(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-27
(45)【発行日】2023-11-07
(54)【発明の名称】医療用途向け射出成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20231030BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20231030BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
C08L23/16
C08J7/00 305
C08J7/00 CES
C08L23/08
(21)【出願番号】P 2022510418
(86)(22)【出願日】2021-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2021011347
(87)【国際公開番号】W WO2021193422
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2020058435
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505130112
【氏名又は名称】株式会社プライムポリマー
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
(72)【発明者】
【氏名】和賀 義隆
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 渚
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-193791(JP,A)
【文献】特開2018-100338(JP,A)
【文献】特開2013-053183(JP,A)
【文献】特開2013-082828(JP,A)
【文献】特開2015-044979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン含量が1~5質量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(以下、MFRと略称することがある。)が10~100g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(a)の90質量%超97質量%以下と、エチレン含量が15~22質量%、MFRが1~50g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(b)3質量%以上10質量%未満とからなるプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)(ただし、(a)及び(b)の合計は100質量%である)88~95質量部、及び密度0.880~0.920g/cm
3のエチレン-α-オレフィンランダム共重合体であるエラストマー(B)5~12質量部(ただし、(A)及び(B)の合計は100質量部である)、および耐候安定剤を0.01~0.20質量部を含む医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物を用いて得られる射出成形品であって、
該射出成形品はγ線又は電子線滅菌されたものである医療用途向け射出成形品。
【請求項2】
前記エラストマー(B)は、メタロセン触媒を用いて重合され、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠したMFRが1~100g/10分であるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体である請求項1に記載の医療用途向け射出成形品。
【請求項3】
造核剤を含有する請求項1又は2に記載の医療用途向け射出成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明ポリプロピレン樹脂組成物を用いた医療用途向け射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系重合体は、成形加工性、力学特性、ガスバリヤー性に優れていることから、各種の方法で成形加工され、食品容器、キャップ、医療用器具、医療容器、日用品、自動車部品、電気部品、シート、フィルム、繊維等の各種用途に幅広く使用されている。
医療容器等の用途に使用されるプロピレン系樹脂組成物は、最終段階で各種滅菌処理に供されることから、これらの処理に対する耐性を有することが要求される。一般的に行う滅菌処理としては、高圧蒸気滅菌、エチレンオキサイドガス滅菌、放射線滅菌がある。放射線滅菌にはガンマ線照射による滅菌と、電子線、特に紫外線照射による滅菌とがある。
【0003】
このような医療用のプロピレン-エチレン系樹脂組成物として特許文献1,2が知られている。
【0004】
特許文献1には、エチレン含量が0.1~3重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が10~300g/10分であるチーグラー系プロピレン-エチレン共重合体(A)とエチレン含量が5~20重量%、MFRが1~50g/10分であるチーグラー系プロピレン-エチレン共重合体(B)からなる医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物であり、プロピレン-エチレン共重合体(A)とプロピレン-エチレン共重合体(B)の重量比が90:10~60:40、かつ、医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物のエチレン含量が2~8重量%であり、MFRが20~100g/10分である医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物(特許公報の請求項1)が開示されている。実施例における(A):(B)重量比は67:33~74:26と(B)含有量が比較的大きい。
【0005】
特許文献2には、エチレン含量が0.1~3重量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(MFR)が10~300g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(a)90~60重量%と、エチレン含量が5~20重量%、MFRが1~50g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(b)10~40重量%とからなり、総エチレン含量が2~8重量%及びMFRが10~100g/10分であるプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)(ただし、(a)及び(b)の合計は100重量%である)51~99重量部、及びエラストマー(B)1~49重量部を含有する医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物(ただし、(A)及び(B)の合計は100重量部である)(特許公報の請求項1)が開示されている。実施例におけるプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)における(a):(b)比は67:33~72:28と(b)含有量が比較的大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-44979号公報(特許第6390231号公報)
【文献】特開2015-193791号公報(特許第6497090号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、多量の重合ゴムもしくはポリエチレン(PE)成分を配合することで、プロピレン系樹脂組成物の透明性と耐衝撃性のバランスを確保していた。しかしながら、これらの配合成分は多量に配合することで、得られるプロピレン系樹脂組成物の剛性を低下させる課題を有していた。また、剛性の低下は生産性の低下、特に射出成形における高速成形性の低下を招くものとなっていた。
【0008】
一方、重合ゴムもしくはPE成分量を減らして透明性、耐衝撃性と共に剛性のバランスに優れた組成は知られていない。特に医療用途に適合した樹脂組成物は放射線滅菌後の耐衝撃性と低溶出性に優れるものが強く求められているのが現状である。
【0009】
