置504と、を備える。レセプトコンピュータ500は、例えば、病院内のネットワーク20に接続される。
【0029】
図2は、レセプトコンピュータ500の構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、レセプトコンピュータ500の制御装置501は、各種制御を行うプロセッサ506と、各種データを記憶する記憶装置508と、外部ネットワークとの間のデータ通信を行う通信インタフェース510を備える。制御装置501は、表示装置502と、入力装置504とに電気的に接続される。レセプトコンピュータ500の制御装置501は通信インタフェース510を介して病院内のネットワーク20に接続される。
【0030】
<分包機>
図1に示されるように、分包装置100は、ネットワーク20に接続された分包機コントローラ101と、分包機コントローラ101により制御され分包作業を行う筐体102とを有する。分包装置100
の筐体102は、複数の薬剤を保管するための複数のフィーダ104を備える。複数のフィーダ104は、縦と横に配置される
。正面から見て奥側にも複数のフィーダ104を配置できる。フィーダ104は、保管されている薬剤を下側に一錠ずつ落下できる。
【0031】
分包機コントローラ101は不図示のプロセッサを備える。プロセッサは、レセプトコンピュータ500からの処方データに基づいて、必要なフィーダ104を選択し、保管された薬剤をフィーダ104から下側に落下できる。一包分の薬剤が下側に落下される。フィーダ104は、薬剤を収容するカセットと、カセットから薬剤を下側に案内するシュータ等で構成できる。
【0032】
図3に示されるように、分包装置100
の筐体102は、フィーダ104の下側に、ホッパー106を備える。ホッパー106は、上側に広く開口を有し、下側に上側より狭い開口を有する筒状の部材である。ホッパー106は、上側のフィーダ104(
図1参照)から落下する薬剤50を収集し、下側で薬剤を一か所に集める。ホッパー106の下側に、投入管108を備える。
【0033】
投入管108の下側に、包装機構110を備える。ホッパー106で集められた薬剤50は、投入管108により包装機構110に案内される。投入管108は、上下に貫通する筒形状の部材である。投入管108は、断面が円形状であっても、楕円形状であってもよい。また、投入管108は、円筒形状でも、錐台形状であってもよい。包装機構110に薬剤50を案内できれば、投入管108の形状は特に限定されない。薬剤50は、例えば、錠剤、カプセル剤等である。
【0034】
包装機構110は、分包紙112を送り出す供給機構114と、分包紙112を熱融着するヒートシール機構116と、を備える。分包紙112は、熱融着性の素材で構成される。分包紙112は、長尺のシートを短手方向に二つ折りにしてロール状に巻かれた状態である。
【0035】
ヒートシール機構116は、例えば、縦配置された縦熱ヘッド116Aと横配置された横熱ヘッド116Bとを有する。ヒートシール機構116は搬送される分包紙112に縦シール部118Aと横シール部118Bとを形成できる。
【0036】
供給機構114は、例えば、ロール状の分包紙112を保持する軸と、軸を回転する駆動モーター等により構成される。分包機コントローラ101は駆動モーターを間欠的に、又連続的に回転駆動できる。
【0037】
分包紙112は、二つ折りの部分を下側に位置された縦方向の姿勢で搬送される。例えば、ヒートシール機構116の縦熱ヘッド116Aにより縦シール部118Aが分包紙112に形成される。ヒートシール機構116の縦熱ヘッド116Aに、ミシン目形成機(不図示)が設けられている。ミシン目形成機は、例えば、分包紙112を貫通できる複数の刃等を備える。縦熱ヘッド116Aが分包紙112を両側から熱融着する際、ミシン目形成機により縦シール部118Aにミシン目118Cが形成される。分包紙112は半閉じの状態になる。
【0038】
次いで、半閉じの分包紙112が投入管108を通過する。一包分の薬剤50が、投入管108から半閉じの分包紙112に供給される。次いで、ヒートシール機構116の横熱ヘッド116Bにより横シール部118Bが形成される。
【0039】
分包紙112が、ヒートシール部(縦シール部118Aと横シール部118B)とミシン目118Cにより、1包ごとに区分けされた分包袋118とされる。なお、ミシン目118Cに沿って連続する分包袋118を切り離すことにより、連続する分包袋118は個別の分包袋118に分離される。
【0040】