本発明では、プロピレン系樹脂組成物の組成と配合する重合ゴムもしくはPE成分の最適化を図ることで、耐衝撃性と透明性の目標を達成すると共に、剛性向上並びに生産性の向上を達成できるプロピレン系樹脂組成物を用いた医療用途向け射出成型品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の[1]~[3]の態様を含むものである。
[1] エチレン含量が1~5質量%、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(以下、MFRと略称することがある。)が10~100g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(a)の90質量%超97質量%以下と、エチレン含量が15~22質量%、MFRが1~50g/10分であるプロピレン-エチレン共重合体(b)3質量%以上10質量%未満とからなるプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)(ただし、(a)及び(b)の合計は100質量%である)88~95質量部、及び密度0.880~0.920g/cm3のエチレン-α-オレフィンランダム共重合体であるエラストマー(B)5~12質量部(ただし、(A)及び(B)の合計は100質量部である)、および耐候安定剤を0.01~0.20質量部を含む医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物を用いて得られる射出成形品であって、該射出成形品はγ線又は電子線滅菌されたものである医療用途向け射出成形品。
【0011】
[2] 前記エラストマー(B)は、メタロセン触媒を用いて重合され、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠したMFRが1~100g/10分であるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体である[1]に記載の医療用途向け射出成形品。
[3] 造核剤を含有する[1]又は[2]に記載の医療用途向け射出成形品。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、エチレン含量の多いプロピレン-エチレン共重合体(b)の含有量を従来よりも少なくしても耐衝撃性と透明性の目標を達成すると共に、剛性向上並びに生産性の向上を達成できるプロピレン系樹脂組成物を提供することができ、また、この樹脂組成物は、放射線滅菌の実施される医療用途向け射出成型品として適合できるものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、これらの説明は、本発明の実施態様の一例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。
【0014】
[プロピレン-エチレン共重合体(a)]
本発明で使用するプロピレン-エチレン共重合体(a)は以下の特性1a及び2aを満足する。
(特性1a:MFR)
本発明に用いるプロピレン-エチレン共重合体(a)のMFRは10~100g/10分の範囲であることが必要であり、好ましくは20~60g/10分、より好ましくは20~40g/10分である。この範囲の下限値以上であると流動性の向上により成形加工性が良好となり、特に成形品の肉厚が2.5mm厚以下のものを成形した場合でも成形配向がかかり難くなり、衝撃を受けた場合、成形配向方向に亀裂が生じるのを防ぐことが出来、上限値以下のものは樹脂組成物の生産性が良好となり経済上好ましいと共に、成形品の放射線滅菌後の耐衝撃性に優れる。
MFR値の制御の方法は周知であり、重合条件である温度や圧力を調節したり、水素等の連鎖移動剤を重合時に添加する水素添加量の制御により、容易に調整を行うことができる。
なお、本発明において、プロピレン系樹脂のMFRは、JIS K7210:1999「プラスチック-熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」のA法、条件M(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定され、単位はg/10分である。また、分子量調整剤を用いてMFRをCR(コントロールドレオロジー)してMFRを調整する方法が一般に知られているが、本発明においてはCRせずに重合条件のみでMFRを調整することが成形時のエラストマー由来の樹脂焼け防止の観点から好ましい。
【0015】
(特性2a:エチレン含量)
本発明に用いるプロピレン-エチレン共重合体(a)のエチレン含量は1~5質量%の範囲であることが必要であり、好ましくは1.5~3.0質量%である。この範囲の下限値以上であると成形品の透明性が良好となると共に、放射線滅菌後の耐衝撃性に優れる。
また上限値以下であると結晶化温度の上昇により成形時の固化が速くなり成形加工性が良好となる。
エチレン含量は、重合時におけるプロピレンとエチレンのモノマー組成の制御によって調整することができる。
【0016】
[プロピレン-エチレン共重合体(b)]
本発明で使用するプロピレン-エチレン共重合体(b)は以下の特性1b及び2bを満足する。
(特性1b:MFR)
本発明に用いるプロピレン-エチレン共重合体(b)のMFRは1~50g/10分の範囲であることが必要であり、好ましくは1~30g/10分、より好ましくは1~20g/10分、最も好ましくは1~10g/10分である。この範囲の下限値以上であるとプロピレン-エチレン共重合体(a)への分散性が向上し、成形品にフィッシュアイが発生することを抑制することが可能となる。また上限値以下であると低結晶成分が表面にブリードしにくくなることにより薬剤吸着性が良好となると共に、放射線滅菌後の耐衝撃性が良好となる。また、分子量調整剤を用いてMFRをCR(コントロールドレオロジー)してMFRを調整する方法が一般に知られているが、本発明においてはCRせずに重合条件のみでMFRを調整することが成形時のエラストマー由来の樹脂焼け防止の観点から好ましい。
【0017】
(特性2b:エチレン含量)
本発明に用いるプロピレン-エチレン共重合体(b)のエチレン含量は15~22質量%の範囲であることが必要であり、好ましくは15~21質量%であり、より好ましくは15~19質量%であり、さらに好ましくは17~19質量%である。この範囲の下限値以上であると成形品の放射線滅菌後の耐衝撃性が向上する。また上限値以下であるとプロピレン-エチレン共重合体(a)との相溶性が向上することにより成形品の透明性が良好となると共に、プロピレン-エチレン共重合体(b)が成形品表面にブリードしにくくなることにより、べたつきや薬剤吸着性が良好となる。
【0018】
[プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)]
本発明に用いるプロピレン-エチレン共重合体(a)とプロピレン-エチレン共重合体(b)の質量比はプロピレン-エチレン共重合体(a)が90質量%超97質量%以下、プロピレン-エチレン共重合体(b)が3質量%以上10質量%未満の範囲であることが必要である。好ましくはプロピレン-エチレン共重合体(a)が91質量%~95質量%、プロピレン-エチレン共重合体(b)が5質量%~9質量%である。プロピレン-エチレン共重合体(a)の質量比の下限値90質量%超であると、成形品の剛性や水中での光線透過率が向上し、上限値97質量%以下であると成形品の耐衝撃性に優れる。
【0019】
なお、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)中のプロピレン-エチレン共重合体(a)、(b)の比率は、連続重合で製造した場合は、重合時の物質収支から求めた値であり、ブレンドにて製造した場合は、それぞれの処方比から求めた値である。
また、各エチレン含量は13C-NMR法で測定して求めた値である。
【0020】
本発明で用いられるプロピレン-エチレン共重合体(a)、及びプロピレン-エチレン共重合体(b)の製造方法としては、特に限定されるものではなく、メタロセン化合物含有触媒存在下あるいは、チーグラーナッタ触媒存在下で、プロピレンおよびエチレンを共重合することにより得られる。
【0021】
プロピレン-エチレン共重合体(a)、及びプロピレン-エチレン共重合体(b)の製造プロセスに関しては、前述の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよく、プロピレン-エチレン共重合体(a)、及びプロピレン-エチレン共重合体(b)の混合についても、前述の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよい。
【0022】
[エラストマー(B)]
本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物には密度0.880~0.920g/cm3のエチレン-α-オレフィンランダム共重合体であるエラストマー(B)を含む。前記エラストマー(B)としては、メタロセン触媒を用いて重合され、JIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠したMFRが1~100g/10分であるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体であることが好ましい。エラストマー(B)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0023】
プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)とエラストマー(B)との含有割合は、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)が88~95質量部、エラストマー(B)が5~12質量部であり、少ない量のエラストマー(B)中にプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)を分散させる。好ましくはプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)が90~95質量部、エラストマー(B)が5~10質量部である。この範囲内であると、高速成形性に優れ、放射線照射後の耐衝撃性が優れる樹脂組成物となる。
【0024】
前記エチレン-α-オレフィンランダム共重合体は、エチレンと炭素数3以上、20以下のα-オレフィンとのランダム共重合体エラストマーである。上記炭素数3以上、20以下のα-オレフィンとしては、具体的にはプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。
これらのα-オレフィンは、単独で又は組み合せて用いることができる。これらの中では、特にプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンが好ましく用いられる。さらに、α-オレフィンを組み合わせて用いるときは、プロピレン、1-ブテンを組み合わせることが好ましい。以下にエチレン-α-オレフィンランダム共重合体、エチレン-プロピレン-ブテンランダム共重合体についての詳細を記す。
【0025】
[エチレン-α-オレフィンランダム共重合体]
本発明に用いるエラストマー(B)の中でも、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体を特定量含有させることにより材料のモルフォロジーを変化させ、透明性、低臭気性、剛性及び低異物出現性を保持したまま、さらに耐衝撃性を向上させることができる。
このようなエチレン-α-オレフィンランダム共重合体は、密度が0.880~0.920g/cm3、好ましくは0.880~0.915g/cm3であるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体である。α-オレフィンの例としては、プロパン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン等を挙げることができる。
具体的なエチレン-α-オレフィンランダム共重合体の共重合体は、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-1-ブテンランダム共重合体、エチレン-1-ペンテンランダム共重合体、エチレン-1-ヘキセンランダム共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテンランダム共重合体、エチレン-3-メチル-1-ペンテンランダム共重合体、エチレン-1-ヘプテンランダム共重合体、エチレン-1-オクテンランダム共重合体、エチレン-1-デセンランダム共重合体等を挙げることができる。
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体のガラス転移温度(Tg)は-130℃~-20℃のものが使用できるが、一般には、プロピレン系重合体よりかなり低いので、これをプロピレン系重合体へブレンドして、透明性を維持しつつ放射線照射後の耐衝撃性を改良するという試みが為されているが、期待以上の成果を達成できなかった。しかし、本発明のプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)とエラストマー(B)の併用は優れた効果が期待できる。
【0026】
エチレン-α-オレフィンランダム共重合体のJIS K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠したメルトフローレイト(以下、MFR(190℃)と略称することがある。)は、好ましくは1~60g/10分、より好ましくは2~40g/10分である。この範囲にあると、医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物を構成するプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)とエチレン-α-オレフィンランダム共重合体(エラストマー(B))との混合状態が良好となり、透明性に優れた物性バランスのとれた医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物を安定的に得ることができる。
【0027】
また、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体をプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)に混合する際、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体とプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)とのMFR差が小さくなるほど、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体は、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)に微分散されたドメインとして存在する傾向があり、透明性が良好となるので望ましい。
具体的には、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体のMFR(190℃)/プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)のMFR比は、0.05~1.2が好ましく、0.1~1.0がさらに好ましい。この範囲は、本発明の医療用成形品としての透明性、異物の混入、臭気防止などの機能を適正に発現するためにおいても有意義であることが予測される。
【0028】
また、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体の密度は、プロピレン-エチレン系樹脂組成物の剛性と透明性の観点から、好ましくは0.880~0.920g/cm3、より好ましくは0.880~0.915g/cm3である。プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)に対し、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体を配合すると、透明性を悪化させる場合があるが、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)との密度差が小さいもの及びエチレン-α-オレフィンランダム共重合体とプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)のMFR比(エチレン-α-オレフィンランダム共重合体のMFR(190℃)/プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)のMFR)が0.5に近いエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を用いると、透明性の悪化傾向を緩和させることができ、耐衝撃性を向上させることができる。ここで、密度は、JIS K7112に準拠して測定する値である。