包装機構110は、プリントヘッド122を備えることができる。プリントヘッド122は、分包紙112に印字を行う。印字される情報は、例えば、患者名、薬剤の名称、及び用法などを含む。
【0041】
図1に示されるように、分包装置100は、排出口120から、連続する分包袋118を排出する。排出口120は長方形の開口である。排出口120は、その長辺が鉛直方向に対して、正面視で右側に略45°傾斜するよう構成されている。排出口120から排出された分包袋118は、排出口120の下方に配置された収容ケース124に蓄えられる。
【0042】
<薬剤識別装置>
図1に示されるように、薬剤識別装置300は、筐体301を有する。筐体301は、連続する分包袋118を投入するための投入口302と、連続する分包袋118を排出する排出口334を備える。本態様に係る薬剤識別装置300は、例えば薬剤鑑別、薬剤監査支援に適用することができる。
【0043】
筐体301の上には、表示装置336を備える。表示装置336には、各種の情報が表示される。各種の情報には、例えば、レセプトコンピュータ500又は分包機コントローラ101から入力された患者の処方情報、分包情報、照合結果等の情報等が含まれる。
【0044】
投入口302と排出口334とは、鉛直方向に沿って、上下に配置されている。実施形態では、投入口302が上方で、排出口334が下方に配置される。排出口334の下流に、収容ボックス400が配置されている。収容ボックス400は、排出口334から排出された分包袋118を収容する。
【0045】
投入口302の上流に、監査前の分包袋118を収容する収容ケース200と、収容ケース200を支持するフレーム210と、収容ケース200を振動する振動装置220と、を備える。フレーム210及び振動装置220は、筐体301に対して分離可能である。収容ケース200は、分包装置100で使用した収容ケース124であってもよく、また、別であってもよい。
【0046】
フレーム210は、収容ボックス400を囲うように設けられた4辺で構成される基台210Aと、基台210Aから鉛直方向に延びる2本の支柱210Bと、を備える。フレーム210には、ガイドレール212と、ガイドレール212に取り付けられたベースプレート214とが備えられている。
【0047】
図4は、薬剤識別装置300の拡大図である。
図4に示されるように、2本の支柱210Bの先端の側からそれぞれ、水平方向に延びる2辺と、2辺を連結する1辺と、から構成される上台210Cを備える。上台210Cは3辺でU字型形状を有している。水平方向に延びる2辺は、分包袋118の搬送方向Fに対して、直交する。
【0048】
上台210Cの水平方向に延びる2辺の上には、それぞれの辺に平行であるガイドレール212が設けられている。ベースプレート214が2本のガイドレール212にスライド可能に取り付けられている。
【0049】
ベースプレート214には、開口が形成され、収容ケース200が開口に挿入される。収容ケース200の壁面には段差が形成されている。収容ケース200の段差と、開口を画定するベースプレート214の周縁とが接するので、ベースプレート214は収容ケース200を支持できる。
【0050】
ベースプレート214は収容ケース200を支持した状態で、ガイドレール212に沿って移動できる。移動は、水平方向であり、かつ分包袋118の搬送方向に対し直交する方向である。また、移動は往復直線運動できる。
【0051】
振動装置220はモーター221と、モーター221に取り付けられたカム222により構成される。モーター221が、ブラケット224を介して、フレーム210の上台210Cに保持されている。モーター221が回転するとカム222が回転する。
【0052】
ベースプレート214には、ベースプレート214に対して鉛直方向の上方に延びるU字型の連結部材226が設けられている。カム222が、U字型の連結部材226の空間に収容されている。
【0053】
図5は振動装置220を含む部分拡大図である。
図5に示されるように、モーター221には、カム222が取り付けられている。カム222は、モーター221の軸心から偏心されている。モーター221が回転するとカム222が回転する。カム222の回転により、連結部材226が往復運動する。連結部材226がベースプレート214に連結されているので、ベースプレート214がガイドレール212に沿って往復運動する。ベースプレート214に挿入された収容ケース200が、ベースプレート214の動きと同期して往復運動する。モーター221とカム222により構成される振動装置220が、連結部材226とベースプレート214とを介して収容ケース200(不図示)を振動できる。振動は、モーター221の回転数、カム222の大きさ等により制御できる。