【0029】
このようなエチレン-α-オレフィンランダム共重合体は、オレフィンの立体規則性重合触媒を用い、分子量調整を図りつつ、エチレン及びα-オレフィンを共存させて重合することによって、製造することができる。具体的には、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体は、オレフィンの立体規則性重合触媒として、チーグラー触媒、フィリップス触媒、メタロセン触媒等の触媒を使用して、気相法、溶液法、高圧法、スラリー法等のプロセスで、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等のα-オレフィンとを共重合させて、製造することができるが、特に、Mw/Mnを小さく、密度を低くするには、オレフィンの立体規則性重合触媒として、メタロセン触媒を用いて、高圧法、又は溶液法で製造されることが望ましい。
【0030】
また、本発明の医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物に、選択的に用いるエチレン-α-オレフィンランダム共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。
このようなエチレン-α-オレフィンランダム共重合体は、市販品として、日本ポリエチレン(株)製のノバテックLLシリーズやハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、三井化学(株)製のタフマーPシリーズやタフマーAシリーズ、(株)プライムポリマー製のエボリューシリーズ、住友化学(株)製のスミカセンE、EPシリーズ、エクセレンGMHシリーズなどが例示できる。
また、メタロセン触媒を用いて重合されたエチレン-α-オレフィンランダム共重合体としては、日本ポリエチレン(株)製のハーモレックスシリーズ、カーネルシリーズ、プライムポリマー製のエボリューシリーズ、住友化学(株)製のエクセレンFXシリーズ等が例示できる。
【0031】
本発明の医療用プロピレン-エチレンプロピレン系樹脂組成物において、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)にエラストマー(B)としてエチレン-α-オレフィンランダム共重合体を含有させる場合の含有割合は、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)が88~95質量部、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体が5~12質量部であり、好ましくはプロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)が90~95質量部、エチレン-α-オレフィンランダム共重合体が5~10質量部である。この範囲内であると、放射線照射後の耐衝撃性が優れる樹脂組成物となる。
【0032】
[造核剤]
本発明の医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物が造核剤を含有することで、より透明性が良好な成形品を得ることができる。造核剤としては、特に限定はないが、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、カルボン酸金属塩系造核剤、ポリマー造核剤、無機化合物等を用いることができる。造核剤としては、ソルビトール系造核剤、リン系造核剤、ポリマー造核剤を用いることが好ましい。
【0033】
ソルビトール系造核剤としては例えば、ノニトール 1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン](該化合物を含む市販品として商品名「ミラードNX8000」シリーズ、ミリケン社製(「NX8000」は、上記化学物質+蛍光増白剤+ブルーミング剤、「NX8000K」は「NX8000」の蛍光増白剤抜き、「NX8000J」は蛍光増白剤とブルーミング剤両方抜き)が挙げられる)、1,3,2,4-ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4-ジ-(p-メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3-p-クロルベンジリデン-2,4-p-メチルベンジリデンソルビトールを用いることができる。
【0034】
リン系造核剤としては例えば、ナトリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、カリウム-ビス-(4-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェート、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)ナトリウム塩(商品名「アデカスタブNA-11」、ADEKA製)、ビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム塩を主成分とする複合物(商品名「アデカスタブNA-21」、ADEKA製)、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェートと12-ヒドロキシステアリン酸とを含み、かつリチウムを必須性分として含む複合物(商品名「アデカスタブNA-71」、ADEKA製)などを用いることができる。
【0035】
カルボン酸金属塩造核剤としては例えば、p-t-ブチル安息香酸アルミニウム塩、アジピン酸アルミニウム、安息香酸ナトリウムを用いることができる。
ポリマー造核剤としては分岐状α-オレフィン重合体が好適に用いられる。分岐状α-オレフィン重合体の例として、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセンの単独重合体、あるいはそれら相互の共重合体、さらにはそれらと他のα-オレフィンとの共重合体を挙げることができる。透明性、低温耐衝撃性、剛性の特性が良好であること、および経済性の観点から、特に、3-メチル-1-ブテンの重合体が好ましい。
無機化合物としては例えば、タルク、マイカ、炭酸カルシウムを用いることができる。
本発明に用いる造核剤としては、上記の通り、一部は市販品として容易に入手することができる。
【0036】
これらの造核剤の中でも、透明性、低温耐衝撃性、剛性および低臭気であるとの観点からノニトール,1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピフェニル)メチレン]、および/またはビス(2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ〔d,g〕〔1,3,2〕ジオキサホスホシン-6-オキシド)水酸化アルミニウム塩を用いることが好ましい。
またこれらの造核剤は一種単独でも、二種以上を用いてもよい。
【0037】
[耐候安定剤]
本発明の医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物は、耐候安定剤を含有する。
耐候安定剤の具体例としては、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、ジ-ステアリル-ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチル-5-メチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジ-フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、n-ヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル-2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6-〔(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ〕-1,3,5-トリアジン-2,4ジイル]〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ〕}、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス〔N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ〕-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物等のヒンダートアミン系安定剤、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤、ジ-ステアリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ミリスチル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート、ジ-ラウリル-β,β’-チオ-ジ-プロピオネート等のチオ系酸化防止剤等が挙げられる。
なお、耐候安定剤は単独、又は複数用いても構わないが、本発明に係るプロピレン-エチレン系樹脂組成物は、放射線滅菌を行う医療用途向け射出成形品に使用されるため、滅菌後の変色の観点からリン系酸化防止剤又はヒンダートアミン系安定剤を配合することが好ましい。リン系酸化防止剤の中でも特にトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトが放射線滅菌時の樹脂劣化の抑制と変色のバランスに優れている為、好ましい。ヒンダートアミン系安定剤の中でも低溶出の観点から高分子量型ヒンダートアミン系安定剤が好ましく、特にコハク酸ジメチル-2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジル)エタノール縮合物が放射線滅菌時の樹脂劣化の抑制と滅菌後の成形品の長期安定性、及び変色のバランスに優れており、かつ、低溶出性であり、塩基性もヒンダートアミン系安定剤の中では弱く中性に近い為、内容液への影響が少なく好ましい。放射線滅菌時の樹脂劣化抑制及び滅菌後の成形品の長期安定性保持の観点からリン系酸化防止剤とヒンダートアミン系酸化防止剤を併用することが最も好ましい。
【0038】
さらに、本発明の医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物において、放射線処理で変色がなく、耐NOxガス変色性が良好な下記一般式(3)や下記一般式(4)で表されるアミン系酸化防止剤、5,7-ジ-t-ブチル-3-(3,4-ジ-メチル-フェニル)-3H-ベンゾフラン-2-オン等のラクトン系酸化防止剤、下記一般式(5)等のビタミンE系酸化防止剤を本発明の効果が得られる範囲で配合しても構わない。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
耐候安定剤の配合量は、医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物100質量部に対し、0.01~0.20質量である。好ましくは0.02~0.10質量部である。0.01質量部以上であると耐候安定剤としての効果の発現が十分であり、0.20質量部以下であると透明性等への悪影響が無い。
【0043】
[その他添加剤]
さらに、本発明の医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物には性能を損なわない範疇でその他に、公知の銅害防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、親水化剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、石油樹脂、抗菌剤などを含有することができる。
【0044】
[医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物の製造方法]
本発明の医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物は、前述のプロピレン-エチレン共重合体(a)、プロピレン-エチレン共重合体(b)、エラストマー(B)、造核剤、中和剤、滑剤、酸化防止剤、及びその他添加剤等の各種配合成分の所定量を、例えばヘンシェルミキサー(商品名)、スーパーミキサー、リボンブレンダー、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、等の通常の混合装置を用いて混合することによって得ることができる。得られた混合物を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、プラベンダー、ロールなどを用いて、溶融混練温度150~300℃、好ましくは180~250℃で溶融混練してペレタイズすることによって、ペレット状の組成物とすることもできる。
【0045】
[成形品]
本発明の成形品は、上記の医療用プロピレン-エチレン系樹脂組成物を、公知の射出成形機により成形することで得られる医療用途向け射出成形品である。
【0046】
本発明の樹脂組成物は、射出成形時の成形加工性に優れている為、精度の良い射出成形品を短い成形サイクルで得ることができる。得られる射出成形品は、多岐に渡る医療用途に用いられ、具体的成形品としては医療用器具や容器(ディスポーザブルシリンジ及びその部品、カテーテル・チューブ、輸液バッグ、血液バッグ、真空採血管、手術用不織布、血液用フィルター、血液回路などのディスポーザブル器具や、人工肺、人工肛門などの人工臓器類の部品、ダイアライザー、プレフィルドシリンジ、キット製剤、薬剤容器、試験管、縫合糸、湿布基材、歯科用材料の部品、整形外科用材料の部品、コンタクトレンズのケース、コンタクトレンズの成形型、PTP、SP・分包、Pバイアル、目薬容器、薬液容器、液体の長期保存容器等)、医療用容器(輸液パック)、日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、筆記用具等)などが挙げられる。
【0047】
本発明の成形品は医療用途向けのため、滅菌されるケースが多くあり、滅菌方法としては、ガス滅菌(EOG)、高圧蒸気滅菌、放射線滅菌(γ線、電子線)等が挙げられ、これらの滅菌を行うことが出来る。特に本樹脂組成物を用いて得られる成形品は放射線滅菌に適しており、放射線滅菌後も優れた耐衝撃性を有する成形品である。本成形品に適した放射線滅菌の線量は、好ましくは1kGy~100kGyであり、より好ましくは10kGy~60kGyである。製品にもよるが下限値以上の線量になると滅菌を行うことが出来、上限値以下の線量であると滅菌性と滅菌後の耐衝撃性及び低溶出性のバランスに優れる。
また、本樹脂組成物を用いた成形品は、透明性の観点から、成形品の平均肉厚が3.0mm厚以下が好ましく、より好ましくは2.5mm厚以下であり、さらに好ましくは2.0mm厚以下であり、特に好ましくは1.5mmであり、より特に好ましくは1.2mm厚以下であり、最も好ましくは1.0mm以下である。上限厚以下であると十分な透明性を発現する。またここで言う成形品の平均肉厚とは、成形品の全表面積に占める割合で最も広範囲の部分の肉厚のことを指す。代表例として注射器(シリンジ又は筒状部をバレルという)では外筒(バレル)の円筒部分の肉厚のことを指す。
さらに、本樹脂組成物は、製品剛性と耐衝撃性のバランスが良好な射出成形品が得られる。なお、本樹脂組成物は、薬発第494号 透析型人工腎臓装置承認基準 IV血液回路の品質及び試験法に記載の重金属試験、鉛試験、カドミウム試験、溶出物試験を放射線滅菌後に満足するため人工透析用部材に好適であり、特にダイアライザーのハウジングやヘッダー、及びその関連部材に好適であり、JIS T3210:2011 滅菌済み注射筒に記載の6化学的要求事項を満足する為、注射器用部材に好適であり、特にディスポーザブル注射器に好適である。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例を参照して具体的に説明するが,本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、プロピレン-エチレン共重合体(a)及び(b)は「PP成分(a)」及び「PP成分(b)」と記載し、プロピレン-エチレン系樹脂組成物は「プロピレン系重合体」と記載することがある。
【0049】
<プロピレン系重合体(A-1)の製造例>
(1)固体触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mLおよび2-エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、-20℃に保持した四塩化チタン200mL中に、この均一溶液の75mLを1時間にわたって滴下装入した。装入終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、これより2時間同温度にて攪拌保持した。