【0054】
図6は薬剤識別装置300の概略構成図である。
図6に示されるように、薬剤識別装置300は、投入口302の上流に上述した、収容ケース200と、収容ケース200を支持するフレーム210と、収容ケース200を振動する振動装置220を備える。
【0055】
筐体301には薬剤識別装置300の全体を制御するプロセッサ303が備えられている。薬剤識別装置300のプロセッサ303は、ネットワーク20(
図1参照)に接続され、レセプトコンピュータ500、及び分包機コントローラ101から処方情報を得ることができる。
【0056】
筐体301の内部であって、投入口302の下流に、上流の一対の第1搬送ローラ304と、下流の一対の第2搬送ローラ306とを備える。投入口302は、分包袋118を横方向の姿勢(水平状態)で投入できる向きとされる。第1搬送ローラ304、及び第2搬送ローラ306は、連続する分包袋118を上下方向から、かつ横シール部118Bを挟持する。横シール部118Bを挟持することにより、薬剤50が第1搬送ローラ304及び第2搬送ローラ306に挟み込まれて損傷を受けることを回避できる。なお、
図6において、薬剤50は図示されていない。
【0057】
第1搬送ローラ304と第2搬送ローラ306との間の搬送路に撮像領域が設けられる。撮像領域では、搬送路の上側に第1カメラ308が配置され、搬送路の下側に第2カメラ310が配置される。第1カメラ308及び第2カメラ310は、例えば、デジタルカメラである。デジタルカメラは、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等により構成される撮像素子を含む。
【0058】
複数の光源312が、搬送路の上側と下側とに配置される。搬送路の上側には4つの光源312が、第1カメラ308の撮像光軸を中心に同一円周上に、等間隔に配置される。同様に、搬送路の下側には4つの光源312が、第2カメラ310の撮像光軸を中心に同一円周上に、等間隔に配置される。
【0059】
搬送路の撮像領域は、透明部材で構成される。第1カメラ308と第2カメラ310とは、搬送される分包袋118の分包されている薬剤50を、上下方向から撮像する。撮像領域では、分包袋118は、水平状態になる。分包袋118の縦シール部118A、横シール部118B、及び二つ折り部分で囲まれた面が水平状態とされる。撮像領域には、不図示の分散装置を設けることが好ましい。
【0060】
第1カメラ308及び第2カメラ310が一包ごとに薬剤50を撮像する。撮像された画像データから、プロセッサ303が画像認識技術を利用することにより、薬剤50の重なりの有無を判断する。
【0061】
「重なり有り」と判断されると、プロセッサ303が分散装置を動作させ、分包袋118の中で複数の薬剤50の重なりを解消する。分散装置を動作させることにより、第1カメラ308及び第2カメラ310は、分包袋118の中の薬剤50を正確に撮像できる。分散装置は、公知の技術(例えば、特開2018-029949号等)を適用できる。公知の技術では、例えば、撮像領域で薬剤50を撮像するため分包袋118の搬送が一旦停止され、分散装置を搬送方向に沿って上流と下流の間を、薬剤50の重なりが解消するまで往復運動させる。第1カメラ308及び第2カメラ310が、再度薬剤50を撮像する。一方、「重なり無し」と判断されると、分散装置を動作させず、第1カメラ308及び第2カメラ310は薬剤50を再度撮像しない。
【0062】
重なりの有無は、例えば、特定形状の薬剤50の数をカウントし、その数が処方データに登録されている数と一致した場合に、「重なり無し」と判断できる。
【0063】
次に、撮像された画像データから、プロセッサ303が画像認識技術を利用し、分包袋118の中の薬剤50の個数、形状、大きさ、色、刻印、及び文字等の薬剤情報を抽出する。プロセッサ303が、レセプトコンピュータ500から処方情報と、抽出された薬剤情報とを照合し、照合結果を表示装置336に表示する。薬剤50が識別される。
【0064】
撮像領域の下流にはガイド314が配置される。ガイド314は分包袋118を下側の搬送路に案内する。
【0065】