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mLの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間、加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて溶液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0050】
ここで、前記遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。予め窒素置換した100mLの枝付きシュレンクに上記固体触媒成分の上澄み液10mLを注射器で採取し装入した。次に、窒素気流にて溶媒ヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40mL、50容量%硫酸10mLを装入し30分間攪拌した。この水溶液をろ紙を通して100mLメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤としてconc.H3PO4 1mLとチタンの発色試薬として3%H2O2水溶液 5mLを加え、さらにイオン交換水で100mLにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後にUVを用い420nmの吸光度を観測し遊離チタンの検出を行った。
この吸収が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去および遊離チタンの検出を行った。
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部は触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP 12.5質量%であった。
【0051】
(2)予備重合触媒成分の調製
内容積500mLの攪拌機付きの三つ口フラスコを窒素ガスで置換した後、脱水処理したヘプタンを400mL、トリエチルアルミニウム19.2mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン3.8mmol、上記固体状チタン触媒成分(A)4gを加えた。内温を20℃に保持し、攪拌しながらプロピレンを導入した。1時間後、攪拌を停止し結果的に固体状チタン触媒成分(A)1g当たり2gのプロピレンが重合した予備重合触媒成分(B)を得た。
【0052】
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0053】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.94MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.3L/min)/(1.1L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは7.0g/10分、エチレン含量は18.0質量%であった。
【0054】
<プロピレン系重合体(A-2)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0055】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.90MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.2L/min)/(1.2L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは3.0g/10分、エチレン含量は19.0質量%であった。
【0056】
<プロピレン系重合体(A-3)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0057】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.0L/min)/(1.4L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は21.0質量%であった。
【0058】
<プロピレン系重合体(A-4)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.8mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は2.3質量%であった。
【0059】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.0L/min)/(1.4L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は21.0質量%であった。
【0060】
<プロピレン系重合体(A-5)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が2.3mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は3.0質量%であった。
【0061】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.0L/min)/(1.4L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は21.0質量%であった。
【0062】
<プロピレン系重合体(A-6)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.8mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は2.3質量%であった。
【0063】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.0L/min)/(1.4L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で40分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し5質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は21.0質量%であった。
【0064】
<プロピレン系重合体(A-7)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0065】
<プロピレン系重合体(A-8)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0066】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.94MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(3.8L/min)/(1.6L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは7.0g/10分、エチレン含量は24.5質量%であった。
【0067】
<プロピレン系重合体(A-9)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.8mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は2.3質量%であった。
【0068】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.0L/min)/(1.4L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で70分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し9質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は20.5質量%であった。
【0069】
<プロピレン系重合体(A-10)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.45MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンを導入した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは180g/10分であった。
【0070】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(3.7L/min)/(1.7L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で60分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し8質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は26.0質量%であった。
【0071】
<プロピレン系重合体(A-11)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0072】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.2L/min)/(1.2L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で100分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し12質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は19.0質量%であった。
【0073】
<プロピレン系重合体(A-12)の製造>
(1)(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.7mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は2.2質量%であった。
【0074】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.90MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.4L/min)/(1.0L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で60分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し8質量%であり、MFRは3.0g/10分、エチレン含量は16.5質量%であった。
【0075】
<プロピレン系重合体(A-13)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0076】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.92MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.0L/min)/(1.4L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは5.0g/10分、エチレン含量は21.0質量%であった。
【0077】
<プロピレン系重合体(A-14)の製造>
(1)、(2)の工程はプロピレン系重合体(A-1)と同様である。
(3-1)重合-1(重合[工程1])
内容積10Lの攪拌機付きステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後、脱水処理したヘプタン6L、トリエチルアルミニウム12.5mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン0.6mmolを加えた。系内の窒素をプロピレンで置換した後に、水素を0.15MPa-G装入し、続いて攪拌しながらプロピレンおよびエチレンを導入した。なお、導入量は、重合槽内の気相部のエチレン濃度が1.4mol%となるように調整した。
内温80℃、全圧0.8MPa-Gに系内が安定した後、上記予備重合触媒成分(B)をTi原子換算で0.10mmol含んだヘプタンスラリー20.8mLを加え、プロピレンを連続的に供給しながら80℃で3時間重合を行った。
PP成分(a)のMFRは45g/10分、エチレン含量は1.8質量%であった。
【0078】
(3-2)重合-2(重合[工程2])
PP成分(a)の重合終了後(前記[工程1]の後)、内温を30℃まで降温し脱圧した。その後、水素0.96MPa-G装入し、続いてプロピレン/エチレン:(4.9L/min)/(0.5L/min)の混合ガスを導入した。内温60℃、全圧0.30MPa-G(導入ガス量により変動)で50分間プロピレン/エチレン共重合を行った。
所定時間経過したところで50mLのメタノールを添加し反応を停止し、降温、脱圧した。内容物を全量フィルター付きろ過槽へ移し60℃に昇温し固液分離した。更に、60℃のヘプタン6Lで固体部を2回洗浄した。このようにして得られたプロピレン/エチレン共重合体を真空乾燥した。
2段目で製造したPP成分(b)についてのインデックスを計算したところ、生産量は全体の重量に対し7質量%であり、MFRは8.0g/10分、エチレン含量は9.0質量%であった。
【0079】
<エラストマー(B)>
エラストマー(B)として、以下の(B-1)~(B-3)のエチレン-αオレフィン共重合体を用いた。
(B-1) メタロセン系エチレン-αオレフィン共重合体:密度(JIS K 7112に準拠して測定した。以下、密度と略称することがある。)903kg/m3、MFR(190℃)15g/10分(プライムポリマー製、商品名:SP00206)
(B-2) メタロセン系エチレン-αオレフィン共重合体:密度883kg/m3、MFR(190℃)20g/10分(三井化学製、商品名:A-2085S)
(B-3) メタロセン系エチレン-αオレフィン共重合体:密度913kg/m3、MFR(190℃)4.0g/10分(プライムポリマー製、商品名:SP1540)
【0080】
[造粒・成形・評価]
<造粒・成形>
(1)造粒
表(実施例・比較例)に示す配合にて、プロピレン系重合体(A)と、エラストマー(B)、耐候安定剤としてコハク酸ジメチル-2-(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジル)エタノール縮合物(「TINUVIN622」(商品名)、BASF社製)、造核剤としてノニトール 1,2,3-トリデオキシ-4,6:5,7-ビス-O-[(4-プロピルフェニル)メチレン](「ミラードNX8000J」(商品名)、ミリケン社製)または(C-1):リン酸-2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)アルミニウム塩(「アデカスタブNA-21」(商品名)、ADEKA社製)を所定の量を配合し、さらに添加剤として、リン系酸化防止剤のトリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト(「Irgafos168」(商品名)BASF社製)を0.13質量部、中和剤のステアリン酸カルシウム(日東化成社製)を0.10質量部、をヘンシェルミキサーにて攪拌混合した。
得られた混合物を東芝機械株式会社製の二軸押出機(TEM35BS)を用いて下記条件にて溶融混練してストランドを得た。
・型式:TEM35BS(35mm二軸押出機)
・スクリュー回転数:300rpm
・スクリーンメッシュ:#200
・樹脂温度:230℃
得られたストランドを水冷後ペレタイザーにて切断することにより、プロピレン系樹脂組成物のペレットを得た。
【0081】
(2)10mLシリンジ成形
プロピレン系樹脂組成物のペレットを用いて、以下の方法で容器を成形した。
型締め力140トンの電動射出成形機(日精樹脂工業社製NEX140IV)を用いて、シリンダー温度230℃、金型温度25℃、射出1次圧力130MPa、射出速度50mm/sec、保圧圧力、150MPa、保圧時間5.0secの条件で、プロピレン系樹脂組成物のペレットを射出成形し、高さ80mm、直径16mm、側面肉厚1.0mmの10mLシリンジを射出成形した。
【0082】
(3)高速成形性
上記成形条件における連続成形において、100shot間離型不良、シリンジの変形、エラストマー樹脂の配向による容器流れ方向破損等のトラブルゼロで成形可能となる最少サイクルタイムを測定した。
【0083】
<物性評価>
(4)MFR