薬剤識別装置300は、ラベルプリンター機構316を備えることができる。搬送路を挟んでラベルプリンター機構316に対向する位置に第3カメラ330が配置される。第3カメラ330は、分包袋118の縦シール部118Aに形成されたミシン目118Cを撮像し、位置を検出する。ミシン目118Cの検出位置を基準に、ラベルを貼り付ける位置が調整される。
【0066】
ラベルプリンター機構316は、ラベル付きの台紙318を送り出す供給機構320と、ラベルプリンター322と、ラベル剥離機構324と、台紙を巻き取る巻取機構326とを備える。供給機構320は、例えば、ロール状のラベル付きの台紙318を保持する軸と、軸を回転する駆動モーター等により構成される。ラベルプリンター322は、例えば、サーマルヘッドプリンターで構成される。巻取機構326は、ラベルなしの台紙318を巻き取る軸と、軸を回転する駆動モーター等により構成される。ラベル付きの台紙318を折り曲げることにより、印字済のラベル先端が台紙から剥離される。剥離された印字済のラベルを一対のベルト搬送機構の間を通過させることにより、印字済のラベルが分包袋118に向けて搬送される。印字済のラベルが分包袋118に貼り付けられる。
【0067】
包装機構110のプリントヘッド122と、薬剤識別装置300のラベルプリンター機構316とは、併用することも、いずれか一方のみ使用できる。
【0068】
ラベルプリンター機構316の下流に一対の第3搬送ローラ332が配置される。第3搬送ローラ332は、ラベルを貼り付けた連続する分包袋118を、排出口334から排出する。排出口334から排出された分包袋118は、収容ボックス400に収容される。実施形態では、収容ボックス400を示したが、収容ボックス400に代えて、巻取り装置を配置してもよい。巻取り装置は、巻取り軸と、巻取り軸を駆動する駆動モーター等で構成される。
【0069】
次に、薬剤識別装置300の動作を説明する。
図7は、分包装置100の排出口120から、分包袋118が排出された状態を示している。
図7に示されるように、排出口120が略45°傾斜しているため、分包装置100から排出された際、分包袋118の中の薬剤50は、重力により分包袋118の一方の隅に偏っている。複数の薬剤50が重なり合っている。
【0070】
分包装置100から排出された状態では、薬剤50が分包袋118の中で一方の隅に偏った状態で薬剤識別装置300に搬送されることになる。分散装置が薬剤識別装置300の撮像領域に備えられたとしても、薬剤50を散開させるのに時間を要する懸念がある。分包袋118を停止した状態で、分散装置を動作させる場合、散開の時間を短くすることは、薬剤識別装置300のスループットを向上させる上で重要となる。
【0071】
図1及び
図4に示されるように、分包装置100の排出口120から排出された分包袋118が、収容ケース200に収容される。分包袋118の先端が、薬剤識別装置300
の投入口302に投入される。モーター221を回転させることでカム222が回転する。連結部材226が、カム222の回転により往復直線運動する。連結部材226は、ガイドレール212に沿って移動可能なベースプレート214に取り付けられているので、ベースプレート214が搬送方向に直交する方向に往復運動し、ベースプレート214に支持された収容ケース200を搬送方向に直交する方向に振動する。カム222の回転運動が、連結部材226とベースプレート214とガイドレール212とにより往復直線運動に変換される。
【0072】
分包袋118は、収容ケース200の収容された状態では水平に配置される。収容ケース200が、水平方向で、かつ搬送方向に直交する方向に振動され、分包袋118が収容ケース200の中で、水平方向で、かつ搬送方向に直交する方向に振動される。
【0073】
図8の8-1に示されるように、振動を加える前では、薬剤50が分包袋118の一方の隅に偏った状態にある。次に、
図8の8-2に示されるように、収容ケース200の収容された分包袋118を搬送方向に直交する方向に振動することにより、分包袋118の中で薬剤50を分包袋118の幅方向に分散できる。
【0074】
収容ケース200は連続する分包袋118が収納されているので、収容ケース200を振動することにより連続する分包袋118の全ての薬剤50を、同時に分散できる。薬剤50が幅方向に分散された分包袋118が、投入口302から筐体301に中に搬送される。
【0075】
図1及び