本発明のプロピレン-エチレン共重合体(a)及び(b)、プロピレン-エチレン系樹脂組成物(A)のメルトフローレイトMFRは、JISK-7210-1999(230℃、2.16kg荷重)、エラストマー(B)のMFRはJISK-7210-1999(190℃、2.16kg荷重)に準拠して測定した。
【0084】
(5)エチレン含量(13C-NMR測定条件)
測定装置:日本電子製LA400型核磁気共鳴装置
測定モード:BCM(Bilevel Complete decoupling)
観測周波数:100.4MHz
観測範囲:17006.8Hz
パルス幅:C核45°(7.8μ秒)
パルス繰り返し時間:5秒
試料管:5mmφ試料管
回転数:12Hz
積算回数:20000回
測定温度:125℃
溶媒:1,2,4-トリクロロベンゼン:0.35ml/重ベンゼン:0.2ml
試料量:約40mg
【0085】
測定で得られたスペクトルより、下記文献(1)に準じて、モノマー連鎖分布(トリアッド(3連子)分布)の比率を決定し、エチレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下E(mol%)と記す)およびプロピレンに由来する構成単位のモル分率(mol%)(以下P(mol%)と記す)を算出した。求められたE(mol%)およびP(mol%)から下記(式1)に従い質量%に換算しプロピレンーエチレン共重合体のエチレンに由来する構成単位の含有量(質量%)(以下E(wt%)と記す)を算出した。
【0086】
E(wt%)=E(mol%)×28×100/[P(mol%)×42+E(mol%)×28](式1)
文献(1):Kakugo,M.; Naito,Y.; Mizunuma,K.; Miyatake,T., Carbon-13 NMR determination of monomer sequence distribution in ethylene-propylene copolymers preparedwith delta-titanium trichloride-diethylaluminum chloride. Macromolecules 1982, 15, (4), 1150-1152
【0087】
(6)引張弾性率
射出成形法により試験片を成形し、成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、JIS K 7161(ISO178)に準拠して求めた。
また、放射線滅菌後の引張弾性率は、10mLシリンジ成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、空気雰囲気下、室温条件下で、γ線25kGy(平均線量)を照射した後、更に室温23℃±0.5℃、相対湿度50±5%の恒温室内で2週間状態調整した後に測定し求めた。
【0088】
(7)10mLシリンジの耐衝撃性(落錘試験)
10mLシリンジを48~72時間23℃条件下で状態調整を行い、更に10℃の環境下で24時間以上状態調整を行った。
10℃環境下で、シリンジの胴部中心に対して、鉄棒(13.5mmΦ、120g)を垂直に落下させ、10回落下させたときに割れが発生しない最大の高さを測定した。
また、放射線滅菌後の落錘試験は、10mLシリンジ成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、空気雰囲気下、室温条件下で、γ線25kGy(平均線量)を照射した後、更に室温23℃±0.5℃、相対湿度50±5%の恒温室内で2週間状態調整した後に測定し求めた。
【0089】
(8)10mLシリンジの透明性(水中光線透過率)
第十七改正日本薬局方試験 7.02 プラスチック製医薬品容器試験法 1.4.透明性試験を参考に、下記方法にて試験を実施した。
容器の胴部の高さ40mm付近から、約0.9×4cmの大きさに切断したものを5個作り、それぞれ水を満たした紫外線吸収スペクトル測定用セルに浸し、水だけを満たしたセルを対象として、紫外可視吸光度測定法により波長450nmの透過率を測定し求めた。
また、放射線滅菌後の水中光線透過率は、10mLシリンジ成形後に室温23±5℃、相対湿度50±5%に調節された恒温室に72時間放置した後、空気雰囲気下、室温条件下で、γ線25kGy(平均線量)を照射した後、更に室温23℃±0.5℃、相対湿度50±5%の恒温室内で2週間状態調整した後に測定し求めた。
【0090】
(9)JIS T3210:2011 滅菌済み注射筒 6 化学的要求事項 本規格を参考に、下記方法にて化学的要求事項の試験を実施した。
(a)100mm×120mm×1mmtプレスシートの作製
150mm×150mm×3mmtのアルミ板の間に100mm×120mm×1mmtのプレスシートが得られるスペーサーを置き、そのスペーサーの枠内に規定量のペレットを入れた。その後、230℃に加熱した加熱プレスを用いて、始めの7分間は圧力をかけずにペレットを加熱プレス機内で溶かし、その後、100kg/cm2の圧力を3分間かけた。その後、30℃の冷却プレスに速やかに移し、150kg/cm2の圧力を2分間かけてサンプルの冷却を行った。その後、プレスシートをアルミ板、及びスペーサーから剥がして取り出した。
(b)溶出物試験用の試験片の作製
(a)で作製したプレスシートを鋏で均等に4分割して60mm×50mm×2mmtのシートを4枚回収した。その後、蒸留水にてシート表面、及び、切断面の洗浄を行い、常温にて乾燥して溶出物試験用の試験片とした。
(c)試験片の放射線滅菌
試験片に空気雰囲気下、室温条件下で、γ線25kGy(平均線量)を照射した後、室温23℃±0.5℃、相対湿度50±5%の恒温室内で2週間状態調整した。
(d)試験液の調製
蒸留水で洗浄して室温にて乾燥させた500mlのホウケイ酸製のガラスビーカーに、蒸留水を250ml入れた。そこに、(C)で準備した溶出物試験用の試験片(60mm×50mm×2mmt)を4枚入れて水中に浸漬させた。その際、試験片表面に気泡が残らないようにした。そして、アルミ箔にてビーカーを密閉して、恒温槽中で37℃、8時間保った後、試験片を取り出して試験液とした。
(e)pH試験、溶出金属の試験
JIS T3210:2011に記載の方法に準拠して試験を実施した。なお、空試験液は蒸留水を用い、溶出金属は原子吸光光度法によって分析した。
各試験結果の基準は、以下の通りである。適否について評価した。
(i)ΔpH:試験液と空試験液のpHの差は1以下
(ii)溶出金属:鉛,亜鉛,鉄の合計は5mg/L以下で、かつ、試験液のカドミウム測定値を空試験液のカドミウム測定値で補正したとき,試験液のカドミウム含量は 0.1 mg/L 以下。
【0091】
(10)薬発第494号 透析型人工腎臓装置承認基準 IV血液回路の品質及び試験
現在、「薬発第494号 透析型人工腎臓装置承認基準」は「通知の廃止」となっているが、本試験が本用途での化学的安全性確認の目安となっている為、試験を実施した。
重金属試験、鉛試験、カドミウム試験(まとめて灰化試験という)はペレットを用いて、承認基準の操作方法に準拠して試験を行った。なお、試験に用いたペレットは本試験を行う2週間前にγ線25kGy(平均値)の照射滅菌を行い、室温23℃±0.5℃、相対湿度50±5%の恒温室内で2週間状態調整したものである。
また、溶出物試験は、本承認基準内のV透析器の品質及び試験法 5.支持体及び血液接続管に記載の溶出物試験を参考にして、ペレット15gに対して水150mlを加えた後、70℃で1時間の抽出試験を行い、各試験については承認基準の操作方法に準拠して試験を行った。なお、試験に用いたペレットは本試験を行う2週間前にγ線25kGy(平均値)の照射滅菌を行ない、室温23℃±0.5℃、相対湿度50±5%の恒温室内で2週間状態調整したものである。
各試験結果の基準は、以下の通りである。適否について評価した。
4.重金属試験:10μg/g以下
5.鉛試験:1μg/g以下
6.カドミウム試験:1μg/g以下
8.溶出物試験
(i)外観:無色透明、異物なし
(ii)あわだち:3分以内に消失
(iii)ΔpH:ブランクとの差が1.5以下
(iv)亜鉛:標準溶液(0.5μg/g)以下
(v)過マンガン酸カリウム(KMnO4)還元性物質:標準溶液との過マンガン酸カリウム消費量の差1.0ml以下
(vi)蒸発残留物:1.0mg以下
(vii)紫外吸収スペクトル(UV)220~350nm:0.1以下
*)現在、「薬発第494号 透析型人工腎臓装置承認基準」は「通知の廃止」となっているが、本試験が本用途での化学的安全性確認の目安となっている為、試験を実施する。
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