図4の実施形態では、分包袋118の先端を投入口302に投入した後に収容ケース200を振動する場合を説明した。これに限定されず、分包袋118の先端を投入口302に投入する前に収容ケース200を振動し、その後、分包袋118の先端を投入口302に投入してもよい。分包袋118を投入口302に投入した後、分包袋118を投入口302から送り込みながら収容ケース200を振動しても良い。収容ケース200に収容された分包袋118が、収容ボックス400に排出されるまでの間、定期的に、又は不定期に、収容ケース200を振動できる。
【0076】
図9は、収容ケース200の変形例を示す。
図9に示されるように、収容ケース200の上に水平ガイド路240が設置されている。水平ガイド路240は脚242を備える。収容ケース200の開口の縁に脚242が載せられている。脚242により高さが調整され、水平ガイド路240は投入口302の位置に位置調整される。投入口302の位置とは高さ方向の位置であり、投入口302と水平ガイド路240とは同じ高さに位置する。同じ高さは、略同じ高さを含み、水平ガイド路240は投入口302を基準に±50mm程度の範囲に位置すればよい。収容ケース200の変形例では、分包袋118が水平ガイド路240の上に位置する状態で、振動装置220により分包袋118を振動できる。投入口302までの水平搬送路を長くすることで、分包袋118の薬剤50(不図示)が、搬送方向に分散しやすくなる。
【0077】
実施形態に係るレセプトコンピュータ500を実現するプロセッサ506、分包機コントローラ101のプロセッサ、及び薬剤識別装置300のプロセッサ303は、以下のプロセッサ(processor)で構成できる。各種プロセッサには、プログラムを実行して機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device;PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。1つのプロセッサは、上記各種プロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。例えば、1つのプロセッサは、複数のFPGA、あるいは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数のプロセッサを1つのプロセッサで構成してもよい。複数のプロセッサを1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip;SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種のプロセッサは、ハードウエア的な構造として、上記各種プロセッサを1つ以上用いて構成される。さらに、これらの各種のプロセッサのハードウエア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0078】
上述の実施形態では、収容ケース200を、水平方向、及び搬送方向Fに直交する方向に振動する場合を示したが、分包袋118の中の薬剤50を分散できれば、他の方向に収容ケース200を振動できる。例えば、収容ケース200を搬送方向Fと同じ方向に振動し、分包袋118の中の薬剤50を分包袋118の長手方向に分散できる。
【符号の説明】
【0079】
10 薬剤監査支援システム
20 ネットワーク
50 薬剤
100 分包装置
101 分包機コントローラ
102 筐体
104 フィーダ
106 ホッパー
108 投入管
110 包装機構
112 分包紙
114 供給機構
116 ヒートシール機構
116A 縦熱ヘッド
116B 横熱ヘッド
118 分包袋
118A 縦シール部
118B 横シール部
118C ミシン目
120 排出口
122 プリントヘッド
124 収容ケース
200 収容ケース
210 フレーム
210A 基台
210B 支柱
210C 上台
212 ガイドレール
214 ベースプレート
220 振動装置
221 モーター
222 カム
224 ブラケット
226 連結部材
240 水平ガイド路
242 脚
300 薬剤識別装置
301 筐体
302 投入口
303 プロセッサ
304 第1搬送ローラ
306 第2搬送ローラ
308 第1カメラ
310 第2カメラ
312 光源
314 ガイド
316 ラベルプリンター機構
318 台紙
320 供給機構
322 ラベルプリンター
324 ラベル剥離機構
326 巻取機構
330 第3カメラ
332 第3搬送ローラ
334 排出口
336 表示装置
400 収容ボックス
500 レセプトコンピュータ
501 制御装置
502 表示装置
504 入力装置
506 プロセッサ
508 記憶装置
510 通信インタフェース